JP2004095798A - p型のIII族窒化物半導体コンタクト層上に積層電極を製造する方法およびp型積層電極 - Google Patents

p型のIII族窒化物半導体コンタクト層上に積層電極を製造する方法およびp型積層電極 Download PDF

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Abstract

【課題】III族窒化物半導体のp型オーミック電極であるAu/Pd/Pd−Ga積層電極において、電極特性そのものが不安定化するとともに、長期間にわたる電流注入により、電極のコンタクト抵抗の経時的増大が生じ、電極部分における電圧降下の増加およびそれに伴う半導体素子の動作電圧の増加を招き、素子の長寿命化を妨げる要因となっていた。
【解決手段】p型のIII族窒化物半導体コンタクト層上に、Pd、Moの順に金属層を積層し、熱処理を施し、その後にMo、Auを順次積層して、Au/Mo/Pd/Pd−Ga積層電極構造を形成する。Mo/Pd積層構造体で熱処理することで、Pd層とIII族窒化物半導体界面にPd−Ga化合物が形成されるとともに、III族窒化物半導体のキャリア濃度が増大し、電極とIII族窒化物半導体の間のコンタクト抵抗が低く保たれる。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体装置の積層電極に関する。さらに詳しくは、たとえば半導体レーザダイオードに代表されるようなIII族窒化物半導体装置における積層電極の好適な製造方法およびその方法により製造される積層電極に関する。
【0002】
【従来の技術】
III族窒化物半導体であって、たとえばInGaAlN(ただし、x+y+z=1、0≦x<1、0<y≦1、0≦z<1)で表わされるGaN系化合物半導体(以下、単にGaN系半導体と記す。)は、大きなエネルギバンドギャップや高い熱的安定性を有し、またその組成を調節することによってバンドギャップ幅を制御することも可能である。したがって、GaN系半導体は、発光素子や高温デバイスをはじめとして、さまざまな半導体デバイスに応用可能な材料として期待されている。なかでも、GaN系半導体を用いた発光ダイオードでは、青から緑の光波長域で数cd級の光度を有するデバイスが既に開発されて実用化されている。また、大容量光ディスクメディアに対するピックアップ用光源として、GaN系半導体を用いたレーザダイオードの実用化が研究開発の目標になりつつある。
【0003】
このようなIII族窒化物半導体を用いたデバイスのうち、特に発光ダイオードや半導体レーザではp型電極において低抵抗オーミック特性を得ることが難しく、技術的課題として一般に認識されている。これに対する対策として、本発明者らは、Au層/Pd層/PdとGaとの反応物層からなる3層構造の積層電極(以下、単にAu/Pd/Pd−Ga積層電極と記す。)を提案してきた(特開平10−303504号公報)。
【0004】
このようなAu/Pd/Pd−Ga積層電極は、III族窒化物半導体コンタクト層上にたとえば以下のような手順に基づいて形成することができる。なお以下では、III族窒化物半導体としてGaN半導体を例にとり説明する。
【0005】
まず、電極に接触するコンタクト層となるGaN層を適当な基板上に結晶成長させる。結晶成長手法としては有機金属気相成長(MOCVD)法を使用し、成長時にp型ドーパントとしてMgをドーピングすることが一般的である。続いて、GaN層をN雰囲気下で熱処理しMgドーパントを活性化させ、GaN層の導電型をp型とする。このようにして形成したp型GaN層上に、PdおよびAuを順次成膜する。これらの成膜には電子ビーム(EB)真空蒸着法のほか、高周波スパッタリング法などが用いられる。
【0006】
そしてそれぞれの層の成膜後、電極のオーミック化と低抵抗化を促進するために熱処理を実施する。熱処理は、例えば真空雰囲気下で500℃の温度で10分間の処理とする。この熱処理によりPd層の一部とp型GaN層の一部とがその界面で反応して反応物を生成し、このPdとGaとの反応物層(以下、単にPd−Ga層と記す。)がp型GaN層とPd層との間に形成されることによって、最終的にAu/Pd/Pd−Ga積層電極構造が形成されるのである。
【0007】
ここで、Au/Pd/Pd−Ga積層電極構造におけるそれぞれの層の作用について述べる。
【0008】
まず、上記Pd層は第1の電極層となるものであって、この積層電極構造の低抵抗な特性を決定付ける層であり、熱処理によりGaN半導体のコンタクト層との間に反応物を形成することにより以下のPd−Ga層を形成する作用を有する。
【0009】
上記で形成されるPd−Ga層は、p型GaN半導体層と電極層の金属との間に本質的に存在する大きなエネルギー障壁(ショットキー障壁)を緩和し、電流キャリアの通過をできるだけ容易にし、電極特性を低抵抗に導く作用を有する。
【0010】
次に、上記Au層は、第2の電極層として最表面に成膜されるものであって電極の電気的特性には関係しないが、Au/Pd/Pd−Ga積層電極構造が半導体素子に実装されたときに給電線をワイヤボンディングするパッド部分として、あるいは電極面をCuブロックに溶着するための接着層として必要な層となる。
【0011】
ところで、このようなAu/Pd/Pd−Ga積層電極は、前述の通りp型電極における低抵抗オーミック特性を得るために開発されたものであり、それ以前に存した従来構造の電極に比し優れた特性を有するものであるが、さらに次のような種々の問題点が存在しその更なる改善が必要とされていた。
【0012】
すなわち、そのひとつは、上記Pd−Ga層の形成に際してPd層とp型GaN層との間の反応が2次元面内で不均一になるという問題である。該層が不均一になると電極特性そのものが不安定化したり、上記Au層の表面に凹凸が形成されるといった不都合が生じることになる。
【0013】
さらに、別の問題は、電流を長期間通電し続けると素子動作電圧が増大するという問題である。この動作電圧の増大は、電極構造とp型III族窒化物半導体コンタクト層の間のコンタクト抵抗の増大によってもたらされるものと考えられる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、Au/Pd/Pd−Ga積層電極を改善し、電極特性が不安定化することがなくその信頼性に優れるとともに、長期間通電しても動作電圧(すなわちコンタクト抵抗)が増大することがないp型III族窒化物半導体コンタクト層上の積層電極を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねたところ、前記Pd層等の電極層とIII族窒化物半導体コンタクト層との界面で生じる反応物を安定化させるための層を別途形成するとともに、熱処理工程の順序を調整することにより上記問題が悉く解決できるとの知見を得、これらの知見に基づきさらに研究を重ねることによりついに本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明はp型III族窒化物半導体コンタクト層上に積層電極を製造する方法に関し、p型不純物を含むIII族窒化物半導体コンタクト層上に、Pd、Pt、Ni、Ir、Os、RhおよびRuからなる第1金属グループから選択された少なくとも1種類以上の金属を含む第1電極層と、Mo、Pt、W、Ir、RhおよびRuからなる第2金属グループから選択された少なくとも1種類以上の金属を含む第2電極層と、をこの順で積層することにより第1次積層構造体を形成する工程と、該第1次積層構造体に対して300℃〜900℃の熱処理を施す工程と、熱処理を施された該第1次積層構造体の該第2電極層上に、AuおよびAlからなる第3金属グループから選択された少なくとも1種類以上の金属を含む第3電極層を積層する工程と、を含むことを特徴としている。
【0017】
また、本発明の積層電極を製造する方法は、熱処理を施された該第1次積層構造体の該第2電極層上に、さらに該第2金属グループから選択された少なくとも1種類以上の金属を含む第4電極層を積層させた後に、AuおよびAlからなる第3金属グループから選択された少なくとも1種類以上の金属を含む第3電極層を積層する工程を含むことを特徴とすることができる。
【0018】
また、本発明の積層電極を製造する方法においては、熱処理を施す工程が、1.5Pa以下の真空雰囲気、N雰囲気、またはAr雰囲気のいずれかの雰囲気下で実施されることを特徴とすることができる。
【0019】
また、本発明の積層電極を製造する方法においては、第1電極層の厚さが、1〜500nmの範囲にあることを特徴とすることができる。
【0020】
また、本発明の積層電極を製造する方法においては、第2電極層の厚さが、1〜500nmの範囲にあることを特徴とすることができる。
【0021】
また、本発明の積層電極を製造する方法においては、III族窒化物半導体コンタクト層が、AsまたはPの少なくとも一方を含むことを特徴とすることができる。
【0022】
また、本発明の積層電極を製造する方法においては、第4電極層の厚さが、1〜500nmの範囲にあることを特徴とすることができる。
【0023】
一方、本発明のp型積層電極は、p型不純物を含むIII族窒化物半導体コンタクト層上のp型積層電極であって、該p型積層電極が、該p型不純物を含むIII族窒化物半導体コンタクト層上に、III族窒化物半導体コンタクト層に含まれるIII族元素と下記第1電極層に含まれる金属との反応物からなる界面反応層と、Pd、Pt、Ni、Ir、Os、RhおよびRuからなる第1金属グループから選択された少なくとも1種類以上の金属からなる第1電極層と、Mo、Pt、W、Ir、RhおよびRuからなる第2金属グループから選択された少なくとも1種類以上の金属からなる第2電極層と、AuおよびAlからなる第3金属グループから選択された少なくとも1種類以上の金属からなる第3電極層と、をこの順で積層してなる多層構造体であることを特徴としている。
【0024】
また、本発明のp型積層電極は、該第2金属グループから選択された少なくとも1種類以上の金属からなる第4電極層が、第2電極層と第3電極層との間に形成されていることを特徴とすることができる。
【0025】
また、本発明のp型積層電極は、界面反応層の厚さが、1〜10nmの範囲にあることを特徴とすることができる。
【0026】
また、本発明のp型積層電極は、第1電極層の厚さが、1〜500nmの範囲にあることを特徴とすることができる。
【0027】
また、本発明のp型積層電極は、第2電極層の厚さが、1〜500nmの範囲にあることを特徴とするかとができる。
【0028】
また、本発明のp型積層電極は、第3電極層の厚さは、50nm〜5μmの範囲にあることを特徴とすることができる。
【0029】
また、本発明のp型積層電極は、III族窒化物半導体コンタクト層が、AsあるいはPの少なくとも一方を含むことを特徴とすることができる。
【0030】
また、本発明のp型積層電極は、第4電極層の厚さが、1〜500nmの範囲にあることを特徴とすることができる。
【0031】
また、本発明にかかる半導体素子は、p型積層電極が、III族窒化物半導体から構成される半導体素子であって、上記のp型積層電極を具備することを特徴としている。
【0032】
また、本発明の半導体素子は、上記のp型積層電極を具備する半導体発光素子であって、該半導体発光素子の発光層にAsあるいはPの少なくとも一方が含まれることを特徴とすることができる。
【0033】
以下、本発明が上記構成を採用するに至った技術的背景を説明する。
本発明者らは、前述のPd−Ga層が不安定化するのはPd層とGaN層との間の界面反応が2次元面内で不均一になることに起因すると考え、Mo等を含む層をこのPd層上に設けるとかかる不均一化が抑制されることを見出し、これにより電極構造の特性ばらつきの低減や、電極表面の凹凸の抑制等に効果をあげることに成功した。しかしながら、これだけでは電流を長時間に亘り通電し続けた場合に生じる動作電圧の増大を抑止することはできなかった。この動作電圧の増大の原因は電極構造とp型III族窒化物半導体コンタクト層の間のコンタクト抵抗の増大によってもたらされると考えられる。そして、このコンタクト抵抗の増大の原因のひとつとして、電極構造とp型III族窒化物半導体コンタクト層との界面付近のH元素の経時的増大が影響していることが、本発明者らの検討により明らかとなった。
【0034】
前述の通り、積層電極におけるPd層は、Pd−Ga層を形成して電極特性を低抵抗に導く作用を有する。しかしPd層には、この作用に加え電極直下部および周辺部の水素(H)元素を吸収し、半導体コンタクト層の低抵抗化を促進するとともに、積層電極のコンタクト抵抗の低減を促進するという効果をも奏していることが、本発明者らの研究により明らかとなった。
【0035】
一般的に、MOCVD法により成膜されるMgドープGaN層には、Mg元素と結合する形で大量のH元素が含まれている。このH元素は、Mg元素が膜中で活性化してドーパントとして機能することを妨げる作用があることが判明した。このことから、膜中のH元素をより低減することができれば、Mg元素の活性化を促進してアクセプタ濃度の増大、ひいてはキャリア濃度の増大につながる。積層電極では、Pd層がこのH元素を効果的に吸収し、コンタクト層中のキャリア濃度を増大させ、p型GaN層の抵抗率を小さくするとともに、ショットキー障壁の空乏層幅を狭めて積層電極のコンタクト抵抗を低抵抗に導く作用を奏していることが明らかとなった。
【0036】
しかし、一旦Pd層中に吸収されたH元素が長期間にわたる電極への通電にともない、逆に半導体コンタクト層側に放出されて積層電極と半導体コンタクト層界面でのH元素を増大させ、積層電極のコンタクト抵抗も経時的に増大することが判明した。
【0037】
そこで、本発明者らは、該界面でのH元素の増大を防止しこの積層電極におけるコンタクト抵抗の経時的増大という問題を解決するために、III族窒化物半導体のコンタクト層表面側から順に前記Pdを含む層、Mo等を含む層を積層することにより第1次積層構造体を形成し、この第1次積層構造体に対して熱処理を施してMo等を含む層/Pd等を含む層/界面反応層を実質的に形成させた後、さらにMo等を含む層あるいはAu等を含む層を積層して、最終的にAu等を含む層/Mo等を含む層/Pd等を含む層/界面反応層からなる積層電極としたものである。
【0038】
前述の通りPd層による半導体コンタクト層からのH元素の吸収は、主として熱処理工程により生じる現象であると考えられるが、従来の工程のようにAu層を積層した後に熱処理を施したのでは、吸収されたH元素の大部分はPd層中に留まるものと考えられる。そこで本発明は、熱処理を施す時期を変更しAu等を含む層を形成する前に熱処理を施すことによりPd等を含む層にH元素を留めることなく電極の外側へH元素を放出させる割合を高めようとするものである。また、これにより半導体コンタクト層から吸収するH元素の量も、従来の工程と比較すると多くなることが期待できる。
【0039】
一方、熱処理後にさらにMo等を含む層あるいはAu等を含む層を積層することにより、Pd等を含む層と外気との間に非常に分厚いAu等を含む層が介在することによって、この層が一種の保護層として機能し、外気側からH元素がPd層に吸収されることを抑制する作用が得られる。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0041】
<III族窒化物半導体コンタクト層>
本発明におけるIII族窒化物半導体は、化合物半導体として従来公知のIII族窒化物半導体であれば特に限定することなく、何れのものも対象とすることができる。たとえば、GaN、InGaN、AlGaN、InGaAlN、AlN、InNなど、一般式InGaAlN(ただし、x+y+z=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1)で表されるものであれば対象となる。また、これらのIII族窒化物半導体は、V族元素としてAsまたはPの少なくとも一方を含むことができる。
【0042】
一方、この半導体に含まれるp型不純物としては、p型ドーパントとして従来公知のものであれば特に限定することなく、何れのものがドープされていても差し支えない。たとえば、Mg、Zn、Be等を挙げることができる。
【0043】
そして、p型のIII族窒化物半導体における、積層電極に接触するコンタクト層の形成は、たとえば適当な基板上に結晶成長させること等により行なうことができる。該結晶成長手法としては、たとえば適当な基板としてサファイア基板を用い、MOCVD法等を採用するとともに結晶成長時にp型ドーパントとしてMg等をドーピングすることができる。そしてその後引き続いて、当該半導体層を例えばN雰囲気下、400〜800℃で1〜300分間の加熱を施し、Mgドーパントを活性化させることにより当該半導体のコンタクト層の導電型をp型とすることができる。上記の加熱の雰囲気はNが100%でなくとも、ArやOが含まれていてもコンタクト層の形成に特に問題はない。
【0044】
<第1電極層>
本発明における第1電極層とは、前記半導体のコンタクト層上に形成される電極層をいう。該第1電極層はPd、Pt、Ni、Ir、Os、RhおよびRuからなる第1金属グループから選択された少なくとも1種類以上の金属を含む層である。該第1電極層は従来の積層電極におけるPd層と同様の効果を示すものであり、この点Pdを含むことが好ましいが、Pt、Ni、Ir、Os、Rh、Ruなどの単体金属あるいはこれらの合金についても同様の効果が示されるため使用することができる。このような第1電極層は、従来公知の方法により形成することができ特に限定されることはないが、たとえば上記の単体金属あるいは合金を電子ビーム(EB)真空蒸着法、高周波スパッタリング法等により成膜することによって、1〜500nm、好ましくは1〜100nmの厚さを有するようにして形成することができる。該厚さがこのような範囲にあれば、オーミック性は良好でありコンタクト抵抗もほぼ一定の安定した特性を得ることができる。逆にその厚さが1nm未満の場合には、熱処理後に形成されるはずの後述の界面反応層が十分に形成されず、良好なオーミック特性が得られない。また、その厚さが500nmを超えると積層構造がはがれやすくなる傾向があるため好ましくない。
【0045】
<界面反応層>
本発明における界面反応層とは、前記半導体のコンタクト層に含まれるIII族元素と上記第1電極層に含まれる金属とが、後述の熱処理により反応することによりその反応物がこれら両層の界面部分に積層したものである。このような界面反応層は、該コンタクト層と第1電極層との間に存するエネルギ障壁(ショットキー障壁)を緩和し、電流キャリアの通過をできるだけ容易にして電極特性を低抵抗に導く作用を奏する。このような界面反応層は、後述の熱処理等の条件にもよるが通常1〜10nm程度の厚さの範囲で形成される。1nm未満の場合には、前記効果を十分に示すことができず、また10nmを超えると2次元面内で界面反応が不均一に生じやすくなり、またそのことが電極表面の凹凸をもたらす、という不都合を生じるため好ましくない。
【0046】
<第2電極層>
本発明における第2電極層とは、上記の第1電極層上に形成される電極層をいう。該第2電極層はMo、Pt、W、Ir、RhおよびRuからなる第2金属グループから選択された少なくとも1種類以上の金属を含む層である。該第2電極層は、前述のp型のIII族窒化物半導体のコンタクト層と上記第1電極層との界面で生じる界面反応物が不安定化するのを防止する作用を有し、これにより電極構造の特性ばらつきの低減や、電極表面の凹凸の抑制等の作用を有するものである。このような作用を奏するものとして、Moを含むことが好ましいが、Pt、W、Ir、Rh、Ruなどの単体金属あるいはこれらの合金についても同様の効果が示されるため使用することができる。このような第2電極層は、従来公知の方法により形成することができ特に限定されることはないが、たとえば上記の単体金属あるいは合金をEB真空蒸着法、高周波スパッタリング法等により成膜することによって、1〜500nm、好ましくは1〜300nmの厚さを有するようにして形成することができる。その厚さがこのような範囲にあれば、オーミック性は良好であり接触抵抗もほぼ一定の安定した特性を得ることができる。逆にその厚さが1nm未満の場合には、前記効果が十分でなく、界面反応層の形成が一様になされず電極表面に凹凸が生じ、このような凹凸は電気特性に直接影響を及ぼすことは少ないが、半導体素子の電極に適用された場合、給電線や電極自体の剥がれなどの生産歩留まり上の問題を引き起こすことがあり好ましくない。また、その厚さが500nmを超える場合には、積層構造がはがれやすくなる傾向にあるため好ましくなく、さらにp型GaNコンタクト層のキャリア濃度増大の観点からも、その効果が急に無くなるため好ましくない。
【0047】
<第3電極層>
本発明における第3電極層とは、上記の第2電極層、あるいは後述の第4電極層が形成される場合にはその第4電極層上に形成される電極層をいう。該第3電極層はAuおよびAlからなる第3金属グループから選択された少なくとも1種類以上の金属を含む層である。該第3電極層は、電極の電気的特性にはあまり関係せず、半導体素子に実装されたときに給電線をワイヤボンディングするパッド部分として、あるいは電極面をCuブロックに溶着するための接着層としての作用を奏する。またこの作用とともに一種の保護層としても作用し、外気側から上述の第1電極層等へH元素が侵入するのを防止する作用をも奏する。このような作用を奏するものとして、Auを含むことが好ましいが、Alあるいはこれらの合金についても同様の効果が示されるため使用することができる。このような第3電極層は、従来公知の方法により形成することができ特に限定されることはないが、たとえば上記の単体金属あるいは合金をEB真空蒸着法、高周波スパッタリング法等によって、50nm〜5μm、好ましくは100nm〜1μmの厚さを有するようにして形成することができる。50nm未満の場合には、ワイヤボンディングあるいはCuブロックへの溶着を容易に行なうことができなくなるので好ましくなく、また5μmを超える場合は、必要十分な厚さを上回っておりそれ以上厚くしても経済的に不利となる。
【0048】
<第4電極層>
本発明における第4電極層とは、必要に応じ上記の第2電極層上に形成される電極層をいう。該第4電極層はMo、Pt、W、Ir、RhおよびRuからなる前記第2金属グループから選択された少なくとも1種類以上の金属を含む層である。該第4電極層は、主として熱処理後の第1電極層/第2電極層の積層構造と前記第3電極層との間の密着性の確保と、第3電極層が第2電極層、第1電極層あるいは界面反応層側へ拡散するのを防止する作用を奏するものであるので、基本的には高融点を有する金属元素であればよい。したがって、この第4電極層は、第2電極層が例えばMoやPtなど第3電極層のAuに対してバリア層として働く金属を主成分とする場合には省略することもできる。このような第4電極層としては、特にMoを含むことが好ましいが、Pt、W、Ir、Rh、Ruなどの単体金属あるいはこれらの合金についても同様の効果が示されるため使用することができる。このような第4電極層は、従来公知の方法により形成することができ特に限定されることはないが、たとえば上記の単体金属あるいは合金をEB真空蒸着法、高周波スパッタリング法等により成膜することによって、1〜500nm、好ましくは10〜100nmの厚さを有するようにして形成することができる。1nm未満の場合には、第3電極層が拡散するのを有効に防止することができず、また500nmを超える場合には、はがれやすくなる傾向があるため好ましくない。また、第3電極層の拡散防止の観点からも、第4電極層の厚さは1〜500nm程度であれば十分である。
【0049】
<製造方法>
本発明の製造方法は、まず前述のp型不純物を含むIII族窒化物半導体コンタクト層上に、前記第1金属グループから選択された少なくとも1種類以上の金属を含む第1電極層と、前記第2金属グループから選択された少なくとも1種類以上の金属を含む第2電極層と、をこの順で積層することにより第1次積層構造体を形成する。この場合の各層の形成方法は、前述の通りのものを採用することができる。
【0050】
続いて、該第1次積層構造体に対して300℃〜900℃の熱処理を施す。この熱処理により前記界面反応層が形成される。この熱処理の温度が300℃未満の場合、反応物の生成が不充分となる一方、900℃を超える場合には、半導体コンタクト層の分解が生じ始めて高抵抗化したり、前記界面反応が極端に進んで制御することが困難になる、という現象が生じるため好ましくない。また、該熱処理は、1.5Pa以下の真空雰囲気、N雰囲気、またはAr雰囲気のいずれかの雰囲気下で実施することが好ましい。
【0051】
次いで、熱処理を施された該第1次積層構造体の該第2電極層上に、厚さが50nm〜5μmのAuおよびAlからなる第3金属グループから選択された少なくとも1種類以上の金属を含む第3電極層を積層する。なお、必要に応じこの第3電極層を形成する前に、厚さが1〜500nmの前記第2金属グループから選択された少なくとも1種類以上の金属を含む第4電極層を形成し、その後その上に該第3電極層を形成することもできる。これらの層の形成方法は、前述の通りのものを採用することができる。
【0052】
<半導体素子>
上記のようにして製造される本発明の積層電極は、レーザ素子や発光素子(LED)をはじめとして非常に広範囲の半導体素子の電極として用いることができる。
【0053】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0054】
<実施例1>
図1〜3に基づき、本発明の積層電極の製造方法について説明する。
【0055】
図1(A)〜(C)は、本発明の積層電極の製造途中の状態を示す概略断面図である。まず、任意の半導体デバイスに含まれるp型のIII族窒化物半導体のコンタクト層101として、サファイア基板100上にp型GaN層を形成した。このp型GaN層101は、MOCVD法によりMgをドープしたGaN層をエピタキシャル成長させることによって形成した。このGaN層には1019/cmのMgが添加されており、N雰囲気下で加熱(800℃で10分間)することによりp型化処理を施すと、p型GaNコンタクト層101は2×1017/cmのキャリア濃度を示した。
【0056】
次に、p型GaNコンタクト層101の表面をアセトン及びエタノールまたはメタノールで有機洗浄するとともに、HCl系エッチャントおよびHF系エッチャントによる酸化物および炭素系不純物の除去を実施した後、p型GaNコンタクト層101上にEB真空蒸着法により、第1電極層102として厚さ15nmのPd層、第2電極層103として厚さ15nmのMo層をそれぞれこの順で積層した(図1(A))。
【0057】
第1電極層102および第2電極層103の積層後、電極のオーミック化と低抵抗化を促進するため熱処理を実施した。熱処理は、真空度が1.5Pa以下の真空雰囲気下とし、500℃で10分間の処理とした。この熱処理により、第1電極層102とp型GaNコンタクト層101の界面付近で化合物反応が生じ、界面反応層102aが形成された(図1(B))。
【0058】
その後、第2電極層103の上に、さらに第4電極層104として厚さ15nmのMo層および第3電極層105として厚さ250nmのAu層をそれぞれEB真空蒸着法によってこの順で順次成膜し、本発明の積層電極構造が完成した(図1(C))。
【0059】
図1(C)に示されているように、上記の製造工程により完成された電極構造の断面は、サファイア基板100から順にp型GaN層101、界面反応層102a、Pdからなる第1電極層102、Moからなる第2電極層103および第4電極層104、そしてAuからなる第3電極層105により構成されている。このうち、界面反応層102aは、PdとGaの反応化合物を成分として含んでおり、その厚さは概ね1〜10nm程度であった。これに伴い、第1電極層102の厚さは成膜直後よりは目減りして10〜14nm程度になっていた。また、第2電極層103および第4電極層104の境界にはMoの酸化物やプロセス中に電極表面に付着する炭素系不純物がみられるところもあるが、ほとんどのところでは境界の判別が難しく、第2電極層103および第4電極層104は一体の層、すなわちMoからなる単一層が30nm存在するようにみえるところが多かった。
【0060】
図2には、参考例として、Pd層を15nm、Mo層を30nm、Au層を250nm、この順で順次成膜した後に熱処理を施して形成した参考電極構造β(図中破線)と、上記の工程で形成した本発明の積層電極構造α(図中実線)のI−V特性を比較した結果が示されている。図2より明らかな如く、本発明の積層電極構造αの方が良好な特性を示していることがわかる。両者のコンタクト抵抗を比較したところ、参考電極構造βが6×10−4Ωcm程度であるのに対し、積層電極構造αは2×10−4Ωcm程度と低抵抗な特性となっていた。
【0061】
また、ラマン分光測定により、積層電極構造αと参考電極構造βの両者の電極直下部において、p型GaNコンタクト層のキャリア濃度を比較したところ、参考電極構造βでは2.5×1017/cmと電極形成前のp型GaNコンタクト層とほぼ同じ程度のキャリア濃度を示していたのに対し、積層電極構造αの場合では5.5×1017/cmとキャリア濃度の増加が検出できた。このため、電極/コンタクト層間の直列抵抗の低減につながり、電極のI−V特性の改善に寄与したものと考えられる。
【0062】
図3は、積層電極構造αにおいて真空雰囲気下での熱処理温度を変化させた場合の、p型GaNコンタクト層のキャリア濃度の変化をラマン分光測定した結果である。熱処理温度は10分間で一定とした。図3に示したように、300℃以上の熱処理温度においてキャリア濃度の増大が観測されており、第1電極層のPdによるH元素の吸収はおよそ300℃以上の熱処理温度で生じることが示唆される。
【0063】
なお、上記の例では第1電極層としてPd層を用いたが、他にPt、Ni、Ir、Os、Rh、Ruなどの単体金属あるいはこれらの合金を第1電極層として用いても同様の効果があることを確認した。また、上記の例では第2電極層としてMo層を用いたが、他にPt、W、Ir、Rh、Ruなどの単体金属あるいはこれらの合金を第2電極層として用いても、同様の効果があることを確認した。一方、上記の例では第4電極層としてMo層を用いたが、他にPt、W、Ir、Rh、Ruなどの単体金属あるいはこれらの合金を第4電極層として用いても同様の効果があることを確認した。その場合、上記の例とは異なり第2電極層と第4電極層との材質が異なっていても問題は無かった。また、上記の例では第3電極層としてAu層を用いたが、他にAlを用いても同様の効果があることを確認した。なお、上記のように各層を置き換える場合、その厚さは置き換え前のものと同じ厚さの範囲とした。
【0064】
<実施例2>
図4〜7に基づき、本発明の積層電極構造を実際の半導体素子(半導体レーザ素子)に実装した例を示す。
【0065】
この半導体レーザ素子は、次の方法により作製した。まず、図4に示すように、C面の結晶面を有するサファイア基板400上にGaNバッファ層401、n型GaNコンタクト層402、n型AlGaNクラッド層403、n型GaN光ガイド層404、InGaN多重量子井戸活性層405、p型GaN光ガイド層406、p型AlGaNクラッド層407、p型GaNコンタクト層408をMOCVD法により順次エピタキシャル成長させることによって、GaN系半導体積層構造を製作した。
【0066】
続いて、図5に示すようにGaN系半導体積層構造上にドライエッチングマスク409を作製した後、ドライエッチングマスク409で被覆されていない部分を、リアクティブイオンエッチング(RIE)法によりn型GaNコンタクト層402まで掘り下げメサ構造を形成した。
【0067】
次に、ドライエッチングマスク409を完全に除去した後、図6に示すようにメサ上部に絶縁膜410によるストライプパターンを形成した。ついで、メサ上部にMo/Pd積層体(すなわち第1電極層がPd、第2電極層がMo)からなるp型電極411、メサ底部にあたるn型GaNコンタクト層402上にAl/Ti積層体からなるn型電極412を形成した。各電極金属の積層膜厚はp型電極411では、Moが15nm、Pdが15nm、n型電極412ではAlが150nm、Tiが30nmとした。両電極を形成した後、レーザ素子構造全体を真空雰囲気下において、約500℃で10分間熱処理した。
【0068】
その後、図7に示すようにp型電極411上にAu/Mo積層体(すなわち第3電極層がAu、第4電極層がMo)からなるp型電極413をさらに積層し、本発明の積層電極構造を実装したレーザ素子を完成させた。
【0069】
このようにして作製された本実施例のレーザ素子では、Au/Mo/Pd積層体の全電極層の積層後に熱処理して形成する場合に比べて、p型電極部分の電圧降下が小さく、したがって動作電圧が低く、またその経時的増大もごく低く抑えることができた。これらのことは、素子寿命を長寿命化することにつながった。
【0070】
<実施例3>
図8〜10に基づき、本発明の積層電極構造を実施例2とは別の半導体素子(半導体レーザ素子)に実装した例を示す。
【0071】
この半導体レーザ素子は、次の方法により作製した。まず、図8に示すように、{0001}面の面方位を有するn型GaN基板800上にn型GaNバッファ層801、n型AlGaNクラッド層802、n型GaN光ガイド層803、InGaN多重量子井戸活性層804、p型GaN光ガイド層805、p型AlGaNクラッド層806、p型GaNコンタクト層807をMOCVD法により順次エピタキシャル成長させることによって、GaN系半導体積層構造を製作した。
【0072】
続いて、図9に示すようにp型GaNコンタクト層807の上面に絶縁膜808によるストライプパターンを形成した後、p型GaNコンタクト層807上にMo/Pd積層体(すなわち第1電極層がPd、第2電極層がMo)からなるp型電極809、およびn型GaN基板800裏面にAl/Hf積層体からなるn型電極810を形成した。尚、各電極金属の積層膜厚はp型電極809では、Moが15nm、Pdが15nm、n型電極810ではAlが150nm、Hfが5nmとした。両電極を形成した後、レーザ素子構造全体を真空雰囲気下において、約500℃で10分間熱処理した。
【0073】
その後、図10に示すようにp型電極809上にAu/Mo積層体(すなわち第3電極層がAu、第4電極層がMo)からなるp型電極811を積層することによって本発明の積層電極構造を実装したレーザ素子を完成した。
【0074】
本実施例では、半導体層をエピタキシャル成長させる基板として、n型GaN基板を使用したが、これにより実施例2のサファイア基板を用いたレーザ素子に比べ欠陥密度の低減などのエピタキシャル層の結晶性が向上し、延いては本実施例のレーザ素子の特性が向上した。このようなGaN基板を用いた場合でも本発明の積層電極構造を用いることによりサファイア基板上のレーザ素子の場合と同様な効果を示し、参考例のp型電極(すなわち全電極層の積層後に熱処理したもの)を用いて製作したレーザ素子に比べてp型電極部分の電圧降下が小さく、したがって動作電圧が低く、またその経時的増大もごく低く抑えることができた。これらのことは、素子寿命を長寿命化することにつながった。
【0075】
尚、本実施例3では、基板として{0001}面の面方位を有するGaN基板を用いたが、基板はこれに限られるものではなく、{0001}面の他に該基板として{0−100}面、{11−20}面、{1−101}面、{01−12}面等を用いても実施例3と同等の特性を有するレーザ素子を作製できた。
【0076】
また、実施例2および3では活性層としてInGaN多重量子井戸構造を用いたが、活性層としてGaN系半導体にAsやPなどが含まれる構造を用いても同様のレーザ素子を作成することができた。また、実施例2および3のレーザ素子ではp型GaNコンタクト層の電流注入部は電極ストライプ構造を使用したが、リッジ構造やその他の構造を用いることによっても同様のレーザ素子を作成することができた。さらに、半導体素子としてはレーザ素子に限るものではなく、発光素子(LED)にも本発明は適用することができた。
【0077】
また尚、上記実施例1〜3では、電極を形成するコンタクト層としてp型GaNを用いているが、本発明が効果を示すにはコンタクト層の材料はこれに限るものではない。p型のIII族窒化物半導体でMOCVD法など本質的に結晶中にH元素を大量に含む材料であれば本発明の効果を奏することができ、例えば、p型InGaNやp型AlGaN、p型InGaAlN、p型AlN、p型InNなど、一般式InGaAlN(ただし、x+y+z=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1)で表されるもの等を用いても同様の優れた効果を示す半導体素子を製造することができ、また更にAsやPが含まれているものを用いることによっても同様の優れた効果を示す半導体素子を製造することができた。また、p型を示すドーパントとしてMgに代えてZnを用いることによっても同様の優れた効果を示す半導体素子を製造することができた。また、これらをドーピングするための有機金属ガスとして例えばビスエチルシクロペンタジエニルマグネシウム(Mg(C)などを用いることができた。
【0078】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0079】
【発明の効果】
本発明の製造方法を用いることにより、III族窒化物半導体素子のp型電極であるAu層/Mo層/Pd層/PdとGaとの反応物層等からなる4層構造の積層電極(以下、単にAu/Mo/Pd/Pd−Ga積層電極と記す。)を、該電極構造の特性がばらつかずしかも電極への大電流注入時の特性劣化が抑制されるように製造することができるとともに、さらに低抵抗かつ経時的安定性に優れた特性を有するものとして製造することができる。また、同電極を実装した半導体レーザをはじめとする各種半導体素子の長寿命化を達成することが可能になる。
【0080】
したがって、本発明の製造方法によるAu/Mo/Pd/Pd−Ga積層電極は、本発明の製造方法によらずに製造した同様の電極構造と比較した場合、製造直後における電極構造直下部の半導体コンタクト層内に含まれるH元素の総量が少なくなっており、電極構造内部に吸収されて存在しているH元素量もまた少なくなっていると考えられる。このため、本発明の製造方法によるAu/Mo/Pd/Pd−Ga積層電極のコンタクト抵抗は、該製造方法によらずに製造した電極構造のコンタクト抵抗よりも低い値を示す。さらに、電極構造に長期間通電した場合のコンタクト層側への経時的なH元素の放出量に関しても、本発明の製造方法によるAu/Mo/Pd/Pd−Ga積層電極の方が該製造方法によらずに製造した電極構造のものに比し量的には少なくなり、コンタクト抵抗の経時的増大の度合いも少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は製造途中の積層電極構造を示す概略断面図であり、(A)はコンタクト層/第1電極層/第2電極層からなる積層電極構造を示し、(B)はコンタクト層/界面反応層/第1電極層/第2電極層からなる積層電極構造を示し、(C)はコンタクト層/界面反応層/第1電極層/第2電極層/第4電極層/第3電極層からなる完成された積層電極構造を示す。
【図2】本発明の積層電極構造と参考電極構造の電流−電圧特性を示すグラフである。
【図3】本発明の積層電極構造の熱処理温度とキャリア濃度の関係を示したグラフである。
【図4】半導体レーザ素子の概略断面図である。
【図5】ドライエッチング処理した半導体レーザ素子の概略断面図である。
【図6】ドライエッチング処理した半導体レーザ素子にp型およびn型電極を形成させた状態の概略断面図である。
【図7】p型電極として第3電極層および第4電極層を積層し、完成された状態の半導体レーザ素子の概略断面図である。
【図8】n型GaN基板を用いた半導体レーザ素子の概略断面図である。
【図9】p型およびn型電極を形成させた状態のn型GaN基板を用いた半導体レーザ素子の概略断面図である。
【図10】p型電極として第3電極層および第4電極層を積層し、完成された状態のn型GaN基板を用いた半導体レーザ素子の概略断面図である。
【符号の説明】
100,400 サファイア基板、101 p型GaNコンタクト層、102第1電極層、102a 界面反応層、103 第2電極層、104 第4電極層、105 第3電極層、401 GaNバッファ層、402 n型GaNコンタクト層、403,802 n型AlGaNクラッド層、404,803 n型GaN光ガイド層、405,804 InGaN多重量子井戸活性層、406,805 p型GaN光ガイド層、407,806 p型AlGaNクラッド層、408,807 p型GaNコンタクト層、409 ドライエッチングマスク、410,808 絶縁膜、411,809 Mo/Pd積層体からなるp型電極、412,810 n型電極、413,811 Au/Mo積層体からなるp型電極、800 n型GaN基板、801 n型GaNバッファ層。

Claims (17)

  1. p型不純物を含むIII族窒化物半導体コンタクト層上に、
    Pd、Pt、Ni、Ir、Os、RhおよびRuからなる第1金属グループから選択された少なくとも1種類以上の金属を含む第1電極層と、
    Mo、Pt、W、Ir、RhおよびRuからなる第2金属グループから選択された少なくとも1種類以上の金属を含む第2電極層と、
    をこの順で積層することにより第1次積層構造体を形成する工程と、
    該第1次積層構造体に対して300℃〜900℃の熱処理を施す工程と、
    熱処理を施された該第1次積層構造体の該第2電極層上に、
    AuおよびAlからなる第3金属グループから選択された少なくとも1種類以上の金属を含む第3電極層を積層する工程と、
    を含むことを特徴とするp型のIII族窒化物半導体コンタクト層上に積層電極を製造する方法。
  2. 熱処理を施された該第1次積層構造体の該第2電極層上に、さらに該第2金属グループから選択された少なくとも1種類以上の金属を含む第4電極層を積層させた後に、AuおよびAlからなる第3金属グループから選択された少なくとも1種類以上の金属を含む第3電極層を積層する工程を含むことを特徴とする請求項1記載の積層電極を製造する方法。
  3. 熱処理を施す工程は、1.5Pa以下の真空雰囲気、N雰囲気、またはAr雰囲気のいずれかの雰囲気下で実施されることを特徴とする請求項1または2記載の積層電極を製造する方法。
  4. 第1電極層の厚さは、1〜500nmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層電極を製造する方法。
  5. 第2電極層の厚さは、1〜500nmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層電極を製造する方法。
  6. III族窒化物半導体コンタクト層が、AsまたはPの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層電極を製造する方法。
  7. 第4電極層の厚さは、1〜500nmの範囲にあることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の積層電極を製造する方法。
  8. p型不純物を含むIII族窒化物半導体コンタクト層上のp型積層電極であって、該p型積層電極が、該p型不純物を含むIII族窒化物半導体コンタクト層上に、
    III族窒化物半導体コンタクト層に含まれるIII族元素と下記第1電極層に含まれる金属との反応物からなる界面反応層と、
    Pd、Pt、Ni、Ir、Os、RhおよびRuからなる第1金属グループから選択された少なくとも1種類以上の金属からなる第1電極層と、
    Mo、Pt、W、Ir、RhおよびRuからなる第2金属グループから選択された少なくとも1種類以上の金属からなる第2電極層と、
    AuおよびAlからなる第3金属グループから選択された少なくとも1種類以上の金属からなる第3電極層と、
    をこの順で積層してなる多層構造体であることを特徴とするp型積層電極。
  9. 該第2金属グループから選択された少なくとも1種類以上の金属からなる第4電極層が、第2電極層と第3電極層との間に形成されていることを特徴とする請求項8記載のp型積層電極。
  10. 界面反応層の厚さは、1〜10nmの範囲にあることを特徴とする請求項8または9記載のp型積層電極。
  11. 第1電極層の厚さは、1〜500nmの範囲にあることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載のp型積層電極。
  12. 第2電極層の厚さは、1〜500nmの範囲にあることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載のp型積層電極。
  13. 第3電極層の厚さは、50nm〜5μmの範囲にあることを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載のp型積層電極。
  14. III族窒化物半導体コンタクト層が、AsあるいはPの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項8〜13のいずれかに記載のp型積層電極。
  15. 第4電極層の厚さは、1〜500nmの範囲にあることを特徴とする請求項9〜14のいずれかに記載のp型積層電極。
  16. III族窒化物半導体から構成される半導体素子であって、請求項8〜15のいずれかに記載のp型積層電極を具備することを特徴とする半導体素子。
  17. 請求項8〜16のいずれかに記載のp型積層電極を具備する半導体発光素子であって、該半導体発光素子の発光層にAsあるいはPの少なくとも一方が含まれることを特徴とする半導体発光素子。
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