JP2004092727A - 転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】内輪と外輪との間に、複数個の転動体を保持器により転動自在に保持してなる内径10mm以下の転がり軸受であって、流動点が−30℃以下で、40℃における動粘度が15mm2/sであり、かつエステル油を必須成分として含む基油に、ウレア化合物、リチウム石けん及びリチウム複合石けんから選ばれる少なくとも1つを増ちょう剤として配合したグリースを封入した転がり軸受。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内径が10mm以下の転がり軸受に関し、特に低温から高温まで広い温度範囲において使用される小型モータに組み込まれる転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、CD(コンパクトディスク)装置、DVD(デジタルビデオディスク)装置、HDD(ハードディスクドライブ)装置は、携帯されたり、更に近年では車両に搭載されたりしており、低温から高温まで広い温度範囲で使用されている。その一方で、上記の各装置の小型軽量化、高性能化に対応して組み込まれる転がり軸受も、内径10mm以下の小径のものが主流になってきている。
【0003】
しかし、潤滑のために封入されるグリースは、主に軸受の高速回転化に対応するために高温特性の改善が重要視されてきており(例えば、特開平8−283767号公報参照)、低温における特性、特に起動時及び回転時のトルクに傾注した研究・開発はあまりなされていない。特に内径10mm以下の小径転がり軸受を組み込んだ小型モータでは、その回転力に限りがあるものが多く、グリースの低温特性の改善よりは、むしろ低温での使用を制限することが行われている。例えば、パソコンでは、内蔵されるHDD装置のモータに組み込まれる転がり軸受を考慮して、−10℃以下では動作保証がされていない。
【0004】
また、モータが回転できたとしても、上記した装置は、何れも高度な回転精度が要求されるため、安定した回転が維持されなければ、機能しない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、特に、低温での起動及び回転トルクが低く、低温から高温まで広い温度範囲において安定した回転を行い得る、内径10mm以下の小径転がり軸受を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、本発明に係る、内輪と外輪との間に、複数個の転動体を保持器により転動自在に保持してなる内径10mm以下の転がり軸受であって、流動点が−30℃以下で、40℃における動粘度が15mm2/sであり、かつエステル油を必須成分として含む基油に、ウレア化合物、リチウム石けん及びリチウム複合石けんから選ばれる少なくとも1つを増ちょう剤として配合したグリースを封入したことを特徴とする転がり軸受により達成される。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の転がり軸受に関して詳細に説明する。
【0008】
本発明では、内径が10mm以下である以外は、転がり軸受自体の構造には特に制限が無い。例えば、電子情報等の記録・再生装置に多く使用されている、内径10mm未満で、外径3〜30mm程度の「ミニアチュア軸受」と呼ばれる軸受を例示することができる。そして、軸受には、後述されるグリースが封入される。尚、グリースの封入量は従来と同様で構わない。
【0009】
グリースの基油は、流動点が−30℃以下で、40℃における動粘度が15mm2/sであり、かつエステル油を必須成分として含む。上記した各装置に組み込まれる転がり軸受では、通常、3000〜10000rpm、特に電子情報等の記録・再生装置では10000rpmを超える高速回転条件で使用されることから、軸受温度がかなり高温になる。そこで、耐熱性に優れるエステル油を使用することにより、高温でのグリースの劣化を抑える。
【0010】
また、基油の流動点が−30℃以下と低いことから、低温での回転トルクを小さく抑えることができ、従来では動作が保証されていない、−10℃以下の雰囲気温度でも安定した回転が可能になる。この流動点は特に−35℃以下、更に−40℃以下であることが好ましい。
【0011】
更に、基油の40℃における動粘度が15mm2/s以上であることから、低温並びに回転初期における油膜の形成が良好となり、油膜切れによる潤滑不良を起こすことが無くなり、またトルクも安定する。尚、この動粘度の上限は、トルクを考慮して200mm2/s(40℃)以下、特に150mm2/s(40℃)以下、更に150mm2/s(40℃)以下であることが好ましい。
【0012】
エステル油の種類は特に制限されるものではないが、例えば、二塩基酸と分岐アルコールとの反応から得られるジエステル油、芳香族系三塩基酸と分岐アルコールとの反応から得られる芳香族エステル油、一塩基酸と多価アルコールとの反応から得られるポリオールエステル油等を好適に挙げることができる。これらは、単独でも複数種を併用してもよい。以下にそれぞれの好ましい具体例を例示する。
【0013】
ジエステル油としては、ジオクチルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIB)、ジブチルアジペート(DBA)、ジオクチルアゼレート(DOZ)、ジブチルセバケート(DBS)、ジオクチルセバケート(DOS)等が挙げられる。
【0014】
芳香族エステルとしては、トリオクチルトリメリテート(TOTM)、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテート等が挙げられる。
【0015】
ポリオールエステル油としては、以下に示す多価アルコールと一塩基酸とを適宜反応させて得られるものが挙げられる。多価アルコールに反応させる一塩基酸は単独でもよいし、複数用いてもよい。更に、多価アルコールと二塩基酸・一塩基酸の混合脂肪酸とのオリゴエステルであるコンプレックスエステルとして用いてもよい。
【0016】
多価アルコールとしては、トリメチロールプロパン(TMP)、ペンタエリスリトール(PE)、ジペンタエリスリトール(DPE)、ネオペンチルグリコール(NPG)、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール(MPPD)等が挙げられる。一塩基酸としては、主にC4〜C16の一価脂肪酸が用いられ、具体的には酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、エナント酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、牛脂脂肪酸、ステアリン酸、カプロレイン酸、ウンデシレン酸、リンデル酸、ツズ酸、フィゼテリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、アスクレピン酸、バクセン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、サビニン酸、リシノール酸等が挙げられる。
【0017】
基油は、上記した流動点及び動粘度を満足する限り、エステル油のみで構成されてもよいが、他の潤滑油との混合油とすることもできる。エステル油と組み合わせる潤滑油として、例えば、エーテル油や合成炭化水素油は、100℃程度の高温にも耐え得ることから好適である。それぞれの好ましい例を以下に示す。
【0018】
エーテル油としては、例えば、ジフェニル、トリフェニル、テトラフェニル等の、炭素数12〜20の(ジ)アルキル基が導入されたフェニルエーテル油等が好適である。
【0019】
合成炭化水素油としては、例えば、ポリ−α−オレフィン油、α−オレフィンとエチレンとのコオリゴマー合成油等が好適である。
【0020】
上記の基油には、ウレア化合物、リチウム石けん、リチウム複合石けんの少なくとも1つが増ちょう剤として配合される。ウレア化合物、リチウム石けん、リチウム複合石けんは、何れも公知のもので構わないが、以下に好ましい例を示す。
【0021】
ウレア化合物としては、例えば、一般式「R1−NHCO−R2−NHCO−R3(但し、R2は炭素数6〜15の芳香族系炭化水素基、脂肪族系炭化水素基または脂環族系炭化水素基であり、R1及びR2は炭素数6〜12の芳香族系炭化水素基、シクロヘキシル基、炭素数7〜12のシクロヘキシル誘導体、炭素数6〜20のアルキル基の何れかを示し、また同一でも、相互に異なっていてもよい)」で表されるジウレアまたはポリウレアを使用することができる。
【0022】
リチウム石けんとしては、例えば、ラウリン酸(C12)リチウム、ミリスチン酸(C14)リチウム、パルミチン酸(C16)リチウム、マルガリン酸(C17)リチウム、ステアリン酸(C18)リチウム、アラキジン酸(C20)リチウム、ベヘン酸(C22)リチウム、リグノセリン酸(C24)リチウム、牛脂脂肪酸リチウム、9−ヒドロキシステアリン酸リチウム、10−ヒドロキシステアリン酸リチウム、12−ヒドロキシステアリン酸リチウム、9、10−ジヒドロキシステアリン酸リチウム、リシノール酸リチウム、リシノエライジン酸リチウム等が挙げられる。中でも、ステアリン酸リチウム、12−ヒドロキシステアリン酸リチウムが好ましい。また、リチウム石けんは、他の増ちょう剤と併用することもできるが、その場合リチウム石けんの量を増ちょう剤全量の50重量%以上とすることが好ましい。
【0023】
リチウム複合石けんとしては、例えば、上記リチウム石けんと、アルミニウム石けん、バリウム石けん、カルシウム石けん、ナトリウム石けん等との複合石けんが挙げられる。
【0024】
尚、増ちょう剤量はグリース性状を維持できる限り、制限されるものではなく、所望の混和ちょう度(JIS K2220)となるように適宜調整される。好ましい混和ちょう度は175〜350であり、175未満では軸受トルクが大きくなるとともに、本発明が対象とする内径10mm以下の小径転がり軸受ではグリースの封入が困難になる。また、混和ちょう度が350を超える場合には、回転時、特に高速回転時に潤滑不足を起こしやすく、軸受から騒音が発生するようになる。
【0025】
また、グリースには、所期の目的を阻害しない範囲内で、防錆剤、酸化防止剤、極圧剤、摩耗防止剤等を単独または2種以上組み合わせて添加することができる。何れも公知のもので構わない。
【0026】
因みに、防錆剤としては、有機系スルホン酸金属塩やエステル類等を挙げることができる。有機系スルホン酸金属塩としては、ジノニルナフタレンスルホン酸、重質アルキルベンゼンスルホン酸等の金属塩があり、具体例としてカルシウムスルホネート、バリウムスルホネート、ナトリウムスルホネート等が挙げられる。また、エステル類としては、ソルビタン誘導体の多塩基カルボン酸及び多価アルコールの部分エステルであるソルビタンモノラウレート、ソルビタントリラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレート等が挙げられる。
【0027】
また、酸化防止剤としては、含窒素化合物系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤をそれぞれ単独で、または両者を混合したものが挙げられる。含窒素化合物系酸化防止剤としては、フェニルαブチルアミン、ジフェニルアミン、フェニレンジアミン、オレイルアミドアミン、フェノチアジン等が挙げられる。フェノール系酸化防止剤としては、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、2,6−ジーtert−ブチル−p−フェニルフェノール等が挙げられる。
【0028】
【実施例】
本発明を実施例及び比較例に基づいて、更に説明する。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0029】
(実施例1〜3、比較例1〜2)
40℃における動粘度が49.5mm2/sで、流動点が−40℃のエステル油A(花王(株)製「カオルーブ190」)と、40℃における動粘度が68.3mm2/sで、流動点が−20℃のエステル油B(花王(株)製「カオルーブ290」)とを表1に示す配合比にて配合して基油を調製した。得られた基油の流動点及び40℃における動粘度を、それぞれ表1に併記する。そして、各基油に増ちょう剤としてステアリン酸リチウムを15重量%の含有量となるように配合し、試験グリースを得た。尚、何れの試験グリースも、混和ちょう度(JISK2220)が280(室温)となるように調整した。また、各試験グリースには、添加剤としてPAN(フェニル−1−ナフチルアミン)をグリース全量の0.5重量%の割合で添加した。
【0030】
そして、内径5mm、外径9mm、幅3mmのHDDスピンドル用軸受に試験グリースを封入して試験軸受とした。次いで、この試験軸受2個を1組としてスピンドルに組み込み、雰囲気温度−10℃にて回転トルクを測定した。結果を表1に併記するが、2個の試験軸受での値で示してある。
【0031】
【表1】
【0032】
表1より、基油の流動点が−30℃を上回る試験グリース(比較例1:−25℃、比較例2:−20℃)を用いると、回転トルクが急上昇することが確認された。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、低温での起動及び回転トルクが低く、低温から高温まで広い温度範囲において安定した回転を行い得る、内径10mm以下の小径転がり軸受が提供される。
Claims (1)
- 内輪と外輪との間に、複数個の転動体を保持器により転動自在に保持してなる内径10mm以下の転がり軸受であって、流動点が−30℃以下で、40℃における動粘度が15mm2/sであり、かつエステル油を必須成分として含む基油に、ウレア化合物、リチウム石けん及びリチウム複合石けんから選ばれる少なくとも1つを増ちょう剤として配合したグリースを封入したことを特徴とする転がり軸受。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002252832A JP2004092727A (ja) | 2002-08-30 | 2002-08-30 | 転がり軸受 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002252832A JP2004092727A (ja) | 2002-08-30 | 2002-08-30 | 転がり軸受 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004092727A true JP2004092727A (ja) | 2004-03-25 |
Family
ID=32059009
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002252832A Withdrawn JP2004092727A (ja) | 2002-08-30 | 2002-08-30 | 転がり軸受 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004092727A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008115991A (ja) * | 2006-11-07 | 2008-05-22 | Nsk Ltd | ハードディスクドライブアクチュエータ用転がり軸受 |
-
2002
- 2002-08-30 JP JP2002252832A patent/JP2004092727A/ja not_active Withdrawn
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JP2008115991A (ja) * | 2006-11-07 | 2008-05-22 | Nsk Ltd | ハードディスクドライブアクチュエータ用転がり軸受 |
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