JP2000038956A - 鍛造スリーブおよびその製造方法 - Google Patents

鍛造スリーブおよびその製造方法

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JP2000038956A
JP2000038956A JP10207302A JP20730298A JP2000038956A JP 2000038956 A JP2000038956 A JP 2000038956A JP 10207302 A JP10207302 A JP 10207302A JP 20730298 A JP20730298 A JP 20730298A JP 2000038956 A JP2000038956 A JP 2000038956A
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sleeve
forged
aluminum alloy
powder
cylinder
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English (en)
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Yutaka Yamagata
裕 山縣
Toshikatsu Koike
俊勝 小池
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Yamaha Motor Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 内燃機関のシリンダブロックのシリンダ孔に
付設されるようなアルミ合金製のスリーブにおいて、各
成分元素の結晶粒が小さな緻密な組織となるようにスリ
ーブを形成すると共に、スリーブの剛性や強度を充分な
ものにする。 【解決手段】 鋳込みや圧入によりシリンダブロックの
シリンダ孔に付設されるようなアルミ合金製のスリーブ
1において、必要成分が粉末の状態で含有されたアルミ
合金粉末を、溶解・凝固させることなく固化して金属塊
のスリーブ素材10としてから、該スリーブ素材10を
金型により鍛造することで、薄肉円筒部を備えた略コッ
プ状の鍛造済み成形素材11に成形した後、そのコップ
形状の底部を機械加工で除去して薄肉円筒形状のスリー
ブ1とすることにより、該スリーブの金属組織中に円筒
形状の軸線に沿った方向のファイバーフローを層をなし
て形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋳込みや圧入によ
りシリンダブロックのシリンダ孔に付設されるようなア
ルミ合金製のスリーブ(ライナー)に関し、特に、必要
成分が粉末の状態で含有されたアルミ合金粉末を原料と
して金型による鍛造で成形されるような鍛造スリーブ
と、そのような鍛造スリーブの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】車両用エンジンのような内燃機関では、
軽量なアルミ合金からなるシリンダブロックにおいて、
ピストンが摺接するシリンダの内面の耐摩耗性を強化す
るために、シリンダブロックとは別の材質により形成さ
れた別体のスリーブ(ライナー)を、シリンダブロック
のシリンダ孔に対して鋳込みや圧入により付設するとい
うことが従来から一般的に行われており、そのようなス
リーブ付きのシリンダブロックでは、従来からの鋳鉄製
のスリーブ以外に、シリンダブロックの軽量化を図るた
めに、シリンダブロックとは材質の異なる耐摩耗性を備
えたアルミ合金材からなるスリーブが使用されている。
【0003】そのようなアルミ合金製のスリーブについ
ては、例えば、アルミニウムの基材に対して所定の成分
元素を所定の割合で溶解混合してから、これを冷却凝固
してアルミ合金の棒状インゴットに成形し、この棒状イ
ンゴットを加熱押し出しによりアルミ合金パイプに成形
した後、このアルミ合金パイプを所定の大きさに切断し
てから、内外周加工を施すことにより、鋳込みや圧入に
よりシリンダ孔に付設できるようなスリーブとして形成
している。
【0004】また、アルミニウムの基材に対して所定の
成分元素を所定の割合で溶解混合してから、霧状に散布
することで急激に冷やして凝固させることによりアルミ
合金の急冷凝固粉末(パウダーメタル)とした後、この
アルミ合金の急冷凝固粉末を、空隙が円筒状の雌型内に
詰めて円筒状の雄型により加圧することで、所定の大き
さの円筒形状に固めて成形し、これを更に焼き固めた
後、内外周加工を施すことにより、鋳込みや圧入により
シリンダ孔に付設できるようなスリーブとして形成して
いる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記のよう
なアルミ合金製のスリーブについて、前者のものでは、
溶解したアルミ合金を冷却凝固して棒状のインゴットを
作る際に、外周部から冷却が進行するため、各成分元素
の結晶粒が、インゴットの外周部で小さく中心部で大き
なものとなり、これを加熱押し出ししたアルミ合金パイ
プから製造されるスリーブでは、シリンダブロックのシ
リンダ孔に付設したときに、スリーブの内面、即ちピス
トンが摺接するシリンダ内面に大きな結晶粒を露出させ
てしまうことがある。
【0006】その結果、爆発力や慣性力を受けるピスト
ンがシリンダ内面に対して摺動する時に、スリーブの内
面に露出した大きな結晶粒によりピストン外面が荒らさ
れ、また、ピストンのスカート部やピストンリングによ
りシリンダ内面に対して垂直方向の力と共に摺動方向が
加えられると、大きな結晶粒の結晶粒境では応力集中が
起き易いため、疲労破壊によりスリーブから結晶粒が脱
落してシリンダ内面が荒れたりすることとなり、そのよ
うな荒れがピストン焼き付きの原因となっている。
【0007】一方、後者のものでは、スリーブをシリン
ダブロックのシリンダ孔に付設したときに、スリーブの
内面、即ちシリンダ内面では各成分元素の結晶粒が小さ
く緻密な組織となっていることで、上記のような問題は
起きないものの、スリーブが粉末を固めて所定の大きさ
の円筒状に成形した後で更に焼き固めただけのものであ
るため、スリーブ自体の剛性や強度が不充分なものとな
っている。
【0008】その結果、エンジン運転中のピストンから
の側圧荷重によりスリーブが変形することで、シリンダ
内面の軸方向におけるストレート形状が湾曲変形される
こととなって、シリンダ内面にピストンとの当たりの強
い部分が発生することとなり、その部分において垂直荷
重と摺動摩擦力による面圧が高くなるため、シリンダ内
面あるいはピストン外面の摩耗が激しくなって、エンジ
ン故障の原因となる場合がある。
【0009】本発明は、上記のような問題の解消を課題
とするものであり、具体的には、内燃機関のシリンダブ
ロックのシリンダ孔に付設されるようなアルミ合金製の
スリーブにおいて、各成分元素の結晶粒が小さな緻密な
組織となるようにスリーブを形成すると共に、スリーブ
の剛性や強度を充分なものにすることを課題とするもの
である。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記のような
課題を解決するために、鋳込みや圧入によりシリンダブ
ロックのシリンダ孔に付設されるようなアルミ合金製の
スリーブにおいて、必要成分が粉末の状態で含有された
アルミ合金粉末を、溶解・凝固させることなく固化して
金属塊のスリーブ素材としてから、該スリーブ素材を金
型により鍛造することで、薄肉円筒部を備えた略コップ
状の鍛造済み成形素材に成形した後、そのコップ形状の
底部を機械加工で除去して薄肉円筒形状のスリーブとす
ることにより、該スリーブの金属組織中に円筒形状の軸
線に沿った方向のファイバーフローが層をなして形成さ
れていることを特徴とするものである。
【0011】上記のようなアルミ合金製の鍛造スリーブ
では、必要成分が粉末の状態で含有されたアルミ合金粉
末から、溶解・凝固させることなく、薄肉円筒形状のス
リーブを製造していることで、スリーブは各成分元素の
結晶粒が小さな緻密な組織となるように形成されてお
り、また、金属塊のスリーブ素材を金型による鍛造で略
コップ状の成形素材に成形していることによって、スリ
ーブの金属組織中に円筒形状の軸線に沿った方向のファ
イバーフローが層をなして形成され、それによってピス
トンからの側圧荷重に対するスリーブの剛性や強度が充
分なものとなっている。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の鍛造スリーブおよ
びその製造方法の実施形態について図面に基づいて説明
する。
【0013】図1は、シリンダ孔の部分にスリーブ(ラ
イナー)が付設された内燃機関のシリンダブロックの一
例を示すもので、スリーブ1は、シリンダブロック2の
シリンダ孔の部分に鋳込みや圧入により一体的に付設さ
れるものであって、ピストン(図示せず)が摺接するシ
リンダ内面となるものである。
【0014】図2は、アルミ合金製で厚い円板状のスリ
ーブ素材(ビュレット)から金型による鍛造を経てスリ
ーブを製造するときの状態を示すもので、本実施形態で
は、厚い円板状のスリーブ素材10を、その外表面に離
型剤を塗布してから、上型21と下型22からなる鍛造
用金型内に収容して、上型21と下型22により挟んで
強圧するように鍛造することで、コップ状の鍛造済み成
形素材11に成形した後、機械加工によりコップ形状の
底部を除去してから、内外周加工を施すことによって、
薄肉円筒形状のスリーブを製造している。
【0015】上記のようなスリーブの製造において、厚
い円板状のスリーブ素材10をコップ状の成形素材11
に鍛造成形する工程では、例えば、スリーブ素材10
を、ヒーターを備えた下型22の凹部内に収容して、4
00〜500℃の間(溶解温度以下)に加熱された状態
としてから、ヒーターを備えた上型(パンチ)21によ
り加圧してコップ状の成形素材に鍛造するというよう
に、熱間鍛造によりスリーブ素材10を鍛造すること
で、アルミ合金の延性を充分に利用して寸法精度良く鍛
造成形することができる。
【0016】なお、熱間鍛造という点に関しては、鍛造
用金型に収容する前にスリーブ素材10を400〜50
0℃の間に加熱した後、下型22の凹部内に収容して、
直ちに上型21で鍛造するようにしても良く、その場合
でも、上型21と下型22は400〜500℃の間に予
熱しつつ鍛造する。そのように鍛造工程からスリーブ素
材10の加熱工程を別の並列工程とすることにより、鍛
造工程の時間を短縮することが可能となる。
【0017】上記のような鍛造スリーブの製造において
使用される鍛造前のスリーブ素材10について、本実施
形態では、例えば、アルミ合金の急冷凝固粉末(パウダ
ーメタル)に対して必要に応じて炭化シリコンのような
硬質成分の粉末を更に添加したような、アルミ又はアル
ミ合金の粉末を主成分とする粉末材料を、一個のスリー
ブの量に相当する分毎に所定の型内で押圧して固化した
り、炉内からの押し出しにより円筒棒状に固化してから
所定の大きさに切断したりすることで、金属の粉末材料
を溶解・凝固させることなく、厚い円板状(或いはリン
グ状)のスリーブ素材10に成形している。
【0018】スリーブ素材10を製造するための粉末材
料については、図3に示すように、アルミニウム(A
l)の基材に対してシリコン(Si)、鉄(Fe)およ
びその他の成分を含有させたアルミ合金のインゴットを
準備して、これを約700℃以上で溶解してから、霧状
に散布して冷却速度100℃/sec以上で急激に冷や
して凝固させることで、アルミ合金の急冷凝固粉末(パ
ウダーメタル)としてから、更に必要に応じて、炭化シ
リコン(SiC)や酸化アルミニウム(Al2 3 )や
窒化アルミニウム(AlN)のような硬質成分の粉末を
単独或いは複数組み合わせて混合することにより、スリ
ーブ素材を製造するための粉末材料として準備してお
く。
【0019】そのように準備された粉末材料について、
例えば、図4に示すように、型内に粉末材料を込めてか
ら、常温で押圧(冷間押圧)して固化した後、更に、4
00〜500℃に加熱して押圧(熱間押圧)することに
より、直接的に所望の大きさおよび形状のスリーブ素材
10とすることができる。なお、そのような型内での押
圧によるスリーブ素材10の成形については、図示した
ように冷間押圧してから更に熱間押圧するだけでなく、
冷間押圧又は熱間押圧の何れかのみによって実施するこ
とも可能である。
【0020】また、図5に示すように、粉末材料をアル
ミ容器中に入れて真空脱気してから、この真空脱気を経
たアルミ合金粉末内蔵容器を炉に入れて、加熱押し出し
することで円柱の棒状に固化した後、この円柱棒状体を
一個のピストンに相当する所定量の大きさの厚い円板形
状に切断することでも、厚い円板状のスリーブ素材とす
ることができる。
【0021】粉末材料を固化して成形したスリーブ素材
10については、厚い円板状のものに限らず、厚いリン
グ状のものに成形しても良く、その場合には、図4に示
した方法と同様に、型内での押圧により直接的に所望の
大きさのリング状に成形することもできるが、図6に示
すように、アルミ合金粉末を炉内に入れて加熱押し出し
することで、円筒状すなわち中空棒状に固化した後、こ
の中空棒状体(円筒体)を一個毎が所定量の大きさとな
るように切断することで、厚いリング状のスリーブ素材
10とすることもできる。
【0022】図7〜図9は、上記のようなそれぞれの方
法によって製造される各スリーブ素材10について、そ
れから鍛造により成形される成形素材11と、該成形素
材11から加工されるスリーブ1をそれぞれ示すもので
ある。
【0023】すなわち、図7は、図4に示すような方法
により製造されたスリーブ素材に関するものであって、
このスリーブ素材10では、粉末材料を型内で冷間押圧
してから更に熱間押圧していることで、その中心部での
材料の充填率が低く、且つ、外面に沿った方向で弱いフ
ァイバーフローが形成されたものとなっており、そのよ
うなスリーブ素材10から鍛造される成形素材11で
は、コップの薄肉円筒部に円筒部の軸線に沿った方向の
ファイバーフローが多数の層をなして強力に形成されて
いると共に、その底部が材料の充填率が低い部分となっ
ている。
【0024】そのため、コップ状の成形素材11の底部
を除去して薄肉円筒形状のスリーブ1とする際に、材料
の充填率が低い部分を除去することで、除去される材料
の無駄を小さく抑えることができると共に、製造された
スリーブ1については、円筒形状の軸線方向に沿ったフ
ァイバーフローが多数の層をなして強力に形成されたも
のとなっている。
【0025】また、図8は、図5に示すような方法によ
り製造されたスリーブ素材に関するものであって、この
スリーブ素材10では、粉末材料を入れたアルミ容器の
残滓がスリーブ素材10の外周面に残ったままの状態と
なっており、そのようなスリーブ素材10から鍛造され
た成形素材11をスリーブ1に加工する際に、そのよう
なアルミ容器の残滓部分を除去することが必要となる
が、アルミ容器の材質をシリンダブロックの材質と同じ
ものにしておくことで、アルミ容器の残滓部分を除去す
ることとなく、そのままスリーブ1をシリンダブロック
のシリンダ孔に鋳込むようにしても良い。
【0026】さらに、図9は、図6に示すような方法に
より製造されたリング状のスリーブ素材に関するもので
あって、そのようなリング状のスリーブ素材10から鍛
造された成形素材11では、コップの底部に孔が開いた
ものとなっていることで、そのような略コップ状の成形
素材11の底部を除去して薄肉円筒形状のスリーブ1と
する際に、除去する部分をできるだけ少なくして材料の
無駄を小さく抑えることができる。
【0027】上記のように粉末材料を固化したスリーブ
素材から金型による鍛造を経て製造される各実施形態の
鍛造スリーブおよびその製造方法によれば、必要成分を
粉末の状態で含有するアルミ合金粉末を固化したスリー
ブ素材から、金属組織中の含有成分の結晶粒を溶解・凝
固により成長させるようなことなく、含有成分を粒径が
小さく金属組織中に均一に分散させた状態のままで、鍛
造により緻密な金属組織のスリーブとして製造すること
ができる。
【0028】そのため、そのようなスリーブをシリンダ
ブロックのシリンダ孔に付設してシリンダ内面としたと
きに、シリンダ内面に大きな結晶粒が露出するようなこ
とがなくなり、その結果、シリンダ内面の大きな結晶粒
によりピストン外面が荒らされたり、シリンダ内面の大
きな結晶粒が脱落してシリンダ内面が荒れたりするよう
なことがなくなって、そのような荒れに起因するピスト
ンの焼き付きを回避すことができる。
【0029】また、スリーブ素材を円筒状に引き延ばす
ように鍛造することでスリーブの薄肉円筒形状を成形し
ていることにより、スリーブの金属組織中に円筒形状の
軸線に沿った方向のファイバーフローが層をなして形成
され、それによりスリーブ自体の剛性や強度が高いもの
となって、その結果、エンジン運転中のピストンからの
側圧荷重によりシリンダ内面の軸方向におけるストレー
ト形状が湾曲変形されるようなことがなく、そのような
シリンダ内面の湾曲変形に起因するエンジンの故障をな
くすことができる。
【0030】ところで、上記のような鍛造スリーブの製
造において、スリーブ素材(ビュレット)を形成するた
めのアルミ合金粉末材料としては、例えば、初晶シリコ
ンの平均粒径が10μm以下であるシリコン(Si)を
10〜22重量%の範囲で含むようなアルミ合金の急冷
凝固粉末が使用される。
【0031】そのようなアルミ合金の急冷凝固粉末とし
て、アルミニウム(Al)を基材とし、全体中に、シリ
コン(Si)を10〜22重量%,鉄(Fe)を1〜1
0重量%,銅(Cu)を0.5〜5重量%,マグネシウ
ム(Mg)を0.5〜5重量%,マンガン(Mn)を1
重量%以下,ニッケル(Ni)を1重量%以下,クロム
(Cr)を1重量%以下,ジルコニウム(Zr)を2重
量%以下,モリブデン(Mo)を1重量%以下の範囲で
含むようなものがある。
【0032】その具体的な一実施例としては、シリコン
(Si)を17重量%,鉄(Fe)を5重量%,銅(C
u)を1重量%,マグネシウム(Mg)を0.5重量
%,マンガン(Mn)を0.01重量%,ニッケル(N
i)を0.01重量%,クロム(Cr)を0.01重量
%,ジルコニウム(Zr)を1重量%,モリブデン(M
o)を0.01重量%含むようなアルミ合金の急冷凝固
粉末がある。
【0033】そのようなアルミ合金の急冷凝固粉末の含
有成分において、シリコン(Si)は、金属組織中に硬
質の初晶や共晶のシリコン粒を晶出させることで耐摩耗
性および耐焼付性を高めるために添加され、鉄(Fe)
は、金属組織を分散強化して200℃以上で高い強度を
得るために添加され、また、銅(Cu)およびマグネシ
ウム(Mg)は、200℃以下での強度を高めるために
添加されるものであって、それらの添加量については、
上記の範囲で所望の耐摩耗性や耐焼付性および高温での
必要な強度を得ることができる。
【0034】上記のようなアルミ合金の急冷凝固粉末を
固化したスリーブ素材では、溶解したアルミ合金を霧状
に散布して急冷凝固させることにより粉末化しているた
め、アルミ合金粉末は平均粒径で約100μm程度とな
り、その中に含まれているシリコンは、粉末化しつつ凝
固するアルミ合金の金属組織中に晶出させた硬質の初晶
シリコンが平均粒径が10μm以下となるように微細化
されていて、各アルミ合金粒子毎に分散されている。
【0035】そのようにスリーブ素材の内部でシリコン
が微細化されて分散されていることにより、既に述べた
ように、スリーブをシリンダ内面としたときに、シリン
ダ内面に大きな結晶粒が露出するようなことがなくな
り、その結果、シリンダ内面の大きな結晶粒によりピス
トン外面が荒らされたり、シリンダ内面の大きな結晶粒
が脱落することでシリンダ内面が荒れたりするようなこ
とがなくなって、そのような荒れに起因するピストンの
焼き付きをなくすことができる。
【0036】スリーブ素材を形成するためのアルミ合金
の急冷凝固粉末としては、上記のようなものに限らず、
更に耐摩耗性や耐焼付性を高めるために、シリコン(S
i)よりも硬い成分である炭化シリコン(SiC)や酸
化アルミニウム(Al23)や窒化アルミニウム(A
lN)などを、単独或いは複数種組み合わせて所定量含
むようなものも使用される。
【0037】そのようなアルミ合金の急冷凝固粉末とし
て、例えば、アルミニウム(Al)を基材とし、全体中
に、シリコン(Si)を10〜22重量%,鉄(Fe)
を1〜10重量%,銅(Cu)を0.5〜5重量%,マ
グネシウム(Mg)を0.5〜5重量%,マンガン(M
n)を1重量%以下,ニッケル(Ni)を1重量%以
下,クロム(Cr)を1重量%以下,ジルコニウム(Z
r)を2重量%以下,モリブデン(Mo)を1重量%以
下の範囲で含むと共に、更に、炭化シリコン(SiC)
を1〜10重量%の範囲で含むようなものがある。
【0038】その具体的な一実施例としては、シリコン
(Si)を17重量%,鉄(Fe)を5重量%,銅(C
u)を1重量%,マグネシウム(Mg)を0.5重量
%,マンガン(Mn)を0.01重量%,ニッケル(N
i)を0.01重量%,クロム(Cr)を0.01重量
%,ジルコニウム(Zr)を1重量%,モリブデン(M
o)を0.01重量%含むと共に、更に、炭化シリコン
(SiC)を5重量%含むようなアルミ合金の急冷凝固
粉末がある。
【0039】上記のように炭化シリコン(或いは酸化ア
ルミニウムや窒化アルミニウム等)のような硬質成分を
含むアルミ合金の急冷凝固粉末については、図3に示す
ように、アルミ合金材のインゴットを溶解してから霧状
に散布することで製造されるアルミ合金の急冷凝固粉末
(パウダーメタル)に対して、平均粒径が1〜10μm
の硬質成分(炭化シリコン等)の粉末を所定量混入させ
ることによって得られる。
【0040】また、そのような方法に限らず、例えば、
アルミ合金材のインゴット中に、平均粒径が1〜10μ
mの硬質成分(炭化シリコン等)の粉末を予め所定量だ
け含有させておき、アルミ合金材のインゴットを溶解し
てから霧状に散布して急冷凝固粉末とすることで、アル
ミ合金の急冷凝固粉末中に平均粒径が10μm以下の硬
質成分(炭化シリコン等)を分散させることも可能であ
る。
【0041】何れにしても、上記のように炭化シリコン
のような硬質成分を含むアルミ合金の急冷凝固粉末を固
化したスリーブ素材10では、平均粒径で約100μm
程度となる各アルミ合金粉末状組織の境界部に、初晶シ
リコンの平均粒径が10μm以下となるようにシリコン
が微細化された状態で金属組織中に分散して含まれると
共に、更に、炭化シリコンのような硬質成分が、平均粒
径が10μm以下となるように微細化された状態で金属
組織中に分散して含まれることとなる。
【0042】そして、そのようなスリーブ素材から製造
される鍛造スリーブでは、シリコンよりも硬く非溶解性
の非金属物である炭化シリコンのような硬質成分が10
μm以下の微細粒状でアルミ合金組織の間に略均等に分
散されたものとなり、それによって高い耐摩耗性を得る
ことができる。
【0043】
【発明の効果】以上説明したような本発明の鍛造スリー
ブおよびその製造方法によれば、アルミ合金粉末を溶解
・凝固させることなく固化したスリーブ素材から鍛造に
よりスリーブを製造していることで、スリーブの金属組
織を含有成分の粒径が小さい緻密なものとすることがで
きて、シリンダ内面やピストン外面の荒れに起因するピ
ストンの焼き付きを回避することができると共に、金属
塊のスリーブ素材を金型による鍛造で略コップ状に成形
して、スリーブの金属組織中に円筒形状の軸線に沿った
方向のファイバーフローを層をなして形成してことによ
り、スリーブ自体の剛性や強度を充分なものにすること
ができて、レシプロエンジンの運転中にピストンからの
側圧荷重を受けてシリンダ内面が湾曲変形することに起
因するエンジンの故障を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】スリーブ(ライナー)付きシリンダブロックの
一例を示す断面図。
【図2】図1に示したようなスリーブを厚い円板状のス
リーブ素材(ビュレット)から金型による鍛造を経て製
造するときの各段階(A)(B)(C)(D)を示す断
面説明図。
【図3】図2に示したようなスリーブ素材(ビュレッ
ト)の原料となるアルミ合金の粉末材料を製造するとき
の状態を示す説明図。
【図4】図3に示したようなアルミ合金の粉末材料を型
内での押圧により厚い円板状のスリーブ素材に成形する
ときの状態を示す説明図。
【図5】図3に示したようなアルミ合金の粉末材料を炉
内からの熱間押し出しにより厚い円板状のスリーブ素材
に成形するときの状態を示す説明図。
【図6】図3に示したようなアルミ合金の粉末材料を炉
内からの熱間押し出しにより厚いリング状のスリーブ素
材に成形するときの状態を示す説明図。
【図7】図4に示した方法により製造されるスリーブ素
材について、(A)スリーブ素,(B)鍛造済みの成形
素材,(C)スリーブのそれぞれにおけるファイバーフ
ローの状態を模式的に示す断面説明図。
【図8】図5に示した方法により製造されるスリーブ素
材について、(A)スリーブ素,(B)鍛造済みの成形
素材,(C)スリーブのそれぞれにおけるファイバーフ
ローの状態を模式的に示す断面説明図。
【図9】図6に示した方法により製造されるスリーブ素
材について、(A)スリーブ素,(B)鍛造済みの成形
素材,(C)スリーブのそれぞれにおけるファイバーフ
ローの状態を模式的に示す断面説明図。
【符号の説明】
1 スリーブ 2 シリンダブロック 10 スリーブ素材 11 鍛造済み成形素材 21 上型(金型) 22 下型(金型)
フロントページの続き Fターム(参考) 3G024 AA25 FA06 GA02 GA07 GA10 GA31 HA00 HA07 HA11 4E087 AA02 BA04 BA14 BA22 BA23 BA24 CA08 CA22 CA33 DB01 DB12 DB23 EC12 EC22 HB02

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋳込みや圧入によりシリンダブロックの
    シリンダ孔に付設されるようなアルミ合金製のスリーブ
    において、必要成分が粉末の状態で含有されたアルミ合
    金粉末を、溶解・凝固させることなく固化して金属塊の
    スリーブ素材としてから、該スリーブ素材を金型により
    鍛造することで、薄肉円筒部を備えた略コップ状の鍛造
    済み成形素材に成形した後、そのコップ形状の底部を機
    械加工で除去して薄肉円筒形状のスリーブとすることに
    より、該スリーブの金属組織中に円筒形状の軸線に沿っ
    た方向のファイバーフローが層をなして形成されている
    ことを特徴とする鍛造スリーブ。
  2. 【請求項2】 平均粒径が10μm以下の炭化シリコン
    (SiC)が含有されていることを特徴とする請求項1
    に記載の鍛造スリーブ。
  3. 【請求項3】 鋳込みや圧入によりシリンダブロックの
    シリンダ孔に付設されるようなアルミ合金製スリーブの
    製造方法において、必要成分が粉末の状態で含有された
    アルミ合金粉末を、溶解・凝固させることなく固化して
    金属塊のスリーブ素材としてから、該スリーブ素材を金
    型により鍛造することで、薄肉円筒部を備えた略コップ
    状の鍛造済み成形素材に成形した後、そのコップ形状の
    底部を機械加工で除去して薄肉円筒形状のスリーブとす
    ることを特徴とする鍛造スリーブの製造方法。
  4. 【請求項4】 必要成分を粉末の状態で含有するアルミ
    合金粉末を、型内で押圧して固化することにより、厚い
    円板状のスリーブ素材に成形していることを特徴とする
    請求項3に記載の鍛造スリーブの製造方法。
  5. 【請求項5】 必要成分を粉末の状態で含有するアルミ
    合金粉末を、金属容器内に密封してから、炉内からの熱
    間押し出しにより円柱の棒状に固化した後、この円柱棒
    状体を所定の大きさに切断することで、厚い円板状のス
    リーブ素材に成形していることを特徴とする請求項3に
    記載の鍛造スリーブの製造方法。
  6. 【請求項6】 必要成分を粉末の状態で含有するアルミ
    合金粉末を、適宜の方法により固化することで、厚いリ
    ング状のスリーブ素材に成形していることを特徴とする
    請求項3に記載の鍛造スリーブの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN114017195A (zh) * 2021-11-02 2022-02-08 陈奎 一种动能热转化率高的发动机及其制备方法

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