JP2004098525A - 積層樹脂基板およびその製造方法ならびに有機el素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】樹脂基板に無機材料の層を密着性良く形成した積層樹脂基板およびその製造方法ならびにこの積層樹脂基板を用いた有機EL素子を提供する。
【解決手段】積層樹脂基板10は、樹脂基板12の上に無機材料を含む層14が積層される。樹脂基板12は、ポリカーボネート樹脂を用いて、代表的には100〜2000μmの厚みに形成される。無機材料を含む層14は、酸化窒化ケイ素と、ポリカーボネート樹脂とを用いて、代表的には100〜500nmの厚みに形成される。無機材料を含む層14は、厚み方向において、組成の分布、組織等が連続的に制御され、樹脂基板12に接する部分が実質的にポリカーボネート樹脂のみからなり、一方、反対側の表層部分が実質的に酸化窒化ケイ素のみからなり、所謂傾斜機能材料と類似した構造を有する。
【選択図】 図1
【解決手段】積層樹脂基板10は、樹脂基板12の上に無機材料を含む層14が積層される。樹脂基板12は、ポリカーボネート樹脂を用いて、代表的には100〜2000μmの厚みに形成される。無機材料を含む層14は、酸化窒化ケイ素と、ポリカーボネート樹脂とを用いて、代表的には100〜500nmの厚みに形成される。無機材料を含む層14は、厚み方向において、組成の分布、組織等が連続的に制御され、樹脂基板12に接する部分が実質的にポリカーボネート樹脂のみからなり、一方、反対側の表層部分が実質的に酸化窒化ケイ素のみからなり、所謂傾斜機能材料と類似した構造を有する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層樹脂基板およびその製造方法ならびに有機EL素子に関し、より詳細には、樹脂基板への無機材料の積層構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート(以下、PCという。)等のある種の樹脂は、無機物との相性が悪い。このため、物理蒸着法等の乾式成膜法により樹脂からなる基板の上に直接無機物を成膜等すると、密着性を評価するためのテープテストを行うとき、あるいは、超音波洗浄を行うとき、容易に無機物の膜が基板から剥離してしまう。
【0003】
無機物の膜が剥離することを防止する方法として、イオンプレーティング法で成膜粒子の運動エネルギを高めて基板に打ち込んだり、あるいは、成膜するのに先立ちプラズマで樹脂基板の表面の不純物を除去してクリーニングすること等が行われている。
【0004】
また、樹脂と無機物との双方との密着性がよい有機物を用いた中間膜を樹脂の膜と無機物の膜との間に、塗布法やスピンコート法等を用いて形成することも行われている。
【0005】
ところで、フラットパネルディスプレイ(以下、FPDという。)の分野では、装置の軽量化や耐衝撃性向上を図るために、基板材料がガラスから樹脂に置き換わる傾向にある。特に、有機ELを利用したFPDでは、樹脂基板のみでなく、さらに樹脂シート基板あるいは樹脂フィルム基板への置き換えも検討されている。
【0006】
ところが、樹脂は本質的に保湿性、透湿性を持つため、水分を極度に嫌う有機ELでは発光層への水分の浸入の有無が、パネルの寿命を決定する。
【0007】
このため、樹脂基板や樹脂フィルムの上や、あるいは樹脂基板や樹脂フィルムの背面に封止缶や単層の封止膜を設ける等することで、水分の浸入を防止することが行われている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した樹脂の膜と無機物の膜との間の密着性を改善する各技術は、材料の組み合わせによっては必ずしも充分な密着性改善効果を与えるものではない。なお、中間膜を樹脂の膜と無機物の膜との間に塗布法等により形成する方法については、形成される中間膜がμmオーダーとなり、用途によっては厚みが大きすぎる不具合もある。
【0009】
また、上記したフラットパネルディスプレイにおいて封止缶や単層の封止膜を設ける技術は、前者の封止缶に関しては、装置の軽量化を実現するために膜による封止への移行が求められており、また、後者の単層の封止膜を設けたものについては、封止膜自身の防湿性能の不足や膜の基板への密着性が強固でないため、水分の浸入を完全には防止できない。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、樹脂基板に無機材料の層を密着性良く形成した積層樹脂基板およびその製造方法ならびにこの積層樹脂基板を用いた有機EL素子を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る積層樹脂基板は、樹脂基板に無機材料を含む層が積層された積層樹脂基板であって、該無機材料を含む層は、厚み方向において、該樹脂基板に接する側の部分が実質的に樹脂材料のみで形成され、該樹脂基板に接する側とは反対側の部分が実質的に無機材料のみで形成され、中間部分の組織構造が連続的に制御されてなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る積層樹脂基板は、該無機材料を含む層は、厚み方向において、樹脂材料および無機材料がランダムに混合された組織構造を有することを特徴とする。
【0013】
ここで、樹脂基板は、肉厚のもののみでなく、シート状やフィルム状のものも含む。以下の他の発明についても同様である。
【0014】
本発明の上記の構成により、無機材料が樹脂基板の材料である樹脂との密着性が良くないものであっても、無機材料を含む層と樹脂基板との密着性の良好な積層樹脂基板を得ることができる。また、このとき、一般的に、樹脂材料の層の水蒸気透過率が大きいのに対して無機材料の層の水蒸気透過率が小さいため、水蒸気透過防止性に優れる積層樹脂基板を得ることができる。無機材料として水蒸気透過率が特に小さいものを選択して用いれば、より好適である。
【0015】
この場合、前記無機材料を含む層にさらに無機材料の層が積層されてなると、水蒸気透過防止性をさらに向上させることができ、より好適である。
【0016】
また、本発明に係る有機EL(Electro Luminescence)素子は、上記の積層樹脂基板を発光層と接してまたは他の層を介して設けてなることを特徴とする。
【0017】
これにより、上記積層樹脂基板の効果を有する有機EL素子を得ることができ、有機EL素子の長寿命化を図ることができる。
【0018】
上記の積層樹脂基板を好適に得るために、本発明に係る積層樹脂基板の製造方法は、樹脂基板に成膜して無機材料を含む層を積層する積層樹脂基板の製造方法であって、成膜初期の所定時間真空蒸着法により樹脂材料を成膜する初期成膜工程と、真空蒸着法により樹脂材料を成膜する時間と、スパッタ法により無機材料を成膜する時間とを交互に切り換えるとともに、その時間配分を、当初の実質的に樹脂材料のみを成膜する時間から実質的に無機材料のみを成膜する時間に漸次変えていく中期成膜工程と、成膜終期の所定時間スパッタ法により無機材料を成膜する終期成膜工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る積層樹脂基板の製造方法は、真空蒸着法により樹脂材料を成膜する樹脂材料成膜工程と、スパッタ法により無機材料を成膜する無機材料成膜工程と、を交互に繰り返すことを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明に係る積層樹脂基板およびその製造方法ならびに有機EL素子の好適な実施の形態(以下、本実施の形態例という。)について、図を参照して、以下に説明する。
【0021】
まず、本実施の形態例に係る積層樹脂基板について、図1〜図3を参照して説明する。
【0022】
本実施の形態の第1の例に係る積層樹脂基板10は、図1に示すように、樹脂基板12の上に無機材料を含む層14が積層されている。図1および後述する図2、図3において、各層の組織構造は模式的に示しており、無数の黒点は無機材料を表示し、それ以外の白地の部分は樹脂材料を表示している。
【0023】
樹脂基板12は、例えばポリカーボネート(PC)樹脂を用いて、代表的には100〜2000μmの厚みに形成されている。なお、樹脂基板12の材料としては、ポリカーボネート以外にも、PET、PES、TAC等の樹脂を用いることができる。
【0024】
無機材料を含む層14は、例えば無機材料である酸化窒化ケイ素(SiOxNy)と、樹脂材料である例えば樹脂基板と同じポリカーボネート樹脂とを用いて、代表的には100〜500nmの厚みに形成されている。無機材料を含む層14は、厚み方向(図1中、上下方向)において、組成の分布、組織等が連続的に制御され、樹脂基板12に接する部分(図1中、矢印Aで示す。)が実質的にポリカーボネート樹脂のみからなり、一方、反対側の表層部分(図1中、矢印Bで示す。)が実質的に酸化窒化ケイ素のみからなり、所謂傾斜機能材料と類似した構造を有する。但し、所謂傾斜機能材料は、一般に、材料として金属やセラミックス等を組み合わせたものであり、また膜厚が少なくともμmオーダーと厚い点において、本発明と異なる。
【0025】
本実施の形態の第1の例に係る積層樹脂基板10は、無機材料を含む層14の樹脂基板に接する部分が樹脂基板12と同じ樹脂材料で形成されているため、無機材料を含む層14と樹脂基板12との密着性が良好である。
【0026】
また、積層樹脂基板10は、無機材料を含む層14の機能が傾斜した構造を有し、無機材料を含む層14の最表層の部分が無機材料のみで形成されているため、最表層側から(図1中、上方方向から)の水蒸気透過防止性に優れる。また、後述するように、無機材料を含む層14に無機材料の層を積層すると、無機材料を含む層14と無機材料の層との密着性が良好である。
【0027】
なお、本実施の形態の第1の例に係る積層樹脂基板10において、無機材料としては、酸化窒化ケイ素以外の各種の材料を用いることができ、例えば、二酸化ケイ素(SiO2)、Al2O3、AlN等を用いることができる。また、無機材料を含む層の樹脂材料としては、樹脂基板の樹脂材料と異なる種類の樹脂材料を用いてもよく、例えば、PE等を用いることができる。
【0028】
つぎに、本実施の形態の第2の例に係る積層樹脂基板16は、図2に示すように、樹脂基板12の上に無機材料を含む層18が積層されている。
【0029】
この場合、無機材料を含む層18は、無機材料と樹脂材料とがランダムに混合した構造、組成を有する。各材料の種類、各層の厚み等は本実施の形態の第1の例と同様にすることができる。
【0030】
本実施の形態の第2の例に係る積層樹脂基板16は、本実施の形態の第1の例積層樹脂基板10に近い効果を得ることができる。
【0031】
つぎに、本実施の形態の第3の例に係る積層樹脂基板20は、図3に示すように、本実施の形態の第1の例に係る積層樹脂基板10の上にさらに無機材料の層22が積層されている。
【0032】
無機材料の層22の材料の種類、厚み等は適宜設定することができる。
本実施の形態の第3の例に係る積層樹脂基板20は、無機材料を含む層14の上に無機材料の層22が積層されているため、両者の密着性が良好である。
【0033】
また、積層樹脂基板20は、無機材料の層22を有するため、より良好な水蒸気透過防止性を得ることができる。また、無機材料の層22は、通常積層される無機材料層と同じであるため、微細加工等の処理を行う際に、通常の無機材料層と同様に取り扱うことができる。
【0034】
ここで、上記本実施の形態の各例に係る積層樹脂基板の製造方法について説明する。
【0035】
まず、積層樹脂基板の製造に用いる装置について、装置の主要部分を模式的に示した図4を参照して説明する。
【0036】
製造装置24は、真空蒸着装置部26およびスパッタ装置部28で構成されている。
【0037】
真空蒸着装置部26は、例えば、成膜速度の点で好適な電子ビーム蒸着方式あるいは抵抗加熱方式を用いる。電子ビーム蒸着方式の真空蒸着装置部26を用いる場合、装置の詳細構造は図示しないが、成膜室(真空容器)26aの下部に坩堝が配置され、坩堝に成膜材料の粉粒体が堆積される。坩堝内の材料は電子ビームにより加熱され、これにより成膜材料が蒸発する。なお、成膜室26aの上部には後述するように樹脂基板が出入りするが、このとき、樹脂基板の出入りは適宜の密閉機構を介して行われる。
【0038】
スパッタ装置部28は、例えば、最も汎用的なRFスパッタ装置を用いる。RFスパッタ装置の詳細構造は図示しないが、成膜室(真空容器)28aの下部にカソード電極が配置され、カソード電極上にターゲットとして成膜材料が配置される。また、カソード電極の裏面に磁石が設けられ、ターゲット近傍に磁界を形成する。成膜室26aをアースとして、カソード電極に高周波電圧を印加してグロー放電を発生させ、放電中に生成したAr等の正イオンをターゲットに衝突させることにより、成膜材料が飛び出す。なお、成膜室28aは、成膜室26aと同様に適宜の密閉機構が設けられる。
【0039】
製造装置24の上部には、図示しない回転軸を挟んで両側に延出する2つの腕部30a、30bを有する基板回転装置32が設けられる。各腕部30a、30bの先端には基板を吸着して保持する基板保持部34a、34bが設けられ、基板保持部34a、34bの下側に図示しない基板が保持される。また、成膜室26a、28の基板が成膜される位置には、図示しない駆動手段により付勢されて基板の下側に進退可能に進入するシャッタ36a、36bが設けられ、これにより、成膜粒子の飛来を適度に遮蔽して成膜量が調整される。
【0040】
真空蒸着装置部26およびスパッタ装置部28を稼働してそれぞれ成膜材料を蒸発させ、一方、基板回転装置32を所定の回転速度で連続的にあるいは断続的回転させると、各基板は、真空蒸着装置部26およびスパッタ装置部28の各成膜室26a、28aに滞留している間、それぞれの成膜条件で成膜が行われる。また、このとき、シャッタ36a、36bを適宜用いることにより、成膜量が調整される。
【0041】
上記の製造装置24を用いた積層樹脂基板の製造方法を説明する。
【0042】
まず、積層樹脂基板10の製造方法について説明する。
【0043】
はじめに、樹脂基板12を成膜室26aに配置し、真空蒸着法によりポリカーボネートを樹脂基板12に500nmの厚みに成膜する(初期成膜工程)。このとき、例えばシャッタ36aは全開としておく。
【0044】
ついで、基板回転装置32を付勢し、樹脂基板12を成膜室28aに移し、RFスパッタ法により酸化窒化ケイ素を樹脂基板12に成膜されたポリカーボネートの上に成膜する。このとき、樹脂基板12を移動させながら成膜してもよく、また、所定時間成膜室28aに滞留させて成膜してもよい。このとき、例えばシャッタ36bは少開としておく。
【0045】
ついで、樹脂基板12を成膜室26aに移し、成膜室28aと同様の手順で成膜する。以下、成膜室26aおよび成膜室28aの間の移動を繰り返して成膜する(中期成膜工程)。この移動の周期、言い換えれば基板回転装置32の回転速度は、例えば、1000rpmである。このとき、例えば、当初、成膜室26aでの成膜を主とした条件から次第に成膜室28aでの成膜を主とした条件に変え、また、このとき、シャッタ36aを徐々に閉めていくとともに、シャッタ36bを徐々に開けていく。なお、このとき、基板回転装置32の回転速度を変えることによっても、成膜条件を調整することができる。
【0046】
最後に、樹脂基板12を成膜室28aに配置し、RFスパッタ法により酸化窒化ケイ素を樹脂基板12に100nmの厚みに成膜する(終期成膜工程)。
【0047】
これにより、樹脂基板12の上に無機材料を含む層14が積層された積層樹脂基板10が得られる。
【0048】
つぎに、積層樹脂基板16の製造方法について説明する。
【0049】
好ましくは、はじめに樹脂基板12を成膜室26aに配置し、真空蒸着法によりポリカーボネートを樹脂基板12に成膜する(樹脂材料成膜工程)。ついで、基板回転装置32を付勢し、樹脂基板12を成膜室28aに移し、RFスパッタ法により酸化窒化ケイ素を樹脂基板12に成膜されたポリカーボネートの上に成膜する(無機材料成膜工程)。そして、所定の時間間隔あるいはランダムな時間間隔で、以下、上記2つの工程を繰り返す。
【0050】
これにより、樹脂基板12の上に無機材料を含む層18が積層された積層樹脂基板16が得られる。
【0051】
つぎに、積層樹脂基板20を製造するには、積層樹脂基板10を製造した後、引き続き、成膜室28aでRFスパッタ法により無機材料を積層樹脂基板10に成膜すればよい。
【0052】
この積層樹脂基板20を用いた本実施の形態例に係る有機EL素子について、図5を参照して説明する。
【0053】
本実施の形態例に係る有機EL素子38は、図5に示すように、樹脂基板12上に無機材料を含む層14および無機材料の層22が積層された積層樹脂基板20を用い、この積層樹脂基板20の上に、金属電極40、発光層42および金属電極44を順次成膜して形成したものである。
【0054】
この場合、金属電極44として透明材料を用いることにより、図5中、上方に発光するトップエミッション型の有機EL素子とすることができる。また、樹脂基板12、無機材料を含む層14、無機材料の層22および金属電極40として透明材料を用いることにより、図5中、下方に発光するボトムエミッション型の有機EL素子とすることができる。
【0055】
本実施の形態例に係る有機EL素子38は、樹脂基板12に無機材料を含む層14および無機材料の層22が良好に密着している。また、水蒸気透過防止性の良好な無機材料を含む層14および無機材料の層22を樹脂基板12と発光層42との間に設けているため、樹脂基板12が吸湿した水蒸気が、吸湿により劣化し易い発光層42に浸入することを防止することができる。
【0056】
また、図5の有機EL素子において、発光層42上に無機材料を含む層14および樹脂基板12を順次積層した構造としてもよく、あるいはまた、発光層42上に無機材料の層22、無機材料を含む層14および樹脂基板12を順次積層した構造としてもよい。
【0057】
【発明の効果】
本発明に係る積層樹脂基板によれば、樹脂基板に無機材料を含む層が積層された積層樹脂基板であって、無機材料を含む層は、厚み方向において、樹脂基板に接する側の部分が実質的に樹脂材料のみで形成され、樹脂基板に接する側とは反対側の部分が実質的に無機材料のみで形成され、中間部分の組織構造が連続的に制御されてなり、または、無機材料を含む層は、厚み方向において、樹脂材料および無機材料がランダムに混合された組織構造を有するため、無機材料を含む層と樹脂基板との密着性の良好な積層樹脂基板を得ることができる。また、水蒸気透過防止性に優れる積層樹脂基板を得ることができる。
【0058】
また、本発明に係る積層樹脂基板によれば、無機材料を含む層にさらに無機材料の層が積層されてなるため、水蒸気透過防止性をさらに向上させることができる。
【0059】
また、本発明に係る有機EL素子によれば、上記の積層樹脂基板を発光層と接してまたは他の層を介して設けてなるため、有機EL素子の長寿命化を図ることができる。
【0060】
また、本発明に係る積層樹脂基板の製造方法によれば、成膜初期の所定時間真空蒸着法により樹脂材料を成膜する初期成膜工程と、真空蒸着法により樹脂材料を成膜する時間と、スパッタ法により無機材料を成膜する時間とを交互に切り換えるとともに、その時間配分を、当初の実質的に樹脂材料のみを成膜する時間から実質的に無機材料のみを成膜する時間に漸次変えていく中期成膜工程と、成膜終期の所定時間スパッタ法により無機材料を成膜する終期成膜工程と、を有し、または、真空蒸着法により樹脂材料を成膜する樹脂材料成膜工程と、スパッタ法により無機材料を成膜する無機材料成膜工程と、を交互に繰り返すため、上記の積層樹脂基板を好適に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態の第1の例に係る積層樹脂基板の構成を示す図である。
【図2】本実施の形態の第2の例に係る積層樹脂基板の構成を示す図である。
【図3】本実施の形態の第3の例に係る積層樹脂基板の構成を示す図である。
【図4】本実施の形態例に係る積層樹脂基板の製造方法に用いる製造装置の概略構成をを示す図である。
【図5】本実施の形態例に係る有機EL素子の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
10、16、20 積層樹脂基板
12 樹脂基板
14、18 無機材料を含む層
22 無機材料の層
24 製造装置
26 真空蒸着装置部
26a、28a 成膜室
28 スパッタ装置部
28で構成されている。
32 基板回転装置
36a、36b シャッタ
38 有機EL素子
40、44 金属電極
42 発光層
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層樹脂基板およびその製造方法ならびに有機EL素子に関し、より詳細には、樹脂基板への無機材料の積層構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート(以下、PCという。)等のある種の樹脂は、無機物との相性が悪い。このため、物理蒸着法等の乾式成膜法により樹脂からなる基板の上に直接無機物を成膜等すると、密着性を評価するためのテープテストを行うとき、あるいは、超音波洗浄を行うとき、容易に無機物の膜が基板から剥離してしまう。
【0003】
無機物の膜が剥離することを防止する方法として、イオンプレーティング法で成膜粒子の運動エネルギを高めて基板に打ち込んだり、あるいは、成膜するのに先立ちプラズマで樹脂基板の表面の不純物を除去してクリーニングすること等が行われている。
【0004】
また、樹脂と無機物との双方との密着性がよい有機物を用いた中間膜を樹脂の膜と無機物の膜との間に、塗布法やスピンコート法等を用いて形成することも行われている。
【0005】
ところで、フラットパネルディスプレイ(以下、FPDという。)の分野では、装置の軽量化や耐衝撃性向上を図るために、基板材料がガラスから樹脂に置き換わる傾向にある。特に、有機ELを利用したFPDでは、樹脂基板のみでなく、さらに樹脂シート基板あるいは樹脂フィルム基板への置き換えも検討されている。
【0006】
ところが、樹脂は本質的に保湿性、透湿性を持つため、水分を極度に嫌う有機ELでは発光層への水分の浸入の有無が、パネルの寿命を決定する。
【0007】
このため、樹脂基板や樹脂フィルムの上や、あるいは樹脂基板や樹脂フィルムの背面に封止缶や単層の封止膜を設ける等することで、水分の浸入を防止することが行われている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した樹脂の膜と無機物の膜との間の密着性を改善する各技術は、材料の組み合わせによっては必ずしも充分な密着性改善効果を与えるものではない。なお、中間膜を樹脂の膜と無機物の膜との間に塗布法等により形成する方法については、形成される中間膜がμmオーダーとなり、用途によっては厚みが大きすぎる不具合もある。
【0009】
また、上記したフラットパネルディスプレイにおいて封止缶や単層の封止膜を設ける技術は、前者の封止缶に関しては、装置の軽量化を実現するために膜による封止への移行が求められており、また、後者の単層の封止膜を設けたものについては、封止膜自身の防湿性能の不足や膜の基板への密着性が強固でないため、水分の浸入を完全には防止できない。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、樹脂基板に無機材料の層を密着性良く形成した積層樹脂基板およびその製造方法ならびにこの積層樹脂基板を用いた有機EL素子を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る積層樹脂基板は、樹脂基板に無機材料を含む層が積層された積層樹脂基板であって、該無機材料を含む層は、厚み方向において、該樹脂基板に接する側の部分が実質的に樹脂材料のみで形成され、該樹脂基板に接する側とは反対側の部分が実質的に無機材料のみで形成され、中間部分の組織構造が連続的に制御されてなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る積層樹脂基板は、該無機材料を含む層は、厚み方向において、樹脂材料および無機材料がランダムに混合された組織構造を有することを特徴とする。
【0013】
ここで、樹脂基板は、肉厚のもののみでなく、シート状やフィルム状のものも含む。以下の他の発明についても同様である。
【0014】
本発明の上記の構成により、無機材料が樹脂基板の材料である樹脂との密着性が良くないものであっても、無機材料を含む層と樹脂基板との密着性の良好な積層樹脂基板を得ることができる。また、このとき、一般的に、樹脂材料の層の水蒸気透過率が大きいのに対して無機材料の層の水蒸気透過率が小さいため、水蒸気透過防止性に優れる積層樹脂基板を得ることができる。無機材料として水蒸気透過率が特に小さいものを選択して用いれば、より好適である。
【0015】
この場合、前記無機材料を含む層にさらに無機材料の層が積層されてなると、水蒸気透過防止性をさらに向上させることができ、より好適である。
【0016】
また、本発明に係る有機EL(Electro Luminescence)素子は、上記の積層樹脂基板を発光層と接してまたは他の層を介して設けてなることを特徴とする。
【0017】
これにより、上記積層樹脂基板の効果を有する有機EL素子を得ることができ、有機EL素子の長寿命化を図ることができる。
【0018】
上記の積層樹脂基板を好適に得るために、本発明に係る積層樹脂基板の製造方法は、樹脂基板に成膜して無機材料を含む層を積層する積層樹脂基板の製造方法であって、成膜初期の所定時間真空蒸着法により樹脂材料を成膜する初期成膜工程と、真空蒸着法により樹脂材料を成膜する時間と、スパッタ法により無機材料を成膜する時間とを交互に切り換えるとともに、その時間配分を、当初の実質的に樹脂材料のみを成膜する時間から実質的に無機材料のみを成膜する時間に漸次変えていく中期成膜工程と、成膜終期の所定時間スパッタ法により無機材料を成膜する終期成膜工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る積層樹脂基板の製造方法は、真空蒸着法により樹脂材料を成膜する樹脂材料成膜工程と、スパッタ法により無機材料を成膜する無機材料成膜工程と、を交互に繰り返すことを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明に係る積層樹脂基板およびその製造方法ならびに有機EL素子の好適な実施の形態(以下、本実施の形態例という。)について、図を参照して、以下に説明する。
【0021】
まず、本実施の形態例に係る積層樹脂基板について、図1〜図3を参照して説明する。
【0022】
本実施の形態の第1の例に係る積層樹脂基板10は、図1に示すように、樹脂基板12の上に無機材料を含む層14が積層されている。図1および後述する図2、図3において、各層の組織構造は模式的に示しており、無数の黒点は無機材料を表示し、それ以外の白地の部分は樹脂材料を表示している。
【0023】
樹脂基板12は、例えばポリカーボネート(PC)樹脂を用いて、代表的には100〜2000μmの厚みに形成されている。なお、樹脂基板12の材料としては、ポリカーボネート以外にも、PET、PES、TAC等の樹脂を用いることができる。
【0024】
無機材料を含む層14は、例えば無機材料である酸化窒化ケイ素(SiOxNy)と、樹脂材料である例えば樹脂基板と同じポリカーボネート樹脂とを用いて、代表的には100〜500nmの厚みに形成されている。無機材料を含む層14は、厚み方向(図1中、上下方向)において、組成の分布、組織等が連続的に制御され、樹脂基板12に接する部分(図1中、矢印Aで示す。)が実質的にポリカーボネート樹脂のみからなり、一方、反対側の表層部分(図1中、矢印Bで示す。)が実質的に酸化窒化ケイ素のみからなり、所謂傾斜機能材料と類似した構造を有する。但し、所謂傾斜機能材料は、一般に、材料として金属やセラミックス等を組み合わせたものであり、また膜厚が少なくともμmオーダーと厚い点において、本発明と異なる。
【0025】
本実施の形態の第1の例に係る積層樹脂基板10は、無機材料を含む層14の樹脂基板に接する部分が樹脂基板12と同じ樹脂材料で形成されているため、無機材料を含む層14と樹脂基板12との密着性が良好である。
【0026】
また、積層樹脂基板10は、無機材料を含む層14の機能が傾斜した構造を有し、無機材料を含む層14の最表層の部分が無機材料のみで形成されているため、最表層側から(図1中、上方方向から)の水蒸気透過防止性に優れる。また、後述するように、無機材料を含む層14に無機材料の層を積層すると、無機材料を含む層14と無機材料の層との密着性が良好である。
【0027】
なお、本実施の形態の第1の例に係る積層樹脂基板10において、無機材料としては、酸化窒化ケイ素以外の各種の材料を用いることができ、例えば、二酸化ケイ素(SiO2)、Al2O3、AlN等を用いることができる。また、無機材料を含む層の樹脂材料としては、樹脂基板の樹脂材料と異なる種類の樹脂材料を用いてもよく、例えば、PE等を用いることができる。
【0028】
つぎに、本実施の形態の第2の例に係る積層樹脂基板16は、図2に示すように、樹脂基板12の上に無機材料を含む層18が積層されている。
【0029】
この場合、無機材料を含む層18は、無機材料と樹脂材料とがランダムに混合した構造、組成を有する。各材料の種類、各層の厚み等は本実施の形態の第1の例と同様にすることができる。
【0030】
本実施の形態の第2の例に係る積層樹脂基板16は、本実施の形態の第1の例積層樹脂基板10に近い効果を得ることができる。
【0031】
つぎに、本実施の形態の第3の例に係る積層樹脂基板20は、図3に示すように、本実施の形態の第1の例に係る積層樹脂基板10の上にさらに無機材料の層22が積層されている。
【0032】
無機材料の層22の材料の種類、厚み等は適宜設定することができる。
本実施の形態の第3の例に係る積層樹脂基板20は、無機材料を含む層14の上に無機材料の層22が積層されているため、両者の密着性が良好である。
【0033】
また、積層樹脂基板20は、無機材料の層22を有するため、より良好な水蒸気透過防止性を得ることができる。また、無機材料の層22は、通常積層される無機材料層と同じであるため、微細加工等の処理を行う際に、通常の無機材料層と同様に取り扱うことができる。
【0034】
ここで、上記本実施の形態の各例に係る積層樹脂基板の製造方法について説明する。
【0035】
まず、積層樹脂基板の製造に用いる装置について、装置の主要部分を模式的に示した図4を参照して説明する。
【0036】
製造装置24は、真空蒸着装置部26およびスパッタ装置部28で構成されている。
【0037】
真空蒸着装置部26は、例えば、成膜速度の点で好適な電子ビーム蒸着方式あるいは抵抗加熱方式を用いる。電子ビーム蒸着方式の真空蒸着装置部26を用いる場合、装置の詳細構造は図示しないが、成膜室(真空容器)26aの下部に坩堝が配置され、坩堝に成膜材料の粉粒体が堆積される。坩堝内の材料は電子ビームにより加熱され、これにより成膜材料が蒸発する。なお、成膜室26aの上部には後述するように樹脂基板が出入りするが、このとき、樹脂基板の出入りは適宜の密閉機構を介して行われる。
【0038】
スパッタ装置部28は、例えば、最も汎用的なRFスパッタ装置を用いる。RFスパッタ装置の詳細構造は図示しないが、成膜室(真空容器)28aの下部にカソード電極が配置され、カソード電極上にターゲットとして成膜材料が配置される。また、カソード電極の裏面に磁石が設けられ、ターゲット近傍に磁界を形成する。成膜室26aをアースとして、カソード電極に高周波電圧を印加してグロー放電を発生させ、放電中に生成したAr等の正イオンをターゲットに衝突させることにより、成膜材料が飛び出す。なお、成膜室28aは、成膜室26aと同様に適宜の密閉機構が設けられる。
【0039】
製造装置24の上部には、図示しない回転軸を挟んで両側に延出する2つの腕部30a、30bを有する基板回転装置32が設けられる。各腕部30a、30bの先端には基板を吸着して保持する基板保持部34a、34bが設けられ、基板保持部34a、34bの下側に図示しない基板が保持される。また、成膜室26a、28の基板が成膜される位置には、図示しない駆動手段により付勢されて基板の下側に進退可能に進入するシャッタ36a、36bが設けられ、これにより、成膜粒子の飛来を適度に遮蔽して成膜量が調整される。
【0040】
真空蒸着装置部26およびスパッタ装置部28を稼働してそれぞれ成膜材料を蒸発させ、一方、基板回転装置32を所定の回転速度で連続的にあるいは断続的回転させると、各基板は、真空蒸着装置部26およびスパッタ装置部28の各成膜室26a、28aに滞留している間、それぞれの成膜条件で成膜が行われる。また、このとき、シャッタ36a、36bを適宜用いることにより、成膜量が調整される。
【0041】
上記の製造装置24を用いた積層樹脂基板の製造方法を説明する。
【0042】
まず、積層樹脂基板10の製造方法について説明する。
【0043】
はじめに、樹脂基板12を成膜室26aに配置し、真空蒸着法によりポリカーボネートを樹脂基板12に500nmの厚みに成膜する(初期成膜工程)。このとき、例えばシャッタ36aは全開としておく。
【0044】
ついで、基板回転装置32を付勢し、樹脂基板12を成膜室28aに移し、RFスパッタ法により酸化窒化ケイ素を樹脂基板12に成膜されたポリカーボネートの上に成膜する。このとき、樹脂基板12を移動させながら成膜してもよく、また、所定時間成膜室28aに滞留させて成膜してもよい。このとき、例えばシャッタ36bは少開としておく。
【0045】
ついで、樹脂基板12を成膜室26aに移し、成膜室28aと同様の手順で成膜する。以下、成膜室26aおよび成膜室28aの間の移動を繰り返して成膜する(中期成膜工程)。この移動の周期、言い換えれば基板回転装置32の回転速度は、例えば、1000rpmである。このとき、例えば、当初、成膜室26aでの成膜を主とした条件から次第に成膜室28aでの成膜を主とした条件に変え、また、このとき、シャッタ36aを徐々に閉めていくとともに、シャッタ36bを徐々に開けていく。なお、このとき、基板回転装置32の回転速度を変えることによっても、成膜条件を調整することができる。
【0046】
最後に、樹脂基板12を成膜室28aに配置し、RFスパッタ法により酸化窒化ケイ素を樹脂基板12に100nmの厚みに成膜する(終期成膜工程)。
【0047】
これにより、樹脂基板12の上に無機材料を含む層14が積層された積層樹脂基板10が得られる。
【0048】
つぎに、積層樹脂基板16の製造方法について説明する。
【0049】
好ましくは、はじめに樹脂基板12を成膜室26aに配置し、真空蒸着法によりポリカーボネートを樹脂基板12に成膜する(樹脂材料成膜工程)。ついで、基板回転装置32を付勢し、樹脂基板12を成膜室28aに移し、RFスパッタ法により酸化窒化ケイ素を樹脂基板12に成膜されたポリカーボネートの上に成膜する(無機材料成膜工程)。そして、所定の時間間隔あるいはランダムな時間間隔で、以下、上記2つの工程を繰り返す。
【0050】
これにより、樹脂基板12の上に無機材料を含む層18が積層された積層樹脂基板16が得られる。
【0051】
つぎに、積層樹脂基板20を製造するには、積層樹脂基板10を製造した後、引き続き、成膜室28aでRFスパッタ法により無機材料を積層樹脂基板10に成膜すればよい。
【0052】
この積層樹脂基板20を用いた本実施の形態例に係る有機EL素子について、図5を参照して説明する。
【0053】
本実施の形態例に係る有機EL素子38は、図5に示すように、樹脂基板12上に無機材料を含む層14および無機材料の層22が積層された積層樹脂基板20を用い、この積層樹脂基板20の上に、金属電極40、発光層42および金属電極44を順次成膜して形成したものである。
【0054】
この場合、金属電極44として透明材料を用いることにより、図5中、上方に発光するトップエミッション型の有機EL素子とすることができる。また、樹脂基板12、無機材料を含む層14、無機材料の層22および金属電極40として透明材料を用いることにより、図5中、下方に発光するボトムエミッション型の有機EL素子とすることができる。
【0055】
本実施の形態例に係る有機EL素子38は、樹脂基板12に無機材料を含む層14および無機材料の層22が良好に密着している。また、水蒸気透過防止性の良好な無機材料を含む層14および無機材料の層22を樹脂基板12と発光層42との間に設けているため、樹脂基板12が吸湿した水蒸気が、吸湿により劣化し易い発光層42に浸入することを防止することができる。
【0056】
また、図5の有機EL素子において、発光層42上に無機材料を含む層14および樹脂基板12を順次積層した構造としてもよく、あるいはまた、発光層42上に無機材料の層22、無機材料を含む層14および樹脂基板12を順次積層した構造としてもよい。
【0057】
【発明の効果】
本発明に係る積層樹脂基板によれば、樹脂基板に無機材料を含む層が積層された積層樹脂基板であって、無機材料を含む層は、厚み方向において、樹脂基板に接する側の部分が実質的に樹脂材料のみで形成され、樹脂基板に接する側とは反対側の部分が実質的に無機材料のみで形成され、中間部分の組織構造が連続的に制御されてなり、または、無機材料を含む層は、厚み方向において、樹脂材料および無機材料がランダムに混合された組織構造を有するため、無機材料を含む層と樹脂基板との密着性の良好な積層樹脂基板を得ることができる。また、水蒸気透過防止性に優れる積層樹脂基板を得ることができる。
【0058】
また、本発明に係る積層樹脂基板によれば、無機材料を含む層にさらに無機材料の層が積層されてなるため、水蒸気透過防止性をさらに向上させることができる。
【0059】
また、本発明に係る有機EL素子によれば、上記の積層樹脂基板を発光層と接してまたは他の層を介して設けてなるため、有機EL素子の長寿命化を図ることができる。
【0060】
また、本発明に係る積層樹脂基板の製造方法によれば、成膜初期の所定時間真空蒸着法により樹脂材料を成膜する初期成膜工程と、真空蒸着法により樹脂材料を成膜する時間と、スパッタ法により無機材料を成膜する時間とを交互に切り換えるとともに、その時間配分を、当初の実質的に樹脂材料のみを成膜する時間から実質的に無機材料のみを成膜する時間に漸次変えていく中期成膜工程と、成膜終期の所定時間スパッタ法により無機材料を成膜する終期成膜工程と、を有し、または、真空蒸着法により樹脂材料を成膜する樹脂材料成膜工程と、スパッタ法により無機材料を成膜する無機材料成膜工程と、を交互に繰り返すため、上記の積層樹脂基板を好適に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態の第1の例に係る積層樹脂基板の構成を示す図である。
【図2】本実施の形態の第2の例に係る積層樹脂基板の構成を示す図である。
【図3】本実施の形態の第3の例に係る積層樹脂基板の構成を示す図である。
【図4】本実施の形態例に係る積層樹脂基板の製造方法に用いる製造装置の概略構成をを示す図である。
【図5】本実施の形態例に係る有機EL素子の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
10、16、20 積層樹脂基板
12 樹脂基板
14、18 無機材料を含む層
22 無機材料の層
24 製造装置
26 真空蒸着装置部
26a、28a 成膜室
28 スパッタ装置部
28で構成されている。
32 基板回転装置
36a、36b シャッタ
38 有機EL素子
40、44 金属電極
42 発光層
Claims (6)
- 樹脂基板に無機材料を含む層が積層された積層樹脂基板であって、
該無機材料を含む層は、厚み方向において、該樹脂基板に接する側の部分が実質的に樹脂材料のみで形成され、該樹脂基板に接する側とは反対側の部分が実質的に無機材料のみで形成され、中間部分の組織構造が連続的に制御されてなることを特徴とする積層樹脂基板。 - 樹脂基板に無機材料を含む層が積層された積層樹脂基板であって、
該無機材料を含む層は、厚み方向において、樹脂材料および無機材料がランダムに混合された組織構造を有することを特徴とする積層樹脂基板。 - 前記無機材料を含む層にさらに無機材料の層が積層されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の積層樹脂基板。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層樹脂基板を発光層と接してまたは他の層を介して設けてなることを特徴とする有機EL素子。
- 樹脂基板に成膜して無機材料を含む層を積層する積層樹脂基板の製造方法であって、
成膜初期の所定時間真空蒸着法により樹脂材料を成膜する初期成膜工程と、
真空蒸着法により樹脂材料を成膜する時間と、スパッタ法により無機材料を成膜する時間とを交互に切り換えるとともに、その時間配分を、当初の実質的に樹脂材料のみを成膜する時間から実質的に無機材料のみを成膜する時間に漸次変えていく中期成膜工程と、
成膜終期の所定時間スパッタ法により無機材料を成膜する終期成膜工程と、
を有することを特徴とする積層樹脂基板の製造方法。 - 樹脂基板に成膜して無機材料を含む層を積層する積層樹脂基板の製造方法であって、
真空蒸着法により樹脂材料を成膜する樹脂材料成膜工程と、
スパッタ法により無機材料を成膜する無機材料成膜工程と、
を交互に繰り返すことを特徴とする積層樹脂基板の製造方法。
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