JP2004090727A - 車輪用制振装置 - Google Patents

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濱田 真彰
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Abstract

【課題】ホイールの振動に起因するロードノイズに対して優れた低減効果を発揮し得る、コンパクトで且つ新規な構造の車輪用制振装置を提供すること。
【解決手段】ホイール14の周方向の全周に亘って延びる弾性材で支持部材24を構成し、該支持部材24の径寸法を周上で異ならせて、リム28に密接せしめられて固定的に取り付けられる固定部26と、リム18から径方向に離隔位置せしめられる突出部(28,30)とを、周方向で交互に各複数設けて、かかる複数の突出部に対してマス部28を設けることにより、該突出部30によりマス部28がリム18に対して弾性支持せしめられるようにした
【選択図】 図1

Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、自動車等の車両の車輪に装着されて、車輪から車室に伝播される振動に起因するロードノイズ等を抑えることの出来る、新規な構造の車輪用制振装置と、かかる制振装置を備えた車輪に関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来から、走行中の自動車における振動や騒音の問題の一つとして、車輪からサスペンション機構を経て車室に伝播されるロードノイズが指摘されている。かかるロードノイズは、路面からの入力や、車輪のアンバランス,タイヤやホイールの弾性変形,車輪の空気室内での気柱共鳴(空洞共鳴)等が関係しているものと考えられているが、何れにしても、車輪で生ぜしめられる加振力(振動)がホイールに及ぼされ、ホイールからサスペンション機構を経てボデーに伝達される振動の固体伝播によるところが大きい。
【0003】
そこで、ロードノイズを抑えるための一つの方策として、従来から、例えば特許文献1,2に記載されているように、ホイールにダイナミックダンパを装着して、ホイールの振動を抑えることが提案されている。
【0004】
【特許文献1】
特公昭58−53221号公報
【特許文献2】
実開昭64−50101号公報
【0005】
ところが、これら何れの特許文献に記載のダイナミックダンパにおいても、リムの内周側または外周側にマス金具を離隔配置すると共に、リムとマス金具の径方向対向面間にゴム弾性体を介在せしめて該ゴム弾性体をリムとマス金具の両方に直接に加硫接着せしめた構造とされていることから、ホイールの径方向でゴム弾性体が純圧縮となる一方、ホイールの周方向や軸方向でゴム弾性体が純剪断となることから、ホイールの径方向と軸方向や軸直角方向とのばね比が大きく、ゴム弾性体のチューニング自由度が大幅に制限されてしまって、問題となる周波数域の振動に対して有効な制振効果を得ることが難しい場合があった。
【0006】
しかも、かくの如き従来構造のダイナミックダンパでは、その製造に際して、大型のホイールとマス金具をゴム弾性体の成形型にセットしてゴム弾性体を加硫成形する必要があることから、成形型が大型となり、成形作業が面倒であるという問題もあったのである。
【0007】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、大きな自由度で周波数チューニングすることが可能とされてホイールに対する制振効果をより効果的に得ることが出来る、製造が容易で新規な構造の車輪用制振装置と、かかる車輪用制振装置を用いた車輪を提供することにある。
【0008】
【解決手段】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載され、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0009】
本発明の第一の態様は、車輪のホイールの周方向の全周に亘って延びる弾性材で支持部材を構成し、該支持部材の径寸法を周上で異ならせて、該ホイールのリムに密接せしめられて固定的に取り付けられる固定部と、該リムから径方向に離隔位置せしめられる突出部とを、周方向で交互に各複数設けて、かかる複数の突出部に対してマス部を設けることにより、該突出部により該マス部が該リムに対して弾性支持せしめられるようにした車輪用制振装置を、特徴とする。
【0010】
このような本態様に従う構造とされた車輪用制振装置においては、弾性材の弾性力を巧く利用して支持部材をリムに対して有利に装着することが出来るのであり、しかも、支持部材の弾性を巧く利用してマス部をリムに対して弾性支持せしめることが出来るのである。そして、このように各マス部をマスとし、該マス部を弾性支持せしめる突出部をバネとして、マス−バネ系が構成され得、かかるマス−バネ系によって、主振動系としてのホイールに対する副振動系が有利に構成され得ることとなる。
【0011】
従って、本態様においては、マス−バネ系からなる副振動系が、簡単な構造をもって容易に、リムの周方向で複数形成され得るのであり、それによって、各副振動系による制振効果が全体として効果的に発揮され得ると共に、ホイールの周方向での質量バランスも容易に確保することが出来るのである。なお、複数の副振動系においては、全ての副振動系を略同じ周波数域にチューニングすることも可能であるが、少なくとも一つの副振動系を他の副振動系と異なる周波数域にチューニングしても良く、それによって、より広い周波数域の振動に対して有効な制振効果を得ることが可能となる。
【0012】
そこにおいて、副振動系のバネを構成する突出部は、リムに密接される密接部からの立ち上がり角度を調節することにより、弾性変形態様に剪断成分を適宜に持たせることが出来るのであり、副振動系におけるばね特性のチューニング自由度が大きく確保され得て、制振すべき振動に対して有効な制振効果が容易に実現可能となるのである。
【0013】
さらに、本態様の車輪用制振装置は、ホイールと別体形成されてホイールに装着されることから、ホイールに対してゴム弾性体を直接に加硫接着せしめた従来構造の制振装置に比して製造が容易であると共に、ホイールに装着されるタイヤやホイールが装着される車両等の条件に応じて適当な制振装置を選択して採用したり、装着後に変更したり交換することも可能となるのである。
【0014】
また、本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係る車輪用制振装置において、前記支持部材を、周方向に連続した環状の単一部材からなる弾性材で構成して、該支持部材を拡径方向に弾性変形させることにより前記リムに外挿装着することが出来るようにしたことを、特徴とする。このような本態様の車輪用制振装置においては、取付部材の耐久性や強度を有利に確保しつつ、取付部材の拡径方向への弾性変形量を大きく設定せしめて、ホイールへの装着を、リムを乗り越えて外挿せしめることにより、容易に且つ速やかに行うことが出来るのである。しかも、本態様においては、マス部が、車輪のリムとタイヤの間に形成された空気室内に収容位置せしめられることから、万一、支持部材やマス部が破断した場合等においても、マス部や支持部材の外部空間への飛び出しが防止され得て、有効なフェイルセーフ機能が発揮され得るのである。
【0015】
また、本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に係る車輪用制振装置において、前記支持部材を、前記リムに外挿配置せしめて、該支持部材の弾性に基づいて前記複数の密接部を該リムに密着させるようにしたことを、特徴とする。このような本態様においては、支持部材の弾性を、リムに対して密接部を固定するための力として一層有利に及ぼすことが出来る。しかも、第二の態様と同様に、制振装置が損傷した場合にもマス部等の車輪からの離散が防止され得て、有効なフェイルセーフ機能が発揮され得る。
【0016】
また、本発明の第四の態様は、前記第一乃至第三の何れかの態様に係る車輪用制振装置において、前記支持部材における前記複数の固定部の少なくとも一つを前記リムに固着する固着手段を設けたことを、特徴とする。このような本態様においては、支持部材をホイールのリムに対して一層強固に且つ優れた耐久性をもって固定することが出来るのであり、特に、支持部材における弾性特性のへたりに起因する固定力の低下が固着手段によって補助されて、耐久性と信頼性の向上が有利に図られ得る。なお、固定手段は、カシメやリベット等の他、接着等であっても良い。
【0017】
また、本発明の第五の態様は、前記第一乃至第四の何れかの態様に係る車輪用制振装置において、前記支持部材をゴム弾性体で構成して、該支持部材における前記突出部に、前記マス部をゴム弾性体で一体形成したことを、特徴とする。即ち、本発明に係る車両用制振装置では、支持部材は、ゴム弾性体の他、例えばばね鋼等からなる金属製の板ばねなどを採用することも可能であり、マス部も、支持部材に一体形成したり、別体のマス部を支持部材の突出部に固定することも可能であるが、特に本態様においては、密接部とマス部を併せ備えた支持部材を、ゴム弾性体の一体加硫成形品で構成することが出来ることから、製造が容易であり、目的とする制振装置が極めて簡単な構造をもって実現可能となるのである。
【0018】
また、本発明の第六の態様は、前記第一乃至第四の何れかの態様に係る車輪用制振装置において、前記支持部材を金属製の板ばね材で構成して、該支持部材における前記突出部の周方向中央部分に別体のマス部材を固着することにより前記マス部を形成すると共に、該突出部における該マス部を挟んだ周方向両側部分に対して減衰材を被着せしめたことを、特徴とする。このような本態様においては、支持部材を金属製の板ばね材で構成したことにより、マス−バネ系におけるばね特性のヘタリや温度依存性によるチューニング周波数の変化等に起因する制振効果の低下が抑えられると共に、耐久性や信頼性が有利に確保され得るのであり、しかも、マス−バネ系のばねを構成する突出部に被着した減衰材によって、副振動系における制振効果のチューニング自由度も有利に確保され得る。
【0019】
また、本発明の第七の態様は、前記第一乃至第六の何れかの態様に係る車輪用制振装置において、前記支持部材を前記リムに外挿装着せしめて、前記マス部材を該リムとタイヤの間に形成される空気室内に位置せしめるようにすると共に、該マス部材の表面に多孔質の吸音材を被着せしめたことを、特徴とする。このような本態様においては、上述の如きマス−バネ系からなる副振動系による制振効果に加えて、リムとタイヤの間に形成された空気室内の気柱共鳴のエネルギが吸音材によって吸収低減されることにより、気柱共鳴に起因するロードノイズの低減効果も発揮され得ることとなる。そこにおいて、特に本態様においては、吸音材が、その少なくとも一部において、リムの外周面から離隔して車輪の空気室内に配設されることから、吸音材の外周面だけでなく側面や内周面までも空気室内に露呈させることが出来るのであり、吸音材の空気室内への露出面積が効率的に大きく設定され得て、空気室内に惹起される気柱共鳴の吸音材による低減効果が一層効果的に発揮され得る。しかも、吸音材とリムの間に空隙が形成されることとなり、空気室内に惹起された気柱共鳴による加振力のリムへの伝播が、かかる空隙内の空気層による緩衝作用や、或いは該空気層に惹起される気圧変動の干渉的な相殺作用に基づいて低減され得ることから、気柱共鳴に起因してホイールからサスペンション部材を経て車室内に伝達される固体伝播によるロードノイズがより効果的に抑えられ得るのである。
【0020】
さらに、本発明の第八の態様は、前記第一乃至第七の何れかの態様に係る車輪用制振装置をホイールに装着せしめた車輪を、特徴とする。このような本態様に従う構造とされた車輪においては、従来から採用されているホイールを用いて、ロードノイズの発生が有効に低減せしめられる新規な構造の車輪が、容易に実現可能となるのである。
【0021】
【発明の実施形態】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0022】
先ず、図1には、本発明の第一の実施形態としての車両用制振装置10が、単品で示されていると共に、図2〜4には、かかる制振装置10が、車輪12への装着状態で示されている。ここにおいて、車輪12は、周知の如く、ホイール14に対してタイヤ16が組み付けられることによって構成されており、ホイール14におけるリム18とダイヤ16の間に空気室20が形成されていると共に、ホイール14におけるディスク22の中央部分において、図示しない車軸のハブに対してボルト固定されることにより、自動車に装着されるようになっている。そして、このような車輪12において、本実施形態では、その空気室20に収容配置された状態で、制振装置10が組み付けられている。
【0023】
より詳細には、かかる制振装置10は、全体として略円環形状を有する支持部材24によって構成されている。この支持部材24は、適当なゴム材料によって形成されて周方向に連続して延びる環状の単一部材で構成されており、多少の外力が及ぼされても円環形状を保持し得る程度のばね剛性を有し、全体として略真円形状をもって形成されている。
【0024】
また、支持部材24には、周上の複数箇所(本実施形態では、周方向で等分の4箇所)において、それぞれ、径方向内方に向かって突出する固定部26が形成されている。即ち、これら固定部26は、何れも、支持部材24の内径寸法が周方向で部分的に小さくされて、支持部材24が径方向内方に向かって厚肉とされることによって、支持部材24に一体形成されている。
【0025】
更にまた、支持部材24には、互いに隣接位置する固定部26,26間の各周方向中央部分において、それぞれ、径方向外方に向かって突出するマス部28が形成されている。即ち、これらマス部28は、何れも、支持部材24の外径寸法が周方向で部分的に大きくされて、支持部材24が径方向内方に向かって厚肉とされることによって、支持部材24に一体形成されている。
【0026】
そして、上述の如くして形成された各複数(本実施形態では、各4つ)の固定部26とマス部28が、支持部材24の周方向で互いに所定距離を隔てて交互に形成位置せしめられているのである。また、各隣接する固定部26とマス部28の間は、固定部26の外径寸法とマス部28の内径寸法をもって、全体として薄肉のゴム板形状をもって周方向に延びる弾性連結部30,30とされている。要するに、周方向で隣接位置せしめられた各固定部26と各マス部28は、何れも、周方向において弾性連結部30によって相互に弾性的に且つ一体的に連結されているのである。
【0027】
すなわち、支持部材24は、径方向の肉厚寸法が周方向で変化せしめられており、それによって、内径寸法の小さい厚肉の固定部26と、外径寸法の大きい厚肉のマス部28が、周方向で交互に各複数(本実施形態では、各4つ)形成されていると共に、それら固定部26とマス部28の間には、それぞれ、固定部26と略同じ外径寸法とマス部28と略同じ内径寸法を有する薄肉の弾性連結部30が形成されているのである。
【0028】
なお、支持部材24における軸方向の幅寸法は、周方向の全体に亘って一定でも良いが、周方向に変化させることも可能であり、本実施形態では、図2〜4に示されているように、弾性連結部30の軸方向寸法が最も小さくされていると共に、マス部28の軸方向寸法が最も大きくされており、それらの中間の軸方向寸法をもって固定部26が形成されている。これにより、弾性連結部30の断面積が小さくされてばね特性が調節されていると共に、マス部28の質量が充分に大きく設定されている。
【0029】
そして、このような構造とされた制振装置10は、図2〜4に示されているように、車輪12を構成するホイール14のリム18に対して外挿状態で装着されている。
【0030】
ここにおいて、本実施形態では、支持部材24が全周に亘ってゴム弾性体で形成されていることから、制振装置10に対して周方向の引張力を外力として及ぼすことにより制振装置10の全体を弾性変形させて大径化することが出来る。それ故、制振装置10を大径化させることにより、リム18の軸方向両端縁部に形成された大径のフランジ32を外周側から乗り越えさせて、リム18の中央部分に形成されたウェル34の部位に制振装置10を装着することが可能とされている。なお、特に本実施形態のディスク22では、ウェル34が、ビードシート36に比して充分に小径とされており、それによって、リム18の軸方向中間部分において、外周面に開口する比較的大きな深底環状の配設空間38が形成されている。
【0031】
そして、リム18に外挿された制振装置10は、ウェル34に導かれて、配設空間38に収容状態で装着されている。そこにおいて、制振装置10における支持部材24の固定部26は、外力が及ぼされていない自由状態下での内径寸法:Da(図1参照)が、リム18におけるウェル34の外径寸法:Db(図2参照)よりも小さく設定されており(Da<Db)、それによって、制振装置10をホイール14に外挿装着せしめた状態下では、支持部材24の弾性に基づく縮径方向の力が、常時、リム18に対して及ぼされることとなる。それ故、かかる弾性に基づいて、各固定部26がリム18の周上の複数箇所で径方向に当接せしめられており、かかる当接力に基づいて、支持部材24ひいては制振装置10が、リム18に対して位置固定に取り付けられているのである。
【0032】
なお、この支持部材24の弾性に基づく各固定部26のリム18に対する当接力だけで、制振装置10をリム18に対して固定的に取り付けることは、一般的な条件下において充分に実現可能であるが、固定部26のリム18に対する固定力を補助するために、例えば固定部26の内周面をリム18に対して適当な接着剤や粘着剤で接着や密着補助せしめたり、或いはリベット等で固定するようにしても良い。
【0033】
また、このようにしてホイール14に装着された制振装置10においては、各固定部26がリム18の外周面に対して所定の当接力で密接されている一方、各弾性連結部30と各マス部28は、何れも、周方向の全体に亘って、リム18の外周側に所定距離だけ離隔位置せしめられている。なお、このことから明らかなように、本実施形態では、各マス部28とその周方向両側に形成された弾性連結部30,30によって、全体として、リム18の外周側に離隔位置せしめられる突出部が構成されている。更にまた、何れのマス部28も、弾性連結部30の弾性変形に際しても、その外周面がタイヤ16に当接しないようにタイヤ16から充分に離隔位置せしめられていることは勿論、その内周面だけでなく軸方向両側面においても、リム18に当接しないようにリム18から充分に離隔せしめられている。即ち、マス部28は、弾性連結部30の弾性変形に際してもリム18やタイヤ16への当接が回避され得る状態で、車輪12の空気室20内の中間部分に配設保持されているのである。
【0034】
そして、このようにして装着された制振装置10にあっては、各マス部28が周方向両側で一対の弾性連結部30,30を介して一対の固定部26,26で弾性支持されているのであり、以て、各マス部28をマスとし、一対の弾性連結部30,30をバネとする一振動系が構成されて、これが主振動系たるホイール14に対する副振動系(ダイナミックダンパ)40として機能し得るようにされるのである。
【0035】
従って、上述の如き車両用制振装置10が装着された車輪12においては、自動車の走行時に路面凹凸等に起因して回転中心軸に直交する方向の振動が及ぼされると、それが制振装置10に対して径方向の加振力として作用し、以て、各副振動系に対して加振力として及ぼされることとなる。ぞれ故、マス部28をマスとすると共に弾性連結部30,30をバネとして構成された副振動系40の固有振動数を、ホイール14において問題となる周波数にチューニングすることによって、かかるホイール14において問題となる振動を、かかる副振動系40の制振効果に基づいて有効に抑えることが出来るのである。
【0036】
そこにおいて、かかる副振動系40においては、バネを構成する一対の弾性連結部30,30が、マスを構成するマス部28の系方向変位に際して剪断変形せしめられることから、特にロードノイズとして固体伝播音が問題となり易い数百Hz以下の比較的に低周波数域の振動であって、リム18に惹起される径方向の変形を伴う振動に対しても、マス部28の著しい大型化等を伴うことなく容易にチューニングすることが可能となり、有効な制振効果を得ることが可能となるのである。
【0037】
また、上述の如き構造とされた車両用制振装置10においては、全体として一つの制振装置を装着することにより、複数の副振動系40が構成されることから、大きな制振効果を簡便に得ることが出来るのである。特に、複数の副振動系40に対して互いに同じチューニングを施すことにより、特定の振動に対して一層有効な制振効果を得ることが可能である一方、場合によっては、複数の副振動系40に対して互いに異なるチューニングを施すことにより、複数の乃至は広い周波数域の振動に対して有効な制振効果を得ることが可能となるのであり、大きな設定自由度が実現され得るのである。
【0038】
加えて、本実施形態の車両用制振装置10においては、支持部材24がゴム弾性体で形成されており、弾性的な拡径変形によってフランジ32を乗り越えさせてリム18の外周面に装着することが出来ると共に、その弾性に基づいて固定部26をリム18に対して固定することが出来ることから、ホイール14への装着を容易に且つ安定して行うことが可能であり、取付不良等の問題発生も効果的に回避され得るのである。
【0039】
また、本実施形態の車両用制振装置10においては、全体をゴム弾性体によって一体加硫成形することが出来ることから、製造が容易で低コスト化も図られ得るという利点がある。
【0040】
次に、図5には、本発明の第二の実施形態としての車両用制振装置42が示されていると共に、図6には、かかる車両用制振装置42を備えた車輪44が示されている。なお、以下の実施形態において、前記第一の実施形態と同様な構造とされた部材および部位については、それぞれ、図中に第一の実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。
【0041】
すなわち、本実施形態の車両用制振装置42は、第一の実施形態の制振装置において、各マス部28に対して、ゴム弾性体とは別体のマスブロック45が埋設状態で固着されている。なお、かかるマスブロック45は、支持部材24構成するゴム部材よりも高比重な材料で形成されており、好適には鉄系金属で形成されたものが採用される。このよな本態様においては、マス部28の全体サイズを大型化することなく、マス部28の質量を大きく設定することが出来るのであり、その結果、マス部28の質量ひいては副振動系40の設計自由度の更なる向上が実現され得るのである。
【0042】
また、図7〜9には、本発明の第三の実施形態としての車両用制振装置46を備えた車輪48が示されている。本実施形態の車両用制振装置46おいては、第一の実施形態で採用されていたゴム弾性体によって形成された支持部材24に代えて、ばね鋼等からなる金属製の板ばねによって形成された支持部材50が採用されている。この支持部材50は、扁平の断面形状をもって周方向に延びており、溶接やリベット等で端部が相互に連結されることによって全体として一体的に周方向に連続した環状とされている。また、支持部材50の径寸法は、周方向で周期的に変化せしめられており、それぞれ所定長さで周方向に延びる小径の固定部52と大径のマス部54が、周方向で交互に各複数(本実施形態では、各4つ)形成されている。更にまた、支持部材50の断面形状は、その肉厚寸法を含めて、周方向の全周に亘って略一定とされていても良いが、本実施形態では、マス部54だけが、他の固定部52や弾性連結部53よりも軸方向の幅寸法が大きく設定されている。
【0043】
そして、かかる支持部材50には、各マス部54に対して、外周面を被覆する状態で異なる材質の付加マス55が固着されている。この付加マス55は、マス部54に対して固定的に取り付けられるものであって、目的とする質量を与えるに充分な比重を有するものが採用され得、例えばゴム弾性体であれば、マス部54に対して加硫接着されることによって付加マス55が有利に形成され得るし、或いは金属材であれば、複数に分割したものをマス部54に対して溶着したり、ボルトやリベット、かしめ加工等でマス部54に固着せしめることによって、付加マス55が形成され得る。
【0044】
而して、かくの如き本実施形態の車両用制振装置46は、第一の実施形態と同様に、全体を弾性的に拡径変形せしめてリム18のフランジ32を乗り越えさせることにより、リム18に対して外挿装着されている。そして、かかる装着状態下では、各固定部52が、支持部材50の弾性に基づいてリム18に当接せしめられて密接状態で位置決めされている一方、各マス部54に固着された付加マス55がマスとされると共に、弾性連結部53,53がバネとされて、第一の実施形態と同様に複数の副振動系40が構成されている。
【0045】
従って、このような本実施形態の車両用制振装置46備えた車輪48においても、第一の実施形態と同様な効果が何れも有効に発揮され得るのであり、特に本実施形態では、支持部材50が金属ばね材で形成されていることから、ゴム弾性体で形成された支持部材を採用した場合に比して、ヘタリに起因するリム18への固定力の低下が軽減され得て、より優れた耐久性が実現可能となる。
【0046】
また、本実施形態では、固定部52とマス部54の間に設けられた弾性連結部53が、周方向に傾斜して径方向に延びるように形成されていることから、かかる弾性連結部53におけるばね特性のチューニング自由度が、その傾斜角度を変更することによってより一層大きく確保され得ることとなる。
【0047】
更にまた、かかる弾性連結部53には、図7〜8に示されているように、別体の減衰材56を、弾性変形せしめられる部位の表面に被着形成することも可能であり、それによって、副振動径40におけるバネ成分に減衰を付加せしめて、共振エネルギのピークを抑えることが可能となり、その意味において、制振特性のチューニング自由度の更なる拡張が図られ得る。
【0048】
さらに、図10〜11には、本発明の第四の実施形態とのしての車両用制振装置58と、それを装着せしめた車輪60が示されている。本実施形態の車両用制振装置58おいては、第三の実施形態で採用されていた製品装置46において、そのマス部54を構成する付加マス55を、吸音材62で被覆せしめた構造とされている。
【0049】
かかる吸音材62は、例えば特開昭62−216803号公報や特開平6−106903号公報,特開平9−86112号公報等に記載されている如き従来から公知の多孔質材であって、例えば発泡ウレタンや発泡ゴム、或るいはグラスウール等の繊維質材を適当な接着剤等でブロック状に保持せしめたもの等が採用され得、特に連続気泡を備えたものが好適に採用される。そして、本実施形態では、かかる吸音材62でマス部54の全体が被覆されており、マス部54の実質的に全表面で、即ち内外周面や両側面を含む全面で、吸音材62が、車輪の空気室20内の空間に直接に露呈せしめられている。
【0050】
このような構造とされた本実施形態の車両用制振装置46においては、前記第三の実施形態と同様な効果を有効に発揮し得ることに加えて、マス部54に被着された吸音材62によって、空気室20内に惹起される気柱共鳴の低減効果が発揮され得るのであり、その結果、気柱共鳴に起因するロードノイズに対して有効な低減効果が発揮され得るのである。しかも、かかる吸音材62は、外周面だけでなく内周面を含めて広い面積が空気室20内に露呈されていることから、目的とする気柱共鳴に対する低減効果が極めて効率的に発揮され得ると共に、マス部54とリム18の間に空隙64が形成されていることから、この空隙64によっても、空気室20に惹起される気柱共鳴に対する緩衝作用や、そこに生ぜしめられる空気圧変動による干渉的な相殺作用に基づいて、一層優れたロードロイズの低減効果が発揮され得るのである。
【0051】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって何等限定的に解釈されるものでなく、また、そのような実施形態が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【0052】
例えば、前記実施形態では、何れも、周方向に連続した単体構造からなる環状の支持部材24,50が採用されていたが、周方向の一カ所、或いは複数箇所で係合/離脱可能に連結された、周方向に分断構造を有する支持部材を採用することも可能である。即ち、周方向での分断構造を有する支持部材を採用するに際しては、例えば、図12に示されているような一対のフック形状の係止部70,72からなる係止構造等をはじめ、特開平6−106903号公報や特開平9−86112号公報等に記載されている如き公知の各種の係止構造を用いて、支持部材が分断部位において適宜に連結され得、それによって、全体として環状の支持部材が構成され得るのである。
【0053】
更にまた、前記実施形態では、何れも、車両用制振装置10,42,46,58がホイール14におけるリム18の外周面に外挿されて外嵌装着されていたが、それに代えて、リム18の内周面に嵌着せしめて装着することも可能であり、それによって、前記実施形態と同様な制振効果が発揮され得る。なお、その場合には、固定部の外径寸法を、マス部や弾性連結部の外径寸法よりも大きくすることにより、固定部の外周面をリム18の内周面に対して当接させて密着固定するようにされる。具体的には、例えば、図1に示された第一の実施形態に係る車両用制振装置10において、その各マス部28を固定部として用いる一方、各固定部26をマス部として用い、該各マス部28の外周面においてリム18の内周面に当接させて密着固定せしめることによって、リム18の内周面に装着される車両用制振装置が実現可能となる。なお、リム18の外周面に車両用制振装置を外挿せしめて車輪の空気室20内に収容配置せしめる際には、万一、弾性連結部30等が破断しても、マス部28の外部への離散がタイヤ16によって防止され得るが、リム18の内周面に車両用制振装置を内挿せしめて装着する場合には、適当なフェイルセーフ機構を付与して、破損時におけるマス部の外部への離散を防止することが望ましい。
【0054】
【発明の効果】
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされた車両用制振装置および車輪においては、何れも、マスの車輪径方向への変位に際して剪断変形成分をもって弾性変形せしめられるバネを備えた副振動系が有利に実現され得るのであり、それ故、かかる副振動系におけるチューニング自由度が有利に確保され得るのである。
【0055】
しかも、複数の副振動系が、周方向で相互に離隔して適当な重量バランスを確保しつつ、簡単な構造をもって容易に実現され得るのであり、それら複数の副振動系のそれぞれのチューニングによって、全体として一層大きなチューニング自由度が実現され得るのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施形態としての車両用制振装置を示す正面図である。
【図2】図1に示された車両用制振装置を装着した車輪を示す、図1におけるII−II断面に相当する横断面図である。
【図3】図1に示された車両用制振装置を装着した車輪を示す、図1におけるIII −III 断面に相当する横断面図である。
【図4】図1に示された車両用制振装置を装着した車輪を示す、図1におけるIV−IV断面に相当する横断面図である。
【図5】本発明の第二の実施形態としての車両用制振装置を装着した車輪を示す正面図である。
【図6】図5に示された車両用制振装置を装着した車輪を示す、図5におけるVI−VI断面に相当する横断面図である。
【図7】本発明の第三の実施形態としての車両用制振装置を示す正面図である。
【図8】図7に示された車両用制振装置を装着した車輪を示す、図7におけるVIII−VIII断面に相当する横断面図である。
【図9】図7に示された車両用制振装置を装着した車輪を示す、図7におけるIX−IX断面に相当する横断面図である。
【図10】本発明の第四の実施形態としての車両用制振装置を示す正面図である。
【図11】図10に示された車両用制振装置を装着した車輪を示す、図10におけるXI−XI断面に相当する横断面図である。
【図12】本発明の更に別の実施形態として、周方向に分断された支持部材を採用するに際しての支持部材における周方向の連結構造の一具体例を示す斜視図である。
【符号の説明】
10 車両用制振装置
12 車輪
14 ホイール
16 タイヤ
18 リム
20 空気室
24 支持部材
26 固定部
28 マス部
30 弾性連結部
40 副振動系
42 車両用制振装置
44 車輪
45 マスブロック
46 車両用制振装置
48 車輪
50 支持部材
52 固定部
53 弾性連結部
54 マス部
55 付加マス
58 車両用制振装置
60 車輪

Claims (8)

  1. 車輪のホイールの周方向の全周に亘って延びる弾性材で支持部材を構成し、該支持部材の径寸法を周上で異ならせて、該ホイールのリムに密接せしめられて固定的に取り付けられる固定部と、該リムから径方向に離隔位置せしめられる突出部とを、周方向で交互に各複数設けて、かかる複数の突出部に対してマス部を設けることにより、該突出部により該マス部が該リムに対して弾性支持せしめられるようにしたことを特徴とする車輪用制振装置。
  2. 前記支持部材を、周方向に連続した環状の単一部材からなる弾性材で構成して、該支持部材を拡径方向に弾性変形させることにより前記リムに外挿装着することが出来るようにした請求項1に記載の車輪用制振装置。
  3. 前記支持部材を、前記リムに外挿配置せしめて、該支持部材の弾性に基づいて前記複数の密接部を該リムに密着させるようにした請求項1又は2に記載の車輪用制振装置。
  4. 前記支持部材における前記複数の固定部の少なくとも一つを前記リムに固着する固着手段を設けた請求項1乃至3の何れかに記載の車輪用制振装置。
  5. 前記支持部材をゴム弾性体で構成して、該支持部材における前記突出部に、前記マス部をゴム弾性体で一体形成した請求項1乃至4の何れかに記載の車輪用制振装置。
  6. 前記支持部材を金属製の板ばね材で構成して、該支持部材における前記突出部の周方向中央部分に別体のマス部材を固着することにより前記マス部を形成すると共に、該突出部における該マス部を挟んだ周方向両側部分に対して減衰材を被着せしめた請求項1乃至4の何れかに記載の車輪用制振装置。
  7. 前記支持部材を前記リムに外挿装着せしめて、前記マス部材を該リムとタイヤの間に形成される空気室内に位置せしめるようにすると共に、該マス部材の表面に多孔質の吸音材を被着せしめた請求項1乃至6の何れかに記載の車輪用制振装置。
  8. 請求項1乃至7の何れかに記載の車輪用制振装置をホイールに装着せしめたことを特徴とする車輪。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2014201205A (ja) * 2013-04-04 2014-10-27 三菱自動車工業株式会社 車両の車輪構造
US10632790B2 (en) 2014-09-12 2020-04-28 Bridgestone Corporation Pneumatic tire
US11505012B2 (en) * 2018-05-08 2022-11-22 Honda Motor Co., Ltd. Vehicle wheel

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