JP2004098206A - 高速切削加工ですぐれた耐摩耗性を発揮する超硬合金製スローアウエイ式切削チップ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】超硬合金製スローアウエイ式切削チップを、いずれも結合相形成成分として、以下いずれも質量%で、Co:4〜12%、Crおよび/またはV:0.1〜2%、を含有し、残りの硬質相が酸素および窒素を固溶含有する炭化タングステンからなる組成を有し、かつ前記硬質相の酸素および窒素含有量が、前記硬質相の中心部をオージェ電子分光分析装置を用いて測定した値で、酸素:0.2〜0.6%、窒素:0.1〜0.25%、である超硬合金で構成する。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、特に超硬合金の硬質相が強度の低下なく、すぐれた高温硬さと耐熱性を有し、したがって高熱発生を伴なう高速切削加工で、すぐれた耐摩耗性を発揮する超硬合金製スローアウエイ式切削チップ(以下、単に切削チップと云う)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、一般に、切削チップが、バイトの先端部に着脱自在に取り付けて各種の鋼や鋳鉄などの被削材の旋削加工や平削り加工を行なうのに用いたり、エンドミル本体に着脱自在に取り付けて、前記被削材の面削加工や溝加工、さらに肩加工などに用いられることは良く知られるところである。
【0003】
さらに、上記の切削チップが、例えば原料粉末として、いずれも0.1〜3μmの範囲内の所定の平均粒径を有するWC粉末、炭化クロム(以下、Cr3C2で示す)粉末、炭化バナジウム(以下、VCで示す)粉末、およびCo粉末を用い、これら原料粉末を所定の配合組成に配合し、湿式混合し、乾燥した後、例えば100MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を、雰囲気圧力を1.3〜13.3Paとした真空雰囲気中、1350〜1480℃の範囲内の所定の温度に昇温し、この昇温温度に1〜2時間保持後、冷却して、Cr(Cr3C2)および/またはV(VC)がCo中に固溶してなる結合相とWCの硬質相からなる超硬合金で構成され、かつ研削加工にて所定の形状とすることにより製造されることも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開昭61−12847号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一方、近年の切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に対する要求は強く、これに伴い、切削装置の高性能化と相俟って、切削加工は高速で行われる傾向にあるが、上記の従来切削チップにおいては、これを高速切削加工に用いると、特に超硬合金における硬質相の高温硬さおよび耐熱性不足が原因で、摩耗進行が著しく促進されるようになることから、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、上述のような観点から、高速切削加工で、すぐれた耐摩耗性を発揮する切削チップを開発すべく、特に上記の従来切削チップに着目し、研究を行った結果、
(a)通常、従来の原料粉末としてのWC粉末は、高純度を意図して製造されているため、焼結後の超硬合金の硬質相を構成するWCにおける不純物である窒素および酸素の含有量は、前記硬質相の中心部をオージェ電子分光分析装置を用いて測定した値で、
酸素(O):0.001〜0.05%、
窒素(N):0.001〜0.03%、
であるのが一般的であること。
【0007】
(b)一般に、上記の従来高純度WC粉末は、原料粉末としてWO3粉末を用い、これに還元粉末として所定量のカーボンブラックを配合し、混合した後、この混合粉末を950〜1050℃に加熱し、窒素気流中で所定時間保持の条件で還元処理を行い、ついで加熱温度を1150〜1250℃とすると共に、前記窒素気流を水素気流に変えて所定時間保持の条件で炭化処理を行うことにより製造されているが、この従来高純度WC粉末の製造において、還元処理の窒素気流中および炭化処理の水素気流中に所定割合、望ましくは5〜15容量%の割合でCOガスを配合すると、製造されたWC粉末中の酸素含有量および窒素含有量が上昇するようになり、前記のCOガスの5〜15容量%の配合で、製造されたWC粉末は、
酸素(O):0.2〜0.6%、
窒素(N):0.1〜0.25%、
を含有するようになること。
【0008】
(c)この結果の高酸素高窒素含有のWC粉末を原料粉末として用いて製造された切削チップにおいては、これを構成する超硬合金の硬質相は、その中心部をオージェ電子分光分析装置を用いて測定した値で、前記高酸素高窒素含有のWC粉末と同じO:0.2〜0.6%、N:0.1〜0.25%、の含有量を示し、この結果前記含有量のOによってすぐれた高温硬さと耐熱性を具備し、一方前記O含有によって硬質相の強度は低下するようになるが、このO含有による強度低下を前記含有量のNによって抑制することから、高純度硬質相と同等の高強度が保持され、したがってこの超硬合金で構成された切削チップは、高熱発生を伴なう高速切削加工でもすぐれた耐摩耗性を発揮し、長期に亘ってすぐれた切削性能を示すこと。
以上(a)〜(c)に示される研究結果を得たのである。
【0009】
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、いずれも結合相形成成分として、
Co:4〜12%、
Crおよび/またはV:0.1〜2%、
を含有し、残りの硬質相が酸素(O)および窒素(N)を固溶含有するWCからなる組成を有し、かつ前記硬質相のOおよびN含有量が、前記硬質相の中心部をオージェ電子分光分析装置を用いて測定した値で、
O:0.2〜0.6%、
N:0.1〜0.25%、
である超硬合金で構成してなる、高速切削加工ですぐれた耐摩耗性を発揮する切削チップに特徴を有するものである。
【0010】
以下に、この発明の切削チップにおいて、これを構成する超硬合金の組成を上記の通りに限定した理由を説明する。
(1) Co含有量
結合相形成成分としてのCo含有量が4%未満では所望の強度および靭性を確保することができず、一方Co含有量が12%を超えると熱塑性変形を起し易くなり、偏摩耗の進行が促進するようになることから、Co含有量を4〜12%と定めた。
【0011】
(2) Crおよび/またはV含有量
これらの成分には、結合相を形成するCo中に固溶した状態で硬質相の成長を著しく抑制して、これの粒径を平均粒径で、望ましくは0.7μm以下とした微粒組織とする作用があるが、この作用はCrおよびV成分の含有量が0.1%未満では不充分となり、一方その含有量が2%を超えると、これらの成分が炭化物として析出し、強度および靭性を低下させるようになることから、その含有量を0.1〜2%と定めた。
【0012】
(3) 硬質相のO含有量
超硬合金の硬質相におけるO含有量が0.2%未満では、所望のすぐれた高温硬さと耐熱性を確保することができないので、前記硬質相を構成するWC粉末の製造時に、還元処理の窒素気流中および炭化処理の水素気流中に配合するCOガスの割合を調整して0.2%以上含有させ、すぐれた高温硬さと耐熱性を確保して、高熱発生の高速切削加工でもすぐれた耐摩耗性を発揮するようにするが、一方その含有量が0.6%を超えるとN含有によっても硬質相自体の強度低下を阻止することができず、この結果すくい面と逃げ面の交わる切刃稜線部にチッピング(微小欠け)が発生し易くなり、使用寿命の短命化をもたらすことから、その含有量を0.2〜0.6%と定めた。
【0013】
(4) 硬質相のN含有量
また、N含有量が0.1%未満では、上記のO含有による強度低下を完全に阻止することができないので、原料粉末として用いられるWC粉末の製造に際して、還元処理の窒素気流中および炭化処理の水素気流中に配合するCOガスの割合を調整して0.1%以上含有するようにするが、一方その含有量が0.25%を超えると上記のO含有によってもたらされる高温硬さと耐熱性の向上効果が低下し、所望の高温硬さと耐熱性を確保することができなくなり、摩耗進行が著しく促進され、使用寿命短命化の原因となることから、その含有量を0.1〜0.25%と定めた。
【0014】
【発明の実施の態様】
つぎに、この発明の切削チップを実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、平均粒径:0.5μmを有するWO3粉末、および同0.2μmのカーボンブラックを用意し、まずこれら原料粉末を、カーボンブラック:17%、WO3粉末:残り、の割合に配合し、湿式ボールミルでアセトンを加えて3時間混合し、減圧乾燥した後、よくほぐした状態でカーボンボートに充填した後、この混合粉末を950〜1050℃に加熱し、COガスを5〜15容量%の範囲内の所定の割合で配合してなる窒素−CO混合気流中で3時間保持の条件で還元処理を行い、ついで加熱温度を1150〜1250℃とすると共に、前記窒素−CO混合気流を同じくCOガスを5〜15容量%の範囲内の所定の割合で配合してなる水素−CO混合気流に変えて3時間保持の条件で炭化処理を行い、最終的に粒度調整を行うことにより、表1に示される窒素および酸素を含有し、かつ平均粒径をもった本発明切削チップ製造用原料粉末としてのWC粉末(以下、本発明原料WC粉末という)A〜Gをそれぞれ製造した。
【0015】
また、比較の目的で、還元処理の反応雰囲気を窒素気流、炭化処理の反応雰囲気を水素気流とする以外は、同一の条件で、同じく表1に示される窒素および酸素含有量、並びに平均粒径の従来切削チップ製造用原料粉末としてのWC粉末(以下、従来原料WC粉末という)a〜gをそれぞれ製造した。
【0016】
ついで、上記の本発明原料WC粉末A〜Gおよび従来原料WC粉末a〜gのそれぞれに、平均粒径:1.2μmのCo粉末、同1.8μmのVC粉末、および同2.3μmのCr3C2粉末を表2に示される割合に配合し、ボールミルで72時間湿式混合し、減圧乾燥し、さらにワックスと溶剤を加えて1時間混和した後、100MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を、1.3Paの真空雰囲気中、1380〜1480℃の範囲内の所定の温度に1時間保持後、炉冷の条件で焼結し、この結果得られた超硬合金素材に研削加工を施して、それぞれ表2に示されるチップ形状およびホーニング量の本発明切削チップ1〜7および従来切削チップ1〜7をそれぞれを製造した。
【0017】
この結果得られた本発明切削チップ1〜7および従来切削チップ1〜7について、オージェ電子分光分析装置を用い、これを構成する超硬合金における任意5個の硬質相の中心部のO含有量およびN含有量を測定し、この結果を表2に平均値で示した。
また、表2には、これらの切削チップを構成する超硬合金の任意断面における硬質相の平均粒径を走査型電子顕微鏡を用いて測定した結果も示した。
さらに、同じく上記超硬合金のCo、Cr、およびVの含有量を測定したところ、配合組成と実質的に同じ値を示した。
【0018】
つぎに、上記の各種切削チップのうち、ISO・SPGN120304のチップ形状を有する本発明切削チップ1,2および従来切削チップ1,2については、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、
被削材:JIS・SCM440の丸棒(直径:200mm)、
切削速度:150m/min.、
切り込み:1.2mm、
送り:0.2mm/rev.、
の条件で合金鋼丸棒の端面を乾式で、かつ高速で連続切削加工する切削加工試験を行ない、切刃部における逃げ面摩耗幅が0.2mmに達するまでの切削長を測定した。
【0019】
また、ISO・DCMW11T308のチップ形状を有する本発明切削チップ3,4および従来切削チップ3,4については、同じく工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、
被削材:JIS・SUS304の丸棒(直径:12mm×長さ:15mm)、
切削速度:200m/min.、
切り込み:3mm、
送り:0.03mm/rev.、
の条件でステンレス鋼丸棒の一方端部を湿式で、かつ高速で端面から長さ方向10mmまでを直径:6mmに縮径する切削加工試験を行ない、同じく切刃部における逃げ面摩耗幅が0.2mmに達するまでの丸棒端部加工数を測定した。
【0020】
さらに、ISO・TCGT060102のチップ形状を有する本発明切削チップ5〜7および従来切削チップ5〜7については、同じく工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、
被削材:JIS・SCM440の管材(外径:9mm×内径:5mm×長さ:28mm)、
切削速度:100m/min.、
切り込み:0.5mm、
送り:0.05mm/rev.、
の条件で合金鋼管材の一方端部の内面を湿式で、かつ高速で端面から長さ方向20mmまでを拡径(内径:6mm)する切削加工試験を行ない、同じく切刃部における逃げ面摩耗幅が0.2mmに達するまでの管材端部加工数を測定した。
これらの切削加工試験結果を表2に示した。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
【発明の効果】
表1,2に示される結果から、本発明切削チップ1〜7は、いずれもこれを構成する超硬合金の硬質相のOおよびNの含有量が相対的に高く、前記硬質相によってすぐれた高温硬さと耐熱性が確保されることから、高熱発生を伴なう高速切削加工でも、すぐれた耐摩耗性を発揮するのに対して、前記硬質相のOおよびNの含有量が相対的に低い従来切削チップ1〜7においては、いずれも超硬合金を構成する硬質相の高温硬さおよび耐熱性不足が原因で、高速切削加工では摩耗進行が促進し、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の切削チップは、通常の条件での切削加工は勿論のこと、高速切削加工でもすぐれた耐摩耗性を長期に亘って発揮するものであるから、切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応することができるものである。
Claims (1)
- いずれも結合相形成成分として、以下いずれも質量%で、
Co:4〜12%、
Crおよび/またはV:0.1〜2%、
を含有し、残りの硬質相が酸素および窒素を固溶含有する炭化タングステンからなる組成を有し、かつ前記硬質相の酸素および窒素含有量が、前記硬質相の中心部をオージェ電子分光分析装置を用いて測定した値で、
酸素:0.2〜0.6%、
窒素:0.1〜0.25%、
である超硬合金で構成したこと、
を特徴とする高速切削加工ですぐれた耐摩耗性を発揮する超硬合金製スローアウエイ式切削チップ。
Priority Applications (1)
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JP2002262587A JP4155778B2 (ja) | 2002-09-09 | 2002-09-09 | 高速切削加工ですぐれた耐摩耗性を発揮する超硬合金製スローアウエイ式切削チップ |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007223001A (ja) * | 2006-02-24 | 2007-09-06 | Kyocera Corp | 切削工具 |
CN113816380A (zh) * | 2021-10-19 | 2021-12-21 | 赣州有色冶金研究所有限公司 | 一种氧化钨一步碳化制备超细碳化钨粉的方法 |
-
2002
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WO2023065457A1 (zh) * | 2021-10-19 | 2023-04-27 | 赣州有色冶金研究所有限公司 | 一种氧化钨一步碳化制备超细碳化钨粉的方法 |
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