JP2004091763A - 膜形成剤および膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い屈折率を有する金属酸化物微粒子含有機能性膜や該機能性膜を基材表面に設けてなる膜製品等を形成させるための膜形成剤、および、該膜形成剤により形成してなる膜を提供する。
【解決手段】本発明にかかる膜形成剤は、Ti、Zr、Zn、Sn、In、LaおよびYからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり結晶子径が15nm未満である金属酸化物微粒子を含む、屈折率が1.5以上の膜を形成させるための膜形成剤であることを特徴とする。また、本発明にかかる膜は、上記本発明の膜形成剤により形成してなることを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属酸化物微粒子を含む膜を形成させるための膜形成剤、および、該膜形成剤により形成してなる膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、金属酸化物微粒子を含有している機能性膜は、窓材(自動車用、建築用等)、農業用資材、メモリー素子、光源、表示デバイス、情報通信・伝送の各種デバイス、太陽電池等の各種用途分野における有用な材料として好適に用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
このような機能性膜や該機能性膜を基材表面に有する膜製品等においては、近年の技術進歩に伴い、または、新たな用途展開を試みるにあたって、特定の機能や性能に関し従来に比べさらに優れたものが求められており、このような機能性膜や膜製品等を形成させるための膜形成剤の開発が要望されている。なかでも、より高い屈折率を有する機能性膜や膜製品等を形成させるための膜形成剤は、強く開発が求められているものの1つであった。しかしながら、より高い屈折率を有する機能性膜や膜製品等としてはまだ十分満足し得るレベルのものはなく、そのような高屈折率の機能性膜を形成させるための膜形成剤もなかった。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−291680号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の解決しようとする課題は、高い屈折率を有する金属酸化物微粒子含有機能性膜や該機能性膜を基材表面に設けてなる膜製品等を形成させるための膜形成剤、および、該膜形成剤により形成してなる膜を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。その結果、膜中に含有させる金属酸化物微粒子として、特定の金属の酸化物からなり、かつ、その結晶子径が特定値未満である金属酸化物微粒子を用いれば、非常に高い屈折率を有する金属酸化物含有機能性膜が得られるのではないか、と着想するに至った。
かかる知見に基づき、上述の金属酸化物微粒子を含む膜形成剤を調製し、実際に基材上に膜形成を行ったところ、非常に高い屈折率を有する金属酸化物含有機能性膜が得られることが判り、上記課題を一挙に解決し得ることが確認できた。本発明はこのようにして完成された。
【0006】
すなわち、本発明にかかる膜形成剤は、Ti、Zr、Zn、Sn、In、LaおよびYからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり結晶子径が15nm未満である金属酸化物微粒子を含む、屈折率が1.5以上の膜を形成させるための膜形成剤であることを特徴とする。
また、本発明にかかる膜は、上記本発明の膜形成剤により形成してなることを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる膜形成剤および膜について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
本発明にかかる膜形成剤は、Ti、Zr、Zn、Sn、In、LaおよびYからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、かつ、ウィルソン法解析による結晶子径が15nm未満である金属酸化物微粒子を含む、屈折率が1.5以上の膜を形成させるための膜形成剤である。
【0008】
以下、本発明でいう上記金属酸化物微粒子について詳しく説明する。
金属酸化物微粒子は、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Zn(亜鉛)、Sn(スズ)、In(インジウム)、La(ランタン)およびY(イットリウム)からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(以下、特定の金属と称することがある。)の酸化物(金属酸化物)からなる。すなわち、Ti、Zr、Zn、SnおよびInからなる群より選ばれる1種の金属の酸化物(単一酸化物)であってもよいし、2種以上の金属の酸化物(複合酸化物)であってもよく、または、これら単一酸化物や複合酸化物にさらに異種金属元素を固溶(ドープ)させてなる固溶体酸化物であってもよい。
【0009】
金属酸化物微粒子は、ウィルソン法解析による結晶子径、すなわち、X線回折法におけるウィルソン解析法を用いて求めた結晶子径Dwが、15nm未満であるが、さらに透明性や平坦性に優れた膜を得ることができることから10nm以下であることが好ましい。上記Dw(X線回折法におけるウィルソン解析法を用いて求めた結晶子径)が15nm以上であると、前述した本発明の課題を達成することができないおそれがある。なお、金属酸化物微粒子の結晶子径は、電子線回折法により求めることもでき、上記Dwと同様に扱うことができる。
結晶子径Dwは、特に断りがない限り、微粒子の粉末X線回折測定を行い、ウィルソン法解析で求めた値であるとする。
【0010】
結晶子径Dwは、CuKα1線(波長:1.5405620Å)を用い、各回折線における回折線の広がりとして積分幅βを用いるようにして、結晶子の大きさとしてウィルソン法解析によりCauchy関数で近似して求める。通常、解析用回折線としては、走査範囲2θ=5°〜90°において回折強度が高い順に少なくとも3個(3強線)の回折線を選ぶようにするが、必要に応じ、明瞭な回折線があればそれも解析用回折線に含めてよく、3強線を含む3〜6個の回折線を選んで解析を行うようにする。
本発明においては、微粒子の粉末X線回折測定は、例えば、理学電気株式会社製の粉末X線回折装置「RINT2400」を用いて行うことができる。
【0011】
結晶子が微細(通常、5nm未満)になると、結晶性であっても粉末X線回折測定で結晶の同定や結晶子径の測定は不可能となる。その場合は、電子線回折測定により結晶の同定を行い、結晶子径は透過型電子顕微鏡で格子像が見える程度の高倍率下で観察し、その透過像により確認することができる。この場合の結晶子径は、20個の結晶子の大きさを測定し、その数平均を結晶子径とする。
金属酸化物微粒子は、基本的には、例えば、以下の方法により得ることができる。すなわち、金属カルボン酸塩とアルコールとを含む混合物を加熱して反応させる方法(以下、第1の製造方法と称することがある。)、または、金属アルコキシドとカルボキシル基含有化合物とを含む混合物を加熱して反応させる方法(以下、第2の製造方法と称することがある。)である。これら各方法について、以下に詳しく説明する。
【0012】
第1の製造方法で用いられる金属カルボン酸塩としては、特に限定はないが、後述のカルボキシル基含有化合物の金属塩を挙げることができる。これらのうちでも、金属飽和カルボン酸塩が好ましく、金属酢酸塩が最も好ましい。金属カルボン酸塩に含まれる金属(M)は、上記特定の金属とする。
第1の製造方法で用いられるアルコールとしては、特に限定はないが、例えば、脂肪族1価アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブチルアルコール、ステアリルアルコール等)、脂肪族不飽和1価アルコール(アリルアルコール、クロチルアルコール、プロパギルアルコール等)、脂環式1価アルコール(シクロペンタノール、シクロヘキサノール等)、芳香族1価アルコール(ベンジルアルコール、シンナミルアルコール、メチルフェニルカルビノール等)、フェノール類(エチルフェノール、オクチルフェノール、カテコール、キシレノール、グアヤコール、p−クミルフェノール、クレゾール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール、ドデシルフェノール、ナフトール、ノニルフェノール、フェノール、ベンジルフェノール、p−メトキシエチルフェノール等)、複素環式1価アルコール(フルフリルアルコール等)等の1価アルコール類;アルキレングリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ピナコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等)、芳香環を有する脂肪族グリコール類(ヒドロベンゾイン、ベンズピナコール、フタリルアルコール等)、脂環式グリコール類(シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール等)、ポリオキシアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)等のグリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート等の上記グリコール類のモノエーテルおよびモノエステル等の誘導体;ヒドロキノン、レゾルシン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等の芳香族ジオールおよびこれらのモノエーテルおよびモノエステル;グリセリン等の3価アルコールおよびこれらのモノエーテル、モノエステル、ジエーテルおよびジエステル等を挙げることができる。
【0013】
第1の製造方法で用いられるアルコールの配合量については、特に限定はないが、上記金属カルボン酸塩の金属の含有量に対してモル比で1〜500倍量とすることが好ましく、10〜200倍量とすることがよりに好ましい。
第2の製造方法で用いられる金属アルコキシドとしては、特に限定はないが、例えば、下記一般式(1)で示される化合物、または該化合物が(部分)加水分解・縮合してなる縮合物を挙げることができる。
(OR  (1)
(但し、Mは、金属原子;Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アシル基、アラルキル基、アリール基から選ばれた少なくとも1種;nは金属原子Mの価数)
一般式(1)中、Rとしては、水素原子および/またはアルコキシアルキル基の如く置換されていてもよいアルキル基が好ましい。
【0014】
一般式(1)中、Mは、上記金属カルボン酸塩に含まれる金属、すなわち上記特定の金属である。
金属アルコキシドは、上で説明したものに限らず、例えば、ヘテロ金属アルコキシド(ヘテロ金属オキソアルコキシ基含有化合物も含む)であってもよい。なお、ヘテロ金属アルコキシドとは、2個以上の異なる金属原子を有し、アルコキシ基や酸素原子を介したり、金属−金属結合等によって結ばれた金属アルコキシドのことである。ヘテロ金属アルコキシ基含有化合物を用いた場合は、複合酸化物からなる金属酸化物系粒子を得ることができる。
【0015】
第2の製造方法で用いられるカルボキシル基含有化合物は、分子内にカルボキシル基を少なくとも1つ有する化合物であり、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸(飽和モノカルボン酸)、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、オレイン酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸(不飽和モノカルボン酸)、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、β,β−ジメチルグルタル酸等の飽和多価カルボン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和多価カルボン酸等の鎖式カルボン酸類、シクロヘキサンカルボン酸等の環式飽和カルボン酸類、安息香酸、フェニル酢酸、トルイル酸等の芳香族モノカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸等の不飽和多価カルボン酸等の芳香族カルボン酸類、無水酢酸、無水マレイン酸、ピロメリット酸無水物等のカルボン酸無水物、トリフルオロ酢酸、o−クロロ安息香酸、o−ニトロ安息香酸、 アントラニル酸、p−アミノ安息香酸、アニス酸(p−メトキシ安息香酸)、トルイル酸、乳酸、サリチル酸(o−ヒドロキシ安息香酸)等の分子内にカルボキシル基以外のヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、アルコキシ基、スルホン酸基、シアノ基、ハロゲン原子等の官能基または原子団を有する化合物、アクリル酸ホモポリマー、アクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体等、重合体原料として上記不飽和カルボン酸を少なくとも1つ有する重合体を挙げることができる。これらのカルボキシル基含有化合物のうち、分散性の優れる粒子を得るためには、飽和カルボン酸が好ましく、酢酸が最も好ましい。また、カルボキシル基含有化合物が液体の場合は、後述の反応溶媒としても用いることもできる。
【0016】
第2の製造方法で用いられるカルボキシル基含有化合物に関し、金属アルコキシドとカルボキシル基含有化合物との配合比率(カルボキシル基含有化合物/金属アルコキシド)については、特に限定はないが、金属アルコキシドに含有されている金属原子Mの価数nを用いて、好ましくは下限が0.8n超、さらに好ましくは2n超であり、また、好ましくは上限が100n未満である。
第1および第2の製造方法における混合物は、反応溶媒等をさらに含むものでもよい。
反応溶媒の使用量については、特に限定はないが、第1の製造方法では、金属カルボン酸塩とアルコールと反応溶媒との合計量に対して、金属カルボン酸塩の濃度が1〜50重量%となるように、反応溶媒の使用量が設定されると好ましい。また、第2の製造方法では、金属アルコキシドとカルボキシル基含有化合物と反応溶媒との合計量に対して、金属アルコキシドの濃度が1〜50重量%となるように、反応溶媒の使用量が設定されると好ましい。これによって、分散性の高い粒子を経済的に得ることができる。
【0017】
反応溶媒としては、水以外の溶媒、すなわち、非水溶媒が好ましい。非水溶媒としては、例えば、炭化水素;ハロゲン化炭化水素;アルコール(フェノール類や、多価アルコールおよびその誘導体で水酸基を有する化合物なども含む);エーテルおよびアセタール;ケトンおよびアルデヒド;エステル;多価アルコール類のすべての水酸基の活性水素がアルキル基やアセトキシ基で置換された誘導体化合物;カルボン酸およびその無水物や、シリコーン油、鉱物油等を挙げることができる。
以下、第1の製造方法についてさらに詳しく説明する。
【0018】
第1の製造方法は、前述のごとく、金属カルボン酸塩とアルコールとを含む混合物を加熱して反応させる方法であり、この混合物は、非水溶媒等の反応溶媒(但し、アルコールは除く)をさらに含むものであってもよい。その加熱温度は、50〜300℃であることが好ましい。
第1の製造方法の具体的な操作手順については、特に限定はなく、例えば、1)金属カルボン酸塩とアルコールとを含む混合物を用意し、昇温して加熱する方法、2)加熱されたアルコールに金属カルボン酸塩を混合する方法、3)加熱されたアルコールに金属カルボン酸塩を混合する方法、4)反応溶媒と金属カルボン酸塩とを加熱しておき、これにアルコールを混合する方法、5)反応溶媒と金属カルボン酸塩とを加熱しておき、これにアルコールを混合する方法、6)混合物を構成し得るそれぞれの成分を加熱された状態で混合する方法等を挙げることができる。
【0019】
第1の製造方法では、前記混合物に含まれる水分が少ない方が、得られる金属酸化物微粒子の分散性が高まるために好ましい。具体的には、前記混合物が前記金属カルボン酸塩中の金属原子に対してモル比で1未満のわずかな水分しか含有しないことが好ましく、水分がモル比で0.2未満であるとさらに好ましく、0.1未満であると特に好ましい。
上記加熱反応は、常圧下、加圧下、減圧下のいずれの圧力下で行ってもよく、反応溶媒等の沸点が反応温度よりも低い場合は、耐圧反応装置を用いて行えばよい。通常、反応温度、反応時の気相圧は、溶媒の臨界点以下で行うが、超臨界条件で行うこともできる。
【0020】
次に第2の製造方法についてさらに詳しく説明する。
第2の製造方法は、前述のごとく、金属アルコキシドとを含む混合物を加熱して反応させる方法であり、この混合物は、反応溶媒等をさらに含むものであってもよい。その加熱温度は、50〜300℃であることが好ましい。
第2の製造方法の具体的な操作手順については、特に限定はなく、例えば、1)金属アルコキシドとカルボキシル基含有化合物とを含む混合物を用意し、昇温して加熱する方法、2)加熱されたカルボキシル基含有化合物に金属アルコキシ基含有化合物を混合する方法、3)加熱されたカルボキシル基含有化合物に金属アルコキシ基含有化合物を混合する方法、4)反応溶媒と金属アルコキシ基含有化合物とを加熱しておき、これにカルボキシル基含有化合物を混合する方法、5)反応溶媒と金属アルコキシ基含有化合物とを加熱しておき、これにカルボキシル基含有化合物を混合する方法、6)混合物を構成するそれぞれの成分を加熱された状態で混合する方法等を挙げることができる。
【0021】
第2の製造方法では、第1の製造方法と同様に、前記混合物に含まれる水分が少ない方が、得られる金属酸化物微粒子の分散性が高まるために好ましい。具体的には、前記混合物が前記金属アルコキシ基含有化合物中の金属原子に対してモル比で1未満のわずかな水分しか含有しないことが好ましく、水分がモル比で0.2未満であるとさらに好ましく、0.1未満であると特に好ましい。
第2の製造方法の加熱反応は、第1の製造方法と同様に、常圧下、加圧下、減圧下のいずれの圧力下で行ってもよく、反応溶媒等の沸点が反応温度よりも低い場合は、耐圧反応装置を用いて行えばよい。通常、反応温度、反応時の気相圧は、溶媒の臨界点以下で行うが、超臨界状態で行うこともできる。
【0022】
上記第1および第2の製造方法においては、ともに、前述した混合物の加熱反応時は、撹拌していることが好ましい。
第1および第2の製造方法により金属酸化物微粒子を調製した後の調製液は、そのまま、あるいは濃縮して溶媒分散体等として取り扱うことができるほか、濃縮乾固や遠心分離で溶媒を除去した後、加熱や乾燥をして金属酸化物微粒子のみを粉体として取り扱うこともできる。また、この時点で、直接、後述するバインダー成分(例えば樹脂成分)を加えておいて、膜形成剤として取り扱うようにすることもできる。
【0023】
本発明でいう金属酸化物微粒子は、上記第1および第2の製造方法により得ることができる金属酸化物微粒子であって、前述した特長を有するものであるが、さらに、カルボン酸(残)基やアルコキシ基を、金属酸化物の結晶性を損なわない範囲で含有する金属酸化物からなる金属酸化物微粒子(カルボン酸(残)基やアルコキシ基を、金属酸化物の結晶性を損なわない範囲で含有する金属酸化物の微粒子)であることが好ましい。このような金属酸化物からなるものであることによって、金属酸化物微粒子の分散性に優れる膜形成剤とすることができ、ひいては金属酸化物微粒子の分散性に優れる膜を得ることができるとともに、透明性や平滑性に非常に優れた膜を得ることができる。
【0024】
上記カルボン酸(残)基は、特に限定はされないが、−COO−基を意味し、具体的には、カルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート基(−COO−)、加水分解によってカルボキシル基および/またはカルボキシレート基を生成するエステル基等のことである。
カルボン酸(残)基は、吸着および/または化学結合等して金属酸化物微粒子の表面に存在することによって、金属酸化物微粒子の2次凝集が抑えられ、その分散性が向上する。カルボン酸(残)基としては、化学結合した飽和脂肪酸(残)基が好ましく、アセトキシ基(CHCOO−)、プロピオン酸基が最も好ましい。このようなカルボン酸(残)基を含有することによって、金属酸化物微粒子の分散性に優れた膜形成剤にできるとともに、金属酸化物微粒子の分散性に優れ、透明性、平滑性に優れた膜を得ることができる。
【0025】
上記アルコキシ基としては、特に限定はされないが、例えば、メトキシ基、ブトキシ基などを好ましく挙げることができる。このようなアルコキシ基を含有することによって、上記カルボン酸(残)基を含有する場合と同様の効果を得ることができる。
カルボン酸(残)基の含有量は、好ましくは金属酸化物中の金属原子に対し、0.01モル%以上で十分な効果が発揮されるようになり、好ましくは0.1モル%以上、さらに好ましくは1モル%以上である。なお、金属酸化物の結晶性を損なわない範囲で含有するようにする。
【0026】
また、アルコキシ基の含有量は、好ましくは金属酸化物中の金属原子に対し、0.01モル%以上で充分な効果が発揮されるようになり、好ましくは0.1モル%以上、さらに好ましくは1モル%以上である。なお、金属酸化物の結晶性を損なわない範囲で含有するようにする。
カルボン酸(残)基を含有する金属酸化物からなる金属酸化物微粒子を得る方法としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、金属酸化物微粒子にカルボン酸基を有する化合物を添加することによっても得られるが、カルボン酸基が化学結合したものを得るためには、第1の製造方法において、化学結合させたいカルボン酸基を有する金属カルボン酸塩を原料とすることが好ましい。
【0027】
アルコキシ基を含有する金属酸化物からなる金属酸化物微粒子を得る方法としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、金属酸化物微粒子をアルコール中で加熱処理することによっても得られるが、第2の製造方法において、化学結合させたいアルコキシ基を有する金属アルコキシドを原料とすることが好ましい。
本発明でいう金属酸化物微粒子は、さらに異種金属を0.1〜10原子%の含有割合で固溶(ドープ)してなる固溶体の金属酸化物(固溶体酸化物)からなることが好ましい。上記含有割合で異種金属を固溶したものであることによって、得られる膜の屈折率を所望のレベルに制御することができ、より好ましくは0.5〜5原子%である。0.1原子%未満である場合は、異種金属を固溶させることによる効果を充分に得ることができないおそれがあり、10原子%を超えると、工業的に安価に得ることができず経済性に劣ることとなるおそれがある。
【0028】
ドープする異種金属としては、特に限定はされないが、例えば、上記特定の金属(Ti、Zr、Zn、Sn、In、La、Y)のうち金属酸化物に含有している金属の価数よりも大きい酸化数の金属を用いることが、より屈折率の高い膜を得ることができるため好ましい。具体的には、例えば、ZnOに対してはAl、In、Ga、Sn、Sc、Y、Fe、Coなどの3価または4価の典型金属元素や遷移金属元素;Inに対しては、Ge、Sn、Sb、Ti、Zr、Hfなどの4価または5価の典型金属元素や遷移金属元素;TiO、ZrO、SnOに対してはSb、Nb、Cr、Mnなどの5価の典型金属元素や遷移金属元素;Laに対してはCe、Ge、Sn、Sb、Ti、Zr、Hfなどの4価または5価の金属元素;Yに対してはCe、Ge、Sn、Sb、Ti、Zr、Hfなどの4価または5価の金属元素;などを好ましくあげることができる。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
【0029】
異種金属をドープする方法としては、特に限定されるわけではなく、従来公知の固溶体酸化物の調製方法を用いることができるが、好ましくは、第1または第2の製造方法において、固溶させたい金属元素の化合物の存在下で金属酸化物微粒子を生成させる方法が挙げられる。
本発明でいう金属酸化物微粒子は、例えば、球状、楕円球状、立方体状、直方体状、多面体状、ピラミッド状、針状、柱状、棒状、筒状、りん片状、(六角)板状等の薄片状や、過飽和度の高い条件下で結晶の稜や角が優先的に伸びて生成した樹枝状、骸晶状などの形状を有する結晶子からなることが好ましい。金属酸化物微粒子は、1個の結晶子からなる単結晶体であることが好ましい。
【0030】
上記各種形状のなかでも、(六角)板状の場合は、平滑性に優れた膜を得ることができるため好ましい。特に、板状の形状の厚みに相当する結晶子径が10nm以下であることが好ましい。厚みに相当する結晶子径が、上記範囲内であることによって、平滑性に優れるとともに透明性に優れる散乱の無い膜を得ることができる。
上記(六角)板状の形状を有する結晶子からなる金属酸化物微粒子を得る方法としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、上に例示した第1の製造方法において、異種金属元素の化合物の存在下で金属酸化物微粒子を生成させる方法が挙げられる。
【0031】
同様に、上記各種形状のなかでも、柱状や針状が好ましく、なかでも柱状がより好ましい。また、柱状である場合、その両端部が円錐状または角錐状などのような突出した形状になっている形態でも、一端部が平面状で他端部が上記突出した形状の形態でもよい。例えばZnOの場合は、格子面(002)面に垂直な方向に、選択的に成長した形態が好ましい。ここで、格子面(002)の形状は任意であり、たとえば、円(微粒子の形態は、円柱状になる)、六角形等の多角形(六角形の場合は、微粒子の形状は六角柱状)であってもよい。
金属酸化物微粒子が柱状の結晶子からなる場合は、平滑性に優れた膜を得ることができるため好ましい。なかでも、柱状の形状の柱の太さに相当する結晶子径が10nm未満であることが好ましく、より好ましくは3〜8nmである。例えばZnOの場合、より具体的には、金属酸化物微粒子の粉末X線回折を行い、シェラー法(コーシー関数近似)を用いて各格子面に対して垂直方向の結晶子の大きさDs(hkl)を求めたとき、Ds(100)<10nmを満足する微粒子であることが好ましく、より好ましくは3nm≦Ds(100)≦8nmである。柱の太さに相当する結晶子径(Ds(100))が、上記範囲内であることによって、平滑性に優れるとともに透明性に優れる散乱の無い膜を得ることができる。
【0032】
柱状の結晶子であってその両端部のうち少なくとも一端部が円錐状または角錐状などのような突出した形状になっている場合、その端部(両端および一端を含む)の上記突出した形状部分を除いた部分(以下、柱状形態部)における、格子面(002)面の直径が均一(断面形状が均一)であることが好ましい。また、端部が突出した形状でない場合も同様である。具体的には、個々の金属酸化物微粒子のTEM像における柱状形態部の任意の部分における、柱状長さ方向(上記両端部の一端から他端への方向)に垂直な方向の長さ(幅)がそろっていることが好ましい。柱状形態部の柱状長さ方向の長さをLとしたとき、柱状形態部の一方の端からの、0.5Lにおける太さd(0.5L)と、0.1Lおよび0.9Lにおける太さd(0.1L)およびd(0.9L)とが、以下の関係式を満たすようになっていることが好ましく、
d(0.5L)×0.7<d(0.1L)<d(0.5L)×1.3
d(0.5L)×0.7<d(0.9L)<d(0.5L)×1.3
特に好ましくは、以下の関係式を満たすようになっていることである。
【0033】
d(0.5L)×0.9<d(0.1L)<d(0.5L)×1.1
d(0.5L)×0.9<d(0.9L)<d(0.5L)×1.1
また、上記突出した形状部分の長さLeは、金属酸化物微粒子の柱状形態部の長さLとの関係において、Le/L<1を満たしていることが好ましく、より好ましくはLe/L<0.5、さらに好ましくはLe/L<0.3、特に好ましくはLe/L<0.1である。上記関係を満たしていることによって、柱状であることにより得られる物性がさらに優れたものとなる。
上記柱状の形状を有する結晶子からなる金属酸化物微粒子を得る方法としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、上に例示した第1の製造方法において、メタノールとカルボン酸亜鉛との混合物を加熱する方法が好ましく、特に、柱状形態部の太さが10nm以下の微細なものを得る場合は、有機ケイ素化合物の存在下でメタノールとカルボン酸亜鉛との混合物を加熱する方法が好ましい。
【0034】
本発明の金属酸化物微粒子は、金属酸化物微粒子の表面が、下記一般式(2)で表される有機基含有化合物(以下、単に「有機基含有化合物」と称することがある。)または下記一般式(3)で表される金属化合物(以下、単に「金属化合物」と称することがある。)により処理され、金属酸化物微粒子の表面に、該有機基含有化合物および/または該金属化合物が複合(付着)してなる、いわゆる表面改質金属酸化物微粒子であることが好ましい。
        (2)
(但し、Yは有機官能基、Mは金属原子、Xは加水分解性基を表す。iは0から(s−1)までの整数、jは1からsまでの整数、sはMの原子価であって、i+j=sを満足する。)
       (3)
(但し、Mは金属原子、Xは加水分解性基を表す。tはMの原子価である。)
上記一般式(2)において、有機官能基であるYとしては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基およびアシル基などの有機基、アクリル基、メタクリル基およびビニル基等のエチレン性不飽和二重結合を有する重合性基、ならびに、エポキシ基などの反応性官能基を有する有機基、からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換されていてもよい基であることが好ましい。これらのなかでも、置換されていても良いアリール基およびアラルキル基がより好ましく、ベンジル基がさらに好ましい。置換されていても良いアリール基、アラルキル基であることによって、アルキル基などの他の基である場合よりも屈折率の高い表面改質金属酸化物微粒子を得ることができる。また、アクリル基、メタクリル基およびビニル基等のエチレン性不飽和二重結合を有する重合性基、ならびに、置換されていても良いアクリル基およびメタクリル基などもより好ましく、金属酸化物微粒子どうしに、あるいは、バインダーとしてアクリルモノマーを用いた場合の該微粒子と該バインダーとに、共重合性があるため、ハードコート性に非常に優れた膜を得ることができる。さらに、膜を高屈折率化するためには高濃度に金属酸化物微粒子を配合する必要があるが、該微粒子を高濃度に配合してもなおハードコート性に非常に優れる膜を得ることができる。
【0035】
上記一般式(2)および(3)において、加水分解性基であるXおよびXとしては、ハロゲン原子、OR基(但し、Rは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基およびアシル基から選ばれる少なくとも1種の置換されていても良い基である。)およびNH基から選ばれる少なくとも1種の置換されていても良い基であることが好ましい。上記OR基のRとしては、アルキル基が工業的に入手し易く、炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。Rにはエキトシエチル基等の置換されたアルキル基も含まれる。
上記一般式(2)および(3)において、金属原子であるMおよびMとしては、2価以上の金属原子が化学結合し易い点で好ましく、アルミニウム、チタン、ケイ素およびジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の金属原子がさらに好ましく、無機系微粒子との反応性が特に高く、取扱い易く、工業的に入手し易い。
【0036】
がアルミニウムである有機基含有化合物としては、例えば、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムアルキルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノメタクリレート、アルミニウムステアレートオキサイドトリマー、イソプロポキシアルミニウムアルキルアセトアセテートモノ(ジオクチルホスフェート)等の各種アルミニウム系カップリング剤等が例示される。
がケイ素である有機基含有化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N’−ビス〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン等のアミノ系シランカップリング剤;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤;3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロル系シランカップリング剤;3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のアクリロキシ系シランカップリング剤;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシ系シランカップリング剤;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤;N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン等のケチミン系シランカップリング剤;N−〔2−(ビニルベンジルアミノ)エチル〕−3−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩等のカチオン系シランカップリング剤;メチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ヒドロキシエチルトリメトキシシラン等のアルキル系シランカップリング剤;γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等の各種シランカップリング剤等が例示される。
【0037】
がジルコニウムである有機基含有化合物としては、例えば、ジルコニウムジn−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムトリn−ブトキシドペンタンジオネート等が例示される。
がケイ素である金属化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラブトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のシリコンアルコキシドのほかに、ヘキサメチルジシラザン等が例示される。
がジルコニウムである金属化合物としては、例えば、ジルコニウムジメタクリレートジブトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラn−ブトキシド等が例示される。
【0038】
がチタンである金属化合物としては、例えば、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラn−ブトキシド、チタンテトラメトキシプロポキシド、テトラオクチルチタネート、チタンステアリロキシド等のチタンテトラアルコキシド化合物;チタンメタクリレートイソプロポキシド、(2−メタクリロキシエトキシ)トリイソプロポキシチタネート等が例示される。
がアルミニウムである金属化合物としては、例えば、アルミニウムトリn−ブトキシド等のアルミニウムトリアルコキシド化合物等が例示される。
さらに、チタンテトラn−ブトキシドテトラマーなどのように、上記一般式(3)の金属化合物または上記一般式(2)の有機基含有化合物の部分加水分解物および/または結合物も好ましく例示される。また、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、環状アルミニウムオキサイドオクチレート等も一般式(3)の金属化合物の部分加水分解環状縮合物として好ましく例示される。
【0039】
上記有機基含有化合物で表面処理されてなる、いわゆる表面改質金属酸化物微粒子を得る方法としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、上記第1および第2の製造方法において、有機基含有化合物を上記混合物中に配合して加熱し反応させるようにすればよい。
有機基含有化合物と、上記混合物中の各種原料成分との配合方法は、特に限定されるわけではなく、例えば、第1の製造方法においては、具体的には、1)金属カルボン酸塩とアルコールと有機基含有化合物とを含む混合物を用意し、昇温して加熱する方法、2)加熱されたアルコールに金属カルボン酸塩と有機基含有化合物とを混合する方法、3)加熱されたアルコールと有機基含有化合物に金属カルボン酸塩を混合する方法、4)反応溶媒と金属カルボン酸塩とを加熱しておき、これにアルコールと有機基含有化合物とを混合する方法、5)反応溶媒と金属カルボン酸塩と有機基含有化合物とを加熱しておき、これにアルコールを混合する方法、6)混合物を構成し得るそれぞれの成分を加熱された状態で混合する方法等を挙げることができる。
【0040】
同様に、第2の方法においては、具体的には、1)金属アルコキシドとカルボキシル基含有化合物と有機基含有化合物とを含む混合物を用意し、昇温して加熱する方法、2)加熱されたカルボキシル基含有化合物に金属アルコキシ基含有化合物と有機基含有化合物とを混合する方法、3)加熱されたカルボキシル基含有化合物と有機基含有化合物に金属アルコキシ基含有化合物を混合する方法、4)反応溶媒と金属アルコキシ基含有化合物とを加熱しておき、これにカルボキシル基含有化合物と有機基含有化合物とを混合する方法、5)反応溶媒と金属アルコキシ基含有化合物と有機基含有化合物とを加熱しておき、これにカルボキシル基含有化合物を混合する方法、6)混合物を構成するそれぞれの成分を加熱された状態で混合する方法等を挙げることができる。
【0041】
有機基含有化合物の配合量については、原料として用いる金属カルボン酸塩または金属アルコキシ基含有化合物中の金属原子の価数と、製造したい有機基複合金属酸化物微粒子の金属原子の価数により異なるが、通常、配合した有機基含有化合物中の金属原子の、金属カルボン酸塩または金属アルコキシ基含有化合物中の金属原子に対するモル比が、0.01〜0.20となるように配合することが好ましく、より好ましくは0.04〜0.10である。上記モル比が0.01未満の場合は、有機基導入効果が不十分となるおそれがあり、0.20を超える場合は、未反応の有機基含有化合物が遊離して反応液中に残存するおそれがある。
【0042】
得られた金属酸化物微粒子において、有機基含有化合物の付着量(含有割合)は、金属酸化物微粒子の表面処理に供した有機基含有化合物中の金属原子の、金属酸化物微粒子中の金属原子に対するモル比が0.01以上となる付着量であることが好ましく、より好ましくは上記モル比が0.02以上となる付着量であり、特に上記モル比が0.04以上となる付着量である。上記モル比が0.01未満であると、有機基を複合した効果が不十分となるおそれがある。また、得られた有機基複合金属酸化物微粒子の単分散度が、20以下であることが好ましく、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下である。上記単分散度が20を超える場合は、有機基含有化合物の共存効果の1つである結晶の微細化効果が微粒子物性に十分に反映されないおそれがある。
【0043】
単分散度とは、分散粒径/1次粒子径で示され、ここで、1次粒子径とはX線回折学的には、結晶の場合は結晶子径(Dw)であり、結晶子が小さ過ぎてX線回折学的に求められない場合は比表面積径で定義される。
前記モル比、すなわち、有機基含有化合物の付着量は、得られた金属酸化物微粒子の粉末の蛍光X線分析によって求められる。なお、表面処理に供する有機基含有化合物と、表面処理される金属酸化物微粒子の金属成分が同じ場合は、有機基含有化合物を構成する炭素や窒素等の元素の元素分析を表面改質の前後の微粒子で行い、その結果から算出した。有機基含有化合物の付着量は、適宜、得られた金属酸化物微粒子の単離操作を行った上で測定すればよい。
【0044】
表面改質された金属酸化物微粒子を得るにあたり、上述した有機基含有化合物を用いた好ましい表面改質の方法において、有機基含有化合物の代わりに上記金属化合物を用いるようにすれば、上記金属化合物で表面改質された金属酸化物微粒子を得る好ましい方法となるが、金属化合物を加水分解する方法、あるいは、金属化合物の存在下で加熱する等の方法も用いることができる。
上述した有機基含有化合物または金属化合物を用いた好ましい表面改質の方法によれば、有機基含有化合物または金属化合物の加水分解性基の一部または全部が加水分解され、金属酸化物微粒子の表面に、「M−O−金属」(ここで、Mは、有機基含有化合物または金属化合物に含有される金属(MまたはM)であり、金属とは、金属酸化物に含有される金属である)という結合を介して表面処理された好ましい金属酸化物微粒子が得られる。
【0045】
本発明の金属酸化物微粒子は、紫外線吸収端が365nm以下の金属酸化物からなることが好ましい。このような金属酸化物微粒子を用いることによって、膜形成剤におけるバインダー成分に紫外線硬化型の樹脂を用いた場合、非常に硬化性に優れた膜形成剤とすることができ、ハードコート性に優れた膜を容易に得ることができる。また、上記金属酸化物としては、紫外線吸収端が360nm以下のものがより好ましい。
本発明の金属酸化物微粒子は、少なくとも2つの金属酸化物結晶が連結してなる繊維状金属酸化物微粒子であってもよい。その際、X線解析学的または電子線回折学的に結晶性の金属酸化物結晶子が2つまたはそれ以上繊維状となるように連結し、単なる凝集などではない物理的に1つの微粒子構造を有しているものが好ましい。
【0046】
この繊維状金属酸化物微粒子は、上記結晶性の金属酸化物結晶子が2以上連なってなるものであるが、4個以上連なっているものが好ましい。結晶子数が上記範囲内であることにより、後述する機能もしくは作用効果が期待される。
結晶子が繊維状に連結した金属酸化物微粒子であるため、電気伝導、熱伝導、音波の伝導などの伝導機能に優れるとともに高屈折率を有する膜を得ることができ、多孔質な膜の形成剤としても有用である。また、ハードコート性に優れた膜を得ることができる。
上記繊維状金属酸化物微粒子の結晶子の大きさDwが10nm以下と微細である場合は、それが1次元的に連鎖した微粒子である為に、可視光の散乱が(少)なく、そのために、透明性をも併せ持つ膜を得ることができる。しかも、ナノサイズ径のネットワーク構造を形成するために高い表面積、酸化物の機能、あるいはさらに高い光透過性をあわせもつ機能性多孔質膜を得ることもできる。
【0047】
上記繊維状金属酸化物微粒子を構成する金属酸化物結晶の結晶子形状は、どのような形状の結晶子であっても、繊維状金属酸化物微粒子としての機能、作用効果を発揮することができるため、特に限定されることはなく、例えば、球状、非球状いずれでもよい。非球状においても等方性の結晶形状、異方性の結晶形状いずれであってもよい。異方性の例としては、角柱状、円柱状、針状、板状など種々の形状を好ましく挙げることができる。
上記繊維状金属酸化物微粒子の形状については、特に限定はされないが、具体的には、繊維状構造の長手方向の幅を「長径」、繊維状構造の短手方向の幅を繊維の太さとして単に「直径」としたとき、長径と直径との比(長径/直径)が2以上であることが好ましく、より好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上である。上記長径と直径との比が2以上であることによって、繊維状という形態に基づく前述の機能および作用効果を有することができる。また、上記長径と直径との比が2未満である場合、前述の機能・作用効果が不十分となるおそれがある。なお、ここで定義した「長径」と「直径」は微粒子の透過型電子顕微鏡像に基づいて測定できる。通常、微粒子個々の直径は、長手方向の長さをLとしたときに、0.5L(中心)、0.2L、0.8Lの位置の各短径を測定しその3点の平均値とする。
【0048】
上記繊維状金属酸化物微粒子においては、上記長径の長さは、特に限定はされないが、例えば、10〜1000nmであることが好ましい。繊維状構造の長径が、上記範囲内の場合は、電気伝導性に優れるなどといった繊維状構造特有の優れた効果を得ることができると考えられる。上記長径が10nm未満の場合は、そのような効果を発揮しにくくなる傾向がある。
上記繊維状金属酸化物微粒子においては、上記直径は、特に限定はされないが、例えば、10nm以下であることが、透明性に優れる膜が得られるため好ましい。
【0049】
上記繊維状金属酸化物微粒子の形状は、全体として直線的な形状であってもよいし、湾曲している形状であってもよいし、S字型の形状であってもよい。
上記繊維状金属酸化物微粒子の構造については、金属酸化物の結晶子1つ1つが順に連結してなる数珠状の構造であってもよいし、一律に1つ1つの結晶子が繋がっているのではなく少なくとも一部分に複数の結晶子が塊状に連結してなるところがある構造であってもよいが、なかでも前者の構造が、繊維状構造特有の物性を効果的に発揮し得ると考えられるため好ましいといえる。前者の構造であっても、一直線状に延びていることに限らず、分岐していても良いのである。なお、後者の構造の場合、「直径」については、結晶子が塊状に連結してなる部分も含めて、前述した方法により求めることとする。
【0050】
上記繊維状金属酸化物微粒子を得る方法としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、上記第1および第2の製造方法において、上記一般式(2)において金属原子Mがケイ素原子である場合に表される有機基含有化合物(以下、有機ケイ素化合物と称する。)、または、上記一般式(3)において金属原子Mがケイ素原子である場合に表される金属化合物(以下、シリコンアルコキシドと称する。)を、上記混合物中に配合して加熱し反応させるようにすればよい。
上記有機ケイ素化合物としては、上記一般式(2)において金属原子Mがケイ素原子である場合に表される有機ケイ素化合物の具体例と同様のものを好ましく挙げることができる。
【0051】
また、有機ケイ素化合物と同様に、該有機ケイ素化合物の(部分)加水分解縮合物を好ましく用いることもできる。これら有機ケイ素化合物およびその(部分)加水分解縮合物については、どちらか一方を用いてもよいし併用してもよく、いずれも好ましい。例えば、上記列挙した有機ケイ素化合物を部分加水分解縮合してなる、線状、環状の3量体をはじめとする、線状(分岐鎖を含むものを含む)環状の加水分解縮合物が挙げられる。
前述した製造方法においては、上記有機ケイ素化合物およびその(部分)加水分解縮合物(以下、有機ケイ素化合物等と称することがある。)は、上述した混合物中に配合して加熱し反応させるようにするが、その配合量については、上記一般式(2)で表される有機基含有化合物を用いる場合と同様であることが好ましい。
【0052】
また、有機ケイ素化合物と、上記混合物中の各種原料成分との配合方法についても、上記一般式(2)で表される有機基含有化合物を用いる場合と同様であることが好ましい。
上記シリコンアルコキシドとしては、上記一般式(3)において金属原子Mがケイ素原子である場合に表される金属化合物の具体例と同様のものを好ましく挙げることができる。
また、シリコンアルコキシドと同様に、該シリコンアルコキシドの(部分)加水分解縮合物を好ましく用いることもできる。これらシリコンアルコキシドおよびその(部分)加水分解縮合物については、どちらか一方を用いてもよいし併用してもよく、いずれも好ましい。例えば、上記列挙したシリコンアルコキシドを部分加水分解縮合してなる、線状、環状の3量体をはじめとする、線状(分岐鎖を含むものを含む)環状の加水分解縮合物が挙げられる。
【0053】
前述した製造方法においては、上記シリコンアルコキシドおよびその(部分)加水分解縮合物(以下、シリコンアルコキシド等と称することがある。)は、上述した混合物中に配合して加熱し反応させるようにするが、その配合量については、上記一般式(3)で表される有機基含有化合物を用いる場合と同様であることが好ましい。
また、シリコンアルコキシドと、上記混合物中の各種原料成分との配合方法についても、上記一般式(3)で表されるシリコンアルコキシドを用いる場合と同様であることが好ましい。
【0054】
本発明の膜形成剤には、通常、金属酸化物微粒子とともに、バインダー成分が含まれる。バインダー成分としては、特に限定はされないが、例えば、有機系バインダー、無機系バインダー、有機−無機複合系バインダー等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
有機系バインダーとしては、例えば、アクリル樹脂系、ポリエステル樹脂系、フッ素樹脂系、アルキド樹脂系、アミノ樹脂系、ビニル樹脂系、エポキシ樹脂系、ポリアミド樹脂系、ポリウレタン樹脂系、不飽和ポリエステル樹脂系、フェノール樹脂系、ポリオレフィン樹脂系、シリコーン樹脂系、アクリルシリコーン樹脂系、キシレン樹脂系、ケトン樹脂系、ロジン変性マレイン酸樹脂系、液状ポリブタジエン、クマロン樹脂などの合成樹脂系バインダー;エチレン−プロピレン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムなどの天然または合成のゴム系バインダー;セラック、ロジン(松脂)、エステルガム、硬化ロジン、脱色セラック、白セラックなどの天然樹脂系バインダー;硝酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、酢酸セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの熱可塑性または熱硬化性高分子系バインダー等を挙げることができる。なお、上記合成樹脂系バインダーとしては、アクリル系、メタクリル系、エポキシ系などの硬化性(熱硬化性、紫外線硬化性、電子線硬化性、湿気硬化性、これらの併用等も含む)のバインダーを挙げることもでき、例えば、アクリル系モノマー、メタクリル系モノマー、エポキシ系モノマーなどの重合性・硬化性(熱硬化性、紫外線硬化性、電子線硬化性、湿気硬化性、これらの併用等も含む)のモノマーバインダーが挙げられる。本発明の膜形成剤に含まれる金属酸化物微粒子として、その表面に、例えば上記一般式(2)で表される有機基含有化合物であって有機官能基Yがアクリル基やメタクリル基を有する置換基を有していてもよい有機基が複合してなる金属酸化物微粒子を用いた場合に、バインダーとして、上記モノマーバインダーを用いると、金属酸化物微粒子とバインダーとの共重合性によりハードコート性に非常に優れた膜が得られ、また、高屈折率化した膜を得るために金属酸化物微粒子を高濃度に配合した場合でもハードコート性に非常に優れた膜が得られる。これら有機系バインダーは1種のみ用いても2種以上併用してもよい。
【0055】
無機系バインダーとしては、例えば、シリカゲル、アルカリケイ酸;シリカ、チタン、ジルコニア、アルミニウムなどの金属アルコキシド類またはこれらの(部分)加水分解縮合物;シリカゾル、アルミナゾルなどの金属酸化物ゾル;等を挙げることができる。これら無機系バインダーは1種のみ用いても2種以上併用してもよい。
有機−無機複合系バインダーとしては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、アクリルシリコーン等のほか、上記一般式(2)で表される有機基含有化合物または上記一般式(2)で表される有機基含有化合物と、上記一般式(3)で表される金属化合物とを、共加水分解・縮合してなる有機基含有ポリメタロキサン等を挙げることができる。これら有機−無機複合系バインダーは1種のみ用いても2種以上併用してもよい。
【0056】
バインダー成分の形態としては、特に限定はなく、溶剤可溶型、水溶性型、エマルション型、分散型(水/有機溶剤等の任意の溶剤)等を挙げることができる。
水溶性型のバインダー成分としては、例えば、水溶性アルキド樹脂、水溶性アクリル変性アルキド樹脂、水溶性オイルフリーアルキド樹脂(水溶性ポリエステル樹脂)、水溶性アクリル樹脂、水溶性エポキシエステル樹脂、水溶性メラミン樹脂等を挙げることができる。
エマルション型のバインダー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル共重合ディスパージョン、酢酸ビニル樹脂エマルション、酢酸ビニル共重合樹脂エマルション、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルション、アクリル酸エステル(共)重合樹脂エマルション、スチレン−アクリル酸エステル(共)重合樹脂エマルション、エポキシ樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション、アクリル−シリコーンエマルション、フッ素樹脂エマルション等を挙げることができる。
【0057】
本発明の膜形成剤においては、固形分に対する金属酸化物微粒子の含有割合は、具体的には、50重量%以上であることが好ましく、より好ましくは70重量%以上である。金属酸化物微粒子の含有割合が、50重量%未満であると、前述した本発明の課題が達成されないおそれがある。
また、本発明の膜形成剤においては、固形分に対する上記バインダー成分の含有割合は、具体的には、50重量%以下であることが好ましく、より好ましくは30重量%以下である。バインダー成分の含有割合が、50重量%を超えると、前述した本発明の課題が達成されないおそれがある。
【0058】
なお、上記固形分とは、金属酸化物微粒子成分とバインダー成分、ならびに、後述するその他成分である硬化剤や架橋剤を含んでなる、膜形成剤のうちの不揮発成分である。
金属酸化物微粒子が、例えば、有機基含有化合物で表面改質された金属酸化物微粒子のうち、以下に示す重合性基を含有する有機基を含む有機基含有化合物で表面改質された金属酸化物微粒子であれば、紫外線硬化型アクリル、エポキシなどの重合性バインダーをバインダーとした場合、上記微粒子表面に重合性基が存在するため、バインダーとの密着性に優れた、例えばハードコート性に優れる膜を得ることができる。また、上記微粒子の場合、バインダーなしでも、あるいはバインダーがごく僅か(好ましくは重合性バインダー)であっても、ハードコート性に優れる強靭な膜を得ることができる。
【0059】
上記の重合性基を含有する有機基を含む有機基含有化合物としては、特に限定はされないが、例えば、(3−アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、N−3−(アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(N−アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、o−(メタクリロキシエチル)−N−(トリエトキシシリルプロピル)ウレタン、(メタクリロキシメチル)ジメチルエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルジフェニルエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−t−ブトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0060】
また、本発明の膜形成剤においては、上記金属酸化物微粒子およびバインダー成分以外にも他の成分を含むことができる。例えば、上記バインダー成分を硬化あるいは架橋させるための従来公知の硬化剤や架橋剤のほか、各種触媒や各種開始剤等である。上記他の成分を含む場合、その含有割合は、後述する各種物性・機能(屈折率など)に関して所望の性能を有する膜が得られる範囲であれば、特に限定はされない。
本発明の膜形成剤においては、金属酸化物微粒子を均一に分散させておくのが、該微粒子が均一に分散した膜を得ることができるため好ましい。金属酸化物微粒子が均一に分散した膜形成剤とする方法・手段としては、例えば、ボールミル、サンドミル、ホモジナイザーなどの従来公知の分散機、または、超音波分散などの従来公知の分散方法を採用することができる。
【0061】
本発明の膜形成剤は、上に述べた成分構成を有する、屈折率が1.5以上の膜を形成させるための膜形成剤であり、好ましくは屈折率1.6以上、より好ましくは屈折率1.7以上、さらに好ましくは屈折率1.8以上の膜を形成させるための膜形成剤である。
また、同様に、本発明の膜形成剤は、透明性に関し、ヘイズが1.0%未満の膜を形成させるための膜形成剤であることが好ましく、ヘイズが0.5%未満の膜を形成させるための膜形成剤であることがより好ましい。ヘイズの値が上記範囲内であれば、透明性に非常に優れた膜となり得る。
【0062】
例えば、膜形成剤に含まれる金属酸化物微粒子が、上述した各種好ましい形態の中でも、カルボン酸基および/またはアルコキシ基を含有する金属酸化物からなる場合や、ウィルソン法解析による結晶子径Dwが10nm以下である場合などに、透明性に優れた膜を容易に得ることができる。
さらに、同様に、本発明の膜形成剤は、ハードコート性を有する膜を形成させるための膜形成剤であることが好ましい。ハードコート性を有する膜とは、耐スクラッチ性や鉛筆硬度などの物性に優れた膜のことである。具体的には、例えば、本発明の膜形成剤は、ガラス板に膜を形成した場合に、鉛筆硬度が2H以上の膜を形成することができ、好ましくは4H以上の膜、より好ましくは6H以上の膜を形成することができる。鉛筆硬度の値が上記範囲内であれば、ハードコート性を有する膜であるということができる。
【0063】
例えば、膜形成剤に含まれる金属酸化物微粒子が、上述した各種好ましい形態の中でも、繊維状金属酸化物微粒子の場合などに、ハードコート性を有する膜を容易に得ることができる。また、バインダー成分が紫外線硬化型の樹脂であり、かつ、金属酸化物微粒子が、紫外線吸収端が365nm以下の金属酸化物からなる場合にも、ハードコート性を有する膜を容易に得ることができる。
本発明にかかる膜は、上記本発明の膜形成剤により形成してなる膜である。なお、本発明にかかる膜は、その形態として、基材の表面等に形成された膜そのものの他、該膜を基材の表面等に有する膜製品、あるいは、該膜形成剤を成形してなる透明樹脂成形体をすべて含むものであるとする。
【0064】
本発明の膜形成剤を用いて通常公知の方法により成膜あるいは成形することにより、上で述べた各種機能において優れた性能を有する、膜そのもの、該膜を基材の表面等に有する膜製品、および、透明樹脂成形体などを得ることができる。本発明の膜形成剤を基材表面等に塗布するなどして膜製品を得る場合、基材としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、ガラス板、アクリル板、ポリカーボネート板、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムやPENフィルムなどのポリエステルフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリイミドフィルム、ポリオレフィンフィルムなど、公知のシート、フィルムなどを挙げることができる。すなわち、本発明の膜形成剤は、金属、ガラス、陶器等の無機物や、樹脂等の有機物等の基材の表面に塗布することができる。基板の形状については、特に限定はなく、フィルム状、シート状、板状、繊維状等の形状を挙げることができる。
【0065】
上記基材として用いられる樹脂の材質としては、特に限定はなく、例えば、ポリオレフィン系;EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)系;ポリスチレン系;軟質又は硬質ポリ塩化ビニル;EVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合体)系;PVA系(ビニロン系);PVDC系(ポリ塩化ビニリデン);ポリエステル系;ポリカーボネート系;ポリウレタン系;ポリアミド系;ポリイミド系;ポリアクリロニトリル系;ポリサルフォン系;ポリエーテルサルフォン系;ポリフェニレンサルファイド系;ポリアリレート系;ポリエーテルイミド系;アラミド系;(メタ)アクリル系;ポリエーテルエーテルケトン系;フッ素樹脂系等の、従来公知の樹脂を挙げることができる。
【0066】
本発明の膜形成剤により得られる膜(膜、膜製品および透明樹脂成形体)の屈折率、すなわち、上記膜のうち本発明の膜形成剤により得られた部分(例えば、上記膜製品であれば基材以外の膜そのものの部分)の屈折率は、1.5以上であることが好ましく、より好ましくは1.6以上、さらに好ましくは屈折率1.7以上、特に好ましくは屈折率1.8以上である。上記屈折率が1.5未満であると、前述した本発明の課題が達成されないおそれがある。
本発明の膜形成剤により得られる膜(膜、膜製品および透明樹脂成形体)の透明性、すなわち、上記膜のうち本発明の膜形成剤により得られた部分(例えば、上記膜製品であれば基材以外の膜そのものの部分)の、透明性に関しては、ヘイズが1.0%未満であることが好ましく、ヘイズが0.5%未満であることがより好ましい。ヘイズの値が上記範囲内であれば、透明性に非常に優れた膜となる。
【0067】
本発明の膜形成剤により得られる膜(膜、膜製品および透明樹脂成形体)は、本発明の膜形成剤に含まれるものとして前述した金属酸化物微粒子を、上記膜のうち本発明の膜形成剤により得られた部分(例えば、上記膜製品であれば基材以外の膜そのものの部分)に対して50重量%以上含有することが好ましく、より好ましくは70重量%以上である。金属酸化物微粒子の含有割合が、50重量%未満であると、前述した本発明の課題が達成されないおそれがある。
本発明の膜形成剤により得られる膜(膜、膜製品および透明樹脂成形体)は、高い屈折率を有する膜であり、好ましくは、優れた透明性とハードコート性を有する膜でもあるため、本発明の膜形成剤は、これらの優れた機能が要求される用途分野への利用を目的として好ましく用いることができる。
【0068】
例えば、本発明の膜形成剤を用いて高屈折率ハードコート膜を形成し、フィルム等の基材の上に積層した後、この上に低屈折率膜を積層することにより、反射防止膜を得ることができる。反射防止膜としては、上記低屈折率膜の層の上にさらに高屈折率膜や低屈折率膜を適宜積層して用いることもできる。反射防止膜に関しては、上記基材の上に積層する高屈折率ハードコート膜の膜厚は、1〜10μmであることが好ましく、より好ましくは2〜6μmであり、低屈折率膜の上に高屈折率膜や低屈折率膜をさらに積層する場合は該高屈折率膜の膜厚は、0.08〜0.15μmであることが好ましく、より好ましくは0.09〜0.13μmである。上記膜厚にすることによって、反射防止特性に優れた反射防止膜を得ることができる。なお、低屈折率層の上にさらに積層する高屈折率膜に対しても、本発明の膜形成剤を用いて形成した高屈折率ハードコート膜を用いることができる。このようにして得られる反射防止膜は、具体的には、表示材料の表示部分の反射防止膜として有用である。
【0069】
また、本発明の膜形成剤は、PETフィルムやPENフィルム等のフィルム、あるいは、ポリカーボネート板等の樹脂板などの表面にハードコート性を付与し得る膜製品の材料としても有用である。このようにして得られた、PETフィルムやPENフィルム等のフィルムにハードコート膜を形成して得られる膜製品は、建材用フィルム、マーキングフィルム、農業ハウスおよび自動車部品などの用途分野に好ましく用いることができ、ポリカーボネート板にハードコート膜を形成して得られる膜製品は、建材、自動車の窓、道路用防音壁および屋根材などの用途分野に好ましく用いることができる。また、電子材料用途や光学用途で用いるフィルムでは、基材と同等の屈折率を有するハードコート膜が求められており、このようなハードコート膜としても、本発明の膜形成剤は有用である。PETフィルムやPENフィルム等のフィルムにハードコート膜を形成して得られる膜製品については、ハードコート膜の部分の屈折率が1.7以上であることが好ましく、より好ましくは1.75〜1.8であり、上記屈折率であることによって、上記用途分野でさらに有用なものとなる。
【0070】
【実施例】
以下に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、以下では、便宜上、「重量部」を単に「部」と記すことがある。また、「重量%」を単に「wt%」と記すことがある。
下記製造例における調製方法および測定方法を以下に示す。
<粉末試料の調製法>
得られた分散体中の微粒子を遠心分離操作によって分離した後、メタノールによる洗浄、さらにアセトンによる洗浄を充分行った後、30℃で1日真空乾燥し、さらに80℃にて1日真空乾燥し、揮発成分を完全に除去して微粒子の粉末を得て、これを粉末試料とした。
【0071】
<有機基含有化合物の表面処理量>
粉末試料を蛍光X線分析し、金属酸化物結晶中の金属原子のモル数に対する、有機基含有化合物中の金属原子のモル数の割合(モル%)を、有機基含有化合物の表面処理量とした。
<結晶子径Dw>
粉末試料について、理学電気株式会社製の粉末X線回折装置「RINT2400」を用いて粉末X線回折測定することにより求めた。具体的な測定条件は以下のとおりである。
【0072】
すなわち、CuKα1線(波長:1.5405620Å)を用い、各回折線における回折線の広がりとして積分幅βを用いるようにして、結晶子の大きさ(結晶子径Dw)をウィルソン法解析によりCauchy関数で近似して求める。解析用回折線としては、走査範囲2θ=5°〜90°において回折強度が高い順に少なくとも3個(3強線)の回折線を選び、必要に応じてさらに残りの回折線のうち回折強度が高い順に1〜3個選んで解析を行うようにする。
<結晶子径Dhkl>
結晶子径Dwと同様に、粉末試料について、理学電気株式会社製の粉末X線回折装置「RINT2400」を用いて粉末X線回折測定することにより求めた。具体的には、得られたX線回折パターンにおける各回折線に関し、シェラー法解析で求めた結晶子径Dhkl(ここで、hklはミラー指数を表す。Dhklはミラー指数(hkl)の格子面に垂直な方向の結晶子の大きさである。)を求めた。また、同時に、透過型電子顕微鏡で結晶子形状を確認した。
【0073】
−製造例1−
撹拌機および温度計を備えた、外部より加熱し得る耐圧ステンレス製反応器からなる反応装置を用意した。この反応装置内を窒素置換した後、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート400部、酢酸48部、チタニウムn−テトラブトキシド68部からなる混合物を仕込み、得られた溶液を撹拌しながら200℃に昇温し、200±2℃で2時間保持した後、冷却して微粒子反応液を得た。微粒子反応液を加熱濃縮し、微粒子濃度22wt%のプロピレングリコールメチルエーテルアセテート分散体(微粒子分散体(1))を得た。また、分散体中の微粒子について解析した結果を表1に示す。
【0074】
−製造例2−
製造例1と同様の反応装置を用い、装置内を窒素置換した後、メタノール500部、酢酸亜鉛無水物68部、酢酸インジウム無水物4.3部からなる混合物を仕込み、得られた液を撹拌しながら150℃に昇温し、150±2℃で1時間保持した後、冷却して微粒子反応液を得た。
反応液を加熱濃縮しながらn−ブタノールを添加混合し、微粒子濃度30w%のn−ブタノール分散体(微粒子分散体(2))を得た。また、分散体中の微粒子について解析した結果を表1に示す。
【0075】
−製造例3−
製造例1と同様の反応装置を用い、装置内を窒素置換した後、ブタノール1000部、酢酸インジウム無水物30部、チタニウムn−テトラブトキシド1部からなる混合物を仕込み、得られた液を撹拌しながら200℃に昇温し、200±2℃で1時間保持した後、冷却して微粒子反応液を得た。
反応液を加熱濃縮しながらキシレンを添加混合し、微粒子濃度20%キシレン分散体(微粒子分散体(3))を得た。また、分散体中の微粒子について解析した結果を表1に示す。
【0076】
−製造例4−
製造例1と同様の反応装置を用い、装置内を窒素置換した後、ブタノール300部、ジルコニウムn−ブトキシドの80wt%n−ブタノール溶液50部、酢酸32部からなる混合物を仕込み、得られた溶液を撹拌しながら250℃に昇温し、250±2℃で1時間保持した後、冷却して微粒子反応液を得た。
反応液を加熱濃縮しながらプロピレングリコールメチルエーテルを添加混合し、微粒子濃度20%のプロピレングリコールメチルエーテル分散体(微粒子分散体(4))を得た。また、分散体中の微粒子について解析した結果を表1に示す。
【0077】
−製造例5−
製造例1と同様の反応装置を用い、装置内を窒素置換した後、メタノール500部、酢酸亜鉛無水物55部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン3部からなる混合物を仕込み、撹拌しながら常温(20℃)より150℃に昇温し、150±1℃で5時間保持した後、冷却して微粒子反応液を得た。
反応液中の微粒子は、Ds(002)=17nm、Ds(100)=8nm、Dw=8nmの結晶子が連結してなる繊維状微粒子であった。また、該繊維状微粒子は、透過型電子顕微鏡による測定結果から、長径35nm、直径6nmであった。
【0078】
反応液を加熱濃縮しながらn−ブタノールを添加混合し、微粒子濃度25%のn−ブタノール分散体(微粒子分散体(5))を得た。また、分散体中の微粒子について解析した結果を表1に示す。
−製造例6−
製造例1と同様の反応装置を用い、装置内を窒素置換した後、メタノール200部、酢酸亜鉛無水物55部、チタニウムn−テトラブトキシド4部からなる混合物を仕込み、撹拌しながら常温(20℃)より150℃に昇温し、150±1℃で5時間保持した後、冷却して微粒子反応液を得た。
【0079】
反応液を加熱濃縮しながらn−ブタノールを添加混合し、微粒子濃度28%のn−ブタノール分散体(微粒子分散体(6))を得た。また、分散体中の微粒子について解析した結果を表1に示す。
−製造例7−
製造例1と同様の反応装置を用い、装置内を窒素置換した後、メタノール500部、酢酸亜鉛無水物55部、メチルトリメトキシシラン1部からなる混合物を仕込み、撹拌しながら常温(20℃)より150℃に昇温し、150±1℃で5時間保持した後、冷却して微粒子反応液を得た。
【0080】
反応液を加熱濃縮しながらn−ブタノールを添加混合し、微粒子濃度24%のn−ブタノール分散体(微粒子分散体(7))を得た。また、分散体中の微粒子について解析した結果を表1に示す。
−製造例8−
製造例1と同様の反応装置を用い、装置内を窒素置換した後、メタノール224部およびヘキサン酸亜鉛14部からなる混合物を仕込み、撹拌しながら昇温し、内温150℃、気相部圧1.3MPaに達してから150±1℃で2.5時間保持した後、冷却し、微粒子反応液を得た。
【0081】
反応液を加熱濃縮しながらn−ブタノールを添加混合し、微粒子濃度15%のn−ブタノール分散体(微粒子分散体(8))を得た。また、分散体中の微粒子について解析した結果を表1に示す。
−製造例9−
製造例1と同様の反応装置を用い、メタノール200部、酢酸亜鉛無水物55部、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン6部からなる混合物を仕込み、撹拌しながら常温(20℃)より110℃に昇温し、110±1℃で3時間保持した後、冷却して微粒子反応液を得た。
【0082】
反応液を加熱濃縮しながらn−ブタノールおよびトルエンの混合溶媒を添加混合し、微粒子濃度20%の混合溶媒(n−ブタノールおよびトルエン)分散体(微粒子分散体(9))を得た。また、分散体中の微粒子について解析した結果を表1に示す。
分散体(9)の透過型電子顕微鏡観察を行った結果、結晶子が連結した繊維状の形態(太さが5〜10nmで繊維長は長いもので200nm程度)を有する微粒子が多く含まれていることが確認された。
【0083】
【表1】
Figure 2004091763
【0084】
表中の略記は以下のとおりである。
GPTMS:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
MTMS :メチルトリメトキシシラン
APTMS:(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン
−実施例1−
製造例1で得られた微粒子分散体(1)87.2部に、バインダー溶液として紫外線硬化型コーティング剤であるHIC2000(共栄社化学(株)製、固形分50wt%、屈折率1.576)を12.8部混合し、最終固形分が20wt%となるように、希釈溶剤としてメチルエチルケトンを適宜必要量用いて分散処理することにより、膜形成剤(1)を調製した。
【0085】
得られた膜形成剤(1)を、PETフィルム(東洋紡社製、製品名:A4300(両面コート品)上にバーコーター#9を用いて塗布し、10分間セッティング後、100℃で1分加熱乾燥した後、高圧水銀ランプで紫外線照射(紫外線照射光量600mJ/cm)することにより、乾燥膜厚1μmの膜が形成されたフィルム(1)を得た。
−実施例2〜10−
実施例1において、使用する微粒子分散体の種類、使用量、バインダー溶液の使用量を表2に示すように変えた以外は、実施例1と同様の操作により、膜形成剤(2)〜(10)を調製し、表2に示す乾燥膜厚の膜が形成されたフィルム(2)〜(10)を得た。
【0086】
−実施例11−
製造例2で得られた微粒子分散体(2)83.3部に、バインダー溶液として紫外線硬化型コーティング剤であるHIC1000(共栄社化学(株)製、固形分100wt%、屈折率1.625)を16.7部混合し、最終固形分が20wt%となるように、希釈溶剤としてメチルエチルケトンを適宜必要量用いて分散処理することにより、膜形成剤(11)を調製した。
得られた膜形成剤(11)を、PETフィルム(東洋紡社製、製品名:A4300(両面コート品)上にバーコーターを用いて塗布し、10分間セッティング後、100℃で1分加熱乾燥した後、高圧水銀ランプで紫外線照射(紫外線照射光量600mJ/cm)することにより、乾燥膜厚0.3μmの膜が形成されたフィルム(11)を得た。
【0087】
−実施例12〜14−
実施例11において、使用する微粒子分散体の種類、使用量、バインダー溶液の使用量を表2に示すように変えた以外は、実施例11と同様の操作により、膜形成剤(12)〜(14)を調製し、表2に示す乾燥膜厚の膜が形成されたフィルム(12)〜(14)を得た。
−実施例15−
実施例1において、使用する微粒子分散体の種類、使用量、バインダー溶液の使用量を表2に示すように変えた以外は、実施例1と同様の操作により、膜形成剤(15)を調製し、表2に示す乾燥膜厚の膜が形成されたフィルム(15)を得た。
【0088】
実施例1〜15において得られたフィルム(1)〜(15)の膜(フィルム上に形成された膜)の屈折率、乾燥膜厚および透明性を、以下の方法および基準により測定・評価し、その結果を表2に示す。
〔屈折率〕
反射分光膜厚計(大塚電子株式会社製、製品名:FE−3000)を用い、フィルム上に形成された膜について、230〜760nmの範囲で反射率を測定し、代表的な屈折率の波長分散の近似式としてnk_Cauchyの分散式を引用し、未知のパラメーターを絶対反射率のスペクトルの実測値から非線形最小二乗法によって求めて、波長550nmでの屈折率を求めた。
〔乾燥膜厚〕
反射分光膜厚計(大塚電子株式会社製、製品名:FE−3000)を用いて、フィルム上に形成された膜の膜厚(乾燥膜厚)を測定した。
〔透明性〕
得られたフィルム(フィルム(1)〜(15))および基材フィルム(PETフィルム)のそれぞれのヘイズを、濁度計(日本電色工業(株)製、製品名:NDH−1001 DP)により測定した。得られたフィルムのヘイズ(Hf)(%)と基材フィルムのヘイズ(Hb)(%)との差「ΔH(%)(=Hf(%)−Hb(%))」を求め、以下の基準により評価した。
【0089】
◎:ΔH≦1%
○:1%<ΔH≦3%
×:3%<ΔH
さらに実施例1〜15において、得られた膜形成剤(1)〜(15)をPETフィルム上に(乾燥膜厚が5μmとなるように)塗布し、100℃で10分加熱乾燥した後、高圧水銀ランプで紫外線照射(照射光量400mJ/cm)することにより、乾燥膜厚5μmの膜が形成されたフィルム(1’)〜(15’)を得た。
【0090】
得られたフィルム(1’)〜(15’)の膜(フィルム上に形成された膜)の耐スクラッチ性および耐溶剤性を、以下の方法および基準により測定・評価し、その結果を表2に示す。
〔耐溶剤性〕
フィルム上に形成した膜表面に対して、アセトンでラビング試験(50回)を行い、目視により膜表面を観察し、以下の基準で評価した。
○:全く溶解していない
△:僅かに溶解している
×:顕著に溶解している
〔耐スクラッチ性〕
フィルム上に形成した膜表面に対して、荷重条件250g/cmでスチールウール0000番で10往復した後の傷つきの程度を目視により観察し、以下の基準で評価した。
【0091】
◎:無傷
○:僅かに傷あり
△:傷が少ない
×:膜が白化するほど傷が多い
【0092】
【表2】
Figure 2004091763
【0093】
−実施例16−
製造例5で得られた微粒子分散体(5)と、バインダー溶液として紫外線硬化型コーティング剤であるHIC2000(共栄社化学(株)製、固形分50wt%、屈折率1.576)とを、固形分量比(ZnO/HIC2000)が50/50、かつ、最終固形分が20wt%となるように、希釈溶剤としてメチルエチルケトンを適宜必要量用いて配合し、分散処理することにより、膜形成剤(16)を調製した。
得られた膜形成剤(16)に、紫外線硬化触媒(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、製品名:イルガキュア907)を上記HIC2000の固形分量の5wt%となるように添加し、次いで、PETフィルム(東洋紡社製、製品名:A4300(両面コート品)、188μm厚)上に(乾燥膜厚が5μmとなるように)バーコーター#20(あるいはバーコーター#22)を用いて塗布し、10分間セッティング後、100℃で15分加熱乾燥し、その後、高圧水銀ランプ(コンベア速度2.4m/min、光量250mJ/cm)で紫外線照射(照射光量1000mJ/cm)することにより、乾燥膜厚5μmの膜(反射分光膜厚計(大塚電子株式会社製、製品名:FE−3000)を用いて測定)が形成されたPETフィルム(16)を得た。
【0094】
−実施例17、18−
実施例16において、微粒子分散体(5)の代わりに、製造例7で得られた微粒子分散体(7)または製造例9で得られた微粒子分散体(9)を用いた以外は、実施例16と同様にして、膜形成剤(17)および(18)を調製した。
次いで、これらを用いて、実施例16と同様にして、PETフィルム(17)および(18)を得た。
−実施例19〜21−
実施例16〜18において、固形分量比(ZnO/HIC2000)が50/50となるようにしていたのを70/30となるようにした以外は、実施例16〜18と同様にして、膜形成剤(19)〜(21)を調製した。
【0095】
次いで、これらを用いて、実施例16〜18と同様にして、PETフィルム(19)〜(21)を得た。
さらに、これらPETフィルム(19)〜(21)を得る過程において、照射光量1000mJ/cmとなるように紫外線照射していたのを、照射光量6000mJ/cmとなるようにした以外は同様にして、PETフィルム(19’)〜(21’)を得た。
得られたPETフィルム(16)〜(21)および(19’)〜(21’)の膜(PETフィルム上に形成された膜)の外観、耐溶剤性、耐スクラッチ性および屈折率を、以下の方法および基準により測定・評価し、その結果を表3に示す。なお、屈折率の測定方法については、前述の、フィルム(1)〜(15)の膜の屈折率測定の方法と同様であるとする。
〔外観〕
○:透明
△:やや曇っている
×:曇っている
〔耐溶剤性〕
PETフィルム上に形成した膜表面に対して、アセトンでラビング試験(50回)を行い、表面にラビング跡が付いた時点でのラビングの回数の値を測定した。
〔耐スクラッチ性〕
PETフィルム上に形成した膜表面に対して、荷重条件250g/cmでスチールウール0000番で10往復した後の、膜表面の傷の本数を目視により観察し、以下の基準で評価した。
【0096】
A:変化無し(キズ無し)
B:数本のキズが認められる
C:十数本のキズが認められる
D:数十本のキズが認められる
E:無処理の場合(PETフィルムのみ)と同様に無数のキズが認められる
【0097】
【表3】
Figure 2004091763
【0098】
−実施例22〜27−
実施例16〜21において、希釈溶剤としてメチルエチルケトンの代わりにイソプロピルアルコールを用い、基材としてPETフィルムの代わりにポリカーボネート(PC)板(旭硝子(株)製、製品名:レキサン9034、5mm厚)を用いた以外は、実施例16〜21と同様にして、PETフィルム(16)〜(21)および(19’)〜(21’)の代わりに、PC板(22)〜(27)および(25’)〜(27’)を得た。
得られたPC板(22)〜(27)および(25’)〜(27’)の膜(PC板上に形成された膜)の耐溶剤性、耐スクラッチ性および屈折率を、前述のPETフィルム(16)〜(21)および(19’)〜(21’)に関する場合と同様の方法および基準により測定・評価し、その結果を表4に示す。
【0099】
【表4】
Figure 2004091763
【0100】
【発明の効果】
本発明によれば、高い屈折率を有する金属酸化物微粒子含有機能性膜や該機能性膜を基材表面に設けてなる膜製品等を得させることのできる膜形成剤、および、該膜形成剤により形成してなる膜を提供することができる。

Claims (5)

  1. Ti、Zr、Zn、Sn、In、LaおよびYからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり結晶子径が15nm未満である金属酸化物微粒子を含む、屈折率が1.5以上の膜を形成させるための、膜形成剤。
  2. ヘイズ1%未満の膜を形成させるための、請求項1に記載の膜形成剤。
  3. ハードコート性を有する膜を形成させるための、請求項1または2に記載の膜形成剤。
  4. 前記金属酸化物粒子は、下記一般式:

    (但し、Yは有機官能基、Mは金属原子、Xは加水分解性基、iおよびjは1から(s−1)までの整数であってi+j=s(sはMの原子価)を満足する。)
    で表される有機基含有化合物がその表面に複合されてなる金属酸化物微粒子、および/または、少なくとも2つの金属酸化物結晶が連結してなる繊維状金属酸化物微粒子である、請求項1から3までのいずれかに記載の膜形成剤。
  5. 請求項1から4までのいずれかに記載の膜形成剤により形成してなる膜。
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