JP2004091541A - スラッシュ成型用パウダー組成物 - Google Patents
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Abstract
【課 題】成型性、長期耐久性およびフォギング性に優れたスラッシュ成型用パウダー組成物の提供。また、前記スラッシュ成型用パウダー組成物を用いて成型した成型品の提供。
【解決手段】熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル(b1)および/または芳香族モノビニル単量体(b2)およびα,β−エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(b3)を含む単量体混合物を重合してなる重合体(B)、およびメラミン樹脂(C)からなることを特徴とするスラッシュ成型用パウダー組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル(b1)および/または芳香族モノビニル単量体(b2)およびα,β−エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(b3)を含む単量体混合物を重合してなる重合体(B)、およびメラミン樹脂(C)からなることを特徴とするスラッシュ成型用パウダー組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はスラッシュ成型用パウダー組成物に関する。より詳しくは、成型性、長期耐久性に優れ、更にフォギング性に優れる成型品を与えるスラッシュ成型用パウダー組成物に関する。また、本発明は前記スラッシュ成型用パウダー組成物を用いてスラッシュ成型された成型品に関する。
【0002】
【従来の技術】
スラッシュ成型法は、複雑な形状の製品が容易に成型できること、肉厚が均一にできること、材料の歩留まりが良いことから、自動車の内装材等の用途に広く利用されており、主に軟質のポリ塩化ビニル(PVC)系粉末がこのような用途に使用されている。
しかし、軟質化されたPVCは低分子量の可塑剤を多量に含有するため、可塑剤の凝固点以下ではソフト感が損なわれてしまう。また、経年後に可塑剤が抜けることにより表皮収縮による寸法変化が大きく意匠性で制約を受ける場合がある。さらに経年後に可塑剤が抜けることによりエアバッグ展開性能の確保が難しい等の問題点を有しており、PVCに代わる材料の開発が求められている。
【0003】
PVCに代わる材料として、ポリウレタン樹脂やポリオレフィン樹脂などが検討されているが、溶融性に優れる樹脂を用いた場合、長期耐久性、特に長時間高温にさらされた際、樹脂の劣化やシート外観が変化するという問題点を有している。これらを解決する手法として、たとえば特開2000−103956号公報には数平均分子量が10,000〜50,000で熱軟化開始温度が120℃から200℃の熱可塑性ポリウレタンエラストマー(A)、可塑剤(B)、ラジカル重合性不飽和基含有化合物(C)および必要により添加剤からなるポリウレタン樹脂系スラッシュ成型用材料が開示されている。この方法ではラジカル重合性不飽和基含有化合物がスラッシュ成型時に一部反応を起こすことおよび残存する不飽和基がラジカルトラップ剤となることにより長期耐久性が向上すると考えられるが、添加量が増えるに従い、未反応のモノマー類の揮散によりフォギング性が悪化するという問題点を有している。
そこで、PVCに代わる材料であって、ラジカル重合性不飽和基含有化合物の影響を受けないスラッシュ成型品であって、長期耐久性に優れさらにフォギング性に優れたスラッシュ成型品が待ち望まれていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、成型性、長期耐久性およびフォギング性に優れたスラッシュ成型用パウダー組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、前記スラッシュ成型用パウダー組成物を用いて成型した成型品を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル(b1)および/または芳香族モノビニル単量体(b2)およびα,β−エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(b3)を含む単量体混合物を重合してなる重合体(B)、およびメラミン樹脂(C)からなるスラッシュ成型用パウダー組成物が、成型性、長期耐久性およびフォギング性に優れていることを見出した。そして、上記熱可塑性ポリウレタン樹脂が、有機イソシアネート(a1)、ジオール類(a2)、および、モノオール(a3)および/またはモノアミン(a4)からなるイソシアネート基末端プレポリマーとジアミン化合物(a5)とを鎖伸長反応に付して得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂であることが好ましいことを知見した。
【0006】
また、本発明者らは、上記重合体(B)が、重合体(B)100重量部に対して、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル(b1)0〜49重量部、芳香族ビニル単量体(b2)50〜99重量部、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(b3)0.01〜40重量部および連鎖移動剤(b4)0〜10重量部を含む単量体混合物を重合してなる重合体(B)であることが好ましいことを見出した。上記メラミン樹脂(C)が完全アルキル型メチル化メラミン樹脂であることが好ましく、上記熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)、上記重合体(B)および上記メラミン樹脂(C)の配合割合が、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)50〜99重量%、重合体(B)0.1〜50重量%およびメラミン樹脂(C)0.1〜10重量%であることが好ましいことを知見した。上記スラッシュ成型用パウダー組成物が、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)の水分散液、重合体(B)の水分散液、および、メラミン樹脂の水分散液および/または水溶液を混合した後、混合液を噴霧乾燥することにより製造されるスラッシュ成型用パウダー組成物が特に好ましいことを見出した。
【0007】
さらに、本発明者らは、上記スラッシュ成型用パウダー組成物を用いてスラッシュ成型された成型品が、長期耐久性およびフォギング性に驚くほど優れており、前記成型品が、自動車内装品であることが特に好ましいことを知見した。
本発明者らは、かかる種々の新知見を得たのち、さらに検討を重ね、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1) 熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル(b1)および/または芳香族モノビニル単量体(b2)およびα,β−エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(b3)を含む単量体混合物を重合してなる重合体(B)、およびメラミン樹脂(C)からなることを特徴とするスラッシュ成型用パウダー組成物、
(2) 熱可塑性ポリウレタン樹脂が、有機イソシアネート(a1)、ジオール類(a2)、および、モノオール(a3)および/またはモノアミン(a4)を含んでなるイソシアネート基末端プレポリマーとジアミン化合物(a5)とを鎖伸長反応に付して得られることを特徴とする(1)に記載のスラッシュ成型用パウダー組成物、
(3) 重合体(B)が、重合体(B)100重量部に対して、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル(b1)0〜49重量部、芳香族ビニル単量体(b2)50〜99重量部、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(b3)0.01〜40重量部および連鎖移動剤(b4)0〜10重量部を含む単量体混合物を重合してなる重合体(B)であることを特徴とする(1)または(2)に記載のスラッシュ成型用パウダー組成物、
に関する。
【0009】
また、本発明は、
(4) メラミン樹脂(C)が完全アルキル型メチル化メラミン樹脂であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のスラッシュ成型用パウダー組成物、
(5) 熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)、重合体(B)およびメラミン樹脂(C)の配合割合が、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)50〜99重量%、重合体(B)0.1〜50重量%およびメラミン樹脂(C)0.1〜10重量%であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のスラッシュ成型用パウダー組成物、
(6) 熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)の水分散液、重合体(B)の水分散液、および、メラミン樹脂の水分散液および/または水溶液を混合した後、混合液を噴霧乾燥することにより製造されることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のスラッシュ成型用パウダー組成物、
(7) (1)〜(6)のいずれかに記載のスラッシュ成型用パウダー組成物を用いてスラッシュ成型された成型品、
(8) 自動車内装品であることを特徴とする(7)に記載の成型品、
に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に係るスラッシュ成型用パウダー組成物は、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル(b1)および/または芳香族モノビニル単量体(b2)およびα,β−エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(b3)を含む単量体混合物を重合してなる重合体(B)、およびメラミン樹脂(C)からなるスラッシュ成型用パウダー組成物であれば、特に限定されない。以下、本発明にかかるスラッシュ成型用パウダー組成物の各構成要件について説明する。
【0011】
これらのうち、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)は、通常ウレタン結合を少なくとも一個以上有する熱可塑性樹脂であるが、本発明において、特に限定されず、熱可塑性ポリウレタン樹脂と称される公知のものであって良く、例えば、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法で製造される200〜260℃で溶融可能な熱可塑性ポリウレタン樹脂が挙げられる。その中で有機ジイソシアネート(a1)、およびジオール類(a2)、およびモノオール(a3)および/又はモノアミン(a4)からなるイソシアネート基末端プレポリマーをジアミン化合物(a5)により鎖伸長を行うことにより得たものを好適に使用することが出来る。
【0012】
この、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)を形成する有機ジイソシアネート(a1)としては、通常イソシアネート基を少なくとも1個有する有機化合物であるが、本発明において特に限定されず、有機イソシアネートと称される公知のものであって良い。上記有機イソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートおよびトリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネートの単独あるいは2種類以上の混合物を挙げることができる。
【0013】
さらに、本発明においては、上記有機イソシアネート(a1)に、モノイソシアネートを含有させてもよい。該モノイソシアネートとして、例えば、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、n−ヘキシルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、2−エチルヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネートまたはベンジルイソシアネート等を挙げることができる。
また、本発明においては、上記したこれら有機イソシアネート(a1)を、単独で用いても、又は2種以上併用してもよく、このような有機イソシアネートとして、上記脂環族ジイソシアネートまたは上記脂肪族ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の有機イソシアネートを用いることが特に好ましい。
【0014】
本発明において用いられるジオール類(a2)は、通常二個の水酸基を有する化合物であるが、本発明において、特に限定されず、公知のものであってよい。上記ジオール類(a2)としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオールまたはアクリルポリオール等が挙げられる。以下、これら例示したジオール類について説明する。
【0015】
該ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリプロピレングリコールまたはポリテトラメチレングリコール等を挙げることができる。該ポリプロピレングリコールとしては、例えば、低分子量のポリオール或いは低分子量のアミンを開始剤としたエチレンオキサイド、またはプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの付加重合物(2種以上のアルキレンオキサイドのランダム及び/又はブロック重合物を含む。)などを挙げることができる。該ポリテトラメチレングリコールとしては、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合により得られる開環重合物、例えばポリテトラメチレンエーテルグリコール等を挙げることができる。また、該ポリテトラメチレングリコールとして、デュポン株式会社製の商標名テラタンなどの市販品を用いてもよい。
【0016】
該ポリエステルポリオールとしては、例えば、分子末端に水酸基をもつ多価カルボン酸と二価アルコールとの重縮合物等を挙げることができる。
該多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族カルボン酸または芳香族カルボン酸等を挙げることができる。該脂肪族カルボン酸としては、例えば、脂肪族飽和カルボン酸または脂肪族不飽和カルボン酸が挙げられ、該脂肪族飽和カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、1,1−ジメチル1,3−ジカルボキシプロパン、3−メチル−3−エチルグルタール酸、アゼライン酸、セバチン酸、ヘプタン酸、オクチル酸、ぺラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸またはステアリン酸等の脂肪族飽和ジカルボン酸、水添ダイマー酸、ヘット酸、またはこれらのカルボン酸からなる酸無水物、すなわち無水シュウ酸、無水コハク酸、無水2−ドデシルコハク酸、無水2−トリデシルコハク酸、無水2−テトラデシルコハク酸、無水2−ペンタデシルコハク酸、無水2−ヘキサデシルコハク酸、無水2−ヘプタデシルコハク酸、無水2−オクタデシルコハク酸、またはこれらのカルボン酸からなる酸ハライド、すなわちシュウ酸ジクロリド、アジピン酸クロライドまたはセバチン酸クロライド等の二価のカルボン酸を挙げることができ、三価以上のカルボン酸として、例えば、マレイン化脂肪酸、ブタン1,2,3−トリカルボン酸トリメチル、ブタン1,2,3−トリカルボン酸トリエチル、ブタン−1,2,3−トリカルボン酸ブチル、ブタン−1,2,3−トリカルボン酸ペンチル、ブタン−1,2,3−トリカルボン酸ヘキシル、ブタン−1,2,3−トリカルボン酸ヘプチル、ブタン−1,2,3−トリカルボン酸オクチル、ブタン−1,2,3−トリカルボン酸ノニル、ブタン−1,2,3−トリカルボン酸デシル、ブタン−1,2,3−トリカルボン酸フェニル、ブタン−1,2,3−トリカルボン酸ナフチル、2−エトキシカルボニルコハク酸ジエチル、3,3−ビス(エトキシカルボニル)ドデカン酸エチル、3,3−ビス(エトキシカルボニル)トリデカン酸エチル、3,3−ビス(エトキシカルボニル)テトラデカン酸エチル、3,3−ビス(エトキシカルボニル)ペンタデカン酸エチル、3,3−ビス(エトキシカルボニル)ヘキサデカン酸エチル、3,3−ビス(エトキシカルボニル)ヘプタデカン酸エチル、3,3−ビス(エトキシカルボニル)オクタデカン酸エチル、3,3−ビス(エトキシカルボニル)ノナデカン酸エチル、3,3−ビス(エトキシカルボニル)イコサン酸エチル、3,3−ビス(エトキシカルボニル)ヘンイコサン酸エチル、ブタンテトラカルボン酸または1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等を挙げることができる。
【0017】
また、本発明で使用される脂肪族不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、1−ブテンー2,4−ジカルボン酸(別名2−メチレングルタル酸)、メテニル置換コハク酸、エテニル置換コハク酸、プロペニル置換コハク酸、ブテニル置換コハク酸、ペンテニル置換コハク酸、ヘキセニル置換コハク酸、ヘプテニル置換コハク酸、オクテニル置換コハク酸、ノネニル置換コハク酸、デセニル置換コハク酸、ウンデセニル置換コハク酸、ドデセニル置換コハク酸、トリデセニル置換コハク酸、テトラデセニル置換コハク酸、ペンタデセニル置換コハク酸、ヘキサデセニル置換コハク酸、ヘプタデセニル置換コハク酸、オクタデセニル置換コハク酸、ノナデセニル置換コハク酸、イコセニル置換コハク酸、ヘンイコセニル置換コハク酸、ドコセニル置換コハク酸、トリアコンテニル置換コハク酸、ヘントリアコンテニル置換コハク酸、テトラコンテニル置換コハク酸、ペンタコンテニル置換コハク酸、2−オクテニル置換コハク酸、2−ノネニル置換コハク酸、2−デセニル置換コハク酸、2−ウンデセニル置換コハク酸、2−ドデセニル置換コハク酸、2−トリデセニル置換コハク酸、2−テトラデセニル置換コハク酸、2−ペンタデセニル置換コハク酸、2−ヘキサデセニル置換コハク酸、2−ヘプタデセニル置換コハク酸、2−オクタデセニル置換コハク酸、2−ノナデセニル置換コハク酸、2−イコセニル置換コハク酸、2−ヘンイコセニル置換コハク酸、2−ドコセニル置換コハク酸、2−トリアコンテニル置換コハク酸、2−ヘントリアコンテニル置換コハク酸、2−テトラコンテニル置換コハク酸、2−ペンタコンテニル置換コハク酸、1−オクチル−1−ペンテン−4,5−ジカルボン酸、1−ノニル−1−ペンテン−4,5−ジカルボン酸、1−デシル−1−ペンテン−4,5−ジカルボン酸、1−ウンデシル−1−ペンテン−4,5−ジカルボン酸、1−トリデシル−1−ペンテン−4,5−ジカルボン酸、1−イコシル−1−ペンテン−4,5−ジカルボン酸、1−ヘンイコシル−1−ペンテン−4,5−ジカルボン酸、1−ドコシル−1−ペンテン−4,5−ジカルボン酸、またはこれらの酸無水物、すなわち無水マレイン酸、無水イタコン酸、1,2−ジメチルマレイン酸無水物、オクテニル無水コハク酸、ノネニル無水コハク酸、デセニル無水コハク酸、ウンデセニル無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、トリデセニル無水コハク酸、テトラデセニル無水コハク酸、ペンタデセニル無水コハク酸、ヘキサデセニル無水コハク酸、ヘプタデセニル無水コハク酸、オクタデセニル無水コハク酸、ノナデセニル無水コハク酸、イコセニル無水コハク酸、ヘンイコセニル無水コハク酸、ドコセニル無水コハク酸、トリアコンテニル無水コハク酸、ヘントリアコンテニル無水コハク酸、テトラコンテニル無水コハク酸、ペンタコンテニル無水コハク酸、イコセニルコハク酸無水物、ヘンイコセニルコハク酸無水物、ドコセニルコハク酸無水物、無水−2−(1−オクタデセニル)コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、3−メチル無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、ダイマー酸、または酸ハライドであるフマル酸ジクロライド等の二価のカルボン酸を挙げることができ、三価のカルボン酸としては、例えば、マレイン化バルチミン酸、マレイン化ステアリン酸、マレイン化オレイン酸または3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸等を挙げることができる。
【0018】
本発明で使用される芳香族カルボン酸としては、例えば、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、無水フタル酸、ベンジルカルボン酸クロライドまたはイソフタル酸クロライド等の二価のカルボン酸を挙げることができ、三価以上のカルボン酸として、例えば、ベンゼントリカルボン酸、無水トリメリット酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸無水物、トリメリット酸トリクロライドまたは無水トリメリット酸クロライド等を挙げることができる。
【0019】
本発明で使用される二価のアルコールとして、例えば、3−メチルペンタンジオール、エチレングリコール、プロパンジオール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、ドデカンジオール、トリデカンジオール、テトラデカンジオール、ペンタデカンジオール、ヘキサデカンジオール、ヘプタデカンジオール、オクタデカンジオール、ノナデカンジオール、イコサンジオール、ヘンイコサンジオール、ドコサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ヘプタデカン−1,2−ジオール、オクタデカン−1,2−ジオール、ノナデカン−1,2−ジオール、イコサン−1,2−ジオール、水素化ビスフェノールA、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオールまたはビスフェノールA等を挙げることができる。
これら多価カルボン酸と二価アルコールとの重縮合反応は、公知の条件で行うことができる。
【0020】
本発明で使用されるポリカーボネートポリオールは、通常炭酸エステル結合および水酸基を二個以上有する重合体であるが、本発明において、特に限定されず、公知のものであってよい。例えば低分子量ポリオールを開始剤としたエチレンカーボネートの開環重合物等を挙げることができる。上記低分子量ポリオールとして、上記二価のアルコールなどを用いることができる。
【0021】
本発明で使用されるポリカプロラクトンポリオールは、例えば多価アルコール等を開始剤としたε−カプロラクトンの開環重合物等を挙げることができる。また、例えばダウ・ケミカル日本株式会社の商品名トーンまたはダイセル化学工業株式会社製の商品名プラクセル等の市販品を用いてもよい。
【0022】
本発明で使用されるアクリルポリオールとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルまたはメタクリル酸ブチル等のアルキルエステルと、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシブチルまたはメタクリル酸2−ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基を有するエステルとの共重合体等を挙げることができる。
【0023】
また、ジオール類(a2)として低分子ジオールを用いることも出来る。低分子量ジオールとして、例えば、ポリエステルポリオールにおいて前記した二価アルコール等を用いることができる。
【0024】
本発明で使用されるモノオール類(a3)は、水酸基を一個有する化合物であるが、本発明において、特に限定されず、公知のものであってよい。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、イコサノール、ヘンイコサノール、ドコサノール、トリアコンタノール、ヘントリアコンタノール等の脂肪族飽和アルコール、例えば2−プロペン−1−オール、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン−3−オール等のヘキサジエノール、ヘプタジエノール、オクタジエノール、ノナジエノール、デカジエノール、ウンデカジエノール、ドデカジエノール、イコサジエノール、ヘンイコサジエノール、ドコサジエノールまたはその他のアルケニルアルコール等の脂肪族不飽和アルコール、シクロペンタノールなどの脂環式アルコール、ベンジルアルコールなどの芳香族アルコール、またはフリフリルアルコールなどの複素環式アルコールなどを挙げることができる。
【0025】
本発明で使用されるモノアミン類(a4)は、通常アミノ基を一個有する化合物であるが、本発明において、特に限定されず、公知のものであってよい。例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミンまたはジ−t−ブチルアミン等を挙げることができる。
【0026】
また、鎖伸長剤として用いるジアミン類(a5)は、通常アミノ基を二個有する化合物であるが、本発明において、特に限定されず、公知のものであってよい。このようなジアミン類として、例えば、脂環族アミンまたは脂肪族アミンなどを用いることが出来る。上記脂環族アミンとしては、例えば、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ジアミノシクロヘキサンまたはジ−(アミノメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。上記脂肪族アミンとしては、例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、1,2−ジアミノエタン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノペンタンまたは1,6−ジアミノヘキサン等を挙げることができる。
【0027】
本発明における熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)を製造する場合、その製造法は、公知の製造法であってよく、特に限定されるものではない。好ましい製造法として、例えば、有機イソシアネート(a1)とジオール類(a2)とを、ジオール類(a2)の水酸基1当量に対して、有機イソシアネート(a1)のイソシアネート基を1.1〜4当量の比で反応させる。当量比が1.1未満であると、得られたウレタン樹脂の分子量が大きくなり過ぎ、粘度が高くなって作業性を低下させる場合がある。また、当量比が4を越えると、得られたウレタン樹脂の分子量が小さくなり過ぎ、成型品の耐熱性が低下してしまう場合がある。有機イソシアネート(a1)とジオール類(a2)とを窒素雰囲気下において、好ましくは反応温度約30〜120℃で約1〜6時間反応させ、より好ましくは、反応温度約50〜90℃で約3〜4時間反応させる。反応系におけるイソシアネート基の残存量が所望の値となった時点で反応を終了させることが特に好ましい。この反応において、イソシアネート基の残存量は、反応途中において反応物を経時的にサンプリングして、アミン当量法に従い滴定を行うことにより求めることができる。また、この反応においては、スズ系、鉛系またはアミン系などの公知のウレタン化触媒を用いることができ、また、必要に応じて公知の溶剤を用いてもよい。該公知の溶剤として、例えば、アセトニトリル、トルエン、メチルエチルケトンまたは酢酸エチルなどを用いることができる。
ついで、最終的に得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)の分子量を調整する為、モノオール(a3)および/またはモノアミン(a4)を添加し、更に0.5〜3時間攪拌を行うことによりイソシアネート基末端プレポリマーを得ることが出来る。この得られたイソシアネート基末端プレポリマーをジアミン類(a5)で鎖伸長することにより熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)を得ることが出来る。この際、好適にはイソシアネート基末端プレポリマーを外部乳化剤にて水中に乳化分散させた後、ジアミン類を添加することにより熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)を得ることが出来る。
【0028】
また、本発明における熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)として、協和発酵工業株式会社製の商品名エステン、クラレ株式会社製の商品名クラミロンU、大日精化工業株式会社製の商品名レザミンP、大日本インキ化学工業株式会社製の商品名パンデックス、ダウ・ケミカル日本株式会社製の商品名ペレセンまたは商品名アイソプラスト、ディーアイシー バイエル ポリマー株式会社製の商品名パンデックス、商品名デスモパンまたは商品名テキシン、日本ミラクトラン株式会社製の商品名ミラクトラン、またはBASFポリウレタンエラストマーズ株式会社製の商品名エラストランなどの市販品を用いることもできる。
【0029】
本発明において用いられる重合体(B)は、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル(b1)および/又は芳香族モノビニル単量体(b2)及びα,β−エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(b3)を含む単量体混合物を重合してなる重合体であれば、特に限定されない。本発明においては、重合体(B)が、重合体(B)100重量部に対して、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル(b1)0〜49重量部、芳香族ビニル単量体(b2)50〜99重量部、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(b3)0.01〜40重量部および連鎖移動剤(b4)0〜10重量部を含む単量体混合物を重合してなる重合体(B)であることが特に好ましい。以下、重合体(B)の各構成要件について説明する。
【0030】
本発明において用いられるα,β―エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル(b1)としては、例えば、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートまたは2−エチルヘキシルメタクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、アクリロニトリルまたはメタクリロニトリル等のシアン化ビニル、またはシアン化ビニリデン等を用いることが出来る。本発明においては、これらの内、メチルメタクリレートまたはブチルメタクリレートが好ましく用いられる。また、これら(b1)の使用量は、重合体(B)100重量部に対して、0〜49重量部程度であることが好ましい。
【0031】
本発明において使用される芳香族モノビニル単量体(b2)としては、例えば、スチレンまたはα−メチルスチレン等のスチレン系単量体、ビニルトルエンまたはエチルビニルベンゼン等のアルキルビニルベンゼン、またはビニルナフタレン等の多環芳香族モノビニル化合物などを挙げることができる。本発明においては、これらの内、スチレンモノマーが好ましく用いられる。また、本発明において、これらの芳香族モノビニル単量体を単独で、または2種以上組み合わせて用いることが出来る。これら(b2)の使用量は、重合体(B)100重量部に対して、50〜99重量部程度であることが好ましい。
【0032】
更に、本発明における重合体(B)を構成する単量体として用いられるα−βエチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(b3)としては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートまたはヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを挙げることが出来る。この場合のアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましい。これら(b3)の割合がこれらの値より少ない場合、所望の耐熱性の改良効果が得られにくくなる恐れがある。逆にこれらの値より大きい場合、スラッシュ成型時の溶融性が低下したり、得られる成型品の触感が非常に悪化したりする恐れがある。
【0033】
また、本発明を構成する重合体(B)を構成する単量体として、α,β―エチレン性不飽和カルボン酸単量体、例えばアクリル酸、メタクリル酸またはイタコン酸等、またはグリシジル(メタ)アクリレート、アクリルアミドまたはN−メチルアクリルアミド等の反応性の官能基を有する単量体等を用いることもできる。
【0034】
さらに、連鎖移動剤(b4)を用いることにより重合体(B)の分子量を調整することが出来る。この場合、連鎖移動剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタンまたはチオグリコール酸2−エチルヘキシル等のメルカプタン類、またはα−メチルスチレンダイマーなどのスチレンダイマー類等が挙げられる。本発明においては、これらのうちα−メチルスチレンダイマーが好ましく用いられる。これら連鎖移動剤の使用量は、重合体(B)100重量部に対して、通常0〜10重量部程度、好ましくは0.01〜5重量部程度、より好ましくは0.01〜2重量部程度である。
【0035】
本発明における重合体(B)を合成する際に使用する開始剤としては、特に限定されず、例えば過塩素酸塩、有機過酸化物またはアゾ系化合物などの公知の開始剤を用いることが出来る。これらのうち、過塩素酸塩としては過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムまたは過硫酸アンモニウムなどが挙げられる。上記有機過酸化物としては、例えば、ラウロイルパ−オキサイドまたはt−ブチルクミルパ−オキサイド等を挙げることができる。
【0036】
また、上記アゾ系化合物として、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス((2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン、メチルプロパンイソ酪酸ジメチル、ジメチル2,2’―アゾビス(2−メチルプロピオネート)または2,27−アゾビス〔N−(2−カルボキシル)−2−メチルプロピオンアミジン〕テトラハイドレートなどを用いることが出来る。
なお、本発明においては、上記開始剤を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0037】
重合体(B)のガラス転移温度としては好ましくは25℃以上、より好ましくは40℃以上である。これらの温度より低い場合、得られるパウダーの粉体流動性が著しく低下したり、パウダーが貯蔵中にブロッキングを起こしたりする恐れがある。
【0038】
重合体(B)の製造方法は、重合体(B)を製造できさえすれば特に限定されず、公知の方法、例えば溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合または分散重合などの製造方法であってよい。これらのうち、乳化重合または懸濁重合のような水系における重合が好適に用いられる。例えば、重合体(B)として単層重合体を乳化重合法で合成する場合、乳化重合によりシードラテックスを調製し、次いで重合体(B)を形成する単量体を添加し、シード重合をおこなうことにより重合体粒子を合成することができる。上記乳化重合法で合成する場合、重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムまたは過酸化水素水等の水溶性重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイドまたはラウロイルパーオキサイド等の有機系過酸化物、またはアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系重合開始剤などが挙げられる。乳化剤としては、特に限定されず、例えばロジン酸系または脂肪酸系の乳化剤などが挙げられる。これら乳化剤を単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0039】
また、重合体(B)として多層構造重合体を乳化重合法により合成する場合、乳化重合によりシードラテックスを調製し、次いで第一層を形成する単量体を添加し、シード重合を行うことにより第一層を合成し、更に第二層を形成する単量体を添加し、シード重合を行うことにより第二層を合成し、これらの操作を逐次繰り返し行うことにより所望の重合体(B)を得ることが出来る。また、本発明において用いられる重合体(B)の粒子構造もしくは各層を形成する重合体の構造を、中心部から最外部に向けて特定の単量体の構成比率が他段階もしくは連続的に変化するグラディエント構造とすることもできる。このようなグラディエント構造とする場合、上記重合体粒子の合成時に添加する単量体組成を他段階もしくは連続的に変化させながら重合を行うことにより所望のグラディエント構造を有する重合体粒子を得ることが出来る。
【0040】
重合体(B)を懸濁重合により合成する場合、定法に従い、所望の単量体組成からなる単量体液滴を調製後、重合を行うことにより所望の重合体(B)を得ることが出来る。上記懸濁重合で合成する場合、重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムまたは過酸化水素水等の水溶性重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイドまたはラウロイルパーオキサイド等の有機系過酸化物、またはアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系重合開始剤などが挙げられる。分散剤としては、特に限定されず、例えば、部分ケン化ポリ酢酸ビニル(いわゆるポリビニルアルコール)、セルロース誘導体、無水マレイン酸−スチレン共重合体、無水マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体またはゼラチン等が挙げられる。これら分散剤を、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
また、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)の水分散体中に所望の単量体混合物を添加することにより熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)の水分散体中において重合を行い、重合体(B)を得ることも出来る。この場合、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)の表面や内部で単量体混合物による重合が行われても良く、また、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)と単量体混合物とが別々の水相中であって重合が行われて良い。
【0041】
本発明において用いられるメラミン樹脂(C)は、通常アミノ基を一つでも有する樹脂であるが、本発明において、特に限定されず、例えば完全アルキル型メチル化メラミン樹脂、メチロール基型メチル化メラミン樹脂、メトキシ/ブトキシ混合アルキルエーテル化メチロールメラミン樹脂、メトキシ/イソブトキシ混合アルキルエーテル化メチロールメラミン樹脂、イミノ基型混合エーテル化メラミン樹脂またはブチル化メラミン樹脂などの公知のメラミン樹脂であってよい。本発明においては、これらのうち完全アルキル型メチル化メラミンが好適に用いることが出来る。
【0042】
本発明における熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)、重合体(B)およびメラミン樹脂(C)の配合割合は、特に限定されず、本発明において、例えば熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)50〜99重量%、重合体(B)0.1〜50重量%およびメラミン樹脂(C)0.1〜10重量%であることが好ましい。より好ましくは熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)60〜90重量%、重合体(B)5〜25重量%およびメラミン樹脂(C)0.5〜5重量%である。最も好ましくは熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)70〜90重量%、重合体(B)10〜20重量%およびメラミン樹脂(C)0.5〜3重量%である。
重合体(B)の上記配合割合が、1〜50重量%より大きい場合、得られる成型品の触感が劣ったものになる恐れがあり、逆に上記配合割合が1〜50重量%より小さい場合、パウダーの粉体流動性が低下したり、パウダーが貯蔵中にブロッキングを起こしたりする恐れがある。
メラミン樹脂(C)の上記配合割合が0.1〜10重量%より大きい場合、得られるパウダーの粉体流動性が低下したり、パウダーが貯蔵中にブロッキングを起こしたりする恐れがあり、逆に上記配合割合が0.1〜10重量%より小さい場合、所望の耐熱性の改良効果が得られない恐れがある。
【0043】
本発明におけるスラッシュ成型用パウダー組成物は必要に応じて、他の公知の添加剤、例えば可塑剤、ブロッキング防止剤、耐熱安定剤、耐光安定剤または離型剤などを任意に添加することが出来る。これら添加剤を各成分の合成時に添加しておいても良く、また、各成分を混合する際に添加しても良い。更に、粉体化を行った後、例えばヘンシェルミキサーやナウターミキサーなどを用いて混合を行っても良い。
【0044】
本発明におけるスラッシュ成型用パウダー組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、通常、公知の手法によって製造することが出来る。例えば、▲1▼熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)、重合体(B)、メラミン樹脂(C)および必要に応じて各種添加剤を溶融混錬した後、冷凍粉砕もしくはマイクロペレット法によりパウダー化を行い、製造する方法、▲2▼熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)の水分散液、重合体(B)の水分散液、および、メラミン樹脂(C)の水分散液および/または水溶液、および必要に応じて各種添加剤を混合した後、噴霧乾燥を行うことにより、混合物をパウダー化させて製造する方法、または▲3▼熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)の水分散体中で重合体(B)を構成する単量体の重合を行った後、メラミン樹脂および必要に応じて各種添加剤を混合し、ついで噴霧乾燥によりパウダー化を行う方法などが挙げられる。これらのうち、▲2▼または▲3▼の方法が本発明において好適に用いられる。
【0045】
上記手法を用いて得られるスラッシュ成型用パウダーの粒子径は特に限定されないが、好ましくは重量平均粒子径で約50〜300μmである。該粒子径が50μm以下の場合、パウダーの流動性が著しく低下してしまい、スラッシュ成型時に成型むらを生じる恐れがあり、該粒子径が300μm以上の場合、成型品表面にピンホールが大量に発生する恐れがある。
また、本発明においては、上記重合体(B)に芳香族モノビニル単量体(b2)を用いることで、上記スラッシュ成型用パウダー組成物の耐アルコール性を上げることができる。
【0046】
本発明にかかる成型品は、上記スラッシュ成型用パウダー組成物を用いてスラッシュ成型された成型品である限り、特に限定されない。本発明においては、上記成型品を自動車内装品として、例えばインストルメントパネル、グラブドアカバー、コンソール、ハンドル、カーテンエアバッグ部品又はドア部品等に用いることが特に好ましい。上記自動車内装品は、自動車の内装に用いられる上記成型品であれば、特に限定されない。上記自動車内装品をインストルメントパネルに用いる場合、例えば、上記スラッシュ成型された成型品を表皮として、芯材を嵌合し、間にクッション材としてのウレタンフォームを注入してインストルメントパネルに用いること等が挙げられる。
【0047】
本発明では、上記スラッシュ成型用パウダー組成物を用いてスラッシュ成型することにより、上記成型品を製造することができる。該製造方法は、上記スラッシュ成型用パウダー組成物を用いてスラッシュ成型する限り、他は特に限定されない。また、スラッシュ成型法についても特に限定されず、例えば、あらかじめ所定温度に加熱した金型上に、上記パウダー組成物を付着、溶融させた後、冷却を行う公知の方法であってよい。
【0048】
本発明において、上記スラッシュ成型用パウダー組成物を用いて、例えば、▲1▼加熱工程、▲2▼パウダリング工程▲3▼冷却工程▲4▼離型工程を経るスラッシュ成型により本発明の成型品を製造できる。上記▲1▼の加熱工程では金型1の予熱を行う工程であり、図2のようにヒーター2などの加熱装置を用いて金型1を加熱する。本発明においては加熱温度が約200℃〜300℃であることが好ましい。
【0049】
上記▲2▼のパウダリング工程では図3のようにスラッシュ成型用パウダー組成物をためたパウダーボックス3上に上記▲1▼の加熱工程で加熱した金型をセットし、所望のパターンにて金型とパウダーボックスを回転させる。この際、金型に接したパウダーが溶融し、金型上にシート4を形成する。上記▲3▼の冷却工程では金型1及び熱溶融したシート4を例えば水冷により離型可能な温度まで冷却を行い上記▲4▼の工程にて金型から成型品を取り出す。また、必要に応じて冷却工程の前に180℃〜350℃にてあと加熱を行うこともできる。
【0050】
【実施例】
製造例1 ウレタンプレポリマー1の合成
窒素導入管および攪拌棒を取り付けた重合容器中にUH−CARB200(宇部興産株式会社製ポリカーボネートジオール)1729.9重量部、TONE0249(ダウ・ケミカル株式会社製ポリカプロラクトン)1297.4重量部および1,4−ブタンジオール36.1重量部を投入し、80℃で1時間混合した。更にジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(H12MDI)913.3重量部を添加し、80℃で3時間攪拌を行った。また、更にオクチル酸第一錫0.1重量部を添加し90℃以下にて30分攪拌を続けた。アミン当量が所定の値に達したことを確認した後、2−ブタノール23.2重量部を添加し、その後、更に1時間80℃で攪拌を行った。再度、アミン当量が所定の値に到達したことを確認した後、冷却を行い、ウレタンプレポリマー1を得た。
【0051】
製造例2 ウレタンエマルションA−1の作成
製造例1で得たウレタンプレポリマー1 3468重量部をあらかじめ60℃に加温後、掻き取り羽根および高速攪拌羽根2本を有する3軸ミキサー中に投入し、更に乳化剤としてサンノールTD3130(ライオン(株)製)を224.3重量部添加し、60℃で45分攪拌を行った。更に脱イオン水150重量部を添加した後、30分攪拌を行った。その後攪拌を続けながら脱イオン水100重量部を7分割して5分毎にそれぞれ投入後、さらに脱イオン水1402重量部を添加し、ウレタンプレポリマーAの水分散液を得た。更に5%リン酸二水素ナトリウム水溶液278.9重量部を加えた後、20%ノルボルナンジアミン水溶液を40℃以下にて30分かけて連続添加を行った。更に50℃で2時間攪拌後、イルガノックス245(チバスペシャルティ・ケミカルズ株式会社製) 4.0重量部、チヌビン329(チバスペシャルティ・ケミカルズ株式会社製) 12.0重量部、アデカスタブLA−52(旭電化工業株式会社製) 12.0重量部、トルエン28.1重量部、サンノールTD−3130 7.8重量部からなる安定剤乳化液を加え、更に50℃で一晩熟成を行い、ウレタンエマルションA−1を得た。
【0052】
製造例3 ウレタンプレポリマー2の合成
窒素導入管および攪拌棒を取り付けた重合容器中にタケラックU−2720(三井武田ケミカル株式会社製アジペート系ポリエステル樹脂)1458.5重量部、タケラックU−2220(三井武田ケミカル株式会社製アジペート系ポリエステル樹脂)1458.5重量部、および1、3−ブタンジオール113.1重量部を投入し、80℃で1時間混合した。更にジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(H12MDI)726.1重量部およびヘキサメチレンジイソシアネート199.5重量部を添加し、80℃で3時間攪拌を行った。また、更にオクチル酸第一錫0.1重量部を添加し90℃以下にて30分攪拌を続けた。アミン当量が所定の値に達したことを確認した後、2−エチルヘキシルアルコール44.3重量部を添加し、その後、更に1時間80℃で攪拌を行った。再度、アミン当量が所定の値に到達したことを確認した後、冷却を行い、ウレタンプレポリマー2を得た。
【0053】
製造例4 ウレタンエマルションA―2の作成
ウレタンプレポリマーとして製造例3で得たプレポリマー2 3504重量部、鎖伸長剤として20%ヘキサメチレンジアミン364.8重量部用いたこと以外は製造例2と同様の方法によりウレタンエマルションA−2を得た。
【0054】
製造例5 ウレタンプレポリマー3の合成
窒素導入管および攪拌棒を取り付けた重合容器中にタケラックU−2720(三井武田ケミカル株式会社製アジペート系ポリエステル樹脂)1563.8重量部、タケラックU−2220(三井武田ケミカル株式会社製アジペート系ポリエステル樹脂)1563.8重量部、および1、3−ブタンジオール22.0重量部を投入し、80℃で1時間混合した。更にジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(H12MDI)826.5重量部を添加し、更に80℃で3時間攪拌を行った。更にオクチル酸第一錫0.1重量部を添加し、90℃以下にて30分攪拌を続けた。アミン当量が所定の値に達したことを確認した後、2−エチルヘキシルアルコール44.3重量部を添加し、その後、更に1時間80℃で攪拌を行った。再度、アミン当量が所定の値に到達したことを確認した後、冷却を行い、ウレタンプレポリマー3を得た。
【0055】
製造例6 ウレタンエマルションA―3の作成
ウレタンプレポリマーとして製造例5で得たプレポリマー3 3479重量部、鎖伸長剤として20%ヘキサメチレンジアミン467.8重量部用いたこと以外は製造例2と同様の方法によりウレタンエマルションA−3を得た。
【0056】
製造例7 ウレタンプレポリマー4の合成
窒素導入管および攪拌棒を取り付けた重合容器中にタケラックU−2720(三井武田ケミカル株式会社製アジペート系ポリエステル樹脂)1443.8重量部、タケラックU−2220(三井武田ケミカル株式会社製アジペート系ポリエステル樹脂)490.0重量部、およびタケラックSU−99(三井武田ケミカル株式会社製イソフタル酸系エステル樹脂)1291.3重量部を投入し、80℃で1時間混合した。更にイソホロンジイソシアネート(IPDI)759.5重量部を添加し、80℃で3時間攪拌を行った。また更にオクチル酸第一錫0.1重量部を添加し90℃以下にて30分攪拌を続けた。アミン当量が所定の値に達したことを確認した後、2−エチルヘキシルアルコール15.3重量部を添加し、更に1時間80℃で攪拌を行った。再度、アミン当量が所定の値に到達したことを確認した後、冷却を行い、ウレタンプレポリマー4を得た。
【0057】
製造例8 ウレタンエマルションA―4の作成
ウレタンプレポリマーとして製造例7で得たプレポリマー4を3470重量部、鎖伸長剤として20%ヘキサメチレンジアミン510.1重量部用いたこと以外は製造例2と同様の方法によりウレタンエマルションA−4を得た。
【0058】
製造例9 アクリルエマルションB−1の合成
還流冷却機、窒素導入管および攪拌棒を備えた重合容器中に脱イオン水(DIW)320重量部、1%ネオコールP(NP)水溶液(第一工業製薬株式会社製、アニオン型乳化剤)32重量部および1%炭酸水素ナトリウム水溶液 53.3重量部を投入し、70℃に加熱昇温を行った。70℃に昇温後メタクリル酸メチル(MMA)16重量部を添加し、5分間攪拌を行った。2%過硫酸ナトリウム(SPS)水溶液10.67重量部を添加した後、10分間攪拌を行い、シードエマルションを得た。このシードエマルションを75℃に昇温し、2%SPS水溶液60重量部を添加後、10分間攪拌を行った。さらにメタクリル酸メチル431.2重量部、メタクリル酸n−ブチル(n−BMA)188.2重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)156.8重量部、α−メチルスチレンダイマー(MSD)7.8重量部、1%NP水溶液480重量部および1%炭酸水素ナトリウム水溶液80重量部からなる単量体乳化液を4時間かけて連続フィードした。フィード終了後、DIW56重量部にてフィードラインの洗浄を行い、更に1時間熟成を行い、アクリルエマルションB−1を得た。
【0059】
製造例10 アクリルエマルションB−2の合成
還流冷却機、窒素導入管および攪拌棒を備えた重合容器中に脱イオン水(DIW)320重量部、1%ネオコールP(NP)水溶液(第一工業製薬株式会社製、アニオン型乳化剤)32重量部および1%炭酸水素ナトリウム水溶液 53.3重量部を投入し、70℃に加熱昇温を行った。70℃に昇温後メタクリル酸メチル(MMA)16重量部を添加し、5分間攪拌を行った。2%過硫酸ナトリウム(SPS)水溶液10.67重量部を添加した後、10分間攪拌を行い、シードエマルションを得た。このシードエマルションを80℃に昇温し、2%SPS水溶液84重量部を添加後、10分間攪拌を行った。さらにスチレン(SM)402.6重量部、メタクリル酸n−ブチル(n−BMA)119.7重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)13.6重量部、α−メチルスチレンダイマー(MSD)8.2重量部、1%NP水溶液392重量部、および1%炭酸水素ナトリウム水溶液56重量部からなる単量体乳化液を4時間かけて連続フィードした。フィード終了後、DIW56重量部にてフィードラインの洗浄を行い、更に1時間熟成を行い、コアエマルションを得た。このコアエマルションに2%SPS水溶液18重量部を添加し、10分間攪拌を行った後、MMA132重量部、n−BMA57.6重量部、HEMA48重量部、およびMSD2.4重量部からなる単量体乳化液を90分かけて連続フィードを行った。フィード終了後、DIW24重量部でフィードラインの洗浄を行い、更に1時間熟成を行うことにより、アクリルエマルションB−2を得た。
【0060】
製造例11 アクリルエマルションB−3の合成
製造例10において、コア層を構成する単量体をSM 350.9重量部、n−BMA 130.6重量部、グリシジルメタクリレート 54.4重量部、およびMSD 8.2重量部に、シェル層を構成する単量体をMMA 156重量部、n−BMA 57.6重量部、HEMA 24重量部、およびMSD 2.4重量部に変更したこと以外は同様の方法により合成を行い、アクリルエマルションB−3を得た。
【0061】
製造例12 アクリルエマルションB−4の合成
製造例10において、コア層を構成する単量体をSM 405.3重量部、n−BMA 130.6重量部、およびMSD 8.2重量部に、シェル層を構成する単量体をMMA 180重量部、n−BMA 57.6重量部、およびMSD 2.4重量部に変更したこと以外は同様の方法により合成を行い、アクリルエマルションB−4を得た。
【0062】
上記製造例で得られたウレタンエマルジョンA−1〜A−4の各構成要素を表1に示し、アクリルエマルションB−1〜B−4の各構成要素を表2に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
(実施例1)
ウレタンエマルションA 100重量部、アクリルエマルションC−1 22.8重量部、サイメル303(三井サイテック株式会社製)22.8重量部、およびTSF−451−3000(GE東芝シリコーン株式会社製シリコンオイル)0.31重量部を混合後、スプレードライヤ(大川原化工機株式会社製OD−50型)にてアトマイザー回転数5000rpm、熱風温度100℃で噴霧乾燥を行い、ウレタンパウダーを得た。この得られたパウダーを更に顔料とヘンシェルミキサ中にて混合することによりスラッシュ成型用パウダー組成物P−1を得た。
【0066】
(物性測定方法)
金型を240℃に加熱した後、実施例にて得たパウダー300gを金型上にふりまき、8秒間靜置させた後、溶融しなかった余分な粉を払い落とし、更に60秒間靜置後、水冷して成型シートを作成した。そして、以下のとおり、物性測定を行った。
溶融性を、上記成型シートを作製する中で、上記8秒間靜置後の上記パウダーの状態を観察・評価した。評価基準は次の通りである。
溶融性 ○ とけ残りなし
△ 一部とけ残り
× とけ残りあり
耐熱性を、得られた成型シートを130℃の加熱オーブン中に24時間静置前後の60°グロスを測定することにより、評価した。
ガラス霞度は、50mm×50mmの成型シートをガラス瓶に入れ、ガラス板でふたをして密封した後、100℃のオイルバス中で20時間静置し、ふたとして用いたガラス板の霞度をJIS−K6717に準じて測定することにより求められた。
モジュラスまたは伸びを、25℃および−10℃における引っ張り特性 JIS−K6301準拠して測定することにより、評価した。
実施例1で得られたスラッシュ成型用パウダー組成物の各構成要素および各種物性の測定結果を表3に示す。
【0067】
(実施例2〜7)
表3に示す各構成要素の配合割合にて実施例1と同様の方法でもって、混合、スプレードライおよび着色を行うことによりスラッシュ成型用パウダー組成物P−2〜P−7を得た。
実施例2〜7で得られたスラッシュ成型用パウダー組成物の各種物性の測定結果を表3に示す。
【0068】
(比較例1)
サイメル303を用いないこと以外は実施例3と同様の方法にて混合を行い、スラッシュ成型用パウダー組成物P−8を得た。
【0069】
(比較例2)
サイメル303の代わりにジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製カヤラッドDPHA)を2重量部用いたこと以外は実施例4と同様の方法により混合を行い、スラッシュ成型用パウダー組成物P−9を得た。
【0070】
(比較例3)
比較例2においてDPHAを5重量部用いたこと以外は同様の方法によりスラッシュ成型用パウダー組成物P−10を得た。
上記比較例1〜3で得られたスラッシュ成型用パウダー組成物の各構成要素および各種物性の測定結果を表3に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
物性測定の結果、表3に見られるように、実施例または比較例により得られた試料の全てが溶融性に優れていた。グロスについては、実施例1〜6により得られた試料の全てが優れており、比較例3により得られた試料も優れていた。しかし、実施例1〜6により得られた試料の全てがガラス霞度に優れているのに対し、比較例3により得られた試料はガラス霞度が劣っていた。
【0073】
【発明の効果】
本発明によって、成型性、長期耐久性およびフォギング性に優れたスラッシュ成型用パウダー組成物を提供できる。また、本発明のスラッシュ成型用パウダー組成物を用いて成型することによって、長期耐久性およびフォギング性に優れた成型品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスラッシュ成型において用いられる金型及びパウダーボックスにおけるパウダーの模式図である。
【図2】金型とヒーターの模式図であって、本発明のスラッシュ成型における加熱工程での金型の状態を示す。
【図3】金型及びパウダーボックスにおけるパウダーの模式図であって、本発明のスラッシュ成型におけるパウダリング工程でのパウダーと金型の状態を示す。(a)は、パウダーボックスにセットされた加熱した金型の状態を示す。また、(b)は、金型加熱後パウダーボックスを回転中の金型の状態を示す。
【図4】パウダリング後の成型物及びパウダーボックスにおけるパウダーの模式図である。
【図5】成型物の冷却の模式図であって、本発明のスラッシュ成型における冷却工程での成型物および冷水の状態を示す。
【図6】成型品の模式図であって、離型工程後に得られたシート状の成型品及び成型品から分離された金型を示す。
【符号の説明】
1 金型
2 ヒーター
3 パウダーボックス中のパウダー
4 成型品
5 冷水
【発明の属する技術分野】
本発明はスラッシュ成型用パウダー組成物に関する。より詳しくは、成型性、長期耐久性に優れ、更にフォギング性に優れる成型品を与えるスラッシュ成型用パウダー組成物に関する。また、本発明は前記スラッシュ成型用パウダー組成物を用いてスラッシュ成型された成型品に関する。
【0002】
【従来の技術】
スラッシュ成型法は、複雑な形状の製品が容易に成型できること、肉厚が均一にできること、材料の歩留まりが良いことから、自動車の内装材等の用途に広く利用されており、主に軟質のポリ塩化ビニル(PVC)系粉末がこのような用途に使用されている。
しかし、軟質化されたPVCは低分子量の可塑剤を多量に含有するため、可塑剤の凝固点以下ではソフト感が損なわれてしまう。また、経年後に可塑剤が抜けることにより表皮収縮による寸法変化が大きく意匠性で制約を受ける場合がある。さらに経年後に可塑剤が抜けることによりエアバッグ展開性能の確保が難しい等の問題点を有しており、PVCに代わる材料の開発が求められている。
【0003】
PVCに代わる材料として、ポリウレタン樹脂やポリオレフィン樹脂などが検討されているが、溶融性に優れる樹脂を用いた場合、長期耐久性、特に長時間高温にさらされた際、樹脂の劣化やシート外観が変化するという問題点を有している。これらを解決する手法として、たとえば特開2000−103956号公報には数平均分子量が10,000〜50,000で熱軟化開始温度が120℃から200℃の熱可塑性ポリウレタンエラストマー(A)、可塑剤(B)、ラジカル重合性不飽和基含有化合物(C)および必要により添加剤からなるポリウレタン樹脂系スラッシュ成型用材料が開示されている。この方法ではラジカル重合性不飽和基含有化合物がスラッシュ成型時に一部反応を起こすことおよび残存する不飽和基がラジカルトラップ剤となることにより長期耐久性が向上すると考えられるが、添加量が増えるに従い、未反応のモノマー類の揮散によりフォギング性が悪化するという問題点を有している。
そこで、PVCに代わる材料であって、ラジカル重合性不飽和基含有化合物の影響を受けないスラッシュ成型品であって、長期耐久性に優れさらにフォギング性に優れたスラッシュ成型品が待ち望まれていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、成型性、長期耐久性およびフォギング性に優れたスラッシュ成型用パウダー組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、前記スラッシュ成型用パウダー組成物を用いて成型した成型品を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル(b1)および/または芳香族モノビニル単量体(b2)およびα,β−エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(b3)を含む単量体混合物を重合してなる重合体(B)、およびメラミン樹脂(C)からなるスラッシュ成型用パウダー組成物が、成型性、長期耐久性およびフォギング性に優れていることを見出した。そして、上記熱可塑性ポリウレタン樹脂が、有機イソシアネート(a1)、ジオール類(a2)、および、モノオール(a3)および/またはモノアミン(a4)からなるイソシアネート基末端プレポリマーとジアミン化合物(a5)とを鎖伸長反応に付して得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂であることが好ましいことを知見した。
【0006】
また、本発明者らは、上記重合体(B)が、重合体(B)100重量部に対して、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル(b1)0〜49重量部、芳香族ビニル単量体(b2)50〜99重量部、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(b3)0.01〜40重量部および連鎖移動剤(b4)0〜10重量部を含む単量体混合物を重合してなる重合体(B)であることが好ましいことを見出した。上記メラミン樹脂(C)が完全アルキル型メチル化メラミン樹脂であることが好ましく、上記熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)、上記重合体(B)および上記メラミン樹脂(C)の配合割合が、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)50〜99重量%、重合体(B)0.1〜50重量%およびメラミン樹脂(C)0.1〜10重量%であることが好ましいことを知見した。上記スラッシュ成型用パウダー組成物が、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)の水分散液、重合体(B)の水分散液、および、メラミン樹脂の水分散液および/または水溶液を混合した後、混合液を噴霧乾燥することにより製造されるスラッシュ成型用パウダー組成物が特に好ましいことを見出した。
【0007】
さらに、本発明者らは、上記スラッシュ成型用パウダー組成物を用いてスラッシュ成型された成型品が、長期耐久性およびフォギング性に驚くほど優れており、前記成型品が、自動車内装品であることが特に好ましいことを知見した。
本発明者らは、かかる種々の新知見を得たのち、さらに検討を重ね、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1) 熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル(b1)および/または芳香族モノビニル単量体(b2)およびα,β−エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(b3)を含む単量体混合物を重合してなる重合体(B)、およびメラミン樹脂(C)からなることを特徴とするスラッシュ成型用パウダー組成物、
(2) 熱可塑性ポリウレタン樹脂が、有機イソシアネート(a1)、ジオール類(a2)、および、モノオール(a3)および/またはモノアミン(a4)を含んでなるイソシアネート基末端プレポリマーとジアミン化合物(a5)とを鎖伸長反応に付して得られることを特徴とする(1)に記載のスラッシュ成型用パウダー組成物、
(3) 重合体(B)が、重合体(B)100重量部に対して、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル(b1)0〜49重量部、芳香族ビニル単量体(b2)50〜99重量部、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(b3)0.01〜40重量部および連鎖移動剤(b4)0〜10重量部を含む単量体混合物を重合してなる重合体(B)であることを特徴とする(1)または(2)に記載のスラッシュ成型用パウダー組成物、
に関する。
【0009】
また、本発明は、
(4) メラミン樹脂(C)が完全アルキル型メチル化メラミン樹脂であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のスラッシュ成型用パウダー組成物、
(5) 熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)、重合体(B)およびメラミン樹脂(C)の配合割合が、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)50〜99重量%、重合体(B)0.1〜50重量%およびメラミン樹脂(C)0.1〜10重量%であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のスラッシュ成型用パウダー組成物、
(6) 熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)の水分散液、重合体(B)の水分散液、および、メラミン樹脂の水分散液および/または水溶液を混合した後、混合液を噴霧乾燥することにより製造されることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のスラッシュ成型用パウダー組成物、
(7) (1)〜(6)のいずれかに記載のスラッシュ成型用パウダー組成物を用いてスラッシュ成型された成型品、
(8) 自動車内装品であることを特徴とする(7)に記載の成型品、
に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に係るスラッシュ成型用パウダー組成物は、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル(b1)および/または芳香族モノビニル単量体(b2)およびα,β−エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(b3)を含む単量体混合物を重合してなる重合体(B)、およびメラミン樹脂(C)からなるスラッシュ成型用パウダー組成物であれば、特に限定されない。以下、本発明にかかるスラッシュ成型用パウダー組成物の各構成要件について説明する。
【0011】
これらのうち、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)は、通常ウレタン結合を少なくとも一個以上有する熱可塑性樹脂であるが、本発明において、特に限定されず、熱可塑性ポリウレタン樹脂と称される公知のものであって良く、例えば、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法で製造される200〜260℃で溶融可能な熱可塑性ポリウレタン樹脂が挙げられる。その中で有機ジイソシアネート(a1)、およびジオール類(a2)、およびモノオール(a3)および/又はモノアミン(a4)からなるイソシアネート基末端プレポリマーをジアミン化合物(a5)により鎖伸長を行うことにより得たものを好適に使用することが出来る。
【0012】
この、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)を形成する有機ジイソシアネート(a1)としては、通常イソシアネート基を少なくとも1個有する有機化合物であるが、本発明において特に限定されず、有機イソシアネートと称される公知のものであって良い。上記有機イソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートおよびトリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネートの単独あるいは2種類以上の混合物を挙げることができる。
【0013】
さらに、本発明においては、上記有機イソシアネート(a1)に、モノイソシアネートを含有させてもよい。該モノイソシアネートとして、例えば、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、n−ヘキシルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、2−エチルヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネートまたはベンジルイソシアネート等を挙げることができる。
また、本発明においては、上記したこれら有機イソシアネート(a1)を、単独で用いても、又は2種以上併用してもよく、このような有機イソシアネートとして、上記脂環族ジイソシアネートまたは上記脂肪族ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の有機イソシアネートを用いることが特に好ましい。
【0014】
本発明において用いられるジオール類(a2)は、通常二個の水酸基を有する化合物であるが、本発明において、特に限定されず、公知のものであってよい。上記ジオール類(a2)としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオールまたはアクリルポリオール等が挙げられる。以下、これら例示したジオール類について説明する。
【0015】
該ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリプロピレングリコールまたはポリテトラメチレングリコール等を挙げることができる。該ポリプロピレングリコールとしては、例えば、低分子量のポリオール或いは低分子量のアミンを開始剤としたエチレンオキサイド、またはプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの付加重合物(2種以上のアルキレンオキサイドのランダム及び/又はブロック重合物を含む。)などを挙げることができる。該ポリテトラメチレングリコールとしては、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合により得られる開環重合物、例えばポリテトラメチレンエーテルグリコール等を挙げることができる。また、該ポリテトラメチレングリコールとして、デュポン株式会社製の商標名テラタンなどの市販品を用いてもよい。
【0016】
該ポリエステルポリオールとしては、例えば、分子末端に水酸基をもつ多価カルボン酸と二価アルコールとの重縮合物等を挙げることができる。
該多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族カルボン酸または芳香族カルボン酸等を挙げることができる。該脂肪族カルボン酸としては、例えば、脂肪族飽和カルボン酸または脂肪族不飽和カルボン酸が挙げられ、該脂肪族飽和カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、1,1−ジメチル1,3−ジカルボキシプロパン、3−メチル−3−エチルグルタール酸、アゼライン酸、セバチン酸、ヘプタン酸、オクチル酸、ぺラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸またはステアリン酸等の脂肪族飽和ジカルボン酸、水添ダイマー酸、ヘット酸、またはこれらのカルボン酸からなる酸無水物、すなわち無水シュウ酸、無水コハク酸、無水2−ドデシルコハク酸、無水2−トリデシルコハク酸、無水2−テトラデシルコハク酸、無水2−ペンタデシルコハク酸、無水2−ヘキサデシルコハク酸、無水2−ヘプタデシルコハク酸、無水2−オクタデシルコハク酸、またはこれらのカルボン酸からなる酸ハライド、すなわちシュウ酸ジクロリド、アジピン酸クロライドまたはセバチン酸クロライド等の二価のカルボン酸を挙げることができ、三価以上のカルボン酸として、例えば、マレイン化脂肪酸、ブタン1,2,3−トリカルボン酸トリメチル、ブタン1,2,3−トリカルボン酸トリエチル、ブタン−1,2,3−トリカルボン酸ブチル、ブタン−1,2,3−トリカルボン酸ペンチル、ブタン−1,2,3−トリカルボン酸ヘキシル、ブタン−1,2,3−トリカルボン酸ヘプチル、ブタン−1,2,3−トリカルボン酸オクチル、ブタン−1,2,3−トリカルボン酸ノニル、ブタン−1,2,3−トリカルボン酸デシル、ブタン−1,2,3−トリカルボン酸フェニル、ブタン−1,2,3−トリカルボン酸ナフチル、2−エトキシカルボニルコハク酸ジエチル、3,3−ビス(エトキシカルボニル)ドデカン酸エチル、3,3−ビス(エトキシカルボニル)トリデカン酸エチル、3,3−ビス(エトキシカルボニル)テトラデカン酸エチル、3,3−ビス(エトキシカルボニル)ペンタデカン酸エチル、3,3−ビス(エトキシカルボニル)ヘキサデカン酸エチル、3,3−ビス(エトキシカルボニル)ヘプタデカン酸エチル、3,3−ビス(エトキシカルボニル)オクタデカン酸エチル、3,3−ビス(エトキシカルボニル)ノナデカン酸エチル、3,3−ビス(エトキシカルボニル)イコサン酸エチル、3,3−ビス(エトキシカルボニル)ヘンイコサン酸エチル、ブタンテトラカルボン酸または1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等を挙げることができる。
【0017】
また、本発明で使用される脂肪族不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、1−ブテンー2,4−ジカルボン酸(別名2−メチレングルタル酸)、メテニル置換コハク酸、エテニル置換コハク酸、プロペニル置換コハク酸、ブテニル置換コハク酸、ペンテニル置換コハク酸、ヘキセニル置換コハク酸、ヘプテニル置換コハク酸、オクテニル置換コハク酸、ノネニル置換コハク酸、デセニル置換コハク酸、ウンデセニル置換コハク酸、ドデセニル置換コハク酸、トリデセニル置換コハク酸、テトラデセニル置換コハク酸、ペンタデセニル置換コハク酸、ヘキサデセニル置換コハク酸、ヘプタデセニル置換コハク酸、オクタデセニル置換コハク酸、ノナデセニル置換コハク酸、イコセニル置換コハク酸、ヘンイコセニル置換コハク酸、ドコセニル置換コハク酸、トリアコンテニル置換コハク酸、ヘントリアコンテニル置換コハク酸、テトラコンテニル置換コハク酸、ペンタコンテニル置換コハク酸、2−オクテニル置換コハク酸、2−ノネニル置換コハク酸、2−デセニル置換コハク酸、2−ウンデセニル置換コハク酸、2−ドデセニル置換コハク酸、2−トリデセニル置換コハク酸、2−テトラデセニル置換コハク酸、2−ペンタデセニル置換コハク酸、2−ヘキサデセニル置換コハク酸、2−ヘプタデセニル置換コハク酸、2−オクタデセニル置換コハク酸、2−ノナデセニル置換コハク酸、2−イコセニル置換コハク酸、2−ヘンイコセニル置換コハク酸、2−ドコセニル置換コハク酸、2−トリアコンテニル置換コハク酸、2−ヘントリアコンテニル置換コハク酸、2−テトラコンテニル置換コハク酸、2−ペンタコンテニル置換コハク酸、1−オクチル−1−ペンテン−4,5−ジカルボン酸、1−ノニル−1−ペンテン−4,5−ジカルボン酸、1−デシル−1−ペンテン−4,5−ジカルボン酸、1−ウンデシル−1−ペンテン−4,5−ジカルボン酸、1−トリデシル−1−ペンテン−4,5−ジカルボン酸、1−イコシル−1−ペンテン−4,5−ジカルボン酸、1−ヘンイコシル−1−ペンテン−4,5−ジカルボン酸、1−ドコシル−1−ペンテン−4,5−ジカルボン酸、またはこれらの酸無水物、すなわち無水マレイン酸、無水イタコン酸、1,2−ジメチルマレイン酸無水物、オクテニル無水コハク酸、ノネニル無水コハク酸、デセニル無水コハク酸、ウンデセニル無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、トリデセニル無水コハク酸、テトラデセニル無水コハク酸、ペンタデセニル無水コハク酸、ヘキサデセニル無水コハク酸、ヘプタデセニル無水コハク酸、オクタデセニル無水コハク酸、ノナデセニル無水コハク酸、イコセニル無水コハク酸、ヘンイコセニル無水コハク酸、ドコセニル無水コハク酸、トリアコンテニル無水コハク酸、ヘントリアコンテニル無水コハク酸、テトラコンテニル無水コハク酸、ペンタコンテニル無水コハク酸、イコセニルコハク酸無水物、ヘンイコセニルコハク酸無水物、ドコセニルコハク酸無水物、無水−2−(1−オクタデセニル)コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、3−メチル無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、ダイマー酸、または酸ハライドであるフマル酸ジクロライド等の二価のカルボン酸を挙げることができ、三価のカルボン酸としては、例えば、マレイン化バルチミン酸、マレイン化ステアリン酸、マレイン化オレイン酸または3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸等を挙げることができる。
【0018】
本発明で使用される芳香族カルボン酸としては、例えば、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、無水フタル酸、ベンジルカルボン酸クロライドまたはイソフタル酸クロライド等の二価のカルボン酸を挙げることができ、三価以上のカルボン酸として、例えば、ベンゼントリカルボン酸、無水トリメリット酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸無水物、トリメリット酸トリクロライドまたは無水トリメリット酸クロライド等を挙げることができる。
【0019】
本発明で使用される二価のアルコールとして、例えば、3−メチルペンタンジオール、エチレングリコール、プロパンジオール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、ドデカンジオール、トリデカンジオール、テトラデカンジオール、ペンタデカンジオール、ヘキサデカンジオール、ヘプタデカンジオール、オクタデカンジオール、ノナデカンジオール、イコサンジオール、ヘンイコサンジオール、ドコサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ヘプタデカン−1,2−ジオール、オクタデカン−1,2−ジオール、ノナデカン−1,2−ジオール、イコサン−1,2−ジオール、水素化ビスフェノールA、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオールまたはビスフェノールA等を挙げることができる。
これら多価カルボン酸と二価アルコールとの重縮合反応は、公知の条件で行うことができる。
【0020】
本発明で使用されるポリカーボネートポリオールは、通常炭酸エステル結合および水酸基を二個以上有する重合体であるが、本発明において、特に限定されず、公知のものであってよい。例えば低分子量ポリオールを開始剤としたエチレンカーボネートの開環重合物等を挙げることができる。上記低分子量ポリオールとして、上記二価のアルコールなどを用いることができる。
【0021】
本発明で使用されるポリカプロラクトンポリオールは、例えば多価アルコール等を開始剤としたε−カプロラクトンの開環重合物等を挙げることができる。また、例えばダウ・ケミカル日本株式会社の商品名トーンまたはダイセル化学工業株式会社製の商品名プラクセル等の市販品を用いてもよい。
【0022】
本発明で使用されるアクリルポリオールとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルまたはメタクリル酸ブチル等のアルキルエステルと、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシブチルまたはメタクリル酸2−ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基を有するエステルとの共重合体等を挙げることができる。
【0023】
また、ジオール類(a2)として低分子ジオールを用いることも出来る。低分子量ジオールとして、例えば、ポリエステルポリオールにおいて前記した二価アルコール等を用いることができる。
【0024】
本発明で使用されるモノオール類(a3)は、水酸基を一個有する化合物であるが、本発明において、特に限定されず、公知のものであってよい。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、イコサノール、ヘンイコサノール、ドコサノール、トリアコンタノール、ヘントリアコンタノール等の脂肪族飽和アルコール、例えば2−プロペン−1−オール、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン−3−オール等のヘキサジエノール、ヘプタジエノール、オクタジエノール、ノナジエノール、デカジエノール、ウンデカジエノール、ドデカジエノール、イコサジエノール、ヘンイコサジエノール、ドコサジエノールまたはその他のアルケニルアルコール等の脂肪族不飽和アルコール、シクロペンタノールなどの脂環式アルコール、ベンジルアルコールなどの芳香族アルコール、またはフリフリルアルコールなどの複素環式アルコールなどを挙げることができる。
【0025】
本発明で使用されるモノアミン類(a4)は、通常アミノ基を一個有する化合物であるが、本発明において、特に限定されず、公知のものであってよい。例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミンまたはジ−t−ブチルアミン等を挙げることができる。
【0026】
また、鎖伸長剤として用いるジアミン類(a5)は、通常アミノ基を二個有する化合物であるが、本発明において、特に限定されず、公知のものであってよい。このようなジアミン類として、例えば、脂環族アミンまたは脂肪族アミンなどを用いることが出来る。上記脂環族アミンとしては、例えば、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ジアミノシクロヘキサンまたはジ−(アミノメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。上記脂肪族アミンとしては、例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、1,2−ジアミノエタン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノペンタンまたは1,6−ジアミノヘキサン等を挙げることができる。
【0027】
本発明における熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)を製造する場合、その製造法は、公知の製造法であってよく、特に限定されるものではない。好ましい製造法として、例えば、有機イソシアネート(a1)とジオール類(a2)とを、ジオール類(a2)の水酸基1当量に対して、有機イソシアネート(a1)のイソシアネート基を1.1〜4当量の比で反応させる。当量比が1.1未満であると、得られたウレタン樹脂の分子量が大きくなり過ぎ、粘度が高くなって作業性を低下させる場合がある。また、当量比が4を越えると、得られたウレタン樹脂の分子量が小さくなり過ぎ、成型品の耐熱性が低下してしまう場合がある。有機イソシアネート(a1)とジオール類(a2)とを窒素雰囲気下において、好ましくは反応温度約30〜120℃で約1〜6時間反応させ、より好ましくは、反応温度約50〜90℃で約3〜4時間反応させる。反応系におけるイソシアネート基の残存量が所望の値となった時点で反応を終了させることが特に好ましい。この反応において、イソシアネート基の残存量は、反応途中において反応物を経時的にサンプリングして、アミン当量法に従い滴定を行うことにより求めることができる。また、この反応においては、スズ系、鉛系またはアミン系などの公知のウレタン化触媒を用いることができ、また、必要に応じて公知の溶剤を用いてもよい。該公知の溶剤として、例えば、アセトニトリル、トルエン、メチルエチルケトンまたは酢酸エチルなどを用いることができる。
ついで、最終的に得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)の分子量を調整する為、モノオール(a3)および/またはモノアミン(a4)を添加し、更に0.5〜3時間攪拌を行うことによりイソシアネート基末端プレポリマーを得ることが出来る。この得られたイソシアネート基末端プレポリマーをジアミン類(a5)で鎖伸長することにより熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)を得ることが出来る。この際、好適にはイソシアネート基末端プレポリマーを外部乳化剤にて水中に乳化分散させた後、ジアミン類を添加することにより熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)を得ることが出来る。
【0028】
また、本発明における熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)として、協和発酵工業株式会社製の商品名エステン、クラレ株式会社製の商品名クラミロンU、大日精化工業株式会社製の商品名レザミンP、大日本インキ化学工業株式会社製の商品名パンデックス、ダウ・ケミカル日本株式会社製の商品名ペレセンまたは商品名アイソプラスト、ディーアイシー バイエル ポリマー株式会社製の商品名パンデックス、商品名デスモパンまたは商品名テキシン、日本ミラクトラン株式会社製の商品名ミラクトラン、またはBASFポリウレタンエラストマーズ株式会社製の商品名エラストランなどの市販品を用いることもできる。
【0029】
本発明において用いられる重合体(B)は、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル(b1)および/又は芳香族モノビニル単量体(b2)及びα,β−エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(b3)を含む単量体混合物を重合してなる重合体であれば、特に限定されない。本発明においては、重合体(B)が、重合体(B)100重量部に対して、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル(b1)0〜49重量部、芳香族ビニル単量体(b2)50〜99重量部、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(b3)0.01〜40重量部および連鎖移動剤(b4)0〜10重量部を含む単量体混合物を重合してなる重合体(B)であることが特に好ましい。以下、重合体(B)の各構成要件について説明する。
【0030】
本発明において用いられるα,β―エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル(b1)としては、例えば、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートまたは2−エチルヘキシルメタクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、アクリロニトリルまたはメタクリロニトリル等のシアン化ビニル、またはシアン化ビニリデン等を用いることが出来る。本発明においては、これらの内、メチルメタクリレートまたはブチルメタクリレートが好ましく用いられる。また、これら(b1)の使用量は、重合体(B)100重量部に対して、0〜49重量部程度であることが好ましい。
【0031】
本発明において使用される芳香族モノビニル単量体(b2)としては、例えば、スチレンまたはα−メチルスチレン等のスチレン系単量体、ビニルトルエンまたはエチルビニルベンゼン等のアルキルビニルベンゼン、またはビニルナフタレン等の多環芳香族モノビニル化合物などを挙げることができる。本発明においては、これらの内、スチレンモノマーが好ましく用いられる。また、本発明において、これらの芳香族モノビニル単量体を単独で、または2種以上組み合わせて用いることが出来る。これら(b2)の使用量は、重合体(B)100重量部に対して、50〜99重量部程度であることが好ましい。
【0032】
更に、本発明における重合体(B)を構成する単量体として用いられるα−βエチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(b3)としては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートまたはヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを挙げることが出来る。この場合のアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましい。これら(b3)の割合がこれらの値より少ない場合、所望の耐熱性の改良効果が得られにくくなる恐れがある。逆にこれらの値より大きい場合、スラッシュ成型時の溶融性が低下したり、得られる成型品の触感が非常に悪化したりする恐れがある。
【0033】
また、本発明を構成する重合体(B)を構成する単量体として、α,β―エチレン性不飽和カルボン酸単量体、例えばアクリル酸、メタクリル酸またはイタコン酸等、またはグリシジル(メタ)アクリレート、アクリルアミドまたはN−メチルアクリルアミド等の反応性の官能基を有する単量体等を用いることもできる。
【0034】
さらに、連鎖移動剤(b4)を用いることにより重合体(B)の分子量を調整することが出来る。この場合、連鎖移動剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタンまたはチオグリコール酸2−エチルヘキシル等のメルカプタン類、またはα−メチルスチレンダイマーなどのスチレンダイマー類等が挙げられる。本発明においては、これらのうちα−メチルスチレンダイマーが好ましく用いられる。これら連鎖移動剤の使用量は、重合体(B)100重量部に対して、通常0〜10重量部程度、好ましくは0.01〜5重量部程度、より好ましくは0.01〜2重量部程度である。
【0035】
本発明における重合体(B)を合成する際に使用する開始剤としては、特に限定されず、例えば過塩素酸塩、有機過酸化物またはアゾ系化合物などの公知の開始剤を用いることが出来る。これらのうち、過塩素酸塩としては過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムまたは過硫酸アンモニウムなどが挙げられる。上記有機過酸化物としては、例えば、ラウロイルパ−オキサイドまたはt−ブチルクミルパ−オキサイド等を挙げることができる。
【0036】
また、上記アゾ系化合物として、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス((2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン、メチルプロパンイソ酪酸ジメチル、ジメチル2,2’―アゾビス(2−メチルプロピオネート)または2,27−アゾビス〔N−(2−カルボキシル)−2−メチルプロピオンアミジン〕テトラハイドレートなどを用いることが出来る。
なお、本発明においては、上記開始剤を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0037】
重合体(B)のガラス転移温度としては好ましくは25℃以上、より好ましくは40℃以上である。これらの温度より低い場合、得られるパウダーの粉体流動性が著しく低下したり、パウダーが貯蔵中にブロッキングを起こしたりする恐れがある。
【0038】
重合体(B)の製造方法は、重合体(B)を製造できさえすれば特に限定されず、公知の方法、例えば溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合または分散重合などの製造方法であってよい。これらのうち、乳化重合または懸濁重合のような水系における重合が好適に用いられる。例えば、重合体(B)として単層重合体を乳化重合法で合成する場合、乳化重合によりシードラテックスを調製し、次いで重合体(B)を形成する単量体を添加し、シード重合をおこなうことにより重合体粒子を合成することができる。上記乳化重合法で合成する場合、重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムまたは過酸化水素水等の水溶性重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイドまたはラウロイルパーオキサイド等の有機系過酸化物、またはアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系重合開始剤などが挙げられる。乳化剤としては、特に限定されず、例えばロジン酸系または脂肪酸系の乳化剤などが挙げられる。これら乳化剤を単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0039】
また、重合体(B)として多層構造重合体を乳化重合法により合成する場合、乳化重合によりシードラテックスを調製し、次いで第一層を形成する単量体を添加し、シード重合を行うことにより第一層を合成し、更に第二層を形成する単量体を添加し、シード重合を行うことにより第二層を合成し、これらの操作を逐次繰り返し行うことにより所望の重合体(B)を得ることが出来る。また、本発明において用いられる重合体(B)の粒子構造もしくは各層を形成する重合体の構造を、中心部から最外部に向けて特定の単量体の構成比率が他段階もしくは連続的に変化するグラディエント構造とすることもできる。このようなグラディエント構造とする場合、上記重合体粒子の合成時に添加する単量体組成を他段階もしくは連続的に変化させながら重合を行うことにより所望のグラディエント構造を有する重合体粒子を得ることが出来る。
【0040】
重合体(B)を懸濁重合により合成する場合、定法に従い、所望の単量体組成からなる単量体液滴を調製後、重合を行うことにより所望の重合体(B)を得ることが出来る。上記懸濁重合で合成する場合、重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムまたは過酸化水素水等の水溶性重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイドまたはラウロイルパーオキサイド等の有機系過酸化物、またはアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系重合開始剤などが挙げられる。分散剤としては、特に限定されず、例えば、部分ケン化ポリ酢酸ビニル(いわゆるポリビニルアルコール)、セルロース誘導体、無水マレイン酸−スチレン共重合体、無水マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体またはゼラチン等が挙げられる。これら分散剤を、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
また、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)の水分散体中に所望の単量体混合物を添加することにより熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)の水分散体中において重合を行い、重合体(B)を得ることも出来る。この場合、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)の表面や内部で単量体混合物による重合が行われても良く、また、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)と単量体混合物とが別々の水相中であって重合が行われて良い。
【0041】
本発明において用いられるメラミン樹脂(C)は、通常アミノ基を一つでも有する樹脂であるが、本発明において、特に限定されず、例えば完全アルキル型メチル化メラミン樹脂、メチロール基型メチル化メラミン樹脂、メトキシ/ブトキシ混合アルキルエーテル化メチロールメラミン樹脂、メトキシ/イソブトキシ混合アルキルエーテル化メチロールメラミン樹脂、イミノ基型混合エーテル化メラミン樹脂またはブチル化メラミン樹脂などの公知のメラミン樹脂であってよい。本発明においては、これらのうち完全アルキル型メチル化メラミンが好適に用いることが出来る。
【0042】
本発明における熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)、重合体(B)およびメラミン樹脂(C)の配合割合は、特に限定されず、本発明において、例えば熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)50〜99重量%、重合体(B)0.1〜50重量%およびメラミン樹脂(C)0.1〜10重量%であることが好ましい。より好ましくは熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)60〜90重量%、重合体(B)5〜25重量%およびメラミン樹脂(C)0.5〜5重量%である。最も好ましくは熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)70〜90重量%、重合体(B)10〜20重量%およびメラミン樹脂(C)0.5〜3重量%である。
重合体(B)の上記配合割合が、1〜50重量%より大きい場合、得られる成型品の触感が劣ったものになる恐れがあり、逆に上記配合割合が1〜50重量%より小さい場合、パウダーの粉体流動性が低下したり、パウダーが貯蔵中にブロッキングを起こしたりする恐れがある。
メラミン樹脂(C)の上記配合割合が0.1〜10重量%より大きい場合、得られるパウダーの粉体流動性が低下したり、パウダーが貯蔵中にブロッキングを起こしたりする恐れがあり、逆に上記配合割合が0.1〜10重量%より小さい場合、所望の耐熱性の改良効果が得られない恐れがある。
【0043】
本発明におけるスラッシュ成型用パウダー組成物は必要に応じて、他の公知の添加剤、例えば可塑剤、ブロッキング防止剤、耐熱安定剤、耐光安定剤または離型剤などを任意に添加することが出来る。これら添加剤を各成分の合成時に添加しておいても良く、また、各成分を混合する際に添加しても良い。更に、粉体化を行った後、例えばヘンシェルミキサーやナウターミキサーなどを用いて混合を行っても良い。
【0044】
本発明におけるスラッシュ成型用パウダー組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、通常、公知の手法によって製造することが出来る。例えば、▲1▼熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)、重合体(B)、メラミン樹脂(C)および必要に応じて各種添加剤を溶融混錬した後、冷凍粉砕もしくはマイクロペレット法によりパウダー化を行い、製造する方法、▲2▼熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)の水分散液、重合体(B)の水分散液、および、メラミン樹脂(C)の水分散液および/または水溶液、および必要に応じて各種添加剤を混合した後、噴霧乾燥を行うことにより、混合物をパウダー化させて製造する方法、または▲3▼熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)の水分散体中で重合体(B)を構成する単量体の重合を行った後、メラミン樹脂および必要に応じて各種添加剤を混合し、ついで噴霧乾燥によりパウダー化を行う方法などが挙げられる。これらのうち、▲2▼または▲3▼の方法が本発明において好適に用いられる。
【0045】
上記手法を用いて得られるスラッシュ成型用パウダーの粒子径は特に限定されないが、好ましくは重量平均粒子径で約50〜300μmである。該粒子径が50μm以下の場合、パウダーの流動性が著しく低下してしまい、スラッシュ成型時に成型むらを生じる恐れがあり、該粒子径が300μm以上の場合、成型品表面にピンホールが大量に発生する恐れがある。
また、本発明においては、上記重合体(B)に芳香族モノビニル単量体(b2)を用いることで、上記スラッシュ成型用パウダー組成物の耐アルコール性を上げることができる。
【0046】
本発明にかかる成型品は、上記スラッシュ成型用パウダー組成物を用いてスラッシュ成型された成型品である限り、特に限定されない。本発明においては、上記成型品を自動車内装品として、例えばインストルメントパネル、グラブドアカバー、コンソール、ハンドル、カーテンエアバッグ部品又はドア部品等に用いることが特に好ましい。上記自動車内装品は、自動車の内装に用いられる上記成型品であれば、特に限定されない。上記自動車内装品をインストルメントパネルに用いる場合、例えば、上記スラッシュ成型された成型品を表皮として、芯材を嵌合し、間にクッション材としてのウレタンフォームを注入してインストルメントパネルに用いること等が挙げられる。
【0047】
本発明では、上記スラッシュ成型用パウダー組成物を用いてスラッシュ成型することにより、上記成型品を製造することができる。該製造方法は、上記スラッシュ成型用パウダー組成物を用いてスラッシュ成型する限り、他は特に限定されない。また、スラッシュ成型法についても特に限定されず、例えば、あらかじめ所定温度に加熱した金型上に、上記パウダー組成物を付着、溶融させた後、冷却を行う公知の方法であってよい。
【0048】
本発明において、上記スラッシュ成型用パウダー組成物を用いて、例えば、▲1▼加熱工程、▲2▼パウダリング工程▲3▼冷却工程▲4▼離型工程を経るスラッシュ成型により本発明の成型品を製造できる。上記▲1▼の加熱工程では金型1の予熱を行う工程であり、図2のようにヒーター2などの加熱装置を用いて金型1を加熱する。本発明においては加熱温度が約200℃〜300℃であることが好ましい。
【0049】
上記▲2▼のパウダリング工程では図3のようにスラッシュ成型用パウダー組成物をためたパウダーボックス3上に上記▲1▼の加熱工程で加熱した金型をセットし、所望のパターンにて金型とパウダーボックスを回転させる。この際、金型に接したパウダーが溶融し、金型上にシート4を形成する。上記▲3▼の冷却工程では金型1及び熱溶融したシート4を例えば水冷により離型可能な温度まで冷却を行い上記▲4▼の工程にて金型から成型品を取り出す。また、必要に応じて冷却工程の前に180℃〜350℃にてあと加熱を行うこともできる。
【0050】
【実施例】
製造例1 ウレタンプレポリマー1の合成
窒素導入管および攪拌棒を取り付けた重合容器中にUH−CARB200(宇部興産株式会社製ポリカーボネートジオール)1729.9重量部、TONE0249(ダウ・ケミカル株式会社製ポリカプロラクトン)1297.4重量部および1,4−ブタンジオール36.1重量部を投入し、80℃で1時間混合した。更にジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(H12MDI)913.3重量部を添加し、80℃で3時間攪拌を行った。また、更にオクチル酸第一錫0.1重量部を添加し90℃以下にて30分攪拌を続けた。アミン当量が所定の値に達したことを確認した後、2−ブタノール23.2重量部を添加し、その後、更に1時間80℃で攪拌を行った。再度、アミン当量が所定の値に到達したことを確認した後、冷却を行い、ウレタンプレポリマー1を得た。
【0051】
製造例2 ウレタンエマルションA−1の作成
製造例1で得たウレタンプレポリマー1 3468重量部をあらかじめ60℃に加温後、掻き取り羽根および高速攪拌羽根2本を有する3軸ミキサー中に投入し、更に乳化剤としてサンノールTD3130(ライオン(株)製)を224.3重量部添加し、60℃で45分攪拌を行った。更に脱イオン水150重量部を添加した後、30分攪拌を行った。その後攪拌を続けながら脱イオン水100重量部を7分割して5分毎にそれぞれ投入後、さらに脱イオン水1402重量部を添加し、ウレタンプレポリマーAの水分散液を得た。更に5%リン酸二水素ナトリウム水溶液278.9重量部を加えた後、20%ノルボルナンジアミン水溶液を40℃以下にて30分かけて連続添加を行った。更に50℃で2時間攪拌後、イルガノックス245(チバスペシャルティ・ケミカルズ株式会社製) 4.0重量部、チヌビン329(チバスペシャルティ・ケミカルズ株式会社製) 12.0重量部、アデカスタブLA−52(旭電化工業株式会社製) 12.0重量部、トルエン28.1重量部、サンノールTD−3130 7.8重量部からなる安定剤乳化液を加え、更に50℃で一晩熟成を行い、ウレタンエマルションA−1を得た。
【0052】
製造例3 ウレタンプレポリマー2の合成
窒素導入管および攪拌棒を取り付けた重合容器中にタケラックU−2720(三井武田ケミカル株式会社製アジペート系ポリエステル樹脂)1458.5重量部、タケラックU−2220(三井武田ケミカル株式会社製アジペート系ポリエステル樹脂)1458.5重量部、および1、3−ブタンジオール113.1重量部を投入し、80℃で1時間混合した。更にジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(H12MDI)726.1重量部およびヘキサメチレンジイソシアネート199.5重量部を添加し、80℃で3時間攪拌を行った。また、更にオクチル酸第一錫0.1重量部を添加し90℃以下にて30分攪拌を続けた。アミン当量が所定の値に達したことを確認した後、2−エチルヘキシルアルコール44.3重量部を添加し、その後、更に1時間80℃で攪拌を行った。再度、アミン当量が所定の値に到達したことを確認した後、冷却を行い、ウレタンプレポリマー2を得た。
【0053】
製造例4 ウレタンエマルションA―2の作成
ウレタンプレポリマーとして製造例3で得たプレポリマー2 3504重量部、鎖伸長剤として20%ヘキサメチレンジアミン364.8重量部用いたこと以外は製造例2と同様の方法によりウレタンエマルションA−2を得た。
【0054】
製造例5 ウレタンプレポリマー3の合成
窒素導入管および攪拌棒を取り付けた重合容器中にタケラックU−2720(三井武田ケミカル株式会社製アジペート系ポリエステル樹脂)1563.8重量部、タケラックU−2220(三井武田ケミカル株式会社製アジペート系ポリエステル樹脂)1563.8重量部、および1、3−ブタンジオール22.0重量部を投入し、80℃で1時間混合した。更にジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(H12MDI)826.5重量部を添加し、更に80℃で3時間攪拌を行った。更にオクチル酸第一錫0.1重量部を添加し、90℃以下にて30分攪拌を続けた。アミン当量が所定の値に達したことを確認した後、2−エチルヘキシルアルコール44.3重量部を添加し、その後、更に1時間80℃で攪拌を行った。再度、アミン当量が所定の値に到達したことを確認した後、冷却を行い、ウレタンプレポリマー3を得た。
【0055】
製造例6 ウレタンエマルションA―3の作成
ウレタンプレポリマーとして製造例5で得たプレポリマー3 3479重量部、鎖伸長剤として20%ヘキサメチレンジアミン467.8重量部用いたこと以外は製造例2と同様の方法によりウレタンエマルションA−3を得た。
【0056】
製造例7 ウレタンプレポリマー4の合成
窒素導入管および攪拌棒を取り付けた重合容器中にタケラックU−2720(三井武田ケミカル株式会社製アジペート系ポリエステル樹脂)1443.8重量部、タケラックU−2220(三井武田ケミカル株式会社製アジペート系ポリエステル樹脂)490.0重量部、およびタケラックSU−99(三井武田ケミカル株式会社製イソフタル酸系エステル樹脂)1291.3重量部を投入し、80℃で1時間混合した。更にイソホロンジイソシアネート(IPDI)759.5重量部を添加し、80℃で3時間攪拌を行った。また更にオクチル酸第一錫0.1重量部を添加し90℃以下にて30分攪拌を続けた。アミン当量が所定の値に達したことを確認した後、2−エチルヘキシルアルコール15.3重量部を添加し、更に1時間80℃で攪拌を行った。再度、アミン当量が所定の値に到達したことを確認した後、冷却を行い、ウレタンプレポリマー4を得た。
【0057】
製造例8 ウレタンエマルションA―4の作成
ウレタンプレポリマーとして製造例7で得たプレポリマー4を3470重量部、鎖伸長剤として20%ヘキサメチレンジアミン510.1重量部用いたこと以外は製造例2と同様の方法によりウレタンエマルションA−4を得た。
【0058】
製造例9 アクリルエマルションB−1の合成
還流冷却機、窒素導入管および攪拌棒を備えた重合容器中に脱イオン水(DIW)320重量部、1%ネオコールP(NP)水溶液(第一工業製薬株式会社製、アニオン型乳化剤)32重量部および1%炭酸水素ナトリウム水溶液 53.3重量部を投入し、70℃に加熱昇温を行った。70℃に昇温後メタクリル酸メチル(MMA)16重量部を添加し、5分間攪拌を行った。2%過硫酸ナトリウム(SPS)水溶液10.67重量部を添加した後、10分間攪拌を行い、シードエマルションを得た。このシードエマルションを75℃に昇温し、2%SPS水溶液60重量部を添加後、10分間攪拌を行った。さらにメタクリル酸メチル431.2重量部、メタクリル酸n−ブチル(n−BMA)188.2重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)156.8重量部、α−メチルスチレンダイマー(MSD)7.8重量部、1%NP水溶液480重量部および1%炭酸水素ナトリウム水溶液80重量部からなる単量体乳化液を4時間かけて連続フィードした。フィード終了後、DIW56重量部にてフィードラインの洗浄を行い、更に1時間熟成を行い、アクリルエマルションB−1を得た。
【0059】
製造例10 アクリルエマルションB−2の合成
還流冷却機、窒素導入管および攪拌棒を備えた重合容器中に脱イオン水(DIW)320重量部、1%ネオコールP(NP)水溶液(第一工業製薬株式会社製、アニオン型乳化剤)32重量部および1%炭酸水素ナトリウム水溶液 53.3重量部を投入し、70℃に加熱昇温を行った。70℃に昇温後メタクリル酸メチル(MMA)16重量部を添加し、5分間攪拌を行った。2%過硫酸ナトリウム(SPS)水溶液10.67重量部を添加した後、10分間攪拌を行い、シードエマルションを得た。このシードエマルションを80℃に昇温し、2%SPS水溶液84重量部を添加後、10分間攪拌を行った。さらにスチレン(SM)402.6重量部、メタクリル酸n−ブチル(n−BMA)119.7重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)13.6重量部、α−メチルスチレンダイマー(MSD)8.2重量部、1%NP水溶液392重量部、および1%炭酸水素ナトリウム水溶液56重量部からなる単量体乳化液を4時間かけて連続フィードした。フィード終了後、DIW56重量部にてフィードラインの洗浄を行い、更に1時間熟成を行い、コアエマルションを得た。このコアエマルションに2%SPS水溶液18重量部を添加し、10分間攪拌を行った後、MMA132重量部、n−BMA57.6重量部、HEMA48重量部、およびMSD2.4重量部からなる単量体乳化液を90分かけて連続フィードを行った。フィード終了後、DIW24重量部でフィードラインの洗浄を行い、更に1時間熟成を行うことにより、アクリルエマルションB−2を得た。
【0060】
製造例11 アクリルエマルションB−3の合成
製造例10において、コア層を構成する単量体をSM 350.9重量部、n−BMA 130.6重量部、グリシジルメタクリレート 54.4重量部、およびMSD 8.2重量部に、シェル層を構成する単量体をMMA 156重量部、n−BMA 57.6重量部、HEMA 24重量部、およびMSD 2.4重量部に変更したこと以外は同様の方法により合成を行い、アクリルエマルションB−3を得た。
【0061】
製造例12 アクリルエマルションB−4の合成
製造例10において、コア層を構成する単量体をSM 405.3重量部、n−BMA 130.6重量部、およびMSD 8.2重量部に、シェル層を構成する単量体をMMA 180重量部、n−BMA 57.6重量部、およびMSD 2.4重量部に変更したこと以外は同様の方法により合成を行い、アクリルエマルションB−4を得た。
【0062】
上記製造例で得られたウレタンエマルジョンA−1〜A−4の各構成要素を表1に示し、アクリルエマルションB−1〜B−4の各構成要素を表2に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
(実施例1)
ウレタンエマルションA 100重量部、アクリルエマルションC−1 22.8重量部、サイメル303(三井サイテック株式会社製)22.8重量部、およびTSF−451−3000(GE東芝シリコーン株式会社製シリコンオイル)0.31重量部を混合後、スプレードライヤ(大川原化工機株式会社製OD−50型)にてアトマイザー回転数5000rpm、熱風温度100℃で噴霧乾燥を行い、ウレタンパウダーを得た。この得られたパウダーを更に顔料とヘンシェルミキサ中にて混合することによりスラッシュ成型用パウダー組成物P−1を得た。
【0066】
(物性測定方法)
金型を240℃に加熱した後、実施例にて得たパウダー300gを金型上にふりまき、8秒間靜置させた後、溶融しなかった余分な粉を払い落とし、更に60秒間靜置後、水冷して成型シートを作成した。そして、以下のとおり、物性測定を行った。
溶融性を、上記成型シートを作製する中で、上記8秒間靜置後の上記パウダーの状態を観察・評価した。評価基準は次の通りである。
溶融性 ○ とけ残りなし
△ 一部とけ残り
× とけ残りあり
耐熱性を、得られた成型シートを130℃の加熱オーブン中に24時間静置前後の60°グロスを測定することにより、評価した。
ガラス霞度は、50mm×50mmの成型シートをガラス瓶に入れ、ガラス板でふたをして密封した後、100℃のオイルバス中で20時間静置し、ふたとして用いたガラス板の霞度をJIS−K6717に準じて測定することにより求められた。
モジュラスまたは伸びを、25℃および−10℃における引っ張り特性 JIS−K6301準拠して測定することにより、評価した。
実施例1で得られたスラッシュ成型用パウダー組成物の各構成要素および各種物性の測定結果を表3に示す。
【0067】
(実施例2〜7)
表3に示す各構成要素の配合割合にて実施例1と同様の方法でもって、混合、スプレードライおよび着色を行うことによりスラッシュ成型用パウダー組成物P−2〜P−7を得た。
実施例2〜7で得られたスラッシュ成型用パウダー組成物の各種物性の測定結果を表3に示す。
【0068】
(比較例1)
サイメル303を用いないこと以外は実施例3と同様の方法にて混合を行い、スラッシュ成型用パウダー組成物P−8を得た。
【0069】
(比較例2)
サイメル303の代わりにジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製カヤラッドDPHA)を2重量部用いたこと以外は実施例4と同様の方法により混合を行い、スラッシュ成型用パウダー組成物P−9を得た。
【0070】
(比較例3)
比較例2においてDPHAを5重量部用いたこと以外は同様の方法によりスラッシュ成型用パウダー組成物P−10を得た。
上記比較例1〜3で得られたスラッシュ成型用パウダー組成物の各構成要素および各種物性の測定結果を表3に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
物性測定の結果、表3に見られるように、実施例または比較例により得られた試料の全てが溶融性に優れていた。グロスについては、実施例1〜6により得られた試料の全てが優れており、比較例3により得られた試料も優れていた。しかし、実施例1〜6により得られた試料の全てがガラス霞度に優れているのに対し、比較例3により得られた試料はガラス霞度が劣っていた。
【0073】
【発明の効果】
本発明によって、成型性、長期耐久性およびフォギング性に優れたスラッシュ成型用パウダー組成物を提供できる。また、本発明のスラッシュ成型用パウダー組成物を用いて成型することによって、長期耐久性およびフォギング性に優れた成型品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスラッシュ成型において用いられる金型及びパウダーボックスにおけるパウダーの模式図である。
【図2】金型とヒーターの模式図であって、本発明のスラッシュ成型における加熱工程での金型の状態を示す。
【図3】金型及びパウダーボックスにおけるパウダーの模式図であって、本発明のスラッシュ成型におけるパウダリング工程でのパウダーと金型の状態を示す。(a)は、パウダーボックスにセットされた加熱した金型の状態を示す。また、(b)は、金型加熱後パウダーボックスを回転中の金型の状態を示す。
【図4】パウダリング後の成型物及びパウダーボックスにおけるパウダーの模式図である。
【図5】成型物の冷却の模式図であって、本発明のスラッシュ成型における冷却工程での成型物および冷水の状態を示す。
【図6】成型品の模式図であって、離型工程後に得られたシート状の成型品及び成型品から分離された金型を示す。
【符号の説明】
1 金型
2 ヒーター
3 パウダーボックス中のパウダー
4 成型品
5 冷水
Claims (8)
- 熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル(b1)および/または芳香族モノビニル単量体(b2)およびα,β−エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(b3)を含む単量体混合物を重合してなる重合体(B)、およびメラミン樹脂(C)からなることを特徴とするスラッシュ成型用パウダー組成物。
- 熱可塑性ポリウレタン樹脂が、有機イソシアネート(a1)、ジオール類(a2)、および、モノオール(a3)および/またはモノアミン(a4)を含んでなるイソシアネート基末端プレポリマーとジアミン化合物(a5)とを鎖伸長反応に付して得られることを特徴とする請求項1に記載のスラッシュ成型用パウダー組成物。
- 重合体(B)が、重合体(B)100重量部に対して、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル(b1)0〜49重量部、芳香族ビニル単量体(b2)50〜99重量部、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル(b3)0.01〜40重量部および連鎖移動剤(b4)0〜10重量部を含む単量体混合物を重合してなる重合体(B)であることを特徴とする請求項1または2に記載のスラッシュ成型用パウダー組成物。
- メラミン樹脂(C)が完全アルキル型メチル化メラミン樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスラッシュ成型用パウダー組成物。
- 熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)、重合体(B)およびメラミン樹脂(C)の配合割合が、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)50〜99重量%、重合体(B)0.1〜50重量%およびメラミン樹脂(C)0.1〜10重量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスラッシュ成型用パウダー組成物。
- 熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)の水分散液、重合体(B)の水分散液、および、メラミン樹脂の水分散液および/または水溶液を混合した後、混合液を噴霧乾燥することにより製造されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のスラッシュ成型用パウダー組成物。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のスラッシュ成型用パウダー組成物を用いてスラッシュ成型された成型品。
- 自動車内装品であることを特徴とする請求項7に記載の成型品。
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JP2002252103A JP2004091541A (ja) | 2002-08-29 | 2002-08-29 | スラッシュ成型用パウダー組成物 |
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JP2005171110A (ja) * | 2003-12-12 | 2005-06-30 | Nippon Zeon Co Ltd | 粉体成形用熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物及びその製造方法 |
JP2010222477A (ja) * | 2009-03-24 | 2010-10-07 | Sanyo Chem Ind Ltd | スラッシュ成形用樹脂粉末組成物及び成形品 |
-
2002
- 2002-08-29 JP JP2002252103A patent/JP2004091541A/ja active Pending
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