JP2004077540A - 液晶素子とその駆動方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】D1領域とD2領域とを明確に分断し、優れた動画質と良好な視野角特性を有するカイラルスメクチック液晶素子を提供すること。
【解決手段】第1の極性の電圧印加時と第2の極性の電圧印加時の液晶の平均分子軸の該第1の状態における単安定化された位置を基準とした最大チルト状態のチルトの角度をそれぞれβ1、β2としたとき、β1>β2≧0なる領域D1と0≦β1<β2なる領域D2とが存在することと、前記D1領域とD2領域との境界部分に隔壁(リブ)が配設されていることを特徴とする。
【選択図】 図10
【解決手段】第1の極性の電圧印加時と第2の極性の電圧印加時の液晶の平均分子軸の該第1の状態における単安定化された位置を基準とした最大チルト状態のチルトの角度をそれぞれβ1、β2としたとき、β1>β2≧0なる領域D1と0≦β1<β2なる領域D2とが存在することと、前記D1領域とD2領域との境界部分に隔壁(リブ)が配設されていることを特徴とする。
【選択図】 図10
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶を利用して種々の表示を行うカイラルスメクチック液晶素子とその駆動方法に関する。
【従来の技術】
従来、ネマチック液晶を利用したアクティブマトリクス型の液晶パネルが種々提案されている。以下、この液晶パネルについて説明する。
従来、1つ1つの画素にトランジスタのようなアクティブ素子を配置したアクティブマトリクス型液晶パネルとしてはネマチック液晶を用いたものがあり、様々なモードで使用されている。
例えば、広汎に用いられている代表的なモードとしてツイステッドネマチック(Twisted Nematic)モードがあり、該モードについては、「エム・シャット(M.Schadt)とダブリュー・ヘルフリッヒ(W.Helfrich)著、APPlied Physics Letters、第18巻、第4号(1971年2月15日発行)、第127頁〜128頁」に開示されている。
又、最近では、従来型液晶パネルの欠点である視野角特性を改善するものとして、横方向電界を利用したインプレインスイッチング(In−Plain Switching)モードや、垂直配向(Vertical Alignment)モードが発表されている。
ところで、上述したネマチック液晶を用いた場合には(何れのモードでも)応答速度が遅いという問題があり、近年は、そのような問題点のないカイラルスメクチック液晶を用いた液晶パネルが注目されている。例えば、「ショートピッチタイプの強誘電性液晶」、「高分子安定型強誘電性液晶」、「無閾反強誘電性液晶」などが提案されており、未だ実用化には至っていないものの、何れもサブミリ秒以下の高速応答性が実現できると報告されている。
次に、このようなカイラルスメクチック液晶を用いた液晶パネルの一例について説明する。
例えば、特開2000−338464号にて開示されている液晶パネルは、カイラルスメクチック液晶として、高温側より、等方性液体相(ISO.)−コレステリック相(Ch)−カイラルスメクチックC相(SmC*
)、又は、等方性
液体相(ISO.)−カイラルスメクチックC相(SmC*
)の相転移系列を示
す液晶を、仮想コーンのエッジより内側の位置で安定化するように調整して用いており、斯かる液晶を一対の基板間に注入した後の冷却過程において(正確には、Ch−SmC* 相転移の際、又はISO−SmC* 相転移の際に)液晶2にD
C電圧を印加する等して層方向を一方向に均一化させている。この液晶パネルは、応答速度が速いという効果を有する他、階調制御が可能であって、動画質に優れ、高輝度であって量産性に優れるという特徴を有している。又、この液晶パネルは、自発分極値を小さくでき、アクティブ素子とのマッチングが良いものとなっている。
更に、特開2000−275684号では所定の領域ごとに前記層の方向を変化させることによって、優れた動画質という特徴を維持したまま、より一層の視野角の向上が図られている。
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した特開2000−275684号で述べた液晶パネル(以下、先願1と記載)においては領域ごとに層の方向を変化させることが特徴としているが、本発明者らの詳細な検討によると、場合によっては本来例えば或る所定の場所には何れか一方の方向(D1)に制御しようとしている場合においても、所望の層方向とは異なる層(D2)が存在してしまう場合があることが分かった。そして、このようになる原因は、本来制御したい層の方向(例えばD1)とそれに隣接する他の層方向(例えばD2)があったときに、高温側の相からスメクチック相へと転移する際に生じる層の成長(結晶成長のようなもの)が十分に制御し切れずに、所定の領域において本来制御したい層とは異なる層が進入してしまうことが原因となっていた。
そして、このような構造になってしまった場合には、本来明暗を交互に表示させることでインパルス応答による優れた動画質が得られる筈のものが、暗状態での光漏れが所定の大きさよりも大きくなってしまう可能性が発生してしまうため、インパルス応答の効果が薄れてしまう、即ち動画質の劣化が生じる原因となっていた。
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、D1領域とD2領域とを明確に分断し、優れた同画質と良好な視野角特性を有する液晶素子とその駆動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、カイラルスメクチック液晶と、該液晶に電圧を印加する一対の電極と、該液晶を挟持して対向すると共に少なくとも一方の対向面に該液晶を配向させるための一軸性配向処理が施された一対の基板と、前記一対の基板間には間隙を均一に保持する隔壁(リブ)が配設されていることと、少なくとも一方の基板側に偏光板とを備えた液晶素子であって、電圧無印加時では、該液晶の平均分子軸が単安定化された第1の状態を示し、第1の極性の電圧印加時には、該液晶の平均分子軸は印加電圧の大きさに応じた角度で該単安定化された位置から一方の側にチルトし、該第1の極性とは逆極性の第2の極性の電圧印加時には、該液晶の平均分子軸は該単安定化された位置から第1の極性の電圧を印加したときとは逆側にチルトし、第1の極性の電圧印加時と第2の極性の電圧印加時の液晶の平均分子軸の該第1の状態における単安定化された位置を基準とした最大チルト状態のチルトの角度をそれぞれβ1、β2としたとき、
β1>β2≧0なる領域D1と
0≦β1<β2なる領域D2と
が存在することと、
前記D1領域とD2領域との境界部分に前記隔壁(リブ)が配設されていることを特徴とする。
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
先ず、本実施の形態にて製造され駆動される液晶素子の全体構成について図1を参照して説明する。
本実施の形態に係る液晶素子は、図1に符号Pで示すように、所定間隙を開けた状態に配置された一対の基板1a,1bと、これら一対の基板1a,1bの間隙に配置されたカイラルスメクチック液晶2と、複数の画素を構成すると共に該カイラルスメクチック液晶2を挟み込むように配置された一対の電極3a,3bと、これらの一対の電極の何れか一方3bに接続された状態で各画素毎に配置された複数のアクティブ素子4と、を備えており、前記一対の電極3a,3bを介して前記カイラルスメクチック液晶2に電圧を印加することにより駆動されるように構成されている。
又、前記一対の基板1a,1bは隔壁(リブ)5にて接着され支持されている。
尚、カイラルスメクチック液晶2としては、高温側より、等方性液体相(ISO.)−コレステリック相(Ch)−カイラルスメクチックC相(SmC*
)、
又は、等方性液体相(ISO.)−カイラルスメクチックC相(SmC*
)、の
相転移系列を示すものを挙げることができる。又、斯かる液晶2は、電圧を印加していない状態で液晶分子が仮想コーンのエッジ、或は仮想コーンの内側の位置で安定化する状態で用いると良い。
次に、本実施の形態に係る液晶素子の製造方法について説明する。
上述した液晶素子Pを製造するに際しては、一対の基板の少なくとも一方に隔壁(リブ)を形成する工程と、一対の基板の少なくとも一方に一軸配向処理を施す工程と、所定間隙を開けた状態に一対の基板1a,1bを配置する工程と、これら一対の基板1a,1bの間隙にカイラルスメクチック液晶2を配置する工程と、該カイラルスメクチック液晶2を挟み込むと共に複数の画素を構成するように一対の電極3a,3bを配置する工程と、アクティブ素子4を各画素毎に一方の電極3bに接続した状態に配置する工程と、を適切な順序で実施する。
この場合、前記隔壁(リブ)の形成方向と一軸配向処理方向との関係を45度以上の角度、望ましくは直角に近い角度に設定するとよい。
次に、液晶素子Pの詳細構造について説明する。
先ず、カイラルスメクチック液晶2について説明する。
本実施の形態にて用いるカイラルスメクチック液晶2は、上述のような相転移系列のもの、即ち、高温側より、等方性液体相(ISO.)−コレステリック相(Ch)−カイラルスメクチックC相(SmC* )、又は等方性液体相(ISO
.)−カイラルスメクチックC相(SmC* )の相転移系列を示すものが好まし
いが、具体的には、次の(1)〜(4)に示す化合物を挙げることができる。
(1)
【化1】
R1,R2:炭素原子数が1〜20である置換基を有していても良い直鎖又は分岐状のアルキル基
X1,X2:単結合、O、COO、OOC
Y1,Y2,Y3,Y4:H又はF
n:0又は1
(2)
【化2】
R1,R2:炭素原子数が1〜20である置換基を有していても良い直鎖又は分岐状のアルキル基
X1,X2:単結合、O、COO、OOC
Y1,Y2,Y3,Y4:H又はF
(3)
【化3】
R1,R2:炭素原子数が1〜20である置換基を有していても良い直鎖又は分岐状のアルキル基
X1,X2:単結合、O、COO、OOC
Y1,Y2,Y3,Y4:H又はF
(4)
【化4】
R1,R2:炭素原子数が1〜20である置換基を有していても良い直鎖又は分岐状のアルキル基
X1,X2:単結合、O、COO、OOC
Y1,Y2,Y3,Y4:H又はF
ところで、本実施の形態では、カイラルスメクチック液晶2については、その液晶材料の組成を調整し、更に液晶材料の処理や素子構成、例えば配向制御膜6a,6bの材料処理条件等を適宜設定することにより、
▲1▼駆動電圧が印加されていない場合には、該液晶の平均分子軸(液晶分子)が単安定化されている配向状態を示し、
▲2▼第1の極性(例えば正極性)の駆動電圧が印加されて駆動される場合には、液晶分子の平均分子軸が駆動電圧の大きさに応じた角度で前記単安定化された位置から一方の側にチルトし、
▲3▼他方の極性(前記第1の極性に対する逆極性を言う。例えば負極性。以下、同じ)の電圧が印加されている場合には、液晶分子の平均分子軸が駆動電圧の大きさに応じた角度で前記単安定化された位置から他方の側(即ち、前記第1の極性の電圧を印加したときにチルトする側とは反対の側)にチルトする、ような特性を示すようにすることができる。
つまり、本実施の形態に用いる液晶2は、例えば図5に示す特性のものであって、カイラルスメクチック液晶本来のメモリ性(双安定性)が消失されたものであって、チルト角の大きさを印加電圧によって連続的に制御することができ、それに伴って液晶素子の光量も連続的に変化させることができ、階調表示を可能とするものである。この場合、前記第1の極性の駆動電圧を印加することによって最大チルト状態とした場合におけるチルト角は、前記他の極性の電圧を印加することによって最大チルト状態とした場合におけるチルト角と異ならせると良い。例えば、該他の極性の電圧を印加した場合、該電圧の大きさに拘らず、液晶の平均分子軸が殆どチルトしないような特性にしても良い。以下、このような特性を有する領域をD1領域と呼ぶ。
一方、前記処理条件を変えることにより、図5に示す特性に対してy軸に対して線対称な特性、即ち図6に示すように前記逆(例えば負)の極性の電圧を印加したときには大きく透過率が上昇し、前記第1の極性(例えば正極性)の電圧を印加したときには逆極性(負)の電圧を印加したときとは異なった小さなチルト角をとらせることができる。又、このとき第1の極性(例えば正極性)の電圧を印加したときに、液晶の平均分子軸が殆どチルトしないような特性にしても良い。以下、このような特性を有する領域をD2領域と呼ぶ。
次に、カイラルスメクチック液晶2以外の各構成部材等について説明する。
上述した基板1a,1bには、ガラスやプラスチック等の透明性の高い材料を用いれば良い。
又、電極3a,3bには、In2 O3 やITO(インジウム・ティン・オキサ
イド)等の材料を用いれば良く、これらの電極3a,3bはそれぞれの基板1a,1bに形成すると良い。更に、アクティブ素子4としては、TFTやMIM(metal−Insulator−Metal)等を用いれば良い。
又更に、各電極3a,3bの表面には、これらの電極間のショートを防止するための絶緑膜を形成すると良く(図1には、一方の電極3bを覆う絶縁膜5bのみ図示)、斯かる絶緑膜は、SiO2 、TiO2 、Ta2 O5 等にて形成すれば
良い。
又、カイラルスメクチック液晶2に接する位置には、その配向状態を制御するために一軸配向処理を施した配向制御膜6a,6bを配置すると良い。斯かる配向制御膜6a,6bとしては、
*ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール等の有機材料から成る溶液を塗布して膜を形成し、該膜の表面にラビング処理を施したものや、
*SiO等の酸化物や窒化物からなる無機材料を基板1a,1bに斜め方向から所定の角度で蒸着させて形成した斜方蒸着膜、
*紫外線照射等によって一軸配向規制力を発生し得る光配向膜を用いたもの、を挙げることができる。
尚、この配向制御膜6a,6bの材質や一軸配向処理の条件等により、液晶分子のプレチルト角(即ち、配向制御膜6a,6bの界面近傍において液晶分子が配向制御膜6a,6bに対してなす角度)が調整される。
このような配向制御膜6a,6bは、カイラルスメクチック液晶2の両側に配置してそれらの両方に一軸配向処理を施せば良く、その場合における一軸配向処理方向(特にラビング方向)の関係は、用いる液晶材料を考慮して、
*アンチパラレル(両一軸配向処理方向が平行且つ逆方向)、
*パラレル(両一軸配向処理方向が平行且つ同方向)、
*45°以下の範囲でクロスする関係、
の何れかになるように設定すれば良い。
尚、45°以下の範囲でクロスする関係とは、2つのベクトル(一軸配向処理方向を示すベクトル)が45°以下の範囲内でクロスする場合であって、それぞれのベクトル方向が同方向(正確には、45°以下の角度ズレを有する)である場合や、それぞれのベクトル方向が逆方向である場合の両方を挙げることができる。そして、互いのベクトルの交差角度(狭い方の交差角度)の値が45°以下で且つ0°に近いような場合は、それぞれのベクトルの関係が実質的にアンチパラレル乃至パラレルの関係と見なしても良い。又、上述のアンチパラレル或はパラレルの関係もそれぞれベクトル同士が必ず平行である以外に、例えば数°程度ずれているような場合でも実質的にアンチパラレル乃至パラレルの関係と見なしても良い。
尚、このように上下のラビング方向がずれている場合における「一軸配向処理方向と隔壁(リブ)の形成方向とのなす角」の定義については、上下ラビングの強さが同一である場合には上下ラビング方向の平均方向で良く、上下の一軸配向処理強度が同一でない場合にはその規制力に応じた加重平均方向とすれば良い。又、本発明で用いている液晶材料は一軸配向処理方向とスメクチック相に転移する場合のバトネの成長方向が略平行な関係になっているので、上下のラビング方向が平行でない場合における平均的な一軸配向処理方向としてバトネの成長方向であると定義しても良い。
本明細書において配向制御膜とは、一軸配向処理された膜以外に、液晶に直接接触されるとによって液晶の配向に何らかの影響を与える膜のことを言う。尚、両側の配向制御膜に一軸配向処理を施さなくても、片側の配向制御膜のみに一軸配向処理を施しても良い。
更に、基板1a,1bの間隙には、例えばアクリル樹脂を、高さが略基板1a,1bの間隙寸法とし、幅1〜500μm、長さは表示素子のパネルサイズを最大とした任意のサイズに適宜パターニングした構造体(隔壁またはリブ)が配置されている。尚、間隙寸法は、液晶材料を考慮して最適範囲になるように調整すれば良いが、均一な一軸配向性を達成させ、且つ、電圧が印加されていない状態での液晶分子の平均分子軸を配向処理軸Rの平均方向の軸と実質的に一致させるために、0.3〜10μmの範囲に設定することが好ましい。
又、幅については、細過ぎると前記壁状構造体によって上下基板間に十分な接着力が得ることが困難となり耐衝撃性能が不十分となる可能性がある一方で、太過ぎると表示エリアの開口率減少の原因となってしまうため、パネル設計に応じて適切な範囲に設定することが好ましい。
又、当該隔壁(リブ)によって上述したD1領域とD2領域とが分断されている。このときD1領域とD2領域の配置の仕方によっては隔壁(リブ)によって分断することができない領域間境界線もできてしまうが、このときには後述するように一軸配向処理方向と隔壁(リブ)とのなす角を適宜調整することによって確実に所望の層方向に揃えることができる。
更に、基板1a,1bの間隙には、シリカビーズ等からなるスペーサー(不図示)を配置して、前記壁状構造体と共にかかるスペーサーによってその間隙寸法を規定するようにしても良い。
又更に、基板1a,1bの間隙にエポキシ樹脂等から成る接着粒子(不図示)を分散配置して、両基板1a,1bの接着性や液晶素子Pの耐衝撃性を向上させても良い。
更に、液晶素子Pは、透過型としても良く、反射型としても良い。尚、透過型の場合には両方の基板1a,1bを透明にする必要があり、反射型の場合には、基板1a,1bの一方に光を反射させる機能を付与する必要がある。ここで、光を反射させる機能を付与する方法としては、
*反射板や反射膜を、基板とは別体に設ける方法や、
*基板自体を反射部材で形成する方法や、
等を挙げることができる。ここで、透過型の液晶素子の場合には両方の基板に偏光板を(それらの偏光軸が互いに直交するように)配置すれば良く、反射型の液晶素子の場合には少なくとも一方の基板に偏光板を設ければ良い。
ところで、上述した液晶素子Pを用いてカラー表示を行うようにしても良い。このようなカラー表示を行う方法としては、
*各画素にカラーフィルターを配置する方法や、
*そのようなカラーフィルターを用いず、液晶素子に対して異なる色の光を順次照射すると共に該光の照射に同期させて画像を変更する方法(所謂フィールドシーケンシャル方式)、
を挙げることができる。
又、上述した電極の何れか一方3bには、駆動回路(図2の符号21参照)を接続して階調信号を入力し、該信号によってチルト角度(即ち、液晶の平均分子軸の単安定位置からのチルト角度)の大きさを制御して光透過率を制御し、それによって階調表示を行うようにすると良い。
次に、本実施の形態に係る液晶素子Pの詳細構成の一例について、図1及び図2を参照して説明する。
図1に示す液晶素子Pは、所定間隙を開けた状態に配置した一対のガラス基板1a,1b、を備えており、一方のガラス基板1aの全面には、ほぼ均一な厚みの共通電極3aが形成され、共通電極3aの表面には配向制御膜6aが形成されている。
又、他方のガラス基板1bの側には、図2に示すように、ゲート線G1
,G2
,…が図示X方向に多数配置され、ゲート線G1 ,G2 ,…とは絶縁された状態
のソース線S1 ,S2 ,…が図示Y方向に多数配置されている。そして、これら
のゲート線G1 ,G2 ,…及びソース線S1 ,S2
,…の各交点の画素には、ア
クティブ素子としての薄膜トランジスタ(アモルファスSiTFT)4や、ITO膜等の透明導電膜からなる画素電極3b及び保持容量電極7等が配置されている。
このうち、アモルファスSiTFT4は、図1に示すように、ゲート電極10と、窒化シリコン(SiNx )から成る絶縁膜(ゲート絶緑膜)5bと、半導体層であるa−Si層11やn+ a−Si層12,13と、ソース電極14と、ド
レイン電極15と、チャネルを保護するチャネル保護膜16と、によって構成されている。即ち、ガラス基板1bには各画素毎にゲート電極10が形成され、該ゲート電極10の表面は絶縁膜5bにて覆われ、絶縁膜5bの表面であってゲート電極10を形成した位置にはa−Si層11が形成されている。
又、このa−Si層11の表面には、互いに離間するようにn+
a−Si層1
2,13が形成されており、各n+ a−Si層12,13にはソース電極14や
ドレイン電極15が互いに離間した状態に形成されている。更に、これらのa−Si層11や電極14,15を覆うようにチャネル保護膜16が形成されている。
そして、TFT4のゲート電極10は上述したゲート線G1
,G2 ,…を介し
て走査信号ドライバ20に接続され、TFT4のソース電極14はソース線S1
,S2 ,…を介して情報信号ドライバ21に接続され、TFT4のドレイン電極
15は画素電極3bに接続されている。
ところで、上述した保持容量電極7はガラス基板1bの表面に形成されており、上述した絶縁膜5bは、この保持容量電極7及びガラス基板1bを覆う位置まで形成され、上述したソース電極14や画素電極3bはこの絶縁膜5bの表面に形成されている。これにより、保持容量電極7と画素電極3bとは、絶縁膜5bを挟んだ状態に配置されることとなり、これらによって、液晶2と並列の形で設けられた保持容量Cs が構成されることとなる(図3参照)。
又、図1に示すように、上述したTFT4や画素電極3bの表面には配向制御膜6bが形成されており、その表面には一軸配向処理(ラビング処理)が施されている。
更に、これらのガラス基板1a,1bの間隙であって、画素電極3bと共通電極3aとの間には、自発分極を有するカイラルスメクチック液晶2が配置されていて、液晶容量Clcが構成されることとなる(図3参照)。
又、このような液晶素子Pの両側には、互いに偏光軸が直交した関係にある一対の偏光板(不図示)が配置されている。
尚、図1に示す液晶素子PではアモルファスSiTFTを用いているが、勿論これに限る必要はなく、多結晶Si(P−Si)TFTや単結晶Si(C−Si)TFTを用いても良い。
又、上述のアクティブ素子を備えた素子において、例えば図8〜18に示すように、1ライン毎、又は画素毎、又は複数の画素を1つの単位としたブロック毎に、上述した電気光学特性の異なるドメインD1,D2を形成している。即ち、隣り合ったライン或は画素又はブロックにおける層方向を互いに異なるようにする。
こうした層方向の異なるドメインD1,D2を形成する手段としては、
1.Ch−SmC* 相転移の際、又はI相− SmC* 相転移の際に、例えばD1に負、D2に正のDC電圧とするなど、ドメインによって印加するDC電圧の極性を変化させる。
2.D1、D2ドメイン部分に異なる配向膜を用いる。
3.D1、D2ドメイン部分に対する配向膜の処理法(ラビング強度、UV照射等の条件)を変える。
等、様々な方法が考えられるが、何れの手段を用いても良い。
更に、これらD1、D2領域の境界部分には上述した隔壁(リブ)が適宜形成されている。
一方、こうして得られた液晶素子を線順次駆動する際には、例えば偶数フィールドではパネル全面に第1の極性の電界が印加され、それに続く奇数フィールドではパネル全面に第2の極性の電界が印加されるようなフレーム反転駆動によって駆動することができる。但し、このとき偶数フィールド(第1の極性)では領域D1において液晶分子は大きくチルトし、領域D2では液晶分子は小さくチルトする。逆に奇数フィールド(第2の極性)では領域D1において液晶分子は小さくチルトし、領域D2では液晶分子は大きくチルトする。
つまり、偶数・奇数フィールド何れにおいてもパネル表示は、領域D1或は領域D2の何れかが大きくチルトするため明表示となってしまい、CRTと同様なインパルス表示することにはならない、所謂ホールド表示になってしまうため、良好な動画質を得ることができない。
そこで、本発明では、D1とD2に対してそれぞれ正の電界と負の電界とが交互に印加されるようにそれぞれの映像信号線に信号を供給しパネルに電界を与えることで、上記問題を解決することができる。つまり、例えば偶数フィールドでは領域D1に第1の極性の電界が印加され、領域D2に第2の極性の電界が印加され、それに続く奇数フィールドでは領域D1に第2の極性の電界が印加され領域D2に第1の極性の電界が印加されるとする。このとき、偶数フィールドでは領域D1に対して第1の極性の電界が印加されているため、液晶分子は大きくチルトし、領域D2に対して第2の極性の電界が印加されているため、ここでも液晶分子は大きくチルトする。
逆に奇数フィールドでは領域D1に対して第2の極性の電界が印加されているため液晶分子は小さくチルトし、領域D2に対して第1の極性の電界が印加されているため、ここでも液晶分子は小さくチルトする。つまり、偶数フィールドにおいて高輝度表示で、奇数フィールドにおいて低輝度表示されることから、当該駆動を用いることにより良好な視野角特性を実現しつつ良好な動画質を得ることが可能となる。
尚、上述したように、ここで述べた低輝度表示の際には透過率がゼロの状態、即ち奇数フィールドにおいて何も表示されないような特性にしても良い。
次に、上述した液晶素子Pの駆動方法(通常の画像表示を行う場合の駆動方法)の一例について、1つの画素に着目して詳細に説明する。尚、層方向が異なる隣接ライン(又は画素或はブロック)についてはソース電圧の極性が逆になっているだけで、他は同じと考えて良い。
上述した液晶素子Pにおいては、走査信号ドライバ20から各ゲート線G1
,G2 ,…にはゲート電圧が線順次に印加され、TFT4はゲート電圧が印加されることによってオン状態となる。
一方、ゲート電圧の印加に同期して、情報信号ドライバ21からソース線S1,S2 ,…にはソース電圧(各画素に書き込む情報に応じた情報信号電圧)が印加される。従って、TFT4がオン状態にある画素では、ソース電圧がTFT4及び画素電極3bを介して液晶2に印加され、液晶2のスイッチングが画素単位で行われる。
そして、このような駆動を一定期間(フレーム期間)毎に繰り返し、画像の書き換えを行うようになっている。
尚、図4に示すように、1つのフレーム期間F0 を複数のフィールド期間F1 ,F2 ,…に分割し、各フィールド期間F1 ,F2 ,…でそれぞれ画像書き換えを行うようにしても良い。以下、その駆動方法について説明する。
ここで、図4は各フレーム期間F0 を2つのフィールド期間F1 ,F2 に分割した例を示す図であり、同図(a)は、或る1本のゲート線Giにゲート電圧Vg が印加される様子を示す図、同図(b)は或る1本のソース線Sj にソース電圧Vsが印加される様子を示す図、同図(c)はこれらゲート線Gi及びソース線Sj の交差部の画素(即ち、液晶2)に電圧Vpix が印加される様子を示す図、同図(d)は当該画素における透過光量の変化を示す図である。尚、液晶2には、図5に示すような電圧−透過率特性のものを用いている。
今、或る1本のゲート線Gi に一定期間(選択期間Ton)だけゲート電圧Vgが印加され(同図(a)参照)、或る1本のソース線Sjには、ゲート電圧Vg の印加に同期した選択期間Tonに、共通電極3aの電位Vc を基準電位としたソース電圧Vs(=+Vx )が印加される(同図(b)参照)。すると、当該画素のTFT4はゲート電圧Vg の印加によってオンされ、ソース電圧Vx がTFT4及び画素電極3bを介して印加されて液晶容量Clc及び保持容量Cs の充電がなされる。
ところで、選択期間Ton以外の非選択期間Toff には、ゲート電圧Vg は他のゲート線G1 ,G2 ,…に印加されていて同図(a)に示すゲート線Giには印加されず(ゲート電圧Vg が印加されていないだけであって、オフ電圧は印加されている)、当該画素のTFT4はオフとなる。従って、液晶容量Clc及び保持容量Cs は、この間、充電された電荷を保持することとなる(同図(c)参照)。これにより、1フィールド期間F1 を通じて液晶2には電圧Vpix (=+Vx)が印加され続けることとなり、ほぼ同じ透過光量Tx が維持されることとなる(同図(d)参照)。
ここで、選択期間Tonが比較的短い場合には、液晶分子反転が完了せず、液晶容量Clc及び保持容量Cs への充電及び液晶2のスイッチングは非選択期間Toff に行われる。斯かる場合は、自発分極の反転によって充電された電荷が相殺され、液晶2に印加される電圧Vpix は同図(c)のように+Vx よりVd だけ小さい値を取る。
次のフィールド期間F2 においては、上述したゲート線Gi には再びゲート電圧Vg が印加され(同図(a)参照)、これと同期してソース線Sj には、先のものとは逆極性のソース電圧−Vx が印加される(同図(b)参照)。これによって、ソース電圧−Vx が液晶容量Clc及び保持容量Cs に充電されると共に、非選択期間Toffにおいてはその電荷が保持される(同図(c)参照)。これにより、1フィールド期間F2 を通じて液晶2には電圧Vpix (=−Vx )が印加され続けることとなり、ほぼ同じ透過光量Ty が維持されることとなる(同図(d)参照)。
ここで、選択期間Tonが比較的短い場合には、液晶分子反転は完了しておらず、液晶容量Clc及び保持容量Cs への充電及び液晶2のスイッチングは非選択期間Toff に行われる。斯かる場合は、自発分極の反転によって充電された電荷が相殺され、液晶2に印加される電圧Vpix は図4(c)のように−Vx よりVd だけ大きい値を取る。
ところで、図4に示す駆動方法によれば、各フィールド期間F1,F2 単位で印加電圧の大きさに応じて液晶2がスイッチングされ、各フィールド期間F1,F2 単位で異なる階調表示状態(透過光量Tx ,Ty )が得られ、フレ−ム期間F0 の全体でそれらTx ,Ty を平均した透過光量が得られる。
尚、液晶2には図5に示す特性のものを用いているため、2番目のフィールド期間F2 における透過光量Ty は、Tx より可成り小さい値若しくはほぼ0レベルであり、フレーム期間全体の透過光量は、上述のような透過光量の平均化によって最初のフィールド期間F1 の透過光量に比べて大きく低下することとなる。
従って、実際の駆動においては、フレーム期間全体で得たい透過光量(表示画像の階調)に基づいて、最初のフィールド期間F1 の透過光量Tx を(表示諧調よりも高めに)決定し、該透過光量Tx を得るような電圧Vx を印加すれば良い。
又、上述のように駆動した場合、奇数フィールド期間(例えばF1)では正極性の電圧(+Vx)が液晶2に印加され、偶数フィールド期間(例えばF2)では負極性の電圧(−Vx )が液晶2に印加されることとなるため、液晶2に実際に印加される電圧が時間的に交流化され、液晶2の劣化が防止される。
更に、最初のフィールド期間F1 においては高輝度表示を行い、次のフィールド期間F2 では低輝度表示を行うため、時間開口率が50%以下程度となる。従って、斯かる液晶素子で動画像を表示した場合、その画質が良好なものとなる。ところで、コレステリック相からカイラルスメクチックC相へと相転移する相転移過程を詳細に偏光顕微鏡観測したとき、スメクチックA相と酷似した配向状態が観測される場合がある。
しかしながら、本発明に使用される素子の本質はSmC*相でスメクチック層の法線方向と一軸配向処理方向とが大きく異なっており、電圧無印加時に安定な分子位置がラビング方向に近い位置にあることである。つまり、こうした関係の層形成方向が実現されている場合には上記スメクチックA相的な液晶相は配向には寄与しないこととなるため、本願においてはこうした材料についてもスメクチックA相を含まない材料と定義する。
次に、本実施の形態の効果について説明する。
本発明では隣接し、且つ、層方向が異なる領域を隔壁(リブ)を用いて分断させることにより、完全な層方向の制御が可能となっている。
ここで、その効果について先ず前記隔壁構造が存在しない場合について説明する。
簡単のため、一軸配向処理方向をソース線に平行な場合において、等方相−コレステリック(Ch)相−カイラルスメクチックC(SmC*)相という相系列を有する液晶材料を用いる場合を考える。このとき、コレステリック相において液晶分子はソース線に略平行な方向を向いて配向している。
次いで、この状態から冷却してSmC*相へと転移させる過程について説明する。通常、コレステリック(Ch)相からカイラルスメクチックC(SmC*)相へと相転移した直後の層構造は分子配向方向が一軸配向処理方向或はコレステリック相における平均分子配向方向と略平行な方向を向いたままで、層の形成方向はおよそカイラルスメクチックC相におけるチルト角(Θ)分だけ傾いた方向に形成される。
ここで、層の形成方向は+方向と−方向の2通りが存在する。そこで、本素子を上述したような良好な動画質を示すデバイスとして用いるためには、層の方向を何れか一方に制御し、且つ、それに応じた信号波形を用いて駆動する必要がある。ここではこの層方向の制御のために、コレステリック(Ch)相からカイラルスメクチックC(SmC*)相へ相転移する温度近傍において弱い直流(例えば−2V程度)の電圧を用いて制御させるものとする。このように負の電圧にて層方向制御した場合におけるカイラルスメクチックC(SmC*)相での電気光学特性は図5に示すようなものとなり、正の電圧印加時において大きく分子がチルトし、負の電圧では小さくチルト若しくは全くチルトしないという特性にすることができる。
このときのCh−SmC*相転移過程を詳細に観測してみると、スメクチック相への相転移時には層構造の形成過程において複数のバトネが発生することが分かる。このバトネは長細い楕円形若しくは舟形の形状を呈しながら成長し大きくなり、近傍に存在する他のバトネと接合することで素子全面がスメクチックの層構造で埋め尽くされることによりスメクチック相への相転移過程が完了する。
ところで、このときのバトネの長軸方向は、液晶材料固有の性質にも多少は依存するが、我々の観測した液晶材料においては略一軸配向処理方向を向いている。つまり、スメクチック層は略一軸配向処理方向には素早く成長し、一軸配向処理方向と略垂直方向にはゆっくりと成長する性質があることが分かる。
本発明の液晶素子は、上述したようにパネル内にD1とD2という2つの層方向を持つ領域を作り込んでいる。その作り込み方は、例えば所望の領域に対してCh−SmC*相転移過程において正の電圧を印加するか、負の電圧を印加するかを選択することにより2つの領域を選択的に形成することが可能となる。
ところが、特に例えば略一軸配向処理方向に向かって隣り合う画素に異なる層方向が存在していた場合には、上述したバトネ成長速度の異方性によりバトネが急激に成長してしまう結果、隣接画素から所望の層方向とは異なる層が侵入してきてしまう場合がある。
一方、一軸配向処理方向と略垂直方向にはバトネ成長速度は遅いため、このような所望の層に制御できなくなることは殆どない。
そこで、本実施の形態によれば、下記の通り、確実に層方向の制御が可能となる。
1.1ライン毎にD1、D2の制御を行う場合には、1ライン毎に隔壁(リブ)を形成することによって確実に所望の層方向に制御することができる。
2.1ドット毎にD1、D2の制御を行う場合には、1ライン毎の場合と同様に1ドット毎に隔壁で仕切るのが確実であるが、液晶注入過程が極めて困難、若しくは不可能になることから現実的ではない。
そこで、上述したバトネ成長の異方性を利用して、一軸配向処理方向に向かって隣り合う画素との境界に隔壁(リブ)を形成させることにより、所望の層方向に確実に制御することができる。このとき、液晶素子の開口率を考慮すると隔壁(リブ)は信号線に平行に形成されるが、一軸配向処理方向が信号線に対して平行でなく或る角度をもっている場合には、一軸配向処理方向と直交に近い方の角度に隔壁(リブ)を形成する、若しくは一軸配向処理方向を設定すると良い。尚、このときの一軸配向処理方向の設定の考え方として、隔壁(リブ)や信号線の段差による配向への影響が多少なりとも考えられることから、隔壁(リブ)はなるべく画素の短辺側に形成し、一軸配向処理方向は画素の長辺に平行に近い角度に施すのが良い。
3.1ブロック毎にD1、D2の制御を行う場合にも、1ドット毎の場合と同様の考え方で、一軸配向処理方向に向かって隣り合う画素との境界に隔壁(リブ)を形成させることにより、所望の層方向に確実に制御することができる。
そして、このような素子構成にすることによって確実に所望の層形成方向に制御することが可能となり、同一パネル内に2つの層方向を作り込んだ液晶素子においても、パネル全面にてCRTと同様のインパルス表示が可能となり、キレの良い良好な動画質が実現できる。
【実施例】
以下、実施例に沿って本発明を更に詳細に説明する。
(実施例1)
(液晶組成物の調製)
先ず、下記液晶性化合物を、それぞれの右側に併記した重量比率で混合し液晶組成物LC−1を調製した。
【化5】
上記液晶組成物LCの物性パラメータを以下に示す。
86.3 61.2 −7.2
相転移温度(℃):ISO.→Ch→SmC* →Cry
自発分極(30℃):Ps=2.9nC/cm2
コーン角(30℃):Θ=23.3°(100Hz、±12.5V、基板間隙は1.4μm)
SmC* 相での螺旋ピッチ(30℃):20μm以上
(液晶セルの作製)
本実施例においては、図1及び図2に示すアクティブマトリクス型液晶パネル(液晶素子)Pを作製した。
尚、基板1a,1bには厚さ1.1mmのガラス基板を用い、それらには透明電極3a,3bを700Å厚のITOにて形成した。又、一方のガラス基板1aにはRGBのカラーフィルター(不図示)を形成した。そして、画面サイズは10.4インチとし、画素数(即ち、RGBの色画素(サブピクセル)によって構成される画素の数)は800(横)×600(縦)とした。尚、このときサブピクセル数は2400(横)×600(縦)となり、各サブピクセルの開口部のサイズは75μm(横)×230μm(縦)であった(ゲートラインが横、ソースラインが縦)。
更に、アクティブ素子4にはa−SiTFTを用い、該TFT4のゲート絶縁膜5bには窒化シリコン膜3bを用いた。
又、配向制御膜6a,6bは、ポリイミド膜にて形成した。具体的には、市販のTFT用配向膜(日産化学社製のSE7992)をスピンコート法により透明電極3a,3bを覆うように塗布し、その後、80℃の温度で5分間の前乾燥を行い、更に200℃の温度で1時間の加熱焼成を施すことによって形成し、その膜厚を150Åとした。尚、これらの配向制御膜6a,6bには、ナイロン布コットン布によるラビング処理(一軸配向処理)を施した。このラビング処理には、外周面にコットン布を貼り合わせた径10cmのラビングロールを用い、押し込み量を0.7mm、送り速度を10cm/secとし、回転数を1000rpm、送り回数を4回とした。尚、このときのラビング方向はゲート線に平行とした。
続いて、一方の基板上には、平均粒径1.5μmのシリカビーズ(スペーサー)を散布し、各基板のラビング処理方向が互いにアンチパラレルとなるように貼り合わせ、均一な基板間隙のセルを得た。
このようなプロセスで作製したセルに液晶組成物LC−1をCh相の温度で注入し、液晶がカイラルスメクチック液晶相を示す温度まで冷却し(但し、冷却速度は1℃/minとした)、液晶がCh相からSmC*
相に相転移する際に(T
c−2℃〜Tc+2℃の温度範囲内で)パネル全面に対して−2Vのオフセット電圧(直流電圧)を印加して、液晶パネルP1を作製した。このときの層構造の様子を図7に模式的に示す。図7における斜線が層の方向を模式的に表している。
こうして得られた液晶パネルP1の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、全面で一方向に揃った層方向(明細書中で述べたD1領域)に揃った状態が得られていた。
次に、液晶パネルP1を実際に駆動して動画質の評価を行った。尚、このときの駆動法は本明細書中で述べたように1フレームを前半後半の2フィールドに分割し、前半フィールドではパネル全面に対して液晶層には正極性の電圧を印加し、後半フィールドではパネル全面に対して液晶層には負極性の電圧を印加するというフィールド反転駆動によって駆動した。このときの動画質評価として下記に示す評価法を用いた。
TFTを用いたアクティブマトリックスパネルであるサンプルP1を用いて、動画質評価を行った。この動画質評価は10名程度の非専門家による主観評価とし、下記5段階の尺度(カテゴリー)で評価した。評価に使用した画像は、BTAのハイビジョン標準画像(静止画)から3種類(肌色チャート、観光案内板、ヨットハーバー)を選び、その中の中心部分の432×168画素を切り出して使用した。
更に、これらの画像をテレビ番組の一般的な動き速度程度である6.8(deg/sec)の一定速度で移動させて動画像を作成し、画像のボケを評価した。
・尺度5…画面の周辺ボケが全く観察されずキレの良い良好な動画質。
・尺度4…画面の周辺ボケが殆ど気にならない。
・尺度3…画面の周辺ボケが観察され、細かい文字は判別し難い。
・尺度2…画面の周辺ボケが顕著となり、大きな文字も判別し難い。
・尺度1…画面全体にボケが顕著となり、原画像が殆ど判別不能。
このときの画像ソースのコンピューター側からの出力は、1秒間に60画面分を順次走査(プログレッシブ)するようなピクチャーレートとした。
先ず、TFTパネル側(サンプル)の表示は、1秒間に60フレームの表示を行い、上述したように1フレームを前半後半の2フィールドに分割して実質的に周波数120Hzで動作させ、前半にて高輝度表示、後半にて低輝度表示するようなフレーム反転駆動を行った。
その結果、キレの良い良好な動画質が得られていることが確認できた。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で全員が5と評価した。尚、この評価を一般的なCRTを用いて行うと5段階評価で全員が5、応答が数十mS掛かる市販のTFTタイプの液晶ディスプレイを用いると5段階評価で2〜3程度の評価結果であった。
(実施例2)
実施例1で述べたパネルP1とは液晶相転移時に印加する電圧条件のみが異なり、他は全く同一プロセスで作製された液晶パネルP2を得た。このときの液晶相転移時に印加する電圧条件として、1ゲートライン毎に正負の極性が互い違いになるように絶対値として2Vのオフセット電圧(直流電圧)を印加した。即ち、液晶がCh相からSmC* 相に相転移する際に、奇数行に位置する画素に対し
ては負極性のオフセット電圧を、偶数行に位置する画素に対しては正極性のオフセット電圧を印加して液晶パネルP2を作製した。このときの層構造の様子を図8に模式的に示す。図8における斜線が層の方向を模式的に表している。
こうして得られた液晶パネルP2の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、奇数行においては全画素で一方向に揃った層方向(明細書中で述べたD1領域)に揃っており、偶数行においては全画素で奇数行とは異なる方向に揃った層方向(明細書中で述べたD2領域)に揃った状態が得られていた。
次に、実施例1と同様の評価法を用いて液晶パネルP2を実際に駆動して動画質の評価を行った。尚、このとき駆動法は本明細書中で述べたように1フレームを前半後半の2フィールドに分割し、液晶層に印加する電圧として、
1.前半フィールドではパネルの奇数行に対しては正極性、偶数行に対しては負極性の電圧を印加して、
2.後半フィールドではパネルの奇数行に対しては負極性、偶数行に対しては正極性の電圧を印加する、
という所謂ライン反転駆動によって駆動した。尚、コンピュータ側出力のピクチャーレートやTFTパネル側の駆動周波数は例1と同じものとした。
その結果、キレの良い良好な動画質が得られていることが確認できた。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で全員が5と評価した。
(実施例3)
実施例2で述べたパネルP2とはラビング方向のみが異なり、他は全く同一プロセスで作製された液晶パネルP3を得た。このときのラビング方向はソース線に平行とした。このときの層構造の様子を図9に模式的に示す。図9における斜線が層の方向を模式的に表している。
こうして得られた液晶パネルP3の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、奇数行においては殆どの画素で一方向に揃った層方向(明細書中で述べたD1領域)に揃っており、偶数行においては殆どの画素で奇数行とは異なる方向に揃った層方向(明細書中で述べたD2領域)に揃った状態が得られていた。
しかしながら、一部の画素では所望の層方向とは異なる方向の層が存在していた。
次に、例2と同様に液晶パネルP3を実際にライン反転駆動して動画質の評価を行った。
その結果、実施例1や実施例2と比べると若干の動画のキレに劣化が観測された。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で4であった。
(実施例4)
実施例3で述べたパネルP3とは均一な基板間隙を得る手法のみを変えたパネルP4を得た。このとき均一な基板間隙を得る方法として、明細書中で述べた手法を用いて隔壁(リブ)をゲート線上に形成した。このときの隔壁(リブ)の幅は10μmとした。このときの層構造の様子を図10に模式的に示す。図10における斜線が層の方向を模式的に表している。
こうして得られた液晶パネルP4の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、奇数行においては全画素で一方向に揃った層方向(明細書中で述べたD1領域)に揃っており、偶数行においては全画素で奇数行とは異なる方向に揃った層方向(明細書中で述べたD2領域)に揃った状態が得られていた。
次に、実施例2や3と同様に液晶パネルP4を実際にライン反転駆動して動画質の評価を行った。
その結果、キレの良い良好な動画質が得られていることが確認できた。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で5であった。
(実施例5)
実施例1で述べたパネルP1とは液晶相転移時に印加する電圧条件のみが異なり、他は全く同一プロセスで作製された液晶パネルP5を得た。このときの液晶相転移時に印加する電圧条件として、1ゲートライン(行)毎且つ1ソースライン(列)毎に正負の極性が互い違いになるように絶対値として2Vのオフセット電圧(直流電圧)を印加した。即ち、液晶がCh相からSmC*
相に相転移する
際に、
1.奇数行且つ奇数列に位置するサブピクセルに対しては負極性のオフセット電圧、
2.奇数行且つ偶数列に位置するサブピクセルに対しては正極性のオフセット電圧、
3.偶数行且つ奇数列に位置するサブピクセルに対しては正極性のオフセット電圧、
4.偶数行且つ偶数列に位置するサブピクセルに対しては負極性のオフセット電圧、
をそれぞれ印加して液晶パネルP5を作製した。このときの層構造の様子を図11に模式的に示す。図11における斜線が層の方向を模式的に表している。
こうして得られた液晶パネルP5の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列においては殆どのサブピクセルで一方向に揃った層方向(明細書中で述べたD1領域)に揃っており、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列においては殆どのサブピクセルで異なる方向に揃った層方向(明細書中で述べたD2領域)に揃った状態が得られていた。
しかしながら、一部のサブピクセルでは所望の層方向とは異なる方向の層が存在していた。
次に、液晶パネルP5を実際に駆動して動画質の評価を行った。尚、このとき駆動法は本明細書中で述べたように1フレームを前半後半の2フィールドに分割し、液晶層に印加する電圧として、
1.前半フィールドではパネルの奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列のサブピクセルに対しては正極性、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列のサブピクセルに対しては負極性の電圧を印加して、
2.後半フィールドではパネルの奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列のサブピクセルに対しては負極性、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列のサブピクセルに対しては正極性の電圧を印加する、
という所謂ドット反転駆動によって駆動した。尚、コンピュータ側出力のピクチャーレートやTFTパネル側の駆動周波数は実施例1と同じものとした。
その結果、実施例1や実施例2と比べると若干の動画のキレに劣化が観測された。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で4であった。
(実施例6)
実施例5で述べたパネルP5とは均一な基板間隙を得る手法のみを変えたパネルP6を得た。このとき均一な基板間隙を得る方法として、隔壁(リブ)をソース線上に形成した。このときの層構造の様子を図12に模式的に示す。図12における斜線が層の方向を模式的に表している。
こうして得られた液晶パネルP6の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列の画素においては全サブピクセルで一方向に揃った層方向(明細書中で述べたD1領域)に揃っており、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列のサブピクセルにおいては全画素で奇数行とは異なる方向に揃った層方向(明細書中で述べたD2領域)に揃った状態が得られていた。
しかしながら、ソース線近傍から隔壁(リブ)に起因すると思われる配向乱れが存在し、それが表示領域内に侵入していた。
次に、実施例5と同様に液晶パネルP6を実際にドット反転駆動して画質の評価を行ったところ、表示画像がパネル内で微妙なムラとなって観測されていた。つまり、顕微鏡にて観測されていた配向乱れの影響で安定した中間調表示特性が得られなかったものと考えられる。
尚、こうした微妙な表示ムラを無視して動画質評価を行った結果、キレの良い良好な動画質が得られていることが確認できた。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で5であった。
(実施例7)
実施例5で述べたパネルP5とはラビング方向のみが異なり、他は全く同一プロセスで作製された液晶パネルP7を得た。このときのラビング方向はソース線に平行とした。このときの層構造の様子を図13に模式的に示す。図13における斜線が層の方向を模式的に表している。
こうして得られた液晶パネルP7の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、P5とほぼ同様で、奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列においては殆どのサブピクセルで一方向に揃った層方向(明細書中で述べたD1領域)に揃っており、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列においては殆どのサブピクセルで異なる方向に揃った層方向(明細書中で述べたD2領域)に揃った状態が得られていた。
しかしながら、一部のサブピクセルでは所望の層方向とは異なる方向の層が存在していた。
次に、実施例5や6と同様に液晶パネルP7を実際にドット反転駆動して動画質の評価を行った。
その結果、若干の動画のキレに劣化が観測された。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で4であった。
(実施例8)
実施例7で述べたパネルP7とは均一な基板間隙を得る手法のみを変えたパネルP8を得た。このとき均一な基板間隙を得る方法として、隔壁(リブ)をゲート線上に形成した。このときの層構造の様子を図14に模式的に示す。図14における斜線が層の方向を模式的に表している。
こうして得られた液晶パネルP8の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列のサブピクセルにおいては全画素で一方向に揃った層方向(明細書中で述べたD1領域)に揃っており、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列のサブピクセルにおいては全画素で奇数行とは異なる方向に揃った層方向(明細書中で述べたD2領域)に揃った状態が得られていた。又、実施例6で観測された配向乱れは表示領域内には侵入していなかった。
次に、実施例5〜7と同様に液晶パネルP8を実際にドット反転駆動して動画質の評価を行った。
その結果、キレの良い良好な動画質が得られていることが確認できた。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で5であった。
(実施例9)
実施例1で述べたパネルP1とは液晶相転移時に印加する電圧条件のみが異なり、他は全く同一プロセスで作製された液晶パネルP9を得た。このときの液晶相転移時に印加する電圧条件として、RGBを一まとまりとして1画素として考えたとき、縦横に隣接する画素に対して印加する電圧の正負の極性が互い違いになるように絶対値として2Vのオフセット電圧(直流電圧)を印加した。即ち、液晶がCh相からSmC* 相に相転移する際に、
5.奇数行且つ奇数列に位置する画素に対しては負極性のオフセット電圧、
6.奇数行且つ偶数列に位置する画素に対しては正極性のオフセット電圧、
7.偶数行且つ奇数列に位置する画素に対しては正極性のオフセット電圧、
8.偶数行且つ偶数列に位置する画素に対しては負極性のオフセット電圧、
をそれぞれ印加して液晶パネルP9を作製した。このときの層構造の様子を図15に模式的に示す。図15における斜線が層の方向を模式的に表している。
こうして得られた液晶パネルP9の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列においては殆どの画素で一方向に揃った層方向(明細書中で述べたD1領域)に揃っており、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列においては殆どの画素で異なる方向に揃った層方向(明細書中で述べたD2領域)に揃った状態が得られていた。
しかしながら、一部の画素では所望の層方向とは異なる方向の層が存在していた。
次に、液晶パネルP9を実際に駆動して動画質の評価を行った。尚、このとき駆動法は本明細書中で述べたように1フレームを前半後半の2フィールドに分割し、液晶層に印加する電圧として、
3.前半フィールドではパネルの奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列の画素に対しては正極性、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列の画素に対しては負極性の電圧を印加して、
4.後半フィールドではパネルの奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列の画素に対しては負極性、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列の画素に対しては正極性の電圧を印加する、
という3サブピクセルを一まとまりとしたブロックごとに駆動するようなブロック毎に反転する駆動によって駆動した。尚、コンピュータ側出力のピクチャーレートやTFTパネル側の駆動周波数は実施例1と同じものとした。
その結果、実施例1や実施例2と比べると若干の動画のキレに劣化が観測された。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で4であった。
(実施例10)
実施例9で述べたパネルP9とは均一な基板間隙を得る手法のみを変えたパネルP10を得た。このとき均一な基板間隙を得る方法として、隔壁(リブ)をソース線上で且つブロック間の境界上になるように、3ソースライン毎に形成した。このときの層構造の様子を図16に模式的に示す。図16における斜線が層の方向を模式的に表している。
こうして得られた液晶パネルP10の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列の画素においては全サブピクセルで一方向に揃った層方向(明細書中で述べたD1領域)に揃っており、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列のサブピクセルにおいては全画素で奇数行とは異なる方向に揃った層方向(明細書中で述べたD2領域)に揃った状態が得られていた。
しかしながら、3画素ごとにソース線近傍から隔壁(リブ)に起因すると思われる配向乱れが存在し、それが表示領域内に侵入していた。
次に、実施例9と同様に液晶パネルP10を実際にブロックごとに反転させるような駆動して画質の評価を行ったところ、表示画像がパネル内で微妙なムラとなって観測されていた。つまり、顕微鏡にて観測されていた配向乱れの影響で安定した中間調表示特性が得られなかったものと考えられる。
尚、こうした微妙な表示ムラを無視して動画質評価を行った結果、キレの良い良好な動画質が得られていることが確認できた。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で5であった。
(実施例11)
実施例9で述べたパネルP9とはラビング方向のみが異なり、他は全く同一プロセスで作製された液晶パネルP11を得た。このときのラビング方向はソース線に平行とした。このときの層構造の様子を図17に模式的に示す。図17における斜線が層の方向を模式的に表している。
こうして得られた液晶パネルP7の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、P9とほぼ同様で、奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列においては殆どの画素で一方向に揃った層方向(明細書中で述べたD1領域)に揃っており、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列においては殆どの画素で異なる方向に揃った層方向(明細書中で述べたD2領域)に揃った状態が得られていた。
しかしながら、一部の画素では所望の層方向とは異なる方向の層が存在していた。
次に、実施例9や10と同様に液晶パネルP11を実際にブロックごとに反転させるように 駆動して動画質の評価を行った。
その結果、若干の動画のキレに劣化が観測された。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で4であった。
(実施例12)
実施例11で述べたパネルP11とは均一な基板間隙を得る手法のみを変えたパネルP12を得た。このとき均一な基板間隙を得る方法として、隔壁(リブ)をゲート線上に形成した。このときの層構造の様子を図18に模式的に示す。図18における斜線が層の方向を模式的に表している。
こうして得られた液晶パネルP12の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列の画素においては全画素で一方向に揃った層方向(明細書中で述べたD1領域)に揃っており、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列の画素においては全画素で奇数行とは異なる方向に揃った層方向(明細書中で述べたD2領域)に揃った状態が得られていた。又、実施例6で観測された配向乱れは表示領域内には侵入していなかった。
次に、実施例9〜11と同様に液晶パネルP12を実際にブロックごとに反転させるように駆動して動画質の評価を行った。
その結果、キレの良い良好な動画質が得られていることが確認できた。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で5であった。
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、1パネル内に複数の層方向を形成するカイラルスメクチック液晶を有するアクティブマトリクス型液晶パネルを作製するに当たり、その異なる層方向の境界部分に隔壁構造を形成させておくことによって、良好な動画質を安定に得ることができる。特に、このとき一軸配向処理方向になるべく直交するよう隔壁(リブ)と一軸配向処理方向との関係を構成することにより、所望の層方向により確実に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】アクティブマトリクス型液晶パネルの構造を示す断面図である。
【図2】アクティブマトリクス型液晶パネルの構造を示す回路図である。
【図3】アクティブマトリクス型液晶パネルの構造を示す等価回路図である。
【図4】アクティブマトリクス型液晶パネルの駆動方法を示すタイミングチャート図である。
【図5】カイラルスメクチック液晶の電圧−透過率特性の一例を示す図(その1)である。
【図6】カイラルスメクチック液晶の電圧−透過率特性の一例を示す図(その2)である。
【図7】本発明の実施例1の層構造を示す図である。
【図8】本発明の実施例2の層構造を示す図である。
【図9】本発明の実施例3の層構造を示す図である。
【図10】本発明の実施例4の層構造を示す図である。
【図11】本発明の実施例5の層構造を示す図である。
【図12】本発明の実施例6の層構造を示す図である。
【図13】本発明の実施例7の層構造を示す図である。
【図14】本発明の実施例8の層構造を示す図である。
【図15】本発明の実施例9の層構造を示す図である。
【図16】本発明の実施例10の層構造を示す図である。
【図17】本発明の実施例11の層構造を示す図である。
【図18】本発明の実施例12の層構造を示す図である。
【符号の説明】
1a,1b ガラス基板(基板)
2 カイラルスメクチック液晶
3a 共通電極(電極)
3b 画素電極(電極)
4 TFT(アクティブ素子)
P 液晶パネル(液晶素子)
本発明は、液晶を利用して種々の表示を行うカイラルスメクチック液晶素子とその駆動方法に関する。
【従来の技術】
従来、ネマチック液晶を利用したアクティブマトリクス型の液晶パネルが種々提案されている。以下、この液晶パネルについて説明する。
従来、1つ1つの画素にトランジスタのようなアクティブ素子を配置したアクティブマトリクス型液晶パネルとしてはネマチック液晶を用いたものがあり、様々なモードで使用されている。
例えば、広汎に用いられている代表的なモードとしてツイステッドネマチック(Twisted Nematic)モードがあり、該モードについては、「エム・シャット(M.Schadt)とダブリュー・ヘルフリッヒ(W.Helfrich)著、APPlied Physics Letters、第18巻、第4号(1971年2月15日発行)、第127頁〜128頁」に開示されている。
又、最近では、従来型液晶パネルの欠点である視野角特性を改善するものとして、横方向電界を利用したインプレインスイッチング(In−Plain Switching)モードや、垂直配向(Vertical Alignment)モードが発表されている。
ところで、上述したネマチック液晶を用いた場合には(何れのモードでも)応答速度が遅いという問題があり、近年は、そのような問題点のないカイラルスメクチック液晶を用いた液晶パネルが注目されている。例えば、「ショートピッチタイプの強誘電性液晶」、「高分子安定型強誘電性液晶」、「無閾反強誘電性液晶」などが提案されており、未だ実用化には至っていないものの、何れもサブミリ秒以下の高速応答性が実現できると報告されている。
次に、このようなカイラルスメクチック液晶を用いた液晶パネルの一例について説明する。
例えば、特開2000−338464号にて開示されている液晶パネルは、カイラルスメクチック液晶として、高温側より、等方性液体相(ISO.)−コレステリック相(Ch)−カイラルスメクチックC相(SmC*
)、又は、等方性
液体相(ISO.)−カイラルスメクチックC相(SmC*
)の相転移系列を示
す液晶を、仮想コーンのエッジより内側の位置で安定化するように調整して用いており、斯かる液晶を一対の基板間に注入した後の冷却過程において(正確には、Ch−SmC* 相転移の際、又はISO−SmC* 相転移の際に)液晶2にD
C電圧を印加する等して層方向を一方向に均一化させている。この液晶パネルは、応答速度が速いという効果を有する他、階調制御が可能であって、動画質に優れ、高輝度であって量産性に優れるという特徴を有している。又、この液晶パネルは、自発分極値を小さくでき、アクティブ素子とのマッチングが良いものとなっている。
更に、特開2000−275684号では所定の領域ごとに前記層の方向を変化させることによって、優れた動画質という特徴を維持したまま、より一層の視野角の向上が図られている。
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した特開2000−275684号で述べた液晶パネル(以下、先願1と記載)においては領域ごとに層の方向を変化させることが特徴としているが、本発明者らの詳細な検討によると、場合によっては本来例えば或る所定の場所には何れか一方の方向(D1)に制御しようとしている場合においても、所望の層方向とは異なる層(D2)が存在してしまう場合があることが分かった。そして、このようになる原因は、本来制御したい層の方向(例えばD1)とそれに隣接する他の層方向(例えばD2)があったときに、高温側の相からスメクチック相へと転移する際に生じる層の成長(結晶成長のようなもの)が十分に制御し切れずに、所定の領域において本来制御したい層とは異なる層が進入してしまうことが原因となっていた。
そして、このような構造になってしまった場合には、本来明暗を交互に表示させることでインパルス応答による優れた動画質が得られる筈のものが、暗状態での光漏れが所定の大きさよりも大きくなってしまう可能性が発生してしまうため、インパルス応答の効果が薄れてしまう、即ち動画質の劣化が生じる原因となっていた。
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、D1領域とD2領域とを明確に分断し、優れた同画質と良好な視野角特性を有する液晶素子とその駆動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、カイラルスメクチック液晶と、該液晶に電圧を印加する一対の電極と、該液晶を挟持して対向すると共に少なくとも一方の対向面に該液晶を配向させるための一軸性配向処理が施された一対の基板と、前記一対の基板間には間隙を均一に保持する隔壁(リブ)が配設されていることと、少なくとも一方の基板側に偏光板とを備えた液晶素子であって、電圧無印加時では、該液晶の平均分子軸が単安定化された第1の状態を示し、第1の極性の電圧印加時には、該液晶の平均分子軸は印加電圧の大きさに応じた角度で該単安定化された位置から一方の側にチルトし、該第1の極性とは逆極性の第2の極性の電圧印加時には、該液晶の平均分子軸は該単安定化された位置から第1の極性の電圧を印加したときとは逆側にチルトし、第1の極性の電圧印加時と第2の極性の電圧印加時の液晶の平均分子軸の該第1の状態における単安定化された位置を基準とした最大チルト状態のチルトの角度をそれぞれβ1、β2としたとき、
β1>β2≧0なる領域D1と
0≦β1<β2なる領域D2と
が存在することと、
前記D1領域とD2領域との境界部分に前記隔壁(リブ)が配設されていることを特徴とする。
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
先ず、本実施の形態にて製造され駆動される液晶素子の全体構成について図1を参照して説明する。
本実施の形態に係る液晶素子は、図1に符号Pで示すように、所定間隙を開けた状態に配置された一対の基板1a,1bと、これら一対の基板1a,1bの間隙に配置されたカイラルスメクチック液晶2と、複数の画素を構成すると共に該カイラルスメクチック液晶2を挟み込むように配置された一対の電極3a,3bと、これらの一対の電極の何れか一方3bに接続された状態で各画素毎に配置された複数のアクティブ素子4と、を備えており、前記一対の電極3a,3bを介して前記カイラルスメクチック液晶2に電圧を印加することにより駆動されるように構成されている。
又、前記一対の基板1a,1bは隔壁(リブ)5にて接着され支持されている。
尚、カイラルスメクチック液晶2としては、高温側より、等方性液体相(ISO.)−コレステリック相(Ch)−カイラルスメクチックC相(SmC*
)、
又は、等方性液体相(ISO.)−カイラルスメクチックC相(SmC*
)、の
相転移系列を示すものを挙げることができる。又、斯かる液晶2は、電圧を印加していない状態で液晶分子が仮想コーンのエッジ、或は仮想コーンの内側の位置で安定化する状態で用いると良い。
次に、本実施の形態に係る液晶素子の製造方法について説明する。
上述した液晶素子Pを製造するに際しては、一対の基板の少なくとも一方に隔壁(リブ)を形成する工程と、一対の基板の少なくとも一方に一軸配向処理を施す工程と、所定間隙を開けた状態に一対の基板1a,1bを配置する工程と、これら一対の基板1a,1bの間隙にカイラルスメクチック液晶2を配置する工程と、該カイラルスメクチック液晶2を挟み込むと共に複数の画素を構成するように一対の電極3a,3bを配置する工程と、アクティブ素子4を各画素毎に一方の電極3bに接続した状態に配置する工程と、を適切な順序で実施する。
この場合、前記隔壁(リブ)の形成方向と一軸配向処理方向との関係を45度以上の角度、望ましくは直角に近い角度に設定するとよい。
次に、液晶素子Pの詳細構造について説明する。
先ず、カイラルスメクチック液晶2について説明する。
本実施の形態にて用いるカイラルスメクチック液晶2は、上述のような相転移系列のもの、即ち、高温側より、等方性液体相(ISO.)−コレステリック相(Ch)−カイラルスメクチックC相(SmC* )、又は等方性液体相(ISO
.)−カイラルスメクチックC相(SmC* )の相転移系列を示すものが好まし
いが、具体的には、次の(1)〜(4)に示す化合物を挙げることができる。
(1)
【化1】
R1,R2:炭素原子数が1〜20である置換基を有していても良い直鎖又は分岐状のアルキル基
X1,X2:単結合、O、COO、OOC
Y1,Y2,Y3,Y4:H又はF
n:0又は1
(2)
【化2】
R1,R2:炭素原子数が1〜20である置換基を有していても良い直鎖又は分岐状のアルキル基
X1,X2:単結合、O、COO、OOC
Y1,Y2,Y3,Y4:H又はF
(3)
【化3】
R1,R2:炭素原子数が1〜20である置換基を有していても良い直鎖又は分岐状のアルキル基
X1,X2:単結合、O、COO、OOC
Y1,Y2,Y3,Y4:H又はF
(4)
【化4】
R1,R2:炭素原子数が1〜20である置換基を有していても良い直鎖又は分岐状のアルキル基
X1,X2:単結合、O、COO、OOC
Y1,Y2,Y3,Y4:H又はF
ところで、本実施の形態では、カイラルスメクチック液晶2については、その液晶材料の組成を調整し、更に液晶材料の処理や素子構成、例えば配向制御膜6a,6bの材料処理条件等を適宜設定することにより、
▲1▼駆動電圧が印加されていない場合には、該液晶の平均分子軸(液晶分子)が単安定化されている配向状態を示し、
▲2▼第1の極性(例えば正極性)の駆動電圧が印加されて駆動される場合には、液晶分子の平均分子軸が駆動電圧の大きさに応じた角度で前記単安定化された位置から一方の側にチルトし、
▲3▼他方の極性(前記第1の極性に対する逆極性を言う。例えば負極性。以下、同じ)の電圧が印加されている場合には、液晶分子の平均分子軸が駆動電圧の大きさに応じた角度で前記単安定化された位置から他方の側(即ち、前記第1の極性の電圧を印加したときにチルトする側とは反対の側)にチルトする、ような特性を示すようにすることができる。
つまり、本実施の形態に用いる液晶2は、例えば図5に示す特性のものであって、カイラルスメクチック液晶本来のメモリ性(双安定性)が消失されたものであって、チルト角の大きさを印加電圧によって連続的に制御することができ、それに伴って液晶素子の光量も連続的に変化させることができ、階調表示を可能とするものである。この場合、前記第1の極性の駆動電圧を印加することによって最大チルト状態とした場合におけるチルト角は、前記他の極性の電圧を印加することによって最大チルト状態とした場合におけるチルト角と異ならせると良い。例えば、該他の極性の電圧を印加した場合、該電圧の大きさに拘らず、液晶の平均分子軸が殆どチルトしないような特性にしても良い。以下、このような特性を有する領域をD1領域と呼ぶ。
一方、前記処理条件を変えることにより、図5に示す特性に対してy軸に対して線対称な特性、即ち図6に示すように前記逆(例えば負)の極性の電圧を印加したときには大きく透過率が上昇し、前記第1の極性(例えば正極性)の電圧を印加したときには逆極性(負)の電圧を印加したときとは異なった小さなチルト角をとらせることができる。又、このとき第1の極性(例えば正極性)の電圧を印加したときに、液晶の平均分子軸が殆どチルトしないような特性にしても良い。以下、このような特性を有する領域をD2領域と呼ぶ。
次に、カイラルスメクチック液晶2以外の各構成部材等について説明する。
上述した基板1a,1bには、ガラスやプラスチック等の透明性の高い材料を用いれば良い。
又、電極3a,3bには、In2 O3 やITO(インジウム・ティン・オキサ
イド)等の材料を用いれば良く、これらの電極3a,3bはそれぞれの基板1a,1bに形成すると良い。更に、アクティブ素子4としては、TFTやMIM(metal−Insulator−Metal)等を用いれば良い。
又更に、各電極3a,3bの表面には、これらの電極間のショートを防止するための絶緑膜を形成すると良く(図1には、一方の電極3bを覆う絶縁膜5bのみ図示)、斯かる絶緑膜は、SiO2 、TiO2 、Ta2 O5 等にて形成すれば
良い。
又、カイラルスメクチック液晶2に接する位置には、その配向状態を制御するために一軸配向処理を施した配向制御膜6a,6bを配置すると良い。斯かる配向制御膜6a,6bとしては、
*ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール等の有機材料から成る溶液を塗布して膜を形成し、該膜の表面にラビング処理を施したものや、
*SiO等の酸化物や窒化物からなる無機材料を基板1a,1bに斜め方向から所定の角度で蒸着させて形成した斜方蒸着膜、
*紫外線照射等によって一軸配向規制力を発生し得る光配向膜を用いたもの、を挙げることができる。
尚、この配向制御膜6a,6bの材質や一軸配向処理の条件等により、液晶分子のプレチルト角(即ち、配向制御膜6a,6bの界面近傍において液晶分子が配向制御膜6a,6bに対してなす角度)が調整される。
このような配向制御膜6a,6bは、カイラルスメクチック液晶2の両側に配置してそれらの両方に一軸配向処理を施せば良く、その場合における一軸配向処理方向(特にラビング方向)の関係は、用いる液晶材料を考慮して、
*アンチパラレル(両一軸配向処理方向が平行且つ逆方向)、
*パラレル(両一軸配向処理方向が平行且つ同方向)、
*45°以下の範囲でクロスする関係、
の何れかになるように設定すれば良い。
尚、45°以下の範囲でクロスする関係とは、2つのベクトル(一軸配向処理方向を示すベクトル)が45°以下の範囲内でクロスする場合であって、それぞれのベクトル方向が同方向(正確には、45°以下の角度ズレを有する)である場合や、それぞれのベクトル方向が逆方向である場合の両方を挙げることができる。そして、互いのベクトルの交差角度(狭い方の交差角度)の値が45°以下で且つ0°に近いような場合は、それぞれのベクトルの関係が実質的にアンチパラレル乃至パラレルの関係と見なしても良い。又、上述のアンチパラレル或はパラレルの関係もそれぞれベクトル同士が必ず平行である以外に、例えば数°程度ずれているような場合でも実質的にアンチパラレル乃至パラレルの関係と見なしても良い。
尚、このように上下のラビング方向がずれている場合における「一軸配向処理方向と隔壁(リブ)の形成方向とのなす角」の定義については、上下ラビングの強さが同一である場合には上下ラビング方向の平均方向で良く、上下の一軸配向処理強度が同一でない場合にはその規制力に応じた加重平均方向とすれば良い。又、本発明で用いている液晶材料は一軸配向処理方向とスメクチック相に転移する場合のバトネの成長方向が略平行な関係になっているので、上下のラビング方向が平行でない場合における平均的な一軸配向処理方向としてバトネの成長方向であると定義しても良い。
本明細書において配向制御膜とは、一軸配向処理された膜以外に、液晶に直接接触されるとによって液晶の配向に何らかの影響を与える膜のことを言う。尚、両側の配向制御膜に一軸配向処理を施さなくても、片側の配向制御膜のみに一軸配向処理を施しても良い。
更に、基板1a,1bの間隙には、例えばアクリル樹脂を、高さが略基板1a,1bの間隙寸法とし、幅1〜500μm、長さは表示素子のパネルサイズを最大とした任意のサイズに適宜パターニングした構造体(隔壁またはリブ)が配置されている。尚、間隙寸法は、液晶材料を考慮して最適範囲になるように調整すれば良いが、均一な一軸配向性を達成させ、且つ、電圧が印加されていない状態での液晶分子の平均分子軸を配向処理軸Rの平均方向の軸と実質的に一致させるために、0.3〜10μmの範囲に設定することが好ましい。
又、幅については、細過ぎると前記壁状構造体によって上下基板間に十分な接着力が得ることが困難となり耐衝撃性能が不十分となる可能性がある一方で、太過ぎると表示エリアの開口率減少の原因となってしまうため、パネル設計に応じて適切な範囲に設定することが好ましい。
又、当該隔壁(リブ)によって上述したD1領域とD2領域とが分断されている。このときD1領域とD2領域の配置の仕方によっては隔壁(リブ)によって分断することができない領域間境界線もできてしまうが、このときには後述するように一軸配向処理方向と隔壁(リブ)とのなす角を適宜調整することによって確実に所望の層方向に揃えることができる。
更に、基板1a,1bの間隙には、シリカビーズ等からなるスペーサー(不図示)を配置して、前記壁状構造体と共にかかるスペーサーによってその間隙寸法を規定するようにしても良い。
又更に、基板1a,1bの間隙にエポキシ樹脂等から成る接着粒子(不図示)を分散配置して、両基板1a,1bの接着性や液晶素子Pの耐衝撃性を向上させても良い。
更に、液晶素子Pは、透過型としても良く、反射型としても良い。尚、透過型の場合には両方の基板1a,1bを透明にする必要があり、反射型の場合には、基板1a,1bの一方に光を反射させる機能を付与する必要がある。ここで、光を反射させる機能を付与する方法としては、
*反射板や反射膜を、基板とは別体に設ける方法や、
*基板自体を反射部材で形成する方法や、
等を挙げることができる。ここで、透過型の液晶素子の場合には両方の基板に偏光板を(それらの偏光軸が互いに直交するように)配置すれば良く、反射型の液晶素子の場合には少なくとも一方の基板に偏光板を設ければ良い。
ところで、上述した液晶素子Pを用いてカラー表示を行うようにしても良い。このようなカラー表示を行う方法としては、
*各画素にカラーフィルターを配置する方法や、
*そのようなカラーフィルターを用いず、液晶素子に対して異なる色の光を順次照射すると共に該光の照射に同期させて画像を変更する方法(所謂フィールドシーケンシャル方式)、
を挙げることができる。
又、上述した電極の何れか一方3bには、駆動回路(図2の符号21参照)を接続して階調信号を入力し、該信号によってチルト角度(即ち、液晶の平均分子軸の単安定位置からのチルト角度)の大きさを制御して光透過率を制御し、それによって階調表示を行うようにすると良い。
次に、本実施の形態に係る液晶素子Pの詳細構成の一例について、図1及び図2を参照して説明する。
図1に示す液晶素子Pは、所定間隙を開けた状態に配置した一対のガラス基板1a,1b、を備えており、一方のガラス基板1aの全面には、ほぼ均一な厚みの共通電極3aが形成され、共通電極3aの表面には配向制御膜6aが形成されている。
又、他方のガラス基板1bの側には、図2に示すように、ゲート線G1
,G2
,…が図示X方向に多数配置され、ゲート線G1 ,G2 ,…とは絶縁された状態
のソース線S1 ,S2 ,…が図示Y方向に多数配置されている。そして、これら
のゲート線G1 ,G2 ,…及びソース線S1 ,S2
,…の各交点の画素には、ア
クティブ素子としての薄膜トランジスタ(アモルファスSiTFT)4や、ITO膜等の透明導電膜からなる画素電極3b及び保持容量電極7等が配置されている。
このうち、アモルファスSiTFT4は、図1に示すように、ゲート電極10と、窒化シリコン(SiNx )から成る絶縁膜(ゲート絶緑膜)5bと、半導体層であるa−Si層11やn+ a−Si層12,13と、ソース電極14と、ド
レイン電極15と、チャネルを保護するチャネル保護膜16と、によって構成されている。即ち、ガラス基板1bには各画素毎にゲート電極10が形成され、該ゲート電極10の表面は絶縁膜5bにて覆われ、絶縁膜5bの表面であってゲート電極10を形成した位置にはa−Si層11が形成されている。
又、このa−Si層11の表面には、互いに離間するようにn+
a−Si層1
2,13が形成されており、各n+ a−Si層12,13にはソース電極14や
ドレイン電極15が互いに離間した状態に形成されている。更に、これらのa−Si層11や電極14,15を覆うようにチャネル保護膜16が形成されている。
そして、TFT4のゲート電極10は上述したゲート線G1
,G2 ,…を介し
て走査信号ドライバ20に接続され、TFT4のソース電極14はソース線S1
,S2 ,…を介して情報信号ドライバ21に接続され、TFT4のドレイン電極
15は画素電極3bに接続されている。
ところで、上述した保持容量電極7はガラス基板1bの表面に形成されており、上述した絶縁膜5bは、この保持容量電極7及びガラス基板1bを覆う位置まで形成され、上述したソース電極14や画素電極3bはこの絶縁膜5bの表面に形成されている。これにより、保持容量電極7と画素電極3bとは、絶縁膜5bを挟んだ状態に配置されることとなり、これらによって、液晶2と並列の形で設けられた保持容量Cs が構成されることとなる(図3参照)。
又、図1に示すように、上述したTFT4や画素電極3bの表面には配向制御膜6bが形成されており、その表面には一軸配向処理(ラビング処理)が施されている。
更に、これらのガラス基板1a,1bの間隙であって、画素電極3bと共通電極3aとの間には、自発分極を有するカイラルスメクチック液晶2が配置されていて、液晶容量Clcが構成されることとなる(図3参照)。
又、このような液晶素子Pの両側には、互いに偏光軸が直交した関係にある一対の偏光板(不図示)が配置されている。
尚、図1に示す液晶素子PではアモルファスSiTFTを用いているが、勿論これに限る必要はなく、多結晶Si(P−Si)TFTや単結晶Si(C−Si)TFTを用いても良い。
又、上述のアクティブ素子を備えた素子において、例えば図8〜18に示すように、1ライン毎、又は画素毎、又は複数の画素を1つの単位としたブロック毎に、上述した電気光学特性の異なるドメインD1,D2を形成している。即ち、隣り合ったライン或は画素又はブロックにおける層方向を互いに異なるようにする。
こうした層方向の異なるドメインD1,D2を形成する手段としては、
1.Ch−SmC* 相転移の際、又はI相− SmC* 相転移の際に、例えばD1に負、D2に正のDC電圧とするなど、ドメインによって印加するDC電圧の極性を変化させる。
2.D1、D2ドメイン部分に異なる配向膜を用いる。
3.D1、D2ドメイン部分に対する配向膜の処理法(ラビング強度、UV照射等の条件)を変える。
等、様々な方法が考えられるが、何れの手段を用いても良い。
更に、これらD1、D2領域の境界部分には上述した隔壁(リブ)が適宜形成されている。
一方、こうして得られた液晶素子を線順次駆動する際には、例えば偶数フィールドではパネル全面に第1の極性の電界が印加され、それに続く奇数フィールドではパネル全面に第2の極性の電界が印加されるようなフレーム反転駆動によって駆動することができる。但し、このとき偶数フィールド(第1の極性)では領域D1において液晶分子は大きくチルトし、領域D2では液晶分子は小さくチルトする。逆に奇数フィールド(第2の極性)では領域D1において液晶分子は小さくチルトし、領域D2では液晶分子は大きくチルトする。
つまり、偶数・奇数フィールド何れにおいてもパネル表示は、領域D1或は領域D2の何れかが大きくチルトするため明表示となってしまい、CRTと同様なインパルス表示することにはならない、所謂ホールド表示になってしまうため、良好な動画質を得ることができない。
そこで、本発明では、D1とD2に対してそれぞれ正の電界と負の電界とが交互に印加されるようにそれぞれの映像信号線に信号を供給しパネルに電界を与えることで、上記問題を解決することができる。つまり、例えば偶数フィールドでは領域D1に第1の極性の電界が印加され、領域D2に第2の極性の電界が印加され、それに続く奇数フィールドでは領域D1に第2の極性の電界が印加され領域D2に第1の極性の電界が印加されるとする。このとき、偶数フィールドでは領域D1に対して第1の極性の電界が印加されているため、液晶分子は大きくチルトし、領域D2に対して第2の極性の電界が印加されているため、ここでも液晶分子は大きくチルトする。
逆に奇数フィールドでは領域D1に対して第2の極性の電界が印加されているため液晶分子は小さくチルトし、領域D2に対して第1の極性の電界が印加されているため、ここでも液晶分子は小さくチルトする。つまり、偶数フィールドにおいて高輝度表示で、奇数フィールドにおいて低輝度表示されることから、当該駆動を用いることにより良好な視野角特性を実現しつつ良好な動画質を得ることが可能となる。
尚、上述したように、ここで述べた低輝度表示の際には透過率がゼロの状態、即ち奇数フィールドにおいて何も表示されないような特性にしても良い。
次に、上述した液晶素子Pの駆動方法(通常の画像表示を行う場合の駆動方法)の一例について、1つの画素に着目して詳細に説明する。尚、層方向が異なる隣接ライン(又は画素或はブロック)についてはソース電圧の極性が逆になっているだけで、他は同じと考えて良い。
上述した液晶素子Pにおいては、走査信号ドライバ20から各ゲート線G1
,G2 ,…にはゲート電圧が線順次に印加され、TFT4はゲート電圧が印加されることによってオン状態となる。
一方、ゲート電圧の印加に同期して、情報信号ドライバ21からソース線S1,S2 ,…にはソース電圧(各画素に書き込む情報に応じた情報信号電圧)が印加される。従って、TFT4がオン状態にある画素では、ソース電圧がTFT4及び画素電極3bを介して液晶2に印加され、液晶2のスイッチングが画素単位で行われる。
そして、このような駆動を一定期間(フレーム期間)毎に繰り返し、画像の書き換えを行うようになっている。
尚、図4に示すように、1つのフレーム期間F0 を複数のフィールド期間F1 ,F2 ,…に分割し、各フィールド期間F1 ,F2 ,…でそれぞれ画像書き換えを行うようにしても良い。以下、その駆動方法について説明する。
ここで、図4は各フレーム期間F0 を2つのフィールド期間F1 ,F2 に分割した例を示す図であり、同図(a)は、或る1本のゲート線Giにゲート電圧Vg が印加される様子を示す図、同図(b)は或る1本のソース線Sj にソース電圧Vsが印加される様子を示す図、同図(c)はこれらゲート線Gi及びソース線Sj の交差部の画素(即ち、液晶2)に電圧Vpix が印加される様子を示す図、同図(d)は当該画素における透過光量の変化を示す図である。尚、液晶2には、図5に示すような電圧−透過率特性のものを用いている。
今、或る1本のゲート線Gi に一定期間(選択期間Ton)だけゲート電圧Vgが印加され(同図(a)参照)、或る1本のソース線Sjには、ゲート電圧Vg の印加に同期した選択期間Tonに、共通電極3aの電位Vc を基準電位としたソース電圧Vs(=+Vx )が印加される(同図(b)参照)。すると、当該画素のTFT4はゲート電圧Vg の印加によってオンされ、ソース電圧Vx がTFT4及び画素電極3bを介して印加されて液晶容量Clc及び保持容量Cs の充電がなされる。
ところで、選択期間Ton以外の非選択期間Toff には、ゲート電圧Vg は他のゲート線G1 ,G2 ,…に印加されていて同図(a)に示すゲート線Giには印加されず(ゲート電圧Vg が印加されていないだけであって、オフ電圧は印加されている)、当該画素のTFT4はオフとなる。従って、液晶容量Clc及び保持容量Cs は、この間、充電された電荷を保持することとなる(同図(c)参照)。これにより、1フィールド期間F1 を通じて液晶2には電圧Vpix (=+Vx)が印加され続けることとなり、ほぼ同じ透過光量Tx が維持されることとなる(同図(d)参照)。
ここで、選択期間Tonが比較的短い場合には、液晶分子反転が完了せず、液晶容量Clc及び保持容量Cs への充電及び液晶2のスイッチングは非選択期間Toff に行われる。斯かる場合は、自発分極の反転によって充電された電荷が相殺され、液晶2に印加される電圧Vpix は同図(c)のように+Vx よりVd だけ小さい値を取る。
次のフィールド期間F2 においては、上述したゲート線Gi には再びゲート電圧Vg が印加され(同図(a)参照)、これと同期してソース線Sj には、先のものとは逆極性のソース電圧−Vx が印加される(同図(b)参照)。これによって、ソース電圧−Vx が液晶容量Clc及び保持容量Cs に充電されると共に、非選択期間Toffにおいてはその電荷が保持される(同図(c)参照)。これにより、1フィールド期間F2 を通じて液晶2には電圧Vpix (=−Vx )が印加され続けることとなり、ほぼ同じ透過光量Ty が維持されることとなる(同図(d)参照)。
ここで、選択期間Tonが比較的短い場合には、液晶分子反転は完了しておらず、液晶容量Clc及び保持容量Cs への充電及び液晶2のスイッチングは非選択期間Toff に行われる。斯かる場合は、自発分極の反転によって充電された電荷が相殺され、液晶2に印加される電圧Vpix は図4(c)のように−Vx よりVd だけ大きい値を取る。
ところで、図4に示す駆動方法によれば、各フィールド期間F1,F2 単位で印加電圧の大きさに応じて液晶2がスイッチングされ、各フィールド期間F1,F2 単位で異なる階調表示状態(透過光量Tx ,Ty )が得られ、フレ−ム期間F0 の全体でそれらTx ,Ty を平均した透過光量が得られる。
尚、液晶2には図5に示す特性のものを用いているため、2番目のフィールド期間F2 における透過光量Ty は、Tx より可成り小さい値若しくはほぼ0レベルであり、フレーム期間全体の透過光量は、上述のような透過光量の平均化によって最初のフィールド期間F1 の透過光量に比べて大きく低下することとなる。
従って、実際の駆動においては、フレーム期間全体で得たい透過光量(表示画像の階調)に基づいて、最初のフィールド期間F1 の透過光量Tx を(表示諧調よりも高めに)決定し、該透過光量Tx を得るような電圧Vx を印加すれば良い。
又、上述のように駆動した場合、奇数フィールド期間(例えばF1)では正極性の電圧(+Vx)が液晶2に印加され、偶数フィールド期間(例えばF2)では負極性の電圧(−Vx )が液晶2に印加されることとなるため、液晶2に実際に印加される電圧が時間的に交流化され、液晶2の劣化が防止される。
更に、最初のフィールド期間F1 においては高輝度表示を行い、次のフィールド期間F2 では低輝度表示を行うため、時間開口率が50%以下程度となる。従って、斯かる液晶素子で動画像を表示した場合、その画質が良好なものとなる。ところで、コレステリック相からカイラルスメクチックC相へと相転移する相転移過程を詳細に偏光顕微鏡観測したとき、スメクチックA相と酷似した配向状態が観測される場合がある。
しかしながら、本発明に使用される素子の本質はSmC*相でスメクチック層の法線方向と一軸配向処理方向とが大きく異なっており、電圧無印加時に安定な分子位置がラビング方向に近い位置にあることである。つまり、こうした関係の層形成方向が実現されている場合には上記スメクチックA相的な液晶相は配向には寄与しないこととなるため、本願においてはこうした材料についてもスメクチックA相を含まない材料と定義する。
次に、本実施の形態の効果について説明する。
本発明では隣接し、且つ、層方向が異なる領域を隔壁(リブ)を用いて分断させることにより、完全な層方向の制御が可能となっている。
ここで、その効果について先ず前記隔壁構造が存在しない場合について説明する。
簡単のため、一軸配向処理方向をソース線に平行な場合において、等方相−コレステリック(Ch)相−カイラルスメクチックC(SmC*)相という相系列を有する液晶材料を用いる場合を考える。このとき、コレステリック相において液晶分子はソース線に略平行な方向を向いて配向している。
次いで、この状態から冷却してSmC*相へと転移させる過程について説明する。通常、コレステリック(Ch)相からカイラルスメクチックC(SmC*)相へと相転移した直後の層構造は分子配向方向が一軸配向処理方向或はコレステリック相における平均分子配向方向と略平行な方向を向いたままで、層の形成方向はおよそカイラルスメクチックC相におけるチルト角(Θ)分だけ傾いた方向に形成される。
ここで、層の形成方向は+方向と−方向の2通りが存在する。そこで、本素子を上述したような良好な動画質を示すデバイスとして用いるためには、層の方向を何れか一方に制御し、且つ、それに応じた信号波形を用いて駆動する必要がある。ここではこの層方向の制御のために、コレステリック(Ch)相からカイラルスメクチックC(SmC*)相へ相転移する温度近傍において弱い直流(例えば−2V程度)の電圧を用いて制御させるものとする。このように負の電圧にて層方向制御した場合におけるカイラルスメクチックC(SmC*)相での電気光学特性は図5に示すようなものとなり、正の電圧印加時において大きく分子がチルトし、負の電圧では小さくチルト若しくは全くチルトしないという特性にすることができる。
このときのCh−SmC*相転移過程を詳細に観測してみると、スメクチック相への相転移時には層構造の形成過程において複数のバトネが発生することが分かる。このバトネは長細い楕円形若しくは舟形の形状を呈しながら成長し大きくなり、近傍に存在する他のバトネと接合することで素子全面がスメクチックの層構造で埋め尽くされることによりスメクチック相への相転移過程が完了する。
ところで、このときのバトネの長軸方向は、液晶材料固有の性質にも多少は依存するが、我々の観測した液晶材料においては略一軸配向処理方向を向いている。つまり、スメクチック層は略一軸配向処理方向には素早く成長し、一軸配向処理方向と略垂直方向にはゆっくりと成長する性質があることが分かる。
本発明の液晶素子は、上述したようにパネル内にD1とD2という2つの層方向を持つ領域を作り込んでいる。その作り込み方は、例えば所望の領域に対してCh−SmC*相転移過程において正の電圧を印加するか、負の電圧を印加するかを選択することにより2つの領域を選択的に形成することが可能となる。
ところが、特に例えば略一軸配向処理方向に向かって隣り合う画素に異なる層方向が存在していた場合には、上述したバトネ成長速度の異方性によりバトネが急激に成長してしまう結果、隣接画素から所望の層方向とは異なる層が侵入してきてしまう場合がある。
一方、一軸配向処理方向と略垂直方向にはバトネ成長速度は遅いため、このような所望の層に制御できなくなることは殆どない。
そこで、本実施の形態によれば、下記の通り、確実に層方向の制御が可能となる。
1.1ライン毎にD1、D2の制御を行う場合には、1ライン毎に隔壁(リブ)を形成することによって確実に所望の層方向に制御することができる。
2.1ドット毎にD1、D2の制御を行う場合には、1ライン毎の場合と同様に1ドット毎に隔壁で仕切るのが確実であるが、液晶注入過程が極めて困難、若しくは不可能になることから現実的ではない。
そこで、上述したバトネ成長の異方性を利用して、一軸配向処理方向に向かって隣り合う画素との境界に隔壁(リブ)を形成させることにより、所望の層方向に確実に制御することができる。このとき、液晶素子の開口率を考慮すると隔壁(リブ)は信号線に平行に形成されるが、一軸配向処理方向が信号線に対して平行でなく或る角度をもっている場合には、一軸配向処理方向と直交に近い方の角度に隔壁(リブ)を形成する、若しくは一軸配向処理方向を設定すると良い。尚、このときの一軸配向処理方向の設定の考え方として、隔壁(リブ)や信号線の段差による配向への影響が多少なりとも考えられることから、隔壁(リブ)はなるべく画素の短辺側に形成し、一軸配向処理方向は画素の長辺に平行に近い角度に施すのが良い。
3.1ブロック毎にD1、D2の制御を行う場合にも、1ドット毎の場合と同様の考え方で、一軸配向処理方向に向かって隣り合う画素との境界に隔壁(リブ)を形成させることにより、所望の層方向に確実に制御することができる。
そして、このような素子構成にすることによって確実に所望の層形成方向に制御することが可能となり、同一パネル内に2つの層方向を作り込んだ液晶素子においても、パネル全面にてCRTと同様のインパルス表示が可能となり、キレの良い良好な動画質が実現できる。
【実施例】
以下、実施例に沿って本発明を更に詳細に説明する。
(実施例1)
(液晶組成物の調製)
先ず、下記液晶性化合物を、それぞれの右側に併記した重量比率で混合し液晶組成物LC−1を調製した。
【化5】
上記液晶組成物LCの物性パラメータを以下に示す。
86.3 61.2 −7.2
相転移温度(℃):ISO.→Ch→SmC* →Cry
自発分極(30℃):Ps=2.9nC/cm2
コーン角(30℃):Θ=23.3°(100Hz、±12.5V、基板間隙は1.4μm)
SmC* 相での螺旋ピッチ(30℃):20μm以上
(液晶セルの作製)
本実施例においては、図1及び図2に示すアクティブマトリクス型液晶パネル(液晶素子)Pを作製した。
尚、基板1a,1bには厚さ1.1mmのガラス基板を用い、それらには透明電極3a,3bを700Å厚のITOにて形成した。又、一方のガラス基板1aにはRGBのカラーフィルター(不図示)を形成した。そして、画面サイズは10.4インチとし、画素数(即ち、RGBの色画素(サブピクセル)によって構成される画素の数)は800(横)×600(縦)とした。尚、このときサブピクセル数は2400(横)×600(縦)となり、各サブピクセルの開口部のサイズは75μm(横)×230μm(縦)であった(ゲートラインが横、ソースラインが縦)。
更に、アクティブ素子4にはa−SiTFTを用い、該TFT4のゲート絶縁膜5bには窒化シリコン膜3bを用いた。
又、配向制御膜6a,6bは、ポリイミド膜にて形成した。具体的には、市販のTFT用配向膜(日産化学社製のSE7992)をスピンコート法により透明電極3a,3bを覆うように塗布し、その後、80℃の温度で5分間の前乾燥を行い、更に200℃の温度で1時間の加熱焼成を施すことによって形成し、その膜厚を150Åとした。尚、これらの配向制御膜6a,6bには、ナイロン布コットン布によるラビング処理(一軸配向処理)を施した。このラビング処理には、外周面にコットン布を貼り合わせた径10cmのラビングロールを用い、押し込み量を0.7mm、送り速度を10cm/secとし、回転数を1000rpm、送り回数を4回とした。尚、このときのラビング方向はゲート線に平行とした。
続いて、一方の基板上には、平均粒径1.5μmのシリカビーズ(スペーサー)を散布し、各基板のラビング処理方向が互いにアンチパラレルとなるように貼り合わせ、均一な基板間隙のセルを得た。
このようなプロセスで作製したセルに液晶組成物LC−1をCh相の温度で注入し、液晶がカイラルスメクチック液晶相を示す温度まで冷却し(但し、冷却速度は1℃/minとした)、液晶がCh相からSmC*
相に相転移する際に(T
c−2℃〜Tc+2℃の温度範囲内で)パネル全面に対して−2Vのオフセット電圧(直流電圧)を印加して、液晶パネルP1を作製した。このときの層構造の様子を図7に模式的に示す。図7における斜線が層の方向を模式的に表している。
こうして得られた液晶パネルP1の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、全面で一方向に揃った層方向(明細書中で述べたD1領域)に揃った状態が得られていた。
次に、液晶パネルP1を実際に駆動して動画質の評価を行った。尚、このときの駆動法は本明細書中で述べたように1フレームを前半後半の2フィールドに分割し、前半フィールドではパネル全面に対して液晶層には正極性の電圧を印加し、後半フィールドではパネル全面に対して液晶層には負極性の電圧を印加するというフィールド反転駆動によって駆動した。このときの動画質評価として下記に示す評価法を用いた。
TFTを用いたアクティブマトリックスパネルであるサンプルP1を用いて、動画質評価を行った。この動画質評価は10名程度の非専門家による主観評価とし、下記5段階の尺度(カテゴリー)で評価した。評価に使用した画像は、BTAのハイビジョン標準画像(静止画)から3種類(肌色チャート、観光案内板、ヨットハーバー)を選び、その中の中心部分の432×168画素を切り出して使用した。
更に、これらの画像をテレビ番組の一般的な動き速度程度である6.8(deg/sec)の一定速度で移動させて動画像を作成し、画像のボケを評価した。
・尺度5…画面の周辺ボケが全く観察されずキレの良い良好な動画質。
・尺度4…画面の周辺ボケが殆ど気にならない。
・尺度3…画面の周辺ボケが観察され、細かい文字は判別し難い。
・尺度2…画面の周辺ボケが顕著となり、大きな文字も判別し難い。
・尺度1…画面全体にボケが顕著となり、原画像が殆ど判別不能。
このときの画像ソースのコンピューター側からの出力は、1秒間に60画面分を順次走査(プログレッシブ)するようなピクチャーレートとした。
先ず、TFTパネル側(サンプル)の表示は、1秒間に60フレームの表示を行い、上述したように1フレームを前半後半の2フィールドに分割して実質的に周波数120Hzで動作させ、前半にて高輝度表示、後半にて低輝度表示するようなフレーム反転駆動を行った。
その結果、キレの良い良好な動画質が得られていることが確認できた。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で全員が5と評価した。尚、この評価を一般的なCRTを用いて行うと5段階評価で全員が5、応答が数十mS掛かる市販のTFTタイプの液晶ディスプレイを用いると5段階評価で2〜3程度の評価結果であった。
(実施例2)
実施例1で述べたパネルP1とは液晶相転移時に印加する電圧条件のみが異なり、他は全く同一プロセスで作製された液晶パネルP2を得た。このときの液晶相転移時に印加する電圧条件として、1ゲートライン毎に正負の極性が互い違いになるように絶対値として2Vのオフセット電圧(直流電圧)を印加した。即ち、液晶がCh相からSmC* 相に相転移する際に、奇数行に位置する画素に対し
ては負極性のオフセット電圧を、偶数行に位置する画素に対しては正極性のオフセット電圧を印加して液晶パネルP2を作製した。このときの層構造の様子を図8に模式的に示す。図8における斜線が層の方向を模式的に表している。
こうして得られた液晶パネルP2の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、奇数行においては全画素で一方向に揃った層方向(明細書中で述べたD1領域)に揃っており、偶数行においては全画素で奇数行とは異なる方向に揃った層方向(明細書中で述べたD2領域)に揃った状態が得られていた。
次に、実施例1と同様の評価法を用いて液晶パネルP2を実際に駆動して動画質の評価を行った。尚、このとき駆動法は本明細書中で述べたように1フレームを前半後半の2フィールドに分割し、液晶層に印加する電圧として、
1.前半フィールドではパネルの奇数行に対しては正極性、偶数行に対しては負極性の電圧を印加して、
2.後半フィールドではパネルの奇数行に対しては負極性、偶数行に対しては正極性の電圧を印加する、
という所謂ライン反転駆動によって駆動した。尚、コンピュータ側出力のピクチャーレートやTFTパネル側の駆動周波数は例1と同じものとした。
その結果、キレの良い良好な動画質が得られていることが確認できた。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で全員が5と評価した。
(実施例3)
実施例2で述べたパネルP2とはラビング方向のみが異なり、他は全く同一プロセスで作製された液晶パネルP3を得た。このときのラビング方向はソース線に平行とした。このときの層構造の様子を図9に模式的に示す。図9における斜線が層の方向を模式的に表している。
こうして得られた液晶パネルP3の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、奇数行においては殆どの画素で一方向に揃った層方向(明細書中で述べたD1領域)に揃っており、偶数行においては殆どの画素で奇数行とは異なる方向に揃った層方向(明細書中で述べたD2領域)に揃った状態が得られていた。
しかしながら、一部の画素では所望の層方向とは異なる方向の層が存在していた。
次に、例2と同様に液晶パネルP3を実際にライン反転駆動して動画質の評価を行った。
その結果、実施例1や実施例2と比べると若干の動画のキレに劣化が観測された。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で4であった。
(実施例4)
実施例3で述べたパネルP3とは均一な基板間隙を得る手法のみを変えたパネルP4を得た。このとき均一な基板間隙を得る方法として、明細書中で述べた手法を用いて隔壁(リブ)をゲート線上に形成した。このときの隔壁(リブ)の幅は10μmとした。このときの層構造の様子を図10に模式的に示す。図10における斜線が層の方向を模式的に表している。
こうして得られた液晶パネルP4の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、奇数行においては全画素で一方向に揃った層方向(明細書中で述べたD1領域)に揃っており、偶数行においては全画素で奇数行とは異なる方向に揃った層方向(明細書中で述べたD2領域)に揃った状態が得られていた。
次に、実施例2や3と同様に液晶パネルP4を実際にライン反転駆動して動画質の評価を行った。
その結果、キレの良い良好な動画質が得られていることが確認できた。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で5であった。
(実施例5)
実施例1で述べたパネルP1とは液晶相転移時に印加する電圧条件のみが異なり、他は全く同一プロセスで作製された液晶パネルP5を得た。このときの液晶相転移時に印加する電圧条件として、1ゲートライン(行)毎且つ1ソースライン(列)毎に正負の極性が互い違いになるように絶対値として2Vのオフセット電圧(直流電圧)を印加した。即ち、液晶がCh相からSmC*
相に相転移する
際に、
1.奇数行且つ奇数列に位置するサブピクセルに対しては負極性のオフセット電圧、
2.奇数行且つ偶数列に位置するサブピクセルに対しては正極性のオフセット電圧、
3.偶数行且つ奇数列に位置するサブピクセルに対しては正極性のオフセット電圧、
4.偶数行且つ偶数列に位置するサブピクセルに対しては負極性のオフセット電圧、
をそれぞれ印加して液晶パネルP5を作製した。このときの層構造の様子を図11に模式的に示す。図11における斜線が層の方向を模式的に表している。
こうして得られた液晶パネルP5の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列においては殆どのサブピクセルで一方向に揃った層方向(明細書中で述べたD1領域)に揃っており、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列においては殆どのサブピクセルで異なる方向に揃った層方向(明細書中で述べたD2領域)に揃った状態が得られていた。
しかしながら、一部のサブピクセルでは所望の層方向とは異なる方向の層が存在していた。
次に、液晶パネルP5を実際に駆動して動画質の評価を行った。尚、このとき駆動法は本明細書中で述べたように1フレームを前半後半の2フィールドに分割し、液晶層に印加する電圧として、
1.前半フィールドではパネルの奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列のサブピクセルに対しては正極性、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列のサブピクセルに対しては負極性の電圧を印加して、
2.後半フィールドではパネルの奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列のサブピクセルに対しては負極性、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列のサブピクセルに対しては正極性の電圧を印加する、
という所謂ドット反転駆動によって駆動した。尚、コンピュータ側出力のピクチャーレートやTFTパネル側の駆動周波数は実施例1と同じものとした。
その結果、実施例1や実施例2と比べると若干の動画のキレに劣化が観測された。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で4であった。
(実施例6)
実施例5で述べたパネルP5とは均一な基板間隙を得る手法のみを変えたパネルP6を得た。このとき均一な基板間隙を得る方法として、隔壁(リブ)をソース線上に形成した。このときの層構造の様子を図12に模式的に示す。図12における斜線が層の方向を模式的に表している。
こうして得られた液晶パネルP6の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列の画素においては全サブピクセルで一方向に揃った層方向(明細書中で述べたD1領域)に揃っており、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列のサブピクセルにおいては全画素で奇数行とは異なる方向に揃った層方向(明細書中で述べたD2領域)に揃った状態が得られていた。
しかしながら、ソース線近傍から隔壁(リブ)に起因すると思われる配向乱れが存在し、それが表示領域内に侵入していた。
次に、実施例5と同様に液晶パネルP6を実際にドット反転駆動して画質の評価を行ったところ、表示画像がパネル内で微妙なムラとなって観測されていた。つまり、顕微鏡にて観測されていた配向乱れの影響で安定した中間調表示特性が得られなかったものと考えられる。
尚、こうした微妙な表示ムラを無視して動画質評価を行った結果、キレの良い良好な動画質が得られていることが確認できた。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で5であった。
(実施例7)
実施例5で述べたパネルP5とはラビング方向のみが異なり、他は全く同一プロセスで作製された液晶パネルP7を得た。このときのラビング方向はソース線に平行とした。このときの層構造の様子を図13に模式的に示す。図13における斜線が層の方向を模式的に表している。
こうして得られた液晶パネルP7の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、P5とほぼ同様で、奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列においては殆どのサブピクセルで一方向に揃った層方向(明細書中で述べたD1領域)に揃っており、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列においては殆どのサブピクセルで異なる方向に揃った層方向(明細書中で述べたD2領域)に揃った状態が得られていた。
しかしながら、一部のサブピクセルでは所望の層方向とは異なる方向の層が存在していた。
次に、実施例5や6と同様に液晶パネルP7を実際にドット反転駆動して動画質の評価を行った。
その結果、若干の動画のキレに劣化が観測された。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で4であった。
(実施例8)
実施例7で述べたパネルP7とは均一な基板間隙を得る手法のみを変えたパネルP8を得た。このとき均一な基板間隙を得る方法として、隔壁(リブ)をゲート線上に形成した。このときの層構造の様子を図14に模式的に示す。図14における斜線が層の方向を模式的に表している。
こうして得られた液晶パネルP8の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列のサブピクセルにおいては全画素で一方向に揃った層方向(明細書中で述べたD1領域)に揃っており、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列のサブピクセルにおいては全画素で奇数行とは異なる方向に揃った層方向(明細書中で述べたD2領域)に揃った状態が得られていた。又、実施例6で観測された配向乱れは表示領域内には侵入していなかった。
次に、実施例5〜7と同様に液晶パネルP8を実際にドット反転駆動して動画質の評価を行った。
その結果、キレの良い良好な動画質が得られていることが確認できた。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で5であった。
(実施例9)
実施例1で述べたパネルP1とは液晶相転移時に印加する電圧条件のみが異なり、他は全く同一プロセスで作製された液晶パネルP9を得た。このときの液晶相転移時に印加する電圧条件として、RGBを一まとまりとして1画素として考えたとき、縦横に隣接する画素に対して印加する電圧の正負の極性が互い違いになるように絶対値として2Vのオフセット電圧(直流電圧)を印加した。即ち、液晶がCh相からSmC* 相に相転移する際に、
5.奇数行且つ奇数列に位置する画素に対しては負極性のオフセット電圧、
6.奇数行且つ偶数列に位置する画素に対しては正極性のオフセット電圧、
7.偶数行且つ奇数列に位置する画素に対しては正極性のオフセット電圧、
8.偶数行且つ偶数列に位置する画素に対しては負極性のオフセット電圧、
をそれぞれ印加して液晶パネルP9を作製した。このときの層構造の様子を図15に模式的に示す。図15における斜線が層の方向を模式的に表している。
こうして得られた液晶パネルP9の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列においては殆どの画素で一方向に揃った層方向(明細書中で述べたD1領域)に揃っており、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列においては殆どの画素で異なる方向に揃った層方向(明細書中で述べたD2領域)に揃った状態が得られていた。
しかしながら、一部の画素では所望の層方向とは異なる方向の層が存在していた。
次に、液晶パネルP9を実際に駆動して動画質の評価を行った。尚、このとき駆動法は本明細書中で述べたように1フレームを前半後半の2フィールドに分割し、液晶層に印加する電圧として、
3.前半フィールドではパネルの奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列の画素に対しては正極性、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列の画素に対しては負極性の電圧を印加して、
4.後半フィールドではパネルの奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列の画素に対しては負極性、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列の画素に対しては正極性の電圧を印加する、
という3サブピクセルを一まとまりとしたブロックごとに駆動するようなブロック毎に反転する駆動によって駆動した。尚、コンピュータ側出力のピクチャーレートやTFTパネル側の駆動周波数は実施例1と同じものとした。
その結果、実施例1や実施例2と比べると若干の動画のキレに劣化が観測された。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で4であった。
(実施例10)
実施例9で述べたパネルP9とは均一な基板間隙を得る手法のみを変えたパネルP10を得た。このとき均一な基板間隙を得る方法として、隔壁(リブ)をソース線上で且つブロック間の境界上になるように、3ソースライン毎に形成した。このときの層構造の様子を図16に模式的に示す。図16における斜線が層の方向を模式的に表している。
こうして得られた液晶パネルP10の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列の画素においては全サブピクセルで一方向に揃った層方向(明細書中で述べたD1領域)に揃っており、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列のサブピクセルにおいては全画素で奇数行とは異なる方向に揃った層方向(明細書中で述べたD2領域)に揃った状態が得られていた。
しかしながら、3画素ごとにソース線近傍から隔壁(リブ)に起因すると思われる配向乱れが存在し、それが表示領域内に侵入していた。
次に、実施例9と同様に液晶パネルP10を実際にブロックごとに反転させるような駆動して画質の評価を行ったところ、表示画像がパネル内で微妙なムラとなって観測されていた。つまり、顕微鏡にて観測されていた配向乱れの影響で安定した中間調表示特性が得られなかったものと考えられる。
尚、こうした微妙な表示ムラを無視して動画質評価を行った結果、キレの良い良好な動画質が得られていることが確認できた。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で5であった。
(実施例11)
実施例9で述べたパネルP9とはラビング方向のみが異なり、他は全く同一プロセスで作製された液晶パネルP11を得た。このときのラビング方向はソース線に平行とした。このときの層構造の様子を図17に模式的に示す。図17における斜線が層の方向を模式的に表している。
こうして得られた液晶パネルP7の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、P9とほぼ同様で、奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列においては殆どの画素で一方向に揃った層方向(明細書中で述べたD1領域)に揃っており、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列においては殆どの画素で異なる方向に揃った層方向(明細書中で述べたD2領域)に揃った状態が得られていた。
しかしながら、一部の画素では所望の層方向とは異なる方向の層が存在していた。
次に、実施例9や10と同様に液晶パネルP11を実際にブロックごとに反転させるように 駆動して動画質の評価を行った。
その結果、若干の動画のキレに劣化が観測された。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で4であった。
(実施例12)
実施例11で述べたパネルP11とは均一な基板間隙を得る手法のみを変えたパネルP12を得た。このとき均一な基板間隙を得る方法として、隔壁(リブ)をゲート線上に形成した。このときの層構造の様子を図18に模式的に示す。図18における斜線が層の方向を模式的に表している。
こうして得られた液晶パネルP12の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列の画素においては全画素で一方向に揃った層方向(明細書中で述べたD1領域)に揃っており、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列の画素においては全画素で奇数行とは異なる方向に揃った層方向(明細書中で述べたD2領域)に揃った状態が得られていた。又、実施例6で観測された配向乱れは表示領域内には侵入していなかった。
次に、実施例9〜11と同様に液晶パネルP12を実際にブロックごとに反転させるように駆動して動画質の評価を行った。
その結果、キレの良い良好な動画質が得られていることが確認できた。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で5であった。
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、1パネル内に複数の層方向を形成するカイラルスメクチック液晶を有するアクティブマトリクス型液晶パネルを作製するに当たり、その異なる層方向の境界部分に隔壁構造を形成させておくことによって、良好な動画質を安定に得ることができる。特に、このとき一軸配向処理方向になるべく直交するよう隔壁(リブ)と一軸配向処理方向との関係を構成することにより、所望の層方向により確実に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】アクティブマトリクス型液晶パネルの構造を示す断面図である。
【図2】アクティブマトリクス型液晶パネルの構造を示す回路図である。
【図3】アクティブマトリクス型液晶パネルの構造を示す等価回路図である。
【図4】アクティブマトリクス型液晶パネルの駆動方法を示すタイミングチャート図である。
【図5】カイラルスメクチック液晶の電圧−透過率特性の一例を示す図(その1)である。
【図6】カイラルスメクチック液晶の電圧−透過率特性の一例を示す図(その2)である。
【図7】本発明の実施例1の層構造を示す図である。
【図8】本発明の実施例2の層構造を示す図である。
【図9】本発明の実施例3の層構造を示す図である。
【図10】本発明の実施例4の層構造を示す図である。
【図11】本発明の実施例5の層構造を示す図である。
【図12】本発明の実施例6の層構造を示す図である。
【図13】本発明の実施例7の層構造を示す図である。
【図14】本発明の実施例8の層構造を示す図である。
【図15】本発明の実施例9の層構造を示す図である。
【図16】本発明の実施例10の層構造を示す図である。
【図17】本発明の実施例11の層構造を示す図である。
【図18】本発明の実施例12の層構造を示す図である。
【符号の説明】
1a,1b ガラス基板(基板)
2 カイラルスメクチック液晶
3a 共通電極(電極)
3b 画素電極(電極)
4 TFT(アクティブ素子)
P 液晶パネル(液晶素子)
Claims (10)
- カイラルスメクチック液晶と、該液晶に電圧を印加する一対の電極と、該液晶を挟持して対向すると共に少なくとも一方の対向面に該液晶を配向させるための一軸性配向処理が施された一対の基板と、前記一対の基板間には間隙を均一に保持する隔壁(リブ)が配設されていることと、少なくとも一方の基板側に偏光板とを備えた液晶素子であって、電圧無印加時では、該液晶の平均分子軸が単安定化された第1の状態を示し、第1の極性の電圧印加時には、該液晶の平均分子軸は印加電圧の大きさに応じた角度で該単安定化された位置から一方の側にチルトし、該第1の極性とは逆極性の第2の極性の電圧印加時には、該液晶の平均分子軸は該単安定化された位置から第1の極性の電圧を印加したときとは逆側にチルトし、第1の極性の電圧印加時と第2の極性の電圧印加時の液晶の平均分子軸の該第1の状態における単安定化された位置を基準とした最大チルト状態のチルトの角度をそれぞれβ1、β2としたとき、
β1>β2≧0なる領域D1と
0≦β1<β2なる領域D2と
が存在することと、
前記D1領域とD2領域との境界部分に前記隔壁(リブ)が配設されていることを特徴とする液晶素子。 - 前記一対の基板の少なくとも一方は、各画素に対応する電極に接続したアクティブ素子を有する基板であり、アクティブマトリクス駆動を行う駆動回路を備え、アナログ階調表示を行うことを特徴とする請求項1記載の液晶素子。
- 前記D1領域とD2領域との境界部分に配設されている隔壁(リブ)の形成方向(基板上面から見たときに略長方形となっている隔壁の長手方向)と、前記少なくとも一方に施される一軸性配向処理の方向とのなす角度が45度以上であることを特徴とする請求項2記載の液晶素子。
- 前記カイラルスメクチック液晶が、高温側より、等方性液体相(ISO.)−コレステリック相(Ch)−カイラルスメクチックC相(SmC* )、又は等方性液体相(ISO.)−カイラルスメクチックC相(SmC*
)の相転移系列を示す液晶であることを特徴とする請求項3記載の液晶素子。 - 前記隔壁(リブ)が接着性を有しており、これにより上下基板が接着されていることを特徴とする請求項1記載の液晶素子。
- 前記D1領域とD2領域が1ゲートライン毎に交互に存在しており、前記隔壁(リブ)が全ゲートライン上(若しくはゲートライン近傍)に配設されていることで前記D1領域とD2領域が区切られていることを特徴とする請求項2記載の液晶素子。
- 前記液晶素子に対して、1ゲートライン毎に正負の極性を変化させて印加するような信号波形を用いるライン反転駆動によって駆動することを特徴とする液晶素子の駆動方法。
- 前記D1領域とD2領域が1画素毎に交互に(市松状に)存在しており、且つ、前記液晶素子に対して、1画素毎に正負の極性を変化させて印加するような信号波形を用いるドット反転駆動によって駆動することを特徴とする液晶素子の駆動方法。
- 前記隔壁(リブ)は該画素の短辺に平行な信号線上(若しくは該信号線の近傍)に配設されていることを特徴とする請求項8記載の液晶素子の駆動方法。
- 前記D1領域とD2領域が、複数の画素を一まとまりとしたブロック毎に交互に存在しており、且つ、前記液晶素子に対して、前記1ブロック毎に正負の極性を変化させて印加するような信号波形を用いて駆動することを特徴とする請求項7,8又は9記載の液晶素子の駆動方法。
Priority Applications (1)
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JP2002233821A JP2004077540A (ja) | 2002-08-09 | 2002-08-09 | 液晶素子とその駆動方法 |
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JP2006337460A (ja) * | 2005-05-31 | 2006-12-14 | Dainippon Printing Co Ltd | 液晶表示素子 |
-
2002
- 2002-08-09 JP JP2002233821A patent/JP2004077540A/ja active Pending
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