JP2004093389A - ガスセンサ素子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基板2とその表面の少なくとも一部に形成された絶縁層3と絶縁層3表面に形成された還元性ガス感応部4とを備え、該感応部4は絶縁層3表面に形成された感応層41と感応層41に接するように絶縁層3表面に形成された電極42とを具備し、感応層41は、絶縁層3表面に位置し且つ酸化スズを主成分とする下層411と、下層411上面に位置し、Pt等を含有する上層412とを有し、電極42は絶縁層表面に形成され、Ti、Ta、Ta2O5のうちの少なくとも1種を主成分とする下層421と、下層421上面に位置し、且つPt等を主成分とする上層422とを有し、感応層の層厚xと上記電極の層厚yとの比(x/y)は1.0〜5.0であることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガスセンサ素子に関する。更に詳しくは、被測定雰囲気に含まれる被検知ガスである還元性ガスの検知を行うことができ、還元性ガス感応部における感応層と電極との層厚比を最適化することにより、高い選択性を示すことができるガスセンサ素子に関する。
本発明のガスセンサ素子は、例えば、一酸化炭素ガス、炭化水素系ガス(LPG、都市ガス、天然ガス、メタンガス、ハロゲン化炭化水素系ガス等)、アルコール系ガス、アルデヒド系ガス、水素ガス、硫化水素ガス等の還元性ガスの検知及び濃度測定に好適である。
【0002】
【従来の技術】
従来より、マイクロマシニング技術を用い、基板に空間部を設け、少なくともその空間部上に絶縁層を配し、この絶縁層上に酸化スズを主成分とする感応層を形成し、基板と感応層とを熱的及び電気的に隔離したガスセンサ素子が知られている。このようなガスセンサ素子では、感応層及び電極の層厚、更に感応層の微細構造がその検知性能向上にとって重要となる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
感応層及び電極の層厚に関しては、特開平7−198646号公報、特開平11−183420号公報及び特開平9−318578号公報に開示されている。しかし、これらの公報では、被検知ガスとして還元性ガスを検知するガスセンサ素子における検知性能(感度、選択性等)向上の観点で、感応層と電極との層厚比について何ら検討されていない。
【0004】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、感応層及び電極の層厚の関係を最適化することによって、還元性ガスに対し優れた検知性能を有するガスセンサ素子を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基板と、該基板の表面の少なくとも一部に形成された絶縁層と、該絶縁層表面の少なくとも一部に形成された還元性ガス感応部とを備えるガスセンサ素子であって、上記還元性ガス感応部は、上記絶縁層表面に形成された感応層と、該感応層に接するように絶縁層表面に形成された電極とを具備し、上記感応層は、上記絶縁層表面に位置し且つ酸化スズを主成分とする下層感応層と、該下層感応層上面に位置し且つRu、Rh、Pd、Ag、Os、Ir及びPtのうちの少なくとも1種を含有する上層感応層とを有し、上記電極は、上記絶縁層表面に位置し且つTi、Ta、Ta2O5のうちの少なくとも1種を主成分とする下層と、該下層上面に位置し且つPt、Au、Alのうちの少なくとも1種を主成分とする上層とを有し、上記感応層の層厚xと上記電極の層厚yとの比(x/y)は、1.0〜5.0であることを特徴とする。
また、上記下層感応層の主構造が、柱状の酸化スズ結晶集合体であるものとすることができる。
更に、上記基板は空間部を有し、上記絶縁層は少なくとも該空間部上に位置し且つ上記基板により支持され、上記絶縁層内部の該空間部上に発熱体が形成されてなるガスセンサ素子であって、上記還元性ガス感応部は上記発熱体上に形成されたものとすることができる。
【0006】
【発明の効果】
本発明は、感応層と電極との層厚比を上記所定の値としたので、還元性ガスに対する選択性に優れたガスセンサ素子を提供することができる。
また、下層感応層の微細構造を柱状の酸化スズ結晶集合体からなるものとすることで、還元性ガスに対する選択性がより高いガスセンサ素子を得ることができる。
更に、基板が空間部を有し、絶縁層内部に発熱体が形成され、更に空間部、発熱体、還元性ガス感応部が所定の位置関係を有する構造とすることで、発熱体から発せられた熱を還元性ガス感応部に効率よく伝達することができ、これにより、還元性ガス感応部の正確な温度制御を行うことができるガスセンサ素子を得ることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のガスセンサ素子は、基板と、この基板の表面の少なくとも一部に形成された絶縁層と、この絶縁層表面に形成され且つ被検知ガスとの接触により出力信号に変化を生じる還元性ガス感応部とを備えるものである。
【0008】
[1]基板
上記「基板」を構成する材料は特に限定されないが、通常、半導体材料が用いられる。中でも、シリコンが多用される。この基板の平面形状は特に限定されないが、例えば、矩形又は円形等とすることができる。また、その大きさも限定はされないが、縦0.1mm〜10mm、横0.1mm〜10mmであることが好ましい。また、その基板の厚さも特に限定されないが400〜500μmであることが好ましい。
【0009】
また、上記基板は、空間部を備えることができる。上記「空間部」は、基板の一部が欠損した部分である。この欠損として、例えば、基板の表裏両面に開口して貫通する空洞、基板の表裏面の一方にのみ開口された凹部等を挙げることができる。
【0010】
この基板開口部の開口形状及び内部形状等は特に限定されない。但し、通常、開口形状は単純な形状であり、例えば、矩形、円形等であることが好ましい。また、この空間部の大きさも特に限定されないが、通常、空間部が基板の表裏両面に開口して貫通する空洞の場合、2つの基板開口部のうちの大きい開口部の開口面積、或いは、空間部が凹部の場合、基板開口部の開口面積は0.01〜4mm2、特に0.25〜2mm2が好ましい。空間部の数は特に限定されないが、1〜8個形成することができ、通常2〜4個である。
【0011】
また、空間部の形成方法は特に限定されないが、基板の一部をエッチングにより除去することで形成することができる。この際に用いるエッチングの方法は特に限定されず、ウェットエッチング法及びドライエッチング法(各々、異方性エッチング及び等方性エッチングを含む)等いずれを用いても良い。なかでも、上述した空洞を形成する場合には、異方性エッチング液を用いたウェットエッチング法が一般的に用いられる。
【0012】
[2]絶縁層
上記「絶縁層」は、後述する感応部の電極を基板から電気的に絶縁する層である。この絶縁層を形成する場所は、基板の表面であれば特に限定されず、用途、設計に合わせて必要な場所に形成しても良いが、基板に空間部を有するときは、通常、少なくとも空間部上に位置し、且つ、基板により支持されるように形成する。
上記「空間部上」とは、基板の表裏両面に開口して貫通する空洞の場合では、少なくともそのうちの一方の基板開口部に対応する領域の真上の一部又は全部、好ましくは全部に絶縁層が形成されているという意味である。また、基板の表裏面の一方のみ開口された凹部等の場合では、基板開口部に対応する領域の真上の一部又は全部、好ましくは全部に絶縁層が形成されているという意味である。
また、上記「支持される」とは、絶縁層が空間部上に位置するように基板表面によって支えられるように絶縁層を形成するという意味である。
この絶縁層は、絶縁性を有すればどのような材料から構成されても良く、特に限定はされないが、例えば、SiO2、Si3N4及びSiOxNy等のケイ素化合物等から構成することができる。また、絶縁層の形状及び厚さ等は特に限定されず、また、単層であっても複層であっても良い。
【0013】
この絶縁層の形成方法は特に限定されないが、例えば、熱酸化法等により基板の表面を改質して得ることができる。また、基板の表面に絶縁層となる成分を付着堆積(蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、気相成長法等により行うことができる)させて得ることができる。その他、基板の表面に予め形成した絶縁層を貼り付けて得ることも可能である。
【0014】
[3]還元性ガス感応部
上記「還元性ガス感応部」(以下、単に「感応部」とも言う。)は、被検知ガスとの接触により出力信号に変化を生じるものである。この感応部は、絶縁層表面に形成された「電極」と、この電極と接するように該絶縁層表面に形成された「感応層」とを備える。感応部の形成位置は上記絶縁層表面であれば特に限定されないが、絶縁層内部に後述する発熱体が形成されている場合、この発熱体上に形成されていることが好ましい。
上記「発熱体上」とは、発熱体の上方に間接的に位置しているという意味であり、即ち、絶縁層表面のうち発熱体の真上に位置する部分に少なくともこの感応層の一部が設けられているという意味である。このとき、通常、感応部の全部が発熱体の真上に位置していることが好ましい。
また、この電極及び感応層の位置関係において、電極は感応層に接するように形成されていれば特に限定されないが、絶縁層表面に電極が形成され、この電極の少なくとも上面に感応層が接するように形成されていることが好ましい。ここで、上面とは、絶縁層に接している面と対向している位置にある面である。
また、上記「電極」は、上記感応層に電圧を印加し、また、出力信号を取り出すためのものであり、一対の電極が上記感応層に接して形成されている。
(1)感応層
上記「感応層」は、酸化スズを主成分とする「下層感応層」と、上記元素を含有する「上層感応層」とを備える。
上記下層感応層は、被検知ガスとの接触時と非接触との間で抵抗値に変化を生じる層であり、感応部の出力信号の変化の原因となるものである。この下層感応層は単層であっても、複層であっても良いが、通常は、単層である。また、この下層感応層は、酸化スズを主成分とするものである。ここで上記「主成分」とは、通常、下層感応層の全体の質量を100質量%とした場合に、90質量%以上(100質量%の場合も含む。)であることを意味する。尚、本明細書において、上記「酸化スズ」とは、SnO2−X(0≦X<2)のことをいう。下層感応層中の酸化スズの含有量が90質量%未満となると、ガスセンサ素子の感度が十分に得られ難くなる傾向にあり好ましくない。
【0015】
この下層感応層を構成する酸化スズの形態は、柱状の結晶集合体を主構造とするものである。これにより、還元性ガスに対する感度を向上させることができる。
上記「柱状」とは、図4、図6及び図7に示されるような形状の結晶集合体が絶縁層表面に形成されているものであり、結晶集合体におけるアスペクト比が4〜40、好ましくは10〜40であり、絶縁層表面と結晶集合体によって構成される角度c(図7参照)が60〜90°であるものをいう。この柱状結晶集合体は、下層感応層断面を透過型電子顕微鏡において50万倍の倍率で観察したときに確認することができる。
上記「主構造」とは、下層感応層に含有される酸化スズの全質量を100質量%とした場合、通常、この柱状の酸化スズ結晶集合体の含有量が95質量%以上(100質量%も含む。)という意味である。
【0016】
上記上層感応層は、還元性ガスの酸化を促進するための触媒層として機能するものであり、この上層感応層の材質としてRu、Rh、Pd、Ag、Os、Ir及びPt等が挙げられる。これらは1種類のみを用いても良いし2種類以上併用しても良い。また、上層感応層は、単層であっても複層であっても良いが、単層であることが好ましい。上層感応層が単層の場合、上層感応層の材質は、上記材質のうちのPt及び/又はPdが好ましい。また、2種類以上含有する場合、Pt及びPdのうちの少なくとも1種を主成分とすることが好ましい。
この主成分とは、上層感応層の全質量を100質量%とした場合、Pt及びPdのうちのいずれか一方が含有されているとき、Pt又はPdが90質量%以上、好ましくは99質量%以上(100質量%の場合も含む。)含有されているという意味であり、また、Pt及びPdの両方が含有されている場合、Pt及びPd含有量の合計が90質量%以上、好ましくは99質量%以上(100質量%の場合も含む。)という意味である。
【0017】
また、上層感応層及び下層感応層を備える感応層として、図3に示されるように連続した膜を使用しても良いし、図5及び図6のように不連続(海島構造)の膜を用いても良い。また、感応層41が不連続の膜である場合、通常、図7に示されるように島413に形成されている上層感応層412を構成する粒子は不連続になっているが、連続的な上層感応層412を形成することもできる。
また、下層感応層411が連続した膜の場合、図4に示されるように、上層感応層412は連続した膜になっている。更に、上層感応層412及び下層感応層411が連続した膜の場合、感応層41の平面形状は、角部が面取りされた四辺形(図3参照)、略円形又は略楕円形等であることが好ましい。
また、この構成を有する感応層は、通常、還元性ガスを検知するものとして用いることができる。
【0018】
上層感応層及び下層感応層を備える感応層は、絶縁層表面に下層感応層となる成分を付着堆積(蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、気相成長法等により行うことができる)させ、その後、下層感応層の表面に上層感応層となる成分を付着堆積(蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、気相成長法等により行うことができる)させ、次いで、不要な部分をエッチングすることにより得ることができる。
また、スパッタ法により下層感応層を形成する場合、基板を200℃以上に加熱した状態でスパッタすることが好ましい。
【0019】
(2)電極
上記電極は、絶縁層表面に形成された「下層」(以下、「下層電極」とも言う。)と、この下層電極の上面に形成された「上層」(以下、「上層電極」とも言う。)とを有する。ここで、上記「上面」とは、下層電極において絶縁層表面に接している面と対向している位置にある面をいう。
上記下層電極は、電圧を印加し、また、出力信号を取り出す電極として機能する他に、上層電極と絶縁層との接着性を向上させる機能をも有する。この下層電極として使用する材料としてTi、Ta、Ta2O5のうちの少なくとも1種を主成分とするものが挙げられ、これらのうちTiが好ましい。上記「主成分」とは、通常、下層電極の全質量を100質量%とした場合、Ti、Ta、Ta2O5のうちの少なくとも1種が95質量%以上(100質量%の場合も含む。)であることを意味する。
【0020】
上記上層電極の材質は、Pt、Au、Al等を主成分とするものであり、これらのうちPtを主成分とすることが好ましい。また、これらは1種のみを用いても良いし2種以上を併用しても良い。上記「主成分」とは、通常、上層電極の全質量を100質量%とした場合、Pt、Au、Alのうちの少なくとも1種が95質量%以上(100質量%の場合も含む。)であることを意味する。
更に、電極の形成方法は特に限定されないが、通常、所定の材料を付着堆積(蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、気相成長法等により行うことができる)により下層電極を形成し、その後所定の材料を付着堆積(蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、気相成長法等により行うことができる)により上層電極を形成してエッチングすることにより得ることができる。
【0021】
(3)電極の層厚と感応層の層厚との関係
上記感応層の層厚(上層感応層+下層感応層)をx、上記電極(上層電極+下層電極)の層厚をyとすると(図2参照)、その層厚比(x/y)は、1.0〜5.0、好ましくは1.3〜5.0、より好ましくは1.8〜4.5である。層厚比(x/y)が1.0未満の場合、感応層の下面に形成された電極によって感応層が分断されてしまうのでガス感度が低下し、また、5.0を超えると、被検知ガス成分が感応層中に十分拡散できなくなるのでガス感度が低下するからである。
【0022】
[4]発熱体
また、本発明のガスセンサ素子は、絶縁層内部に発熱体を備えることができる。上記「発熱体」は、電圧の印加により発熱し、昇温するものであり、この発熱体が発熱することにより、上記感応部を活性化させ、測定を可能としている。
また、通常、この発熱体には、外部回路からの電圧を伝えるためのリード部が接続されている。
【0023】
更に、発熱体の位置は、上記絶縁層内部であれば特に限定されないが、基板に空間部が形成されている場合、空間部上に形成されていることが好ましい。発熱体が空間部上に位置することにより、発熱体からの熱が基板を介して逃げることを防止し、感応部の温度をより精度良くコントロールでき、ガスセンサ素子の感度を向上させることができるからである。上記「空間部上」とは、間接的に空間部の上方に位置するという意味であり、即ち、空間部が、基板の表裏両面に開口して貫通する空洞の場合、一方の基板開口部に対応する部分の真上に少なくとも発熱体の一部、好ましくは全部が位置し、また、基板の表裏面の一方のみ開口された凹部等の場合、基板開口部に対応する部分の真上に少なくとも発熱体の一部、好ましくは全部が位置するという意味である。
【0024】
発熱体を構成する材料は導電性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、白金単体、白金合金、ニッケル合金、クロム合金等を用いることができる。これらは、1種のみを用いても良いし、2種類以上併用しても良い。また、中でも、抵抗温度係数が大きく、長期の繰り返し使用においても抵抗値及び抵抗温度係数が変化し難いことから白金単体及びニッケルクロム合金のうちの少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0025】
この発熱体の形成方法は特に限定されないが、所定の材料を絶縁層表面に付着堆積(蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、気相成長法等により行うことができる)させ、その後、前述の空間部の形成方法にて例示したものと同様な各種のエッチング方法により、不必要な部位を除去し、その後、更にその表面を付着堆積(蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、気相成長法等により行うことができる)によって他の絶縁層で覆うことで、絶縁層内部に発熱体を形成することができる。
【0026】
[5]本発明のガスセンサの性能
本発明のガスセンサ素子は、上層感応層及び下層感応層を有する感応層におけるCOの感度が2.2以上、好ましくは3以上、より好ましくは3.5以上であることが好ましい。尚、このCOの感度は、CO濃度が0ppmの場合の抵抗値RairとCO濃度が150ppmの場合の抵抗値Rgの比(Rair/Rg)である。
【0027】
【実施例】
以下、本発明を具体化した実施例について説明する。
[1]感応層の厚さを変化させた場合
〔1〕ガスセンサ素子の構成
ガスセンサ素子(表1の比較例1、2、実施例1〜3)の構成について説明する。尚、ガスセンサ素子の寸法(縦×横)は3mm×5mmである。
このガスセンサ素子は、図1、図2及び図3に示されるように、シリコン基板2(以下、単に、「基板2」とも言う。)の上下面に絶縁層3が形成されている。絶縁層3は、酸化ケイ素で構成されている絶縁層31と、絶縁層31の外面に積層され、窒化ケイ素で構成された絶縁層32、33とからなる。
また、この基板2の絶縁層32が形成されている側の面で開口するように空間部21が形成されている。また、この空間部21における開口部の面積は1mm2である。絶縁層33の内部には、空間部21上に発熱体5が形成されている。尚、図示されていないが、この発熱体5には、給電するための発熱体用リード部が接続されており、この発熱体用リード部は、外部回路を接続するためのコンタクト部を有している。この発熱体5及び発熱体用リード部は、Pt層とTi層によって構成されている。
【0028】
絶縁層33の表面には、発熱体5上に位置するように一対の電極42が形成されている。また、絶縁層33の表面には、感応層41が発熱体5上に位置するように形成されている。また、感応層41が電極42の上面に接するように絶縁層33表面に形成されている。尚、この感応層41及び電極42が感応部(還元性ガス感応部)4として機能する。また、感応部4は、CO等の還元性ガスを測定するためのものである。尚、図示されていないが、この一対の電極42には、電極用リード部が接続され、この電極用リード部は外部回路を接続するための電極用コンタクト部を有している。
【0029】
電極42は、絶縁層33に形成され且つTiにより構成される下層電極421と、この下層電極421の上面に形成され且つPtにより構成される上層電極422とを有する。ここで、下層電極421の層厚は、20nm、上層電極422の層厚は、40nmである。
【0030】
感応層41は、酸化スズを主成分とする下層感応層411(下層の全質量を100質量%とした場合、99質量%以上)と、Pd(表1の実施例3以外)又はPt(表1の実施例3)からなる上層感応層412とからなる。この下層感応層411は、図4に示されるように、柱状の酸化スズ結晶集合体4111が、連続的に形成された薄膜であり、また、この下層感応層411の表面には、Pd又はPtからなる連続した上層感応層412が形成されている。
尚、この柱状の酸化スズ結晶集合体4111の存在は、感応層41の断面を透過型電子顕微鏡で50万倍の倍率で観察したときに確認される。また、この柱状結晶集合体のアスペクト比は20、絶縁層表面と柱状結晶集合体とにより構成される角度cは80°である。更に、感応層41の平面形状は、図3に示されるような角部がR形状である四辺形である。
【0031】
〔2〕製造方法
以下の工程により実施例のガスセンサ素子を製造した。
(1)シリコン板の洗浄
まず、洗浄液中に、基板2となるシリコン板を浸し、洗浄処理を行った。
(2)絶縁層31の形成
上記シリコン板を熱処理炉に入れ、熱酸化処理にて膜厚が100nmの絶縁層31となる酸化ケイ素膜を上記シリコン板(以下、基板2とする。)の全面に形成した。
【0032】
(3)絶縁層32、33及び発熱体5(発熱体用リード部を含む)の形成
一方の面に絶縁層32となる窒化ケイ素膜、及び、他方の面に絶縁層33のうちの下半分の部分である下部絶縁層331(図1参照)となる窒化ケイ素膜(膜厚200nm)をプラズマCVDにて、SiH4,NH3をソースガスとして形成した。その後、この下部絶縁層331表面にDCスパッタ装置を用いて、発熱体5となるTi層(膜厚25nm)を形成後、Pt層(膜厚250nm)を形成した。スパッタ後、フォトリソグラフィによりレジストのパターニングを行い、エッチング処理で発熱体5のパターンを形成した。次いで、絶縁層33のうちの上半分の部分である上部絶縁層332(図1参照)を上述した方法と同様にして形成した。このようにして、絶縁層32、33及び絶縁層33内部に配置された発熱体5を形成した。
【0033】
(4)発熱体用コンタクト部の形成
次いで、ドライエッチング法で絶縁層33のエッチングを行い、発熱体用コンタクト部となる部分上に穴をあけて発熱体用コンタクト部となる部分を露出させた。その後、DCスパッタ装置を用いて、Ti層(膜厚20nm)を形成後、Pt層(膜厚40nm)を形成し、スパッタ後、フォトリソグラフィによりレジストのパターニングを行うことによって、発熱体用コンタクト部を形成した。
(5)電極42(電極用リード部及び電極用コンタクト部を含む。)の形成
DCスパッタ装置を用いて、下層電極421となるTi層(膜厚20nm)を形成後、上層電極422となるPt層(膜厚40nm)を形成し、スパッタ後、フォトリソグラフィによりレジストのパターニングを行うことによって、上層電極422及び下層電極421を形成した。
【0034】
(7)コンタクトパッドの形成
その後、上記工程を終えた基板にDCスパッタ装置を用いて、Cr層(膜厚50nm)を形成後、その表面にAu層(膜厚1μm)を形成した。スパッタ後、フォトリソグラフィによりレジストのパターニングを行い、エッチング処理で電極用及び発熱体用コンタクト部上に各コンタクトパッドを形成した。
【0035】
(8)空間部21の形成
次いで、TMAH溶液中に上記工程を終えた基板を浸し、シリコンの異方性エッチングを行い、発熱体と対向するように、且つ絶縁層32が形成されている面が開口するように空間部21を形成した。
(9)感応層の形成
その後、絶縁層33表面に、感応層41を次の方法で形成した。即ち、RFスパッタ装置を用いて、発熱体5及び空間部21と対向するように下層感応層411となる酸化スズ層が下記表1の実施例1〜4及び比較例1,2の層厚となるように形成した。このとき、スパッタは基板2を200℃以上に加熱した状態で行い、感応層形成時間を変化させることによって層厚を変化させた。
その後、酸化スズ層表面に、下記表1の層厚となるように上層感応層412となるPd層又はPt層を形成した。このとき、実施例3は、上層感応層412の材質としてPtを使用し、それ以外はPdを使用した(下記表1の備考参照。)。また、下記表1に感応層41の層厚xと電極の層厚yとの比(x/y)を示す。
尚、下層感応層411及び上層感応層412の層厚は、形状膜厚測定法にて測定を行った場合における層厚である。このようにして、比較例1、2及び実施例1〜3のガスセンサ素子1を得た。
【0036】
【表1】
【0037】
[2]電極の厚さを変化させた場合
形状膜厚測定法で測定した場合における感応層の上層感応層412の層厚を4nm、下層感応層411を200nmとし、電極の層厚が以下の表2の比較例3及び実施例4〜6に示されるものであるガスセンサ素子をそれぞれ形成した。以下の表2に感応層41の層厚xと電極の層厚yとの比(x/y)を示す。尚、それ以外の構成及び製造方法は実施例1〜3及び比較例1、2と同じである。
【0038】
【表2】
【0039】
[3]感応層の断面の観察
上記ガスセンサ素子(実施例1〜6、比較例1〜3)において、感応層41の断面形状を透過型電子顕微鏡で50万倍の倍率で観察し、その撮影を行った。その結果、全てのガスセンサ素子の下層感応層411は、酸化スズの柱状結晶集合体の連続膜であり、また上層感応層412も連続的なPd層(実施例3以外)又はPt層(実施例3)であることが確認された。
【0040】
[4]性能評価
ベースガスとして、20.9%のO2と残部がN2からなるガスに、相対湿度が40%になるように水蒸気を含有させたものを使用した。また、還元性ガスとしてCOを選択し、各実施例、比較例のガスセンサ素子において、ベースガスにガスセンサ素子を5分間保持した場合の抵抗値Rair及び、ベースガスにCO濃度150ppmを添加したガスに上記ガスセンサ素子を5分間保持した場合の抵抗値Rgを測定し、その比(Rair/Rg)により感度を評価した。その結果のうち感応層の厚さを変化させたもの(即ち、表1の実施例1〜3、比較例1,2)を上記表1に示し、更に、結果のうち電極の層厚を変化させたもの(即ち、表2の実施例4〜6、比較例3,4)を上記表2に示す。また、表1及び表2における層厚比(x/y)とCOの感度の関係を示したグラフを図8に示す。
【0041】
[5]実施例の効果
表1及び表2に示されるように、層厚比(x/y)が1.0未満、或いは5.0を超える場合(比較例1〜3)、CO感度は、1.5〜2.0であり、還元性ガスに対する感度が低い。
これに対し、表1及び表2によれば、層厚比(x/y)が1.33〜5.00の場合(実施例1〜6)、COの感度が2.50〜4.00である。これによりCOの濃度を測定するセンサ素子としての性能が優れていることが判る。
【0042】
また、図8に示されるように、実施例1〜6、比較例1〜3のガスセンサ素子のCOの感度は、層厚比(x/y)が2.08及び4.08においてピークを示す予期せぬ挙動を示した。
また、図8によれば、層厚比(x/y)が1.00〜5.00の場合、CO感度が2.50〜4.00とすることができる。
更に、層厚比(x/y)が1.33〜2.39又は3.06〜4.69の場合、CO感度が3.00〜4.00とすることができる。
また、層厚比(x/y)が2.06〜2.23又は3.57〜4.38の場合、CO感度が3.50〜4.00とすることができる。
【0043】
また、実施例1〜6のガスセンサ素子によれば、図4、図6及び図7に示されるような酸化スズの柱状結晶集合体の連続膜からなる下層感応層と、連続膜からなる上層感応層とにより構成される感応層41であって且つ層厚比(x/y)が1.00〜5.00の場合、図8及び表1、表2に示されるようにCOの感度が2.50〜4.00である。これらの結果から、下層感応層が酸化スズの柱状結晶集合体の連続膜からなる場合、更に優れた感度を有する還元性ガス用ガスセンサ素子が得られることが判る。
【0044】
尚、本発明においては、上記の具体的な実施例に記載されたものに限らず、目的及び用途に応じて、本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
例えば、本実施例では、感応部を1つだけ設けているが、感応部を複数設けても良い。また、絶縁層表面に還元性ガス感応部だけでなく、酸化性ガスを測定するための酸化性ガス感応部を更に設けても良い。
更に、本実施例において、上記感応層41の平面形状は、角部がアール形状となっているものであるが、応力が集中しない形状であれば、他の形状、例えば、角部がテーパー形状の四辺形、略円形、略楕円形、略卵形、略ひょうたん形、又は五角形以上の多角形等とすることができる。
また、本実施例のガスセンサ素子は、還元性ガスの感度の性能評価としてCOを用いたが、他の還元性ガス(例えば、炭化水素系ガス(LPG、都市ガス、天然ガス、メタン、ハロゲン化炭化水素等)アルコールガス、アルデヒドガス、水素ガス、硫化水素ガス等)を検知する場合であっても同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例のガスセンサ素子の断面を示す説明図である。
【図2】本実施例のガスセンサ素子における感応部の断面を示す説明図である。
【図3】本実施例のガスセンサ素子における感応層の平面形状を示す説明図である。
【図4】本実施例のガスセンサ素子における感応層の断面を示す説明図である。
【図5】本発明のガスセンサ素子における感応層の他の態様を示す説明図である。
【図6】図5のА−Aで切断したものを示す模式図である。
【図7】図6を拡大した模式図である。
【図8】本実施例における感応層の層厚と電極の層厚との比と、CO感度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1;ガスセンサ素子、2;基板、21;空間部、3,31,32,33;絶縁層、4;感応部(還元性ガス感応部)、41;感応層、411;下層感応層、4111;酸化スズ結集合体、412上層感応層、413;島、42;電極、421;下層電極、422;上層電極、5;発熱体。
Claims (3)
- 基板と、該基板の表面の少なくとも一部に形成された絶縁層と、該絶縁層表面の少なくとも一部に形成された還元性ガス感応部とを備えるガスセンサ素子であって、
上記還元性ガス感応部は、上記絶縁層表面に形成された感応層と、該感応層に接するように上記絶縁層表面に形成された電極とを具備し、
上記感応層は、上記絶縁層表面に位置し且つ酸化スズを主成分とする下層感応層と、該下層感応層上面に位置し且つRu、Rh、Pd、Ag、Os、Ir及びPtのうちの少なくとも1種を含有する上層感応層とを有し、
上記電極は、上記絶縁層表面に位置し且つTi、Ta、Ta2O5のうちの少なくとも1種を主成分とする下層と、該下層上面に位置し且つPt、Au、Alのうちの少なくとも1種を主成分とする上層とを有し、
上記感応層の層厚xと上記電極の層厚yとの比(x/y)は、1.0〜5.0であることを特徴とするガスセンサ素子。 - 上記下層感応層の主構造が、柱状の酸化スズ結晶集合体である請求項1に記載のガスセンサ素子。
- 上記基板は空間部を有し、上記絶縁層は少なくとも該空間部上に位置し且つ上記基板により支持され、上記絶縁層内部の該空間部上に発熱体が形成されてなるガスセンサ素子であって、
上記還元性ガス感応部は上記発熱体上に形成されたものである請求項1又は2に記載のガスセンサ素子。
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- 2002-08-30 JP JP2002255581A patent/JP2004093389A/ja active Pending
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