JP2004092542A - 内燃機関制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】失火が生じた場合に内燃機関の運転状態を原因とする不具合を抑制可能な内燃機関制御装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る内燃機関制御装置は、内燃機関Eのトルク変動量から内燃機関Eの失火を検出し、検出された失火時において内燃機関Eのトルクが増加するよう、トルクを支配する原因パラメータを所定値だけ変化させる。この所定値は例えばNOx量に基づいて決定された上限値以下に設定される。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明に係る内燃機関制御装置は、内燃機関Eのトルク変動量から内燃機関Eの失火を検出し、検出された失火時において内燃機関Eのトルクが増加するよう、トルクを支配する原因パラメータを所定値だけ変化させる。この所定値は例えばNOx量に基づいて決定された上限値以下に設定される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両の発進直後においては内燃機関において失火が生じる場合があり、このような場合においては、内燃機関のトルクが減少する。トルク減少に伴って、車両加速不良や車両異常振動が生じたり、内燃機関への機械的負荷がかかったりする場合がある。そこで、従来、失火時においては内燃機関のトルクを増加させるように制御している。
【0003】
従来の内燃機関制御装置は、▲1▼特許3185935号公報、▲2▼特開平10−148131号公報、▲3▼特開平10−103126号公報に記載されている。従来技術▲1▼においては内燃機関の失火時において燃料を増量しており、従来技術▲2▼においてはトルクの低下量から失火レベルを判断しており、従来技術▲3▼においては失火検出時において噴射時期を進角側に補正している。
【0004】
すなわち、従来の内燃機関制御装置は、内燃機関のトルク変動量から内燃機関の失火を検出する失火検出手段と、失火検出手段によって検出された失火時において内燃機関のトルクが所定値だけ増加するように内燃機関を制御するトルク増加手段とを備えている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の内燃機関制御装置においては、トルクの増加を失火判定結果にのみ基づいて行っているので、この場合の内燃機関の状態は考慮されず、トルク補償はされるものの、内燃機関の運転状態を原因とする不具合が生じていた。例えば、内燃機関の燃料噴射量を増加させれば、トルクは増加するが、この場合には運転運転状態を示すPM(粒子状物質)が増加する。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、失火が生じた場合に内燃機関の運転状態を原因とする不具合を抑制可能な内燃機関制御装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を達成するため、本発明に係る内燃機関制御装置は、内燃機関のトルク変動量から前記内燃機関の失火を検出する失火検出手段と、前記失火検出手段によって検出された失火時において前記内燃機関のトルクが増加するよう、前記トルクを支配する原因パラメータを所定値だけ変化させるトルク増加手段とを備えた内燃機関制御装置において、前記所定値を内燃機関運転状態に基づいて決定された上限値以下に設定することを特徴とする。
【0008】
本内燃機関制御装置によれば、失火時においては内燃機関のトルクが増加するように原因パラメータが所定値だけ変化するが、この所定値が内燃機関運転状態に基づいて決定された上限値以下に設定されるので、内燃機関の運転状態自体の不具合或いは当該運転状態を起因とする不具合、すなわち、排気ガス中のNOX量増加、PM量並びに未燃THC(炭化水素)量増加、内燃機関の燃焼騒音の大きさの増加、内燃機関の燃費低下、及び内燃機関の排気温度異常上昇等を抑制することができる。
【0009】
前記原因パラメータは、前記内燃機関の進角量であることが好ましい。すなわち、内燃機関を進角させることでトルクが増加するが、その進角量には内燃機関運転状態に基づく上限値が設定されるため、進角制御によってトルク低下を補償しつつ、内燃機関の状態を原因とする不具合を抑制することができる。
【0010】
前記原因パラメータは、前記内燃機関に供給されるパイロット噴射燃料の燃料量であることが好ましい。すなわち、パイロット噴射燃料を増量すると、失火が回復するため、トルクが増加するが、その増加量には内燃機関運転状態に基づく上限値が設定されている。パイロット噴射燃料の過増量はPMを発生させる。本装置では、パイロット燃料増加によってトルク低下を補償しつつ、上述のように上限値を設定することで、内燃機関の状態を原因とする不具合、特に、パイロット噴射燃料増加に伴うPMの発生を抑制することができる。
【0011】
前記原因パラメータは、前記内燃機関に供給されるパイロット噴射燃料の噴射時期であることが好ましい。すなわち、パイロット噴射燃料の噴射時期を主燃料噴射時期に近づけることにより、失火が回復するため、トルクが増加するが、その増加量には内燃機関運転状態に基づく上限値が設定されている。パイロット噴射時期の過遅延はPMを発生させる。本装置では、パイロット噴射時期を主燃料の噴射時期に近づけることにより、すなわちパイロット噴射時期を遅延させることによってトルク低下を補償しつつ、上述のように上限値を設定することで、内燃機関の状態を原因とする不具合、特に、パイロット噴射時期遅延に伴うPMの発生を抑制することができる。
【0012】
前記原因パラメータは、前記内燃機関に供給される燃料の圧力であることが好ましい。すなわち、噴射圧力を増加させることにより、失火が回復するため、トルクが増加するが、その増加量には内燃機関運転状態に基づく上限値が設定されている。噴射圧力の過増加は例えばNOxを増加させる。本装置では、燃料圧力の増加によってトルク低下を補償しつつ、上述のように上限値を設定することで、内燃機関の状態を原因とする不具合、特に、燃焼圧力の増加に伴うNOxの発生を抑制することができる。
【0013】
前記原因パラメータは、前記内燃機関に供給される燃料の空燃比目標値であることが好ましい。すなわち、空燃比目標値を増加(リッチ側)させることにより、失火が回復するため、トルクが増加するが、その増加量には内燃機関運転状態に基づく上限値が設定されている。空燃比目標値の過増加は例えばCOや未燃THCを増加させると共に燃費を劣化させる。本装置では、空燃比目標値の増加によってトルク低下を補償しつつ、上述のように上限値を設定することで、内燃機関の状態を原因とする不具合、特に、空燃比目標値の増加に伴うCOや未燃THCの劣化を抑制することができる。
【0014】
また、前記内燃機関から排出される排気ガス中のNOX量、PM量並びに未燃THC量、前記内燃機関の燃焼騒音の大きさ、前記内燃機関の燃費、及び前記内燃機関の排気温度の少なくともいずれか1つを、前記内燃機関運転状態を示す状態パラメータとした場合に、前記所定値の上限値は、前記状態パラメータ群から選択される少なくとも2つの状態パラメータからそれぞれ求められる前記所定値の上限値のうち最も小さいものであることを特徴とする。
【0015】
すなわち、2つ以上の内燃機関運転状態を設定しておき、その中で上記所定値に対して最も小さい上限を要求するものに対して、これ以下に所定値を設定すれば、残りの内燃機関運転状態も良好とすることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、実施の形態に係る内燃機関制御装置について説明する。なお、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0017】
図1は内燃機関及びその制御装置(ECU:内燃機関制御ユニットを含む)を示すブロック図である。
【0018】
内燃機関Eは、(1)吸入(吸気)工程、(2)圧縮工程、(3)燃焼(膨張)工程、(4)排気工程を繰り返す4サイクルの動力源であり、燃焼工程におけるエネルギーによってピストンにリンクしたクランクシャフトCを回転させている。燃焼工程において用いられる燃料は、インジェクタIから内燃機関Eの燃焼室内に供給される。吸入工程において吸入される空気は吸気経路SAを介して燃焼室内に導入され、燃焼した燃料は排気工程において排気ガスとして排気経路EAを介して排気される。
【0019】
排気ガスは、NOx(窒素酸化物)、PM(粒子状物質:スス)、未燃THC(炭化水素)及びCO(一酸化炭素)を含んでいる。
【0020】
なお、NOxは、燃焼温度が高いときに空気中の窒素が酸素と結合して発生するものであり、加速時に多く発生する傾向がある。HCは減速時などの過濃混合気による失火、燃焼室壁面付近の燃え残りガスなど生ガスの排出により発生する傾向がある。COは過濃混合気による不完全燃焼により発生するものであり、アイドリング時に多く発生する傾向がある。
【0021】
クランクシャフトCの回転角はクランク角センサCSによって検出され、クランク角センサCSの出力を電子制御ユニットECUでモニタすることにより、クランク角の回転数、すなわち、エンジン回転数を計測している。
【0022】
クランクシャフトCの駆動力は車輪Wに伝達され、車輪Wの回転数は車輪速センサSSから出力されるパルス数を、電子制御ユニットECUによってカウントすることによって検出される。車輪Wの回転数は車輪速(車速)である。
【0023】
アクセルALの角度はアクセル開度センサAによって計測されており、この出力が電子制御ユニットECUに入力されている。電子制御ユニットECUは、検出されたアクセル開度を用いて、燃料タンクFから燃料ポンプP及び蓄圧室(レール)Tを介してインジェクタIから燃料室に供給される燃料量を決定している。アクセル開度が大きいほど、供給される燃料量は大きくなる傾向がある。
【0024】
内燃機関EにおけるクランクシャフトCのトルクは、エンジン回転数及び車輪速に依存するものであり、電子制御ユニットECUは、予め記憶されたこれら3パラメータの関係に基づいて、トルクを求めることができる。このトルクはアクセル開度を用いて補正することもできる。
【0025】
さて、内燃機関Eにおいて失火が生じると、燃焼工程において燃料が燃焼しないため、トルクの低下が生じる。すなわち、電子制御ユニットECUは、トルクをモニタすることにより、内燃機関Eにおける失火を推定することができる。失火によらないトルク変動も考えられるため、目標トルクを基準とする特定の変動幅を超えてトルクが低下した場合には、電子制御ユニットECUは失火と判定することができる。
【0026】
このような失火が生じた場合、電子制御ユニットECUは失火の回復措置及びトルク増加措置を講じる。なお、失火が回復すると、失火によるトルク低下時よりもトルクは増加する。換言すれば、いずれの措置の場合においても、電子制御ユニットECUはトルク増加を行っている。
【0027】
このような措置を講じるため、電子制御ユニットECUは、好適には燃料噴射時期を進角する。進角を行うためには、燃料噴射タイミングを早めたり、ガソリンエンジンにおいては点火時期を早めたり、可変バルブタイミング制御を用いる場合にはバルク開閉タイミングを調整すればよい。
【0028】
すなわち、電子制御ユニットECUは、内燃機関Eのトルク変動量から内燃機関Eの失火を検出する失火検出手段と、失火検出手段によって検出された失火時において内燃機関Eのトルクが増加するよう、トルクを支配する原因パラメータ、本例では進角量を所定値ΔXだけ変化させるトルク増加手段とを備えている。
【0029】
ここで、排気ガスは上述のNOx等のエミッションを含んでいる。これらのエミッションの排出量は規制されるべきであり、トルク増加措置を講じたために、エミッションが増加することは好ましくない。
【0030】
そこで、本実施形態に係る電子制御ユニットにおいては、原因パラメータである進角量を所定値ΔXだけ変化させる場合に、所定値ΔXを内燃機関運転状態に基づいて決定された上限値XMAX以下に設定する。この内燃機関運転状態とは、本例の場合は間接的にはエミッションの量であり、このエミッション量が規定値よりも多くなると予測される場合には、エミッション量が規定値以内となるように所定値ΔXを制限する。
【0031】
すなわち、電子制御ユニットECUによれば、失火時においては内燃機関Eのトルクが増加するように原因パラメータ(例:進角量)が所定値だけ変化するが、この所定値ΔXが内燃機関運転状態に基づいて決定された上限値XMAX以下に設定されるので、内燃機関Eの運転状態自体の不具合或いは当該運転状態を起因とする不具合、すなわち、排気ガス中のNOX量増加、PM量並びに未燃THC(炭化水素)量増加、内燃機関Eの燃焼騒音の大きさの増加、内燃機関Eの燃費低下、及び内燃機関の排気温度上昇等を抑制することができる。
【0032】
図2は電子制御ユニットECUによる制御を説明するためのフローチャートである。内燃機関始動初期状態や特定のモードを実行する場合に、当該制御はスタートする。
【0033】
この制御がスタートすると、まず、入力された情報(エンジン回転数等)に基づいて内燃機関Eの発生するトルクを演算する(S1)。トルク演算方法は上述の通りである。
【0034】
次に、内燃機関運転状態に基づいてトルク変動許容範囲の演算を行う(S2)。すなわち、失火が生じなければ生じるトルク変動許容範囲を演算する。なお、失火が生じない試行実験において計測されるトルクを、各種センサからの出力と共に予め記憶装置内に格納しておき、演算時において、各種センサからの出力に対応するトルクを記憶装置内から読み出して、実験時に測定された変動幅を付加してトルク変動許容範囲としてもよい。
【0035】
次に、このように設定されたトルク変動許容範囲を、演算(測定)されたトルクが逸脱しているかどうかを判定する(S3)。判定結果がNOの場合、すなわち、演算されたトルクがトルク変動許容範囲内にある場合には、失火は生じていないものと推定し、失火状態判定フラグを下げる(S4)。一方、判定結果がYESの場合、すなわち、演算されたトルクがトルク変動許容範囲外にある場合には、失火が生じているものとして、失火状態判定フラグを上げる(S5)。
【0036】
以上の制御フローが失火判定プログラムとなる。
【0037】
失火判定において、失火判定フラグが上がっている場合、トルクが減少するため、これを補償するようにトルク増加プログラムがスタートする。
【0038】
まず、失火によって生じるトルク減少量は測定されているので、現在の内燃機関Eの運転状態から、特定のトルク増加用原因パラメータ(例:進角量)の補正量(所定値ΔX)を演算する(S6)。原因パラメータが進角量の場合、補正量ΔXは進角補正量となる。この原因パラメータとしては、トルクを増加させるものであれば様々なものがあり、パイロット噴射燃料の燃料量、パイロット噴射燃料の噴射時期、内燃機関に供給される燃料圧力、内燃機関に供給される燃料の空燃比目標値等が列挙されるが、補正量ΔXは、それぞれのパラメータの補正量である。インジェクタIがアクチュエータ駆動するものである場合には、例えばパイロット噴射燃料の噴射時期は、アクチュエータの駆動タイミングであると換言することもできる。
【0039】
なお、パイロット噴射を行うと、また、このパイロット噴射燃料量を増加させると、或いは、パイロット噴射の時期をこの後に噴射される主燃料噴射時期に近づけると、主噴射燃料が燃料し易くなるため、失火状態が回復し、トルクが増加する。また、パイロット噴射燃料量を増加させたり、パイロット燃料噴射時期を主燃料噴射時期に近づけると、内燃機関Eの気筒内に過濃度領域が形成されるため、PM量が増加する傾向がある。
【0040】
次に、制御目標となる目標値を演算する(S7)。この目標値は、車両運転状態から算出されるトルクを基本値とし、失火によるトルク低下量を補う補正量ΔXを基本値に加算したものである。
【0041】
次に、エミッション量許容範囲の演算を行う(S8)。エミッション量は内燃機関運転状態を間接的に示すものである。エミッションとは、排気ガス中に含まれるNOx、PM、HC、CO等である。エミッションを触媒で処理する場合には、規定の排気ガスの浄化度を満たせるように、触媒温度、排気ガス流出量に基づいてエミッション量許容範囲を決定する。排気ガス流出量は燃料供給量やエンジン回転数等から求めることができ、内燃機関温度や触媒温度、空燃比から各エミッションの比率を推定することができ、したがって、各エミッションの絶対量を求めることができる。エミッション量許容範囲は固定値であってもよい。すなわち、内燃機関Eの排気ポートから噴出されるエミッションの許容範囲を設定し、この条件が満たせるように、補正量ΔXは制限されるのである。補正量ΔXの制限は以下のようにして行う。
【0042】
まず、エミッション量許容範囲内で、原因パラメータ(例:進角量)の補正量ΔXの上限値XMAXを設定する。すなわち、エミッション量と原因パラメータとの間には、一定の相関があるため、原因パラメータ(目標値)の値に相当するエミッション量が決定でき、この目標値から一意的に補正量ΔXの上限値XMAXが決定できる。
【0043】
上述の原因パラメータを、内燃機関Eの進角量とした場合、内燃機関Eを進角させることでトルクが増加するが、その進角量には内燃機関運転状態に基づく上限値が設定されるため、進角制御によってトルク低下を補償しつつ、内燃機関Eの運転状態を原因とする不具合を抑制することができる。
【0044】
次に、補正量ΔXと補正量上限値XMAXとを比較して小さい方を選択し、これに基本値を加えて新目標値として設定する(S10)。すなわち、トルク低下を補償するべき原因パラメータの補正量ΔXが、目標値となった場合には結果的にエミッション量許容範囲を超える状態を引き起こすものと推定される場合には、補正量ΔXを補正量上限値XMAXに固定し、逆に、トルク低下を補償するべき原因パラメータの補正量ΔXが補正量上限値XMAXに満たない場合には、この補正量ΔXを基本値に加えて新目標値とする。
【0045】
また、複数の内燃機関運転状態を与える状態パラメータ(例:NOx量、CO量)がある場合には、原因パラメータ(例:進角量)に対して、各状態パラメータが与える補正量ΔX(上限値との比較後の値)をそれぞれ求め、それぞれの最終補正量のもののうち、最小の値のものを選択して、最終的な補正量として決定する。
【0046】
また、複数の原因パラメータがある場合には、それぞれの原因パラメータの補正量ΔXと補正量上限値XMAXとを比較し、選択された方の値同士を原因パラメータ間で比較し、この比較の結果、最小の値を与えるものに基本値を加えて新目標値とする。
【0047】
以下、状態パラメータが複数である場合の制御例について説明する。
【0048】
まず、原因パラメータをパイロット噴射燃料の燃料量とし、状態パラメータをスモーク(smoke:PM)、NOx、未燃THCとした場合について説明する。
【0049】
図3は最終的な補正量ΔXを決定するための制御を説明するためのブロック図である。
【0050】
まず、現在の内燃機関付属のセンサ出力(エンジン回転数Ne、燃料噴射量Q、水温Tw、吸気温度Tha、トルクtrq等)を電子制御ユニットECUに入力する(S30)。ここでは、エンジン回転数Neと燃料噴射量Qに着目する。これらのエンジン回転数と燃料噴射量からエミッション(例:スモーク)量とトルクを求めることができる。
【0051】
次に、スモーク許容値算出手段(S31a)によって、スモーク(PM)量の許容値を上述の(S8)に従って算出し、次に、算出されたスモーク許容値を満足するパイロット噴射燃料の増加燃料量(補正量ΔX)をパイロット量探索手段によって変化させながら(S31b)、その場合に推定される排出スモーク量を排出スモーク推定手段によって各センサ出力の入力情報を元に推定し(S31c)、推定結果がスモーク許容値を満たすものをパイロット量探索手段によって決定して(S31b)、次段の最小パイロット量選択手段(S34)に伝達する。
【0052】
また、NOx許容値算出手段(S32a)によって、NOx量の許容値を上述の(S8)に従って算出し、次に、算出されたNOx許容値を満足するパイロット噴射燃料の増加燃料量(補正量ΔX)をパイロット量探索手段によって変化させながら(S32b)、その場合に推定される排出NOx量を排出NOx推定手段によって各センサ出力の入力情報を元に推定し(S32c)、推定結果がNOx許容値を満たすものをパイロット量探索手段によって決定して(S32b)、次段の最小パイロット量選択手段(S34)に伝達する。
【0053】
未燃THC許容値算出手段(S33a)によって、未燃THC量の許容値を上述の(S8)に従って算出し、次に、算出された未燃THC許容値を満足するパイロット噴射燃料の増加燃料量(補正量ΔX)をパイロット量探索手段によって変化させながら(S33b)、その場合に推定される排出未燃THC量を排出未燃THC推定手段によって各センサ出力の入力情報を元に推定し(S33c)、推定結果が未燃THC許容値を満たすものをパイロット量探索手段によって決定して(S33b)、次段の最小パイロット量選択手段(S34)に伝達する。
【0054】
以上のようにして最小パイロット量選択手段に伝達された3つの補正量ΔXを比較し、これらの中で最小の値を示すものを、最終的な補正量(パイロット量補正限界値)として決定し、この補正量を基本値に加えた目標値にパイロット噴射燃料量が一致するようにインジェクタIの開放期間及び/又は燃料圧力を制御する。
【0055】
このように、原因パラメータが、内燃機関Eに供給されるパイロット噴射燃料の燃料量である場合、パイロット噴射燃料を増量すると、失火が回復するため、トルクが増加するが、その増加量には内燃機関運転状態に基づく上限値が設定されている。パイロット噴射燃料の過増量はPMを発生させる。
【0056】
本装置では、パイロット燃料増加によってトルク低下を補償しつつ、上述のように上限値を設定することで、内燃機関Eの運転状態を原因とする不具合、特に、パイロット噴射燃料増加に伴うPMの発生を抑制することができる。
【0057】
次に、原因パラメータをパイロット噴射燃料の噴射時期とし、状態パラメータをスモーク(smoke:PM)、燃焼騒音、NOxとした場合について説明する。
【0058】
図4は最終的な補正量ΔXを決定するための制御を説明するためのブロック図である。
【0059】
まず、現在の内燃機関付属のセンサ出力(エンジン回転数Ne、燃料噴射量Q、水温Tw、吸気温度Tha、トルクtrq等)を電子制御ユニットECUに入力する(S40)。ここでは、エンジン回転数Neと燃料噴射量Qに着目する。これらのエンジン回転数と燃料噴射量からエミッション(例:スモーク)量、燃焼騒音及びトルクを求めることができる。
【0060】
次に、スモーク許容値算出手段(S41a)によって、スモーク量の許容値を上述の(S8)に従って算出し、次に、算出されたスモーク許容値を満足するパイロット噴射燃料の噴射時期遅延時間(補正量ΔX)をパイロット時期探索手段によって変化させながら(S41b)、その場合に推定される排出スモーク量を排出スモーク推定手段によって各センサ出力の入力情報を元に推定し(S41c)、推定結果がスモーク許容値を満たすものをパイロット時期探索手段によって決定して(S41b)、次段の最小パイロット時期(遅角)量選択手段(S44)に伝達する。
【0061】
燃焼騒音許容値算出手段(S42a)によって、燃焼騒音の許容値をエンジン回転数及び燃料噴射量に関連づけて算出し、次に、算出された燃焼騒音許容値を満足するパイロット噴射燃料の噴射時期遅延時間(補正量ΔX)をパイロット時期探索手段によって変化させながら(S42b)、その場合に推定される燃焼騒音を燃焼騒音推定手段によって各センサ出力の入力情報を元に推定し(S42c)、推定結果が燃焼騒音許容値を満たすものをパイロット時期探索手段によって決定して(S42b)、次段の最小パイロット時期選択手段(S44)に伝達する。
【0062】
また、NOx許容値算出手段(S43a)によって、NOx量の許容値を上述の(S8)に従って算出し、次に、算出されたNOx許容値を満足するパイロット噴射燃料の噴射時期遅延時間(補正量ΔX)をパイロット時期探索手段によって変化させながら(S43b)、その場合に推定される排出NOx量を排出NOx推定手段によって各センサ出力の入力情報を元に推定し(S43c)、推定結果がNOx許容値を満たすものをパイロット量探索手段によって決定して(S43b)、次段の最小パイロット時期選択手段(S43)に伝達する。
【0063】
以上のようにして最小パイロット時期選択手段に伝達された3つの補正量ΔXを比較し、これらの中で最小の値を示すものを、最終的な補正量(パイロット量補正限界値)として決定し、この補正量を基本値に加えた目標値にパイロット噴射燃料噴射時期(遅角量)が一致するようにインジェクタIの開放タイミングを制御する。
【0064】
このように、原因パラメータが内燃機関Eに供給されるパイロット噴射燃料の噴射時期である場合、パイロット噴射燃料の噴射時期を主燃料噴射時期に近づけることにより、失火が回復するため、トルクが増加するが、その増加量には内燃機関運転状態に基づく上限値が設定されている。パイロット噴射時期の過遅延はPMを発生させる。本装置では、パイロット噴射時期を主燃料の噴射時期に近づけることにより、すなわちパイロット噴射時期を遅延させることによってトルク低下を補償しつつ、上述のように上限値を設定することで、内燃機関Eの状態を原因とする不具合、特に、パイロット噴射時期遅延に伴うPMの発生を抑制することができる。
【0065】
次に、原因パラメータを燃料圧力(レール圧)とし、状態パラメータを燃焼騒音、燃費、NOxとした場合について説明する。
【0066】
図5は最終的な補正量ΔXを決定するための制御を説明するためのブロック図である。
【0067】
まず、現在の内燃機関付属のセンサ出力(エンジン回転数Ne、燃料噴射量Q、水温Tw、吸気温度Tha、トルクtrq等)を電子制御ユニットECUに入力する(S50)。ここでは、エンジン回転数Neと燃料噴射量Qに着目する。これらのエンジン回転数と燃料噴射量から燃焼騒音、燃費、エミッション(例:NOx)量を求めることができ、機関温度やポンプの提供する圧力からレール圧を求めることができる。
【0068】
燃焼騒音許容値算出手段(S51a)によって、燃焼騒音の許容値をエンジン回転数と燃料噴射量に対応づけて算出し、次に、算出された燃焼騒音許容値を満足する燃料圧力の増加量(補正量ΔX)をレール圧探索手段によって変化させながら(S51b)、その場合に推定される燃焼騒音を排出燃焼騒音推定手段によって各センサ出力の入力情報を元に推定し(S51c)、推定結果が燃焼騒音許容値を満たすものをレール圧探索手段によって決定して(S51b)、次段の最小レール圧選択手段(S54)に伝達する。
【0069】
次に、燃費許容値算出手段(S52a)によって、燃費の許容値をエンジン回転数及び燃料噴射量に対応づけて算出し、次に、算出された燃費の許容値を満足する噴射燃料の燃料圧力の増加量(補正量ΔX)をレール圧探索手段によって変化させながら(S52b)、その場合に推定される燃費を燃費推定手段によって各センサ出力の入力情報を元に推定し(S52c)、推定結果が燃費許容値を満たすものを燃費探索手段によって決定して(S52b)、次段の最小レール圧選択手段(S54)に伝達する。
【0070】
また、NOx許容値算出手段(S53a)によって、NOx量の許容値を上述の(S8)に従って算出し、次に、算出されたNOx許容値を満足する噴射燃料の燃料圧力の増加量(補正量ΔX)をレール圧探索手段によって変化させながら(S53b)、その場合に推定される排出NOx量を排出NOx推定手段によって各センサ出力の入力情報を元に推定し(S53c)、推定結果がNOx許容値を満たすものをレール圧探索手段によって決定して(S53b)、次段の最小レール圧選択手段(S53)に伝達する。
【0071】
以上のようにして最小レール圧選択手段に伝達された3つの補正量ΔXを比較し、これらの中で最小の値を示すものを、最終的な補正量(レール圧補正限界値)として決定し、この補正量を基本値に加えた目標値にレール圧が一致するように燃料ポンプPやバルブを制御する。
【0072】
このように、原因パラメータが内燃機関Eに供給される燃料の圧力である場合、噴射圧力を増加させることにより、失火が回復するため、トルクが増加するが、その増加量には内燃機関運転状態に基づく上限値が設定されている。噴射圧力の過増加は例えばNOxを増加させる。本装置では、燃料圧力の増加によってトルク低下を補償しつつ、上述のように上限値を設定することで、内燃機関Eの状態を原因とする不具合、特に、燃焼圧力の増加に伴うNOxの発生を抑制することができる。
【0073】
次に、原因パラメータを吸入ガス組成値(直接的な気筒内空燃比、EGR率、吸気O2濃度、新気量)とし、これらはいずれも燃焼に供する空燃比であるが、その目標値を原因パラメータとし、状態パラメータをNOx量、燃焼騒音とした場合について説明する。
【0074】
図6は最終的な補正量ΔXを決定するための制御を説明するためのブロック図である。
【0075】
まず、現在の内燃機関付属のセンサ出力(エンジン回転数Ne、燃料噴射量Q、水温Tw、吸気温度Tha、トルクtrq等)を電子制御ユニットECUに入力する(S60)。ここでは、エンジン回転数Neと燃料噴射量Qに着目する。これらのエンジン回転数と燃料噴射量から燃焼騒音、エミッション(例:NOx)量を求めることができ、直接的にはO2センサの出力から、また、間接的には機関温度と吸入空気量及び燃料噴射量から空燃比を求めることができる。
【0076】
NOx許容値算出手段(S61a)によって、NOx量の許容値を上述の(S8)に従って算出し、次に、算出されたNOx許容値を満足する吸入ガス組成値(空燃比目標値)の増加量(補正量ΔX)を吸入ガス組成値探索手段によって変化させながら(S61b)、その場合に推定される排出NOx量を排出NOx推定手段によって各センサ出力の入力情報を元に推定し(S61c)、推定結果がNOx許容値を満たすものを吸入ガス組成値探索手段によって決定して(S61b)、次段の最小吸入ガス組成値選択手段(S63)に伝達する。
【0077】
また、燃焼騒音許容値算出手段(S62a)によって、燃焼騒音の許容値をエンジン回転数と燃料噴射量に対応づけて算出し、次に、算出された燃焼騒音許容値を満足する吸入ガス組成値の増加量(補正量ΔX)を吸入ガス組成値探索手段によって変化させながら(S62b)、その場合に推定される燃焼騒音を燃焼騒音推定手段によって各センサ出力の入力情報を元に推定し(S62c)、推定結果が燃焼騒音許容値を満たすものを吸入ガス組成値探索手段によって決定して(S62b)、次段の最小吸入ガス組成値選択手段(S63)に伝達する。
【0078】
以上のようにして吸入ガス組成値選択手段に伝達された3つの補正量ΔXを比較し、これらの中で最小の値を示すものを、最終的な補正量(吸入ガス組成値補正限界値)として決定し、この補正量を基本値に加えた目標値に吸入ガス組成値が一致するように燃料ポンプPやバルブ及びインジェクタIを制御する。
【0079】
このように、原因パラメータが内燃機関Eに供給される燃料の吸入ガス組成値(空燃比目標値)である場合、吸入ガス組成値(空燃比目標値)を増加(リッチ側)させることにより、失火が回復するため、トルクが増加するが、その増加量には内燃機関運転状態に基づく上限値が設定されている。吸入ガス組成値(空燃比目標値)の過増加は例えばCOや未燃THCを増加させると共に燃費を劣化させる。本装置では、吸入ガス組成値(空燃比目標値)の増加によってトルク低下を補償しつつ、上述のように上限値を設定することで、内燃機関Eの状態を原因とする不具合、特に、吸入ガス組成値(空燃比目標値)の増加に伴うCOや未燃THCの劣化を抑制することができる。
【0080】
また、状態パラメータとして排気温度を用いることとしてもよく、補正量の算出方法はNOx量の場合と同様である。
【0081】
上述の制御手法によれば、内燃機関Eから排出される排気ガス中のNOX量、PM量並びに未燃THC量、内燃機関Eの燃焼騒音の大きさ、内燃機関の燃費、及び内燃機関の排気温度の少なくともいずれか1つを、内燃機関運転状態を示す状態パラメータとした場合に、補正量(所定値)ΔXの上限値は、状態パラメータ群から選択される少なくとも2つのパラメータ(例えば、NOx量とPM量)からそれぞれ求められる補正量ΔXの上限値のうち最も小さいものとされている。
【0082】
すなわち、2つ以上の内燃機関運転状態を設定しておき、その中で補正量ΔXに対して最も小さい上限を要求するもの(例:NOx量)に対して、これ以下に補正量ΔXを設定すれば、残りの内燃機関運転状態(例:PM量)も良好とすることができる。
【0083】
なお、上記ではエンジン回転数等に基づいてトルク変動量を判定し、このトルク変動量から失火状態を検出しているが、内燃機関Eが気筒内圧力を検出する筒内圧センサを具備する場合には、このセンサの出力に基づいて間接的にトルク変動を検出することもできる。
【0084】
また、上記ではエンジン回転数等に基づいてトルク変動量を判定し、このトルク変動量から失火状態を検出しているが、排気経路EA内にTHC量又は濃度を検出するTHCセンサを具備している場合には、このセンサの出力に基づいて間接的にトルク変動を検出することもできる。
【0085】
【発明の効果】
本発明の内燃機関制御装置によれば、失火が生じた場合に内燃機関の運転状態を原因とする不具合を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】内燃機関及びその制御装置を示すブロック図である。
【図2】電子制御ユニットECUによる制御を説明するためのフローチャートである。
【図3】最終的な補正量ΔXを決定するための制御を説明するためのブロック図である。
【図4】最終的な補正量ΔXを決定するための制御を説明するためのブロック図である。
【図5】最終的な補正量ΔXを決定するための制御を説明するためのブロック図である。
【図6】最終的な補正量ΔXを決定するための制御を説明するためのブロック図である。
【符号の説明】
A…アクセル開度センサ、AL…アクセル、C…クランクシャフト、CS…クランク角センサ、E…内燃機関、EA…排気経路、ECU…電子制御ユニット、F…燃料タンク、I…インジェクタ、P…燃料ポンプ、SA…吸気経路、SS…車輪速センサ、W…車輪。
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両の発進直後においては内燃機関において失火が生じる場合があり、このような場合においては、内燃機関のトルクが減少する。トルク減少に伴って、車両加速不良や車両異常振動が生じたり、内燃機関への機械的負荷がかかったりする場合がある。そこで、従来、失火時においては内燃機関のトルクを増加させるように制御している。
【0003】
従来の内燃機関制御装置は、▲1▼特許3185935号公報、▲2▼特開平10−148131号公報、▲3▼特開平10−103126号公報に記載されている。従来技術▲1▼においては内燃機関の失火時において燃料を増量しており、従来技術▲2▼においてはトルクの低下量から失火レベルを判断しており、従来技術▲3▼においては失火検出時において噴射時期を進角側に補正している。
【0004】
すなわち、従来の内燃機関制御装置は、内燃機関のトルク変動量から内燃機関の失火を検出する失火検出手段と、失火検出手段によって検出された失火時において内燃機関のトルクが所定値だけ増加するように内燃機関を制御するトルク増加手段とを備えている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の内燃機関制御装置においては、トルクの増加を失火判定結果にのみ基づいて行っているので、この場合の内燃機関の状態は考慮されず、トルク補償はされるものの、内燃機関の運転状態を原因とする不具合が生じていた。例えば、内燃機関の燃料噴射量を増加させれば、トルクは増加するが、この場合には運転運転状態を示すPM(粒子状物質)が増加する。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、失火が生じた場合に内燃機関の運転状態を原因とする不具合を抑制可能な内燃機関制御装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を達成するため、本発明に係る内燃機関制御装置は、内燃機関のトルク変動量から前記内燃機関の失火を検出する失火検出手段と、前記失火検出手段によって検出された失火時において前記内燃機関のトルクが増加するよう、前記トルクを支配する原因パラメータを所定値だけ変化させるトルク増加手段とを備えた内燃機関制御装置において、前記所定値を内燃機関運転状態に基づいて決定された上限値以下に設定することを特徴とする。
【0008】
本内燃機関制御装置によれば、失火時においては内燃機関のトルクが増加するように原因パラメータが所定値だけ変化するが、この所定値が内燃機関運転状態に基づいて決定された上限値以下に設定されるので、内燃機関の運転状態自体の不具合或いは当該運転状態を起因とする不具合、すなわち、排気ガス中のNOX量増加、PM量並びに未燃THC(炭化水素)量増加、内燃機関の燃焼騒音の大きさの増加、内燃機関の燃費低下、及び内燃機関の排気温度異常上昇等を抑制することができる。
【0009】
前記原因パラメータは、前記内燃機関の進角量であることが好ましい。すなわち、内燃機関を進角させることでトルクが増加するが、その進角量には内燃機関運転状態に基づく上限値が設定されるため、進角制御によってトルク低下を補償しつつ、内燃機関の状態を原因とする不具合を抑制することができる。
【0010】
前記原因パラメータは、前記内燃機関に供給されるパイロット噴射燃料の燃料量であることが好ましい。すなわち、パイロット噴射燃料を増量すると、失火が回復するため、トルクが増加するが、その増加量には内燃機関運転状態に基づく上限値が設定されている。パイロット噴射燃料の過増量はPMを発生させる。本装置では、パイロット燃料増加によってトルク低下を補償しつつ、上述のように上限値を設定することで、内燃機関の状態を原因とする不具合、特に、パイロット噴射燃料増加に伴うPMの発生を抑制することができる。
【0011】
前記原因パラメータは、前記内燃機関に供給されるパイロット噴射燃料の噴射時期であることが好ましい。すなわち、パイロット噴射燃料の噴射時期を主燃料噴射時期に近づけることにより、失火が回復するため、トルクが増加するが、その増加量には内燃機関運転状態に基づく上限値が設定されている。パイロット噴射時期の過遅延はPMを発生させる。本装置では、パイロット噴射時期を主燃料の噴射時期に近づけることにより、すなわちパイロット噴射時期を遅延させることによってトルク低下を補償しつつ、上述のように上限値を設定することで、内燃機関の状態を原因とする不具合、特に、パイロット噴射時期遅延に伴うPMの発生を抑制することができる。
【0012】
前記原因パラメータは、前記内燃機関に供給される燃料の圧力であることが好ましい。すなわち、噴射圧力を増加させることにより、失火が回復するため、トルクが増加するが、その増加量には内燃機関運転状態に基づく上限値が設定されている。噴射圧力の過増加は例えばNOxを増加させる。本装置では、燃料圧力の増加によってトルク低下を補償しつつ、上述のように上限値を設定することで、内燃機関の状態を原因とする不具合、特に、燃焼圧力の増加に伴うNOxの発生を抑制することができる。
【0013】
前記原因パラメータは、前記内燃機関に供給される燃料の空燃比目標値であることが好ましい。すなわち、空燃比目標値を増加(リッチ側)させることにより、失火が回復するため、トルクが増加するが、その増加量には内燃機関運転状態に基づく上限値が設定されている。空燃比目標値の過増加は例えばCOや未燃THCを増加させると共に燃費を劣化させる。本装置では、空燃比目標値の増加によってトルク低下を補償しつつ、上述のように上限値を設定することで、内燃機関の状態を原因とする不具合、特に、空燃比目標値の増加に伴うCOや未燃THCの劣化を抑制することができる。
【0014】
また、前記内燃機関から排出される排気ガス中のNOX量、PM量並びに未燃THC量、前記内燃機関の燃焼騒音の大きさ、前記内燃機関の燃費、及び前記内燃機関の排気温度の少なくともいずれか1つを、前記内燃機関運転状態を示す状態パラメータとした場合に、前記所定値の上限値は、前記状態パラメータ群から選択される少なくとも2つの状態パラメータからそれぞれ求められる前記所定値の上限値のうち最も小さいものであることを特徴とする。
【0015】
すなわち、2つ以上の内燃機関運転状態を設定しておき、その中で上記所定値に対して最も小さい上限を要求するものに対して、これ以下に所定値を設定すれば、残りの内燃機関運転状態も良好とすることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、実施の形態に係る内燃機関制御装置について説明する。なお、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0017】
図1は内燃機関及びその制御装置(ECU:内燃機関制御ユニットを含む)を示すブロック図である。
【0018】
内燃機関Eは、(1)吸入(吸気)工程、(2)圧縮工程、(3)燃焼(膨張)工程、(4)排気工程を繰り返す4サイクルの動力源であり、燃焼工程におけるエネルギーによってピストンにリンクしたクランクシャフトCを回転させている。燃焼工程において用いられる燃料は、インジェクタIから内燃機関Eの燃焼室内に供給される。吸入工程において吸入される空気は吸気経路SAを介して燃焼室内に導入され、燃焼した燃料は排気工程において排気ガスとして排気経路EAを介して排気される。
【0019】
排気ガスは、NOx(窒素酸化物)、PM(粒子状物質:スス)、未燃THC(炭化水素)及びCO(一酸化炭素)を含んでいる。
【0020】
なお、NOxは、燃焼温度が高いときに空気中の窒素が酸素と結合して発生するものであり、加速時に多く発生する傾向がある。HCは減速時などの過濃混合気による失火、燃焼室壁面付近の燃え残りガスなど生ガスの排出により発生する傾向がある。COは過濃混合気による不完全燃焼により発生するものであり、アイドリング時に多く発生する傾向がある。
【0021】
クランクシャフトCの回転角はクランク角センサCSによって検出され、クランク角センサCSの出力を電子制御ユニットECUでモニタすることにより、クランク角の回転数、すなわち、エンジン回転数を計測している。
【0022】
クランクシャフトCの駆動力は車輪Wに伝達され、車輪Wの回転数は車輪速センサSSから出力されるパルス数を、電子制御ユニットECUによってカウントすることによって検出される。車輪Wの回転数は車輪速(車速)である。
【0023】
アクセルALの角度はアクセル開度センサAによって計測されており、この出力が電子制御ユニットECUに入力されている。電子制御ユニットECUは、検出されたアクセル開度を用いて、燃料タンクFから燃料ポンプP及び蓄圧室(レール)Tを介してインジェクタIから燃料室に供給される燃料量を決定している。アクセル開度が大きいほど、供給される燃料量は大きくなる傾向がある。
【0024】
内燃機関EにおけるクランクシャフトCのトルクは、エンジン回転数及び車輪速に依存するものであり、電子制御ユニットECUは、予め記憶されたこれら3パラメータの関係に基づいて、トルクを求めることができる。このトルクはアクセル開度を用いて補正することもできる。
【0025】
さて、内燃機関Eにおいて失火が生じると、燃焼工程において燃料が燃焼しないため、トルクの低下が生じる。すなわち、電子制御ユニットECUは、トルクをモニタすることにより、内燃機関Eにおける失火を推定することができる。失火によらないトルク変動も考えられるため、目標トルクを基準とする特定の変動幅を超えてトルクが低下した場合には、電子制御ユニットECUは失火と判定することができる。
【0026】
このような失火が生じた場合、電子制御ユニットECUは失火の回復措置及びトルク増加措置を講じる。なお、失火が回復すると、失火によるトルク低下時よりもトルクは増加する。換言すれば、いずれの措置の場合においても、電子制御ユニットECUはトルク増加を行っている。
【0027】
このような措置を講じるため、電子制御ユニットECUは、好適には燃料噴射時期を進角する。進角を行うためには、燃料噴射タイミングを早めたり、ガソリンエンジンにおいては点火時期を早めたり、可変バルブタイミング制御を用いる場合にはバルク開閉タイミングを調整すればよい。
【0028】
すなわち、電子制御ユニットECUは、内燃機関Eのトルク変動量から内燃機関Eの失火を検出する失火検出手段と、失火検出手段によって検出された失火時において内燃機関Eのトルクが増加するよう、トルクを支配する原因パラメータ、本例では進角量を所定値ΔXだけ変化させるトルク増加手段とを備えている。
【0029】
ここで、排気ガスは上述のNOx等のエミッションを含んでいる。これらのエミッションの排出量は規制されるべきであり、トルク増加措置を講じたために、エミッションが増加することは好ましくない。
【0030】
そこで、本実施形態に係る電子制御ユニットにおいては、原因パラメータである進角量を所定値ΔXだけ変化させる場合に、所定値ΔXを内燃機関運転状態に基づいて決定された上限値XMAX以下に設定する。この内燃機関運転状態とは、本例の場合は間接的にはエミッションの量であり、このエミッション量が規定値よりも多くなると予測される場合には、エミッション量が規定値以内となるように所定値ΔXを制限する。
【0031】
すなわち、電子制御ユニットECUによれば、失火時においては内燃機関Eのトルクが増加するように原因パラメータ(例:進角量)が所定値だけ変化するが、この所定値ΔXが内燃機関運転状態に基づいて決定された上限値XMAX以下に設定されるので、内燃機関Eの運転状態自体の不具合或いは当該運転状態を起因とする不具合、すなわち、排気ガス中のNOX量増加、PM量並びに未燃THC(炭化水素)量増加、内燃機関Eの燃焼騒音の大きさの増加、内燃機関Eの燃費低下、及び内燃機関の排気温度上昇等を抑制することができる。
【0032】
図2は電子制御ユニットECUによる制御を説明するためのフローチャートである。内燃機関始動初期状態や特定のモードを実行する場合に、当該制御はスタートする。
【0033】
この制御がスタートすると、まず、入力された情報(エンジン回転数等)に基づいて内燃機関Eの発生するトルクを演算する(S1)。トルク演算方法は上述の通りである。
【0034】
次に、内燃機関運転状態に基づいてトルク変動許容範囲の演算を行う(S2)。すなわち、失火が生じなければ生じるトルク変動許容範囲を演算する。なお、失火が生じない試行実験において計測されるトルクを、各種センサからの出力と共に予め記憶装置内に格納しておき、演算時において、各種センサからの出力に対応するトルクを記憶装置内から読み出して、実験時に測定された変動幅を付加してトルク変動許容範囲としてもよい。
【0035】
次に、このように設定されたトルク変動許容範囲を、演算(測定)されたトルクが逸脱しているかどうかを判定する(S3)。判定結果がNOの場合、すなわち、演算されたトルクがトルク変動許容範囲内にある場合には、失火は生じていないものと推定し、失火状態判定フラグを下げる(S4)。一方、判定結果がYESの場合、すなわち、演算されたトルクがトルク変動許容範囲外にある場合には、失火が生じているものとして、失火状態判定フラグを上げる(S5)。
【0036】
以上の制御フローが失火判定プログラムとなる。
【0037】
失火判定において、失火判定フラグが上がっている場合、トルクが減少するため、これを補償するようにトルク増加プログラムがスタートする。
【0038】
まず、失火によって生じるトルク減少量は測定されているので、現在の内燃機関Eの運転状態から、特定のトルク増加用原因パラメータ(例:進角量)の補正量(所定値ΔX)を演算する(S6)。原因パラメータが進角量の場合、補正量ΔXは進角補正量となる。この原因パラメータとしては、トルクを増加させるものであれば様々なものがあり、パイロット噴射燃料の燃料量、パイロット噴射燃料の噴射時期、内燃機関に供給される燃料圧力、内燃機関に供給される燃料の空燃比目標値等が列挙されるが、補正量ΔXは、それぞれのパラメータの補正量である。インジェクタIがアクチュエータ駆動するものである場合には、例えばパイロット噴射燃料の噴射時期は、アクチュエータの駆動タイミングであると換言することもできる。
【0039】
なお、パイロット噴射を行うと、また、このパイロット噴射燃料量を増加させると、或いは、パイロット噴射の時期をこの後に噴射される主燃料噴射時期に近づけると、主噴射燃料が燃料し易くなるため、失火状態が回復し、トルクが増加する。また、パイロット噴射燃料量を増加させたり、パイロット燃料噴射時期を主燃料噴射時期に近づけると、内燃機関Eの気筒内に過濃度領域が形成されるため、PM量が増加する傾向がある。
【0040】
次に、制御目標となる目標値を演算する(S7)。この目標値は、車両運転状態から算出されるトルクを基本値とし、失火によるトルク低下量を補う補正量ΔXを基本値に加算したものである。
【0041】
次に、エミッション量許容範囲の演算を行う(S8)。エミッション量は内燃機関運転状態を間接的に示すものである。エミッションとは、排気ガス中に含まれるNOx、PM、HC、CO等である。エミッションを触媒で処理する場合には、規定の排気ガスの浄化度を満たせるように、触媒温度、排気ガス流出量に基づいてエミッション量許容範囲を決定する。排気ガス流出量は燃料供給量やエンジン回転数等から求めることができ、内燃機関温度や触媒温度、空燃比から各エミッションの比率を推定することができ、したがって、各エミッションの絶対量を求めることができる。エミッション量許容範囲は固定値であってもよい。すなわち、内燃機関Eの排気ポートから噴出されるエミッションの許容範囲を設定し、この条件が満たせるように、補正量ΔXは制限されるのである。補正量ΔXの制限は以下のようにして行う。
【0042】
まず、エミッション量許容範囲内で、原因パラメータ(例:進角量)の補正量ΔXの上限値XMAXを設定する。すなわち、エミッション量と原因パラメータとの間には、一定の相関があるため、原因パラメータ(目標値)の値に相当するエミッション量が決定でき、この目標値から一意的に補正量ΔXの上限値XMAXが決定できる。
【0043】
上述の原因パラメータを、内燃機関Eの進角量とした場合、内燃機関Eを進角させることでトルクが増加するが、その進角量には内燃機関運転状態に基づく上限値が設定されるため、進角制御によってトルク低下を補償しつつ、内燃機関Eの運転状態を原因とする不具合を抑制することができる。
【0044】
次に、補正量ΔXと補正量上限値XMAXとを比較して小さい方を選択し、これに基本値を加えて新目標値として設定する(S10)。すなわち、トルク低下を補償するべき原因パラメータの補正量ΔXが、目標値となった場合には結果的にエミッション量許容範囲を超える状態を引き起こすものと推定される場合には、補正量ΔXを補正量上限値XMAXに固定し、逆に、トルク低下を補償するべき原因パラメータの補正量ΔXが補正量上限値XMAXに満たない場合には、この補正量ΔXを基本値に加えて新目標値とする。
【0045】
また、複数の内燃機関運転状態を与える状態パラメータ(例:NOx量、CO量)がある場合には、原因パラメータ(例:進角量)に対して、各状態パラメータが与える補正量ΔX(上限値との比較後の値)をそれぞれ求め、それぞれの最終補正量のもののうち、最小の値のものを選択して、最終的な補正量として決定する。
【0046】
また、複数の原因パラメータがある場合には、それぞれの原因パラメータの補正量ΔXと補正量上限値XMAXとを比較し、選択された方の値同士を原因パラメータ間で比較し、この比較の結果、最小の値を与えるものに基本値を加えて新目標値とする。
【0047】
以下、状態パラメータが複数である場合の制御例について説明する。
【0048】
まず、原因パラメータをパイロット噴射燃料の燃料量とし、状態パラメータをスモーク(smoke:PM)、NOx、未燃THCとした場合について説明する。
【0049】
図3は最終的な補正量ΔXを決定するための制御を説明するためのブロック図である。
【0050】
まず、現在の内燃機関付属のセンサ出力(エンジン回転数Ne、燃料噴射量Q、水温Tw、吸気温度Tha、トルクtrq等)を電子制御ユニットECUに入力する(S30)。ここでは、エンジン回転数Neと燃料噴射量Qに着目する。これらのエンジン回転数と燃料噴射量からエミッション(例:スモーク)量とトルクを求めることができる。
【0051】
次に、スモーク許容値算出手段(S31a)によって、スモーク(PM)量の許容値を上述の(S8)に従って算出し、次に、算出されたスモーク許容値を満足するパイロット噴射燃料の増加燃料量(補正量ΔX)をパイロット量探索手段によって変化させながら(S31b)、その場合に推定される排出スモーク量を排出スモーク推定手段によって各センサ出力の入力情報を元に推定し(S31c)、推定結果がスモーク許容値を満たすものをパイロット量探索手段によって決定して(S31b)、次段の最小パイロット量選択手段(S34)に伝達する。
【0052】
また、NOx許容値算出手段(S32a)によって、NOx量の許容値を上述の(S8)に従って算出し、次に、算出されたNOx許容値を満足するパイロット噴射燃料の増加燃料量(補正量ΔX)をパイロット量探索手段によって変化させながら(S32b)、その場合に推定される排出NOx量を排出NOx推定手段によって各センサ出力の入力情報を元に推定し(S32c)、推定結果がNOx許容値を満たすものをパイロット量探索手段によって決定して(S32b)、次段の最小パイロット量選択手段(S34)に伝達する。
【0053】
未燃THC許容値算出手段(S33a)によって、未燃THC量の許容値を上述の(S8)に従って算出し、次に、算出された未燃THC許容値を満足するパイロット噴射燃料の増加燃料量(補正量ΔX)をパイロット量探索手段によって変化させながら(S33b)、その場合に推定される排出未燃THC量を排出未燃THC推定手段によって各センサ出力の入力情報を元に推定し(S33c)、推定結果が未燃THC許容値を満たすものをパイロット量探索手段によって決定して(S33b)、次段の最小パイロット量選択手段(S34)に伝達する。
【0054】
以上のようにして最小パイロット量選択手段に伝達された3つの補正量ΔXを比較し、これらの中で最小の値を示すものを、最終的な補正量(パイロット量補正限界値)として決定し、この補正量を基本値に加えた目標値にパイロット噴射燃料量が一致するようにインジェクタIの開放期間及び/又は燃料圧力を制御する。
【0055】
このように、原因パラメータが、内燃機関Eに供給されるパイロット噴射燃料の燃料量である場合、パイロット噴射燃料を増量すると、失火が回復するため、トルクが増加するが、その増加量には内燃機関運転状態に基づく上限値が設定されている。パイロット噴射燃料の過増量はPMを発生させる。
【0056】
本装置では、パイロット燃料増加によってトルク低下を補償しつつ、上述のように上限値を設定することで、内燃機関Eの運転状態を原因とする不具合、特に、パイロット噴射燃料増加に伴うPMの発生を抑制することができる。
【0057】
次に、原因パラメータをパイロット噴射燃料の噴射時期とし、状態パラメータをスモーク(smoke:PM)、燃焼騒音、NOxとした場合について説明する。
【0058】
図4は最終的な補正量ΔXを決定するための制御を説明するためのブロック図である。
【0059】
まず、現在の内燃機関付属のセンサ出力(エンジン回転数Ne、燃料噴射量Q、水温Tw、吸気温度Tha、トルクtrq等)を電子制御ユニットECUに入力する(S40)。ここでは、エンジン回転数Neと燃料噴射量Qに着目する。これらのエンジン回転数と燃料噴射量からエミッション(例:スモーク)量、燃焼騒音及びトルクを求めることができる。
【0060】
次に、スモーク許容値算出手段(S41a)によって、スモーク量の許容値を上述の(S8)に従って算出し、次に、算出されたスモーク許容値を満足するパイロット噴射燃料の噴射時期遅延時間(補正量ΔX)をパイロット時期探索手段によって変化させながら(S41b)、その場合に推定される排出スモーク量を排出スモーク推定手段によって各センサ出力の入力情報を元に推定し(S41c)、推定結果がスモーク許容値を満たすものをパイロット時期探索手段によって決定して(S41b)、次段の最小パイロット時期(遅角)量選択手段(S44)に伝達する。
【0061】
燃焼騒音許容値算出手段(S42a)によって、燃焼騒音の許容値をエンジン回転数及び燃料噴射量に関連づけて算出し、次に、算出された燃焼騒音許容値を満足するパイロット噴射燃料の噴射時期遅延時間(補正量ΔX)をパイロット時期探索手段によって変化させながら(S42b)、その場合に推定される燃焼騒音を燃焼騒音推定手段によって各センサ出力の入力情報を元に推定し(S42c)、推定結果が燃焼騒音許容値を満たすものをパイロット時期探索手段によって決定して(S42b)、次段の最小パイロット時期選択手段(S44)に伝達する。
【0062】
また、NOx許容値算出手段(S43a)によって、NOx量の許容値を上述の(S8)に従って算出し、次に、算出されたNOx許容値を満足するパイロット噴射燃料の噴射時期遅延時間(補正量ΔX)をパイロット時期探索手段によって変化させながら(S43b)、その場合に推定される排出NOx量を排出NOx推定手段によって各センサ出力の入力情報を元に推定し(S43c)、推定結果がNOx許容値を満たすものをパイロット量探索手段によって決定して(S43b)、次段の最小パイロット時期選択手段(S43)に伝達する。
【0063】
以上のようにして最小パイロット時期選択手段に伝達された3つの補正量ΔXを比較し、これらの中で最小の値を示すものを、最終的な補正量(パイロット量補正限界値)として決定し、この補正量を基本値に加えた目標値にパイロット噴射燃料噴射時期(遅角量)が一致するようにインジェクタIの開放タイミングを制御する。
【0064】
このように、原因パラメータが内燃機関Eに供給されるパイロット噴射燃料の噴射時期である場合、パイロット噴射燃料の噴射時期を主燃料噴射時期に近づけることにより、失火が回復するため、トルクが増加するが、その増加量には内燃機関運転状態に基づく上限値が設定されている。パイロット噴射時期の過遅延はPMを発生させる。本装置では、パイロット噴射時期を主燃料の噴射時期に近づけることにより、すなわちパイロット噴射時期を遅延させることによってトルク低下を補償しつつ、上述のように上限値を設定することで、内燃機関Eの状態を原因とする不具合、特に、パイロット噴射時期遅延に伴うPMの発生を抑制することができる。
【0065】
次に、原因パラメータを燃料圧力(レール圧)とし、状態パラメータを燃焼騒音、燃費、NOxとした場合について説明する。
【0066】
図5は最終的な補正量ΔXを決定するための制御を説明するためのブロック図である。
【0067】
まず、現在の内燃機関付属のセンサ出力(エンジン回転数Ne、燃料噴射量Q、水温Tw、吸気温度Tha、トルクtrq等)を電子制御ユニットECUに入力する(S50)。ここでは、エンジン回転数Neと燃料噴射量Qに着目する。これらのエンジン回転数と燃料噴射量から燃焼騒音、燃費、エミッション(例:NOx)量を求めることができ、機関温度やポンプの提供する圧力からレール圧を求めることができる。
【0068】
燃焼騒音許容値算出手段(S51a)によって、燃焼騒音の許容値をエンジン回転数と燃料噴射量に対応づけて算出し、次に、算出された燃焼騒音許容値を満足する燃料圧力の増加量(補正量ΔX)をレール圧探索手段によって変化させながら(S51b)、その場合に推定される燃焼騒音を排出燃焼騒音推定手段によって各センサ出力の入力情報を元に推定し(S51c)、推定結果が燃焼騒音許容値を満たすものをレール圧探索手段によって決定して(S51b)、次段の最小レール圧選択手段(S54)に伝達する。
【0069】
次に、燃費許容値算出手段(S52a)によって、燃費の許容値をエンジン回転数及び燃料噴射量に対応づけて算出し、次に、算出された燃費の許容値を満足する噴射燃料の燃料圧力の増加量(補正量ΔX)をレール圧探索手段によって変化させながら(S52b)、その場合に推定される燃費を燃費推定手段によって各センサ出力の入力情報を元に推定し(S52c)、推定結果が燃費許容値を満たすものを燃費探索手段によって決定して(S52b)、次段の最小レール圧選択手段(S54)に伝達する。
【0070】
また、NOx許容値算出手段(S53a)によって、NOx量の許容値を上述の(S8)に従って算出し、次に、算出されたNOx許容値を満足する噴射燃料の燃料圧力の増加量(補正量ΔX)をレール圧探索手段によって変化させながら(S53b)、その場合に推定される排出NOx量を排出NOx推定手段によって各センサ出力の入力情報を元に推定し(S53c)、推定結果がNOx許容値を満たすものをレール圧探索手段によって決定して(S53b)、次段の最小レール圧選択手段(S53)に伝達する。
【0071】
以上のようにして最小レール圧選択手段に伝達された3つの補正量ΔXを比較し、これらの中で最小の値を示すものを、最終的な補正量(レール圧補正限界値)として決定し、この補正量を基本値に加えた目標値にレール圧が一致するように燃料ポンプPやバルブを制御する。
【0072】
このように、原因パラメータが内燃機関Eに供給される燃料の圧力である場合、噴射圧力を増加させることにより、失火が回復するため、トルクが増加するが、その増加量には内燃機関運転状態に基づく上限値が設定されている。噴射圧力の過増加は例えばNOxを増加させる。本装置では、燃料圧力の増加によってトルク低下を補償しつつ、上述のように上限値を設定することで、内燃機関Eの状態を原因とする不具合、特に、燃焼圧力の増加に伴うNOxの発生を抑制することができる。
【0073】
次に、原因パラメータを吸入ガス組成値(直接的な気筒内空燃比、EGR率、吸気O2濃度、新気量)とし、これらはいずれも燃焼に供する空燃比であるが、その目標値を原因パラメータとし、状態パラメータをNOx量、燃焼騒音とした場合について説明する。
【0074】
図6は最終的な補正量ΔXを決定するための制御を説明するためのブロック図である。
【0075】
まず、現在の内燃機関付属のセンサ出力(エンジン回転数Ne、燃料噴射量Q、水温Tw、吸気温度Tha、トルクtrq等)を電子制御ユニットECUに入力する(S60)。ここでは、エンジン回転数Neと燃料噴射量Qに着目する。これらのエンジン回転数と燃料噴射量から燃焼騒音、エミッション(例:NOx)量を求めることができ、直接的にはO2センサの出力から、また、間接的には機関温度と吸入空気量及び燃料噴射量から空燃比を求めることができる。
【0076】
NOx許容値算出手段(S61a)によって、NOx量の許容値を上述の(S8)に従って算出し、次に、算出されたNOx許容値を満足する吸入ガス組成値(空燃比目標値)の増加量(補正量ΔX)を吸入ガス組成値探索手段によって変化させながら(S61b)、その場合に推定される排出NOx量を排出NOx推定手段によって各センサ出力の入力情報を元に推定し(S61c)、推定結果がNOx許容値を満たすものを吸入ガス組成値探索手段によって決定して(S61b)、次段の最小吸入ガス組成値選択手段(S63)に伝達する。
【0077】
また、燃焼騒音許容値算出手段(S62a)によって、燃焼騒音の許容値をエンジン回転数と燃料噴射量に対応づけて算出し、次に、算出された燃焼騒音許容値を満足する吸入ガス組成値の増加量(補正量ΔX)を吸入ガス組成値探索手段によって変化させながら(S62b)、その場合に推定される燃焼騒音を燃焼騒音推定手段によって各センサ出力の入力情報を元に推定し(S62c)、推定結果が燃焼騒音許容値を満たすものを吸入ガス組成値探索手段によって決定して(S62b)、次段の最小吸入ガス組成値選択手段(S63)に伝達する。
【0078】
以上のようにして吸入ガス組成値選択手段に伝達された3つの補正量ΔXを比較し、これらの中で最小の値を示すものを、最終的な補正量(吸入ガス組成値補正限界値)として決定し、この補正量を基本値に加えた目標値に吸入ガス組成値が一致するように燃料ポンプPやバルブ及びインジェクタIを制御する。
【0079】
このように、原因パラメータが内燃機関Eに供給される燃料の吸入ガス組成値(空燃比目標値)である場合、吸入ガス組成値(空燃比目標値)を増加(リッチ側)させることにより、失火が回復するため、トルクが増加するが、その増加量には内燃機関運転状態に基づく上限値が設定されている。吸入ガス組成値(空燃比目標値)の過増加は例えばCOや未燃THCを増加させると共に燃費を劣化させる。本装置では、吸入ガス組成値(空燃比目標値)の増加によってトルク低下を補償しつつ、上述のように上限値を設定することで、内燃機関Eの状態を原因とする不具合、特に、吸入ガス組成値(空燃比目標値)の増加に伴うCOや未燃THCの劣化を抑制することができる。
【0080】
また、状態パラメータとして排気温度を用いることとしてもよく、補正量の算出方法はNOx量の場合と同様である。
【0081】
上述の制御手法によれば、内燃機関Eから排出される排気ガス中のNOX量、PM量並びに未燃THC量、内燃機関Eの燃焼騒音の大きさ、内燃機関の燃費、及び内燃機関の排気温度の少なくともいずれか1つを、内燃機関運転状態を示す状態パラメータとした場合に、補正量(所定値)ΔXの上限値は、状態パラメータ群から選択される少なくとも2つのパラメータ(例えば、NOx量とPM量)からそれぞれ求められる補正量ΔXの上限値のうち最も小さいものとされている。
【0082】
すなわち、2つ以上の内燃機関運転状態を設定しておき、その中で補正量ΔXに対して最も小さい上限を要求するもの(例:NOx量)に対して、これ以下に補正量ΔXを設定すれば、残りの内燃機関運転状態(例:PM量)も良好とすることができる。
【0083】
なお、上記ではエンジン回転数等に基づいてトルク変動量を判定し、このトルク変動量から失火状態を検出しているが、内燃機関Eが気筒内圧力を検出する筒内圧センサを具備する場合には、このセンサの出力に基づいて間接的にトルク変動を検出することもできる。
【0084】
また、上記ではエンジン回転数等に基づいてトルク変動量を判定し、このトルク変動量から失火状態を検出しているが、排気経路EA内にTHC量又は濃度を検出するTHCセンサを具備している場合には、このセンサの出力に基づいて間接的にトルク変動を検出することもできる。
【0085】
【発明の効果】
本発明の内燃機関制御装置によれば、失火が生じた場合に内燃機関の運転状態を原因とする不具合を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】内燃機関及びその制御装置を示すブロック図である。
【図2】電子制御ユニットECUによる制御を説明するためのフローチャートである。
【図3】最終的な補正量ΔXを決定するための制御を説明するためのブロック図である。
【図4】最終的な補正量ΔXを決定するための制御を説明するためのブロック図である。
【図5】最終的な補正量ΔXを決定するための制御を説明するためのブロック図である。
【図6】最終的な補正量ΔXを決定するための制御を説明するためのブロック図である。
【符号の説明】
A…アクセル開度センサ、AL…アクセル、C…クランクシャフト、CS…クランク角センサ、E…内燃機関、EA…排気経路、ECU…電子制御ユニット、F…燃料タンク、I…インジェクタ、P…燃料ポンプ、SA…吸気経路、SS…車輪速センサ、W…車輪。
Claims (7)
- 内燃機関のトルク変動量から前記内燃機関の失火を検出する失火検出手段と、前記失火検出手段によって検出された失火時において前記内燃機関のトルクが増加するよう、前記トルクを支配する原因パラメータを所定値だけ変化させるトルク増加手段とを備えた内燃機関制御装置において、
前記所定値を内燃機関運転状態に基づいて決定された上限値以下に設定することを特徴とする内燃機関制御装置。 - 前記原因パラメータは、前記内燃機関の進角量であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関制御装置。
- 前記原因パラメータは、前記内燃機関に供給されるパイロット噴射燃料の燃料量であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関制御装置。
- 前記原因パラメータは、前記内燃機関に供給されるパイロット噴射燃料の噴射時期であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関制御装置。
- 前記原因パラメータは、前記内燃機関に供給される燃料の圧力であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関制御装置。
- 前記原因パラメータは、前記内燃機関に供給される燃料の空燃比目標値であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関制御装置。
- 前記内燃機関から排出される排気ガス中のNOX量、PM量並びに未燃THC量、前記内燃機関の燃焼騒音の大きさ、前記内燃機関の燃費、及び前記内燃機関の排気温度の少なくともいずれか1つを、前記内燃機関運転状態を示す状態パラメータとした場合に、
前記所定値の上限値は、前記状態パラメータ群から選択される少なくとも2つのパラメータからそれぞれ求められる前記所定値の上限値のうち最も小さいものであることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関制御装置。
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-
2002
- 2002-08-30 JP JP2002255965A patent/JP2004092542A/ja active Pending
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