JP2004095313A - 誘導加熱調理器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】トッププレート下面に置かれ鍋3の底から放射される赤外線を受光する赤外線センサ6と、赤外線センサの受光面に装着したバンドパスフィルタ7と、赤外線センサの出力を増幅するアンプ8と、アンプ8の出力信号から鍋3の温度を算出する温度算出手段9と、高周波電流供給量を制御する制御手段10とを備え、トッププレート2を透過してくる鍋底の赤外線放射エネルギにより、非接触で精度良く鍋底の温度を測定する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トッププレート上の鍋の温度を精度良く検出することができる誘導加熱調理器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鍋などの被加熱物を加熱する誘導加熱調理器において、被加熱物の鍋の温度を検出する方式として、鍋を載置するトッププレートを介してサーミスタで温度を検出する方式がある。また、鍋から放射される赤外線を検出して鍋底の温度を検知する方法も知られている。この従来例を図3で説明する。
【0003】
本体1上面にトッププレート2を設け、鍋3を載置して電磁誘導加熱をする加熱コイル4と、高周波電流供給手段5と、温度を検出する赤外線センサ6と、この出力から鍋底面温度を算出する温度算出手段9と、温度算出手段9の出力に応じて加熱コイルに供給する電力を制御する制御手段10を設けている。トッププレート2は、強度を高めるため特殊組成のガラスを再加熱してガラス中に微細結晶を析出させた結晶化ガラス(例えば、「リシア系セラミックス」Li2O−AL2O3−SiO2)が用いられているおり、2.5μm以下の波長の赤外線は80%以上透過し、3〜4μmの波長の赤外線は30%程度透過し、4μmよりも長い波長の赤外線はほとんど通さない。(図2はその透過特性例を、一般的な赤外線センサ示したものである。)したがって、鍋3から放射される赤外線の4μm以下の波長成分は、トッププレート2を透過して、赤外線センサ6が鍋底の温度を測定する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
図3に示した従来構成の誘導加熱調理器は、鍋3から放射される赤外線をトッププレート2を透過して検出している。一般的に調理時の鍋3の温度は、約30℃〜230℃であり、この温度のピーク波長はステファン・ボルツマンの法則より6μm〜10μmの波長である。(なお、赤外線放射エネルギの最大ピーク波長λmaxとの間には、一定の相関関係があって、T=200℃のときλmax=約6.1μm、T=150℃のときλmax=約6.8μm、T=140℃のときλmax=約7.0μm、T=100℃のときλmax=約7.8μm、T=20℃のときλmax=約9.9μmとなる。)トッププレート2が透過できる波長は4μm以下の波長の赤外線であり、この4μm以下の波長成分だけでは、赤外線センサ受光面のフィルタによる減衰等を考慮すると、鍋底からの赤外線放射エネルギの20%程度にしかならず、鍋底からの赤外線放射エネルギの大部分はトッププレート2で吸収されてしまう。このため赤外線センサ6に届く赤外線エネルギは微弱であり、赤外線センサ6で電気信号に変換してもS/N比が悪く、調理時の温度を測定するには、精度が良くない。
【0005】
また、赤外線センサは一般的に周囲温度の影響を受けやすく、加熱コイルやトッププレートを介して伝わる鍋からの伝導熱や、スイッチング素子の発熱などにより周囲温度が大きく変化するような誘導加熱調理器本体内では精度の良い放射温度をすることは難しかった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、鍋を加熱する加熱コイルと、加熱コイルの上部で鍋を載置するトッププレートと、前記トッププレート下面に配し鍋底面から放射される赤外線を検知する赤外線センサと、前記赤外線センサの受光面に装着した所定の帯域特性のバンドパスフィルタと、前記赤外線センサの出力を増幅するアンプと、前記アンプの出力から鍋底面温度を算出する温度算出手段と、前記温度算出手段の出力に応じて加熱コイルに供給する電力を制御する制御手段とを備え、トッププレートを透過してくる鍋底の赤外線放射エネルギにより、非接触で鍋底の温度を測定するようにした誘導加熱調理器としているものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
請求項1に記載の発明は、鍋を加熱する加熱コイルと、加熱コイルの上部で鍋を載置するトッププレートと、前記トッププレート下面に配し鍋底面から放射される赤外線を検知する赤外線センサと、前記赤外線センサの受光面に装着した所定の帯域特性のバンドパスフィルタと、前記赤外線センサの出力を増幅するアンプと、前記アンプの出力から鍋底面温度を算出する温度算出手段と、前記温度算出手段の出力に応じて加熱コイルに供給する電力を制御する制御手段とを備え、トッププレートを透過してくる鍋底の赤外線放射エネルギにより、非接触で鍋底の温度を測定するようにした誘導加熱調理器としているものである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、バンドパスフィルタの透過帯域をトッププレートの透過波長帯域の長波長側の所定の帯域としたことによって、高精度に鍋の温度測定ができる誘導加熱調理器としているものである。
【0009】
請求項3に記載の発明は、トッププレート下面に設けた温度センサが検出した温度から、赤外線センサの出力を補正する補正手段を備えたことによって安定した鍋の温度測定ができる誘導加熱調理器としているものである。
【0010】
請求項4に記載の発明は、バンドパスフィルタの透過帯域をトッププレートの透過波長帯域の中間波長部における所定の帯域としたことによって高精度に鍋の温度測定ができる誘導加熱調理器としているものである。
【0011】
請求項5に記載の発明は、温度算出手段はy=a−bxcの累乗式により温度を算出し、前記a、b及びcの各定数はバンドパスフィルタを透過する赤外線の放射エネルギ量と鍋底温度の関係式となるようにしたことによって高精度に鍋の温度測定ができる誘導加熱調理器としているものである。
【0012】
請求項6に記載の発明は、変換式をテーブルデータとして記憶手段に記憶させたことによってより安価に鍋の温度測定ができる誘導加熱調理器としているものである。
【0013】
請求項7に記載の発明は、温度算出手段の入力部とアンプ出力部間にローパスフィルタを設けたことによって耐ノイズ性を向上させた鍋の温度測定ができる誘導加熱調理器としているものである。
【0014】
請求項8に記載の発明は、トッププレート下面に反射防止膜をコーティングし、赤外線の透過率を向上させたことによって高精度に鍋の温度測定ができる誘導加熱調理器としているものである。
【0015】
請求項9に記載の発明は、赤外線センサを冷却する冷却手段を設けたことによって高精度に鍋の温度測定ができる誘導加熱調理器としているものである。
【0016】
請求項10に記載の発明は、冷却手段の冷却温度を制御する温度制御手段を設けたことによって高精度に鍋の温度測定ができる誘導加熱調理器としているものである。
【0017】
請求項11に記載の発明は、レンズもしくは曲面反射鏡により赤外線を集光する構成としたことによって高精度に鍋の温度測定ができる誘導加熱調理器としているものである。
【0018】
請求項12に記載の発明は、所定形状の放物面反射鏡により赤外線を赤外線センサの受光面に集光すると共に、反射鏡とトッププレート下面の間の空間を黒体に類似した特性を備えた構成としたことによって高精度に鍋の温度測定ができる誘導加熱調理器としているものである。
【0019】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
(実施例1)
図1は本実施例における調理器の構成を示すブロック図である。本実施例の誘導加熱調理器は、調理物を加熱調理する鍋3と、鍋3を加熱する加熱コイル4と、加熱コイル4に高周波電流を供給する高周波供給手段5と、トッププレート下面に配され鍋3の底から放射される赤外線を受光する赤外線センサ6と、赤外線センサの受光面を覆うように装着した所定の帯域特性のバンドパスフィルタ7と、赤外線センサに一体化されその出力を増幅するアンプ8と、アンプ8の出力信号から鍋3の温度を算出する温度算出手段9と、この温度算出手段9の出力に応じて加熱コイル4に供給する高周波電流供給量を制御する制御手段10とを備えたものである。赤外線センサ6及びアンプ8は素子温度を安定させるため、アルミか非磁性金属筒に収納する。非磁性金属筒の場合はシールド効果を持たせるため、内面にシールド剤を塗布する。
【0021】
上記実施例1において、図示していない電源スイッチを投入し、操作スイッチで所定の温度を設定すると、制御手段10が高周波電流供給手段5を制御して加熱コイル4に所定の電力を供給する。加熱コイル4に高周波電流が供給されると、加熱コイル4から誘導磁界が発せられ、トッププレート2上の鍋3が誘導加熱される。この誘導加熱によって鍋3の温度が上昇し、鍋3内の調理物が調理される。
【0022】
一般に物体の放射する赤外線エネルギはその物体の絶対温度の4乗に比例するというステファン・ボルツマンの法則があり、温度が高くなればなるほど加速度的に大きなエネルギを赤外線として放射する。(図2に100℃と200℃の黒体温度の放射エネルギ曲線を示す。)
式1 W=(2π5κ4/15c2h3)×T4=σT4
W:単位面積当たりの放射量(W/cm2・μm)
κ:ボルツマン定数=1.3807×10−23(W・s/K)
c:光速度=2.9979×1010(cm/s)
h:プランク定数=6.6261×10−34(W・s2)
σ:ステファン・ボルツマン定数=5.6706×10−12(W/cm2・K4)
T:放射物体の絶対温度(K)
赤外線センサ6は受光した赤外線のエネルギに比例した電圧を出力するもので、焦電素子や熱電対を一点に集めたサーモパイルなどを用いている。このため、鍋6の温度が上昇すると鍋底からの赤外線放射強度も強くなり、赤外線センサ6が受光する赤外線エネルギ量が増え、赤外線センサ6の出力信号電圧が高くなる。
【0023】
上述したように、トッププレート2は4μm以下の波長の赤外線しか透過せず、赤外線センサ6に届く赤外線エネルギは微弱であるが、モジュールとして赤外線センサ6と一体化されたアンプ8で5000〜10000倍に増幅した後に出力することで、S/N比を確保し、ノイズに影響されずに測定を可能としている。
【0024】
また、トッププレート2自身から放射される赤外線をカットするため所定の帯域特性(例えば、0.8〜4μm)のバンドパスフィルタ7を赤外線センサの受光面に装着している。温度算出手段9はアンプ8の出力信号電圧から鍋3の温度を算出し、制御手段10に送る。制御手段10は、この温度信号に応じて加熱コイル4に供給する電力を制御して、設定された所定の鍋温度に制御する。
【0025】
特に本実施例1では鍋底の温度を熱伝導を用いて温度センサに導いてくるのではなく、非接触で鍋底の温度を検出することができるため、応答性が極めて速く、調理時に必要な微妙な火加減を実現できるものである。
【0026】
(実施例2)
本実施例は、調理器としての基本構成は実施例1と同様であり、基本構成についての説明は省略する。この実施例2は、バンドパスフィルタ7の透過帯域をトッププレートの透過波長帯域の長波長側の所定の帯域としたものである。厚み0.5mm程度の適当な基材(例えば、Si、Ge、ZnS、AlO3、MgAl2O4)に光学コーティングを施し、図2の透過波長域A=3〜4μmで透過率90%のバンドパスフィルタ7を製作し、赤外線センサ6の受光面に装着する。図4にこのバンドパスフィルタ7を装着した時の理論放射エネルギと「鍋底温度To4−赤外線センサ6の素子温度Tb4」の関係を示す。帯域を制限しても測定に必要な放射エネルギ量は確保できると共に、外乱光の影響をバンドパスフィルタ7によりカット出来るので、より精度の良い温度測定が可能となる。
【0027】
なお、また、発明者らは3.6μm±0.15μmの波長域が温度測定に適していることを見いだしたもので、トッププレートの透過波長帯域の長波長側の透過率ピーク波長である3.6μm±0.15μmとすれば、透過率の高い部分だけで測定できる。また、その他の周波数のノイズの影響を防止でき、より制度は良くなる。
【0028】
(実施例3)
本実施例は、調理器としての基本構成は実施例1と同様であり、基本構成についての説明は省略する。本実施例は、トッププレート下面に温度センサを設け、温度センサの検出した温度から赤外線センサの出力を補正する補正手段を備えたものである。
【0029】
図5は本実施例における調理器の構成を示すブロック図である。トッププレート下面に温度センサ11を設け、温度センサ11の検出したトッププレート温度から赤外線センサの出力を補正する補正値を出力する補正手段12を備えたものである。図6に補正を行わなかった場合の検知出力例を示す。3〜4μmの波長域ではトッププレート2の透過率はピーク値でも60%なので、「1−透過率」相当のエネルギを自己放射しているため、トッププレート温度が280℃にもなると、プレート自身からの放射エネルギによりアンプ8の検知出力が飽和しているのが読みとれる。アンプ13は赤外線センサ6の出力と、この補正手段12の出力を差動増幅することにより、検知出力の飽和を防止し、より精度の良い温度測定を行うことが可能となる。
【0030】
(実施例4)
本実施例は、調理器としての基本構成は実施例1と同様であり、基本構成についての説明は省略する。この実施例4は、バンドパスフィルタ7の透過帯域をトッププレートの透過波長帯域の中間波長部における所定の帯域としたものである。光学コーティングを施し、図2の透過波長域B=1.96〜2.6μmで透過率90%のバンドパスフィルタ7を製作し、赤外線センサ6の受光面に装着する。図7は、このバンドパスフィルタ7を装着した時の理論放射エネルギと「鍋底温度To4−赤外線センサ6の素子温度Tb4」の関係を示す。帯域を制限しても60℃以上の温度測定に必要な放射エネルギ量は確保できると共に、外乱光の影響をバンドパスフィルタ7によりカット出来るので、より精度の良い温度測定が可能となる。また、発明者らは1.96〜2.6μmの波長域が温度測定に適していることを見いだしたもので、1.96〜2.6μmの波長域ではトッププレート2の透過率は85%以上なので、プレート自身からの放射エネルギの影響は非常に少なくなり、より精度の良い温度測定が可能となる。
【0031】
(実施例5)
本実施例は、調理器としての基本構成は実施例1と同様であり、基本構成についての説明は省略する。この実施例5は、温度算出手段はステファン・ボルツマンの法則によらないy=a−bxcの累乗式により温度を算出し、前記a、b及びcの各定数はバンドパスフィルタを透過する赤外線の放射エネルギ量と鍋底温度の関係式となるようにした構成が上記の実施例1とは異なるものであり、この点を中心に説明する。
【0032】
バンドパスフィルタ7の透過波長帯域を狭帯域にすると図4、図7に示すように理論放射エネルギと「鍋底温度To4−赤外線センサ6の素子温度Tb4」の関係が曲線となる。すなわち、ステファン・ボルツマンの法則から外れてくる。この場合の理論放射エネルギはプランクの式を波長λ1(バンドパスフィルタ7の下限波長)から、波長λ2(バンドパスフィルタ7の下限波長)まで不定積分を行えばよい。
【0033】
式2 Wλ=2πhc2/[λ5(ech/λκT−1)]
本実施例ではこの積分結果のグラフから近似式を導きだし、温度算出手段9に記憶させてある。温度算出手段9はこの近似式にアンプ8の検知出力値を代入演算し、鍋底の温度を算出する。
3〜4μmの波長域では、放射エネルギyと「鍋底温度To4−赤外線センサ6の素子温度Tb4」の関係は、(図4)
式3 y=7.5212939516E−21x1.7135294838E+00
1.96〜2.6μmの波長域では、(図7)
式4 y=5.0809942817E−31x2.5572924750E+00
が、共に相関係数R2>0.999と非常に良好な近似を示す。
以上によれば、理論放射エネルギと「鍋底温度To4−赤外線センサ6の素子温度Tb4」の関係が直線でなくても、不定積分を行うことなく簡便な近似式で鍋底温度の算出を行うことができる。
【0034】
(実施例6)
本実施例は、調理器としての基本構成は実施例1と同様であり、基本構成についての説明は省略する。この実施例6は、変換式をテーブルデータとして記憶手段に記憶させ構成が上記の実施例1とは異なるものであり、この点を中心に説明する。図8は本実施例における調理器の構成を示すブロック図である。記憶手段14に上記の近似式の計算結果をテーブルデータとして記憶させてある。温度算出手段15はアンプ8の検知出力から、このテーブルデータを参照して、鍋底温度を算出する。記憶手段14は半導体メモリーを用いれば安価であり、温度算出手段15も低価格のマイクロコンピュータで構成することが可能となり、より安価で、精度の良い温度測定が可能となる。
【0035】
(実施例7)
本実施例は、調理器としての基本構成は実施例1と同様であり、基本構成についての説明は省略する。この実施例7は、温度算出手段の入力部とアンプ出力部間にローパスフィルタを設けた構成が上記の実施例1とは異なるものであり、この点を中心に説明する。
【0036】
図9は本実施例における調理器の構成を示すブロック図である。アンプ8の出力は、ローパスフィルタ16を介して、温度算出手段9へ接続している。ローパスフィルタ16の遮断周波数fcは、商用電源周波数50/60Hzと、高周波電流供給手段5の発振周波数20〜35kHzのノイズ成分をカットできるように、20Hz以下に設定する。4次のバタワース特性のフィルタで24dB/oct相当の減衰傾度を得られるので、十分に上記のノイズを除去でき、よりS/N比を高めた高精度の温度測定が可能となる。
【0037】
(実施例8)
本実施例は、調理器としての基本構成は実施例1と同様であり、基本構成についての説明は省略する。この実施例8は、トッププレート下面に反射防止膜をコーティングし、赤外線の透過率を向上させたものであり、この点を中心に説明する。反射防止膜をトッププレート下面のみにコーティングすることで、透過率を5%程度アップさせることが出来るため、赤外線センサ6への受光量を増加させ、より精度の高い温度測定が可能となる。
なお、反射防止膜をコーティングするのは、トッププレート下面のみなので、傷などに対する耐久性を考慮する必要がなく、安価な反射防止膜を使用できる。
【0038】
(実施例9)
本実施例は、調理器としての基本構成は実施例1と同様であり、基本構成についての説明は省略する。この実施例9は、赤外線センサを冷却する冷却手段を設けたものであり、この点を中心に説明する。図10は本実施例における調理器の構成を示すブロック図である。赤外線センサ6とアンプ8を冷却する冷却手段17を設けたものである。赤外線センサ6に使用する素子がサーモパイルや焦電素子の場合は常温(20〜30℃)にファンで冷却し、HgCdTeやInGaAs素子の場合はペルチェ素子などの電子冷却で−5℃以下に冷却することで、素子感度が向上し、より精度の高い温度測定が可能となる。
【0039】
(実施例10)
本実施例は、調理器としての基本構成は実施例1と同様であり、基本構成についての説明は省略する。この実施例10は、冷却手段の冷却温度を精密に制御する温度制御手段を設けたものであり、この点を中心に説明する。図11は本実施例における調理器の構成を示すブロック図である。冷却手段17の冷却温度を制御する温度制御手段18を設けたものである。赤外線センサ8の温度を一定温度に精度良く保つことで、極めて安定した検知出力が得られ、より高精度に鍋の温度測定ができる誘導加熱調理器を提供できる。
【0040】
(実施例11)
本実施例は、調理器としての基本構成は実施例1と同様であり、基本構成についての説明は省略する。この実施例11は、レンズもしくは曲面反射鏡等による光学系により赤外線を集光するものであり、この点を中心に説明する。
【0041】
図12は本実施例における調理器の構成を示すブロック図である。バンドパスフィルタ7の前面に、レンズもしくは曲面反射鏡からなる赤外線集光手段19を設けたものである。赤外線集光手段19により赤外線センサ6へ受光させる赤外線量を数倍にすることで、よりS/N比を高め、より高精度に鍋の温度測定ができる誘導加熱調理器としているものである。
【0042】
(実施例12)
本実施例は、調理器としての基本構成は実施例1と同様であり、基本構成についての説明は省略する。この実施例12は、所定形状の放物面反射鏡により赤外線を赤外線センサの受光面に集光すると共に、反射鏡とトッププレート下面の間の空間が黒体と類似した特性を備えたものであり、この点を中心に説明する。
【0043】
図13は本実施例における放物面反射鏡の構成を示す要部断面図である。放物面反射鏡は赤外線センサ6の受光面に装着され、トップレート2と0.1mm程度の距離に設置されている。所定形状の放物面反射鏡20により、トッププレート2下面の集光エリア21から放射される全ての赤外線を補足する。22は赤外線センサ6の測定視野であるが、集光エリア21と放物面反射鏡20で構成される空間は黒体と類似の特性を示すように、放物面反射鏡20の曲面と表面状態を設計する。
【0044】
図12の23に250℃の放射率の異なる鍋を測定した例をグラフで示す。補正をしないと放射率と共に見かけの(測定)温度は低下するが、上記構成とすることで放射率0.4程度までは補正なしでも誤差が少ない。従って、実用に供されている低い放射率の鍋でもわずかな補正あるいは補正なしで測定が可能となり、より使い勝手の良い誘導加熱調理器を提供できる。
【0045】
なお、放物面放射鏡20はトッププレート2からの輻射熱を受け温度が上昇するので、低放射率の材料で形成すると共に、しっかり冷却する。
【0046】
【発明の効果】
以上のように本発明の発明は、鍋を加熱する加熱コイルと、加熱コイルの上部で鍋を載置するトッププレートと、前記トッププレート下面に配し鍋底面から放射される赤外線を検知する赤外線センサと、前記赤外線センサの受光面に装着した所定の帯域特性のバンドパスフィルタと、前記赤外線センサの出力を増幅するアンプと、前記アンプの出力から鍋底面温度を算出する温度算出手段と、前記温度算出手段の出力に応じて加熱コイルに供給する電力を制御する制御手段とを備え、トッププレートを透過してくる鍋底の赤外線放射エネルギにより、非接触で鍋底の温度を測定するようにした誘導加熱調理器としているもので、バンドパスフィルタの特性を狭帯域側の所定の帯域に絞り込むことでトッププレートからの自己放射の影響を低減できる誘導加熱調理器が実現できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1における調理器の構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施例2におけるトッププレートの透過特性グラフ
【図3】従来における誘導加熱調理器を示すブロック図
【図4】本発明の実施例2におけるバンドパスフィルタを装着した時の理論放射エネルギと「鍋底温度To4−赤外線センサ6の素子温度Tb4」の関係図
【図5】本発明の実施例3における調理器の構成を示すブロック図
【図6】補正を行わないときの検知出力を示す図
【図7】本発明の実施例5におけるバンドパスフィルタを装着した時の理論放射エネルギと「鍋底温度To4−赤外線センサ6の素子温度Tb4」の関係図
【図8】本発明の実施例6における調理器の構成を示すブロック図
【図9】本発明の実施例7における調理器の構成を示すブロック図
【図10】本発明の実施例9における調理器の構成を示すブロック図
【図11】本発明の実施例10における調理器の構成を示すブロック図
【図12】本発明の実施例11における調理器の構成を示すブロック図
【図13】本発明の実施例12における放物面反射鏡の構成を示す要部断面図及び放射率の異なる鍋を測定したグラフ
【符号の説明】
1 調理器本体
2 トッププレート
3 鍋
4 加熱コイル
5 高周波電流供給手段
6 赤外線センサ
7 バンドパスフィルタ
8 アンプ
9 温度算出手段
10 制御手段
12 プレート温度補正手段
14 記憶手段
16 ローパスフィルタ
17 冷却手段
19 赤外線集光手段
20 放物面反射鏡
21 集光エリア
22 赤外線センサの測定視野
Claims (12)
- 鍋を加熱する加熱コイルと、加熱コイルの上部で鍋を載置するトッププレートと、前記トッププレート下面に配し鍋底面から放射される赤外線を検知する赤外線センサと、前記赤外線センサの受光面を覆い所定帯域の光透過特性を有するバンドパスフィルタと、前記赤外線センサの出力を増幅するアンプと、前記アンプの出力から鍋底面温度を算出する温度算出手段と、前記温度算出手段の出力に応じて加熱コイルに供給する電力を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記トッププレートと前記バンドパスフィルタを透過する鍋底の赤外線放射エネルギにより鍋底の温度を測定し前記加熱コイルの出力を制御するようにした誘導加熱調理器。
- バンドパスフィルタの透過帯域は、トッププレートの透過波長帯域の長波長側におけるの所定の帯域とした請求項1に記載の誘導加熱調理器。
- トッププレート下面に温度センサを備え、前記温度センサが検出した温度をもとに、赤外線センサの出力を補正する補正手段を備えた請求項1または2に記載の誘導加熱調理器。
- バンドパスフィルタの透過帯域をトッププレートの透過波長帯域の中間波長部における所定の帯域とした請求項1に記載の誘導加熱調理器。
- 温度算出手段はy=a−bxcの累乗式により温度を算出し、前記a、b及びcの各定数はバンドパスフィルタを透過する赤外線の放射エネルギ量と鍋底温度の関係式となるようにした請求項1から4のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器。
- 変換式をテーブルデータとして記憶手段に記憶させた請求項5に記載の誘導加熱調理器。
- 温度算出手段の入力部とアンプ出力部間にローパスフィルタを設けた請求項1〜6のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器。
- トッププレート下面に赤外線の透過率を向上させる反射防止膜を備えた請求項1〜7のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器。
- 赤外線センサを冷却する冷却手段を設けた請求項1から8のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器。
- 冷却手段の冷却温度を制御する温度制御手段を設けた請求項9に記載の誘導加熱調理器。
- レンズもしくは曲面反射鏡により赤外線を集光する請求項1〜10のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器。
- 所定形状の放物面反射鏡により赤外線を赤外線センサの受光面に集光すると共に、反射鏡とトッププレート下面の間の空間を黒体に類似した特性を備えた構成とした請求項1〜10のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器。
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