以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る金属供給システムの全体構成を示す図である。
同図に示すように、第1の工場10と第2の工場20とは例えば公道30を介して離れた所に設けられている。
第1の工場10には、ユースポイントとしてのダイキャストマシーン11が複数配置されている。各ダイキャストマシーン11は、溶融したアルミニウムを原材料として用い、射出成型により所望の形状の製品を成型するものである。その製品としては例えば自動車のエンジンに関連する部品等を挙げることができる。また、溶融した金属としてはアルミニウム合金ばかりでなくマグネシウム、チタン等の他の金属を主体とした合金であっても勿論構わない。各ダイキャストマシーン11の近くには、ショット前の溶融したアルミニウムを一旦貯留する保持炉(手元保持炉)12が配置されている。この保持炉12には、複数ショット分の溶融アルミニウムが貯留されるようになっており、ワンショット毎にラドル13或いは配管を介して保持炉12からダイキャストマシーン11に溶融アルミニウムが注入されるようになっている。また、各保持炉12には、容器内に貯留された溶融アルミニウムの液面を検出する液面検出センサ(図示せず)や溶融アルミニウムの温度を検出するための温度センサ(図示せず)が配置されている。これらのセンサによる検出結果は各ダイキャストマシーン11の制御盤もしくは第1の工場10の中央制御部16に伝達されるようになっている。
第1の工場10の受け入れ部には、後述する容器100を受け入れるための受け入れ台17が配置されている。受け入れ部の受け入れ台17で受け入れられた容器100は、配送車18により所定のダイキャストマシーン11まで配送され、容器100から保持炉12に溶融アルミニウムが供給されるようになっている。供給の終了した容器100は配送車18により再び受け入れ部の受け入れ台17に戻されるようになっている。
第1の工場10には、アルミニウムを溶融して容器100に供給するための第1の炉19が設けられており、この第1の炉19により溶融アルミニウムが供給された容器100も配送車18により所定のダイキャストマシーン11まで配送されるようになっている。
第1の工場10には、各ダイキャストマシーン11において溶融アルミニウムの追加が必要になった場合にそれを表示する表示部15が配置されている。より具体的には、例えばダイキャストマシーン11毎に固有の番号が振られ、表示部15にはその番号が表示されており、溶融アルミニウムの追加が必要になったダイキャストマシーン11の番号に対応する表示部15における番号が点灯するようになっている。作業者はこの表示部15の表示に基づき配送車18を使って容器100をその番号に対応するダイキャストマシーン11まで運び溶融アルミニウムを供給する。表示部15における表示は、液面検出センサによる検出結果に基づき、中央制御部16が制御することによって行われる。
第2の工場20には、アルミニウムを溶融して容器100に供給するための第2の炉21が設けられている。容器100は例えば容量、配管長、高さ、幅等の異なる複数種が用意されている。例えば第1の工場10内のダイキャストマシーン11における保持炉12の容量等に応じて、容量の異なる複数種がある。しかしながら、容器100を1種類に統一して規格化しても勿論構わない。
この第2の炉21により溶融アルミニウムが供給された容器100は、フォークリフト(図示せず)により搬送用のトラック32に載せられる。トラック32は公道30を通り第1の工場10における受け入れ部の受け入れ台17の近くまで容器100を運び、これらの容器100はフォークリフト(図示せず)により受け入れ台17に受け入れられるようになっている。また、受け入れ部にある空の容器100はトラック32により第2の工場20へ返送されるようになっている。
第2の工場20には、第1の工場10における各ダイキャストマシーン11において溶融アルミニウムの追加が必要になった場合にそれを表示する表示部22が配置されている。表示部22の構成は第1の工場10内に配置された表示部15とほぼ同様である。表示部22における表示は、例えば通信回線33を介して第1の工場10における中央制御部16が制御することによって行われる。なお、第2の工場20における表示部22においては、溶融アルミニウムの供給を必要とするダイキャストマシーン11のうち第1の工場10における第1の炉19から溶融アルミニウムが供給されると決定されたダイキャストマシーン11はそれ以外のダイキャストマシーン11とは区別して表示されるようになっている。例えば、そのように決定されたダイキャストマシーン11に対応する番号は点滅するようになっている。これにより、第1の炉19から溶融アルミニウムが供給されると決定されたダイキャストマシーン11に対して第2の工場20側から誤って溶融アルミニウムを供給するようなことをなくすことができる。また、この表示部22には、上記の他に中央制御部16から送信されたデータも表示されるようになっている。
次に、このように構成された金属供給システムの動作を説明する。
中央制御部16では、各保持炉12に設けられた液面検出センサを介して各保持炉12における溶融アルミニウムの量を監視している。ここで、ある保持炉12で溶融アルミニウムの供給の必要性が生じた場合に、中央制御部16は、その保持炉12の「固有の番号」、その保持炉12に設けられた温度センサにより検出された保持炉12の「温度データ」、その保持炉12の形態(後述する。)に関する「形態データ」、その保持炉12から溶融アルミニウムがなくなる最終的な「時刻データ」、公道30の「トラフィックデータ」、その保持炉12で要求される溶融アルミニウムの「量データ」及び「気温データ」等を、通信回線33を介して第2の工場20側に送信する。第2の工場20では、これらのデータを表示部22に表示する。これらの表示されたデータに基づき作業者が経験的に上記保持炉12から溶融アルミニウムがなくなる直前に保持炉12に容器100が届き、且つその時の溶融アルミニウムが所望の温度となるように該第2の工場20からの容器100の発送時刻及び溶融アルミニウムの発送時の温度を決定する。或いはこれらのデータを例えばパソコン(図示せず)に取り込んで所定のソフトウェアを用いて上記保持炉12から溶融アルミニウムがなくなる直前に保持炉12に容器100が届き、且つその時の溶融アルミニウムが所望の温度となるように該第2の工場20からの容器100の発送時刻及び溶融アルミニウムの発送時の温度を推定してその時刻及び温度を表示するようにしてもよい。或いは推定された温度により第2の炉21を自動的に温度制御しても良い。容器100に収容すべき溶融アルミニウムの量についても上記「量データ」に基づき決定してもよい。
発送時刻に容器100を載せたトラック32が出発し、公道30を通り第1の工場10に到着すると、容器100がトラック32から受け入れ部の受け入れ台17に受け入れられる。
その後、受け入れられた容器100は、受け入れ台17と共に配送車18により所定のダイキャストマシーン11まで配送され、容器100から保持炉12に溶融アルミニウムが供給される。
図2に示すように、この例では、レシーバタンク101から高圧空気を密閉された容器100内に送出することで容器100内に収容された溶融アルミニウムが配管56から吐出されて保持炉12内に供給されるようになっている。なお、図2において、103は加圧バルブ、104はリークバルブである。
ここで、保持炉12の高さは各種のものがあり、配送車18に設けられた昇降機構により配管56の先端が保持炉12上の最適位置となるように調節可能になっている。しかし、保持炉12の高さによっては昇降機構だけでは対応できない場合がある。そこで、本システムにおいては、保持炉12の形態に関する「形態データ」として、保持炉12の高さや保持炉12までの距離に関するデータ等を予め第2の工場20側に送り、第2の工場20側ではこのデータに基づき最適な形態、例えば最適な高さの容器100を選択して配送している。なお、供給すべき量に応じて最適な大きさの容器100を選択して配送してもよい。
次に、このように構成されたシステムに好適な容器(加圧式溶融金属供給容器)100について、図3及び図4に基づき説明する。図3は容器100の断面図、図4はその平面図である。
容器100は、有底で筒状の本体50の上部開口部51に大蓋52が配置されている。本体50及び大蓋51の外周にはそれぞれフランジ53、54が設けられており、これらフランジ間をボルト55で締めることで本体50と大蓋51が固定されている。なお、本体50や大蓋51は例えば外側が金属であり、内側が耐火材により構成され、外側の金属と耐火材との間には断熱材が介挿されている。
本体50の外周の1箇所には、本体50内部から配管56に連通する流路57が設けられた配管取付部58が設けられている。
ここで、図5は図3に示した配管取付部58におけるA−A断面図である。
図5に示すように、容器100の外側は金属のフレーム100a、内側は耐火材100bにより構成され、フレーム100aと耐火材100bとの間には耐火材よりも熱伝導率の小さな断熱材100cが介挿されている。そして、流路57は容器100の内側に設けられた耐火材100bの中に形成されている。すなわち流路57は、熱伝導率の大きな耐火部材によって容器内部と分離されている。このような構成を採用することにより、容器内からの放熱が流路に伝わりやすくなる。流路の外側(容器内とは反対側)には、耐火部材の外側に断熱材を配している。耐火材は断熱材よりも密度、熱伝導率が高いものを用いる。耐火材としては例えば緻密質の耐火系セラミック材料をあげることができる。また断熱材としては、断熱キャスター、ボード材料など断熱系のセラミック材料をあげることができる。
配管取付部58における流路57は、本体50内周の該容器本体底部50aに近い位置に設けられた開口57aを介し、該本体50外周の上部57bに向けて延在している。この配管取付部58の流路57に連通するように配管56が固定されている。配管56は、Γ状の形状を有しており、これにより配管56の一端口59は下方を向いている。より具体的には、配管56の一端口59は垂線に対して例えば10°程度傾いている。このように傾斜を持たせることによって例えば一端口59から導出される溶融金属がサーバ側に流れ落ちた際に湯面から湯滴が飛び散ることが少なくなる。
流路57及びこれに続く配管56の内径はほぼ等しく、65mm〜85mm程度が好ましい。従来からこの種の配管の内径は50mm程度であった。これはそれ以上であると容器内を加圧して配管から溶融金属を導出する際に大きな圧力が必要であると考えられていたからである。これに対して本発明者等は、流路57及びこれに続く配管56の内径としてはこの50mmを大きく超える65mm〜85mm程度が好ましく、より好ましくは70mm〜80mm程度、更には好ましくは70mmであることを見出した。すなわち、溶融金属が流路や配管を上方に向けて流れる際に、流路や配管に存在する溶融金属自体の重量及び流路や配管の内壁の粘性抵抗の2つパラメータが溶融金属の流れを阻害する抵抗に大きな影響を及ぼしているものと考えられる。ここで、内径が65mmより小さいときには流路を流れる溶融金属はどの位置においても溶融金属自体の重量と内壁の粘性抵抗の両方の影響を受けているが、内径が65mm以上となると流れのほぼ中心付近から内壁の粘性抵抗の影響を殆ど受けない領域が生じ始め、その領域が次第に大きくなる。この領域の影響は非常に大きく、溶融金属の流れを阻害する抵抗が下がり始める。溶融金属を容器内から導出する際に容器内を非常に小さな圧力で加圧すればよくなる。つまり、従来はこのような領域の影響は全く考慮に入れず、溶融金属自体の重量だけが溶融金属の流れを阻害する抵抗の変動要因として考えられており、作業性や保守性等の理由から内径を50mm程度としていた。一方、内径が85mmを超えると、溶融金属自体の重量が溶融金属の流れを阻害する抵抗として非常に支配的となり、溶融金属の流れを阻害する抵抗が大きくなってしまう。本発明者等の試作による結果によれば、70mm〜80mm程度の内径が容器内の圧力を非常に小さな圧力で加圧すればよく、特に70mmが標準化及び作業性の観点から最も好ましい。すなわち、配管径は50mm、60mm70mm、、、と10mm単位で標準化されており、配管径がより小さい方が取り扱いが容易で作業性が良好だからである。
上記の大蓋52のほぼ中央には開口部60が設けられ、開口部60には取っ手61が取り付けられたハッチ62が配置されている。ハッチ62は大蓋52上面よりも少し高い位置に設けられている。ハッチ62の外周の1ヶ所にはヒンジ63を介して大蓋52に取り付けられている。これにより、ハッチ62は大蓋52の開口部60に対して開閉可能とされている。また、このヒンジ63が取り付けられた位置と対向するように、ハッチ62の外周の2ヶ所には、ハッチ62を大蓋52に固定するためのハンドル付のボルト64が取り付けられている。大蓋52の開口部60をハッチ62で閉めてハンドル付のボルト64を回動することでハッチ62が大蓋52に固定されることになる。また、ハンドル付のボルト64を逆回転させて締結を開放してハッチ62を大蓋52の開口部60から開くことができる。そして、ハッチ62を開いた状態で開口部60を介して容器100内部のメンテナンスや予熱時のガスバーナの挿入が行われるようになっている。
また、ハッチ62の中央、或いは中央から少しずれた位置には、容器100内の減圧及び加圧を行うための内圧調整用の貫通孔65が設けられている。この貫通孔65には加減圧用の配管66が接続されている。この配管66は、貫通孔65から上方に伸びて所定の高さで曲がりそこから水平方向に延在している。この配管66の貫通孔65への挿入部分の表面には螺子山がきられており、一方貫通孔65にも螺子山がきられており、これにより配管66が貫通孔65に対して螺子止めにより固定されるようになっている。
この配管66の一方には、加圧用又は減圧用の配管67が接続可能になっており、加圧用の配管には加圧気体に蓄積されたタンクや加圧用のポンプが接続されており、減圧用の配管には減圧用のポンプが接続されている。そして、減圧により圧力差を利用して配管56及び流路57を介して容器100内に溶融アルミニウムを導入することが可能であり、加圧により圧力差を利用して流路57及び配管56を介して容器100外への溶融アルミニウムの導出が可能である。なお、加圧気体として不活性気体、例えば窒素ガスを用いることで加圧時の溶融アルミニウムの酸化をより効果的に防止することができる。
本実施形態では、大蓋52のほぼ中央部に配置されたハッチ62に加減圧用の貫通孔65が設けられている一方で、上記の配管66が水平方向に延在しているので、加圧用又は減圧用の配管67を上記の配管66に接続する作業を安全にかつ簡単に行うことができる。また、このように配管66が延在することによって配管66を貫通孔65に対して小さな力で回転させることができるので、貫通孔65に対して螺子止めされた配管66の固定や取り外しを非常に小さな力で、例えば工具を用いることなく行うことができる。
ハッチ62の中央から少しずれた位置で前記の加減圧用の貫通孔65とは対向する位置には、圧力開放用の貫通孔68が設けられ、圧力開放用の貫通孔68には、リリーフバルブ(図示を省略)が取り付けられるようになっている。これにより、例えば容器100内が所定の圧力以上となったときには安全性の観点から容器100内が大気圧に開放されるようになっている。
大蓋52には、液面センサとしての2本の電極69がそれぞれ挿入される液面センサ用の2つの貫通孔70が所定の間隔をもって配置されている。これらの貫通孔70には、それぞれ電極69が挿入されている。これら電極69は容器100内で対向するように配置されており、それぞれの先端は例えば容器100内の溶融金属の最大液面とほぼ同じ位置まで延びている。そして、電極69間の導通状態をモニタすることで容器100内の溶融金属の最大液面を検出することが可能であり、これにより容器100への溶融金属の過剰供給をより確実に防止できるようになっている。
本体50の底部裏面には、例えばフォークリフトのフォーク(図示を省略)が挿入される断面口形状で所定の長さの脚部71が例えば平行するように2本配置されている。また、本体50内側の底部は、流路57側が低くなるように全体が傾斜している。これにより、加圧により流路57及び配管56を介して外部に溶融アルミニウムを導出する際に、いわゆる湯の残りが少なくなる。また、例えばメンテナンス時に容器100を傾けて流路57及び配管56を介して外部に溶融アルミニウムを導出する際に、容器100を傾ける角度をより小さくでき、安全性や作業性が優れたものとなる。
このように本実施形態に係る容器100では、ハッチ62に内圧調整用の貫通孔65を設け、その貫通孔65に内圧調整用の配管66を接続しているので、容器100内に溶融金属を供給する度に内圧調整用の貫通孔65に対する金属の付着を確認することができる。従って、内圧調整に用いるための配管66や貫通孔65の詰りを未然に防止することができる。
また、本実施形態に係る容器100では、ハッチ62に内圧調整用の貫通孔65が設けられ、しかもそのハッチ62が溶融アルミニウムの液面の変化や液滴が飛び散る度合いが比較的に小さい位置に対応する容器100の上面部のほぼ中央に設けられているので、溶融アルミニウムが内圧調整に用いるための配管66や貫通孔65に付着することが少なくなる。従って、内圧調整に用いるための配管66や貫通孔65の詰りを防止することができる。
更に、本実施形態に係る容器100では、ハッチ62が大蓋52の上面部に設けられているので、ハッチ62の裏面と液面との距離が大蓋52の裏面と液面との距離に比べて大蓋52の厚み分だけ長くなる。従って、貫通孔65が設けられたハッチ62の裏面にアルミニウムが付着する可能性が低くなり、内圧調整に用いるための配管66や貫通孔65の詰りを防止することができる。
次に、第2の工場20における第2の炉21から容器100への供給システムを図6に基づき説明する。
図6に示すように、第2の炉21内には溶融アルミニウムが貯留されている。この第2の炉21には供給部21aが設けられ、この供給部21aには吸引管201が挿入されている。この吸引管201は、供給部21aの溶融されたアルミニウムの液面から一端口(吸引管201の他方の先端部201b)が出没するように配置されている。すなわち、吸引管201の一方の先端部201aは第2の炉21の底部付近まで延在し、吸引管201の他方の先端部201bは供給部21aから外側に導出されている。吸引管201は、保持機構202により基本的には傾斜して保持されている。その傾斜角は例えば垂線に対して10°程度傾いており、上記容器100における配管56の先端部の傾斜と合致するようになっている。この吸引管201の先端部201bは容器100における配管56の先端部に接続されるものであり、このように傾斜を合致されることによって吸引管201の先端部201bと容器100における配管56の先端部との接続が容易となる。
そして、配管66に減圧用のポンプ313に接続された配管67を接続する。次に、ポンプ313を作動させて容器100内を減圧する。これにより、第2の炉21内に貯留されている溶融アルミニウムが吸引管201及び配管56を介して容器100内に導入される。
本実施形態では、特に、このように第2の炉21内に貯留されている溶融アルミニウムを吸引管201及び配管56を介して容器100内に導入するようにしているので、溶融アルミニウムが外部の空気と接触することはない。従って、酸化物が生じることがなく、本システムを用いて供給される溶融アルミニウムは非常に品質が良いものとなる。また、容器100内から酸化物を除去するための作業は不要となり、作業性も向上する。
本実施形態では、特に、容器100に対する溶融アルミニウムの導入と容器100からの溶融アルミニウムの導出を実質的に2本の配管56、312だけを使って行うことができるので、システム構成を非常にシンプルなものとすることができる。また、溶融アルミニウムが外気に接触する機会が激減するので、酸化物の生成をほぼなくすことができる。
図7は以上のシステムを自動車工場に適用した場合の製造フローを示したものである。
まず、図6に示したように、第2の炉21内に貯留されている溶融アルミニウムを吸引管201及び配管56を介して容器100内に導入(受湯)する(ステップ501)。
次に、図1に示したように、容器100を公道30を介してトラック32により第2の工場20から第1の工場10に搬送する(ステップ502)。
次に、第1の工場(ユースポイント)10では、容器100が配送車18により自動車エンジン製造用のダイキャストマシーン11まで配送され、容器100から保持炉12に溶融アルミニウムが供給される(ステップ503)。
次に、このダイキャストマシーン11において、保持炉12に貯留された溶融アルミニウムを用いた自動車エンジンの成型が行われる(ステップ504)。
そして、このように成型された自動車エンジン及び他の部品を使って自動車の組み立てが行われ、自動車が完成する(ステップ505)。
本実施形態では、上述したように自動車のエンジンが酸化物を殆ど含まないアルミニウム製であるので、性能及び耐久性のよいエンジンを有する自動車を製造することが可能である。
次に、本発明の別の実施形態について説明する。
図8は本発明の供給装置及び成形装置の構成の例を概略的に示す図である。ここでは本発明をマグネシウム合金のダイキャスト成形に適用した例を説明する。
保持炉420は溶融状態の金属(溶湯)を保持するための炉である。保持炉420のチャンバー420aの材質は、この例では18−8ステンレススチールを用いており、さらに内側はFCの板でアルマー処理をしている。この保持炉420の中には溶融したマグネシウム合金401が収容されている。この保持炉はヒータ425により溶解温度が保たれている。また保持炉420には内部を排気する排気系421と、非酸化性ガスを供給する非酸化性ガス導入系422が接続されている。422bはガスのリザバーである。この例では排気系421は少なくとも1台の真空ポンプ421bを備えている。また非酸化性ガス導入系422は保持炉420内を加圧する機能も担っている。さらに保持炉420には内部の圧力を測定する圧力センサ(G)423、及び溶湯の温度を測定する温度センサ424を備えている。圧力センサ423としてはブルドンゲージ、ピラニーゲージ、BAゲージなど使用する圧力範囲に応じて選択して用いる。温度センサ424は、熱電対、輻射温度計などを用いることができる。
パージ室430では溶融金属の受け渡しが行われる。このパージ室430は内部を気密に保持できるようになっている。保持炉420と同様に、パージ室430には内部を排気する排気系431と、非酸化性ガスを供給する非酸化性ガス導入系432が接続されている。この例では排気系431は少なくとも1台の真空ポンプ431bを備えている。また非酸化性ガス導入系432はパージ室430内を加圧する機能も担っている。432bはガスのリザバーである。さらにパージ室430にも内部の圧力を測定する圧力センサ(G)433が設けられている。
保持炉420とパージ室430との間は配管440、バイパス管442により接続されている。443はバイパスバルブである。配管440には抵抗体などのヒータ441が巻き付けてある。このヒータ441により配管内部の温度はマグネシウム合金が溶融するような温度に保たれている。いまパージ室430の圧力を保持炉420の圧力よりも低くすると、溶融したマグネシウム合金401は配管440内を通って保持炉420からパージ室430へと押し出される。またパージ室430の圧力を保持炉420の圧力よりも高くすると、配管内に残っていたマグネシウム合金401はパージ室430側から保持炉420へと吸引される。いずれの場合でも系内の酸素濃度は金属の酸化が抑制するように調節される。このため金属は燃焼したり爆発することなく安全にパージ室430内のユースポイントへと供給される。また金属の酸化が抑制されるので酸化物の生成も抑制され、あるいはまったく酸化しない。このため表面も清浄で酸化物もない高品質の金属を供給することができる。さらに本発明では系内の酸素濃度は、金属の酸化が抑制されるように制御されているため有害なベリリウムなどの防燃剤を添加する必要もない。したがって作業環境も向上する。また製品、端材(バリなど)、廃棄物(製品の廃棄物や不良品)にも有害物質が含まれることはない。このため有害物質が環境中へ拡散するのを防ぐことができる。
さてパージ室430はダイキャスト装置450の溶融金属の供給地点(ユースポイント)ともなっている。この例では、ダイキャスト装置450のローディングチャンバ451がパージ室430内に突き出すように設けられている。ローディングチャンバ451とパージ室430とは溶接などにより気密に封止されている。ローディングチャンバ451は開口部を有し、この開口部から溶融した金属(この場合マグネシウム合金1)が供給される。供給された金属は射出シリンダー452により金型側へ供給される。なおローディングチャンバ451はヒータ453により保温されている。金型454aはキャビティー型、金型454bはコア型であり、この間の空間で供給された金属は所定形状に成形される。金型454a、454bは型締め機構455a(固定側)、455b(移動側)により挟まれている。移動側の型締め機構455bは油圧シリンダー457により加圧することができる。
本発明の成形装置によれば、供給される金属はユースポイントで酸化することはない。したがって製品中に酸化物が混入したりせず、高品質の製品を得ることができる。さらに精度も向上し、とくに薄型の成形品ではその効果は顕著である。また製品が黒ずんだりすることもなく外観も向上する。
一般にマグネシウム合金のダイキャスト成形では20〜40%もの酸化物が生じ、生産性が極めて低い。本発明によれば酸化物の生成を極めて低レベルに抑制することができる。したがって本発明によれば生産性を高め製品コストを低くすることができる。
さらに製造工程で排出される廃棄物や、製品の使用後に生じる廃棄物には有害なベリリウムなどが含まれている。マグネシウム合金は危険物に指定されてもいる。本発明によれば廃棄物の量を低減することができ、有害物質も不用になるから、廃棄物の処理コストも低減することができる。さらに本発明の容器を使用すれば、危険物としてのマグネシウム合金も安全に搬送することができる。
図9は本発明の供給装置の別の例を概略的に示す図である。ここでは図10に例示した保持炉420の前段に溶解炉410を設けた構成について説明する。
図10は本発明の溶解炉の例を概略的に示す図である。溶融炉10は固体状態の金属を溶融するための炉である。溶融炉410の構成は保持炉420とよく似ている。溶融炉410のチャンバー410aの材質は、この例では18−8ステンレススチールを用いており、さらに内側はFCの板でアルマー処理をしている。この溶融炉410の中には溶融したマグネシウム合金401が投入されヒータ415により加熱される。416は隔壁である。また溶融炉410には内部を排気する排気系411と、非酸化性ガスを供給する非酸化性ガス導入系412が接続されている。412bはガスのリザバーである。この例では排気系411は少なくとも1台の真空ポンプ411bを備えている。また非酸化性ガス導入系412は溶融炉410内を加圧する機能も担っている。さらに溶融炉410には内部の圧力を測定する圧力センサ(G)413、及び溶湯の温度を測定する温度センサ414を備えている。
溶解炉410に固体金属401bを投入するには、まず気密扉463を開けて、外部からパージ室461へ固体金属401bを導入する。気密扉463を閉じ、排気系466でパージ室461内を排気する。バイパス467を開いてパージ室461と投入室462との圧力をバランスさせた状態で、気密扉464および断熱扉465を開く。固体金属はプッシャーやドローワーなどで移動する。投入室462の底部は回転機構を有しており、この回転により固体金属は溶解炉410へと投入される。
図11は本発明の容器の構成の例を概略的に示す図である。この容器(容器)470は、気密な気密領域を構成するフレーム471と、フレーム471の内側に配設された断熱材472と、フレーム471および断熱材472を貫通して配設された配管473、474とを備えている。また、気密領域内の温度を測定する温度センサ475も備えている。
フレーム471は内部に気密領域である閉空間を形成する。またフレーム471は、容器470全体の強度の保持の役割と、外部から断熱材472を保護する役割を果たす。フレーム471は各種金属材料により構成することができるが、材質は容器の用途に応じて適宜選択すればよい。この選択は容器に収容する内容物の物理的性質、化学的性質を考慮してなされることが好ましい。例えば、たとえ断熱材が破けたとしてもフレームが内容物の熱や、内容物との化学反応により溶けたり割れたりしないように選択する。断熱材についても同様であって、例えば各種耐熱煉瓦が容器の用途に応じて選択される。
配管473、474は容器470の外部と内部の空間とのアクセスを提供するものである。この配管は1本でも複数でもよい。例えばこの配管473に図示しない排気系を接続して内部を減圧することにより、内部の気密領域の酸素濃度、酸素活量を制御することができる。また例えばこの配管473に非酸化性ガス導入系を接続することにより、内部に非酸化性ガスを供給することができる。
このような減圧、加圧により、配管474を通じて、流体(溶融金属や粉体)を容器から出したり、入れたりすることができる。配管473から非酸化性ガスを導入して気密領域を加圧すれば、配管474を通じて溶融金属を外部へ押し出すことができる。また配管473を排気系に接続して気密領域を減圧すれば、配管474を通じて溶融金属を外部から吸引することができる。配管474は必要に応じてヒータなどで加熱する。温度は管内を流通する内容物の融点より高くなるように設定することが好ましい。このとき排気系や非酸化性ガス供給系により、溶融金属や粉体の移動だけでなく、系内の酸素濃度も制御することができる。このように本願発明においては、減圧状態を含めた圧力差の生成が、溶融金属や粉体の質量移動と酸化防止のための両方に寄与している点が大きな特徴の一つとなっている。さらに配管474内の雰囲気が酸化的になると配管内に酸化物が付着し配管が詰まる。本発明では配管474内の酸素濃度が制御されるだけでなく配管内に内容物を残さないようにすることもできるので、このような詰まりの問題も解決することができる。
図12は配管の接続に用いることができるジョイントの例を示す図である。本発明の容器は、前述の実施形態における保持炉420と実質的に等価な役割を果たすことができる。つまり保持炉420に代えて、1つまたは複数の容器470を用いることができる。このとき配管474は金属が供給される側(例えばパージ室430)との配管440と接続すればよい。
配管474と配管440とは、例えばジョイント475により接続することができる。ジョイント475はガスケット476を備え、配管474および配管440と気密に接続される。ガスケット476が樹脂の場合には水冷ヘッド477などによりガスケットの近傍を冷却することが好ましい。銅や金などのガスケットを用いる場合には水冷ヘッド477は省略可能である。さらにこのジョイント475は配管473と排気系、ガス導入系との接続にも用いることができる。
図13は本発明の容器の構成の別の例を概略的に示す図である。この容器480ではフレーム471は開口部を有し、この開口部はふた471bにより気密に封止される。またこの容器480は配管473により排気系476と接続されている。
そして温度センサ475により溶融金属401の温度を測定し、測定した温度や温度の変化率に応じて排気系476を制御するコントローラ477を備えている。例えば、バルブ476bの開閉がコントローラ477により制御される。このような構成を採用することにより、本発明の容器では圧力によって系内の熱伝導度を制御することができる。
耐熱煉瓦等の耐熱材は、その経時変化によって耐熱性能が低下する。例えば複数の容器を使用して溶融金属を輸送するばあい、容器の固体差によって溶融金属の温度が異なることがある。時には、ユーザの要求を満たさない程度まで溶融金属の温度が低下することもある。本発明の容器では、例えば溶融金属の搬送中に温度低下が認められる容器について、フレーム内を排気系により減圧し、内部の熱伝導率を小さく抑制することができる。これにより断熱材の断熱性能の低下によらず、溶融金属の温度を保持することができる。複数の容器の内容物の温度差を小さくすることもできる。また溶融金属の酸化も防止することができる。圧力制御は温度そのものではなく、温度変化の割合(例えば微分値)によって行うこともでき、この構成のほうがより的確な溶融金属の温度制御を行うことができる。
図14は本発明の容器の構成の別の例を概略的に示す図である。この容器490は、内面に断熱材472を配したフレーム471及び蓋471bと、断熱材472の内側に配設されたヒータ491と、溶融金属401の温度を測定する温度センサ475と、測定した温度または温度の変化率に応じてヒータ475を制御するコントローラ492とを備えている。例えば温度センサ475により測定した温度の変化率に応じて、ヒータ491に電力を供給する電源493を制御することにより、金属401の温度は適切に管理されるのである。この実施形態では、温度管理の観点からは容器の気密性問われない。もちろん内部の圧力や酸素濃度は調節するほうが好ましい。とくに不安定な金属を収容する場合はそうするべきである。
なおこの例では容器490はトラックや船舶の荷台494に搭載した様子を示している。そして荷台494には電極495が露出しており、容器を所定の場所に置くことにより容器側の電極496との電気的接続が確保される。497は碍子などの絶縁部材である。この場合、電源493はトラックに搭載することができる。またトラックのバッテリーと共用してもよい。このような構成を採用することにより高品質な金属の配送供給を行うことができる。
図15は本発明の供給装置、容器を用いた金属の配送モデルの例を説明するための図である。
例えば溶融金属を使用する場合、おおよそ3つの態様が考えられる。1番目はユースポイントの近傍、成形装置のある工場などに、溶解炉や保持炉を設置する場合である。2番目は成形装置ごとに小型の溶解炉を備える場合である。3番目は所定の場所で金属を溶解し、ユースポイントまで溶解した金属を配送する場合である。本発明はいずれの場合においても適用可能であり、品質の向上、安全性の向上、生産性の向上、エネルギーコストの低減をもたらす。前述の2番目の例はエネルギー的には1番不利であると考えられる。この場合たとえば図11に示すように、ユースポイントの近傍に本発明の保持炉420または本発明の容器470、480、490を配置すればよい。金属は良好な状態を保ち、かつ安全に配送される。このような構成によりエネルギーコストは大幅に削減される。さらにユースポイントに個別に配置していた溶解炉のコスト、設置スペースのコストもなくなるのである。