JP2004093850A - 干渉フィルタ、半導体受光装置、およびそれらを含む電子機器 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐熱性に優れた干渉フィルタを含む半導体受光装置を簡便かつ低コストで提供する。
【解決手段】干渉フィルタを含む半導体受光装置は、半導体受光素子と、その受光素子の半導体基板を下地として気相堆積法によって形成された干渉フィルタとを含み、その干渉フィルタは交互に積層された複数の高屈折率層と複数の低屈折率層とを含み、高屈折率層はTa2O5またはNb2O5からなっていて少なくともその主要領域は実質的に非晶質であり、低屈折率層は非晶質SiO2からなることを特徴としている。
【選択図】 図1
【解決手段】干渉フィルタを含む半導体受光装置は、半導体受光素子と、その受光素子の半導体基板を下地として気相堆積法によって形成された干渉フィルタとを含み、その干渉フィルタは交互に積層された複数の高屈折率層と複数の低屈折率層とを含み、高屈折率層はTa2O5またはNb2O5からなっていて少なくともその主要領域は実質的に非晶質であり、低屈折率層は非晶質SiO2からなることを特徴としている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光センサなどに利用される半導体受光装置に関し、特に干渉フィルタを含む半導体受光装置の改善に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体受光装置としては、半導体受光素子に加えて干渉フィルタを備えたものがある。干渉フィルタは交互に積層された複数の高屈折率層と複数の低屈折率層を含み、一般に特定の波長範囲の光を透過または反射させるために利用される。たとえば、照度センサなどに利用される半導体受光装置として、赤外域の光をカットするが可視域の光を透過する干渉フィルタを備えたものがある。
【0003】
干渉フィルタを含む半導体受光装置において、従来では、ガラス基板上に形成された干渉フィルタが半導体受光素子の受光面に対して合成樹脂の接着剤で固着されていた。しかし、たとえば携帯電話機のように、従来から電子機器の小型化が依然として求められている。したがって、半導体受光装置を電子機器に装着する場合、基板穴にリード線を挿入してはんだ付けする挿入実装よりも、リード線を利用することなく基板表面またはチップキャリヤ表面に直接装着する表面実装が望まれる。表面実装には銀ペーストを利用することも可能だが、その場合にはペーストの焼成に手間と時間がかかる。したがって、半導体装置の表面実装には、一般にリフローソルダリングが利用されている。
【0004】
ところが、合成樹脂の接着剤で固着された干渉フィルタを含む半導体受光装置を表面実装すれば、リフローソルダリングの熱によって接着剤が劣化する場合がある。また、合成樹脂の接着剤自体が有する経年劣化の問題もある。さらに、干渉フィルタのガラス基板は、半導体受光装置の小型化の障害になり得る。
【0005】
このような状況に鑑み、特開2001−308351は、半導体受光素子の半導体基板に形成された受光面を覆うように、気相堆積法によって干渉フィルタを形成する技術を開示している。すなわち、その干渉フィルタは、接着剤を用いることなく、半導体受光素子の受光面を含む半導体基板を下地として直接的に積層される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特開2001−308351による半導体受光装置に含まれる干渉フィルタは、TiO2の高屈折率層とSiO2の低屈折率層を含んでいる。そして、この半導体受光装置は、たとえば携帯電話の照度センサとして、リフローソルダリングによって表面実装され得る。
【0007】
リフローソルダリングでは、一般に、約270℃以下の溶融温度を有するはんだが利用される。しかし、近年では、はんだに含まれる鉛による環境汚染が問題となっており、無鉛はんだ(鉛フリーはんだ)の使用が望まれている。無鉛はんだは、通常の鉛はんだより高い300℃以上の溶融温度を有するのが一般的であり、350℃以上の溶融温度を有するものも多い。
【0008】
ここで、たとえば電子ビーム(EB)真空蒸着によって形成されたTiO2の高屈折率層とSiO2の低屈折率層を含む干渉フィルタに対して約300℃以上の熱履歴を与えれば、その干渉フィルタに微細なクラックを生じたり、下地である半導体受光素子からの部分的な剥離を生じることが多い。したがって、無鉛はんだを利用する観点だけからでも、少なくとも約300℃以上の熱履歴に対する耐熱性を有する干渉フィルタを含む半導体受光装置が望まれる。
【0009】
また、近年では、他の半導体装置の表面実装においては、リフローソルダリングよりもさらに簡便かつ短時間で実装するために、ホットプレートを利用した装着が行われている。ホットプレートを利用する表面実装では、接合面に対してあらかじめ付与された合金ろう材をホットプレートの熱で一旦溶融させることによって接合が行われる。しかし、そのような合金ろう材は、無鉛はんだよりさらに高い溶融温度を有するのが一般的であり、350℃以上の溶融温度を有するものが多い。したがって、ホットプレートを利用した表面実装を可能にする観点からは、少なくとも約350℃以上の熱履歴に対する耐熱性を有する干渉フィルタを含む半導体受光装置が望まれる。
【0010】
いずれにしても、より高い温度に対する耐熱性を有する干渉フィルタを含む受光装置は、それを利用する電子機器の製造プロセスにおける熱的自由度を拡大し得ることが明らかである。
【0011】
上述のような先行技術における状況に鑑み、本発明は、耐熱性に優れた干渉フィルタを含む半導体受光装置を簡便かつ低コストで提供することを主要目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、半導体基板を下地として気相堆積法によって形成された干渉フィルタは、交互に積層された複数の高屈折率層と複数の低屈折率層とを含み、高屈折率層はTa2O5またはNb2O5からなっていて少なくともその主要領域は実質的に非晶質であり、低屈折率層は非晶質SiO2からなることを特徴としている。
【0013】
また、本発明にによる半導体受光装置は、半導体受光素子と、その受光素子の半導体基板を下地として気相堆積法によって形成された干渉フィルタとを含み、その干渉フィルタは交互に積層された複数の高屈折率層と複数の低屈折率層とを含み、高屈折率層はTa2O5またはNb2O5からなっていて少なくともその主要領域は実質的に非晶質であり、低屈折率層は非晶質SiO2からなることを特徴としている。
【0014】
なお、干渉フィルタに含まれる残留応力は、50MPa以下の引っ張り応力または80MPa以下の圧縮応力の範囲内にあることが好ましい。また、干渉フィルタに含まれる高屈折率層と低屈折率層の合計層数は、15以上で150以下の範囲内にあることが好ましい。
【0015】
本発明による電子機器は、上述の半導体受光装置がろう材によって装着された結果物を含んでおり、そのろう材が300℃以上の融点を有することを特徴としている。そのろう材は、350℃以上の融点を有することも可能である。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1は、干渉フィルタを含む半導体受光装置の一例の主要部を模式的な断面図で示している。この半導体受光装置においては、半導体受光素子1の受光面1aを含む半導体基板を下地として、干渉フィルタ2が気相堆積法を利用して形成されている。すなわち、干渉フィルタ2は、ガラス基板や接合樹脂などを介することなく、直接的に半導体受光素子1の受光面1aを覆うように形成されている。
【0017】
干渉フィルタ2は、交互に積層された複数の高屈折層2Hと複数の低屈折層2Lを含んでいる。なお、半導体受光素子1の受光面1a上で最初に堆積されるのは、高屈折層2Hと低屈折層2Lのいずれであってもよい。
【0018】
前述のように、特開2001−308351による半導体受光装置に含まれる干渉フィルタは、TiO2の高屈折率層とSiO2の低屈折率層を含んでいる。TiO2はSiO2に比べてかなり高い屈折率を有しているので、これを高屈折率層に利用することは、光学的観点から大変好ましい。しかし、その干渉フィルタにおいては、約300℃以上の熱履歴を与えれば、微細なクラックを生じたり、下地である半導体受光素子からの部分的な剥離を生じることが多い。
【0019】
そこで、本発明者らは、TiO2の高屈折率層とSiO2の低屈折率層を含む干渉フィルタにおいては約300℃以上の熱履歴によってなにゆえに微細なクラックを生じたり、下地である半導体受光素子からの部分的な剥離を生じることが多いかについて検討した。その結果、TiO2高屈折率層とSiO2低屈折率層を含む干渉フィルタの耐熱性が低いのは、TiO2薄膜が結晶化しやすいことに起因しているのであろうと考えられた。なぜならば、蒸着されたSiO2薄膜は1000℃近くでも非晶質であって安定だからである。
【0020】
たとえば、X線回折によれば、加熱しない基板上に蒸着されたTiO2薄膜は非晶質であるが、300℃に加熱された基板上に蒸着されたTiO2薄膜は結晶質である。そして、結晶質のTiO2薄膜は、脆い性質を有している。また、TiO2は、多形であることが知られている。多形とは、同じ化学的組成物であっても、異なる結晶構造をとりうることを意味する。このように、TiO2薄膜が結晶化しやすいことや多形を生じやすいことなどが、TiO2高屈折率層とSiO2低屈折率層を含む干渉フィルタの耐熱性が低い原因であろうと考えられた。
【0021】
そこで、本発明者らは、TiO2に比べればわずかに屈折率が低いけれども結晶化しにくくて熱的に安定な非晶質Ta2O5または非晶質Nb2O5を高屈折層2Hに利用することを考えた。すなわち、本発明による半導体受光装置に含まれる干渉フィルタ2においては、高屈折率層2Hとして非晶質Ta2O5層または非晶質Nb2O5が堆積され、低屈折層2Lとして非晶質SiO2層が堆積される。Ta2O5とNb2O5は、互いに非常に似た性質を有している。非晶質Ta2O5層が結晶化し始めるのは約650℃であり、これはホットプレートを利用して半導体受光装置を表面実装する際に用いられるろう材の溶融温度に比べて十分に高い温度である。
【0022】
したがって、本発明におけるように非晶質Ta2O5または非晶質Nb2O5の高屈折率層と非晶質SiO2低屈折率層を利用することによって、耐熱性に優れた干渉フィルタを含む半導体受光装置を簡便かつ低コストで提供することが可能となる。
【0023】
【実施例】
本発明者らは、本願発明の効果を確認すべく、種々の実験を行った。まず、蒸着によって形成される干渉フィルタの耐熱性が調べられた。この耐熱性試験においては、Si基板上に干渉フィルタが、EB蒸着によって形成された。なお、そのEB蒸着は、1Pa〜2×10−4Paの真空度の下で行われた。干渉フィルタとしては、試料(以後「S」とも表示する)1〜9の他に、比較試料(以後「CS」とも表示する)1〜4が形成された。
【0024】
S1〜S9においては、高屈折率層としてTa2O5またはNb2O5が蒸着され、低屈折率層としてSiO2層が蒸着された。他方、CS1〜CS4においては、高屈折率層としてTiO2が蒸着され、低屈折率層としてSiO2層が蒸着された。基板温度は150〜450℃の範囲内の温度に設定され、干渉フィルタに含まれる高屈折率層と低屈折率層の全層数は種々に変更された。このような干渉フィルタの耐熱性試験の結果が、表1にまとめて示されている。
【0025】
【表1】
【0026】
表1において、高屈折率層の材料を表すコラム中のTa2O5(a)とTa2O5(b)は、Ta2O5層のEB蒸着用の粉末原料として市場で入手し得る原料の内で互いに異なる原料が用いられたことを表している。また、評価数は、各試料(S)または各比較試料(CS)に用いられたSi基板の数を表している。さらに、耐熱試験結果のコラムにおいて、×印は干渉フィルタ中に大小の亀裂が多数生じて耐熱性が不良であることを表している。△印は、干渉フィルタ中のごく一部に亀裂があり、耐熱性改善効果が比較的小さいことを表している。そして、○印は、干渉フィルタ中に亀裂を生じることがなく、耐熱性改善効果が大きいことを表している。
【0027】
なお、表1の耐熱試験においては、EB蒸着によって形成された干渉フィルタが、410℃±5℃の温度への加熱下で約40秒間保持された。その後、実体顕微鏡(低倍率の光学顕微鏡)を用いて、干渉フィルタ中の亀裂の存在の有無が観察されて、その耐熱性が評価された。
【0028】
表1の耐熱性試験の過程において、Si基板上に形成された干渉フィルタ中の残留応力σも評価された。この残留応力σの評価には、片持ち梁の反りに適用されるHoffmannの式が利用された。
σ=Eb2δ/3(1−ν)dl
ここで、EはSi基板のヤング率、bは基板の厚さ、δは片持ち梁としての基板端部の変位、νは基板のポアソン比、dは干渉フィルタの厚さ、そしてlは片持ち梁としての基板の長さを表す。このような残留応力σの評価結果が、図2のグラフにおいてまとめて表示されている。
【0029】
図2のグラフにおいて、縦軸は干渉フィルタ成膜後の残留応力(MPa)を表し、その正と負の値はそれぞれ干渉フィルタ中の引張りと圧縮の残留応力を表している。他方、グラフの横軸は試料(S)または比較試料(CS)の番号を表している。表1中の評価数(すなわち基板数)4に対応して、図2のグラフでは各試料(S)または各比較試料(CS)ごとに4つの残留応力評価値が存在する。
【0030】
表1と図2とを合わせて検討すれば、TiO2高屈折率層を含んで成膜された比較試料(CS)1〜4では、いずれも干渉フィルタ膜中に大きな残留引張り応力が存在し、耐熱性が低いことがわかる。他方、Ta2O5またはNb2O5の高屈折率層含んで成膜された試料(S)1〜9における干渉フィルタ膜では、比較試料(CS)1〜4の場合に比べて小さな残留引張り応力を含むかまたは残留圧縮応力を含んでいる。
【0031】
表1から分かるように、Ta2O5またはNb2O5の高屈折率層を含む試料(S)1〜9に関して、耐熱性として×印の評価が示されたものはない。しかし、干渉フィルタ中の全積層数が少なくて10である試料(S)3では、異なる評価基板ごとに残留応力値のばらつきが大きくて(図2参照)、残留引張り応力が50MPaを超える評価基板も存在し、耐熱性としての評価も△印である。他方、干渉フィルタ中の全積層数が150より多い試料(S)7と9では、残留圧縮応力が大きくなり、残留圧縮応力が80MPaを超える評価基板も存在し、耐熱性としての評価も△印である。したがって、Ta2O5またはNb2O5の高屈折率層とSiO2低屈折率層とを含む干渉フィルタにおいては、それに含まれる残留応力が引張り応力の場合には50MPa以下で、圧縮応力の場合には80MPa以下であることが望まれる。
【0032】
なお、表1における耐熱性試験の後に、干渉フィルタに含まれる各層の結晶性が、X線回折によって調べられた。その結果、TiO2層に関しては結晶化を示す回折ピークが観察されたが、Ta2O5、Nb2O5、およびSiO2の各層に関しては結晶の存在を示す回折ピークは観察されなかった。
【0033】
ところで、干渉フィルタとしては、その光学的特性をも考慮しなければならない。図3は、Ta2O5高屈折率層とSiO2低屈折率層とを合計で10層含む干渉フィルタに関する光学特性のシミュレーション結果を示している。このグラフにおいて、横軸は光の波長(nm)を表し、縦軸は透過率(%)を表している。同様に、図4は全積層数が24の場合の光学特性を示しており、図5は全積層数が48の場合の光学特性を示している。図3〜5を比較参照すれば分かるように、干渉フィルタ中の全積層数を増加させることによって、透過帯と不透過帯との間の遷移波長帯幅を小さくすることができ、また不透過帯の波長域を広くすることができると共に透過率をより小さくすることができる。すなわち、干渉フィルタの光学的特性からの観点のみからすれば、全積層数は多いほど所望の光学特性を得やすくなる。
【0034】
以上のような干渉フィルタ膜の残留応力と光学特性の双方を考慮すると共に、その製造のための手間と時間を考慮しても、Ta2O5またはNb2O5の高屈折率層とSiO2低屈折率層を含む干渉フィルタ中の全積層数の好ましい範囲は15以上で150以下であると考えられる。なぜならば、全積層数が15未満では干渉フィルタ中の残留引張り応力がばらついて大きくなる場合が生じて耐熱性が低下し、またそのように少ない全積層数では十分な光学特性を得ることが困難になるからである。他方、全積層数が150を超えれば干渉フィルタ中の残留圧縮応力が大きくなって耐熱性が低下するし、むやみに全積層数を増大させることは製造の手間と時間を増大させると共に製造設備に対する負担も大きくなるからである。
【0035】
本発明者らはさらに、実際のシリコン受光素子の受光面上に干渉フィルタを形成してその耐熱性を調べた。その結果が、表2にまとめて示されている。
【0036】
【表2】
【0037】
表2において、評価ウエハ片は5mm角から8mm角程度の大きさを有するSiウエハ片であって、そのウエハ片上には複数の受光素子構造が形成された複数の区画が含まれている。すなわち、それらの「区画」の各々は、互いに分割されて各受光素子チップになるべき領域である。また、「評価ウエハ片」のコラム中に表示されているたとえば「S3相当品」は、表1における試料(S)3と同じ条件で形成された干渉フィルタを含むウエハを意味する。
【0038】
表2の耐熱性試験においても、表1の場合と同様に、評価ウエハ片は410±5℃の加熱温度において約40秒間保持された。この加熱処理後において、実体顕微鏡を用いて100倍の倍率で、ウエハ片上の1区画について1視野の観察が行われた。表2中の「レベルA」は、1区画内の干渉フィルタの1視野観察において、亀裂が存在しないかまたは一部に微細亀裂が存在するがそれが伝播成長しない場合を意味する。他方、「レベルB」は、大きな亀裂が存在するかまたは伝播成長する微細亀裂が多数発生している場合を意味する。そして、「良好区画数割合」は、観察された区画数中でレベルAと判定された区画の割合を意味する。
【0039】
表2から明らかなように、TiO2高屈折率層を含むCS3相当品では、半導体受光素子の受光面上の干渉フィルタの耐熱性がまったく不充分であることが分かる。他方、Ta2O5高屈折率層を含むS7相当品では、CS3相当品に比べて、耐熱性が顕著に改善されていることが分かる。ただし、S7相当品では干渉フィルタ中の全積層数が150より多い160であるので、改善効果がまったく十分とはなっていない。しかし、S2相当品やS5相当品においては、Ta2O5高屈折率層とSiO2低屈折率層を含みかつ全積層数が15以上で150以下の範囲内にあって、飛躍的に耐熱性が改善された干渉フィルタを有する半導体受光装置が得られることがわかる。
【0040】
なお、以上の実験例ではEB蒸着を利用して干渉フィルタが形成されたが、各種イオンアシスト蒸着やプラズマアシスト蒸着(受光素子の種類や仕様に応じて選択される)をEB蒸着と併用することによって干渉フィルタの膜質の改善(緻密度向上、均質化、膜厚のばらつき低減など)を行えば、さらに耐熱性改善の効果が期待できる。
【0041】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば。耐熱性に優れた干渉フィルタを含む半導体受光装置を簡便かつ低コストで提供することができる。その結果、そのような半導体受光装置はホットプレートを利用した表面実装が可能となり、そのような半導体受光装置を含む小型化された電子機器を簡便かつ低コストで提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】干渉フィルタを含む半導体受光装置の一例の主要部を示す模式的な断面図である。
【図2】Si基板上に気相堆積された干渉フィルタ中の残留応力を示すグラフである。
【図3】Ta2O5高屈折率層とSiO2低屈折率層とを合計で10層含む干渉フィルタに関する光学特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図4】Ta2O5高屈折率層とSiO2低屈折率層とを合計で24層含む干渉フィルタに関する光学特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図5】Ta2O5高屈折率層とSiO2低屈折率層とを合計で48層含む干渉フィルタに関する光学特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 半導体受光素子、1a 受光面、2 干渉フィルタ、2H 高屈折率層、2L 低屈折率層。
【発明の属する技術分野】
本発明は光センサなどに利用される半導体受光装置に関し、特に干渉フィルタを含む半導体受光装置の改善に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体受光装置としては、半導体受光素子に加えて干渉フィルタを備えたものがある。干渉フィルタは交互に積層された複数の高屈折率層と複数の低屈折率層を含み、一般に特定の波長範囲の光を透過または反射させるために利用される。たとえば、照度センサなどに利用される半導体受光装置として、赤外域の光をカットするが可視域の光を透過する干渉フィルタを備えたものがある。
【0003】
干渉フィルタを含む半導体受光装置において、従来では、ガラス基板上に形成された干渉フィルタが半導体受光素子の受光面に対して合成樹脂の接着剤で固着されていた。しかし、たとえば携帯電話機のように、従来から電子機器の小型化が依然として求められている。したがって、半導体受光装置を電子機器に装着する場合、基板穴にリード線を挿入してはんだ付けする挿入実装よりも、リード線を利用することなく基板表面またはチップキャリヤ表面に直接装着する表面実装が望まれる。表面実装には銀ペーストを利用することも可能だが、その場合にはペーストの焼成に手間と時間がかかる。したがって、半導体装置の表面実装には、一般にリフローソルダリングが利用されている。
【0004】
ところが、合成樹脂の接着剤で固着された干渉フィルタを含む半導体受光装置を表面実装すれば、リフローソルダリングの熱によって接着剤が劣化する場合がある。また、合成樹脂の接着剤自体が有する経年劣化の問題もある。さらに、干渉フィルタのガラス基板は、半導体受光装置の小型化の障害になり得る。
【0005】
このような状況に鑑み、特開2001−308351は、半導体受光素子の半導体基板に形成された受光面を覆うように、気相堆積法によって干渉フィルタを形成する技術を開示している。すなわち、その干渉フィルタは、接着剤を用いることなく、半導体受光素子の受光面を含む半導体基板を下地として直接的に積層される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特開2001−308351による半導体受光装置に含まれる干渉フィルタは、TiO2の高屈折率層とSiO2の低屈折率層を含んでいる。そして、この半導体受光装置は、たとえば携帯電話の照度センサとして、リフローソルダリングによって表面実装され得る。
【0007】
リフローソルダリングでは、一般に、約270℃以下の溶融温度を有するはんだが利用される。しかし、近年では、はんだに含まれる鉛による環境汚染が問題となっており、無鉛はんだ(鉛フリーはんだ)の使用が望まれている。無鉛はんだは、通常の鉛はんだより高い300℃以上の溶融温度を有するのが一般的であり、350℃以上の溶融温度を有するものも多い。
【0008】
ここで、たとえば電子ビーム(EB)真空蒸着によって形成されたTiO2の高屈折率層とSiO2の低屈折率層を含む干渉フィルタに対して約300℃以上の熱履歴を与えれば、その干渉フィルタに微細なクラックを生じたり、下地である半導体受光素子からの部分的な剥離を生じることが多い。したがって、無鉛はんだを利用する観点だけからでも、少なくとも約300℃以上の熱履歴に対する耐熱性を有する干渉フィルタを含む半導体受光装置が望まれる。
【0009】
また、近年では、他の半導体装置の表面実装においては、リフローソルダリングよりもさらに簡便かつ短時間で実装するために、ホットプレートを利用した装着が行われている。ホットプレートを利用する表面実装では、接合面に対してあらかじめ付与された合金ろう材をホットプレートの熱で一旦溶融させることによって接合が行われる。しかし、そのような合金ろう材は、無鉛はんだよりさらに高い溶融温度を有するのが一般的であり、350℃以上の溶融温度を有するものが多い。したがって、ホットプレートを利用した表面実装を可能にする観点からは、少なくとも約350℃以上の熱履歴に対する耐熱性を有する干渉フィルタを含む半導体受光装置が望まれる。
【0010】
いずれにしても、より高い温度に対する耐熱性を有する干渉フィルタを含む受光装置は、それを利用する電子機器の製造プロセスにおける熱的自由度を拡大し得ることが明らかである。
【0011】
上述のような先行技術における状況に鑑み、本発明は、耐熱性に優れた干渉フィルタを含む半導体受光装置を簡便かつ低コストで提供することを主要目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、半導体基板を下地として気相堆積法によって形成された干渉フィルタは、交互に積層された複数の高屈折率層と複数の低屈折率層とを含み、高屈折率層はTa2O5またはNb2O5からなっていて少なくともその主要領域は実質的に非晶質であり、低屈折率層は非晶質SiO2からなることを特徴としている。
【0013】
また、本発明にによる半導体受光装置は、半導体受光素子と、その受光素子の半導体基板を下地として気相堆積法によって形成された干渉フィルタとを含み、その干渉フィルタは交互に積層された複数の高屈折率層と複数の低屈折率層とを含み、高屈折率層はTa2O5またはNb2O5からなっていて少なくともその主要領域は実質的に非晶質であり、低屈折率層は非晶質SiO2からなることを特徴としている。
【0014】
なお、干渉フィルタに含まれる残留応力は、50MPa以下の引っ張り応力または80MPa以下の圧縮応力の範囲内にあることが好ましい。また、干渉フィルタに含まれる高屈折率層と低屈折率層の合計層数は、15以上で150以下の範囲内にあることが好ましい。
【0015】
本発明による電子機器は、上述の半導体受光装置がろう材によって装着された結果物を含んでおり、そのろう材が300℃以上の融点を有することを特徴としている。そのろう材は、350℃以上の融点を有することも可能である。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1は、干渉フィルタを含む半導体受光装置の一例の主要部を模式的な断面図で示している。この半導体受光装置においては、半導体受光素子1の受光面1aを含む半導体基板を下地として、干渉フィルタ2が気相堆積法を利用して形成されている。すなわち、干渉フィルタ2は、ガラス基板や接合樹脂などを介することなく、直接的に半導体受光素子1の受光面1aを覆うように形成されている。
【0017】
干渉フィルタ2は、交互に積層された複数の高屈折層2Hと複数の低屈折層2Lを含んでいる。なお、半導体受光素子1の受光面1a上で最初に堆積されるのは、高屈折層2Hと低屈折層2Lのいずれであってもよい。
【0018】
前述のように、特開2001−308351による半導体受光装置に含まれる干渉フィルタは、TiO2の高屈折率層とSiO2の低屈折率層を含んでいる。TiO2はSiO2に比べてかなり高い屈折率を有しているので、これを高屈折率層に利用することは、光学的観点から大変好ましい。しかし、その干渉フィルタにおいては、約300℃以上の熱履歴を与えれば、微細なクラックを生じたり、下地である半導体受光素子からの部分的な剥離を生じることが多い。
【0019】
そこで、本発明者らは、TiO2の高屈折率層とSiO2の低屈折率層を含む干渉フィルタにおいては約300℃以上の熱履歴によってなにゆえに微細なクラックを生じたり、下地である半導体受光素子からの部分的な剥離を生じることが多いかについて検討した。その結果、TiO2高屈折率層とSiO2低屈折率層を含む干渉フィルタの耐熱性が低いのは、TiO2薄膜が結晶化しやすいことに起因しているのであろうと考えられた。なぜならば、蒸着されたSiO2薄膜は1000℃近くでも非晶質であって安定だからである。
【0020】
たとえば、X線回折によれば、加熱しない基板上に蒸着されたTiO2薄膜は非晶質であるが、300℃に加熱された基板上に蒸着されたTiO2薄膜は結晶質である。そして、結晶質のTiO2薄膜は、脆い性質を有している。また、TiO2は、多形であることが知られている。多形とは、同じ化学的組成物であっても、異なる結晶構造をとりうることを意味する。このように、TiO2薄膜が結晶化しやすいことや多形を生じやすいことなどが、TiO2高屈折率層とSiO2低屈折率層を含む干渉フィルタの耐熱性が低い原因であろうと考えられた。
【0021】
そこで、本発明者らは、TiO2に比べればわずかに屈折率が低いけれども結晶化しにくくて熱的に安定な非晶質Ta2O5または非晶質Nb2O5を高屈折層2Hに利用することを考えた。すなわち、本発明による半導体受光装置に含まれる干渉フィルタ2においては、高屈折率層2Hとして非晶質Ta2O5層または非晶質Nb2O5が堆積され、低屈折層2Lとして非晶質SiO2層が堆積される。Ta2O5とNb2O5は、互いに非常に似た性質を有している。非晶質Ta2O5層が結晶化し始めるのは約650℃であり、これはホットプレートを利用して半導体受光装置を表面実装する際に用いられるろう材の溶融温度に比べて十分に高い温度である。
【0022】
したがって、本発明におけるように非晶質Ta2O5または非晶質Nb2O5の高屈折率層と非晶質SiO2低屈折率層を利用することによって、耐熱性に優れた干渉フィルタを含む半導体受光装置を簡便かつ低コストで提供することが可能となる。
【0023】
【実施例】
本発明者らは、本願発明の効果を確認すべく、種々の実験を行った。まず、蒸着によって形成される干渉フィルタの耐熱性が調べられた。この耐熱性試験においては、Si基板上に干渉フィルタが、EB蒸着によって形成された。なお、そのEB蒸着は、1Pa〜2×10−4Paの真空度の下で行われた。干渉フィルタとしては、試料(以後「S」とも表示する)1〜9の他に、比較試料(以後「CS」とも表示する)1〜4が形成された。
【0024】
S1〜S9においては、高屈折率層としてTa2O5またはNb2O5が蒸着され、低屈折率層としてSiO2層が蒸着された。他方、CS1〜CS4においては、高屈折率層としてTiO2が蒸着され、低屈折率層としてSiO2層が蒸着された。基板温度は150〜450℃の範囲内の温度に設定され、干渉フィルタに含まれる高屈折率層と低屈折率層の全層数は種々に変更された。このような干渉フィルタの耐熱性試験の結果が、表1にまとめて示されている。
【0025】
【表1】
【0026】
表1において、高屈折率層の材料を表すコラム中のTa2O5(a)とTa2O5(b)は、Ta2O5層のEB蒸着用の粉末原料として市場で入手し得る原料の内で互いに異なる原料が用いられたことを表している。また、評価数は、各試料(S)または各比較試料(CS)に用いられたSi基板の数を表している。さらに、耐熱試験結果のコラムにおいて、×印は干渉フィルタ中に大小の亀裂が多数生じて耐熱性が不良であることを表している。△印は、干渉フィルタ中のごく一部に亀裂があり、耐熱性改善効果が比較的小さいことを表している。そして、○印は、干渉フィルタ中に亀裂を生じることがなく、耐熱性改善効果が大きいことを表している。
【0027】
なお、表1の耐熱試験においては、EB蒸着によって形成された干渉フィルタが、410℃±5℃の温度への加熱下で約40秒間保持された。その後、実体顕微鏡(低倍率の光学顕微鏡)を用いて、干渉フィルタ中の亀裂の存在の有無が観察されて、その耐熱性が評価された。
【0028】
表1の耐熱性試験の過程において、Si基板上に形成された干渉フィルタ中の残留応力σも評価された。この残留応力σの評価には、片持ち梁の反りに適用されるHoffmannの式が利用された。
σ=Eb2δ/3(1−ν)dl
ここで、EはSi基板のヤング率、bは基板の厚さ、δは片持ち梁としての基板端部の変位、νは基板のポアソン比、dは干渉フィルタの厚さ、そしてlは片持ち梁としての基板の長さを表す。このような残留応力σの評価結果が、図2のグラフにおいてまとめて表示されている。
【0029】
図2のグラフにおいて、縦軸は干渉フィルタ成膜後の残留応力(MPa)を表し、その正と負の値はそれぞれ干渉フィルタ中の引張りと圧縮の残留応力を表している。他方、グラフの横軸は試料(S)または比較試料(CS)の番号を表している。表1中の評価数(すなわち基板数)4に対応して、図2のグラフでは各試料(S)または各比較試料(CS)ごとに4つの残留応力評価値が存在する。
【0030】
表1と図2とを合わせて検討すれば、TiO2高屈折率層を含んで成膜された比較試料(CS)1〜4では、いずれも干渉フィルタ膜中に大きな残留引張り応力が存在し、耐熱性が低いことがわかる。他方、Ta2O5またはNb2O5の高屈折率層含んで成膜された試料(S)1〜9における干渉フィルタ膜では、比較試料(CS)1〜4の場合に比べて小さな残留引張り応力を含むかまたは残留圧縮応力を含んでいる。
【0031】
表1から分かるように、Ta2O5またはNb2O5の高屈折率層を含む試料(S)1〜9に関して、耐熱性として×印の評価が示されたものはない。しかし、干渉フィルタ中の全積層数が少なくて10である試料(S)3では、異なる評価基板ごとに残留応力値のばらつきが大きくて(図2参照)、残留引張り応力が50MPaを超える評価基板も存在し、耐熱性としての評価も△印である。他方、干渉フィルタ中の全積層数が150より多い試料(S)7と9では、残留圧縮応力が大きくなり、残留圧縮応力が80MPaを超える評価基板も存在し、耐熱性としての評価も△印である。したがって、Ta2O5またはNb2O5の高屈折率層とSiO2低屈折率層とを含む干渉フィルタにおいては、それに含まれる残留応力が引張り応力の場合には50MPa以下で、圧縮応力の場合には80MPa以下であることが望まれる。
【0032】
なお、表1における耐熱性試験の後に、干渉フィルタに含まれる各層の結晶性が、X線回折によって調べられた。その結果、TiO2層に関しては結晶化を示す回折ピークが観察されたが、Ta2O5、Nb2O5、およびSiO2の各層に関しては結晶の存在を示す回折ピークは観察されなかった。
【0033】
ところで、干渉フィルタとしては、その光学的特性をも考慮しなければならない。図3は、Ta2O5高屈折率層とSiO2低屈折率層とを合計で10層含む干渉フィルタに関する光学特性のシミュレーション結果を示している。このグラフにおいて、横軸は光の波長(nm)を表し、縦軸は透過率(%)を表している。同様に、図4は全積層数が24の場合の光学特性を示しており、図5は全積層数が48の場合の光学特性を示している。図3〜5を比較参照すれば分かるように、干渉フィルタ中の全積層数を増加させることによって、透過帯と不透過帯との間の遷移波長帯幅を小さくすることができ、また不透過帯の波長域を広くすることができると共に透過率をより小さくすることができる。すなわち、干渉フィルタの光学的特性からの観点のみからすれば、全積層数は多いほど所望の光学特性を得やすくなる。
【0034】
以上のような干渉フィルタ膜の残留応力と光学特性の双方を考慮すると共に、その製造のための手間と時間を考慮しても、Ta2O5またはNb2O5の高屈折率層とSiO2低屈折率層を含む干渉フィルタ中の全積層数の好ましい範囲は15以上で150以下であると考えられる。なぜならば、全積層数が15未満では干渉フィルタ中の残留引張り応力がばらついて大きくなる場合が生じて耐熱性が低下し、またそのように少ない全積層数では十分な光学特性を得ることが困難になるからである。他方、全積層数が150を超えれば干渉フィルタ中の残留圧縮応力が大きくなって耐熱性が低下するし、むやみに全積層数を増大させることは製造の手間と時間を増大させると共に製造設備に対する負担も大きくなるからである。
【0035】
本発明者らはさらに、実際のシリコン受光素子の受光面上に干渉フィルタを形成してその耐熱性を調べた。その結果が、表2にまとめて示されている。
【0036】
【表2】
【0037】
表2において、評価ウエハ片は5mm角から8mm角程度の大きさを有するSiウエハ片であって、そのウエハ片上には複数の受光素子構造が形成された複数の区画が含まれている。すなわち、それらの「区画」の各々は、互いに分割されて各受光素子チップになるべき領域である。また、「評価ウエハ片」のコラム中に表示されているたとえば「S3相当品」は、表1における試料(S)3と同じ条件で形成された干渉フィルタを含むウエハを意味する。
【0038】
表2の耐熱性試験においても、表1の場合と同様に、評価ウエハ片は410±5℃の加熱温度において約40秒間保持された。この加熱処理後において、実体顕微鏡を用いて100倍の倍率で、ウエハ片上の1区画について1視野の観察が行われた。表2中の「レベルA」は、1区画内の干渉フィルタの1視野観察において、亀裂が存在しないかまたは一部に微細亀裂が存在するがそれが伝播成長しない場合を意味する。他方、「レベルB」は、大きな亀裂が存在するかまたは伝播成長する微細亀裂が多数発生している場合を意味する。そして、「良好区画数割合」は、観察された区画数中でレベルAと判定された区画の割合を意味する。
【0039】
表2から明らかなように、TiO2高屈折率層を含むCS3相当品では、半導体受光素子の受光面上の干渉フィルタの耐熱性がまったく不充分であることが分かる。他方、Ta2O5高屈折率層を含むS7相当品では、CS3相当品に比べて、耐熱性が顕著に改善されていることが分かる。ただし、S7相当品では干渉フィルタ中の全積層数が150より多い160であるので、改善効果がまったく十分とはなっていない。しかし、S2相当品やS5相当品においては、Ta2O5高屈折率層とSiO2低屈折率層を含みかつ全積層数が15以上で150以下の範囲内にあって、飛躍的に耐熱性が改善された干渉フィルタを有する半導体受光装置が得られることがわかる。
【0040】
なお、以上の実験例ではEB蒸着を利用して干渉フィルタが形成されたが、各種イオンアシスト蒸着やプラズマアシスト蒸着(受光素子の種類や仕様に応じて選択される)をEB蒸着と併用することによって干渉フィルタの膜質の改善(緻密度向上、均質化、膜厚のばらつき低減など)を行えば、さらに耐熱性改善の効果が期待できる。
【0041】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば。耐熱性に優れた干渉フィルタを含む半導体受光装置を簡便かつ低コストで提供することができる。その結果、そのような半導体受光装置はホットプレートを利用した表面実装が可能となり、そのような半導体受光装置を含む小型化された電子機器を簡便かつ低コストで提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】干渉フィルタを含む半導体受光装置の一例の主要部を示す模式的な断面図である。
【図2】Si基板上に気相堆積された干渉フィルタ中の残留応力を示すグラフである。
【図3】Ta2O5高屈折率層とSiO2低屈折率層とを合計で10層含む干渉フィルタに関する光学特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図4】Ta2O5高屈折率層とSiO2低屈折率層とを合計で24層含む干渉フィルタに関する光学特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図5】Ta2O5高屈折率層とSiO2低屈折率層とを合計で48層含む干渉フィルタに関する光学特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 半導体受光素子、1a 受光面、2 干渉フィルタ、2H 高屈折率層、2L 低屈折率層。
Claims (8)
- 半導体基板を下地として気相堆積法によって形成された干渉フィルタであって、
前記干渉フィルタは交互に積層された複数の高屈折率層と複数の低屈折率層とを含み、
前記高屈折率層はTa2O5またはNb2O5からなっていて少なくともその主要領域は実質的に非晶質であり、
前記低屈折率層は非晶質SiO2からなることを特徴とする干渉フィルタ。 - 前記干渉フィルタに含まれる残留応力は50MPa以下の引っ張り応力または80MPa以下の圧縮応力であることを特徴とする請求項1に記載の干渉フィルタ。
- 前記干渉フィルタに含まれる前記高屈折率層と前記低屈折率層の合計層数が15以上で150以下の範囲内にあることを特徴とする請求項1または2に記載の干渉フィルタ。
- 半導体受光素子と、その受光素子の半導体基板を下地として気相堆積法によって形成された干渉フィルタとを含み、
前記干渉フィルタは交互に積層された複数の高屈折率層と複数の低屈折率層とを含み、
前記高屈折率層はTa2O5またはNb2O5からなっていて少なくともその主要領域は実質的に非晶質であり、
前記低屈折率層は非晶質SiO2からなることを特徴とする半導体受光装置。 - 前記干渉フィルタに含まれる残留応力は50MPa以下の引っ張り応力または80MPa以下の圧縮応力であることを特徴とする請求項4に記載の半導体受光装置。
- 前記干渉フィルタに含まれる前記高屈折率層と前記低屈折率層の合計層数が15以上で150以下の範囲内にあることを特徴とする請求項4または5に記載の半導体受光装置。
- 請求項4から6のいずれかに記載された半導体受光装置がろう材によって装着された結果物として含まれている電子機器であって、前記ろう材が300℃以上の融点を有することを特徴とする電子機器。
- 前記ろう材は350℃以上の融点を有することを特徴とする請求項7に記載の電子機器。
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Cited By (2)
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JP2006145290A (ja) * | 2004-11-17 | 2006-06-08 | Chino Corp | 標準放射温度計 |
JP2015192006A (ja) * | 2014-03-28 | 2015-11-02 | セイコーエプソン株式会社 | 半導体ウェハー、受光センサー製造方法及び受光センサー |
-
2002
- 2002-08-30 JP JP2002254149A patent/JP2004093850A/ja active Pending
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