JP2005340225A - 有機el素子 - Google Patents

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達彦 越田
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Abstract


【課題】特性がよく、寿命の長いEL素子を得る技術を提供する。
【解決手段】 カソード電極膜材料から成るターゲット9が内部に配置されたコイル7を真空槽内に設け、スパッタリング法によって基板3上の有機薄膜13表面にカソード電極膜14を形成する際、コイル7上端部と基板との距離dを200mm以上にし、コイル7に印加する交流電圧の周波数を13.56MHz〜100MHzの範囲にする。電子やイオンが基板3へ入射しなくなるので、有機薄膜13のダメージを低減できる。カソード電極膜14の形成初期には、真空槽内の圧力を1.33×10-2Pa以下の圧力にしてカソード電極膜14と有機薄膜13の界面のダメージを少なくし、カソード電極膜14が20〜50Å形成されたところでスパッタリングガスの導入量を増加させると、成膜速度が向上する。
【選択図】 図2

Description

本発明は有機EL素子の技術分野にかかり、特に、有機薄膜表面へ導電性薄膜を形成する技術に関する。
近年、視野角の問題がなく、高輝度の有機EL素子を用いた表示装置が注目されており、カラー化と長寿命化による実用品の製作に向けて精力的な研究が行われている。
有機EL素子は、ガラス基体上に形成された透明導電膜をアノード電極膜とし、その表面に、積層型の有機薄膜を形成し、その有機薄膜表面に、カソード電極膜となる導電性薄膜を形成し、透明導電膜と導電性薄膜との間に電圧を印加して、有機薄膜を発光させている。
一般に、導電性薄膜の形成には、図5(a)に示すような平行平板型のスパッタリング装置が用いられており、ターゲットホルダー213上に、導電性薄膜材料から成るターゲット209を配置し、成膜対象である基板206をターゲット209と対向配置させ、真空槽205内にスパッタリングガスを導入し、ターゲットホルダー213と基板206の間にDC電圧やRF電圧を印加して、プラズマ201を発生させ、ターゲット209のスパッタリングを行うように構成されている。
このような平行平板型のスパッタリング装置では、ターゲットホルダー213の裏面マグネトロン磁石が配置されており、ターゲット209表面のプラズマ201の密度が高まるようにされているが、プラズマ201を安定に維持するために、真空槽205内を.65×10-1Pa(5.0×10-3Torr)以上の圧力に維持するのが普通であり、基板206とターゲット209とを、平均自由行程以下の10cm程度の距離まで近接させる必要がある。
そのため、基板206表面がプラズマ201に曝され、基板206へ入射する電子やイオンの量が多いため、有機薄膜表面にカソード電極膜(導電性薄膜)を形成しようとすると、有機薄膜表面がダメージを受けてしまい、EL素子の特性を劣化させ、寿命を短かくする原因となっていた。カソード電極膜の形成に、EBガンを用いた蒸着装置の適用が検討されたが、エレクトロンビームが有機薄膜にダメージを与えてしまい、スパッタリング装置と同様の問題があった。
そこで従来技術でも対策が採られており、現在では、EL素子の製造には、専用に開発された蒸着装置が用いられている。有機薄膜上に形成するカソード電極膜としては、MgAg膜、MgZn膜、LiAl膜等が知られているが、MgAg膜を形成する蒸着装置を図5(b)に示して説明する。
その蒸着装置は、真空槽105と、Mg用蒸発源110と、Ag用蒸発源120とを有しており、真空槽105内は図示しない真空ポンプによって真空排気できるように構成されている。
各蒸発源110、120は真空槽105の底壁上に設けられており、真空槽105の天井には、図示しない基板ホルダーが配置されており、その基板ホルダーに成膜対象の基板106を保持させると、基板106表面はMg用蒸発源110とAg用蒸発源120に向くように構成されている。
Mg用蒸発源110は、Mg材料111が納められた密閉容器113と、該密閉容器113内に配置されたヒーター114とを有しており、他方、Ag蒸発源120はフィラメント124と、そのフィラメント124内に納められたAg材料121とを有している。
Mg材料111は昇華性であるため、ヒーター114に通電して発熱させると液体にならずに蒸発し、密閉容器113内がMg蒸気で充満する。密閉容器113の上部には、直径1mmの孔115が設けられており、密閉容器113内に充満したMg蒸気は、その孔115から真空槽105内に放出され、基板106表面に到達するとそこに付着する。
このとき同時にAg蒸発源120のフィラメント124にも通電し、Ag材料121を溶融・蒸発させ、Ag蒸気を生成させると、そのAg蒸気はMg蒸気と共に基板106表面に到達し、そこに付着するので、基板106表面にはMgAg膜から成るカソード電極膜が形成される。
このように、Mg蒸気とAg蒸気とを別々に発生させるため、Mg蒸発源110とAg蒸発源120との間には遮蔽板136が設けられ、蒸発源が互いに汚染し合わないように構成されている。
しかしながら近年では、大口径のEL表示装置が求められおり、カソード電極膜の形成対象である基板106も大口径化している。上述のような、孔115から放出された蒸気を用いてカソード電極膜を形成する場合には、基板106面内の膜厚分布が悪い。
また、カソード電極膜は、一定範囲の組成で形成する必要がある。例えばMgAg膜をカソード電極膜にする場合には、MgAg比は10:1(=Mg:Ag)にする必要があるが、大口径の基板表面に、一定の組成比のカソード電極膜を形成しようとすると、上述したMg蒸発源110とAg蒸発源120では基板面内の組成比のバラツキが大きく、実用にならない。
特開平7−173623号公報
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたもので、その目的は、有機薄膜にダメージを与えることなく、面内膜厚分布や面内組成比分布がよい導電性薄膜を形成することにある。
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、有機薄膜と、該有機薄膜上に形成されたカソード電極膜を有する有機EL素子であって、前記カソード電極膜は前記有機薄膜表面に形成された第1の導電性薄膜と、該第1の導電性薄膜上に形成された第2の導電性薄膜とを有し、前記第1の導電性薄膜は前記有機薄膜との界面にダメージを与えないように形成され、前記第2の導電性薄膜は前記第1の導電性薄膜よりも早い成膜速度で形成されたことを特徴とする。
請求項2記載の発明は、有機薄膜と、該有機薄膜上に形成されたカソード電極膜を有する有機EL素子であって、前記カソード電極膜は前記有機薄膜表面に形成された第1の導電性薄膜と、該第1の導電性薄膜上に形成された第2の導電性薄膜とを有し、前記第2の導電性薄膜は前記第1の導電性薄膜よりも早い成膜速度で形成されたことを特徴とする。
請求項3記載の発明は、有機薄膜と、該有機薄膜上に形成されたカソード電極膜を有する有機EL素子であって、前記カソード電極膜は前記有機薄膜表面に、スパッタリング法によって形成された第1の導電性薄膜と、該第1の導電性薄膜上に、スパッタリング法によって形成された第2の導電性薄膜とを有し、前記第2の導電性薄膜は前記第1の導電性薄膜よりも高い圧力で成膜されたことを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の有機EL素子であって、前記第1、第2の導電性薄膜はMgAg膜である。
本発明では、表面に有機薄膜が形成された基板とターゲットとを真空槽内に配置し、ターゲット表面をスパッタリングして有機薄膜表面に導電性薄膜を形成する有機薄膜表面への導電性薄膜形成方法であって、真空槽内に設けられたコイル内にターゲットを納め、真空槽内にスパッタリングガスを導入し、コイルに交流電圧を印加するとターゲット表面をスパッタリングできるように構成することができる。この場合、コイルの上端部が前記ターゲット表面よりも基板側に位置するようにし、基板表面とコイルの上端部との距離を200mm以上にし、コイルに印加する交流電圧の周波数を13.56MHz以上100MHz以下にすることができる。
このような構成では、ターゲット表面のスパッタリングにより、ターゲットを構成する導電性薄膜材料が広い面積から放出されるので、大口径の基板に対して均一性よく薄膜を形成することができる。
基板表面とコイル上端部との距離を200mm以上と大きくし、コイルへ印加する交流電圧の周波数を13.56MHz以上100MHz以下の高周波にすると、電子やイオンがターゲット表面近傍に止どまり、基板側へ入射することを防止できる。従って、基板表面に形成されている有機薄膜はダメージを受けることがなく、特性がよく、長寿命のEL素子を得ることができる。
ターゲット裏面に磁石を配置し、ターゲット表面近傍のプラズマ密度を高めるようにすると導電性薄膜の形成速度が速くなり、また、有機薄膜表面のダメージも一層少なくすることができる。
また、有機薄膜表面への導電性薄膜の形成初期において、真空槽内の圧力を1.33×10 -2 Pa以下の値にすると、有機薄膜と導電性薄膜との界面が形成されているときの基板側へ入射する電子やイオンが少なくなり、一層特性が良く長寿命のEL素子を得ることができる。
但し、真空槽内の圧力を1.33×10 -2 Paに維持したままでは、導電性薄膜の成長速度が遅く、生産性が悪い。その場合には、導電性薄膜の形成が開始された後、導電性薄膜が界面を保護できる程度の膜厚になったときに低圧力の形成初期状態を終了させ、真空槽内に導入するスパッタリングガス流量を増加させて真空槽内の圧力を高くし、ターゲット表面のプラズマ密度を高め、スパッタリング量を増やすようにするとよい。
形成初期の状態を終了させる目安としてのカソード電極膜の膜厚は、20Å〜50Å程度である。スパッタリングガス流量を増加させる場合の目安としては、真空槽内の圧力を6.65×10 -1 Pa以上の通常のスパッタリング圧力にするとよい。
ところで、EL素子の特性の劣化と、寿命を短くする原因の一つとして、有機薄膜中への導電性薄膜構成物質の拡散があるが、本発明の発明者等は、そのような拡散は、有機薄膜表面に導電性薄膜を形成する最中に、有機薄膜や導電性薄膜の温度が高くなると発生しやすいことを見出した。導電性薄膜を形成している間は、基板の温度が80℃以下になるようにすると拡散を防止することができる。
EL素子のカソード電極膜の材料として、MgAg膜が注目されているが、有機薄膜表面にMgAg膜を導電性薄膜として形成する場合には、ターゲットにマグネシウムと銀とを含ませ、有機薄膜上にMgAg膜を形成することができる。
なお、有機薄膜が形成された後、その基板を大気に曝さないで真空槽内に搬入して導電性薄膜を形成するようにすれば、有機薄膜と導電性薄膜の界面の状態が良好になるので、EL素子の特性や寿命が向上する。
いずれにしろ、有機薄膜と、その有機薄膜上に形成されたカソード電極膜を有する有機EL素子については、カソード電極膜を有機薄膜表面に形成された第1の導電性薄膜と、その第1の導電性薄膜上に形成された第2の導電性薄膜とで構成させた場合、第1の導電性薄膜を、有機薄膜との界面にダメージを与えないように形成し、第2の導電性薄膜を、第1の導電性薄膜よりも早い成膜速度で形成すると、特性の劣化が無く、寿命の長い有機EL素子を得ることができる。
大口径基板上に効率よく導電性薄膜を形成することができる。
有機薄膜表面に電子やイオンが入射しないので、有機薄膜にダメージを与えない。
カソード電極膜の形成初期の圧力を低くすると、有機薄膜との界面にダメージが加えられなくなる。
形成初期の終了後、スパッタリングガスの導入量を増やすと導電性薄膜の成膜速度を速くすることができる。
カソード電極膜を形成しているときの基板温度を低くすると、有機薄膜中へのカソード電極膜の構成物質の拡散を防止できる。
本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1には、EL素子製造装置が示されており、前処理装置31と、有機薄膜形成装置32と、スパッタリング装置33とから構成されている。各装置31〜33は真空槽80、90、30をそれぞれ有しており、図示しない真空ポンプによって個別に真空排気できるように構成されている。各真空槽80、90、30の天井には、基板ホルダー85、95、15がそれぞれ設けられており、板状の基板を保持できるように構成されている。
このEL素子製造装置を用い、図3(a)に示すような、透明なITO膜(インジウム・錫酸化物)から成るアノード電極膜11が、予めガラス基体10上に形成されている基板に、有機薄膜とカソード電極膜(導電性薄膜)とを形成する場合について説明する。
先ず、その基板を前処理装置31の真空槽80内に搬入し、基板ホルダー85に保持させる。このとき、基板のガラス基体10は基板ホルダー85に密着させ、アノード電極膜11は真空槽80の底壁に向ける。
この真空槽80の底壁の基板ホルダー85と対向する位置にはラジカルガン81が設けられており、そのラジカルガン81と基板ホルダー15との間には、シャッター86が設けられており、真空槽80内を真空排気し、シャッター86を閉じた状態でラジカルガン81を起動させ、そのラジカルガン81から真空槽80内にラジカルイオンが放射されるようにする。その状態でシャッター86を開け、アノード電極膜11表面にラジカルイオンを照射し、アノード電極膜11のクリーニングを行う。
クリーニングが終了した基板を、真空槽80から有機薄膜形成装置32の真空槽90内に搬送し、真空槽90内の基板ホルダー95に保持させる。
真空槽90の底壁には、第1層目の有機薄膜材料が納められた第1の蒸発源91と、第2層目の有機薄膜材料が納められた第2の蒸発源92とが設けられており、第1、第2の蒸発源91、92と、基板ホルダー95との間にはシャッター96が設けられている。
そのシャッター96と第1、第2の蒸発源91、92内に設けられたシャッターとを閉じた状態にし、第1、第2の蒸発源91、92内のヒーターに通電して第1層目と第2層目の有機薄膜材料の蒸発を開始させる。
基板ホルダー95上では、基板は、クリーニングの終了したアノード電極膜11が第1、第2の蒸発源91、92に向けられている。蒸発源91内のシャッターを最初に開け、有機薄膜材料の蒸発状態が安定したところで、シャッター96を開け、第1層目の有機薄膜材料の蒸気をアノード電極膜11表面に到達させ、第1層目の有機薄膜の成長を開始する。
第1の蒸発源91内には、第1層目の有機薄膜材料として、下記化学式、
Figure 2005340225
で示されるジアミンが配置されており、その蒸気により、アノード電極膜11上に、ジアミン高分子膜が第1層目の有機薄膜12として形成される(図3(b))。
第1層目の有機薄膜12が所定膜厚となったところで、第1の蒸発源91内のシャッターを閉め、第2の蒸発源92内のシャッターを開け、第1層目の有機薄膜12表面上に第2層目の有機薄膜の成長を開始させる。
第2の蒸発源92内には、第2層目の有機薄膜材料として、下記化学式、
Figure 2005340225
で示される昇華性のAlq3[Tris(8-hydroxyquinoline) aluminium, sublimed]が配置されており、その蒸気により、第1層目の有機薄膜12表面に、Alq3が高分子化した膜が、第2の有機薄膜13として形成される(同図(c))。
第2層目の有機薄膜13が所定膜厚に形成されたところで、真空槽30内のシャッター16と第2の蒸発源92内のシャッターとを閉じ、有機薄膜の形成作業を終了する。
次いで、第1、第2層目の有機薄膜12、13が形成され、カソード電極膜の成膜対象となる基板3を、真空槽90からスパッタリング装置33の真空槽30内に搬送し、基板ホルダー15に保持させる。
この真空槽30の底壁の基板ホルダー15と対向する位置にはヘリカルカソード2が設けられており、ヘリカルカソード2と基板ホルダー15との間にはシャッター16が設けられ、他方、真空槽30の外部には、バイアス電源25と高周波電源26とが配置されている。
ヘリカルカソード2は、図2に示すように、コイル7と、ターゲットホルダー23と、ターゲット9と、磁石8とを有しており、ターゲットホルダー23はバイアス電源25の負電位側の電極に接続され、基板ホルダー15よりも低位電位にできるように構成されている。他方、コイル7の両端は高周波電源26の正負2つの電極にそれぞれ接続されており、コイル7に交流電流を流せるように構成されている。
ターゲット9には、マグネシウム(Mg)と銀(Ag)とから成る導電性薄膜材料が平板状に成形されたものが用いられており、その裏面はターゲットホルダー23に固定され、ターゲットホルダー23と共にコイル7内に配置されている。
コイル7を構成する導線は、ターゲット9とターゲットホルダー23の周囲に非接触の状態で巻き回されており、ターゲット9の表面とコイル7の中心軸線とは略直交するように配置されている。従って、コイル7の開口部において、ターゲット9は基板ホルダー15に対向しており、また、ターゲット9表面と基板ホルダー15に保持された基板3とは、略平行になるようにされている。
コイル7の上端部は、ターゲット9表面よりも基板3側に位置するようにされており、ここでは、コイル7の上端部と基板3表面との距離dは、200mmにされている。
真空槽30内を高真空状態まで真空排気した後、シャッター16を閉じた状態でアルゴンガスから成るスパッタリングガスの真空槽30内への導入を開始する。
真空槽30内の圧力が6.65×10-3Pa(5.0×10-5Torr)で安定した後、バイアス電源25を起動してターゲット9を負電位に置くと共に、高周波電源26を起動してコイル7に13.56MHzの高周波電圧を印加し、ターゲット9表面にプラズマを発生させ、そのプラズマ中のスパッタリングガスイオン(アルゴンイオン)Ar+をターゲット9表面に入射させ、ターゲット9のスパッタリングを開始する。
基板3は、第2の有機薄膜13がヘリカルコイル2側に向けられており、プラズマが安定したところでシャッター16を開け、第2の有機薄膜13表面へのマグネシウムと銀から成るカソード電極膜(導電性薄膜)の成長を開始する。
コイル7によって形成される電界Eは、コイル7の上端部近傍では、ターゲット9と基板3とを結ぶ方向(コイル7の中心軸線方向)に平行であり、その向きは、半周期毎に逆になる。従って、電子やイオンに加えられる力も半周期毎に逆転するが、コイル7に印加される電圧は高周波であり、逆転が非常に速く行われる。
その場合、コイル7上端近傍での電子e-やスパッタリングガスイオンは、コイル7の中心軸線方向を往復運動し、基板3側へは入射できない。このように、コイル7に高周波電圧を印加した場合は、第2の有機薄膜13に電子e-やスパッタリングガスイオン等が入射しずらく、ダメージが少なくなる。
また、ターゲットホルダー23の裏面には磁石8が配置されており、その磁石8によってターゲット9表面には磁界が形成されている。その磁界により電子がターゲット表面近傍に閉じ込められ、ターゲット9表面近傍のプラズマ密度が高く、遠くが低くなるようにされている。従って、発生したプラズマは、基板3までは広がらないので、第2の有機薄膜13がプラズマに曝され、ダメージを受けるようなことはない。
このヘリカルカソード2を用いた場合のカソード電極膜14の堆積速度は、予め、真空槽30内のスパッタリングガス圧力と対応づけて求められており、カソード電極膜が50Å程度の厚みに形成されたところで初期状態が終了したものとし、導入するスパッタリングガス流量を増やし、ターゲット9表面のプラズマ密度を高めて成膜速度を早くする。一例としては、真空槽30内を、通常のスパッタリング圧力である6.55×10-1Pa(5.0×10-3Torr)にする。
成膜速度が速くなると、基板3の温度が上昇してしまうが、基板ホルダー15表面にはインジウム箔19が設けられており、基板3のガラス基体10と基板ホルダー15との密着性が高まるように構成されている。従って、基板3に生じた熱は、ガラス基体10から基板ホルダー19側に効率よく伝達される。
6.55×10-3Paのように低圧力でスパッタリングを行い、有機薄膜の界面部分にダメージを与えないように形成した第1の薄膜と、6.55×10-1Paのようにスパッタリング圧力を上げ、速いスパッタリング速度で形成した第2の薄膜とは膜質が異なる。そのような、第1の薄膜と第2の薄膜の膜質の違いは、IR分析器等の分析器で検出することができる。
基板ホルダー15内には冷却水が循環され、温度上昇しないように構成されているので、伝達された熱は速やかに排出され、カソード電極膜14の成膜初期ばかりでなく、成膜速度を上げたときでも基板3の温度は80℃以上にならないようにされている。
このように、基板3を冷却しながらカソード電極膜14の形成を行い、所定膜厚になったところで(図3(d))、シャッター16を閉じると共に、バイアス電源25と高周波電源26を停止させ、表面にカソード電極膜14が形成された基板を真空槽30外に搬出する。
その基板は、ガラス基体10上にアノード電極膜11、第1、第2の有機薄膜12、13、カソード電極膜14がその順序で形成されており、図4に示すように、カソード電極膜14を負電位、アノード電極膜11を正電位にすると、第1、第2の有機薄膜界面が発光し、ガラス基体10を透過した放射光18が観察される。
以上は、コイル上端部と基板3表面の距離dを200mmにした場合を説明したが、基板3表面の有機薄膜のダメージを少なくするためには、200mmよりも大きくすればよい。但し、距離dを大きくするとカソード電極膜の成長速度が遅くなるので、量産工程では300mm程度が限界と考えられる。
有機薄膜表面へのカソード電極膜(導電性薄膜)の形成初期では、スパッタリングガスの導入量を少なし、真空槽30内の圧力を低くした方がよい。上述の例では、カソード電極膜の形成初期の真空槽内の圧力を6.65×10-3Pa(5.0×10-5Torr)にしたが、有機薄膜とカソード電極膜の界面にダメージを与えずにプラズマを安定に維持するためには、1.33×10-2Pa(1.0×10-4Torr)以下の圧力であればよい。
上述のような低圧力でカソード電極膜を20Å〜50Å程度の厚みに形成すると、カソード電極膜自身で界面を保護できるようになる。従って、カソード電極膜がその膜厚まで形成された後は、スパッタリングガスの導入量を増加させ、形成初期の低圧力状態から通常のスパッタリング圧力の状態に移行させ、カソード電極膜の成長速度を速めるとよい。成膜速度を早める場合は、真空槽内を6.55×10-1Pa(5.0×10-3Torr)の圧力にするのが普通であるが、本発明はその圧力に限定されるものではない。
また、上述の例はコイル7へ印加する交流電圧の周波数が13.56MHzの場合であったが、13.56MHz以上100MHz以下の範囲の周波数であれば、基板側に電子やイオンが入射せず、有機薄膜にダメージを与えることなくその表面にカソード電極膜を形成することができる。
なお、以上はMgAg膜をカソード膜とする場合について説明したが、本発明はそれに限定されるものではない。有機薄膜表面に導電性保護膜を設け、その表面にカソード膜を形成する場合には、導電性保護膜の形成に本発明を用いることが可能である。また、基体もガラスに限定されるものではなく、フィルム状のものも含まれる。
以上は、本発明を有機EL素子に用いる場合について説明したがそれに限定されるものではない。従来、半導体を中心としたエレクトロニクスは無機物を対象としていたのに対し、ここ数年では、有機化合物を用いた機能性有機薄膜を用いたエレクトロニクス技術が着目されている。有機化合物が注目されている理由としては、無機物より多様な反応系・特性が利用できること、無機物より低エネルギーで表面処理ができること等を挙げることができる。
他方、機能性薄膜を用いる素子には、EL素子・圧電センサ素子・焦電センサ素子等があり、それぞれ無機系の薄膜から有機薄膜への転換が図られているが、本発明はそれら素子の有機薄膜表面に導電性薄膜を形成する場合に広く用いることができる。
以上説明したように、本発明を用いれば、特性が良く、寿命の長い有機EL素子を得ることができる。
本発明に用いることができるEL素子製造装置の一例を示す図 本発明に用いることができるヘリカルカソードを説明するための図 (a)〜(d):本発明の工程を説明するための図 本発明により製造されたEL素子を発光させた状態を説明するための図 (a):一般的な平行平板型スパッタリング装置を示す図 (b):従来技術のカソード電極膜形成方法を説明するための図
符号の説明
3……基板 7……コイル 8……磁石 9……ターゲット 30……真空槽 d……コイル上端部と基板表面との距離

Claims (11)

  1. 表面に有機薄膜が形成された基板とターゲットとを真空槽内に配置し、
    前記ターゲット表面をスパッタリングして前記有機薄膜表面に導電性薄膜を形成する有機薄膜表面への導電性薄膜形成方法であって、
    前記真空槽内に設けられたコイル内に前記ターゲットを納め、
    前記真空槽内にスパッタリングガスを導入して前記コイルに交流電圧を印加すると前記ターゲット表面をスパッタリングできるように構成する場合に、
    前記コイルの上端部が前記ターゲット表面よりも前記基板側に位置するようにし、
    前記基板表面と前記コイルの上端部との距離を200mm以上にし、
    前記コイルに印加する交流電圧の周波数を13.56MHz以上100MHz以下にすることを特徴とする有機薄膜表面への導電性薄膜形成方法。
  2. 前記ターゲット裏面に磁石を配置し、前記ターゲット表面近傍のプラズマ密度を高めるようにすることを特徴とする請求項1記載の有機薄膜表面への導電性薄膜形成方法。
  3. 前記有機薄膜表面への前記導電性薄膜の形成初期では、前記真空槽内の圧力を1.33×10-2Pa以下にすることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の有機薄膜表面への導電性薄膜形成方法。
  4. 前記導電性薄膜の形成初期の状態が終了した後、前記真空槽内に導入するスパッタリングガス流量を増加させることを特徴とする請求項3記載の有機薄膜表面への導電性薄膜形成方法。
  5. 前記導電性薄膜を形成している間、前記基板の温度を80℃以下にすることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の有機薄膜表面への導電性薄膜形成方法。
  6. 前記ターゲットがマグネシウムと銀とを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の有機薄膜表面への導電性薄膜形成方法。
  7. 前記有機薄膜が形成された後、その基板は大気に曝されないで前記真空槽内に搬入することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の有機薄膜表面への導電性薄膜形成方法。
  8. 有機薄膜と、該有機薄膜上に形成されたカソード電極膜を有する有機EL素子であって、
    前記カソード電極膜は前記有機薄膜表面に形成された第1の導電性薄膜と、該第1の導電性薄膜上に形成された第2の導電性薄膜とを有し、
    前記第1の導電性薄膜は前記有機薄膜との界面にダメージを与えないように形成され、
    前記第2の導電性薄膜は前記第1の導電性薄膜よりも早い成膜速度で形成されたことを特徴とする有機EL素子。
  9. 有機薄膜と、該有機薄膜上に形成されたカソード電極膜を有する有機EL素子であって、
    前記カソード電極膜は前記有機薄膜表面に形成された第1の導電性薄膜と、該第1の導電性薄膜上に形成された第2の導電性薄膜とを有し、
    前記第2の導電性薄膜は前記第1の導電性薄膜よりも早い成膜速度で形成されたことを特徴とする有機EL素子。
  10. 有機薄膜と、該有機薄膜上に形成されたカソード電極膜を有する有機EL素子であって、
    前記カソード電極膜は前記有機薄膜表面に、スパッタリング法によって形成された第1の導電性薄膜と、
    該第1の導電性薄膜上に、スパッタリング法によって形成された第2の導電性薄膜とを有し、
    前記第2の導電性薄膜は前記第1の導電性薄膜よりも高い圧力で成膜されたことを特徴とする有機EL素子。
  11. 前記第1、第2の導電性薄膜はMgAg膜である請求項8乃至請求項10のいずれか1項記載の有機EL素子。
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