JP2004092888A - 転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】輸送時などの振動によって微小振動したさいにも、フレッチング摩耗の発生を防止しうる転がり軸受を提供する。
【解決手段】内外両輪2、3を、C0.90〜1.30wt%、Si0.15〜1.20wt%、Cr0.90〜1.70wt%、Mn0.80wt%以下、Mo0.05〜0.30wt%を含み、残部Feおよび不可避不純物からなる高炭素クロム鋼により形成する。内外両輪2、3の軌道面2a、3aの表面硬さをHv720以上とし、表面粗さをRa0.015μm以下とする。玉5を、C0.60〜0.75wt%、Mn0.30〜0.80wt%、Cr10.5〜13.5wt%、Mo0.05〜0.30wt%、Ni0.60wt%以下を含み、残部Feおよび不可避不純物からなるマルテンサイト系ステンレス鋼により形成する。玉5の転動面の表面硬さをHv890以上とし、表面粗さをRa0.003μm以下とする。
【選択図】 図1
【解決手段】内外両輪2、3を、C0.90〜1.30wt%、Si0.15〜1.20wt%、Cr0.90〜1.70wt%、Mn0.80wt%以下、Mo0.05〜0.30wt%を含み、残部Feおよび不可避不純物からなる高炭素クロム鋼により形成する。内外両輪2、3の軌道面2a、3aの表面硬さをHv720以上とし、表面粗さをRa0.015μm以下とする。玉5を、C0.60〜0.75wt%、Mn0.30〜0.80wt%、Cr10.5〜13.5wt%、Mo0.05〜0.30wt%、Ni0.60wt%以下を含み、残部Feおよび不可避不純物からなるマルテンサイト系ステンレス鋼により形成する。玉5の転動面の表面硬さをHv890以上とし、表面粗さをRa0.003μm以下とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、たとえばハードディスクドライブ装置(HDD)、ビデオテープレコーダ、ディジタルオーディオテープレコーダなどのOA機器やAV機器に組み込まれ、高速で回転する回転体を支持する転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
たとえばパーソナルコンピュータのHDDにおいては、スピンドルが玉軸受により回転自在に支持されたスピンドルモータによって、スピンドルに固定状に設けられたハードディスクを高速回転させるようになっている。パーソナルコンピュータをはじめとするOA機器やAV機器では高度な静粛性が要求されるため、スピンドルモータに使用される玉軸受に要求される音響性能もかなり厳しいものである。
【0003】
従来、この種の玉軸受に用いられる軌道輪としては、残留オーステナイト量が6vol%以下となされたものが提案され(たとえば、特許文献1参照。)、同じく玉としても、残留オーステナイト量が6vol%以下となされたものが提案されている(たとえば、特許文献2参照。)。これらの軌道輪および玉は、荷重や衝撃荷重を受けたさいに永久変形が生じることを防止し、これにより音響性能を向上させている。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−103241号公報
【0005】
【特許文献2】
特開平9−177789号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、HDDでは、記録密度の増大に伴って、磁気ヘッドのローディング機構がCSS(コンタクト・スタート・ストップ)方式からランプロードアンロード方式に移行しつつある。このため、HDDの輸送時などに外部振動が加わると、ハードディスクが微小振動し、その回転軸に繋がれたスピンドルモータにおける玉軸受の玉の転動面および軌道輪の軌道面にフレッチング摩耗が生じ、回転駆動時の騒音が大きくなることがある。
【0007】
すなわち、CSS方式であれば、スピンドルモータの停止時にも磁気ヘッドがハードディスクに接触しており、この接触によってハードディスクが固定されているため、輸送時などの振動によってもハードディスクが微小振動することはなく、玉の転動面および軌道輪の軌道面にフレッチング摩耗が生じることはなかった。
【0008】
これに対し、ランプロードアンロード方式では、スピンドルモータの停止時に、磁気ヘッドがハードディスクから離れてランプに収容されており、ハードディスクはフリーの状態となるため、上記のような輸送時などの振動によって微小振動し、玉軸受の玉の転動面および軌道輪の軌道面にフレッチング摩耗を生じるのである。特に、HDDのスピンドルモータに用いられる玉軸受においては、玉に発生するフレッチング摩耗が問題となりやすい。
【0009】
上述した2つの公報に記載された玉および軌道輪では、荷重や衝撃荷重を受けたさいに生じる永久変形に起因する音響性能の低下を防止することを目的としており、上述したようなフレッチング摩耗の発生を防止することができないという問題がある。
【0010】
この発明の目的は、上記問題を解決し、輸送時などの振動によって微小振動したさいにも、フレッチング摩耗の発生を防止しうる転がり軸受を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段と発明の効果】
本発明者等は、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、内輪、外輪および内外両輪間に介在させられる複数の転動体からなる転がり軸受において、内外両輪の軌道面および転動体の転動面のそれぞれの表面硬さならびに表面粗さがフレッチング摩耗の発生に影響を及ぼすことを見出した。
【0012】
この発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。
【0013】
請求項1の発明による転がり軸受は、
内輪、外輪および内外両輪間に介在させられる複数の転動体からなる転がり軸受において、
内外両輪が、C0.90〜1.30wt%、Si0.15〜1.20wt%、Cr0.90〜1.70wt%、Mn0.80wt%以下、Mo0.05〜0.30wt%を含み、残部Feおよび不可避不純物からなる高炭素クロム鋼により形成されており、内外両輪の軌道面の表面硬さがビッカース硬さで720以上となされるとともに前記軌道面の表面粗さが中心線平均粗さで0.015μm以下となされ、転動体が、C0.60〜0.75wt%、Mn0.30〜0.80wt%、Cr10.5〜13.5wt%、Mo0.05〜0.30wt%、Ni0.60wt%以下を含み、残部Feおよび不可避不純物からなるマルテンサイト系ステンレス鋼により形成されており、転動体の転動面の表面硬さがビッカース硬さで890以上となされるとともに前記転動面の表面粗さが中心線平均粗さで0.003μm以下となされているものである。
【0014】
請求項1の発明における内外両輪を形成する高炭素クロム鋼中の合金元素の限定理由は次のとおりである。
【0015】
C:0.90〜1.30wt%
Cは軸受としての強度を維持するために必須の元素であり、含有量が0.90wt%未満であると内外両輪の軌道面の表面硬さを所望の硬さにすることが困難であり、1.30wt%を越えると炭化物量が過多となって音響性能が低下するからである。
【0016】
Si:0.15〜1.20wt%
Siは脱酸剤として、また焼戻し軟化抵抗向上のために用いられるものであるが、含有量が0.15wt%未満であると脱酸効果が得られず、また焼戻し軟化抵抗向上効果が十分ではなく、1.20wt%を越えると残留オーステナイトが安定して分解しなくなるとともに、加工性が著しく低下するからである。
【0017】
Cr:0.90〜1.70wt%
Crは硬さを確保するためのものであるが、含有量が0.90wt%未満であると内外両輪の軌道面の表面硬さを所望の硬さにすることができず、1.70wt%を越えると炭化物量が過多となって音響性能が低下するからである。
【0018】
Mn:0.80wt%以下
Mnは鋼の焼入性を向上させるために添加されるが、含有量が0.80wt%を越えると残留オーステナイトが安定して分解しなくなるとともに、加工性が低下するからである。なお、Mnの含有量が0wt%ということはない。
【0019】
Mo:0.05〜0.30wt%
Moは鋼の焼入性を向上させるために添加されるが、含有量が0.05wt%未満であると焼入性向上効果が十分ではなく、0.30wt%を越えると被削性が低下するからである。
【0020】
請求項1の発明における転動体を形成するマルテンサイト系ステンレス鋼中の合金元素の限定理由は次のとおりである。
【0021】
C:0.60〜0.75wt%
Cは焼入、焼戻し後の硬さを得るために必須の元素であり、含有量が0.60wt%未満であると必要な硬さが得られず、0.75wt%を越えると一次炭化物が大きくなり、フレッチング摩耗の発生を抑制する効果が改善されなくなるとともに、音響特性が低下するからである。
【0022】
Mn:0.30〜0.80wt%
Mnは鋼の焼入性を向上させるために添加されるが、含有量が0.30wt%未満であると焼入性向上効果が得られず、0.80wt%を越えると残留オーステナイトが安定して分解しなくなるとともに、加工性が低下するからである。
【0023】
Cr:10.5〜13.5wt%
Crは鋼の焼入性を向上させて強度を増大させるために添加されるが、含有量が10.5wt%未満ではフレッチング摩耗の発生を抑制する効果が改善されず、13.5wt%を越えると一次炭化物が大きくなって音響性能が低下するからである。
【0024】
Mo:0.05〜0.30wt%
Moは鋼の焼入性を向上させるために添加されるが、含有量が0.05wt%未満であると焼入性向上効果が十分ではなく、0.30wt%を越えると被削性が低下するからである。
【0025】
Ni:0.60wt%以下
Niはマルテンサイト系ステンレス鋼の強度を向上させるために添加されるが、含有量が0.6wt%を越えると残留オーステナイト量が多くなって必要な硬さが得られなくなるからである。なお、Niの含有量が0wt%ということはない。
【0026】
請求項1の発明において、内外両輪の軌道面および転動体の転動面の表面硬さと、内外両輪の軌道面および転動体の転動面の表面粗さは、次の理由により決定されたものである。
【0027】
すなわち、フレッチング摩耗は、内外両輪と転動体とが接触した状態での微小すべりの繰り返しにより表面が摩耗する現象である。このようなフレッチング摩耗を抑制するには、表面における塑性変形を抑制することが効果的である。そこで、本発明者等は、表面の塑性変形難易度を表す物理量である表面硬さに着目して種々検討した結果、内外両輪の軌道面の表面硬さがビッカース硬さで720以上となされるとともに、転動体の転動面の表面硬さがビッカース硬さで890以上となされていると、表面のマクロ的な塑性変形、特に転動体の転動面のマクロ的塑性変形が抑制されることが判明した。
【0028】
ところが、これだけではフレッチング摩耗の発生を効果的に抑制することはできず、HDDのスピンドルモータの軸受に要求される高度な音響性能を満たすことが困難であることが分かり、さらに本発明者等が検討を重ねたところ、内外両輪の軌道面や転動体の転動面に存在する表面粗さを形成している微小な突起の塑性変形、すなわちミクロ的な塑性変形(歪み:10−6オーダー)がフレッチング摩耗の原因となり、ミクロ的塑性変形は表面硬さを大きくするだけでは抑制しえないことが判明した。すなわち、微小突起が塑性変形すると、繰り返しすべりにより微小突起の一部が欠落し、微小欠落片を噛み込んだ状態で繰り返しすべりが起きると、摩耗が促進されるとともに摩耗粉が酸化してフレッチング摩耗が発生するのである。そこで、材料性状のミクロ的塑性変形への影響を検討した結果、表面粗さが小さいほど上記微小突起の塑性変形が抑制されることが分かった。そして、内外両輪の軌道面の表面粗さが中心線平均粗さで0.015μm以下となされ、転動体の転動面の表面粗さが中心線平均粗さで0.003μm以下となされていると、微小突起が極めて小さくなりミクロ的塑性変形が抑制されることが判明した。
【0029】
したがって、内外両輪の軌道面の表面硬さおよび表面粗さと、転動体の転動面の表面硬さおよび表面粗さが、請求項1の発明のとおりであれば、表面におけるマクロ的およびミクロ的塑性変形がいずれも抑制され、フレッチング摩耗の発生を効果的に抑制することが可能になる。その結果、音響性能の低下を防止することが可能になる。
【0030】
請求項2の発明による転がり軸受は、請求項1の発明において、転動体が玉からなり、外輪外径が15mm以下、玉径が3mm以下となされているものである。
【0031】
HDDなどのスピンドルモータにおいては、請求項2の発明のような小型の転がり軸受が用いられる。また、請求項2の発明の転がり軸受は、軸受予圧25N以下、最大接触面圧130kgf/mm2以下で使用される。請求項2の発明の転がり軸受のように、小型で、かつ軸受予圧25N以下、最大接触面圧130kgf/mm2以下で発生し易い上述したようなフレッチング摩耗が、請求項1の発明の特徴を有していると、効果的に抑制される。これにより、HDDなどのスピンドルモータの転がり軸受において問題となるわずかなフレッチング摩耗による音響性能の低下を防止することができる。
【0032】
【発明の実施形態】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0033】
図1に示すように、この発明による転がり軸受(1)は、内輪(2)と、外輪(3)と、内外両輪(2)(3)間に介在させられかつ保持器(4)により保持された複数の玉(5)とを備えている。玉(5)の両側において、外輪(3)にシール(6)が取り付けられている。
【0034】
内外両輪(2)(3)の軌道面(2a)(3a)の表面硬さはビッカース硬さHvで720以上であり、内外両輪(2)(3)の軌道面(2a)(3a)の表面粗さは中心線平均粗さRaで0.015μm以下である。玉(5)の転動面の表面硬さはHvで890以上であり、玉(5)の転動面の表面粗さはRaで0.003μm以下である。転がり軸受(1)の外輪(3)の外径(D)は15mm以下、玉径(B)は3mm以下である。
【0035】
内外両輪(2)(3)は、次に述べる方法で製造される。すなわち、C0.90〜1.30wt%、Si0.15〜1.20wt%、Cr0.90〜1.70wt%、Mn0.80wt%以下、Mo0.05〜0.30wt%を含み、残部Feおよび不可避不純物からなる高炭素クロム鋼、たとえばJIS SUJ2を用いて完成品に近似した形状の半製品を形成し、この半製品に、たとえば焼入処理、サブゼロ処理および焼戻し処理をこの順序で施した後、研磨などの仕上げ処理を施して完成品とすることにより製造される。上記焼入処理などの熱処理は、以下のような条件で実施するのが好ましい。内外両輪(2)(3)の焼入処理は、840〜880℃で60〜90分間加熱した後急冷することにより行う。サブゼロ処理は、−60〜−80℃で45〜60分間冷却することにより行う。焼戻し処理は、220〜240℃で30〜90分間加熱することにより行う。
【0036】
玉(5)は、たとえば次に述べる方法で製造される。すなわち、C0.60〜0.75wt%、Mn0.30〜0.80wt%、Cr10.5〜13.5wt%、Mo0.05〜0.30wt%、Ni0.60wt%以下を含み、残部Feおよび不可避不純物からなるマルテンサイト系ステンレス鋼を用いて完成品に近似した形状の半製品を形成し、この半製品に、たとえば焼入処理、サブゼロ処理、焼戻し処理および表面硬化処理をこの順序で施した後、研磨などの仕上げ処理を施して完成品とすることにより製造される。上記焼入処理などの熱処理は、以下のような条件で実施するのが好ましい。玉(5)の焼入処理は、1020〜1060℃で10〜30分間加熱した後急冷することにより行う。サブゼロ処理は、−60〜−80℃で40〜60分間冷却することにより行う。焼戻し処理は、160〜180℃で100〜120分間加熱することにより行う。表面硬化処理は、タンブラー処理などにより行う。
【0037】
次に、この発明の具体的実施例を比較例とともに説明する。
【0038】
実施例1および比較例1〜3
まず、以下に述べるようにして、4つの軸受(1)を用意した。すなわち、JIS SUJ2を用いて内外両輪(2)(3)の完成品に近似した形状の半製品を形成し、この半製品に、870℃で60分間加熱した後急冷する焼入処理、−74℃で45分間冷却するサブゼロ処理、および240℃で60分間加熱する焼戻し処理をこの順序で施した後、研磨などの仕上げ処理を施し、内径5mm、幅4mmの内輪(2)と、外径13mm、幅4mmの外輪(3)を製造した(A)。また、C0.62wt%、Si0.33wt%、Mn0.68wt%、P0.019wt%、S0.006wt%、Cr12.85wt%、Mo0.06wt%を含み、残部Feおよび不可避不純物からなるマルテンサイト系ステンレス鋼を用いて内外両輪(2)(3)の完成品に近似した形状の半製品を形成し、この半製品に、1040℃で30分間加熱した後急冷する焼入処理、−70℃で20分間冷却するサブゼロ処理、および180℃で60分間加熱する焼戻し処理をこの順序で施した後、研磨などの仕上げ処理を施し、内径5mm、幅4mmの内輪(2)と、外径13mm、幅4mmの外輪(3)を製造した(B)。
【0039】
また、、C0.62wt%、Si0.33wt%、Mn0.68wt%、P0.019wt%、S0.006wt%、Cr12.85wt%、Mo0.06wt%を含み、残部Feおよび不可避不純物からなるマルテンサイト系ステンレス鋼を用いて玉(5)の完成品に近似した形状の半製品を形成し、この半製品に、1050℃で10分以上加熱した後急冷する焼入処理、−70℃で120分間冷却するサブゼロ処理、160℃で120分間加熱する焼戻し処理、およびタンブラー処理による表面硬化処理をこの順序で施した後、研磨などの仕上げ処理を施し、直径1.588mmの玉(5)を製造した(C)。さらに、JIS SUJ2を用いて玉(5)の完成品に近似した形状の半製品を形成し、この半製品に、860℃で10分以上加熱した後急冷する焼入処理、160℃で120分間加熱する焼戻し処理、およびタンブラー処理による表面硬化処理をこの順序で施した後、研磨などの仕上げ処理を施し、直径1.588mmの玉(5)を製造した(D)。
【0040】
ついで、内外両輪(2)(3)と10個の玉(5)を用いて軸受(1)を組み立て、各軸受(1)にリチウム石けんからなるグリースを封入した。これらの軸受(1)を表1に示す。また、各軸受(1)における内外両輪(2)(3)の軌道面(2a)(3a)の表面硬さ(Hv)および表面粗さ(Ra)と、玉(5)の転動面の表面硬さ(Hv)および表面粗さ(Ra)も表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
そして、これらの軸受(1)をHDD用スピンドルモータにおけるスピンドル(10)が固定状に設けられたモータベース(11)と、モータハブ(12)に組み込み、図2に示す装置を用いてフレッチング試験を施した。図2に示す試験装置は、モータベース(11)を固定状に支持する固定部(13)と、モータベース(11)のスピンドル(10)上に載せられかつ上端に外向きフランジ(14a)を有する軸状ばね押さえ(14)と、スピンドル(10)およびばね押さえ(14)の周囲に上下動自在に被せられかつ長さの中央部に外向きフランジ(15a)を有するカラー(15)と、ばね押さえ(14)の外向きフランジ(14a)とカラー(15)の外向きフランジ(15a)との間に装着され、かつカラー(15)を下方に付勢することにより、モータベース(11)のスピンドル(10)に対してモータハブ(12)を回転自在に支持する上下1対の軸受(1)に予圧を付与する圧縮コイルばね(16)とを備えている。モータハブ(12)の周囲には、一端部がコイルばね(17)を介して固定部(18)に取り付けられたワイヤ(19)が巻回されており、ワイヤ(19)の他端部を間欠的に引っ張ることにより、モータハブ(12)が所定周波数で軸線の周りに揺動させられるようになっている。
【0043】
このような試験装置を使用し、軸受(1)に14.7Nの予圧を付与し、モータハブ(12)の軸線周りの揺動角度0.5度、揺動周波数5Hz、揺動時間30分の条件で試験を行った。そして、試験の前後の軸受振動値を測定した。試験の前後の軸受振動値も表1に示す。なお、試験前の軸受振動値は、比較例1の軸受を基準とし、○は基準値の1.5倍未満であることを示し、×は同じく2倍以上であることを示す。試験後の軸受振動値は、試験前の振動値に対する試験後の振動値の変化率で表し、○は試験後の軸受振動値が試験前の1.5倍以下であることを示し、×は同じく2倍以上であることを示す。
【0044】
表1から明らかなように、実施例1の軸受では、軸受振動値の試験の前後での変化率は比較例1〜3に比べて小さくなっており、音響性能の低下が抑制されていることが分かる。したがって、実施例1の軸受では、フレッチング摩耗の発生も抑制されていると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による転がり軸受を示す縦断面図である。
【図2】振動試験装置を示す垂直断面図である。
【符号の説明】
(1):軸受
(2):内輪
(2a):軌道面
(3):外輪
(3a):軌道面
(5):玉
(B):玉径
(D):外径
【発明の属する技術分野】
この発明は、たとえばハードディスクドライブ装置(HDD)、ビデオテープレコーダ、ディジタルオーディオテープレコーダなどのOA機器やAV機器に組み込まれ、高速で回転する回転体を支持する転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
たとえばパーソナルコンピュータのHDDにおいては、スピンドルが玉軸受により回転自在に支持されたスピンドルモータによって、スピンドルに固定状に設けられたハードディスクを高速回転させるようになっている。パーソナルコンピュータをはじめとするOA機器やAV機器では高度な静粛性が要求されるため、スピンドルモータに使用される玉軸受に要求される音響性能もかなり厳しいものである。
【0003】
従来、この種の玉軸受に用いられる軌道輪としては、残留オーステナイト量が6vol%以下となされたものが提案され(たとえば、特許文献1参照。)、同じく玉としても、残留オーステナイト量が6vol%以下となされたものが提案されている(たとえば、特許文献2参照。)。これらの軌道輪および玉は、荷重や衝撃荷重を受けたさいに永久変形が生じることを防止し、これにより音響性能を向上させている。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−103241号公報
【0005】
【特許文献2】
特開平9−177789号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、HDDでは、記録密度の増大に伴って、磁気ヘッドのローディング機構がCSS(コンタクト・スタート・ストップ)方式からランプロードアンロード方式に移行しつつある。このため、HDDの輸送時などに外部振動が加わると、ハードディスクが微小振動し、その回転軸に繋がれたスピンドルモータにおける玉軸受の玉の転動面および軌道輪の軌道面にフレッチング摩耗が生じ、回転駆動時の騒音が大きくなることがある。
【0007】
すなわち、CSS方式であれば、スピンドルモータの停止時にも磁気ヘッドがハードディスクに接触しており、この接触によってハードディスクが固定されているため、輸送時などの振動によってもハードディスクが微小振動することはなく、玉の転動面および軌道輪の軌道面にフレッチング摩耗が生じることはなかった。
【0008】
これに対し、ランプロードアンロード方式では、スピンドルモータの停止時に、磁気ヘッドがハードディスクから離れてランプに収容されており、ハードディスクはフリーの状態となるため、上記のような輸送時などの振動によって微小振動し、玉軸受の玉の転動面および軌道輪の軌道面にフレッチング摩耗を生じるのである。特に、HDDのスピンドルモータに用いられる玉軸受においては、玉に発生するフレッチング摩耗が問題となりやすい。
【0009】
上述した2つの公報に記載された玉および軌道輪では、荷重や衝撃荷重を受けたさいに生じる永久変形に起因する音響性能の低下を防止することを目的としており、上述したようなフレッチング摩耗の発生を防止することができないという問題がある。
【0010】
この発明の目的は、上記問題を解決し、輸送時などの振動によって微小振動したさいにも、フレッチング摩耗の発生を防止しうる転がり軸受を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段と発明の効果】
本発明者等は、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、内輪、外輪および内外両輪間に介在させられる複数の転動体からなる転がり軸受において、内外両輪の軌道面および転動体の転動面のそれぞれの表面硬さならびに表面粗さがフレッチング摩耗の発生に影響を及ぼすことを見出した。
【0012】
この発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。
【0013】
請求項1の発明による転がり軸受は、
内輪、外輪および内外両輪間に介在させられる複数の転動体からなる転がり軸受において、
内外両輪が、C0.90〜1.30wt%、Si0.15〜1.20wt%、Cr0.90〜1.70wt%、Mn0.80wt%以下、Mo0.05〜0.30wt%を含み、残部Feおよび不可避不純物からなる高炭素クロム鋼により形成されており、内外両輪の軌道面の表面硬さがビッカース硬さで720以上となされるとともに前記軌道面の表面粗さが中心線平均粗さで0.015μm以下となされ、転動体が、C0.60〜0.75wt%、Mn0.30〜0.80wt%、Cr10.5〜13.5wt%、Mo0.05〜0.30wt%、Ni0.60wt%以下を含み、残部Feおよび不可避不純物からなるマルテンサイト系ステンレス鋼により形成されており、転動体の転動面の表面硬さがビッカース硬さで890以上となされるとともに前記転動面の表面粗さが中心線平均粗さで0.003μm以下となされているものである。
【0014】
請求項1の発明における内外両輪を形成する高炭素クロム鋼中の合金元素の限定理由は次のとおりである。
【0015】
C:0.90〜1.30wt%
Cは軸受としての強度を維持するために必須の元素であり、含有量が0.90wt%未満であると内外両輪の軌道面の表面硬さを所望の硬さにすることが困難であり、1.30wt%を越えると炭化物量が過多となって音響性能が低下するからである。
【0016】
Si:0.15〜1.20wt%
Siは脱酸剤として、また焼戻し軟化抵抗向上のために用いられるものであるが、含有量が0.15wt%未満であると脱酸効果が得られず、また焼戻し軟化抵抗向上効果が十分ではなく、1.20wt%を越えると残留オーステナイトが安定して分解しなくなるとともに、加工性が著しく低下するからである。
【0017】
Cr:0.90〜1.70wt%
Crは硬さを確保するためのものであるが、含有量が0.90wt%未満であると内外両輪の軌道面の表面硬さを所望の硬さにすることができず、1.70wt%を越えると炭化物量が過多となって音響性能が低下するからである。
【0018】
Mn:0.80wt%以下
Mnは鋼の焼入性を向上させるために添加されるが、含有量が0.80wt%を越えると残留オーステナイトが安定して分解しなくなるとともに、加工性が低下するからである。なお、Mnの含有量が0wt%ということはない。
【0019】
Mo:0.05〜0.30wt%
Moは鋼の焼入性を向上させるために添加されるが、含有量が0.05wt%未満であると焼入性向上効果が十分ではなく、0.30wt%を越えると被削性が低下するからである。
【0020】
請求項1の発明における転動体を形成するマルテンサイト系ステンレス鋼中の合金元素の限定理由は次のとおりである。
【0021】
C:0.60〜0.75wt%
Cは焼入、焼戻し後の硬さを得るために必須の元素であり、含有量が0.60wt%未満であると必要な硬さが得られず、0.75wt%を越えると一次炭化物が大きくなり、フレッチング摩耗の発生を抑制する効果が改善されなくなるとともに、音響特性が低下するからである。
【0022】
Mn:0.30〜0.80wt%
Mnは鋼の焼入性を向上させるために添加されるが、含有量が0.30wt%未満であると焼入性向上効果が得られず、0.80wt%を越えると残留オーステナイトが安定して分解しなくなるとともに、加工性が低下するからである。
【0023】
Cr:10.5〜13.5wt%
Crは鋼の焼入性を向上させて強度を増大させるために添加されるが、含有量が10.5wt%未満ではフレッチング摩耗の発生を抑制する効果が改善されず、13.5wt%を越えると一次炭化物が大きくなって音響性能が低下するからである。
【0024】
Mo:0.05〜0.30wt%
Moは鋼の焼入性を向上させるために添加されるが、含有量が0.05wt%未満であると焼入性向上効果が十分ではなく、0.30wt%を越えると被削性が低下するからである。
【0025】
Ni:0.60wt%以下
Niはマルテンサイト系ステンレス鋼の強度を向上させるために添加されるが、含有量が0.6wt%を越えると残留オーステナイト量が多くなって必要な硬さが得られなくなるからである。なお、Niの含有量が0wt%ということはない。
【0026】
請求項1の発明において、内外両輪の軌道面および転動体の転動面の表面硬さと、内外両輪の軌道面および転動体の転動面の表面粗さは、次の理由により決定されたものである。
【0027】
すなわち、フレッチング摩耗は、内外両輪と転動体とが接触した状態での微小すべりの繰り返しにより表面が摩耗する現象である。このようなフレッチング摩耗を抑制するには、表面における塑性変形を抑制することが効果的である。そこで、本発明者等は、表面の塑性変形難易度を表す物理量である表面硬さに着目して種々検討した結果、内外両輪の軌道面の表面硬さがビッカース硬さで720以上となされるとともに、転動体の転動面の表面硬さがビッカース硬さで890以上となされていると、表面のマクロ的な塑性変形、特に転動体の転動面のマクロ的塑性変形が抑制されることが判明した。
【0028】
ところが、これだけではフレッチング摩耗の発生を効果的に抑制することはできず、HDDのスピンドルモータの軸受に要求される高度な音響性能を満たすことが困難であることが分かり、さらに本発明者等が検討を重ねたところ、内外両輪の軌道面や転動体の転動面に存在する表面粗さを形成している微小な突起の塑性変形、すなわちミクロ的な塑性変形(歪み:10−6オーダー)がフレッチング摩耗の原因となり、ミクロ的塑性変形は表面硬さを大きくするだけでは抑制しえないことが判明した。すなわち、微小突起が塑性変形すると、繰り返しすべりにより微小突起の一部が欠落し、微小欠落片を噛み込んだ状態で繰り返しすべりが起きると、摩耗が促進されるとともに摩耗粉が酸化してフレッチング摩耗が発生するのである。そこで、材料性状のミクロ的塑性変形への影響を検討した結果、表面粗さが小さいほど上記微小突起の塑性変形が抑制されることが分かった。そして、内外両輪の軌道面の表面粗さが中心線平均粗さで0.015μm以下となされ、転動体の転動面の表面粗さが中心線平均粗さで0.003μm以下となされていると、微小突起が極めて小さくなりミクロ的塑性変形が抑制されることが判明した。
【0029】
したがって、内外両輪の軌道面の表面硬さおよび表面粗さと、転動体の転動面の表面硬さおよび表面粗さが、請求項1の発明のとおりであれば、表面におけるマクロ的およびミクロ的塑性変形がいずれも抑制され、フレッチング摩耗の発生を効果的に抑制することが可能になる。その結果、音響性能の低下を防止することが可能になる。
【0030】
請求項2の発明による転がり軸受は、請求項1の発明において、転動体が玉からなり、外輪外径が15mm以下、玉径が3mm以下となされているものである。
【0031】
HDDなどのスピンドルモータにおいては、請求項2の発明のような小型の転がり軸受が用いられる。また、請求項2の発明の転がり軸受は、軸受予圧25N以下、最大接触面圧130kgf/mm2以下で使用される。請求項2の発明の転がり軸受のように、小型で、かつ軸受予圧25N以下、最大接触面圧130kgf/mm2以下で発生し易い上述したようなフレッチング摩耗が、請求項1の発明の特徴を有していると、効果的に抑制される。これにより、HDDなどのスピンドルモータの転がり軸受において問題となるわずかなフレッチング摩耗による音響性能の低下を防止することができる。
【0032】
【発明の実施形態】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0033】
図1に示すように、この発明による転がり軸受(1)は、内輪(2)と、外輪(3)と、内外両輪(2)(3)間に介在させられかつ保持器(4)により保持された複数の玉(5)とを備えている。玉(5)の両側において、外輪(3)にシール(6)が取り付けられている。
【0034】
内外両輪(2)(3)の軌道面(2a)(3a)の表面硬さはビッカース硬さHvで720以上であり、内外両輪(2)(3)の軌道面(2a)(3a)の表面粗さは中心線平均粗さRaで0.015μm以下である。玉(5)の転動面の表面硬さはHvで890以上であり、玉(5)の転動面の表面粗さはRaで0.003μm以下である。転がり軸受(1)の外輪(3)の外径(D)は15mm以下、玉径(B)は3mm以下である。
【0035】
内外両輪(2)(3)は、次に述べる方法で製造される。すなわち、C0.90〜1.30wt%、Si0.15〜1.20wt%、Cr0.90〜1.70wt%、Mn0.80wt%以下、Mo0.05〜0.30wt%を含み、残部Feおよび不可避不純物からなる高炭素クロム鋼、たとえばJIS SUJ2を用いて完成品に近似した形状の半製品を形成し、この半製品に、たとえば焼入処理、サブゼロ処理および焼戻し処理をこの順序で施した後、研磨などの仕上げ処理を施して完成品とすることにより製造される。上記焼入処理などの熱処理は、以下のような条件で実施するのが好ましい。内外両輪(2)(3)の焼入処理は、840〜880℃で60〜90分間加熱した後急冷することにより行う。サブゼロ処理は、−60〜−80℃で45〜60分間冷却することにより行う。焼戻し処理は、220〜240℃で30〜90分間加熱することにより行う。
【0036】
玉(5)は、たとえば次に述べる方法で製造される。すなわち、C0.60〜0.75wt%、Mn0.30〜0.80wt%、Cr10.5〜13.5wt%、Mo0.05〜0.30wt%、Ni0.60wt%以下を含み、残部Feおよび不可避不純物からなるマルテンサイト系ステンレス鋼を用いて完成品に近似した形状の半製品を形成し、この半製品に、たとえば焼入処理、サブゼロ処理、焼戻し処理および表面硬化処理をこの順序で施した後、研磨などの仕上げ処理を施して完成品とすることにより製造される。上記焼入処理などの熱処理は、以下のような条件で実施するのが好ましい。玉(5)の焼入処理は、1020〜1060℃で10〜30分間加熱した後急冷することにより行う。サブゼロ処理は、−60〜−80℃で40〜60分間冷却することにより行う。焼戻し処理は、160〜180℃で100〜120分間加熱することにより行う。表面硬化処理は、タンブラー処理などにより行う。
【0037】
次に、この発明の具体的実施例を比較例とともに説明する。
【0038】
実施例1および比較例1〜3
まず、以下に述べるようにして、4つの軸受(1)を用意した。すなわち、JIS SUJ2を用いて内外両輪(2)(3)の完成品に近似した形状の半製品を形成し、この半製品に、870℃で60分間加熱した後急冷する焼入処理、−74℃で45分間冷却するサブゼロ処理、および240℃で60分間加熱する焼戻し処理をこの順序で施した後、研磨などの仕上げ処理を施し、内径5mm、幅4mmの内輪(2)と、外径13mm、幅4mmの外輪(3)を製造した(A)。また、C0.62wt%、Si0.33wt%、Mn0.68wt%、P0.019wt%、S0.006wt%、Cr12.85wt%、Mo0.06wt%を含み、残部Feおよび不可避不純物からなるマルテンサイト系ステンレス鋼を用いて内外両輪(2)(3)の完成品に近似した形状の半製品を形成し、この半製品に、1040℃で30分間加熱した後急冷する焼入処理、−70℃で20分間冷却するサブゼロ処理、および180℃で60分間加熱する焼戻し処理をこの順序で施した後、研磨などの仕上げ処理を施し、内径5mm、幅4mmの内輪(2)と、外径13mm、幅4mmの外輪(3)を製造した(B)。
【0039】
また、、C0.62wt%、Si0.33wt%、Mn0.68wt%、P0.019wt%、S0.006wt%、Cr12.85wt%、Mo0.06wt%を含み、残部Feおよび不可避不純物からなるマルテンサイト系ステンレス鋼を用いて玉(5)の完成品に近似した形状の半製品を形成し、この半製品に、1050℃で10分以上加熱した後急冷する焼入処理、−70℃で120分間冷却するサブゼロ処理、160℃で120分間加熱する焼戻し処理、およびタンブラー処理による表面硬化処理をこの順序で施した後、研磨などの仕上げ処理を施し、直径1.588mmの玉(5)を製造した(C)。さらに、JIS SUJ2を用いて玉(5)の完成品に近似した形状の半製品を形成し、この半製品に、860℃で10分以上加熱した後急冷する焼入処理、160℃で120分間加熱する焼戻し処理、およびタンブラー処理による表面硬化処理をこの順序で施した後、研磨などの仕上げ処理を施し、直径1.588mmの玉(5)を製造した(D)。
【0040】
ついで、内外両輪(2)(3)と10個の玉(5)を用いて軸受(1)を組み立て、各軸受(1)にリチウム石けんからなるグリースを封入した。これらの軸受(1)を表1に示す。また、各軸受(1)における内外両輪(2)(3)の軌道面(2a)(3a)の表面硬さ(Hv)および表面粗さ(Ra)と、玉(5)の転動面の表面硬さ(Hv)および表面粗さ(Ra)も表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
そして、これらの軸受(1)をHDD用スピンドルモータにおけるスピンドル(10)が固定状に設けられたモータベース(11)と、モータハブ(12)に組み込み、図2に示す装置を用いてフレッチング試験を施した。図2に示す試験装置は、モータベース(11)を固定状に支持する固定部(13)と、モータベース(11)のスピンドル(10)上に載せられかつ上端に外向きフランジ(14a)を有する軸状ばね押さえ(14)と、スピンドル(10)およびばね押さえ(14)の周囲に上下動自在に被せられかつ長さの中央部に外向きフランジ(15a)を有するカラー(15)と、ばね押さえ(14)の外向きフランジ(14a)とカラー(15)の外向きフランジ(15a)との間に装着され、かつカラー(15)を下方に付勢することにより、モータベース(11)のスピンドル(10)に対してモータハブ(12)を回転自在に支持する上下1対の軸受(1)に予圧を付与する圧縮コイルばね(16)とを備えている。モータハブ(12)の周囲には、一端部がコイルばね(17)を介して固定部(18)に取り付けられたワイヤ(19)が巻回されており、ワイヤ(19)の他端部を間欠的に引っ張ることにより、モータハブ(12)が所定周波数で軸線の周りに揺動させられるようになっている。
【0043】
このような試験装置を使用し、軸受(1)に14.7Nの予圧を付与し、モータハブ(12)の軸線周りの揺動角度0.5度、揺動周波数5Hz、揺動時間30分の条件で試験を行った。そして、試験の前後の軸受振動値を測定した。試験の前後の軸受振動値も表1に示す。なお、試験前の軸受振動値は、比較例1の軸受を基準とし、○は基準値の1.5倍未満であることを示し、×は同じく2倍以上であることを示す。試験後の軸受振動値は、試験前の振動値に対する試験後の振動値の変化率で表し、○は試験後の軸受振動値が試験前の1.5倍以下であることを示し、×は同じく2倍以上であることを示す。
【0044】
表1から明らかなように、実施例1の軸受では、軸受振動値の試験の前後での変化率は比較例1〜3に比べて小さくなっており、音響性能の低下が抑制されていることが分かる。したがって、実施例1の軸受では、フレッチング摩耗の発生も抑制されていると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による転がり軸受を示す縦断面図である。
【図2】振動試験装置を示す垂直断面図である。
【符号の説明】
(1):軸受
(2):内輪
(2a):軌道面
(3):外輪
(3a):軌道面
(5):玉
(B):玉径
(D):外径
Claims (2)
- 内輪、外輪および内外両輪間に介在させられる複数の転動体からなる転がり軸受において、
内外両輪が、C0.90〜1.30wt%、Si0.15〜1.20wt%、Cr0.90〜1.70wt%、Mn0.80wt%以下、Mo0.05〜0.30wt%を含み、残部Feおよび不可避不純物からなる高炭素クロム鋼により形成されており、内外両輪の軌道面の表面硬さがビッカース硬さで720以上となされるとともに前記軌道面の表面粗さが中心線平均粗さで0.015μm以下となされ、転動体が、C0.60〜0.75wt%、Mn0.30〜0.80wt%、Cr10.5〜13.5wt%、Mo0.05〜0.30wt%、Ni0.60wt%以下を含み、残部Feおよび不可避不純物からなるマルテンサイト系ステンレス鋼により形成されており、転動体の転動面の表面硬さがビッカース硬さで890以上となされるとともに前記転動面の表面粗さが中心線平均粗さで0.003μm以下となされている転がり軸受。 - 転動体が玉からなり、外輪外径が15mm以下、玉径が3mm以下となされている請求項1の転がり軸受。
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WO2008055477A3 (de) * | 2006-11-09 | 2008-11-27 | Schaeffler Kg | Verfahren zum herstellen eines wälzlagerringes und wälzlagerring |
US7537389B1 (en) * | 2005-09-09 | 2009-05-26 | Precision Industries Of Brevard, Inc. | Bearing assembly for security and storm shutter |
CN103602920A (zh) * | 2013-11-25 | 2014-02-26 | 山东时雨轴承有限公司 | 一种轴承钢和耐磨轴承的制造工艺方法 |
-
2002
- 2002-09-04 JP JP2002258764A patent/JP2004092888A/ja active Pending
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