JP2004098112A - 鍛造ピストンおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】頂部の疲労強度に優れる鍛造ピストンとその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ピストン頂部の中央部において、押出し加工により生じたメタルフローの方向が、略一方向にそろっており、内燃機関内でのピストンの運動方向に対して略垂直であり、好ましくは、前記メタルフローの方向が、内燃機関の吸気排気方向と略平行である鍛造ピストンおよびその製造方法を提供する。
【選択図】 図1
【解決手段】ピストン頂部の中央部において、押出し加工により生じたメタルフローの方向が、略一方向にそろっており、内燃機関内でのピストンの運動方向に対して略垂直であり、好ましくは、前記メタルフローの方向が、内燃機関の吸気排気方向と略平行である鍛造ピストンおよびその製造方法を提供する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鍛造ピストンとその製造方法に関し、特に、ピストン頂部の疲労強度に優れる鍛造ピストンとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンの高出力、軽量化を目的として、2輪の大型車を中心に鍛造ピストンの採用が増えている。従来から行われている鍛造ピストンの製造工程の概略を図3に示す。図3に示すように、従来の鍛造ピストンの製造工程は以下の4つの工程を含む。
【0003】
(A)鋳造工程:アルミ等の金属の溶湯1を鋳型2に注ぎ、該溶湯1を鋳型2出口において水3を用いて冷却することにより、該金属を連続して鋳造し、連続鋳造棒4を成形する。
(B)押出し工程:前記鋳造工程により得られた連続鋳造棒4に押出し加工を施す。特に、円形の開口部を持つ金型5bを用いて押出し加工を行うことで、円柱形の棒材6bを得る。
(C)ビレット製造工程:前記押出し工程により得られた棒材6bを切断することで、鍛造用のビレット7cを得る。特に、押出し方向と略垂直に棒材を切断することで、円板形状のビレット7cを得る。
(D)鍛造工程:前記ビレット製造工程により得られたビレット7cを所定の鍛造用下型8に配置し、所定の鍛造用上型9を用いて、鍛造を施し、鍛造ピストン粗材を得る。
【0004】
このように製造された鍛造ピストン粗材は、さらにピストンピン挿通用のピン孔を穿設したり、ピストンリング装着用のリング溝を切削したりする等、仕上げの機械加工工程を経て、鍛造ピストンとなる。
【0005】
ここで、押出し加工により得られた棒材6bは、押出し方向と平行な金属組織の流れを有する。本明細書において、押出し加工により生じた金属組織の流れをメタルフローと記す。メタルフローは、金属顕微鏡を用いて、例えば50〜100倍の倍率で金属の切片を観察することで確認することができる。なお、図1〜3において、棒材6a、bやビレット7a、b、c等におけるメタルフローを模式的に細い線で表す。
【0006】
また、従来の方法では、押出し方向と垂直に棒材を切断しビレットを設けるため、鍛造時あまり塑性変形しないピストン頂部は押出材のメタルフローがそのまま残り、鍛造ピストンはその頂部に鍛造を施す方向(すなわち、内燃機関でのピストンの運動方向)と略平行なメタルフローをもつ。
また、最近は鍛造技術の向上により、ピストン頂部のバルブリセスの形状等を鍛造により成形することが可能になっているが、ピンボス部、スカート部、サイドウォール部と比較して、ピストン頂部は鍛造による塑性変形が小さい。
【0007】
このため、鍛造を施した後も、ピストン頂部のメタルフローは押出し材のままとなる部分がほとんどであり、ピストン頂部には、ピストンの運動方向と略平行なメタルフローがそのまま残る。
図3(E)に、従来の鍛造ピストン10の、ピストンピンの中心軸に垂直な平面での模式的な断面図を示し、その内部におけるメタルフローを見やすくするために模式的に細い線で表す。このようなメタルフローは表面において容易に視認認できるわけではない。
【0008】
高出力エンジンに搭載されるピストンの問題として頂部に発生する亀裂がある。ピストン頂部に生じる亀裂は主にピストン頂面に起点をもちピストン内部へ進展する。亀裂の断面を金属顕微鏡で観察することで、この亀裂がメタルフローに沿って進展していることがわかる。
ピストン頂部における亀裂は、ピストン頂部に作用する曲げ応力により発生する。また、押出し材の押出し方向と押出と直角な方向では、機械的性質は押出し方向のほうが優れている。つまり、一般的に押出し材は、メタルフロー(すわなち押出し方向)と垂直な方向と比べて平行な方向に亀裂が生じやすい。このため、従来の鍛造ピストンは、その頂部において、発生しようとする亀裂に対して強度的に不利なメタルフローを有している。
【0009】
このように、鍛造ピストンが高出力エンジンに搭載されたときでも、鍛造ピストン頂部に亀裂が生じるといった不具合を生じないように、従来では、ピストン頂部の肉厚を増やすことでピストンの機械的強度を高めていた。
【0010】
また、下記の特許文献1に開示されているように、型内で金属粉末を押圧して固化することによりビレットとしてから、このビレットを、ビレットを固化したときの押圧方向に沿った方向の力で鍛造することにより、ピストン頂部の中心部から周辺部に向かう方向のメタルフローを有する鍛造ピストンを得る方法が知られている。しかし、このような方法は、所定の金属粉末を製造する工程が必要であり、また鍛造工程にかけるビレットを1つずつ製造する必要があるなどコスト面等で問題がある。
【0011】
【特許文献1】
特開2000−39067号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、廉価に製造することが可能な、ピストン頂部の疲労強度に優れる鍛造ピストンとその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ピストン頂部の中央部において、押出し加工により生じたメタルフローの方向が、略一方向にそろっており、内燃機関内でのピストンの運動方向に対して略垂直である鍛造ピストンを提供する。好ましくは、前記メタルフローの方向は、内燃機関の吸気排気方向と略平行である。
【0014】
また、本発明は、別の側面において、金属素材に押出し加工を施す押出し工程と、前記押出し工程により得られた棒材を切断して、略一方向にそろったメタルフローを有するビレットを製造する工程と、前記ビレット製造工程により得られたビレットを押出し方向と略垂直な方向に力を加えて鍛造する鍛造工程とを含む鍛造ピストンの製造方法を提供する。好ましくは、前記ビレットを、押出し方向と略平行な平面を持つ円板形状のビレットに加工するビレット加工工程をさらに含み、前記鍛造工程において、前記平面に略垂直な方向に鍛造する。また、さらに好ましくは、前記鍛造工程において、押出し方向が内燃機関の吸気排気方向と略平行になるように鍛造する。
【0015】
ここで、「ピストン頂部」とは、内燃機関におけるピストンの燃焼室に向かう面のことをいう。また、「吸気排気方向」とは、内燃機関における吸気バルブと排気バルブとを結ぶ方向を意味し、ピストン単体では、ピストンピンの中心軸に略垂直な方向である。ピストンの縦の断面(メタルフローを模式的に示す)と、ピストンピンボス11を図1(F)、図3(E)に示す。ピストンの上面図にメタルフローを模式的に書き加えたものを図2に示す。図2では、ピストンピンボスは破線で示す。
また、「押出し加工」とは、加熱したビレット(主に円柱形の鋳塊)を、求める形状に加工された金型(ダイス)から、圧力をかけて押出す加工をいい(前方押出し、後方押出しがある)、通常押出性をよくするために熱間押出しである。アルミニウム合金や銅、黄銅などの非鉄金属の棒、管、異形材の製造に利用される。
【0016】
本発明にかかる鍛造ピストンは、ピストン頂部に発生する亀裂に対して、高い疲労強度を有する。
【0017】
本発明にかかる鍛造ピストンでは、押出し方向と略垂直な方向に鍛造を施す。このため、本発明にかかる鍛造ピストンの頂部におけるメタルフローは、内燃機関におけるピストンの運動方向と垂直となり、以下に詳細に説明するように、ピストン頂部の曲げ応力に対する機械的強度は、従来と比べて強くなる。
さらに、メタルフローの方向を内燃機関の吸気排気方向と略平行とすることで、ピストン頂部の曲げ応力に対する機械的強度をさらに強くすることができる。
【0018】
このように、本発明によると、簡単な方法でピストン頂部の機械的強度が強い鍛造ピストンを提供できる。このため、本発明によると、鍛造ピストン頂部の肉厚を、従来のものと比べ減らすことが可能であり、これはピストンの軽量化が可能であることを意味する。
なお、ピンボス、スカート、サイドウォール等は鍛造による塑性変形量が大きいため、ビレットのメタルフローを変更することによる機械的性質の低下はない。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態の1例を、添付図面を参照しながら説明する。もっとも、以下の本発明に係る実施の形態は本発明を限定するものではない。
図1に示すように、本実施の形態にかかる鍛造ピストン粗材の製造工程は以下の5つの工程を含む。なお、図3と同様にメタルフローを示す線を模式的に加えているが、これは単に発明の理解を助けるためのものであり、ビレットや鍛造加工されたピストンの表面上にこのような線が視認できるものでは必ずしもない。
【0020】
(A)鋳造工程:アルミ等の金属の溶湯1を鋳型2に注ぎ、該溶湯1を鋳型2出口において水3を用いて冷却することにより、該金属を連続して鋳造し、連続鋳造棒4を成形する。
(B)押出し工程:前記鋳造工程により得られた連続鋳造棒4に押出し加工を施す。特に、従来とは異なり、四角形の開口部を持つ金型5aを用いて押出し加工を行うことで、略四角柱形の棒材6aを得る。押出し工程により得る棒材6aの断面形状は四角形に限らないが、歩留まりを考慮すると該断面形状を四角形とするとコスト的に有利である。
【0021】
(C)ビレット製造工程:前記押出し工程により得られた棒材6aを切断することで、鍛造用のビレット7aを設ける。特に、棒材6aを切断することで、押出し方向と略平行な平面を持つ直方体形のビレット7aを設ける。
(D)ビレット加工工程:前記ビレット製造工程により得られた直方体形のビレット7aを、前記押出し工程における押出し方向と略平行方向の平面を持つ円板形状のビレット7bに機械加工する。なお、この際、ビレット7bの押出方向が判別できるようにするために、ビレット7aに刻印、ペイント等することで印をつけると好ましい。また、ビレット7bの形状は円板のほかにも多角板の形状であってもよい。
(E)鍛造工程:前記ビレット製造工程により得られたビレット7bを所定の鍛造用下型8に配置し、所定の鍛造用上型9を用いて、鍛造を施し、鍛造ピストン粗材を得る。特に、前記平面に対し略垂直な方向に鍛造する。さらに、押出し方向がピストンの吸気排気方向と平行になるように鍛造すると好ましい。
【0022】
このように製造された鍛造ピストン粗材は、さらにT6処理等の熱処理や、ピストンピン挿通用のピン孔を穿設したり、ピストンリング装着用のリング溝を切削したりする等、仕上げの機械加工工程を経て、鍛造ピストンとなる。
図1(F)に、本発明にかかる鍛造ピストン10の、ピストンピンの中心軸に垂直な平面での模式的な断面図を示し、その内部におけるメタルフローを模式的に細い線で表す。
【0023】
このような一連の工程で製造された鍛造ピストンは、ピストン頂部におけるメタルフローの方向が、内燃機関でのピストンの運動方向に対して略垂直、さらに吸気排気方向と略平行となる。このように、本発明にかかる鍛造ピストンは、その頂部において、発生しようとする亀裂に対して強度的に最も有利なメタルフローを有する。
【0024】
図2はピストン10をその頂部方向から見た模式図である。一般的に、内燃機関内でピストン10が運動するとき、ピストンの頂部は、高温にさらされ、高温になるため、材料の機械的強度が低下する。さらに、内燃機関の爆発力と、ピストンピンからの爆発力に対する反力のため、ピストン頂部特に中央部付近は、吸排気方向(図2におけるIN−EX方向)に最も大きい引張り力が作用することとなる。このため、ピストン頂部は、吸気排気方向(図2におけるIN−EX方向)に最もたわみやすい。このため、ピストン頂部には、吸気排気方向と垂直な方向に最も亀裂が生じやすい。
このように、押出し材はメタルフローと平行な方向に亀裂を生じやすいのであるから、メタルフロー12が吸気排気方向と垂直(図2(b))ではなく、平行(図2(a))になるように、ビレット7bに対して鍛造を施すことで、より機械強度の強い鍛造ピストンを得ることができる。
【0025】
【発明の効果】
上記したところから明らかなように、本発明によると、ピストン頂部から発生しようとする亀裂に対し、高い疲労強度を有する鍛造ピストンを廉価に製造することが可能である。したがって、従来のようにピストンの機械強度を高めるためにピストンの肉厚を増やす必要がなくなり、ピストンの軽量化が可能となるため、エンジン性能としては高出力化、低燃費化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る鍛造ピストンの製造工程を表す概念図である。
【図2】ピストンをその頂部方向から見た模式図である。
【図3】従来の鍛造ピストンの製造工程を表す概念図である。
【符号の説明】
1 溶湯
2 鋳型(鋳造用)
3 水
4 連続鋳造棒
5a,5b 金型(押出し用)
6a,6b 棒材
7a,7b,7c ビレット
8 鍛造用下型
9 鍛造用上型
10 ピストン
11 ピストンピンボス
12 メタルフロー
【発明の属する技術分野】
本発明は、鍛造ピストンとその製造方法に関し、特に、ピストン頂部の疲労強度に優れる鍛造ピストンとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンの高出力、軽量化を目的として、2輪の大型車を中心に鍛造ピストンの採用が増えている。従来から行われている鍛造ピストンの製造工程の概略を図3に示す。図3に示すように、従来の鍛造ピストンの製造工程は以下の4つの工程を含む。
【0003】
(A)鋳造工程:アルミ等の金属の溶湯1を鋳型2に注ぎ、該溶湯1を鋳型2出口において水3を用いて冷却することにより、該金属を連続して鋳造し、連続鋳造棒4を成形する。
(B)押出し工程:前記鋳造工程により得られた連続鋳造棒4に押出し加工を施す。特に、円形の開口部を持つ金型5bを用いて押出し加工を行うことで、円柱形の棒材6bを得る。
(C)ビレット製造工程:前記押出し工程により得られた棒材6bを切断することで、鍛造用のビレット7cを得る。特に、押出し方向と略垂直に棒材を切断することで、円板形状のビレット7cを得る。
(D)鍛造工程:前記ビレット製造工程により得られたビレット7cを所定の鍛造用下型8に配置し、所定の鍛造用上型9を用いて、鍛造を施し、鍛造ピストン粗材を得る。
【0004】
このように製造された鍛造ピストン粗材は、さらにピストンピン挿通用のピン孔を穿設したり、ピストンリング装着用のリング溝を切削したりする等、仕上げの機械加工工程を経て、鍛造ピストンとなる。
【0005】
ここで、押出し加工により得られた棒材6bは、押出し方向と平行な金属組織の流れを有する。本明細書において、押出し加工により生じた金属組織の流れをメタルフローと記す。メタルフローは、金属顕微鏡を用いて、例えば50〜100倍の倍率で金属の切片を観察することで確認することができる。なお、図1〜3において、棒材6a、bやビレット7a、b、c等におけるメタルフローを模式的に細い線で表す。
【0006】
また、従来の方法では、押出し方向と垂直に棒材を切断しビレットを設けるため、鍛造時あまり塑性変形しないピストン頂部は押出材のメタルフローがそのまま残り、鍛造ピストンはその頂部に鍛造を施す方向(すなわち、内燃機関でのピストンの運動方向)と略平行なメタルフローをもつ。
また、最近は鍛造技術の向上により、ピストン頂部のバルブリセスの形状等を鍛造により成形することが可能になっているが、ピンボス部、スカート部、サイドウォール部と比較して、ピストン頂部は鍛造による塑性変形が小さい。
【0007】
このため、鍛造を施した後も、ピストン頂部のメタルフローは押出し材のままとなる部分がほとんどであり、ピストン頂部には、ピストンの運動方向と略平行なメタルフローがそのまま残る。
図3(E)に、従来の鍛造ピストン10の、ピストンピンの中心軸に垂直な平面での模式的な断面図を示し、その内部におけるメタルフローを見やすくするために模式的に細い線で表す。このようなメタルフローは表面において容易に視認認できるわけではない。
【0008】
高出力エンジンに搭載されるピストンの問題として頂部に発生する亀裂がある。ピストン頂部に生じる亀裂は主にピストン頂面に起点をもちピストン内部へ進展する。亀裂の断面を金属顕微鏡で観察することで、この亀裂がメタルフローに沿って進展していることがわかる。
ピストン頂部における亀裂は、ピストン頂部に作用する曲げ応力により発生する。また、押出し材の押出し方向と押出と直角な方向では、機械的性質は押出し方向のほうが優れている。つまり、一般的に押出し材は、メタルフロー(すわなち押出し方向)と垂直な方向と比べて平行な方向に亀裂が生じやすい。このため、従来の鍛造ピストンは、その頂部において、発生しようとする亀裂に対して強度的に不利なメタルフローを有している。
【0009】
このように、鍛造ピストンが高出力エンジンに搭載されたときでも、鍛造ピストン頂部に亀裂が生じるといった不具合を生じないように、従来では、ピストン頂部の肉厚を増やすことでピストンの機械的強度を高めていた。
【0010】
また、下記の特許文献1に開示されているように、型内で金属粉末を押圧して固化することによりビレットとしてから、このビレットを、ビレットを固化したときの押圧方向に沿った方向の力で鍛造することにより、ピストン頂部の中心部から周辺部に向かう方向のメタルフローを有する鍛造ピストンを得る方法が知られている。しかし、このような方法は、所定の金属粉末を製造する工程が必要であり、また鍛造工程にかけるビレットを1つずつ製造する必要があるなどコスト面等で問題がある。
【0011】
【特許文献1】
特開2000−39067号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、廉価に製造することが可能な、ピストン頂部の疲労強度に優れる鍛造ピストンとその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ピストン頂部の中央部において、押出し加工により生じたメタルフローの方向が、略一方向にそろっており、内燃機関内でのピストンの運動方向に対して略垂直である鍛造ピストンを提供する。好ましくは、前記メタルフローの方向は、内燃機関の吸気排気方向と略平行である。
【0014】
また、本発明は、別の側面において、金属素材に押出し加工を施す押出し工程と、前記押出し工程により得られた棒材を切断して、略一方向にそろったメタルフローを有するビレットを製造する工程と、前記ビレット製造工程により得られたビレットを押出し方向と略垂直な方向に力を加えて鍛造する鍛造工程とを含む鍛造ピストンの製造方法を提供する。好ましくは、前記ビレットを、押出し方向と略平行な平面を持つ円板形状のビレットに加工するビレット加工工程をさらに含み、前記鍛造工程において、前記平面に略垂直な方向に鍛造する。また、さらに好ましくは、前記鍛造工程において、押出し方向が内燃機関の吸気排気方向と略平行になるように鍛造する。
【0015】
ここで、「ピストン頂部」とは、内燃機関におけるピストンの燃焼室に向かう面のことをいう。また、「吸気排気方向」とは、内燃機関における吸気バルブと排気バルブとを結ぶ方向を意味し、ピストン単体では、ピストンピンの中心軸に略垂直な方向である。ピストンの縦の断面(メタルフローを模式的に示す)と、ピストンピンボス11を図1(F)、図3(E)に示す。ピストンの上面図にメタルフローを模式的に書き加えたものを図2に示す。図2では、ピストンピンボスは破線で示す。
また、「押出し加工」とは、加熱したビレット(主に円柱形の鋳塊)を、求める形状に加工された金型(ダイス)から、圧力をかけて押出す加工をいい(前方押出し、後方押出しがある)、通常押出性をよくするために熱間押出しである。アルミニウム合金や銅、黄銅などの非鉄金属の棒、管、異形材の製造に利用される。
【0016】
本発明にかかる鍛造ピストンは、ピストン頂部に発生する亀裂に対して、高い疲労強度を有する。
【0017】
本発明にかかる鍛造ピストンでは、押出し方向と略垂直な方向に鍛造を施す。このため、本発明にかかる鍛造ピストンの頂部におけるメタルフローは、内燃機関におけるピストンの運動方向と垂直となり、以下に詳細に説明するように、ピストン頂部の曲げ応力に対する機械的強度は、従来と比べて強くなる。
さらに、メタルフローの方向を内燃機関の吸気排気方向と略平行とすることで、ピストン頂部の曲げ応力に対する機械的強度をさらに強くすることができる。
【0018】
このように、本発明によると、簡単な方法でピストン頂部の機械的強度が強い鍛造ピストンを提供できる。このため、本発明によると、鍛造ピストン頂部の肉厚を、従来のものと比べ減らすことが可能であり、これはピストンの軽量化が可能であることを意味する。
なお、ピンボス、スカート、サイドウォール等は鍛造による塑性変形量が大きいため、ビレットのメタルフローを変更することによる機械的性質の低下はない。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態の1例を、添付図面を参照しながら説明する。もっとも、以下の本発明に係る実施の形態は本発明を限定するものではない。
図1に示すように、本実施の形態にかかる鍛造ピストン粗材の製造工程は以下の5つの工程を含む。なお、図3と同様にメタルフローを示す線を模式的に加えているが、これは単に発明の理解を助けるためのものであり、ビレットや鍛造加工されたピストンの表面上にこのような線が視認できるものでは必ずしもない。
【0020】
(A)鋳造工程:アルミ等の金属の溶湯1を鋳型2に注ぎ、該溶湯1を鋳型2出口において水3を用いて冷却することにより、該金属を連続して鋳造し、連続鋳造棒4を成形する。
(B)押出し工程:前記鋳造工程により得られた連続鋳造棒4に押出し加工を施す。特に、従来とは異なり、四角形の開口部を持つ金型5aを用いて押出し加工を行うことで、略四角柱形の棒材6aを得る。押出し工程により得る棒材6aの断面形状は四角形に限らないが、歩留まりを考慮すると該断面形状を四角形とするとコスト的に有利である。
【0021】
(C)ビレット製造工程:前記押出し工程により得られた棒材6aを切断することで、鍛造用のビレット7aを設ける。特に、棒材6aを切断することで、押出し方向と略平行な平面を持つ直方体形のビレット7aを設ける。
(D)ビレット加工工程:前記ビレット製造工程により得られた直方体形のビレット7aを、前記押出し工程における押出し方向と略平行方向の平面を持つ円板形状のビレット7bに機械加工する。なお、この際、ビレット7bの押出方向が判別できるようにするために、ビレット7aに刻印、ペイント等することで印をつけると好ましい。また、ビレット7bの形状は円板のほかにも多角板の形状であってもよい。
(E)鍛造工程:前記ビレット製造工程により得られたビレット7bを所定の鍛造用下型8に配置し、所定の鍛造用上型9を用いて、鍛造を施し、鍛造ピストン粗材を得る。特に、前記平面に対し略垂直な方向に鍛造する。さらに、押出し方向がピストンの吸気排気方向と平行になるように鍛造すると好ましい。
【0022】
このように製造された鍛造ピストン粗材は、さらにT6処理等の熱処理や、ピストンピン挿通用のピン孔を穿設したり、ピストンリング装着用のリング溝を切削したりする等、仕上げの機械加工工程を経て、鍛造ピストンとなる。
図1(F)に、本発明にかかる鍛造ピストン10の、ピストンピンの中心軸に垂直な平面での模式的な断面図を示し、その内部におけるメタルフローを模式的に細い線で表す。
【0023】
このような一連の工程で製造された鍛造ピストンは、ピストン頂部におけるメタルフローの方向が、内燃機関でのピストンの運動方向に対して略垂直、さらに吸気排気方向と略平行となる。このように、本発明にかかる鍛造ピストンは、その頂部において、発生しようとする亀裂に対して強度的に最も有利なメタルフローを有する。
【0024】
図2はピストン10をその頂部方向から見た模式図である。一般的に、内燃機関内でピストン10が運動するとき、ピストンの頂部は、高温にさらされ、高温になるため、材料の機械的強度が低下する。さらに、内燃機関の爆発力と、ピストンピンからの爆発力に対する反力のため、ピストン頂部特に中央部付近は、吸排気方向(図2におけるIN−EX方向)に最も大きい引張り力が作用することとなる。このため、ピストン頂部は、吸気排気方向(図2におけるIN−EX方向)に最もたわみやすい。このため、ピストン頂部には、吸気排気方向と垂直な方向に最も亀裂が生じやすい。
このように、押出し材はメタルフローと平行な方向に亀裂を生じやすいのであるから、メタルフロー12が吸気排気方向と垂直(図2(b))ではなく、平行(図2(a))になるように、ビレット7bに対して鍛造を施すことで、より機械強度の強い鍛造ピストンを得ることができる。
【0025】
【発明の効果】
上記したところから明らかなように、本発明によると、ピストン頂部から発生しようとする亀裂に対し、高い疲労強度を有する鍛造ピストンを廉価に製造することが可能である。したがって、従来のようにピストンの機械強度を高めるためにピストンの肉厚を増やす必要がなくなり、ピストンの軽量化が可能となるため、エンジン性能としては高出力化、低燃費化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る鍛造ピストンの製造工程を表す概念図である。
【図2】ピストンをその頂部方向から見た模式図である。
【図3】従来の鍛造ピストンの製造工程を表す概念図である。
【符号の説明】
1 溶湯
2 鋳型(鋳造用)
3 水
4 連続鋳造棒
5a,5b 金型(押出し用)
6a,6b 棒材
7a,7b,7c ビレット
8 鍛造用下型
9 鍛造用上型
10 ピストン
11 ピストンピンボス
12 メタルフロー
Claims (5)
- ピストン頂部の中央部において、押出し加工により生じたメタルフローの方向が、略一方向にそろっており、内燃機関内でのピストンの運動方向に対して略垂直である鍛造ピストン。
- 前記メタルフローの方向が、内燃機関の吸気排気方向と略平行である請求項1に記載の鍛造ピストン。
- 金属素材に押出し加工を施す押出し工程と、
前記押出し工程により得られた棒材を切断して、略一方向にそろったメタルフローを有するビレットを製造する工程と、
前記ビレット製造工程により得られたビレットを押出し方向と略垂直な方向に力を加えて鍛造する鍛造工程と
を含む鍛造ピストンの製造方法。 - 前記ビレットを、押出し方向と略平行な平面を持つ円板形状のビレットに加工するビレット加工工程をさらに含み、
前記鍛造工程において、前記平面に略垂直な方向に鍛造する請求項3に記載の鍛造ピストンの製造方法。 - 前記鍛造工程において、押出し方向が内燃機関の吸気排気方向と略平行になるように鍛造する請求項3または4に記載の鍛造ピストンの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002262233A JP2004098112A (ja) | 2002-09-09 | 2002-09-09 | 鍛造ピストンおよびその製造方法 |
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Publications (1)
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Family
ID=32262338
Family Applications (1)
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Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2004098112A (ja) |
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006181577A (ja) * | 2004-12-24 | 2006-07-13 | Denso Corp | 高圧配管部品の製造方法および高圧配管部品 |
JP2008036710A (ja) * | 2006-07-13 | 2008-02-21 | Yamaha Motor Co Ltd | 鍛造ピストン、内燃機関、輸送機器および鍛造ピストンの製造方法 |
JP2012101277A (ja) * | 2010-11-05 | 2012-05-31 | Iizuka Seisakusho:Kk | ディフューザの製造方法 |
US8312856B2 (en) | 2006-07-13 | 2012-11-20 | Yamaha Hatsudoki Kabushiki Kaisha | Forged piston, internal combustion engine, transportation apparatus and method of making the forged piston |
US10890238B2 (en) | 2016-03-28 | 2021-01-12 | Seiko Epson Corporation | Robot, flexible gear, gear device, and manufacturing method of flexible gear |
-
2002
- 2002-09-09 JP JP2002262233A patent/JP2004098112A/ja active Pending
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