JP2004089363A - ゴルフボールおよびその製造方法 - Google Patents
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- A63B45/00—Apparatus or methods for manufacturing balls
- A63B45/02—Marking of balls
Abstract
【課題】本発明により、マーキングの印刷に際して下塗り処理を必要とせず、ゴルフボール本体表面に直接印刷することが可能であり、良好な外観を有し、かつ繰り返し打撃後の耐久性に優れるマーキングを印刷したゴルフボールを提供する。
【解決手段】本発明は、末端にOH基を有するエポキシ樹脂、ポリイソシアネート硬化剤および着色剤を必須成分として含有するインキ組成物によりマーキングが印刷されているゴルフボールであって、該硬化剤が、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型ポリイソシアネート25〜35%、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるビューレット型ポリイソシアネート25〜35%およびイソホロンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型ポリイソシアネート35〜50%を含有することを特徴とするゴルフボールに関する。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明は、末端にOH基を有するエポキシ樹脂、ポリイソシアネート硬化剤および着色剤を必須成分として含有するインキ組成物によりマーキングが印刷されているゴルフボールであって、該硬化剤が、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型ポリイソシアネート25〜35%、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるビューレット型ポリイソシアネート25〜35%およびイソホロンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型ポリイソシアネート35〜50%を含有することを特徴とするゴルフボールに関する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴルフボール、特にゴルフボール本体の表面に直接印刷することが可能なインキ組成物によりマーキングを印刷したゴルフボールに関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、ゴルフボールの表面には、商品名や番号等を表す文字、数字または図柄等がマーキングされている。従来、ゴルフボールのマーキングは、ゴルフボール本体の表面に白色ペイントを塗装して下塗り処理を行った後、マーキングを印刷し、次に、外観や耐久性向上のためクリアペイントを塗装していた。
【0003】
近年、塗装工程簡略化の要求から、白色顔料を含有するアイオノマー樹脂でカバーを構成し、そのカバー表面にマーキングを直接印刷することが提案されている(特開平5‐112746号公報等)。特開平5‐112746号公報には、着色剤と、当該着色剤用のキャリアとから構成されており、前記キャリアは必須成分としてニトロセルロースを含有していることを特徴とする印刷用インキが開示されている。この印刷用インキは、下塗り処理をすることなく直接カバー表面に印字でき、しかもクリアペイント塗装前に接触により塗布したインキが他のゴルフボールに転写することを防止できるというものである。
【0004】
しかしながら、ゴルフボールのマーキングは繰り返し打撃による衝撃等に耐え得る十分な耐久性が必要である。上記公報の印刷用インキは、アイオノマー樹脂カバーとの密着性が十分とは言えないため、繰り返し打撃やバンカーショット等によりクリアーペイントが剥がれた場合にマーキングがクリアペイントに付着して剥がれてしまう等、印刷されたマーキングの耐久性が低下するという問題点があった。
【0005】
また、ゴルフボール本体へのマーキング印刷方法としてパッド印刷法があるが、印刷用インキのゴルフボール本体表面に対する密着性、パッドからゴルフボール本体への転写性が十分でないと、ゴルフボール本体にインキが転写されない部分がマーキングの欠け、ピンホールとなるため、印刷されたマーキングの外観が悪いものとなる問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来のマーキング印刷されたゴルフボールの有する問題点を解決し、マーキングの印刷に際して下塗り処理を必要とせず、ゴルフボール本体表面に直接印刷することが可能であり、良好な外観を有し、かつ繰り返し打撃後の耐久性に優れるマーキングを印刷したゴルフボールを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記目的を達成すベく鋭意研究を重ねた結果、末端にOH基を有するエポキシ樹脂、ポリイソシアネート硬化剤および着色剤を必須成分として含有するインキ組成物によりマーキングが印刷されているゴルフボールにおいて、硬化剤が特定量のヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるビューレット型ポリイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型ポリイソシアネートを含有することにより、マーキングの印刷に際して下塗り処理を必要とせず、ゴルフボール本体表面に直接印刷することが可能であり、良好な外観を有し、かつ繰り返し打撃後の耐久性に優れるマーキングを印刷したゴルフボールを提供し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、末端にOH基を有するエポキシ樹脂、ポリイソシアネート硬化剤および着色剤を必須成分として含有するインキ組成物によりマーキングが印刷されているゴルフボールであって、
該硬化剤が、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型ポリイソシアネート25〜35%、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるビューレット型ポリイソシアネート25〜35%およびイソホロンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型ポリイソシアネート35〜50%を含有することを特徴とするゴルフボールに関する。
【0009】
本発明のマーキングを印刷したゴルフボールにおいては、末端にOH基を有するエポキシ樹脂、前述のようなポリイソシアネート硬化剤および着色剤を必須成分として含有するインキ組成物を用いることによって、マーキングの印刷に際して下塗り処理を必要とせず、アイオノマー等からなるカバーまたはゴム成形物等のゴルフボール本体表面に直接印刷することが可能であり、ピンホール等の発生がなく他のゴルフボールからのマーキングインキの転写汚れがない良好な外観を有するマーキングを印刷できるとともに、ゴルフクラブによる繰り返し打撃やバンカーショット等によりゴルフボール最表層を形成しているクリアペイント層が剥がれても、マーキングは残っていることができる耐久性に優れたマーキングを印刷したゴルフボール、およびその製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の態様として、
(a)ゴルフボール本体を作製する工程、
(b)研磨またはブラスト処理、および洗浄から成る群から選択される1つまたは2以上を行って、ゴルフボール本体の表面を前処理する工程、
(c)末端にOH基を有するエポキシ樹脂、ポリイソシアネート硬化剤および着色剤を必須成分として含有するインキ組成物を用いてパッド印刷法により、該前処理したゴルフボール本体の表面にマーキングを印刷する工程であって、該硬化剤が、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型ポリイソシアネート25〜35%、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるビューレット型ポリイソシアネート25〜35%およびイソホロンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型ポリイソシアネート35〜50%を含有するマーキングを印刷する工程、および
(d)該マーキングを印刷したゴルフボール本体の表面にペイントを塗装する工程
を含むゴルフボールの製造方法がある。
【0011】
本明細書中において、「ゴルフボール本体」とは、ペイント塗装が施されていないゴルフボール自体をいい、その表面には多数のディンプルと呼ばれるくぼみが存在する。この、ゴルフボール本体の表面上にインキ組成物を用いてマーキングを印刷する。
【0012】
本発明のゴルフボールは構造には左右されず、ワンピースボール、ツーピースボール、スリーピースボール以上のマルチピースボール等のソリッドゴルフボールであっても、または糸巻きゴルフボールであってもよい。
【0013】
ソリッドゴルフボールの場合、ワンピースゴルフボールまたはソリッドゴルフボールに用いられるコア(ソリッドコア)は、従来から用いられているものであってもよく、例えばポリブタジエンゴム等の基材ゴム100重量部に対して、アクリル酸、メタクリル酸等のような炭素数3〜8のα,β‐不飽和カルボン酸またはその亜鉛、マグネシウム等の一価または二価の金属塩や、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の官能性モノマーから成る加硫剤(架橋剤)を単独または合計で10〜60重量部、有機過酸化物等の共架橋開始剤0.5〜5重量部、酸化亜鉛、硫酸バリウム等の充填材10〜30重量部、要すれば老化防止剤等を含有するゴム組成物を、通常の混練ロール等の適宜の混練機を用いて均一に混練し、金型内で加硫成形することにより球状のコアを得ることができる。この際の条件は特に限定されないが、通常は130〜240℃、圧力2.9〜11.8MPa、15〜60分間で行われる。得られたコアは、その周りに被覆されるカバーとの密着性を向上するため、表面をバフ研磨しておくことが好ましい。更に、上記ソリッドコアは単層構造を有しても、2層以上の多層構造を有していてもよい。
【0014】
更に、糸巻きゴルフボールに用いられるコア(糸巻きコア)も、従来から用いられているものであってもよく、センターとそのセンターの周囲に糸ゴムを延伸状態で巻き付けることによって形成した糸ゴム層とから成る。センターとしては液系(リキッドセンター)またはゴム系(ソリッドセンター)のいずれを用いてもよい。また、上記センター上に巻き付ける糸ゴムは、糸巻きゴルフボールの糸巻き層に従来から使用されているものと同様のものを用いてもよく、例えば天然ゴムまたは天然ゴムと合成ポリイソプレンに硫黄、加硫助剤、加硫促進剤、老化防止剤等を配合したゴム組成物を加硫することによって得られたものを用いてもよい。糸ゴムはセンター上に約10倍に引き伸ばして巻き付けて糸巻きコアを作製する。但し、これらのソリッドコア、糸巻きコアは単なる例示であって、それらに限定されるものではない。
【0015】
上記のようにして得られたコア上にはカバー層を被覆するが、カバー材料としてはアイオノマー樹脂等の熱可塑性樹脂、バラタまたは硬質ゴム等、通常ゴルフボールのカバーに用いられているものであれば限定されない。上記カバー用組成物には、上記アイオノマー樹脂等の成分の他に、二酸化チタン等の着色剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料、蛍光増白剤等の添加剤等をゴルフボールカバーによる所望の特性が損なわれない範囲で含有してもよい。
【0016】
上記カバーの被覆は、カバーの形成に使用されている一般に公知の方法を用いて形成することができ、特に限定されるものではない。カバー用組成物を予め半球殻状のハーフシェルに成形し、それを2枚用いてソリッドコアを包み、加圧成形するか、または上記カバー用組成物を直接コア上に射出成形してコアを包み込む方法を用いてもよい。上記カバーの成形時には通常、表面にディンプルと呼ばれるくぼみを形成する。
【0017】
次いで、ゴルフボール本体表面には、マーキングを印刷する前に、マーキングやペイントの密着性向上のため、ゴルフボール本体の表面に前処理を行うことが好ましい。上記前処理としては、研磨またはブラスト処理、および洗浄から成る群から選択される1つまたは2以上を行うことが好ましく、研磨またはブラスト処理を行い、次いで洗浄することにより行われることがより好ましい。
【0018】
研磨は、ゴルフボール本体の表面を研磨石や研磨布等で研磨するものであり、特に生産性の優れる点、および上記表面全体を均一に研磨できる点またはゴルフボール間で常に均一に研磨できる点で、バレル研磨が好ましい。このバレル研磨とは、バレル装置内にゴルフボール本体および研磨石を入れて回転させ研磨する方法である。
【0019】
ブラスト処理は、ゴルフボール本体の表面に珪砂等の非金属粒や、金属粒を高速度で吹き付けて表面を粗化する方法であり、ゴルフボール本体の表面全体で、またはゴルフボール間で常に均一な処理を行うことができる点で非金属粒、特に珪砂を用いることが好ましい。
【0020】
洗浄は、ゴルフボール本体を成形後、表面に付着した汚れ、離型剤等のマーキングやペイントとの密着性を低下させるものを洗い落とす方法であり、水、有機溶剤、化学薬剤等を用いる。
【0021】
上記のように前処理することにより粗面化されたゴルフボール本体表面には、次いで、マーキングを印刷する。本発明のゴルフボールのマーキング印刷用インキは、ゴルフボール本体表面にマーキングを印刷するためのインキ組成物であって、末端にOH基を有するエポキシ樹脂、ポリイソシアネート硬化剤および着色剤を必須成分として含有することを特徴とする。本発明のゴルフボールは、ゴルフボール本体と、ゴルフボール本体上に印刷されたマーキングとを含み、このマーキングが上記のような本発明のインキ組成物で形成されているものである。
【0022】
エポキシ樹脂は、インキ組成物の基材樹脂として含まれており、分子内に2個以上のエポキシ基を有する樹脂で、硬化剤と反応して、架橋硬化することができる。本発明で使用するエポキシ樹脂としては、末端にOH基を有するものであればよく、ベースとなるエポキシ樹脂は、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとから得られるビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;ノボラック型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂などの熱硬化型エポキシ樹脂を用いることができる。
【0023】
エポキシ樹脂のヒドロキシル価は、50以上が好ましく、より好ましくは100以上、さらに好ましくは150以上、特に180以上である。ヒドロキシル価の好ましい上限は300以下であり、より好ましくは250以下であり、さらに好ましくは195以下である。ここで、ヒドロキシル価とは、エポキシ樹脂中に含まれる水酸基量の目安となる値で、具体的にはアセチル化して得られるアセチル化物をケン化し、結合アセチル基を酢酸として中和するのに要する水酸化カリウムのmg数をいう。上記ヒドロキシル価が50未満では、エポキシ樹脂と硬化剤の架橋硬化が不十分となってマーキングの耐久性が低下し、300を超えると多量の硬化剤を配合することが必要となるため反応性が高くなりすぎてポットライフが短くなって製造作業性が低下する。
【0024】
熱硬化型エポキシ樹脂は硬化剤との反応により、3次元硬化反応が進行する。硬化剤存在下での加熱による硬化反応は迅速に進行し、次のクリアペイント塗装工程への移送中に隣のゴルフボールにマーキングインキが転写されることを防止できるとともに、網目状構造を形成するように硬化して、耐擦傷性等の耐久性に優れたマーキングを形成できる。
【0025】
また、エポキシ樹脂中に存在する水酸基の寄与により、ゴルフボール本体表面、特にアイオノマー樹脂製カバーとの親和性に優れ、下塗りをしなくても、直接マーキングを印刷することができる。さらに、分子の主鎖結合がエーテル結合であり、このエーテル結合は分子の自由回転性を大きくするので、形成されるマーキングに柔軟性、可撓性を付与することができる。つまり、打撃時のゴルフボールの変形に追随できるマーキングを形成できるので、繰り返し打撃によるマーキングのひび割れ、剥がれを抑制することができる。
【0026】
本発明のマーキング印刷用インキ組成物に用いられる硬化剤は、
(a)ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型ポリイソシアネート25〜35%、
(b)ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるビューレット型ポリイソシアネート25〜35%、および
(c)イソホロンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型ポリイソシアネート35〜50%
を含有することを要件とするが、上記(a)成分は好ましくは26〜34%、より好ましくは27〜33%であり、上記(b)成分は好ましくは26〜34%、より好ましくは27〜33%であり、上記(c)成分は好ましくは37〜48%、より好ましくは39〜46%である。
【0027】
上記(a)成分の配合量が25%未満では、マーキングインキ層が脆くてマーキングが剥離し易くマーキング耐久性が悪くなり、35%を超えると相対的にイソホロンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型ポリイソシアネートの配合量が少なくなるためインキ組成物の硬化が遅くなってボール間でのインキ転写汚れが増加する。
【0028】
上記(b)成分の配合量が25%未満では、主剤との相溶性が悪くなってマーキングにピンホールが発生し、35%を超えると相対的にイソホロンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型ポリイソシアネートの配合量が少なくなるためインキ組成物の硬化が遅くなってボール間でのインキ転写汚れが増加する。
【0029】
上記(c)成分の配合量が35%未満では、インキ組成物の硬化が遅くなってボール間でのインキ転写汚れが増加し、50%を超えると主剤との硬化反応が速くなってマーキングインキのポットライフが短くなって製造作業性が低下する。
【0030】
本発明のインキに含まれる樹脂としては、上記エポキシ樹脂を主体として、その他の樹脂を含有していてもよい。その他の樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂が挙げられる。
【0031】
上記マーキング印刷用インキ組成物におけるエポキシ樹脂の配合量は、10〜50重量%、好ましくは15〜45重量%であることが望ましい。10重量%未満では、マーキングとゴルフボール本体表面との密着性が低下するおそれがあり、50重量%を超えると相対的に着色剤の含有率が少なくなるために、マーキングの色度が薄くなり、これを防ぐためにマーキング印刷用インキを厚く塗布しなければならず、仕上げペイントで形成されるクリアペイント層の密着性低下の原因となる。
【0032】
上記インキ組成物における硬化剤の配合量は、1〜30重量%、好ましくは3〜25重量%であることが望ましい。1重量%未満では硬化時間が長くなって生産性が低下しやすくなり、30重量%を超えると硬化反応が速くなりすぎてインキのポットライフが短くなり、作業性が低下しやすくなるからである。
【0033】
本発明に使用する着色剤は特に限定はなく、従来公知のものを使用できる。例えば、黒色顔料として、アセチレンブラック、ランブラック、アニリンブラック等のカーボンブラック;黄色顔料として、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマンネントイエローNCG、タートラジンレーキ;橙色顔料として、赤口黄鉛、モリブテンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK;赤色顔料として、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B;紫色顔料として、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ;青色顔料として、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC;緑色顔料として、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファナルイエローグリーンG;白色顔料として、シリカ、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛バライト粉、炭酸バリウム、クレー、タルク、アルミナホワイト等を使用できる。
【0034】
上記インキ組成物における着色剤の配合量は印刷するマーキングの濃度などから適宜決定すればよいが、1〜30重量%、好ましくは3〜25重量%であることが望ましい。1重量%未満ではマーキングの色度が薄くなり、30重量%を越えると、ゴルフボール本体に対するインキの密着性が低下する。
【0035】
本発明のマーキング印刷用インキ組成物は、上記エポキシ樹脂、着色剤、硬化剤の他に、溶剤を含むことが好ましく、更にその他の添加剤を含んでいてもよい。
【0036】
溶剤としては、エポキシ樹脂と相溶性があるものを使用することが好ましい。例えば芳香族炭化水素(トルエン、キシレン等)、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、エーテル系溶媒(ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等)、ケトン系溶媒(メチルエチルケトン等)、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、イソプロパノール等)などを挙げることができる。本発明のマーキング印刷用インキ組成物における溶剤の配合量は、20〜70重量%、好ましくは30〜60重量%である。上記溶剤の配合量が20重量%より少ないと、パッドからゴルフボール表面へマーキング転写しにくくなり、印刷されたマーキングにピンホールが発生するなど、マーキング外観の低下の原因となる。70重量%を超えると、マーキング形成後の乾燥に長時間を要するため生産性が低下するだけでなく、マーキングに滲みが生じたり、相対的に樹脂分及び着色剤が少なくなって形成されるマーキングに欠けやピンホールが生じるなど、マーキング外観の低下の原因となる。
【0037】
上記添加剤としては、艶消剤、消泡剤等が挙げられ、艶消剤としてはコロイダルシリカ、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン等を用いることができ、消泡剤としてはメチルシロキサン等を用いることができる。上記添加剤として、艶消剤の配合量は、0.5〜5重量%が好ましく、消泡剤の配合量は0.5〜5重量%が好ましい。
【0038】
本発明のマーキング印刷用インキは、ゴルフボール本体表面に下塗り処理することなく、直接印刷することができる。即ち、アイオノマー樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂材料からなるカバーに対しても、ワンピースゴルフボールのように表面がゴム材料のボール本体に対しても、直接マーキングを印刷することができる。特に、アイオノマーを含有する樹脂製カバーへ直接マーキングを印刷するのに用いられるインキとして好適である。本発明のインキ組成物の主成分たるエポキシ樹脂が、アイオノマーに対して親和性が高く、密着性のよいマーキングを形成できるためと考えられる。但し、本発明のマーキング印刷用インキは、ゴルフボール本体に下塗りを行なった後、マーキング印刷する従来の印刷方法に適用することもできる。
【0039】
次に、本発明のマーキング印刷方法について説明する。本発明のマーキング印刷方法は、上記のように前処理を行うことによって粗面化されたゴルフボール本体表面に、本発明のマーキング印刷用インキ組成物を用いて、パッド印刷法によりマーキングを印刷する。
【0040】
前述のように、対象となるゴルフボール本体としては、ゴム製コアまたは糸巻きコアに、アイオノマーを主成分とする熱可塑性樹脂材料からなるカバーを有するマルチピースゴルフボール本体であってもよいし、表面がゴム材料であるワンピースゴルフボール本体であってもよい。
【0041】
パッド印刷法とは、マーキング形状の凹部にインキを充填し、この凹部にパッドを押し付けることによりマーキング形状のインキをパッドに転写し、次いでパッドをゴルフボール本体表面に押し付けることにより、マーキング形状のインキをゴルフボール本体に転写する印刷方法である。このようなパッド印刷は、ディンプルのような多数の凹部を有するボール本体表面にも良好に印刷することができる点で、ゴルフボールのマーキング印刷方法として適している。また、本発明のマーキング印刷用インキは、転写性に優れているので、パッドを介してマーキングを画成するマーキング印刷用インキをゴルフボール本体へ転写するようなパッド印刷に好適である。
【0042】
印刷後、ゴルフボール本体表面に直接印刷されたマーキング、即ち本発明のインキで形成されるマーキングを乾燥硬化させる。乾燥硬化工程は、放置しておくだけでもよいし、硬化反応を促進するために30〜70℃の熱風を当てることによって行ってもよい。
【0043】
乾燥後、仕上げに、マーキングを含めてゴルフボール本体表面全体にクリアペイントを塗装することが好ましい。得られるゴルフボールの外観を向上させるとともに、マーキング保護の点からも有効である。クリアペイント層は1層であってもよいし、プライマーコート、トップコートという2回塗りであってもよい。
【0044】
ここで用いられるクリアペイントとしては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂系ペイント等の従来より用いられているクリアーペイントを用いることができるが、好ましくはウレタン樹脂系ペイントが好適であり、下地との密着性を考慮して選択することが望ましい。上記ウレタン樹脂系ペイントとしては、複数のOH基を有するポリオールを含む主剤と複数のNCO基を有するイソシアネートを含む硬化剤とからなる2液型ウレタン系ペイントが好適に用いられる。
【0045】
現在、ゴルフボールの重量は、ラージサイズボールの場合ルール上、45.92g以下と定められているが、下限についての規格はない。本発明のゴルフボールは、重量44.0〜45.8g、好ましくは44.2〜45.8gを有する。上記ボール重量が44.0gより軽いと飛行中の慣性を失い、飛行後半で失速して飛距離が低下し、45.8gより重いと打球感が重く悪くなる。
【0046】
また、本発明のゴルフボールの直径は、41.0〜44.0mmとすることができるが、ラージサイズボールの規格に適する42.67mm以上とするのがよく、通常は約42.75mmとする。
【0047】
【実施例】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0048】
(実施例1〜5および比較例1〜6)
コアの作製
以下の表1に示す配合のコア用ゴム組成物を混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で160℃で13分間加熱プレスすることにより直径39.3mmを有する球状のコアを得た。
【0049】
【表1】
【0050】
(注1)JSR(株)から商品名「BR11」で市販のポリブタジエンゴム
【0051】
カバー組成物の調製
以下の表2に示した配合の材料を、二軸混練型押出機によりミキシングして、ペレット状のカバー用組成物を調製した。押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は押出機のダイの位置で200〜260℃に加熱された。
【0052】
【表2】
【0053】
(注2)商品名、三井デュポンポリケミカル(株)製のナトリウムイオン中和エチレン‐メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
(注3)商品名、三井デュポンポリケミカル(株)製の亜鉛イオン中和エチレン‐メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
(注4)商品名、三井デュポンポリケミカル(株)製のナトリウムイオン中和エチレン‐メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
【0054】
ゴルフボール本体の作製
上記のカバー用組成物を、上記のように得られたコア上に直接射出成形することによりカバー層を形成し、直径42.7mmを有するツーピースゴルフボール本体を作製した。上記カバー成形用上下金型は、半球状キャビティを有し、ディンプル付きで、ディンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねている。上記ホールドピンを突き出し、コアを投入後ホールドさせ、80トンの圧力で型締めした金型に210℃に加熱した樹脂を0.3秒で注入し、30秒間冷却して型開きしてゴルフボール本体を取り出した。
【0055】
マーキング印刷
ゴルフボール本体の表面をサンドブラスト処理した後、インキ組成物をパッド印刷することによりマーキングを印刷し、クリアーペイントを塗装してゴルフボールを仕上げた。尚、上記インキ組成物は、ナビタス社製「PAD‐EPHインキ」100gに以下の表3および4に示した配合比を有するポリイソシアネート硬化剤15gおよび溶剤(芳香族混合炭化水素)20gを混合することにより調製した。尚、「PAD‐EPHインキ」には、末端にOH基を有するエポキシ樹脂、顔料、艶消剤、消泡剤および溶剤を含有する。得られたインキ組成物のポットライフを測定し、得られたゴルフボール表面のマーキングに関して、外観および耐久性を評価し、その結果を同表に示す。試験方法は以下の通りとした。
【0056】
(試験方法)
(1)マーキング印刷用インキ組成物のポットライフ
調製したインキ組成物を40℃のオーブン中に置き、ゲル化するまでの時間を測定することにより、インキ組成物のポットライフを決定した。
(2)マーキング外観
(i)ピンホール
ゴルフボール本体の全体にマーキングを印刷し、マーキング印刷後のゴルフボール50個の表面を目視観察してピンホールの有無を確認することによって、マーキングの外観を評価した。評価基準は以下の通りである。
評価基準
○:ピンホールなし。
△:50個中5個未満のゴルフボールにピンホールが発生。
×:50個中5個以上のゴルフボールにピンホールが発生。
【0057】
(ii)インキ転写汚れ
ゴルフボール本体の全体にマーキングを印刷し、マーキング印刷後のゴルフボール50個の表面を目視観察して他のゴルフボールからのマーキングインキの転写汚れの有無を確認することによって、マーキングの外観を評価した。評価基準は以下の通りである。
評価基準
○:インキ転写汚れなし。
△:50個中5個未満のゴルフボールにインキ転写汚れが発生。
×:50個中5個以上のゴルフボールにインキ転写汚れが発生。
【0058】
(3)マーキング耐久性
ツルーテンパー社製スイングロボットにアイアン5番クラブ(I#5)を取付け、ヘッドスピード34m/秒で各ゴルフボールを150回繰り返し打撃した後、マーキングの剥離程度を目視観察により評価した。評価基準は以下の通りである。
評価基準
◎:マーキングの剥離なし。
○:マーキングの剥離面積が全マーキングの5%以下。
△:マーキングの剥離面積が全マーキングの5%を超え20%以下。
×:マーキングの剥離面積が全マーキングの20%を超える
【0059】
(試験結果)
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
(注5)ポリイソシアネートA:ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート(住友バイエルウレタン(株)製の「デスモジュール N‐3390」)
(注6)ポリイソシアネートB:ヘキサメチレンジイソシアネートのビューレット型ポリイソシアネート(住友バイエルウレタン(株)製の「スミジュール N‐3200」)
(注7)ポリイソシアネートC:イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート(住友バイエルウレタン(株)製の「デスモジュール Z‐4370」)
【0062】
以上の結果から、実施例1〜5の本発明のマーキング印刷したゴルフボールは、比較例1〜6のゴルフボールに比較すると、繰り返し打撃後のマーキングの耐久性に優れ、かつマーキングの外観が良好であることがわかった。
【0063】
これに対して、比較例1のゴルフボールでは、マーキング印刷用インキ組成物の硬化剤中のポリイソシアネートAが多く、ポリイソシアネートCが少ないため、インキ組成物のポットライフが長くなって硬化が遅くなり、インキ転写汚れが多く発生し外観が悪いものとなった。比較例2のゴルフボールでは、マーキング印刷用インキ組成物の硬化剤中のポリイソシアネートAが少ないため、印刷されたマーキングが脆くて耐久性が悪いものであった。比較例3のゴルフボールでは、マーキング印刷用インキ組成物の硬化剤中のポリイソシアネートBが多く、ポリイソシアネートCが少ないため、インキ組成物のポットライフが長くなって硬化が遅くなり、インキ転写汚れが多く発生し外観が悪いものとなった。
【0064】
比較例4のゴルフボールでは、マーキング印刷用インキ組成物の硬化剤中のポリイソシアネートBが少ないため、インキ組成物の主剤との相溶性が低下してピンホールが多く発生し外観が悪いものとなった。比較例5のゴルフボールでは、マーキング印刷用インキ組成物の硬化剤中のポリイソシアネートCが少ないためインキ組成物のポットライフが長くなって硬化が遅くなり、インキ転写汚れが多く発生し外観が悪いものとなった。比較例6のゴルフボールでは、マーキング印刷用インキ組成物の硬化剤中のポリイソシアネートCが多いため、インキ組成物の主剤との硬化反応が速くてポットライフが短くなった。
【0065】
【発明の効果】
本発明によれば、マーキング印刷用インキ組成物に末端にOH基を有するエポキシ樹脂、ポリイソシアネート硬化剤および着色剤を必須成分として含有することにより、マーキングの印刷に際して下塗り処理を必要とせずゴルフボール本体表面に直接印刷することが可能であり、良好な外観を有し、かつ繰り返し打撃後の耐久性に優れるマーキングを印刷したゴルフボールを提供し得たものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴルフボール、特にゴルフボール本体の表面に直接印刷することが可能なインキ組成物によりマーキングを印刷したゴルフボールに関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、ゴルフボールの表面には、商品名や番号等を表す文字、数字または図柄等がマーキングされている。従来、ゴルフボールのマーキングは、ゴルフボール本体の表面に白色ペイントを塗装して下塗り処理を行った後、マーキングを印刷し、次に、外観や耐久性向上のためクリアペイントを塗装していた。
【0003】
近年、塗装工程簡略化の要求から、白色顔料を含有するアイオノマー樹脂でカバーを構成し、そのカバー表面にマーキングを直接印刷することが提案されている(特開平5‐112746号公報等)。特開平5‐112746号公報には、着色剤と、当該着色剤用のキャリアとから構成されており、前記キャリアは必須成分としてニトロセルロースを含有していることを特徴とする印刷用インキが開示されている。この印刷用インキは、下塗り処理をすることなく直接カバー表面に印字でき、しかもクリアペイント塗装前に接触により塗布したインキが他のゴルフボールに転写することを防止できるというものである。
【0004】
しかしながら、ゴルフボールのマーキングは繰り返し打撃による衝撃等に耐え得る十分な耐久性が必要である。上記公報の印刷用インキは、アイオノマー樹脂カバーとの密着性が十分とは言えないため、繰り返し打撃やバンカーショット等によりクリアーペイントが剥がれた場合にマーキングがクリアペイントに付着して剥がれてしまう等、印刷されたマーキングの耐久性が低下するという問題点があった。
【0005】
また、ゴルフボール本体へのマーキング印刷方法としてパッド印刷法があるが、印刷用インキのゴルフボール本体表面に対する密着性、パッドからゴルフボール本体への転写性が十分でないと、ゴルフボール本体にインキが転写されない部分がマーキングの欠け、ピンホールとなるため、印刷されたマーキングの外観が悪いものとなる問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来のマーキング印刷されたゴルフボールの有する問題点を解決し、マーキングの印刷に際して下塗り処理を必要とせず、ゴルフボール本体表面に直接印刷することが可能であり、良好な外観を有し、かつ繰り返し打撃後の耐久性に優れるマーキングを印刷したゴルフボールを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記目的を達成すベく鋭意研究を重ねた結果、末端にOH基を有するエポキシ樹脂、ポリイソシアネート硬化剤および着色剤を必須成分として含有するインキ組成物によりマーキングが印刷されているゴルフボールにおいて、硬化剤が特定量のヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるビューレット型ポリイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型ポリイソシアネートを含有することにより、マーキングの印刷に際して下塗り処理を必要とせず、ゴルフボール本体表面に直接印刷することが可能であり、良好な外観を有し、かつ繰り返し打撃後の耐久性に優れるマーキングを印刷したゴルフボールを提供し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、末端にOH基を有するエポキシ樹脂、ポリイソシアネート硬化剤および着色剤を必須成分として含有するインキ組成物によりマーキングが印刷されているゴルフボールであって、
該硬化剤が、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型ポリイソシアネート25〜35%、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるビューレット型ポリイソシアネート25〜35%およびイソホロンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型ポリイソシアネート35〜50%を含有することを特徴とするゴルフボールに関する。
【0009】
本発明のマーキングを印刷したゴルフボールにおいては、末端にOH基を有するエポキシ樹脂、前述のようなポリイソシアネート硬化剤および着色剤を必須成分として含有するインキ組成物を用いることによって、マーキングの印刷に際して下塗り処理を必要とせず、アイオノマー等からなるカバーまたはゴム成形物等のゴルフボール本体表面に直接印刷することが可能であり、ピンホール等の発生がなく他のゴルフボールからのマーキングインキの転写汚れがない良好な外観を有するマーキングを印刷できるとともに、ゴルフクラブによる繰り返し打撃やバンカーショット等によりゴルフボール最表層を形成しているクリアペイント層が剥がれても、マーキングは残っていることができる耐久性に優れたマーキングを印刷したゴルフボール、およびその製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の態様として、
(a)ゴルフボール本体を作製する工程、
(b)研磨またはブラスト処理、および洗浄から成る群から選択される1つまたは2以上を行って、ゴルフボール本体の表面を前処理する工程、
(c)末端にOH基を有するエポキシ樹脂、ポリイソシアネート硬化剤および着色剤を必須成分として含有するインキ組成物を用いてパッド印刷法により、該前処理したゴルフボール本体の表面にマーキングを印刷する工程であって、該硬化剤が、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型ポリイソシアネート25〜35%、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるビューレット型ポリイソシアネート25〜35%およびイソホロンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型ポリイソシアネート35〜50%を含有するマーキングを印刷する工程、および
(d)該マーキングを印刷したゴルフボール本体の表面にペイントを塗装する工程
を含むゴルフボールの製造方法がある。
【0011】
本明細書中において、「ゴルフボール本体」とは、ペイント塗装が施されていないゴルフボール自体をいい、その表面には多数のディンプルと呼ばれるくぼみが存在する。この、ゴルフボール本体の表面上にインキ組成物を用いてマーキングを印刷する。
【0012】
本発明のゴルフボールは構造には左右されず、ワンピースボール、ツーピースボール、スリーピースボール以上のマルチピースボール等のソリッドゴルフボールであっても、または糸巻きゴルフボールであってもよい。
【0013】
ソリッドゴルフボールの場合、ワンピースゴルフボールまたはソリッドゴルフボールに用いられるコア(ソリッドコア)は、従来から用いられているものであってもよく、例えばポリブタジエンゴム等の基材ゴム100重量部に対して、アクリル酸、メタクリル酸等のような炭素数3〜8のα,β‐不飽和カルボン酸またはその亜鉛、マグネシウム等の一価または二価の金属塩や、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の官能性モノマーから成る加硫剤(架橋剤)を単独または合計で10〜60重量部、有機過酸化物等の共架橋開始剤0.5〜5重量部、酸化亜鉛、硫酸バリウム等の充填材10〜30重量部、要すれば老化防止剤等を含有するゴム組成物を、通常の混練ロール等の適宜の混練機を用いて均一に混練し、金型内で加硫成形することにより球状のコアを得ることができる。この際の条件は特に限定されないが、通常は130〜240℃、圧力2.9〜11.8MPa、15〜60分間で行われる。得られたコアは、その周りに被覆されるカバーとの密着性を向上するため、表面をバフ研磨しておくことが好ましい。更に、上記ソリッドコアは単層構造を有しても、2層以上の多層構造を有していてもよい。
【0014】
更に、糸巻きゴルフボールに用いられるコア(糸巻きコア)も、従来から用いられているものであってもよく、センターとそのセンターの周囲に糸ゴムを延伸状態で巻き付けることによって形成した糸ゴム層とから成る。センターとしては液系(リキッドセンター)またはゴム系(ソリッドセンター)のいずれを用いてもよい。また、上記センター上に巻き付ける糸ゴムは、糸巻きゴルフボールの糸巻き層に従来から使用されているものと同様のものを用いてもよく、例えば天然ゴムまたは天然ゴムと合成ポリイソプレンに硫黄、加硫助剤、加硫促進剤、老化防止剤等を配合したゴム組成物を加硫することによって得られたものを用いてもよい。糸ゴムはセンター上に約10倍に引き伸ばして巻き付けて糸巻きコアを作製する。但し、これらのソリッドコア、糸巻きコアは単なる例示であって、それらに限定されるものではない。
【0015】
上記のようにして得られたコア上にはカバー層を被覆するが、カバー材料としてはアイオノマー樹脂等の熱可塑性樹脂、バラタまたは硬質ゴム等、通常ゴルフボールのカバーに用いられているものであれば限定されない。上記カバー用組成物には、上記アイオノマー樹脂等の成分の他に、二酸化チタン等の着色剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料、蛍光増白剤等の添加剤等をゴルフボールカバーによる所望の特性が損なわれない範囲で含有してもよい。
【0016】
上記カバーの被覆は、カバーの形成に使用されている一般に公知の方法を用いて形成することができ、特に限定されるものではない。カバー用組成物を予め半球殻状のハーフシェルに成形し、それを2枚用いてソリッドコアを包み、加圧成形するか、または上記カバー用組成物を直接コア上に射出成形してコアを包み込む方法を用いてもよい。上記カバーの成形時には通常、表面にディンプルと呼ばれるくぼみを形成する。
【0017】
次いで、ゴルフボール本体表面には、マーキングを印刷する前に、マーキングやペイントの密着性向上のため、ゴルフボール本体の表面に前処理を行うことが好ましい。上記前処理としては、研磨またはブラスト処理、および洗浄から成る群から選択される1つまたは2以上を行うことが好ましく、研磨またはブラスト処理を行い、次いで洗浄することにより行われることがより好ましい。
【0018】
研磨は、ゴルフボール本体の表面を研磨石や研磨布等で研磨するものであり、特に生産性の優れる点、および上記表面全体を均一に研磨できる点またはゴルフボール間で常に均一に研磨できる点で、バレル研磨が好ましい。このバレル研磨とは、バレル装置内にゴルフボール本体および研磨石を入れて回転させ研磨する方法である。
【0019】
ブラスト処理は、ゴルフボール本体の表面に珪砂等の非金属粒や、金属粒を高速度で吹き付けて表面を粗化する方法であり、ゴルフボール本体の表面全体で、またはゴルフボール間で常に均一な処理を行うことができる点で非金属粒、特に珪砂を用いることが好ましい。
【0020】
洗浄は、ゴルフボール本体を成形後、表面に付着した汚れ、離型剤等のマーキングやペイントとの密着性を低下させるものを洗い落とす方法であり、水、有機溶剤、化学薬剤等を用いる。
【0021】
上記のように前処理することにより粗面化されたゴルフボール本体表面には、次いで、マーキングを印刷する。本発明のゴルフボールのマーキング印刷用インキは、ゴルフボール本体表面にマーキングを印刷するためのインキ組成物であって、末端にOH基を有するエポキシ樹脂、ポリイソシアネート硬化剤および着色剤を必須成分として含有することを特徴とする。本発明のゴルフボールは、ゴルフボール本体と、ゴルフボール本体上に印刷されたマーキングとを含み、このマーキングが上記のような本発明のインキ組成物で形成されているものである。
【0022】
エポキシ樹脂は、インキ組成物の基材樹脂として含まれており、分子内に2個以上のエポキシ基を有する樹脂で、硬化剤と反応して、架橋硬化することができる。本発明で使用するエポキシ樹脂としては、末端にOH基を有するものであればよく、ベースとなるエポキシ樹脂は、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとから得られるビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;ノボラック型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂などの熱硬化型エポキシ樹脂を用いることができる。
【0023】
エポキシ樹脂のヒドロキシル価は、50以上が好ましく、より好ましくは100以上、さらに好ましくは150以上、特に180以上である。ヒドロキシル価の好ましい上限は300以下であり、より好ましくは250以下であり、さらに好ましくは195以下である。ここで、ヒドロキシル価とは、エポキシ樹脂中に含まれる水酸基量の目安となる値で、具体的にはアセチル化して得られるアセチル化物をケン化し、結合アセチル基を酢酸として中和するのに要する水酸化カリウムのmg数をいう。上記ヒドロキシル価が50未満では、エポキシ樹脂と硬化剤の架橋硬化が不十分となってマーキングの耐久性が低下し、300を超えると多量の硬化剤を配合することが必要となるため反応性が高くなりすぎてポットライフが短くなって製造作業性が低下する。
【0024】
熱硬化型エポキシ樹脂は硬化剤との反応により、3次元硬化反応が進行する。硬化剤存在下での加熱による硬化反応は迅速に進行し、次のクリアペイント塗装工程への移送中に隣のゴルフボールにマーキングインキが転写されることを防止できるとともに、網目状構造を形成するように硬化して、耐擦傷性等の耐久性に優れたマーキングを形成できる。
【0025】
また、エポキシ樹脂中に存在する水酸基の寄与により、ゴルフボール本体表面、特にアイオノマー樹脂製カバーとの親和性に優れ、下塗りをしなくても、直接マーキングを印刷することができる。さらに、分子の主鎖結合がエーテル結合であり、このエーテル結合は分子の自由回転性を大きくするので、形成されるマーキングに柔軟性、可撓性を付与することができる。つまり、打撃時のゴルフボールの変形に追随できるマーキングを形成できるので、繰り返し打撃によるマーキングのひび割れ、剥がれを抑制することができる。
【0026】
本発明のマーキング印刷用インキ組成物に用いられる硬化剤は、
(a)ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型ポリイソシアネート25〜35%、
(b)ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるビューレット型ポリイソシアネート25〜35%、および
(c)イソホロンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型ポリイソシアネート35〜50%
を含有することを要件とするが、上記(a)成分は好ましくは26〜34%、より好ましくは27〜33%であり、上記(b)成分は好ましくは26〜34%、より好ましくは27〜33%であり、上記(c)成分は好ましくは37〜48%、より好ましくは39〜46%である。
【0027】
上記(a)成分の配合量が25%未満では、マーキングインキ層が脆くてマーキングが剥離し易くマーキング耐久性が悪くなり、35%を超えると相対的にイソホロンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型ポリイソシアネートの配合量が少なくなるためインキ組成物の硬化が遅くなってボール間でのインキ転写汚れが増加する。
【0028】
上記(b)成分の配合量が25%未満では、主剤との相溶性が悪くなってマーキングにピンホールが発生し、35%を超えると相対的にイソホロンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型ポリイソシアネートの配合量が少なくなるためインキ組成物の硬化が遅くなってボール間でのインキ転写汚れが増加する。
【0029】
上記(c)成分の配合量が35%未満では、インキ組成物の硬化が遅くなってボール間でのインキ転写汚れが増加し、50%を超えると主剤との硬化反応が速くなってマーキングインキのポットライフが短くなって製造作業性が低下する。
【0030】
本発明のインキに含まれる樹脂としては、上記エポキシ樹脂を主体として、その他の樹脂を含有していてもよい。その他の樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂が挙げられる。
【0031】
上記マーキング印刷用インキ組成物におけるエポキシ樹脂の配合量は、10〜50重量%、好ましくは15〜45重量%であることが望ましい。10重量%未満では、マーキングとゴルフボール本体表面との密着性が低下するおそれがあり、50重量%を超えると相対的に着色剤の含有率が少なくなるために、マーキングの色度が薄くなり、これを防ぐためにマーキング印刷用インキを厚く塗布しなければならず、仕上げペイントで形成されるクリアペイント層の密着性低下の原因となる。
【0032】
上記インキ組成物における硬化剤の配合量は、1〜30重量%、好ましくは3〜25重量%であることが望ましい。1重量%未満では硬化時間が長くなって生産性が低下しやすくなり、30重量%を超えると硬化反応が速くなりすぎてインキのポットライフが短くなり、作業性が低下しやすくなるからである。
【0033】
本発明に使用する着色剤は特に限定はなく、従来公知のものを使用できる。例えば、黒色顔料として、アセチレンブラック、ランブラック、アニリンブラック等のカーボンブラック;黄色顔料として、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマンネントイエローNCG、タートラジンレーキ;橙色顔料として、赤口黄鉛、モリブテンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK;赤色顔料として、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B;紫色顔料として、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ;青色顔料として、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC;緑色顔料として、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファナルイエローグリーンG;白色顔料として、シリカ、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛バライト粉、炭酸バリウム、クレー、タルク、アルミナホワイト等を使用できる。
【0034】
上記インキ組成物における着色剤の配合量は印刷するマーキングの濃度などから適宜決定すればよいが、1〜30重量%、好ましくは3〜25重量%であることが望ましい。1重量%未満ではマーキングの色度が薄くなり、30重量%を越えると、ゴルフボール本体に対するインキの密着性が低下する。
【0035】
本発明のマーキング印刷用インキ組成物は、上記エポキシ樹脂、着色剤、硬化剤の他に、溶剤を含むことが好ましく、更にその他の添加剤を含んでいてもよい。
【0036】
溶剤としては、エポキシ樹脂と相溶性があるものを使用することが好ましい。例えば芳香族炭化水素(トルエン、キシレン等)、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、エーテル系溶媒(ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等)、ケトン系溶媒(メチルエチルケトン等)、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、イソプロパノール等)などを挙げることができる。本発明のマーキング印刷用インキ組成物における溶剤の配合量は、20〜70重量%、好ましくは30〜60重量%である。上記溶剤の配合量が20重量%より少ないと、パッドからゴルフボール表面へマーキング転写しにくくなり、印刷されたマーキングにピンホールが発生するなど、マーキング外観の低下の原因となる。70重量%を超えると、マーキング形成後の乾燥に長時間を要するため生産性が低下するだけでなく、マーキングに滲みが生じたり、相対的に樹脂分及び着色剤が少なくなって形成されるマーキングに欠けやピンホールが生じるなど、マーキング外観の低下の原因となる。
【0037】
上記添加剤としては、艶消剤、消泡剤等が挙げられ、艶消剤としてはコロイダルシリカ、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン等を用いることができ、消泡剤としてはメチルシロキサン等を用いることができる。上記添加剤として、艶消剤の配合量は、0.5〜5重量%が好ましく、消泡剤の配合量は0.5〜5重量%が好ましい。
【0038】
本発明のマーキング印刷用インキは、ゴルフボール本体表面に下塗り処理することなく、直接印刷することができる。即ち、アイオノマー樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂材料からなるカバーに対しても、ワンピースゴルフボールのように表面がゴム材料のボール本体に対しても、直接マーキングを印刷することができる。特に、アイオノマーを含有する樹脂製カバーへ直接マーキングを印刷するのに用いられるインキとして好適である。本発明のインキ組成物の主成分たるエポキシ樹脂が、アイオノマーに対して親和性が高く、密着性のよいマーキングを形成できるためと考えられる。但し、本発明のマーキング印刷用インキは、ゴルフボール本体に下塗りを行なった後、マーキング印刷する従来の印刷方法に適用することもできる。
【0039】
次に、本発明のマーキング印刷方法について説明する。本発明のマーキング印刷方法は、上記のように前処理を行うことによって粗面化されたゴルフボール本体表面に、本発明のマーキング印刷用インキ組成物を用いて、パッド印刷法によりマーキングを印刷する。
【0040】
前述のように、対象となるゴルフボール本体としては、ゴム製コアまたは糸巻きコアに、アイオノマーを主成分とする熱可塑性樹脂材料からなるカバーを有するマルチピースゴルフボール本体であってもよいし、表面がゴム材料であるワンピースゴルフボール本体であってもよい。
【0041】
パッド印刷法とは、マーキング形状の凹部にインキを充填し、この凹部にパッドを押し付けることによりマーキング形状のインキをパッドに転写し、次いでパッドをゴルフボール本体表面に押し付けることにより、マーキング形状のインキをゴルフボール本体に転写する印刷方法である。このようなパッド印刷は、ディンプルのような多数の凹部を有するボール本体表面にも良好に印刷することができる点で、ゴルフボールのマーキング印刷方法として適している。また、本発明のマーキング印刷用インキは、転写性に優れているので、パッドを介してマーキングを画成するマーキング印刷用インキをゴルフボール本体へ転写するようなパッド印刷に好適である。
【0042】
印刷後、ゴルフボール本体表面に直接印刷されたマーキング、即ち本発明のインキで形成されるマーキングを乾燥硬化させる。乾燥硬化工程は、放置しておくだけでもよいし、硬化反応を促進するために30〜70℃の熱風を当てることによって行ってもよい。
【0043】
乾燥後、仕上げに、マーキングを含めてゴルフボール本体表面全体にクリアペイントを塗装することが好ましい。得られるゴルフボールの外観を向上させるとともに、マーキング保護の点からも有効である。クリアペイント層は1層であってもよいし、プライマーコート、トップコートという2回塗りであってもよい。
【0044】
ここで用いられるクリアペイントとしては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂系ペイント等の従来より用いられているクリアーペイントを用いることができるが、好ましくはウレタン樹脂系ペイントが好適であり、下地との密着性を考慮して選択することが望ましい。上記ウレタン樹脂系ペイントとしては、複数のOH基を有するポリオールを含む主剤と複数のNCO基を有するイソシアネートを含む硬化剤とからなる2液型ウレタン系ペイントが好適に用いられる。
【0045】
現在、ゴルフボールの重量は、ラージサイズボールの場合ルール上、45.92g以下と定められているが、下限についての規格はない。本発明のゴルフボールは、重量44.0〜45.8g、好ましくは44.2〜45.8gを有する。上記ボール重量が44.0gより軽いと飛行中の慣性を失い、飛行後半で失速して飛距離が低下し、45.8gより重いと打球感が重く悪くなる。
【0046】
また、本発明のゴルフボールの直径は、41.0〜44.0mmとすることができるが、ラージサイズボールの規格に適する42.67mm以上とするのがよく、通常は約42.75mmとする。
【0047】
【実施例】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0048】
(実施例1〜5および比較例1〜6)
コアの作製
以下の表1に示す配合のコア用ゴム組成物を混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で160℃で13分間加熱プレスすることにより直径39.3mmを有する球状のコアを得た。
【0049】
【表1】
【0050】
(注1)JSR(株)から商品名「BR11」で市販のポリブタジエンゴム
【0051】
カバー組成物の調製
以下の表2に示した配合の材料を、二軸混練型押出機によりミキシングして、ペレット状のカバー用組成物を調製した。押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は押出機のダイの位置で200〜260℃に加熱された。
【0052】
【表2】
【0053】
(注2)商品名、三井デュポンポリケミカル(株)製のナトリウムイオン中和エチレン‐メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
(注3)商品名、三井デュポンポリケミカル(株)製の亜鉛イオン中和エチレン‐メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
(注4)商品名、三井デュポンポリケミカル(株)製のナトリウムイオン中和エチレン‐メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
【0054】
ゴルフボール本体の作製
上記のカバー用組成物を、上記のように得られたコア上に直接射出成形することによりカバー層を形成し、直径42.7mmを有するツーピースゴルフボール本体を作製した。上記カバー成形用上下金型は、半球状キャビティを有し、ディンプル付きで、ディンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねている。上記ホールドピンを突き出し、コアを投入後ホールドさせ、80トンの圧力で型締めした金型に210℃に加熱した樹脂を0.3秒で注入し、30秒間冷却して型開きしてゴルフボール本体を取り出した。
【0055】
マーキング印刷
ゴルフボール本体の表面をサンドブラスト処理した後、インキ組成物をパッド印刷することによりマーキングを印刷し、クリアーペイントを塗装してゴルフボールを仕上げた。尚、上記インキ組成物は、ナビタス社製「PAD‐EPHインキ」100gに以下の表3および4に示した配合比を有するポリイソシアネート硬化剤15gおよび溶剤(芳香族混合炭化水素)20gを混合することにより調製した。尚、「PAD‐EPHインキ」には、末端にOH基を有するエポキシ樹脂、顔料、艶消剤、消泡剤および溶剤を含有する。得られたインキ組成物のポットライフを測定し、得られたゴルフボール表面のマーキングに関して、外観および耐久性を評価し、その結果を同表に示す。試験方法は以下の通りとした。
【0056】
(試験方法)
(1)マーキング印刷用インキ組成物のポットライフ
調製したインキ組成物を40℃のオーブン中に置き、ゲル化するまでの時間を測定することにより、インキ組成物のポットライフを決定した。
(2)マーキング外観
(i)ピンホール
ゴルフボール本体の全体にマーキングを印刷し、マーキング印刷後のゴルフボール50個の表面を目視観察してピンホールの有無を確認することによって、マーキングの外観を評価した。評価基準は以下の通りである。
評価基準
○:ピンホールなし。
△:50個中5個未満のゴルフボールにピンホールが発生。
×:50個中5個以上のゴルフボールにピンホールが発生。
【0057】
(ii)インキ転写汚れ
ゴルフボール本体の全体にマーキングを印刷し、マーキング印刷後のゴルフボール50個の表面を目視観察して他のゴルフボールからのマーキングインキの転写汚れの有無を確認することによって、マーキングの外観を評価した。評価基準は以下の通りである。
評価基準
○:インキ転写汚れなし。
△:50個中5個未満のゴルフボールにインキ転写汚れが発生。
×:50個中5個以上のゴルフボールにインキ転写汚れが発生。
【0058】
(3)マーキング耐久性
ツルーテンパー社製スイングロボットにアイアン5番クラブ(I#5)を取付け、ヘッドスピード34m/秒で各ゴルフボールを150回繰り返し打撃した後、マーキングの剥離程度を目視観察により評価した。評価基準は以下の通りである。
評価基準
◎:マーキングの剥離なし。
○:マーキングの剥離面積が全マーキングの5%以下。
△:マーキングの剥離面積が全マーキングの5%を超え20%以下。
×:マーキングの剥離面積が全マーキングの20%を超える
【0059】
(試験結果)
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
(注5)ポリイソシアネートA:ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート(住友バイエルウレタン(株)製の「デスモジュール N‐3390」)
(注6)ポリイソシアネートB:ヘキサメチレンジイソシアネートのビューレット型ポリイソシアネート(住友バイエルウレタン(株)製の「スミジュール N‐3200」)
(注7)ポリイソシアネートC:イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート(住友バイエルウレタン(株)製の「デスモジュール Z‐4370」)
【0062】
以上の結果から、実施例1〜5の本発明のマーキング印刷したゴルフボールは、比較例1〜6のゴルフボールに比較すると、繰り返し打撃後のマーキングの耐久性に優れ、かつマーキングの外観が良好であることがわかった。
【0063】
これに対して、比較例1のゴルフボールでは、マーキング印刷用インキ組成物の硬化剤中のポリイソシアネートAが多く、ポリイソシアネートCが少ないため、インキ組成物のポットライフが長くなって硬化が遅くなり、インキ転写汚れが多く発生し外観が悪いものとなった。比較例2のゴルフボールでは、マーキング印刷用インキ組成物の硬化剤中のポリイソシアネートAが少ないため、印刷されたマーキングが脆くて耐久性が悪いものであった。比較例3のゴルフボールでは、マーキング印刷用インキ組成物の硬化剤中のポリイソシアネートBが多く、ポリイソシアネートCが少ないため、インキ組成物のポットライフが長くなって硬化が遅くなり、インキ転写汚れが多く発生し外観が悪いものとなった。
【0064】
比較例4のゴルフボールでは、マーキング印刷用インキ組成物の硬化剤中のポリイソシアネートBが少ないため、インキ組成物の主剤との相溶性が低下してピンホールが多く発生し外観が悪いものとなった。比較例5のゴルフボールでは、マーキング印刷用インキ組成物の硬化剤中のポリイソシアネートCが少ないためインキ組成物のポットライフが長くなって硬化が遅くなり、インキ転写汚れが多く発生し外観が悪いものとなった。比較例6のゴルフボールでは、マーキング印刷用インキ組成物の硬化剤中のポリイソシアネートCが多いため、インキ組成物の主剤との硬化反応が速くてポットライフが短くなった。
【0065】
【発明の効果】
本発明によれば、マーキング印刷用インキ組成物に末端にOH基を有するエポキシ樹脂、ポリイソシアネート硬化剤および着色剤を必須成分として含有することにより、マーキングの印刷に際して下塗り処理を必要とせずゴルフボール本体表面に直接印刷することが可能であり、良好な外観を有し、かつ繰り返し打撃後の耐久性に優れるマーキングを印刷したゴルフボールを提供し得たものである。
Claims (2)
- 末端にOH基を有するエポキシ樹脂、ポリイソシアネート硬化剤および着色剤を必須成分として含有するインキ組成物によりマーキングが印刷されているゴルフボールであって、
該硬化剤が、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型ポリイソシアネート25〜35%、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるビューレット型ポリイソシアネート25〜35%およびイソホロンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型ポリイソシアネート35〜50%を含有することを特徴とするゴルフボール。 - (a)ゴルフボール本体を作製する工程、
(b)研磨またはブラスト処理、および洗浄から成る群から選択される1つまたは2以上を行って、ゴルフボール本体の表面を前処理する工程、
(c)前記インキ組成物を用いてパッド印刷法により、該前処理したゴルフボール本体の表面にマーキングを印刷する工程、および
(d)該マーキングを印刷したゴルフボール本体の表面にペイントを塗装する工程
を含む請求項1記載のゴルフボールの製造方法。
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