JP2004092080A - 鉄骨架構、その構築方法、および制震構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】鉄骨架構、その構築方法および制震構造において、鋼管柱同士を溶接接合することなく、きわめて容易に構築できるとともに、地震などの外力を受けても鋼管柱の損傷を抑えることができるようにする。
【解決手段】鋼管柱2の下端に補強板6を設けて、その下面に鋼管柱2より先に変形する差込部3を設ける。そして水平方向には梁7を剛接して、剛接フレーム4を構成する。各差込部3を他の鋼管柱2の上端の開口2aから差し込んで組み立て、それぞれの剛接フレーム4を梁7aで剛接する。差込部3と差し込まれる鋼管柱2の中空部には隙間が空くようにしておく。そして、隣接する階の梁7、7aをそれぞれ粘性ダンパーにより結合する。
【選択図】 図1
【解決手段】鋼管柱2の下端に補強板6を設けて、その下面に鋼管柱2より先に変形する差込部3を設ける。そして水平方向には梁7を剛接して、剛接フレーム4を構成する。各差込部3を他の鋼管柱2の上端の開口2aから差し込んで組み立て、それぞれの剛接フレーム4を梁7aで剛接する。差込部3と差し込まれる鋼管柱2の中空部には隙間が空くようにしておく。そして、隣接する階の梁7、7aをそれぞれ粘性ダンパーにより結合する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄骨架構、その構築方法、および制震構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、鉄骨構造では、例えばH型鋼や鋼管を柱梁部材に用いて剛接合していた。
このような柱梁部材を剛接合して構築された鉄骨架構では、主体構造部材である柱梁部材が降伏後に延性を発揮することが期待できるため、主体構造部材の塑性変形により地震エネルギーを消費させることにより、建築物の安全性を確保するというのが耐震構造の基本であった。
特開平9−41481号公報(特許文献1)には、剛接合された柱梁架構に低降伏点鋼材による制震ブレースが設けられた鉄骨造または鉄骨鉄筋コンクリート造建物が記載されている。
特開2000−54681公報(特許文献2)には、梁の曲げ剛性よりも柱の曲げ剛性が小さい変形性能が大きい架構とし、さらに大きな粘弾性減衰を有する制震装置ユニットを備え、柱ユニット、梁ユニット、仕口ユニット、制震装置ユニットをボルト締結することにより剛接合した制震建物が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来の鉄骨架構には、以下のような問題があった。
H型鋼は開断面を有してボルト締結に適するのに対して、柱に使われることが多い鋼管は閉断面を有するため、架構組立に当たっては現場溶接による接合が必要である。このため、組立作業が風雨などの天候の影響を受けやすい。また溶接欠陥の探査検証などの管理作業も多く発生している。その結果、効率的な施工が難しく、施工工期が長くなりがちであるという問題があった。
また、従来の耐震構造は、主体構造部材の損傷と引き換えに建物全体の安全性を確保するというものだが、主体構造部材の損傷によって建て替えが必要となれば、経済的な打撃は大きい。また、建物が倒壊しないとしても、地震直後に立ち入りや仮使用が困難になれば、その社会的経済的な影響は深刻なものとなる。したがって、大地震を受けても主体構造部材がほとんど損傷を受けない構造、さらには地震直後であっても建物を継続的に使えるようにすることが強く求められている。
特許文献1に記載されている技術は、制震ブレースが先行して降伏し、地震エネルギーを吸収することができるが、柱梁架構が剛接合されているため、地震発生とともに変形量に対応した応力が柱梁架構の全体に発生する。したがって、倒壊はしないとしても、継続使用が困難となる柱梁架構の変形や損傷は起こる可能性も生じるという問題があった。
特許文献2に記載されている技術は、鋼管柱を用いるにもかかわらず、ボルト締結することができ、溶接接合する必要がない。また、柱ユニットを低剛性とすることで大きな弾性変形を実現して、制震効果を高めている。しかしながら、柱ユニットを階毎に分割し、仕口ユニットで結合するので、ボルト締結箇所は非常に多くなっていた。したがって、溶接接合に比べれば、欠陥検証などの施工性が改善されるものの、施工工期の面では、さらなる改善が強く要望されていた。
【0004】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、鋼管柱同士を溶接接合することなく、きわめて容易に構築できるとともに、地震などの外力を受けても鋼管柱の損傷を抑えることができる鉄骨架構、その構築方法および制震構造を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、鋼管柱を用いた多階建築物の鉄骨架構であって、上階側の鋼管柱と下階側の鋼管柱とが、鉛直方向には、それぞれの互いに対向する先端部に水平方向に設けられた板状の係止部を互いにつき合わせて係止され、水平方向には、前記上階側の鋼管柱と下階側の鋼管柱との一方の鋼管柱の前記係止部のほぼ中央に設けられた差込部が、前記上階側の鋼管柱と下階側の鋼管柱との他方の鋼管柱の先端の開口から中空部に向けてその外周に所定の隙間を空けて差し込まれることにより、位置規制されるように構成する。
この発明によれば、鋼管柱は互いに差し込まれて係止されているので、溶接接合しなくても構築でき、また、差込部が水平方向に隙間を空けて差し込まれるので、外力により隙間分を移動する間に鋼管柱に応力を発生させることなく、外力によるエネルギー消費を先行させることができる。
【0006】
なお、本発明に係る鋼管柱は、開口を有していて、差込部を差し込むことができればよく、鋼管のみからなる必要はない。例えば、開口部を残して鋼管内にコンクリートが充填されていてもかまわない。また、梁は、後述するように鋼管柱と剛接合できればよく、鉄骨のみからなる必要はない。したがって、本明細書では、鉄骨架構を広い意味で用いることとし、部分的にコンクリートを使用するもの、また鉄骨鉄筋コンクリート架構と称すべきものも、本発明の技術的思想が実現できる限りにおいては、鉄骨架構に含めるものとする。
【0007】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の鉄骨架構において、前記鋼管柱に、梁が剛接合された複数の剛接架構構成体を備える。
この発明によれば、剛接架構構成体が一体的に隙間内を剛体移動する間は、応力が発生せず剛接構成体内の変形損傷も起こらないから、地震初期動における被害を低減することができる。
【0008】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の鉄骨架構において、前記多階建築物が、前記剛接架構構成体を積み重ねて構築された構成とする。
この発明によれば、鉄骨架構を階毎に一体性を持たせることができるので、外力を受けても階毎の構造の安全性が確保されるとともに、階毎に容易に構築することができるから施工性が向上できる。
【0009】
請求項4に記載の発明では、請求項1〜3のいずれかに記載の鉄骨架構において、前記鉄骨架構が所定の外力を受けたとき、前記差込部が、該差込部が設けられた鋼管柱および前記差込部が差し込まれた前記鋼管柱が塑性変形するよりも先に変形するように構成する。
この発明によれば、所定の外力を受けたときに、鋼管柱が損傷する以前に差込部が変形するので、外力によるエネルギーを消費して、制震性を向上することができる。差込部の変形は、例えば、差込部が隙間内を移動し摩擦を受けながら変形したり、隙間内で傾斜してテコ作用により曲げを受けて変形したりすることなどが含まれる。
【0010】
請求項5に記載の発明では、鉄骨架構を用いた多階建築物の制震構造であって、前記鉄骨架構が請求項1〜4のいずれかに記載の鉄骨架構であり、互いに隣接する階間に、それぞれの相対振動を減衰させる制震デバイスが設けられた構成とする。
この発明によれば、制震デバイスにより階の間の相対振動を減衰して制震でき、特に、鋼管柱が隙間の間を移動して応力が発生しない初期に、先行して振動減衰を行うことができるので、鋼管柱に損傷を与えることなく制震することが可能である。
【0011】
請求項6に記載の発明では、請求項5に記載の制震構造において、前記鉄骨架構が請求項2に記載の鉄骨架構であり、前記制震デバイスが、上下方向に隣接する前記剛接架構構成体のそれぞれに固定される。
この発明によれば、各剛接架構構成体内では変形を抑えて堅牢を保ち、各剛接架構構成体間では制震デバイスにより減衰を付与して、効果的に振動減衰を図ることができる。
【0012】
請求項7に記載の発明では、鋼管柱を用いた多階建築物の鉄骨架構の構築方法であって、上階側の鋼管柱と下階側の鋼管柱とを、鉛直方向には、それぞれの互いに対向する先端部に板状の係止部を水平方向に設けて該係止部を互いにつき合わせて係止し、水平方向には、一方の鋼管柱の先端に設けられた差込部を他方の鋼管柱の先端の開口から中空部に向けてその外周に所定の隙間を空けて差し込んで、位置規制するように構築することを特徴とする鉄骨架構の構築方法を用いる。
この発明によれば、請求項1に記載の鉄骨架構を構築することができる。
【0013】
請求項8に記載の発明では、請求項7に記載の鉄骨架構の構築方法において、前記鋼管柱の梁を、該鋼管柱に剛接合した複数の剛接架構構成体を形成し、該剛接架構構成体を積み重ねて、前記多階建築物を構築する。
この発明によれば、請求項3に記載の鉄骨架構を構築することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。なお、すべての図面を通して、同一または相当する部材には、同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
本発明の実施の形態に係る鉄骨架構1について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る鉄骨架構1を説明するための斜視説明図である。図2(a)は、同じく鉄骨架構1の任意階における柱列配置を示すための概略平面図である。図2(b)は、図2(a)におけるB視方向の鉄骨架構1の概略側面図である。図3(a)は、図2(a)のA部の詳細を説明するための平面視の部分断面説明図である。図3(b)は、図3(a)におけるC視の部分断面図である。
【0015】
本実施形態に係る鉄骨架構1は、不図示の基礎の上に設けられ、完成後に、屋上付き8階建の建築物(図2(b)参照)となるものである。その各階の構造はほぼ同一で、階数に応じて材質や形状を変えることで部材剛性が調整されている。そこで、以下、階は特定せず、任意の階とその直上階について説明することにする。
【0016】
図1に示したのは、鉄骨架構1の一つの階の上に、直上階を構築している様子である。
鉄骨架構1の一つの階は、複数の鋼管柱2と、複数の梁7、7aと、粘性ダンパー11(制震デバイス、図2(b)参照)と、床部8とを備える。以下、一つの階から、粘性ダンパー11と床部8とを除いたものを、階フレームと称する。階を明示する場合には、階フレームF1、F2、…、F8と称する(図2(b)参照)。
【0017】
全体の概略構成を簡単に説明すると、鋼管柱2は、図2(a)に示したように、平面視で3×6の格子状に配列され、それぞれの間はその上端側で梁7または梁7aが剛接合されている。それぞれの鋼管柱2の上端には、最上階を除き、それぞれの上階の対応する鋼管柱2が係止され、地盤10から8階まで通して鉛直方向に荷重を伝達する柱を構成している。図2(b)に示したように、粘性ダンパー11は、梁7、7の階間に各階毎に設けられている。
【0018】
粘性ダンパー11は、地震などの外力により、それぞれが接合されている梁7、7が相対振動したときに、振動を減衰させる制震デバイスである。制震デバイスには、種々のものが知られているが、本実施形態では、粘性減衰を利用した粘性壁を採用している。粘性壁は、粘性減衰を有する粘性または粘弾性材料と複数の鋼板とを交互に積層した板状部材で、それぞれの鋼板の端部が設置階の梁7またはその下階の梁7と接続されている。このため、梁7、7が相対振動すると、粘性または粘弾性材料がせん断変形することにより振動エネルギーが消費されて減衰作用を備えるように構成されたものである。
【0019】
次に、図3を参照して、梁7、7a、鋼管柱2の詳細について説明する。
梁7、7aは、同規格のH型鋼により形成される。本実施形態では、梁7は、図1に示したように、あらかじめ複数の鋼管柱2と剛接合して一体化されたE字状の剛接フレーム4(剛接架構構成体)を形成するために用いるもので、鋼管柱2と梁7の剛接合は、溶接接合などが採用できる。これに対して、梁7aは、剛接フレーム4を下階側に建て込んだあとに、剛接フレーム4同士をそれぞれ剛接合するために用いるもので、梁7aには、あらかじめボルト孔を設けてボルト締結ができるように構成しておく。
【0020】
鋼管柱2(2A、2B)は、角型断面を有する鋼管を階間スパンに応じて切断し、下端の補強板6(板状の係止部)を設けた柱部材である。鋼管柱2の上端には、鋼管断面からなる開口2aが残され、その外周に梁7、7aの上下面と接合するため、それぞれ外ダイヤフラム5a、5bが設けられている。外ダイヤフラム5aは、開口2aと同一面に配置され、鋼管柱2の板状の係止部ともなっている。すなわち、鋼管柱2Aの補強板6と、鋼管柱2Bの外ダイヤフラム5aとは、互いに対向する2平面をなし、鉛直方向に当接しあうことにより係止される。
また、補強板6の下面には、差込部3が形成されている。
【0021】
補強板6は、外形が鋼管柱2の鋼管外形より大きい鋼板からなり、鋼管柱2Aの下端に、鋼管柱2Aの外周から水平方向に延出するフランジ部6aをなすように、例えば溶接などによって接合されている。補強板6は、適宜の板厚とすることにより、所定外力を受けて差込部3が変形したときにもフランジ部6aの平面が保たれるように構成される。
【0022】
差込部3は、鋼管柱2より外形が小さい角型断面を有する鋼管で構成され、下階側の鋼管柱2Bの開口2aから内部の中空部に差し込めるようになっている。すなわち、差し込まれた状態では、差込部3と鋼管柱2Bの先端の中空部内面との間に隙間13が形成されている。
【0023】
図4に示したのは、鋼管柱2Aを上方から鋼管柱2Bに差し込んで組み立ている様子である。このような組立工程では、隙間13が、差込部3の周りにほぼ等間隔に形成されるようにする。隙間13の大きさは必要に応じて設定すればよいが、例えば、後述する部材諸元の例では、1cm程度が適切であった。
【0024】
また、差込部3は、鉄骨架構1に地震などの外力が作用したとき、所定外力を受けても、軸力が発生することはないので、鋼管柱2Aまたは2Bより小さい断面であっても同等の耐力を確保でき、先に降伏することはない。
差込部3の上下方向の長さは、当該階の梁丈より大きくし、梁鉄骨の下フランジ(外ダイヤフラム5b)以上の長さとする(テコ作用が生じるように)。
【0025】
床部8は、鋼管柱2を拘束することなく通す通し孔を設けたデッキプレートにコンクリートを打設して形成され、梁7、7aに架設されている。
【0026】
次に、鉄骨架構1の構築方法について説明する。
まず、鋼管柱2と差込部3とは、あらかじめ溶接などにより接合しておく。そして、複数の鋼管柱2と梁7を溶接などにより剛接合して、剛接フレーム4を製作する。以上の工程は、工場製作で行うことができるから、施工現場の作業環境や自然環境に左右されずに効率よく行うことができる。
【0027】
1階の施工では、剛接フレーム4を基礎(不図示)の上に設置し、各剛接フレーム4の間に梁7aを配置して、梁7に直交する方向に順次ボルト締結して、剛接合し、階フレームF1を形成する。その際、鋼管柱2の柱頭に昇ってボルト締結する高所作業が発生するが、鋼管柱2は、剛接フレーム4として一体化されて安定した構造物となっているので、孤立した鋼管柱2に順次梁7を締結していく不安定な作業と比べて、作業性、安全性に優れた作業となる。
さらに、梁7の適宜箇所に粘性ダンパー11を設置する。
そして、開口2aおよび外ダイヤフラム5aの部分が通し孔に入るように、デッキプレートを梁7、7a上に架設し、コンクリートを打設して、2階の床部8を形成する。
【0028】
上階部分は、図1に示したように、剛接フレーム4を、クレーン9ですでに完成した階の上方に吊り上げて、下階の対応する開口2aのほぼ中心位置に差込部3を差し込み、隙間13を設けた状態のまま下ろして、剛接フレーム4を順次配置する。
そして、1階と同様に、各剛接フレーム4の間に梁7aを配置して、梁7に直交する方向に順次ボルト締結して剛接合し、階フレームF2を形成し、粘性ダンパー11を設置して、床部8を設ける。
これらを繰り返すことにより、鉄骨架構1を構築することができる。
【0029】
このような鉄骨架構1の構築方法によれば、施工現場では、溶接を用いずに施工できるので、雨天でも施工可能となり、天候による施工遅延を防止することができる。
また、溶接検査などの施工時の管理作業を減らして、施工の合理化を図ることができる。
また、鋼管柱2の上下方向は差込式とするため、ボルト締結箇所が大幅に減り、施工作業そのものが簡素化されるので、工期短縮を図ることができる。しかも、人手による高所作業が減ることで、施工の安全性も向上することができる。
さらに、鋼管柱2をプレアセンブルして剛接フレーム4として組み立てることにより、施工作業の簡素化および施工信頼性のさらなる向上を図ることができる。このようなプレアセンブルの単位は、個別の施工形態、建築物の規模に応じて適宜実用的な組合せとすることができる。例えば、梁間に設けられる粘性ダンパー11を剛接フレーム4に加えておいてもよいし、剛接フレーム4を、フロア区画単位あるいは階フレーム単位で接合しておいてもよい。
【0030】
次に、鉄骨架構1の制震作用について説明する。
鉄骨架構1によれば、鉄骨架構1の自重を始めとする鉛直方向の荷重は、上階側の鋼管柱2Aの補強板6から、下階側の鋼管柱2Bの外ダイヤフラム5aを介して鋼管柱2Bに順次伝達され、最下端では基礎を通じて地盤10に伝達される。しかし、補強板6と外ダイヤフラム5aとは接合されていないので、両者が上下に離れる方向には拘束力が働かない。
【0031】
また、水平方向には、補強板6と外ダイヤフラム5aとの摩擦力が働くものの、機械的な拘束はされないので、隙間13内では、外力によるエネルギーを摩擦によって消費しながら移動することができる。(本実施形態では1階はこれに該当しないので、以下の説明からは除外する。)
したがって、鉄骨架構1に地震が作用すると、差込部3が鋼管柱2の中空部の内面と当接するまでの地震初期段階では、鉛直方向に鋼管柱2が圧縮される軸力による応力は発生するものの、縦揺れによる引抜方向成分および横揺れ成分の荷重に対しては、拘束が働かないため応力が発生しない。その結果、階フレームは剛体移動(平行移動、回転移動)する。
【0032】
その場合、引抜方向(上下に離間する方向)への移動は、上階の自重を越える荷重が作用しないと起こらない。本実施形態の規模の建築物であれば、そのような荷重が働くとしても特定の短スパン部位に瞬時的に作用するものである。この場合、過渡的には、特定の短スパン部位の近傍で鋼管柱2間の離間が起こるが、水平方向には拘束がないから、変形による応力がただちに同一階内に再配分されて、離間が解消される。したがって、差込部3が引き抜かれて鉄骨架構1が分離する事態は起こらないものである。
【0033】
階フレームが剛体移動すると、ある時間差をもって、差込部3が鋼管柱2の中空部の内面に当接し、さらに移動しようとすると水平方向の拘束が発生する。例えば、図5(a)に示したように、鋼管柱2Aが一方向に傾斜して、差込部3の下端が点Lに、上部が開口2a上の点Mに押圧されて拘束されるものである。このように、差込部3はいわゆる閂抵抗を受けて拘束される状態になる。このときの荷重状態は、図5(b)に示したように、差込部3が点L、Mに拘束されて、鋼管柱2Aの上端が自由端となる梁としてモデル化される。
【0034】
鋼管柱2、差込部3のいずれにも曲げ応力が働くが、差込部3は軸力を受けないため、柱一般部より曲げ耐力は高い。
また、鋼管柱2が振動して、差込部3が隙間13内で、がたつく場合もある。この場合も、がたつきの衝撃により繰り返し局部的な塑性変形が起こること、または差込部3と鋼管柱2Bとの間に摩擦が繰り返されることにより、振動エネルギーが消費され、振動が減衰される。
【0035】
いずれの場合も、鋼管柱2は、弾性限度内に置かれるから、損傷は発生しない。
さらに、鉄骨架構1は、粘性ダンパー11を備えるから、このように階フレーム間の相対振動は、粘性ダンパー11によって熱エネルギーに変換されることにより消費され、減衰される。
【0036】
このように、鉄骨架構1によれば、主体構造部材である鋼管柱2に損傷を与えることなく、階フレームをほぼ剛体に保ったままで、振動減衰を図ることができるから、地震を受けても、階内部の被害をきわめて少なくすることができる。その結果、地震直後でも継続的に使用し得る多階建築物を提供することができる。
【0037】
また、鉄骨架構1では、地震初期段階において、階フレームが隙間13内で剛体移動されるようにして、階フレームに応力が発生するまでの時間差を稼ぐから、地震初期に発生することが多い大きな地震動を避けやすいという利点がある。しかもその時間差の間にも、補強板6と外ダイヤフラム5aの摩擦と、粘性ダンパー11の制震作用とにより、地震エネルギーを確実に消費するから、主体構造の塑性変形が始まる以前に多くの地震エネルギーを減衰できるという利点がある。
【0038】
次に、本実施形態に係る鉄骨架構1の耐震性能について、下記の条件・部材諸元を用いて数値計算を行った結果により説明する。
基礎および地中梁(不図示)は、鉄筋コンクリート構造とし、FC=27N/mm2とした。
【0039】
鋼管柱2は、以下の通りである。
階フレーム 断面形状(単位:mm) 材質
F1〜F5 □500×500×16 SM490B
F6〜F8 □500×500×16 SN400B
【0040】
差込部3は、以下の通りである。
階フレーム 断面形状(単位:mm) 材質
F1〜F8 □450×450×19 SN400B
【0041】
梁7、7aは、以下の通りである。
階フレーム 断面形状(単位:mm) 材質
F1〜F2 H−700×250×12×22 SM490B
F3〜F4 H−650×250×12×19 SM490B
F5 H−600×250×12×19 SM490B
F6 H−600×200×12×16 SM490B
F7 H−500×200×9×16 SM490B
F8 H−450×200×9×16 SN400B
【0042】
床部8は、コンクリート厚15cmのデッキプレート構造とした。
外壁(不図示)は、ALCとした。
【0043】
粘性ダンパー11は、以下の通りである。
階フレーム 最大減衰力(MN)
F1〜F4 1.57
F5〜F8 0.98
【0044】
数値計算における部材復元力特性は、鋼管柱2は、軸力を考慮したバイリニアモデルとし、梁7、7aは、部材の降伏応力度に基づくバイリニアモデルとした。
地震波は、建築基準法告示波(WG64;524.9gal)とした。
【0045】
図6に示したのは、以上の諸条件により数値計算を行った結果である。
図6(a)は、各階ごとの応答変位x(鋼管柱2の下端の水平方向変位)をプロットしたものである。折れ線30aは、本実施形態による結果を示す。折れ線31aは、本実施形態から粘性ダンパー11を取り去った差込のみによる架構の場合(以下、差込架構と称する)の結果を示す。折れ線32aは、比較のために、制震デバイスのない剛接架構の場合(以下、剛接架構と称する。)の結果を示す。横軸は、応答変位xを示し、単位は、cmである。縦軸は、階数を示す。ただし、屋上Rは、8階の鋼管柱2の上端の変位の意味である。
図6(a)によれば、いずれの場合も、階数が増すにしたがって変位が大きくなるが、本実施形態は、剛接架構に比べて約3分の1程度の変位に収まっている。
【0046】
図6(b)は、各階ごとに、その変形量を鋼管柱2の鉛直方向の傾斜角で表した層間変形角γで表してプロットしたものである。折れ線30b、31b、32bは、それぞれ、本実施形態、差込架構、剛接架構の場合の結果を示す。横軸は、層間変形角γを示し、単位は、radである。縦軸は、階フレームに対応した層の数を示す。
図6(b)によれば、本実施形態が最も変形量が少なくなっていることが分かる。また、差込架構の場合、2階(層)以上は変形が大きいが、1階(層)の変形量は、本実施形態と同程度に小さくなっている。
【0047】
図6(c)は、各階ごとの鋼管柱2の材端塑性率μの最大値をプロットしたものである。地震力を受けた時に、各部材は材端での応力が最大値を示し、材案から降伏が始まる。このため、各材端での応力と変形(例えば、曲げモーメントと回転角)の関係を求めておき、材端が降伏(降伏曲げモーメント)に至った時の変形に対する変形の比を「材端塑性率μ」と呼ぶ。折れ線30c、31c、32cは、それぞれ、本実施形態、差込架構、剛接架構の場合の結果を示す。横軸は、鋼管柱2の材端塑性率μを示し、無単位である。縦軸は、階フレームに対応した層の数を示す。
図6(c)によれば、本実施形態が最も塑性率が少なくなっており、上階ほど小さくなっていくことが分かる。材端塑性率が1以下であることは主体構造が降伏しないことを意味し、したがって、鋼管柱2の損傷防止効果が高いことが分かる。
【0048】
図6(d)は、各階の梁7、7aの材端塑性率μをプロットしたものである。折れ線30d、31d、32dは、それぞれ、本実施形態、差込架構、剛接架構の場合の結果を示す。横軸は、梁7、7aの材端塑性率μを示し、無単位である。縦軸は、階数を示す。ここで、梁7、7aは、階を支える梁を示している。屋上Rの梁は階フレームF8の梁である。また、1階の梁は、鉄骨架構1を構成しない不図示の地中梁である。
図6(d)によれば、本実施形態が最も塑性率が少なくなっており、梁7に対しても損傷防止効果が高いことが分かる。
また、図6(c)、(d)によれば、差込架構は、鋼管柱2、梁7、7aとも低階部分では、剛接架構よりも損傷されにくくなっていることが分かる。
【0049】
このように、本実施形態に係る鉄骨架構1では、地震エネルギーの消費を差込部3の変形や、粘性ダンパー11により吸収するため、地震を受けても、鋼管柱2、梁7、7aは塑性変形を起こしにくくなっている。加えて、各階フレームの変形量も少なくなっている。
【0050】
したがって、鉄骨架構1によれば、告示波程度大地震の地震を受けた場合でも、材端塑性率が小さく、柱、梁などの主要構造部材にほとんど損傷のない状態に保つことができ、地震直後でも継続使用に耐え得る多階建築物とすることができる。また、階毎に鋼管柱2が分断されている構造をとっているから、損傷を受けた部材も比較的に容易に交換することができて、長寿命化を図ることができるという利点もある。
さらに、柱や梁の主体構造部材は、建築物自重を対象として設計すればよく、耐震強度を増すために過剰な強度を付与する必要がなく、簡素で経済的な構造として設計することができる。
【0051】
なお、上記の説明では、粘性ダンパー11が、図2のように配置されるとして説明したが、これは、粘性ダンパー11の振動減衰量や、想定地震規模などに応じて、適宜の配置をすればよく、配置の数やパタンは、これに限るものではない。
【0052】
また、上記の説明では、粘性ダンパー11は、粘性壁として説明したが、振動減衰を可能とする制震デバイスであれば、どのようなものでもよい。例えば、粘性または粘弾性材料を用いた制震ブレースを用いてもよいし、動吸振器を用いたものでもよい。
【0053】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明の鉄骨架構、その構築方法および制震構造によれば、鋼管柱同士を溶接接合することなく、きわめて容易に構築できるとともに、地震などの外力を受けても鋼管柱の損傷を抑えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る鉄骨架構を説明するための斜視説明図である。
【図2】同じくその鉄骨架構の柱列配置と側面視の概略構成を説明するための平面視断面図および側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る鋼管柱の係止の様子を説明するための正面視および平面視の説明図である。
【図4】本発明の実施形態に係る鋼管柱を差し込んで組み立てる様子を説明するための正面視説明図である。
【図5】本発明の実施形態に係る鋼管柱が外力により移動された様子を説明するための正面視説明図である。
【図6】本発明の実施形態に係る鉄骨架構の一例において、地震外力を加えた場合の数値計算結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 鉄骨架構
2 鋼管柱
2a 開口
3 差込部
4 剛接フレーム(剛接架構構成体)
5a 外ダイヤフラム(板状の係止部)
6 補強板(板状の係止部)
7、7a 梁
8 床部
11 粘性ダンパー(制震デバイス)
13 隙間
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄骨架構、その構築方法、および制震構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、鉄骨構造では、例えばH型鋼や鋼管を柱梁部材に用いて剛接合していた。
このような柱梁部材を剛接合して構築された鉄骨架構では、主体構造部材である柱梁部材が降伏後に延性を発揮することが期待できるため、主体構造部材の塑性変形により地震エネルギーを消費させることにより、建築物の安全性を確保するというのが耐震構造の基本であった。
特開平9−41481号公報(特許文献1)には、剛接合された柱梁架構に低降伏点鋼材による制震ブレースが設けられた鉄骨造または鉄骨鉄筋コンクリート造建物が記載されている。
特開2000−54681公報(特許文献2)には、梁の曲げ剛性よりも柱の曲げ剛性が小さい変形性能が大きい架構とし、さらに大きな粘弾性減衰を有する制震装置ユニットを備え、柱ユニット、梁ユニット、仕口ユニット、制震装置ユニットをボルト締結することにより剛接合した制震建物が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来の鉄骨架構には、以下のような問題があった。
H型鋼は開断面を有してボルト締結に適するのに対して、柱に使われることが多い鋼管は閉断面を有するため、架構組立に当たっては現場溶接による接合が必要である。このため、組立作業が風雨などの天候の影響を受けやすい。また溶接欠陥の探査検証などの管理作業も多く発生している。その結果、効率的な施工が難しく、施工工期が長くなりがちであるという問題があった。
また、従来の耐震構造は、主体構造部材の損傷と引き換えに建物全体の安全性を確保するというものだが、主体構造部材の損傷によって建て替えが必要となれば、経済的な打撃は大きい。また、建物が倒壊しないとしても、地震直後に立ち入りや仮使用が困難になれば、その社会的経済的な影響は深刻なものとなる。したがって、大地震を受けても主体構造部材がほとんど損傷を受けない構造、さらには地震直後であっても建物を継続的に使えるようにすることが強く求められている。
特許文献1に記載されている技術は、制震ブレースが先行して降伏し、地震エネルギーを吸収することができるが、柱梁架構が剛接合されているため、地震発生とともに変形量に対応した応力が柱梁架構の全体に発生する。したがって、倒壊はしないとしても、継続使用が困難となる柱梁架構の変形や損傷は起こる可能性も生じるという問題があった。
特許文献2に記載されている技術は、鋼管柱を用いるにもかかわらず、ボルト締結することができ、溶接接合する必要がない。また、柱ユニットを低剛性とすることで大きな弾性変形を実現して、制震効果を高めている。しかしながら、柱ユニットを階毎に分割し、仕口ユニットで結合するので、ボルト締結箇所は非常に多くなっていた。したがって、溶接接合に比べれば、欠陥検証などの施工性が改善されるものの、施工工期の面では、さらなる改善が強く要望されていた。
【0004】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、鋼管柱同士を溶接接合することなく、きわめて容易に構築できるとともに、地震などの外力を受けても鋼管柱の損傷を抑えることができる鉄骨架構、その構築方法および制震構造を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、鋼管柱を用いた多階建築物の鉄骨架構であって、上階側の鋼管柱と下階側の鋼管柱とが、鉛直方向には、それぞれの互いに対向する先端部に水平方向に設けられた板状の係止部を互いにつき合わせて係止され、水平方向には、前記上階側の鋼管柱と下階側の鋼管柱との一方の鋼管柱の前記係止部のほぼ中央に設けられた差込部が、前記上階側の鋼管柱と下階側の鋼管柱との他方の鋼管柱の先端の開口から中空部に向けてその外周に所定の隙間を空けて差し込まれることにより、位置規制されるように構成する。
この発明によれば、鋼管柱は互いに差し込まれて係止されているので、溶接接合しなくても構築でき、また、差込部が水平方向に隙間を空けて差し込まれるので、外力により隙間分を移動する間に鋼管柱に応力を発生させることなく、外力によるエネルギー消費を先行させることができる。
【0006】
なお、本発明に係る鋼管柱は、開口を有していて、差込部を差し込むことができればよく、鋼管のみからなる必要はない。例えば、開口部を残して鋼管内にコンクリートが充填されていてもかまわない。また、梁は、後述するように鋼管柱と剛接合できればよく、鉄骨のみからなる必要はない。したがって、本明細書では、鉄骨架構を広い意味で用いることとし、部分的にコンクリートを使用するもの、また鉄骨鉄筋コンクリート架構と称すべきものも、本発明の技術的思想が実現できる限りにおいては、鉄骨架構に含めるものとする。
【0007】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の鉄骨架構において、前記鋼管柱に、梁が剛接合された複数の剛接架構構成体を備える。
この発明によれば、剛接架構構成体が一体的に隙間内を剛体移動する間は、応力が発生せず剛接構成体内の変形損傷も起こらないから、地震初期動における被害を低減することができる。
【0008】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の鉄骨架構において、前記多階建築物が、前記剛接架構構成体を積み重ねて構築された構成とする。
この発明によれば、鉄骨架構を階毎に一体性を持たせることができるので、外力を受けても階毎の構造の安全性が確保されるとともに、階毎に容易に構築することができるから施工性が向上できる。
【0009】
請求項4に記載の発明では、請求項1〜3のいずれかに記載の鉄骨架構において、前記鉄骨架構が所定の外力を受けたとき、前記差込部が、該差込部が設けられた鋼管柱および前記差込部が差し込まれた前記鋼管柱が塑性変形するよりも先に変形するように構成する。
この発明によれば、所定の外力を受けたときに、鋼管柱が損傷する以前に差込部が変形するので、外力によるエネルギーを消費して、制震性を向上することができる。差込部の変形は、例えば、差込部が隙間内を移動し摩擦を受けながら変形したり、隙間内で傾斜してテコ作用により曲げを受けて変形したりすることなどが含まれる。
【0010】
請求項5に記載の発明では、鉄骨架構を用いた多階建築物の制震構造であって、前記鉄骨架構が請求項1〜4のいずれかに記載の鉄骨架構であり、互いに隣接する階間に、それぞれの相対振動を減衰させる制震デバイスが設けられた構成とする。
この発明によれば、制震デバイスにより階の間の相対振動を減衰して制震でき、特に、鋼管柱が隙間の間を移動して応力が発生しない初期に、先行して振動減衰を行うことができるので、鋼管柱に損傷を与えることなく制震することが可能である。
【0011】
請求項6に記載の発明では、請求項5に記載の制震構造において、前記鉄骨架構が請求項2に記載の鉄骨架構であり、前記制震デバイスが、上下方向に隣接する前記剛接架構構成体のそれぞれに固定される。
この発明によれば、各剛接架構構成体内では変形を抑えて堅牢を保ち、各剛接架構構成体間では制震デバイスにより減衰を付与して、効果的に振動減衰を図ることができる。
【0012】
請求項7に記載の発明では、鋼管柱を用いた多階建築物の鉄骨架構の構築方法であって、上階側の鋼管柱と下階側の鋼管柱とを、鉛直方向には、それぞれの互いに対向する先端部に板状の係止部を水平方向に設けて該係止部を互いにつき合わせて係止し、水平方向には、一方の鋼管柱の先端に設けられた差込部を他方の鋼管柱の先端の開口から中空部に向けてその外周に所定の隙間を空けて差し込んで、位置規制するように構築することを特徴とする鉄骨架構の構築方法を用いる。
この発明によれば、請求項1に記載の鉄骨架構を構築することができる。
【0013】
請求項8に記載の発明では、請求項7に記載の鉄骨架構の構築方法において、前記鋼管柱の梁を、該鋼管柱に剛接合した複数の剛接架構構成体を形成し、該剛接架構構成体を積み重ねて、前記多階建築物を構築する。
この発明によれば、請求項3に記載の鉄骨架構を構築することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。なお、すべての図面を通して、同一または相当する部材には、同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
本発明の実施の形態に係る鉄骨架構1について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る鉄骨架構1を説明するための斜視説明図である。図2(a)は、同じく鉄骨架構1の任意階における柱列配置を示すための概略平面図である。図2(b)は、図2(a)におけるB視方向の鉄骨架構1の概略側面図である。図3(a)は、図2(a)のA部の詳細を説明するための平面視の部分断面説明図である。図3(b)は、図3(a)におけるC視の部分断面図である。
【0015】
本実施形態に係る鉄骨架構1は、不図示の基礎の上に設けられ、完成後に、屋上付き8階建の建築物(図2(b)参照)となるものである。その各階の構造はほぼ同一で、階数に応じて材質や形状を変えることで部材剛性が調整されている。そこで、以下、階は特定せず、任意の階とその直上階について説明することにする。
【0016】
図1に示したのは、鉄骨架構1の一つの階の上に、直上階を構築している様子である。
鉄骨架構1の一つの階は、複数の鋼管柱2と、複数の梁7、7aと、粘性ダンパー11(制震デバイス、図2(b)参照)と、床部8とを備える。以下、一つの階から、粘性ダンパー11と床部8とを除いたものを、階フレームと称する。階を明示する場合には、階フレームF1、F2、…、F8と称する(図2(b)参照)。
【0017】
全体の概略構成を簡単に説明すると、鋼管柱2は、図2(a)に示したように、平面視で3×6の格子状に配列され、それぞれの間はその上端側で梁7または梁7aが剛接合されている。それぞれの鋼管柱2の上端には、最上階を除き、それぞれの上階の対応する鋼管柱2が係止され、地盤10から8階まで通して鉛直方向に荷重を伝達する柱を構成している。図2(b)に示したように、粘性ダンパー11は、梁7、7の階間に各階毎に設けられている。
【0018】
粘性ダンパー11は、地震などの外力により、それぞれが接合されている梁7、7が相対振動したときに、振動を減衰させる制震デバイスである。制震デバイスには、種々のものが知られているが、本実施形態では、粘性減衰を利用した粘性壁を採用している。粘性壁は、粘性減衰を有する粘性または粘弾性材料と複数の鋼板とを交互に積層した板状部材で、それぞれの鋼板の端部が設置階の梁7またはその下階の梁7と接続されている。このため、梁7、7が相対振動すると、粘性または粘弾性材料がせん断変形することにより振動エネルギーが消費されて減衰作用を備えるように構成されたものである。
【0019】
次に、図3を参照して、梁7、7a、鋼管柱2の詳細について説明する。
梁7、7aは、同規格のH型鋼により形成される。本実施形態では、梁7は、図1に示したように、あらかじめ複数の鋼管柱2と剛接合して一体化されたE字状の剛接フレーム4(剛接架構構成体)を形成するために用いるもので、鋼管柱2と梁7の剛接合は、溶接接合などが採用できる。これに対して、梁7aは、剛接フレーム4を下階側に建て込んだあとに、剛接フレーム4同士をそれぞれ剛接合するために用いるもので、梁7aには、あらかじめボルト孔を設けてボルト締結ができるように構成しておく。
【0020】
鋼管柱2(2A、2B)は、角型断面を有する鋼管を階間スパンに応じて切断し、下端の補強板6(板状の係止部)を設けた柱部材である。鋼管柱2の上端には、鋼管断面からなる開口2aが残され、その外周に梁7、7aの上下面と接合するため、それぞれ外ダイヤフラム5a、5bが設けられている。外ダイヤフラム5aは、開口2aと同一面に配置され、鋼管柱2の板状の係止部ともなっている。すなわち、鋼管柱2Aの補強板6と、鋼管柱2Bの外ダイヤフラム5aとは、互いに対向する2平面をなし、鉛直方向に当接しあうことにより係止される。
また、補強板6の下面には、差込部3が形成されている。
【0021】
補強板6は、外形が鋼管柱2の鋼管外形より大きい鋼板からなり、鋼管柱2Aの下端に、鋼管柱2Aの外周から水平方向に延出するフランジ部6aをなすように、例えば溶接などによって接合されている。補強板6は、適宜の板厚とすることにより、所定外力を受けて差込部3が変形したときにもフランジ部6aの平面が保たれるように構成される。
【0022】
差込部3は、鋼管柱2より外形が小さい角型断面を有する鋼管で構成され、下階側の鋼管柱2Bの開口2aから内部の中空部に差し込めるようになっている。すなわち、差し込まれた状態では、差込部3と鋼管柱2Bの先端の中空部内面との間に隙間13が形成されている。
【0023】
図4に示したのは、鋼管柱2Aを上方から鋼管柱2Bに差し込んで組み立ている様子である。このような組立工程では、隙間13が、差込部3の周りにほぼ等間隔に形成されるようにする。隙間13の大きさは必要に応じて設定すればよいが、例えば、後述する部材諸元の例では、1cm程度が適切であった。
【0024】
また、差込部3は、鉄骨架構1に地震などの外力が作用したとき、所定外力を受けても、軸力が発生することはないので、鋼管柱2Aまたは2Bより小さい断面であっても同等の耐力を確保でき、先に降伏することはない。
差込部3の上下方向の長さは、当該階の梁丈より大きくし、梁鉄骨の下フランジ(外ダイヤフラム5b)以上の長さとする(テコ作用が生じるように)。
【0025】
床部8は、鋼管柱2を拘束することなく通す通し孔を設けたデッキプレートにコンクリートを打設して形成され、梁7、7aに架設されている。
【0026】
次に、鉄骨架構1の構築方法について説明する。
まず、鋼管柱2と差込部3とは、あらかじめ溶接などにより接合しておく。そして、複数の鋼管柱2と梁7を溶接などにより剛接合して、剛接フレーム4を製作する。以上の工程は、工場製作で行うことができるから、施工現場の作業環境や自然環境に左右されずに効率よく行うことができる。
【0027】
1階の施工では、剛接フレーム4を基礎(不図示)の上に設置し、各剛接フレーム4の間に梁7aを配置して、梁7に直交する方向に順次ボルト締結して、剛接合し、階フレームF1を形成する。その際、鋼管柱2の柱頭に昇ってボルト締結する高所作業が発生するが、鋼管柱2は、剛接フレーム4として一体化されて安定した構造物となっているので、孤立した鋼管柱2に順次梁7を締結していく不安定な作業と比べて、作業性、安全性に優れた作業となる。
さらに、梁7の適宜箇所に粘性ダンパー11を設置する。
そして、開口2aおよび外ダイヤフラム5aの部分が通し孔に入るように、デッキプレートを梁7、7a上に架設し、コンクリートを打設して、2階の床部8を形成する。
【0028】
上階部分は、図1に示したように、剛接フレーム4を、クレーン9ですでに完成した階の上方に吊り上げて、下階の対応する開口2aのほぼ中心位置に差込部3を差し込み、隙間13を設けた状態のまま下ろして、剛接フレーム4を順次配置する。
そして、1階と同様に、各剛接フレーム4の間に梁7aを配置して、梁7に直交する方向に順次ボルト締結して剛接合し、階フレームF2を形成し、粘性ダンパー11を設置して、床部8を設ける。
これらを繰り返すことにより、鉄骨架構1を構築することができる。
【0029】
このような鉄骨架構1の構築方法によれば、施工現場では、溶接を用いずに施工できるので、雨天でも施工可能となり、天候による施工遅延を防止することができる。
また、溶接検査などの施工時の管理作業を減らして、施工の合理化を図ることができる。
また、鋼管柱2の上下方向は差込式とするため、ボルト締結箇所が大幅に減り、施工作業そのものが簡素化されるので、工期短縮を図ることができる。しかも、人手による高所作業が減ることで、施工の安全性も向上することができる。
さらに、鋼管柱2をプレアセンブルして剛接フレーム4として組み立てることにより、施工作業の簡素化および施工信頼性のさらなる向上を図ることができる。このようなプレアセンブルの単位は、個別の施工形態、建築物の規模に応じて適宜実用的な組合せとすることができる。例えば、梁間に設けられる粘性ダンパー11を剛接フレーム4に加えておいてもよいし、剛接フレーム4を、フロア区画単位あるいは階フレーム単位で接合しておいてもよい。
【0030】
次に、鉄骨架構1の制震作用について説明する。
鉄骨架構1によれば、鉄骨架構1の自重を始めとする鉛直方向の荷重は、上階側の鋼管柱2Aの補強板6から、下階側の鋼管柱2Bの外ダイヤフラム5aを介して鋼管柱2Bに順次伝達され、最下端では基礎を通じて地盤10に伝達される。しかし、補強板6と外ダイヤフラム5aとは接合されていないので、両者が上下に離れる方向には拘束力が働かない。
【0031】
また、水平方向には、補強板6と外ダイヤフラム5aとの摩擦力が働くものの、機械的な拘束はされないので、隙間13内では、外力によるエネルギーを摩擦によって消費しながら移動することができる。(本実施形態では1階はこれに該当しないので、以下の説明からは除外する。)
したがって、鉄骨架構1に地震が作用すると、差込部3が鋼管柱2の中空部の内面と当接するまでの地震初期段階では、鉛直方向に鋼管柱2が圧縮される軸力による応力は発生するものの、縦揺れによる引抜方向成分および横揺れ成分の荷重に対しては、拘束が働かないため応力が発生しない。その結果、階フレームは剛体移動(平行移動、回転移動)する。
【0032】
その場合、引抜方向(上下に離間する方向)への移動は、上階の自重を越える荷重が作用しないと起こらない。本実施形態の規模の建築物であれば、そのような荷重が働くとしても特定の短スパン部位に瞬時的に作用するものである。この場合、過渡的には、特定の短スパン部位の近傍で鋼管柱2間の離間が起こるが、水平方向には拘束がないから、変形による応力がただちに同一階内に再配分されて、離間が解消される。したがって、差込部3が引き抜かれて鉄骨架構1が分離する事態は起こらないものである。
【0033】
階フレームが剛体移動すると、ある時間差をもって、差込部3が鋼管柱2の中空部の内面に当接し、さらに移動しようとすると水平方向の拘束が発生する。例えば、図5(a)に示したように、鋼管柱2Aが一方向に傾斜して、差込部3の下端が点Lに、上部が開口2a上の点Mに押圧されて拘束されるものである。このように、差込部3はいわゆる閂抵抗を受けて拘束される状態になる。このときの荷重状態は、図5(b)に示したように、差込部3が点L、Mに拘束されて、鋼管柱2Aの上端が自由端となる梁としてモデル化される。
【0034】
鋼管柱2、差込部3のいずれにも曲げ応力が働くが、差込部3は軸力を受けないため、柱一般部より曲げ耐力は高い。
また、鋼管柱2が振動して、差込部3が隙間13内で、がたつく場合もある。この場合も、がたつきの衝撃により繰り返し局部的な塑性変形が起こること、または差込部3と鋼管柱2Bとの間に摩擦が繰り返されることにより、振動エネルギーが消費され、振動が減衰される。
【0035】
いずれの場合も、鋼管柱2は、弾性限度内に置かれるから、損傷は発生しない。
さらに、鉄骨架構1は、粘性ダンパー11を備えるから、このように階フレーム間の相対振動は、粘性ダンパー11によって熱エネルギーに変換されることにより消費され、減衰される。
【0036】
このように、鉄骨架構1によれば、主体構造部材である鋼管柱2に損傷を与えることなく、階フレームをほぼ剛体に保ったままで、振動減衰を図ることができるから、地震を受けても、階内部の被害をきわめて少なくすることができる。その結果、地震直後でも継続的に使用し得る多階建築物を提供することができる。
【0037】
また、鉄骨架構1では、地震初期段階において、階フレームが隙間13内で剛体移動されるようにして、階フレームに応力が発生するまでの時間差を稼ぐから、地震初期に発生することが多い大きな地震動を避けやすいという利点がある。しかもその時間差の間にも、補強板6と外ダイヤフラム5aの摩擦と、粘性ダンパー11の制震作用とにより、地震エネルギーを確実に消費するから、主体構造の塑性変形が始まる以前に多くの地震エネルギーを減衰できるという利点がある。
【0038】
次に、本実施形態に係る鉄骨架構1の耐震性能について、下記の条件・部材諸元を用いて数値計算を行った結果により説明する。
基礎および地中梁(不図示)は、鉄筋コンクリート構造とし、FC=27N/mm2とした。
【0039】
鋼管柱2は、以下の通りである。
階フレーム 断面形状(単位:mm) 材質
F1〜F5 □500×500×16 SM490B
F6〜F8 □500×500×16 SN400B
【0040】
差込部3は、以下の通りである。
階フレーム 断面形状(単位:mm) 材質
F1〜F8 □450×450×19 SN400B
【0041】
梁7、7aは、以下の通りである。
階フレーム 断面形状(単位:mm) 材質
F1〜F2 H−700×250×12×22 SM490B
F3〜F4 H−650×250×12×19 SM490B
F5 H−600×250×12×19 SM490B
F6 H−600×200×12×16 SM490B
F7 H−500×200×9×16 SM490B
F8 H−450×200×9×16 SN400B
【0042】
床部8は、コンクリート厚15cmのデッキプレート構造とした。
外壁(不図示)は、ALCとした。
【0043】
粘性ダンパー11は、以下の通りである。
階フレーム 最大減衰力(MN)
F1〜F4 1.57
F5〜F8 0.98
【0044】
数値計算における部材復元力特性は、鋼管柱2は、軸力を考慮したバイリニアモデルとし、梁7、7aは、部材の降伏応力度に基づくバイリニアモデルとした。
地震波は、建築基準法告示波(WG64;524.9gal)とした。
【0045】
図6に示したのは、以上の諸条件により数値計算を行った結果である。
図6(a)は、各階ごとの応答変位x(鋼管柱2の下端の水平方向変位)をプロットしたものである。折れ線30aは、本実施形態による結果を示す。折れ線31aは、本実施形態から粘性ダンパー11を取り去った差込のみによる架構の場合(以下、差込架構と称する)の結果を示す。折れ線32aは、比較のために、制震デバイスのない剛接架構の場合(以下、剛接架構と称する。)の結果を示す。横軸は、応答変位xを示し、単位は、cmである。縦軸は、階数を示す。ただし、屋上Rは、8階の鋼管柱2の上端の変位の意味である。
図6(a)によれば、いずれの場合も、階数が増すにしたがって変位が大きくなるが、本実施形態は、剛接架構に比べて約3分の1程度の変位に収まっている。
【0046】
図6(b)は、各階ごとに、その変形量を鋼管柱2の鉛直方向の傾斜角で表した層間変形角γで表してプロットしたものである。折れ線30b、31b、32bは、それぞれ、本実施形態、差込架構、剛接架構の場合の結果を示す。横軸は、層間変形角γを示し、単位は、radである。縦軸は、階フレームに対応した層の数を示す。
図6(b)によれば、本実施形態が最も変形量が少なくなっていることが分かる。また、差込架構の場合、2階(層)以上は変形が大きいが、1階(層)の変形量は、本実施形態と同程度に小さくなっている。
【0047】
図6(c)は、各階ごとの鋼管柱2の材端塑性率μの最大値をプロットしたものである。地震力を受けた時に、各部材は材端での応力が最大値を示し、材案から降伏が始まる。このため、各材端での応力と変形(例えば、曲げモーメントと回転角)の関係を求めておき、材端が降伏(降伏曲げモーメント)に至った時の変形に対する変形の比を「材端塑性率μ」と呼ぶ。折れ線30c、31c、32cは、それぞれ、本実施形態、差込架構、剛接架構の場合の結果を示す。横軸は、鋼管柱2の材端塑性率μを示し、無単位である。縦軸は、階フレームに対応した層の数を示す。
図6(c)によれば、本実施形態が最も塑性率が少なくなっており、上階ほど小さくなっていくことが分かる。材端塑性率が1以下であることは主体構造が降伏しないことを意味し、したがって、鋼管柱2の損傷防止効果が高いことが分かる。
【0048】
図6(d)は、各階の梁7、7aの材端塑性率μをプロットしたものである。折れ線30d、31d、32dは、それぞれ、本実施形態、差込架構、剛接架構の場合の結果を示す。横軸は、梁7、7aの材端塑性率μを示し、無単位である。縦軸は、階数を示す。ここで、梁7、7aは、階を支える梁を示している。屋上Rの梁は階フレームF8の梁である。また、1階の梁は、鉄骨架構1を構成しない不図示の地中梁である。
図6(d)によれば、本実施形態が最も塑性率が少なくなっており、梁7に対しても損傷防止効果が高いことが分かる。
また、図6(c)、(d)によれば、差込架構は、鋼管柱2、梁7、7aとも低階部分では、剛接架構よりも損傷されにくくなっていることが分かる。
【0049】
このように、本実施形態に係る鉄骨架構1では、地震エネルギーの消費を差込部3の変形や、粘性ダンパー11により吸収するため、地震を受けても、鋼管柱2、梁7、7aは塑性変形を起こしにくくなっている。加えて、各階フレームの変形量も少なくなっている。
【0050】
したがって、鉄骨架構1によれば、告示波程度大地震の地震を受けた場合でも、材端塑性率が小さく、柱、梁などの主要構造部材にほとんど損傷のない状態に保つことができ、地震直後でも継続使用に耐え得る多階建築物とすることができる。また、階毎に鋼管柱2が分断されている構造をとっているから、損傷を受けた部材も比較的に容易に交換することができて、長寿命化を図ることができるという利点もある。
さらに、柱や梁の主体構造部材は、建築物自重を対象として設計すればよく、耐震強度を増すために過剰な強度を付与する必要がなく、簡素で経済的な構造として設計することができる。
【0051】
なお、上記の説明では、粘性ダンパー11が、図2のように配置されるとして説明したが、これは、粘性ダンパー11の振動減衰量や、想定地震規模などに応じて、適宜の配置をすればよく、配置の数やパタンは、これに限るものではない。
【0052】
また、上記の説明では、粘性ダンパー11は、粘性壁として説明したが、振動減衰を可能とする制震デバイスであれば、どのようなものでもよい。例えば、粘性または粘弾性材料を用いた制震ブレースを用いてもよいし、動吸振器を用いたものでもよい。
【0053】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明の鉄骨架構、その構築方法および制震構造によれば、鋼管柱同士を溶接接合することなく、きわめて容易に構築できるとともに、地震などの外力を受けても鋼管柱の損傷を抑えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る鉄骨架構を説明するための斜視説明図である。
【図2】同じくその鉄骨架構の柱列配置と側面視の概略構成を説明するための平面視断面図および側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る鋼管柱の係止の様子を説明するための正面視および平面視の説明図である。
【図4】本発明の実施形態に係る鋼管柱を差し込んで組み立てる様子を説明するための正面視説明図である。
【図5】本発明の実施形態に係る鋼管柱が外力により移動された様子を説明するための正面視説明図である。
【図6】本発明の実施形態に係る鉄骨架構の一例において、地震外力を加えた場合の数値計算結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 鉄骨架構
2 鋼管柱
2a 開口
3 差込部
4 剛接フレーム(剛接架構構成体)
5a 外ダイヤフラム(板状の係止部)
6 補強板(板状の係止部)
7、7a 梁
8 床部
11 粘性ダンパー(制震デバイス)
13 隙間
Claims (8)
- 鋼管柱を用いた多階建築物の鉄骨架構であって、
上階側の鋼管柱と下階側の鋼管柱とが、
鉛直方向には、それぞれの互いに対向する先端部に水平方向に設けられた板状の係止部を互いにつき合わせて係止され、
水平方向には、前記上階側の鋼管柱と下階側の鋼管柱との一方の鋼管柱の前記係止部のほぼ中央に設けられた差込部が、前記上階側の鋼管柱と下階側の鋼管柱との他方の鋼管柱の先端の開口から中空部に向けてその外周に所定の隙間を空けて差し込まれることにより、位置規制されるように構成されたことを特徴とする鉄骨架構。 - 前記鋼管柱に、梁が剛接合された複数の剛接架構構成体を備えることを特徴とする請求項1に記載の鉄骨架構。
- 前記多階建築物が、前記剛接架構構成体を積み重ねて構築されたことを特徴とする請求項2に記載の鉄骨架構。
- 前記鉄骨架構が所定の外力を受けたとき、前記差込部が、該差込部が設けられた鋼管柱および前記差込部が差し込まれた前記鋼管柱が塑性変形するよりも先に変形するように構成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の鉄骨架構。
- 鉄骨架構を用いた多階建築物の制震構造であって、
前記鉄骨架構が請求項1〜4のいずれかに記載の鉄骨架構であり、
互いに隣接する階間に、それぞれの相対振動を減衰させる制震デバイスが設けられたことを特徴とする制震構造。 - 前記鉄骨架構が請求項2に記載の鉄骨架構であり、
前記制震デバイスが、上下方向に隣接する前記剛接架構構成体のそれぞれに固定されることを特徴とする請求項5に記載の制震構造。 - 鋼管柱を用いた多階建築物の鉄骨架構の構築方法であって、
上階側の鋼管柱と下階側の鋼管柱とを、
鉛直方向には、それぞれの互いに対向する先端部に板状の係止部を水平方向に設けて該係止部を互いにつき合わせて係止し、
水平方向には、一方の鋼管柱の先端に設けられた差込部を他方の鋼管柱の先端の開口から中空部に向けてその外周に所定の隙間を空けて差し込んで、位置規制するように構築することを特徴とする鉄骨架構の構築方法。 - 前記鋼管柱の梁を、該鋼管柱に剛接合した複数の剛接架構構成体を形成し、
該剛接架構構成体を積み重ねて、前記多階建築物を構築することを特徴とする請求項7に記載の鉄骨架構の構築方法。
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CN102953569A (zh) * | 2012-11-11 | 2013-03-06 | 苏州金螳螂建筑装饰股份有限公司 | 室内独立龙门架结构 |
JPWO2015025820A1 (ja) * | 2013-08-19 | 2017-03-02 | 株式会社Ihi | 免震構造 |
CN114278008A (zh) * | 2022-01-07 | 2022-04-05 | 福建诚达钢构有限公司 | 一种钢结构的活动装配式支撑梁 |
-
2002
- 2002-08-29 JP JP2002251917A patent/JP2004092080A/ja not_active Withdrawn
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