JP2004084081A - ポリ乳酸系繊維およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のポリ乳酸系繊維は、ポリ乳酸系樹脂からなる繊維であって、総繊度が250〜1850dtexであり、単糸繊度が1〜15dtex、強度が4.0〜6.0cN/dtex、120℃における乾熱収縮率が0.5〜2.5%であることを特徴とするものである。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、従来にない低収縮特性と強度に優れたポリ乳酸系繊維であって、養生メッシュや繊維補強シート等の作製時に発生するポリ乳酸繊維の収縮に伴う歪みが生じることがないポリ乳酸系繊維およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、コンポストバッグ、養生メッシュ等に用いられる繊維補強シートには、これらの用途に対して十分な強度が得られるためポリエステル繊維等が多く用いられていたが、使用後廃棄される際に分解性が悪く、環境に対して負荷をかける事となっていた。ここで、生分解性繊維は土壌中等で微生物の働きにより分解することから、廃棄の際の環境への負荷がない。現在、これらの観点から生分解性繊維への代替が進められており、生分解性の繊維補強シートに用いられる原糸については、融点が高いことやハンドリングのしやすさからポリ乳酸系の生分解性ポリマーが用いられている。しかし、養生メッシュなどの繊維補強シート等は、整経後樹脂を表面にコーティングするため、高温の熱セットが行われる。この際、原糸が熱セットにより収縮すると、繊維補強シートに歪みを生じさせる原因となり、シートの品位を低下させる。
【0003】
特開平11−131323号公報に記載されるように、ポリ乳酸繊維は4.4cN/dtex(5.0g/d)と、これらの用途に使用できる強度を得ることができるものの、熱収縮が大きく、このようなメッシュ、繊維補強シート用として使用される場合には整経後の熱セットにおいて、成型品の寸法に変化を生じてしまうため問題となっていた。
【0004】
また、該特開平11−131323号公報に記載されるポリ乳酸繊維の製造方法は、延伸前の予熱を行わず、かつ1段延伸で繊維を製造するため、延伸倍率の向上が見込めず、したがって更なる高強度化を達成することが難しい。また、同公報には、加熱下で糸条に弛緩処理を行い製品の巻きフォームを整える旨記載されているが、延伸糸の乾熱収縮を低減することについては記載がない。この製造方法のように、巻き取りワインダーと最終ローラーの間において、弛緩処理を行うのみでは、低収縮化に限界があるため、本発明の用途に適する程度の低収縮化を図ることができなかったものである。このようなことから、同公報に記載のポリ乳酸繊維製造方法では、高強度・低収縮のポリ乳酸繊維を製造することができなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、生分解性を有し、かつ、高強度で低収縮性を有するポリ乳酸系繊維および、かかる繊維を安定して製造することができる製造方法を提供せんとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明のポリ乳酸系繊維は、ポリ乳酸系樹脂からなる繊維であって、総繊度が250〜1850dtexであり、単糸繊度が1〜15dtex、強度が4.0〜6.0cN/dtex、120℃における乾熱収縮率が0.5〜2.5%であることを特徴とするものである。
【0007】
また、かかるポリ乳酸系繊維の製造方法は、紡出された糸条を延伸前に80℃〜ポリ乳酸系繊維の融点−20℃の表面温度を有する加熱ローラーを用いて予熱し、80℃〜融点の表面温度を有する加熱ローラーにより糸条を多段延伸し、かつポリ乳酸系繊維の融点−40℃〜該ポリ乳酸系繊維の融点の表面温度を有する加熱ローラーで熱処理した後1.5〜10%の弛緩率を与えて糸条を巻き取ることを特徴とする。
【0008】
ここで、本発明のポリ乳酸系繊維の製造方法は、以下の場合に、更なる効果を発揮することができる。
【0009】
▲1▼90〜150℃の表面温度を有する加熱ローラーで予熱する。
【0010】
▲2▼100〜150℃の表面温度を有する加熱ローラーで多段延伸を行う。
【0011】
▲3▼3段以上の多段延伸を行う。
【0012】
▲4▼ポリ乳酸系繊維の融点−20℃〜ポリ乳酸系繊維の融点の表面温度を有する加熱ローラーを用いて熱処理を行う。
【0013】
▲5▼3%以上の弛緩率を走行糸条に与える。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0015】
本発明に用いられる生分解性繊維は、ポリ乳酸およびポリ乳酸を主体とする共重合物、ポリ乳酸またはポリ乳酸を主体とする共重合物からなる。
【0016】
本発明のポリ乳酸系繊維を製造するための乳酸としては、D体のみ、L体のみ、D体とL体の混合体のいずれでも良い。ポリ乳酸を主体とする共重合物としては、前記乳酸と、例えばε―カプロラクトン等の環状ラクトン類、α―ヒドロキシイソ酪酸、α―ヒドロキシ吉草酸等のα−オキシ酸類、エチレングリコール、1,4−ブタンジンオール等のグリコール類、コハク酸、セバシン酸等のジカルボン酸類から選ばれるモノマーの一種または二種以上とを共重合したものが挙げられる。中でもポリマーの重合特性から、環状ラクトン類およびグリコール類が好ましい。共重合の割合としては特に限定されないが、乳酸100重量部に対して、共重合させるモノマーは100重量部以下が好ましく、1〜50重量部がより好ましい。
【0017】
また、上記生分解性樹脂が水酸基を持つ化合物によって該生分解性樹脂中のカルボキシル基をエステル化されてなるものであっても良い。水酸基を持つ化合物としては、例えばオクチルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール等の炭素数が6以上の高級アルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール等のグリコール類が挙げられる。水酸基を持つ化合物で熱可塑性樹脂の分子末端のカルボキシル基をエステル化処理することにより、溶融紡糸時の熱安定性および溶融紡糸後の繊維の経時安定性を改善することができる。中でも延伸性の観点から、炭素数6〜18の高級アルコールが好ましい。また、同様の効果を得る目的でカルボキシル基にカルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、アジリジン化合物から選ばれる1種または2種以上の化合物を反応させても良い。
【0018】
生分解性樹脂の合成は、既知の方法で行えば良く、例えば、触媒存在下にてL−ラクチドを開環重合し、必要に応じて再沈殿精製し、熱可塑性樹脂を得る。また、共重合するモノマー、またはオリゴマーとL−ラクチドを触媒存在下にて開環重合し必要に応じ再沈殿精製し共重合生分解性樹脂を得る。
【0019】
また、本発明のポリ乳酸系繊維には、例えば、可塑剤、紫外線安定剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、糸摩擦低減剤、抗酸化剤あるは着色願料として無機微粒子や有機化合物などの機能薬剤や添加剤を必要に応じて添加、含有させてもよい。この際、ポリ乳酸系繊維製造における製糸性の観点から、これらの配合量は繊維重量に対して0.005〜1.0wt%が好ましい。
【0020】
また、かかる着色含量としては、酸化チタン、カーボンブラックなどの無機顔料の他、シアニン系、スチレン系、フタロシアイン系、アンスラキノン系、ペリノン系、イソインドリノン系、アンスラキノン系、ベリノン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、キノクリドン系、チオインディゴ系などのものを使用することができる。
【0021】
本発明のポリ乳酸系繊維は、総繊度が250〜1850dtexであることを要する。総繊度がこの範囲よりも大きくなる場合には繊維補強用シートとした場合に自重が重くなるため好ましくない。また、250dtex以下の場合には、繊維の強力が低くなるため、補強材として機能を十分発揮しないため好ましくない。本発明範囲の場合には、重量、強度のバランスが好ましく、繊維補強シートに用いるものとして特に適している。また、本発明においては、単糸繊度が1〜15dtexであることを要する。すなわち、単糸繊度が1dtex以下の場合には、製糸の際に糸切れを多発するため好ましくなく、単糸繊度が15dtex以上の場合には、糸条の冷却効率が悪くなるため高強度を得ることが難しくなる。
【0022】
また、本発明においては強度が4.0〜6.0cN/dtexであることを要する。すなわち、強度が4.0cN/dtex以下である場合には、養生ネットや土木シート等として使用した場合に繊維補強シートの強度が不足し、低荷重で破断するため本発明の目的を達成することができない。4.0cN/dtex以上である場合には、これらの用途として使用した場合であっても十分な強度を発揮する。より好ましくは4.5cN/dtex以上である。強度はより高い方が繊維補強材としては好ましいが、本願の目的とする低熱収縮特性の満足するものを得ようとするとポリマーの特性から自ずと限界がある。従って強度が6.0cN/dtexを越える場合には目的とする低熱収縮の糸が得られず、また生産時に糸切れを多発し生産性を低下させる等の問題があり好ましくない。
【0023】
また本発明では、120℃における乾熱収縮率が0.5〜2.5%であることが重要である。乾熱収縮率が2.5%を越えるとシートに樹脂コーティングをする際に原糸が大きく熱収縮するため繊維補強シートに歪みを生じ、剃りが発生するため好ましくない。乾熱収縮率は限りなく0%に近い方が後工程で熱加工される繊維補強材としては好ましいが、ポリマーの特性、製糸時の弛緩処理等で限界があり、乾熱収縮率が0.5%を下回ると目標の強力が得られなくなる。また、製糸時にたるみ現象が生じて糸切れが多発する等の問題があり好ましくない。
【0024】
本発明の繊維を養生メッシュート、土木シート等の繊維補強シート、ターポリン等に用いた場合には、表面を樹脂でコーティングする際の熱セットによる収縮を防ぐことができるため本発明の効果がより発揮される。
【0025】
本発明のポリ乳酸系繊維は、上記ポリ乳酸系樹脂を通常の溶融紡糸法により得ることができる。溶融紡糸時の溶融温度は融点以上250℃以下であることが好ましい。250℃を越えると熱劣化を生じるからである。
【0026】
次に本発明のポリ乳酸系繊維の製造方法の詳細について記述する。該生分解性ポリマを、エクストル−ダ型紡糸機を用いて溶融した後、紡糸パック中で濾過し、口金の細孔から紡出する。紡出糸は冷却固化された後、紡糸油剤を付与され引き取りロ−ルに捲回して引き取られる。
【0027】
ここで、本発明のポリ乳酸系繊維の製造方法の特徴として、
(1) 紡出された糸条に対し延伸前に80℃〜ポリ乳酸系繊維の融点−20℃の表面温度を有する加熱ローラーを用いて予熱を行うことが重要である。更に好ましくは90〜150℃である。これは次の延伸工程で糸条をスムーズに延伸するための手段であり、80℃以上で結晶化が進むためと考えられる。つまり80℃を下回る温度で予熱を行った場合には、高倍率に延伸できず、かつ本発明の強度レベルを達成することができない。一方ポリ乳酸系繊維の融点−20℃以上の温度で予熱を行った場合には、すでに発達した繊維構造を破壊してしまうため、糸切れを引き起こし、好ましくない。このように延伸前の予熱の段階においてある程度結晶化を進めておく事が重要なのは、ポリ乳酸が脂肪族であり、PET等と異なりベンゼン環を有さない事に起因すると考えられる。
【0028】
また、
(2) 80℃〜ポリ乳酸系繊維の融点の表面温度を有する加熱ローラーにより糸条を多段延伸することが重要である。更に好ましくは100〜150℃である。
80℃以下の温度で延伸を行った場合には、十分に延伸を行うことができず、糸切れを発生する等の問題を生じる。ひいては目的とする強度の高いポリ乳酸系繊維を得ることができない。
【0029】
一方、ポリ乳酸系繊維の融点の表面温度を越えると糸切れを発生する等の問題が生じるため好ましくない。
【0030】
(3) また、ポリ乳酸系繊維は1段延伸で延伸を行った場合、一定の延伸倍率以上で表面が白濁し(失透)強度が急激に低下する事が知られている。一方多段延伸を行うことによりこの減少を抑制しつつ高延伸倍率を糸条に付与することにより、本発明の高強度を達成することができるのである。本発明のポリ乳酸系繊維の多段延伸は次のように行うのが好ましい。1段目は失透を生じる延伸倍率の80%から失透直前の倍率によって延伸をし、2段目以降の各段階においても同様に失透倍率の80%から失透直前の倍率において延伸を行うことが重要である。これにより本発明の強度の高いポリ乳酸系繊維が得られる。
【0031】
次に、
(4) ポリ乳酸系繊維の融点−40℃〜ポリ乳酸系繊維の融点の表面温度を有する加熱ローラーを用いて熱処理を行う。ポリ乳酸系繊維の融点−40℃以下の加熱ローラーで熱処理を行った場合には、糸条が走行中に収縮するための熱量を十分に得ることができない。つまり次のリラックス工程において十分なリラックス率を付与することが出来ず、目的とする低収縮性有する糸条を得ることが出来ないため好ましくない。また、ポリ乳酸系繊維の融点−20℃〜ポリ乳酸系繊維の融点の表面温度を有する加熱ローラーを用いて熱処理を行う場合には走行糸条が工程中で顕著に収縮するため好ましい。
【0032】
次に、
(5) 延伸熱処理後1.5〜10%のリラックス率で弛緩を与えた後巻き取る。リラックス率が1.5%よりも小さい場合には走行糸条の収縮応力が小さいため走行糸条が十分に収縮することができなく、本発明の低収縮性を得ることができない。リラックス率が3%以上の場合には十分に収縮させることができるため好ましい。リラックス率は低収縮のポリ乳酸系繊維を得るために可能な範囲において大きい方が好ましいが、リラックス率が10%を越えるとローラー上での糸揺れが激しくなるため糸切れを多発し、製糸が困難となる。
【0033】
また、本発明では多段延伸を行っているため、比較的繊維内の非晶部配向が揃っており、弛緩の駆動力が大きいと考えられる。つまり、上記の条件が有機的に結合することによって、高強度かつ低収縮の本発明が得られる。また、前記本発明の熱延伸糸は、2500m/分以上、好ましくは3000m/分以上、更に好ましくは4000m/分以上の速度で巻き取られる。
【0034】
次に、本発明の生分解性繊維補強シートについて記述する。本発明の生分解性繊維補強シートに用いられる樹脂はポリブチレンサクシネート系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリカプロラクトン系等が挙げられ、これらの樹脂に種々の添加物、粒子等を加えても良い。使用される樹脂の融点は、本発明のポリ乳酸系繊維の融点よりも低い必要があり、この観点からポリブチレンサクシネート系樹脂が好ましく、特にポリブチレンサクシネート・アジペートが好ましい。本発明の繊維補強シートは溶融製膜法、湿式製膜法、乾式製膜法などの周知の方法を用いることができる。
【0035】
また、本発明の生分解性シートの製法としては、ラミネート法、コーティング法、浸漬法などが可能であるが、簡便さ等からラミネート法が好ましい。ラミネート法によれば、高温高圧下で積層することで層間の接着力が強固となり、シートとして幅広長尺物への対応が可能であり、高速生産による効率化が図られる等の利点がもたらされる。
【0036】
【実施例】
以下に実施例を述べ、本発明を具体的に説明する。
【0037】
なお、明細書本文および実施例に示した物性の定義および測定法は次の通りである。
(1) 強度、伸度:JIS L−1013により、試長25cm、引張速度30cm/分の条件で測定した。伸度は最高強力時伸度である。
(2) 乾熱収縮率 : 得られた原糸をかせ状にとり、20℃、65%RHの温調室に24時間以上放置した後、試料の0.1g/dに相当する荷重をかけて測定された。長さL0の試料を無張力状態で120℃のオーブン中に30分放置した後、オーブンから取り出して前記温調室で4時間放置し、再び上記荷重をかけて測定した長さL1から次式により算出した。
乾熱収縮率(%)={(L0−L1)/L0}×100
(3) ポリ乳酸系繊維の融点 : パーキンエルマー社製DSC−7型を用いて2mgのサンプルを溶融し、液体窒素により急冷固化した後、そのサンプルを20℃/分の速度でスキャンすることによって得た熱量変化トレースから求めた。融点は最大吸熱ピークの温度とした。本発明によって得られた延伸糸の融点は168℃であった。
(4) 加熱ローラー表面温度 : 接触式温度計によって加熱ローラー表面温度を測定した。回転中の加熱ローラーに該温度計を接触させ、表示温度が安定した時の温度を加熱ローラーの表面温度とした。測定は加熱ローラーの回転軸方向に対して3点測定し、測定個所はローラー上の糸条走行位置とした。
(5) シートの歪み : 得られた繊維シートの歪みを評価した。外観に歪みが生じていないものを○、歪みが多少有るものを△、歪みが明確に確認されたものを×とした。
(6) シートの軽量性 : 得られた生分解性シートの軽量性を評価した。軽量性が極めて良いものを○、良いものを△、悪いものを×とした。
(7) 繊維の生分解性 : 堆肥中に繊維を埋設し58℃の温度で維持し、40日経過後のサンプルの表面を走査電子顕微鏡により観察した。40日経過後のサンプルの表面にボイドが観察されるものを○、観察されない、およびほとんど観察されないものを×とした。
【0038】
[実施例1]
分子量15.1万のポリ乳酸チップをエクストルーダ型溶融紡糸装置に供給して紡糸した。紡糸温度は300℃とし、15μmの空隙を有する金属フィルターを通して濾過し、孔数96個の口金を通して紡糸した。
【0039】
紡糸糸条を口金面から350mmの間を240℃の高温雰囲気下を通過させた後、約20℃の冷風を吹きつけて冷却固化させた。その後、オイリングローラーで油剤を付与し、第1ゴデットローラーで引き取り、得られた未延伸糸を一旦巻き取ることなく第1ゴデットローラー、第2ゴデットローラー間で1.86%のプレストレッチを行い、次いで第2ゴデットローラー、第3ゴデットローラー間で2.97倍に延伸し、第3ゴデットローラー、第4ゴデットローラー間で1.65倍に延伸し、第4ゴデットローラー、第5ゴデットローラー間で1.44倍の延伸を行って、第5ゴデットローラーと第6ゴデットローラーの間で3%のリラックスを行った後、3000m/分の速度でワインダーで巻取ることにより、延伸糸を得た。
【0040】
各ゴデットローラー温度は、第1ゴデットローラーが60℃、第2ゴデットローラーが95℃、第3ゴデットローラーが105℃、第4ゴデットローラーが140℃、第5ゴデットローラーが160℃、第6ゴデットローラーが非加熱とした。また、各ゴデットローラーへの糸条の捲回数は、第1ゴデットローラーが5回、第2ゴデットローラーが7回、第3ゴデットローラーが7回、第4ゴデットローラーが7回、第5ゴデットローラーが11回、第6ゴデットローラーが4.5回とした。
【0041】
得られた延伸糸は高強度を有すると共に低収縮であり本発明の用途に対して優れた特性を有するものであった。
【0042】
また、得られた延伸糸を堆肥中に埋設し、40日後のサンプルの表面を観察したところ、表面にボイドが多数観察され、分解が確認された。
【0043】
本発明の繊維補強シートはラミネート法によって本実施例により作製した繊維を用いた基布とフィルムとを積層させた。すなわち、上記ポリ乳酸系繊維を整経後、基布上にポリブチレンサクシネート・アジペート樹脂組成物を溶融温度120℃で押し出し、15kg/cm3にて加圧、冷却して50μm厚のフィルムとして該基布上に被覆させて2層積層体とし、本実施例の繊維補強シートを得た。得られた繊維補強シートには歪みがなく、優れた外観を有していた。
【0044】
得られた延伸糸の特性を表1に示す。
【0045】
[実施例2]〜[実施例8]
実施例1において、表1に示す通りに条件を変更した。得られた結果を、表1に記載した。得られた延伸糸はいずれも高強度かつ低収縮であり本発明の用途に対して優れた特性を有していた。
【0046】
[実施例9]
実施例1において巻き取り速度を5600m/分とし、その他の条件は表1に示したとおりとした。得られた延伸糸の特性等は表1に示した。表1から明らかなように、高強度かつ低収縮のポリ乳酸系繊維を得ることができた。
【0047】
[比較例1]
表1に示した条件以外は実施例1と同様の条件によって延伸糸を得た。この延伸糸は、表2に示すように、熱収縮が大きく、繊維補強シートにした場合に歪みが生じるものであった。
【0048】
[比較例2〜3]
表1に示した条件以外は実施例1と同様の条件で溶融紡糸を行った。表2に得られた結果を記載した。いずれも本発明である高強度かつ低収縮のポリ乳酸系繊維を得ることができなかった。
【0049】
[比較例4]
実施例1と同様に溶融紡糸した後、紡糸糸条を口金面から350mmの間を240℃の高温雰囲気下を通過させた後、紡糸油剤を付与し、その後第1ゴデットローラーで引き取り、第2ゴデットローラー、第3ゴデットローラーを経由した後、ワインダーを用いて3000m/分の巻き取り速度で巻き取った。第1ゴデットローラー温度を室温、第2ゴデットローラーの温度を120℃、第3ゴデットローラー温度を140℃とした。本比較例では延伸糸が失透を起こしているため強度が低いものとなり、かつ収縮が大きいものであった。巻き数は第1ゴデットローラーが5回、第2ゴデットローラーが7回とした。得られた延伸糸の強度は、表2に示すように、低く収縮は高いものであった。
【0050】
[比較例5]
実施例1において総繊度を2240dtexとなるように製糸を行った。その結果、表2に示すように、強度、収縮共に良好な結果が得られたが、シートの軽量性が悪く、本発明の用途には適しないものであった。
【0051】
[比較例6]
市販のポリエチレンテレフタレート繊維(東レ(株)製テトロン)を堆肥中に埋設し生分解性を測定した。埋設後40日経過したサンプルの表面はボイド等が見られず分解が確認されなかった。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【発明の効果】
本発明低収縮ポリ乳酸系繊維は従来のポリ乳酸系繊維と同等の強度を有するが低収縮特性に特に優れる。本発明のポリ乳酸系繊維を用ることにより養生メッシュ、繊維補強シート等の作製時に発生する収縮に伴う歪みが生じることがない。
Claims (9)
- ポリ乳酸系樹脂からなる繊維であって、総繊度が250〜1850dtexであり、単糸繊度が1〜15dtex、強度が4.0〜6.0cN/dtex、120℃における乾熱収縮率が0.5〜2.5%であることを特徴とするポリ乳酸系繊維。
- 120℃における乾熱収縮率が0.5〜2.0%であることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸系繊維。
- ポリ乳酸系繊維の紡糸・延伸方法において、紡出された糸条を延伸前に予め80℃〜ポリ乳酸系繊維の融点−20℃の表面温度を有する加熱ローラーで予熱し、80℃〜ポリ乳酸系繊維の融点の表面温度を有する加熱ローラーで多段延伸を行い、次いでポリ乳酸系繊維の融点−40℃〜該ポリ乳酸系繊維の融点の表面温度を有する加熱ローラーで熱処理した後1.5〜10%の弛緩率を与えて糸条を巻き取ることを特徴とするポリ乳酸系繊維の製造方法。
- 90〜150℃の表面温度を有する加熱ローラーで予熱することを特徴とする請求項3記載のポリ乳酸系繊維の製造方法。
- 100〜150℃の表面温度を有する加熱ローラーで多段延伸を行うことを特徴とする請求項3または4記載のポリ乳酸系繊維の製造方法。
- 3段以上の多段延伸を行うことを特徴とする請求項3〜5記載のポリ乳酸繊維の製造方法。
- ポリ乳酸系繊維の融点−20℃〜ポリ乳酸系繊維の融点の表面温度を有する加熱ローラーを用いて熱処理を行うことを特徴とする請求項3〜6記載のポリ乳酸系繊維の製造方法。
- 弛緩率が3%以上であることを特徴とする請求項3〜7記載のポリ乳酸系繊維の製造方法。
- 請求項1記載の繊維が用いられることを特徴とする生分解性繊維補強シート。
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