JP2004098443A - 光軸位置補正機能を有する金型装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金型装置は、複数の光学面を有する光学素子を成形する。固定側型板3と可動側型板5との相対的な位置ズレを検出する第1の変位センサー21と、固定側型板3と可動側型板5とを相対的に位置決めする位置決め手段13と、固定側型板3及び可動側型板5にそれぞれ埋設されて部品形状を転写するためのキャビティを形成する固定側中子4及び可動側中子6と、固定側中子4または可動側中子6の内の少なくとも一方の型板内における位置ズレを検出する第2の変位センサー40と、固定側中子4または可動側中子6の内の少なくとも一方を金型開閉方向との直交方向に位置調整する少なくとも1つ以上の中子位置調整手段17と、固定側中子4及び可動側中子6に埋設されて光学素子の光学面を転写する鏡面コア11,12と、鏡面コア11,12の金型開閉方向との直交方向の位置を案内する鏡面コア案内手段とを有する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学面の位置精度を向上させることにより極めて良好な光学性能を有した光学素子を成形することが可能な金型装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
非球面、球面、自由曲面等の光学機能面を備えたカメラ用あるいはヘッドマウントディスプレイ用等のレンズ、プリズムは熱可塑性材料を用いた射出成形等によって製作されている。これらのレンズ、プリズムの光学面形状やその位置関係を設計値通りに再現するためには、光学面を形成する金型のキャビティ面の形成や位置決めなどに非常に高度な機械加工や組み立て技術が要求される。特に、光線入射面及び出射面以外に裏側反射面に自由曲面などのような曲率を備えた光学面を有する光学素子を成形加工する場合には、要求される技術は更に高度なものとなっている。
【0003】
このような複数の光学面で構成された光学素子を製作する場合、各光学面毎に対する鏡面コアを金型に設け、個々の鏡面コアにそれぞれの光学面を転写させることが一般的になされている。この場合、光学素子の偏心や相対的な光学面の位置ズレを寸法許容差内に抑えるためには、鏡面コアを組み込む中子との嵌合代を極めて小さくしたり、鏡面コアを含む各金型部品の寸法精度を厳しくする必要がある。
【0004】
このため、特開平5−96580号公報には、入子を組むための互いに直角な型板の内壁面に対して垂直な軸力を発生させるネジ軸を設け、このネジ軸の先端に入子外壁と対向する入子押さえ板を設け、入子押さえ板によって入子外壁を型板内壁に押し付ける構造が開示されている。しかしながら、この構造では、部品寸法や組立に誤差を生じることにより、各部材間にガタを生じて偏心、位置ズレが発生するのに加え、嵌合代が小さすぎる場合には、鏡面コアにストレスや歪みが発生して成形される光学素子そのものに悪影響を及ぼす問題がある。さらに、部材の寸法精度を向上させても、要求される偏心寸法許容差に抑えることが不可能な場合には、最終的には、金型部材間の位置調整を行う必要も生じる。
【0005】
このような問題点に対し、特開2000−153544号公報には、光学面を成形するキャビティ面を、光学面を複数の面に分割する鏡面コアによって構成し、この鏡面コアの互いに接触する接触面に光学面から始まる溝部を形成すると共に、鏡面コアを収容する入子の基準位置に鏡面コアを押圧する押圧手段を備えた構造の金型が開示されている。この構成により、鏡面コアに歪みやガタを生ずることなく、常に基準の位置に鏡面コアを配置可能として偏心精度やその再現性の向上を行うものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した特開2000−153544号公報の構造では、鏡面コアを入子の基準位置に押圧する押圧手段を設けて偏心や位置ズレを許容範囲内に抑えたとしても、光学素子の光学面間の偏心やズレ量を相殺するだけの適当な量だけの押圧量を設定することができない問題がある。また、鏡面コアに形成される光学面の軸芯位置が鏡面コアの基準面に対してズレを生じている場合は、その分だけ金型上で偏心が発生する。仮に鏡面コアを基準位置に接触させることなく、鏡面コアを入子内で固定することができたとしても、偏心、位置ズレを許容範囲内に調整することは多大な工数と労力を要する問題を有している。
【0007】
本発明は以上の従来の問題点を考慮してなされたものであり、固定側型板及び可動側型板の相対的な位置ズレやこれらの型板に埋設される中子の位置を変位センサーにより検出し、その検出値に応じて中子位置を調整可能な機構を設けることにより、極めて偏心精度の高い光学素子を製作することが可能な金型装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明の光軸位置補正機能を有する金型装置は、複数の光学面を有する光学素子を成形する金型装置であって、固定側型板と可動側型板との相対的な位置ズレを検出する第1の変位センサーと、固定側型板と可動側型板とを相対的に位置決めする位置決め手段と、固定側型板及び可動側型板にそれぞれ埋設されて部品形状を転写するためのキャビティを形成する固定側中子及び可動側中子と、固定側中子または可動側中子の内の少なくとも一方の型板内における位置ズレを検出する第2の変位センサーと、固定側中子または可動側中子の内の少なくとも一方を金型開閉方向との直交方向に位置調整する少なくとも1つ以上の中子位置調整手段と、固定側中子及び可動側中子に埋設されて光学素子の光学面を転写する鏡面コアと、鏡面コアの金型開閉方向との直交方向の位置を案内する鏡面コア案内手段とを有することを特徴とする。
【0009】
この発明において、位置決め手段は、金型開閉動作や金型脱着操作などのような作業の前後において、型閉をした際に、固定側型板と可動側型板の相対的な位置関係が常に同一となるように位置決めする。第1の変位センサーは、金型開閉時や成形機への取付時などにおいて発生する固定側型板及び可動側型板の相対的ズレ量を検出して出力する。従って、位置決め手段による位置決めが一定でなくなったとき、第1の変位センサーの出力を参照することにより、固定側型板と可動側型板の相対的な位置関係を最適位置に調整することができる。
【0010】
第2の変位センサーは、固定側中子または可動側中子の内の少なくとも一方の型板内における位置ズレを検出して出力する。従って、第2の変位センサーの出力を参照することにより、固定側中子または可動側中子を最適位置に調整することができ、これに伴って、固定側中子、可動側中子の鏡面コアも同時に最適位置に調整することができる。
【0011】
従って、このような請求項1の発明では、金型を成形機に取り付けた状態であっても、固定側と可動側との相対的な位置ズレを作業者がリアルタイムに確認しながら最適な状態に調整することが可能となる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1記載の光軸位置補正機能を有する金型装置であって、前記第1の変位センサー及び第2の変位センサーは、相互に直交する方向にそれぞれ少なくとも一つずつ配置されていることを特徴とする。
【0013】
このように変位センサーを直交する方向に配置することにより、正確な検出を行うことが可能となる。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1記載の光軸位置補正機能を有する金型装置であって、前記中子位置調整手段は、前記固定側中子または可動側中子を金型開閉方向との直交方向に弾性的に押圧する中子押圧手段と、それぞれの型板に対する固定側中子または可動側中子の位置調整を行う中子位置調整部材とを有していることを特徴とする。
【0015】
この発明において、中子位置調整部材が中子押圧手段による押圧状態で、固定側中子、可動側中子を位置調整するため、微妙な位置調整を行うことが可能となる。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の光軸位置補正機能を有する金型装置であって、前記中子位置調整手段における中子調整方向は、前記第2の変位センサーの変位検出方向と略同一方向であることを特徴とする。
【0017】
このように中子位置調整方向を第2の変位センサーの検出方向と略同一方向とすることにより、中子の位置調整を簡単に行うことができる。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1記載の光軸位置補正機能を有する金型装置であって、前記第1の変位センサー及び/または第2の変位センサーが近接する部位に、変位センサーの出力を最も線形性を保ち得る部材が配置されていることを特徴とする。
【0019】
このようにすることにより、変位センサーの出力を最も線形性を保つことができるため、正確な検出を行うことができる。
【0020】
請求項6の発明は、請求項1記載の光軸位置補正機能を有する金型装置であって、前記鏡面コア案内手段は、鏡面コアの外周の複数箇所から鏡面コアを案内することを特徴とする。
【0021】
このように鏡面コアの外周の複数箇所から鏡面コアを案内する構造により、鏡面コアを正確に位置決め案内することができる。従って、偏心精度が高く、高い解像力を有した光学素子を成形することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示する実施の形態により具体的に説明する。なお、各実施の形態において、同一の部材には同一の符号を付して対応させてある。
【0023】
(実施の形態1)
図1〜図7は本発明の実施の形態1を示し、図1は金型装置全体の側面図、図2は固定側中子を可動側から見た正面図、図3は金型装置のキャビティ部分の断面図、図4は中子位置調整部材の斜視図、図5は鏡面コアと鏡面コア案内手段との関係を示す正面図、図6及び図7は軸芯調整の手順を示す側面図である。
【0024】
図1に示すように、この実施の形態の金型装置は、固定側取付板2に取り付けられた固定側型板3と、可動側取付板8に取り付けられた可動側型板5とが対向しており、合わせ面38を境に開閉するようになっている。固定側型板3及び可動側型板5には、固定側中子4及び可動側中子6がそれぞれ埋設されると共に、固定側中子4及び可動側中子6に固定側鏡面コア11及び可動側鏡面コア12がそれぞれ埋設されている。そして、これらによって、光学レンズ(光学素子)を成形するキャビティ22が形成され、一つの光学レンズの光学面を分割して転写している。
【0025】
図2に示すように、固定側中子4は固定側型板3とクリアランス30を介して埋設されている。固定側中子4及び可動側中子6は、それぞれボルト35、36によって金型合わせ面38側から複数箇所を固定されている。また、図1に示すように、固定側鏡面コア11は、その底面がボルト23により固定側中子4に固定されている。この固定側鏡面コア11は図3に示すように、クリアランス31を介して固定側中子4に埋設されている。一方、可動側鏡面コア12は、キャビティ22との反対側がフランジ形状となっており、このフランジ形状部分が突き出し板9、10に挟まれることによりこれらに連結されている。
【0026】
固定側型板3の外面には、可動側型板5側に伸びるベンド形状のセンサーホルダー20が取り付けられており、センサーホルダー20には、第1の変位センサーとしての非接触式の渦電流式変位センサー21が可動側型板5の外面に臨むように取り付けられている。渦電流式変位センサー21は、その変位検出面21aと可動側型板5の側面との距離を0.1〜0.5mmの範囲で保つようにセンサーホルダー20に固定されるものである。
【0027】
図2に示すように、固定側中子4は矩形の外形となっており、この固定側中子4が固定側型板3と接触する4側面の内、直交する2側面には、第2の変位センサーとしての渦電流式変位センサー40が設けられている。すなわち、固定側中子4の4側面の内、紙面の上側側面と左側側面付近に対応する固定側型板3の対応部分にセンサー固定部43が形成され、このセンサー固定部43に渦電流式変位センサー40が固定されている。渦電流式変位センサー40は、その変位検出面40aと固定側中子4との距離を0.1〜0.5mmとなるように位置決めがなされている。
【0028】
以上の第1の変位センサー及び第2の変位センサーを構成する渦電流式変位センサー21、40は、配線39を介してアンプ41と電気的に接続されており、このアンプ41を介して出力表示を行うカウンタ42に接続されている。
【0029】
さらに、渦電流式変位センサー21及び40のそれぞれの変位検出面21a、40aに臨む可動側型板5及び固定側中子4には、図1及び図2に示すように、各センサー21、40のインピーダンス出力を最も線形に保ち得る材質のプレート状の部材45、46が埋設されている。これらの部材45,46は、それぞれのセンサ21,40の変位検出面21a、40aに近接するように配置されている。インピーダンス出力を最も線形に保ち得る部材45、46の材質としては、SUS系材やSKD材のような焼入れ焼戻し鋼等を用いることができる。
【0030】
図1、図6及び図7に示すように、固定側中子4を側面から押圧する押圧ピン17が固定側型板3に設けられている。押圧ピン17の背面には、コイルバネ18を介してスクリュープラグ19が配置されている。これらは、全て固定側型板3の側面に連通するように形成されたピン穴、ボルト穴の中にそれぞれ埋設されるものであり、固定側中子4の変位を検出するための渦電流式変位センサー40の直下にそれぞれ対をなして設置されている。これらの押圧ピン17,コイルバネ18及びスクリュープラグ19は、固定側中子4を金型開閉方向との直交方向に弾性的に押圧する中子押圧手段として機能する。
【0031】
図1,図3,図6及び図7に示すように、固定側中子4と固定側型板3との間には、楔形状のブロック材15が設けられている。楔形状のブロック材15は、固定側中子4を金型開閉方向との直交方向に位置調整するものであり、金型合わせ面38側から次第に厚みを減ずる方向となるようにその形状が設定されている。すなわち、図3及び図4に示すように、ブロック材15はその一側面26がテーパ面となっており、他の側面が垂直面となって形成されている。この楔形状のブロック材15は、コイルバネ24を介してボルト16により固定側型板3と連結されている。また、図2に示すように、ブロック材15は、渦電流式変位センサー40の設置位置とは反対側で、且つ渦電流式変位センサー40と対をなすように配置されるものである。かかる楔状のブロック材15は、固定側型板3に対する固定側中子4の位置調整を行う中子位置調整部材として機能するものである。そして、この楔状のブロック材15からなる中子位置調整部材及び押圧ピン17,コイルバネ18、スクリュープラグ19からなる中子押圧手段によって金型開閉方向との直交方向に固定側中子4を位置調整する中子位置調整手段が構成されている。
【0032】
図2及び図5に示すように、固定側鏡面コア11及び可動側鏡面コア12は、固定側中子4及び可動側中子6にそれぞれ形成される雌ねじ部に螺合されたボールプランジャ25及び25aにより、その外周の3箇所をそれぞれ支持されている。ボールプランジャ25,25aは、その先端のボールが固定側鏡面コア11及び可動側鏡面コア12に弾性的に当接しており、固定側中子4及び可動側中子6の雌ねじ部への螺合長を調整することにより、固定側鏡面コア11及び可動側鏡面コア12に対して金型開閉方向との直交方向の位置を案内する。これにより、ボールプランジャ25及び25aは、固定側鏡面コア11及び可動側鏡面コア12の鏡面コア案内手段として機能する。この場合、ボールプランジャ25及び25aが外周の3箇所に設けることにより、固定側鏡面コア11及び可動側鏡面コア12を確実に案内することが可能となっている。
【0033】
図1、図6及び図7に示すように、固定側型板3には、テーパピン13が取り付けられ、可動側型板5のテーパピン13との対向部分には、テーパピン13が嵌合するテーパ受け穴14が形成されている。これらのテーパピン13及びテーパ受け穴14は、固定側型板3及び可動側型板5を相対的に位置決めする位置決め手段となっている。
【0034】
なお、図1において、符号1は図示を省略した成形機と位置決めするためのロケートリング、符号7は、突き出し板9、10の可動エリアを確保するためのスペーサである。
【0035】
次に、この実施の形態による軸芯調整を図6及び図7により説明すると、図6は固定側および可動側の軸芯調整前を、図7は軸芯調整後の状態を示す。
【0036】
固定側型板3及び可動側型板5の相対的な位置関係は、型閉の際に、固定側型板3に固定されたテーパピン13が可動側型板5に形成されたテーパ受け穴14に嵌合することにより常に一定となる。この関係は、固定側型板3と可動側型板5の位置関係を検出する渦電流式変位センサー21によって検出し、アンプ41を経てカウンタ42に変位を出力することにより、常に相互の位置関係を監視することができる。従って、例えばテーパピン13やテーパ受け穴14の摩耗によって位置関係が一定でなくなったときに迅速な対処を行うことができるようになっている。
【0037】
また、固定側鏡面コア11及び可動側鏡面コア12の金型開閉方向に対する直交方向の位置はボールプランジャ25による各コア11、12の外周の案内により、常に一定の位置に設定されている。この実施の形態では、ボールプランジャ25を用いることにより、弾性部材を介した案内となっているため、各鏡面コア11,12の金型開閉方向への脱着を容易に行うことが可能となっている。
【0038】
一方、初期段階では、固定側型板3及び可動側型板5に埋設される固定側中子4及び可動側中子6の相対的な位置関係や固定側鏡面コア11及び可動側鏡面コア12の相対的な位置関係については、それぞれの埋設位置や加工誤差などにより図6に示すようにお互いに一定のズレ量を有している。この状態の金型装置によりキャビティー22に樹脂を充填し、冷却固化してレンズを製作したとしても常にそのズレ量分だけ偏心したレンズが製作され、所望の性能を満足することができない。このズレ量を補正するために、ボルト16を用いて楔状のブロック材15を押し込んだり緩めたりする。このことにより、固定側中子4における金型開閉方向との直交方向の位置を高精度に調整することができる。
【0039】
図7は、楔状のブロック材15を押し込む方向に調整することにより、キャビティー22の偏心を最小の状態に調整した場合を示す。この調整に先立って、初期の調整前の金型状態でレンズを成形し、このレンズのレンズ面間の偏心を計測する。このときのレンズ面間の偏心が、この後における固定側中子4の調整量となる。
【0040】
調整は、まず、固定側型板3と可動側金型5の合わせ面38を離間し、図1に示す固定側中子4、可動側中子6をそれぞれ固定するボルト35、36を予め緩めておく。そして、楔状のブロック材15のボルト16を締め付ける。これにより、ブロック材15は紙面上、下方にスライドし、同時に固定側中子4は、ブロック材15のテーパ面26の作用により、紙面上左方向にスライドする。これにより、固定側鏡面コア11もボールプランジャ25に支持されながら固定側中子4と一体となって同方向にスライドする。
【0041】
固定側中子4の挙動は、渦電流式変位センサー40により常に検出されており、アンプ41を介してカウンタ42に表示されているため、作業者はカウンタ42の表示値を確認しながら固定側中子4の最適位置を効率的に設定することができる。この場合、仮に固定側中子4の位置が最適な位置を通り越しても、コイルバネ18を背面に介した押圧ピン17により固定側中子4には常に紙面上右方向に付勢力が作用しているため、ブロック材15を上方へスライドすることにより、固定側中子4は右方向に戻り移動することができる。
【0042】
なお、楔状のブロック材15と固定側型板3との間には、コイルバネ24が挿入されているため、ブロック材15には常に上方への付勢力が作用しているため、ボルト16を緩めた場合に、ブロック材15が固定側中子4や可動側型板3との摩擦力により思い通りに上方ヘスライドしなくなるなどの不具合は生じない。
【0043】
以上によって、調整が終了した後、図1に示すボルト35、36を締め込むことにより、調整作業が完了する。
【0044】
このような実施の形態によれば、金型を成形機に取り付けた状態であっても、固定側と可動側の相対的な位置ズレを作業者がリアルタイムに確認をしながら最適な状態に調整することができるため、レンズの偏心量に応じて金型の修正加工を行うなどの従来からの手法に比べて極めて迅速かつ正確に偏心量の少ないレンズを成形することができる。
【0045】
(実施の形態2)
図8は実施の形態2を示し、固定側中子4を金型の合わせ面側から見た正面図である。
【0046】
この実施の形態においても、楔状のブロック材15が矩形状に成形されており、このブロック材15が固定側中子4内に埋設されるが、ブロック材15は、固定側中子4における4辺に対して対をなすように組み込まれている。すなわち、ブロック材15は図8における上下方向及び左右方向の位置に配置されるものである。このように上下方向及び左左方向にそれぞれ対をなすようにブロック材15が固定側中子4に埋設されていることにより、固定側中子4をさらに強固に固定することができるため、金型の開閉を繰り返す際に固定側中子4の位置が微妙にドリフトしていくような現象が生じることがなくなる。
【0047】
従って、この実施の形態によれば、迅速かつ正確に調整された固定側中子4の位置を長期にわたって安定させることができるため、偏心精度の優れたレンズ等の光学素子を極めて高い工程能力で製造することが可能となる。
【0048】
(実施の形態3)
図9は実施の形態3を示し、固定側中子4を金型合わせ面側から見た正面図である。
【0049】
この実施の形態において、第2の変位センサーとしての渦電流式変位センサー40は、矩形状の固定側中子4における隣接した辺に対し、2セットずつ近接するように配置されている。すなわち、固定側中子4の側面に近接する渦電流式変位センサー40は、固定側中子4の上側側面と左側側面のそれぞれに対し、2セットずつ一定の離間距離を有して設置されるものである。
【0050】
このように固定側中子4の側面の内、2つの側面に2セットずつ渦電流式変位センサー40が設置されていることにより、楔状のブロック材15や固定側中子4の加工精度や組立精度が良好でなく、固定側中子4の位置調整時に、金型の開閉方向を軸としたときの軸回り方向に沿った回転が発生した場合、固定側中子4一方の側面に近接している2つの渦電流式変位センサー40は、異なる数値を出力する。この場合、予め計測しておいたレンズの偏心量を相殺する量だけ固定側中子4を調整したとしても余計な回転も加わっているために目的とする偏心精度を得ることができない。このような不具合現象の有無を、作業者は渦電流式変位センサー4の出力値を確認することで事前に知ることができる。
【0051】
このように、この実施の形態によれば、偏心調整作業の正確性を変位出力値の傾向から即座に確認することができるため、金型製作から量産展開までの作業効率を飛躍的に高めることが可能となる。
【0052】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々変形が可能である。例えば、渦電流式変位センサー40からなる第2の変位センサーは、可動側中子6の可動側型板5に対する位置ズレを検出しても良く、固定側中子4及び可動側中子6の双方の位置ズレを検出しても良い。また、中子調整手段は、可動側中子6を金型開閉方向と直交する方向に位置調整しても良く、固定側中子4及び可動側中子6の双方を位置調整しても良い。
【0053】
さらに、第1の変位センサー及び第2の変位センサーとして、耐熱性の接触式のリニアゲージ等を用いることができ、位置決め部材としてノックピンを用いても良く、固定側中子4及び可動側中子6を円柱形状の外形としても良い。また、中子位置調整手段の構成部材である楔状のブロック体15に代えてネジを用いることができ、鏡面コア案内手段としてもネジを用いることができる。
【0054】
さらに、また、成形される光学素子がシリンドリカルレンズ等の場合には、1方向に位置ズレを検出するだけで良いため、第1の変位センサー及び第2の変位センサーとしては、直交方向に配置することなく、1方向に配置するだけでも良い。
【0055】
以上の説明から、本発明は、次の付記項に示す技術的思想を包含するものである。
【0056】
(付記項1) 複数の光学面を有する光学素子を成形する金型装置であって、固定側型板と可動側型板との相対的な位置ズレを検出する第1の変位センサーと、
固定側型板と可動側型板とを相対的に位置決めする位置決め手段と、
固定側型板及び可動側型板にそれぞれ埋設されて部品形状を転写するためのキャビティを形成する固定側中子及び可動側中子と、
固定側中子または可動側中子の内の少なくとも一方の型板内における位置ズレを検出する第2の変位センサーと、
固定側中子または可動側中子の内の少なくとも一方を金型開閉方向との直交方向に位置調整する少なくとも1つ以上の中子位置調整手段と、
固定側中子及び可動側中子に埋設されて光学素子の光学面を転写する鏡面コアと、
鏡面コアの金型開閉方向との直交方向の位置を案内する鏡面コア案内手段とを有することを特徴とする光軸位置補正機能を有する金型装置。
【0057】
付記項1の発明によれば、固定側と可動側との相対的な位置ズレを作業者がリアルタイムに確認しながら最適な状態に調整することができる。
【0058】
(付記項2) 前記中子位置調整手段は、固定側中子または可動側中子の型板に対する位置調整を行う楔形状のブロック材を備えていることを特徴とする付記項1記載の光軸位置補正機能を有する金型装置。
【0059】
付記項2の発明によれば、ブロック材が楔状となっているため、固定側中子または可動側中子の位置調整を簡単に行うことができる。
【0060】
(付記項3) 前記第1の変位センサーまたは第2の変位センサーの少なくとも一方は渦電流式変位センサーであることを特徴とする付記項1記載の光軸位置補正機能を有する金型装置。
【0061】
付記項3の発明によれば、渦電流式変位センサーのため、変位を正確に検出することができる。
【0062】
(付記項4) 前記鏡面コア案内手段は、ボールプランジャ式ガイド部材を備えていることを特徴とする付記項1記載の光軸位置補正機能を有する金型装置。
【0063】
付記項4の発明によれば、弾性を有して鏡面コアを案内することができるため、案内を容易に行うことができる。
【0064】
(付記項5) 付記項1〜4のいずれかに記載の金型装置によって成形されたことを特徴とする光学素子。
【0065】
付記項5の発明によれば、極めて偏心精度の光学素子とすることができる。
【0066】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、金型装置を成形機に取り付けた状態であっても、固定側と可動側の相対的な位置ズレを作業者がリアルタイムに確認しながら最適な状態に調整することができるため、光学素子の偏心量に応じて金型の修正加工を行うなどの従来からの手法に比べて極めて迅速かつ正確に調整することができ、これにより、偏心量の少ない光学素子を長期間安定して成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1の金型装置全体の側面図である。
【図2】固定側中子を可動側から見た正面図である。
【図3】金型装置のキャビティ部分の断面図である。
【図4】中子位置調整部材の斜視図である。
【図5】鏡面コアと鏡面コア案内手段との関係を示す正面図である。
【図6】軸芯調整前の側面図である。
【図7】軸芯調整後の側面図である。
【図8】本発明の実施の形態2の固定側中子を可動側から見た正面図である。
【図9】本発明の実施の形態3の固定側中子を可動側から見た正面図である。
【符号の説明】
2 固定側型板
4 固定側中子
5 可動側型板
6 可動側中子
11 固定側鏡面コア
12 可動側鏡面コア
13 テーパピン
15 楔状のブロック材
21、40 渦電流式変位センサー
Claims (6)
- 複数の光学面を有する光学素子を成形する金型装置であって、
固定側型板と可動側型板との相対的な位置ズレを検出する第1の変位センサーと、
固定側型板と可動側型板とを相対的に位置決めする位置決め手段と、
固定側型板及び可動側型板にそれぞれ埋設されて部品形状を転写するためのキャビティを形成する固定側中子及び可動側中子と、
固定側中子または可動側中子の内の少なくとも一方の型板内における位置ズレを検出する第2の変位センサーと、
固定側中子または可動側中子の内の少なくとも一方を金型開閉方向との直交方向に位置調整する少なくとも1つ以上の中子位置調整手段と、
固定側中子及び可動側中子に埋設されて光学素子の光学面を転写する鏡面コアと、
鏡面コアの金型開閉方向との直交方向の位置を案内する鏡面コア案内手段とを有することを特徴とする光軸位置補正機能を有する金型装置。 - 前記第1の変位センサー及び第2の変位センサーは、相互に直交する方向にそれぞれ少なくとも一つずつ配置されていることを特徴とする請求項1記載の光軸位置補正機能を有する金型装置。
- 前記中子位置調整手段は、前記固定側中子または可動側中子を金型開閉方向との直交方向に弾性的に押圧する中子押圧手段と、それぞれの型板に対する固定側中子または可動側中子の位置調整を行う中子位置調整部材とを有していることを特徴とする請求項1記載の光軸位置補正機能を有する金型装置。
- 前記中子位置調整手段における中子調整方向は、前記第2の変位センサーの変位検出方向と略同一方向であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光軸位置補正機能を有する金型装置。
- 前記第1の変位センサー及び/または第2の変位センサーが近接する部位に、変位センサーの出力を最も線形性を保ち得る部材が配置されていることを特徴とする請求項1記載の光軸位置補正機能を有する金型装置。
- 前記鏡面コア案内手段は、鏡面コアの外周の複数箇所から鏡面コアを案内することを特徴とする請求項1記載の光軸位置補正機能を有する金型装置。
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