JP2004091808A - メッキ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】メッキにより厚さの均一性が高い膜を得ることができるメッキ装置を提供する。
【解決手段】このメッキ装置は、メッキ液を収容するためのメッキ槽1と、メッキ槽1の上方でウエハWをほぼ水平に保持するための保持部材2とを備えている。保持部材2は、平面視においてリング状の形状を有し、ウエハWの下面周縁部に接触可能な複数のカソードを備えたカソードリング11を備えている。メッキ槽1は、メッキ対象のウエハWの径とほぼ等しい内径を有する筒状内壁面1bを有している。メッキ槽1の底部には、メッシュ状の不溶性アノードで極14が設けられており、その上に複数の樹脂チューブ15がメッキ槽1内にほぼ隙間なく詰められて電流規制部材17が形成されている。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体基板などの基板の表面にメッキ液を接触させてメッキ処理を施すためのメッキ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図4は、従来のメッキ装置の図解的な断面図である。図4には、電気的な等価回路を併せて示している。
このメッキ装置は、ほぼ円形の半導体基板(以下、「ウエハ」という。)Wの一方表面にメッキ処理を施すためのものであり、メッキ液を収容するためのメッキ槽51、およびウエハWをほぼ水平に保持するための保持部材52を備えている。
【0003】
メッキ槽51は、ウエハWの径より大きな内径を有する円筒状の内壁面を備えており、メッキ槽51の内部でメッキ槽51の底の近傍には、円板状のアノード53がほぼ水平に配されている。アノード53の径は、ウエハWの径より小さい。保持部材52は、平面視においてリング状の部材であり、ウエハWの周縁部を支持して、ウエハWをほぼ水平に保持できるようになっている。保持部材52の内部には、複数のカソード(図示せず)が配設されており、これらのカソードはウエハWの下面周縁部に、ウエハWの全周にわたって一定の間隔で接触できるようになっている。
【0004】
保持部材52に設けられたカソードおよびアノード53は、直流電源54に接続されている。ウエハWの一方表面には、銅からなるシード層が形成されている。
ウエハWにメッキする際は、先ず、メッキ槽51内に銅イオンを含むメッキ液が満たされ、シード層が形成された面を下にしてウエハWが保持部材52にほぼ水平に支持される。そして、ウエハWの下面が、メッキ槽51に満たされたメッキ液の表面に接触され、直流電源54により、アノード53と保持部材52に設けられたカソードとの間に、直流電圧が印加される。この際、アノード53の中心部とウエハWの中心部とは、ほぼ共通の鉛直線上にのるようにされる。これにより、メッキ液中の銅イオンがウエハWの下面から電子を与えられ、銅原子としてウエハWの下面に被着する。このようにして、ウエハWの下面に電解メッキが施される。
【0005】
以上のようなメッキ処理において、電気的には図4に示すように、メッキ液は抵抗値rcを有する多数の抵抗成分が水平方向および鉛直方向にネットワーク状に接続されたものとみなすことができる。また、シード層は、抵抗値rsを有する複数の抵抗成分がウエハの中心と周縁部との間で直列に接続されたものとみなすことができる。
電流は、アノード53とカソードとの間で、抵抗値がより小さい経路により多く流れようとする。ここで、アノード53の中心部からメッキ液中を鉛直方向に流れ、ウエハW下面中心部を経由してウエハW周縁部に接触されたカソードに至る電流の経路(以下、「第1の経路」という。)、およびアノード53の周縁部からメッキ液中をほぼ鉛直方向に流れ、ウエハWの周縁部を経由してウエハW周縁部に接触されたカソードに至る電流の経路(以下、「第2の経路」という。)の抵抗値を比較する。メッキ液の鉛直方向の抵抗値をRcとし、ウエハWの中心部と周縁部との間のシード層の抵抗値をRsとする。
【0006】
この場合、第1の経路の抵抗値はほぼRc+Rsとなる。また、第2の経路はシード層をほとんど通らないので、その抵抗値はほぼRcである。
シード層は薄く形成されているため、その抵抗値は無視できない。特に、ウエハWに微細なパターンを形成する場合は、シード層は極めて薄く(たとえば、50〜100nm)形成されるので、rsおよびRsは大きくなる。すなわち、第1の経路の抵抗値は、第2の経路の抵抗値より、メッキ処理に好ましくない影響を及ぼすほどに大きくなる。
【0007】
このため、電流はウエハWの中心部をより少なく流れ、第2の経路を通ってより多く流れようとする。電解メッキでは、メッキ液から基板へと流れる電流の大きさとメッキによる膜の厚さ(メッキ厚)とはほぼ比例するので、メッキ厚は、ウエハW中心部で薄く周縁部で厚くなる。
このようなメッキ厚の不均一を改善するために、従来のメッキ装置では、メッキ槽51を深く(アノード53とウエハWとの間隔を大きく)することにより、メッキ液の鉛直方向の抵抗値Rcが大きくされている。この場合、ウエハWの中心部と周縁部とでメッキ厚の差が小さくなるとされている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、実際には、メッキ液中で電流は水平方向にも流れることができるので、ウエハWの中心部を経由して流れる電流は、上記のような鉛直方向のメッキ液の抵抗値のみを考慮した計算に基づくものより小さくなる。メッキ液の水平方向の抵抗は、メッキ槽の深さ方向に配列した多数の水平抵抗成分が並列に接続されたものとみなすことができる。
【0009】
このため、メッキ槽51が深くなればなるほど、たくさんの水平抵抗成分が並列に接続された状態となり、メッキ液の水平方向の抵抗は小さくなる。すなわち、メッキ槽51が深くなればなるほど、電流は、メッキ液中を水平方向に流れやすくなり、結局、抵抗値の高いシード層を避けて、ウエハW周縁部に近い部分に到達する電流が多くなる。
たとえば、rcがメッキ液の抵抗率であり、その値が2Ωcmであり、メッキ槽51の深さが20cmであるとする。メッキ液を断面が一辺1cmの正方形である液柱の集合として考えると、この液柱の横方向(水平方向)の抵抗値は、rc/Lとして求められ、その値は0.1Ωとなる。この値は、厚さが100nmのシード層のシート抵抗にほぼ等しい。すなわち、メッキ液中を横方向に流れる電流と、シード層中を流れる電流とは、ほぼ同じ大きさになる。
【0010】
さらに、メッキ槽51の内径がウエハWの外形に比して大きい場合、図4に示されているように、メッキ槽51の内壁面近傍を流れる電流の経路も形成される。このため、第2の経路を介して流れる電流はさらに大きくなる。
これらの理由により、ウエハWの中心部と周縁部とのメッキ厚の差は、ある程度以上小さくすることはできない。
そこで、この発明の目的は、メッキにより厚さの均一性が高い膜を得ることができるメッキ装置を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
上記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、基板(W)の表面にメッキ処理を施すためのメッキ装置であって、上記基板の周縁部に接触可能な第1の電極と、ほぼ鉛直な筒状内壁面(1b)を有し、上記基板の表面が接液されるメッキ液を収容するメッキ槽(1)と、このメッキ槽内に配され、メッキ処理時における上記基板との距離が、上記基板の中心部と周縁部との距離以上である第2の電極(14)と、上記メッキ槽内で上記第2の電極とメッキ処理時の上記基板との間に存在するメッキ液中における水平方向への電流を規制する電流規制部材(17)とを含むことを特徴とするメッキ装置である。
【0012】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この発明によれば、メッキ槽にメッキ液を満たし、このメッキ液の液面に基板を接触させ、第1の電極と第2の電極との間に通電することにより、基板の下面(メッキ液が接触している面)にメッキすることができる。この際、電流規制部材により、メッキ槽内で第2の電極とメッキ処理時の基板との間に存在するメッキ液中における水平方向への電流が規制される。
【0013】
また、メッキ処理時における基板と第2の電極との間の距離が、基板の中心部と周縁部との間の距離以上であるため、メッキ液の鉛直方向の抵抗値は十分に大きい。このため、基板の中心部と周縁部との間の抵抗値は相対的に小さくなる。したがって、メッキ液から基板の中心部を介して基板周縁部に接触された第1の電極へと流れる電流の経路の抵抗値と、メッキ液から基板の周縁部を介して第1の電極へと流れる電流の経路の抵抗値との差は、各経路の抵抗値の大きさに対して小さくなる。
【0014】
この場合、第2の電極の中心部(基板中心部の下方にある部分)からメッキ液へと流れる電流は、電流規制部材により強制的に真上方向に導かれて、基板の中心部に至る。このため、基板の中心部を通る経路と、メッキ液と基板の周縁部との界面を通る経路とで、電流の大きさはほぼ同じとなり、メッキ厚はほぼ均一になる。
メッキ処理時の基板は、たとえば、筒状内壁面の上端縁付近でメッキ層に収容されたメッキ液に接液するものとすることができる。この場合、メッキ槽の筒状内壁面の上端縁は、メッキ処理時における基板のほぼ全周にわたって当該基板の周縁部に近接可能なものあることが好ましい。これにより、平面視において、基板とメッキ液とがほぼ重なるように配することが可能である。このような状態でメッキを行うと、電流は、平面視において基板の周縁部より外側に拡がって流れることはできない。このため、メッキ槽の筒状内壁面近傍に多くの電流が流れることはない。
【0015】
電流規制部材は、メッキ槽の内壁面との間に隙間を生じないような大きさであることが好ましい。この場合、電流は、電流規制部材を迂回してメッキ槽の内壁面近傍に多く流れることはない。
基板は、たとえば、一方表面にシード層が形成された半導体基板(半導体ウエハ)であってもよい。メッキ液は、たとえば、このような半導体基板に銅メッキをするためのものであってもよい。この場合、ウエハのシード層が形成された面にメッキ液を接触させて銅メッキすることができる。ウエハが銅の微細パターンを形成するためのものであり、シード層が薄く形成されて高い抵抗値を有していた場合でも、均一なメッキ厚を得ることができる。
【0016】
基板は、矩形等の多角形の基板であってもよい。この場合、メッキ槽の筒状内壁面の形状は、平面視において基板とほぼ同じ大きさおよび形の多角形とすることができる。
電流規制部材は、メッキ液より抵抗率が高い材料からなるものとすることができ、請求項2記載のように、絶縁体からなるものであってもよい。
絶縁体からなる電流規制部材により、効率的にメッキ液中の水平方向の電流を規制することができる。これにより、均一なメッキ厚を得ることができる。
【0017】
請求項3記載の発明は、上記電流規制部材が、ほぼ鉛直方向に沿う孔(15a)が水平方向に密に形成されたものであることを特徴とする請求項1または2記載のメッキ装置である。
メッキ槽にメッキ液を満たして、電流規制部材の孔の中にメッキ液が充填された状態とし、基板の下面をメッキ槽に満たされたメッキ液の表面に接触させ、第1の電極と第2の電極との間に電圧を印加して、基板の下面にメッキできる。
【0018】
この際、メッキ液中を流れる電流は、電流規制部材の孔の中を流れる。電流規制部材が抵抗体である場合、ある孔の中を流れその孔の外へと水平方向に流れる電流は少ない。また、電流規制部材が絶縁体である場合、ある孔の中を流れる電流は、その孔の外へと水平方向に流れることはできない。すなわち、電流規制部材により、水平方向の電流が抑制または遮断され、電流は主として鉛直方向に流れる。
【0019】
孔は水平方向に密に形成されている(隙間なく配されている)ので、電流規制部材の空隙率は大きい。したがって、第2の電極とメッキ時の基板との間で、電流は均一に流れることができる。電流規制部材は、たとえば、蜂の巣状(ハニカム状)のものとすることができる。
電流規制部材と基板との間では、電流規制部材の開口部(孔の上端)から基板へと電流が流れるので、基板のうち、電流規制部材の非開口部に対向する部分へと流れる電流は小さくなる。このため、電流規制部材において、隣接する2つの孔の間は薄く構成されて、電流規制部材の開口率が大きくされていることが好ましい。
【0020】
請求項4記載の発明は、上記電流規制部材が、上記メッキ槽内で上記第2の電極とメッキ処理時の基板との間の空間を埋め尽くすようにほぼ鉛直方向に沿うように配された複数のチューブ(15)を含むことを特徴とする請求項3記載のメッキ装置である。
メッキ槽内に、水平方向に密にチューブを配することにより、電流規制部材を簡単に形成することができる。また、肉厚が薄いチューブを用いることにより、電流規制部材の開口率を大きくすることができる。
【0021】
チューブとしては、たとえば、飲食用のストローを用いることができる。これにより、電流規制部材を極めて安価なものとすることができる。また、ストローの肉厚は薄いので、電流規制部材の空隙率や開口率を大きくすることができる。電流は電流規制部材の孔の内部で、メッキ液中を水平方向に流れることができる。したがって、電流規制部材の孔の径が大きいと、電流は水平方向にも大きな距離を流れることができる。このような場合、メッキ液中の電流密度分布が不均一となり、均一なメッキ厚でメッキできなくなる。
【0022】
したがって、電流規制部材の孔の横断面積は小さいことが好ましく、たとえば、請求項5記載のように10cm以下とすることができる。
請求項6記載の発明は、上記孔の上端が、メッキ処理時の基板に近接した位置にあり、上記孔の下端が、上記第2の電極に近接した位置にあることを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載のメッキ装置である。
メッキ液中で鉛直方向に関して電流規制部材がない部分では、電流は水平方向に自由に流れることができる。したがって、このような部分が鉛直方向に長く延びるように存在していると、電流はこの部分で水平方向外方に流れ、基板中心部を経由して流れる電流が少なくなる。このため、メッキ厚が不均一になる。
【0023】
この発明によれば、鉛直方向に関して、第2の電極と基板との間の大部分に電流規制部材が存在するので、メッキ液中で電流が水平方向に流れることができる部分は少ない。したがって、電流はメッキ液中ではほとんど鉛直方向にしか流れることができないので、メッキ液と基板の下面との間には、ほぼ均一に電流が流れ、メッキ厚はほぼ均一になる。
請求項7記載の発明は、ほぼ円形の上記基板をほぼ水平に保持して回転する基板回転手段(20)をさらに備え、上記筒状内壁面が、上記ほぼ円形の基板の径にほぼ等しい内径を有する円筒内壁面であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のメッキ装置である。
【0024】
このようなメッキ装置により、ほぼ円形の基板に良好にメッキできる。基板を回転させることにより、均一にメッキすることができる。
請求項8記載の発明は、上記第2の電極が、平面視において上記電流規制部材とほぼ重なるように配されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のメッキ装置である。
第2の電極の上方に電流規制部材が存在しない部分があると、電流はこの部分で水平方向に流れることができる。この発明によれば、第2の電極の上方の大部分に電流規制部材が存在する。このため、電流の水平方向の流れは効果的に規制される。
【0025】
請求項9記載の発明は、上記第1の電極がカソードであり、上記第2の電極がメッキ液を通過させることができるメッシュ状の不溶性アノードであり、上記メッキ槽の底部にメッキ液を導入するメッキ液導入口(4)が形成されており、上記メッキ液導入口から導入されたメッキ液を、上記第2の電極の下面のほぼ全領域に向けて拡散させるメッキ液拡散手段(6)をさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のメッキ装置である。
【0026】
メッキする金属(目的金属)がメッキ液中で陽イオンとして存在している場合、本発明のように、第1の電極をカソードとし、第2の電極をアノードとして、基板に当該金属を被着させることができる。
第1の電極と第2の電極との間における各経路ごとの電流の大きさ(電流密度分布)は、第1および第2の電極間の抵抗値の分布以外に、メッキ液の流れにも依存する。
【0027】
メッキ液が第2の電極を通過して流れることができない場合、メッキ液導入口から導入されたメッキ液は、第2の電極とメッキ槽との間の隙間を通って上方へ流れる。このため、メッキ槽内のメッキ液の流れが不均一になり、電流密度分布も不均一になる。
この発明によれば、メッキ液導入口から導入されたメッキ液は、メッキ液拡散手段により、メッシュ状の第2の電極の下面のほぼ全領域に向けて拡散される。メッキ液は、さらに、メッシュ状の第2の電極を通過し、電流規制部材の孔の中を通過して上方に流れる。これにより、メッキ槽中の各部でほぼ均一なメッキ液の上昇流が得られる。したがって、メッキ液中を流れる電流は、ほぼ均一になる。
【0028】
メッキ液拡散手段は、たとえば、中空の半球体に多数の孔が形成されたシャワーノズルであってもよい。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下では、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るメッキ装置の構成を示す図解的な断面図である。
このメッキ装置は、ほぼ円形の基板である半導体基板(以下、ウエハという。)Wの一方表面に銅メッキを施すためのものであり、メッキ液を収容するためのメッキ槽1と、メッキ槽1の上方でウエハWをほぼ水平に保持するための保持部材2とを備えている。
【0030】
保持部材2は、平面視においてリング状の形状を有し複数のカソード(図示せず)を備えたカソードリング11と、円板状の押圧部材12とを備えている。カソードリング11の内径は、ウエハWの径よりわずかに小さい。押圧部材12の径は、ウエハWの径とほぼ同じであり、押圧部材12の一方表面(ウエハWに対向する表面)には、押圧部材12の外周部に沿って環状突起12aが設けられている。カソードリング11でウエハW下面周縁部を支持し、環状突起12aでウエハW上面周縁部を押圧して、ウエハWを挟持しほぼ水平に支持できるようになっている。この際、カソードリング11に設けられたカソードは、ウエハWの下面にウエハWの全周にわたってほぼ等間隔で接触するようになっている。
【0031】
保持部材2には、図示しない昇降機構が結合されており、保持部材2に保持されたウエハWを昇降させて、ウエハWの下面をメッキ槽1に満たされたメッキ液の液面に接触させたり、メッキ液から離間させたりすることができるようになっている。また、保持部材2には、回転駆動機構20が結合されており、保持部材2にほぼ水平に保持されたウエハWを、その中心のまわりにほぼ水平な面内で回転させることができるようになっている。ウエハWを回転させることにより、均一にメッキすることができる。
【0032】
メッキ槽1の底面中央部には、メッキ槽1内にメッキ液を導入するためのメッキ液導入口4が形成されており、メッキ槽1にはメッキ液導入口4を介してメッキ液導入管5が連通接続されている。メッキ液導入口4には、半球状で多数の穴が形成されたシャワーノズル6が取り付けられている。
メッキ槽1のまわりには、回収槽3が設けられており、メッキ槽1から溢れたメッキ液を回収できるようになっている。回収槽3の底面には回収槽3内のメッキ液を排出するためのメッキ液排出口7が形成されている。回収槽3にはメッキ液排出口7を介してメッキ液排出管8が連通接続されている。メッキ液導入管5とメッキ液排出管8とは、ポンプPを介して接続されており、メッキ液回収槽3から排出されたメッキ液をメッキ槽1に戻すことができるようになっている。
【0033】
図2は、メッキ槽1の図解的な平面図である。
図1および図2を参照して、メッキ槽1は、円筒状の内壁面1bを有していて、その中心軸Aがほぼ垂直方向に沿っている。メッキ槽1の内径はウエハWの径にほぼ等しい。メッキ槽1の側壁上部には、外周側を斜めに切り欠いた薄肉部1aが形成されており、ウエハWの下面とメッキ液の液面とが近接されても、メッキ槽1とカソードリング11とが干渉しないようにされている。
【0034】
メッキ槽1の底には、支持部材13を介して、アノード14が取り付けられている。アノード14は、たとえば、メッシュ状の部材であり、たとえば、チタンからなる線材に酸化イリジウムを溶射してなる。アノード14の外形は円板状であり、メッキ槽1の内径にほぼ等しい径を有し、ほぼ水平に配されている。アノード14の中心は、ほぼ中心軸A上にある。支持部材13の高さは、メッキ槽1の深さの8分の1から9分の1程度であり、アノード14は、メッキ槽1の深さ方向に関してメッキ槽1の底から8分の1から9分の1程度の位置にある。
【0035】
また、ウエハWとアノード14上面との距離は、ウエハWの中心と周縁部との距離、すなわち、ウエハWの中心とカソードリング11との距離以上に大きく設定されている。このため、メッキ液の鉛直方向の抵抗値は十分に大きい。
メッキ槽1の内部でアノード14の上には、ほぼ鉛直方向に沿って延びる複数の樹脂チューブ15が水平方向に密に配されている。これら複数の樹脂チューブ15は、蜂の巣状の電流規制部材17を形成している。樹脂チューブ15の肉厚は薄く、樹脂チューブ15の断面の外形はほぼ円形である。樹脂チューブ15の内径は、メッキ槽1の内径に対して小さく、1つの樹脂チューブ15の横断面積は、たとえば、10cm以下にされている。
【0036】
樹脂チューブ15としては、たとえば、飲食用として市販されているストローを用いることができる。樹脂チューブ15の長さは、樹脂チューブ15の上端がメッキ槽1の上端とほぼ同じ高さになるようにされている。電流規制部材17の上には、メッキ液の液流による樹脂チューブ15の上昇を防ぐために、薄いフッ素樹脂のメッシュが取り付けられている(図示せず。)。さらに詳細には、樹脂チューブ15の上端は、メッキ槽1の上端よりわずかに低い位置にあり、メッキ槽1からメッキ液が溢れるようにされているとき、このメッシュがメッキ液の液面から突出しないようにされている。
【0037】
カソードリング11に設けられたカソードとアノード14とは、直流電源16に接続されている。ウエハWの一方表面には、メッキによる銅原子の被着を容易にするため、銅からなるシード層が形成されている。
ウエハWに銅メッキする際は、先ず、ポンプPにより、メッキ液がメッキ液導入口4からメッキ槽1内に導入される。メッキ液はシャワーノズル6により、上方から側方に渡るメッキ槽1内の様々な方向に送られ、さらに、メッシュ状のアノード14を通過し、さらに、電流規制部材17の孔(主として、樹脂チューブ15の孔15a)の中を上方へと流れる。これにより、メッキ槽1内の各部でほぼ均一なメッキ液の上昇流が得られる。酸化イリジウムが溶射されたチタンからなるアノード14は、メッキ液に対する不溶性を有する。
【0038】
メッキ槽1の上端に至ったメッキ液は、メッキ槽1の側壁上端から回収槽3へと溢れ、メッキ液排出口7から排出され、メッキ液排出管8、ポンプP、およびメッキ液導入管5を経て、メッキ液導入口4から再びメッキ槽1内に導入される。
続いて、シード層が形成された面を下にしてウエハWが保持部材2にほぼ水平に保持される。そして、図示しない昇降機構により、ウエハWの下面が、メッキ槽1に満たされたメッキ液の表面に接触され、図示しない回転駆動機構によりウエハWが回転される。この状態で、アノード14とウエハWとの間の大部分には、電流規制部材17が存在している。
【0039】
その後、直流電源16により、アノード14とカソードリング11に設けられたカソードとの間に、直流電圧が印加される。これにより、メッキ液中の銅イオンがウエハWの下面から電子を与えられ、銅原子としてウエハWの下面に被着する。このようにして、ウエハWの下面に電解メッキが施される。
図3は、図1のメッキ装置によるメッキ時の電気的な等価回路を示す図である。
【0040】
電流規制部材17内のメッキ液中で、電流は絶縁体である樹脂チューブ15を超えて水平方向に流れることはできない。電流は樹脂チューブ15の孔15aの中では、水平方向にも流れることができるが、上述のように、樹脂チューブ15の内径は、メッキ槽1の内径と比べて極めて小さいので、実質的に電流は電流規制部材17内では鉛直方向にしか流れることができない。
さらに、鉛直方向に関して、アノード14とウエハWとの間の大部分には、電流規制部材17が存在しているので、メッキ液中で電流が水平方向に流れることができる部分はほとんどない。
【0041】
以上のことから、メッキ液は抵抗値rcを有する複数の抵抗成分が鉛直方向に直列に接続されたものが、アノード14とウエハW下面に形成されたシード層との間に、複数接続されたものとみなすことができる。また、ウエハWの下面に形成されたシード層は、抵抗値rsを有する複数の抵抗成分が、ウエハWの中心と周縁部との間で直列に接続されたものとみなすことができる。
ここで、アノード14の中心部からメッキ液中を鉛直方向に流れ、ウエハW下面中心部を経由してウエハW周縁部に接触されたカソードに至る電流の経路(以下、「第1の経路」という。)、およびアノード14の周縁部からメッキ液中をほぼ鉛直方向に流れ、ウエハWの周縁部を経由してウエハW周縁部に接触されたカソードに至る電流の経路(以下、「第2の経路」という。)の抵抗値を比較する。メッキ液の鉛直方向の抵抗値をRcとし、ウエハWの中心部と周縁部との間のシード層の抵抗値をRsとする。
【0042】
この場合、第1の経路の電気抵抗は、Rc+Rsとなり、第2の経路の電気抵抗は、ほぼRcに等しくなる。
シード層は、薄く形成されているため、抵抗値は大きい。特に、ウエハWに微細なパターンを形成する場合は、シード層は極めて薄く(たとえば、50〜100nm)形成されている。シード層形成前にも、ウエハWの表面にビアホールなどが形成されていることがあるが、パターンが微細な場合、このようなビアホールの径も小さく、シード層を厚く形成すると、このようなビアホールの開口が塞がれてしまうからである。シード層が薄くなると、rsおよびRsは大きくなる。
【0043】
このような場合でも、メッキ槽1が十分深い(アノード14とウエハWとの間隔が大きい)と、RcはRsより十分大きくなり、RcとRc+Rsとの比は小さくなる。すなわち、第1の経路と第2の経路とで、抵抗値の差は小さくなる。
また、アノード14の中心部(中心軸A上にある部分)からメッキ液へと流れる電流は、電流規制部材17により、強制的に中心軸Aに沿って真上方向に導かれてウエハWの中心部に至る。
【0044】
さらに、メッキ槽1の内径はウエハWの径にほぼ等しいので、メッキ槽1の筒状内壁面1bの上端縁は、ウエハWのほぼ全周にわたってウエハWの周縁部に近接可能である。すなわち、平面視において、ウエハWとメッキ液とがほぼ重なるように配することが可能である。このような状態でメッキを行うと、電流は、平面視においてウエハWの周縁部より外側に拡がって流れることはできない。このため、メッキ槽1の筒状内壁面1b近傍に多くの電流が流れることはなく、第1の経路と第2の経路とで、電流の大きさはほぼ同じとなる。
【0045】
メッキによる銅膜の成長速度および厚さ(メッキ厚)は、メッキ液とウエハW下面(シード層)との間に流れる電流の大きさに比例するので、ウエハW下面において銅膜はほぼ均一な速度で成長する。このように、従来のメッキ装置とは異なり、メッキ槽1を深くして、RcとRc+Rsとの差を小さくすることの効果が、そのまま、メッキ厚の均一性となって現れる。
銅膜の抵抗値は、銅膜の成長(膜厚の増大)とともに急激に小さくなり、メッキ液の鉛直方向の抵抗値Rcと比べて無視できる程度の大きさになる。これにより、アノード14とカソードとの間の各経路間の抵抗差はさらに小さくなり、メッキ厚の均一性はさらに高くなる。
【0046】
たとえば、メッキ槽の深さが100mmであり、メッキ液の抵抗率が2Ωcmであり、ウエハWの径が200mmであり、銅からなるシード層の厚さが100nmである場合、Rs:Rc≒1:10となる。この場合、Rc:Rc+Rs=10:11なので、メッキによる銅膜の成長速度は、メッキの初期には、ウエハW中心部ではウエハW周縁部と比べて10%程度遅い。
しかし、銅膜(シード層を含む。以下、同じ。)の厚さが200nmになれば、ウエハWの中心部と周縁部とにおいて、銅膜の成長速度の差は5%となり、銅膜の厚さが400nmになると、銅膜の成長速度の差は2.5%となる。銅膜の厚さが、シード層の厚さの10倍の1μm程度に達したときには、銅膜の厚さの均一性(ウエハ周縁部の膜厚に対するウエハ中心部の膜厚の比)は、97%以上となる。
【0047】
電流規制部材17は絶縁体であるので、電流規制部材17とウエハWとの間では、電流規制部材17の非開口部の上方を流れる電流は小さくなる。樹脂チューブ15の肉厚は薄いので、電流規制部材17の非開口部は少ない(開口率は大きい)。したがって、メッキ液とウエハWの下面との間には、ほぼ均一に電流が流れることができるので、メッキ厚は局所的にもほぼ均一になる。
また、アノード14とカソードとの間における各経路ごとの電流の大きさ(電流密度分布)は、アノード14およびカソード間の抵抗値の分布以外に、メッキ液の流れにも依存する。
【0048】
この実施形態において、メッキ液はメッキ槽1中の各部でほぼ均一な上昇流となって流れる。したがって、メッキ液中を流れる電流はほぼ均一になり、均一なメッキ厚が得られる。
電流規制部材17は、複数の樹脂チューブ15をメッキ槽1内に詰め込むだけで、簡単に形成できる。すなわち、樹脂チューブ15とメッキ槽1の内壁面1bとの間や、樹脂チューブ15同士を接着剤などで固定する必要はない。飲食用として市販されているストローで電流規制部材17を形成することにより、電流規制部材17を極めて安価なものとすることができる。
【0049】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、たとえば、樹脂チューブ15は、断面が円形のもの以外に、四角形や六角形などの多角形のものであってもよい。また、樹脂チューブ15の代わりに、絶縁性のセラミック材料等からなるチューブを用いてもよい。
メッキ槽1の底面に複数のメッキ液導入口4を形成することにより、メッキ槽1内のメッキ液の上昇流をさらに均一なものとすることもできる。
【0050】
電流規制部材17は、同軸配置された径の異なる複数の筒からなるものであってもよい。メッキ液中における電流密度の不均一は、平面視において、ウエハWの中心部と周縁部とを結ぶ方向に生じるので、このような同軸配置された複数の筒によっても電流密度の不均一を改善できる。
また、メッキ槽1がウエハWの径より大きな内径を有している場合においても、メッキ槽1に電流規制17を密に配置することで、メッキ槽1内で電流の大きさが不均一になることを抑制することができる。
【0051】
基板は、ウエハW以外に矩形等の形状を有するものであってもよい。この場合、メッキ槽1の内壁面1bは、平面視において基板とほぼ同じ大きさおよび形状を有するものとすることができる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るメッキ装置の構成を示す図解的な断面図である。
【図2】メッキ槽の図解的な平面図である。
【図3】図1のメッキ装置によるメッキ時の電気的な等価回路を示す図である。
【図4】従来のメッキ装置の図解的な断面図であり、電気的な等価回路を示す図である。
【符号の説明】
1  メッキ槽
1a  薄肉部
1b  内壁面
4  メッキ液導入口
6  シャワーノズル
11  カソードリング
14  アノード
15  樹脂チューブ
15a  樹脂チューブの孔
17  電流規制部材
20  回転駆動機構
W  ウエハ

Claims (9)

  1. 基板の表面にメッキ処理を施すためのメッキ装置であって、
    上記基板の周縁部に接触可能な第1の電極と、
    ほぼ鉛直な筒状内壁面を有し、上記基板の表面が接液されるメッキ液を収容するメッキ槽と、
    このメッキ槽内に配され、メッキ処理時における上記基板との距離が、上記基板の中心部と周縁部との距離以上である第2の電極と、
    上記メッキ槽内で上記第2の電極とメッキ処理時の上記基板との間に存在するメッキ液中における水平方向への電流を規制する電流規制部材とを含むことを特徴とするメッキ装置。
  2. 上記電流規制部材が絶縁体からなることを特徴とする請求項1記載のメッキ装置。
  3. 上記電流規制部材が、ほぼ鉛直方向に沿う孔が水平方向に密に形成されたものであることを特徴とする請求項1または2記載のメッキ装置。
  4. 上記電流規制部材が、上記メッキ槽内で上記第2の電極とメッキ処理時の基板との間の空間を埋め尽くすようにほぼ鉛直方向に沿うように配された複数のチューブを含むことを特徴とする請求項3記載のメッキ装置。
  5. 上記孔の横断面積が10cm以下であることを特徴とする請求項3または4記載のメッキ装置。
  6. 上記孔の上端が、メッキ処理時の基板に近接した位置にあり、
    上記孔の下端が、上記第2の電極に近接した位置にあることを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載のメッキ装置。
  7. ほぼ円形の上記基板をほぼ水平に保持して回転する基板回転手段をさらに備え、
    上記筒状内壁面が、上記ほぼ円形の基板の径にほぼ等しい内径を有する円筒内壁面であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のメッキ装置。
  8. 上記第2の電極が、平面視において上記電流規制部材とほぼ重なるように配されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のメッキ装置。
  9. 上記第1の電極がカソードであり、
    上記第2の電極がメッキ液を通過させることができるメッシュ状の不溶性アノードであり、
    上記メッキ槽の底部にメッキ液を導入するメッキ液導入口が形成されており、上記メッキ液導入口から導入されたメッキ液を、上記第2の電極の下面のほぼ全領域に向けて拡散させるメッキ液拡散手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のメッキ装置。
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