JP2004092768A - 転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】軸受内部での潤滑剤の飛散を防止するとともに、組立が容易で部品点数の少ない転がり軸受を提供する。
【解決手段】本発明の転がり軸受は、外輪12の内周面上の、互いに間隔を隔てて配置された複数の転動溝56B,56Dの間に、突条12Aが設けられている。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明の転がり軸受は、外輪12の内周面上の、互いに間隔を隔てて配置された複数の転動溝56B,56Dの間に、突条12Aが設けられている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、OA機器等の精密機器用のスピンドルモータや、ハードディスクドライブ(HDD)装置用スイングアームアセンブリ等に適用される転がり軸受に関し、詳しくは外輪内周面に潤滑剤の飛散防止用の突条を設けた転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
OA機器等の回転部に用いられる軸受には各種の構造があり、例えば、二段軸をスリーブ外輪内に2列の転動体を介して備えた軸付き軸受等が例示できる。
図6に、このような従来の軸付き軸受50の断面図を示す。
図6に示す軸付き軸受(以下軸受)50は、二段軸51の大径軸部51Aとスリーブ外輪52との間、および二段軸51の小径軸部51Bに嵌めた内輪53とスリーブ外輪52との間にそれぞれ転動体として複数のボール54が、保持器55とともに配置されている。このとき、ボール54の表面と、ボール54が収納されるスリーブ外輪52の内周面の転動溝56B,56Dと、大径軸部51Aの外周面の転動溝56Aと、内輪53の外周面の転動溝56Cとには、潤滑剤としてグリースが塗布されている。そして、スリーブ外輪52の軸方向両端部の内周面には、環状のシール板57,58が取り付けられ、グリース等の潤滑剤が軸受50の外部へ飛散しないようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような構成の軸受50においては、ボール54の高回転走行時に、スリーブ外輪52の内周面と二段軸51の外周面とボール54とで区画された空間A内でグリースが飛散している。こうしたグリースの飛散により、ボール54の表面や軌道溝56A,56B,56C,56Dが潤滑不足になり軸受50の使用時における回転ノイズや振動を発生させるとともに、軸受50の寿命の低下を招いてしまうことがある。また、HDD装置等で軸受が高回転で使用されているような場合は、空間A内に飛散したグリースが油霧状になって乱流を発生し、この乱流による回転ノイズや振動によって、モータの静粛性および回転精度が低下することもある。
【0004】
上述した軸受内部での潤滑剤の飛散を防止する軸受として、特開2000−74052号公報に記載の複列軸受がある。
図7に、このような複列軸受(以下軸受)60の断面図を示す。なお、図7に示す軸受60において、図6に示した部材等と同様の構成・作用を有する部材等については、図中に同一符号又は相当符号を付すことにより説明を簡略化あるいは省略する。
【0005】
図7に示す軸受60は、軸受内部の略中央部分の空間Aを形成するスリーブ外輪62の内周面に、ボール54に隣接し、二段軸61の大径軸部61Aの外径よりもわずかに大きい内径を有する環状の内側シール板67,68を配置している。このとき、大径軸部61A側の内側シール板67と対向する大径軸部61Aの外周面には、内側シール部材67の幅と略等しい幅を有する溝61Cが設けられ、内側シール部材67と大径軸部61Aの外周面とでラビリンスを形成している。また、小径軸部61B側の内側シール板68においては、内側シール板68が二段軸61の大径軸部61Aと小径軸部61Bとの接続部分と対向することで、ラビリンスを形成している。
このような構成の軸受60においては、ボール54の高回転走行時にボール54等から飛散したグリースが、内側シール板67,68のボール54側の面にぶつかることで、空間A内に飛散することが防止される。
【0006】
しかしながらこうした軸受60を製造する際には、スリーブ外輪62の内周面の略中央部分に内側シール板67,68を取り付ける必要がある。OA機器等の精密機器用のスピンドルモータに使用される小型の軸受においては、このような取付作業は困難であるとともに煩雑である。さらに、HDD装置に適用される軸受においては、シール板を高い精度で外輪の内周面に取り付けなければ、逆に軸受の振動やノイズの発生等を生む可能性も考えられ、そのための組立設備の増設等のコスト増加や、高精度の組み付け性が要求されることによる生産性の低下等も考えらえれる。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、軸受内部での潤滑剤の飛散を防止するとともに、組立が容易で部品点数の少ない転がり軸受を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の前記目的は、内周面の両端部にシール部材が装着された外輪と、内周面に軸が装着された内輪とを有し、前記外輪の内周面と前記内輪の外周面との対向する部分に、軸方向に間隔を隔てて複数の転動溝が形成され、前記外輪に形成された転動溝と、対応する前記内輪に形成された転動溝との間に複数の転動体を介装させて前記外輪の内周に前記内輪を組み付けた転がり軸受において、前記外輪の内周面上の、互いに間隔を隔てて配置された前記複数の転動溝の間に、突条が設けられていることを特徴とする転がり軸受によって達成することができる。
【0009】
ここで、突条は、外輪の内周面と一体に成形されていることが好ましい。
この場合、転がり軸受の内輪は、各々が少なくとも一つの転動溝を有するように軸方向に分割されていてもよい。さらに、分割された内輪の一部が、その内輪の内周面に装着される軸と一体となっていてもよい。
また、突条としては、各転動溝の間に一つ以上配置されていればよい。各転動溝間に突条が一つ配置されている場合には、その突条は、各転動溝の間の間隔に略等しい幅を有し、突条の側面が転動溝およびその転動溝に介挿される転動体と隣接するように配置されていることが好ましい。また、突条が各転動溝の間に二つ配置されている場合には、各々の突条が異なる転動溝等に隣接して配置されていることが好ましい。
【0010】
このような転がり軸受によれば、外輪の内周面上に形成された複数の転動溝間に突条が設けられていることにより、転動体が高回転で走行する際に飛散した潤滑剤が、突条の側面にぶつかることで軸受内の空間で油霧状になって乱流を起こすことを防止できる。したがって、潤滑剤の乱流による、回転ノイズや振動が発生しない転がり軸受を提供することができる。さらに、突条が外輪と一体に成形されていることから、外輪の内周面の略中央部分に、上述した複列軸受60に見られるような内側シール板67,68を取り付ける必要がないので、組立作業を簡易化するとともに、部品点数の少ない転がり軸受を提供することができる。
【0011】
また、この場合、前記突条の側面が隣接する転動溝に向かって傾斜している傾斜面となっていることが好ましい。
このような転がり軸受によれば、転動体の高回転走行時に飛散した潤滑剤が、突条の側面にぶつかり、突条の傾斜面を伝わって転動溝へと伝播されるので転動体や転動溝から飛散した潤滑剤が再び転動溝および転動体へと供給される。特に、静止している内輪および内輪に装着された軸に対して、外輪が相対的に回転している際には、外輪に作用する遠心力によって、傾斜面上を伝播する潤滑剤の流れが加速され、潤滑剤が効率よく転動体および転動溝へと供給される。したがって、転動体および転動溝が潤滑不良になることを防止し、転がり軸受の潤滑が保たれ、良好な回転が持続される転がり軸受を提供することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。なお、以下に説明する実施形態において、すでに説明した部材等と同様の構成・作用を有する部材等については、図中に同一符号又は相当符号を付すことにより説明を簡略化あるいは省略する。
【0013】
図1に、本発明の第1実施形態である転がり軸受の断面図を示す。
図1に示す転がり軸受(以下軸受)10は、大径軸部51Aおよび小径軸部51Bを有する二段軸51と、この二段軸51を内部に収納する外輪12と、二段軸51と外輪12との間に介挿される転動体となる複数のボール54とから概略構成されている。
ボール54は、軸受10の軸方向に間隔を隔てて2列配置されている。二段軸51の大径軸部51A側に介挿されるボール54は、大径軸部51Aの外周面上に形成された転動溝56Aと、転動溝56Aと対向する外輪12の内周面上に形成された転動溝56Bとの間に介挿される。また、二段軸51の小径軸部51B側に介挿されるボール54は、二段軸51の小径軸部51Bに装着された内輪53の外周面上に形成された転動溝56Cと、転動溝56Cと対向する外輪12の内周面上に形成された転動溝56Dとの間に介挿される。このとき、ボール54の表面と転動溝56A,56B,56C,56Dとの間には、潤滑剤としてグリースが塗布されている。また、外輪12と二段軸51および内輪53との間に介挿された複数のボール54が軸受10の周方向に等間隔で配置されるように、複数のボール54の間には保持器が介挿されている。
【0014】
軸受10には、軸受外部にグリース等が飛散することを防止するための環状のシール板57,58が、外輪12の軸方向両端部の内周面上に設けられている。大径軸部51A側に設けられたシール板57は、その内周が大径軸部51Aの外周面と摺接することで軸受内部のグリースの飛散を防止している。また、小径軸部51B側のシール板58においては、内輪53とラビリンスを形成することで、グリースの飛散を防止している。
【0015】
また、軸受10内に形成される2列の転動体間の空間Aを構成する外輪12の内周面上には、突条12Aが設けられている。突条12Aは、外輪12の内周面に配置された2列の転動溝56B,56Dの離間している間隔と略等しい幅を有し、その側面12Bが保持器55と隣接するように形成され、外輪12の内周面からわずかに隆起した、断面視において略矩形形状となっている。
【0016】
図2に、軸受10の突条12A付近の拡大断面図を示す。
このように構成された軸受10においては、ボール54が高回転で走行中に、ボール54の表面および転動溝56B,56Dからグリースが飛散する際には、飛散したグリースが図中矢印Bに示すように突条12Aの側面にぶつかることで、空間A内に飛散することを防止している。
【0017】
本実施形態のこのような構成によれば、外輪12の内周面上の転動溝56B,56D間に突条12Aが設けられていることにより、ボール54が高回転で走行する際に飛散したグリースが、突条12Aの側面12Bにぶつかることで軸受10内の空間Aで油霧状になって乱流を起こすことを防止できる。したがって、グリースの乱流による、回転ノイズや振動が発生しない転がり軸受10を提供することができる。さらに、突条12Aが外輪12と一体に成形されていることから、外輪12の内周面の略中央部分に、潤滑油の飛散防止用のシール板等を取り付ける必要がないので、組立作業を簡易化するとともに、部品点数の少ない転がり軸受10を提供することができる。
【0018】
図3に本発明の第2実施形態である軸受20の断面図の一部を示す。
図3に示す軸受20においては、スリーブ外輪22内の空間Aを構成する内周面上に2列の突条22Aが設けられている。この2列の突条22Aは、互いに間隔を隔てて配置されるとともに、保持器55に隣接して配置されている。また、突条22Aの幅は、内周面上に2列配置することができるように上述した第1実施形態に示す軸受10よりも狭く設定されている。
【0019】
本実施形態のこのような構成によれば、2列の突条22Aを互いに異なる転動溝56B,56Dに隣接して配置しているので、転動溝56B,56Dの間が離れている際に有効である。すなわち隣り合う転動溝56B,56Dが離れている際には、上述した第1実施形態のように転動溝の離間している間隔と等しい幅を有する突条を設ける必要がなく、適当な幅を有する突条を各転動溝に隣接して設けることで、上述した第1実施形態と同様な効果を奏することができる。
なお、その他の構成および作用については上述した第1実施形態と同様である。
【0020】
図4に、本発明の第3実施形態である軸付き軸受(以下軸受)30の断面図の一部を示す。
図4に示す軸受30は、外輪32の内周面に設けられた突条32Aの側面32Bが、転動溝の方向へ傾斜した傾斜面となっている。すなわち、突条32Aは、断面視において外輪32側を底辺とする略台形状となっている。
【0021】
図5に、軸受30の突条32A付近の要部拡大断面図を示す。
上述したように、ボール54の高回転走行時にボール54等から飛散したグリースは、突条32Aの側面32Bにぶつかる。このとき、図5に示すように、ボールから飛散したグリースは、突条32Aの傾斜している側面32Bにぶつかった後、図中矢印Cで示すように側面32Bの傾斜に沿って再び転動溝56B,56Dの方向へと伝播される。
【0022】
本実施形態のこのような構成によれば、ボール54の高回転走行時に飛散したグリースが、突条32Aの側面32Bにぶつかり、側面32Bを伝わって転動溝56B,56Dおよびボール54へと伝播されるのでボール54等から飛散したグリースが再び転動溝56B,56Dおよびボール54へと供給される。特に、静止している二段軸51および内輪53に対して、外輪32が相対的に回転している際には、外輪に作用する遠心力によって、突条32Aの傾斜している側面32B上を伝播するグリースの流れが図中矢印C方向に加速され、グリースが効率よく転動体56B,56Dおよびボール54へと供給される。したがって、ボール54および転動溝56B,56Dが潤滑不良になることを防止し、軸付き軸受30の潤滑が保たれ、良好な回転が持続される。
なお、その他の構成および作用については上述した第1実施形態と同様である。
【0023】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜な変形、改良等が可能である。
本実施形態において、軸付き軸受としていたが、転動体が内輪および外輪の間に介挿される転がり軸受でもよい。また、本実施形態においては、2列の転動体を有する軸受を例示していたが、2列以上の転動体が整列されている軸受に適用してもよい。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の転がり軸受によれば、軸受内部での潤滑剤の飛散によって生じる乱流を防止するとともに、その乱流による軸受の回転ノイズや振動の発生を防止でき、転動体および転動溝から飛散した潤滑剤を再び転動体および転動溝へと充填することができ、組立が容易で部品点数の少ない転がり軸受を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態である軸付き軸受10の断面図である。
【図2】図1に示した軸付き軸受10の要部断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態である軸付き軸受20の断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態である軸付き軸受30の断面図である。
【図5】図4に示した軸付き軸受30の要部断面図である。
【図6】従来の軸付き軸受50の断面図である。
【図7】従来の軸付き軸受60の断面図である。
【符号の説明】
10,20,30 軸付き軸受(転がり軸受)
12,22,32 外輪
12A,22A,32A 突条
51 二段軸(軸)
51A 大径軸部
51B 小径軸部
53 内輪
54 ボール(転動体)
55 保持器
56A,56B,56C,56D 転動溝
57,58 シール板(シール部材)
A 空間
【発明の属する技術分野】
本発明は、OA機器等の精密機器用のスピンドルモータや、ハードディスクドライブ(HDD)装置用スイングアームアセンブリ等に適用される転がり軸受に関し、詳しくは外輪内周面に潤滑剤の飛散防止用の突条を設けた転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
OA機器等の回転部に用いられる軸受には各種の構造があり、例えば、二段軸をスリーブ外輪内に2列の転動体を介して備えた軸付き軸受等が例示できる。
図6に、このような従来の軸付き軸受50の断面図を示す。
図6に示す軸付き軸受(以下軸受)50は、二段軸51の大径軸部51Aとスリーブ外輪52との間、および二段軸51の小径軸部51Bに嵌めた内輪53とスリーブ外輪52との間にそれぞれ転動体として複数のボール54が、保持器55とともに配置されている。このとき、ボール54の表面と、ボール54が収納されるスリーブ外輪52の内周面の転動溝56B,56Dと、大径軸部51Aの外周面の転動溝56Aと、内輪53の外周面の転動溝56Cとには、潤滑剤としてグリースが塗布されている。そして、スリーブ外輪52の軸方向両端部の内周面には、環状のシール板57,58が取り付けられ、グリース等の潤滑剤が軸受50の外部へ飛散しないようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような構成の軸受50においては、ボール54の高回転走行時に、スリーブ外輪52の内周面と二段軸51の外周面とボール54とで区画された空間A内でグリースが飛散している。こうしたグリースの飛散により、ボール54の表面や軌道溝56A,56B,56C,56Dが潤滑不足になり軸受50の使用時における回転ノイズや振動を発生させるとともに、軸受50の寿命の低下を招いてしまうことがある。また、HDD装置等で軸受が高回転で使用されているような場合は、空間A内に飛散したグリースが油霧状になって乱流を発生し、この乱流による回転ノイズや振動によって、モータの静粛性および回転精度が低下することもある。
【0004】
上述した軸受内部での潤滑剤の飛散を防止する軸受として、特開2000−74052号公報に記載の複列軸受がある。
図7に、このような複列軸受(以下軸受)60の断面図を示す。なお、図7に示す軸受60において、図6に示した部材等と同様の構成・作用を有する部材等については、図中に同一符号又は相当符号を付すことにより説明を簡略化あるいは省略する。
【0005】
図7に示す軸受60は、軸受内部の略中央部分の空間Aを形成するスリーブ外輪62の内周面に、ボール54に隣接し、二段軸61の大径軸部61Aの外径よりもわずかに大きい内径を有する環状の内側シール板67,68を配置している。このとき、大径軸部61A側の内側シール板67と対向する大径軸部61Aの外周面には、内側シール部材67の幅と略等しい幅を有する溝61Cが設けられ、内側シール部材67と大径軸部61Aの外周面とでラビリンスを形成している。また、小径軸部61B側の内側シール板68においては、内側シール板68が二段軸61の大径軸部61Aと小径軸部61Bとの接続部分と対向することで、ラビリンスを形成している。
このような構成の軸受60においては、ボール54の高回転走行時にボール54等から飛散したグリースが、内側シール板67,68のボール54側の面にぶつかることで、空間A内に飛散することが防止される。
【0006】
しかしながらこうした軸受60を製造する際には、スリーブ外輪62の内周面の略中央部分に内側シール板67,68を取り付ける必要がある。OA機器等の精密機器用のスピンドルモータに使用される小型の軸受においては、このような取付作業は困難であるとともに煩雑である。さらに、HDD装置に適用される軸受においては、シール板を高い精度で外輪の内周面に取り付けなければ、逆に軸受の振動やノイズの発生等を生む可能性も考えられ、そのための組立設備の増設等のコスト増加や、高精度の組み付け性が要求されることによる生産性の低下等も考えらえれる。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、軸受内部での潤滑剤の飛散を防止するとともに、組立が容易で部品点数の少ない転がり軸受を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の前記目的は、内周面の両端部にシール部材が装着された外輪と、内周面に軸が装着された内輪とを有し、前記外輪の内周面と前記内輪の外周面との対向する部分に、軸方向に間隔を隔てて複数の転動溝が形成され、前記外輪に形成された転動溝と、対応する前記内輪に形成された転動溝との間に複数の転動体を介装させて前記外輪の内周に前記内輪を組み付けた転がり軸受において、前記外輪の内周面上の、互いに間隔を隔てて配置された前記複数の転動溝の間に、突条が設けられていることを特徴とする転がり軸受によって達成することができる。
【0009】
ここで、突条は、外輪の内周面と一体に成形されていることが好ましい。
この場合、転がり軸受の内輪は、各々が少なくとも一つの転動溝を有するように軸方向に分割されていてもよい。さらに、分割された内輪の一部が、その内輪の内周面に装着される軸と一体となっていてもよい。
また、突条としては、各転動溝の間に一つ以上配置されていればよい。各転動溝間に突条が一つ配置されている場合には、その突条は、各転動溝の間の間隔に略等しい幅を有し、突条の側面が転動溝およびその転動溝に介挿される転動体と隣接するように配置されていることが好ましい。また、突条が各転動溝の間に二つ配置されている場合には、各々の突条が異なる転動溝等に隣接して配置されていることが好ましい。
【0010】
このような転がり軸受によれば、外輪の内周面上に形成された複数の転動溝間に突条が設けられていることにより、転動体が高回転で走行する際に飛散した潤滑剤が、突条の側面にぶつかることで軸受内の空間で油霧状になって乱流を起こすことを防止できる。したがって、潤滑剤の乱流による、回転ノイズや振動が発生しない転がり軸受を提供することができる。さらに、突条が外輪と一体に成形されていることから、外輪の内周面の略中央部分に、上述した複列軸受60に見られるような内側シール板67,68を取り付ける必要がないので、組立作業を簡易化するとともに、部品点数の少ない転がり軸受を提供することができる。
【0011】
また、この場合、前記突条の側面が隣接する転動溝に向かって傾斜している傾斜面となっていることが好ましい。
このような転がり軸受によれば、転動体の高回転走行時に飛散した潤滑剤が、突条の側面にぶつかり、突条の傾斜面を伝わって転動溝へと伝播されるので転動体や転動溝から飛散した潤滑剤が再び転動溝および転動体へと供給される。特に、静止している内輪および内輪に装着された軸に対して、外輪が相対的に回転している際には、外輪に作用する遠心力によって、傾斜面上を伝播する潤滑剤の流れが加速され、潤滑剤が効率よく転動体および転動溝へと供給される。したがって、転動体および転動溝が潤滑不良になることを防止し、転がり軸受の潤滑が保たれ、良好な回転が持続される転がり軸受を提供することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。なお、以下に説明する実施形態において、すでに説明した部材等と同様の構成・作用を有する部材等については、図中に同一符号又は相当符号を付すことにより説明を簡略化あるいは省略する。
【0013】
図1に、本発明の第1実施形態である転がり軸受の断面図を示す。
図1に示す転がり軸受(以下軸受)10は、大径軸部51Aおよび小径軸部51Bを有する二段軸51と、この二段軸51を内部に収納する外輪12と、二段軸51と外輪12との間に介挿される転動体となる複数のボール54とから概略構成されている。
ボール54は、軸受10の軸方向に間隔を隔てて2列配置されている。二段軸51の大径軸部51A側に介挿されるボール54は、大径軸部51Aの外周面上に形成された転動溝56Aと、転動溝56Aと対向する外輪12の内周面上に形成された転動溝56Bとの間に介挿される。また、二段軸51の小径軸部51B側に介挿されるボール54は、二段軸51の小径軸部51Bに装着された内輪53の外周面上に形成された転動溝56Cと、転動溝56Cと対向する外輪12の内周面上に形成された転動溝56Dとの間に介挿される。このとき、ボール54の表面と転動溝56A,56B,56C,56Dとの間には、潤滑剤としてグリースが塗布されている。また、外輪12と二段軸51および内輪53との間に介挿された複数のボール54が軸受10の周方向に等間隔で配置されるように、複数のボール54の間には保持器が介挿されている。
【0014】
軸受10には、軸受外部にグリース等が飛散することを防止するための環状のシール板57,58が、外輪12の軸方向両端部の内周面上に設けられている。大径軸部51A側に設けられたシール板57は、その内周が大径軸部51Aの外周面と摺接することで軸受内部のグリースの飛散を防止している。また、小径軸部51B側のシール板58においては、内輪53とラビリンスを形成することで、グリースの飛散を防止している。
【0015】
また、軸受10内に形成される2列の転動体間の空間Aを構成する外輪12の内周面上には、突条12Aが設けられている。突条12Aは、外輪12の内周面に配置された2列の転動溝56B,56Dの離間している間隔と略等しい幅を有し、その側面12Bが保持器55と隣接するように形成され、外輪12の内周面からわずかに隆起した、断面視において略矩形形状となっている。
【0016】
図2に、軸受10の突条12A付近の拡大断面図を示す。
このように構成された軸受10においては、ボール54が高回転で走行中に、ボール54の表面および転動溝56B,56Dからグリースが飛散する際には、飛散したグリースが図中矢印Bに示すように突条12Aの側面にぶつかることで、空間A内に飛散することを防止している。
【0017】
本実施形態のこのような構成によれば、外輪12の内周面上の転動溝56B,56D間に突条12Aが設けられていることにより、ボール54が高回転で走行する際に飛散したグリースが、突条12Aの側面12Bにぶつかることで軸受10内の空間Aで油霧状になって乱流を起こすことを防止できる。したがって、グリースの乱流による、回転ノイズや振動が発生しない転がり軸受10を提供することができる。さらに、突条12Aが外輪12と一体に成形されていることから、外輪12の内周面の略中央部分に、潤滑油の飛散防止用のシール板等を取り付ける必要がないので、組立作業を簡易化するとともに、部品点数の少ない転がり軸受10を提供することができる。
【0018】
図3に本発明の第2実施形態である軸受20の断面図の一部を示す。
図3に示す軸受20においては、スリーブ外輪22内の空間Aを構成する内周面上に2列の突条22Aが設けられている。この2列の突条22Aは、互いに間隔を隔てて配置されるとともに、保持器55に隣接して配置されている。また、突条22Aの幅は、内周面上に2列配置することができるように上述した第1実施形態に示す軸受10よりも狭く設定されている。
【0019】
本実施形態のこのような構成によれば、2列の突条22Aを互いに異なる転動溝56B,56Dに隣接して配置しているので、転動溝56B,56Dの間が離れている際に有効である。すなわち隣り合う転動溝56B,56Dが離れている際には、上述した第1実施形態のように転動溝の離間している間隔と等しい幅を有する突条を設ける必要がなく、適当な幅を有する突条を各転動溝に隣接して設けることで、上述した第1実施形態と同様な効果を奏することができる。
なお、その他の構成および作用については上述した第1実施形態と同様である。
【0020】
図4に、本発明の第3実施形態である軸付き軸受(以下軸受)30の断面図の一部を示す。
図4に示す軸受30は、外輪32の内周面に設けられた突条32Aの側面32Bが、転動溝の方向へ傾斜した傾斜面となっている。すなわち、突条32Aは、断面視において外輪32側を底辺とする略台形状となっている。
【0021】
図5に、軸受30の突条32A付近の要部拡大断面図を示す。
上述したように、ボール54の高回転走行時にボール54等から飛散したグリースは、突条32Aの側面32Bにぶつかる。このとき、図5に示すように、ボールから飛散したグリースは、突条32Aの傾斜している側面32Bにぶつかった後、図中矢印Cで示すように側面32Bの傾斜に沿って再び転動溝56B,56Dの方向へと伝播される。
【0022】
本実施形態のこのような構成によれば、ボール54の高回転走行時に飛散したグリースが、突条32Aの側面32Bにぶつかり、側面32Bを伝わって転動溝56B,56Dおよびボール54へと伝播されるのでボール54等から飛散したグリースが再び転動溝56B,56Dおよびボール54へと供給される。特に、静止している二段軸51および内輪53に対して、外輪32が相対的に回転している際には、外輪に作用する遠心力によって、突条32Aの傾斜している側面32B上を伝播するグリースの流れが図中矢印C方向に加速され、グリースが効率よく転動体56B,56Dおよびボール54へと供給される。したがって、ボール54および転動溝56B,56Dが潤滑不良になることを防止し、軸付き軸受30の潤滑が保たれ、良好な回転が持続される。
なお、その他の構成および作用については上述した第1実施形態と同様である。
【0023】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜な変形、改良等が可能である。
本実施形態において、軸付き軸受としていたが、転動体が内輪および外輪の間に介挿される転がり軸受でもよい。また、本実施形態においては、2列の転動体を有する軸受を例示していたが、2列以上の転動体が整列されている軸受に適用してもよい。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の転がり軸受によれば、軸受内部での潤滑剤の飛散によって生じる乱流を防止するとともに、その乱流による軸受の回転ノイズや振動の発生を防止でき、転動体および転動溝から飛散した潤滑剤を再び転動体および転動溝へと充填することができ、組立が容易で部品点数の少ない転がり軸受を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態である軸付き軸受10の断面図である。
【図2】図1に示した軸付き軸受10の要部断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態である軸付き軸受20の断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態である軸付き軸受30の断面図である。
【図5】図4に示した軸付き軸受30の要部断面図である。
【図6】従来の軸付き軸受50の断面図である。
【図7】従来の軸付き軸受60の断面図である。
【符号の説明】
10,20,30 軸付き軸受(転がり軸受)
12,22,32 外輪
12A,22A,32A 突条
51 二段軸(軸)
51A 大径軸部
51B 小径軸部
53 内輪
54 ボール(転動体)
55 保持器
56A,56B,56C,56D 転動溝
57,58 シール板(シール部材)
A 空間
Claims (1)
- 内周面の両端部にシール部材が装着された外輪と、内周面に軸が装着された内輪とを有し、前記外輪の内周面と前記内輪の外周面との対向する部分に、軸方向に間隔を隔てて複数の転動溝が形成され、前記外輪に形成された転動溝と、対応する前記内輪に形成された転動溝との間に複数の転動体を介装させて前記外輪の内周に前記内輪を組み付けた転がり軸受において、
前記外輪の内周面上の、互いに間隔を隔てて配置された前記複数の転動溝の間に、突条が設けられていることを特徴とする転がり軸受。
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JP2002254239A JP2004092768A (ja) | 2002-08-30 | 2002-08-30 | 転がり軸受 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN104088898A (zh) * | 2014-07-16 | 2014-10-08 | 安徽枞晨回转支承有限公司 | 一种复合滚珠轴承装置 |
JP2015208154A (ja) * | 2014-04-22 | 2015-11-19 | ファナック株式会社 | 軸受部品の飛散防止部材を備える電動機 |
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2002
- 2002-08-30 JP JP2002254239A patent/JP2004092768A/ja active Pending
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US9621006B2 (en) | 2014-04-22 | 2017-04-11 | Fanuc Corporation | Electric motor with scatter preventing member of bearing part |
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