JP3912924B2 - 液晶素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表示素子、特にフラットパネルディスプレイ、プロジェクションディスプレイ、プリンター等に用いられるライトバルブに使用される液晶素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ネマチック液晶素子において、画素毎にトランジスタ(例えば薄膜トランジスタ(TFT))のようなアクティブ素子を配置した、アクティブマトリクスタイプの液晶素子の開発が行われている。現在、このアクティブマトリクスタイプの液晶素子に用いられるネマチック液晶のモードとしては、例えばM.シャット(M.Schadt)とW.ヘルフリッヒ(W.Helfrich)著、Applied Physics Letters、第18巻、第4号(1971年2月15日発行)第127頁〜第128頁において示されたツイステッドネマチック(Twisted Nematic)モードが広く用いられている。また、最近では横方向電圧を利用したインプレインスイッチング(In−Plain Switching)モードが発表されており、ツイステッドネマチックモード液晶ディスプレイの欠点であった視野角特性の改善がなされている。
【0003】
その他、上述したTFT等のアクティブ素子を用いない、ネマチック液晶素子の代表例として、スーパーツイステッドネマチック(Super Twisted Nematic)モードがある。このように、ネマチック液晶を用いた液晶素子は様々なモードが存在するが、そのいずれのモードの場合にも液晶の応答速度が数十ミリ秒以上かかってしまうという問題があった。
【0004】
上記のような従来型のネマチック液晶素子の欠点を改善するものとして、液晶が双安定性を示す素子(SSFLC/Surface Stabilized FLC)がクラーク(Clark)及びラガウェル(Lagerwall)により提案されている(特開昭56−107216号公報、米国特許第4367924号明細書)。この双安定性を示す液晶としては、一般にカイラルスメクチックC相を示す強誘電性液晶が用いられている。この強誘電性液晶では、電圧印加の際に液晶分子の自発分極に電圧が作用し、分子の反転スイッチングがなされるため、非常に速い応答速度が得られる上にメモリ性のある双安定状態を発現させることができる。さらに、視野角特性も優れていることから、高速、高精細、大面積の表示素子或いはライトバルブとして適していると考えられる。
【0005】
一方、最近では液晶が3安定状態を示す反強誘電性液晶が注目されている。この反強誘電性液晶も強誘電性液晶同様に、液晶分子の自発分極の作用により分子の反転スイッチングがなされるため、非常に速い応答速度が得られる。この液晶材料は、電圧無印加時には液晶分子は互いに自発分極を打ち消し合うような分子配列構造を取るため、電圧を印加しない状態では実質的に自発分極は存在しないことが特徴となっている。
【0006】
こうした自発分極による反転スイッチングを行う強誘電性液晶や反強誘電性液晶は、いずれもスメクチック液晶相を示す液晶である。すなわち、従来、ネマチック液晶が抱えていた応答速度に関する問題点を解決できるという意味において、スメクチック液晶を用いた液晶素子の実現が期待されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、高速応答性能など次世代のディスプレイ等に自発分極を有するスメクチック液晶が期待されているが、特に上述の双安定状態や3安定状態を用いるモードでは、一画素内での階調表示を実現することが原理的に困難であった。
【0008】
そこで、近年、カイラルスメクチック相を示す液晶(カイラルスメクチック液晶)を用いて階調制御を行うモードとして、「ショートピッチタイプの強誘電性液晶」、「高分子安定型強誘電性液晶」、「無しきい値反強誘電性液晶」などが提案されているが、いずれも実用に十分なレベルに至っているものはない。
【0009】
一方、液晶素子では従来型の素子(ネマチック相を用いるモード)の液晶部分の応答速度を単に高速化させるだけでは、人間に感じる動画高速応答特性が得られないことが最近の研究(信学技法EID96−4p.19など)から明らかになってきている。これらの研究結果では、人間が動画表示が高速であると感じる手法として、シャッターを用いて時間開口率を50%以下にする方式、または2倍速表示方式を用いることにより動画質改善に効果的であるとの結論が得られている。
【0010】
しかしながら、従来型のネマチック相を用いるモードでは液晶の応答速度が不十分であるため、上述の動画表示方法を用いることができないことはもとより、これまで提案されている高速応答のカイラルスメクチック液晶素子、さらに上述した「ショートピッチタイプの強誘電性液晶」、「高分子安定型強誘電性液晶」、「無しきい値反強誘電性液晶」などを用いて上述の高速での良好な動画表示を実現するためには、いずれのスメクチックモードを用いても駆動方法や周辺回路が複雑になるという欠点を持っており、コストアップの要因となっていた。また、完全に時間開口率を50%以下と設定した場合、表示素子全体の明るさそのものが50%以下となってしまい、表示輝度の低下を招くのは明らかである。
【0011】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、表示素子、特に液晶素子であって、実用的な明るさを確保しつつ高速応答且つ階調制御が可能であり、複雑な回路を用いなくとも動画質が向上した安価な液晶素子を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記した本発明の課題は、以下の構成によって達成される。
【0014】
発明の液晶素子は、複数画素を個々に制御してアクティブマトリクス駆動により画像を表示する液晶素子であり、液晶と、該液晶を狭持して対向すると共に少なくとも一方の液晶との界面に一軸配向処理が施された一対の基板と、画素毎に液晶を駆動する電極と、少なくとも一方の基板の外側に配置した偏光板とを備えた液晶素子であって、
1フレームが2つのフィールドに分割され、第一のフィールドにおいて画素毎に表示情報に応じた第一の輝度で画像を表示し、第二のフィールドにおいて画素毎に上記第一の輝度よりも一定の割合で小さい第二の輝度で実質的に上記第一のフィールドで表示した画像と同一の画像を表示し、上記第二の輝度で表示する期間をF2、上記第一の輝度で表示する期間をF1とした時、F2≧F1と設定されており、
上記液晶がカイラルスメクチック液晶であり、上記液晶への電圧無印加時には、上記液晶の平均分子軸が単安定化された第一の状態を示し、上記液晶への第一の極性の電圧印加時には、上記液晶の平均分子軸が印加電圧値に応じた角度で上記第一の状態から一方の側にチルトし、上記液晶への上記第一の極性とは逆極性の第二の極性の電圧印加時には、上記液晶の平均分子軸が印加電圧値に応じた角度で上記第一の状態から上記第一の極性の電圧印加時にチルトした側とは逆側にチルトし、上記第一の極性の電圧印加時と第二の極性の電圧印加時のそれぞれの液晶の平均分子軸の最大チルト状態における上記第一の状態からのチルトの角度が互いに異なり、
上記第一のフィールドにおいて、各画素の液晶が、上記各画素の液晶への、表示情報に応じた値の第一の極性の電圧印加によって、該電圧値に応じた角度で第一の状態からチルトして第一の透過率を呈し、上記第二のフィールドにおいて、各画素の液晶が、上記各画素の液晶への、表示情報に応じた値の第二の極性の電圧印加によって、該電圧値に応じた角度で第一の状態から上記第一の極性の電圧印加時にチルトした側とは逆側にチルトして第二の透過率を呈し、各画素の液晶が上記第一の状態で第三の透過率を呈し、上記第一の透過率の最大値と第三の透過率との間で連続的に透過率を変化させることによって階調表示を行うことを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の表示素子においては、高輝度(第一の輝度)で表示するフィールドと低輝度(第二の輝度)で表示するフィールドにより画像を形成し、これら両フィールドでそれぞれ輝度は異なるが実質的には同じ内容の画像を表示することにより、人間が高速で感じられる動画像を得ることができ、さらに、0でない低輝度のフィールドの設定により表示の明るさを大きく損なうことのない動画表示を実現することができる。特に、第二の輝度を第一の輝度の1/5以下に設定することにより、高速動画質効果がよりよく得られる。
【0019】
特に、液晶素子には好ましく適用される。液晶素子の場合、例えば、透過型に構成した液晶素子に外部光源を設けた液晶装置とし、液晶素子の各画素を表示情報に応じた透過率となるように光学変調し、第一のフィールドにおいて第一の照度で上記光源を点灯し、残るフィールドでは第一の照度よりも低い第二の照度で点灯することにより、上記した高速動画質と明るい表示を実現することができる。 このような装置においても、第二の照度が第一の照度の1/5以下となるように設定することが好ましい。
【0020】
さらに本発明では、本発明の効果を最も好適に得る形態として、前記したような電圧無印加時に液晶が単安定状態を呈するようなカイラルスメクチック液晶を用いた液晶素子が挙げられる。
【0021】
以下、本発明の好ましい実施形態である、カイラルスメクチック液晶を用いた液晶素子におけるカイラルスメクチック相の配向状態及びスイッチング過程について、従来型のSSFLCタイプと対比しながら図面に沿って説明する。
【0022】
尚、以下に説明するモデルにおいては、液晶分子と該液晶分子の位置の範囲となり得る仮想コーン、スメクチック層法線、平均一軸配向処理軸の関係に基づいて説明しているが、当該液晶分子は液晶素子内では複数存在し、例えば基板法線方向である程度ツイストしており、光学的には(例えば偏光顕微鏡観察によれば)平均分子軸の挙動として観察される。即ち、上述した本発明で規定する平均分子軸は実質的には単独の液晶分子の挙動に相応する。
【0023】
SSFLCでは、SmC*相(カイラルスメクチックC相)において、液晶分子を2状態に安定化させることによって、双安定性即ちメモリ性を発現させている。このメモリ状態に関して図1及び図2に示すモデルを用いて説明する。
【0024】
図1はSSFLCタイプの素子における液晶分子及び液晶の層構造(スメクチック層の構造)について模式的に示した図である。当該素子においては、図1(a)及び(b)に示すように、基板11及び12間に狭持された液晶13の部分において、液晶分子14は、基板11または12の界面付近では各基板の一軸配向処理方向Rに沿って基板から所定のプレチルト角αで立ち上がり(本例では両基板の一軸配向処理方向Rが平行であり且つ同方向、即ち基板に対して同方向に液晶分子を立ち上がらせるような設定とした)、基板11及び12間で基板法線に対して傾斜角δをなすシェブロン構造のスメクチック層16を形成している。
【0025】
一方、液晶分子14は、電圧印加により2Θ(Θ:液晶材料に固有の物性であるコーン角)の頂角を有する仮想コーン15の壁面の2位置間でスイッチングし且つ電圧無印加の状態で、当該2位置の近傍で安定的に存在する。尚、同図(a)及び(b)に示すスメクチック層16がシェブロン構造をなす配向状態は、それぞれ、基板間の液晶分子14のプレチルトの方向とスメクチック層16のシェブロン構造の折れ曲がり方向の関係により種別されるもので、(a)の配向状態をC1配向、(b)の配向状態をC2配向と呼ぶ。
【0026】
ここで、図1に示すSSFLCの配向状態では、C1配向状態及びC2配向状態共に一般的にΘ>δの関係を満たすことで、電圧無印加時に基板11及び12間でシェブロン構造のスメクチック層16のキンク位置(基板間中央の折れ曲がり部分)を含むほぼ全厚み方向で、液晶分子14が仮想コーン15内で安定的に2位置をとることができ、双安定状態が発現する。
【0027】
図2(a)及び(b)は、それぞれ図1(a)及び(b)に示すC1配向状態とC2配向状態のそれぞれにおける仮想コーン15の底面17上への液晶分子の射影を示すものであり、液晶分子が14a及び14bの双安定状態(射影18a、18b)をとることを示している。
【0028】
液晶が上記のような双安定性の配向状態を呈する素子では、一対のクロスニコル下の偏光板のうち、双安定状態の一方の平均分子軸(液晶分子の位置)に偏光軸を合わせて、双安定状態間のスイッチングを行い、黒(暗状態)及び白(明状態)の表示を行う。このスイッチングは、例えば一方の状態から他方の状態のドメインの生成により、即ちドメインウォールの生成及び消滅を伴ってなされる。但し、このようなスイッチングメカニズムを用いて表示を行う場合、基本的には黒及び白の2値表示しかできず、黒白間の階調(中間調)の表示は困難である。
【0029】
これに対し、本発明の液晶素子においては、カイラルスメクチック液晶を用いた素子において階調表示を実現すべく、図1及び図2に示すようなメモリ性(双安定性)を消失させ、印加電圧によって液晶分子の位置が連続的に可変となるようにしたものである。この設定のため、本発明においては好ましくは等方相(Iso)−コレステリック相(Ch)−SmC*、或いは、Iso−SmC*の相転移系列を示す液晶材料を用いる。
【0030】
図3(a)に、液晶素子において、少なくとも降温下でCh−SmA−SmC*相転移系列を示す液晶材料の層(スメクチック層)構造の形成過程を、図3(b)に少なくとも降温下でCh−SmC*相転移系列を示す液晶材料の層構造形成過程を示す。同図において、矢印Rは素子における平均一軸配向処理軸の方向である。液晶分子14は、電圧を印加した際に仮想コーン15域の壁面に沿ってスイッチングし得ることとする。
【0031】
ここで、”平均一軸配向処理軸”とは、素子を構成する両基板の液晶に接する面において一軸配向処理が施され、その方向(例えばラビング方向)が平行で同一方向であるか互いに逆方向(反平行)である場合、並びに一方の基板にのみ一軸配向処理が施されている場合では、その一軸配向処理の軸自体に相当し、両基板において一軸配向処理が施された方向(例えばラビング方向)が互いにクロスしている場合には、両方の一軸配向処理軸の中心方向の軸、即ちクロス角の1/2の方向に相当する。また、平均一軸配向処理軸の”方向”とは、例えば当該配向処理がなされた基板近傍における液晶分子の基板に対して立ち上がっている、即ちプレチルトを生じる側への方向であり、一方の基板にのみ一軸配向処理が施されている場合及び両基板において一軸配向処理が施され、その方向(例えばラビング方向)が平行で同一方向である場合は、その処理方向自体であり、両基板に互いに平行で逆方向の処理が施されている(反平行)場合、いずれか一方の基板での処理方向であり、両基板において一軸配向処理が施された方向(例えばラビング方向)が互いにクロスしている場合では、その中心軸の方向である。
【0032】
図3(a)に示すように、相転移系列中にSmA相を有する液晶材料の場合、SmA相においてスメクチック層法線方向(紙面横方向矢印LN)と一軸配向処理方向が一致するように液晶分子14が配列しスメクチック層構造を形成する。そして、SmC*相では、液晶分子14はスメクチック層法線方向LNからチルトし、仮想コーン15のエッジ近傍もしくはその若干内側の位置で安定化する。
【0033】
一方、本発明で好適に用いられる図3(b)に示すようにSmA相を含まない相転移系列では、例えばCh相からSmC*相に相転移する過程で、液晶分子14はスメクチック層法線方向LNに対して傾くように、且つ平均一軸配向処理方向Rから若干傾くように配列しスメクチック層構造が形成される。
【0034】
そして本発明では、液晶分子14がSmC*相内の使用温度域で、仮想コーン15のエッジ部より内側の位置で安定化するように調整される。ここで「仮想コーン15のエッジより内側の位置で安定化」する場合として、スメクチック層がシェブロン構造または斜めブックシェルフ構造等となる傾斜角を有する構造が考えられるが、完全なブックシェルフ構造であった場合でもプレチルト角が高い場合や、基板界面の極性相互作用が強くバルク分子がねじれている場合等はコーンエッジの内側で安定化することがある。また、エレクトロクリニック効果が顕著な材料では、電界によって仮想コーンエッジのさらに外側にまで分子が傾斜することになるが、本発明の液晶素子は、電界印加時の分子配向方向と層法線方向とのズレ角が、電界無印加時の分子配向と層法線方向とのズレ角より大きいこと、即ち例えば電界無印加時の液晶分子の方向とクロスニコルの一方の偏光軸とを一致させ最暗状態とした場合、正負いずれの極性の電圧の印加時においても液晶の光軸がずれ、複屈折を発現させていることを特徴とするため、こうした電圧印加によって液晶分子が仮想コーンのエッジの外側にまで分子が傾斜する材料に関しても、本発明では適用可能である。
【0035】
ここで、本発明の一態様として、シェブロン構造または斜めブックシェルフ等の層傾斜角を有する場合に関して、モデルを利用して図4を用いて詳述する。図4(a)は図3(b)と同様にSmA相を含まない相転移系列における液晶分子の配列の変化を示しており、例えばCh相からSmC*相に相転移する過程で(特にSmC*相への転移温度直下で)、液晶分子14はスメクチック層法線方向LNに対して傾くように配列しスメクチック層構造が形成される。
【0036】
但し、図4(a)ではSmC*相内の、例えば高温側(TEMP1)と低温側(TEMP2)においてコーン角Θ(仮想コーン15の頂角の1/2)に違いが存在する。
【0037】
ここで、高温側TEMP1におけるコーン角をΘ1、低温側TEMP2におけるコーン角をΘ2とし、Θ1<Θ2なる関係を満たすような材料を用いる時、通常の場合、これら各温度におけるスメクチック層の層間隔d1及びd2間にはd1>d2なる関係が成立する。従って、仮に温度TEMP1においてブックシェルフ構造の層構造を有しているとした場合、温度TEMP2では少なくとも関係式δ=cos-1(d2/d1)を満たす層傾斜角δを有することになる。
【0038】
よって、温度TEMP2においてはシェブロン構造または斜めブックシェルフ構造を形成することになる。これらのうちシェブロン構造をとる場合の層構造及びc−ダイレクタの様子及び仮想コーン底面への射影を図4(b)及び(c)に示す(符号は図2と同様)。同図に示されるとおり、通常の双安定型SSFLCと同様に、ラビング方向と層傾斜角の関係からC1,C2を定義することができる。以上述べた原理により、液晶分子14が、仮想コーン15のエッジより内側の位置で安定化するように調整される。
【0039】
図3(a)及び(b)、図4(a)のいずれの場合も、例えば図1及び図2に示すような液晶分子14がシェブロン構造の双安定配向状態、即ち基板と実質的に平行な2状態で安定になるべきであるが、図3(b)、図4(a)に示す場合、一軸配向処理の束縛力が強くなり、この2状態のうちの一方のみが安定となり、メモリ性が消失することになる。また、図3(b)、図4(a)に示すCh−SmC*相転移の際(SmC*相への転移温度直下)、図5に示すように2通りの異なった層法線方向(LN1及びLN2)を示すスメクチック層構造が形成することが考えられる。この時、カイラルスメクチック液晶を狭持するセルの上下一対の基板の一軸配向処理の状態(処理方向等の条件、配向材料等)が完全に対称であれば上記図5に示すような2つのスメクチック層構造が均等な割合で形成される。
【0040】
そして、本発明の液晶素子においては、図5に示す2つの層構造のうち一方の層構造のみに揃える、即ち平均一軸配向処理軸とスメクチック層法線方向のズレ方向が一定となるようにし、図4(b)または(c)に示すように電圧無印加の状態で液晶分子14を仮想コーン15の一エッジの内側に安定化させ、そのメモリ性を消失させたSmC*相の配向状態を得ている。
【0041】
次いで、本発明の液晶素子の配向状態、即ち図5に示すようなSmC*相での層構造の一方を優先的に形成した配向状態を有するセルにおいて、電圧に対する液晶分子21の反転挙動のモデル(素子の上面、側面、コーン底面への射影)について図6を参照して説明する。尚、図6ではパラレルラビングセル(両基板に平行且つ同一方向のラビング処理を施したセル)におけるC2配向状態を用いて電界に対する反転挙動を説明するが、C1配向、斜めブックシェルフ配向、アンチパラレルセルでの配向等も同様の考え方で議論することができる。
【0042】
図6では、電圧印加の状態における、セル上方から見た場合の挙動(I)、セル断面方向での挙動(II)、SmC*相での仮想コーン底面への射影(III)のそれぞれを示している。Iの場合は、セル断面方向の液晶分子の平均的な分子軸を示していることになる。
【0043】
先ず、図6(b)に示すように電圧無印加時においては液晶分子14(仮想コーンの底面17での射影18は平均一軸配向処理方向(矢印R)とは若干ずれて配向している。液晶の自発分極19は基板間で実質的に略同様の方向を向いているここで、電圧無印加時の液晶分子の位置に偏光軸の一方(P)を一致させたクロスニコル(d)下にセルを配置し、液晶を透過する光量を最低の状態(最小透過率)にして暗状態(黒状態)を表示する。
【0044】
そして、この配向状態に対し、電圧を印加した時には図6(a),(c)に示すように、液晶分子14は、電圧無印加時の位置に対して電圧Eの極性に応じた方向に自発分極19が揃いチルト(スイッチング)する。電圧無印加時の液晶分子位置を基準したチルトの角度(IIを参照)は印加電圧の大きさ(電圧の絶対値)に応じたものとなるが、図6(a),(c)に示すように一方の極性の電圧を加えた場合(正極性の電圧印加の場合)のチルトの角度と、他方の極性の電圧を加えた場合(負極性の電圧印加の場合)のチルトの角度は、電圧の極性が逆であれば同じ電圧絶対値であっても大きく異なっている。
【0045】
ここで、液晶に第一の極性の電圧を加えた場合に液晶が呈する透過率を第一の透過率、液晶に第二の極性の電圧を加えた場合に液晶が呈する透過率を第二の透過率、電圧無印加の状態での透過率を第三の透過率とする。尚、本発明において「透過率」とは「光透過率」を示すものである。
【0046】
図6の場合、電圧を印加していない場合において既に分子はスメクチック層法線方向からは傾いた方向に位置して単安定化しており、且つ正負それぞれに十分大きな電界を印加した場合には、図6(a)或いは(c)の状態からさらに基板界面近傍分子の自発分極の向きもバルク部分同様に電界方向を向くよう分子配列しようとする結果、ほぼ全てのセル中分子がコーンエッジ上に存在することとなり電圧無印加時の位置を基準として最大のチルト状態が得られる。それにより、層法線軸を対称軸とした分子位置にほぼねじれのないユニフォームな配向状態が形成される。そして、液晶分子の最大チルト状態は、一方の極性の電圧印加による電圧無印加時の位置を基準とした最大チルトの状態におけるチルトの角度と、他方の極性の電圧印加による最大チルトの状態におけるチルトの角度が異なるように、図6では正極性電圧印加時での最大チルト状態での角度が負極性電圧印加時での最大チルト状態での角度より大きくなるように調整される。
【0047】
ここで、例えば液晶の有する屈折率異方性Δn、セル厚をdとし、Δndを可視光の2分の1波長近傍に設定した場合、図6(c)に示すような正極性の印加電圧時には、電圧(絶対値)が大きくなるに伴い、液晶素子からの出射光量、即ち素子を透過する光量が連続的に変化して大きくなり、同図のような配向状態となり所定のチルト状態が得られる。そして、当該チルト状態(第一の透過率の最大値状態)で電圧無印加時の透過光量と最も異なる(正極性の電圧印加の範囲で最も異なる)光量、最大透過光量を得ることができる。
【0048】
一方、図6(a)に示すように、負の電圧を印加した時には、液晶素子を透過する光量は上昇するが、その光学応答量は微小であり、所定の電圧(正極性の電圧側と同じ絶対値の電圧)で液晶分子が所定のチルト状態となった際(第二の透過率の最大値状態)に、電圧無印加時の透過光量と最も異なる(負極性の電圧印加の範囲で最も異なる)透過光量、即ち最大透過光量となる。但し、当該負極性電圧印加時の最大透過光量と図6(b)に示す電圧無印加時の透過光量との差は、図6(c)の場合の正極性電圧印加時の最大透過光量と圧無印加時の透過光量との差に比較して小さく、即ち正極性の電圧印加時に、当該液晶素子における最大の透過光量を得ることができる。
【0049】
ここで、例えば図6(d)に示すような一対の偏光板を用いる場合、正極性電圧印加時における液晶分子14の最大チルトの状態における、電圧無印加時の液晶分子14の位置を基準としたチルトの角度が45°以下である場合には、液晶分子14が仮想コーン15のエッジにある時、即ち最大チルトの状態(第一の透過率の最大値状態)において、正極性電圧印加時での最大透過光量が得られる。一方、上記チルトの角度が45°より大きい場合には、液晶分子14が仮想コーン15のエッジの内側にある時において、正極性電圧印加の際の最大透過光量が得られる。負極性電圧印加時は、上記いずれの場合でも最大チルト状態(第二の透過率の最大値状態)で負極性電圧印加の際の最大透過光量が得られる。
【0050】
上述したような液晶分子のスイッチング挙動を示す素子の電圧(V)−光透過率(T)特性の例、特に正極性電圧印加の際に液晶分子が最大チルト状態となるときに最大透過率が得られる場合の素子の例を図7に示す。正極性の電圧印加時にはその電圧値に沿って液晶分子のチルトにより透過率が上昇し、電圧V1以上で最大透過率T1を示す。一方、負極性の電圧印加時には、その電圧値に沿って液晶分子がチルトし、若干の透過率が上昇するが、電圧−V1以下でT1より遙かに小さい最大透過率T2に飽和する。
【0051】
本発明の液晶素子の図6に示すようなスイッチング動作及び図7に示すような特性を、一般的なTFTを備えたアクティブマトリクスタイプの液晶素子に適用し、交流的な駆動波形を印加し、液晶部分を光シャッターとして機能させ、一極性の電圧印加期間(例えば図7に示す正極性側の電圧印加による光学応答特性を利用する期間)と逆極性の電圧印加期間(例えば図7に示す負極性側の電圧印加による光学応答特性を利用する期間)を組み合わせることで、時間開口率を50%以下にする方式と同等の効果を得ることができる。こうして複雑な周辺回路等を用いることなく、動画質の向上した液晶素子を実現することが可能となる。
【0052】
特に、第一の極性(図6の場合、正極性)の電圧印加時における液晶分子(平均分子軸)の最大チルト状態の角度と、第二の極性(図6の場合、負極性)の電圧印加時における液晶分子(平均分子軸)の最大チルト状態の角度との比については、好ましくは5以上とし、そして第一の極性(正極性)の電圧印加時における液晶分子(平均分子軸)の所定のチルト状態での液晶素子からの最大透過光量(例えば図7の特性でのT1における透過光量)と、第二の極性(負極性)の電圧印加時における液晶分子(平均分子軸)の最大チルト状態での液晶素子からの最大透過光量(例えば図7の特性でのT2における透過光量)の比について好ましくは5以上に調整する(即ち、第二の透過率の最大値と第三の透過率との差が第一の透過率の最大値と第三の透過率との差の1/5以下)ことで、動画質向上の効果が最も顕著に得られる。
【0053】
次いで、本発明の液晶素子の配向状態における液晶分子の反転メカニズムについて説明する。
【0054】
図1及び図2に示すSSFLCでの液晶分子の配向状態では、液晶分子14が双安定状態間をスイッチングするためには、所定の高さのエネルギー障壁を超えることが必要であり、このエネルギー障壁の存在が双安定性の起源となっている。これに対し、本発明の液晶素子における、例えば図5に示すような配向状態では、液晶分子14がSSFLCでの双安定ポテンシャルの一方側に近い位置で極端に安定化された状態となっている。これにより、安定状態が一つしか存在せず、印加電圧の大きさに応じた安定状態がアナログ的に存在し、且つ印加電圧と安定な分子位置が一対一で対応するため、連続的且つドメインの生成を伴わない反転が実現できる。
【0055】
上記エネルギー障壁(ポテンシャル)の状態のモデルを図8及び図9に示す。
【0056】
図8(a)及び(b)はSSFLCにおける双安定配向状態でのポテンシャルの状態をC1配向状態、C2配向状態のそれぞれについて示したものである。A1及びA2は双安定状態のそれぞれの状態のポテンシャルを示す。これらの図より明らかなように、C1配向、C2配向によって上記ポテンシャルの状態が若干異なってくる。SSFLCにおいてC1配向である場合、液晶−基板界面での液晶分子の開き角はC2配向である場合よりも大きくなるため(図2(a)及び(b)における基板界面付近の射影参照)、エネルギー障壁の高さも高くなる。
【0057】
一方、図9(a)及び(b)には、本発明の液晶素子における配向状態でのポテンシャルの状態をC1配向状態、C2配向状態のそれぞれについて示したものである。B1は、電圧無印加での液晶分子のポテンシャル(図6(b)の場合)、B2は一方の極性の電圧の印加による最大チルトでの液晶分子のポテンシャル(図6(c)の場合)を、B3は他方の極性の電圧の印加による最大チルトでの液晶分子のポテンシャル(図6(a)の場合)を示す。
【0058】
上述のSSFLCの場合で示したようなC1配向、C2配向という双安定状態間のエネルギー障壁の高さが異なる配向状態のそれぞれに対し、双安定状態の一方を安定化させた場合にはそれぞれの駆動特性が異なったものになってしまう。特にエネルギー障壁の高いC1配向状態においては、図9(a)に示すように、双安定ポテンシャルの一方(B1)が極端に安定化された状態とした場合においても、双安定状態が2つ残ったまま、或いは一方が準安定状態(B2もポテンシャルのレベルは高いが周囲に比して安定)となってしまう状態が発生する。これにより電圧印加による応答の際、ある一定のポテンシャルに達するまでは印加電圧の大きさに応じた安定状態がアナログ的に存在し、且つ印加電圧と安定な分子位置が一対一で対応するため、連続的且つドメインの生成を伴わない反転が実現できるものの、ある一定のポテンシャルを超えた際に不連続な配向状態を形成する、即ちドメインウォールの生成を伴った不連続な反転挙動となることがある。
【0059】
これに対し、C2配向状態では、双安定のSSFLCである場合のエネルギー障壁が低いことから、図9(b)に示すように、一方(B1)が極端に安定化された状態とした場合にもB2の状態まで連続的且つドメインの生成を伴わない反転が実現できている。さらに、これらの図からC1配向の方が駆動電圧が高くなり易いことが理解できる。
【0060】
以上述べた点から、本発明の液晶素子における配向状態については、アナログ階調性能及び低駆動電圧化の観点から、平行ラビングしたセルにおいてはC2配向を用いることが望ましい。或いは、C1配向及びC2配向が混在している配向状態の場合は、これらの特性ばらつきを最小限に抑えるためにもプレチルト角が低いことが望ましい。或いは、反平行ラビングであることが望ましい。
【0061】
上述したような図6(a)〜(c)、図9に示すような、電圧無印加の状態で液晶分子14を仮想コーン15の一エッジの内側に安定化させ、そのメモリ性を消失させたSmC*相での配向状態及び電圧印加時のスイッチング挙動を示し、図7に示すような光学応答特性を示す液晶素子は、例えば適切な液晶材料を用い、セルの設計を調整し、さらに液晶材料のCh−SmC*相転移の過程においてセル内の内部電位に偏りを持たせるような処理を施すことによって実現される。
【0062】
上記カイラルスメクチック液晶材料としては、例えばそれらがフェニルピリミジン骨格、ビフェニル骨格、フェニルシクロヘキサンエステル骨格を有する炭化水素系の液晶材料のようにカイラルスメクチック相の温度範囲の中でスメクチック層の層間隔dが変化し(カイラルスメクチック相の上限温度での層間隔dtcが最大の値である(d<dtc、d:カイラルスメクチック相の温度範囲内での層間隔))、セル内でのシェブロン構造を有する材料の場合は、3°<δ<Θ(δ:液晶材料のセル内での基板法線に対するスメクチック層の傾斜角、Θ:前述した液晶材料固有のコーン角、即ち仮想コーンの頂角の1/2)となるように成分を適宜選択して配合した液晶組成物を用いることもできる。
【0063】
また、ナフタレン骨格を有する炭化水素系の液晶材料やポリフッ素系の液晶材料のようにカイラルスメクチック相の温度範囲の中で層間隔dがほぼ一定であり、セル内でδ≦3°となる材料であって、高温側からカイラルスメクチック相への相転移温度直下でのΘに対しカイラルスメクチック相の温度範囲の中での温度降下に伴いΘが大きくなるような成分配合を行った液晶組成物を用いる。
【0064】
液晶材料のカイラルスメクチック相でのΘは、スイッチングによる最大光量の状態と最小光量の状態間のコントラスト、例えば図7に示すような特性下での最大透過率T1をより高くするために22.5°以上となることが理想的である。また、Θが非常に大きい場合には、逆極性への電界印加による単安定状態からのチルト、即ち図6(a)の側へのチルトも大きな角度になり、例えば図7の逆極性電圧印加の際の最大透過率T2も大きくなり、実質的な時間開口率が100%になってしまう恐れがある。従って、Θは30°未満が好ましい。また、Θの温度による変化が大きいと、クロスニコル下の偏光板間で設定された最暗状態が一定に保たれない恐れがある。このため、液晶素子の駆動温度範囲でΘの温度による最大変化幅は3°以下に設定することが好ましい。
【0065】
尚、一般のSmC*相を示す材料と同様に液晶分子がスメクチック層の法線からチルトすることによって層間隔が減少する、即ち低温側ほどコーン角Θが大きくなる材料の場合、低温になるに連れて層間隔の減少要因が大きくなるのであるが、例えばポリフッ素系液晶材料の場合のように自発的にブックシェルフ層構造をとる液晶材料であった場合、低温側ほどバルクで測定される層間隔が長くなるというこの材料固有の特徴によって層間隔dの変化が極めて小さくなることが、シェブロン構造をとりづらい理由と考えられている。この場合、界面分子は一軸配向規制力によってラビング方向を向き、バルクの分子はチルト角の温度特性に応じてラビング方向からずれた方向へと配向する場合がある。この時電界印加によって界面近傍分子もラビング方向からずれた方向へと配向する。
【0066】
一方、図5に示すように発現される2つの層構造のうち一方の層構造のみに揃え、即ち平均一軸配向処理軸とスメクチック層法線方向のズレ方向が一定となるようにするための素子内の内部電位の偏りの持たせ方として、
1)Ch−SmC*相転移の際、またはIso−SmC*相転移の際に一対の基板間に正負いずれかのDC電圧を印加する。
2)上下一対の基板に異なる材料からなる配向膜(配向制御膜)を用いる。
3)上下一対の基板の配向膜の処理法(膜の形成条件、ラビング強度、UV照射等の処理条件)を変える。
4)上下一対の基板の配向膜の下地に設ける層の膜種または膜厚を変える。
など、様々な方法が考えられるが、いずれの手段を用いても良い。
【0067】
特に1)によるDC印加条件としては、DCを長時間印加することによって配向膜自体が永久双極子を有する変化(エレクトレット化)を避けるために、DCはCh−SmC*相転移近傍において、層方向を一方向に揃えるのに必要且つ最小限の印加時間にとどめておくことが好ましい。具体的には100mV以上10V以下の範囲でのDC電圧を印加することが好ましい。
【0068】
上述したような液晶材料及び上記2)〜4)で設定される配向膜及び液晶材料中のイオンはTFT駆動に悪影響を及ぼさないよう極力低減しておくことが望ましい。
【0069】
本発明の液晶素子において、電圧無印加時の液晶分子(平均分子軸)の単安定化のためには一軸配向規制力が大きいことが必要となる。この配向規制力に関して、コレステリック液晶を用いて配向規制力を評価する方法が内田ら(Liquid Crystals,5,p.1127(1989))によって提案されている。即ち、コレステリック相でのらせんピッチと配向規制力とのトルクバランスによって決定される「実効ねじれ角」を評価することにより配向規制力が評価できる。本発明でもこの考えを用いてこの一軸配向規制力を以下のように定義する。
【0070】
本発明の液晶素子においてCh相が存在する場合、Ch相におけるコレステリックピッチをp、及びセル厚をdgとすると、配向規制力が存在しない場合、セル内でのねじれ角をφとすると、dg/p=φ/2πの関係となる。また、上下基板において平行に一軸配向規制されており、配向規制力が無限大である場合にはφはゼロになる。尚、このφの値は内田等の報告と同様に、偏光顕微鏡下において旋光性を測定することにより容易に評価できる。すなわち、セル中では配向規制力によって本来のピッチpより大きい仮想ピッチp*(=2π・dg/φ)を有しており、p*=pの時配向規制力はゼロ、p*=無限大の時配向規制力も無限大であると言い換えることができる。
【0071】
本発明では単安定化のためには少なくともp*≧2×pとなることが好ましい。p*≧10×pとなることがより好ましい。これらの値となるようなことを考慮して上記2)〜4)の条件で、一軸配向処理条件(ラビング条件等)、配向膜厚、配向膜種、焼成条件等を適宜調整することが好ましい。
【0072】
本発明の液晶素子では、三角波印加時の電圧−透過率曲線を求めた場合においてヒステリシスが存在する場合がある。但し、実際のTFTを備えた素子の場合のように交流波形により駆動される場合には、三角波印加時のように白状態から中間調状態へと連続的に光学変調されることはないため、特に問題になることはない。即ち、印加される極性に応じて常に白黒の反転をしながら光学変調されることから、例えば白から中間調へと光学変調される際には、白状態から黒の配向状態を経由した後中間調の配向状態へと変調されるため、交流を印加した際には一方の極性では常に黒側にリセットされた後に書き込むという駆動が実現されているため、前状態の履歴の影響をかなりの程度抑制することができる。
【0073】
以下、本発明の液晶素子の実施形態を挙げてその構成を説明する。図10は本発明の液晶素子の一実施形態の1画素の構成を模式的に示す断面図である。同図に示す液晶素子80は、一対のガラス、プラスチック等透明性の高い材料からなる基板81a,81b間に液晶層85、好ましくはカイラルスメクチック液晶を狭持してなる。
【0074】
基板81a,81bには、それぞれ液晶層85に電圧を印加するためのIn23、ITO等の材料からなる電極82a、82bが設けられている。上記電極は、単純マトリクスタイプの場合には、例えばストライプ状に形成され、互いに交差してマトリクス電極構造を形成している。また、本発明に好ましいアクティブマトリクスタイプの場合には、一方の基板に画素毎に画素電極をドット状に配置し、各画素電極にTFTやMIM(Metal−Insulator−Metal)等のアクティブ素子(スイッチング素子)を接続し、他方の基板には一面或いは所定のパターン状に共通電極を設けてアクティブマトリクス電極構造を形成する。
【0075】
電極82a,82b上には、必要に応じてこれらの電極間でのショートを防止する等の機能を持たせたSiO2、TiO2、Ta25等の材料からなる絶縁膜83a、83bがそれぞれ設けられる。
【0076】
さらに、絶縁膜83a,83b上には、液晶層85に接し、その配向状態を制御するべく機能する配向膜84a,84bが設けられている。かかる配向膜84a、84bの少なくとも一方には一軸配向処理が施されている。かかる膜としては、例えば、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール等の有機材料を溶液塗工した膜の表面にラビング処理を施したもの、或いはSiO等の酸化物、窒化物を基板に対し斜め方向から所定の角度で蒸着した無機材料の斜法蒸着膜を用いることができる。
【0077】
尚、配向膜84a,84bについては、その材料の選択、処理(一軸配向処理等)の条件等により、液晶層85の液晶分子のプレチルト角(液晶分子の配向膜付近で膜面に対してなす角度)が調整される。
【0078】
尚、配向膜84a,84bがいずれも一軸配向処理がなされた膜である場合、それぞれの膜の一軸配向処理方向(特にラビング方向)を、用いる液晶材料に応じて平行、反平行、或いは45°以下の範囲でクロスするように設定することができる。
【0079】
また、本発明の液晶素子においては、一対の基板の少なくとも一方の液晶との界面に一軸配向処理が施されていれば良く、上記配向膜に限定されるものではない。
【0080】
基板81a,81bは、スペーサー86を介して対向している。かかるスペーサー86は、基板81a,81bの間の距離(セルギャップ)を決定するものであり、シリカビーズ等が用いられる。ここで決定されるセルギャップについては、液晶材料の違いによって最適範囲及び上限値が異なるが、均一な一軸配向性、または電圧無印加時に液晶分子の平均分子軸をほぼ配向処理軸の平均方向の軸と実質的に同一にする配向状態を発現させるべく、0.3〜10μmの範囲に設定することが好ましい。
【0081】
スペーサー86に加えて、基板11a及び11b間の接着性を向上させ、カイラルスメクチック液晶の耐衝撃性を向上させるべく、エポキシ樹脂等の樹脂材料等からなる接着粒子を分散配置することもできる(図示せず)。
【0082】
上記構造の液晶素子80では、液晶層85としてカイラルスメクチック液晶を用いる場合については、その材料の組成を調整し、さらに液晶材料の処理や素子構成、例えば配向膜84a及び84bの材料、処理条件等を適宜設定することにより、前述の図6に示すように、電圧無印加時では、該液晶の平均分子軸(液晶分子)が単安定化されている配向状態を示し、駆動時では一方の極性(第一の極性)の電圧印加時に印加電圧の大きさに応じて平均分子軸の単安定化される位置を基準としたチルト角が連続的に変化し、他方の極性(第二の極性)の電圧印加時には液晶の平均分子軸は、印加電圧の大きさに応じた角度でチルトし、且つ第一の極性の電圧印加による最大チルト角が、第二の極性の電圧印加による最大チルト角より大きいような特性を示すようにする。好ましくは、カイラルスメクチック液晶材料として、降温下でIso−Ch−SmC*の相転移系列、或いはIso−SmC*の相転移系列を示すものを用い、前述した1)〜4)の処理によりSmC*でメモリ性を消失させた状態を形成する。
【0083】
そして、カイラルスメクチック液晶としては、前述のような特性(液晶材料固有の物性値であるコーン角Θ、スメクチック層の層間隔d、傾斜角δについての特性)を示すようなビフェニル骨格やフェニルシクロヘキサンエステル骨格、フェニルピリミジン骨格等を有する炭化水素系液晶材料、ナフタレン系液晶材料、ポリフッ素系液晶材料を適宜選択して調整した組成物を用いる。
【0084】
このような特性下において、基板81a及び81bの少なくとも一方の外側に偏光板を設け、電圧無印加の状態で最暗状態となるようにセルを配置し、電圧印加時には上記したようなチルト角の連続的な変化に伴う透過率変化によって、例えば図7に示すような特性で素子の透過光量をアナログ的に制御することができる。
【0085】
当該液晶素子には、基板81a及び81bの一方に少なくとも、R(赤)、G(緑)、B(青)のカラーフィルタを設け、カラー液晶素子とすることもできる。
【0086】
尚、本発明の液晶素子は、基板81a及び81bの両側に偏光板(図示せず)を設けた透過型の素子、即ち基板81a及び81bのいずれも透光性基板であり、一方の基板側からの入射光(例えば外部光源による光)を変調し、他方側に出射するタイプの素子、或いは、少なくとも一方の基板側に偏光板を設けた反射型の液晶素子、即ち基板81a及び81bの少なくとも一方の側に反射板を設けるかもしくは一方の基板自体または基板に別途設ける部材として反射性の材料を用いることによって、入射光及び反射光を変調し、入射側に光を出射するタイプの素子、のいずれにも適用することができる。
【0087】
本発明の液晶素子には、階調信号を供給する駆動回路を接続し、上述したような電圧の印加により液晶の平均分子軸の単安定位置からの連続的なチルト角の変化及び素子からの透過光量が連続的に変化する特性を利用し、階調表示を行うことができる。例えば、液晶素子の一方の基板を前述したようなTFT等を備えたアクティブマトリクス基板とし、駆動回路で振幅変調によるアクティブマトリクス駆動を行うことでアナログ階調表示が可能となる。
【0088】
以下に本発明の液晶素子を、上記のようなアクティブマトリクス基板を用いて構成した場合についてその一実施形態を挙げ、図11〜図13を参照して説明する。
【0089】
図11は、アクティブマトリクスタイプとした本発明の液晶素子の一実施形態に駆動手段を接続した形で、一方の基板(アクティブマトリクス基板)の構成を中心に模式的に示した平面図である。
【0090】
図11に示す構成では、液晶素子に相当するパネル部90において、駆動手段である走査信号ドライバ91に接続された走査信号線に相当する図面上水平方向のゲート線G1、G2、…と、駆動手段である情報信号ドライバ92に接続された情報信号線に相当する図面上縦方向のソース線S1、S2、…が互いに絶縁された状態で直交するように設けられており、その各交点の画素に対応してアクティブ素子(スイッチング素子)である薄膜トランジスタ(TFT)94及び画素電極95が設けられている。尚、図11では便宜上、5×5画素の領域のみを示す。スイッチング素子としては、TFTの他に、MIM素子も用いることができる。
【0091】
ゲート線G1、G2、…はTFT94のゲート電極(図示せず)に接続され、ソース線S1、S2、…はTFT94のソース電極(図示せず)に接続され、画素電極95はTFT94のドレイン電極(図示せず)に接続されている。
【0092】
かかる構成において、走査信号ドライバ91によりゲート線G1、G2、…が例えば線順次に走査選択されてゲート電圧が供給され、このゲート線の走査選択に同期して情報信号ドライバ92から、各画素に書き込み情報に応じた情報信号電圧がソース線S1、S2、…に供給され、TFT94を介して各画素電極に印加される。
【0093】
図12は、図11に示したようなパネル構成における各画素部分(1ビット分)の断面構造の一例を示す模式図である。同図に示す構造では、TFT94及び画素電極95を備えたアクティブマトリクス基板20と共通電極42を備えた対向基板40間に、自発分極を有する液晶層49が狭持され、液晶容量(Clc)31が構成されている。
【0094】
図11のアクティブマトリクス基板20については、TFT94としてアモルファスSiTFTを用いた例を示している。TFT94はガラス等からなる基板上に形成され、図11に示すゲート線G1、G2、…に接続されたゲート電極22上に窒化シリコン(SiNx)等の材料からなる絶縁膜(ゲート絶縁膜)23を介してa−Siからなる半導体層24が設けられており、該半導体層24上に、それぞれn+a−Siからなるオーミックコンタクト層25,26を介してソース電極27、ドレイン電極28が互いに離間して設けられている。ソース電極27は図11に示すソース線S1、S2、…に接続され、ドレイン電極28はITO等の透明導電膜からなる画素電極95に接続されている。また、TFT94における半導体層24上をチャネル保護膜29が被覆している。このTFT94は、該当するゲート線が走査選択された期間においてゲート電極22にゲートパルスが印加されオン状態となる。
【0095】
さらに、アクティブマトリクス基板20においては、画素電極95と、該電極の基板21側に設けられた保持容量電極30により絶縁膜23(ゲート電極22上の絶縁膜と連続的に設けられた膜)を狭持した構造により保持容量(Cs)32が液晶容量31と並列の形で設けられている。保持容量電極30はその面積が大きい場合、開口率を低下させるため、ITO膜等の透明導電膜により形成される。
【0096】
また、アクティブマトリクス基板20のTFT94及び画素電極95上には液晶の配向状態を制御するための例えばラビング処理等の一軸配向処理が施された配向膜43aが設けられている。一方、対向基板40では、ガラス等の基板41上に、全面同様の厚みで共通電極42、及び液晶の配向状態を制御するための配向膜43bが積層されている。尚、本発明においては、一対の基板の少なくとも一方の液晶との界面に一軸配向処理が施されていれば良く、上記配向膜に限定されるものではない。
【0097】
尚、上記セル構造は、互いに偏光軸が直交した関係にある一対の偏光板(図示せず)間に狭持されて用いられる。
【0098】
上記構造のセルの画素部分において、液晶層49としては、図10で説明したように、自発分極を有するカイラルスメクチック液晶が用いられ、図6に示すようなスイッチング動作及び図7に示す光学特性を示すように設定される。
【0099】
尚、図11、図12に示したTFT94としては、多結晶Si(p−Si)TFTを用いることもできる。
【0100】
図12のパネルの画素部分の等価回路を図13に、駆動波形の一例を図14に示し、本発明の液晶素子におけるアクティブマトリクス駆動について説明する。
【0101】
本発明の液晶素子におけるアクティブマトリクス駆動では、例えば一画素においてある情報を表示するための期間(1フレーム)を複数のフィールド(例えば図14に示す1F及び2F)に分割し、これら2フィールドにおいて平均的に所定の情報に応じた透過光量を得る。以下に、液晶層49が図7に示すような光学特性を示す場合における、1フレームが2フィールドに分割された例について説明する。
【0102】
図14(a)は、任意の一画素に着目した際に、当該画素に接続された走査信号線となる一ゲート線に印加される電圧を示す。図11、図12に示された構造の液晶素子では、各フィールド毎にゲート線G1、G2、…が例えば線順次で選択され、一ゲート線には選択期間Tonにおいて所定のゲート電圧Vgが印加され、ゲート電極22に電圧Vgが加わり、TFT94がオン状態となる。他のゲート線が選択されている期間に相当する非選択期間Toffにはゲート電極22に電圧が加わらずTFT94は高抵抗状態(オフ状態)となる。
【0103】
図14(b)は、当該画素の情報信号線(ソース線)に印加される電圧Vsを示す。図14(a)で示すように各フィールドで選択期間Tonでゲート電極22にゲート電圧が印加された際、これに同期して当該画素に接続されたソース線S1、S2、…からソース電極27に、所定のソース電圧(情報信号電圧)Vs(基準電位を共通電極42の電位Vcとする)が印加される。
【0104】
ここで、1フレームを構成する第一のフィールド(1F)では、当該画素に書き込まれる情報、例えば用いる液晶に応じた図7に示すような電圧−透過率特性を基に当該画素で得ようとする光学状態または表示情報(透過率)に応じたレベルVxの正極性のソース電圧(情報信号電圧)(基準電位を共通電極42の電位Vcとする)が印加される。この時、TFT94がオン状態であるため、上記ソース電極27に印加される電圧Vxがドレイン電極28を介して画素電極95に印加され、液晶容量(Cls)31及び保持容量(Cs)32に充電がなされ、画素電極95の電位が情報信号電圧Vxになる。続いて当該画素の属するゲート線の非選択期間ToffにおいてTFT94は高抵抗(オフ状態)となるため、この非選択期間には、液晶容量(Clc)31及び保持容量(Cs)32では選択期間Tonで充電された電荷が蓄積された状態を維持し、電圧Vxが保持される。そして、当該画素における液晶層49に第1フィールド1Fの期間を通して電圧Vxが印加され、当該画素の液晶部分ではこの電圧値に応じた光学状態(透過光量)が得られる。
【0105】
次に、第二のフィールド(2F)の選択期間Tonでは、第一のフィールド1Fとは極性が逆で絶対値が同じ電圧値Vxを有するソース電圧(−Vx)がソース電極27に印加される。この時、TFT94がオン状態であり、画素電極95に電圧−Vxが印加されて、液晶容量(Clc)31及び保持容量(Cs)32が充電され、画素電極95の電位が情報信号電圧−Vxになる。続いて、非選択期間ToffにおいてTFT94は高抵抗(オフ状態)となるため、この非選択期間には液晶容量(Clc)31及び保持容量(Cs)32では選択期間Tonで充電された電荷が蓄積された状態を維持し、電圧−Vxが保持される。そして、当該画素における液晶層49に第2のフィールド2F期間を通して電圧−Vxが印加され、当該画素ではこの電圧値に応じた光学状態(透過光量)が得られる。
【0106】
図14(c)は、上述したような画素の液晶容量及び保持容量に実際に保持され液晶層49に印加される電圧値Vpixを、図14(d)は当該画素での液晶の実際の光学応答(透過型液晶素子とした場合での光学応答)を模式的に示す。(c)に示すように、2フィールド1F及び2Fを通じて印加電圧は互いに極性が反転しただけの同一レベル(絶対値)Vxである。一方、(d)に示すように、第一フィールド1Fでは、例えば図7に示す特性に基づいてVxに応じた階調表示状態(透過光量)が得られ、第二フィールド2Fでは、−Vxに応じた階調表示状態が得られるが、例えば図7に示すような特性によれば実際にはわずかな透過光量の変化しか得られず、透過光量Txより小さく、0レベルに近いTyとなる。
【0107】
上述したようなアクティブマトリクス駆動では、カイラルスメクチック液晶を用いた場合に良好な高速応答性に基づいた階調表示が可能となると同時に、一画素においてあるレベルの階調表示を、高い透過光量を得る第一フィールドと低い透過光量を得る第二フィールドに分割して連続的に行い、第二フィールドを第一フィールドと同じか或いは長く設定することにより、時間開口率が50%以下となり、人間の目に感じる動画高速応答特性も良好になる。また、第二フィールドにおいては液晶分子の若干のスイッチング動作により完全に透過光量が0にはならないので、フレーム期間全体での人間の目に感じる輝度は確保される。
【0108】
さらに、第一及び第二フィールドで同様のレベルの電圧が極性反転して液晶層49に印加されるため、液晶層49に実際に印加される電圧が交流化され、液晶の劣化が防止される。
【0109】
上記のアクティブマトリクス駆動では、2フィールドからなる1フレーム全体では、TxとTyを平均した透過光量が得られる。このため、情報信号電圧Vsについては、図7に示す特性に沿って、実際の当該フレームで当該画素で得ようとする画像情報(階調情報)に応じて、所定のレベルだけ大きな透過光量を得ることのできる電圧値を選択して印加することにより、第一フィールド1Fにおいて、所望の階調状態より高いレベルの透過光量での階調状態を表示することも好ましい。
【0110】
本発明の表示素子においては、第二の輝度で表示する期間をF2、上記第一の輝度で表示する期間をF1とした時、F2≧F1と設定する。これにより、表示画像の動画質が向上する。例えば、上記した液晶素子のアクティブマトリクス駆動においては、第二フィールド2Fを第一フィールド1Fと同じか或いは長時間になるように設定する。この時、第一フィールド期間をF1、第二フィールド期間をF2、第一フィールドで液晶層に印加される第一の極性の電圧値をV1、第二フィールドで液晶層に印加される第二の極性の電圧値をV2とした時、本発明においては、F1≦F2であり、好ましくは、F1×V1=F2×V2とする。このように、各期間の長さと電圧値とを設定することにより、各フィールドで印加される電圧の積分値が同一となり、実質的に液晶層に印加される直流成分がゼロとなって液晶の劣化が最小限に抑えられる。
【0111】
【実施例】
(実施例1)
〔液晶セルの作製〕
透明電極として厚さ700ÅのITO膜を形成した厚さ1.1mmの一対のガラス基板を用意した。該基板の透明電極上に、下記の繰り返し単位PI−aを有するポリイミド前駆体をスピンコート法により塗布し、その後、80℃で5分間の前乾燥を行った後、200℃で1時間加熱焼成を施し、膜厚200Åのポリイミド被膜を得た。
【0112】
【化1】
Figure 0003912924
【0113】
続いて、当該基板上のポリイミド膜に対して一軸配向処理としてナイロン布によるラビング処理を施した。ラビング処理の条件は、直径10cmのロールにナイロン(帝人社製「NF−77」)を貼り合わせたラビングロールを用い、押し込み量0.3mm、送り速度10cm/s、回転数1000rpm、送り回数4回とした。
【0114】
次に、一方の基板上にスペーサーとして、平均粒径2.0μmのシリカビーズを散布し、各基板のラビング処理方向が互いに反平行(アンチパラレル)となるように対向させ、均一なセルギャップのセル(単画素の空セル)を得た。
【0115】
〔アクティブマトリクスセルの作製〕
上記単画素のセルの作製方法と同様の材料及び条件の透明電極、ポリイミド配向膜を用い、一方の基板をゲート絶縁膜として窒化シリコン膜を備えたa−SiTFTを有するアクティブマトリクス基板とし、他方の基板にはR,G,Bのカラーフィルタを設け、図12に示した画素構造のアクティブマトリクスセル(パネル)を作製した。画面サイズは10.4インチ、画素数は800×600×RGBとした。
【0116】
〔液晶組成物の調整〕
下記液晶性化合物を混合して液晶組成物LC−1を調製した。構造式に併記した数値は混合の際の重量比率である。
【0117】
【化2】
Figure 0003912924
【0118】
上記液晶組成物LC−1の物性パラメータを以下に示す。
【0119】
【化3】
Figure 0003912924
【0120】
上記プロセスで作製した単画素のセル及びアクティブマトリクスセルに液晶組成物LC−1を等方相の温度で注入し、カイラルスメクチック液晶相を示す温度まで冷却し、この冷却の際、Ch−SmC*相転移前後において、−5Vのオフセット(直流)電圧を印加して冷却を行う処理を施し、液晶素子サンプルA(単画素),B(アクティブマトリクスタイプ)を作製した。かかるサンプルについて、下記の項目についての評価を行った。
【0121】
(1)配向状態
素子サンプルAの液晶の配向状態について偏光顕微鏡観察を行った。その結果、室温(30℃)では、電圧無印加で最暗軸がラビング方向と若干ずれた状態であり、且つ層法線方向がセル全体で一方向しかないほぼ均一な配向状態が観察された。
【0122】
(2)光学応答
液晶素子が示す電気光学応答を測定するために、素子サンプルAについてセルをクロスニコル下でフォトマルチプライヤー付き偏光顕微鏡に、偏光軸を電圧無印加状態で暗視野となるように配置した。
【0123】
これに30℃において±5V、0.2Hzの三角波を印加した際の光学応答を観測すると、正極性の電圧印加に対しては、印加電圧の大きさに応じて徐々に透過光量(透過率)が増加していった。一方、負極性の電圧印加の際の光学応答の様子は、電圧レベルに対して透過光量が変化しているものの、その最大透過率は、正極性電圧印加の際の最大透過率と比較すると、1/10程度であった。
【0124】
(3)矩形波応答
素子サンプルAについて三角波応答と同様の装置を用いて、60Hz(±5V)の矩形波電圧を印加して電圧を変化させながら光学レベルを測定した。
【0125】
その結果、正極性の電圧には十分に光学応答し、その光学応答は前状態には依存せずに安定した中間調状態が得られることが確認できた。また、負極性の電圧に対しても同じ電圧絶対値の正極性電圧印加の場合の1/10程度の光学応答が確認され、正負の電圧に対する光学応答の平均値は前状態には依存せず安定した中間調が得られることが確認できた。
【0126】
また、この正極性の矩形波電圧印加による、立ち上がり時間(最暗状態の液晶に所定の透過率を得るための電圧を印加した際の、該透過率の90%に達する時間)と、立ち下がり時間(所定の中間調状態を得るための電圧印加による飽和透過率状態から、当該飽和透過率の10%に達する時間)での応答速度は、高電圧(5V程度)印加の際にはそれぞれ0.7ms、0.3msであり、低電圧(1V程度)印加の際には、それぞれ2.0ms、0.2msであり、一般的なネマチック液晶でのスイッチングに比較しても高速応答性が確認された。
【0127】
(4−1)実駆動/動画質評価A
TFTを用いたアクティブマトリクスパネルである素子サンプルBを用いて、動画質評価を行った。この動画質評価は10名程度の非専門家による主観評価とし、下記5段階の尺度(カテゴリー)で評価した。評価に使用した画像は、BTAのハイビジョン標準画像(静止画)から3種類(肌色チャート、観光案内板、ヨットハーバー)を選び、その中の中心部分の432×168画素を切り出して使用した。
【0128】
さらにこれらの画像を高速な動きの動画像:13.6(deg/s)の一定速度(テレビ番組の一般的な動き速度程度である6.8(deg/s)の2倍の速度)で移動させた像を作成し、画像のボケを評価した。
【0129】
尺度5…画面の周辺ボケが全く観察されずキレの良い良好な動画質
尺度4…画面の周辺ボケがほとんど気にならない
尺度3…画面の周辺ボケが観察され、細かい文字は判別し難い
尺度2…画面の周辺ボケが顕著となり、大きな文字も判別し難い
尺度1…画面全体にボケが顕著となり、原画像がほとんど判別不能
【0130】
この時の画像ソースのコンピュータ側からの出力は、1秒間に60画面分を順次走査(プログレッシブ)するようなピクチャーレートとした。
【0131】
先ず、TFTパネル側(サンプル)の表示は、1秒間に60フレームの表示を行い、1フレームを複数フィールドに分割せず、フレーム反転駆動を行った。その結果、若干ではあるが動画質の周辺ボケが観測された。この周辺ボケ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で3程度であった。
【0132】
さらに、1フレームを2つのフィールドに分割し、最初のフィールドで正極性電圧、続くフィールドで負極性電圧(両フィールドの電圧レベルは同じ)を印加し、実質的に周波数120Hzで動作させた場合、フリッカが全く観察されず、周辺ボケがほぼ感じられない動画質が観察され、上記の5段階評価では4のレベルであった。
【0133】
尚、この評価を一般的なCRTを用いて行うと5段階評価で全員が5、応答が数十msかかる市販のTFTタイプの液晶素子を用いると5段階評価で1〜2程度の評価結果であった。
【0134】
(4−2)実駆動/動画質評価B
次に、1フレームを時間比率で1:2の2つのフィールドに分割し、実質的に120Hzで駆動した(パルス幅としては、5.6msと11.1ms)、最初のフィールドで0〜6Vの正極性電圧、続くフィールドで0〜3Vの負極性電圧(両フィールドの電圧レベルは2:1の比率)を印加し動作させた場合、フリッカが全く観察されず、周辺ボケが全く感じられない動画像が観察され、理想的な動画像が得られた。上記の5段階評価では5のレベルであった。
【0135】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、明るく高画質の動画像表示の表示素子が得られ、さらには、実用的な明るさと高速応答、及び階調表示が可能な液晶素子が得られ、特に、カイラルスメクチック液晶素子において、複雑な回路を用いることなく動画質を向上し、同時に液晶の劣化を防止し、長期にわたって良好な動画質を表示しうる耐久性に富んだ液晶素子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】SSFLCタイプの液晶素子における液晶配向状態での液晶分子及び液晶層構造を示す模式図である。
【図2】図1の液晶配向状態における液晶分子の仮想コーン底面への射影を示す模式図である。
【図3】SSFLCタイプの液晶素子及び本発明の液晶素子の一実施形態の各液晶相での配向状態を示す模式図である。
【図4】本発明の液晶素子の一実施形態におけるカイラルスメクチック液晶相での配向状態を示す模式図である。
【図5】カイラルスメクチックC相での配向状態を示す模式図である。
【図6】本発明の液晶素子の一実施形態におけるカイラルスメクチック液晶相での電圧印加による液晶分子の反転挙動を示す模式図である。
【図7】本発明の液晶素子における電圧−透過率特性の一例を示す図である。
【図8】SSFLCにおける双安定配向状態でのポテンシャルの状態を示す模式図である。
【図9】本発明の液晶素子における配向状態でのポテンシャルの状態を示す模式図である。
【図10】本発明の液晶素子の一実施形態の一画素の構造を模式的に示す断面図である。
【図11】本発明の液晶素子をアクティブマトリクスタイプに適用した場合の構成例を示す平面模式図である。
【図12】本発明の液晶素子をアクティブマトリクスタイプに適用した場合の一画素の構成例を示す断面模式図である。
【図13】図12に示した素子構造の等価回路を示す図である。
【図14】本発明の液晶素子をアクティブマトリクス駆動する際の駆動波形及び光学応答の一例を示す図である。
【符号の説明】
11,12 基板
13 液晶
14,14a,14b 液晶分子
15 コーン
16 スメクチック層
17 コーン底面
18,18a,18b 液晶分子の仮想コーン底面への射影
19 自発分極
20 アクティブマトリクス基板
21 基板
22 ゲート電極
23 ゲート絶縁膜
24 半導体層
25,26 オーミックコンタクト層
27 ソース電極
28 ドレイン電極
29 チャネル保護膜
30 保持容量電極
31 液晶容量
32 保持容量
40 対向基板
41 基板
42 共通電極
43a,43b 配向膜
49 液晶層
50 自発分極
80 液晶素子
81a,81b 基板
82a,82b 電極
83a,83b 絶縁膜
84a,84b 配向膜
85 液晶層
86 スペーサー
90 パネル部
91 走査信号ドライバ
92 情報信号ドライバ
94 TFT
95 画素電極

Claims (12)

  1. 複数画素を個々に制御してアクティブマトリクス駆動により画像を表示する液晶素子であり、液晶と、該液晶を狭持して対向すると共に少なくとも一方の液晶との界面に一軸配向処理が施された一対の基板と、画素毎に液晶を駆動する電極と、少なくとも一方の基板の外側に配置した偏光板とを備えた液晶素子であって、
    1フレームが2つのフィールドに分割され、第一のフィールドにおいて画素毎に表示情報に応じた第一の輝度で画像を表示し、第二のフィールドにおいて画素毎に上記第一の輝度よりも一定の割合で小さい第二の輝度で実質的に上記第一のフィールドで表示した画像と同一の画像を表示し、上記第二の輝度で表示する期間をF2、上記第一の輝度で表示する期間をF1とした時、F2≧F1と設定されており、
    上記液晶がカイラルスメクチック液晶であり、上記液晶への電圧無印加時には、上記液晶の平均分子軸が単安定化された第一の状態を示し、上記液晶への第一の極性の電圧印加時には、上記液晶の平均分子軸が印加電圧値に応じた角度で上記第一の状態から一方の側にチルトし、上記液晶への上記第一の極性とは逆極性の第二の極性の電圧印加時には、上記液晶の平均分子軸が印加電圧値に応じた角度で上記第一の状態から上記第一の極性の電圧印加時にチルトした側とは逆側にチルトし、上記第一の極性の電圧印加時と第二の極性の電圧印加時のそれぞれの液晶の平均分子軸の最大チルト状態における上記第一の状態からのチルトの角度が互いに異なり、
    上記第一のフィールドにおいて、各画素の液晶が、上記各画素の液晶への、表示情報に応じた値の第一の極性の電圧印加によって、該電圧値に応じた角度で第一の状態からチルトして第一の透過率を呈し、上記第二のフィールドにおいて、各画素の液晶が、上記各画素の液晶への、表示情報に応じた値の第二の極性の電圧印加によって、該電圧値に応じた角度で第一の状態から上記第一の極性の電圧印加時にチルトした側とは逆側にチルトして第二の透過率を呈し、各画素の液晶が上記第一の状態で第三の透過率を呈し、上記第一の透過率の最大値と第三の透過率との間で連続的に透過率を変化させることによって階調表示を行うことを特徴とする液晶素子。
  2. 上記第二の輝度が第一の輝度の1/5以下である請求項記載の液晶素子。
  3. 上記第二の透過率が第一の透過率の1/5以下である請求項記載の液晶素子。
  4. 上記第三の透過率が上記液晶素子の表示しうる最小透過率であり、第一の透過率の最大値が最大透過率である請求項1乃至3のいずれかに記載の液晶素子。
  5. 上記第二の透過率の最大値と第三の透過率との差が、第一の透過率の最大値と第三の透過率との差の1/5以下である請求項記載の液晶素子。
  6. 上記第一の極性の電圧値が、表示情報に応じた電圧値よりも高く、該電圧値を印加された画素の液晶が表示情報に応じた透過率よりも高い透過率を呈する請求項1乃至5のいずれかに記載の液晶素子。
  7. 上記カイラルスメクチック液晶の相転移系列が、高温側より、等方相−コレステリック相−カイラルスメクチックC相、或いは、等方相−カイラルスメクチックC相であり、素子内における液晶のスメクチック層の法線方向が一方向である請求項1乃至6のいずれかに記載の液晶素子。
  8. 上記カイラルスメクチック液晶のバルク状態でのらせんピッチがセル厚の2倍より長い請求項1乃至7のいずれかに記載の液晶素子。
  9. 上記第一の透過率で表示する期間F1と該期間に液晶に印加される第一の極性の電圧値V1、及び、第二の透過率で表示する期間F2と該期間に液晶に印加される第二の極性の電圧値−V2との関係が、F1≦F2であり、且つ、F1×V1=F2×V2である請求項1乃至8のいずれかに記載の液晶素子。
  10. 上記液晶素子が画素毎に画素電極とアクティブ素子を備え、アナログ階調表示を行う請求項1乃至9のいずれかに記載の液晶素子。
  11. 透過型液晶素子である請求項1乃至10のいずれかに記載の液晶素子。
  12. 反射型液晶素子である請求項1乃至10のいずれかに記載の液晶素子。
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