JP2004077328A - ガスセンサのヒータ制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】セルの固体電解質材を活性温度まで高めるためのヒータを備えたガスセンサにおいて、固体電解質材の温度状態を示すアドミタンスを速やかに目標アドミタンスまで昇温するともに、スムーズに目標アドミタンスに維持することである。
【解決手段】マイクロコンピュータ28におけるヒータ13の通電制御を、目標アドミタンスよりも低い所定値までは100%等の固定デューティで一気に加熱し、目標アドミタンスに近づいてくるとPI制御とする。PI制御では、目標アドミタンスに達するまでは高ゲインとしてアドミタンスの落ち込みを回避し、目標アドミタンスに達すると低ゲインとして目標アドミタンスへの収束性を向上させる。
【選択図】 図1
【解決手段】マイクロコンピュータ28におけるヒータ13の通電制御を、目標アドミタンスよりも低い所定値までは100%等の固定デューティで一気に加熱し、目標アドミタンスに近づいてくるとPI制御とする。PI制御では、目標アドミタンスに達するまでは高ゲインとしてアドミタンスの落ち込みを回避し、目標アドミタンスに達すると低ゲインとして目標アドミタンスへの収束性を向上させる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガスセンサのヒータ制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関の排気管にはガスセンサが設けられており、内燃機関本体から排出される排気ガス中の酸素等のガス濃度を検出して、その検出信号を機関本体各部の制御に供するようになっている。
【0003】
ガスセンサは、今日、ジルコニア等の酸素イオン導電性の固体電解質材を用いたものが一般的である。例えば、被測定ガスが存在するガスセンサ外部とガスセンサ内部とで酸素が行き来可能にチャンバーを形成し、固体電解質材に1対の電極を形成したセルによりチャンバー内の酸素を汲み出し可能としたものがある。このものでは、電極間に電圧を印加して酸素を汲み出すことで電極間に限界電流を流し、限界電流の値から酸素濃度が知られる。また、このような構成のセルを複数設けて、NOxやCOを検出可能としたものもある。
【0004】
固体電解質材が用いられるガスセンサは、ガス濃度を検出可能な状態とすべく固体電解質材を活性温度まで上昇させる必要があり、固体電解質材を活性温度まで高めるための電気式のヒータが通常一体的に設けられている。ヒータの通電の制御を実行するガスセンサのヒータ制御装置は、固体電解質材の温度状態と相関のある固体電解質材のアドミタンスを検出して、アドミタンスが、活性温度域のアドミタンスに対応する目標値に向けて上昇するように、上昇した後は目標値に維持されるように、通電量の指令値を演算する。通電量の指令値には電流や電力を規定するパラメータが用いられ、PWM制御で通電するものでは駆動デューティが用いられる。ヒータへの通電パターンとしては、従来、最初は速やかに固体電解質材が加熱されるようにヒータに最大電流が与えられ、そして、目標値に到達するやや手前でPI制御に切り換えて固体電解質材の温度状態が目標値に収束、維持されるように通電していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記PI制御においては、比例項や積分項の利得を小さくした方が分解能力が高く、ハンチングのないスムーズな制御が可能であり、望ましいが、次の問題がある。
【0006】
すなわち、ガスセンサが検出可能になるまでの時間は短い方がよく、例えば前記内燃機関においては、排気管を流通する排気ガスを速やかに監視下におくことが要請されている。このためには、PI制御への切り換えは温度状態が十分に目標値に近づいてからの方がよい。しかしながら、一般的なガスセンサの形状は細長であり、同一体積でも相対的に表面積が大きくなり、熱が逃げやすい。また、複数セルからなるガスセンサではガスセンサの基部側にもセルが配置されることになるので、ハウジングからの熱引けの影響をセルが受けやすい。このため、十分に温度状態が目標値に近づいてからPI制御に切り換えるようにすると、切り換えた直後では温度状態の検出値と目標値との偏差が小さいことで、比例項や積分項が不足し、固体電解質材の温度状態が落ち込むおそれがある。
【0007】
本発明は前記実情に鑑みなされたもので、固体電解質材の温度状態に落ち込みを生じることなく、しかも、ハンチングのないスムーズな通電制御が可能なガスセンサのヒータ制御装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明では、ガスセンサの固体電解質材を活性温度にするヒータに対し、通電の制御を実行するガスセンサのヒータ制御装置において、
前記固体電解質材の温度状態を検出する温度状態検出手段と、
通電量の指令値を演算する指令値演算手段であって、温度状態の検出値がその目標値よりも低い所定値に達するまでの期間においては、通電量の指令値を固定値とし、温度状態の検出値が前記所定値を越えると、検出値と前記目標値との偏差に基づいて少なくとも該偏差に比例する比例項および前記偏差の積算値に比例する積分項を演算し、通電量の指令値を、前記演算の結果に基づくフィードバック値とする指令値演算手段とを具備し、
該指令値演算手段を、温度状態の検出値が前記所定値を越えてから該所定値よりも大なる別の所定値に達するまでの第1の期間よりも、前記別の所定値に達してからの第2の期間の方が、前記比例項の利得が小さくなるように設定する。
【0009】
先ず、通電量の指令値が固定値、例えば最大電流に設定されて、固体電解質材の温度状態が目標値に向けて速やかに上昇する。そして温度状態の検出値が所定値に達すると、通電量の指令値が、比例項および積分項を含む演算結果に基づくフィードバック値とされ、調整される。ここで、比例項の利得を大きくとることでアンダーシュートを防止することができる。そして、温度状態の検出値が別の所定値に達して、検出値を目標値に収束、維持する段階に移行すると、利得は小さな値に切り換えられるから、ハンチングを生じることなくスムーズに固体電解質材の温度状態を目標値に収束、維持することができる。なお、温度状態の検出値が別の所定値に達し、利得が小さくなっても、温度状態の検出値が前記所定値を越えてから前記別の所定値に達するまでの期間において積分項がある程度、蓄積されているから、アンダーシュートは回避される。
【0010】
前記別の所定値は、請求項2記載の発明のように前記目標値とし、前記第1の期間を、温度状態の検出値が前記所定値を越えてから前記目標値に達するまでの期間となるように設定する。
【0011】
請求項3記載の発明では、ガスセンサの固体電解質材を活性温度とするヒータに対し、通電の制御を実行するガスセンサのヒータ制御装置において、
前記固体電解質材の温度状態を検出する温度状態検出手段と、
通電量の指令値を演算する指令値演算手段であって、温度状態の検出値が所定値に達するまでの期間においては、通電量の指令値を固定値とし、温度状態の検出値が前記所定値に達すると、検出値と前記目標値との偏差に基づいて、少なくとも該偏差に比例する比例項および前記偏差の積算値に比例する積分項を演算し、通電量の指令値を、前記演算の結果に基づくフィードバック値とする指令値演算手段とを具備し、
該指令値演算手段を、温度状態の検出値が前記所定値に達してから所定の期間内よりも、該所定期間以降の方が、前記比例項の利得が小さくなるように設定する。
【0012】
先ず、通電量の指令値が固定値、例えば最大電流に設定されて、固体電解質材の温度状態が目標値に向けて速やかに上昇する。そして、温度状態の検出値が所定値に達すると、通電量の指令値が、比例項および積分項を含む演算結果に基づくフィードバック値とされ、調整される。ここで、最初は、利得が高めに設定されるから通電量が不足せず、温度状態の検出値が所定値に達した直後の温度状態の落ち込みが回避される。その後、積分項の利得は小さめに設定されるから、ハンチングを生じるとなくスムーズに固体電解質材の温度状態を目標値に収束、維持することができる。
【0013】
前記所定値は、請求項4の発明のように、温度状態の検出値の目標値とする。
【0014】
請求項5記載の発明では、ガスセンサの固体電解質材を活性温度にするヒータに対し、通電の制御を実行するガスセンサのヒータ制御装置において、
前記固体電解質材の温度状態を検出する温度状態検出手段と、
通電量の指令値を演算する指令値演算手段であって、温度状態の検出値がその目標値よりも低い所定値に達するまでの期間においては、通電量の指令値を固定値とし、温度状態の検出値が前記所定値を越えると、前記温度状態の検出値とその目標値との偏差に基づいて、少なくとも該偏差に比例する比例項および前記偏差の積算値に比例する積分項を演算し、通電量の指令値を、前記演算の結果に基づくフィードバック値とする指令値演算手段とを具備し、
該指令値演算手段を、温度状態の検出値が前記所定値を越えて前記フィードバック制御が開始された時に、前記積分項に、通電量を増大する方向の所定の初期値を与えるように設定する。
【0015】
先ず、通電量の指令値が固定値、例えば最大駆動電流でヒータに通電されて、固体電解質材の温度状態を目標値に向けて速やかに上昇せしめる。そして、温度状態の検出値が目標値に近づくと、通電量の指令値が、比例項および積分項を含む演算結果に基づくフィードバック値とされ、調整される。ここで、積分項に0ではない所定の初期値が与えられるので、利得が小さくとも、検出値が所定値を越えた直後に通電量が不足せず、アンダーシュートを防止することができる。そして、温度状態の検出値が目標値に達し、検出値を目標値に維持する段階に移行しても、ハンチングを生じることなくスムーズに固体電解質材の温度状態を目標値に維持することができる。
【0016】
請求項6記載の発明では、ガスセンサの固体電解質材を活性温度とするヒータに対し、通電の制御を実行するガスセンサのヒータ制御装置において、
前記固体電解質材の温度状態を検出する温度状態検出手段と、
通電量の指令値を演算する指令値演算手段であって、温度状態の検出値がその目標値よりも低い所定値に達するまでの期間においては、通電量の指令値を固定値とし、温度状態の検出値が前記所定値を越えると、前記温度状態の検出値とその目標値との偏差に基づいて、少なくとも該偏差に比例する比例項および前記偏差の積算値に比例する積分項を演算し、通電量の指令値を、前記比例項と積分項とを含む演算の結果に基づくフィードバック値とする指令値演算手段とを具備し、
該指令値演算手段を、前記積分項の演算を、温度状態の検出値が前記所定値に達するよりも前から開始するように設定する。
【0017】
先ず、通電量の指令値が固定値、例えば最大電流に設定されて、固体電解質材の温度状態を目標値に向けて速やかに上昇せしめる。そして、温度状態の検出値が所定値を越えると、通電量の指令値が、比例項および積分項を含む演算結果に基づくフィードバック値とされ、調整される。ここで、積分項の演算が、温度状態の検出値が所定値に達するよりも前から開始されているから、利得が小さくとも通電量が不足せず、温度状態の落ち込みを防止することができる。したがって、利得を抑えることで、温度状態の検出値が目標値に達して検出値を目標値に維持する段階に移行しても、ハンチングを生じることなくスムーズに固体電解質材の温度状態を目標値に維持することができる。
【0018】
請求項7記載の発明では、ガスセンサの固体電解質材を活性温度とするヒータに対し、通電の制御を実行するガスセンサのヒータ制御装置において、
前記固体電解質材の温度状態を検出する温度状態検出手段と、
通電量の指令値を演算する指令値演算手段であって、前記温度状態の検出値とその目標値との偏差に基づいて、少なくとも該偏差に比例する比例項および前記偏差の積算値に比例する積分項を演算し、通電量の指令値を、前記演算の結果に基づくフィードバック値とする指令値演算手段とを具備し、
該指令値演算手段を、温度状態の検出値が前記目標値に達するまでの期間よりも、前記目標値に達してからの期間の方が、前記比例項の利得が小さくなるように設定する。
【0019】
先ず、高利得にて通電量の指令値が求められるから、温度状態の検出値が目標値に近づくまでは最大駆動電流に近い通電量でヒータに通電されて、固体電解質材の温度状態が目標値に向けて上昇する。そして、温度状態の検出値が目標値に達すると、低利得に切り換わることになるが、その時点で積分項にある程度、蓄積がなされているから、アンダーシュートを防止することができる。また、低利得であるから、ハンチングを生じることなくスムーズに固体電解質材の温度状態を目標値に維持することができる。
【0020】
前記所定値は、請求項8の発明のように、温度状態の検出値の目標値とする。
【0021】
請求項1ないし8の発明は、請求項9記載の発明のように、前記ヒータはガスセンサと一体に設けられるガスセンサのヒータ制御装置に好適に適用することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1に本発明のガスセンサのヒータ制御装置を適用した第1実施形態になるガス濃度検出装置を示す。本実施形態は例えば自動車の内燃機関用に適用したものである。
【0023】
ガスセンサ1は例えばエンジンから排出される排気ガスが流通する排気管に設けられ、車室側に設けられたガスセンサ1の制御回路2と配線用のケーブルにより接続される。制御回路2を構成するマイクロコンピュータ28では、ガスセンサ1からの各信号に基づいて排気ガス中の酸素濃度およびNOx 濃度(以下、適宜、ガス濃度という)を演算処理し、その結果を出力する。
【0024】
ガスセンサ1は図2、図3、図4に示すように、ジルコニア等の酸素イオン伝導性の固体電解質材である固体電解質層111,112、アルミナ等の絶縁材料からなる絶縁層113,114,115等が板厚方向に積層する積層構造を有し、面方向に細長の全体形状が与えられている。固体電解質層111,112で挟まれた絶縁層114は一部が板厚方向に打ち抜かれており、固体電解質層111,112の間に、絞り部103を介して互いに連通する2つのチャンバー101,102が形成されている。チャンバー101,102はガスセンサ1の長手方向に配置され、ガスセンサ1の先端側の第1のチャンバー101よりもガスセンサ1の基端側の第2のチャンバー102は2倍程度幅広である。
【0025】
各固体電解質層111,112をそれぞれ挟んでチャンバー101,102と反対側には各固体電解質層111,112をダクト壁の一部とする大気ダクト104,105がそれぞれ形成されている。各大気ダクト104,105はガスセンサ1の基端で大気に開放している。第1の大気ダクト104は固体電解質層112を挟んで第1チャンバー104と対向する位置まで伸びており、第2のダクト105は固体電解質層111を挟んで第2チャンバー102と対向する位置まで伸びている。ガスセンサ1が内燃機関に適用される場合には、ガスセンサ1はこれを保持するホルダ部材等とともに排気管の管壁を貫通して設けられて、大気ダクト104,105は排気管外部と連通する。
【0026】
第1のチャンバー101位置で、図2中、上側の固体電解質層111には、これを板厚方向に貫通するピンホール106が形成されており、ピンホール106を介して当該ガスセンサ1の周囲の排気ガスが第1チャンバー101内に導入される。ピンホール106の開口端は多孔質拡散層116により覆われており、排気微粒子のチャンバー101内への侵入を防止している。
【0027】
第1チャンバー101位置で固体電解質層112の上下面には固体電解質層112を挟んで対向する1対の電極121,122が形成されており、固体電解質層112と電極121,122とでポンプセル1aが構成される。ポンプセル1aを構成する電極121,122のうち、チャンバー101に面した電極121はNOx の分解(還元)に不活性なAu−Pt等の貴金属により構成されている。
【0028】
第2チャンバー102位置で固体電解質層111の上下面には、大気ダクト105に面した電極125を共通として、固体電解質層111を挟んで対向する1対の電極が2組形成されている。固体電解質層111と電極123,125とでモニタセル1bが構成される。また、固体電解質層111と電極124,125とでセンサセル1cが構成される。チャンバー102に面した電極123,124のうち、モニタセル1bの電極123がNOx の分解(還元)に不活性なAu−Pt 等の貴金属により構成され、センサセル1cの電極124がNOx の分解(還元)に活性なPt 等の貴金属により構成される。
【0029】
また、固体電解質層112とともに大気ダクト104のダクト壁をなす絶縁層115には、Pt等の線パターンが埋設されて、ガスセンサ1全体を加熱するヒータ13としてある。ヒータ13は通電によりジュール熱を発生する電気式のものである。
【0030】
ガスセンサ1において、ガスセンサ1の周囲を流れる排気ガスが多孔質拡散層116およびピンホール106を通って第1チャンバー101に導入されるが、ポンプセル1aに大気ダクト104に面した電極122側を正として電極121,122間に電圧を印加すると、排気ガス中の酸素が電極122で分解、イオン化して固体電解質層112を通り大気ダクト104へと排出される。このとき、印加電圧を限界電流域に設定すればその電流値から排気ガス中の酸素濃度が知られる。電極121がNOx の分解に不活性であるからNOx はチャンバー101内に残留する。
【0031】
排気ガスは第1チャンバー101から第2チャンバー102へと拡散するから、第2チャンバー102には酸素濃度が低下した排気ガスが存在している。モニタセル1b、センサセル1cに、大気ダクト105に面した電極125側を正として電圧を印加すると、各セル1b,1cではチャンバー102内の余剰酸素が大気ダクト105へと排出され、限界電流が流れる。ここで、第2チャンバー102に面した電極123,124のうち、センサセル1cの電極124のみがNOx の分解に対して活性であるから、センサセル1cを流れる電流の方がモニタセル1bを流れる電流よりも、センサセル1cの電極124においてNOx の分解で生じる酸素イオンの分、多くなる。モニタセル1bに流れる電流とセンサセル1cに流れる電流との差に基づいて排気ガスのNOx 濃度が得られることになる。
【0032】
次にガス濃度検出装置の電気的構成について説明する。制御回路2は、CPU、A/Dコンバータ(A/D0〜A/D5)、D/Aコンバータ(D/A0〜D/A2)、I/Oポート(I/O0,I/O1)等を備えた一般的な構成のマイクロコンピュータ28を有しており、セル1a,1b,1cの印加電圧をD/A0〜D/A2より適宜、出力する。また、マイクロコンピュータ28は、各セル1a〜1cに流れる電流を検出すべく、検出信号をA/D0〜A/D5から取り込む。そして、セル1a〜1cでの検出電流に基づいて排気ガス中の酸素濃度やNOx 濃度を演算し、その結果をD/A4,D/A5より外部出力する。また、マイクロコンピュータ28はI/O0,I/O1から制御信号を出力する。
【0033】
ポンプセル1aの大気ダクト104側の電極122には基準電圧源211の出力が入力する電圧フォロア用のオペアンプ212から基準電圧Va が印加され、第1チャンバー101に面した電極121には、マイクロコンピュータ28のD/A1から出力される指令電圧が入力する電圧フォロア用のオペアンプ231から、電流検出用の抵抗器232を介して、電圧Vb が印加される。電圧Vb およびオペアンプ231の出力電圧Vd はマイクロコンピュータ28のA/D2、A/D3を介してCPUに取り込まれる。これにより、ポンプセル1aの両電極121,122間には電圧(以下、ポンプセル印加電圧という)(Va −Vb )が印加され、ポンプセル1aに電流(以下、適宜、ポンプ電流という)Ip が流れると、これが抵抗器232の電圧降下(Vb −Vd )として検出されることになる。
【0034】
モニタセル1b、センサセル1cに対しても同様の検出回路が設けられている。すなわち、モニタセル1b、センサセル1cの共通の電極125には、基準電圧源221の出力が入力する電圧フォロアのオペアンプ222から基準電圧Vf が印加されている。モニタセル1bのチャンバ102に面した電極123には、マイクロコンピュータ28のD/A0から出力された指令電圧がローパスフィルタ(以下、適宜、LPFという)241を介して入力する電圧フォロアのオペアンプ242から、電流検出用の抵抗器243を介して電圧Vc が印加される。電圧Vc およびオペアンプ242の出力電圧Ve はマイクロコンピュータ28のA/D0、A/D1を介してCPUに取り込まれる。これにより、モニタセル1aの両電極123,125間には電圧(Vf −Vc )が印加され、モニタセル1bにモニタ電流Im が流れると、これが抵抗器243の電圧降下(Vc −Ve )として検出されることになる。前記LPF241は、例えば抵抗器およびコンデンサからなる一次フィルタとして構成される。LPF241の目的は後述する。
【0035】
一方、センサセル1cのチャンバ102に面した電極124には、マイクロコンピュータ1のD/A2から出力される指令電圧により、オペアンプ251から電流検出用の抵抗器252を介して、電圧Vgが印加される。オペアンプ251の出力電圧Vh、および電圧Vgはマイクロコンピュータ28のA/D4、A/D5を介してCPUに取り込まれる。これにより、センサセル1cの両電極124,125間には電圧(以下、適宜、センサセル印加電圧という)(Vf −Vg)が印加され、電流(以下、適宜、センサ電流という)Is が流れると、これが抵抗器252の電圧降下(Vg−Vh)として検出されることになる。
【0036】
また、制御回路2では、セル1a〜1cのアドミタンスが検出されるようになっている。アドミタンスの検出は、代表としてモニタセル1bを対象としてなされ、検出されるアドミタンスは両電極123,125間のアドミタンスである(以下、適宜、モニタアドミタンスという)。すなわち、アドミタンス検出時には、D/A0からの指令電圧が正側または負側に瞬間的に変化せしめられる。この電圧変化はLPF241でなまされて、モニタセル1bの電極123への印加電圧Vc 、したがってポンプセル印加電圧(Va −Vc )に、正弦波状の交流成分が含められる。この交流成分は、10kHz以上が望ましく、LPFの時定数は5μsec程度に設定される。マイクロコンピュータ28では、この時の電圧Vc の電圧変化量およびモニタ電流Im の電流変化量に基づいてアドミタンスが求められる。
【0037】
なお、モニタ電流Im 検出用の抵抗器243と並列に別のモニタ電流Im 検出用の抵抗器244が設けられており、抵抗器244はスイッチ245により断接切り換え自在である。スイッチ245はマイクロコンピュータ28のI/O1からの制御信号で切り換えられ、オン時にはモニタ電流Im 検出用の抵抗器の抵抗値を小さくすることができる。スイッチ245のオンによりモニタ電流Im 検出用の抵抗器の抵抗値を減少するのは、アドミタンスの検出時であるが、これは、濃度検出時に比してモニタ電流Im が多くなるため、アドミタンスの検出時とガス濃度検出時とで電圧(Vc −Ve )がアンバランスにならないようにしたものである。
【0038】
次にヒータ13の駆動系について説明する。ヒータ13はバッテリ26から通電されるようになっており、通電はMOSFET272によりオンとオフとに切り換えられるようになっている。MOSFET272のゲートには、マイクロコンピュータ28のI/O0からMOSFETドライバ271を介して駆動信号が入力するようになっており、前記オンとオフとを切り換えられる。ヒータ13の通電制御はパルス状に電圧を印加するPWM制御でなされ、駆動電流(駆動電力)の調整が、所定周期内の前記パルスのオン期間の長さ(駆動デューティ)を増減することでなされる。
【0039】
図5、図6、図7のフローチャートにより、マイクロコンピュータ28で実行される制御プログラムとともに本ガス濃度検出装置の作動について説明する。
【0040】
図5はメインルーチンの概要を示すもので、制御回路2の電源オンにより起動する。先ずステップS101では前回のガス濃度の検出時から所定時間Ta が経過したか否かを判定する。所定時間Ta はガス濃度検出の周期に相当する時間であり、例えば4ms程度に設定される。
【0041】
ステップS101が肯定判断されるとステップS102に進み、ガス濃度の検出処理を実行する。ガス濃度の検出処理では、その時々のポンプ電流Ip に応じた指令電圧を設定するとともに、その指令電圧出力時のポンプ電流Ip を検出する。そして、ポンプ電流Ip を酸素濃度に換算する。さらに、その時々のモニタセル印加電圧、センサセル印加電圧を規定する指令電圧を設定するとともに、その電圧出力時のモニタ電流Im 、センサ電流Is を検出する。そして、モニタ電流Im 、センサセル電流Is をNOx 濃度に換算する。
【0042】
続くステップS103では、前回のアドミタンスの検出時から所定時間Tb が経過したか否かを判定する。所定時間Tb はアドミタンス検出の周期に相当する時間であり、例えばエンジン運転状態に応じて128msec、2sec等の時間が選択的に設定される。
【0043】
ステップS103が肯定判断されるとステップS104に進んでアドミタンスの検出処理を実行し、ステップS105で検出アドミタンスに基づいてヒータ13の通電制御を実行する。
【0044】
アドミタンスの検出処理(ステップS104)は、図6に示すように、ステップS201で、D/A0からの指令電圧を例えば正側にごく短時間(数十〜数百μsec)シフトし、モニタセル1bの印加電圧を変化させるとともに、ステップS202で、このときのモニタセル印加電圧の変化量ΔVm と、モニタ電流の変化量ΔIm とを計測する。計測結果に基づいてステップS203でアドミタンスを算出する。すなわち、モニタ電流の変化量ΔIm とモニタセル印加電圧の変化量ΔVm との比(ΔIm /ΔVm )を算出して、これをアドミタンスとする。前記印加電圧の変化はLPF241の作用で立ち上がりと立ち下がりがなまされたものとなり、モニタセル1bのリアクタンス成分の影響でモニタ電流Im に過大な尖頭成分が現れるを防止し、アドミタンスの検出精度を高めている。このアドミタンスは固体電解質層111,112の温度に依存し、温度が高いほど大きくなる。活性温度まで上昇すると、良好に酸素イオンが流れ得る。
【0045】
ヒータ通電制御(ステップS105)は、図7に示すように、ステップS301で、モニタアドミタンスが所定値である目標アドミタンスの75%以上か否かを判定する。目標アドミタンスは、固体電解質材111,112の活性温度域に対応するアドミタンスである。内燃機関始動直後であればガスセンサ1は未だ温まっておらず、モニタアドミタンスは目標アドミタンスの75%に到達していないから、始動後しばらくはステップS301は否定判断されることになる。
【0046】
ステップS301が否定判断されるとステップS302で駆動デューティを100%に固定する固定デューティ制御を実行しリターンに抜ける。これにより、ガスセンサ1の温度が速やかに上昇する。そして、ステップS301が肯定判断されることになる。
【0047】
モニタアドミタンスが目標アドミタンスの75%を越えて、ステップS301が肯定判断されるとステップS303でモニタアドミタンスが目標値である目標アドミタンスの100%以上か否かを判定する。否定判断されると、ステップS304でPI制御を実行する。PI制御では、モニタアドミタンスと目標アドミタンスとの偏差に利得(ゲイン)を乗じた比例項、および前記偏差にゲインを乗じたものを積算した積分項を演算し、駆動デューティの指令値を、前記演算の結果に基づくフィードバック値とする。このときのPI制御では後述するステップS305のPI制御よりも高いゲインに設定される。例えば、比例項(以下、適宜、P項という)のゲインを80と、積分項(以下、適宜、I項という)のゲインを3とする。
【0048】
ステップS303が肯定判断されるとステップS305でPI制御を実行するが、このときのPI制御では、ゲインが例えば、P項ゲインを2と、I項ゲインを3とし、低めに切り換えられる。
【0049】
したがって、本ガス濃度検出装置によれば、モニタアドミタンスが目標アドミタンスの75%に到達するまでは固定デューティ制御の期間であり、目標アドミタンスの75%から目標アドミタンスの100%までは第1の期間である高ゲインでのPI制御の期間であり、目標アドミタンスに到達すると、第2の期間である低ゲインでのPI制御の期間となる。目標アドミタンスの75%という十分に目標アドミタンスに近い値まで100%の固定デューティ制御となるので、ガスセンサ1の昇温に要する時間は短縮される。
【0050】
図8(A)、図8(B)、図8(C)は本ガス濃度検出装置と従来のものとを比較するためのタイミングチャートであり、モニタアドミタンスの経時変化を示している。図8(A)が本ガス濃度検出装置のものである。図8(B)は、アドミタンスが目標アドミタンスの75%に到達するまでは固定デューティ制御で、以降はPI制御に切り換わるが、そのゲインを小さめに設定している(例えばP項ゲイン=2、I項ゲイン=3)。図8(C)は、アドミタンスが目標アドミタンスの75%に到達するまでは固定デューティ制御で、以降はPI制御に切り換わるが、そのゲインを高めに設定している(例えばP項ゲイン=80、I項ゲイン=3)。
【0051】
図8(B)のものでは、PI制御が低ゲインに設定してあるため、アドミタンスがある程度、目標アドミタンスに近づいてからPI制御に切り換わると、切り換わりの直後においてアドミタンスの検出値と目標値との偏差が小さいことで、P項、I項も小さな値しかとることができない。このため、100%の固定デューティからPI制御に切り換わった直後にモニタアドミタンスに落ち込みが生じることになる。
【0052】
また、図8(C)のものでは、PI制御が高ゲインに設定してあるため、PI制御に切り換わっても、アドミタンスに落ち込みが生じることはないが、ゲインが大きいために目標アドミタンスに到達後、収束が困難でハンチングが生じる。
【0053】
これらに対して、本発明を示す図8(A)では、モニタアドミタンスが目標アドミタンスの75%から目標アドミタンスの100%までの期間は高ゲインであるから、モニタアドミタンスと目標アドミタンスとの偏差が小さくとも落ち込みが生じることなく目標アドミタンスに向けて緩やかに上昇する。そして、目標アドミタンスに到達以後は、低いゲインのPI制御に切り換わるから、駆動デューティの調整が分解能よくなされ、ハンチングを生じることなく、スムーズにモニタアドミタンスが目標アドミタンスに維持される。このように、モニタアドミタンスをスムーズに目標アドミタンスに維持することと、PI制御に切り換わった直後のモニタアドミタンスの落ち込みの回避とを両立することができる。
【0054】
なお、各制御期間におけるPI制御のゲインは、具体的なガスセンサの仕様等に基づいて適宜設定することになるのは勿論である。また、ステップS303ではモニタアドミタンスを目標アドミタンスの100%と比較しているが、必ずしも厳密に100%である必要はなく、例えば90%程度とし得る。
【0055】
(第2実施形態)
図9に本発明の別のガス濃度検出装置のマイクロコンピュータで実行されるヒータ通電制御のフローを示す。本実施形態は、基本的な構成は第1形態のものと同じで、第1実施形態において、ヒータ通電制御を別の内容に変えたもので、第1実施形態と実質的に同じ作動をする部分には同じ番号を付して説明する。
【0056】
ステップS401では、モニタアドミタンスが所定値である目標アドミタンスの100%以上か否かを判定し、否定判断されるとステップS402で駆動デューティを100%に固定する固定デューティ制御を実行しリターンに抜ける。これにより、ガスセンサ1の温度が速やかに上昇する。
【0057】
モニタアドミタンスが目標アドミタンスの100%に到達し、ステップS401が肯定判断されるとステップS403で所定期間が経過したか否かを判定する。経過時間はステップS401が肯定判断された時点でスタートするタイマによりカウントされる。否定判断されると、ステップS404でPI制御を実行する。このときのPI制御では後述するステップS405のPI制御よりも高いゲインに設定される。例えば、P項ゲインを80と、I項ゲインを3とする。したがって、モニタアドミタンスが目標アドミタンスの100%に到達した直後は、PI制御は高ゲインである。
【0058】
ステップS403が肯定判断されるとステップS405でPI制御を実行するが、このときのPI制御では、ゲインが例えば、P項ゲインを2と、I項ゲインを3とし、低めに切り換えられる。
【0059】
したがって、本ガス濃度検出装置によれば、モニタアドミタンスが目標アドミタンスの100%に到達するまでは固定デューティ制御の期間であり、その直後は高ゲインでのPI制御の期間であり、所定時間が経過すると、低ゲインでのPI制御の期間となる。
【0060】
本ガス濃度検出装置によれば、モニタアドミタンスが目標アドミタンスの100%に到達した直後は、PI制御のゲインが高めに設定されるから、ガスセンサ1からの放熱が多くとも、駆動電力が不足しない。固定デューティ制御が終了する、モニタアドミタンスが目標アドミタンスの100%に到達した直後において、モニタアドミタンスの落ち込みが回避される。その後、PI項のゲインは小さめに設定されるから、ハンチングを生じるとなくスムーズにモニタアドミタンスを目標アドミタンスに維持することができる。
【0061】
なお、ステップS401ではモニタアドミタンスを目標アドミタンスの100%と比較しているが、必ずしも厳密に100%である必要はなく、例えば90%程度とし得る。
【0062】
(第3実施形態)
図10に本発明の別のガス濃度検出装置のマイクロコンピュータで実行されるヒータの通電制御のフローを示す。本実施形態は、基本的な構成は第1形態のものと同じで、第1実施形態において、ヒータ通電制御を別の内容に変えたもので、第1実施形態と実質的に同じ作動をする部分には同じ番号を付して説明する。
【0063】
ステップS501では、前記ステップS301のごとくモニタアドミタンスが所定値である目標アドミタンスの75%以上か否かを判定し、否定判断されるとステップS502で駆動デューティを100%に固定する固定デューティ制御を実行しリターンに抜ける。これにより、ガスセンサ1の温度が速やかに上昇する。
【0064】
モニタアドミタンスが目標アドミタンスの75%に到達し、ステップS501が肯定判断されるとステップS503でPI制御を実行する。このときのPI制御では、ゲインが例えば、P項ゲインを2と、I項ゲインを3とする。アドミタンスを目標値にスムーズに維持するのに適した低めに設定される。そして、PI制御におけるI項は固定デューティ制御からPI制御に切り換わった直後の初期値に0ではない値が与えられる。この値の符号は、駆動デューティが増大する方向の値が与えられる。
【0065】
本ガス濃度検出装置によれば、モニタアドミタンスが目標アドミタンスの75%に到達すると、低ゲインのPI制御に切り換わることになるが、I項に0ではない所定の初期値が与えられるので、ゲインが小さくともPI制御に切り換わった直後においても、I項が不足せず、モニタアドミタンスの落ち込みが回避される。そして、モニタアドミタンスが目標アドミタンスに達し、モニタアドミタンスを目標アドミタンスに維持する段階に移行しても、ハンチングを生じることなくスムーズに目標値に維持することができる。
【0066】
なお、I項の初期値は、PI制御に切り換わった直後にモニタアドミタンスの落ち込みを回避するのに必要な駆動デューティや、目標アドミタンスに到達するまでに蓄積されるI項によって目標アドミタンス到達直後にオーバーシュートが生じるのを回避可能な、許容されるI項の値を考慮して設定する。
【0067】
(第4実施形態)
図11に本発明の別のガス濃度検出装置のマイクロコンピュータで実行されるヒータの通電制御のフローを示す。本実施形態は、基本的な構成は第1形態のものと同じで、第1実施形態において、ヒータ通電制御を別の内容に変えたもので、第1実施形態と実質的に同じ作動をする部分には同じ番号を付して説明する。
【0068】
ステップS601では、前記ステップS301のごとくモニタアドミタンスが所定値である目標アドミタンスの75%以上か否かを判定し、否定判断されるとステップS602で、I項に、モニタアドミタンスYと目標アドミタンスY0 との偏差にゲインKi を乗じたものを加算して、加算したものによりI項を更新する。これは始動時を初期値(=0)として求められる。
【0069】
続くステップS603では、駆動デューティを100%に固定する固定デューティ制御を実行しリターンに抜ける。これにより、ガスセンサ1の温度が速やかに上昇する。
【0070】
モニタアドミタンスが目標アドミタンスの75%に到達し、ステップS601が肯定判断されるとステップS604でPI制御を実行する。このときのPI制御では、ゲインが例えば、P項ゲインを2と、I項ゲインを3とする。アドミタンスを目標値にスムーズに維持するのに適した低めに設定される。このときの、I項の算出は、前記ステップS602の算出結果を引き継いでなされる。
【0071】
本ガス濃度検出装置によれば、モニタアドミタンスが目標アドミタンスの75%に到達すると、低ゲインのPI制御に切り換わることになるが、切り換わり直後においては、I項にステップS602で算出した値が与えられている。したがって、第3実施形態と同様に、ゲインが小さくともPI制御に切り換わった直後においてI項が不足せず、モニタアドミタンスの落ち込みを防止することができる。そして、モニタアドミタンスが目標アドミタンスに達し、モニタアドミタンスを目標アドミタンスに維持する段階に移行しても、ハンチングを生じることなくスムーズに目標アドミタンスに維持することができる。
【0072】
なお、I項の算出を開始する時期は始動時に限られず、例えば、モニタアドミタンスが予め設定した所定値を越えたら開始するようにしてもよい。
【0073】
(第5実施形態)
図12に本発明の別のガス濃度検出装置のマイクロコンピュータで実行されるヒータの通電制御のフローを示す。本実施形態は、基本的な構成は第1形態のものと同じで、第1実施形態において、ヒータ通電制御を別の内容に変えたもので、第1実施形態と実質的に同じ作動をする部分には同じ番号を付して説明する。
【0074】
ステップS701では、モニタアドミタンスが目標値である目標アドミタンスの100%以上か否かを判定し、否定判断されるとステップS702でPI制御を実行する。このときのPI制御では、ゲインが例えば高めに設定される。
【0075】
そして、ステップS701が肯定判断されるとステップS703でPI制御のゲインを低めに切り換える。
【0076】
本ガス濃度検出装置によれば、先ず、高ゲインにて駆動デューティが求められる。ここで、P項のゲインを、目標アドミタンスに到達するまでの期間において駆動デューティが100%もしくはこれに準ずる程度に高いものとなるように設定する。I項のゲインは、目標アドミタンスに到達時のI項の値がモニタアドミタンスに落ち込みを生じない程度に抑制されるように設定する。これにより、目標アドミタンスに到達するまでは、実質的に固定デューティ制御のごとく昇温速度が速い通電制御となる。そして、目標アドミタンスに達すると、低ゲインに切り換わるから、ハンチングを生じるとなくスムーズに目標値に維持することができる。目標アドミタンスに達した時点でI項にはそれまでの蓄積があるので、モニタアドミタンスに落ち込みが生じることもない。なお、高ゲイン時のゲインは、目標アドミタンスに達した直後にアドミタンスがオーバーシュートしないように最適化される。
【0077】
なお、ステップS701ではモニタアドミタンスを目標アドミタンスの100%と比較しているが、必ずしも厳密に100%である必要はなく、例えば90%程度とし得る。
【0078】
なお、前記各実施形態ではアドミタンスを検出しているが、アドミタンスの逆数であるインピーダンスを検出するようにしてもよい。実質的に等価だからである。その他、固体電解質層の温度状態が知られるものであれば、駆動デューティの指令値の演算に利用することができる。
【0079】
また、ヒータ通電がPWM制御によるものでなくとも本発明は好適に適用することができる。
【0080】
また、アドミタンス検出時にモニタセルへの印加電圧を変化させているが、電流を変化させてもよい。電流変化に対してアドミタンスに応じた電圧変化が生じるからである。
【0081】
また、本発明は3セル構造のガスセンサに限らず、1セル構造、2セル構造のものにも適用することができ、ガスセンサの形状も任意である。被測定ガスの温度や流速により、ガスセンサから放熱する熱は異なり、ガスセンサの形状や内部構造が相対的に放熱しにくいものであっても、本発明が解決しようとした課題が依然として存在するからである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のガスセンサのヒータ制御装置を適用した第1のガス濃度検出装置の構成図である。
【図2】前記ガスセンサの要部断面図である。
【図3】図2におけるIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図2におけるIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】前記ガス濃度検出装置を構成するマイクロコンピュータで実行される制御内容を示す第1のフローチャートである。
【図6】前記ガス濃度検出装置を構成するマイクロコンピュータで実行される制御内容を示す第2のフローチャートである。
【図7】前記ガス濃度検出装置を構成するマイクロコンピュータで実行される制御内容を示す第3のフローチャートである。
【図8】(A)は前記ガス濃度検出装置におけるモニタアドミタンスの経時変化を示す図であり、(B),(C)はそれぞれ、前記ガス濃度検出装置と比較する従来例におけるモニタアドミタンスの経時変化を示す図である。
【図9】本発明のガスセンサのヒータ制御装置を適用した第2のガス濃度検出装置を構成するマイクロコンピュータで実行される制御内容を示すフローチャートである。
【図10】本発明のガスセンサのヒータ制御装置を適用した第3のガス濃度検出装置を構成するマイクロコンピュータで実行される制御内容を示すフローチャートである。
【図11】本発明のガスセンサのヒータ制御装置を適用した第4のガス濃度検出装置を構成するマイクロコンピュータで実行される制御内容を示すフローチャートである。
【図12】本発明のガスセンサのヒータ制御装置を適用した第5のガス濃度検出装置を構成するマイクロコンピュータで実行される制御内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 ガスセンサ
1a ポンプセル
1b モニタセル
1c センサセル
13 ヒータ
111,112 固体電解質層(固体電解質材)
121,122,123,124,125 電極
243 抵抗器(温度状態検出手段)
28 マイクロコンピュータ(指令値演算手段、温度状態検出手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガスセンサのヒータ制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関の排気管にはガスセンサが設けられており、内燃機関本体から排出される排気ガス中の酸素等のガス濃度を検出して、その検出信号を機関本体各部の制御に供するようになっている。
【0003】
ガスセンサは、今日、ジルコニア等の酸素イオン導電性の固体電解質材を用いたものが一般的である。例えば、被測定ガスが存在するガスセンサ外部とガスセンサ内部とで酸素が行き来可能にチャンバーを形成し、固体電解質材に1対の電極を形成したセルによりチャンバー内の酸素を汲み出し可能としたものがある。このものでは、電極間に電圧を印加して酸素を汲み出すことで電極間に限界電流を流し、限界電流の値から酸素濃度が知られる。また、このような構成のセルを複数設けて、NOxやCOを検出可能としたものもある。
【0004】
固体電解質材が用いられるガスセンサは、ガス濃度を検出可能な状態とすべく固体電解質材を活性温度まで上昇させる必要があり、固体電解質材を活性温度まで高めるための電気式のヒータが通常一体的に設けられている。ヒータの通電の制御を実行するガスセンサのヒータ制御装置は、固体電解質材の温度状態と相関のある固体電解質材のアドミタンスを検出して、アドミタンスが、活性温度域のアドミタンスに対応する目標値に向けて上昇するように、上昇した後は目標値に維持されるように、通電量の指令値を演算する。通電量の指令値には電流や電力を規定するパラメータが用いられ、PWM制御で通電するものでは駆動デューティが用いられる。ヒータへの通電パターンとしては、従来、最初は速やかに固体電解質材が加熱されるようにヒータに最大電流が与えられ、そして、目標値に到達するやや手前でPI制御に切り換えて固体電解質材の温度状態が目標値に収束、維持されるように通電していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記PI制御においては、比例項や積分項の利得を小さくした方が分解能力が高く、ハンチングのないスムーズな制御が可能であり、望ましいが、次の問題がある。
【0006】
すなわち、ガスセンサが検出可能になるまでの時間は短い方がよく、例えば前記内燃機関においては、排気管を流通する排気ガスを速やかに監視下におくことが要請されている。このためには、PI制御への切り換えは温度状態が十分に目標値に近づいてからの方がよい。しかしながら、一般的なガスセンサの形状は細長であり、同一体積でも相対的に表面積が大きくなり、熱が逃げやすい。また、複数セルからなるガスセンサではガスセンサの基部側にもセルが配置されることになるので、ハウジングからの熱引けの影響をセルが受けやすい。このため、十分に温度状態が目標値に近づいてからPI制御に切り換えるようにすると、切り換えた直後では温度状態の検出値と目標値との偏差が小さいことで、比例項や積分項が不足し、固体電解質材の温度状態が落ち込むおそれがある。
【0007】
本発明は前記実情に鑑みなされたもので、固体電解質材の温度状態に落ち込みを生じることなく、しかも、ハンチングのないスムーズな通電制御が可能なガスセンサのヒータ制御装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明では、ガスセンサの固体電解質材を活性温度にするヒータに対し、通電の制御を実行するガスセンサのヒータ制御装置において、
前記固体電解質材の温度状態を検出する温度状態検出手段と、
通電量の指令値を演算する指令値演算手段であって、温度状態の検出値がその目標値よりも低い所定値に達するまでの期間においては、通電量の指令値を固定値とし、温度状態の検出値が前記所定値を越えると、検出値と前記目標値との偏差に基づいて少なくとも該偏差に比例する比例項および前記偏差の積算値に比例する積分項を演算し、通電量の指令値を、前記演算の結果に基づくフィードバック値とする指令値演算手段とを具備し、
該指令値演算手段を、温度状態の検出値が前記所定値を越えてから該所定値よりも大なる別の所定値に達するまでの第1の期間よりも、前記別の所定値に達してからの第2の期間の方が、前記比例項の利得が小さくなるように設定する。
【0009】
先ず、通電量の指令値が固定値、例えば最大電流に設定されて、固体電解質材の温度状態が目標値に向けて速やかに上昇する。そして温度状態の検出値が所定値に達すると、通電量の指令値が、比例項および積分項を含む演算結果に基づくフィードバック値とされ、調整される。ここで、比例項の利得を大きくとることでアンダーシュートを防止することができる。そして、温度状態の検出値が別の所定値に達して、検出値を目標値に収束、維持する段階に移行すると、利得は小さな値に切り換えられるから、ハンチングを生じることなくスムーズに固体電解質材の温度状態を目標値に収束、維持することができる。なお、温度状態の検出値が別の所定値に達し、利得が小さくなっても、温度状態の検出値が前記所定値を越えてから前記別の所定値に達するまでの期間において積分項がある程度、蓄積されているから、アンダーシュートは回避される。
【0010】
前記別の所定値は、請求項2記載の発明のように前記目標値とし、前記第1の期間を、温度状態の検出値が前記所定値を越えてから前記目標値に達するまでの期間となるように設定する。
【0011】
請求項3記載の発明では、ガスセンサの固体電解質材を活性温度とするヒータに対し、通電の制御を実行するガスセンサのヒータ制御装置において、
前記固体電解質材の温度状態を検出する温度状態検出手段と、
通電量の指令値を演算する指令値演算手段であって、温度状態の検出値が所定値に達するまでの期間においては、通電量の指令値を固定値とし、温度状態の検出値が前記所定値に達すると、検出値と前記目標値との偏差に基づいて、少なくとも該偏差に比例する比例項および前記偏差の積算値に比例する積分項を演算し、通電量の指令値を、前記演算の結果に基づくフィードバック値とする指令値演算手段とを具備し、
該指令値演算手段を、温度状態の検出値が前記所定値に達してから所定の期間内よりも、該所定期間以降の方が、前記比例項の利得が小さくなるように設定する。
【0012】
先ず、通電量の指令値が固定値、例えば最大電流に設定されて、固体電解質材の温度状態が目標値に向けて速やかに上昇する。そして、温度状態の検出値が所定値に達すると、通電量の指令値が、比例項および積分項を含む演算結果に基づくフィードバック値とされ、調整される。ここで、最初は、利得が高めに設定されるから通電量が不足せず、温度状態の検出値が所定値に達した直後の温度状態の落ち込みが回避される。その後、積分項の利得は小さめに設定されるから、ハンチングを生じるとなくスムーズに固体電解質材の温度状態を目標値に収束、維持することができる。
【0013】
前記所定値は、請求項4の発明のように、温度状態の検出値の目標値とする。
【0014】
請求項5記載の発明では、ガスセンサの固体電解質材を活性温度にするヒータに対し、通電の制御を実行するガスセンサのヒータ制御装置において、
前記固体電解質材の温度状態を検出する温度状態検出手段と、
通電量の指令値を演算する指令値演算手段であって、温度状態の検出値がその目標値よりも低い所定値に達するまでの期間においては、通電量の指令値を固定値とし、温度状態の検出値が前記所定値を越えると、前記温度状態の検出値とその目標値との偏差に基づいて、少なくとも該偏差に比例する比例項および前記偏差の積算値に比例する積分項を演算し、通電量の指令値を、前記演算の結果に基づくフィードバック値とする指令値演算手段とを具備し、
該指令値演算手段を、温度状態の検出値が前記所定値を越えて前記フィードバック制御が開始された時に、前記積分項に、通電量を増大する方向の所定の初期値を与えるように設定する。
【0015】
先ず、通電量の指令値が固定値、例えば最大駆動電流でヒータに通電されて、固体電解質材の温度状態を目標値に向けて速やかに上昇せしめる。そして、温度状態の検出値が目標値に近づくと、通電量の指令値が、比例項および積分項を含む演算結果に基づくフィードバック値とされ、調整される。ここで、積分項に0ではない所定の初期値が与えられるので、利得が小さくとも、検出値が所定値を越えた直後に通電量が不足せず、アンダーシュートを防止することができる。そして、温度状態の検出値が目標値に達し、検出値を目標値に維持する段階に移行しても、ハンチングを生じることなくスムーズに固体電解質材の温度状態を目標値に維持することができる。
【0016】
請求項6記載の発明では、ガスセンサの固体電解質材を活性温度とするヒータに対し、通電の制御を実行するガスセンサのヒータ制御装置において、
前記固体電解質材の温度状態を検出する温度状態検出手段と、
通電量の指令値を演算する指令値演算手段であって、温度状態の検出値がその目標値よりも低い所定値に達するまでの期間においては、通電量の指令値を固定値とし、温度状態の検出値が前記所定値を越えると、前記温度状態の検出値とその目標値との偏差に基づいて、少なくとも該偏差に比例する比例項および前記偏差の積算値に比例する積分項を演算し、通電量の指令値を、前記比例項と積分項とを含む演算の結果に基づくフィードバック値とする指令値演算手段とを具備し、
該指令値演算手段を、前記積分項の演算を、温度状態の検出値が前記所定値に達するよりも前から開始するように設定する。
【0017】
先ず、通電量の指令値が固定値、例えば最大電流に設定されて、固体電解質材の温度状態を目標値に向けて速やかに上昇せしめる。そして、温度状態の検出値が所定値を越えると、通電量の指令値が、比例項および積分項を含む演算結果に基づくフィードバック値とされ、調整される。ここで、積分項の演算が、温度状態の検出値が所定値に達するよりも前から開始されているから、利得が小さくとも通電量が不足せず、温度状態の落ち込みを防止することができる。したがって、利得を抑えることで、温度状態の検出値が目標値に達して検出値を目標値に維持する段階に移行しても、ハンチングを生じることなくスムーズに固体電解質材の温度状態を目標値に維持することができる。
【0018】
請求項7記載の発明では、ガスセンサの固体電解質材を活性温度とするヒータに対し、通電の制御を実行するガスセンサのヒータ制御装置において、
前記固体電解質材の温度状態を検出する温度状態検出手段と、
通電量の指令値を演算する指令値演算手段であって、前記温度状態の検出値とその目標値との偏差に基づいて、少なくとも該偏差に比例する比例項および前記偏差の積算値に比例する積分項を演算し、通電量の指令値を、前記演算の結果に基づくフィードバック値とする指令値演算手段とを具備し、
該指令値演算手段を、温度状態の検出値が前記目標値に達するまでの期間よりも、前記目標値に達してからの期間の方が、前記比例項の利得が小さくなるように設定する。
【0019】
先ず、高利得にて通電量の指令値が求められるから、温度状態の検出値が目標値に近づくまでは最大駆動電流に近い通電量でヒータに通電されて、固体電解質材の温度状態が目標値に向けて上昇する。そして、温度状態の検出値が目標値に達すると、低利得に切り換わることになるが、その時点で積分項にある程度、蓄積がなされているから、アンダーシュートを防止することができる。また、低利得であるから、ハンチングを生じることなくスムーズに固体電解質材の温度状態を目標値に維持することができる。
【0020】
前記所定値は、請求項8の発明のように、温度状態の検出値の目標値とする。
【0021】
請求項1ないし8の発明は、請求項9記載の発明のように、前記ヒータはガスセンサと一体に設けられるガスセンサのヒータ制御装置に好適に適用することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1に本発明のガスセンサのヒータ制御装置を適用した第1実施形態になるガス濃度検出装置を示す。本実施形態は例えば自動車の内燃機関用に適用したものである。
【0023】
ガスセンサ1は例えばエンジンから排出される排気ガスが流通する排気管に設けられ、車室側に設けられたガスセンサ1の制御回路2と配線用のケーブルにより接続される。制御回路2を構成するマイクロコンピュータ28では、ガスセンサ1からの各信号に基づいて排気ガス中の酸素濃度およびNOx 濃度(以下、適宜、ガス濃度という)を演算処理し、その結果を出力する。
【0024】
ガスセンサ1は図2、図3、図4に示すように、ジルコニア等の酸素イオン伝導性の固体電解質材である固体電解質層111,112、アルミナ等の絶縁材料からなる絶縁層113,114,115等が板厚方向に積層する積層構造を有し、面方向に細長の全体形状が与えられている。固体電解質層111,112で挟まれた絶縁層114は一部が板厚方向に打ち抜かれており、固体電解質層111,112の間に、絞り部103を介して互いに連通する2つのチャンバー101,102が形成されている。チャンバー101,102はガスセンサ1の長手方向に配置され、ガスセンサ1の先端側の第1のチャンバー101よりもガスセンサ1の基端側の第2のチャンバー102は2倍程度幅広である。
【0025】
各固体電解質層111,112をそれぞれ挟んでチャンバー101,102と反対側には各固体電解質層111,112をダクト壁の一部とする大気ダクト104,105がそれぞれ形成されている。各大気ダクト104,105はガスセンサ1の基端で大気に開放している。第1の大気ダクト104は固体電解質層112を挟んで第1チャンバー104と対向する位置まで伸びており、第2のダクト105は固体電解質層111を挟んで第2チャンバー102と対向する位置まで伸びている。ガスセンサ1が内燃機関に適用される場合には、ガスセンサ1はこれを保持するホルダ部材等とともに排気管の管壁を貫通して設けられて、大気ダクト104,105は排気管外部と連通する。
【0026】
第1のチャンバー101位置で、図2中、上側の固体電解質層111には、これを板厚方向に貫通するピンホール106が形成されており、ピンホール106を介して当該ガスセンサ1の周囲の排気ガスが第1チャンバー101内に導入される。ピンホール106の開口端は多孔質拡散層116により覆われており、排気微粒子のチャンバー101内への侵入を防止している。
【0027】
第1チャンバー101位置で固体電解質層112の上下面には固体電解質層112を挟んで対向する1対の電極121,122が形成されており、固体電解質層112と電極121,122とでポンプセル1aが構成される。ポンプセル1aを構成する電極121,122のうち、チャンバー101に面した電極121はNOx の分解(還元)に不活性なAu−Pt等の貴金属により構成されている。
【0028】
第2チャンバー102位置で固体電解質層111の上下面には、大気ダクト105に面した電極125を共通として、固体電解質層111を挟んで対向する1対の電極が2組形成されている。固体電解質層111と電極123,125とでモニタセル1bが構成される。また、固体電解質層111と電極124,125とでセンサセル1cが構成される。チャンバー102に面した電極123,124のうち、モニタセル1bの電極123がNOx の分解(還元)に不活性なAu−Pt 等の貴金属により構成され、センサセル1cの電極124がNOx の分解(還元)に活性なPt 等の貴金属により構成される。
【0029】
また、固体電解質層112とともに大気ダクト104のダクト壁をなす絶縁層115には、Pt等の線パターンが埋設されて、ガスセンサ1全体を加熱するヒータ13としてある。ヒータ13は通電によりジュール熱を発生する電気式のものである。
【0030】
ガスセンサ1において、ガスセンサ1の周囲を流れる排気ガスが多孔質拡散層116およびピンホール106を通って第1チャンバー101に導入されるが、ポンプセル1aに大気ダクト104に面した電極122側を正として電極121,122間に電圧を印加すると、排気ガス中の酸素が電極122で分解、イオン化して固体電解質層112を通り大気ダクト104へと排出される。このとき、印加電圧を限界電流域に設定すればその電流値から排気ガス中の酸素濃度が知られる。電極121がNOx の分解に不活性であるからNOx はチャンバー101内に残留する。
【0031】
排気ガスは第1チャンバー101から第2チャンバー102へと拡散するから、第2チャンバー102には酸素濃度が低下した排気ガスが存在している。モニタセル1b、センサセル1cに、大気ダクト105に面した電極125側を正として電圧を印加すると、各セル1b,1cではチャンバー102内の余剰酸素が大気ダクト105へと排出され、限界電流が流れる。ここで、第2チャンバー102に面した電極123,124のうち、センサセル1cの電極124のみがNOx の分解に対して活性であるから、センサセル1cを流れる電流の方がモニタセル1bを流れる電流よりも、センサセル1cの電極124においてNOx の分解で生じる酸素イオンの分、多くなる。モニタセル1bに流れる電流とセンサセル1cに流れる電流との差に基づいて排気ガスのNOx 濃度が得られることになる。
【0032】
次にガス濃度検出装置の電気的構成について説明する。制御回路2は、CPU、A/Dコンバータ(A/D0〜A/D5)、D/Aコンバータ(D/A0〜D/A2)、I/Oポート(I/O0,I/O1)等を備えた一般的な構成のマイクロコンピュータ28を有しており、セル1a,1b,1cの印加電圧をD/A0〜D/A2より適宜、出力する。また、マイクロコンピュータ28は、各セル1a〜1cに流れる電流を検出すべく、検出信号をA/D0〜A/D5から取り込む。そして、セル1a〜1cでの検出電流に基づいて排気ガス中の酸素濃度やNOx 濃度を演算し、その結果をD/A4,D/A5より外部出力する。また、マイクロコンピュータ28はI/O0,I/O1から制御信号を出力する。
【0033】
ポンプセル1aの大気ダクト104側の電極122には基準電圧源211の出力が入力する電圧フォロア用のオペアンプ212から基準電圧Va が印加され、第1チャンバー101に面した電極121には、マイクロコンピュータ28のD/A1から出力される指令電圧が入力する電圧フォロア用のオペアンプ231から、電流検出用の抵抗器232を介して、電圧Vb が印加される。電圧Vb およびオペアンプ231の出力電圧Vd はマイクロコンピュータ28のA/D2、A/D3を介してCPUに取り込まれる。これにより、ポンプセル1aの両電極121,122間には電圧(以下、ポンプセル印加電圧という)(Va −Vb )が印加され、ポンプセル1aに電流(以下、適宜、ポンプ電流という)Ip が流れると、これが抵抗器232の電圧降下(Vb −Vd )として検出されることになる。
【0034】
モニタセル1b、センサセル1cに対しても同様の検出回路が設けられている。すなわち、モニタセル1b、センサセル1cの共通の電極125には、基準電圧源221の出力が入力する電圧フォロアのオペアンプ222から基準電圧Vf が印加されている。モニタセル1bのチャンバ102に面した電極123には、マイクロコンピュータ28のD/A0から出力された指令電圧がローパスフィルタ(以下、適宜、LPFという)241を介して入力する電圧フォロアのオペアンプ242から、電流検出用の抵抗器243を介して電圧Vc が印加される。電圧Vc およびオペアンプ242の出力電圧Ve はマイクロコンピュータ28のA/D0、A/D1を介してCPUに取り込まれる。これにより、モニタセル1aの両電極123,125間には電圧(Vf −Vc )が印加され、モニタセル1bにモニタ電流Im が流れると、これが抵抗器243の電圧降下(Vc −Ve )として検出されることになる。前記LPF241は、例えば抵抗器およびコンデンサからなる一次フィルタとして構成される。LPF241の目的は後述する。
【0035】
一方、センサセル1cのチャンバ102に面した電極124には、マイクロコンピュータ1のD/A2から出力される指令電圧により、オペアンプ251から電流検出用の抵抗器252を介して、電圧Vgが印加される。オペアンプ251の出力電圧Vh、および電圧Vgはマイクロコンピュータ28のA/D4、A/D5を介してCPUに取り込まれる。これにより、センサセル1cの両電極124,125間には電圧(以下、適宜、センサセル印加電圧という)(Vf −Vg)が印加され、電流(以下、適宜、センサ電流という)Is が流れると、これが抵抗器252の電圧降下(Vg−Vh)として検出されることになる。
【0036】
また、制御回路2では、セル1a〜1cのアドミタンスが検出されるようになっている。アドミタンスの検出は、代表としてモニタセル1bを対象としてなされ、検出されるアドミタンスは両電極123,125間のアドミタンスである(以下、適宜、モニタアドミタンスという)。すなわち、アドミタンス検出時には、D/A0からの指令電圧が正側または負側に瞬間的に変化せしめられる。この電圧変化はLPF241でなまされて、モニタセル1bの電極123への印加電圧Vc 、したがってポンプセル印加電圧(Va −Vc )に、正弦波状の交流成分が含められる。この交流成分は、10kHz以上が望ましく、LPFの時定数は5μsec程度に設定される。マイクロコンピュータ28では、この時の電圧Vc の電圧変化量およびモニタ電流Im の電流変化量に基づいてアドミタンスが求められる。
【0037】
なお、モニタ電流Im 検出用の抵抗器243と並列に別のモニタ電流Im 検出用の抵抗器244が設けられており、抵抗器244はスイッチ245により断接切り換え自在である。スイッチ245はマイクロコンピュータ28のI/O1からの制御信号で切り換えられ、オン時にはモニタ電流Im 検出用の抵抗器の抵抗値を小さくすることができる。スイッチ245のオンによりモニタ電流Im 検出用の抵抗器の抵抗値を減少するのは、アドミタンスの検出時であるが、これは、濃度検出時に比してモニタ電流Im が多くなるため、アドミタンスの検出時とガス濃度検出時とで電圧(Vc −Ve )がアンバランスにならないようにしたものである。
【0038】
次にヒータ13の駆動系について説明する。ヒータ13はバッテリ26から通電されるようになっており、通電はMOSFET272によりオンとオフとに切り換えられるようになっている。MOSFET272のゲートには、マイクロコンピュータ28のI/O0からMOSFETドライバ271を介して駆動信号が入力するようになっており、前記オンとオフとを切り換えられる。ヒータ13の通電制御はパルス状に電圧を印加するPWM制御でなされ、駆動電流(駆動電力)の調整が、所定周期内の前記パルスのオン期間の長さ(駆動デューティ)を増減することでなされる。
【0039】
図5、図6、図7のフローチャートにより、マイクロコンピュータ28で実行される制御プログラムとともに本ガス濃度検出装置の作動について説明する。
【0040】
図5はメインルーチンの概要を示すもので、制御回路2の電源オンにより起動する。先ずステップS101では前回のガス濃度の検出時から所定時間Ta が経過したか否かを判定する。所定時間Ta はガス濃度検出の周期に相当する時間であり、例えば4ms程度に設定される。
【0041】
ステップS101が肯定判断されるとステップS102に進み、ガス濃度の検出処理を実行する。ガス濃度の検出処理では、その時々のポンプ電流Ip に応じた指令電圧を設定するとともに、その指令電圧出力時のポンプ電流Ip を検出する。そして、ポンプ電流Ip を酸素濃度に換算する。さらに、その時々のモニタセル印加電圧、センサセル印加電圧を規定する指令電圧を設定するとともに、その電圧出力時のモニタ電流Im 、センサ電流Is を検出する。そして、モニタ電流Im 、センサセル電流Is をNOx 濃度に換算する。
【0042】
続くステップS103では、前回のアドミタンスの検出時から所定時間Tb が経過したか否かを判定する。所定時間Tb はアドミタンス検出の周期に相当する時間であり、例えばエンジン運転状態に応じて128msec、2sec等の時間が選択的に設定される。
【0043】
ステップS103が肯定判断されるとステップS104に進んでアドミタンスの検出処理を実行し、ステップS105で検出アドミタンスに基づいてヒータ13の通電制御を実行する。
【0044】
アドミタンスの検出処理(ステップS104)は、図6に示すように、ステップS201で、D/A0からの指令電圧を例えば正側にごく短時間(数十〜数百μsec)シフトし、モニタセル1bの印加電圧を変化させるとともに、ステップS202で、このときのモニタセル印加電圧の変化量ΔVm と、モニタ電流の変化量ΔIm とを計測する。計測結果に基づいてステップS203でアドミタンスを算出する。すなわち、モニタ電流の変化量ΔIm とモニタセル印加電圧の変化量ΔVm との比(ΔIm /ΔVm )を算出して、これをアドミタンスとする。前記印加電圧の変化はLPF241の作用で立ち上がりと立ち下がりがなまされたものとなり、モニタセル1bのリアクタンス成分の影響でモニタ電流Im に過大な尖頭成分が現れるを防止し、アドミタンスの検出精度を高めている。このアドミタンスは固体電解質層111,112の温度に依存し、温度が高いほど大きくなる。活性温度まで上昇すると、良好に酸素イオンが流れ得る。
【0045】
ヒータ通電制御(ステップS105)は、図7に示すように、ステップS301で、モニタアドミタンスが所定値である目標アドミタンスの75%以上か否かを判定する。目標アドミタンスは、固体電解質材111,112の活性温度域に対応するアドミタンスである。内燃機関始動直後であればガスセンサ1は未だ温まっておらず、モニタアドミタンスは目標アドミタンスの75%に到達していないから、始動後しばらくはステップS301は否定判断されることになる。
【0046】
ステップS301が否定判断されるとステップS302で駆動デューティを100%に固定する固定デューティ制御を実行しリターンに抜ける。これにより、ガスセンサ1の温度が速やかに上昇する。そして、ステップS301が肯定判断されることになる。
【0047】
モニタアドミタンスが目標アドミタンスの75%を越えて、ステップS301が肯定判断されるとステップS303でモニタアドミタンスが目標値である目標アドミタンスの100%以上か否かを判定する。否定判断されると、ステップS304でPI制御を実行する。PI制御では、モニタアドミタンスと目標アドミタンスとの偏差に利得(ゲイン)を乗じた比例項、および前記偏差にゲインを乗じたものを積算した積分項を演算し、駆動デューティの指令値を、前記演算の結果に基づくフィードバック値とする。このときのPI制御では後述するステップS305のPI制御よりも高いゲインに設定される。例えば、比例項(以下、適宜、P項という)のゲインを80と、積分項(以下、適宜、I項という)のゲインを3とする。
【0048】
ステップS303が肯定判断されるとステップS305でPI制御を実行するが、このときのPI制御では、ゲインが例えば、P項ゲインを2と、I項ゲインを3とし、低めに切り換えられる。
【0049】
したがって、本ガス濃度検出装置によれば、モニタアドミタンスが目標アドミタンスの75%に到達するまでは固定デューティ制御の期間であり、目標アドミタンスの75%から目標アドミタンスの100%までは第1の期間である高ゲインでのPI制御の期間であり、目標アドミタンスに到達すると、第2の期間である低ゲインでのPI制御の期間となる。目標アドミタンスの75%という十分に目標アドミタンスに近い値まで100%の固定デューティ制御となるので、ガスセンサ1の昇温に要する時間は短縮される。
【0050】
図8(A)、図8(B)、図8(C)は本ガス濃度検出装置と従来のものとを比較するためのタイミングチャートであり、モニタアドミタンスの経時変化を示している。図8(A)が本ガス濃度検出装置のものである。図8(B)は、アドミタンスが目標アドミタンスの75%に到達するまでは固定デューティ制御で、以降はPI制御に切り換わるが、そのゲインを小さめに設定している(例えばP項ゲイン=2、I項ゲイン=3)。図8(C)は、アドミタンスが目標アドミタンスの75%に到達するまでは固定デューティ制御で、以降はPI制御に切り換わるが、そのゲインを高めに設定している(例えばP項ゲイン=80、I項ゲイン=3)。
【0051】
図8(B)のものでは、PI制御が低ゲインに設定してあるため、アドミタンスがある程度、目標アドミタンスに近づいてからPI制御に切り換わると、切り換わりの直後においてアドミタンスの検出値と目標値との偏差が小さいことで、P項、I項も小さな値しかとることができない。このため、100%の固定デューティからPI制御に切り換わった直後にモニタアドミタンスに落ち込みが生じることになる。
【0052】
また、図8(C)のものでは、PI制御が高ゲインに設定してあるため、PI制御に切り換わっても、アドミタンスに落ち込みが生じることはないが、ゲインが大きいために目標アドミタンスに到達後、収束が困難でハンチングが生じる。
【0053】
これらに対して、本発明を示す図8(A)では、モニタアドミタンスが目標アドミタンスの75%から目標アドミタンスの100%までの期間は高ゲインであるから、モニタアドミタンスと目標アドミタンスとの偏差が小さくとも落ち込みが生じることなく目標アドミタンスに向けて緩やかに上昇する。そして、目標アドミタンスに到達以後は、低いゲインのPI制御に切り換わるから、駆動デューティの調整が分解能よくなされ、ハンチングを生じることなく、スムーズにモニタアドミタンスが目標アドミタンスに維持される。このように、モニタアドミタンスをスムーズに目標アドミタンスに維持することと、PI制御に切り換わった直後のモニタアドミタンスの落ち込みの回避とを両立することができる。
【0054】
なお、各制御期間におけるPI制御のゲインは、具体的なガスセンサの仕様等に基づいて適宜設定することになるのは勿論である。また、ステップS303ではモニタアドミタンスを目標アドミタンスの100%と比較しているが、必ずしも厳密に100%である必要はなく、例えば90%程度とし得る。
【0055】
(第2実施形態)
図9に本発明の別のガス濃度検出装置のマイクロコンピュータで実行されるヒータ通電制御のフローを示す。本実施形態は、基本的な構成は第1形態のものと同じで、第1実施形態において、ヒータ通電制御を別の内容に変えたもので、第1実施形態と実質的に同じ作動をする部分には同じ番号を付して説明する。
【0056】
ステップS401では、モニタアドミタンスが所定値である目標アドミタンスの100%以上か否かを判定し、否定判断されるとステップS402で駆動デューティを100%に固定する固定デューティ制御を実行しリターンに抜ける。これにより、ガスセンサ1の温度が速やかに上昇する。
【0057】
モニタアドミタンスが目標アドミタンスの100%に到達し、ステップS401が肯定判断されるとステップS403で所定期間が経過したか否かを判定する。経過時間はステップS401が肯定判断された時点でスタートするタイマによりカウントされる。否定判断されると、ステップS404でPI制御を実行する。このときのPI制御では後述するステップS405のPI制御よりも高いゲインに設定される。例えば、P項ゲインを80と、I項ゲインを3とする。したがって、モニタアドミタンスが目標アドミタンスの100%に到達した直後は、PI制御は高ゲインである。
【0058】
ステップS403が肯定判断されるとステップS405でPI制御を実行するが、このときのPI制御では、ゲインが例えば、P項ゲインを2と、I項ゲインを3とし、低めに切り換えられる。
【0059】
したがって、本ガス濃度検出装置によれば、モニタアドミタンスが目標アドミタンスの100%に到達するまでは固定デューティ制御の期間であり、その直後は高ゲインでのPI制御の期間であり、所定時間が経過すると、低ゲインでのPI制御の期間となる。
【0060】
本ガス濃度検出装置によれば、モニタアドミタンスが目標アドミタンスの100%に到達した直後は、PI制御のゲインが高めに設定されるから、ガスセンサ1からの放熱が多くとも、駆動電力が不足しない。固定デューティ制御が終了する、モニタアドミタンスが目標アドミタンスの100%に到達した直後において、モニタアドミタンスの落ち込みが回避される。その後、PI項のゲインは小さめに設定されるから、ハンチングを生じるとなくスムーズにモニタアドミタンスを目標アドミタンスに維持することができる。
【0061】
なお、ステップS401ではモニタアドミタンスを目標アドミタンスの100%と比較しているが、必ずしも厳密に100%である必要はなく、例えば90%程度とし得る。
【0062】
(第3実施形態)
図10に本発明の別のガス濃度検出装置のマイクロコンピュータで実行されるヒータの通電制御のフローを示す。本実施形態は、基本的な構成は第1形態のものと同じで、第1実施形態において、ヒータ通電制御を別の内容に変えたもので、第1実施形態と実質的に同じ作動をする部分には同じ番号を付して説明する。
【0063】
ステップS501では、前記ステップS301のごとくモニタアドミタンスが所定値である目標アドミタンスの75%以上か否かを判定し、否定判断されるとステップS502で駆動デューティを100%に固定する固定デューティ制御を実行しリターンに抜ける。これにより、ガスセンサ1の温度が速やかに上昇する。
【0064】
モニタアドミタンスが目標アドミタンスの75%に到達し、ステップS501が肯定判断されるとステップS503でPI制御を実行する。このときのPI制御では、ゲインが例えば、P項ゲインを2と、I項ゲインを3とする。アドミタンスを目標値にスムーズに維持するのに適した低めに設定される。そして、PI制御におけるI項は固定デューティ制御からPI制御に切り換わった直後の初期値に0ではない値が与えられる。この値の符号は、駆動デューティが増大する方向の値が与えられる。
【0065】
本ガス濃度検出装置によれば、モニタアドミタンスが目標アドミタンスの75%に到達すると、低ゲインのPI制御に切り換わることになるが、I項に0ではない所定の初期値が与えられるので、ゲインが小さくともPI制御に切り換わった直後においても、I項が不足せず、モニタアドミタンスの落ち込みが回避される。そして、モニタアドミタンスが目標アドミタンスに達し、モニタアドミタンスを目標アドミタンスに維持する段階に移行しても、ハンチングを生じることなくスムーズに目標値に維持することができる。
【0066】
なお、I項の初期値は、PI制御に切り換わった直後にモニタアドミタンスの落ち込みを回避するのに必要な駆動デューティや、目標アドミタンスに到達するまでに蓄積されるI項によって目標アドミタンス到達直後にオーバーシュートが生じるのを回避可能な、許容されるI項の値を考慮して設定する。
【0067】
(第4実施形態)
図11に本発明の別のガス濃度検出装置のマイクロコンピュータで実行されるヒータの通電制御のフローを示す。本実施形態は、基本的な構成は第1形態のものと同じで、第1実施形態において、ヒータ通電制御を別の内容に変えたもので、第1実施形態と実質的に同じ作動をする部分には同じ番号を付して説明する。
【0068】
ステップS601では、前記ステップS301のごとくモニタアドミタンスが所定値である目標アドミタンスの75%以上か否かを判定し、否定判断されるとステップS602で、I項に、モニタアドミタンスYと目標アドミタンスY0 との偏差にゲインKi を乗じたものを加算して、加算したものによりI項を更新する。これは始動時を初期値(=0)として求められる。
【0069】
続くステップS603では、駆動デューティを100%に固定する固定デューティ制御を実行しリターンに抜ける。これにより、ガスセンサ1の温度が速やかに上昇する。
【0070】
モニタアドミタンスが目標アドミタンスの75%に到達し、ステップS601が肯定判断されるとステップS604でPI制御を実行する。このときのPI制御では、ゲインが例えば、P項ゲインを2と、I項ゲインを3とする。アドミタンスを目標値にスムーズに維持するのに適した低めに設定される。このときの、I項の算出は、前記ステップS602の算出結果を引き継いでなされる。
【0071】
本ガス濃度検出装置によれば、モニタアドミタンスが目標アドミタンスの75%に到達すると、低ゲインのPI制御に切り換わることになるが、切り換わり直後においては、I項にステップS602で算出した値が与えられている。したがって、第3実施形態と同様に、ゲインが小さくともPI制御に切り換わった直後においてI項が不足せず、モニタアドミタンスの落ち込みを防止することができる。そして、モニタアドミタンスが目標アドミタンスに達し、モニタアドミタンスを目標アドミタンスに維持する段階に移行しても、ハンチングを生じることなくスムーズに目標アドミタンスに維持することができる。
【0072】
なお、I項の算出を開始する時期は始動時に限られず、例えば、モニタアドミタンスが予め設定した所定値を越えたら開始するようにしてもよい。
【0073】
(第5実施形態)
図12に本発明の別のガス濃度検出装置のマイクロコンピュータで実行されるヒータの通電制御のフローを示す。本実施形態は、基本的な構成は第1形態のものと同じで、第1実施形態において、ヒータ通電制御を別の内容に変えたもので、第1実施形態と実質的に同じ作動をする部分には同じ番号を付して説明する。
【0074】
ステップS701では、モニタアドミタンスが目標値である目標アドミタンスの100%以上か否かを判定し、否定判断されるとステップS702でPI制御を実行する。このときのPI制御では、ゲインが例えば高めに設定される。
【0075】
そして、ステップS701が肯定判断されるとステップS703でPI制御のゲインを低めに切り換える。
【0076】
本ガス濃度検出装置によれば、先ず、高ゲインにて駆動デューティが求められる。ここで、P項のゲインを、目標アドミタンスに到達するまでの期間において駆動デューティが100%もしくはこれに準ずる程度に高いものとなるように設定する。I項のゲインは、目標アドミタンスに到達時のI項の値がモニタアドミタンスに落ち込みを生じない程度に抑制されるように設定する。これにより、目標アドミタンスに到達するまでは、実質的に固定デューティ制御のごとく昇温速度が速い通電制御となる。そして、目標アドミタンスに達すると、低ゲインに切り換わるから、ハンチングを生じるとなくスムーズに目標値に維持することができる。目標アドミタンスに達した時点でI項にはそれまでの蓄積があるので、モニタアドミタンスに落ち込みが生じることもない。なお、高ゲイン時のゲインは、目標アドミタンスに達した直後にアドミタンスがオーバーシュートしないように最適化される。
【0077】
なお、ステップS701ではモニタアドミタンスを目標アドミタンスの100%と比較しているが、必ずしも厳密に100%である必要はなく、例えば90%程度とし得る。
【0078】
なお、前記各実施形態ではアドミタンスを検出しているが、アドミタンスの逆数であるインピーダンスを検出するようにしてもよい。実質的に等価だからである。その他、固体電解質層の温度状態が知られるものであれば、駆動デューティの指令値の演算に利用することができる。
【0079】
また、ヒータ通電がPWM制御によるものでなくとも本発明は好適に適用することができる。
【0080】
また、アドミタンス検出時にモニタセルへの印加電圧を変化させているが、電流を変化させてもよい。電流変化に対してアドミタンスに応じた電圧変化が生じるからである。
【0081】
また、本発明は3セル構造のガスセンサに限らず、1セル構造、2セル構造のものにも適用することができ、ガスセンサの形状も任意である。被測定ガスの温度や流速により、ガスセンサから放熱する熱は異なり、ガスセンサの形状や内部構造が相対的に放熱しにくいものであっても、本発明が解決しようとした課題が依然として存在するからである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のガスセンサのヒータ制御装置を適用した第1のガス濃度検出装置の構成図である。
【図2】前記ガスセンサの要部断面図である。
【図3】図2におけるIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図2におけるIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】前記ガス濃度検出装置を構成するマイクロコンピュータで実行される制御内容を示す第1のフローチャートである。
【図6】前記ガス濃度検出装置を構成するマイクロコンピュータで実行される制御内容を示す第2のフローチャートである。
【図7】前記ガス濃度検出装置を構成するマイクロコンピュータで実行される制御内容を示す第3のフローチャートである。
【図8】(A)は前記ガス濃度検出装置におけるモニタアドミタンスの経時変化を示す図であり、(B),(C)はそれぞれ、前記ガス濃度検出装置と比較する従来例におけるモニタアドミタンスの経時変化を示す図である。
【図9】本発明のガスセンサのヒータ制御装置を適用した第2のガス濃度検出装置を構成するマイクロコンピュータで実行される制御内容を示すフローチャートである。
【図10】本発明のガスセンサのヒータ制御装置を適用した第3のガス濃度検出装置を構成するマイクロコンピュータで実行される制御内容を示すフローチャートである。
【図11】本発明のガスセンサのヒータ制御装置を適用した第4のガス濃度検出装置を構成するマイクロコンピュータで実行される制御内容を示すフローチャートである。
【図12】本発明のガスセンサのヒータ制御装置を適用した第5のガス濃度検出装置を構成するマイクロコンピュータで実行される制御内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 ガスセンサ
1a ポンプセル
1b モニタセル
1c センサセル
13 ヒータ
111,112 固体電解質層(固体電解質材)
121,122,123,124,125 電極
243 抵抗器(温度状態検出手段)
28 マイクロコンピュータ(指令値演算手段、温度状態検出手段)
Claims (9)
- ガスセンサの固体電解質材を活性温度にするヒータに対し、通電の制御を実行するガスセンサのヒータ制御装置において、
前記固体電解質材の温度状態を検出する温度状態検出手段と、
通電量の指令値を演算する指令値演算手段であって、温度状態の検出値がその目標値よりも低い所定値に達するまでの期間においては、通電量の指令値を固定値とし、温度状態の検出値が前記所定値を越えると、検出値と前記目標値との偏差に基づいて少なくとも該偏差に比例する比例項および前記偏差の積算値に比例する積分項を演算し、通電量の指令値を、前記演算の結果に基づくフィードバック値とする指令値演算手段とを具備し、
該指令値演算手段を、温度状態の検出値が前記所定値を越えてから該所定値よりも大なる別の所定値に達するまでの第1の期間よりも、前記別の所定値に達してからの第2の期間の方が、前記比例項の利得が小さくなるように設定したことを特徴とするガスセンサのヒータ制御装置。 - 請求項1記載のガスセンサのヒータ制御装置において、前記別の所定値は前記目標値であり、前記第1の期間が、温度状態の検出値が前記所定値を越えてから前記目標値に達するまでの期間であるガスセンサのヒータ制御装置。
- ガスセンサの固体電解質材を活性温度とするヒータに対し、通電の制御を実行するガスセンサのヒータ制御装置において、
前記固体電解質材の温度状態を検出する温度状態検出手段と、
通電量の指令値を演算する指令値演算手段であって、温度状態の検出値が所定値に達するまでの期間においては、通電量の指令値を固定値とし、温度状態の検出値が前記所定値に達すると、検出値と前記目標値との偏差に基づいて、少なくとも該偏差に比例する比例項および前記偏差の積算値に比例する積分項を演算し、通電量の指令値を、前記演算の結果に基づくフィードバック値とする指令値演算手段とを具備し、
該指令値演算手段を、温度状態の検出値が前記所定値に達してから所定の期間内よりも、該所定期間以降の方が、前記比例項の利得が小さくなるように設定したことを特徴とするガスセンサのヒータ制御装置。 - 請求項3記載のガスセンサのヒータ制御装置において、前記所定値は温度状態の検出値の目標値であるガスセンサのヒータ制御装置。
- ガスセンサの固体電解質材を活性温度にするヒータに対し、通電の制御を実行するガスセンサのヒータ制御装置において、
前記固体電解質材の温度状態を検出する温度状態検出手段と、
通電量の指令値を演算する指令値演算手段であって、温度状態の検出値がその目標値よりも低い所定値に達するまでの期間においては、通電量の指令値を固定値とし、温度状態の検出値が前記所定値を越えると、前記温度状態の検出値とその目標値との偏差に基づいて、少なくとも該偏差に比例する比例項および前記偏差の積算値に比例する積分項を演算し、通電量の指令値を、前記演算の結果に基づくフィードバック値とする指令値演算手段とを具備し、
該指令値演算手段を、温度状態の検出値が前記所定値を越えてフィードバック制御が開始された時に、前記積分項に、通電量を増大する方向の所定の初期値を与えるように設定したことを特徴とするガスセンサのヒータ制御装置。 - ガスセンサの固体電解質材を活性温度とするヒータに対し、通電の制御を実行するガスセンサのヒータ制御装置において、
前記固体電解質材の温度状態を検出する温度状態検出手段と、
通電量の指令値を演算する指令値演算手段であって、温度状態の検出値がその目標値よりも低い所定値に達するまでの期間においては、通電量の指令値を固定値とし、温度状態の検出値が前記所定値を越えると、前記温度状態の検出値とその目標値との偏差に基づいて、少なくとも該偏差に比例する比例項および前記偏差の積算値に比例する積分項を演算し、通電量の指令値を、前記比例項と積分項とを含む演算の結果に基づくフィードバック値とする指令値演算手段とを具備し、
該指令値演算手段を、温度状態の検出値が前記所定値に達するよりも前から、前記積分項の演算を開始するように設定したことを特徴とするガスセンサのヒータ制御装置。 - ガスセンサの固体電解質材を活性温度とするヒータに対し、通電の制御を実行するガスセンサのヒータ制御装置において、
前記固体電解質材の温度状態を検出する温度状態検出手段と、
通電量の指令値を演算する指令値演算手段であって、前記温度状態の検出値とその目標値との偏差に基づいて、少なくとも該偏差に比例する比例項および前記偏差の積算値に比例する積分項を演算し、通電量の指令値を、前記演算の結果に基づくフィードバック値とする指令値演算手段とを具備し、
該指令値演算手段を、温度状態の検出値が所定値に達するまでの期間よりも、該所定値に達してからの期間の方が、前記比例項の利得が小さくなるように設定したことを特徴とするガスセンサのヒータ制御装置。 - 請求項7記載のガスセンサのヒータ制御装置において、前記所定値は温度状態の検出値の目標値であるガスセンサのヒータ制御装置。
- 請求項1ないし8いずれか記載のガスセンサのヒータ制御装置において、前記ヒータはガスセンサと一体に設けられるガスセンサのヒータ制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002239115A JP2004077328A (ja) | 2002-08-20 | 2002-08-20 | ガスセンサのヒータ制御装置 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002239115A JP2004077328A (ja) | 2002-08-20 | 2002-08-20 | ガスセンサのヒータ制御装置 |
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JP2004077328A true JP2004077328A (ja) | 2004-03-11 |
Family
ID=32022302
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2002239115A Pending JP2004077328A (ja) | 2002-08-20 | 2002-08-20 | ガスセンサのヒータ制御装置 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2004077328A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2014122956A1 (ja) * | 2013-02-08 | 2014-08-14 | ボッシュ株式会社 | ラムダセンサ予熱制御方法及びラムダセンサ駆動制御装置 |
CN106588703A (zh) * | 2016-10-26 | 2017-04-26 | 山东天化学股份有限公司 | 一种高纯度的4,4’‑氧代双苯磺酰氯的制备方法 |
JP7452323B2 (ja) | 2020-08-18 | 2024-03-19 | 株式会社デンソー | ガス濃度検出装置 |
-
2002
- 2002-08-20 JP JP2002239115A patent/JP2004077328A/ja active Pending
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