JP2004090755A - ペダルストッパ構造及びそれを備えたペダルモジュール - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)戻り側である付勢部材4,5の付勢方向に回転するペダル2とそのペダル2の支持部材3との間に挟圧されて撓み変形する弾性部37、並びに(B)弾性部37よりも高い剛性を有し、弾性部37が所定量撓んだときにペダル2と支持部材3との間に挟圧されてペダル2の付勢方向への回転限度を確定する剛性部36を設ける。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ペダルモジュールにおいてペダルの戻り側への回転を制限するペダルストッパ構造及びそれを備えたペダルモジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、支持部材に回動自在に支持され、操作者により踏込操作されるペダルを備えたペダルモジュールが知られている。このペダルモジュールでは、踏み込まれたペダルを戻すために、リターンスプリングを用いてペダルの踏込方向とは逆方向にペダルを付勢している。
【0003】
ところで、例えば図11に示すような従来のペダルモジュール100は、リターンスプリング101による付勢方向へのペダル102の回転、すなわち戻り側へのペダル102の回転を制限するためにペダルストッパ103を設けている。このペダルストッパ103は、ペダル102を支持する支持部材104に設けられ、戻り側に回転するペダル102に当接する。それにより、ペダルストッパ103はペダル102と支持部材104との間に挟圧されてペダル102の回転制限機能を発揮する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記図11に示すペダルストッパ103では、ペダル102の回転限度を安定させるという機能性を重視して、樹脂等の剛性の高い材料で形成されている。そのため、ペダル102が戻り側に回転するときの運動エネルギーをペダルストッパ103で充分に吸収することができず、打音が発生してしまう。
本発明の目的は、ペダルの戻り側への回転時において打音の発生を抑制しつつ回転限度を安定させるペダルストッパ構造及びそれを備えたペダルモジュールを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に記載のペダルストッパ構造は、付勢部材の付勢方向に回転するペダルと支持部材との間に挟圧されて撓み変形する弾性部を備える。これにより、付勢方向すなわち戻り側に回転するペダルの運動エネルギーを弾性部の撓み変形により吸収することができるので、ペダルと支持部材との間に弾性部が挟圧されるときにおいて打音の発生を抑制することができる。
【0006】
しかも請求項1に記載のペダルストッパ構造は、弾性部よりも高い剛性を有する剛性部であって、弾性部が所定量撓んだときにペダルと支持部材との間に挟圧されてペダルの付勢方向への回転限度を確定する剛性部を備える。これにより、弾性部でペダルの運動エネルギーを充分に吸収した後に、剛性の高い剛性部で大きな打音を生じることなくペダルの回転限度を安定させることができる。
【0007】
本発明の請求項2に記載のペダルストッパ構造によると、弾性部は、それに隣接する空間を形成し、ペダルと支持部材とで挟圧されるとき空間内に撓んでその空間形状を変化させる。これにより、弾性部は自身の撓み変形を促進される。さらに、弾性部の撓みに伴い形状が変化する空間内の空気によってダンパ作用を発揮できる。以上により、弾性部の挟圧に伴う運動エネルギーの吸収効果を高めることができる。
本発明の請求項3に記載のペダルストッパ構造によると、弾性部の撓み量に応じて空間内の空気を出し入れする出入手段をさらに備える。これにより、空間内空気によるダンパ作用の程度を容易に調整することができる。
【0008】
本発明の請求項4に記載のペダルストッパ構造によると、弾性部は剛性部の近傍に設けられる。これにより、ペダルの回転限度を剛性部で確定する直前までにペダルの運動エネルギーを吸収するのに必要な弾性部の撓み量について設定し易くなる。
【0009】
本発明の請求項5に記載のペダルストッパ構造によると、弾性部及び剛性部は支持部材に固定され、付勢方向に回転するペダルに当接することでペダルと支持部材との間に挟圧される。この構成では、ペダルが弾性部に衝突するときの打音をその弾性部により低減することができる。
【0010】
本発明の請求項7に記載のペダルストッパ構造によると、弾性部及び剛性部はペダルに固定され、ペダルの付勢方向への回転に伴って支持部材に当接することでペダルと支持部材との間に挟圧される。この構成では、支持部材に弾性部が衝突するときの打音をその弾性部により低減することができる。
【0011】
本発明の請求項6及び8に記載のペダルストッパ構造によると、弾性部は、ペダル又は支持部材に当接する突起を有する。これにより、ペダル又は支持部材から突起に局所的に伝達される荷重を弾性部の変形部位の全体に拡散させることができるので、弾性部は所期のエネルギー吸収特性を発揮することができる。
【0012】
本発明の請求項9に記載のペダルストッパ構造によると、ペダルは車両用アクセルペダルである。車両用アクセルペダルを付勢する付勢部材は一般にその付勢力を大きく設定されるため、アクセルペダルが戻り側に回転するときの運動エネルギーが増大する。しかし、そのように大きな運動エネルギーでも弾性部により吸収することができるので、請求項9に記載のペダルストッパ構造はアクセルペダルを備えたペダルモジュールの打音抑制に好適である。
【0013】
本発明の請求項10に記載のペダルモジュールによると、請求項1〜9のいずれか一項に記載のペダルストッパ構造を備えている。したがって、請求項10に記載のペダルモジュールによれば、上述した請求項1〜9のペダルストッパ構造と同様の効果を享受することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を示す複数の実施例を図面に基づいて説明する。
(第一実施例)
本発明の第一実施例によるペダルモジュールとしてのアクセル装置を図2及び図3に示し、そのアクセル装置の分解図を図5に示す。アクセル装置1は車両に搭載され、運転者によるアクセルペダル2の踏込量に応じて車両の運転状態を制御する。本実施例のアクセル装置1はアクセルバイワイヤ方式を採用しており、アクセルペダル2は車両のスロットル装置に機械的に連結されていない。その代わり、アクセル装置1はアクセルペダル2の回転角度を車両のエンジン制御装置(ECU)に伝達し、その回転角度に基づいてECUがスロットル装置を制御する。
【0015】
アクセル装置1においてアクセルペダル2は、ハウジング3により回動軸線O周りに回動自在に支持され、二つのリターンスプリング4,5により運転者の踏込方向とは逆方向に付勢されている。運転者の踏力及びリターンスプリング4,5の付勢力に基づき回動するアクセルペダル2の回転角度は回転角センサ6により検出され、ECUに伝達される。
以下、アクセル装置1の構成についてさらに詳細に説明する。
【0016】
図2〜図4に示すように、支持部材としてのハウジング3は樹脂で箱形に形成され、底板11、底板11に向き合う天板12、底板11及び天板12に垂直で互いに向き合う二つの側板13,14を備えている。
底板11はボルト等により車体に固定される。底板11の内壁側には、後述するペダルストッパ部7が設けられている。天板12の内壁側には、係合部15及び係止孔16が形成されている。図6に示すように係止孔16は、入口部16a側よりも深部16b側で断面積が小さくなるように形成されている。
【0017】
一方の側板13は、図5(B)に示すようにハウジング3の他の部位に着脱可能である。図4に示すように側板13には、軸受部8及び支持部9が一体樹脂成形により形成されている。軸受部8は側板13の内壁面から円筒状に突出している。支持部9は、側板13において軸受部8の基端部側を閉塞する部分で形成されている。支持部9は、検出部としての回転角センサ6を軸受部8の内周側において支持している。側板13の外壁には、回転角センサ6に電気接続されるターミナル18を埋設したコネクタ19が形成されている。
他方の側板14の内壁側には、一方の側板13に向かって突出する軸部20が形成されている。軸部20はアクセルペダル2の回動軸線O上を延伸し、大径の基端部20aと小径の先端部20bとを有している。
【0018】
図2〜図4に示すようにアクセルペダル2は、ペダルアーム21とスプリングロータ22とから構成されている。
ペダルアーム21は樹脂で形成され、V字状に延伸している。ペダルアーム21の一端部側は、運転者が足で踏込操作する操作部23を形成している。ペダルアーム21の他端部側は、ハウジング3内に収容される二つの側壁部24,25を形成している。側壁部24,25は回動軸線O方向において互いに平行に向き合っている。側板14に正対する側壁部24はその貫通孔24aに嵌通された軸部20の基端部20aに支持され、それによりペダルアーム21が回動軸線O周りに回動可能となっている。尚、運転者が操作部23を踏み込むときペダルアーム21は、操作部23の踏込方向に一致する図2のX方向に回転する。
【0019】
ペダルアーム21において側板13に正対する側壁部25に可動軸10が一体樹脂成形により形成されている。図4に示すように可動軸10は、回動軸線Oを中心とする概ね円筒状に側壁部25の側板13側の壁面から突出している。可動軸10は、側板13の軸受部8の内周側に嵌入されて軸受けされている。可動軸10において回動軸線Oを挟む周方向の二箇所には、互いに極性の異なる磁石部26,27が一体回動可能に埋設されている。二つの磁石部26,27が形成する磁界の向きは、可動軸10の回転角度に応じて変化する。側板13の支持部9が支持する回転角センサ6はホール素子又は磁気抵抗素子等を備え、その外周側に隙間をあけて配設された磁石部26,27の形成磁界を可動軸10に非接触で検出する。回転角センサ6は、ターミナル18に電気接続されたECUに検出信号を出力する。その回転角センサ6の出力する検出信号は、可動軸10の回転角度すなわちペダルアーム21の回転角度を表している。
【0020】
図2〜図4に示すように、スプリングロータ22は樹脂で形成され、円盤状の回動部28を形成している。スプリングロータ22は、回動部28の両側面をペダルアーム21の両側壁部24,25に挟まれるようにして配設されている。回動部28の内孔28aに軸部20が隙間をあけて挿通され、それによりスプリングロータ22が回動軸線Oの周りに回動可能となっている。
【0021】
回動部28において側壁部25側の側面には、図5(A)に示すような複数のはす歯30が設けられている。複数のはす歯30は回動軸線Oの周りに等間隔に配列されている。ペダルアーム21の側壁部25において回動部28側の壁面には、複数のはす歯29が設けられている。複数のはす歯29は回動軸線Oの周りに等間隔に配列され、回動軸線O方向で向かい合うはす歯30のいずれかに噛み合っている。この噛み合いにより、ペダルアーム21とスプリングロータ22とは一緒に回転することができる。例えば、運転者がペダルアーム21の操作部23を踏み込むときスプリングロータ22は図2のX方向に回転する。回動部28の側壁部24側の側面と側壁部24の回動部28側の壁面との間にはフリクションワッシャ32が介装されている。フリクションワッシャ32は、図2に二点鎖線で示すように天板12の係合部15に回動不能に係合され、回動する回動部28及び側壁部24の双方と摺接して摩擦力を生む。
【0022】
スプリングロータ22はさらに係止部31を回動部28と一体に樹脂で形成している。図3及び図6に示すように、係止部31は回動部28の外周縁部からその接線方向に板状に突出し、両面を底板11と天板12とに対向させている。係止部31の天板12側の面から概ね段付き円柱状の突部33が突出している。突部33は、基端部側の大径部33aと先端部側の小径部33bとを互いに偏心させて形成している。係止部31の天板12側の面と天板12の内壁面との間に、付勢部材としての第一リターンスプリング4及び第二リターンスプリング5が介装されている。
【0023】
第一及び第二リターンスプリング4,5は共に圧縮コイルスプリングで構成されている。図4及び図6に示すように第二リターンスプリング5は、そのコイル径を第一リターンスプリング4のコイル径よりも小さくされ、第一リターンスプリング4の内周側に配設されている。各リターンスプリング4,5の一端部4a,5aは、天板12に設けられた係止孔16の入口部16a側と深部16b側とにそれぞれ嵌入されて係止されている。一方、各リターンスプリング4,5の他端部4b,5bは、係止部31に設けられた突部33の大径部33aと小径部33bとにそれぞれ嵌合されて係止されている。以上により各リターンスプリング4,5は、踏込方向Xに回転したペダルアーム21及びスプリングロータ22を図2のY方向に戻す向きに係止部31を付勢している。
【0024】
係止部31よりも各リターンスプリング4,5の付勢方向前側に、すなわち本実施例では係止部31の反リターンスプリング側に補助係止部34が配設されている。補助係止部34はペダルアーム21の反操作部側端部と一体に樹脂で形成され、浅底の皿状を呈し、後述する弾性部材37よりも剛性が高くされている。ペダルアーム21及びスプリングロータ22の任意の回転位置において、補助係止部34は係止部31の反リターンスプリング側の面31a及び外周縁部31bの一部を覆う。それにより補助係止部34は、図7に示す如く係止部31が破損して回動部28から離脱した場合に、係止部31を係止する。このとき係止部31は各リターンスプリング4,5の端部4b,5bを突部33に嵌合させたまま確実に保持できるので、補助係止部34は各リターンスプリング4,5の端部4b,5bを間接的に係止することができる。尚、図4及び図6に示すように係止部31の正常時には、係止部31の上記面31aと補助係止部34の底壁34aの内壁面とが互いに離間し、係止部31の外周縁部31bと補助係止部34の側壁34bの内壁面とが互いに離間する。これにより補助係止部34は、係止部31の正常時においてリターンスプリング4,5を係止しない。
【0025】
図2に示すように、補助係止部34よりも各リターンスプリング4,5の付勢方向前側に、ペダルストッパ構造としてのペダルストッパ部7が配設されている。ペダルストッパ部7は、図1及び図8に示すように、剛性部としての剛性部材36と、弾性部としての弾性部材37とから構成されている。
剛性部材36は底板11と一体に樹脂で形成され、弾性部材37よりも剛性が高くされている。剛性部材36は、U字板状の当接部38を底板11の内壁面に平行に形成している。当接部38のU字の切れ目は、着脱可能な側板13側に設けられている。当接部38の反底板側の面には補助係止部34の底壁34aが当接可能である。当接部38に補助係止部34が当接するとき、剛性部材36は補助係止部34と底板11との間に挟圧される。
【0026】
弾性部材37はエラストマ等の弾性材で形成されている。弾性部材37は、底板11と当接部38との間隙39に嵌合されるベース部40を矩形枠状に形成している。図5(A)に示すように側板13を取り外した側からベース部40を間隙39にスライド嵌入することで、弾性部材37が底板11に固定されている。弾性部材37はさらに、ベース部40の反底板側開口を覆う変形部41を形成している。変形部41はベース部40よりも小さな矩形板状を呈し、当接部38のU字の内周側に嵌合されている。変形部41のベース部側の面と、ベース部40の内周縁部と、底板11の内壁面とが、変形部41の撓み変形を促進する空間43を形成している。
【0027】
弾性部材37はさらに、変形部41の反ベース部側面の中心部から突出する突起44を形成している。図1(A)に示す変形部41の非変形時において突起44は、当接部38の反底板側の面がのる仮想平面Sよりも補助係止部34側に張り出す。突起44の先端部には補助係止部34の底壁34aが当接可能である。突起44に補助係止部34が当接するとき、弾性部材37は補助係止部34と底板11との間に挟圧される。
【0028】
次にアクセル装置1の作動について説明する。
運転者がアクセルペダル2のペダルアーム21の踏込量を調整すると、はす歯29,30同士が噛み合うペダルアーム21とスプリングロータ22とがフリクションワッシャ32に摺接しつつ一緒に回動する。このとき回転角センサ6は、ペダルアーム21と一体に回動する可動軸10の回転角度を磁石部26,27の形成磁界に基づいて検出する。
【0029】
運転者が踏力を増大させるとき、ペダルアーム21及びスプリングロータ22は図2の踏込方向Xに回転する。その回転に伴ってペダルアーム21及びスプリングロータ22には、リターンスプリング4,5の合成付勢力Fs及びフリクションワッシャ32との間の摩擦力Ffが踏込方向Xとは逆の方向Yに働く。このとき、ペダルアーム21の踏み込みに従って圧縮されるリターンスプリング4,5は合成付勢力Fsを増大させる。またこのとき、はす歯29,30の噛み合い作用によってペダルアーム21の側壁部25とスプリングロータ22の回動部28とを互いに離す回動軸線O方向の力がペダルアーム21の踏み込みに従って増大し、それと共に摩擦力Ffが増大する。
【0030】
一方、運転者が踏力を減少させるとき、ペダルアーム21及びスプリングロータ22はリターンスプリング4,5の合成付勢力Fsによって図2の戻し方向Yに回転する。その回転に伴ってペダルアーム21及びスプリングロータ22には、フリクションワッシャ32との間の摩擦力Ffがリターンスプリング4,5の合成付勢力Fsとは逆の方向Xに働く。このときペダルアーム21の戻りに従って伸長するリターンスプリング4,5は合成付勢力Fsを減少させる。またこのとき、はす歯29,30の噛み合い作用によってペダルアーム21の側壁部25とスプリングロータ22の回動部28とを互いに離す回動軸線O方向の力がペダルアーム21の戻りに従って減少し、それと共に摩擦力Ffが減少する。
以上説明したことからアクセル装置1では、アクセルペダル2の踏み込み時と戻し時とでペダルアーム21及びスプリングロータ22に作用する力の特性にヒステリシスが生じる。そのため、アクセルペダル2を一定位置に保持し易い。
【0031】
ところでアクセルペダル2の戻し時には、ペダルアーム21の補助係止部34がペダルストッパ部7に当接することで、ペダルアーム21及びスプリングロータ22の戻し方向Yへの回転が制限される。具体的には、まず図1(A)に示すように、ペダルアーム21の補助係止部34が弾性部材37の突起44に当接する。さらに、補助係止部34の戻し方向Yへの回転が進むにつれ、補助係止部34と底板11とで挟圧される弾性部材37は突起44に作用する荷重を変形部41のほぼ全体に拡散する。すると、変形部41は図1(B)に示すように、突起44とは反対側の隣接空間43内に撓み変形する。その変形部41の変形により突起44の先端面が図1(B)に示すように上記仮想平面Sにまで後退すると、補助係止部34は当接部38に当接する。それにより補助係止部34と底板11とで挟圧される剛性部材36は、高剛性の材料で形成されていることによって実質的に弾性変形することなく補助係止部34の回転限度、ひいてはペダルアーム21及びスプリングロータ22の回転限度を確定する。
【0032】
以上説明した第一実施例によると、運転者が踏み込んだペダルアーム21から足を離してアクセルペダル2を戻すとき、アクセルペダル2を構成するペダルアーム21及びスプリングロータ22にはリターンスプリング4,5の付勢により運動エネルギーEが付与される。しかし上述の実施例では、ペダルアーム21及びスプリングロータ22の運動エネルギーEをまず、変形部41の撓み変形と、その撓みに従って形状が変化する空間43内の空気のダンパ作用とにより吸収することができる。よって、補助係止部34が当接部38に当接する直前までの変形部41の撓み量Δについて上記運動エネルギーEを充分に吸収するように設定すれば、補助係止部34とペダルストッパ部7との当接に伴う打音の発生を抑制できる。特に上述の第一実施例では、弾性部材37が剛性部材36に嵌合されて剛性部材36の近傍に配設されているので、弾性部材37を剛性部材36から離して配設する場合に比べ変形部41の上記撓み量Δを設定し易い。撓み量Δが設定容易となることで、弾性部材37によるエネルギー吸収特性の製品間ばらつきが抑えられる。また上述の第一実施例では、補助係止部34から突起44に局所的に伝達される荷重を変形部41のほぼ全体に拡散することができる。これにより、ペダルアーム21の回転軌跡がずれて補助係止部34の突起44への当接角度が変化する場合でも、変形部41の全体で所期のエネルギー吸収特性を発揮することができる。
加えて第一実施例によると、上記運動エネルギーEの吸収後に剛性の高い剛性部材36で補助係止部34を確実に止めることができる。したがって、アクセルペダル2の戻り側への回転限度を安定して得ることができる。
【0033】
尚、上述の第一実施例では、弾性部材37の変形部41の撓み変形を促進する空間43を変形部41に隣接して設けた。これに対し、そのような空間43を設けずに変形部41の撓み変形のみにより運動エネルギーEの吸収を行うようにしてもよい。
【0034】
(第二実施例)
本発明の第二実施例によるペダルモジュールとしてのアクセル装置を図9に示す。第一実施例と実質的に同一の構成部分には同一符号を付す。
第二実施例のアクセル装置50では、第一実施例のアクセル装置1の構成に加え、ペダルストッパ部7に出入手段としての出入孔52を設けている。
【0035】
具体的に出入孔52は、弾性部材37の変形部41において突起44の周辺となる部位を板厚方向に断面円形に貫通し、空間43をハウジング3の内部空間に連通させている。これにより、アクセルペダル2の戻し操作によって補助係止部34が突起44に当接し変形部41が空間43内に撓むとき、空間43内の空気の一部を出入孔52を通じてハウジング3内に排出することができる。また、アクセルペダル2の踏込操作によって補助係止部34が突起44から離間し、撓んでいた変形部41が復元するとき、ハウジング3内の空気を出入孔52を通じて空間43内に導入することができる。
このような出入孔52の径あるいは長さ等を調整することで、空間43内の空気によるダンパ作用の程度が調整容易となるので、その空気ダンパによるエネルギー吸収特性の製品間ばらつきが抑えられる。
【0036】
尚、上述した第二実施例のペダルストッパ部7では、出入手段としての出入孔52を空間43に隣接する弾性部材37に設けたが、空間43に隣接する剛性部材36や支持部材たるハウジング3の底板11に出入孔52を設けてもよい。また、出入孔52の個数や形状寸法については適宜設定することができる。
【0037】
(第三実施例)
本発明の第三実施例によるペダルモジュールとしてのアクセル装置を図10に示す。第一実施例と実質的に同一の構成部分には同一符号を付す。
第三実施例のアクセル装置60では、ハウジング3の底板11ではなく、ペダルアーム21の補助係止部34にペダルストッパ部7を設けている。
【0038】
本実施例においてペダルストッパ部7の剛性部材36は、補助係止部34の底壁34aと一体に樹脂で形成され、弾性部材37よりも剛性が高くされている。剛性部材36は、U字板状の当接部38を底壁34aの外壁面に平行に形成している。当接部38の反補助係止部側の面はハウジング3の底板11に当接可能である。当接部38が底板11に当接するとき、剛性部材36は補助係止部34と底板11との間に挟圧される。
【0039】
また、本実施例においてペダルストッパ部7の弾性部材37は、そのベース部40を補助係止部34の底壁34aと当接部38との間隙62に嵌合され、ペダルアーム21に固定されている。弾性部材37において、当接部38の内周側に嵌合される変形部41の反ベース部側の面の中心部から突起44が突出している。変形部41の非変形時において突起44は、当接部38の反補助係止部側の面がのる仮想平面Tよりも底板11側に張り出す。突起44の先端部は底板11に当接可能であり、突起44が底板11に当接するとき弾性部材37は補助係止部34と底板11との間に挟圧される。本実施例では、補助係止部34の底壁34aの外壁面が変形部41のベース部側の面及びベース部40の内周縁部と共同して、変形部41の撓み変形を促進する空間64を形成している。
【0040】
上述した構成の第三実施例では、アクセルペダル2の戻し時において、補助係止部34の戻し方向Yへの回転によりまず弾性部材37の突起44が底板11に当接する。さらに補助係止部34が戻し方向Yに回転するにつれ、補助係止部34と底板11とで挟圧される弾性部材37の変形部41が第一実施例と同様の原理により隣接空間64内に撓み変形する。その変形部41の変形により突起44の先端面が上記仮想平面Tにまで後退すると、当接部38が底板11に当接する。それにより補助係止部34と底板11とで挟圧される剛性部材36は、高剛性の材料で形成されていることによって実質的に弾性変形することなく補助係止部34の回転限度、ひいてはペダルアーム21及びスプリングロータ22の回転限度を確定する。
【0041】
以上説明した第三実施例によると、ペダルアーム21から足が離されアクセルペダル2が戻るとき、変形部41の撓み変形と、その撓みに伴い形状変化する空間64内の空気のダンパ作用とによりアクセルペダル2の運動エネルギーEを吸収できる。よって、当接部38が底板11に当接する直前までの変形部41の撓み量Δについて上記運動エネルギーEを充分に吸収するように設定すれば、ペダルストッパ部7と底板11の当接に伴う打音の発生を抑制できる。尚、第三実施例においても、弾性部材37が剛性部材36の近傍に配設されると共に、当接時の荷重が変形部41のほぼ全体に拡散されるので、第一実施例と同様の原理により所望のエネルギー吸収特性を得ることができる。
加えて第三実施例によると、上記運動エネルギーEの吸収後に高剛性の剛性部材36が底板11に当接して、補助係止部34の回転を確実に止めることができる。よって、アクセルペダル2の戻り側への回転限度が安定して得られる。
【0042】
尚、上述の第三実施例では、弾性部材37の変形部41の撓み変形を促進する空間64を変形部41に隣接して設けたが、そのような空間64を設けずに変形部41の撓み変形のみにより運動エネルギーEの吸収を行ってもよい。また、第三実施例のペダルストッパ部7に第二実施例で説明した出入孔52を採用してもよい。
【0043】
以上詳述した複数の実施例では、ペダルモジュールとしてのアクセル装置1に本発明のペダルストッパ構造を適用した例を示したが、本発明は、支持部材に回動自在に支持したペダルをその踏込方向とは逆方向に付勢部材で付勢する各種のペダルモジュールに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施例によるアクセル装置の作動を説明するために要部を拡大して示す断面図である。
【図2】本発明の第一実施例によるアクセル装置を示す一部切り欠き側面図である。
【図3】本発明の第一実施例によるアクセル装置を示す一部切り欠き平面図である。
【図4】本発明の第一実施例によるアクセル装置の要部を拡大して示す一部切り欠き平面図である。
【図5】本発明の第一実施例によるアクセル装置の分解斜視図である。
【図6】本発明の第一実施例によるアクセル装置の係止部が正常であるときの様子を示す図であって、図2の要部の拡大図である。
【図7】本発明の第一実施例によるアクセル装置の係止部が破損したときの様子を示す図であって、図6に対応する拡大図である。
【図8】図1(A)のVIII−VIII線断面図である。
【図9】本発明の第二実施例によるアクセル装置の要部を拡大して示す断面図である。
【図10】本発明の第三実施例によるアクセル装置の要部を拡大して示す断面図である。
【図11】従来のアクセル装置の作動を説明するための図であって、(A)は一部切り欠き側面図、(B)は(A)の要部の拡大図である。
【符号の説明】
1,50,60 アクセル装置(ペダルモジュール)
2 アクセルペダル
3 ハウジング(支持部材)
4 第一リターンスプリング(付勢部材)
5 第二リターンスプリング(付勢部材)
7 ペダルストッパ部(ペダルストッパ構造)
11 底板
20 軸部
21 ペダルアーム
22 スプリングロータ
34 補助係止部
36 剛性部材(剛性部)
37 弾性部材(弾性部)
38 当接部
40 ベース部
41 変形部
43,64 空間
44 突起
52 出入孔(出入手段)
O 回動軸線
Claims (10)
- 操作者により踏込操作されるペダルと、前記ペダルを回動自在に支持する支持部材と、前記ペダルの踏込方向とは逆方向に前記ペダルを付勢する付勢部材とを備えるペダルモジュールにおいて、前記付勢部材による付勢方向への前記ペダルの回転を制限するペダルストッパ構造であって、
前記付勢方向に回転する前記ペダルと前記支持部材との間に挟圧されて撓み変形する弾性部と、
前記弾性部よりも高い剛性を有する剛性部であって、前記弾性部が所定量撓んだときに前記ペダルと前記支持部材との間に挟圧されて前記ペダルの前記付勢方向への回転限度を確定する剛性部と、
を備えることを特徴とするペダルストッパ構造。 - 前記弾性部は、それに隣接する空間を形成し、前記ペダルと前記支持部材との間に挟圧されるとき前記空間内に撓んでその空間形状を変化させることを特徴とする請求項1に記載のペダルストッパ構造。
- 前記弾性部の撓み量に応じて前記空間内の空気を出し入れする出入手段をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のペダルストッパ構造。
- 前記弾性部は、前記剛性部の近傍に設けられることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のペダルストッパ構造。
- 前記弾性部及び前記剛性部は、前記支持部材に固定され、前記付勢方向に回転する前記ペダルに当接することで前記ペダルと前記支持部材との間に挟圧されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のペダルストッパ構造。
- 前記弾性部は、前記ペダルに当接する突起を有することを特徴とする請求項5に記載のペダルストッパ構造。
- 前記弾性部及び前記剛性部は、前記ペダルに固定され、前記ペダルの前記付勢方向への回転に伴って前記支持部材に当接することで前記ペダルと前記支持部材との間に挟圧されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のペダルストッパ構造。
- 前記弾性部は、前記支持部材に当接する突起を有することを特徴とする請求項7に記載のペダルストッパ構造。
- 前記ペダルは、車両用アクセルペダルであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のペダルストッパ構造。
- 操作者により踏込操作されるペダルと、
前記ペダルを回動自在に支持する支持部材と、
前記ペダルの踏込方向とは逆方向に前記ペダルを付勢する付勢部材と、
請求項1〜9のいずれか一項に記載のペダルストッパ構造と、
を備えることを特徴とするペダルモジュール。
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