JP2004090520A - タイヤ加硫方法および装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ブラダ34とチャック58との周方向相対位置を加硫の度に変更可能とすることで、ブラダ34の割れ発生を効果的に防止する。
【解決手段】エジェクター49の上側分割片41に対し下側分割片47を回転可能に連結したので、上モールド23の下モールドに対する接近・離隔時等に生じる振動により下側分割片47、チャック58が上側分割片41に対して一体的に回転する。これにより、チャック58のブラダ34に対する周方向相対位置が加硫の度に変化して、チャック58間の継ぎ目には毎回異なった部位のブラダ34表面が対向するようになり、ブラダ34の表面には継ぎ目痕がかすかに周方向に分散して形成されるだけとなる。
【選択図】  図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、非加硫時にブラダをバグウェル内に押し込んでおくタイヤ加硫方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、前述のようなタイヤ加硫装置としては、例えば、グリーンタイヤが載置される下モールドと、少なくとも前記下モールドおよび該下モールドに対して接近離隔可能な上モールドからなり、閉止されたとき、内部にグリーンタイヤを密閉収納する加硫金型と、下モールドに設けられ上端が開口したバグウェルと、上モールドに上下動可能に支持されたエジェクターと、該エジェクターの直下において周方向に並べて設けられ、半径方向に移動可能な複数のチャックと、バグウェルの上端部に固定され、内部に加硫媒体が供給されて膨張したとき、前記グリーンタイヤの内周およびチャックの下面に密着するブラダと、前記エジェクターに上下動可能に支持され、下方に突出したとき、加硫媒体が排出されているブラダを加硫済みタイヤ内から押出してバグウェル内に押し込むラムロッドとを備えたものが知られている。
【0003】
そして、このようなタイヤ加硫装置を用いてグリーンタイヤを加硫する場合には、まず、グリーンタイヤを搬入して下モールド上に載置した後、上モールドを下モールドに対して接近させることにより、加硫金型を閉止して該加硫金型内にグリーンタイヤを密閉収納する。次に、ブラダの内部に加硫媒体を供給して膨張させることにより、該ブラダを、チャックの下面に密着させるとともに、グリーンタイヤの内周に密着させ、該グリーンタイヤを加硫する。その後、ラムロッドを下方に突出させることにより、加硫媒体が排出されているブラダを加硫済みタイヤ内から押出してバグウェル内に押し込むとともに、上モールドを下モールドから離隔させるようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のタイヤ加硫方法・装置にあっては、チャックの周方向位置が常に一定であるため、加硫の度にブラダの同一位置がチャック間の継ぎ目(半径方向に延びる狭い間隙)に対向し、これにより、該対向している部位のブラダが部分的に硬化して継ぎ目痕が形成される。そして、このような継ぎ目痕が繰り返し加硫により拡大されてくると、ブラダが収縮してバグウェル内に押し込まれる度に、前記継ぎ目痕が山折れ線となって縦しわが形成され、これにより、該縦しわの部位に割れが発生して破損してしまうことがあるという問題点がある。
【0005】
この発明は、ブラダとチャックとの周方向相対位置を加硫の度に変更可能とすることで、ブラダの割れ発生を効果的に防止することができるタイヤ加硫方法および装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、第1に、グリーンタイヤを搬入して下モールド上に載置する工程と、上モールドを下モールドに対して接近させることにより、少なくとも下、上モールドからなる加硫金型を閉止し、該加硫金型内にグリーンタイヤを密閉収納する工程と、ブラダの内部に加硫媒体を供給して膨張させ、該ブラダを前記グリーンタイヤの内周および、上モールドに上下動可能に支持されたエジェクターの直下に周方向に並べて設けられ半径方向に移動可能な複数のチャックの下面に密着させることにより、前記グリーンタイヤを加硫する工程と、エジェクターに支持されたラムロッドを下方に突出させることにより、加硫媒体が排出されているブラダを加硫済みタイヤ内から押出して、下モールドに設けられ上端が開口したバグウェル内に押し込むとともに、上モールドを下モールドから離隔させる工程とを備えたタイヤ加硫方法において、上側分割片と、前記チャックが設けられるとともに、上側分割片に対して回転可能に連結された下側分割片とに上下に2分割されたエジェクターの下側分割片を、上モールドの下モールドに対する接近離隔時等に発生する振動により、上側分割片に対してチャックと一体的に回転させるようにしたタイヤ加硫方法により達成することができ、
【0007】
第2に、グリーンタイヤが載置される下モールドと、少なくとも前記下モールドおよび該下モールドに対して接近離隔可能な上モールドからなり、閉止されたとき、内部にグリーンタイヤを密閉収納する加硫金型と、下モールドに設けられ上端が開口したバグウェルと、上モールドに上下動可能に支持されたエジェクターと、該エジェクターの直下において周方向に並べて設けられ、半径方向に移動可能な複数のチャックと、内部に加硫媒体が供給されて膨張したとき、前記グリーンタイヤの内周およびチャックの下面に密着してグリーンタイヤを加硫するブラダと、前記エジェクターに上下動可能に支持され、下方に突出したとき、加硫媒体が排出されているブラダを加硫済みタイヤ内から押出してバグウェル内に押し込むラムロッドとを備えたタイヤ加硫装置において、前記エジェクターを上側分割片と前記チャックが設けられた下側分割片とに上下に2分割するとともに、上側分割片に対して下側分割片が回転できるよう両者を連結し、上モールドの下モールドに対する接近離隔時等に発生する振動により下側分割片、チャックを上側分割片に対して一体的に回転させるようにしたタイヤ加硫装置により達成することができる。
【0008】
この発明においては、前述のようにエジェクターを上側分割片とチャックが設けられた下側分割片とに上下に2分割するとともに、上側分割片に対して下側分割片が回転できるよう両者を連結したので、上モールドの下モールドに対する接近時あるいは離隔時等に発生する振動により下側分割片、チャックが上側分割片に対して一体的に回転する。
【0009】
これにより、チャックの周方向位置(ブラダに対する周方向相対位置)が加硫の度(上モールドの接近離隔等の度)に変化して、チャック間の継ぎ目には毎回異なった部位のブラダ表面が対向するようになり、ブラダの表面には継ぎ目痕がかすかに周方向に分散して形成されるだけとなる。この結果、バグウェル内にブラダが繰り返し押し込まれても、継ぎ目痕に基づくブラダの縦しわ、割れ発生を効果的に防止することができる。
【0010】
また、請求項3に記載のように構成すれば、下側分割片、チャックの上側分割片に対する回転が確実となり、ブラダの縦しわ、割れ発生を確実に防止することができる。
さらに、請求項4に記載のように構成すれば、構造簡単でかつ安価でありながら下側分割片、チャックを確実に回転させることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1において、11はタイヤ加硫装置であり、このタイヤ加硫装置11は下プラテンを含む下基台12を有し、この下基台12上にはグリーンタイヤGが横置きで載置される下モールド13が固定されている。そして、この下モールド13の半径方向内側部上面には、主にグリーンタイヤGの下側サイドウォール部を型付けする型付け面が形成されている。
【0012】
18は下基台12の上方に設置された昇降および横行が可能な上基台であり、この上基台18は図示していない昇降手段から移動力を付与されることで昇降し、下基台12に対し離隔、接近する。20は上基台18の直下に設置され上プラテンとしても機能するコンテナプレートであり、このコンテナプレート20には前記上基台18に取り付けられたシリンダ(図示せず)のピストンロッド21の先端(下端)が連結されている。この結果、前記シリンダが作動すると、コンテナプレート20は上基台18と別個に昇降することができる。
【0013】
このコンテナプレート20の下面には上モールド23が固定され、この上モールド23の半径方向内側部下面には、主にグリーンタイヤGの上側サイドウォール部を型付けする型付け面が形成されている。そして、この上モールド23は上基台18またはコンテナプレート20の少なくともいずれか一方が下降・上昇することで、前記下モールド13に接近離隔する。
【0014】
25はコンテナプレート20を半径方向外側から囲むよう設置されたアウターリングであり、このアウターリング25の上端は前記上基台18の半径方向外端部に固定されている。このアウターリング25は前記コンテナプレート20と同軸で、その内周には上方に向かうに従い半径方向内側に傾斜した(先細りとなった円錐台状の)傾斜面25aが形成されている。
【0015】
28は下モールド13と上モールド23との間に周方向に並べられて配置された複数、ここでは9個の弧状をしたセクターモールドであり、これらのセクターモールド28の外周には前記アウターリング25の傾斜面25aと同一勾配の傾斜面28aが形成され、これらの傾斜面28aと前記傾斜面25aとはあり継手によって連結されながら摺動可能に係合している。また、これらセクターモールド28の半径方向内端面には、主にグリーンタイヤGのトレッド部を型付けする型付け面が形成されている。
【0016】
そして、下、上モールド13、23によりこれらセクターモールド28が両側から挟持されているとき、上基台18、アウターリング25が一体となって下降すると、全てのセクターモールド28は前記傾斜面25a、28aの楔作用により半径方向内側限まで同期して移動し、これにより、セクターモールド28はその周方向両端同士が密着して連続リング状となる。
【0017】
このとき、少なくとも下、上モールド13、23からなる、この実施形態においては、下、上モールド13、23に加えセクターモールド28からなる加硫金型29は閉止し、内部にグリーンタイヤGを密閉収納するドーナツ状の加硫空間Kを形成するとともに、下、上モールド13、23およびセクターモールド28の型付け面は連続してグリーンタイヤGの外形形状を規定する型付け面30を構成する。
【0018】
33は下モールド13と同軸でこれを貫通するよう設けられたバグウェルであり、このバグウェル33は上端が開口した有底円筒状を呈するとともに、上端部外周が下モールド13の中央部内周に固定されている。34は境界近傍の下モールド13、バグウェル33に開口端が気密状態で取付けられた屈曲可能なブラダであり、このブラダ34は前記バグウェル33の底壁に設けられた給排通路35を通じて加硫媒体がバグウェル33に供給されると、グリーンタイヤG内においてドーナツ状に膨張し、一方、前記給排通路35を通じて加硫媒体が排出されると、収縮する。
【0019】
図1、2、3において、38は上基台18、コンテナプレート20、上モールド23を貫通し上下方向に延びるエジェクターチューブであり、このエジェクターチューブ38は前記バグウェル33と同軸で略円筒状を呈している。前記エジェクターチューブ38の下端部外周には周方向に等距離離れた複数の弧状突起39が形成されている。そして、このエジェクターチューブ38は上基台18に設けられた図示していないシリンダの作動により上下動する。
【0020】
41は上モールド23の中央部に挿入された略リング状の上側分割片であり、この上側分割片41の上端部内周には周方向に等距離離れ、前記弧状突起39と同数の弧状突起42が形成されている。そして、前記弧状突起42が弧状突起39間を通り抜けるまで上昇した後、エジェクターチューブ38に対して上側分割片41が弧状突起39の周方向長だけ回転すると、バヨネット継手を構成するこれら弧状突起42、39は上下に重なり合ってエジェクターチューブ38に上側分割片41(後述のエジェクター49)を着脱可能に連結する。また、この上側分割片41の下端部内周には円周方向に連続して延びる環状溝44が形成されている。
【0021】
47は前記上側分割片41の直下に配置された略リング状の下側分割片であり、この下側分割片47の上端部には断面が略L字形をした環状の係合フランジ48が形成され、この形状フランジ48の先端部は前記上側分割片41の環状溝44に挿入されている。この結果、下側分割片47は上側分割片41に対して回転できるよう連結される。
【0022】
前述した上、下側分割片41、47は全体として、エジェクター49を構成するが、このエジェクター49は前述のように上側分割片41と下側分割片47とに上下に2分割されているのである。そして、このエジェクター49は前記エジェクターチューブ38を介して上モールド23に上下動可能に支持されている。
【0023】
前記下側分割片47の上下方向中央部には半径方向に貫通した複数(例えば、4個または6個)のスリット51が形成され、これらのスリット51は周方向に等距離離れて配置されている。各スリット51には2本の第1、第2アーム52、53をV字形に連結した第1リンク54が収納され、この第1リンク54は第1、第2アーム52、53の連結部を貫通するピン55を介して下側分割片47に揺動可能に支持されている。
【0024】
56は第2アーム53と平行で上端部がピン57を介して下側分割片47に揺動可能に支持された第2リンクであり、これら第2リンク56の下端部および前記第2アーム53の下端部にはそれぞれ、前記エジェクター49の直下に配置された水平な複数(スリット51と同数)のチャック58がピン59、60を介して回動可能に連結されている。ここで、各チャック58は扇形を呈するとともに、周方向に等距離離れて並べられている。
【0025】
そして、これらチャック58は、前述した平行リンク、即ち、第1、第2リンク54、56が同期して揺動すると、半径方向に、ここでは、図2に実線で示す半径方向内側限と仮想線で示す半径方向外側限との間を移動する。また、これらチャック58は、前述した半径方向内側限まで移動したとき、相互に僅かな間隙を形成しながら中空円板状を呈し、一方、半径方向外側限まで移動したとき、その半径方向外側部がタイヤの上側ビード部に重なり合う。
【0026】
前記下側分割片47の係合フランジ48の上面には多数のラチェット歯62が形成され、これらのラチェット歯62は同一円上に並べて配置されている。63は上側分割片41の周上1箇所に形成された凹みであり、この凹み63には先端に前記ラチェット歯62に係合する爪部64aが設けられたラチェット爪64が収納されている。そして、このラチェット爪64の基端部には前記上側分割片41に固定されたピン65が挿入され、これにより、該ラチェット爪64は上側分割片41に揺動可能に支持されることになる。
【0027】
そして、前記ラチェット爪64は、自重により下方に揺動してその爪部64aがラチェット歯62に係合している場合には、上側分割片41に対する下側分割片47の一方向回転(図3において矢印方向)のみを許容し、他方向(前記一方向と逆方向)への回転を禁止する。前述したラチェット歯62、ラチェット爪64は全体として、エジェクター49の上側分割片41と下側分割片47との間に設けられ、下側分割片47の一方向回転のみを許容する一方向回転機構67を構成する。
【0028】
また、前述のような一方向回転機構67を設ければ、下側分割片47、チャック58の上側分割片41に対する回転が確実となり、ブラダ34の縦しわ、割れ発生を確実に防止することができる。そして、このような一方向回転機構67を前述したラチェット歯62、ラチェット爪64から構成するようにすれば、構造簡単でかつ安価としながら下側分割片47、チャック58を確実に回転させることができる。
【0029】
70は前記エジェクターチューブ38内に摺動可能に挿入された上下方向に延びる昇降ロッドであり、この昇降ロッド70の上端はエジェクターチューブ38の上端部に取付けられた図示していないラムシリンダのピストンロッドの先端に連結されている。この結果、前記ラムシリンダが作動すると、昇降ロッド70はエジェクターチューブ38内を昇降する。
【0030】
この昇降ロッド70の下端には該昇降ロッド70と同軸でこれより小径の中間ロッド71が一体形成され、この中間ロッド71の下端には前記昇降ロッド70と同軸のラムノーズ72が一体形成されている。前記ラムノーズ72の先端部(下端部)は略半球状を呈し、ブラダ34に接触したとき、該ブラダ34を傷付けないようになっている。また、前記ラムノーズ72の基端部(上端部)には上方に向かうに従い大径となるフランジ部72aが形成され、このフランジ部72aの最大径は前記昇降ロッド70の外径より大径である。
【0031】
そして、前記ラムシリンダのピストンロッドがストロークエンドまで引っ込んでいるときには、ラムノーズ72は略下半分がチャック58より下方に突出している。一方、前記ラムシリンダのピストンロッドが突出して昇降ロッド70、ラムノーズ72が下降すると、加硫媒体が排出されているブラダ34は、該ラムノーズ72により下方に押し下げられバグウェル33内に押し込まれる。
【0032】
前述した昇降ロッド70、中間ロッド71、ラムノーズ72は全体として、前記エジェクターチューブ38、エジェクター49に上下動可能に支持され、下方に突出したとき、加硫媒体が排出されているブラダ34を加硫済みタイヤT内から押出してバグウェル33内に押し込むラムロッド74を構成する。
【0033】
77は各第1アーム52の先端に回転可能に支持されたローラであり、これらのローラ77は前記ラムロッド74が突出(下降)しているときには、昇降ロッド70の外周に押されて、図2に実線で示す位置から仮想線で示す位置まで半径方向外側に移動し、第1リンク54をピン55を中心に半径方向外側に同期揺動させる。一方、前記ラムロッド74が引っ込む(上昇する)と、前記ローラ77はラムノーズ72のフランジ部72aの上端面(段差)により押されて図2に仮想線で示す位置から実線で示す位置(中間ロッド71の外周に接触する位置)まで半径方向内側に移動され、第1リンク54を半径方向内側に同期揺動させる。
【0034】
次に、この発明の一実施形態の作用について説明する。
前述した加硫装置11を用いてグリーンタイヤGを加硫する場合には、加硫金型29が開放されているとき、図4に示すようなローダ80の支持部材81によって上側ビード部を内側から支持しながら、グリーンタイヤGを加硫装置11に搬入し下モールド13上に横置きで載置する。このとき、ブラダ34はバグウェル33内に押し込まれており、一方、チャック58は半径方向内側限で停止し、ラムノーズ72は略下半分がチャック58から下方に突出している。
【0035】
次に、支持部材81をグリーンタイヤGから離脱させた後、ローダ80を待機位置まで移動させる。このとき、給排通路35を通じてバグウェル33、ブラダ34内に低圧の加硫媒体を供給し、ブラダ34をグリーンタイヤG内に侵入させながら若干膨張させる。
【0036】
次に、上基台18、アウターリング25、上基台18に接触しているコンテナプレート20、上モールド23、アウターリング25の下端部から垂下しているセクターモールド28、エジェクターチューブ38、エジェクター49、チャック58を一体的に下降させ、これらを下モールド13に対して接近させる。そして、この下降は、セクターモールド28の下端が下モールド13に当接したとき、停止する。次に、シリンダを作動してピストンロッド21を突出させ、コンテナプレート20、エジェクターチューブ38を一体的に上モールド23がセクターモールド28の上端に当接するまで下降させる。
【0037】
その後、シリンダのピストンロッド21を引っ込ませながら上基台18、アウターリング25を一体的に下降させると、各セクターモールド28は下、上モールド13、23により挟持されながら傾斜面25a、28aの楔作用により押されて半径方向内側に同期移動する。そして、これらセクターモールド28が半径方向内側限に到達すると、これらセクターモールド28は周方向両端同士が密着し、加硫金型29が閉止される。
【0038】
これにより、グリーンタイヤGは加硫金型29の加硫空間K内に密閉収納されるとともに、下、上モールド13、23およびセクターモールド28の型付け面は連続して型付け面30を構成する。このとき、上基台18とコンテナプレート20とは密着する。
【0039】
次に、給排通路35を通じてバグウェル33、ブラダ34の内部に高温、高圧の加硫媒体を供給し、ブラダ34をグリーンタイヤG内においてドーナツ状に膨張させる。この結果、該ブラダ34はグリーンタイヤGの内周に密着し、該グリーンタイヤGを型付け面40により型付けしながら加硫する。このとき、ブラダ34はチャック58の下面も密着するため、チャック58間の継ぎ目(半径方向に延びる狭い間隙)に対向している部位のブラダ34の外表面には硬化した継ぎ目痕がうっすらと形成される。
【0040】
このようにしてグリーンタイヤGが加硫され加硫済みタイヤTとなると、給排通路35を通じてバグウェル33、ブラダ34内の加硫媒体を排出し、ブラダ34を収縮させるとともに、シリンダの作動によりエジェクターチューブ38、エジェクター49、チャック58を一体的に若干量だけ下降させる。その後、ラムシリンダのピストンロッドを突出してラムロッド74を下方に突出(下降)させる。これにより、加硫媒体が排出されているブラダ34はラムノーズ72により加硫済みタイヤT内から押出されてバグウェル33内に押し込まれる。
【0041】
また、このようなラムロッド74の下降により、第1アーム52のローラ77は昇降ロッド70の外周に押されて半径方向外側に移動し、第1リンク54を半径方向外側に同期揺動させる。この結果、第1、第2リンク54、56は同期して半径方向外側に同期揺動し、チャック58はその半径方向外端部が加硫済みタイヤTの上側ビード部の直下に位置する半径方向外側限まで移動する。次に、シリンダの作動によりエジェクターチューブ38、エジェクター49、チャック58を一体的に若干量だけ上昇させ、加硫済みタイヤTの上側ビード部を上モールド23とチャック58の半径方向外端部とで上下から挟持する。
【0042】
次に、シリンダのピストンロッド21を突出させながら上基台18、アウターリング25を一体的に上昇させ、セクターモールド28を傾斜面25a、28aの楔作用により半径方向外側限まで同期移動させる。次に、上基台18、アウターリング25、コンテナプレート20、上モールド23、セクターモールド28、エジェクターチューブ38、エジェクター49、チャック58および加硫済みタイヤTを、図5に示すように一体的に上昇させる。
【0043】
次に、これらを横行させて加硫済みタイヤTを搬送コンベアの直上まで搬送した後、ラムシリンダのピストンロッドを初期位置まで引っ込め、ラムロッド74を上昇限まで上昇させる(引っ込ませる)。これにより、ローラ77はラムノーズ72のフランジ部72aの上端面(段差)により押されて中間ロッド71の外周に接触するまで半径方向内側に移動し、第1、第2リンク54、56を半径方向内側に同期揺動させる。この結果、チャック58は半径方向内側限まで同期移動し、加硫済みタイヤTがチャック58から離脱して搬送コンベア上に落下、移載される。
【0044】
次に、前記上基台18等を横行させて下基台12の直上に復帰させるとともに、シリンダのピストンロッド21を引っ込めてコンテナプレート20を上基台18に密着させる。以上が、この実施形態の作用の1サイクルであり、このようなサイクルが繰り返し行われる。
【0045】
ここで、前述した上モールド23の下モールド13に対する接近、離隔時および上基台18の横行時には、上モールド23、エジェクター49には振動が発生するが、前述のように上側分割片41と下側分割片47とが回転可能に連結されているため、このような振動により下側分割片47、チャック58は上側分割片41に対して一体的に回転する。そして、このような回転は、上側分割片41と下側分割片47との間にラチェット歯62、ラチェット爪64からなる一方向回転機構67が設けられているので、より確実となる。
【0046】
これにより、チャック58の周方向位置(ブラダ34に対する周方向相対位置)が加硫の度(上モールド23の接近離隔等の度)に変化して、チャック58間の継ぎ目には毎回異なった部位のブラダ34表面が対向するようになり、ブラダ34の表面には継ぎ目痕がかすかに周方向に分散して形成されるだけとなる。この結果、繰り返しの加硫作業によりバグウェル33内にブラダ34が繰り返し押し込まれても、継ぎ目痕に基づくブラダ34の縦しわ、割れ発生を効果的に防止することができる。
【0047】
また、加硫すべきグリーンタイヤGのサイズに変更があった場合には、エジェクター49、チャック58を回転させてエジェクターチューブ38から抜き出した後、適合サイズのエジェクター49、チャック58をバヨネット継手によりエジェクターチューブ38に連結する。なお、このとき、下、上モールド13、23およびセクターモールド28も適合サイズのものに交換する。
【0048】
なお、前述の実施形態においては、上、下側分割片41、47間に一方向回転機構67を設置したが、この発明においては、このような一方向回転機構を省略してもよい。さらに、前述の実施形態においては、下、上モールド13、23およびセクターモールド28によって加硫金型29を構成するようにしたが、この発明においては、下、上モールドのみによって加硫金型を構成するようにしてもよい。
【0049】
また、前述の実施形態においては、余分な空間がないため、簡単な構造の一方向回転機構67を設置するようにしたが、必要な空間を確保できる場合には、例えば、下側分割片に内歯車を形成するとともに、上側分割片に該内歯車に噛み合う外歯車が設けられたモータを設置し、下側分割片、チャックを強制的に回転させるようにしてもよい。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、ブラダとチャックとの周方向相対位置を加硫の度に変更可能とすることで、ブラダの割れ発生を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態を示す加硫時の正面断面図である。
【図2】エジェクター近傍の正面断面図である。
【図3】図2のI−I矢視断面図である。
【図4】作動状態を説明する図1と同様の正面断面図である。
【図5】作動状態を説明する図1と同様の正面断面図である。
【符号の説明】
11…タイヤ加硫装置     13…下モールド
23…上モールド       29…加硫金型
33…バグウェル       34…ブラダ
41…上側分割片       47…下側分割片
49…エジェクター      58…チャック
62…ラチェット歯      64…ラチェット爪
67…一方向回転機構     74…ラムロッド
G…グリーンタイヤ

Claims (4)

  1. グリーンタイヤを搬入して下モールド上に載置する工程と、上モールドを下モールドに対して接近させることにより、少なくとも下、上モールドからなる加硫金型を閉止し、該加硫金型内にグリーンタイヤを密閉収納する工程と、ブラダの内部に加硫媒体を供給して膨張させ、該ブラダを前記グリーンタイヤの内周および、上モールドに上下動可能に支持されたエジェクターの直下に周方向に並べて設けられ半径方向に移動可能な複数のチャックの下面に密着させることにより、前記グリーンタイヤを加硫する工程と、エジェクターに支持されたラムロッドを下方に突出させることにより、加硫媒体が排出されているブラダを加硫済みタイヤ内から押出して、下モールドに設けられ上端が開口したバグウェル内に押し込むとともに、上モールドを下モールドから離隔させる工程とを備えたタイヤ加硫方法において、上側分割片と、前記チャックが設けられるとともに、上側分割片に対して回転可能に連結された下側分割片とに上下に2分割されたエジェクターの下側分割片を、上モールドの下モールドに対する接近離隔時等に発生する振動により、上側分割片に対してチャックと一体的に回転させるようにしたことを特徴とするタイヤ加硫方法。
  2. グリーンタイヤが載置される下モールドと、少なくとも前記下モールドおよび該下モールドに対して接近離隔可能な上モールドからなり、閉止されたとき、内部にグリーンタイヤを密閉収納する加硫金型と、下モールドに設けられ上端が開口したバグウェルと、上モールドに上下動可能に支持されたエジェクターと、該エジェクターの直下において周方向に並べて設けられ、半径方向に移動可能な複数のチャックと、内部に加硫媒体が供給されて膨張したとき、前記グリーンタイヤの内周およびチャックの下面に密着してグリーンタイヤを加硫するブラダと、前記エジェクターに上下動可能に支持され、下方に突出したとき、加硫媒体が排出されているブラダを加硫済みタイヤ内から押出してバグウェル内に押し込むラムロッドとを備えたタイヤ加硫装置において、前記エジェクターを上側分割片と前記チャックが設けられた下側分割片とに上下に2分割するとともに、上側分割片に対して下側分割片が回転できるよう両者を連結し、上モールドの下モールドに対する接近離隔時等に発生する振動により下側分割片、チャックを上側分割片に対して一体的に回転させるようにしたことを特徴とするタイヤ加硫装置。
  3. 前記エジェクターの上側分割片と下側分割片との間に、下側分割片の一方向回転のみを許容する一方向回転機構を設けた請求項2記載のタイヤ加硫装置。
  4. 前記一方向回転機構は、エジェクターの下側分割片上面に形成されたラチェット歯と、上側分割片に揺動可能に支持されたラチェット爪とから構成されている請求項3記載のタイヤ加硫装置。
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JP2020093398A (ja) * 2018-12-10 2020-06-18 住友ゴム工業株式会社 タイヤ加硫装置

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