JP2004097900A - 炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒 - Google Patents
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Abstract
【課題】低級から高級のすべての炭化水素の吸着容量が高く、しかも高燃焼効率をもたらすことができる炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒を提供する。
【解決手段】(1) SiO2 /Al2 O3 比が15以上であるゼオライトにAgとMg、Sr、CaおよびBaの少なくとも一種の成分を担持させたゼオライト吸着剤、助触媒成分であるCe、および燃焼触媒活性成分を含む燃焼触媒組成物が、ハニカム担体上に担持されている炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒。(2) 前記ゼオライトが、H型βゼオライトである炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒。(3) 前記Agの担持量が、前記ゼオライトに対して2〜10重量%であるこ炭化水素含有排気ガス浄化用触媒。(4) 前記Mg、Sr、CaおよびBaの少なくとも一種の担持量が、前記Agの担持量に対して0.2〜1.5(モル比)である炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒。
【選択図】 図1
【解決手段】(1) SiO2 /Al2 O3 比が15以上であるゼオライトにAgとMg、Sr、CaおよびBaの少なくとも一種の成分を担持させたゼオライト吸着剤、助触媒成分であるCe、および燃焼触媒活性成分を含む燃焼触媒組成物が、ハニカム担体上に担持されている炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒。(2) 前記ゼオライトが、H型βゼオライトである炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒。(3) 前記Agの担持量が、前記ゼオライトに対して2〜10重量%であるこ炭化水素含有排気ガス浄化用触媒。(4) 前記Mg、Sr、CaおよびBaの少なくとも一種の担持量が、前記Agの担持量に対して0.2〜1.5(モル比)である炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒に関し、さらに詳しくは自動車などの内燃機関から排出される、特に始動時の炭化水素(HC)を多く含む排気ガスの浄化に好適な炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の排気ガスには、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)などの有害成分が含まれており、1970年以降これらの有害成分に対して排出量の規制が行われている。これらのうち、HCは光化学スモッグ(オキシダント)生成の原因となるため、近年、特に規制が厳しくなっている。
自動車の排気ガス中の有害成分を浄化する触媒としては、COおよびHCの酸化とNOxの還元を同時に行う三元触媒が一般に用いられている。例えば、特公昭58−20307号公報には、アルミナコート層上に、Pd(パラジウム)、Pt(白金)、Rh(ロジウム)等の貴金属や必要に応じて助触媒成分としてCe(セリウム)、La(ランタン)等の希土類元素等を用いた触媒が提案されている。しかし、上記三元触媒は、触媒活性化温度である約250℃以上にならないと排気ガスを十分に浄化することができないという問題があった。特にエンジンの始動直後の排気ガスには高濃度のHCが含まれるため、HC成分の効果的な酸化による排気ガスの浄化方法が望まれていた。
【0003】
上記問題を解決する方法として、例えば、モノリス型の担体上にゼオライト層からなるHC吸着剤層を担持させ、これにさらにPt、PdおよびRh等の貴金属からなる酸化触媒活性成分を担持させた排気ガス浄化用触媒が提案されている(例えば、特許文献1,2,3参照)。
この排気ガス浄化用触媒は、エンジンの始動直後の触媒活性成分が十分に加熱されていない不活性状態にある場合には、排気ガスに含まれるHC成分をゼオライト吸着剤に吸着させてHC成分が大気中に放出されるのを防ぎ、触媒活性成分が排気ガスにより加熱されて活性化した時に、ゼオライト層から離脱するHC成分を酸化して触媒活性成分の触媒作用により排気ガスの浄化が行われるように構成されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平3−262541号公報
【特許文献2】
特開平2−75327号公報
【特許文献3】
特開平2−135126号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、吸着剤を用いてエンジン起動時の排気ガスを浄化するシステムでは、その吸着剤には、(1) システムの小型化のため、吸着剤の単位容積あたりのHC吸着容量が大きいこと、(2) HCとの吸着力が大きく、脱着温度が高いことが要求される。
吸着剤としての使用温度範囲が拡大すれば、吸着したHCの触媒活性成分による後処理が容易となる。すなわち、三元触媒の温度が活性化温度(250℃)に達するまでにHCの脱着量が少なければ、換言すれば、HCの脱離温度が250℃以上であれば、HCを容易に効率よく燃焼浄化させることができる。
従って、HCの吸着能力の大きい吸着剤を使用しつつ、HCの脱離温度をさらに上昇させることができれば、実用化の点で、その効果はさらに増大することになる。
【0006】
本発明者らの調査によれば、エンジンの始動時に三元触媒を通過する排気ガスには、炭素数2〜9(C=2〜9)の広範囲な炭化水素が含まれている。従って、HC含有排気ガス浄化用触媒には、これらの全範囲の炭化水素の吸着能力と酸化能力が要求される。
低級オレフィンのうち、エチレンは、ゼオライトによる吸着が困難であるが、ゼオライトにAgを担持させると、化学吸着力が発現し、その吸着能を高めることができる。しかし、プロピレンに対してはAg添加は負の効果、すなわち吸着量を低下させ、脱離温度範囲を低温側に移行させる効果をもたらすという問題があった。
また炭素数5〜7(C=5〜9)の高級炭化水素のうち、ベンゼンやトルエンなどの芳香族系炭化水素は、吸着剤の種類によらず簡単に吸着されるが、物理吸着のために温度が上がると容易に脱離して触媒の活性温度に達する前に大半が脱離するという問題があった。この問題は、脱離温度の高温化促進剤としてMg(マグネシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ca(カルシウム)、Ba(バリウム)などの成分をゼオライト表面に担持させることにより解決できるが、この場合でも、この高温化促進剤の添加はプロピレンに対して逆の効果をもたらすことがわかった。
【0007】
本発明の課題は、上記問題を解決し、特に内燃機関エンジン起動時の排ガス浄化システムの実用化という観点から、プロピレンを含む低級から高級のすべての炭化水素の吸着容量が高く、しかも高燃焼効率をもたらすことができる炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、特定のゼオライトにAgと特定のIIA族元素とを同時に担持させた吸着剤に、助触媒および燃焼触媒を混合した燃焼触媒組成物をハニカム担体に担持させることにより、上記課題を達成できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、上記課題を解決するために、本願で特許請求される発明は次の通りである。
【0009】
(1)SiO2 /Al2 O3 比が15以上であるゼオライトにAgとMg、Sr、CaおよびBaの少なくとも一種の成分を担持させたゼオライト吸着剤、助触媒成分であるCe、および燃焼触媒活性成分を含む燃焼触媒組成物が、担体上に担持されていることを特徴とする炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒。
(2)前記ゼオライト吸着剤が、H型βゼオライトであることを特徴とする(1)に記載の炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒。
(3)前記Agの担持量が、前記ゼオライトに対して2〜10重量%であることを特徴とする(1)または(2)に記載の炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒。
(4)前記Mg、Sr、CaおよびBaの少なくとも一種の担持量が、前記Agの担持量に対して0.2〜1.5(モル比)であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒。
(5)前記助触媒成分Ceの担持量が、前記ゼオライト吸着剤に対して10〜60重量%であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒。
(6)前記担体がハニカム担体であり、内燃機関からの排気ガスの浄化に使用することを特徴とする(1)〜(5)に記載の炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒。
【0010】
【作用】
以下に、本発明に用いられる特定のゼオライトにAgと特定のIIA族元素を同時に担持させたゼオライト吸着剤が、低級炭化水素(プロピレン)と芳香族炭化水素(トルエン)の両者に対して優れた脱離温度向上効果を有することを図面により説明する。
図2は、吸着剤のトルエンに対する脱離温度特性を示す図である。吸着剤として、金属成分を担持させていないH型βゼオライトのみの吸着剤と、H型βゼオライトにAgのみを担持させた吸着剤と、H型βゼオライトにMgのみを担持させた吸着剤と、H型βゼオライトにAgとMgを同時に担持させた吸着剤の4種を用い、これらの各吸着剤にトルエン含有ガスを2分間接触させて吸着させ、その後、窒素雰囲気中で吸着剤の温度を上昇させて各温度における脱離トルエンの濃度を測定した。
図2から、H型βゼオライトのみの吸着剤ではトルエン脱離温度(脱離ピーク温度)が200℃前後であるのに対し、Agのみを担持させた吸着剤のトルエン脱離温度は430℃、Mgのみを担持させた吸着剤のトルエン脱離温度は400℃、およびAgとMgを同時に担持させた吸着剤のトルエン脱離温度は500℃であり、Ag担持吸着剤、Mg担持吸着剤およびAgとMg担持吸着剤では、いずれも脱離ピーク温度が、触媒活性化温度である250℃よりも大幅に向上していることがわかる。
【0011】
一方、図3には、上記4種の吸着剤のプロピレンに対する脱離温度特性を示した。図3は、後述する試験例Iの結果をまとめたものであり、各吸着剤に600ppmのプロピレンと0.5%酸素を含有するガスを3L/minの割合で室温で流通接触させ(SV30000h−1)、その後、N2 中で30℃/min昇温速度で各吸着剤を加熱し、各温度における脱離プロピレン濃度を測定することにより調べた。
図3から、ゼオライト単独の吸着剤では、プロピレン脱離温度が触媒活性化温度(250℃)よりも高温度域にあるのに対し、Ag担持吸着剤およびMg担持吸着剤では、プロピレン脱離温度は大幅に低温側にシフトする。しかし、AgとMgを同時に担持させることにより、プロピレン脱離温度が上記触媒活性化温度よりも確実に高温側にシフトすることがわかる。
【0012】
このように、ゼオライトにAgとMgを同時に担持させた吸着剤を使用することにより、低級炭化水素の脱離温度みならず、芳香族炭化水素の脱離温度をも大幅に高温側にシフトさせることが可能であり、従って、ゼオライトにAgおよびMg等のIIA族元素の少なくとも1種を担持させた吸着剤に触媒燃焼成分を担持させることにより、効率よく低級炭化水素および高級炭化水素の浄化を行うことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施例を示す炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒の説明図である。
この触媒は、ゼオライト表面にAgとMg、Sr、CaおよびBaの少なくとも1種の成分を同時に担持させたゼオライト吸着剤と、助触媒成分Ceと、燃焼触媒活性成分(Pd、Pt、Rh)を含む燃焼触媒組成物1が、ハニカム担体2に担持されている。
本発明において、ゼオライトには、SiO2 /Al2 O3 比が15以上のゼオライトが用いられる。ゼオライトのSiO2 /Al2 O3 比が15未満では、SiO2 の含有量が少なすぎて水吸着による妨害を抑制できず、また耐熱性が低下する。耐水性および耐熱性の点から、SiO2 /Al2 O3 比は15〜500の範囲が好ましい。また耐熱性、耐水性および吸着容量の点からはH型βゼオライトおよびH型モルデナイトの使用が好ましい。プロピレンの脱離温度の向上効果は、ゼオライトの種類により大きく影響される。特にH型βゼオライトとH型モルデナイトに大きな効果が認められるが、MFI型ゼオライト、Y型ゼオライト、フェリエライトなどを使用した場合には上記効果は小さくなる。またH型βゼオライトは、助触媒成分Ceの担持により、低級HCおよび高級HCの保持力が向上し、しかもその内部でHCを浄化する作用が発現し、特にプロピレンのような低級HCに対する浄化作用が大きいために好ましい。
【0014】
本発明に用いられるゼオライト吸着剤は、上記ゼオライトにAgとMg、Sr、CaおよびBaの少なくとも1種が同時に担持されて得られる。ゼオライトに対するAgの担持量は、2〜10重量%の範囲が好ましく、より好ましくは3〜7重量%である。Agの担持量が2重量%未満では脱離温度向上効果が得られない場合があり、また10重量%を超えても脱離温度がそれ以上向上しないばかりか、シンタリングが起こりやすくなり、耐熱性低下が起こり易くなる。またMg、Sr、CaおよびBaの添加は、Agの効果を補うものであり、これらの添加モル比率を大きくするとAgの添加効果を損なう場合がある。従って、これらの担持量は、Agの担持量に対してモル比で0.2〜1.5が好ましく、より好ましくは0.5〜1の範囲である。
AgおよびMg、Sr、CaおよびBaの少なくとも1種のゼオライトへの担持は、ゼオライトのスラリー化を行う前に粉末の状態で行ってもよいし、ハニカム担体へのウォッシュコートによるゼオライト担持後に実施してもよい。
【0015】
本発明に用いられる助触媒成分Ceは、低級および高級炭化水素の保持力を向上させるるとともに、使用される雰囲気に応じて酸素を放出したり、酸素を貯蔵する機能を有し、触媒の雰囲気を一定に保ち、吸着したHCを触媒内部で浄化する機能を発現させる。ゼオライトにCeと三元触媒からなる貴金属成分の量を各々変化させて添加し、調製した触媒に対するプロピレンの吸脱着性を調べると、HC浄化率に対してCeが貴金属成分と同様に大きな効果を示すことがわかった。従って、Ceの使用により、燃焼触媒活性成分の使用量を大幅に低減させることできる。Ceの使用量は、ゼオライトの吸着性能の維持という点から、上記ゼオライト吸着剤に対して10〜60重量%が好ましく、より好ましくは20〜50重量%である。
【0016】
本発明に用いられる燃焼触媒活性成分には特に限定されないが、三元触媒として一般的に使用されている貴金属Pd、Pt、Rh等が好ましく用いられる。内燃機関の排気ガス処理では、HCだけでなくCOやNOx を同時に処理する必要があることから、それぞれの浄化に適した貴金属比率や量を選定することが好ましい。HC浄化に注目する場合には、高級炭化水素の浄化にはPdが優れているため、貴金属成分のPdとPtの配合(Pd:Pt)は重量比で10:1〜20:1の範囲とするのが好ましい。また低級炭化水素用の貴金属成分としてはPdとPt配合は2:1〜1:1の範囲とするのが好ましい。浄化する炭化水素組成に適した組成や配合量を選定することにより浄化効率をより向上させることができる。
本発明において、燃焼触媒組成物は、粉末状、ペレット状などの形状で用いてもよいが、内燃機関の排気ガスの浄化用触媒として用いる場合には、圧力損失を低減させるため、ハニカム、モノリス等のような担体上に公知の方法で担持させて用いるのが好ましい。燃焼触媒組成物を粉末状、ペレット状で用いる場合は、前記ゼオライト上に担持またはゼオライトと混合して用いることができる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
400cpsi(セル数:400/in2 )のハニカム担体に、Si/2Al比が480であるH型βゼオライト(東ソー製、HSZ980HOA)を次の方法で担持させた。まず、H型βゼオライト粉末(BEA)とアルミナゾル200を、固形分重量比で100:10の割合で混合し、これに水分を添加し、H型βゼオライト基準でスラリ中の固形分濃度が30重量%相当になるように混ぜ合わせ、次いでアルミナ製ボールミルで粉砕を行った。粘性を高めるため、必要に応じて有機バインダを添加し、ウォッシュコート用スラリーとした。得られたスラリーを用いてハニカム担体に対してゼオライトの最終担持量が120g/L(対ハニカム容積)となるようにウォッシュコートし、乾燥後、600℃で1時間の焼成処理を行ってBEA担持ハニカムを得た。
その後、得られたBEA担持ハニカムの吸水量をベースに調整したH型βゼオライト100重量部に対し、Agとして5重量部およびMgとして1.1重量部になるように調整された硝酸銀および硝酸マグネシウムの均一水溶液を作製し、この水溶液に上記のBEA担持ハニカムを浸漬し、引き上げ、乾燥後、600℃で1時間の焼成を行ってAg/Mg/BEA担持ハニカムを得た。
【0018】
実施例2
実施例1において、硝酸マグネシウムを硝酸ストロンチウム(Sr)の水溶液に代え、かつSrの担持量が4.1重量部となるように調整した均一水溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてAg/Sr/BEA担持ハニカムを得た。
【0019】
実施例3
H型βゼオライト100重量部に対し、Agとして5重量部およびMgとして1.1重量部になるように調製した硝酸銀および硝酸マグネシウムの均一水溶液を作製し、この均一水溶液にBEAを加えて均一に混合した後、乾燥して600℃で1hの焼成を行い、Ag/Mg/BEA焼成粉末を得た。
次に、このAg/Mg/BEA焼成粉末35重量部、無機バインダ(アルミナゾル200、固形分濃度10%)35重量部およびイオン交換水30重量部を遊星ボールミルの粉砕ポットに直径6mmのアルミナビーズとともに入れて、300rpmで5分間粉砕して粉砕スラリーを得た。このスラリを400cpsi(セル数:400/in2 )のハニカム担体に含浸させ、乾燥し、600℃1hの焼成を行ってAg/Mg/BEA担持ハニカムを得た。
【0020】
比較例1
実施例1において、BEA担持ハニカムに、硝酸銀水溶液を含浸させた以外は、実施例1と同様にしてAg/BEA担持ハニカムを得た。
比較例2
実施例1において、BEA担持ハニカムに、硝酸マグネシウム水溶液を含浸させた以外は、実施例1と同様にしてMg/BEA担持ハニカムを得た。
【0021】
<試験例I>
実施例1〜3で得られたAg/MgまたはSr/BEA担持ハニカム、比較例1で得られたAg/BEA担持ハニカム、および比較例2で得られたMg/BEA担持ハニカムのプロピレンに対する吸着能力を次のようにして調べ、その結果を表1および図3に示した。
各サンプルを17角×21mLサイズに切断し、これらのサンプルに600ppmプロピレンと0.5%O2 含有ガスを3L/minの割合で室温で流通させ(SV30000h−1)、プロピレンを吸着させた。その後、N2 中で30℃/min昇温速度で各サンプルを加熱しながらプロピレンの脱離温温度範囲を調べ、その結果を表1に示したた。また各サンプルのプロピレンに対する脱離温度特性を図3に示した。
【0022】
表1および図3から、Agのみを担持したBEA担持ハニカム(比較例1)およびMgのみを担持したBEA担持ハニカム(比較例2)では、ゼオライトのみを担持させた場合よりもプロピレンの脱離温度が低温側にシフトするが、本発明におけるAgとMgを同時にゼオライトに担持させた場合(実施例1〜3)には、プロピレン脱離温度が触媒活性化温度(250℃)以上の高温側に確実にシフトすることが確認された。
【0023】
【表1】
【0024】
実施例4
H型βゼオライト100重量部に対し、Agとして5重量部およびMgとして1.1重量部になるように調製した硝酸銀および硝酸マグネシウムの均一水溶液を作製し、この均一水溶液にBEAを加えて均一に混合した後、乾燥して600℃で1hの焼成を行い、Ag/Mg/BEA焼成粉末を得た。
次に、このAg/Mg/BEA焼成粉末35重量部、無機バインダ(アルミナゾル200、固形分濃度10%)35重量部およびイオン交換水30重量部を遊星ボールミルの粉砕ポットに直径6mmのアルミナビーズとともに入れ、300rpmで5分間粉砕して粉砕スラリーを得た。このスラリを400cpsi(セル数:400/in2 )のハニカム担体に含浸させ、乾燥し、600℃1hの焼成を行ってAg/Mg/BEA担持ハニカムを得た。
このAg/Mg/BEA担持ハニカムを硝酸セリウム水溶液に浸漬し、CeとしてAg/Mg/BEA吸着剤に対して5重量部担持させた。Ce担持後、600℃で1h焼成し、さらにPt、Pd、Rhの重量比がそれぞれ2.6g/L、0.3g/L、0.3g/Lになるように溶液を調製し、該溶液に浸漬してこれらの貴金属成分を担持させ、600℃で1h焼成してAg/Mg/BEA・Ce・Pd/Pt/Rh組成のHC浄化触媒を得た。
【0025】
実施例5
実施例4において、硝酸マグネシウムの代わりに硝酸ストロンチウムを使用し、かつH型βゼオライト100重量部に対し、Srとして4.1重量部となるように水溶液を調整した以外は実施例4と同様の方法でAg/Sr/BEA・Ce・Pd/Pt/Rh組成のHC浄化触媒を得た。
実施例6
実施例4において、硝酸マグネシウムの代わりに硝酸バリウムを使用し、かつH型βゼオライト100重量部に対し、Baとして6.4重量部となるように水溶液を調整した以外は実施例4と同様の方法でAg/Ba/BEA・Ce・Pd/Pt/Rh組成のHC浄化触媒を得た。
【0026】
実施例7
実施例1で得られた最終担持量120g/LのBEA担持ハニカムを用いた。このBEA担持ハニカムの吸水量をベースに調整したH型βゼオライト100重量部に対し、Agとして5重量部、Mgとして1.1重量部になるように硝酸銀および硝酸マグネシウムの均一水溶液を調製した。この水溶液に上記のBEA担持ハニカムを含浸させ、乾燥した後、600℃で1時間の焼成を行い、さらに実施例4と同様にしてCe、Pd、Pt、Rhを担持させてAg/Mg/BEA・Ce・Pd/Pt/Rh組成のHC浄化触媒を得た。
【0027】
実施例8
実施例7において、H型βゼオライト100重量部に対し、担持するAgが5重量部、Mgが0.5重量部、Srが0.6重量部となるように均一な水溶液を調製し、この水溶液にBEA担持ハニカムを含浸させた以外は実施例7と同様にしてAg/Mg/Sr/BEA・Ce・Pd/Pt/Rh組成のHC浄化触媒を得た。
【0028】
比較例3
実施例4において、H型βゼオライト100重量部に対し、Mgとして5重量部になるように調製した硝酸マグネシウムの水溶液を作製し、この水溶液にBEAを加えて均一に混合したMg/BEA焼成粉末を用いた以外は実施例4と同様にしてMg/BEA・Ce・Pd/Pt/Rh組成のHC浄化触媒を得た。
比較例4
実施例7において、H型βゼオライト100重量部に対し、担持するAgを5重量部にした以外は実施例7と同様にしてAg/BEA・Ce・Pd/Pt/Rh組成のHC浄化触媒を得た。
比較例5
実施例7において、H型βゼオライト(Si/2AL比=480)の代わりにMFIゼオライトを用いた以外は実施例7と同様にしてAg/Mg/MFI・Ce・Pd/Pt/Rh組成のHC浄化触媒を得た。
【0029】
<試験例II>
実施例4〜8および比較例3〜5で得られた各HC浄化触媒を17角×21mmLサイズに切断し、各触媒サンプルに、表2に示すガス組成の模擬ガスを、3L/minの割合で室温で2分間流通させてHCを吸着させ(SV30000h−1)、次いで、N2 中で50℃/min昇温速度で加熱しながら脱離する排ガス中のHC濃度を全炭化水素計により測定し、下記式によりHCの燃焼浄化率を算出し、その結果を表3に示した。
HC浄化率(%) =〔(投入HC量−脱離HC量)/(投入HC量)〕×100
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
表3から、本発明の触媒(実施例4〜8)によれば、HC浄化率を高めることができ、内燃機関の始動時の排ガスを効果的に除去できることが確認された。
【0032】
【発明の効果】
請求項1ないし6に記載の炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒によれば、高級炭化水素についての吸着性能と脱離温度を向上させて浄化性能を改善できるばかりでなく、プロピレンのような低級炭化水素についても吸着・浄化性能を損なうこともないため、エンジン始動時に発生する幅広い炭素数の炭化水素を効果的に浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒の説明図。
【図2】吸着剤のトルエンに対する脱離温度特性を示す図。
【図3】吸着剤のプロピレンに対する脱離温度特性を示す図。
【符号の説明】
1…燃焼触媒組成物(ゼオライト、Ag+Mg等、Ce、Pd等)
2…ハニカム担体
【発明の属する技術分野】
本発明は炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒に関し、さらに詳しくは自動車などの内燃機関から排出される、特に始動時の炭化水素(HC)を多く含む排気ガスの浄化に好適な炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の排気ガスには、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)などの有害成分が含まれており、1970年以降これらの有害成分に対して排出量の規制が行われている。これらのうち、HCは光化学スモッグ(オキシダント)生成の原因となるため、近年、特に規制が厳しくなっている。
自動車の排気ガス中の有害成分を浄化する触媒としては、COおよびHCの酸化とNOxの還元を同時に行う三元触媒が一般に用いられている。例えば、特公昭58−20307号公報には、アルミナコート層上に、Pd(パラジウム)、Pt(白金)、Rh(ロジウム)等の貴金属や必要に応じて助触媒成分としてCe(セリウム)、La(ランタン)等の希土類元素等を用いた触媒が提案されている。しかし、上記三元触媒は、触媒活性化温度である約250℃以上にならないと排気ガスを十分に浄化することができないという問題があった。特にエンジンの始動直後の排気ガスには高濃度のHCが含まれるため、HC成分の効果的な酸化による排気ガスの浄化方法が望まれていた。
【0003】
上記問題を解決する方法として、例えば、モノリス型の担体上にゼオライト層からなるHC吸着剤層を担持させ、これにさらにPt、PdおよびRh等の貴金属からなる酸化触媒活性成分を担持させた排気ガス浄化用触媒が提案されている(例えば、特許文献1,2,3参照)。
この排気ガス浄化用触媒は、エンジンの始動直後の触媒活性成分が十分に加熱されていない不活性状態にある場合には、排気ガスに含まれるHC成分をゼオライト吸着剤に吸着させてHC成分が大気中に放出されるのを防ぎ、触媒活性成分が排気ガスにより加熱されて活性化した時に、ゼオライト層から離脱するHC成分を酸化して触媒活性成分の触媒作用により排気ガスの浄化が行われるように構成されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平3−262541号公報
【特許文献2】
特開平2−75327号公報
【特許文献3】
特開平2−135126号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、吸着剤を用いてエンジン起動時の排気ガスを浄化するシステムでは、その吸着剤には、(1) システムの小型化のため、吸着剤の単位容積あたりのHC吸着容量が大きいこと、(2) HCとの吸着力が大きく、脱着温度が高いことが要求される。
吸着剤としての使用温度範囲が拡大すれば、吸着したHCの触媒活性成分による後処理が容易となる。すなわち、三元触媒の温度が活性化温度(250℃)に達するまでにHCの脱着量が少なければ、換言すれば、HCの脱離温度が250℃以上であれば、HCを容易に効率よく燃焼浄化させることができる。
従って、HCの吸着能力の大きい吸着剤を使用しつつ、HCの脱離温度をさらに上昇させることができれば、実用化の点で、その効果はさらに増大することになる。
【0006】
本発明者らの調査によれば、エンジンの始動時に三元触媒を通過する排気ガスには、炭素数2〜9(C=2〜9)の広範囲な炭化水素が含まれている。従って、HC含有排気ガス浄化用触媒には、これらの全範囲の炭化水素の吸着能力と酸化能力が要求される。
低級オレフィンのうち、エチレンは、ゼオライトによる吸着が困難であるが、ゼオライトにAgを担持させると、化学吸着力が発現し、その吸着能を高めることができる。しかし、プロピレンに対してはAg添加は負の効果、すなわち吸着量を低下させ、脱離温度範囲を低温側に移行させる効果をもたらすという問題があった。
また炭素数5〜7(C=5〜9)の高級炭化水素のうち、ベンゼンやトルエンなどの芳香族系炭化水素は、吸着剤の種類によらず簡単に吸着されるが、物理吸着のために温度が上がると容易に脱離して触媒の活性温度に達する前に大半が脱離するという問題があった。この問題は、脱離温度の高温化促進剤としてMg(マグネシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ca(カルシウム)、Ba(バリウム)などの成分をゼオライト表面に担持させることにより解決できるが、この場合でも、この高温化促進剤の添加はプロピレンに対して逆の効果をもたらすことがわかった。
【0007】
本発明の課題は、上記問題を解決し、特に内燃機関エンジン起動時の排ガス浄化システムの実用化という観点から、プロピレンを含む低級から高級のすべての炭化水素の吸着容量が高く、しかも高燃焼効率をもたらすことができる炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、特定のゼオライトにAgと特定のIIA族元素とを同時に担持させた吸着剤に、助触媒および燃焼触媒を混合した燃焼触媒組成物をハニカム担体に担持させることにより、上記課題を達成できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、上記課題を解決するために、本願で特許請求される発明は次の通りである。
【0009】
(1)SiO2 /Al2 O3 比が15以上であるゼオライトにAgとMg、Sr、CaおよびBaの少なくとも一種の成分を担持させたゼオライト吸着剤、助触媒成分であるCe、および燃焼触媒活性成分を含む燃焼触媒組成物が、担体上に担持されていることを特徴とする炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒。
(2)前記ゼオライト吸着剤が、H型βゼオライトであることを特徴とする(1)に記載の炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒。
(3)前記Agの担持量が、前記ゼオライトに対して2〜10重量%であることを特徴とする(1)または(2)に記載の炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒。
(4)前記Mg、Sr、CaおよびBaの少なくとも一種の担持量が、前記Agの担持量に対して0.2〜1.5(モル比)であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒。
(5)前記助触媒成分Ceの担持量が、前記ゼオライト吸着剤に対して10〜60重量%であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒。
(6)前記担体がハニカム担体であり、内燃機関からの排気ガスの浄化に使用することを特徴とする(1)〜(5)に記載の炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒。
【0010】
【作用】
以下に、本発明に用いられる特定のゼオライトにAgと特定のIIA族元素を同時に担持させたゼオライト吸着剤が、低級炭化水素(プロピレン)と芳香族炭化水素(トルエン)の両者に対して優れた脱離温度向上効果を有することを図面により説明する。
図2は、吸着剤のトルエンに対する脱離温度特性を示す図である。吸着剤として、金属成分を担持させていないH型βゼオライトのみの吸着剤と、H型βゼオライトにAgのみを担持させた吸着剤と、H型βゼオライトにMgのみを担持させた吸着剤と、H型βゼオライトにAgとMgを同時に担持させた吸着剤の4種を用い、これらの各吸着剤にトルエン含有ガスを2分間接触させて吸着させ、その後、窒素雰囲気中で吸着剤の温度を上昇させて各温度における脱離トルエンの濃度を測定した。
図2から、H型βゼオライトのみの吸着剤ではトルエン脱離温度(脱離ピーク温度)が200℃前後であるのに対し、Agのみを担持させた吸着剤のトルエン脱離温度は430℃、Mgのみを担持させた吸着剤のトルエン脱離温度は400℃、およびAgとMgを同時に担持させた吸着剤のトルエン脱離温度は500℃であり、Ag担持吸着剤、Mg担持吸着剤およびAgとMg担持吸着剤では、いずれも脱離ピーク温度が、触媒活性化温度である250℃よりも大幅に向上していることがわかる。
【0011】
一方、図3には、上記4種の吸着剤のプロピレンに対する脱離温度特性を示した。図3は、後述する試験例Iの結果をまとめたものであり、各吸着剤に600ppmのプロピレンと0.5%酸素を含有するガスを3L/minの割合で室温で流通接触させ(SV30000h−1)、その後、N2 中で30℃/min昇温速度で各吸着剤を加熱し、各温度における脱離プロピレン濃度を測定することにより調べた。
図3から、ゼオライト単独の吸着剤では、プロピレン脱離温度が触媒活性化温度(250℃)よりも高温度域にあるのに対し、Ag担持吸着剤およびMg担持吸着剤では、プロピレン脱離温度は大幅に低温側にシフトする。しかし、AgとMgを同時に担持させることにより、プロピレン脱離温度が上記触媒活性化温度よりも確実に高温側にシフトすることがわかる。
【0012】
このように、ゼオライトにAgとMgを同時に担持させた吸着剤を使用することにより、低級炭化水素の脱離温度みならず、芳香族炭化水素の脱離温度をも大幅に高温側にシフトさせることが可能であり、従って、ゼオライトにAgおよびMg等のIIA族元素の少なくとも1種を担持させた吸着剤に触媒燃焼成分を担持させることにより、効率よく低級炭化水素および高級炭化水素の浄化を行うことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施例を示す炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒の説明図である。
この触媒は、ゼオライト表面にAgとMg、Sr、CaおよびBaの少なくとも1種の成分を同時に担持させたゼオライト吸着剤と、助触媒成分Ceと、燃焼触媒活性成分(Pd、Pt、Rh)を含む燃焼触媒組成物1が、ハニカム担体2に担持されている。
本発明において、ゼオライトには、SiO2 /Al2 O3 比が15以上のゼオライトが用いられる。ゼオライトのSiO2 /Al2 O3 比が15未満では、SiO2 の含有量が少なすぎて水吸着による妨害を抑制できず、また耐熱性が低下する。耐水性および耐熱性の点から、SiO2 /Al2 O3 比は15〜500の範囲が好ましい。また耐熱性、耐水性および吸着容量の点からはH型βゼオライトおよびH型モルデナイトの使用が好ましい。プロピレンの脱離温度の向上効果は、ゼオライトの種類により大きく影響される。特にH型βゼオライトとH型モルデナイトに大きな効果が認められるが、MFI型ゼオライト、Y型ゼオライト、フェリエライトなどを使用した場合には上記効果は小さくなる。またH型βゼオライトは、助触媒成分Ceの担持により、低級HCおよび高級HCの保持力が向上し、しかもその内部でHCを浄化する作用が発現し、特にプロピレンのような低級HCに対する浄化作用が大きいために好ましい。
【0014】
本発明に用いられるゼオライト吸着剤は、上記ゼオライトにAgとMg、Sr、CaおよびBaの少なくとも1種が同時に担持されて得られる。ゼオライトに対するAgの担持量は、2〜10重量%の範囲が好ましく、より好ましくは3〜7重量%である。Agの担持量が2重量%未満では脱離温度向上効果が得られない場合があり、また10重量%を超えても脱離温度がそれ以上向上しないばかりか、シンタリングが起こりやすくなり、耐熱性低下が起こり易くなる。またMg、Sr、CaおよびBaの添加は、Agの効果を補うものであり、これらの添加モル比率を大きくするとAgの添加効果を損なう場合がある。従って、これらの担持量は、Agの担持量に対してモル比で0.2〜1.5が好ましく、より好ましくは0.5〜1の範囲である。
AgおよびMg、Sr、CaおよびBaの少なくとも1種のゼオライトへの担持は、ゼオライトのスラリー化を行う前に粉末の状態で行ってもよいし、ハニカム担体へのウォッシュコートによるゼオライト担持後に実施してもよい。
【0015】
本発明に用いられる助触媒成分Ceは、低級および高級炭化水素の保持力を向上させるるとともに、使用される雰囲気に応じて酸素を放出したり、酸素を貯蔵する機能を有し、触媒の雰囲気を一定に保ち、吸着したHCを触媒内部で浄化する機能を発現させる。ゼオライトにCeと三元触媒からなる貴金属成分の量を各々変化させて添加し、調製した触媒に対するプロピレンの吸脱着性を調べると、HC浄化率に対してCeが貴金属成分と同様に大きな効果を示すことがわかった。従って、Ceの使用により、燃焼触媒活性成分の使用量を大幅に低減させることできる。Ceの使用量は、ゼオライトの吸着性能の維持という点から、上記ゼオライト吸着剤に対して10〜60重量%が好ましく、より好ましくは20〜50重量%である。
【0016】
本発明に用いられる燃焼触媒活性成分には特に限定されないが、三元触媒として一般的に使用されている貴金属Pd、Pt、Rh等が好ましく用いられる。内燃機関の排気ガス処理では、HCだけでなくCOやNOx を同時に処理する必要があることから、それぞれの浄化に適した貴金属比率や量を選定することが好ましい。HC浄化に注目する場合には、高級炭化水素の浄化にはPdが優れているため、貴金属成分のPdとPtの配合(Pd:Pt)は重量比で10:1〜20:1の範囲とするのが好ましい。また低級炭化水素用の貴金属成分としてはPdとPt配合は2:1〜1:1の範囲とするのが好ましい。浄化する炭化水素組成に適した組成や配合量を選定することにより浄化効率をより向上させることができる。
本発明において、燃焼触媒組成物は、粉末状、ペレット状などの形状で用いてもよいが、内燃機関の排気ガスの浄化用触媒として用いる場合には、圧力損失を低減させるため、ハニカム、モノリス等のような担体上に公知の方法で担持させて用いるのが好ましい。燃焼触媒組成物を粉末状、ペレット状で用いる場合は、前記ゼオライト上に担持またはゼオライトと混合して用いることができる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
400cpsi(セル数:400/in2 )のハニカム担体に、Si/2Al比が480であるH型βゼオライト(東ソー製、HSZ980HOA)を次の方法で担持させた。まず、H型βゼオライト粉末(BEA)とアルミナゾル200を、固形分重量比で100:10の割合で混合し、これに水分を添加し、H型βゼオライト基準でスラリ中の固形分濃度が30重量%相当になるように混ぜ合わせ、次いでアルミナ製ボールミルで粉砕を行った。粘性を高めるため、必要に応じて有機バインダを添加し、ウォッシュコート用スラリーとした。得られたスラリーを用いてハニカム担体に対してゼオライトの最終担持量が120g/L(対ハニカム容積)となるようにウォッシュコートし、乾燥後、600℃で1時間の焼成処理を行ってBEA担持ハニカムを得た。
その後、得られたBEA担持ハニカムの吸水量をベースに調整したH型βゼオライト100重量部に対し、Agとして5重量部およびMgとして1.1重量部になるように調整された硝酸銀および硝酸マグネシウムの均一水溶液を作製し、この水溶液に上記のBEA担持ハニカムを浸漬し、引き上げ、乾燥後、600℃で1時間の焼成を行ってAg/Mg/BEA担持ハニカムを得た。
【0018】
実施例2
実施例1において、硝酸マグネシウムを硝酸ストロンチウム(Sr)の水溶液に代え、かつSrの担持量が4.1重量部となるように調整した均一水溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてAg/Sr/BEA担持ハニカムを得た。
【0019】
実施例3
H型βゼオライト100重量部に対し、Agとして5重量部およびMgとして1.1重量部になるように調製した硝酸銀および硝酸マグネシウムの均一水溶液を作製し、この均一水溶液にBEAを加えて均一に混合した後、乾燥して600℃で1hの焼成を行い、Ag/Mg/BEA焼成粉末を得た。
次に、このAg/Mg/BEA焼成粉末35重量部、無機バインダ(アルミナゾル200、固形分濃度10%)35重量部およびイオン交換水30重量部を遊星ボールミルの粉砕ポットに直径6mmのアルミナビーズとともに入れて、300rpmで5分間粉砕して粉砕スラリーを得た。このスラリを400cpsi(セル数:400/in2 )のハニカム担体に含浸させ、乾燥し、600℃1hの焼成を行ってAg/Mg/BEA担持ハニカムを得た。
【0020】
比較例1
実施例1において、BEA担持ハニカムに、硝酸銀水溶液を含浸させた以外は、実施例1と同様にしてAg/BEA担持ハニカムを得た。
比較例2
実施例1において、BEA担持ハニカムに、硝酸マグネシウム水溶液を含浸させた以外は、実施例1と同様にしてMg/BEA担持ハニカムを得た。
【0021】
<試験例I>
実施例1〜3で得られたAg/MgまたはSr/BEA担持ハニカム、比較例1で得られたAg/BEA担持ハニカム、および比較例2で得られたMg/BEA担持ハニカムのプロピレンに対する吸着能力を次のようにして調べ、その結果を表1および図3に示した。
各サンプルを17角×21mLサイズに切断し、これらのサンプルに600ppmプロピレンと0.5%O2 含有ガスを3L/minの割合で室温で流通させ(SV30000h−1)、プロピレンを吸着させた。その後、N2 中で30℃/min昇温速度で各サンプルを加熱しながらプロピレンの脱離温温度範囲を調べ、その結果を表1に示したた。また各サンプルのプロピレンに対する脱離温度特性を図3に示した。
【0022】
表1および図3から、Agのみを担持したBEA担持ハニカム(比較例1)およびMgのみを担持したBEA担持ハニカム(比較例2)では、ゼオライトのみを担持させた場合よりもプロピレンの脱離温度が低温側にシフトするが、本発明におけるAgとMgを同時にゼオライトに担持させた場合(実施例1〜3)には、プロピレン脱離温度が触媒活性化温度(250℃)以上の高温側に確実にシフトすることが確認された。
【0023】
【表1】
【0024】
実施例4
H型βゼオライト100重量部に対し、Agとして5重量部およびMgとして1.1重量部になるように調製した硝酸銀および硝酸マグネシウムの均一水溶液を作製し、この均一水溶液にBEAを加えて均一に混合した後、乾燥して600℃で1hの焼成を行い、Ag/Mg/BEA焼成粉末を得た。
次に、このAg/Mg/BEA焼成粉末35重量部、無機バインダ(アルミナゾル200、固形分濃度10%)35重量部およびイオン交換水30重量部を遊星ボールミルの粉砕ポットに直径6mmのアルミナビーズとともに入れ、300rpmで5分間粉砕して粉砕スラリーを得た。このスラリを400cpsi(セル数:400/in2 )のハニカム担体に含浸させ、乾燥し、600℃1hの焼成を行ってAg/Mg/BEA担持ハニカムを得た。
このAg/Mg/BEA担持ハニカムを硝酸セリウム水溶液に浸漬し、CeとしてAg/Mg/BEA吸着剤に対して5重量部担持させた。Ce担持後、600℃で1h焼成し、さらにPt、Pd、Rhの重量比がそれぞれ2.6g/L、0.3g/L、0.3g/Lになるように溶液を調製し、該溶液に浸漬してこれらの貴金属成分を担持させ、600℃で1h焼成してAg/Mg/BEA・Ce・Pd/Pt/Rh組成のHC浄化触媒を得た。
【0025】
実施例5
実施例4において、硝酸マグネシウムの代わりに硝酸ストロンチウムを使用し、かつH型βゼオライト100重量部に対し、Srとして4.1重量部となるように水溶液を調整した以外は実施例4と同様の方法でAg/Sr/BEA・Ce・Pd/Pt/Rh組成のHC浄化触媒を得た。
実施例6
実施例4において、硝酸マグネシウムの代わりに硝酸バリウムを使用し、かつH型βゼオライト100重量部に対し、Baとして6.4重量部となるように水溶液を調整した以外は実施例4と同様の方法でAg/Ba/BEA・Ce・Pd/Pt/Rh組成のHC浄化触媒を得た。
【0026】
実施例7
実施例1で得られた最終担持量120g/LのBEA担持ハニカムを用いた。このBEA担持ハニカムの吸水量をベースに調整したH型βゼオライト100重量部に対し、Agとして5重量部、Mgとして1.1重量部になるように硝酸銀および硝酸マグネシウムの均一水溶液を調製した。この水溶液に上記のBEA担持ハニカムを含浸させ、乾燥した後、600℃で1時間の焼成を行い、さらに実施例4と同様にしてCe、Pd、Pt、Rhを担持させてAg/Mg/BEA・Ce・Pd/Pt/Rh組成のHC浄化触媒を得た。
【0027】
実施例8
実施例7において、H型βゼオライト100重量部に対し、担持するAgが5重量部、Mgが0.5重量部、Srが0.6重量部となるように均一な水溶液を調製し、この水溶液にBEA担持ハニカムを含浸させた以外は実施例7と同様にしてAg/Mg/Sr/BEA・Ce・Pd/Pt/Rh組成のHC浄化触媒を得た。
【0028】
比較例3
実施例4において、H型βゼオライト100重量部に対し、Mgとして5重量部になるように調製した硝酸マグネシウムの水溶液を作製し、この水溶液にBEAを加えて均一に混合したMg/BEA焼成粉末を用いた以外は実施例4と同様にしてMg/BEA・Ce・Pd/Pt/Rh組成のHC浄化触媒を得た。
比較例4
実施例7において、H型βゼオライト100重量部に対し、担持するAgを5重量部にした以外は実施例7と同様にしてAg/BEA・Ce・Pd/Pt/Rh組成のHC浄化触媒を得た。
比較例5
実施例7において、H型βゼオライト(Si/2AL比=480)の代わりにMFIゼオライトを用いた以外は実施例7と同様にしてAg/Mg/MFI・Ce・Pd/Pt/Rh組成のHC浄化触媒を得た。
【0029】
<試験例II>
実施例4〜8および比較例3〜5で得られた各HC浄化触媒を17角×21mmLサイズに切断し、各触媒サンプルに、表2に示すガス組成の模擬ガスを、3L/minの割合で室温で2分間流通させてHCを吸着させ(SV30000h−1)、次いで、N2 中で50℃/min昇温速度で加熱しながら脱離する排ガス中のHC濃度を全炭化水素計により測定し、下記式によりHCの燃焼浄化率を算出し、その結果を表3に示した。
HC浄化率(%) =〔(投入HC量−脱離HC量)/(投入HC量)〕×100
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
表3から、本発明の触媒(実施例4〜8)によれば、HC浄化率を高めることができ、内燃機関の始動時の排ガスを効果的に除去できることが確認された。
【0032】
【発明の効果】
請求項1ないし6に記載の炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒によれば、高級炭化水素についての吸着性能と脱離温度を向上させて浄化性能を改善できるばかりでなく、プロピレンのような低級炭化水素についても吸着・浄化性能を損なうこともないため、エンジン始動時に発生する幅広い炭素数の炭化水素を効果的に浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒の説明図。
【図2】吸着剤のトルエンに対する脱離温度特性を示す図。
【図3】吸着剤のプロピレンに対する脱離温度特性を示す図。
【符号の説明】
1…燃焼触媒組成物(ゼオライト、Ag+Mg等、Ce、Pd等)
2…ハニカム担体
Claims (6)
- SiO2 /Al2 O3 比が15以上であるゼオライトにAgとMg、Sr、CaおよびBaの少なくとも一種の成分を担持させたゼオライト吸着剤、助触媒成分であるCe、および燃焼触媒活性成分を含む燃焼触媒組成物が、担体上に担持されていることを特徴とする炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒。
- 前記ゼオライトが、H型βゼオライトであることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒。
- 前記Agの担持量が、前記ゼオライトに対して2〜10重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒。
- 前記Mg、Sr、CaおよびBaの少なくとも一種の担持量が、前記Agの担持量に対して0.2〜1.5(モル比)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒。
- 前記Ceの担持量が、前記ゼオライト吸着剤に対して10〜60重量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒。
- 前記担体がハニカム担体であり、内燃機関からの排気ガスの浄化に使用することを特徴とする請求項1〜請求項5に記載の炭化水素含有排気ガスの浄化用触媒。
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