JP2004082658A - 蛍光体転写フィルム - Google Patents

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桑原 敏
Fukuo Murata
村田 福男
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中嶋 久
Michiaki Muraoka
村岡 道晃
Norio Yabe
矢部 紀雄
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Abstract

【課題】画素品質に優れた蛍光体画素を形成しうる蛍光体転写フィルムを提供する。
【解決手段】カバーフィルム1と支持体5の間に感光性接着層2と感光性蛍光体層3を有し、かつ感光性蛍光体層3と支持体5との間に熱可塑性樹脂からなるクッション層4を設けた構成であって、感光性蛍光体層3を、蛍光体、水溶性感光性樹脂としてアジド基を感光性成分付加基として有する変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びイミダゾール基を有する有機化合物からなる組成とした。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は蛍光体を表示媒体としたディスプレイにおいて、その製造工程において使用される蛍光体転写フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
蛍光体を表示媒体としたディスプレイは、陰極線管(CRT)を代表として、プラズマディスプレイ(PDP)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)などがある。これらのディスプレイは蛍光体の自発光色によりカラー表示が行われる方式であるため、各方式に適合した蛍光体が選択され使用されているが、蛍光体画素のパターン精度や蛍光体密度などの画素状態が表示性能、品質に大きく影響する。また蛍光体画素の形成方法がディスプレイ価格に影響するため、製造方法も重要である。
【0003】
蛍光体層の形成方法については、CRTの場合、特開昭63−279539号、特開平6―89660号、特開平10−273653号などの公報に開示されているようにポリビニルアルコール―重クロム酸アンモニウム(PVA―ADC)系感光剤、あるいはポリビニルアルコール―重クロム酸ナトリウム(PVA―SDC)系感光剤に赤、緑、青に発光する各色発光の蛍光体を分散させて作製したスラリーを一種類ずつ直接ガラス基板上に全面塗布し、乾燥後パターニング(露光・現像・乾燥)を繰り返すことにより蛍光体画素を形成している。またPDP、FEDの場合では、ポリビニルアルコールやアクリル系樹脂などに赤、緑、青に発光する各色蛍光体を分散させたペーストをそれぞれスクリーン印刷により付与して蛍光体画素を形成している。
【0004】
蛍光体スラリーを使用する場合、特開平10−273653号公報に開示されているように品質的に他色画素上への蛍光体残り(地汚れ)が発生することがあり大きな問題となる。これは地汚れ部の画素を発光させた場合に、地汚れした他色蛍光体も同時に発光するため、その画素は混色で発光する(色純度が低下)。その結果、蛍光面に形成される画像に色滲み等を引き起こし、クリアな画像が得られない。
蛍光体ペーストを使用するスクリーン印刷法では、印刷精度(位置精度、形状精度、膜厚精度)が悪く、蛍光体画素厚みの不均一性や、他色画素への蛍光体ペーストによる汚染で発色特性が悪化するという大きな問題がある。
【0005】
蛍光体を使用したディスプレイの蛍光面の作製方法は、上述のような蛍光体スラリーを使用するスラリー法や蛍光体ペーストを使用するスクリーン印刷法が一般に使用されている。これら蛍光面の製造工程においては、他色画素の汚染以外にも画素エッヂの直線性の悪化、欠けの発生、そしてゴミ、異物の混入による欠陥が発生する問題がある。
【0006】
さらにCRTの蛍光体塗布は、特開平5―101775号公報に開示されているようにスラリーをパネルガラス内に注入した後、回転塗布を行うため塗布厚を均一にすることが難しく、被着体毎で、または画素毎においても蛍光体塗布厚が不均一になりやすい。そのため連続生産において蛍光体塗布厚のバラツキが直接ディスプレイ画像の品質を悪化させる原因になっていた。
またスラリー法では製造装置自体が大型で高価であるばかりでなく、製造工程が非常に繁雑になってしまうため、製造コストが高くなるという問題を抱えている。
【0007】
これらの問題を解決する方法として、それぞれのディスプレイの特性、蛍光体の特性に合わせて、最適厚で付与した蛍光体転写フィルムを使用する方法(転写法)が特開2001−43796号及び特開2001−202884号の各公報に提案されている。転写法ではプラスチックフィルムなどの支持体上に予め均一膜厚の蛍光体層を形成することができるのでスラリー法の課題であった蛍光体塗布厚のバラツキを防止し、かつスラリー塗布のための装置に代わって小型の転写装置を使用することにより工程の簡略化、蛍光面の性能向上、そして低製造コスト化が達成できる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
蛍光体を使用したカラーディスプレイを転写法で製造する場合に使用される蛍光体転写フィルムは、例えば、感光性接着層と感光性蛍光体層を支持体とカバーフィルムの間に有し、かつ該蛍光体層と該支持体の間にクッション層を設けた構成である。構成中のクッション層の機能は被着体となるガラスなどへの感光性接着層及び感光性蛍光体層の転写を補助する働きを持っている。
【0009】
従来、このような転写フィルムを用いて、被着体となるガラス上に形成された感光性接着層と感光性蛍光体層の二つの層を蛍光体層側からの1度の活性光線で露光後、現像して蛍光体画素を形成する場合、形成される画素に所望する厚みの蛍光体が残っていない、画素中にピンホールが多くなるなどのため電子線で励起したときに所望する輝度が得られないなどの問題があった。これらは所定の大きさの画素となる部分が活性光線によって十分に光硬化していない、あるいは所定の大きさの画素となるまでの現像過程で画素表面の蛍光体が抜け落ちてしまうことが原因となっている。そのため、カラーディスプレイに必要とされる発光輝度を満足する蛍光体画素を均一に形成することが困難であった。
そこで、本発明は従来の転写法における問題点を解決するべく、画素品質に優れた蛍光体画素を形成しうる蛍光体転写フィルムを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはかかる課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、感光性蛍光体層において、蛍光体の他に、感光性成分付加基としてアジド基を有する変性ポリビニルアルコールを水溶性感光性樹脂として用い、アジド基と光反応性(光架橋性)のある水溶性樹脂としてポリビニルピロリドン、及びイミダゾール基を含有する有機化合物を用いることによって上記課題を解決することができるという知見を得、これに基づいて本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明に係る蛍光体転写フィルムは、少なくとも1層の感光性蛍光体層と感光性接着層を支持体上に有し、かつ該感光性蛍光体層と該支持体との間に熱可塑性樹脂からなるクッション層を設けた構成であって、前記感光性蛍光体層が、蛍光体、水溶性感光性樹脂、ポリビニルピロリドン及びイミダゾール基を有する有機化合物からなる組成であって、かつ、前記水溶性感光性樹脂が感光性成分付加基としてアジド基を有する変性ポリビニルアルコールであることを特徴とする。
前記感光性蛍光体層中に含まれる水溶性感光性樹脂は、感光性成分付加基として例えば、5−(4−アジド−2−スルホベンジリデン)−3−(4,4’−ジメトキシブチル)ローダニンナトリウム塩のようなローダニン骨格からなるアジド化合物を0.5〜5.0モル%有する重合度300〜3000の変性ポリビニルアルコールである。
また、前記感光性蛍光体層中に含まれるポリビニルピロリドンのK値が10〜100であることが好ましい。
前記感光性蛍光体層の組成が、例えば、蛍光体を97〜80重量%、水溶性感光性樹脂を0.5〜20重量%、ポリビニルピロリドンを0.5〜18重量%及びイミダゾール基を有する有機化合物を0.001〜15重量%含むことが好ましい。
また、前記感光性蛍光体層の厚みとしては3〜30μmであることが望ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明に係る蛍光体転写フィルムの一実施形態を示す断面図である。本実施形態の蛍光体転写フィルムは、同図に示すように、感光性接着層2と感光性蛍光体層3を支持体5とカバーフィルム1の間に有し、かつ該感光性蛍光体層3と該支持体5との間にクッション層4を設けた構成である。上記支持体5の裏面には帯電防止層6を設けている。
以下に図1に示される各層について説明する。
【0013】
1のカバーフィルムは従来公知のプラスチックフィルムが利用できる。例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、トリアセテート等があげられる。特に機械強度に強く、熱安定性に優れたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、または安価で離型性に優れたポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)が好ましい。カバーフィルムの厚さは特に制限はないが、75μm厚以下が好ましい。これは転写フィルムの製品形態、つまりロール状製品に仕上げる時、カバーフィルムが75μmを越える厚さのフィルムの場合では転写フィルムの剛度が高くなるため、ロール仕上げや既定幅へのスリット作業でカバーフィルムと接着層の間に空気が入るようなカバーフィルムの浮きが発生したり、単位長さあたりの製品重量が重くなり長尺巻き取り製品を製造しにくい、製造コストが高くなるなどの弊害が予想されるためである。
【0014】
また、カバーフィルムの基材と感光性接着層との剥離性をより安定させるには離型層を設けることが好ましい。離型層に用いる樹脂としては、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂、あるいはこれらとの共重合物、混合物等が挙げられる。離型層の塗工厚は特に限定されるものではないが、0.5〜5.0μmの塗工厚が好ましい。
ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)などのように剥離性を有する基材を使用する場合には離型層を付与する必要はない。
【0015】
2の感光性接着層は粘着剤、あるいはヒートシール剤と称される部類に属する一般的な樹脂、及び/又はこれらの樹脂に水溶性感光性樹脂を併用したものである。
粘着剤としては一般に公知であるエマルジョン型、溶剤型、及びホットメルト型の各粘着剤、及び水溶性タイプやUV架橋タイプなどを使用することができる。ヒートシール剤も一般に公知のエマルジョン型や溶剤型の樹脂を使用することができる。
本発明に適した感光性接着層を形成するためには、感光性接着層に含まれる少なくとも1つ以上の樹脂成分のガラス転移温度(Tg)が0℃以下であることが好ましい。また、該接着層は活性光線への暴露がなければ容易に水に溶解させることができる組成である。
【0016】
3の感光性蛍光体層に用いられる蛍光体はディスプレイの種類によって異なるが、CRT用の蛍光体としては、青色発光蛍光体としては銀および塩素付活硫化亜鉛蛍光体(ZnS:Ag / ZnS:Ag,Cl)、銀およびアルミニウム付活硫化亜鉛蛍光体(ZnS:Ag,Al)が、緑色発色蛍光体としては銅およびアルミニウム付活硫化亜鉛蛍光体(ZnS:Cu,Al)、銅、金およびアルミニウム付活硫化亜鉛蛍光体(ZnS:Cu,Au,Al)、マンガン付活珪酸亜鉛蛍光体(ZnSiO:Mn)が、赤色発色蛍光体としてはユーロピウム及びサマリウム付活酸硫化イットリウム蛍光体(YS:Eu / YS:Eu,Sm)、マンガン付活燐酸亜鉛蛍光体(Zn(PO:Mn)等を使用することができる。
また、PDP用の蛍光体として、青色発光蛍光体としてはBaMgAl1423:Eu、BaMgAl1017:Eu、緑色発光蛍光体としてはBaAl1219:Mn、ZnSiO:Mn、(Ba,Sr,Mg)O・aAl:Mn、赤色発光蛍光体としては(Y,Gd)BO:Eu等を使用することができる。
さらに、FED用の蛍光体として、ZnGa、SrTiO:Pr等を使用することができる。
【0017】
4はクッション層であり、特開2001−43796に示されるような蛍光体転写フィルムの使用法で被着体に形成された蛍光体パターンの上に転写する際、パターン間へ感光性接着層及び感光性蛍光体層を確実に埋め込み転写するために必要である。蛍光体パターンの厚みは通常3〜30μmであるため、パターン間にきちんと感光性接着層及び感光性蛍光体層を転写するには、その材料特性にもよるがクッション層の厚みが蛍光体パターン厚みのおよそ2〜4倍は必要である。クッション層の厚みが蛍光体パターンの厚みに対してこれよりも低い比率となると、パターン間に確実に転写することが困難となり、パターンの底辺部、即ち被着体面と被着面から立ち上がる蛍光体パターンの側面の間に空気溜まり(テンティング)が発生して転写不良となりやすい。クッション層の厚みが100μmを越えると用いる樹脂の熱伝導度にもよるが、転写作業の際に熱ロールからの熱伝導速度が低下するため、クッション層を充分軟化できず、既形成蛍光体パターン間に新たな感光性接着層及び感光性蛍光体層を埋め込むように転写することが難しくなる。
【0018】
クッション層の材料としては、熱可塑性の樹脂が好ましく、例えばアクリル酸エステル共重合体、エチレンとアクリル酸エステル共重合体のケン化物、スチレンとアクリル酸エステル共重合体のケン化物、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、スチレンとイソプレン、あるいはブタジエンの共重合体、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂を単独で、あるいは適当な配合で混合したり、適当な組み合わせで積層させて使用することができる。また必要であれば、可塑剤を添加しても良い。
【0019】
また、該クッション層と感光性蛍光体層の間には必要に応じて離型層を形成することも可能であるし、クッション層の内部にワックス状の離型性成分を内添させることが可能である。クッション層に用いる樹脂の種類によっては、離型層を設けたり離型成分を内添させることにより感光性蛍光体層の剥離が安定化し、被着体への該蛍光体層の転写をより容易ならしめる効果を発揮できる。
【0020】
5は支持体である。支持体としては、カバーフィルムの説明で示したのと同様な従来公知のプラスチックフィルムが利用できる。支持体の厚さは特に制限はないが、25〜150μm厚が適当である。25μm以下では作業性が悪化し、帯電防止層、クッション層付与時にカールが顕著に発生するため好ましくない。150μm以上になると、ロール状製品が製造しづらくなるばかりでなく、被着体への転写作業において熱ロールによって蛍光体転写フィルムと被着体を熱圧着する際、感光性接着層への熱伝導速度が低下するため、熱ロール温度を高くするか、転写速度を低くする、あるいは被着体を十分に熱するなどの措置をしないと良好な転写が得られなくなる。これは作業性、経済性の観点から好ましくないので支持体の厚みはできるだけ薄い方が良い。特に好ましくは、40〜50μmの厚みが支持体として適している。
【0021】
なお、剥離帯電によるゴミの混入防止のために、帯電防止層6を付与している。プラスチックフィルムの表面抵抗値はJIS K6911で規定されている測定法により10 Ω/□となることが好ましい。このため、帯電防止処理フィルムを使用するか、あるいは6の帯電防止層を予め付与したフィルムを使用することが好ましい。
【0022】
ここで、図1の蛍光体転写フィルムの構成をもとに被着体への感光性蛍光体層と感光性接着層の転写工程を以下に説明する。
まず、カバーフィルム1と感光性接着層2の間で剥離して感光性接着層2面を露出する。次いで該接着層2を被着体(ガラス)に加熱及び加圧して接着させた後、感光性蛍光体層3とクッション層4の間で支持体5を剥離する。この段階で感光性蛍光体層3及び感光性接着層2のみが被着体へ転写される。
【0023】
本発明の蛍光体転写フィルムは、カラーディスプレイを作製する上で必要な色ごとに用意する必要があり、例えば、CRTの場合には電子線で励起して赤色、青色及び緑色に発光する蛍光体をそれぞれ含む3枚の転写フィルムが必要となる。そして、被着体となるパネルガラス上に1色ずつ感光性接着層と感光性蛍光体層を転写し、高圧水銀灯などを光源とする活性光線でのパターン露光、水による現像、乾燥の操作により蛍光体画素を形成する。2〜3色目の蛍光体画素も前記同様に転写・露光・現像・乾燥の操作を行ってパネルガラス上に電子線で励起して赤色、緑色及び青色に発光する蛍光体画素を形成する。
【0024】
前記に示したように被着体上に転写された感光性接着層及び感光性蛍光体層はパターニング工程(露光・現像・乾燥)を経て蛍光体画素を形成する。このときに該両層は1度の露光で画素として必要な部分のみを活性光線によって内包する水溶性感光性樹脂を光架橋させて硬化する。本発明では、水溶性感光性樹脂として、アジド基を感光性成分付加基として有する変性ポリビニルアルコールを使用することができるが、特に5−(4−アジド−2−スルホベンジリデン)−3−(4,4’−ジメトキシブチル)ローダニンナトリウム塩のようにローダニン骨格からなるアジド化合物を感光性成分付加基として0.5〜5.0モル%含有する重合度300〜3000の変性ポリビニルアルコールが好ましい。
【0025】
感光性蛍光体層中の蛍光体と水溶性感光性樹脂との混合比率は蛍光体/感光性樹脂=97〜80重量%/0.5〜20重量%が好ましい。これ以上蛍光体比率が高いと光硬化後の層強度が弱くなり、現像で画素表面からの蛍光体の脱落や画素のエッヂの直線性が劣ることがある。逆に蛍光体比率がこれより低い場合には、蛍光体画素を形成する蛍光体の充填密度が低下するため、電子線で励起して発光させても所定の輝度に達しない画素となる。
【0026】
蛍光体と水溶性感光性樹脂のみの組成で感光性蛍光体層を設けた場合には、形成される蛍光体画素が所定の大きさよりも太る傾向がある。この問題を解決するには、ビニルピロリドン(共)重合体、(メタ)アクリルアミド(共)重合体、アルキル(メタ)アクリルアミド(共)重合体、ジアルキル(メタ)アクリルアミド(共)重合体、(メタ)アクリルアミド−ジアセトン(メタ)アクリルアミド共重合体、アクリロイルモルホリン(共)重合体、スチレンスルホン酸ナトリウム(共)重合体、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(共)重合体、ポリビニルアルコール(共)重合体、カゼイン、ゼラチン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコールなどの水溶性樹脂を感光性蛍光体層に配合すると良い。これらの樹脂はアジド基と光架橋性を有し、かつ分子量の選択の自由度が高いので活性光線照射部の光硬化性を調整には適した材料である。特にポリビニルピロリドンは(以下PVPと表記する)、アジド基との光架橋性が非常に良いので好ましい。前記の水溶性感光性樹脂とPVPを感光性蛍光体層に併用した場合には、活性光線が照射された部分の光架橋密度が幅広く調整できるので、光硬化の強弱及び形成される蛍光体画素のエッジシャープネスを制御しやすい長所がある。一般に知られているK値(固有粘度)が10〜100のPVPを本発明の感光性蛍光体層に使用できるが、特に画素のエッジシャープネスを向上するにはK値が10〜60のPVPが適している。
【0027】
さらに感光性蛍光体層中の水溶性感光性樹脂の活性光線に対する光反応性を向上させる働きを有する材料として、イミダゾール基を含有する有機物が非常に有用である。本発明に使用できるイミダゾール基を含有する有機化合物(以下イミダゾール化合物と表記する)としては、感光性蛍光体層形成用の組成物を蛍光体の凝集なく構成できるものであれば、水溶性であるか非水溶性であるかに係わらず低分子化合物から高分子化合物まで幅広く使用することができる。このような化合物としては、例えば2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、ビニルピロリドン−メチルビニルイミダゾール共重合体、N−ビニルピロリドン・3−メチル・1・ビニルイミダゾール・N−ビニルカプロラクタム共重合体・メチル硫酸塩、ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩、ビニルピロリドン−ビニルイミダゾール共重合体などが挙げられる。なお、これらのイミダゾール化合物は、感光性蛍光体層はコーティングにより形成するため乾燥工程で蒸発しないように、または該蛍光体層がパターニング工程で使用されるまでに揮発しないように120℃以上の沸点を有することが好ましい。
【0028】
前記に示したイミダゾール化合物は、アジド基との反応性が非常に高いために過度に感光性蛍光体層に配合すると形成された蛍光体画素が大きく太るので、その配合量には一定の範囲がある。また、ビニルピロリドンとイミダゾールの双方を含む化合物はさらに反応性が高いので少量の配合量で活性光線が照射された部分の光硬化性は現像時に蛍光体の抜け落ちがないほど十分なレベルになる。なお、蛍光体の種類によってはイミダゾール化合物を同一配合量としても活性光線に対する光硬化性に及ぼす効果度合いが異なることがあるので、最適配合量は蛍光体毎に設定する必要がある。
【0029】
以上のことから、感光性蛍光体層の好ましい組成比は、蛍光体が97〜80重量%、水溶性感光性樹脂が0.5〜20重量%及びポリビニルピロリドンが0.5〜18重量%であり、かつイミダゾール化合物が0.001〜15重量%である。この組成の感光性蛍光体層を用いた場合は、現像後も所定の厚みを有し、かつピンホールのない良好な蛍光体画素を形成することが可能となる。感光性蛍光体層の厚みは使用する蛍光体粒子の平均粒径にもよるが、3.0〜30μmの範囲で調整することが可能である。
【0030】
他方、前述の感光性接着層について更に説明すると、該接着層にも感光性蛍光体層に使用した水溶性感光性樹脂と同じものを使用することができる。感光性接着層への水溶性感光樹脂の配合量は被着体や感光性蛍光体層との接着性を損なわない範囲で多くすることができる。感光性接着層は被着体への接着性は当然有しながら、感光性蛍光体層との密着性が良く、該蛍光体層及び該接着層への露光、現像によるパターン形成時に非画像部に残さが発生しない材料が好ましい。
【0031】
また、感光性接着層の厚みは活性光線に対する感度や被着体への接着性に直接影響するので重要である。実際に該接着層の厚みが0.5μmより薄い場合、被着体への接着性が低下するため感光性蛍光体層の転写性悪化を引き起こす場合が多い。逆に該接着層の厚みが3μmより厚くなると被着体への接着が可能であっても、解像度の高い蛍光体画素は得にくい。さらにCRT製造の場合、接着層の厚みが厚すぎると焼成工程において含有される有機物から発生するガス量が多くなりすぎて蛍光体パターンが剥がれ落ちてしまうことがある。従って感光性接着層の厚みは0.5〜3.0μmが好ましい。
【0032】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明の特徴とするところをより詳細に説明する。
ここではCRT用に使用される蛍光体の画素形成について本発明の有用性を例示するが、本発明はこれらの蛍光体に限定されるものではない。
【0033】
実施例1
図1に示す構成のフィルムを以下の通り作製した。
(1)カバーフィルムにはトーセロ社製の50μm厚のポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)を用いた。
次に示す組成の感光液を調製し、OPPフィルム上に塗工厚みが1.4μmとなるようにマイヤーバーを用いて塗工し、熱風循環式乾燥機中で90℃2分間の乾燥を行い、感光性接着層を形成した。
【0034】
Figure 2004082658
【0035】
(2)支持体として帝人デュポン社製の50μmPETフィルム(裏面に帯電防止層を付与:表面抵抗値10Ω/ □)を用い、これにMR−7768(アクリル酸エステル共重合体:Tg9℃、三菱レイヨン社製)をマイヤーバーを用いて塗工し、熱風循環式乾燥機中で120℃4分間の乾燥を行い、50μm厚のクッション層を形成した。次いで、テスファイン324(アクリルメラミン系樹脂:日立化成ポリマー株式会社製)の2%溶液を調製し、上述のクッション層上に塗工厚みが0.4μmとなるようにマイヤーバーを用いて塗工し、熱風循環式乾燥機中で110℃2分間の乾燥を行って離型層を形成した。
最後に、以下に示す組成の感光液を調製し、上述の離型層上に塗工厚みが17μmとなるようにマイヤーバーを用いて塗工し、熱風循環式乾燥機中で90℃2分間の乾燥を行って感光性蛍光体層を形成した。
【0036】
Figure 2004082658
【0037】
(3)蛍光体転写フィルムの貼合
(1)及び(2)で得られたフィルムを(1)のフィルムの感光性接着層面と(2)のフィルムの感光性蛍光体層面とを向かい合うように重ねた後、ラミネーターにニップした。加熱、加圧状態で両フィルムを貼合して一体化させて、緑色発光蛍光体転写フィルムを得た。
貼合条件を以下に示す。
貼合温度:120℃
貼合圧力:2kgf/cm
貼合速度:2m/分
【0038】
実施例2
感光性蛍光体層形成用感光液に青色発光用蛍光体(ZnS:Ag)を用い、ビニルピロリドン−ビニルイミダゾール共重合体の配合量を0.03重量%とした以外は実施例1と同様にして、青色発光蛍光体転写フィルムを得た。
【0039】
実施例3
感光性蛍光体層形成用感光液に赤色発光用蛍光体 (YS:Eu)を用い、ビニルピロリドン−ビニルイミダゾール共重合体の配合量を0.05重量%とした以外は実施例1と同様にして、赤色発光蛍光体転写フィルムを得た。
【0040】
実施例4
以下に示す感光性蛍光体層形成用感光液を用いた以外は実施例1と同様にして、緑色発光蛍光体転写フィルムを得た。
【0041】
Figure 2004082658
【0042】
実施例5
感光性蛍光体層形成用感光液に青色発光用蛍光体(ZnS:Ag)を用い、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールの配合量を0.5重量%とした以外は実施例4と同様にして、青色発光蛍光体転写フィルムを得た。
【0043】
実施例6
感光性蛍光体層形成用感光液に赤色発光用蛍光体 (YS:Eu)を用い、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールの配合量を5.0重量%とした以外は実施例4と同様にして、赤色発光蛍光体転写フィルムを得た。
【0044】
実施例7
以下に示す感光性蛍光体層形成用感光液を用いた以外は実施例1と同様にして、緑色発光蛍光体転写フィルムを得た。
【0045】
Figure 2004082658
【0046】
実施例8
感光性蛍光体層形成用感光液に青色発光用蛍光体(ZnS:Ag)を用い、N−ビニルピロリドン・3−メチル・1・ビニルイミダゾール・N−ビニルカプロラクタム共重合体・メチル硫酸塩の配合量を1.0重量%とした以外は実施例7と同様にして、青色発光蛍光体転写フィルムを得た。
【0047】
実施例9
感光性蛍光体層形成用感光液に赤色発光用蛍光体 (YS:Eu)を用い、N−ビニルピロリドン・3−メチル・1・ビニルイミダゾール・N−ビニルカプロラクタム共重合体・メチル硫酸塩の配合量を0.5重量%とした以外は実施例7と同様にして、赤色発光蛍光体転写フィルムを得た。
【0048】
このようにして作製した実施例1〜実施例9に示した緑色,赤色,青色の3色にそれぞれ発光する蛍光体転写フィルムを用いて、CRT用ブラウン管ガラスのパネルガラス内面に感光性接着層及び感光性蛍光体層を転写した後、感光性蛍光体層と離型層間の界面で支持体を剥離した。転写は、パネルガラス上に蛍光体転写フィルムの感光性接着層が触れるように置いてフィルム側から160℃に表面が加熱されたゴムロールを4kgf/cmの圧力で加圧しながら700mm/分の速度で転がして行った。次いでパターニング(活性光線によるパターン露光・水現像・乾燥)を行い、パネルガラス上に3色の蛍光体画素を形成した。パターン露光は光源に高圧水銀灯を使用し、格子上の画素パターンが形成された石英製ガラスマスクを光源と感光性蛍光体層の間に挿入して行った。露光量は40mJのエネルギー量となるように調整した。ノズルから霧状に噴出した水を2分間吹き付けて現像を行った後、圧縮空気を3分間吹き付けてパネルガラス及び蛍光体画素を乾燥させた。形成された画素はフリンジもなく所定の大きさであり、ピンホールもなく良好であった。これらの結果をまとめて後記表1に示した。実施例1〜実施例9に示したように、感光性蛍光体層に水溶性感光性樹脂、PVP及びイミダゾール化合物を併用することによって蛍光体の充填度の良好な画素を形成できることが分かる。
また、蛍光体やイミダゾール化合物の種類によっては配合するイミダゾール化合物の配合量に差があるが、いずれも良好な画素を形成できる。さらに実施例1〜実施例9に示した蛍光体転写フィルムを40℃下1週間放置しても前記の性能には変化がなく、安定した性能を維持していた。特に実施例4〜実施例6では低分子のイミダゾール化合物の揮発も認められず良好な画素が形成できた。
【0049】
比較例1
感光性蛍光体層形成用感光液にビニルピロリドン−ビニルイミダゾール共重合体を配合しなかった以外は実施例1と同様にして、緑色蛍光体転写フィルムを作製した。
【0050】
比較例2
感光性蛍光体層形成用感光液にビニルピロリドン−ビニルイミダゾール共重合体を配合しなかった以外は実施例4と同様にして、緑色蛍光体転写フィルムを作製した。
【0051】
比較例3
感光性蛍光体層形成用感光液にビニルピロリドン−ビニルイミダゾール共重合体を配合しなかった以外は実施例7と同様にして、緑色蛍光体転写フィルムを作製した。
【0052】
このようにして作製した比較例1〜比較例3に示した緑色,赤色,青色の3色にそれぞれ発光する蛍光体転写フィルムを用いて、CRT用ブラウン管ガラスのパネルガラス内面に前述の実施例と同様にしてパターニングを行い、蛍光体画素を得た。結果は後記表1に示した。
比較例1〜比較例3では、実施例に比較すると蛍光体の充填密度が劣っており、蛍光体の抜けや脱落が認められた。これは実施例に示したイミダゾール化合物が光硬化性を高め、現像による蛍光体の抜け落ちを抑制していることを示している。さらに、画素が所望する幅に形成できず、形成された蛍光体画素のエッジもシャープでなかった。
【0053】
以上の実施例及び比較例で示した蛍光体転写フィルムにおける感光性蛍光体層の組成と、形成された蛍光体画素の品質をまとめて下記表1に示す。前にも述べたように、本実施例のように、感光性蛍光体層に蛍光体に加えて、水溶性感光性樹脂、PVP及びイミダゾール化合物を併用し、感光性蛍光体層の組成を例えば、蛍光体が97〜80重量%、水溶性感光性樹脂が0.5〜20重量%及びポリビニルピロリドンが0.5〜18重量%であり、かつイミダゾール化合物が0.001〜15重量%となるように調整することにより良好な蛍光体画素を形成できることが、この表1から明らかである。
なお、表1中の評価基準は次のとおりである。
a)画素幅
○:良好 ×:所望の幅に形成できず、画素幅のコントロールが出来ない
b)蛍光体充填密度
○:良好 ×:蛍光体画素の抜けや脱落がある
c)エッジ形状
○:良好 ×:エッジがシャープでない
【0054】
【表1】
Figure 2004082658
【0055】
【発明の効果】
以上詳細に述べたように、本発明の蛍光体転写フィルムを用いることにより、転写法による画素品質の良好な所望する蛍光体画素が形成できるので、これにより映像品質の高いカラーディスプレイを製造することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る蛍光体転写フィルムの一実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 カバーフィルム
2 感光性接着層
3 感光性蛍光体層
4 クッション層
5 支持体
6 帯電防止層

Claims (5)

  1. 少なくとも1層の感光性蛍光体層と感光性接着層を支持体上に有し、かつ該感光性蛍光体層と該支持体との間に熱可塑性樹脂からなるクッション層を設けた構成であって、前記感光性蛍光体層が、蛍光体、水溶性感光性樹脂、ポリビニルピロリドン及びイミダゾール基を有する有機化合物からなる組成であって、かつ、前記水溶性感光性樹脂が感光性成分付加基としてアジド基を有する変性ポリビニルアルコールであることを特徴とする蛍光体転写フィルム。
  2. 前記感光性蛍光体層中に含まれる水溶性感光性樹脂が感光性成分付加基として5−(4−アジド−2−スルホベンジリデン)−3−(4,4’−ジメトキシブチル)ローダニンナトリウム塩を0.5〜5.0モル%有する重合度300〜3000の変性ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体転写フィルム。
  3. 前記感光性蛍光体層中に含まれるポリビニルピロリドンのK値が10〜100であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蛍光体転写フィルム。
  4. 前記感光性蛍光体層が、蛍光体を97〜80重量%、水溶性感光性樹脂を0.5〜20重量%、ポリビニルピロリドンを0.5〜18重量%及びイミダゾール基を有する有機化合物を0.001〜15重量%含むことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の蛍光体転写フィルム。
  5. 前記感光性蛍光体層の厚みが3〜30μmであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の蛍光体転写フィルム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR100964915B1 (ko) * 2004-03-29 2010-06-23 가즈노리 가따오까 고분자 복합체
JP2014070136A (ja) * 2012-09-28 2014-04-21 Nitto Denko Corp 蛍光接着シート、光半導体素子−蛍光体層感圧接着体および光半導体装置

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