JP2004084317A - 地中構造物の沈埋工法 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡易に沈設作業を行うことができる地中構造物の沈埋工法にする。
【解決手段】安定液Bを供給しながら地盤Gを掘削することにより安定液Bで満たされた掘削溝2を形成し、この掘削溝2内に地中構造物1を沈設する。この沈設は、地中構造物1を、掘削溝2内に紐状部材17で吊持することにより行う。
【選択図】図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、地中構造物の沈埋工法に関する。より詳しくは、安定液で満たされた掘削溝を形成し、この掘削溝内に地中構造物を沈設する工程を含む地中構造物の沈埋工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
下水道管やボックスカルバートなどの地中構造物を沈埋する工法として、近年、安定液掘削による沈埋工法(いわゆるプラス工法)が急速に普及している。この工法においては、ベイトナイト泥水などの安定液を供給しながらパワーショベルなどで地盤を掘削することにより安定液で満たされた掘削溝を形成し、この掘削溝内に地中構造物を、この地中構造物に固着されたゲビン棒で吊持して沈設する。そして、例えば、掘削溝内の安定液をセメントミルク等の固化材で置き換え、あるいは安定液中に固化材を添加しエア攪拌などの攪拌を行うことによって安定液を固化し、もって地中構造物を沈埋する。
【0003】
この工法は、掘削に伴う土留工や地盤改良工が不要となるほか、工事中の水替を必要としないので周辺地盤に対する影響が少なく、また、掘削溝内に作業員が入ることがないので安全性が高いなど多くの利点があり、大変有用なものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の沈埋工法は、地中構造物にゲビン棒を固着し、地中構造物をかかるゲビン棒で吊持して掘削構内に沈設するものであったため、周囲の環境などによっては、作業に不便を伴う場合があった。例えば、電線などを原因とする高さ制限があると、ゲビン棒の固着作業に不便を伴う。
【0005】
そこで、本発明の主たる課題は、簡易に地中構造物の沈設作業を行うことができる地中構造物の沈埋工法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明は、次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
安定液を供給しながら地盤を掘削することにより安定液で満たされた掘削溝を形成し、この掘削溝内に地中構造物を沈設する地中構造物の沈埋工法であって、
前記地中構造物を、前記掘削溝内に紐状部材で吊持して沈設することを特徴とする地中構造物の沈埋工法。
【0007】
(作用効果)
地中構造物を、掘削溝内に、紐状部材で吊持して沈設するので、ゲビン棒で吊持して沈設する従来の工法に比して簡易な工法となる。
【0008】
<請求項2記載の発明>
地中構造物を、その上に載置されている目盛りを有する棒材で抑え込んで、掘削溝内に吊持し、
前記目盛りを基準に、前記地中構造物の沈設位置を確認する請求項1記載の地中構造物の沈埋工法。
【0009】
(作用効果)
地中構造物を、その上に載置されている棒材で抑え込んで、掘削溝内に吊持するので、安定液からの抵抗や地中構造物自体の浮力などを原因とする紐状部材のたわみを防止することができる。したがって、地中構造物の現在位置を正確に把握することができる。
しかも、抑え込みに利用する棒材は目盛りを有し、この目盛りを基準に地中構造物の沈設位置を確認するので、簡易でありながら正確な位置に地中構造物を沈設することができる工法となる。
【0010】
<請求項3記載の発明>
安定液を供給しながら地盤を掘削することにより安定液で満たされた掘削溝を形成し、この掘削構内にその形成方向に沿って地中構造物を沈設する地中構造物の沈埋工法であって、
前記地中構造物を、前記掘削溝内に紐状部材で吊持し、
前記地中構造物上の溝形成方向に異なる少なくとも2ヶ所以上の部位に載置されている棒材の水平位置を基準に、前記地中構造物の沈設位置を確認することを特徴とする地中構造物の沈埋工法。
【0011】
(作用効果)
地中構造物を、掘削溝内に、紐状部材で吊持して沈設するので、ゲビン棒で吊持して沈設する従来の工法に比して簡易な工法となる。
また、地中構造物上の溝形成方向に異なる少なくとも2ヶ所以上の部位に載置されている棒材の水平位置を基準に、地中構造物の沈設位置を確認するので、簡易でありながら正確な位置に地中構造物を沈設することができる工法となる。
【0012】
<請求項4記載の発明>
安定液を供給しながら地盤を掘削することにより安定液で満たされた掘削溝を形成し、この掘削溝内に地中構造物を沈設する地中構造物の沈埋工法であって、
紐状部材に備えられた釣針状のフック部材を前記地中構造物に引っ掛け、前記地中構造物を前記紐状部材で吊持して沈設し、
沈設された地中構造物が、少なくとも位置固定されるように前記掘削溝内を固化し、
前記紐状部材の緊張状態を解いた後、前記フック部材の離間部と実質的に対向する針部に取り付けられたフック操作紐を地上から引いて、前記地中構造物から前記フック部材を外すことを特徴とする地中構造物の沈埋工法。
【0013】
(作用効果)
紐状部材に備えられた釣針状のフック部材を地中構造物に引っ掛け、地中構造物を紐状部材で吊持して沈設するので、ゲビン棒で吊持して沈設する従来の工法に比して簡易な工法となる。
【0014】
また、沈設された地中構造物が、少なくとも位置固定されるように掘削溝内を固化し、紐状部材の緊張状態を解いた後、フック部材の離間部と実質的に対向する針部に取り付けられたフック操作紐を地上から引いて、地中構造物からフック部材を外すので、簡易に紐状部材を回収することができ、したがって資源を有効利用することができる簡易な工法となる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明に係る工法においては、下水道管などの管体やボックスカルバート、あるいは複数の構造物が一体化されたものなど、種々の地中構造物を沈埋の対象とすることができる。以下の本実施の形態では、下水道管などの管体をベースとする地中構造物を沈埋する場合を例に、説明する。
【0016】
(地中構造物)
図1及び図2に示すように、本実施の形態の地中構造物1は、下水道管などの管体10と、この管体10の下部に備えられた下部H型鋼11と、管体10の上部に備えられた上部溝型鋼12と、から主になる。下部H型鋼11及び上部溝型鋼12は、ワイヤー13によって管体10に固定されている。下部H型鋼11は、管体10の補強及び浮力への対抗を目的として備えられている。
【0017】
従来の工法においては、図6に示すように、上部溝型鋼12の上面に、長手方向に間隔をおいて、カップラー14,14…を固着させ、各カップラー14に、ゲビン棒20を螺合させていた。しかし、本発明の工法においては、特に図2に示すように、地中構造物1を、紐状部材17のみによって吊持して沈設するので、かかるカップラー14や、ゲビン棒20を備える必要はない。したがって、例えば、電線などを原因とする高さ制限がある場合においても、ゲビン棒の固着作業に伴う不便が生じない。
【0018】
なお、図1に示すように、本実施の形態では、管体10の人孔3側開口端に、仮蓋15及び注水エア抜き16が備えられている。
【0019】
(沈設)
地中構造物1の沈設にあたっては、まず、図2に示すように、ガイドウォール4,4を構築するとともに、その間の地盤Gを、ベントナイト泥水などの地盤安定液Bを供給しながら、パワーショベルなどの掘削機で掘削し、掘削溝2を形成する。図1に示すように、この掘削溝2の長手方向端部には、あらかじめ又はその後に人孔3を埋設する。
【0020】
以上の作業が完了したら、図2に示すように、地中構造物1を、掘削溝2内に、可撓性を有する棒などの部材、チェーン、ワイヤー、ロープなどの紐状部材17(なお、紐状部材には、可撓性部材をも含む趣旨である。)によって、吊持して沈設する。従来の工法においては、可撓性を有しないゲビン棒20で吊持して沈設していたのと対比される。
【0021】
地中構造物1を吊持するにあたっては、図2に示すように、地中構造物1の上に、測量用スタッフなどの目盛り18Aを有する棒材18を載置し、地中構造物1を、かかる棒材18で抑え込むとよい。この抑え込みにより、紐状部材17のたわみが防止され、したがって地中構造物1の現在位置を正確に把握することができるようになる。また、かかる棒材18は目盛り18Aを有するので、この目盛り18Aを基準に地中構造物1の沈設位置を確認することができ、簡易でありながら正確な深さ位置に地中構造物1を沈設することができるようになる。棒材18として、測量用スタッフを使用した場合は、例えば、図2に示すように、レベル19によって目盛り18Aを読み取ることができる。
【0022】
棒材18は、紐状部材17のたわみを防止するためのものであり、地中構造物1を吊持するためのものではない。したがって、地中構造物1の上に載せるだけで足り、接着、螺合などによって固着されている必要はない。
【0023】
また、棒材18の地中構造物1に対する載置角度は、特に限定されるものではないが、その目盛り18Aによって深さ位置を確認する場合は、深さ位置を算出しうるよう載置角度を把握しておく必要がある。この点、本実施の形態のように、棒材18を、紐状部材17に沿わせて載置すれば、載置角度が明らかになるので好ましい。
【0024】
さらに、本実施の形態のように、地中構造物1が、掘削構2内に、この掘削溝2の形成方向に沿って沈設されるものである場合は、棒材18を、地中構造物1上の溝形成方向に異なる少なくとも2ヶ所以上の部位に載置し、載置された棒材18の水平位置を基準に、地中構造物1の沈設位置を確認するのが好ましい。従来の工法においては、地中構造物1をゲビン棒20で吊持したため、地中構造物1の水平位置を正確に設定することができたが、本発明の工法においては、紐状部材17で吊持するため、例えば、図3に示すように、地中構造物1が掘削溝2に沿って設置されない可能性がある(設置予定位置を一点鎖線で示してある。)。しかし、本実施の形態のように、棒材18を、地中構造物1上の溝形成方向に異なる少なくとも2ヶ所以上の部位に載置し、載置された棒材18,18の水平位置を基準に、地中構造物1の沈設位置を確認すれば、かかるおそれを解消することができる。地中構造物1の沈設位置の調整は、例えば、紐状部材17を操作することにより行うことができる。
【0025】
地中構造物1の水平位置を確認するという観点からは、棒材18が目盛り18Aを有する必要はない。しかし、目盛り18Aを有する場合は、地中構造物1の水平位置を確認するのと同時に、その深さ位置をも確認することができ、好ましいものとなる。
【0026】
本実施の形態において、紐状部材17の繰り出しは、門型足場クレーンなどの架台22を用い、この架台22に取り付けられたチェーンブロック23によって行っている。また、紐状部材17は、その先端部に、図4に示すように、釣針状のフック部材40が備えられており、このフック部材40を前記ワイヤー13に引っ掛け、地中構造物1を吊持するようになっている。
【0027】
(地中構造物の位置固定)
地中構造物1を沈設したら、次に、少なくとも地中構造物1が位置固定されるように、掘削溝1内を固化する。この掘削溝1内の固化は、従来の工法と同様、掘削溝1内の安定液Bを固化材で置き換えることにより、行うことができる。
【0028】
本実施の形態において、かかる置き換え作業は、図5に示すように、安定液B中に注入管46を挿入し、この注入管46を通して安定液Bよりも比重の大きい水密性固化材を注入することによって行う。注入管46は、はじめ掘削溝2の底部近傍に位置するように挿入し、水密性固化材の注入にあわせて順次引き上げる。このようにして、少なくとも地中構造物1が位置固定されるまでの安定液Bを、好ましくは掘削溝1の底部から上部溝型鋼12の上縁よりより若干上方(例えば、0〜60cm上方、好ましくは20〜40cm上方)まで(図中にDと示す範囲)の安定液Bを、水密性固化材に置き換える。水密性固化材は、時間とともに固化する。
【0029】
かかる水密性固化材による置き換え作業は、地中構造物1の位置固定のために行うものであるから、地中構造物周辺部(例えば、構造物の周り10〜20cm)の安定液Bについてなされればよく、地中構造物から幅方向に離れた部分についてなされる必要はない。
【0030】
本作業で使用する水密性固化材は、作業の迅速化という観点からは、瞬結性であるのが好ましい。瞬結性の固化材としては、例えば、高炉セメントB種200〜240kg/m、ベントナイト60〜80kg/m及び急硬剤(例えば、デンカES)10〜30L/mを混合した、透水係数10−4cm/s以下のものを、好ましくは10−5〜10−6cm/sのものを挙げることができる。
【0031】
なお、図中の30は、掘削溝2内を先行作業領域31と後行作業領域32に仕切るための仕切壁である。かかる仕切壁30を設けることで、先行作業領域31における固化作業を行うのと同時に、後行作業領域32において掘削溝2を延長形成することができるようになる。これにより、管体10が順次接続されるものである場合においても、効率的に作業を行うことができる。
【0032】
(紐状部材の回収)
以上のようにして、地中構造物1の位置固定がなされたら、本実施の形態では、次に、紐状部材17の回収を行う。この回収方法は、特に限定されるものではないが、以下の方法によると好ましいものとなる。
すなわち、まず、図4の(1)に示すように、あらかじめ(地中構造物1を沈設する前に)前記フック部材40の離間部41と実質的に対向する針部42にフック操作紐43を取り付けておく。そして、前記位置固定がなされたら、図4の(2)に示すように、紐状部材17の緊張状態を解き、図4の(3)に示すように、フック操作紐43を地上から、離間部41の反対側に引く。これにより、地中構造物1からフック部材40が外れ、紐状部材17を回収しうるようになる。したがって、ゲビン棒20の取り外し作業を必要とした従来の工法に比して、著しく簡易に資源回収を行うことができる工法となる。
【0033】
(その他)
(1) 紐状部材17の回収作業が終了したら、掘削溝2内の残りの安定液Bを固化材に置き換える。この置き換え作業によって不要となる安定液Bは、ポンプなどを利用して吸い上げ、後続掘削溝(図5でいう後行作業領域32)を削溝する際に供給する。これにより、より経済的な工法になる。
【0034】
(2) 本実施の形態では、安定液を固化材で置き換えたが、安定液に固化材を添加し、両者を攪拌することにより、固化することもできる。
【0035】
(3) 安定液と置き換える固化材は、例えば、掘削により発生した掘削土と混合して利用することもできる。この利用を行えば、掘削土の廃棄費用が削減される。
【0036】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば、簡易に沈設作業を行うことができる地中構造物の沈埋工法となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】地中構造物の沈設前段取り状態の正面図である。
【図2】地中構造物の沈設状態の側面図である。
【図3】地中構造物の沈設状態の平面模式図である。
【図4】フック部材の取り外し方を説明するための図である。
【図5】安定液を固化材に置き換える作業を説明するための図である。
【図6】従来の工法における地中構造物の沈設前段取り状態の正面図である。
【符号の説明】
1…ガイドウォール、2…掘削溝、3…人孔、10…管体、11…下部H型鋼、12…上部溝型鋼、13…ワイヤー、14…カップラー、15…仮蓋、16…注水エア抜き、17…紐状部材、18…棒材、18A…目盛り、20…ゲビン棒、22…架台、23…チェーンブロック、30…仕切壁、31…先行作業領域、32…後行作業領域、40…フック部材、43…操作紐、46…注入管、B…安定液、G…地盤。

Claims (4)

  1. 安定液を供給しながら地盤を掘削することにより安定液で満たされた掘削溝を形成し、この掘削溝内に地中構造物を沈設する地中構造物の沈埋工法であって、
    前記地中構造物を、前記掘削溝内に紐状部材で吊持して沈設することを特徴とする地中構造物の沈埋工法。
  2. 地中構造物を、その上に載置されている目盛りを有する棒材で抑え込んで、掘削溝内に吊持し、
    前記目盛りを基準に、前記地中構造物の沈設位置を確認する請求項1記載の地中構造物の沈埋工法。
  3. 安定液を供給しながら地盤を掘削することにより安定液で満たされた掘削溝を形成し、この掘削構内にその形成方向に沿って地中構造物を沈設する地中構造物の沈埋工法であって、
    前記地中構造物を、前記掘削溝内に紐状部材で吊持し、
    前記地中構造物上の溝形成方向に異なる少なくとも2ヶ所以上の部位に載置されている棒材の水平位置を基準に、前記地中構造物の沈設位置を確認することを特徴とする地中構造物の沈埋工法。
  4. 安定液を供給しながら地盤を掘削することにより安定液で満たされた掘削溝を形成し、この掘削溝内に地中構造物を沈設する地中構造物の沈埋工法であって、
    紐状部材に備えられた釣針状のフック部材を前記地中構造物に引っ掛け、前記地中構造物を前記紐状部材で吊持して沈設し、
    沈設された地中構造物が、少なくとも位置固定されるように前記掘削溝内を固化し、
    前記紐状部材の緊張状態を解いた後、前記フック部材の離間部と実質的に対向する針部に取り付けられたフック操作紐を地上から引いて、前記地中構造物から前記フック部材を外すことを特徴とする地中構造物の沈埋工法。
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