JP4104220B2 - 内燃機関用鍛造ピストンの鍛造用金型及びピストンの製造方法 - Google Patents
内燃機関用鍛造ピストンの鍛造用金型及びピストンの製造方法 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、アルミ合金塊からなるピストン素材を鍛造用金型でピストンに対応した成形素材に鍛造し、該成形素材に機械加工を施すようにした内燃機関用鍛造ピストンの鍛造用金型及びピストンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関用ピストンにおいては、アルミ合金塊からなるピストン素材を一方向に進退する金型で鍛造することによりヘッド部,ピンボス部,スカート部及びリブ部を備えた略ピストン形状の成形素材とし、これにシリンダ摺動面,ピストンピン孔,リング溝等の機械加工を施して製品とする鍛造ピストンが従来から採用されている。
【0003】
ところで上記金型鍛造は、ピストンの表面形状の一部(例えばヘッド部の上面形状)に対応した第1金型(上型)と、残りの表面形状に対応した第2金型(下型)との間にアルミ合金塊からなるピストン素材を配置し、上記第1,第2金型を相対移動させることにより、第1,第2金型で形成されるキャビティ部分に上記アルミ合金を塑性変形により流入させるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで内燃機関の高速化に伴って、上記ピストンの可能な限りの軽量化が要請されているが、そのためには、上記スカート部,リブ部等の肉厚を可能な限り薄く設定する必要がある。しかし従来の鍛造ピストンでは、肉厚をあまり薄く設定すると該薄肉部にアルミ合金を流入させ難くなり、欠肉を防止するには鍛造荷重を大きくしなければならず、装置が大型化したり、型寿命が短くなったりするという問題があった。また肉厚をあまり薄くすると、燃焼室で発生した熱をシリンダ壁に伝達し難くなり、エンジンの冷却性が低下し過熱の原因となる問題もある。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、鍛造荷重を大きくすることなく薄肉部にもアルミ合金を十分に流入させることができ、また燃焼室内の熱をシリンダ壁に十分に伝達でき、エンジン過熱の問題を防止できる内燃機関用鍛造ピストンの鍛造用金型及びピストンの製造方法を提供することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、略円板状のヘッド部と、該ヘッド部の下面のピストンピン軸線上の2箇所部分から下方に延設された一対のピンボス部と、上記ヘッド部の外周縁の少なくとも上記ピストンピン軸線の両側部分から下方に延設されたスカート部と、上記ヘッド部の下面から下方に延設され上記ピンボス部と上記スカート部との少なくとも一方とヘッド部とを接続する複数のリブ部とを備えた内燃機関用鍛造ピストンの鍛造用金型において、ピストンの表面形状の一部に対応した第1金型と、該表面形状の残りに対応した第2金型とを有し、該第1,第2金型の間にアルミ合金塊からなるピストン素材を配置し、該ピストン素材を上記第1,第2金型の相対移動により上記ピストンに対応した成形素材に成形する鍛造用金型であって、上記第1,第2金型の、上記スカート部に対応する部分は抜き勾配を有する形状とする一方、上記複数のリブ部に対応する部分は抜き勾配を有しない形状とし、かつ、該リブ部に対応する部分の入り口部を、上記スカート部に対応する部分の入り口部に比較して曲率半径の小さいエッジ形状としたことを特徴としている。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において上記鍛造用金型の第2金型を、スカート鍛造型部,リブ鍛造型部及びピンボス部に対応した鍛造型部の下端を通る分割面より内側の金型と外側の金型とに分割したことを特徴としている。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の金型を用いて成形した成形素材に機械加工を施すようにしたことを特徴としている。
【0008】
【発明の作用効果】
本発明に係る鍛造用ピストンの鍛造用金型及びピストンの製造方法によれば、スカート部についてはヘッド部側、つまり燃焼室に近い側を厚肉に形成したので、燃焼室で発生した熱を効率良くシリンダボア側に伝達でき、エンジンの冷却性を向上して過熱を防止できる。
【0009】
またスカート部については、ヘッド部側、つまりピストン素材が流入開始する側を厚く、先端側を薄く設定して金型に抜き勾配を設定したので、鍛造後の型抜き時の摩擦力が小さくなり、型抜き荷重を減少できる。
【0010】
一方、リブ部については、ピストン軸方向(鍛造方向)に均一の厚さに設定したので、アルミ合金はリブ部に成形される際に、ピストン軸方向(鍛造方向)には塑性変形するものの、鍛造方向と直角方向(厚さ方向)には塑性変形することはなく、つまりアルミ合金は上記リブ部に対応した鍛造型部の入り口部を通過した後においてはさらに塑性変形することはなく、鍛造荷重が小さくて済む。
【0011】
なお、リブ部の厚さを軸方向に均一に設定したことから抜き勾配がなく、従って鍛造後の型抜き時の摩擦力が増加する懸念があるが、リブ部に成形される際の塑性変形によりアルミ合金の温度が高くなっている点、及びリブ部の軸方向寸法が例えば上記スカート部に比べて短いことから型抜き荷重が極端に増加することはない。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1ないし図10は本発明の一実施形態による内燃機関の鍛造ピストンの鍛造用金型及びピストンの製造方法を説明するための図であり、図1,図2,図3,図4は機械加工済の鍛造ピストンの平面図,右側面図,正面図,底面図、図5,図6,図7は図1のV-V 線断面図,VI-VI線断面図,VII-VII線断面図、図8は図2のVIII-VIII 線断面図である。なお、本実施形態における前後左右は図1に示す通りであり、平面視で排気側を前,吸気側を後とする。
【0013】
図において、1は4サイクル5バルブエンジン用アルミ合金製鍛造ピストンであり、該ピストン1は略円板状のヘッド部2と、該ヘッド部2の下面のピストンピン軸線C上の2箇所部分から下方に延設された一対のピンボス部4,4と、上記ヘッド部2の外周縁の上記ピストンピン軸線Cの前側,後側部分から下方に延設されたスカート部3,3と、上記ヘッド部2の下面2fから下方に延設され上記各ピンボス部4と上記スカート部3と上記ヘッド部2の下面2fとを接続する4つのリブ部5とを備えている。
【0014】
上記ヘッド部2は略円板状をなしており、燃焼室の底面を形成する上面2aには3つの吸気弁用逃げ凹部2bと2つの排気弁用逃げ凹部2cが形成されており、また側面2hには2つの圧縮リング溝2dと1つのオイルリング溝2eが機械加工により形成されている。
【0015】
上記ピンボス部4,4は、上記ヘッド部2の下面2fの、ピストンピン軸線C上でかつヘッド部2の外周面から内方に凹んだ2箇所部分から下方に延びている。該両ピンボス部4,4には、同軸をなして貫通するようにピストンピン孔4aが形成されている。なお、4bはピストンピンの抜け止め用リングが嵌着される止めリング溝であり、4cは該止めリング溝4bに止めリングを着脱する際の工具挿入孔である。4dは図9,図10で示す鍛造方法において鍛造後ピストン1を第2金型により取り出すための不図示の押しピンにより成形される押しピンボスであり、上記ピンボス部4,4の中央外方に配置される。
【0016】
上記スカート部3,3は、エンジン回転に伴って発生するピストン側圧を受けるためのものであり、上記ピストンピン軸線Cの前側,後側、つまりピストンピンに連結される不図示のコンロッドの揺動方向と対向する部分に設けられている。該スカート部3,3の外周面はシリンダボア内周面に摺接するもので、機械加工が施されている。このスカート部3の肉厚は、図5に示すように、上記オイルリング溝2eに近接する上端部3aから該ピストンの下端に位置する下端部3bまで徐々に薄くなる傾斜肉厚に設定されている。なお、スカート部3の外周面はピストン軸線Aに平行で、内周面は内方に傾斜している。
【0017】
ここで、上記スカート部3の上端部3aとヘッド部2の下面2fとの境界部2gはオイルリング溝2eを形成しても十分な厚みが得られるように厚肉になっており、かつエッジ形状をなすことなく緩やかな曲面をなしている。なお、上記ヘッド部2,スカート部3の内表面、及びピンボス部4,リブ部5の表面は機械加工が施されていない鍛造肌のままとなっている。
【0018】
上記リブ部5は、上記各ピンボス部4の軸方向略中央の前,後縁と上記スカート部3の左,右縁と上記ヘッド部2の下面2fとを接続しており、該リブ部5はピストン軸線A方向に見ると、上記ピンボス部4側からピストンピン軸線Cと直角の直線より左,右に広がっている。また上記各リブ部5は、図7に示すようにピストン軸線A方向に均一の肉厚を有し、かつ図8に示すようにピストンピン軸線Cと交差する方向に見ても均一の肉厚を有している。
【0019】
次に上記ピストン1の製造方法について説明する。上記ピストン1は、先ずアルミ合金塊からなるピストン素材(ビレット)10′を金型鍛造により上記ピストン1と略同じ形状の成形素材10(図9,図10参照)に成形し、該成形素材10に所要の機械加工を施すことにより製造される。
【0020】
図9,図10は上記成形素材10を製造するための鍛造用金型を示す。なお、同図では、鍛造用金型を図1のVII-V 線に沿って断面した状態で示している。図中、20は鍛造用金型であり、これは上記ピストン1と略同一形状を有する成形素材10の表面形状の一部に対応した形状の第1金型(上型)11と、上記成形素材10の表面形状の残りに対応した形状の第2金型(下型)12とを有する。該第2金型12は鍛造装置の固定部に固定され、第1金型11は可動部に固定されており、該第1,第2金型11,12は所定の鍛造力でもって相対移動可能となっている。
【0021】
上記第1金型11は、上記成形素材10の表面形状の一部、具体的には、ヘッド部2の上面2aの表面形状に対応した形状の鍛造型部11aを有している。また上記第2金型12は、上記成形素材10の表面形状の残り、具体的にはヘッド部2の側部外表面2h,下面2fに対応した形状の鍛造型部12a,12bと、スカート部3の外表面,内表面に対応した形状のスカート鍛造型部12cと、ピンボス部4の表面に対応した形状の鍛造型部と、リブ部5の表面に対応した形状のリブ鍛造型部12dとを有している。
【0022】
ここで、上記第2金型12のスカート鍛造型部12cは、その厚さ寸法が上側ほど厚く下側ほど薄く設定された抜き勾配を有しており、またこのスカート鍛造型部12cのアルミ合金の流入時の入り口部12c´は曲率半径の大きい滑らかな形状に設定されている。一方、上記第2金型12のリブ鍛造型部12dは、抜き勾配を有さず、その厚さ寸法は軸方向に均一になっており、またこのリブ鍛造型部12dの入り口部12d´は上記入り口部12c´に比較して曲率半径の小さいエッジ形状に設定されている。
【0023】
上記鍛造用金型20を用いて成形素材10を成形する場合には、第2金型12内に上記成形素材10に対応した体積を有するアルミ合金塊からなるピストン素材(ビレット)10′を載置し、第1金型11を所定の鍛造力でもって下降させる。この場合上記第1,第2金型11,12の少なくとも何れかに設けられたヒータにより、又は外部のヒータによりピストン素材10′を400〜500℃に加熱して熱間鍛造することによりアルミ合金の延性を十分に利用して成形素材10に寸法精度良く鍛造することができる。
【0024】
このような金型鍛造において、第2金型12の上記スカート鍛造型部12cについて、ヘッド部2側、つまりピストン素材10′が流入開始する側の厚さを大きく、先端側の厚さを薄く設定したので、アルミ合金はスカート鍛造型部12c内にピストン軸方向(鍛造方向)に塑性変形して進入しつつ、さらに鍛造方向と直角方向(厚さ方向)にも塑性変形することとなる。つまりアルミ合金は鍛造の進行に伴って塑性変形を継続することとなり、それだけ必要とする鍛造荷重が増加する。しかし上記スカート鍛造型部12cの厚さを先端側ほど薄く設定して抜き勾配を設けたことから、鍛造後の型抜き荷重を減少できる。
【0025】
一方、リブ鍛造型部12dについては、ピストン軸方向(鍛造方向)に均一の厚さに設定したので、アルミ合金はリブ鍛造型部12d内にピストン軸方向(鍛造方向)には塑性変形するものの、鍛造方向と直角方向(厚さ方向)には塑性変形することはないので、つまりアルミ合金は上記リブ鍛造型部12dの入り口部12d´を通過した後においてはさらに塑性変形することはなく、鍛造荷重が増加することはない。一方、上記リブ鍛造型部12dの厚さを軸方向に均一に設定したことから抜き勾配がなく、従って鍛造後の型抜き時の摩擦力が増加する懸念があるが、上述の塑性変形によりアルミ合金の温度が高くなっている点、及びリブ部5の軸方向寸法が例えば上記スカート部3に比べて短いことから型抜き荷重が極端に増加することはない。
【0026】
ここで、本実施形態では、上記第2金型12のスカート鍛造型部12cの入り口部12c´は曲率半径の大きい滑らかな形状に設定されており、一方リブ鍛造型部12dの入り口部12d´は上記入り口部12c´に比較して曲率半径の小さいエッジ形状に設定されている。これにより厚さの薄いリブ鍛造型部12dへのアルミ合金の流入が厚さの厚いスカート鍛造型部12cへの流入に比較して相対的に容易となり、全体として同じ鍛造荷重でもって両鍛造型部12c,12d内に欠肉なくアルミ合金を流入させることができる。
【0027】
この点をより詳細に述べれば以下の通りである。即ち、上記入り口部を上記12d´のように曲率半径の小さいエッジ形状とした場合には、成形素材10′の入り口部に向かう傾斜剪断面(最大剪断応力面)の主応力方向(鍛造方向)に対する角度が小さくなり、それだけアルミ合金が塑性変形により昇温して剪断破壊応力が小さくなり、その結果、厚さの薄い鍛造型部であってもアルミ合金の流入が容易となる。
【0028】
一方、上記入り口部を上記12c´のように曲率半径の大きい隅切り形状とした場合には、成形素材10′の入り口部に向かう傾斜剪断面(最大剪断応力面)の主応力方向(鍛造方向)に対する角度が45°と大きくなり、塑性変形による摩擦熱,圧縮熱が拡散してアルミ合金が昇温し難くなり剪断破壊応力の低下が小さく、その結果、アルミ合金が型面に凝着し易く、鍛造型部の厚さを大きくしないとアルミ合金の流入が困難となる。
【0029】
なお、図9,図10に二点鎖線で示すように、上記鍛造用金型20の第2金型12を、スカート鍛造型部12c,リブ鍛造型部12d及びピンボス部に対応した鍛造型部の下端を通る分割面aより内側の金型bと外側の金型cとに分割しておくこともできる。このようにした場合には、上記スカート鍛造型部12c,リブ鍛造型部12dにアルミ合金が流入する際に該鍛造型部12c,12dの底部にクラックが発生するのを上記分割面aが僅かに開くことで回避でき、その結果金型の寿命を延長できる。
【0030】
上記実施形態では、第1金型11がヘッド部2のピストン表面の一部(上面2a)に対応した鍛造型部を有し、第2金型12が残りに対応した鍛造型部を有する場合を説明したが、これは図11,図12に示すように逆に設定することもできる。即ち、鍛造金型20´の第2金型12´は、成形素材10の表面形状の一部、具体的には、ヘッド部2の上面2a及び側面2hの表面形状に対応した形状の鍛造型部12a´を有している。また第1金型11´は、上記成形素材10の表面形状の残り、具体的にはヘッド部2の下面2fに対応した形状の鍛造型部11b´と、スカート部3の外表面,内表面に対応した形状のスカート鍛造型部11c´と、ピンボス部4の表面に対応した形状の鍛造型部と、リブ部5の表面に対応した形状のリブ鍛造型部11d´とを有している。該第2金型12´は鍛造装置の固定部に固定され、第1金型11´は可動部に固定されており、該第1,第2金型11´,12´は所定の鍛造力でもって相対移動可能となっている。
【0031】
ここで上記のような鍛造ピストンの製造に使用されるピストン素材(ビュレット)10´については、例えば、アルミニウム(Al)を基材とし、シリコン(Si)を10〜25重量%,鉄(Fe)を1重量%以下,銅(Cu)を0.5〜7重量%,マグネシウム(Mg)を0.1〜2重量%,マンガン(Mn)を1.5重量%以下,ニッケル(Ni)を1.5重量%以下,クロム(Cr)を1.5重量%以下の範囲で含むアルミ合金を円柱形状の棒状体に連続鋳造した溶製材を切断したものが使用される。
【0032】
また、上記のような組成のアルミ合金を溶解炉の底部から円柱形状の連続鋳造体として引き出すと共に、溶解炉から出て凝固が始まる部分の外周に電磁石又は超音波発振器からなる攪拌装置を配置して、円柱形状の連続鋳造体の中心部と外周部を攪拌混合しつつ凝固させることにより、析出結晶粒子の成長を抑制して粒子サイズを小さくし、且つ、外周部から中心部に渡って結晶粒子を均一に分散させるようにした固体で円形形状のアルミ合金の棒状体を、適当な大きさに切断してピストン素材10′として使用しても良い。
【0033】
上記のように円柱形状の連続鋳造体の中心部と外周部を攪拌混合しつつ凝固させたピストン素材10′を使用した場合には、結晶粒子のサイズが小さく且つ均一に分散されていることから鍛造時にクラックが発生し難くなるため、鍛造時の歩留りを向上させることができ、且つ、ピストン1をエンジンに組み込んで運転した場合のスカート部3の疲労強度を高くすることができる。
【0034】
さらに、ピストン素材10′については、初晶シリコンの平均粒径が10μm以下であるシリコン(Si)を10〜22重量%の範囲で含む急冷凝固粉末を固化したアルミ合金を使用しても良い。
【0035】
このような急冷凝固粉末アルミ合金としては、例えば、アルミニウム(Al)を基材とし、シリコン(Si)を10〜22重量%,鉄(Fe)を1〜10重量%,銅(Cu)を0.5〜5重量%,マグネシウム(Mg)を0.5〜5重量%,マンガン(Mn)を1重量%以下,ニッケル(Ni)を1重量%以下,クロム(Cr)を1重量以下,ジルコニウム(Zr)を2重量%以下,モリブデン(Mo)を1重量%以下の範囲で囲むようなものがある。
【0036】
上記急冷凝固粉末アルミ合金の含有成分において、シリコン(Si)は、金属組織中に硬質の初晶や共晶のシリコン粒を晶出させることで耐摩耗性および耐焼付性を高めるために添加され、鉄(Fe)は、金属組織を分散強化して200℃以上で高い強度を得るために添加され、また、銅(Cu)およびマグネシウム(Mg)は、200℃以下での強度を高めるために添加されるものであって、それらの添加量については、上記の範囲外では所望の耐摩耗性や耐焼付性および高温での必要な強度を得ることができない。
【0037】
上記のような急冷凝固粉末アルミ合金によるピストン素材10′では、溶解したアルミ合金を霧状に散布して急冷凝固させることにより粉末化してから成形固化しているため、アルミ合金粉末は平均粒径で約100μm程度となり、その中に含まれているシリコン(Si)は、粉末化しつつ凝固するアルミ合金の金属組織中に晶出させた硬質の初晶シリコンが平均粒径が10μm以下となるように微細化されていて、各アルミ合金粒子毎に分散されている。
【0038】
上記のようにシリコン(Si)が微細化されて分散されていることにより、ピストン素材10′を鍛造して略ピストン形状の成形素材10′とする際に、特にスカート部3で材料が薄く引き延ばされるように鍛造されても、その部分で初晶シリコンの粒子が割れてクラックが発生するようなことが無く、その結果、鍛造で成形されたピストン1は、スカート部3での疲労強度が高いものとなる。
【0039】
ピストン素材10′として使用する急冷凝固粉末アルミ合金としては、上記のようなものに限らず、例えば、更にその耐摩耗性を高めるために、シリコン(Si)よりも硬い成分である炭化シリコン(SiC)を所定量含むものも使用される。
【0040】
上記炭化シリコン(SiC)を含有する急冷凝固粉末アルミ合金の一例としては、アルミニウム(Al)を基材とし、シリコン(Si)を10〜22重量%,鉄(Fe)を1〜10重量%,銅(Cu)を0.5〜5重量%,マグネシウム(Mg)を0.5〜5重量%,マンガン(Mn)を1重量%以下,ニッケル(Ni)を1重量%以下,クロム(Cr)を1重量%以下,ジルコニウム(Zr)を2重量%以下,モリブデン(Mo)を1重量%以下の範囲で含むと共に、更に、炭化シリコン(SiC)を1〜10重量%の範囲で含むようなものがある。
【0041】
上記のような炭化シリコン(SiC)を含有する急冷凝固粉末アルミ合金からなるピストン素材10′では、初晶シリコンの平均粒径が10μm以下となるようにシリコン(Si)が微細化されて含まれていると共に、更に耐摩耗性および耐焼付性を高めるために、シリコン(Si)よりも硬く非溶解性の非金属物である炭化シリコン(SiC)が、平均粒径が10μm以下となるように微細化された状態で金属組織中に分散して含まれており、このピストン素材10から鍛造されたピストン1は、微細な炭化シリコン(SiC)がアルミ合金組織中に均等に分散されたものとなり、それによって高い耐摩耗性を得ることができる。
【0042】
上記のような急冷凝固粉末アルミ合金によるピストン素材10の製造については、先ず、アルミニウム(A1)の基材に対して必要な各成分(シリコンや炭化シリコンその他)を予め含有させたアルミ合金のインゴットを準備して、これを約700℃以上で溶解してから霧状に散布し、冷却速度100℃/sec以上で急激に冷やして粉末に凝固させるか、或いは、必要な成分を含まないアルミ合金を溶解して急冷凝固することにより形成したアルミ合金粉末に、平均粒径が1〜10μmとなるように微細化した必要成分の粉末を所定量だけ混合する等によって、固化する前のアルミ合金粉末を得る。
【0043】
そして上記のようなアルミ合金粉末について、型の中にアルミ合金粉末を充填し、400〜500℃(700℃未満の温度)に加熱且つ加圧して、直接的に所望の大きさおよび形状のピストン素材10′を成形するか、或いは、アルミ合金粉末を400〜500℃に加熱して押し出すことにより丸棒として固形化した後、この丸棒を一個のピストンに相当する適当量の大きさの厚い円板形状に切断する等によって、厚い円板状のピストン素材10′とする。
【0044】
アルミ合金粉末からピストン素材10′を成形するには、その他にも、アルミ合金粉末を400〜500℃に加熱しつつ一対の圧延ロールの間に導いて圧延した後、プレスにより打ち抜くことで厚い円板形状のピストン素材として成形したり、シャーリングで所望の大きさに切断して矩形のピストン素材として成形したりすることも可能であり、更に、そのように矩形に成形してから予備鍛造して厚い円板形状のピストン素材に成形しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による内燃機関用鍛造ピストンの平面図である。
【図2】上記ピストンの右側面図である。
【図3】上記ピストンの正面図である。
【図4】上記ピストンの底面図である。
【図5】上記ピストンの断面側面図(図1のV-V 線断面図)である。
【図6】上記ピストンの断面正面図(図1のVI-VI 線断面図)である。
【図7】上記ピストンの断面正面図(図1のVII-VII 線断面図)である。
【図8】上記ピストンの断面平面図(図2のVIII-VIII 線断面図)である。
【図9】上記ピストンの金型鍛造の状態を示す模式図である。
【図10】上記ピストンの金型鍛造の状態を示す模式図である。
【図11】上記ピストンの金型鍛造の状態を示す模式図である。
【図12】上記ピストンの金型鍛造の状態を示す模式図である。
【符号の説明】
1 ピストン
2 ヘッド部
3 スカート部
4 ピンボス部
5 リブ部
10 成形素材
10′ ピストン素材
11 第1金型
12 第2金型
12c スカート鍛造型部(スカート部に対応する部分)
12d リブ鍛造型部(リブ部に対応する部分)
Claims (3)
- 略円板状のヘッド部と、該ヘッド部の下面のピストンピン軸線上の2箇所部分から下方に延設された一対のピンボス部と、上記ヘッド部の外周縁の少なくとも上記ピストンピン軸線の両側部分から下方に延設されたスカート部と、上記ヘッド部の下面から下方に延設され上記ピンボス部と上記スカート部との少なくとも一方とヘッド部とを接続する複数のリブ部とを備えた内燃機関用鍛造ピストンの鍛造用金型において、ピストンの表面形状の一部に対応した第1金型と、該表面形状の残りに対応した第2金型とを有し、該第1,第2金型の間にアルミ合金塊からなるピストン素材を配置し、該ピストン素材を上記第1,第2金型の相対移動により上記ピストンに対応した成形素材に成形する鍛造用金型であって、上記第1,第2金型の、上記スカート部に対応する部分は抜き勾配を有する形状とする一方、上記複数のリブ部に対応する部分は抜き勾配を有しない形状とし、かつ、該リブ部に対応する部分の入り口部を、上記スカート部に対応する部分の入り口部に比較して曲率半径の小さいエッジ形状としたことを特徴とする内燃機関用鍛造ピストンの鍛造用金型。
- 上記鍛造用金型の第2金型を、スカート鍛造型部,リブ鍛造型部及びピンボス部に対応した鍛造型部の下端を通る分割面より内側の金型と外側の金型とに分割したことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用鍛造ピストンの鍛造用金型。
- 請求項1又は2に記載の金型を用いて成形した成形素材に機械加工を施すようにしたことを特徴とする内燃機関用鍛造ピストンの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP26829298A JP4104220B2 (ja) | 1998-09-22 | 1998-09-22 | 内燃機関用鍛造ピストンの鍛造用金型及びピストンの製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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