JP2004077542A - 液晶素子とその駆動方法及び製造方法 - Google Patents
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Abstract
【目的】安価で簡便に広視野角特性と高コントラスト比とを両立できる液晶素子を提供すること。
【構成】第1の極性の電圧印加時と第2の極性の電圧印加時の液晶の平均分子軸の該第1の状態における単安定化された位置を基準とした最大チルト状態のチルトの角度をそれぞれβ1、β2としたとき、
β1>β2≧0なる領域D1と
0≦β1<β2なる領域D2と
が存在することと、
前記両基板に施された一軸性配向処理の方向が完全な平行若しくは完全な反平行でない(所謂クロスラビング処理を施している)ことと、少なくとも何れか一方の基板において、前記D1領域とD2領域における平均的な配向規制力をそれぞれA1、A2としたとき、それらが異なる値を有する。
【選択図】 図1
【構成】第1の極性の電圧印加時と第2の極性の電圧印加時の液晶の平均分子軸の該第1の状態における単安定化された位置を基準とした最大チルト状態のチルトの角度をそれぞれβ1、β2としたとき、
β1>β2≧0なる領域D1と
0≦β1<β2なる領域D2と
が存在することと、
前記両基板に施された一軸性配向処理の方向が完全な平行若しくは完全な反平行でない(所謂クロスラビング処理を施している)ことと、少なくとも何れか一方の基板において、前記D1領域とD2領域における平均的な配向規制力をそれぞれA1、A2としたとき、それらが異なる値を有する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶を利用して種々の表示を行うカイラルスメクチック液晶素子とその駆動方法及び製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ネマチック液晶を利用したアクティブマトリクス型の液晶パネルが種々提案されている。以下、この液晶パネルについて説明する。
【0003】
従来、1つ1つの画素にトランジスタのようなアクティブ素子を配置したアクティブマトリクス型液晶パネルとしてはネマチック液晶を用いたものがあり、様々なモードで使用されている。
【0004】
例えば、広汎に用いられている代表的なモードとしてツイステッドネマチック(Twisted Nematic)モードがあり、該モードについては、「エム・シャット(M.Schadt)とダブリュー・ヘルフリッヒ(W.Helfrich)著、APPlied Physics Letters、第18巻、第4号(1971年2月15日発行)、第127頁から128頁」に開示されている。
【0005】
又、最近では、従来型液晶パネルの欠点である視野角特性を改善するものとして、横方向電界を利用したインプレインスイッチング(In−Plain Switching)モードや、垂直配向(Vertical Alignment)モードが発表されている。
【0006】
ところで、上述したネマチック液晶を用いた場合には(何れのモードでも)応答速度が遅いという問題があり、近年は、そのような問題点のないカイラルスメクチック液晶を用いた液晶パネルが注目されている。例えば、「ショートピッチタイプの強誘電性液晶」、「高分子安定型強誘電性液晶」、「無閾反強誘電性液晶」等が提案されており、未だ実用化には至っていないものの、何れもサブミリ秒以下の高速応答性が実現できると報告されている。
【0007】
次に、このようなカイラルスメクチック液晶を用いた液晶パネルの一例について説明する。
【0008】
例えば、特開2000−338464号にて開示されている液晶パネルは、カイラルスメクチック液晶として、高温側より、等方性液体相(ISO.)−コレステリック相(Ch)−カイラルスメクチックC相(SmC* )、又は等方性液体相(ISO.)−カイラルスメクチックC相(SmC* )の相転移系列を示す液晶を、仮想コーンのエッジより内側の位置で安定化するように調整して用いており、斯かる液晶を一対の基板間に注入した後の冷却過程において(正確には、Ch−SmC* 相転移の際、又はISO−SmC* 相転移の際に)液晶2にDC電圧を印加する等して層方向を一方向に均一化させている。
【0009】
この液晶パネルは、応答速度が速いという効果を有する他、階調制御が可能であって、動画質に優れ、高輝度であって量産性に優れるという特徴を有している。又、この液晶パネルは、自発分極値を小さくでき、アクティブ素子とのマッチングが良いものとなっている。
【0010】
更に、特開2000−275684号では所定の領域ごとに前記層の方向を変化させることによって、優れた動画質という特徴を維持したまま、より一層の視野角の向上が図られている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した特開2000−275684号で述べた液晶パネル(以下、先願1と記載)においては領域ごとに層の方向を変化させることが特徴としているが、本発明者等の詳細な検討によると、用いる液晶材料によっては素子全面を同じ層方向に制御したサンプルAと、先願1に記載に従って領域ごとに層の方向を変化させたサンプルBとを比較したとき、サンプルBのコントラスト比がサンプルAに対して小さい値を取ってしまう場合があることが分かった。即ち、先願1で述べた液晶パネルは、視野角特性については極めて良好な特性を示すものの、用いる液晶材料によってはコントラスト比が小さくなってしまうことから、視野角とコントラストとを両立させるためには用いる液晶材料の選択肢が可成り限られたものとなっていた。
【0012】
そこで、本発明は、先願1の液晶素子に対して、セル構成を工夫することにより安価で簡便に前記広視野角特性と高コントラスト比とを両立できる液晶素子を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、カイラルスメクチック液晶と、該液晶に電圧を印加する一対の電極と、該液晶を挟持して対向すると共に該液晶を配向させるための一軸性配向処理が施された一対の基板と、少なくとも一方の基板側に偏光板とを備えた液晶素子であって、電圧無印加時では、該液晶の平均分子軸が単安定化された第1の状態を示し、第1の極性の電圧印加時には、該液晶の平均分子軸は印加電圧の大きさに応じた角度で該単安定化された位置から一方の側にチルトし、該第1の極性とは逆極性の第2の極性の電圧印加時には、該液晶の平均分子軸は該単安定化された位置から第1の極性の電圧を印加したときとは逆側にチルトし、第1の極性の電圧印加時と第2の極性の電圧印加時の液晶の平均分子軸の該第1の状態における単安定化された位置を基準とした最大チルト状態のチルトの角度をそれぞれβ1、β2としたとき、
β1>β2≧0なる領域D1と
0≦β1<β2なる領域D2と
が存在することと、
前記両基板に施された一軸性配向処理の方向が完全な平行若しくは完全な反平行でない(所謂クロスラビング処理を施している)ことと、少なくとも何れか一方の基板において、前記D1領域とD2領域における平均的な配向規制力をそれぞれA1、A2としたとき、それらが異なる値を有していることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図6を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
先ず、本実施の形態にて製造され駆動される液晶素子の全体構成について図1を参照して説明する。
【0016】
本実施の形態に係る液晶素子は、図1に符号Pで示すように、所定間隙を開けた状態に配置された一対の基板1a,1bと、これら一対の基板1a,1bの間隙に配置されたカイラルスメクチック液晶2と、複数の画素を構成すると共に該カイラルスメクチック液晶2を挟み込むように配置された一対の電極3a,3bと、これらの一対の電極の何れか一方3bに接続された状態で各画素毎に配置された複数のアクティブ素子4と、を備えており、前記一対の電極3a,3bを介して前記カイラルスメクチック液晶2に電圧を印加することにより駆動されるように構成されている。
【0017】
尚、カイラルスメクチック液晶2としては、高温側より、等方性液体相(ISO.)−コレステリック相(Ch)−カイラルスメクチックC相(SmC* )、又は、等方性液体相(ISO.)−カイラルスメクチックC相(SmC* )の相転移系列を示すものを挙げることができる。尚、斯かる液晶2は、電圧を印加していない状態で液晶分子が仮想コーンのエッジ、或は仮想コーンの内側の位置で安定化する状態で用いると良い。
【0018】
次に、本実施の形態に係る液晶素子の製造方法について説明する。
【0019】
上述した液晶素子Pを製造するに際しては、一対の基板の両側に一軸配向処理を施す工程と、所定間隙を開けた状態に一対の基板1a,1bを配置する工程と、これら一対の基板1a,1bの間隙にカイラルスメクチック液晶2を配置する工程と、該カイラルスメクチック液晶2を挟み込むと共に複数の画素を構成するように一対の電極3a,3bを配置する工程と、アクティブ素子4を各画素毎に一方の電極3bに接続した状態に配置する工程と、を適切な順序で実施する。
【0020】
尚、このとき一対の基板を貼り合わせる際に、完全に平行(又は反平行)とはならず、所定の角度を有するように上下基板の一軸性配向処理の方向を規定する。更に、これら一対の基板のうち何れか一方の基板には、配向規制力に分布を持たせるようにする。この配向規制力の分布の持たせ方は、
・フォトレジストなどを用いてパターニングした後、一軸性配向処理を施すことで、一軸性配向処理を施す部分と施さない部分との2領域を作りこむ。或は予め全面に一軸性配向処理を施した後に前記プロセスにて一軸配向処理を再度繰り返し行う部分と行わない部分とに分けることにより、配向規制力の強弱を作りこむ。
【0021】
・一旦基板全体に一軸性配向処理を施した後、部分的に紫外線を照射することで光照射した部分の一軸性配向規制力を消失又は減衰させる。
等、種々の方法が考えられるが、何れの方法を用いても良い。
【0022】
次に、液晶素子Pの詳細構造について説明する。
【0023】
先ず、カイラルスメクチック液晶2について説明する。
【0024】
本実施の形態にて用いるカイラルスメクチック液晶2は、上述のような相転移系列のもの、即ち、高温側より、等方性液体相(ISO.)−コレステリック相(Ch)−カイラルスメクチックC相(SmC* )、又は等方性液体相(ISO.)−カイラルスメクチックC相(SmC* )の相転移系列を示すものが好ましいが、具体的には、次の(1)〜(4)に示す化合物を挙げることができる。
(1)
【0025】
【化1】
R1,R2:炭素原子数が1〜20である置換基を有していても良い直鎖又は分岐状のアルキル基
X1,X2:単結合、O、COO、OOC
Y1,Y2,Y3,Y4:H又はF
n:0又は1
(2)
【0026】
【化2】
R1,R2:炭素原子数が1〜20である置換基を有していても良い直鎖又は分岐状のアルキル基
X1,X2:単結合、O、COO、OOC
Y1,Y2,Y3,Y4:H又はF
(3)
【0027】
【化3】
R1,R2:炭素原子数が1〜20である置換基を有していても良い直鎖又は分岐状のアルキル基
X1,X2:単結合、O、COO、OOC
Y1,Y2,Y3,Y4:H又はF
(4)
【0028】
【化4】
R1,R2:炭素原子数が1〜20である置換基を有していても良い直鎖又は分岐状のアルキル基
X1,X2:単結合、O、COO、OOC
Y1,Y2,Y3,Y4:H又はF
ところで、本実施の形態では、カイラルスメクチック液晶2については、その液晶材料の組成を調整し、更に液晶材料の処理や素子構成、例えば配向制御膜6a,6bの材料、処理条件等を適宜設定することにより、
▲1▼駆動電圧が印加されていない場合には、該液晶の平均分子軸(液晶分子)が単安定化されている配向状態を示し、
▲2▼第1の極性(例えば正極性)の駆動電圧が印加されて駆動される場合には、液晶分子の平均分子軸が駆動電圧の大きさに応じた角度で前記単安定化された位置から一方の側にチルトし、
▲3▼他方の極性(前記第1の極性に対する逆極性をいう。例えば負極性。以下、同じ)の電圧が印加されている場合には、液晶分子の平均分子軸が駆動電圧の大きさに応じた角度で前記単安定化された位置から他方の側(即ち、前記第1の極性の電圧を印加したときにチルトする側とは反対の側)にチルトする、ような特性を示すようにすることができる。
【0029】
つまり、本実施の形態に用いる液晶2は、例えば図5に示す特性のものであって、カイラルスメクチック液晶本来のメモリ性(双安定性)が消失されたものであって、チルト角の大きさを印加電圧によって連続的に制御することができ、それに伴って液晶素子の光量も連続的に変化させることができ、階調表示を可能とするものである。この場合、前記第1の極性の駆動電圧を印加することによって最大チルト状態とした場合におけるチルト角は、前記他の極性の電圧を印加することによって最大チルト状態とした場合におけるチルト角と異ならせると良い。例えば、該他の極性の電圧を印加した場合、該電圧の大きさに拘らず、液晶の平均分子軸が殆どチルトしないような特性にしても良い。以下、このような特性を有する領域をD1領域と呼ぶ。
【0030】
一方、前記処理条件を変えることにより、図5に示す特性に対してy軸に対して線対称な特性、即ち図6に示すように前記逆(例えば負)の極性の電圧を印加したときには大きく透過率が上昇し、前記第1の極性(例えば正極性)の電圧を印加したときには逆極性(負)の電圧を印加したときとは異なった小さなチルト角を取らせることができる。又、このとき第1の極性(例えば正極性)の電圧を印加したときに、液晶の平均分子軸が殆どチルトしないような特性にしても良い。以下、このような特性を有する領域をD2領域と呼ぶ。
【0031】
次に、カイラルスメクチック液晶2以外の各構成部材等について説明する。
【0032】
上述した基板1a,1bには、ガラスやプラスチック等の透明性の高い材料を用いれば良い。
【0033】
又、電極3a,3bには、In2 O3 やITO(インジウム・ティン・オキサイド)等の材料を用いれば良く、これらの電極3a,3bはそれぞれの基板1a,1bに形成すると良い。尚、アクティブ素子4を接続する方の電極3bは、ドット状にマトリクス状に配置し、他方の電極3aは、基板のほぼ全面(或は特定の領域)に形成すると良い。更に、アクティブ素子4としては、TFTやMIM(Metal−Insulator−Metal)等を用いれば良い。
【0034】
又更に、各電極3a,3bの表面には、これらの電極間のショートを防止するための絶緑膜を形成すると良く(図1には、一方の電極3bを覆う絶縁膜5bのみ図示)、斯かる絶緑膜は、SiO2 、TiO2 、Ta2 O5 等にて形成すれば良い。
【0035】
又、カイラルスメクチック液晶2に接する位置には、その配向状態を制御するために一軸配向処理を施した配向制御膜6a,6bを配置すると良い。斯かる配光制御膜6a,6bとしては、
*ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール等の有機材料から成る溶液を塗布して膜を形成し、該膜の表面にラビング処理を施したものや、
*SiO等の酸化物や窒化物から成る無機材料を基板1a,1bに斜め方向から所定の角度で蒸着させて形成した斜方蒸着膜、
*紫外線照射等によって一軸配向規制力を発生し得る光配向膜を用いたもの、を挙げることができる。尚、この配向制御膜6a,6bの材質や一軸配向処理の条件等により、液晶分子のプレチルト角(即ち、配向制御膜6a,6bの界面近傍において液晶分子が配向制御膜6a,6bに対してなす角度)が調整される。
【0036】
このような配向制御膜6a,6bは、カイラルスメクチック液晶2の両側に配置してそれらの両方の基板に対して一軸配向処理を施せば良く、その場合における一軸配向処理方向(特にラビング方向)の関係は、用いる液晶材料を考慮して、45°以下の範囲でクロスする関係に設定すれば良い。このとき、本発明の液晶素子では、厳密な意味でのアンチパラレル(両一軸配向処理方向が平行且つ逆方向)及びパラレル(両一軸配向処理方向が平行且つ同方向)の何れかの関係には設定しない。
【0037】
尚、45°以下の範囲でクロスする関係とは、2つのベクトル(一軸配向処理方向を示すベクトル)が45°以下の範囲内でクロスする場合であって、それぞれのベクトル方向が同方向(正確には、45°以下の角度ズレを有する)である場合や、それぞれのベクトル方向が逆方向である場合の両方を挙げることができる。そして、互いのベクトルの交差角度(狭い方の交差角度)の値が45°以下で且つ0°に近いような場合は、それぞれのベクトルの関係は広義のアンチパラレル乃至パラレルの関係と称しても良い。
【0038】
更に、基板1a,1bの間隙は、例えばシリカビーズ等から成るスペーサー(不図示)を配置する、若しくは隔壁(リブ)構造を形成することによって所定の間隙寸法を規定するようにしても良い。ここで言う隔壁(リブ)とは、例えばアクリル樹脂を、高さが略基板1a,1bの間隙寸法とし、幅1〜500μm、長さは表示素子のパネルサイズを最大とした任意のサイズに適宜パターニングした構造体のことを指す。尚、間隙寸法は、液晶材料を考慮して最適範囲になるように調整すれば良いが、均一な一軸配向性を達成させ、且つ、電圧が印加されていない状態での液晶分子の平均分子軸を配向処理軸Rの平均方向の軸と実質的に一致させるために、0.3〜10μmの範囲に設定することが好ましい。
【0039】
又更に、基板1a,1bの間隙にエポキシ樹脂等から成る接着粒子(不図示)を分散配置して、両基板1a,1bの接着性や、液晶素子Pの耐衝撃性を向上させても良い。
【0040】
更に、液晶素子Pは、透過型としても良く、反射型としても良い。尚、透過型の場合には両方の基板1a,1bを透明にする必要があり、反射型の場合には、基板1a,1bの一方に光を反射させる機能を付与する必要がある。ここで、光を反射させる機能を付与する方法としては、
*反射板や反射膜を、基板とは別体に設ける方法や、
*基板自体を反射部材で形成する方法や、
等を挙げることができる。ここで、透過型の液晶素子の場合には両方の基板に偏光板を(それらの偏光軸が互いに直交するように)配置すれば良く、反射型の液晶素子の場合には少なくとも一方の基板に偏光板を設ければ良い。
【0041】
ところで、上述した液晶素子Pを用いてカラー表示を行うようにしても良い。このようなカラー表示を行う方法としては、
*各画素にカラーフィルターを配置する方法や、
*そのようなカラーフィルターを用いず、液晶素子に対して異なる色の光を順次照射すると共に該光の照射に同期させて画像を変更する方法(所謂フィールドシーケンシャル方式)、
を挙げることができる。
【0042】
又、上述した電極の何れか一方3bには、駆動回路(図2の符号21参照)を接続して階調信号を入力し、該信号によってチルト角度(即ち、液晶の平均分子軸の単安定位置からのチルト角度)の大きさを制御して光透過率を制御し、それによって階調表示を行うようにすると良い。
【0043】
次に、本実施の形態に係る液晶素子Pの詳細構成の一例について、図1及び図2を参照して説明する。
【0044】
図1に示す液晶素子Pは、所定間隙を開けた状態に配置した一対のガラス基板1a,1bを備えており、一方のガラス基板1aの全面には、ほぼ均一な厚みの共通電極3aが形成され、共通電極3aの表面には配向制御膜6aが形成されている。
【0045】
又、他方のガラス基板1bの側には、図2に示すように、ゲート線G1 ,G2 ,…が図示X方向に多数配置され、ゲート線G1 ,G2 ,…とは絶縁された状態のソース線S1 ,S2 ,…が図示Y方向に多数配置されている。そして、これらのゲート線G1 ,G2 ,…及びソース線S1 ,S2 ,…の各交点の画素には、アクティブ素子としての薄膜トランジスタ(アモルファスSiTFT)4や、ITO膜等の透明導電膜から成る画素電極3b及び保持容量電極7等が配置されている。
【0046】
このうち、アモルファスSiTFT4は、図1に示すように、ゲート電極10と、窒化シリコン(SiNx )から成る絶縁膜(ゲート絶緑膜)5bと、半導体層であるa−Si層11やn+ a−Si層12,13と、ソース電極14と、ドレイン電極15と、チャネルを保護するチャネル保護膜16と、によって構成されている。即ち、ガラス基板1bには各画素毎にゲート電極10が形成され、該ゲート電極10の表面は絶縁膜5bにて覆われ、絶縁膜5bの表面であってゲート電極10を形成した位置にはa−Si層11が形成されている。
【0047】
又、このa−Si層11の表面には、互いに離間するようにn+ a−Si層12,13が形成されており、各n+ a−Si層12,13にはソース電極14やドレイン電極15が互いに離間した状態に形成されている。更に、これらのa−Si層11や電極14,15を覆うようにチャネル保護膜16が形成されている。
【0048】
そして、TFT4のゲート電極10は上述したゲート線G1 ,G2 ,…を介して走査信号ドライバ20に接続され、TFT4のソース電極14はソース線S1 ,S2 ,…を介して情報信号ドライバ21に接続され、TFT4のドレイン電極15は画素電極3bに接続されている。
【0049】
ところで、上述した保持容量電極7はガラス基板1bの表面に形成されており、上述した絶縁膜5bは、この保持容量電極7及びガラス基板1bを覆う位置まで形成され、上述したソース電極14や画素電極3bはこの絶縁膜5bの表面に形成されている。これにより、保持容量電極7と画素電極3bとは、絶縁膜5bを挟んだ状態に配置されることとなり、これらによって、液晶2と並列の形で設けられた保持容量Cs が構成されることとなる(図3参照)。
【0050】
又、図1に示すように、上述したTFT4や画素電極3bの表面には配向制御膜6bが形成されており、その表面には一軸配向処理(ラビング処理)が施されている。
【0051】
更に、これらのガラス基板1a,1bの間隙であって、画素電極3bと共通電極3aとの間には、自発分極を有するカイラルスメクチック液晶2が配置されていて、液晶容量Clcが構成されることとなる(図3参照)。
【0052】
又、このような液晶素子Pの両側には、互いに偏光軸が直交した関係にある一対の偏光板(不図示)が配置されている。
【0053】
尚、図1に示す液晶素子PではアモルファスSiTFTを用いているが、勿論これに限る必要はなく、多結晶Si(P−Si)TFTや単結晶Si(C−Si)TFTを用いても良い。
【0054】
又、上述のアクティブ素子を備えた素子において、例えば図8に示すように、1ライン毎、又は画素毎、又は複数の画素を1つの単位としたブロック毎に、上述した電気光学特性の異なるドメインD1、D2を形成している。即ち、隣り合ったライン或は画素又はブロックにおける層方向を互いに異なるようにする。
【0055】
こうした層方向の異なるドメインD1、D2を形成する手段としては、
1.Ch−SmC* 相転移の際、又はI相−SmC* 相転移の際に、例えばD1に負、D2に正のDC電圧とする等、ドメインによって印加するDC電圧の極性を変化させる。
【0056】
2.D1、D2ドメイン部分に異なる配向膜を用いる。
【0057】
3.D1、D2ドメイン部分に対する配向膜の処理法(ラビング強度、UV照射等の条件)を変える。
等、様々な方法が考えられるが、何れの手段を用いても良い。
【0058】
一方、こうして得られた液晶素子を線順次駆動する際には、例えば偶数フィールドではパネル全面に第1の極性の電界が印加され、それに続く奇数フィールドではパネル全面に第2の極性の電界が印加されるようなフレーム反転駆動によって駆動することができる。但し、このとき偶数フィールド(第1の極性)では領域D1において液晶分子は大きくチルトし、領域D2では液晶分子は小さくチルトする。逆に奇数フィールド(第2の極性)では領域D1において液晶分子は小さくチルトし、領域D2では液晶分子は大きくチルトする。
【0059】
つまり、偶数・奇数フィールド何れにおいてもパネル表示は、領域D1或は領域D2の何れかが大きくチルトするため明表示となってしまい、CRTと同様なインパルス表示することにはならない、所謂ホールド表示になってしまうため、良好な動画質を得ることができない。
【0060】
そこで、本発明では、D1とD2に対してそれぞれ正の電界と負の電界とが交互に印加されるようにそれぞれの映像信号線に信号を供給し、パネルに電界を与えることで、上記問題を解決することができる。つまり、例えば偶数フィールドでは領域D1に第1の極性の電界が印加され、領域D2に第2の極性の電界が印加され、それに続く奇数フィールドでは領域D1に第2の極性の電界が印加され領域D2に第1の極性の電界が印加されるとする。
このとき、偶数フィールドでは領域D1に対して第1の極性の電界が印加されているため、液晶分子は大きくチルトし、領域D2に対して第2の極性の電界が印加されているため、ここでも液晶分子は大きくチルトする。逆に奇数フィールドでは領域D1に対して第2の極性の電界が印加されているため液晶分子は小さくチルトし、領域D2に対して第1の極性の電界が印加されているため、ここでも液晶分子は小さくチルトする。つまり、偶数フィールドにおいて高輝度表示で、奇数フィールドにおいて低輝度表示されることから、当該駆動を用いることにより良好な視野角特性を実現しつつ良好な動画質を得ることが可能となる。
【0061】
尚、上述したように、ここで述べた低輝度表示の際には透過率がゼロの状態、即ち奇数フィールドにおいて何も表示されないような特性にしても良い。
【0062】
次に、上述した液晶素子Pの駆動方法(通常の画像表示を行う場合の駆動方法)の一例について、1つの画素に着目して詳細に説明する。尚、層方向が異なる隣接ライン(又は画素或はブロック)についてはソース電圧の極性が逆になっているだけで、他は同じと考えて良い。
【0063】
上述した液晶素子Pにおいては、走査信号ドライバ20から各ゲート線G1 ,G2 ,…にはゲート電圧が線順次に印加され、TFT4はゲート電圧が印加されることによってオン状態となる。
【0064】
一方、ゲート電圧の印加に同期して、情報信号ドライバ21からソース線S1 ,S2 ,…にはソース電圧(各画素に書き込む情報に応じた情報信号電圧)が印加される。従って、TFT4がオン状態にある画素では、ソース電圧がTFT4及び画素電極3bを介して液晶2に印加され、液晶2のスイッチングが画素単位で行われる。
【0065】
そして、このような駆動を一定期間(フレーム期間)毎に繰り返し、画像の書き換えを行うようになっている。
【0066】
尚、図4に示すように、1つのフレーム期間F0 を複数のフィールド期間F1 ,F2 ,…に分割し、各フィールド期間F1 ,F2 ,…でそれぞれ画像書き換えを行うようにしても良い。以下、その駆動方法について説明する。
【0067】
ここで、図4は各フレーム期間F0 を2つのフィールド期間F1 ,F2 に分割した例を示す図であり、同図(a)は、或る1本のゲート線Gi にゲート電圧Vg が印加される様子を示す図、同図(b)は、或る1本のソース線Sj にソース電圧Vsが印加される様子を示す図、同図(c)は、これらゲート線Gi 及びソース線Sj の交差部の画素(即ち、液晶2)に電圧Vpix が印加される様子を示す図、同図(d)は、当該画素における透過光量の変化を示す図である。尚、液晶2には、図5に示すような電圧−透過率特性のものを用いている。
【0068】
今、或る1本のゲート線Gi に一定期間(選択期間Ton)だけゲート電圧Vg が印加され(同図(a)参照)、或る1本のソース線Sj には、ゲート電圧Vg の印加に同期した選択期間Tonに、共通電極3aの電位Vc を基準電位としたソース電圧Vs(=+Vx )が印加される(同図(b)参照)。すると、当該画素のTFT4はゲート電圧Vg の印加によってオンされ、ソース電圧Vx がTFT4及び画素電極3bを介して印加されて液晶容量Clc及び保持容量Cs の充電がなされる。
【0069】
ところで、選択期間Ton以外の非選択期間Toff には、ゲート電圧Vg は他のゲート線G1 ,G2 ,…に印加されていて同図(a)に示すゲート線Gi には印加されず(ゲート電圧Vg が印加されていないだけであって、オフ電圧は印加されている)、当該画素のTFT4はオフとなる。従って、液晶容量Clc及び保持容量Cs は、この間、充電された電荷を保持することとなる(同図(c)参照)。これにより、1フィールド期間F1 を通じて液晶2には電圧Vpix (=+Vx )が印加され続けることとなり、ほぼ同じ透過光量Tx が維持されることとなる(同図(d)参照)。
【0070】
ここで、選択期間Tonが比較的短い場合には、液晶分子反転が完了せず、液晶容量Clc及び保持容量Cs への充電及び液晶2のスイッチングは非選択期間Toff に行われる。斯かる場合は、自発分極の反転によって充電された電荷が相殺され、液晶2に印加される電圧Vpix は同図(c)のように+Vx よりVd だけ小さい値を取る。
【0071】
次のフィールド期間F2 においては、上述したゲート線Gi には再びゲート電圧Vg が印加され(同図(a)参照)、これと同期してソース線Sj には、先のものとは逆極性のソース電圧−Vx が印加される(同図(b)参照)。これによって、ソース電圧−Vx が液晶容量Clc及び保持容量Cs に充電されると共に、非選択期間Toff においてはその電荷が保持される(同図(c)参照)。これにより、1フィールド期間F2 を通じて液晶2には電圧Vpix (=−Vx )が印加され続けることとなり、ほぼ同じ透過光量Ty が維持されることとなる(同図(d)参照)。
【0072】
ここで、選択期間Tonが比較的短い場合には、液晶分子反転は完了しておらず、液晶容量Clc及び保持容量Cs への充電及び液晶2のスイッチングは非選択期間Toff に行われる。斯かる場合は、自発分極の反転によって充電された電荷が相殺され、液晶2に印加される電圧Vpix は図4(c)のように−Vx よりVd だけ大きい値を取る。
【0073】
ところで、図4に示す駆動方法によれば、各フィールド期間F1 ,F2 単位で印加電圧の大きさに応じて液晶2がスイッチングされ、各フィールド期間F1 ,F2 単位で異なる階調表示状態(透過光量Tx ,Ty )が得られ、フレーム期間F0 の全体でそれらTx ,Ty を平均した透過光量が得られる。
【0074】
尚、液晶2には図5に示す特性のものを用いているため、2番目のフィールド期間F2 における透過光量Ty は、Tx より可成り小さい値若しくはほぼ0レベルであり、フレーム期間全体の透過光量は、上述のような透過光量の平均化によって最初のフィールド期間F1 の透過光量に比べて大きく低下することとなる。従って、実際の駆動においては、フレ−ム期間全体で得たい透過光量(表示画像の階調)に基づいて、最初のフィールド期間F1 の透過光量Tx を(表示諧調よりも高めに)決定し、該透過光量Tx を得るような電圧Vx を印加すれば良い。
【0075】
又、上述のように駆動した場合、奇数フィールド期間(例えばF1 )では正極性の電圧(+Vx )が液晶2に印加され、偶数フィールド期間(例えばF2 )では負極性の電圧(−Vx )が液晶2に印加されることとなるため、液晶2に実際に印加される電圧が時間的に交流化され、液晶2の劣化が防止される。
【0076】
更に、最初のフィールド期間F1 においては高輝度表示を行い、次のフィールド期間F2 では低輝度表示を行うため、時間開口率が50%以下程度となる。従って、斯かる液晶素子で動画像を表示した場合、その画質が良好なものとなる。
【0077】
ところで、コレステリック相からカイラルスメクチックC相へと相転移する相転移過程を詳細に偏光顕微鏡観測したとき、スメクチックA相と酷似した配向状態が観測される場合がある。しかしながら、本発明に使用される素子の本質はSmC*相でスメクチック層の法線方向と一軸配向処理方向とが大きく異なっており、電圧無印加時に安定な分子位置がラビング方向に近い位置にあることである。つまり、こうした関係の層形成方向が実現されている場合には上記スメクチックA相的な液晶相は配向には寄与しないこととなるため、本願においてはこうした材料についてもスメクチックA相を含まない材料と定義する。
【0078】
次に、本実施の形態の効果について説明する。
【0079】
本発明では両基板に施された一軸性配向処理の方向が完全な平行若しくは完全な反平行でない(所謂クロスラビング処理を施している)ことと、何れか一方の基板1に対してはパネルの有効表示領域内においては一様な一軸性配向処理が施されており、該領域の全面がほぼ一様な配向規制力を有していることと、他方の基板2に対しては、前記D1領域とD2領域における平均的な配向規制力をそれぞれA1、A2としたとき、それらが異なる値を有するよう制御することにより、安価で簡便に視野角特性とコントラスト比とを両立できる液晶素子が実現できる。
【0080】
ここで、その効果について先ず前記基板2において領域毎の配向規制力の差が無い状態での場合について説明する。
【0081】
簡単のため、平均的な一軸配向処理方向がソース線に平行となるよう上下基板間で8°程度のクロス角を有するようクロスラビングを施し、上述した広義のアンチパラレルラビング構成となるよう上下基板を配置した場合において、等方相−コレステリック(Ch)相−カイラルスメクチックC(SmC*)相という相系列を有する液晶材料を用いる場合を考える。
【0082】
このとき、コレステリック相において液晶分子は基板界面ではラビング方向を向いて配向しており、バルクではクロスラビングにおいて設定した角度分だけ捩じれた、所謂ツイスト配向状態を形成している。このとき、液晶分子のダイレクタは平均的にはソース線に略平行方向を向いていることになる。
【0083】
次いで、この状態から冷却してSmC*相へと転移させる過程について説明する。通常、コレステリック(Ch)相からカイラルスメクチックC(SmC*)相へと相転移した直後の層構造は分子配向方向が一軸配向処理方向或はコレステリック相における平均分子配向方向と略平行な方向を向いたままで、層の形成方向はおよそカイラルスメクチックC相におけるチルト角(Θ)分だけ傾いた方向に形成される。ここで、層の形成方向は+方向と−方向の2通りが存在する。
【0084】
そこで、本素子を上述したような良好な動画質を示すデバイスとして用いるためには、層の方向を何れか一方に制御し、且つ、それに応じた信号波形を用いて駆動する必要がある。ここでは、この層方向の制御のために、コレステリック(Ch)相からカイラルスメクチックC(SmC*)相へ相転移する温度近傍において弱い直流(例えば−2V程度)の電圧を用いて制御させるものとする。このように負の電圧にて層方向制御した場合におけるカイラルスメクチックC(SmC*)相での電気光学特性は図5に示すようなものとなり、正の電圧印加時において大きく分子がチルトし、負の電圧では小さくチルト若しくは全くチルトしないという特性にすることができる。
【0085】
このとき、カイラルスメクチックC(SmC*)相における液晶分子の配向方向は、液晶材料によってはSmC*相を呈する温度範囲内においてコレステリック(Ch)相における分子配向方向と略平行方向を維持するものもあるが、多くの液晶材料ではカイラルスメクチックC(SmC*)相において温度が変化するに連れCh相における分子配向方向から数度程度のずれを生じてしまう。このCh相における分子配向方向からのずれは以下のような原因で発生する。
【0086】
先ず、コレステリック(Ch)相からカイラルスメクチックC(SmC*)相へと相転移した直後では、上述したように分子配向方向は平均的な一軸配向処理方向或はコレステリック相における平均分子配向方向と略平行な方向を向いている。そして、およそカイラルスメクチックC 相におけるチルト角(Θ)分だけ傾いた方向にスメクチック層が形成される。
【0087】
次いで、更に温度を下げていった時に、多くの液晶材料ではチルト角(Θ)に温度依存性が存在するために、層法線方向からの液晶分子の開き角が温度と共に変化する。即ち、温度を変化させることにより、電圧無印加時の液晶分子配向方向が変化する結果、Ch相における分子配向方向からのずれが生じてしまうことになる。このずれ角は、上記説明から分かるように、SmC*相内でのチルト角(Θ)の温度依存性が大きい程ずれ量が大きくなっている。尚、このときの液晶分子の平均的な一軸配向処理方向からずれる方向は、例えばスメクチック層の層法線方向が平均的な一軸配向処理方向から反時計回りの位置に存在する場合には、時計回りの方向にずれることになる。逆に層法線方向が平均的な一軸配向処理方向から時計回りの位置に存在する場合には、反時計回りの方向にずれることになる。
【0088】
本発明の液晶素子は、上述したようにパネル内にD1とD2という2つの層方向を持つ領域を作り込んでいる。その作り込み方は、例えば所望の領域に対してCh−SmC*相転移過程において正の電圧を印加するか、負の電圧を印加するかを選択することにより2つの領域を選択的に形成することが可能となる。
【0089】
ところが、特に例えばチルト角(Θ)に温度依存性がある液晶材料を用いる場合には、上述したように平均的な一軸配向処理方向からずれた位置に安定位置が存在することになる。このとき、平均的な一軸配向処理方向とSmC*相における安定位置とのずれ角をρ[deg.]とすると、D1とD2では層の方向が異なっていることから、SmC*相における安定位置はD1とD2との間で2ρ[deg.]だけ異なることになる。
【0090】
従って、例えば透過型の液晶素子においてクロスニコル下において電圧無印加時の安定状態を黒表示にしようとすると、D1とD2の少なくとも何れか一方はクロスニコルの偏光板の偏光軸から少なくともρ[deg.]以上ずれてしまう結果、黒表示時において光り抜けが生じコントラストの低下の原因となる。
【0091】
そこで、本発明ではD1領域とD2領域における配向規制力を異ならせることにより、上記コントラストの低下を防ぐことができる。ここでは、簡単のため次の構成にて説明する。
【0092】
先ず、上基板にはソース線に対して反時計回りに4度傾いた方向に一軸配向処理されており、下基板のD1領域に該当する領域にはソース線に対して時計回りに4°傾いた方向に一軸配向処理されており、下基板のD2領域に該当する領域には実質的に配向規制力が存在しないものとする。このとき、D1領域におけるCh相での液晶分子は上述の通りツイスト配向を取っており、平均的なダイレクタはソース線と平行方向を向いている。
【0093】
一方、D2領域におけるCh相での液晶分子は上基板による配向規制力は受けるものの、下基板の配向規制力は実質的に存在していないために、Ch相における液晶の螺旋ピッチが十分長く捩れが無視できるものと仮定すると、平均的なダイレクタは上基板の一軸配向処理方向、即ちソース線に対して反時計回りに4°傾いた方向を向いている。この状態からSmC*相へと冷却した場合には、上記Ch相での配向方向を基準として層形成が行われることになる。
【0094】
ここで、SmC*相において、D1領域は正の電圧を印加したときに時計回りに大きくチルトし、負の電圧を印加したときには反時計回りに小さくチルトし、D2領域は正の電圧を印加したときに反時計回りに大きくチルトし、負の電圧を印加したときには時計回りに小さくチルトする領域であるとする。この場合、温度が低下するに連れてチルト角(Θ)が大きくなる液晶材料では、温度の低下と共に電圧無印加時の安定位置はD1領域においては反時計回りにずれていき、D2領域では時計回りにずれることになる。つまり、室温近傍等の実使用領域においてはD2領域の分子配向方向はD1領域に対して時計回りに数度ずれてしまうことになる。
【0095】
ところが、上述の配向処理を施している場合には、スメクチック相への相転移直後の液晶分子配向方向は、D2領域がD1領域に対して反時計回りに4°傾いた方向に予め配向させている。つまり、チルト角(Θ)の温度依存性により電圧無印加時の安定位置がずれてしまった場合でも、それに応じた角度分だけ補償するようにCh相における分子配向方向を設定しておくことにより、実使用温度範囲内においてD1領域とD2領域における電圧無印加時の液晶分子配向方向をほぼ完全に一致させることが可能となる。
【0096】
そして、このような素子構成にすることによって有効表示領域の全面において実使用温度範囲内における液晶分子配向方向を偏光板の偏光軸と一致させることが可能となり、同一パネル内に2つの層方向を作り込んだ液晶素子においても、パネル全面にて良好なコントラスト比を実現できる。
【0097】
尚、上記説明においては簡単のため、上基板は有効表示領域の全面で一様な配向規制力を有しており、下基板の1領域には配向規制力が存在し、下基板の他の領域には配向規制力が存在しない場合について詳細に説明したが、同様の考え方により、上基板の配向規制力の有無を分割しても良い。或は上下両方の基板について、それぞれの基板面内に配向規制力の分布を持たせても良い。
【0098】
更に、上述のように配向規制力を全く持たせないようにするだけでなく、配向規制力の強弱といったような差を持たせても良い。尚、このときの強弱という表現の中では、配向規制力の差が何[N]程度であるかといった絶対値を定量的な議論は特に重要ではなく、その配向規制力の差によって液晶分子の配向方向に影響が及ぼされているかが重要である。即ち、相対的な配向規制力の大小関係が存在し、それにより液晶分子の配向方向が異なっていることが本発明の効果を発現させることの本質である。従って、上下のそれぞれの一軸配向処理方向が一方向で且つ上下基板間でクロス角を有していることと、D1・D2領域におけるCh相での液晶分子配向方向がそれぞれ異なる方向に配向しているように配向規制力を適宜調整すれば良い。
【0099】
【実施例】
以下、実施例に沿って本発明を更に詳細に説明する。
(実施例1)
(液晶組成物の調製)
先ず、下記液晶性化合物を、それぞれの右側に併記した重量比率で混合し液晶組成物LC−1を調製した。
【0100】
【化5】
上記液晶組成物LCの物性パラメータを以下に示す。
【0101】
86.3 61.2 −7.2
転移移温度(℃):ISO.→Ch→SmC* →Cry
自発分極(30℃):Ps=2.9nC/cm2
コーン角(30℃):Θ=23.3°(100Hz、±12.5V、基板間隙は1.4μm)
SmC* 相での螺旋ピッチ(30℃):20μm以上
(液晶セルの作製)
本実施例においては、図1及び図2に示すアクティブマトリクス型液晶パネル(液晶素子)Pを作製した。
【0102】
尚、基板1a,1bには厚さ1.1mmのガラス基板を用い、それらには透明電極3a,3bを700Å厚のITOにて形成した。又、一方のガラス基板1aにはRGBのカラーフィルター(不図示)を形成した。そして、画面サイズは10.4インチとし、画素数(即ち、RGBの色画素(サブピクセル)によって構成される画素の数)は800(横)×600(縦)とした。尚、このときサブピクセル数は2400(横)×600(縦)となり、各サブピクセルの開口部のサイズは75μm(横)×230μm(縦)であった(ゲートラインが横、ソースラインが縦)。
【0103】
更に、アクティブ素子4にはa−SiTFTを用い、該TFT4のゲート絶縁膜5bには窒化シリコン膜3bを用いた。
【0104】
又、配向制御膜6a,6bは、ポリイミド膜にて形成した。具体的には、市販のTFT用配向膜(日産化学社製のSE7992)をスピンコート法により透明電極3a,3bを覆うように塗布し、その後、80℃の温度で5分間の前乾燥を行い、更に200℃の温度で1時間の加熱焼成を施すことによって形成し、その膜厚を150Åとした。
【0105】
尚、これらの配向制御膜6a,6bには、ナイロン布コットン布によるラビング処理(一軸配向処理)を施した。このラビング処理には、外周面にコットン布を貼り合わせた径10cmのラビングロールを用い、押し込み量を0.7mm、送り速度を10cm/secとし、回転数を1000rpm、送り回数を4回とした。尚、このときのラビング方向は上下基板ともソース線に平行になるよう設定した。
【0106】
続いて、一方の基板上には、平均粒径1.5μmのシリカビーズ(スペーサー)を散布し、各基板のラビング処理方向が互いにアンチパラレルとなるように貼り合わせ、均一な基板間隙のセルを得た。
【0107】
このようなプロセスで作製したセルに液晶組成物LC−1をCh相の温度で注入し、液晶がカイラルスメクチック液晶相を示す温度まで冷却し(但し、冷却速度は1℃/minとした)、液晶がCh相からSmC* 相に相転移する際に(Tc−2℃〜Tc+2℃の温度範囲内で)印加する電圧条件として、1ゲートライン毎に正負の極性が互い違いになるように絶対値として5Vのオフセット電圧(直流電圧)を印加した。即ち、液晶がCh相からSmC* 相に相転移する際に、奇数行に位置する画素に対しては負極性のオフセット電圧を、偶数行に位置する画素に対しては正極性のオフセット電圧を印加して液晶パネルP1を作製した。このときの層構造の様子を図8に模式的に示す。図7における斜線が層の方向を模式的に表している。
【0108】
こうして得られた液晶パネルP1の配向状態を室温にて偏光顕微鏡観測したところ、奇数行においては全画素で一方向に揃った層方向に揃っており、偶数行においては全画素で奇数行とは異なる方向に揃った層方向に揃った状態が得られていた。尚、このときの層の方向は奇数行ではゲート線から約20°反時計回りに傾いた方向を向いており、偶数行ではゲート線から約20°時計回りに傾いた方向に層が形成されていた。
【0109】
更に詳細に室温にて偏光顕微鏡観測したところ、負極性のオフセット電圧を印加しながら冷却した奇数行に位置する画素におけるTFTアレイ側から見た液晶分子配向方向は、電圧無印加状態において時計回りに2度ソース線から傾いた方向に配向しており、正極性のオフセット電圧を印加しながら冷却した偶数行に位置する画素における液晶分子配向方向は、電圧無印加状態において反時計回りに2度ソース線から傾いた方向に配向していることが確認できた。
【0110】
次に、液晶パネルP1を実際に駆動して動画質の評価を行った。尚、このときの駆動法は本明細書中で述べたように1フレームを前半後半の2フィールドに分割し、液晶層に印加する電圧として、
1.前半フィールドではパネルの奇数行に対しては正極性、偶数行に対しては負極性の電圧を印加して、
2.後半フィールドではパネルの奇数行に対しては負極性、偶数行に対しては正極性の電圧を印加する、
という所謂ライン反転駆動によって駆動した。このときの動画質評価として下記に示す評価法を用いた。
【0111】
TFTを用いたアクティブマトリックスパネルであるサンプルP1を用いて、動画質評価を行った。この動画質評価は10名程度の非専門家による主観評価とし、下記5段階の尺度(カテゴリー)で評価した。評価に使用した画像は、BTAのハイビジョン標準画像(静止画)から3種類(肌色チャート、観光案内板、ヨットハーバー)を選び、その中の中心部分の432×168画素を切り出して使用した。
【0112】
更に、これらの画像をテレビ番組の一般的な動き速度程度である6.8(deg/sec)の一定速度で移動させて動画像を作成し、画像のボケを評価した。
【0113】
・尺度5…画面の周辺ボケが全く観察されずキレの良い良好な動画質。
【0114】
・尺度4…画面の周辺ボケが殆ど気にならない。
【0115】
・尺度3…画面の周辺ボケが観察され、細かい文字は判別し難い。
【0116】
・尺度2…画面の周辺ボケが顕著となり、大きな文字も判別し難い。
【0117】
・尺度1…画面全体にボケが顕著となり、原画像が殆ど判別不能。
【0118】
このときの画像ソースのコンピューター側からの出力は、1秒間に60画面分を順次走査(プログレッシブ)するようなピクチャーレートとした。
【0119】
先ず、TFTパネル側(サンプル)の表示は、1秒間に60フレームの表示を行い、上述したように1フレームを前半後半の2フィールドに分割して実質的に周波数120Hzで動作させ、前半にて高輝度表示、後半にて低輝度表示するようなフレーム反転駆動を行った。
【0120】
その結果、キレの良い良好な動画質が得られていることが確認できた。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で全員が5と評価した。更に、このパネルでは実用上十分な視野角特性を有していることを確認した。
【0121】
尚、この評価を一般的なCRTを用いて行うと5段階評価で全員が5、応答が数十mS掛かる市販のTFTタイプの液晶ディスプレイを用いると5段階評価で2〜3程度の評価結果であった。
【0122】
次いで、液晶パネルP1のコントラスト比を測定した。その結果、コントラストは70であった。
(実施例2)
実施例1で述べたパネルP1とはラビング方向のみが異なり、他は全く同一プロセスで作製された液晶パネルP2を得た。このときのラビング方向は液晶パネルのTFTアレイ側から見たときに、TFTアレイ側基板のラビング方向がソース線に対して反時計回りに4°傾いており、TFTアレイと対向する側の基板はソース線に対して時計回りに4°傾いているように設定し、明細書中で述べた広義のアンチパラレルラビングの配置となるようにした。
【0123】
こうして得られた液晶パネルP2の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、液晶パネルP1の配向状態とほぼ同様の配向状態であることが確認できた。又、液晶分子配向方向もP1とほぼ同様の方向に配向していた。
【0124】
次に、実施例1と同様に液晶パネルP1を実際にライン反転駆動して動画質の評価を行った。
【0125】
その結果、キレの良い良好な動画質が得られていることが確認できた。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で5であった。
【0126】
更に、このパネルでは実用上十分な視野角特性を有していることを確認した。
【0127】
次いで、液晶パネルP2のコントラスト比を測定した。その結果、コントラストは70であった。
(実施例3)
実施例2で述べたパネルP2とはラビングの方向は同一ではあるものの、TFTアレイと対向する側の基板に施すラビング処理をマスクラビング処理とし、ラビングした部分とラビングしていない部分を作りこんだ液晶パネルP3を得た。
【0128】
このときのマスクラビングとして、偶数ラインに対してはラビング処理を施して、奇数ラインに対してはラビング時にフォトレジストで保護することで、一軸配向規制力を付与しないようにした。尚、このフォトレジストを用いた配向規制力の分布を作り込む手法は次のように行った。
【0129】
先ず、TFTアレイと対向する側の基板におけるポリイミド膜について、配向膜塗布・焼成後に、ポジレジスト(東京応化OFPR−800)を約2μm厚となるようスピンコートした。その後、80℃、30分間の前乾燥を行った後、1ゲートラインおきに透過・遮光が繰り返されるストライプ状のマスクパターンを用いて、UV(λ=365nm)にて16秒間露光した。その後、有機系現像液(ジプレー社製MFCD−26)を用いて現像し、流水洗浄を3分間行った後、100℃、10分間の乾燥を行うことで、1ゲートライン毎にレジストが存在する部分と存在しない部分とが繰り返されるレジスト膜パターンを得た。
【0130】
次いで、こうして得られた基板上に実施例1と同様のラビング処理を施すことでレジスト膜が存在しない部分のみに一軸配向規制力を付与した。
【0131】
次いで、剥離液(ナガセ産業社製:レジストストリップN−320)を用いレジスト膜パターンを剥離した後、流水洗浄し基板を乾燥させた。こうすることで、基板面内に一軸配向規制力が存在しない部分と存在する部分との2領域を作り込んだ。
【0132】
こうして得られた液晶パネルP3の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、奇数行においては全画素で一方向に揃った層方向に揃っており、偶数行においては全画素で奇数行とは異なる方向に揃った層方向に揃った状態が得られていた。尚、このときの層の方向は奇数行ではゲート線から約20度反時計回りに傾いた方向を向いており、偶数行ではゲート線から約24°時計回りに傾いた方向に層が形成されていた。
【0133】
更に詳細に室温にて偏光顕微鏡観測したところ、負極性のオフセット電圧を印加しながら冷却した奇数行に位置する画素におけるTFTアレイ側から見た液晶分子配向方向は、電圧無印加状態において反時計回りに2°ソース線から傾いた方向に配向しており、正極性のオフセット電圧を印加しながら冷却した偶数行に位置する画素における液晶分子配向方向も同様に、電圧無印加状態において反時計回りに2°ソース線から傾いた方向に配向していることが確認できた。
【0134】
次に、実施例2と同様に液晶パネルP3を実際にライン反転駆動して動画質の評価を行った。
【0135】
その結果、キレの良い良好な動画質が得られていることが確認できた。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で5であった。
【0136】
更に、このパネルでは実用上十分な視野角特性を有していることを確認した。
【0137】
次いで、液晶パネルP3のコントラスト比を測定した。その結果、コントラストは150であった。
(実施例4)
実施例3で述べたパネルP3とはTFTアレイと対向する側の基板に施す一軸配向処理の手法を変えた液晶パネルP4を得た。このP4の一軸配向処理は以下のような手順で行った。
【0138】
先ず、TFTアレイ側基板およびTFTアレイと対向する側の基板の両方に対し、実施例2で述べたパネルP2と同じ向きにラビング処理を行った。その後、TFTアレイと対向する側の基板に対して、偶数ラインに相当する部分には光が当たらないようマスクで覆った上で、奇数ラインに相当する部分にのみ低圧水銀ランプを用いて紫外線照射を行った。このときの紫外線照射エネルギーは波長254nmにおける照射エネルギーが9mJ/cm2 とした。
【0139】
こうして得られた液晶パネルP4の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、液晶パネルP1及びP2の配向状態とほぼ同様の配向状態であることが確認できた。又、液晶分子配向方向もP1及びP2とほぼ同様の方向に配向していた。
【0140】
次に、実施例1と同様に液晶パネルP4を実際にライン反転駆動して動画質の評価を行った。
【0141】
その結果、キレの良い良好な動画質が得られていることが確認できた。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で5であった。
【0142】
更に、このパネルでは実用上十分な視野角特性を有していることを確認した。
【0143】
次いで、液晶パネルP4のコントラスト比を測定した。その結果、コントラストは70であった。
(実施例5)
実施例4で述べたパネルP4とは紫外線照射条件のみが異なる5種類のパネルP5A、P5B、P5C、P5D、P5Eを得た。このときの光照射条件は下表のようにした。
【0144】
表1
このときのコントラストの値を測定した。結果を下表に示す。
【0145】
表2
このように光照射条件を強くする程高いコントラスト値を示す結果を得た。
【0146】
更に、これらのパネルでは実用上十分な視野角特性を有していることを確認した。
【0147】
尚、P5Eの分子配向方向及び層の形成方向は例3で示したP3パネルと全く同じ方向を向いていた。即ち、強い紫外線照射によって実質的にラビング処理の効果が消失したものと考えられる。
(実施例6)
実施例5で示した5パネルとは光照射条件を若干変化させた5種類のパネルP6A、P6B、P6C、P6D、P6Eを得た。このときの光照射処理条件として、先ず、TFTアレイ側基板及びTFTアレイと対向する側の基板の両方に対し、実施例2で述べたパネルP2と同じ向きにラビング処理を行った。その後、TFTアレイと対向する側の基板に対して、先ず全面に低圧水銀ランプを用いて紫外線照射を行った。このときの紫外線照射エネルギーは波長254nmにおける照射エネルギーが9mJ/cm2 とした。
【0148】
次いで、偶数ラインに相当する部分には光が当たらないようマスクで覆った上で、奇数ラインに相当する部分にのみ低圧水銀ランプを用いて紫外線照射を行った。このときの紫外線照射エネルギーは実施例5で用いたA〜Eのパネルと同様の条件とした。
【0149】
こうして得られたパネルP6A〜Eのコントラスト値を測定した。その結果、例5のA〜Eと本実施例A〜Eでは全く同じコントラスト値を示していた。
【0150】
更に、これらのパネルでは実用上十分な視野角特性を有していることを確認した。
(実施例7)
実施例6で示した5パネルとは光照射条件を若干変化させた5種類のパネルP7A、P7B、P7C、P7D、P7Eを得た。このときの光照射処理条件として、先ずTFTアレイ側基板及びTFTアレイと対向する側の基板の両方に対し、実施例2で述べたパネルP2と同じ向きにラビング処理を行った。その後、TFTアレイ側基板及びTFTアレイと対向する側の基板に対して、先ず全面に低圧水銀ランプを用いて紫外線照射を行った。このときの紫外線照射エネルギーは波長254nmにおける照射エネルギーが9mJ/cm2 とした。
【0151】
次いで、TFTアレイと対向する側の基板に対して、偶数ラインに相当する部分には光が当たらないようマスクで覆った上で、奇数ラインに相当する部分にのみ低圧水銀ランプを用いて紫外線照射を行った。このときの紫外線照射エネルギーは実施例5及び実施例6で用いたA〜Eのパネルと同様の条件とした。
【0152】
こうして得られたパネルP7A〜Eのコントラスト値を測定した。その結果、実施例5及び実施例6のA〜Eと本実施例A〜Eでは全く同じコントラスト値を示していた。
【0153】
更に、これらのパネルでは実用上十分な視野角特性を有していることを確認した。
(実施例8)〜(実施例14)
実施例1〜実施例7とは液晶相転移時に印加する電圧条件のみが異なり、他は全く同一プロセスで作製された液晶パネルP8〜P14を得た(P12〜P14はA〜Eの各5種類)。このときの液晶相転移時に印加する電圧条件として、1ゲートライン(行)毎且つ1ソースライン(列)毎に正負の極性が互い違いになるように絶対値として5Vのオフセット電圧(直流電圧)を印加した。即ち、液晶がCh相からSmC* 相に相転移する際に、
1.奇数行且つ奇数列に位置するサブピクセルに対しては負極性のオフセット電圧、
2.奇数行且つ偶数列に位置するサブピクセルに対しては正極性のオフセット電圧、
3.偶数行且つ奇数列に位置するサブピクセルに対しては正極性のオフセット電圧、
4.偶数行且つ偶数列に位置するサブピクセルに対しては負極性のオフセット電圧、
をそれぞれ印加して液晶パネルP8〜14を作製した。このときの層構造の様子を図8に模式的に示す。図8における斜線が層の方向を模式的に表している。
こうして得られた液晶パネルP8〜14の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列においては全画素で一方向に揃った層方向に揃っており、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列においても全画素で異なる方向に揃った層方向に揃った状態が得られていた。
【0154】
これらのパネルを用いて、実施例1〜実施例7と同様の実験を行った。
【0155】
このときのパネル駆動法は本明細書中で述べたように1フレームを前半後半の2フィールドに分割し、液晶層に印加する電圧として、
1.前半フィールドではパネルの奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列のサブピクセルに対しては正極性、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列のサブピクセルに対しては負極性の電圧を印加して、
2.後半フィールドではパネルの奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列のサブピクセルに対しては負極性、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列のサブピクセルに対しては正極性の電圧を印加する、
という所謂ドット反転駆動によって駆動した。尚、コンピュータ側出力のピクチャーレートやTFTパネル側の駆動周波数は実施例1〜実施例7と同じものとした。
【0156】
その結果、全てのパネルにおいてキレの良い良好な動画質が得られていることが確認できた。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で全員が5と評価した。
【0157】
次いで、コントラスト値を評価した。その結果、P8〜P14それぞれのパネルのコントラスト値は、実施例1〜実施例7で示したそれぞれの類似のプロセスにて作製されたパネルP1〜P7と同じ値を示していた。
【0158】
更に、これらのパネルでは実用上十分な視野角特性を有していることを確認した。
(実施例15)〜(実施例21)
実施例8〜14で述べたパネルP8〜14とは液晶相転移時に印加する電圧条件のみが異なり、他は全く同一プロセスで作製された液晶パネルP15〜21を得た(P19〜P21はA〜Eの各5種類)。
【0159】
このときの液晶相転移時に印加する電圧条件として、RGBを一まとまりとして1画素として考えたとき、縦横に隣接する画素に対して印加する電圧の正負の極性が互い違いになるように絶対値として5Vのオフセット電圧(直流電圧)を印加した。即ち、液晶がCh相からSmC* 相に相転移する際に、
5.奇数行且つ奇数列に位置する画素に対しては負極性のオフセット電圧、
6.奇数行且つ偶数列に位置する画素に対しては正極性のオフセット電圧、
7.偶数行且つ奇数列に位置する画素に対しては正極性のオフセット電圧、
8.偶数行且つ偶数列に位置する画素に対しては負極性のオフセット電圧、
をそれぞれ印加して液晶パネルP15〜21を作製した。このときの層構造の様子を図9に模式的に示す。図9における斜線が層の方向を模式的に表している。
【0160】
こうして得られた液晶パネルP15〜21の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列においては全画素で一方向に揃った層方向に揃っており、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列においても全画素で異なる方向に揃った層方向に揃った状態が得られていた。
【0161】
次に、液晶パネルP15〜21を実際に駆動して動画質の評価を行った。尚、このとき駆動法は本明細書中で述べたように1フレームを前半後半の2フィールドに分割し、液晶層に印加する電圧として、
3.前半フィールドではパネルの奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列の画素に対しては正極性、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列の画素に対しては負極性の電圧を印加して、
4.後半フィールドではパネルの奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列の画素に対しては負極性、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列の画素に対しては正極性の電圧を印加する、
という3サブピクセルを一まとまりとしたブロックごとに駆動するようなブロック毎に反転する駆動によって駆動した。尚、コンピュータ側出力のピクチャーレートやTFTパネル側の駆動周波数は実施例1〜実施例14と同じものとした。
【0162】
その結果、全てのパネルにおいてキレの良い良好な動画質が得られていることが確認できた。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で全員が5と評価した。
【0163】
次いで、コントラスト値を評価した。その結果、P15〜P21それぞれのパネルのコントラスト値は、実施例1〜実施例7及び実施例8〜実施例14で示したそれぞれの類似のプロセスにて作製されたパネルP1〜P7及びP8〜P14と同じ値を示していた。
【0164】
更に、これらのパネルでは実用上十分な視野角特性を有していることを確認した。
【0165】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、1パネル内に複数の層方向を形成するカイラルスメクチック液晶を有するアクティブマトリクス型液晶パネルを作製するに当たり、上下基板の配向処理方向を完全な平行或は反平行とはせず、数度のクロス角を付けておくことと、少なくとも一方の基板において制御する領域に応じた配向規制力に制御されるよう配向規制力分布を持たせておくことによって、広視野角特性と高コントラスト比とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】アクティブマトリクス型液晶パネルの構造を示す断面図である。
【図2】アクティブマトリクス型液晶パネルの構造を示す回路図である。
【図3】アクティブマトリクス型液晶パネルの構造を示す等価回路図である。
【図4】アクティブマトリクス型液晶パネルの駆動方法を示すタイミングチャート図である。
【図5】カイラルスメクチック液晶の電圧−透過率特性の一例を示す図(その1)である。
【図6】カイラルスメクチック液晶の電圧−透過率特性の一例を示す図(その2)である。
【図7】実施例1〜7の層構造を示す図である。
【図8】実施例8〜14の層構造を示す図である。
【図9】実施例15〜21の層構造を示す図である。
【符号の説明】
1a,1b ガラス基板(基板)
2 カイラルスメクチック液晶
3a 共通電極(電極)
3b 画素電極(電極)
4 TFT(アクティブ素子)
P 液晶パネル(液晶素子)
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶を利用して種々の表示を行うカイラルスメクチック液晶素子とその駆動方法及び製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ネマチック液晶を利用したアクティブマトリクス型の液晶パネルが種々提案されている。以下、この液晶パネルについて説明する。
【0003】
従来、1つ1つの画素にトランジスタのようなアクティブ素子を配置したアクティブマトリクス型液晶パネルとしてはネマチック液晶を用いたものがあり、様々なモードで使用されている。
【0004】
例えば、広汎に用いられている代表的なモードとしてツイステッドネマチック(Twisted Nematic)モードがあり、該モードについては、「エム・シャット(M.Schadt)とダブリュー・ヘルフリッヒ(W.Helfrich)著、APPlied Physics Letters、第18巻、第4号(1971年2月15日発行)、第127頁から128頁」に開示されている。
【0005】
又、最近では、従来型液晶パネルの欠点である視野角特性を改善するものとして、横方向電界を利用したインプレインスイッチング(In−Plain Switching)モードや、垂直配向(Vertical Alignment)モードが発表されている。
【0006】
ところで、上述したネマチック液晶を用いた場合には(何れのモードでも)応答速度が遅いという問題があり、近年は、そのような問題点のないカイラルスメクチック液晶を用いた液晶パネルが注目されている。例えば、「ショートピッチタイプの強誘電性液晶」、「高分子安定型強誘電性液晶」、「無閾反強誘電性液晶」等が提案されており、未だ実用化には至っていないものの、何れもサブミリ秒以下の高速応答性が実現できると報告されている。
【0007】
次に、このようなカイラルスメクチック液晶を用いた液晶パネルの一例について説明する。
【0008】
例えば、特開2000−338464号にて開示されている液晶パネルは、カイラルスメクチック液晶として、高温側より、等方性液体相(ISO.)−コレステリック相(Ch)−カイラルスメクチックC相(SmC* )、又は等方性液体相(ISO.)−カイラルスメクチックC相(SmC* )の相転移系列を示す液晶を、仮想コーンのエッジより内側の位置で安定化するように調整して用いており、斯かる液晶を一対の基板間に注入した後の冷却過程において(正確には、Ch−SmC* 相転移の際、又はISO−SmC* 相転移の際に)液晶2にDC電圧を印加する等して層方向を一方向に均一化させている。
【0009】
この液晶パネルは、応答速度が速いという効果を有する他、階調制御が可能であって、動画質に優れ、高輝度であって量産性に優れるという特徴を有している。又、この液晶パネルは、自発分極値を小さくでき、アクティブ素子とのマッチングが良いものとなっている。
【0010】
更に、特開2000−275684号では所定の領域ごとに前記層の方向を変化させることによって、優れた動画質という特徴を維持したまま、より一層の視野角の向上が図られている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した特開2000−275684号で述べた液晶パネル(以下、先願1と記載)においては領域ごとに層の方向を変化させることが特徴としているが、本発明者等の詳細な検討によると、用いる液晶材料によっては素子全面を同じ層方向に制御したサンプルAと、先願1に記載に従って領域ごとに層の方向を変化させたサンプルBとを比較したとき、サンプルBのコントラスト比がサンプルAに対して小さい値を取ってしまう場合があることが分かった。即ち、先願1で述べた液晶パネルは、視野角特性については極めて良好な特性を示すものの、用いる液晶材料によってはコントラスト比が小さくなってしまうことから、視野角とコントラストとを両立させるためには用いる液晶材料の選択肢が可成り限られたものとなっていた。
【0012】
そこで、本発明は、先願1の液晶素子に対して、セル構成を工夫することにより安価で簡便に前記広視野角特性と高コントラスト比とを両立できる液晶素子を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、カイラルスメクチック液晶と、該液晶に電圧を印加する一対の電極と、該液晶を挟持して対向すると共に該液晶を配向させるための一軸性配向処理が施された一対の基板と、少なくとも一方の基板側に偏光板とを備えた液晶素子であって、電圧無印加時では、該液晶の平均分子軸が単安定化された第1の状態を示し、第1の極性の電圧印加時には、該液晶の平均分子軸は印加電圧の大きさに応じた角度で該単安定化された位置から一方の側にチルトし、該第1の極性とは逆極性の第2の極性の電圧印加時には、該液晶の平均分子軸は該単安定化された位置から第1の極性の電圧を印加したときとは逆側にチルトし、第1の極性の電圧印加時と第2の極性の電圧印加時の液晶の平均分子軸の該第1の状態における単安定化された位置を基準とした最大チルト状態のチルトの角度をそれぞれβ1、β2としたとき、
β1>β2≧0なる領域D1と
0≦β1<β2なる領域D2と
が存在することと、
前記両基板に施された一軸性配向処理の方向が完全な平行若しくは完全な反平行でない(所謂クロスラビング処理を施している)ことと、少なくとも何れか一方の基板において、前記D1領域とD2領域における平均的な配向規制力をそれぞれA1、A2としたとき、それらが異なる値を有していることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図6を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
先ず、本実施の形態にて製造され駆動される液晶素子の全体構成について図1を参照して説明する。
【0016】
本実施の形態に係る液晶素子は、図1に符号Pで示すように、所定間隙を開けた状態に配置された一対の基板1a,1bと、これら一対の基板1a,1bの間隙に配置されたカイラルスメクチック液晶2と、複数の画素を構成すると共に該カイラルスメクチック液晶2を挟み込むように配置された一対の電極3a,3bと、これらの一対の電極の何れか一方3bに接続された状態で各画素毎に配置された複数のアクティブ素子4と、を備えており、前記一対の電極3a,3bを介して前記カイラルスメクチック液晶2に電圧を印加することにより駆動されるように構成されている。
【0017】
尚、カイラルスメクチック液晶2としては、高温側より、等方性液体相(ISO.)−コレステリック相(Ch)−カイラルスメクチックC相(SmC* )、又は、等方性液体相(ISO.)−カイラルスメクチックC相(SmC* )の相転移系列を示すものを挙げることができる。尚、斯かる液晶2は、電圧を印加していない状態で液晶分子が仮想コーンのエッジ、或は仮想コーンの内側の位置で安定化する状態で用いると良い。
【0018】
次に、本実施の形態に係る液晶素子の製造方法について説明する。
【0019】
上述した液晶素子Pを製造するに際しては、一対の基板の両側に一軸配向処理を施す工程と、所定間隙を開けた状態に一対の基板1a,1bを配置する工程と、これら一対の基板1a,1bの間隙にカイラルスメクチック液晶2を配置する工程と、該カイラルスメクチック液晶2を挟み込むと共に複数の画素を構成するように一対の電極3a,3bを配置する工程と、アクティブ素子4を各画素毎に一方の電極3bに接続した状態に配置する工程と、を適切な順序で実施する。
【0020】
尚、このとき一対の基板を貼り合わせる際に、完全に平行(又は反平行)とはならず、所定の角度を有するように上下基板の一軸性配向処理の方向を規定する。更に、これら一対の基板のうち何れか一方の基板には、配向規制力に分布を持たせるようにする。この配向規制力の分布の持たせ方は、
・フォトレジストなどを用いてパターニングした後、一軸性配向処理を施すことで、一軸性配向処理を施す部分と施さない部分との2領域を作りこむ。或は予め全面に一軸性配向処理を施した後に前記プロセスにて一軸配向処理を再度繰り返し行う部分と行わない部分とに分けることにより、配向規制力の強弱を作りこむ。
【0021】
・一旦基板全体に一軸性配向処理を施した後、部分的に紫外線を照射することで光照射した部分の一軸性配向規制力を消失又は減衰させる。
等、種々の方法が考えられるが、何れの方法を用いても良い。
【0022】
次に、液晶素子Pの詳細構造について説明する。
【0023】
先ず、カイラルスメクチック液晶2について説明する。
【0024】
本実施の形態にて用いるカイラルスメクチック液晶2は、上述のような相転移系列のもの、即ち、高温側より、等方性液体相(ISO.)−コレステリック相(Ch)−カイラルスメクチックC相(SmC* )、又は等方性液体相(ISO.)−カイラルスメクチックC相(SmC* )の相転移系列を示すものが好ましいが、具体的には、次の(1)〜(4)に示す化合物を挙げることができる。
(1)
【0025】
【化1】
R1,R2:炭素原子数が1〜20である置換基を有していても良い直鎖又は分岐状のアルキル基
X1,X2:単結合、O、COO、OOC
Y1,Y2,Y3,Y4:H又はF
n:0又は1
(2)
【0026】
【化2】
R1,R2:炭素原子数が1〜20である置換基を有していても良い直鎖又は分岐状のアルキル基
X1,X2:単結合、O、COO、OOC
Y1,Y2,Y3,Y4:H又はF
(3)
【0027】
【化3】
R1,R2:炭素原子数が1〜20である置換基を有していても良い直鎖又は分岐状のアルキル基
X1,X2:単結合、O、COO、OOC
Y1,Y2,Y3,Y4:H又はF
(4)
【0028】
【化4】
R1,R2:炭素原子数が1〜20である置換基を有していても良い直鎖又は分岐状のアルキル基
X1,X2:単結合、O、COO、OOC
Y1,Y2,Y3,Y4:H又はF
ところで、本実施の形態では、カイラルスメクチック液晶2については、その液晶材料の組成を調整し、更に液晶材料の処理や素子構成、例えば配向制御膜6a,6bの材料、処理条件等を適宜設定することにより、
▲1▼駆動電圧が印加されていない場合には、該液晶の平均分子軸(液晶分子)が単安定化されている配向状態を示し、
▲2▼第1の極性(例えば正極性)の駆動電圧が印加されて駆動される場合には、液晶分子の平均分子軸が駆動電圧の大きさに応じた角度で前記単安定化された位置から一方の側にチルトし、
▲3▼他方の極性(前記第1の極性に対する逆極性をいう。例えば負極性。以下、同じ)の電圧が印加されている場合には、液晶分子の平均分子軸が駆動電圧の大きさに応じた角度で前記単安定化された位置から他方の側(即ち、前記第1の極性の電圧を印加したときにチルトする側とは反対の側)にチルトする、ような特性を示すようにすることができる。
【0029】
つまり、本実施の形態に用いる液晶2は、例えば図5に示す特性のものであって、カイラルスメクチック液晶本来のメモリ性(双安定性)が消失されたものであって、チルト角の大きさを印加電圧によって連続的に制御することができ、それに伴って液晶素子の光量も連続的に変化させることができ、階調表示を可能とするものである。この場合、前記第1の極性の駆動電圧を印加することによって最大チルト状態とした場合におけるチルト角は、前記他の極性の電圧を印加することによって最大チルト状態とした場合におけるチルト角と異ならせると良い。例えば、該他の極性の電圧を印加した場合、該電圧の大きさに拘らず、液晶の平均分子軸が殆どチルトしないような特性にしても良い。以下、このような特性を有する領域をD1領域と呼ぶ。
【0030】
一方、前記処理条件を変えることにより、図5に示す特性に対してy軸に対して線対称な特性、即ち図6に示すように前記逆(例えば負)の極性の電圧を印加したときには大きく透過率が上昇し、前記第1の極性(例えば正極性)の電圧を印加したときには逆極性(負)の電圧を印加したときとは異なった小さなチルト角を取らせることができる。又、このとき第1の極性(例えば正極性)の電圧を印加したときに、液晶の平均分子軸が殆どチルトしないような特性にしても良い。以下、このような特性を有する領域をD2領域と呼ぶ。
【0031】
次に、カイラルスメクチック液晶2以外の各構成部材等について説明する。
【0032】
上述した基板1a,1bには、ガラスやプラスチック等の透明性の高い材料を用いれば良い。
【0033】
又、電極3a,3bには、In2 O3 やITO(インジウム・ティン・オキサイド)等の材料を用いれば良く、これらの電極3a,3bはそれぞれの基板1a,1bに形成すると良い。尚、アクティブ素子4を接続する方の電極3bは、ドット状にマトリクス状に配置し、他方の電極3aは、基板のほぼ全面(或は特定の領域)に形成すると良い。更に、アクティブ素子4としては、TFTやMIM(Metal−Insulator−Metal)等を用いれば良い。
【0034】
又更に、各電極3a,3bの表面には、これらの電極間のショートを防止するための絶緑膜を形成すると良く(図1には、一方の電極3bを覆う絶縁膜5bのみ図示)、斯かる絶緑膜は、SiO2 、TiO2 、Ta2 O5 等にて形成すれば良い。
【0035】
又、カイラルスメクチック液晶2に接する位置には、その配向状態を制御するために一軸配向処理を施した配向制御膜6a,6bを配置すると良い。斯かる配光制御膜6a,6bとしては、
*ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール等の有機材料から成る溶液を塗布して膜を形成し、該膜の表面にラビング処理を施したものや、
*SiO等の酸化物や窒化物から成る無機材料を基板1a,1bに斜め方向から所定の角度で蒸着させて形成した斜方蒸着膜、
*紫外線照射等によって一軸配向規制力を発生し得る光配向膜を用いたもの、を挙げることができる。尚、この配向制御膜6a,6bの材質や一軸配向処理の条件等により、液晶分子のプレチルト角(即ち、配向制御膜6a,6bの界面近傍において液晶分子が配向制御膜6a,6bに対してなす角度)が調整される。
【0036】
このような配向制御膜6a,6bは、カイラルスメクチック液晶2の両側に配置してそれらの両方の基板に対して一軸配向処理を施せば良く、その場合における一軸配向処理方向(特にラビング方向)の関係は、用いる液晶材料を考慮して、45°以下の範囲でクロスする関係に設定すれば良い。このとき、本発明の液晶素子では、厳密な意味でのアンチパラレル(両一軸配向処理方向が平行且つ逆方向)及びパラレル(両一軸配向処理方向が平行且つ同方向)の何れかの関係には設定しない。
【0037】
尚、45°以下の範囲でクロスする関係とは、2つのベクトル(一軸配向処理方向を示すベクトル)が45°以下の範囲内でクロスする場合であって、それぞれのベクトル方向が同方向(正確には、45°以下の角度ズレを有する)である場合や、それぞれのベクトル方向が逆方向である場合の両方を挙げることができる。そして、互いのベクトルの交差角度(狭い方の交差角度)の値が45°以下で且つ0°に近いような場合は、それぞれのベクトルの関係は広義のアンチパラレル乃至パラレルの関係と称しても良い。
【0038】
更に、基板1a,1bの間隙は、例えばシリカビーズ等から成るスペーサー(不図示)を配置する、若しくは隔壁(リブ)構造を形成することによって所定の間隙寸法を規定するようにしても良い。ここで言う隔壁(リブ)とは、例えばアクリル樹脂を、高さが略基板1a,1bの間隙寸法とし、幅1〜500μm、長さは表示素子のパネルサイズを最大とした任意のサイズに適宜パターニングした構造体のことを指す。尚、間隙寸法は、液晶材料を考慮して最適範囲になるように調整すれば良いが、均一な一軸配向性を達成させ、且つ、電圧が印加されていない状態での液晶分子の平均分子軸を配向処理軸Rの平均方向の軸と実質的に一致させるために、0.3〜10μmの範囲に設定することが好ましい。
【0039】
又更に、基板1a,1bの間隙にエポキシ樹脂等から成る接着粒子(不図示)を分散配置して、両基板1a,1bの接着性や、液晶素子Pの耐衝撃性を向上させても良い。
【0040】
更に、液晶素子Pは、透過型としても良く、反射型としても良い。尚、透過型の場合には両方の基板1a,1bを透明にする必要があり、反射型の場合には、基板1a,1bの一方に光を反射させる機能を付与する必要がある。ここで、光を反射させる機能を付与する方法としては、
*反射板や反射膜を、基板とは別体に設ける方法や、
*基板自体を反射部材で形成する方法や、
等を挙げることができる。ここで、透過型の液晶素子の場合には両方の基板に偏光板を(それらの偏光軸が互いに直交するように)配置すれば良く、反射型の液晶素子の場合には少なくとも一方の基板に偏光板を設ければ良い。
【0041】
ところで、上述した液晶素子Pを用いてカラー表示を行うようにしても良い。このようなカラー表示を行う方法としては、
*各画素にカラーフィルターを配置する方法や、
*そのようなカラーフィルターを用いず、液晶素子に対して異なる色の光を順次照射すると共に該光の照射に同期させて画像を変更する方法(所謂フィールドシーケンシャル方式)、
を挙げることができる。
【0042】
又、上述した電極の何れか一方3bには、駆動回路(図2の符号21参照)を接続して階調信号を入力し、該信号によってチルト角度(即ち、液晶の平均分子軸の単安定位置からのチルト角度)の大きさを制御して光透過率を制御し、それによって階調表示を行うようにすると良い。
【0043】
次に、本実施の形態に係る液晶素子Pの詳細構成の一例について、図1及び図2を参照して説明する。
【0044】
図1に示す液晶素子Pは、所定間隙を開けた状態に配置した一対のガラス基板1a,1bを備えており、一方のガラス基板1aの全面には、ほぼ均一な厚みの共通電極3aが形成され、共通電極3aの表面には配向制御膜6aが形成されている。
【0045】
又、他方のガラス基板1bの側には、図2に示すように、ゲート線G1 ,G2 ,…が図示X方向に多数配置され、ゲート線G1 ,G2 ,…とは絶縁された状態のソース線S1 ,S2 ,…が図示Y方向に多数配置されている。そして、これらのゲート線G1 ,G2 ,…及びソース線S1 ,S2 ,…の各交点の画素には、アクティブ素子としての薄膜トランジスタ(アモルファスSiTFT)4や、ITO膜等の透明導電膜から成る画素電極3b及び保持容量電極7等が配置されている。
【0046】
このうち、アモルファスSiTFT4は、図1に示すように、ゲート電極10と、窒化シリコン(SiNx )から成る絶縁膜(ゲート絶緑膜)5bと、半導体層であるa−Si層11やn+ a−Si層12,13と、ソース電極14と、ドレイン電極15と、チャネルを保護するチャネル保護膜16と、によって構成されている。即ち、ガラス基板1bには各画素毎にゲート電極10が形成され、該ゲート電極10の表面は絶縁膜5bにて覆われ、絶縁膜5bの表面であってゲート電極10を形成した位置にはa−Si層11が形成されている。
【0047】
又、このa−Si層11の表面には、互いに離間するようにn+ a−Si層12,13が形成されており、各n+ a−Si層12,13にはソース電極14やドレイン電極15が互いに離間した状態に形成されている。更に、これらのa−Si層11や電極14,15を覆うようにチャネル保護膜16が形成されている。
【0048】
そして、TFT4のゲート電極10は上述したゲート線G1 ,G2 ,…を介して走査信号ドライバ20に接続され、TFT4のソース電極14はソース線S1 ,S2 ,…を介して情報信号ドライバ21に接続され、TFT4のドレイン電極15は画素電極3bに接続されている。
【0049】
ところで、上述した保持容量電極7はガラス基板1bの表面に形成されており、上述した絶縁膜5bは、この保持容量電極7及びガラス基板1bを覆う位置まで形成され、上述したソース電極14や画素電極3bはこの絶縁膜5bの表面に形成されている。これにより、保持容量電極7と画素電極3bとは、絶縁膜5bを挟んだ状態に配置されることとなり、これらによって、液晶2と並列の形で設けられた保持容量Cs が構成されることとなる(図3参照)。
【0050】
又、図1に示すように、上述したTFT4や画素電極3bの表面には配向制御膜6bが形成されており、その表面には一軸配向処理(ラビング処理)が施されている。
【0051】
更に、これらのガラス基板1a,1bの間隙であって、画素電極3bと共通電極3aとの間には、自発分極を有するカイラルスメクチック液晶2が配置されていて、液晶容量Clcが構成されることとなる(図3参照)。
【0052】
又、このような液晶素子Pの両側には、互いに偏光軸が直交した関係にある一対の偏光板(不図示)が配置されている。
【0053】
尚、図1に示す液晶素子PではアモルファスSiTFTを用いているが、勿論これに限る必要はなく、多結晶Si(P−Si)TFTや単結晶Si(C−Si)TFTを用いても良い。
【0054】
又、上述のアクティブ素子を備えた素子において、例えば図8に示すように、1ライン毎、又は画素毎、又は複数の画素を1つの単位としたブロック毎に、上述した電気光学特性の異なるドメインD1、D2を形成している。即ち、隣り合ったライン或は画素又はブロックにおける層方向を互いに異なるようにする。
【0055】
こうした層方向の異なるドメインD1、D2を形成する手段としては、
1.Ch−SmC* 相転移の際、又はI相−SmC* 相転移の際に、例えばD1に負、D2に正のDC電圧とする等、ドメインによって印加するDC電圧の極性を変化させる。
【0056】
2.D1、D2ドメイン部分に異なる配向膜を用いる。
【0057】
3.D1、D2ドメイン部分に対する配向膜の処理法(ラビング強度、UV照射等の条件)を変える。
等、様々な方法が考えられるが、何れの手段を用いても良い。
【0058】
一方、こうして得られた液晶素子を線順次駆動する際には、例えば偶数フィールドではパネル全面に第1の極性の電界が印加され、それに続く奇数フィールドではパネル全面に第2の極性の電界が印加されるようなフレーム反転駆動によって駆動することができる。但し、このとき偶数フィールド(第1の極性)では領域D1において液晶分子は大きくチルトし、領域D2では液晶分子は小さくチルトする。逆に奇数フィールド(第2の極性)では領域D1において液晶分子は小さくチルトし、領域D2では液晶分子は大きくチルトする。
【0059】
つまり、偶数・奇数フィールド何れにおいてもパネル表示は、領域D1或は領域D2の何れかが大きくチルトするため明表示となってしまい、CRTと同様なインパルス表示することにはならない、所謂ホールド表示になってしまうため、良好な動画質を得ることができない。
【0060】
そこで、本発明では、D1とD2に対してそれぞれ正の電界と負の電界とが交互に印加されるようにそれぞれの映像信号線に信号を供給し、パネルに電界を与えることで、上記問題を解決することができる。つまり、例えば偶数フィールドでは領域D1に第1の極性の電界が印加され、領域D2に第2の極性の電界が印加され、それに続く奇数フィールドでは領域D1に第2の極性の電界が印加され領域D2に第1の極性の電界が印加されるとする。
このとき、偶数フィールドでは領域D1に対して第1の極性の電界が印加されているため、液晶分子は大きくチルトし、領域D2に対して第2の極性の電界が印加されているため、ここでも液晶分子は大きくチルトする。逆に奇数フィールドでは領域D1に対して第2の極性の電界が印加されているため液晶分子は小さくチルトし、領域D2に対して第1の極性の電界が印加されているため、ここでも液晶分子は小さくチルトする。つまり、偶数フィールドにおいて高輝度表示で、奇数フィールドにおいて低輝度表示されることから、当該駆動を用いることにより良好な視野角特性を実現しつつ良好な動画質を得ることが可能となる。
【0061】
尚、上述したように、ここで述べた低輝度表示の際には透過率がゼロの状態、即ち奇数フィールドにおいて何も表示されないような特性にしても良い。
【0062】
次に、上述した液晶素子Pの駆動方法(通常の画像表示を行う場合の駆動方法)の一例について、1つの画素に着目して詳細に説明する。尚、層方向が異なる隣接ライン(又は画素或はブロック)についてはソース電圧の極性が逆になっているだけで、他は同じと考えて良い。
【0063】
上述した液晶素子Pにおいては、走査信号ドライバ20から各ゲート線G1 ,G2 ,…にはゲート電圧が線順次に印加され、TFT4はゲート電圧が印加されることによってオン状態となる。
【0064】
一方、ゲート電圧の印加に同期して、情報信号ドライバ21からソース線S1 ,S2 ,…にはソース電圧(各画素に書き込む情報に応じた情報信号電圧)が印加される。従って、TFT4がオン状態にある画素では、ソース電圧がTFT4及び画素電極3bを介して液晶2に印加され、液晶2のスイッチングが画素単位で行われる。
【0065】
そして、このような駆動を一定期間(フレーム期間)毎に繰り返し、画像の書き換えを行うようになっている。
【0066】
尚、図4に示すように、1つのフレーム期間F0 を複数のフィールド期間F1 ,F2 ,…に分割し、各フィールド期間F1 ,F2 ,…でそれぞれ画像書き換えを行うようにしても良い。以下、その駆動方法について説明する。
【0067】
ここで、図4は各フレーム期間F0 を2つのフィールド期間F1 ,F2 に分割した例を示す図であり、同図(a)は、或る1本のゲート線Gi にゲート電圧Vg が印加される様子を示す図、同図(b)は、或る1本のソース線Sj にソース電圧Vsが印加される様子を示す図、同図(c)は、これらゲート線Gi 及びソース線Sj の交差部の画素(即ち、液晶2)に電圧Vpix が印加される様子を示す図、同図(d)は、当該画素における透過光量の変化を示す図である。尚、液晶2には、図5に示すような電圧−透過率特性のものを用いている。
【0068】
今、或る1本のゲート線Gi に一定期間(選択期間Ton)だけゲート電圧Vg が印加され(同図(a)参照)、或る1本のソース線Sj には、ゲート電圧Vg の印加に同期した選択期間Tonに、共通電極3aの電位Vc を基準電位としたソース電圧Vs(=+Vx )が印加される(同図(b)参照)。すると、当該画素のTFT4はゲート電圧Vg の印加によってオンされ、ソース電圧Vx がTFT4及び画素電極3bを介して印加されて液晶容量Clc及び保持容量Cs の充電がなされる。
【0069】
ところで、選択期間Ton以外の非選択期間Toff には、ゲート電圧Vg は他のゲート線G1 ,G2 ,…に印加されていて同図(a)に示すゲート線Gi には印加されず(ゲート電圧Vg が印加されていないだけであって、オフ電圧は印加されている)、当該画素のTFT4はオフとなる。従って、液晶容量Clc及び保持容量Cs は、この間、充電された電荷を保持することとなる(同図(c)参照)。これにより、1フィールド期間F1 を通じて液晶2には電圧Vpix (=+Vx )が印加され続けることとなり、ほぼ同じ透過光量Tx が維持されることとなる(同図(d)参照)。
【0070】
ここで、選択期間Tonが比較的短い場合には、液晶分子反転が完了せず、液晶容量Clc及び保持容量Cs への充電及び液晶2のスイッチングは非選択期間Toff に行われる。斯かる場合は、自発分極の反転によって充電された電荷が相殺され、液晶2に印加される電圧Vpix は同図(c)のように+Vx よりVd だけ小さい値を取る。
【0071】
次のフィールド期間F2 においては、上述したゲート線Gi には再びゲート電圧Vg が印加され(同図(a)参照)、これと同期してソース線Sj には、先のものとは逆極性のソース電圧−Vx が印加される(同図(b)参照)。これによって、ソース電圧−Vx が液晶容量Clc及び保持容量Cs に充電されると共に、非選択期間Toff においてはその電荷が保持される(同図(c)参照)。これにより、1フィールド期間F2 を通じて液晶2には電圧Vpix (=−Vx )が印加され続けることとなり、ほぼ同じ透過光量Ty が維持されることとなる(同図(d)参照)。
【0072】
ここで、選択期間Tonが比較的短い場合には、液晶分子反転は完了しておらず、液晶容量Clc及び保持容量Cs への充電及び液晶2のスイッチングは非選択期間Toff に行われる。斯かる場合は、自発分極の反転によって充電された電荷が相殺され、液晶2に印加される電圧Vpix は図4(c)のように−Vx よりVd だけ大きい値を取る。
【0073】
ところで、図4に示す駆動方法によれば、各フィールド期間F1 ,F2 単位で印加電圧の大きさに応じて液晶2がスイッチングされ、各フィールド期間F1 ,F2 単位で異なる階調表示状態(透過光量Tx ,Ty )が得られ、フレーム期間F0 の全体でそれらTx ,Ty を平均した透過光量が得られる。
【0074】
尚、液晶2には図5に示す特性のものを用いているため、2番目のフィールド期間F2 における透過光量Ty は、Tx より可成り小さい値若しくはほぼ0レベルであり、フレーム期間全体の透過光量は、上述のような透過光量の平均化によって最初のフィールド期間F1 の透過光量に比べて大きく低下することとなる。従って、実際の駆動においては、フレ−ム期間全体で得たい透過光量(表示画像の階調)に基づいて、最初のフィールド期間F1 の透過光量Tx を(表示諧調よりも高めに)決定し、該透過光量Tx を得るような電圧Vx を印加すれば良い。
【0075】
又、上述のように駆動した場合、奇数フィールド期間(例えばF1 )では正極性の電圧(+Vx )が液晶2に印加され、偶数フィールド期間(例えばF2 )では負極性の電圧(−Vx )が液晶2に印加されることとなるため、液晶2に実際に印加される電圧が時間的に交流化され、液晶2の劣化が防止される。
【0076】
更に、最初のフィールド期間F1 においては高輝度表示を行い、次のフィールド期間F2 では低輝度表示を行うため、時間開口率が50%以下程度となる。従って、斯かる液晶素子で動画像を表示した場合、その画質が良好なものとなる。
【0077】
ところで、コレステリック相からカイラルスメクチックC相へと相転移する相転移過程を詳細に偏光顕微鏡観測したとき、スメクチックA相と酷似した配向状態が観測される場合がある。しかしながら、本発明に使用される素子の本質はSmC*相でスメクチック層の法線方向と一軸配向処理方向とが大きく異なっており、電圧無印加時に安定な分子位置がラビング方向に近い位置にあることである。つまり、こうした関係の層形成方向が実現されている場合には上記スメクチックA相的な液晶相は配向には寄与しないこととなるため、本願においてはこうした材料についてもスメクチックA相を含まない材料と定義する。
【0078】
次に、本実施の形態の効果について説明する。
【0079】
本発明では両基板に施された一軸性配向処理の方向が完全な平行若しくは完全な反平行でない(所謂クロスラビング処理を施している)ことと、何れか一方の基板1に対してはパネルの有効表示領域内においては一様な一軸性配向処理が施されており、該領域の全面がほぼ一様な配向規制力を有していることと、他方の基板2に対しては、前記D1領域とD2領域における平均的な配向規制力をそれぞれA1、A2としたとき、それらが異なる値を有するよう制御することにより、安価で簡便に視野角特性とコントラスト比とを両立できる液晶素子が実現できる。
【0080】
ここで、その効果について先ず前記基板2において領域毎の配向規制力の差が無い状態での場合について説明する。
【0081】
簡単のため、平均的な一軸配向処理方向がソース線に平行となるよう上下基板間で8°程度のクロス角を有するようクロスラビングを施し、上述した広義のアンチパラレルラビング構成となるよう上下基板を配置した場合において、等方相−コレステリック(Ch)相−カイラルスメクチックC(SmC*)相という相系列を有する液晶材料を用いる場合を考える。
【0082】
このとき、コレステリック相において液晶分子は基板界面ではラビング方向を向いて配向しており、バルクではクロスラビングにおいて設定した角度分だけ捩じれた、所謂ツイスト配向状態を形成している。このとき、液晶分子のダイレクタは平均的にはソース線に略平行方向を向いていることになる。
【0083】
次いで、この状態から冷却してSmC*相へと転移させる過程について説明する。通常、コレステリック(Ch)相からカイラルスメクチックC(SmC*)相へと相転移した直後の層構造は分子配向方向が一軸配向処理方向或はコレステリック相における平均分子配向方向と略平行な方向を向いたままで、層の形成方向はおよそカイラルスメクチックC相におけるチルト角(Θ)分だけ傾いた方向に形成される。ここで、層の形成方向は+方向と−方向の2通りが存在する。
【0084】
そこで、本素子を上述したような良好な動画質を示すデバイスとして用いるためには、層の方向を何れか一方に制御し、且つ、それに応じた信号波形を用いて駆動する必要がある。ここでは、この層方向の制御のために、コレステリック(Ch)相からカイラルスメクチックC(SmC*)相へ相転移する温度近傍において弱い直流(例えば−2V程度)の電圧を用いて制御させるものとする。このように負の電圧にて層方向制御した場合におけるカイラルスメクチックC(SmC*)相での電気光学特性は図5に示すようなものとなり、正の電圧印加時において大きく分子がチルトし、負の電圧では小さくチルト若しくは全くチルトしないという特性にすることができる。
【0085】
このとき、カイラルスメクチックC(SmC*)相における液晶分子の配向方向は、液晶材料によってはSmC*相を呈する温度範囲内においてコレステリック(Ch)相における分子配向方向と略平行方向を維持するものもあるが、多くの液晶材料ではカイラルスメクチックC(SmC*)相において温度が変化するに連れCh相における分子配向方向から数度程度のずれを生じてしまう。このCh相における分子配向方向からのずれは以下のような原因で発生する。
【0086】
先ず、コレステリック(Ch)相からカイラルスメクチックC(SmC*)相へと相転移した直後では、上述したように分子配向方向は平均的な一軸配向処理方向或はコレステリック相における平均分子配向方向と略平行な方向を向いている。そして、およそカイラルスメクチックC 相におけるチルト角(Θ)分だけ傾いた方向にスメクチック層が形成される。
【0087】
次いで、更に温度を下げていった時に、多くの液晶材料ではチルト角(Θ)に温度依存性が存在するために、層法線方向からの液晶分子の開き角が温度と共に変化する。即ち、温度を変化させることにより、電圧無印加時の液晶分子配向方向が変化する結果、Ch相における分子配向方向からのずれが生じてしまうことになる。このずれ角は、上記説明から分かるように、SmC*相内でのチルト角(Θ)の温度依存性が大きい程ずれ量が大きくなっている。尚、このときの液晶分子の平均的な一軸配向処理方向からずれる方向は、例えばスメクチック層の層法線方向が平均的な一軸配向処理方向から反時計回りの位置に存在する場合には、時計回りの方向にずれることになる。逆に層法線方向が平均的な一軸配向処理方向から時計回りの位置に存在する場合には、反時計回りの方向にずれることになる。
【0088】
本発明の液晶素子は、上述したようにパネル内にD1とD2という2つの層方向を持つ領域を作り込んでいる。その作り込み方は、例えば所望の領域に対してCh−SmC*相転移過程において正の電圧を印加するか、負の電圧を印加するかを選択することにより2つの領域を選択的に形成することが可能となる。
【0089】
ところが、特に例えばチルト角(Θ)に温度依存性がある液晶材料を用いる場合には、上述したように平均的な一軸配向処理方向からずれた位置に安定位置が存在することになる。このとき、平均的な一軸配向処理方向とSmC*相における安定位置とのずれ角をρ[deg.]とすると、D1とD2では層の方向が異なっていることから、SmC*相における安定位置はD1とD2との間で2ρ[deg.]だけ異なることになる。
【0090】
従って、例えば透過型の液晶素子においてクロスニコル下において電圧無印加時の安定状態を黒表示にしようとすると、D1とD2の少なくとも何れか一方はクロスニコルの偏光板の偏光軸から少なくともρ[deg.]以上ずれてしまう結果、黒表示時において光り抜けが生じコントラストの低下の原因となる。
【0091】
そこで、本発明ではD1領域とD2領域における配向規制力を異ならせることにより、上記コントラストの低下を防ぐことができる。ここでは、簡単のため次の構成にて説明する。
【0092】
先ず、上基板にはソース線に対して反時計回りに4度傾いた方向に一軸配向処理されており、下基板のD1領域に該当する領域にはソース線に対して時計回りに4°傾いた方向に一軸配向処理されており、下基板のD2領域に該当する領域には実質的に配向規制力が存在しないものとする。このとき、D1領域におけるCh相での液晶分子は上述の通りツイスト配向を取っており、平均的なダイレクタはソース線と平行方向を向いている。
【0093】
一方、D2領域におけるCh相での液晶分子は上基板による配向規制力は受けるものの、下基板の配向規制力は実質的に存在していないために、Ch相における液晶の螺旋ピッチが十分長く捩れが無視できるものと仮定すると、平均的なダイレクタは上基板の一軸配向処理方向、即ちソース線に対して反時計回りに4°傾いた方向を向いている。この状態からSmC*相へと冷却した場合には、上記Ch相での配向方向を基準として層形成が行われることになる。
【0094】
ここで、SmC*相において、D1領域は正の電圧を印加したときに時計回りに大きくチルトし、負の電圧を印加したときには反時計回りに小さくチルトし、D2領域は正の電圧を印加したときに反時計回りに大きくチルトし、負の電圧を印加したときには時計回りに小さくチルトする領域であるとする。この場合、温度が低下するに連れてチルト角(Θ)が大きくなる液晶材料では、温度の低下と共に電圧無印加時の安定位置はD1領域においては反時計回りにずれていき、D2領域では時計回りにずれることになる。つまり、室温近傍等の実使用領域においてはD2領域の分子配向方向はD1領域に対して時計回りに数度ずれてしまうことになる。
【0095】
ところが、上述の配向処理を施している場合には、スメクチック相への相転移直後の液晶分子配向方向は、D2領域がD1領域に対して反時計回りに4°傾いた方向に予め配向させている。つまり、チルト角(Θ)の温度依存性により電圧無印加時の安定位置がずれてしまった場合でも、それに応じた角度分だけ補償するようにCh相における分子配向方向を設定しておくことにより、実使用温度範囲内においてD1領域とD2領域における電圧無印加時の液晶分子配向方向をほぼ完全に一致させることが可能となる。
【0096】
そして、このような素子構成にすることによって有効表示領域の全面において実使用温度範囲内における液晶分子配向方向を偏光板の偏光軸と一致させることが可能となり、同一パネル内に2つの層方向を作り込んだ液晶素子においても、パネル全面にて良好なコントラスト比を実現できる。
【0097】
尚、上記説明においては簡単のため、上基板は有効表示領域の全面で一様な配向規制力を有しており、下基板の1領域には配向規制力が存在し、下基板の他の領域には配向規制力が存在しない場合について詳細に説明したが、同様の考え方により、上基板の配向規制力の有無を分割しても良い。或は上下両方の基板について、それぞれの基板面内に配向規制力の分布を持たせても良い。
【0098】
更に、上述のように配向規制力を全く持たせないようにするだけでなく、配向規制力の強弱といったような差を持たせても良い。尚、このときの強弱という表現の中では、配向規制力の差が何[N]程度であるかといった絶対値を定量的な議論は特に重要ではなく、その配向規制力の差によって液晶分子の配向方向に影響が及ぼされているかが重要である。即ち、相対的な配向規制力の大小関係が存在し、それにより液晶分子の配向方向が異なっていることが本発明の効果を発現させることの本質である。従って、上下のそれぞれの一軸配向処理方向が一方向で且つ上下基板間でクロス角を有していることと、D1・D2領域におけるCh相での液晶分子配向方向がそれぞれ異なる方向に配向しているように配向規制力を適宜調整すれば良い。
【0099】
【実施例】
以下、実施例に沿って本発明を更に詳細に説明する。
(実施例1)
(液晶組成物の調製)
先ず、下記液晶性化合物を、それぞれの右側に併記した重量比率で混合し液晶組成物LC−1を調製した。
【0100】
【化5】
上記液晶組成物LCの物性パラメータを以下に示す。
【0101】
86.3 61.2 −7.2
転移移温度(℃):ISO.→Ch→SmC* →Cry
自発分極(30℃):Ps=2.9nC/cm2
コーン角(30℃):Θ=23.3°(100Hz、±12.5V、基板間隙は1.4μm)
SmC* 相での螺旋ピッチ(30℃):20μm以上
(液晶セルの作製)
本実施例においては、図1及び図2に示すアクティブマトリクス型液晶パネル(液晶素子)Pを作製した。
【0102】
尚、基板1a,1bには厚さ1.1mmのガラス基板を用い、それらには透明電極3a,3bを700Å厚のITOにて形成した。又、一方のガラス基板1aにはRGBのカラーフィルター(不図示)を形成した。そして、画面サイズは10.4インチとし、画素数(即ち、RGBの色画素(サブピクセル)によって構成される画素の数)は800(横)×600(縦)とした。尚、このときサブピクセル数は2400(横)×600(縦)となり、各サブピクセルの開口部のサイズは75μm(横)×230μm(縦)であった(ゲートラインが横、ソースラインが縦)。
【0103】
更に、アクティブ素子4にはa−SiTFTを用い、該TFT4のゲート絶縁膜5bには窒化シリコン膜3bを用いた。
【0104】
又、配向制御膜6a,6bは、ポリイミド膜にて形成した。具体的には、市販のTFT用配向膜(日産化学社製のSE7992)をスピンコート法により透明電極3a,3bを覆うように塗布し、その後、80℃の温度で5分間の前乾燥を行い、更に200℃の温度で1時間の加熱焼成を施すことによって形成し、その膜厚を150Åとした。
【0105】
尚、これらの配向制御膜6a,6bには、ナイロン布コットン布によるラビング処理(一軸配向処理)を施した。このラビング処理には、外周面にコットン布を貼り合わせた径10cmのラビングロールを用い、押し込み量を0.7mm、送り速度を10cm/secとし、回転数を1000rpm、送り回数を4回とした。尚、このときのラビング方向は上下基板ともソース線に平行になるよう設定した。
【0106】
続いて、一方の基板上には、平均粒径1.5μmのシリカビーズ(スペーサー)を散布し、各基板のラビング処理方向が互いにアンチパラレルとなるように貼り合わせ、均一な基板間隙のセルを得た。
【0107】
このようなプロセスで作製したセルに液晶組成物LC−1をCh相の温度で注入し、液晶がカイラルスメクチック液晶相を示す温度まで冷却し(但し、冷却速度は1℃/minとした)、液晶がCh相からSmC* 相に相転移する際に(Tc−2℃〜Tc+2℃の温度範囲内で)印加する電圧条件として、1ゲートライン毎に正負の極性が互い違いになるように絶対値として5Vのオフセット電圧(直流電圧)を印加した。即ち、液晶がCh相からSmC* 相に相転移する際に、奇数行に位置する画素に対しては負極性のオフセット電圧を、偶数行に位置する画素に対しては正極性のオフセット電圧を印加して液晶パネルP1を作製した。このときの層構造の様子を図8に模式的に示す。図7における斜線が層の方向を模式的に表している。
【0108】
こうして得られた液晶パネルP1の配向状態を室温にて偏光顕微鏡観測したところ、奇数行においては全画素で一方向に揃った層方向に揃っており、偶数行においては全画素で奇数行とは異なる方向に揃った層方向に揃った状態が得られていた。尚、このときの層の方向は奇数行ではゲート線から約20°反時計回りに傾いた方向を向いており、偶数行ではゲート線から約20°時計回りに傾いた方向に層が形成されていた。
【0109】
更に詳細に室温にて偏光顕微鏡観測したところ、負極性のオフセット電圧を印加しながら冷却した奇数行に位置する画素におけるTFTアレイ側から見た液晶分子配向方向は、電圧無印加状態において時計回りに2度ソース線から傾いた方向に配向しており、正極性のオフセット電圧を印加しながら冷却した偶数行に位置する画素における液晶分子配向方向は、電圧無印加状態において反時計回りに2度ソース線から傾いた方向に配向していることが確認できた。
【0110】
次に、液晶パネルP1を実際に駆動して動画質の評価を行った。尚、このときの駆動法は本明細書中で述べたように1フレームを前半後半の2フィールドに分割し、液晶層に印加する電圧として、
1.前半フィールドではパネルの奇数行に対しては正極性、偶数行に対しては負極性の電圧を印加して、
2.後半フィールドではパネルの奇数行に対しては負極性、偶数行に対しては正極性の電圧を印加する、
という所謂ライン反転駆動によって駆動した。このときの動画質評価として下記に示す評価法を用いた。
【0111】
TFTを用いたアクティブマトリックスパネルであるサンプルP1を用いて、動画質評価を行った。この動画質評価は10名程度の非専門家による主観評価とし、下記5段階の尺度(カテゴリー)で評価した。評価に使用した画像は、BTAのハイビジョン標準画像(静止画)から3種類(肌色チャート、観光案内板、ヨットハーバー)を選び、その中の中心部分の432×168画素を切り出して使用した。
【0112】
更に、これらの画像をテレビ番組の一般的な動き速度程度である6.8(deg/sec)の一定速度で移動させて動画像を作成し、画像のボケを評価した。
【0113】
・尺度5…画面の周辺ボケが全く観察されずキレの良い良好な動画質。
【0114】
・尺度4…画面の周辺ボケが殆ど気にならない。
【0115】
・尺度3…画面の周辺ボケが観察され、細かい文字は判別し難い。
【0116】
・尺度2…画面の周辺ボケが顕著となり、大きな文字も判別し難い。
【0117】
・尺度1…画面全体にボケが顕著となり、原画像が殆ど判別不能。
【0118】
このときの画像ソースのコンピューター側からの出力は、1秒間に60画面分を順次走査(プログレッシブ)するようなピクチャーレートとした。
【0119】
先ず、TFTパネル側(サンプル)の表示は、1秒間に60フレームの表示を行い、上述したように1フレームを前半後半の2フィールドに分割して実質的に周波数120Hzで動作させ、前半にて高輝度表示、後半にて低輝度表示するようなフレーム反転駆動を行った。
【0120】
その結果、キレの良い良好な動画質が得られていることが確認できた。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で全員が5と評価した。更に、このパネルでは実用上十分な視野角特性を有していることを確認した。
【0121】
尚、この評価を一般的なCRTを用いて行うと5段階評価で全員が5、応答が数十mS掛かる市販のTFTタイプの液晶ディスプレイを用いると5段階評価で2〜3程度の評価結果であった。
【0122】
次いで、液晶パネルP1のコントラスト比を測定した。その結果、コントラストは70であった。
(実施例2)
実施例1で述べたパネルP1とはラビング方向のみが異なり、他は全く同一プロセスで作製された液晶パネルP2を得た。このときのラビング方向は液晶パネルのTFTアレイ側から見たときに、TFTアレイ側基板のラビング方向がソース線に対して反時計回りに4°傾いており、TFTアレイと対向する側の基板はソース線に対して時計回りに4°傾いているように設定し、明細書中で述べた広義のアンチパラレルラビングの配置となるようにした。
【0123】
こうして得られた液晶パネルP2の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、液晶パネルP1の配向状態とほぼ同様の配向状態であることが確認できた。又、液晶分子配向方向もP1とほぼ同様の方向に配向していた。
【0124】
次に、実施例1と同様に液晶パネルP1を実際にライン反転駆動して動画質の評価を行った。
【0125】
その結果、キレの良い良好な動画質が得られていることが確認できた。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で5であった。
【0126】
更に、このパネルでは実用上十分な視野角特性を有していることを確認した。
【0127】
次いで、液晶パネルP2のコントラスト比を測定した。その結果、コントラストは70であった。
(実施例3)
実施例2で述べたパネルP2とはラビングの方向は同一ではあるものの、TFTアレイと対向する側の基板に施すラビング処理をマスクラビング処理とし、ラビングした部分とラビングしていない部分を作りこんだ液晶パネルP3を得た。
【0128】
このときのマスクラビングとして、偶数ラインに対してはラビング処理を施して、奇数ラインに対してはラビング時にフォトレジストで保護することで、一軸配向規制力を付与しないようにした。尚、このフォトレジストを用いた配向規制力の分布を作り込む手法は次のように行った。
【0129】
先ず、TFTアレイと対向する側の基板におけるポリイミド膜について、配向膜塗布・焼成後に、ポジレジスト(東京応化OFPR−800)を約2μm厚となるようスピンコートした。その後、80℃、30分間の前乾燥を行った後、1ゲートラインおきに透過・遮光が繰り返されるストライプ状のマスクパターンを用いて、UV(λ=365nm)にて16秒間露光した。その後、有機系現像液(ジプレー社製MFCD−26)を用いて現像し、流水洗浄を3分間行った後、100℃、10分間の乾燥を行うことで、1ゲートライン毎にレジストが存在する部分と存在しない部分とが繰り返されるレジスト膜パターンを得た。
【0130】
次いで、こうして得られた基板上に実施例1と同様のラビング処理を施すことでレジスト膜が存在しない部分のみに一軸配向規制力を付与した。
【0131】
次いで、剥離液(ナガセ産業社製:レジストストリップN−320)を用いレジスト膜パターンを剥離した後、流水洗浄し基板を乾燥させた。こうすることで、基板面内に一軸配向規制力が存在しない部分と存在する部分との2領域を作り込んだ。
【0132】
こうして得られた液晶パネルP3の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、奇数行においては全画素で一方向に揃った層方向に揃っており、偶数行においては全画素で奇数行とは異なる方向に揃った層方向に揃った状態が得られていた。尚、このときの層の方向は奇数行ではゲート線から約20度反時計回りに傾いた方向を向いており、偶数行ではゲート線から約24°時計回りに傾いた方向に層が形成されていた。
【0133】
更に詳細に室温にて偏光顕微鏡観測したところ、負極性のオフセット電圧を印加しながら冷却した奇数行に位置する画素におけるTFTアレイ側から見た液晶分子配向方向は、電圧無印加状態において反時計回りに2°ソース線から傾いた方向に配向しており、正極性のオフセット電圧を印加しながら冷却した偶数行に位置する画素における液晶分子配向方向も同様に、電圧無印加状態において反時計回りに2°ソース線から傾いた方向に配向していることが確認できた。
【0134】
次に、実施例2と同様に液晶パネルP3を実際にライン反転駆動して動画質の評価を行った。
【0135】
その結果、キレの良い良好な動画質が得られていることが確認できた。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で5であった。
【0136】
更に、このパネルでは実用上十分な視野角特性を有していることを確認した。
【0137】
次いで、液晶パネルP3のコントラスト比を測定した。その結果、コントラストは150であった。
(実施例4)
実施例3で述べたパネルP3とはTFTアレイと対向する側の基板に施す一軸配向処理の手法を変えた液晶パネルP4を得た。このP4の一軸配向処理は以下のような手順で行った。
【0138】
先ず、TFTアレイ側基板およびTFTアレイと対向する側の基板の両方に対し、実施例2で述べたパネルP2と同じ向きにラビング処理を行った。その後、TFTアレイと対向する側の基板に対して、偶数ラインに相当する部分には光が当たらないようマスクで覆った上で、奇数ラインに相当する部分にのみ低圧水銀ランプを用いて紫外線照射を行った。このときの紫外線照射エネルギーは波長254nmにおける照射エネルギーが9mJ/cm2 とした。
【0139】
こうして得られた液晶パネルP4の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、液晶パネルP1及びP2の配向状態とほぼ同様の配向状態であることが確認できた。又、液晶分子配向方向もP1及びP2とほぼ同様の方向に配向していた。
【0140】
次に、実施例1と同様に液晶パネルP4を実際にライン反転駆動して動画質の評価を行った。
【0141】
その結果、キレの良い良好な動画質が得られていることが確認できた。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で5であった。
【0142】
更に、このパネルでは実用上十分な視野角特性を有していることを確認した。
【0143】
次いで、液晶パネルP4のコントラスト比を測定した。その結果、コントラストは70であった。
(実施例5)
実施例4で述べたパネルP4とは紫外線照射条件のみが異なる5種類のパネルP5A、P5B、P5C、P5D、P5Eを得た。このときの光照射条件は下表のようにした。
【0144】
表1
このときのコントラストの値を測定した。結果を下表に示す。
【0145】
表2
このように光照射条件を強くする程高いコントラスト値を示す結果を得た。
【0146】
更に、これらのパネルでは実用上十分な視野角特性を有していることを確認した。
【0147】
尚、P5Eの分子配向方向及び層の形成方向は例3で示したP3パネルと全く同じ方向を向いていた。即ち、強い紫外線照射によって実質的にラビング処理の効果が消失したものと考えられる。
(実施例6)
実施例5で示した5パネルとは光照射条件を若干変化させた5種類のパネルP6A、P6B、P6C、P6D、P6Eを得た。このときの光照射処理条件として、先ず、TFTアレイ側基板及びTFTアレイと対向する側の基板の両方に対し、実施例2で述べたパネルP2と同じ向きにラビング処理を行った。その後、TFTアレイと対向する側の基板に対して、先ず全面に低圧水銀ランプを用いて紫外線照射を行った。このときの紫外線照射エネルギーは波長254nmにおける照射エネルギーが9mJ/cm2 とした。
【0148】
次いで、偶数ラインに相当する部分には光が当たらないようマスクで覆った上で、奇数ラインに相当する部分にのみ低圧水銀ランプを用いて紫外線照射を行った。このときの紫外線照射エネルギーは実施例5で用いたA〜Eのパネルと同様の条件とした。
【0149】
こうして得られたパネルP6A〜Eのコントラスト値を測定した。その結果、例5のA〜Eと本実施例A〜Eでは全く同じコントラスト値を示していた。
【0150】
更に、これらのパネルでは実用上十分な視野角特性を有していることを確認した。
(実施例7)
実施例6で示した5パネルとは光照射条件を若干変化させた5種類のパネルP7A、P7B、P7C、P7D、P7Eを得た。このときの光照射処理条件として、先ずTFTアレイ側基板及びTFTアレイと対向する側の基板の両方に対し、実施例2で述べたパネルP2と同じ向きにラビング処理を行った。その後、TFTアレイ側基板及びTFTアレイと対向する側の基板に対して、先ず全面に低圧水銀ランプを用いて紫外線照射を行った。このときの紫外線照射エネルギーは波長254nmにおける照射エネルギーが9mJ/cm2 とした。
【0151】
次いで、TFTアレイと対向する側の基板に対して、偶数ラインに相当する部分には光が当たらないようマスクで覆った上で、奇数ラインに相当する部分にのみ低圧水銀ランプを用いて紫外線照射を行った。このときの紫外線照射エネルギーは実施例5及び実施例6で用いたA〜Eのパネルと同様の条件とした。
【0152】
こうして得られたパネルP7A〜Eのコントラスト値を測定した。その結果、実施例5及び実施例6のA〜Eと本実施例A〜Eでは全く同じコントラスト値を示していた。
【0153】
更に、これらのパネルでは実用上十分な視野角特性を有していることを確認した。
(実施例8)〜(実施例14)
実施例1〜実施例7とは液晶相転移時に印加する電圧条件のみが異なり、他は全く同一プロセスで作製された液晶パネルP8〜P14を得た(P12〜P14はA〜Eの各5種類)。このときの液晶相転移時に印加する電圧条件として、1ゲートライン(行)毎且つ1ソースライン(列)毎に正負の極性が互い違いになるように絶対値として5Vのオフセット電圧(直流電圧)を印加した。即ち、液晶がCh相からSmC* 相に相転移する際に、
1.奇数行且つ奇数列に位置するサブピクセルに対しては負極性のオフセット電圧、
2.奇数行且つ偶数列に位置するサブピクセルに対しては正極性のオフセット電圧、
3.偶数行且つ奇数列に位置するサブピクセルに対しては正極性のオフセット電圧、
4.偶数行且つ偶数列に位置するサブピクセルに対しては負極性のオフセット電圧、
をそれぞれ印加して液晶パネルP8〜14を作製した。このときの層構造の様子を図8に模式的に示す。図8における斜線が層の方向を模式的に表している。
こうして得られた液晶パネルP8〜14の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列においては全画素で一方向に揃った層方向に揃っており、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列においても全画素で異なる方向に揃った層方向に揃った状態が得られていた。
【0154】
これらのパネルを用いて、実施例1〜実施例7と同様の実験を行った。
【0155】
このときのパネル駆動法は本明細書中で述べたように1フレームを前半後半の2フィールドに分割し、液晶層に印加する電圧として、
1.前半フィールドではパネルの奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列のサブピクセルに対しては正極性、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列のサブピクセルに対しては負極性の電圧を印加して、
2.後半フィールドではパネルの奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列のサブピクセルに対しては負極性、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列のサブピクセルに対しては正極性の電圧を印加する、
という所謂ドット反転駆動によって駆動した。尚、コンピュータ側出力のピクチャーレートやTFTパネル側の駆動周波数は実施例1〜実施例7と同じものとした。
【0156】
その結果、全てのパネルにおいてキレの良い良好な動画質が得られていることが確認できた。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で全員が5と評価した。
【0157】
次いで、コントラスト値を評価した。その結果、P8〜P14それぞれのパネルのコントラスト値は、実施例1〜実施例7で示したそれぞれの類似のプロセスにて作製されたパネルP1〜P7と同じ値を示していた。
【0158】
更に、これらのパネルでは実用上十分な視野角特性を有していることを確認した。
(実施例15)〜(実施例21)
実施例8〜14で述べたパネルP8〜14とは液晶相転移時に印加する電圧条件のみが異なり、他は全く同一プロセスで作製された液晶パネルP15〜21を得た(P19〜P21はA〜Eの各5種類)。
【0159】
このときの液晶相転移時に印加する電圧条件として、RGBを一まとまりとして1画素として考えたとき、縦横に隣接する画素に対して印加する電圧の正負の極性が互い違いになるように絶対値として5Vのオフセット電圧(直流電圧)を印加した。即ち、液晶がCh相からSmC* 相に相転移する際に、
5.奇数行且つ奇数列に位置する画素に対しては負極性のオフセット電圧、
6.奇数行且つ偶数列に位置する画素に対しては正極性のオフセット電圧、
7.偶数行且つ奇数列に位置する画素に対しては正極性のオフセット電圧、
8.偶数行且つ偶数列に位置する画素に対しては負極性のオフセット電圧、
をそれぞれ印加して液晶パネルP15〜21を作製した。このときの層構造の様子を図9に模式的に示す。図9における斜線が層の方向を模式的に表している。
【0160】
こうして得られた液晶パネルP15〜21の配向状態を偏光顕微鏡観測したところ、奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列においては全画素で一方向に揃った層方向に揃っており、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列においても全画素で異なる方向に揃った層方向に揃った状態が得られていた。
【0161】
次に、液晶パネルP15〜21を実際に駆動して動画質の評価を行った。尚、このとき駆動法は本明細書中で述べたように1フレームを前半後半の2フィールドに分割し、液晶層に印加する電圧として、
3.前半フィールドではパネルの奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列の画素に対しては正極性、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列の画素に対しては負極性の電圧を印加して、
4.後半フィールドではパネルの奇数行/奇数列及び偶数行/偶数列の画素に対しては負極性、奇数行/偶数列及び偶数行/奇数列の画素に対しては正極性の電圧を印加する、
という3サブピクセルを一まとまりとしたブロックごとに駆動するようなブロック毎に反転する駆動によって駆動した。尚、コンピュータ側出力のピクチャーレートやTFTパネル側の駆動周波数は実施例1〜実施例14と同じものとした。
【0162】
その結果、全てのパネルにおいてキレの良い良好な動画質が得られていることが確認できた。このときの周辺ぼけ度合いを主観評価すると、上記5段階評価で全員が5と評価した。
【0163】
次いで、コントラスト値を評価した。その結果、P15〜P21それぞれのパネルのコントラスト値は、実施例1〜実施例7及び実施例8〜実施例14で示したそれぞれの類似のプロセスにて作製されたパネルP1〜P7及びP8〜P14と同じ値を示していた。
【0164】
更に、これらのパネルでは実用上十分な視野角特性を有していることを確認した。
【0165】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、1パネル内に複数の層方向を形成するカイラルスメクチック液晶を有するアクティブマトリクス型液晶パネルを作製するに当たり、上下基板の配向処理方向を完全な平行或は反平行とはせず、数度のクロス角を付けておくことと、少なくとも一方の基板において制御する領域に応じた配向規制力に制御されるよう配向規制力分布を持たせておくことによって、広視野角特性と高コントラスト比とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】アクティブマトリクス型液晶パネルの構造を示す断面図である。
【図2】アクティブマトリクス型液晶パネルの構造を示す回路図である。
【図3】アクティブマトリクス型液晶パネルの構造を示す等価回路図である。
【図4】アクティブマトリクス型液晶パネルの駆動方法を示すタイミングチャート図である。
【図5】カイラルスメクチック液晶の電圧−透過率特性の一例を示す図(その1)である。
【図6】カイラルスメクチック液晶の電圧−透過率特性の一例を示す図(その2)である。
【図7】実施例1〜7の層構造を示す図である。
【図8】実施例8〜14の層構造を示す図である。
【図9】実施例15〜21の層構造を示す図である。
【符号の説明】
1a,1b ガラス基板(基板)
2 カイラルスメクチック液晶
3a 共通電極(電極)
3b 画素電極(電極)
4 TFT(アクティブ素子)
P 液晶パネル(液晶素子)
Claims (14)
- カイラルスメクチック液晶と、該液晶に電圧を印加する一対の電極と、該液晶を挟持して対向すると共に該液晶を配向させるための一軸性配向処理が施された一対の基板と、少なくとも一方の基板側に偏光板とを備えた液晶素子であって、電圧無印加時では、該液晶の平均分子軸が単安定化された第1の状態を示し、第1の極性の電圧印加時には、該液晶の平均分子軸は印加電圧の大きさに応じた角度で該単安定化された位置から一方の側にチルトし、該第1の極性とは逆極性の第2の極性の電圧印加時には、該液晶の平均分子軸は該単安定化された位置から第1の極性の電圧を印加したときとは逆側にチルトし、第1の極性の電圧印加時と第2の極性の電圧印加時の液晶の平均分子軸の該第1の状態における単安定化された位置を基準とした最大チルト状態のチルトの角度をそれぞれβ1、β2としたとき、
β1>β2≧0なる領域D1と
0≦β1<β2なる領域D2と
が存在することと、
前記両基板に施された一軸性配向処理の方向が完全な平行若しくは完全な反平行でない(所謂クロスラビング処理を施している)ことと、少なくとも何れか一方の基板において、前記D1領域とD2領域における平均的な配向規制力をそれぞれA1、A2としたとき、それらが異なる値を有していることを特徴とする液晶素子。 - 前記両基板に施された一軸性配向処理の中心方向(クロスラビング処理の中心となる方向)をmとし、mから何れか一方の基板2に付与される一軸性配向処理方向への回転方向を正、mから他方の基板1に付与される一軸性配向処理方向への回転方向を負とし、且つ、前記第1の極性の電圧印加時にチルトする回転方向が正、第2の極性の電圧印加時にチルトする回転方向が負となる領域をD1としたとき、即ち前記第1の極性の電圧印加時にチルトする回転方向が負、第2の極性の電圧印加時にチルトする回転方向が正となる領域をD2としたとき、前記基板1には有効表示領域内にて実質的に一様な配向規制力を有しており、前記基板2に付与する一軸性配向規制力の大きさが、
A1>A2
を満たすことを特徴とする請求項1記載の液晶素子。 - 前記カイラルスメクチック液晶が、高温側より、等方性液体相(ISO.)−コレステリック相(Ch)−カイラルスメクチックC相(SmC* )、又は等方性液体相(ISO.)−カイラルスメクチックC相(SmC* )の相転移系列を示す液晶であることを特徴とする請求項1又は2記載の液晶素子。
- 前記一対の基板の少なくとも一方は、各画素に対応する電極に接続したアクティブ素子を有する基板であり、アクティブマトリクス駆動を行う駆動回路を備え、前記D1領域とD2領域が1ゲートライン毎に交互に存在している液晶素子であって、前記液晶素子に対して、1ゲートライン毎に正負の極性を変化させて印加するような信号波形を用いるライン反転駆動によって駆動することを特徴とする液晶素子の駆動方法。
- 前記一対の基板の少なくとも一方は、各画素に対応する電極に接続したアクティブ素子を有する基板であり、アクティブマトリクス駆動を行う駆動回路を備え、前記D1領域とD2領域が1画素毎に交互に(市松状に)存在しており、且つ、前記液晶素子に対して、1画素毎に正負の極性を変化させて印加するような信号波形を用いる反転駆動によって駆動することを特徴とする液晶素子の駆動方法。
- 前記一対の基板の少なくとも一方は、各画素に対応する電極に接続したアクティブ素子を有する基板であり、アクティブマトリクス駆動を行う駆動回路を備え、前記D1領域とD2領域が、複数の画素を一まとまりとしたブロック毎に交互に存在しており、且つ、前記液晶素子に対して、前記1ブロック毎に正負の極性を変化させて印加するような信号波形を用いて駆動することを特徴とする液晶素子の駆動方法。
- カイラルスメクチック液晶と、該液晶に電圧を印加する一対の電極と、該液晶を挟持して対向すると共に該液晶を配向させるための一軸性配向処理が施された一対の基板と、少なくとも一方の基板側に偏光板とを備えた液晶素子であって、電圧無印加時では、該液晶の平均分子軸が単安定化された第1の状態を示し、第1の極性の電圧印加時には、該液晶の平均分子軸は印加電圧の大きさに応じた角度で該単安定化された位置から一方の側にチルトし、該第1の極性とは逆極性の第2の極性の電圧印加時には、該液晶の平均分子軸は該単安定化された位置から第1の極性の電圧を印加したときとは逆側にチルトし、第1の極性の電圧印加時と第2の極性の電圧印加時の液晶の平均分子軸の該第1の状態における単安定化された位置を基準とした最大チルト状態のチルトの角度をそれぞれβ1、β2としたとき、
β1>β2≧0なる領域D1と
0≦β1<β2なる領域D2と
が存在する液晶素子の製造方法において、
前記両基板に施された一軸性配向処理の方向が完全な平行若しくは完全な反平行でない(所謂クロスラビング処理を施している)ことと、少なくとも何れか一方の基板に対しては、前記D1とD2に該当する領域に対し、異なった光照射条件にて光照射処理を施すことを特徴とする液晶素子の製造方法。 - 前記光照射処理に用いる光として350nm以下の紫外光で、且つ、照射する紫外光の照射エネルギーが10mJ/cm2 以上であることを特徴とする請求項7記載の液晶素子の製造方法。
- 前記光照射処理に用いる光として350nm以下の紫外光で、且つ、照射する紫外光の照射エネルギーが100mJ/cm2 以上であることを特徴とする請求項7記載の液晶素子の製造方法。
- 前記光照射処理に用いる光として350nm以下の紫外光で、且つ、照射する紫外光の照射エネルギーが1J/cm2 以上であることを特徴とする請求項7記載の液晶素子の製造方法。
- 前記両基板に施された一軸性配向処理の中心方向(クロスラビング処理の中心となる方向)をmとし、mから何れか一方の基板2に付与される一軸性配向処理方向への回転方向を正、mから他方の基板1に付与される一軸性配向処理方向への回転方向を負とし、且つ、前記第1の極性の電圧印加時にチルトする回転方向が正、第2の極性の電圧印加時にチルトする回転方向が負となる領域をD1としたとき、即ち前記第1の極性の電圧印加時にチルトする回転方向が負、第2の極性の電圧印加時にチルトする回転方向が正となる領域をD2としたとき、基板1には前記光照射処理を行わない、若しくは有効表示領域内において全面で同一の光照射処理を行うのに対し、基板2に対しては前記光照射処理を領域D2に該当する部分にのみ、若しくは領域D2に該当する部分に対して照射エネルギーが強い条件で施すことを特徴とする請求項7〜10の何れかに記載の液晶素子の製造方法。
- 一対の基板の少なくとも一方は、各画素に対応する電極に接続したアクティブ素子を有する基板であり、アクティブマトリクス駆動を行う駆動回路を備え、前記D1領域とD2領域が1ゲートライン毎に交互に存在している液晶素子であって、前記液晶素子に対して、1ゲートライン毎に正負の極性を変化させて印加するような信号波形を用いるライン反転駆動によって駆動することを特徴とする液晶素子の駆動方法。
- 一対の基板の少なくとも一方は、各画素に対応する電極に接続したアクティブ素子を有する基板であり、アクティブマトリクス駆動を行う駆動回路を備え、前記D1領域とD2領域が1画素毎に交互に(市松状に)存在しており、且つ、前記液晶素子に対して、1画素毎に正負の極性を変化させて印加するような信号波形を用いるドット反転駆動によって駆動することを特徴とする液晶素子の駆動方法。
- 一対の基板の少なくとも一方は、各画素に対応する電極に接続したアクティブ素子を有する基板であり、アクティブマトリクス駆動を行う駆動回路を備え、前記D1領域とD2領域が複数の画素を一まとまりとしたブロック毎に交互に存在しており、且つ、前記液晶素子に対して前記1ブロック毎に正負の極性を変化させて印加するような信号波形を用いて駆動することを特徴とする液晶素子の駆動方法。
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JP2005292231A (ja) * | 2004-03-31 | 2005-10-20 | Dainippon Printing Co Ltd | 液晶パネルとそれを用いた液晶表示装置 |
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