JP2004099453A - 血管平滑筋細胞の増殖抑制剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】動脈硬化予防剤として有効な血管平滑筋細胞の増殖抑制剤の提供を目的とする。
【解決手段】藍藻類のスピルリナ属の熱水抽出物より単離された硫酸化多糖を有効成分とし、特に、ナトリウムを含む硫酸化多糖で分子量が10〜30万、或いは低分子化して分子量が1〜10万のものが、有効に血管平滑筋細胞の増殖抑制作用を成す。
【選択図】 なし
【解決手段】藍藻類のスピルリナ属の熱水抽出物より単離された硫酸化多糖を有効成分とし、特に、ナトリウムを含む硫酸化多糖で分子量が10〜30万、或いは低分子化して分子量が1〜10万のものが、有効に血管平滑筋細胞の増殖抑制作用を成す。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、血管平滑筋細胞の増殖抑制剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
動脈硬化は心筋梗塞や脳硬塞の基礎病変であるが、この病変は動脈中膜の血管平滑筋細胞が内膜へと遊走し活発に増殖することで形成されるので、血管平滑筋細胞の増殖を阻害することが、その防御及び予防に有効であることが知られている。しかし、血管平滑筋細胞の増殖を阻害して有効に抑制できる物質は多くの研究者により研究されているが(例えば、特許文献1参照。)、未だに有効な物質が見い出されていないのが現状である。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−112930号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の問題点に鑑み、本発明は、動脈硬化予防剤として有効な血管平滑筋細胞の増殖抑制剤の提供を課題とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
発明者らは血管平滑筋細胞の増殖抑制作用を有する物質について研究を重ね、本発明に至ったものであり、その第1の要旨は、藍藻類のスピルリナ属の熱水抽出物より単離された硫酸化多糖を有効成分とする血管平滑筋細胞の増殖抑制剤に存する。
また、第2の要旨は、前記硫酸化多糖がナトリウムを含む硫酸化多糖であることである。
また、第3の要旨は、前記硫酸化多糖の分子量が10〜30万であることである。
また、第4の要旨は、前記硫酸化多糖の分子量が1万〜10万であることである。
【0006】
【発明の実施の形態】
発明者らは、藻類に着目し、藍藻類,緑藻類,褐藻類,紅藻類について、それぞれ熱水抽出物の作用を検討したが、その中でも藍藻類に特に注目し、この藍藻類には、スピルリナ(Spirulina) 属、フィッシェレラ(Fischerella) 属、アナベナ(Anabaene)属、ネンジュモ(Nostoc)属、シネコキスチス(Cynechocystis) 属、シネココッカス(Cynechococcus) 属、トリポスリクス(Tolypothrix) 属等があるが、これらのうち、特にスピルリナ(Spirulina) 属に着目して研究を重ねた。
即ち、藍藻類のスピルリナ(Spirulina) 属は、工業的規模で生産されており、、その安全性が確認されて、食用にも供されているため、原料としては好ましいものであった。
【0007】
このように発明者らは最終的には藍藻類のスピルリナ(Spirulina) 属に的を絞り、このスピルリナ属からの熱水抽出物より単離された硫酸化多糖が、血管平滑筋細胞の増殖抑制作用を備えていることを見い出した。
さらに、有効成分である硫酸化多糖としては、特にナトリウムを含む硫酸化多糖が優れた作用効果を発揮することを突き止め、また、硫酸化多糖の分子量としては10万〜30万が好ましく、さらには、これを低分子化した1万〜10万のものも有効に作用することを突き止めたのである。
なお、以下において、ナトリウムを含む硫酸化多糖をナトリウムスピルラン(Na−SP)と称して説明する。
【0008】
【実施例】
以下には、ナトリウムスピルラン(Na−SP)の調製方法及び性質について言及するとともに、血管平滑筋細胞の増殖抑制作用を確認する薬理試験を列挙して、ナトリウムスピルラン(Na−SP)の血管平滑筋細胞に対する増殖抑制効果を立証する。
【0009】
調製方法
藍藻類のスピルリナ(Spirulina) を、例えば5〜10倍量(重量比)の水に懸濁させ、80℃以上の温度条件にて、1時間程度で熱水抽出し、得られた熱水抽出懸濁液を、好ましくは3000×g以上で、10〜30分間遠心分離を行い、その上澄み液を分離採取し、熱水抽出物を得る。
得られた熱水抽出物に、トリクロロ酢酸,クエン酸等の有機酸類、塩酸,硫酸等の無機酸類からなる除蛋白処理剤を、1〜20%加えて再度遠心分離し(好ましくは3000×g以上で、10〜30分間)除蛋白処理する。
次いで除蛋白処理済みの遠心分離上清を透析して(好ましくは、5〜20℃の温度条件下)、分子量分布10万〜50万の高分子画分を得る。
このようにして得られた高分子画分を更に純化する場合には、これをDEAEトヨパールカラムにかけて分画し、次いでDEAEトヨパールカラムにかけて再度分画を行うことが出来る。
【0010】
ナトリウムスピルランの物理化学的性質は以下の通りである.
(a)比旋光度 24.5℃(H2 O)
(b)分子量 2.2×105 (ゲル濾過法)
(c)構成中性糖 ラムノース(52.3%)、3・Ο・メチルラムノース(32.5%)、2,3・ジ・Ο・メチルラムノース(4.4%)、
3・Ο・メチルキシロース(4.8%)
(d)ウロン酸含量 16.5%(グルクロン酸、及びガラクツロン酸)
(e)IRスペクトル S=O伸縮振動(1265cm−1)
(f)X線分析 ナトリウムおよびイオウの存在
【0011】
薬理試験
(実験1)
1)培養血管平滑筋細胞を用いたin vitroの実験
ウシ大動脈血管平滑筋細胞はウシ大動脈よりAtherosclerosis, 91, 207, 1991に記載の方法により単離し、10%ウシ胎児血清(FBS )を含むダルベッコ変法イーグル培地(ニッスイ製薬社製)中にて37℃、95%空気−5%二酸化炭素の雰囲気下で培養した。4〜10回継代した培養細胞を2%トリプシンと0.02%エチレンジアミン−テトラ酢酸2ナトリウムの混合物で100mmファルコン培養ペトリ皿から取り出し、100×g、4℃で10分遠心分離して集めた。このウシ大動脈血管平滑筋細胞を24穴培養プレートに5,000cells/cm2 の密度で播種し、10% FBS含有ダルベッコ変法イーグル培地中で24時間上記と同じ条件下で培養後、新鮮な同培地中でNa−SP(2,5,10or20μg/ml)存在下さらに72時間培養し、培養終了時の細胞数を粒子計測機(CDA−500 )で測定した(表1)。
別に、10μg/mlのNa−SP存在下で24,48,72,96時間同様に培養し、細胞数を計測した(表2)。
データはそれぞれ検体の平均値±標準誤差で表し、結果についてはt検定による統計処理を行った。
【0012】
【表1】
【0013】
【表2】
【0014】
2)結果の説明
表1
培養血管平滑筋細胞の増殖は、Na−SP添加群による72時間の培養で無添加群に比較して有意に阻害され、その阻害作用は用量依存的であった。また、阻害効果は2μg/mlですでに認められ、5μg/ml以上で約60%の阻害が観察された。
表2
また10μg/mlのNa−SPを添加して96時間まで培養した場合、24時間以上の培養時間において培養血管平滑筋細胞の増殖は有意に阻害された。
【0015】
(実験2)
1)[ 3 H]ラベルしたチミジン、[ 14C]ラベルしたロイシンの取込みの試験
ウシ大動脈血管平滑筋細胞を6穴培養プレートに5,000cells/cm2 の密度で播種し、10%牛胎児血清含有ダルベッコ変法イーグル培地中で24時間培養後、新鮮な同培地中でNa−SP(10μg/ml)存在下さらに72時間培養し、培養終了前6時間にDNA の合成を調べるために、20kBq/mlの[3H] ラベルしたチミジン(NEN Life Science products 社製)、タンパク質の合成を調べるために、10 kBq/ml の[14 C] ラベルしたロイシン(NEN Life Science products 社製)を添加した。培養終了後、培地を捨て、細胞をカルシウムおよびマグネシウム不含リン酸緩衝液で洗った。細胞を新鮮な同緩衝液存在下ゴムベラ(ラバ− ポリスマン)でかきとって回収後、超音波処理によって細胞を破砕した。この細胞破砕液について5%トリクロロ酢酸不溶性画分への放射活性の取込みを液体シンチレーションカウンターで測定した。別に細胞破砕液中のDNA 量を蛍光分析法で測定した。データはそれぞれ4回の試験結果の平均値±標準誤差で表し、結果についてはt検定による統計処理を行った。
【0016】
2)乳酸脱水素酵素(LDH )の活性測定
(実験1)で示されたNa−SPによる血管平滑筋細胞数の減少は細胞増殖が阻害されたことを強く示唆するものであるが、Na−SPが細胞毒性を発現して血管平滑筋細胞の死滅を加速した結果細胞数を減少させた可能性がある。死滅した細胞は溶解してしまうので、その数を計測することは事実上不可能であるが、培養液中のLHD の活性を測定することにより死滅した細胞数を間接的に知ることができる。即ち、LDH は細胞質中に存在する酵素であるが、細胞が生きているうちはそこに留まっている。しかしながら、細胞が死に至ると細胞膜が崩壊し、LDH は細胞の中から培養液中に漏出してくる。そこで、以下のように培地中のLDH 活性を測定し、Na−SPによって細胞死が加速された可能性を検討した。
【0017】
ウシ大動脈血管平滑筋細胞を24穴培養プレートに5,000cells/cm2 の密度で播種し、10%牛胎児血清含有ダルベッコ変法イーグル培地中で24時間培養後、新鮮な同培地中でNa−SP(10μg/ml)存在下さらに72時間培養後培地を回収し、その中に含まれるLDH 活性をキット(和光純薬)を用いて測定した。
【0018】
【表3】
【0019】
3)結果の説明
培養血管平滑筋細胞のDNA合成は、Na−SP添加により抑制(Na−SP無添加群の8.426×10−4dpm に対して、Na−SPの1 0μg 添加群で1.991×10−4dpm )されているが、アミノ酸の消費量は抑制されず(Na− SP無添加群の2.212×10−3dpm に対して、Na−SPの1 0μg 添加群で1.896×10−3dpm )、また培養血管平滑筋細胞からLDHの漏出も増加していない(Na−SP無添加群の13.60 ±0.18IU/Iに対して、Na−SPの10μg 添加群で11.91 ±0.09IU/I)。このことから、Na−SP添加による培養血管平滑筋細胞の増殖阻害作用は、Na−SPの平滑筋細胞のDNA合成阻害によるものであり、細胞の蛋白質合成阻害あるいは、細胞死(細胞毒性)によるものではないことを示唆している。
【0020】
(実験3)
1)ナトリウムイオンの除去, 脱硫酸化
Na−SPをDowex50Wx8イオン交換樹脂(H型)のカラムにかけて蒸留水で溶出し、ナトリウムイオンを除去した。
Na−SPをDowex50Wx8イオン交換樹脂(ピリジン型)のカラムにかけて、これを10%メタノール/DMSOに溶解し、環流しながら80℃で5時間加熱した。反応液を蒸留水に対して透析後,凍結乾燥することで脱硫酸化SPを得た。
2)Na−SPを添加してからの培養時間
(実験1)と同様の方法で、血管平滑筋細胞をNa−SP,H−SPおよび脱硫酸化SPで72時間処理し、処理後の細胞数を計測した。
【0021】
【表4】
【0022】
3)結果の説明
無添加対照群と比較して、Na−SPの10μg 添加群では細胞増殖が50.7%阻害されたのに対して、Na−SPからナトリウムイオンを除去したH−SPの10μg 添加群では阻害率が5.2%と細胞増殖はほとんど阻害されなかった。またNa−SPから硫酸基を除去することによって、ナトリウムイオンを結合できなくした脱硫酸化SPでは、その阻害率が14.2%と対照群に比較して僅かに細胞増殖を阻害した。これらの結果から、Na−SPの血管平滑筋細胞増殖の阻害活性には、硫酸基に結合したナトリウムイオンが必須であることが分かる。
【0023】
(実験4)
1)Na−SPの低分子化
5%過酸化水素水/100mM酢酸緩衝液(pH5.5)に溶解し、45℃で30分〜12時間インキュベートした。反応液を蒸留水に対して透析後、凍結乾燥した。生じた低分子量体をHPLC(TSKgel GMPWXLカラム、溶離液0.2M NaCl)で分析したところ、分子量的には均一であることが認められた。例を挙げると、30分間反応させると分子量約22万の低分子化Na−SPが分子量約11万に、11時間反応させると分子量約21,000の低分子化Na−SPにまで低分子化した。イオウの元素分析、及びX線マイクロアナリシスの結果から、いずれの低分子化Na−SPにも硫酸基、及びナトリウムイオンの存在は確認された。
【0024】
2)培養
(実験1)と同様の方法で、血管平滑筋細胞をNa−SPおよびその低分子化体で72時間処理し、処理後の細胞数を計測した。
【0025】
【表5】
【0026】
3)結果の説明
低分子Na−SP添加群における血管平滑筋細胞増殖阻害率は、分子量約200,000の低分子化前のNa−SP添加で24.8%、分子量約100,000の低分子Na−SP添加で26.5%、分子量約50,000の低分子Na−SP添加で36.8%、分子量20,000の低分子Na−SP添加で43.2%、分子量約15,000の低分子Na−SP添加で35.2%といずれの分子量においても、無添加群に比較して、阻害活性を示した。このことからNa−SPの培養血管平滑筋細胞に対する増殖阻害活性は、低分子化することによっても失活しないことが判る。
【0027】
製剤化例
ナトリウムスピルラン(Na−SP)は、医薬品原料または医薬品として用いることができるが、各種の医薬品として経口または非経口的に投与する場合には、エアゾール剤、液剤、エキス剤、エリキシル剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、眼軟膏剤、懸濁剤・乳剤、坐剤、散剤、酒精剤、錠剤、シロップ剤、浸剤・煎剤、注射剤、貼付剤、チンキ剤、点眼剤、トローチ剤、軟膏剤、パップ剤、芳香水剤、リニメント剤、リモナーデ剤、流エキス剤、ローション剤等の剤型が挙げられる。
【0028】
これらの医薬品の製剤化の際には、医薬品添加物として使用できる溶剤、浸出剤、賦形剤、コーティング基剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、溶解補助剤、懸濁化剤、粘稠剤、乳化剤、界面活性剤、安定剤、保存剤、矯味剤、矯臭剤、着色剤、乳化剤、吸収促進剤等が添加されるが、その例としては、精製水、注射用水、生理食塩液、エタノール、アセトン、エーテル、デンプン、白糖、乳糖、ブドウ糖、マンニトール、リン酸カルシウム、カゼイン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルロース、酢酸フタル酸セルロース、デンプン糊液、ゼラチン溶液、アラビアゴム、カルメロース、アルギン酸ナトリウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、タルク、デンプン、炭酸カルシウム、結晶セルロース、安息香酸ナトリウム、エチレンジアミン、ヨウ化カリウム、ベントナイト、トラガント、ゼラチン、ポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンモノ脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシル40、ピロ亜硫酸ナトリウム、l−アスコルビン酸、EDTA、安息香酸、安息香酸エステル、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ソルベート、クエン酸、ハッカ油、芳香エッセンス、ブリリアントブルー、エリスロシン、食塩等が挙げられる。
【0029】
またナトリウムスピルラン(Na−SP)は、原料の抽出段階で得られる中間品を用いて機能性食品としての応用も可能である。例えば、スピルリナを熱水で抽出し、その抽出液を凍結乾燥させ、これにトリクロロ酢酸を加えて除蛋白後、水に対して透析を行うことでトリクロロ酢酸を除き、再度凍結乾燥して粗精製物を得ることができるが、この場合、ナトリウムスピルランが約9%含まれる。この粗精製物を動脈硬化の予防を目的とした機能性食品として応用する。
機能性食品として利用する場合の形態は、通常の食品として流通している形態であれば良いが、例えば炭酸飲料、清涼飲料水、粉末清涼飲料、テーブルシュガー、ゼリー、クッキー、ビスケット、チョコレート、ガム、飴、即席麺、スナック麺、カプセル状食品、錠剤状食品等のように、長期間の安定性を保てる形態であればなお良い。その他、発酵乳、乳酸菌飲料、シリアル、とうふ、ソーセージに添加したり、食品以外にも食用調理油、粉末スープに添加することもできる。
【0030】
ナトリウムスピルラン(Na−SP)の医薬品としての投与量は、投与方法、投与期間、年齢、体重等により異なるが、経口もしくは非経口投与により、通常成人1日当り0.25〜0.75mg/kg である。以下に、医薬品としての実施例を挙げる。
【0031】
例えばスピルリナのスプレー乾燥粉末を4〜20倍量(重量比)、好ましくは5〜10倍量(重量比)の水に懸濁させ、80℃以上、好ましくは還流温度の温度条件にて、30分以上、好ましくは1時間程度熱水抽出する。次に得られた熱水抽出懸濁液を、好ましくは3000×g以上で、10〜30分間遠心分離を行い、その上澄み液を分離採取し、熱水抽出物を得る。得られた熱水抽出物を常法に従い除蛋白処理する。即ち熱水抽出物に除蛋白処理剤を加えて再度遠心分離する(好ましくは3000×g以上で、10〜30分間)。除蛋白処理剤としては、トリクロロ酢酸,クエン酸等の有機酸類、塩酸,硫酸等の無機酸類が使用される。除蛋白処理剤の添加量としては、処理液に対し、1〜20%が適している。次いで除蛋白処理済みの遠心分離上清を透析して(好ましくは、5〜20℃の 温度条件下)、分子量分布10万〜50万の高分子画分を得る。このようにして得られた高分子画分を下記に示すような担体を用いて、製剤化することが出来る。さらには該高分子画分をDEAEトヨパールカラムにかけて分画し、次いでDEAEトヨパールカラムにかけて再度分画を行い純化したものを、下記に示すような担体を用いて、製剤化することも出来る。
【0032】
(例1)
ナトリウムスピルラン(Na−SP)13.2g、結晶セルロース8.1kg、カルメロースカルシウム4.0kg、沈降炭酸カルシウム1.0kg、クロスカルメロースナトリウム3.0kg、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム0.4kgを混合機で3分間混合し、混合末を40#で篩過する。さらに混合機で3分間混合し、ステアリン酸マグネシウム0.4gを加え30秒混合した後、40#で篩過し、さらに混合機で30秒間混合し、打錠用顆粒とする。次いで常法により、1錠中(320mg) にナトリウムスピルラン(Na−SP)0.25mgを含有する9mm径の錠剤とする。
【0033】
(例2)
ナトリウムスピルラン(Na−SP)3.2g、乳糖30.65kg、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム0.5kg、ステアリン酸マグネシウム0.25kgを混合機で混合した後、常法により1包中2.5gにナトリウムスピルラン(Na−SP)0.25mgを含有する顆粒剤とする。
【0034】
【発明の効果】
本発明の血管平滑筋細胞の増殖抑制剤は、藍藻類のスピルリナ属の熱水抽出物より単離された硫酸化多糖を有効成分とするものであり、血管平滑筋細胞のDNA合成を阻害して、毒性を生じることなく、有効に血管平滑筋細胞の増殖を阻害し抑制することができる効果を有する。
【発明の属する技術分野】
この発明は、血管平滑筋細胞の増殖抑制剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
動脈硬化は心筋梗塞や脳硬塞の基礎病変であるが、この病変は動脈中膜の血管平滑筋細胞が内膜へと遊走し活発に増殖することで形成されるので、血管平滑筋細胞の増殖を阻害することが、その防御及び予防に有効であることが知られている。しかし、血管平滑筋細胞の増殖を阻害して有効に抑制できる物質は多くの研究者により研究されているが(例えば、特許文献1参照。)、未だに有効な物質が見い出されていないのが現状である。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−112930号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の問題点に鑑み、本発明は、動脈硬化予防剤として有効な血管平滑筋細胞の増殖抑制剤の提供を課題とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
発明者らは血管平滑筋細胞の増殖抑制作用を有する物質について研究を重ね、本発明に至ったものであり、その第1の要旨は、藍藻類のスピルリナ属の熱水抽出物より単離された硫酸化多糖を有効成分とする血管平滑筋細胞の増殖抑制剤に存する。
また、第2の要旨は、前記硫酸化多糖がナトリウムを含む硫酸化多糖であることである。
また、第3の要旨は、前記硫酸化多糖の分子量が10〜30万であることである。
また、第4の要旨は、前記硫酸化多糖の分子量が1万〜10万であることである。
【0006】
【発明の実施の形態】
発明者らは、藻類に着目し、藍藻類,緑藻類,褐藻類,紅藻類について、それぞれ熱水抽出物の作用を検討したが、その中でも藍藻類に特に注目し、この藍藻類には、スピルリナ(Spirulina) 属、フィッシェレラ(Fischerella) 属、アナベナ(Anabaene)属、ネンジュモ(Nostoc)属、シネコキスチス(Cynechocystis) 属、シネココッカス(Cynechococcus) 属、トリポスリクス(Tolypothrix) 属等があるが、これらのうち、特にスピルリナ(Spirulina) 属に着目して研究を重ねた。
即ち、藍藻類のスピルリナ(Spirulina) 属は、工業的規模で生産されており、、その安全性が確認されて、食用にも供されているため、原料としては好ましいものであった。
【0007】
このように発明者らは最終的には藍藻類のスピルリナ(Spirulina) 属に的を絞り、このスピルリナ属からの熱水抽出物より単離された硫酸化多糖が、血管平滑筋細胞の増殖抑制作用を備えていることを見い出した。
さらに、有効成分である硫酸化多糖としては、特にナトリウムを含む硫酸化多糖が優れた作用効果を発揮することを突き止め、また、硫酸化多糖の分子量としては10万〜30万が好ましく、さらには、これを低分子化した1万〜10万のものも有効に作用することを突き止めたのである。
なお、以下において、ナトリウムを含む硫酸化多糖をナトリウムスピルラン(Na−SP)と称して説明する。
【0008】
【実施例】
以下には、ナトリウムスピルラン(Na−SP)の調製方法及び性質について言及するとともに、血管平滑筋細胞の増殖抑制作用を確認する薬理試験を列挙して、ナトリウムスピルラン(Na−SP)の血管平滑筋細胞に対する増殖抑制効果を立証する。
【0009】
調製方法
藍藻類のスピルリナ(Spirulina) を、例えば5〜10倍量(重量比)の水に懸濁させ、80℃以上の温度条件にて、1時間程度で熱水抽出し、得られた熱水抽出懸濁液を、好ましくは3000×g以上で、10〜30分間遠心分離を行い、その上澄み液を分離採取し、熱水抽出物を得る。
得られた熱水抽出物に、トリクロロ酢酸,クエン酸等の有機酸類、塩酸,硫酸等の無機酸類からなる除蛋白処理剤を、1〜20%加えて再度遠心分離し(好ましくは3000×g以上で、10〜30分間)除蛋白処理する。
次いで除蛋白処理済みの遠心分離上清を透析して(好ましくは、5〜20℃の温度条件下)、分子量分布10万〜50万の高分子画分を得る。
このようにして得られた高分子画分を更に純化する場合には、これをDEAEトヨパールカラムにかけて分画し、次いでDEAEトヨパールカラムにかけて再度分画を行うことが出来る。
【0010】
ナトリウムスピルランの物理化学的性質は以下の通りである.
(a)比旋光度 24.5℃(H2 O)
(b)分子量 2.2×105 (ゲル濾過法)
(c)構成中性糖 ラムノース(52.3%)、3・Ο・メチルラムノース(32.5%)、2,3・ジ・Ο・メチルラムノース(4.4%)、
3・Ο・メチルキシロース(4.8%)
(d)ウロン酸含量 16.5%(グルクロン酸、及びガラクツロン酸)
(e)IRスペクトル S=O伸縮振動(1265cm−1)
(f)X線分析 ナトリウムおよびイオウの存在
【0011】
薬理試験
(実験1)
1)培養血管平滑筋細胞を用いたin vitroの実験
ウシ大動脈血管平滑筋細胞はウシ大動脈よりAtherosclerosis, 91, 207, 1991に記載の方法により単離し、10%ウシ胎児血清(FBS )を含むダルベッコ変法イーグル培地(ニッスイ製薬社製)中にて37℃、95%空気−5%二酸化炭素の雰囲気下で培養した。4〜10回継代した培養細胞を2%トリプシンと0.02%エチレンジアミン−テトラ酢酸2ナトリウムの混合物で100mmファルコン培養ペトリ皿から取り出し、100×g、4℃で10分遠心分離して集めた。このウシ大動脈血管平滑筋細胞を24穴培養プレートに5,000cells/cm2 の密度で播種し、10% FBS含有ダルベッコ変法イーグル培地中で24時間上記と同じ条件下で培養後、新鮮な同培地中でNa−SP(2,5,10or20μg/ml)存在下さらに72時間培養し、培養終了時の細胞数を粒子計測機(CDA−500 )で測定した(表1)。
別に、10μg/mlのNa−SP存在下で24,48,72,96時間同様に培養し、細胞数を計測した(表2)。
データはそれぞれ検体の平均値±標準誤差で表し、結果についてはt検定による統計処理を行った。
【0012】
【表1】
【0013】
【表2】
【0014】
2)結果の説明
表1
培養血管平滑筋細胞の増殖は、Na−SP添加群による72時間の培養で無添加群に比較して有意に阻害され、その阻害作用は用量依存的であった。また、阻害効果は2μg/mlですでに認められ、5μg/ml以上で約60%の阻害が観察された。
表2
また10μg/mlのNa−SPを添加して96時間まで培養した場合、24時間以上の培養時間において培養血管平滑筋細胞の増殖は有意に阻害された。
【0015】
(実験2)
1)[ 3 H]ラベルしたチミジン、[ 14C]ラベルしたロイシンの取込みの試験
ウシ大動脈血管平滑筋細胞を6穴培養プレートに5,000cells/cm2 の密度で播種し、10%牛胎児血清含有ダルベッコ変法イーグル培地中で24時間培養後、新鮮な同培地中でNa−SP(10μg/ml)存在下さらに72時間培養し、培養終了前6時間にDNA の合成を調べるために、20kBq/mlの[3H] ラベルしたチミジン(NEN Life Science products 社製)、タンパク質の合成を調べるために、10 kBq/ml の[14 C] ラベルしたロイシン(NEN Life Science products 社製)を添加した。培養終了後、培地を捨て、細胞をカルシウムおよびマグネシウム不含リン酸緩衝液で洗った。細胞を新鮮な同緩衝液存在下ゴムベラ(ラバ− ポリスマン)でかきとって回収後、超音波処理によって細胞を破砕した。この細胞破砕液について5%トリクロロ酢酸不溶性画分への放射活性の取込みを液体シンチレーションカウンターで測定した。別に細胞破砕液中のDNA 量を蛍光分析法で測定した。データはそれぞれ4回の試験結果の平均値±標準誤差で表し、結果についてはt検定による統計処理を行った。
【0016】
2)乳酸脱水素酵素(LDH )の活性測定
(実験1)で示されたNa−SPによる血管平滑筋細胞数の減少は細胞増殖が阻害されたことを強く示唆するものであるが、Na−SPが細胞毒性を発現して血管平滑筋細胞の死滅を加速した結果細胞数を減少させた可能性がある。死滅した細胞は溶解してしまうので、その数を計測することは事実上不可能であるが、培養液中のLHD の活性を測定することにより死滅した細胞数を間接的に知ることができる。即ち、LDH は細胞質中に存在する酵素であるが、細胞が生きているうちはそこに留まっている。しかしながら、細胞が死に至ると細胞膜が崩壊し、LDH は細胞の中から培養液中に漏出してくる。そこで、以下のように培地中のLDH 活性を測定し、Na−SPによって細胞死が加速された可能性を検討した。
【0017】
ウシ大動脈血管平滑筋細胞を24穴培養プレートに5,000cells/cm2 の密度で播種し、10%牛胎児血清含有ダルベッコ変法イーグル培地中で24時間培養後、新鮮な同培地中でNa−SP(10μg/ml)存在下さらに72時間培養後培地を回収し、その中に含まれるLDH 活性をキット(和光純薬)を用いて測定した。
【0018】
【表3】
【0019】
3)結果の説明
培養血管平滑筋細胞のDNA合成は、Na−SP添加により抑制(Na−SP無添加群の8.426×10−4dpm に対して、Na−SPの1 0μg 添加群で1.991×10−4dpm )されているが、アミノ酸の消費量は抑制されず(Na− SP無添加群の2.212×10−3dpm に対して、Na−SPの1 0μg 添加群で1.896×10−3dpm )、また培養血管平滑筋細胞からLDHの漏出も増加していない(Na−SP無添加群の13.60 ±0.18IU/Iに対して、Na−SPの10μg 添加群で11.91 ±0.09IU/I)。このことから、Na−SP添加による培養血管平滑筋細胞の増殖阻害作用は、Na−SPの平滑筋細胞のDNA合成阻害によるものであり、細胞の蛋白質合成阻害あるいは、細胞死(細胞毒性)によるものではないことを示唆している。
【0020】
(実験3)
1)ナトリウムイオンの除去, 脱硫酸化
Na−SPをDowex50Wx8イオン交換樹脂(H型)のカラムにかけて蒸留水で溶出し、ナトリウムイオンを除去した。
Na−SPをDowex50Wx8イオン交換樹脂(ピリジン型)のカラムにかけて、これを10%メタノール/DMSOに溶解し、環流しながら80℃で5時間加熱した。反応液を蒸留水に対して透析後,凍結乾燥することで脱硫酸化SPを得た。
2)Na−SPを添加してからの培養時間
(実験1)と同様の方法で、血管平滑筋細胞をNa−SP,H−SPおよび脱硫酸化SPで72時間処理し、処理後の細胞数を計測した。
【0021】
【表4】
【0022】
3)結果の説明
無添加対照群と比較して、Na−SPの10μg 添加群では細胞増殖が50.7%阻害されたのに対して、Na−SPからナトリウムイオンを除去したH−SPの10μg 添加群では阻害率が5.2%と細胞増殖はほとんど阻害されなかった。またNa−SPから硫酸基を除去することによって、ナトリウムイオンを結合できなくした脱硫酸化SPでは、その阻害率が14.2%と対照群に比較して僅かに細胞増殖を阻害した。これらの結果から、Na−SPの血管平滑筋細胞増殖の阻害活性には、硫酸基に結合したナトリウムイオンが必須であることが分かる。
【0023】
(実験4)
1)Na−SPの低分子化
5%過酸化水素水/100mM酢酸緩衝液(pH5.5)に溶解し、45℃で30分〜12時間インキュベートした。反応液を蒸留水に対して透析後、凍結乾燥した。生じた低分子量体をHPLC(TSKgel GMPWXLカラム、溶離液0.2M NaCl)で分析したところ、分子量的には均一であることが認められた。例を挙げると、30分間反応させると分子量約22万の低分子化Na−SPが分子量約11万に、11時間反応させると分子量約21,000の低分子化Na−SPにまで低分子化した。イオウの元素分析、及びX線マイクロアナリシスの結果から、いずれの低分子化Na−SPにも硫酸基、及びナトリウムイオンの存在は確認された。
【0024】
2)培養
(実験1)と同様の方法で、血管平滑筋細胞をNa−SPおよびその低分子化体で72時間処理し、処理後の細胞数を計測した。
【0025】
【表5】
【0026】
3)結果の説明
低分子Na−SP添加群における血管平滑筋細胞増殖阻害率は、分子量約200,000の低分子化前のNa−SP添加で24.8%、分子量約100,000の低分子Na−SP添加で26.5%、分子量約50,000の低分子Na−SP添加で36.8%、分子量20,000の低分子Na−SP添加で43.2%、分子量約15,000の低分子Na−SP添加で35.2%といずれの分子量においても、無添加群に比較して、阻害活性を示した。このことからNa−SPの培養血管平滑筋細胞に対する増殖阻害活性は、低分子化することによっても失活しないことが判る。
【0027】
製剤化例
ナトリウムスピルラン(Na−SP)は、医薬品原料または医薬品として用いることができるが、各種の医薬品として経口または非経口的に投与する場合には、エアゾール剤、液剤、エキス剤、エリキシル剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、眼軟膏剤、懸濁剤・乳剤、坐剤、散剤、酒精剤、錠剤、シロップ剤、浸剤・煎剤、注射剤、貼付剤、チンキ剤、点眼剤、トローチ剤、軟膏剤、パップ剤、芳香水剤、リニメント剤、リモナーデ剤、流エキス剤、ローション剤等の剤型が挙げられる。
【0028】
これらの医薬品の製剤化の際には、医薬品添加物として使用できる溶剤、浸出剤、賦形剤、コーティング基剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、溶解補助剤、懸濁化剤、粘稠剤、乳化剤、界面活性剤、安定剤、保存剤、矯味剤、矯臭剤、着色剤、乳化剤、吸収促進剤等が添加されるが、その例としては、精製水、注射用水、生理食塩液、エタノール、アセトン、エーテル、デンプン、白糖、乳糖、ブドウ糖、マンニトール、リン酸カルシウム、カゼイン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルロース、酢酸フタル酸セルロース、デンプン糊液、ゼラチン溶液、アラビアゴム、カルメロース、アルギン酸ナトリウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、タルク、デンプン、炭酸カルシウム、結晶セルロース、安息香酸ナトリウム、エチレンジアミン、ヨウ化カリウム、ベントナイト、トラガント、ゼラチン、ポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンモノ脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシル40、ピロ亜硫酸ナトリウム、l−アスコルビン酸、EDTA、安息香酸、安息香酸エステル、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ソルベート、クエン酸、ハッカ油、芳香エッセンス、ブリリアントブルー、エリスロシン、食塩等が挙げられる。
【0029】
またナトリウムスピルラン(Na−SP)は、原料の抽出段階で得られる中間品を用いて機能性食品としての応用も可能である。例えば、スピルリナを熱水で抽出し、その抽出液を凍結乾燥させ、これにトリクロロ酢酸を加えて除蛋白後、水に対して透析を行うことでトリクロロ酢酸を除き、再度凍結乾燥して粗精製物を得ることができるが、この場合、ナトリウムスピルランが約9%含まれる。この粗精製物を動脈硬化の予防を目的とした機能性食品として応用する。
機能性食品として利用する場合の形態は、通常の食品として流通している形態であれば良いが、例えば炭酸飲料、清涼飲料水、粉末清涼飲料、テーブルシュガー、ゼリー、クッキー、ビスケット、チョコレート、ガム、飴、即席麺、スナック麺、カプセル状食品、錠剤状食品等のように、長期間の安定性を保てる形態であればなお良い。その他、発酵乳、乳酸菌飲料、シリアル、とうふ、ソーセージに添加したり、食品以外にも食用調理油、粉末スープに添加することもできる。
【0030】
ナトリウムスピルラン(Na−SP)の医薬品としての投与量は、投与方法、投与期間、年齢、体重等により異なるが、経口もしくは非経口投与により、通常成人1日当り0.25〜0.75mg/kg である。以下に、医薬品としての実施例を挙げる。
【0031】
例えばスピルリナのスプレー乾燥粉末を4〜20倍量(重量比)、好ましくは5〜10倍量(重量比)の水に懸濁させ、80℃以上、好ましくは還流温度の温度条件にて、30分以上、好ましくは1時間程度熱水抽出する。次に得られた熱水抽出懸濁液を、好ましくは3000×g以上で、10〜30分間遠心分離を行い、その上澄み液を分離採取し、熱水抽出物を得る。得られた熱水抽出物を常法に従い除蛋白処理する。即ち熱水抽出物に除蛋白処理剤を加えて再度遠心分離する(好ましくは3000×g以上で、10〜30分間)。除蛋白処理剤としては、トリクロロ酢酸,クエン酸等の有機酸類、塩酸,硫酸等の無機酸類が使用される。除蛋白処理剤の添加量としては、処理液に対し、1〜20%が適している。次いで除蛋白処理済みの遠心分離上清を透析して(好ましくは、5〜20℃の 温度条件下)、分子量分布10万〜50万の高分子画分を得る。このようにして得られた高分子画分を下記に示すような担体を用いて、製剤化することが出来る。さらには該高分子画分をDEAEトヨパールカラムにかけて分画し、次いでDEAEトヨパールカラムにかけて再度分画を行い純化したものを、下記に示すような担体を用いて、製剤化することも出来る。
【0032】
(例1)
ナトリウムスピルラン(Na−SP)13.2g、結晶セルロース8.1kg、カルメロースカルシウム4.0kg、沈降炭酸カルシウム1.0kg、クロスカルメロースナトリウム3.0kg、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム0.4kgを混合機で3分間混合し、混合末を40#で篩過する。さらに混合機で3分間混合し、ステアリン酸マグネシウム0.4gを加え30秒混合した後、40#で篩過し、さらに混合機で30秒間混合し、打錠用顆粒とする。次いで常法により、1錠中(320mg) にナトリウムスピルラン(Na−SP)0.25mgを含有する9mm径の錠剤とする。
【0033】
(例2)
ナトリウムスピルラン(Na−SP)3.2g、乳糖30.65kg、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム0.5kg、ステアリン酸マグネシウム0.25kgを混合機で混合した後、常法により1包中2.5gにナトリウムスピルラン(Na−SP)0.25mgを含有する顆粒剤とする。
【0034】
【発明の効果】
本発明の血管平滑筋細胞の増殖抑制剤は、藍藻類のスピルリナ属の熱水抽出物より単離された硫酸化多糖を有効成分とするものであり、血管平滑筋細胞のDNA合成を阻害して、毒性を生じることなく、有効に血管平滑筋細胞の増殖を阻害し抑制することができる効果を有する。
Claims (4)
- 藍藻類のスピルリナ属の熱水抽出物より単離された硫酸化多糖を有効成分とする血管平滑筋細胞の増殖抑制剤。
- 前記硫酸化多糖がナトリウムを含む硫酸化多糖である請求項1に記載の血管平滑筋細胞の増殖抑制剤。
- 前記硫酸化多糖の分子量が10〜30万である請求項1または請求項2に記載の血管平滑筋細胞の増殖抑制剤。
- 前記硫酸化多糖の分子量が1万〜10万である請求項1または請求項2に記載の血管平滑筋細胞の増殖抑制剤。
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JP2002259460A JP2004099453A (ja) | 2002-09-04 | 2002-09-04 | 血管平滑筋細胞の増殖抑制剤 |
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---|---|---|---|---|
KR101520533B1 (ko) | 2013-05-03 | 2015-05-14 | 부경대학교 산학협력단 | 스피룰리나 맥시마 유래의 펩타이드를 유효성분으로 포함하는 심혈관 질환의 예방 또는 치료용 조성물 |
-
2002
- 2002-09-04 JP JP2002259460A patent/JP2004099453A/ja active Pending
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