JP3462983B2 - ポリ乳酸繊維の製造法 - Google Patents
ポリ乳酸繊維の製造法Info
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がら、実用的に十分な弾性率と寸法安定性を有するポリ
乳酸繊維の製造法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】近年、産業廃棄物が環境を汚染するのを
防止するために、生分解性(微生物分解性又は自然分解
性)の素材を用いることが着目され、脂肪族ポリエステ
ルからなる生分解性繊維が注目されている。 【0003】生分解性繊維は、特に生ゴミ水切りネット
やコンポスト用バッグのような生活資材、紙おむつや生
理用品のような衛生材料等の分野において要望が強く、
開発が望まれているが、脂肪族ポリエステルからなる生
分解性繊維は、一般に強度や弾性率が低いものや耐熱性
に劣るものが多く、用途が限定されるものが多い。ま
た、原料ポリマーのコストが高く、工業的に安価に製造
することが困難なものも多い。 【0004】ポリ乳酸は、比較的安価にポリマーが得ら
れ、実用的な強度と耐熱性の成型物を製造することが可
能な生分解性樹脂であるが、従来の溶融紡糸法で高強度
の繊維を製造するためには、重合度の高い原料を用いる
必要があり、また、操業的に安定して製造するには生産
性の低い低速の製糸方法を採用する必要があった。 【0005】例えば、特開平7−305227号公報に
は、溶融時の重合度低下を防ぎ、高い分子量を保って製
糸することにより、高強度のポリ乳酸繊維を得る方法が
開示されている。しかし、この方法は特殊な方法で重合
したポリ乳酸を必要とし、しかも、紡糸と延伸を別工程
で行う生産性の低い方法でしか実施されていない。さら
に、ポリ乳酸繊維は、捲取時に熱処理が困難なため、高
熱時の寸法安定性に欠けるという問題を有している。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の問題
を解決し、生分解性を有しながら、実用的に十分な弾性
率と寸法安定性を有するポリ乳酸繊維を工業的に生産性
よく製造する方法を提供することを技術的な課題とする
ものである。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題を
達成するために、次の構成を有するものである。(1) 平均分子量5万〜10万、光学純度95.0〜9
9.5%のポリ−L−乳酸を溶融紡出し、紡出繊維を一
旦冷却固化した後、内壁温度が120〜170℃の筒状
加熱装置内を通過させ、集束し、油剤を付与した後、表
面速度が3000m/分以上の第1ローラで引き取り、
続く第2ローラとの間で表面速度比が0.95〜1.2
0の延伸又は弛緩処理を施し、捲取装置の直前で、加熱
気体又は加熱蒸気により加熱処理した後、3000m/
分以上の速度で捲取ることを特徴とするポリ乳酸繊維の
製造法。 【0008】 【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。 【0009】本発明で得られるポリ乳酸繊維は、L−乳
酸とD−乳酸の光学異性体の共重合体を主成分とし、こ
のうち、L−乳酸の光学純度が95.0〜99.5%で
あることが必要である。このL体とD体の比率は、耐熱
性と生分解性に影響する要因であり、L体の純度がこの
範囲より低いと、生分解速度は速くなるが、融点が低く
て耐熱性の劣った繊維となる。また、L体の純度がこの
範囲より高いと、結晶化が高いため分解速度が低く、生
分解性に劣った繊維となる。 【0010】また、ポリ乳酸の平均分子量は、5万〜1
0万の範囲であることが必要である。平均分子量がこの
範囲より低いと、十分な強度や弾性率が発現せず、平均
分子量がこの範囲より高いと、生分解性が低下する。 【0011】本発明で得られるポリ乳酸繊維の特徴は、
10%伸張時の弾性率が7〜9g/d、沸水収縮率が1
3%以下であることである。これらの物性を満たすこと
により、幅広い用途に使用することができ、例えば、使
用初期の力学特性の要求性能が高い産業資材用途に使用
することも可能となる。ポリ乳酸繊維は、通常、伸張歪
みの際、一次降伏点以降の弾性率が低いため加工工程で
応力斑を発生し、これが加工後の強度、伸度のバラツキ
や染色斑などの原因となるが、本発明ではこの点が改善
され、初期弾性率のみならず、一次降伏点を超えた10
%伸張時においても加工に問題のない弾性率を有する。
また、ポリ乳酸繊維は、従来、高熱時の寸法安定性が劣
るため、加工時に加わる熱により、大きく収縮して寸法
安定性が悪いという問題があったが、本発明では、沸水
収縮率を13%以下とすることで、熱収縮特性について
も大幅に改善することを可能とし、寸法安定性のよい製
品とすることができるものである。 【0012】次に、本発明のポリ乳酸繊維の製造法につ
いて説明する。 【0013】本発明に使用されるポリ乳酸は、L−乳酸
とD−乳酸の光学異性体の共重合体を主成分とし、L−
乳酸の光学純度が95.0〜99.5%であることが必
要である。L体の純度がこの範囲より低いと、耐熱性の
劣った繊維しか得られず、また、L体の純度がこの範囲
より高いと、高速製糸性に劣り、本発明には不適であ
る。 【0014】また、ポリ乳酸の平均分子量は、溶融吐出
時に5万〜10万の範囲にあることが必要である。平均
分子量がこの範囲より低いと、十分な強度や弾性率の繊
維を得ることができず、平均分子量がこの範囲より高い
と、高速で紡糸を行う際、糸切れが起こりやすく、本発
明には適さない。なお、本発明においては、各成分それ
ぞれの基本特性を損なわない範囲内で、少量の無機物や
他の熱可塑性生分解性成分等を添加することができる。 【0015】本発明の特徴は、溶融紡出し、一旦冷却固
化したポリ乳酸を、再加熱し、空気抵抗を与えた後に引
取ることにより、配向と結晶化を促進し、通常の高速紡
糸延伸法では得られない強度、弾性率を有するポリ乳酸
繊維を得ることにある。 【0016】図1は,本発明の一実施態様を示す概略工
程図である。紡糸口金1からポリ乳酸繊維Yを溶融紡糸
し、冷却風吹付装置2によって繊維を冷却固化し、筒状
加熱装置3の中を通過させる。加熱装置を通過した繊維
は自然冷却された後、油剤付与装置4により油剤付与と
同時に集束され、第1ローラ(引取ローラ)5により引
き取られ、第2ローラ6を介して、加熱流体処理装置7
により弛緩熱処理を施された後、捲取装置8に供給され
る。 【0017】上記の工程において、筒状加熱装置3の内
壁温度は120〜170℃の範囲とすることが必要であ
る。120℃に満たない場合、配向と結晶化を促進する
効果が低く、十分な強度と弾性率を有する繊維を得るこ
とができない。また、170℃を超えると装置内壁に繊
維が接触したときに融着することがあり、好ましくな
い。加熱装置の有効加熱長は、およそ0.6〜2.5m
が適当である。加熱長がこの範囲より短いと、配向と結
晶化を促進する効果が低下し、この範囲より長いと、加
熱装置内の糸揺れが大きくなり、糸斑を誘発するため好
ましくない。 【0018】引取速度(すなわち、第1ローラ5の表面
速度)は、3000m/分以上にすることが必要であ
る。加熱装置内の糸条に加わる応力が高いほど、配向と
結晶化を促進する効果が大きいため、引取速度は高速で
あるほど望ましく、3000m/分未満では効果に欠け
る。また、7000m/分を超えると、加熱装置内の通
過時間が短くなるうえ、糸条に加わる応力が高くなりす
ぎ、切断することもあるので好ましくない。 【0019】引取った繊維を、引き続き第2ローラ6に
供給し、若干の延伸又は弛緩処理を施すことにより、用
途に応じた物性の微調整が可能であり、良好な捲形態を
形成することもできる。その際、第2ローラ6と第1ロ
ーラ5との表面速度比は、0.95〜1.20とするこ
とが好ましく、この範囲より低いと、捲取り時の張力が
低くて捲形態が悪くなり、この範囲より高いと伸度が低
くなり、切断に至る場合があるので好ましくない。 【0020】また、任意のローラ上で熱処理を行うこと
も可能であるが、ローラの表面温度が高すぎるとローラ
上での繊維の揺れが大きくなって糸斑や切断の原因とな
り、低すぎると、本発明の目的とする寸法安定性の良好
な繊維を得ることが困難となる。そこで、本発明では、
捲取装置8の直前で加熱気体又は加熱蒸気による熱処理
を施すことにより、製糸時の操業安定性と得られる繊維
の寸法安定性の両方を同時に満足させることを可能にし
たものである。加熱気体の種類は、空気、窒素、あるい
は、それらに近い密度、熱伝導 率のものであれば特に
限定されるものではないが、加圧水蒸気を使用すると、
より効率的な熱処理が可能となる。その際、加熱気体又
は加熱蒸気の温度を100〜160℃とすることが好ま
しい。この温度が100℃未満では、蒸気の温度を安定
に制御することが困難で糸斑を誘発する原因となり、1
60℃を超えると、繊維間の融着が発生しやすくなる。 【0021】本発明の製造法は、幅広い範囲の銘柄に対
応できるが、単糸繊度が0.5〜8.0d、フィラメン
ト数が10〜250本の範囲が特に好ましい。 【0022】 【実施例】次に、本発明を実施例により具体的に説明す
る。なお、測定及び評価法は次のとおりである。 (1) 引張強伸度特性JIS L 1013に準じて測定した。 (2) 沸水収縮率試料を沸騰水中に15分間浸漬した後、
自然乾燥し、その前後の長さ変化の割合を求めた。 (3) 平均分子量試料のクロロホルム0.4wt%溶液の
GPC分析による分散の数平均値とした。 (4) 生分解性試料を土壌中に12カ月間埋設した後、取
り出し、引張強度を測定して初期引張強度に対する強度
保持率で評価した。 【0023】実施例1〜6、比較例1〜7 図1に示す工程に従い、光学純度99.0%のポリ−L
−乳酸をエクストルーダー型溶融紡糸機に供給して温度
210℃で溶融し、直径 0.3mmの紡糸孔を36個有する口
金から紡出した後、温度15℃の冷却風を吹き付けて繊
維を冷却固化した。引き続き、有効加熱長さ130cm
の筒状加熱装置内に繊維を通過させ、自然冷却した後、
油剤付与装置で集束すると同時に油剤を付与し、第1ロ
ーラで引取った。 【0024】引取った繊維を引き続いて第2ローラを経
由して、加熱蒸気により熱処理した後、捲取装置で捲取
り、75d/36fのポリ乳酸繊維を得た。上記の製造
条件と得られたポリ乳酸繊維の特性値を表1、2に示
す。 【0025】 【表1】 【0026】 【表2】【0027】表1から明らかなように、実施例1〜6で
得られたポリ乳酸繊維は、強度、初期及び10%伸張時
の弾性率、沸水収縮率のいずれも十分実用に供すること
ができる値を有するものであった。 【0028】これに対し、表2から明らかなように、比
較例1は加熱筒温度が低く、比較例5は平均分子量が低
く、得られた繊維は、いずれも十分な強度、弾性率を有
するものではなかった。比較例3は引取速度が低く、繊
維の配向が低いため、加熱蒸気で融着した。また、比較
例2は加熱筒温度が高すぎるため繊維が融着してしま
い、比較例6は平均分子量が高いため、紡糸中に糸切れ
が多発した。次に、比較例4は加熱筒を用いない従来の
延伸法であるため、強度、弾性率が不十分であった。比
較例7は加熱蒸気を使用していないため沸水収縮率が高
く、寸法安定性が悪いものであった。 【0029】実施例7,8、比較例8,9表2に示す光
学純度のポリ−L−乳酸を使用し、実施例1と同様の製
造法で75d/36fのポリ乳酸繊維を得た。吐出時の
平均分子量はいずれも64000であった。得られたポ
リ乳酸繊維の特性値と生分解性を表3に示す。 【0030】 【表3】 【0031】表3から明らかなように、実施例7,8で
得られたポリ乳酸繊維は、強度、初期及び10%伸張時
の弾性率、沸水収縮率のいずれも十分実用に供すること
ができる値を有するものであり、土壌埋設12カ月後の
生分解性も良好であった。これに対して、比較例8は、
L体の比率が低いため耐熱性に劣り、沸水中で融着し
た。また、比較例9は、L体の比率が高いため生分解性
に劣り、強度の低下が少なかった 。 【0032】 【発明の効果】本発明によれば、実用的に十分な弾性率
と寸法安定性を有し、かつ、安価な生分解性のポリ乳酸
繊維が提供される。本発明のポリ乳酸繊維は、衣料用資
材として使用できる他、水産資材、農園芸資材、生活資
材、衛生材料、その他一般産業資材用として好適であ
り、使用後は微生物が存在する環境下に放置しておけば
一定期間後には完全に分解するため、この繊維を使用す
れば、特別な廃棄物処理を必要とすることがなく、廃棄
物処理による公害を防止することが可能となる。
示す概略工程図である。 【符号の説明】 1 紡糸口金 2 冷却風吹付装置 3 筒状加熱装置 4 油剤付与装置 5 第1ローラ(引取ローラ) 6 第2ローラ 7 加熱流体処理装置 8 捲取装置
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 平均分子量5万〜10万、光学純度9
5.0〜99.5%のポリ−L−乳酸を溶融紡出し、紡
出繊維を一旦冷却固化した後、内壁温度が120〜17
0℃の筒状加熱装置内を通過させ、集束し、油剤を付与
した後、表面速度が3000m/分以上の第1ローラで
引き取り、続く第2ローラとの間で表面速度比が0.9
5〜1.20の延伸又は弛緩処理を施し、捲取装置の直
前で、加熱気体又は加熱蒸気により加熱処理した後、3
000m/分以上の速度で捲取ることを特徴とするポリ
乳酸繊維の製造法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP09884798A JP3462983B2 (ja) | 1998-04-10 | 1998-04-10 | ポリ乳酸繊維の製造法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP09884798A JP3462983B2 (ja) | 1998-04-10 | 1998-04-10 | ポリ乳酸繊維の製造法 |
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JPH11293517A JPH11293517A (ja) | 1999-10-26 |
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP09884798A Expired - Lifetime JP3462983B2 (ja) | 1998-04-10 | 1998-04-10 | ポリ乳酸繊維の製造法 |
Country Status (1)
Country | Link |
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Families Citing this family (4)
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US20050203258A1 (en) | 2002-08-30 | 2005-09-15 | Toray Industriies, Inc. | Polylactic acid fiber, yarn package, and textile product |
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-
1998
- 1998-04-10 JP JP09884798A patent/JP3462983B2/ja not_active Expired - Lifetime
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Publication number | Publication date |
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