JP2004083966A - 水素吸蔵材の製造方法および水素吸蔵材 - Google Patents
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Abstract
【課題】低温で水素吸蔵量が多く、低コストで量産性に優れた水素吸蔵材材の製造方法および水素吸蔵材を提供する。
【解決手段】MgあるいはMg合金のいずれか一方、FeあるいはFe合金のいずれか一方およびTiを積層し積層体を形成し(ステップS1〜S4)、この積層体を細線状あるいはシート状にすべく機械加工を施し(ステップS5〜ステップS16)、機械加工後の積層体に熱処理を施してTiFe合金を生成する(ステップS17)。
【選択図】 図1
【解決手段】MgあるいはMg合金のいずれか一方、FeあるいはFe合金のいずれか一方およびTiを積層し積層体を形成し(ステップS1〜S4)、この積層体を細線状あるいはシート状にすべく機械加工を施し(ステップS5〜ステップS16)、機械加工後の積層体に熱処理を施してTiFe合金を生成する(ステップS17)。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素吸蔵材の製造方法および水素吸蔵材に係り、線状あるいはシート状の水素吸蔵材の製造方法および水素吸蔵材に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用燃料電池の開発において、燃料である水素を直接搭載する方法としては、
▲1▼高圧水素ボンベ
▲2▼水素吸蔵合金
の二つが有力である。
【0003】
これらのうち、水素吸蔵合金は、単位体積あたりの水素原子個数が液体水素よりも多く、水素吸蔵タンクのコンパクト化が可能である。
【0004】
また、水素放出は吸熱反応であるため、安全性が高い。
【0005】
現在実用化されてる代表的な水素吸蔵合金としては、室温付近で安定な水素の吸放出反応を示すLaNi5系の水素吸蔵合金が知られており、Ni−H電池の負極材として広く使用されている。また、LaNi5系の水素吸蔵合金は、試作用の燃料電池自動車にも搭載されている。
【0006】
他の水素吸蔵合金としては、Mg系、Ti−Fe系、Ti−V系等の水素吸蔵合金が研究されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の水素吸蔵合金としては、大別すると、以下のような問題点▲1▼〜▲5▼があった。
【0008】
▲1▼ 水素吸蔵合金は、金属であることからコンパクトにもかかわらず、重量がかさむため、LaNi5における重量あたりの水素吸蔵量は約1.3[wt%]と低くなってしまうという問題点があった。このため、重量密度の低い(軽い)Mg系の水素吸蔵合金が提案されており、このMg系の水素吸蔵合金によれば、3〜6[wt%]の水素貯蔵が可能となっている。しかしながら、Mg系水素吸蔵合金は、水素の吸放出反応が約250[℃]以上の温度で発生するため、別途熱源が必要となりエネルギー効率が悪いという新たな問題点が発生することとなっていた。
【0009】
▲2▼ LaNi5は希土類元素を含むため、原料コストひいては製造コストが高くなってしまうという問題点がある。一方、Ti−Fe系の水素吸蔵合金は、LaNi5と比較して低コスト化が可能であるとともに、LaNi5に次いで試作例や実施例の多い水素吸蔵合金である。
【0010】
しかしながら、水素の吸蔵と放出でヒステリシスを示すなど水素の吸放出特性はLaNi5より劣るという問題点があった。
【0011】
▲3▼ LaNi5やTiFe系合金は、熱伝導度が低く、大量にタンクに貯蔵した場合、合金の加熱や冷却に時間がかかる結果、水素の吸蔵/放出に時間がかかってしまうという問題点があった。
【0012】
▲4▼ 水素吸蔵合金は、水素を吸蔵すると格子定数が増加し結晶サイズが大きくなる。ほとんどの水素吸蔵合金は脆いため、水素の吸蔵/放出を繰り返すと微粉化して、粉体間の分子間力(ファンデルワールス力)が増加し、合金を貯蔵しているタンクの内圧が高くなってしまうという問題点があった。
【0013】
▲5▼ 上述したようにMg系の合金は、単位重量あたりの水素吸蔵量が大きく、特にMg単体は、6[wt%]という最も高い水素吸蔵量を示すが、300[℃]以上に加熱しないと、水素吸蔵、放出反応を示さなかった。
【0014】
ところで、100[℃]以下で水素を吸蔵、放出する金属であるPdとMgをサブミクロン以下のオーダーで交互に積層させた多層薄膜で、100[℃]以下で〜5[wt%]の水素を吸蔵可能なことが判明し、注目されている。
【0015】
このPd/Mg多層薄膜による水素の吸蔵、放出現象の詳細は不明であるが、原理的には、PdとMgの協力現象であると説明されている。
【0016】
つまり、水素を吸蔵したPdは格子定数が増加し、面方向に膨張する。これに接しているMg層のごく薄い界面も格子定数が増加して水素を吸蔵すると考えられている。一方、水素の放出の際には、まずPdから水素が放出されることで、面方向に収縮し、Mgに圧縮応力が加わって、水素が放出されると考えられている。
【0017】
ところで、このPd/Mg多層薄膜を形成するためのPdは、Ptと同等以上に高価な貴金属である。またPd/Mg多層薄膜の製造方法として、PVD法が用いられている。従って、量産性と製造コストの両面で問題となっていた。
【0018】
そこで、本発明の目的は、低温で水素吸蔵量が多く、低コストで量産性に優れた水素吸蔵材材の製造方法および水素吸蔵材を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、水素吸蔵材の製造方法は、MgあるいはMg合金のいずれか一方、FeあるいはFe合金のいずれか一方およびTiを積層し積層体を形成する積層過程と、前記積層体を細線状あるいはシート状にすべく機械加工を施す機械加工過程と、前記機械加工後の前記積層体に熱処理を施してTiFe合金を生成する熱処理過程とを備えたことを特徴としている。
【0020】
この場合において、前記積層過程において、MgあるいはMg合金のいずれか一方、FeおよびTiは、シート状態あるいはパイプ状態で積層されるようにしてもよい。
【0021】
また、前記機械加工は、押し出し加工、伸線加工あるいは圧延加工の少なくともいずれかを含むようにしてもよい。
【0022】
さらに、前記熱処理過程は、500[℃]以上800[℃]以下の温度で前記熱処理を行うようにしてもよい。
【0023】
さらにまた、前記積層体における前記MgあるいはMg合金の層の厚さTMgと、FeあるいはFe合金のいずれか一方およびTiが積層された層の厚さTFe−Tiとの比Rは、次式を満たすようにしてもよい。
【0024】
2.6≦R≦8
ここで、R=TMg/TFe−Ti
また、前記機械加工過程に先だって前記積層体に金属被覆を行う金属被覆過程と、前記熱処理過程後に前記金属被覆を化学的あるいは機械的に除去する被覆除去過程とを備えるようにしてもよい。
【0025】
さらに、前記金属被膜として、Cu、Cu合金、AlあるいはAl合金のいずれかを用いるようにしてもよい。
【0026】
また、水素吸蔵材は、MgあるいはMg合金で構成されるMg層と、TiFe合金層とを備え、前記Mg層および前記TiFe合金層が多層構造とされていることを特徴としている。
【0027】
【発明の実施の形態】
次に本発明の好適な実施の形態について説明する。
[1]実施形態の原理
まず実施形態の詳細な説明に先立ち、実施形態の原理について説明する。
【0028】
本実施形態においては、250〜300[℃]以上の温度で高い水素吸蔵量を有するMgあるいはMg合金シートと、100[℃]以下の温度で水素を吸蔵するが水素吸蔵量は低いTiFe系合金を組み合わせて多層構造とすることで水素吸蔵量を向上させている。
【0029】
この場合において、TiFe合金は脆く、延性がないため、本実施形態では、延性のあるTiとFeまたはFe合金とした状態で加工し、最終形状となった状態で熱処理して、TiFe合金を生成させている。
【0030】
さらにMgは重量密度が、1.74[g/cc]で実際に水素を吸蔵/放出可能な量は6[wt%]である。一方、TiFe系合金は、重量密度が6.2[g/cc]で実際に水素を吸蔵/放出可能な量は1〜1.2[wt%]である。従って、単位重量あたりの水素吸蔵量が低いTiFe合金の比率が高くなると、複合線材全体における単位重量あたりの水素吸蔵量も低下することとなる。
【0031】
ここで、Mg/TiFe複合線材(複合体)の水素吸蔵量が、個々の水素吸蔵材料の水素吸蔵能力の複合則で成立するものと仮定すると、最終的な水素吸蔵量を3[wt%]とするためには、Mg層とTi/Fe層との厚さ比は、約2.6以上必要となる。一方、室温で水素を吸蔵/放出するTiFe合金の影響でMgが低温で水素の吸蔵/放出を起こすと考えると、TiFe層のMg層への影響がMg層全体に及ぶようにするためには、Mg層とTi/Fe層との厚さの比を大きくしすぎてはいけないこととなる。この点を考慮した場合のMg層とTi/Fe層との厚さの比は、約8以下とする必要がある。
【0032】
さらにまた、TiFe合金は概ね500[℃]以上で生成する。また、Mgの融点は660[℃]である。加えてMgは蒸気圧が高いため、約800[℃]以上の温度では、線材からMgが噴き出す可能性があるため、熱処理温度は800[℃]以下が好ましい。
【0033】
また伸線や圧延加工された後のMg層におけるMgの粒子は、塑性変形の繰り返しにより、その結晶方向はランダムとなっている。ところで、水素の吸蔵には、Mg層において層の厚さ方向と結晶方位のc軸方向が一致した構造、六方晶が層方向に成長している状態)にすることが条件となっている。したがって、伸線加工後に500[℃]以上の温度で熱処理を行って、加工による結晶歪みを緩和し、加えてMgの融点(660[℃])近傍またはそれ以上の温度(650[℃]〜800[℃])で熱処理することで結晶方位を再配列させることにより、Mg層において層の厚さ方向と結晶方位のc軸方向が一致した構造となるようにしている。
[2]水素吸蔵線材の製造方法
次に実施形態の水素吸蔵線材の製造方法について説明する。
【0034】
図1は、水素吸蔵材の製造過程図である。また、図2は、ジェリーロールの製造状態説明図である。
【0035】
まず、所定の厚さおよび幅を有する純Mgのシート11と、Tiシート12と、Fe−Ni合金シート13と、所定の直径を有するMg製の円柱状の心棒14と、を用意する(ステップS1、S2、S3)。
【0036】
次に、純Mgシートが巻いたときに最も内側になるように重ねる。すなわち、Mg/Ti/Fe−Ni構造とする。
【0037】
そして、Mg製の円柱状の心棒14にMg/Ti/Fe−Ni構造に重ね合わせたシートを海苔巻き状に巻き付けることにより、(Mg/Ti/Fe−Ni)多層構造の円柱である所定の直径を有するジェリーロール(積層体)15(図3参照)を形成する(ステップS4)。
【0038】
そして、図3および図4に示すように、(Mg/Ti/Fe−Ni)多層構造のジェリーロール15を所定の内径および外径を有するFeパイプ16内に挿入し、さらにこのFeパイプを所定の内径および外径を有するAl合金パイプ(金属被覆)17内に挿入する(ステップS5)。
【0039】
続いてジェリーロール15およびFeパイプ16が挿入されたAl合金パイプ17を所定温度に加熱した状態で、所定の直径となるように静水圧押出し加工を行う(ステップS6)。
【0040】
次に得られた押出材を伸線加工して細線化し、細線化の最終工程で所定の対辺距離を有する六角線とする(ステップS7、S8)。
【0041】
さらに得られた六角線の形状を矯正し、所定長さの六角線材20に切り分ける(ステップS9)。図5に、六角線材20の拡大断面図を示す。
【0042】
次に61本の六角線材およびこの61本の六角線材20を収納可能な所定の内径を有するAl合金パイプ(金属被覆)21を用意する(ステップS10、11)。ここで、六角線材20の本数を61本としているのは、六角線材20を六角柱状に配置するのに、六角柱を5層(各層毎に1本、6本、12本、18本、24本)で形成し、隙間無く並べる場合に必要な本数だからである。従って、5層未満あるいは6層以上の場合にはその層数に応じて本数が定まる。
【0043】
図6は、マルチビレットの断面模式図である。
【0044】
図6に示すように、Al合金パイプ20内に61本の六角線材20を挿入する(ステップS12)。なお、図6においては、図示の簡略化のため、六角線材の本数については正確に描いていない。
【0045】
続いて、六角線材が挿入されたAl合金を所定温度に加熱した状態で所定の直径となるように静水圧押出し加工を行う(ステップS13)。
【0046】
次に得られた押出材を伸線加工して所定の直径、具体的には直径2[mm]まで細線化した(ステップS14)。
【0047】
さらに細線化した押出材を圧延加工して所定の厚さ、具体的には厚さ0.5[mm]とする(ステップS15)。この状態において、Mg層部分の平均厚さは1[μm]とされている。
【0048】
次に苛性ソーダで金属被覆であるAl合金を除去する(ステップS16)。
【0049】
続いて、洗浄、乾燥後のフィラメントの束をArガス中で熱処理を行いTiFe合金を生成する(ステップS17)。具体的には、650[℃]で50時間、熱処理する。
【0050】
そして、水素吸蔵初期活性化処理を行い、水素吸蔵線材を得る(ステップS18)
[3]実施形態の効果
本実施形態の製造方法による水素吸蔵材によれば、従来の水素吸蔵合金に比較して単位重量あたりの水素吸蔵量を増加させることができるので、車載用として1回の水素補給で航続距離を伸ばすことができる。
【0051】
また、本実施形態の水素吸蔵材は、延性のある金属の複合体のため、従来の水素吸蔵合金に見られた水素吸蔵、放出の繰り返しによる微粉末化により容器内圧が上昇することもない。
【0052】
加えて本実施形態の水素吸蔵材は、比較的熱伝導製の高いMgを複合化した線により構成されているので、容器内の温度コントロールの追従性も他の合金と比較して高くより早い水素充填が可能になる。
[4]実施形態の変形例
以上の説明においては、従来粉末で使用されていた水素吸蔵合金を線材化しているが、変形例としては、製造過程において海苔巻き状の円柱形状ではなく、Mg/Ti/Fe−Ni積層シートを何枚も交互に積層させて板状とした状態で、圧延加工を繰り返して、多層構造のシート状に形成した水素吸蔵シートとして構成することも可能である。
【0053】
以上の説明においては、純Mgのシートと、Tiシートと、Fe−Ni合金シートと、を用意し、所定の直径を有するMg製の円柱状の心棒にMg/Ti/Fe−Ni構造に重ね合わせたシートを海苔巻き状に巻き付けることにより、(Mg/Ti/Fe−Ni)多層構造の円柱である所定の直径を有するジェリーロール(積層体)を形成していたが、Fe−Ni合金に代えてFeシート、Fe−Mn合金シート、Fe−Ni−Nb合金シートのようなFeあるいはFeを主成分としたFe合金シートを用いてジェリーロール(積層体)を形成するように構成することも可能である。
【0054】
以上の説明においては、TiFe合金におけるFeあるいはFe合金とTiとのモル比については説明していなかったが、FeあるいはFe合金のモル数をMFeとし、Tiのモル数をMTiとした場合に、
0.95≦MFe/MTi≦1.05
とするのが好ましい。この範囲のモル比であれば、TiFe合金単体の水素吸蔵量がこれ以外のモル比の場合と比較して多くなるとともに、Mg層への水素吸蔵量への影響の度合いも大きいからである。
【0055】
以上の説明においては、車両用燃料電池の場合を例として説明したが、水素の吸蔵/放出反応が発熱/吸熱反応であることを利用し、無冷媒のヒートポンプへの適用が可能である。この場合には、従来の水素吸蔵合金を使用したヒートポンプに比較して、高い熱伝導性がヒートポンプの即応性やエネルギー効率向上に寄与することが期待できる。
【0056】
【実施例】
次により具体的な実施例について説明する。
【0057】
厚さ0.3[mm]、幅100[mm]の純Mgシートと、厚さ0.074[mm]、幅100[mm]のTiシートと、厚さ0.05[mm]、幅100[mm]のFe−20[wt%]Ni合金シートと、を純Mgシートが巻いたときに最も内側になるように純Mgシート、Tiシート、Fe−20[wt%]Ni合金シートの順番で重ねる。すなわち、Mg/Ti/Fe−Ni構造とする。
【0058】
そして、直径10[mm]のMg製の円柱状の心棒にMg/Ti/Fe−Ni構造に重ね合わせたシートを海苔巻き状に巻き付けることにより、(Mg/Ti/Fe−Ni)多層構造の円柱を形成とする。
【0059】
そして、(Mg/Ti/Fe−Ni)多層構造の円柱の外径が22.7[mm]となるまで、巻付けを行う。
【0060】
続いて(Mg/Ti/Fe−Ni)多層構造の円柱を内径23[mm]、外径24[mm]のFeパイプ内に挿入する。さらにこのFeパイプを内径24[mm]、外径28[mm]のAl合金パイプ内に挿入し、Al合金パイプの一端にCuプラグ、他端にFeプラグを取り付けてシングルビレットとした。
【0061】
続いてシングルビレットを300[℃]に加熱した状態で、直径10[mm]に静水圧押し出し加工を行い、シングルビレット押出材を得た。
【0062】
次に得られたシングルビレット押出材を伸線加工して細線化し、細線化の最終工程で対辺距離2.6[mm]の六角線とし、直状に矯正したのち、長さ100[mm]の六角線材に切り分けた。
【0063】
次に切り分けた六角線材61本を内径23[mm]、外径28[mm]のAl合金パイプ内に挿入し、Al合金パイプの一端(先端側)にAl合金プラグ、他端(後端側)にFeプラグを取り付けてマルチビレットとした。
【0064】
続いて、マルチビレットを300[℃]に加熱した状態で直径10[mm]に静水圧押し出し加工を行い、マルチビレット押出材を得た。
【0065】
次に得られたマルチビレット押出材を伸線加工して直径2[mm]まで細線化した。
【0066】
さらに細線化したマルチビレット押出材を圧延加工して厚さ0.5[mm]、幅6.3[mm]のテープ状のテープ線材とし、その後、テープ線材を所定濃度の苛性ソーダ(NaOH)溶液に浸漬して、Alを溶かして除去し、フィラメント61本の束とし、水で洗浄後、真空中で乾燥させた。
【0067】
乾燥後のフィラメントの束(初期重量1000[mg])をArガス中650[℃]で50時間熱処理して、TiとFe−Ni合金を反応させて、TiFe0.8Ni0.2合金を生成させた。
【0068】
さらに水素初期活性化処理として、500[℃]の熱処理後、100[℃]まで冷却し、炉内に水素ガスを充填して、0.2[MPa]まで加圧した状態で20[℃]まで冷却し、減圧した。
【0069】
その後、上述した活性化処理、すなわち、100[℃]、炉内に水素ガスを充填して、0.2[MPa]まで加圧した状態で20[℃]まで冷却し、減圧する活性化処理を3回繰り返して初期活性化処理を終了した。
【0070】
続いて、初期活性化処理後、容器内にフィラメントの束を入れ、室温で水素ガスを0.5[MPa]まで加圧した状態で、容器を90[℃]まで加熱して1時間保持した後、室温に戻して、大気圧まで減圧した。
【0071】
この状態で、容器から取り出したフィラメントの重量を測定した結果、1028[mg]の重量増加を確認した。
【0072】
実験結果より、本実施例の水素吸蔵線材を用いたフィラメントは、2.8[wt%]の水素を吸蔵することが確認された。
【0073】
この値は、TiFe合金単体の水素吸蔵量(1〜1.3[wt%])や、実用化されているLaNi5の1.3[wt%]に比較して約2倍以上の高い吸蔵量であった。
【0074】
【発明の効果】
本発明によれば、従来の水素吸蔵合金に比較して単位重量あたりの水素吸蔵量を増加させることができるので、車載用として1回の水素補給で航続距離を伸ばすことができる。
【0075】
また、延性のある金属の複合体のため、従来の水素吸蔵合金に見られた水素吸蔵、放出の繰り返しによる微粉末化により容器内圧が上昇することもない。
【0076】
加えて比較的熱伝導製の高いMgを複合化した線により構成されているので、容器内の温度コントロールの追従性も他の合金と比較して高くより早い水素充填が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】水素吸蔵材の製造過程図である。
【図2】ジェリーロール(積層体)の製造状態説明図である。
【図3】シングルビレットの断面模式図である。
【図4】シングルビレットの構造説明斜視図である。
【図5】六角線材の拡大断面模式図である。
【図6】マルチビレットの断面模式図である。
【符号の説明】
11 純Mgシート
12 Tiシート
13 Fe−Niシート
14 Mg心棒
15 ジェリーロール(ジェリーロール)
16 Feパイプ
17 Alパイプ(金属被覆)
20 六角線材
21 Al合金パイプ(金属被覆)
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素吸蔵材の製造方法および水素吸蔵材に係り、線状あるいはシート状の水素吸蔵材の製造方法および水素吸蔵材に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用燃料電池の開発において、燃料である水素を直接搭載する方法としては、
▲1▼高圧水素ボンベ
▲2▼水素吸蔵合金
の二つが有力である。
【0003】
これらのうち、水素吸蔵合金は、単位体積あたりの水素原子個数が液体水素よりも多く、水素吸蔵タンクのコンパクト化が可能である。
【0004】
また、水素放出は吸熱反応であるため、安全性が高い。
【0005】
現在実用化されてる代表的な水素吸蔵合金としては、室温付近で安定な水素の吸放出反応を示すLaNi5系の水素吸蔵合金が知られており、Ni−H電池の負極材として広く使用されている。また、LaNi5系の水素吸蔵合金は、試作用の燃料電池自動車にも搭載されている。
【0006】
他の水素吸蔵合金としては、Mg系、Ti−Fe系、Ti−V系等の水素吸蔵合金が研究されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の水素吸蔵合金としては、大別すると、以下のような問題点▲1▼〜▲5▼があった。
【0008】
▲1▼ 水素吸蔵合金は、金属であることからコンパクトにもかかわらず、重量がかさむため、LaNi5における重量あたりの水素吸蔵量は約1.3[wt%]と低くなってしまうという問題点があった。このため、重量密度の低い(軽い)Mg系の水素吸蔵合金が提案されており、このMg系の水素吸蔵合金によれば、3〜6[wt%]の水素貯蔵が可能となっている。しかしながら、Mg系水素吸蔵合金は、水素の吸放出反応が約250[℃]以上の温度で発生するため、別途熱源が必要となりエネルギー効率が悪いという新たな問題点が発生することとなっていた。
【0009】
▲2▼ LaNi5は希土類元素を含むため、原料コストひいては製造コストが高くなってしまうという問題点がある。一方、Ti−Fe系の水素吸蔵合金は、LaNi5と比較して低コスト化が可能であるとともに、LaNi5に次いで試作例や実施例の多い水素吸蔵合金である。
【0010】
しかしながら、水素の吸蔵と放出でヒステリシスを示すなど水素の吸放出特性はLaNi5より劣るという問題点があった。
【0011】
▲3▼ LaNi5やTiFe系合金は、熱伝導度が低く、大量にタンクに貯蔵した場合、合金の加熱や冷却に時間がかかる結果、水素の吸蔵/放出に時間がかかってしまうという問題点があった。
【0012】
▲4▼ 水素吸蔵合金は、水素を吸蔵すると格子定数が増加し結晶サイズが大きくなる。ほとんどの水素吸蔵合金は脆いため、水素の吸蔵/放出を繰り返すと微粉化して、粉体間の分子間力(ファンデルワールス力)が増加し、合金を貯蔵しているタンクの内圧が高くなってしまうという問題点があった。
【0013】
▲5▼ 上述したようにMg系の合金は、単位重量あたりの水素吸蔵量が大きく、特にMg単体は、6[wt%]という最も高い水素吸蔵量を示すが、300[℃]以上に加熱しないと、水素吸蔵、放出反応を示さなかった。
【0014】
ところで、100[℃]以下で水素を吸蔵、放出する金属であるPdとMgをサブミクロン以下のオーダーで交互に積層させた多層薄膜で、100[℃]以下で〜5[wt%]の水素を吸蔵可能なことが判明し、注目されている。
【0015】
このPd/Mg多層薄膜による水素の吸蔵、放出現象の詳細は不明であるが、原理的には、PdとMgの協力現象であると説明されている。
【0016】
つまり、水素を吸蔵したPdは格子定数が増加し、面方向に膨張する。これに接しているMg層のごく薄い界面も格子定数が増加して水素を吸蔵すると考えられている。一方、水素の放出の際には、まずPdから水素が放出されることで、面方向に収縮し、Mgに圧縮応力が加わって、水素が放出されると考えられている。
【0017】
ところで、このPd/Mg多層薄膜を形成するためのPdは、Ptと同等以上に高価な貴金属である。またPd/Mg多層薄膜の製造方法として、PVD法が用いられている。従って、量産性と製造コストの両面で問題となっていた。
【0018】
そこで、本発明の目的は、低温で水素吸蔵量が多く、低コストで量産性に優れた水素吸蔵材材の製造方法および水素吸蔵材を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、水素吸蔵材の製造方法は、MgあるいはMg合金のいずれか一方、FeあるいはFe合金のいずれか一方およびTiを積層し積層体を形成する積層過程と、前記積層体を細線状あるいはシート状にすべく機械加工を施す機械加工過程と、前記機械加工後の前記積層体に熱処理を施してTiFe合金を生成する熱処理過程とを備えたことを特徴としている。
【0020】
この場合において、前記積層過程において、MgあるいはMg合金のいずれか一方、FeおよびTiは、シート状態あるいはパイプ状態で積層されるようにしてもよい。
【0021】
また、前記機械加工は、押し出し加工、伸線加工あるいは圧延加工の少なくともいずれかを含むようにしてもよい。
【0022】
さらに、前記熱処理過程は、500[℃]以上800[℃]以下の温度で前記熱処理を行うようにしてもよい。
【0023】
さらにまた、前記積層体における前記MgあるいはMg合金の層の厚さTMgと、FeあるいはFe合金のいずれか一方およびTiが積層された層の厚さTFe−Tiとの比Rは、次式を満たすようにしてもよい。
【0024】
2.6≦R≦8
ここで、R=TMg/TFe−Ti
また、前記機械加工過程に先だって前記積層体に金属被覆を行う金属被覆過程と、前記熱処理過程後に前記金属被覆を化学的あるいは機械的に除去する被覆除去過程とを備えるようにしてもよい。
【0025】
さらに、前記金属被膜として、Cu、Cu合金、AlあるいはAl合金のいずれかを用いるようにしてもよい。
【0026】
また、水素吸蔵材は、MgあるいはMg合金で構成されるMg層と、TiFe合金層とを備え、前記Mg層および前記TiFe合金層が多層構造とされていることを特徴としている。
【0027】
【発明の実施の形態】
次に本発明の好適な実施の形態について説明する。
[1]実施形態の原理
まず実施形態の詳細な説明に先立ち、実施形態の原理について説明する。
【0028】
本実施形態においては、250〜300[℃]以上の温度で高い水素吸蔵量を有するMgあるいはMg合金シートと、100[℃]以下の温度で水素を吸蔵するが水素吸蔵量は低いTiFe系合金を組み合わせて多層構造とすることで水素吸蔵量を向上させている。
【0029】
この場合において、TiFe合金は脆く、延性がないため、本実施形態では、延性のあるTiとFeまたはFe合金とした状態で加工し、最終形状となった状態で熱処理して、TiFe合金を生成させている。
【0030】
さらにMgは重量密度が、1.74[g/cc]で実際に水素を吸蔵/放出可能な量は6[wt%]である。一方、TiFe系合金は、重量密度が6.2[g/cc]で実際に水素を吸蔵/放出可能な量は1〜1.2[wt%]である。従って、単位重量あたりの水素吸蔵量が低いTiFe合金の比率が高くなると、複合線材全体における単位重量あたりの水素吸蔵量も低下することとなる。
【0031】
ここで、Mg/TiFe複合線材(複合体)の水素吸蔵量が、個々の水素吸蔵材料の水素吸蔵能力の複合則で成立するものと仮定すると、最終的な水素吸蔵量を3[wt%]とするためには、Mg層とTi/Fe層との厚さ比は、約2.6以上必要となる。一方、室温で水素を吸蔵/放出するTiFe合金の影響でMgが低温で水素の吸蔵/放出を起こすと考えると、TiFe層のMg層への影響がMg層全体に及ぶようにするためには、Mg層とTi/Fe層との厚さの比を大きくしすぎてはいけないこととなる。この点を考慮した場合のMg層とTi/Fe層との厚さの比は、約8以下とする必要がある。
【0032】
さらにまた、TiFe合金は概ね500[℃]以上で生成する。また、Mgの融点は660[℃]である。加えてMgは蒸気圧が高いため、約800[℃]以上の温度では、線材からMgが噴き出す可能性があるため、熱処理温度は800[℃]以下が好ましい。
【0033】
また伸線や圧延加工された後のMg層におけるMgの粒子は、塑性変形の繰り返しにより、その結晶方向はランダムとなっている。ところで、水素の吸蔵には、Mg層において層の厚さ方向と結晶方位のc軸方向が一致した構造、六方晶が層方向に成長している状態)にすることが条件となっている。したがって、伸線加工後に500[℃]以上の温度で熱処理を行って、加工による結晶歪みを緩和し、加えてMgの融点(660[℃])近傍またはそれ以上の温度(650[℃]〜800[℃])で熱処理することで結晶方位を再配列させることにより、Mg層において層の厚さ方向と結晶方位のc軸方向が一致した構造となるようにしている。
[2]水素吸蔵線材の製造方法
次に実施形態の水素吸蔵線材の製造方法について説明する。
【0034】
図1は、水素吸蔵材の製造過程図である。また、図2は、ジェリーロールの製造状態説明図である。
【0035】
まず、所定の厚さおよび幅を有する純Mgのシート11と、Tiシート12と、Fe−Ni合金シート13と、所定の直径を有するMg製の円柱状の心棒14と、を用意する(ステップS1、S2、S3)。
【0036】
次に、純Mgシートが巻いたときに最も内側になるように重ねる。すなわち、Mg/Ti/Fe−Ni構造とする。
【0037】
そして、Mg製の円柱状の心棒14にMg/Ti/Fe−Ni構造に重ね合わせたシートを海苔巻き状に巻き付けることにより、(Mg/Ti/Fe−Ni)多層構造の円柱である所定の直径を有するジェリーロール(積層体)15(図3参照)を形成する(ステップS4)。
【0038】
そして、図3および図4に示すように、(Mg/Ti/Fe−Ni)多層構造のジェリーロール15を所定の内径および外径を有するFeパイプ16内に挿入し、さらにこのFeパイプを所定の内径および外径を有するAl合金パイプ(金属被覆)17内に挿入する(ステップS5)。
【0039】
続いてジェリーロール15およびFeパイプ16が挿入されたAl合金パイプ17を所定温度に加熱した状態で、所定の直径となるように静水圧押出し加工を行う(ステップS6)。
【0040】
次に得られた押出材を伸線加工して細線化し、細線化の最終工程で所定の対辺距離を有する六角線とする(ステップS7、S8)。
【0041】
さらに得られた六角線の形状を矯正し、所定長さの六角線材20に切り分ける(ステップS9)。図5に、六角線材20の拡大断面図を示す。
【0042】
次に61本の六角線材およびこの61本の六角線材20を収納可能な所定の内径を有するAl合金パイプ(金属被覆)21を用意する(ステップS10、11)。ここで、六角線材20の本数を61本としているのは、六角線材20を六角柱状に配置するのに、六角柱を5層(各層毎に1本、6本、12本、18本、24本)で形成し、隙間無く並べる場合に必要な本数だからである。従って、5層未満あるいは6層以上の場合にはその層数に応じて本数が定まる。
【0043】
図6は、マルチビレットの断面模式図である。
【0044】
図6に示すように、Al合金パイプ20内に61本の六角線材20を挿入する(ステップS12)。なお、図6においては、図示の簡略化のため、六角線材の本数については正確に描いていない。
【0045】
続いて、六角線材が挿入されたAl合金を所定温度に加熱した状態で所定の直径となるように静水圧押出し加工を行う(ステップS13)。
【0046】
次に得られた押出材を伸線加工して所定の直径、具体的には直径2[mm]まで細線化した(ステップS14)。
【0047】
さらに細線化した押出材を圧延加工して所定の厚さ、具体的には厚さ0.5[mm]とする(ステップS15)。この状態において、Mg層部分の平均厚さは1[μm]とされている。
【0048】
次に苛性ソーダで金属被覆であるAl合金を除去する(ステップS16)。
【0049】
続いて、洗浄、乾燥後のフィラメントの束をArガス中で熱処理を行いTiFe合金を生成する(ステップS17)。具体的には、650[℃]で50時間、熱処理する。
【0050】
そして、水素吸蔵初期活性化処理を行い、水素吸蔵線材を得る(ステップS18)
[3]実施形態の効果
本実施形態の製造方法による水素吸蔵材によれば、従来の水素吸蔵合金に比較して単位重量あたりの水素吸蔵量を増加させることができるので、車載用として1回の水素補給で航続距離を伸ばすことができる。
【0051】
また、本実施形態の水素吸蔵材は、延性のある金属の複合体のため、従来の水素吸蔵合金に見られた水素吸蔵、放出の繰り返しによる微粉末化により容器内圧が上昇することもない。
【0052】
加えて本実施形態の水素吸蔵材は、比較的熱伝導製の高いMgを複合化した線により構成されているので、容器内の温度コントロールの追従性も他の合金と比較して高くより早い水素充填が可能になる。
[4]実施形態の変形例
以上の説明においては、従来粉末で使用されていた水素吸蔵合金を線材化しているが、変形例としては、製造過程において海苔巻き状の円柱形状ではなく、Mg/Ti/Fe−Ni積層シートを何枚も交互に積層させて板状とした状態で、圧延加工を繰り返して、多層構造のシート状に形成した水素吸蔵シートとして構成することも可能である。
【0053】
以上の説明においては、純Mgのシートと、Tiシートと、Fe−Ni合金シートと、を用意し、所定の直径を有するMg製の円柱状の心棒にMg/Ti/Fe−Ni構造に重ね合わせたシートを海苔巻き状に巻き付けることにより、(Mg/Ti/Fe−Ni)多層構造の円柱である所定の直径を有するジェリーロール(積層体)を形成していたが、Fe−Ni合金に代えてFeシート、Fe−Mn合金シート、Fe−Ni−Nb合金シートのようなFeあるいはFeを主成分としたFe合金シートを用いてジェリーロール(積層体)を形成するように構成することも可能である。
【0054】
以上の説明においては、TiFe合金におけるFeあるいはFe合金とTiとのモル比については説明していなかったが、FeあるいはFe合金のモル数をMFeとし、Tiのモル数をMTiとした場合に、
0.95≦MFe/MTi≦1.05
とするのが好ましい。この範囲のモル比であれば、TiFe合金単体の水素吸蔵量がこれ以外のモル比の場合と比較して多くなるとともに、Mg層への水素吸蔵量への影響の度合いも大きいからである。
【0055】
以上の説明においては、車両用燃料電池の場合を例として説明したが、水素の吸蔵/放出反応が発熱/吸熱反応であることを利用し、無冷媒のヒートポンプへの適用が可能である。この場合には、従来の水素吸蔵合金を使用したヒートポンプに比較して、高い熱伝導性がヒートポンプの即応性やエネルギー効率向上に寄与することが期待できる。
【0056】
【実施例】
次により具体的な実施例について説明する。
【0057】
厚さ0.3[mm]、幅100[mm]の純Mgシートと、厚さ0.074[mm]、幅100[mm]のTiシートと、厚さ0.05[mm]、幅100[mm]のFe−20[wt%]Ni合金シートと、を純Mgシートが巻いたときに最も内側になるように純Mgシート、Tiシート、Fe−20[wt%]Ni合金シートの順番で重ねる。すなわち、Mg/Ti/Fe−Ni構造とする。
【0058】
そして、直径10[mm]のMg製の円柱状の心棒にMg/Ti/Fe−Ni構造に重ね合わせたシートを海苔巻き状に巻き付けることにより、(Mg/Ti/Fe−Ni)多層構造の円柱を形成とする。
【0059】
そして、(Mg/Ti/Fe−Ni)多層構造の円柱の外径が22.7[mm]となるまで、巻付けを行う。
【0060】
続いて(Mg/Ti/Fe−Ni)多層構造の円柱を内径23[mm]、外径24[mm]のFeパイプ内に挿入する。さらにこのFeパイプを内径24[mm]、外径28[mm]のAl合金パイプ内に挿入し、Al合金パイプの一端にCuプラグ、他端にFeプラグを取り付けてシングルビレットとした。
【0061】
続いてシングルビレットを300[℃]に加熱した状態で、直径10[mm]に静水圧押し出し加工を行い、シングルビレット押出材を得た。
【0062】
次に得られたシングルビレット押出材を伸線加工して細線化し、細線化の最終工程で対辺距離2.6[mm]の六角線とし、直状に矯正したのち、長さ100[mm]の六角線材に切り分けた。
【0063】
次に切り分けた六角線材61本を内径23[mm]、外径28[mm]のAl合金パイプ内に挿入し、Al合金パイプの一端(先端側)にAl合金プラグ、他端(後端側)にFeプラグを取り付けてマルチビレットとした。
【0064】
続いて、マルチビレットを300[℃]に加熱した状態で直径10[mm]に静水圧押し出し加工を行い、マルチビレット押出材を得た。
【0065】
次に得られたマルチビレット押出材を伸線加工して直径2[mm]まで細線化した。
【0066】
さらに細線化したマルチビレット押出材を圧延加工して厚さ0.5[mm]、幅6.3[mm]のテープ状のテープ線材とし、その後、テープ線材を所定濃度の苛性ソーダ(NaOH)溶液に浸漬して、Alを溶かして除去し、フィラメント61本の束とし、水で洗浄後、真空中で乾燥させた。
【0067】
乾燥後のフィラメントの束(初期重量1000[mg])をArガス中650[℃]で50時間熱処理して、TiとFe−Ni合金を反応させて、TiFe0.8Ni0.2合金を生成させた。
【0068】
さらに水素初期活性化処理として、500[℃]の熱処理後、100[℃]まで冷却し、炉内に水素ガスを充填して、0.2[MPa]まで加圧した状態で20[℃]まで冷却し、減圧した。
【0069】
その後、上述した活性化処理、すなわち、100[℃]、炉内に水素ガスを充填して、0.2[MPa]まで加圧した状態で20[℃]まで冷却し、減圧する活性化処理を3回繰り返して初期活性化処理を終了した。
【0070】
続いて、初期活性化処理後、容器内にフィラメントの束を入れ、室温で水素ガスを0.5[MPa]まで加圧した状態で、容器を90[℃]まで加熱して1時間保持した後、室温に戻して、大気圧まで減圧した。
【0071】
この状態で、容器から取り出したフィラメントの重量を測定した結果、1028[mg]の重量増加を確認した。
【0072】
実験結果より、本実施例の水素吸蔵線材を用いたフィラメントは、2.8[wt%]の水素を吸蔵することが確認された。
【0073】
この値は、TiFe合金単体の水素吸蔵量(1〜1.3[wt%])や、実用化されているLaNi5の1.3[wt%]に比較して約2倍以上の高い吸蔵量であった。
【0074】
【発明の効果】
本発明によれば、従来の水素吸蔵合金に比較して単位重量あたりの水素吸蔵量を増加させることができるので、車載用として1回の水素補給で航続距離を伸ばすことができる。
【0075】
また、延性のある金属の複合体のため、従来の水素吸蔵合金に見られた水素吸蔵、放出の繰り返しによる微粉末化により容器内圧が上昇することもない。
【0076】
加えて比較的熱伝導製の高いMgを複合化した線により構成されているので、容器内の温度コントロールの追従性も他の合金と比較して高くより早い水素充填が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】水素吸蔵材の製造過程図である。
【図2】ジェリーロール(積層体)の製造状態説明図である。
【図3】シングルビレットの断面模式図である。
【図4】シングルビレットの構造説明斜視図である。
【図5】六角線材の拡大断面模式図である。
【図6】マルチビレットの断面模式図である。
【符号の説明】
11 純Mgシート
12 Tiシート
13 Fe−Niシート
14 Mg心棒
15 ジェリーロール(ジェリーロール)
16 Feパイプ
17 Alパイプ(金属被覆)
20 六角線材
21 Al合金パイプ(金属被覆)
Claims (8)
- MgあるいはMg合金のいずれか一方、FeあるいはFe合金のいずれか一方およびTiを積層し積層体を形成する積層過程と、
前記積層体を細線状あるいはシート状にすべく機械加工を施す機械加工過程と、
前記機械加工後の前記積層体に熱処理を施してTiFe合金を生成する熱処理過程とを備えたことを特徴とする水素吸蔵材の製造方法。 - 請求項1記載の水素吸蔵材の製造方法において、
前記積層過程において、MgあるいはMg合金のいずれか一方、FeおよびTiは、シート状態あるいはパイプ状態で積層されることを特徴とする水素吸蔵材の製造方法。 - 請求項1または請求項2記載の水素吸蔵材の製造方法において、
前記機械加工は、押し出し加工、伸線加工あるいは圧延加工の少なくともいずれかを含むことを特徴とする水素吸蔵材の製造方法。 - 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の水素吸蔵材の製造方法において、
前記熱処理過程は、500[℃]以上800[℃]以下の温度で前記熱処理を行うことを特徴とする水素吸蔵材の製造方法。 - 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の水素吸蔵材の製造方法において、
前記積層体における前記MgあるいはMg合金の層の厚さTMgと、FeあるいはFe合金のいずれか一方およびTiが積層された層の厚さTFe−Tiとの比Rは、次式を満たすことを特徴とする水素吸蔵材の製造方法。
2.6≦R≦8
ここで、R=TMg/TFe−Ti - 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の水素吸蔵材の製造方法において、
前記機械加工過程に先だって前記積層体に金属被覆を行う金属被覆過程と、
前記熱処理過程後に前記金属被覆を化学的あるいは機械的に除去する被覆除去過程とを備えたことを特徴とする水素吸蔵材の製造方法。 - 請求項6記載の水素吸蔵材の製造方法において、
前記金属被膜として、Cu、Cu合金、AlあるいはAl合金のいずれかを用いることを特徴とする水素吸蔵材の製造方法。 - MgあるいはMg合金で構成されるMg層と、
TiFe合金層とを備え、
前記Mg層および前記TiFe合金層が多層構造とされていることを特徴とする水素吸蔵材。
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