JP2004076321A - 水路構造体の表面補強方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】土砂等を含む水流による磨耗や損傷から水路構造体のコンクリート表面を保護、補修するための、水路構造体の表面補強方法を提供する。
【解決手段】高強度繊維を用いた織物等からなる繊維シート12の表面に、ウレア系等の樹脂11をコーティングする。次いで、こうして得られた可撓性補強材10の裏面に、必要に応じて不織布を介在させつつ、1m2 当たり0.3kg以上の接着剤13を塗付して、これをコンクリート表面15に貼り付ける。
【選択図】 図1
【解決手段】高強度繊維を用いた織物等からなる繊維シート12の表面に、ウレア系等の樹脂11をコーティングする。次いで、こうして得られた可撓性補強材10の裏面に、必要に応じて不織布を介在させつつ、1m2 当たり0.3kg以上の接着剤13を塗付して、これをコンクリート表面15に貼り付ける。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水路構造体のコンクリート表面を補強して、当該表面を衝撃や磨耗から保護しまたは当該表面に生じた損傷を補修する方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
ボックスカルバート(函渠)等の水路は、水流中に含まれる土砂等によって磨耗したり、損傷を受けたりする。そこで、水路のコンクリート表面にウレタン樹脂(ポリウレア樹脂)を塗布または吹き付ける保護または補修方法が提案されているが、こうして得られる保護膜はコンクリート表面での接着強度が十分ではなく、しかも絶えず水流に晒されることでコンクリート表面から剥がれ落ちやすいという問題がある。
【0003】
特開2001−214421号公報には、かかる問題を解決するために、あらかじめ水路のコンクリート表面に所定の間隔で溝を設けておき、その溝を含めてウレタン樹脂等の吹付け・塗布を行なう水路の保護方法を提案している。
この方法によれば、投錨効果(アンカー効果)によって、保護膜とコンクリート表面との接着効果を向上させることができるものの、保護膜の接着強度そのものが未だ十分ではないという問題がある。しかも、水路の保護膜に対して落下物等による衝撃が加わり、下地のコンクリート構造体に破損が生じたりすると、保護膜の剥離が加速されるという問題もある。
【0004】
コンクリート構造物の補強方法としては、高強度繊維シートと樹脂モルタルを用いる方法(特許第3180329号)が知られている。しかしながら、例えばボックスカルバートのように断面矩形状の水路を補強する場合には、剥離を防止するために水路の角部にまで隙間なく繊維シートを貼り付ける必要があり、それゆえ繊維シートには柔軟性が求められるものの、上記特許公報に記載の高強度繊維シートは剛性が大きすぎることから、これを使用して水路構造体の表面を保護するのは困難である。
特許第2605893号には、長繊維不織布層と合成樹脂フィルム層と不織布層とを一体化してなる三層構造積層体を用いて、塗膜防水層を接着保持せしめる下張り緩衝材が提案されている。しかしながら、この緩衝材の場合、合成樹脂フィルム層と他の層との間の剥離性に難点がある。
【0005】
そこで本発明の目的は、土砂等を含む水流による磨耗や損傷から水路構造体のコンクリート表面を保護、補修するための、水路構造体の表面補強方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
上記課題を解決するための本発明に係る水路構造体の表面補強方法は、
(I) 繊維シートの表面に樹脂をコーティングしてなる可撓性補強材を、その裏面に1m2 当たり0.3kg以上の接着剤を塗付した状態でコンクリート表面に貼り付ける、または
(II)繊維シートと不織布との積層体の繊維シート側表面に樹脂をコーティングしてなる可撓性補強材を、その不織布側の表面に1m2 当たり0.3kg以上の接着剤を塗付した状態でコンクリート表面に貼り付ける
ことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る水路構造体の表面補強方法において、コンクリート表面の補強に用いるシート(補強材)は可撓性を備えるものであることから、水路の角部にまで隙間なく貼り付けることができ、不陸がある場合であってもコンクリート表面に密着して接着させることができる。
しかも、本発明に用いられる上記の可撓性補強材は繊維シートに樹脂をコーティングしたものであることから、コンクリートの表面を補強して磨耗や衝撃に対する耐性を向上させる効果が得られるだけでなく、コンクリートの表面が直接水と接触するのを防ぐことができ、コンクリート自体の劣化、鉄筋、金具等の錆の発生、繊維シートや不織布の腐食、劣化等を防止することもできる。
【0008】
さらに、本発明に係る水路構造体の表面補強方法においては、1m2 当たり0.3kg以上の接着剤を用いて可撓性補強材をコンクリート表面に接着させており、これによって、コンクリートと、その補強層としての可撓性補強材との接着を強固なものとすることができる。また、補強層を短い工期でかつ簡易な方法で形成することができ、補強層の耐久性や物性の安定性を優れたものとすることができる。
【0009】
可撓性補強材が上記(II)に示すように、繊維シートだけでなく、不織布をも備えるものであるときには、可撓性補強材の表層における樹脂コーティング材と、可撓性補強材の裏面における接着剤との間の物理接着の程度をより一層強くすることができる。
【0010】
本発明に係る水路構造体の表面補強方法において、可撓性補強材の形成(コーティング)に用いられる樹脂は、
(i) ウレア系樹脂、および/または
(ii)デュロメータ硬さ(タイプA)が80〜97、引張強さが15MPa以上、伸びが300%以上、および引裂強さが500N/cm以上の樹脂
であるのが好ましい。
繊維シートのコーティングに用いられる樹脂としては、補強材を水路構造体のコーナー部分等において折り曲げて接着した場合であっても、コーティング材に亀裂、ひび割れ、繊維シートとの剥離を生じることのない程度の可撓性(柔軟性)を付与することのできるものであればよい。具体的には、ウレア系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂、あるいは熱可塑性樹脂などの、従来公知の種々の樹脂をコーティング用樹脂として用いることができる。
【0011】
しかしながら、上記例示の樹脂の中でも特に上記(i) のウレア系樹脂を用いたときには、可撓性補強材の可撓性(柔軟性)を良好なものとすることができる。しかも、可撓性補強材に防水性を付与することができ、可撓性補強材が長期間に亘って水中にある場合であっても、繊維シートに腐食、劣化が生じるのを防止することができる。
また、上記(ii)に示すような物性を有する樹脂を用いて繊維シートをコーティングしたときには、繊維の耐久性を長期間にわたって維持することができるといった効果が得られる。
【0012】
本発明に係る水路構造体の表面補強方法において、繊維シートは織物であるのが好ましい。コンクリート表面の補強材を構成する繊維シートに織物を使用したときには、当該織物の2方向性に起因して、可撓性補強材とその接着面との間のズレを防止することができる。
本発明に係る水路構造体の表面補強方法において、織物に用いられる繊維シートは、アラミド繊維、ビニロン樹脂および炭素繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の高強度繊維を用いた織物であるのが好ましい。
【0013】
可撓性補強材を形成する繊維シートとしては、十分な強度を有するものであれば特に限定されるものではない。しかしながら、上記例示の高強度繊維を用いた織物を繊維シートとして採用することにより、水路構造体の表面の補強効果を極めて高いものとすることができる。さらに、上記例示の高強度繊維を用いたときには、水路構造体のクラック伸長(下地コンクリートのひび割れの発生やその拡がり)、変位(コンクリートのひび割れによる段差の発生)を抑制することができ、躯体および表面の剥離(コンクリート躯体と、モルタル等の表面補修剤との剥離・剥がれ)を抑制することができる。
【0014】
本発明に係る水路構造体の表面補強方法において、可撓性補強材の厚み、すなわち繊維シートまたは繊維シートと不織布との積層体に樹脂をコーティングした状態での厚みは、1〜20mmであるのが好ましい。
可撓性補強材の厚みを上記範囲に設定することによって、水路構造体のコンクリート表面に対する十分な補強効果と、可撓性補強材を施工する際の作業性とを両立させることができる。
【0015】
本発明に係る水路構造体の表面補強方法において、接着剤は、水中で硬化するエポキシ樹脂接着剤であるのが好ましい。
水中硬化型のエポキシ樹脂接着剤を用いることにより、水路構造体の表面に接着された可撓性補強材の耐水性を向上させることができる。また、水路構造体の場合はとりわけ、可撓性補強材を接着する際のコンクリート表面の完全な清掃、乾燥に限界があるものの、水中硬化型のエポキシ樹脂接着剤を用いることによって可撓性補強材の接着強度を上昇させることができ、湿潤面に対しても十分な接着を実現することができる。
【0016】
本発明に係る水路構造体の表面補強方法において、接着剤の塗付量は、可撓性補強材1m2 当たり0.6〜2kgであるのが好ましい。
接着剤の塗付量を上記範囲に設定することによって、コンクリート表面での可撓性補強材の接着性をより一層強固なものとすることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る水路構造体の表面補強方法について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1および図2は、本発明に係る水路構造体の表面補強方法によって形成された表面補強材を示す断面図である。
図1に示す表面補強材10は、表面に樹脂11をコーティングしてなる繊維シート12を、その裏面に所定量の接着剤13を塗布した状態で水路構造体のコンクリート表面15に貼り付けることによって形成される。
【0018】
図2に示す表面補強材20は、表面に樹脂21をコーティングしてなる繊維シート22と、不織布24との積層体を、その裏面(不織布24側の表面)に所定量の接着剤23を塗布した状態で水路構造体のコンクリート表面15に貼り付けることによって形成される。
【0019】
〔可撓性補強材〕
本発明に用いられるコンクリート表面の補強材(可撓性補強材)は、繊維シートに樹脂をコーティングしてなるものであって、樹脂をコーティングした状態で可撓性(柔軟性)を示すものである。
本発明に用いられる可撓性補強材は、繊維シートに対してあらかじめ樹脂をコーティングしておき、こうして得られた可撓性補強材をコンクリート表面の補強処理に用いるものであるが、このようにあらかじめ樹脂のコーティングを施しておくことによって、繊維シートや不織布の内部に溜められた空気を排出することができ、その結果、繊維シートや不織布の内部に溜められた空気を排出して、その接着力を上昇させることができる。
【0020】
図3は、図1に示す表面補強材10の形成に用いられる繊維シート12の製造方法を示す模式図であって、図4は、図2に示す表面補強材20の形成に用いられる繊維シート22の製造方法を示す模式図である。
図1に示す表面補強材10は、ローラ17に巻き取られた繊維シート12を台盤上18に連続的に送り出し、その表面に樹脂チップ16を散布、溶融して、スキージ19で樹脂の厚みを適宜調節しつつ、繊維シート12上に樹脂層11を接着固定することによって得られる。
【0021】
図2に示す表面補強材20は、ローラ17aに巻き取られた繊維シート22と、ローラ17bに巻き取られた不織布23とを、ぞれぞれ台盤18上に連続的に送り出したほかは、図1に示す表面補強材10の場合と同様に、その表面に樹脂チップ16を散布、溶融して、スキージ19で樹脂の厚みを適宜調節しつつ、繊維シート12上に樹脂層11を接着固定することによって得られる。
【0022】
本発明に用いられる可撓性補強材は、前述のように、樹脂をコーティングした状態で可撓性(柔軟性)を示すものである。その可撓性(柔軟性)としては、例えばシートを90度に折り曲げたときにもコーティング材に亀裂、割れ、繊維シートとの剥離等を生じることのない程度であることが求められる。
可撓性補強材の厚み、すなわち繊維シートまたは繊維シートと不織布との積層体に樹脂をコーティングした状態での厚みは、水路構造体のコンクリート表面に対する十分な補強効果と、可撓性補強材を施工する際の作業性とを両立させるという観点から、前述のように、1〜20mmの範囲で設定するのが好ましい。
可撓性補強材の厚みが1mmを下回ると、繊維シート上にて樹脂を均一にコーティングするのが難しくなり、ピンホールが生じたり、繊維シートに要求される強度を十分に保てなくなったりするおそれがある。十分な耐衝撃性を発揮させつつ、外部からの衝撃による破損、欠損を防止するという観点からは、可撓性補強材の厚みが2mm以上であるのが好ましい。一方、可撓性補強材の厚みが20mmを超えると、作業性が低下するおそれがある。水路構造体の表面補強処理時における作業性をより一層良好なものとするには、可撓性補強材の厚みを15mm以下とするのが好ましい。
【0023】
(繊維シート)
本発明に用いられる繊維シートとしては、可撓性補強材に十分な強度を付与できるものであれば特に限定されるものではなく、シート状に織り込まれたものや、メッシュ状に加工されたものなど、種々のものを採用することができる。
しかしながら繊維シートは、前述のように、織物であるのが特に好ましい。繊維シートに2方向性のある織物を使用することで、可撓性補強材とその接着面との間のズレを防止することができる。
【0024】
さらに、繊維シートの織物は、高強度繊維を用いてなるものであるのがより好ましい。かかる高強度繊維としては、例えばアラミド繊維、ビニロン樹脂、炭素繊維等が挙げられ、これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
上記例示の高強度繊維を用いた織物を繊維シートとして採用することにより、前述のように、水路構造体の表面の補強効果を極めて高いものとすることができる。さらに、水路構造体のクラック伸長や変位を抑制することができ、躯体および表面の剥離を抑制することができる。
【0025】
(樹脂)
繊維シート表面のコーティングに用いる樹脂は、前述のように、繊維シートにコーティングを施した後で水路構造体のコーナー部分等にて折り曲げた状態で敷設されたとしても、コーティング材に亀裂、ひび割れ、繊維シートとの剥離を生じることのない程度の可撓性(柔軟性)を備えるものであればよい。
かかる樹脂としては、例えばウレア系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂、あるいは熱可塑性樹脂などの、従来公知の種々の樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0026】
樹脂に要求される柔軟性(硬化後)とは、具体的に、樹脂が硬化した状態で、その伸びが50%以上という程度であることが求められる。
上記例示の樹脂のうち、ウレア系の樹脂としては、例えばウレアウレタン樹脂、ポリウレア樹脂等が挙げられる。
本発明に用いられるコーティング用の樹脂としては、可撓性補強材の成形性の観点から、可使時間が数秒から1分程度の速硬化性樹脂を用いるのが好ましい。コーティング用の樹脂にある程度の速硬化性がないと、繊維シートの表面部分において樹脂をコーティングすることができず、繊維シートや不織布の内部にまで樹脂が浸透、吸収されてしまう。それゆえ、可撓性補強材の表面にある程度の厚みの樹脂層を形成することができなくなる。
【0027】
樹脂を繊維シートの表面にコーティングするのに際して、連続した可撓性補強材を形成する場合には、平面的に敷き並べた複数枚の繊維シートの隣接する端部同士をある程度重ね合わせた上で、樹脂をコーティングするのが好ましい。これにより、補強材全体を連続性がありかつ耐久性を備える補強材として用いることができる
【0028】
可撓性シートの耐老化性、耐水性、耐候性等をより一層高める上で、上記樹脂を用いてなるコーティング層の表面にトップコート材を塗付してもよい。特に、本発明の表面補強方法によって補強されるコンクリート表面が暗渠、管路、セグメント等におけるコンクリート表面ではなく、開放部分や開渠等のように、日光に晒される場合においては、トップコート材の塗付が効果的である。
使用可能なトップコート材としては特に限定されるものではないが、例えばアクリルウレタン樹脂、フッ素樹脂、アクリルシリコーン樹脂等のほか、上記例示のコーティング用樹脂に紫外線吸収剤等を含有させたもの等が挙げられる。
【0029】
(不織布)
本発明に用いられる可撓性補強材は、繊維シートの表面に樹脂をコーティングしてなるものに限定されるものではなく、繊維シートと不織布との積層体の表面に樹脂をコーティングしたものであってもよい。
上記繊維シートは、前述のように、シート状に織り込まれたものとメッシュ状に加工されたもの等が挙げられるが、特にメッシュ状の繊維シートを使用する際には、当該繊維シートの裏面において、接着基布層として不織布を積層するのが好ましい。
【0030】
本発明に用いられる不織布は、可撓性補強材に十分な強度を付与できるものであれば特に限定されるものではなく、材質、製造方法を問わず、従来公知の種々の不織布を用いることができる。
なかでも、上記不織布は、繊維シートおよび繊維シートのコーティング材である樹脂と、可撓性補強材の裏面に塗付される接着剤との挿嵌の物理接着を良好なものとする上で、通気性を有し、かつその厚さが0.5mm以上であるものを用いるのが好ましい。
不織布の目付け量は特に限定されるものではないが、30〜300g/m2 であるのが好ましい。
【0031】
〔接着剤〕
本発明に用いられる接着剤は特に限定されるものではなく、可撓性補強材と水路構造体のコンクリート表面とを強固に接着し得るものであればよい。
接着剤の塗付量は、前述のように、可撓性補強材の裏面1m2 当たり0.3kg以上となるように設定される。
接着剤の塗付量が上記範囲を下回ると、繊維シートや不織布の吸収によって実質的に接着の用に供される接着剤の量が少なくなってしまい、可撓性補強材の接着強度が低下するという問題が生じる。また、空気層の侵入によって、可撓性補強材の接着強度の低下がより一層顕著になるという問題もある。
【0032】
接着剤の塗付量が上記範囲に設定することで、十分な接着強度を得ることができるが、実用上、その上限値は可撓性補強材の裏面1m2 当たり2kgである。接着剤の塗付量が可撓性補強材の裏面1m2 当たり0.6〜1.5kgであるときは、コンクリート表面に対する接着性をより一層良好なものとすることができ、当該表面の不陸に対しても柔軟に対応させることができる。
【0033】
【実施例】
次に、実施例および比較例を挙げて、本発明について説明する。
〔可撓性補強材の製造および水路構造体表面の補強〕
(実施例1)
水路構造体の表面補強材としての可撓性補強材には、繊維シートの表面に樹脂をコーティングしてなる可撓性補強材を用いた。繊維シートには、アラミド繊維を用いた織物〔2方向アラミド繊維シート,ファイベックス(株)製の製品名「AK−40/40」〕を使用し、コーティング用の樹脂にはウレアウレタン樹脂〔住友ゴム(株)製の高強度ウレアウレタン樹脂、製品名「C−856A/H−856B」(C/H=100/78wt%)〕を使用した。可撓性補強材の裏面に塗付する接着剤には、水中硬化型エポキシ樹脂接着剤〔住友ゴム(株)製の製品名「GB−55」(主剤/硬化剤=2/1)〕を使用した。
【0034】
上記繊維シートの一方の表面に上記樹脂を均一に吹き付け、平均厚み3mmのコーティング層を形成することによって可撓性補強材を得た後、その裏面(コーティング層が形成されていない方の繊維シートの表面)に、刷毛、こて等を用いて上記接着剤を含浸塗布させた。
接着剤の塗付は、室温23℃、湿度50%の室内で行ない、その塗付量は、繊維シートの裏面1m2 当たり1.0kgとなるように調整した。
【0035】
次いで、こうして得られた可撓性補強材をJISコンクリート平板(300mm×300mm×60mm)上に敷設し、手で押し付けて圧着させることによって接着させた。
また、上記の可撓性補強材を、あらかじめ水中に1昼夜浸漬させておいたJISコンクリート平板の表面に、液温23℃の水中にて接着させた。接着に際して、接着剤の塗付量は上記の場合と同量に設定した。また、敷設後には、上記の場合と同様に手で押し付けて可撓性補強材を圧着させた。
【0036】
(実施例2)
可撓性補強材の繊維シートとして、アラミド繊維を用いてなるメッシュ〔2方向アラミド繊維メッシュ,ファイベックス(株)製の製品名「AKM−5/5」〕と、厚さ1mmの不織布とを重ね合わせてなるもの(積層体)を用いた。コーティング用の樹脂には、実施例1と同じウレアウレタン樹脂〔前出の「C−856A/H−856B」〕を使用した。接着剤には、実施例1と同じ水中硬化型エポキシ樹脂接着剤(前出の「GB−55」)を使用した。
【0037】
上記積層体のアラミド繊維メッシュ(繊維シート)側の表面に上記樹脂を均一に吹き付け、平均厚み3mmのコーティング層を形成することによって可撓性補強材を得た後、その裏面(不織布側の表面)に、刷毛、こて等を用いて上記接着剤を含浸塗付させた。接着剤の塗付は、実施例1と同様に、室温23℃、湿度50%の室内で行ない、その塗付量は、繊維シートの裏面1m2 当たり1.0kgとなるように調整した。
【0038】
次いで、こうして得られた可撓性補強材をJISコンクリート平板上に敷設し、手で押し付けて圧着させることによって接着させた。
また、上記の可撓性補強材を、あらかじめ水中に1昼夜浸漬させておいたJISコンクリート平板の表面に、液温23℃の水中にて接着させた。接着に際して、接着剤の塗付量は上記の場合と同量に設定した。また、敷設後には、上記の場合と同様に手で押し付けて可撓性補強材を圧着させた。
【0039】
(実施例3)
可撓性補強材の繊維シートとして、ビニロン繊維を用いてなるメッシュ〔2方向ビニロン繊維メッシュ,ファイベックス(株)製の製品名「UK60」〕と、厚さ1mmの不織布とを重ね合わせてなるもの(積層体)を用いた。コーティング用の樹脂には、実施例1と同じウレアウレタン樹脂〔前出の「C−856A/H−856B」〕を使用した。接着剤には、実施例1と同じ水中硬化型エポキシ樹脂接着剤(前出の「GB−55」)を使用した。
【0040】
上記積層体のビニロン繊維メッシュ(繊維シート)側の表面に上記樹脂を均一に吹き付け、平均厚み3mmのコーティング層を形成することによって可撓性補強材を得た後、その裏面(不織布側の表面)に、刷毛、こて等を用いて上記接着剤を含浸塗付させた。接着剤の塗付は、実施例1と同様に、室温23℃、湿度50%の室内で行ない、その塗付量は、繊維シートの裏面1m2 当たり1.0kgとなるように調整した。
【0041】
次いで、こうして得られた可撓性補強材をJISコンクリート平板上に敷設し、手で押し付けて圧着させることによって接着させた。
また、上記の可撓性補強材を、あらかじめ水中に1昼夜浸漬させておいたJISコンクリート平板の表面に、液温23℃の水中にて接着させた。接着に際して、接着剤の塗付量は上記の場合と同量に設定した。また、敷設後には、上記の場合と同様に手で押し付けて可撓性補強材を圧着させた。
【0042】
(比較例1)
離型紙上に、実施例1で使用したのと同じウレアウレタン樹脂〔前出の「C−856A/H−856B」〕を均一に吹き付けた後、離型紙を除去して平均厚み3mmの樹脂シートを作製した。この樹脂シートはウレアウレタン樹脂のみからなるものであって、繊維シートや不織布等を備えていないものである。
上記樹脂シートの一方の面に、実施例1で使用したのと同じ水中硬化型エポキシ樹脂接着剤(前出の「GB−55」)を、刷毛、こて等を用いて塗付した。
【0043】
接着剤の塗付は、実施例1と同様に、室温23℃、湿度50%の室内で行ない、その塗付量は、樹脂シートの一方の表面1m2 当たり1.0kgとなるように調整した。
次いで、こうして得られた接着剤付き樹脂シートをJISコンクリート平板上に敷設し、手で押し付けて圧着させることによって接着させた。
また、上記の接着剤付き樹脂シートを、あらかじめ水中に1昼夜浸漬させておいたJISコンクリート平板の表面に、液温23℃の水中にて接着させた。接着に際して、接着剤の塗付量は上記の場合と同量に設定した。また、敷設後には、上記の場合と同様に手で押し付けて樹脂シートを圧着させた。
【0044】
(比較例2)
可撓性補強材の繊維シートとして、実施例1で得られたのと同じものを使用した。
上記繊維シートの裏面(コーティング層が形成されていない方の繊維シートの表面)に、刷毛、こて等を用いて上記接着剤を含浸塗布させた。接着剤の塗付は、実施例1と同様に、室温23℃、湿度50%の室内で行ない、その塗付量は、繊維シートの裏面1m2 当たり0.2kgとなるように調整した。
【0045】
次いで、こうして得られた可撓性補強材をJISコンクリート平板上に敷設し、手で押し付けて圧着させることによって接着させた。
また、上記の可撓性補強材を、あらかじめ水中に1昼夜浸漬させておいたJISコンクリート平板の表面に、液温23℃の水中にて接着させた。接着に際して、接着剤の塗付量は上記の場合と同量に設定した。また、敷設後には、上記の場合と同様に手で押し付けて可撓性補強材を圧着させた。
【0046】
上記実施例および比較例で得られた可撓性補強材(樹脂シート)および裏面に塗付した接着剤の構成について、表1にまとめて示す。
【0047】
【表1】
【0048】
〔物性評価〕
上記実施例および比較例で得られた可撓性補強材(比較例1は樹脂シート)を1週間放置した後、以下の試験を行なった。
(下地接着性)
可撓性補強材(または樹脂シート)が敷設されてなるコンクリート平板の表面に切込みを設けて、建研式接着試験機を用いて4cm角の引張治具を接着させた後、その周囲にさらにダイヤモンドカッターで切込みを入れて専用の試験機で引っ張った。そのときの剥離強さ(N/mm2 )を測定して、下地との接着性(接着強さ)を評価した。
さらに、剥離が生じた時の状況(剥離の生じた部位)を観察した。剥離状況は、次の3タイプに分類された。
a:コンクリート(下地)の表面に損傷が生じた。
b:コンクリート表面(下地)と可撓性補強材の接着剤との間で剥離が生じた。
c:可撓性補強材の接着剤と表面のコーティング層との間で剥離が生じた。
【0049】
(耐損傷性)
円形の供試体支持台(直径約8cm)上に可撓性補強材(または樹脂シート)が敷設されてなるコンクリート平板を載置して固定した後、可撓性補強材(樹脂シート)の表面に、ラグビーシューズ用スパイクピン(25個)を取り付けてなる回転子(直径15cm,幅8cm)を1kg/cm2 の荷重で圧接させつつ、1000回回転させた。
回転終了後、サンプルの表面に設けられているウレタンコーティング層の磨耗減量分(g)と当該ウレタンコーティング層と接着剤層との相関剥離の状況とを観察して、可撓性補強材の耐損傷性を評価した。
【0050】
(耐衝撃性)
可撓性補強材(または樹脂シート)が敷設されてなるコンクリート平板に対して、1.5mの高さから重さ750gのスパナを連続的に計50回落下させて、可撓性補強材(樹脂シート)の表面における損傷の状況と、コーティング層と繊維シートとの間などにおける剥離の有無を観察することにより、保護材の耐衝撃性を評価した。評価は下記の基準にて行なった。
A:損傷や剥離等の異常が観察されなかった。
B:表面のコーティング層において破損が数箇所で観察されたものの、保護材を貫通する程度の破損は観察されなかった。
C:表面のコーティング層において、保護材を貫通する程度の破損が数箇所で観察された。
【0051】
(剥離強さ)
可撓性補強材(または樹脂シート)の剥離強さを、JIS K 6854「接着剤の剥離接着強さ試験方法」の9.3「浮動ローラー法剥離試験」に記載の方法に準拠して測定した。
【0052】
(総合評価)
以上の各種物性評価の結果をもとに、可撓性補強材ならびに水路構造体の補強効果についての総合的な評価を行った。評価の基準は次のとおりである。
A:可撓性補強材の物性およびコンクリート表面の補強効果がいずれも極めて良好であった。
B:可撓性補強材の物性およびコンクリート表面の補強効果に多少難点があった。
C:可撓性補強材の物性およびコンクリート表面の補強効果が低く、実用上不十分であった。
以上の結果を表2および3に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
表2および3に示した実施例と比較例との対比により明らかなように、繊維シートの表面に樹脂をコーティングしてなる可撓性補強材を使用し、この補強材の裏面に所定量の接着剤を塗付してコンクリート表面に接着させた場合には、コンクリート平板への接着作業を乾燥時と湿潤時のどちらで行なった場合においても、その接着性、耐損傷性、耐衝撃性および剥離強さを良好なものとすることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る水路構造体の表面補強方法によって形成された表面補強材の一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明に係る水路構造体の表面補強方法によって形成された表面補強材の他の実施形態を示す断面図である。
【図3】図1に示す表面補強材10の製造方法の一例を示す模式図である。
【図4】図2に示す表面補強材20の製造方法の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
10,20 可撓性補強材
11,21 樹脂(コーティング材)
12,22 繊維シート
13,23 接着剤
15 コンクリート表面
24 不織布
【発明の属する技術分野】
本発明は、水路構造体のコンクリート表面を補強して、当該表面を衝撃や磨耗から保護しまたは当該表面に生じた損傷を補修する方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
ボックスカルバート(函渠)等の水路は、水流中に含まれる土砂等によって磨耗したり、損傷を受けたりする。そこで、水路のコンクリート表面にウレタン樹脂(ポリウレア樹脂)を塗布または吹き付ける保護または補修方法が提案されているが、こうして得られる保護膜はコンクリート表面での接着強度が十分ではなく、しかも絶えず水流に晒されることでコンクリート表面から剥がれ落ちやすいという問題がある。
【0003】
特開2001−214421号公報には、かかる問題を解決するために、あらかじめ水路のコンクリート表面に所定の間隔で溝を設けておき、その溝を含めてウレタン樹脂等の吹付け・塗布を行なう水路の保護方法を提案している。
この方法によれば、投錨効果(アンカー効果)によって、保護膜とコンクリート表面との接着効果を向上させることができるものの、保護膜の接着強度そのものが未だ十分ではないという問題がある。しかも、水路の保護膜に対して落下物等による衝撃が加わり、下地のコンクリート構造体に破損が生じたりすると、保護膜の剥離が加速されるという問題もある。
【0004】
コンクリート構造物の補強方法としては、高強度繊維シートと樹脂モルタルを用いる方法(特許第3180329号)が知られている。しかしながら、例えばボックスカルバートのように断面矩形状の水路を補強する場合には、剥離を防止するために水路の角部にまで隙間なく繊維シートを貼り付ける必要があり、それゆえ繊維シートには柔軟性が求められるものの、上記特許公報に記載の高強度繊維シートは剛性が大きすぎることから、これを使用して水路構造体の表面を保護するのは困難である。
特許第2605893号には、長繊維不織布層と合成樹脂フィルム層と不織布層とを一体化してなる三層構造積層体を用いて、塗膜防水層を接着保持せしめる下張り緩衝材が提案されている。しかしながら、この緩衝材の場合、合成樹脂フィルム層と他の層との間の剥離性に難点がある。
【0005】
そこで本発明の目的は、土砂等を含む水流による磨耗や損傷から水路構造体のコンクリート表面を保護、補修するための、水路構造体の表面補強方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
上記課題を解決するための本発明に係る水路構造体の表面補強方法は、
(I) 繊維シートの表面に樹脂をコーティングしてなる可撓性補強材を、その裏面に1m2 当たり0.3kg以上の接着剤を塗付した状態でコンクリート表面に貼り付ける、または
(II)繊維シートと不織布との積層体の繊維シート側表面に樹脂をコーティングしてなる可撓性補強材を、その不織布側の表面に1m2 当たり0.3kg以上の接着剤を塗付した状態でコンクリート表面に貼り付ける
ことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る水路構造体の表面補強方法において、コンクリート表面の補強に用いるシート(補強材)は可撓性を備えるものであることから、水路の角部にまで隙間なく貼り付けることができ、不陸がある場合であってもコンクリート表面に密着して接着させることができる。
しかも、本発明に用いられる上記の可撓性補強材は繊維シートに樹脂をコーティングしたものであることから、コンクリートの表面を補強して磨耗や衝撃に対する耐性を向上させる効果が得られるだけでなく、コンクリートの表面が直接水と接触するのを防ぐことができ、コンクリート自体の劣化、鉄筋、金具等の錆の発生、繊維シートや不織布の腐食、劣化等を防止することもできる。
【0008】
さらに、本発明に係る水路構造体の表面補強方法においては、1m2 当たり0.3kg以上の接着剤を用いて可撓性補強材をコンクリート表面に接着させており、これによって、コンクリートと、その補強層としての可撓性補強材との接着を強固なものとすることができる。また、補強層を短い工期でかつ簡易な方法で形成することができ、補強層の耐久性や物性の安定性を優れたものとすることができる。
【0009】
可撓性補強材が上記(II)に示すように、繊維シートだけでなく、不織布をも備えるものであるときには、可撓性補強材の表層における樹脂コーティング材と、可撓性補強材の裏面における接着剤との間の物理接着の程度をより一層強くすることができる。
【0010】
本発明に係る水路構造体の表面補強方法において、可撓性補強材の形成(コーティング)に用いられる樹脂は、
(i) ウレア系樹脂、および/または
(ii)デュロメータ硬さ(タイプA)が80〜97、引張強さが15MPa以上、伸びが300%以上、および引裂強さが500N/cm以上の樹脂
であるのが好ましい。
繊維シートのコーティングに用いられる樹脂としては、補強材を水路構造体のコーナー部分等において折り曲げて接着した場合であっても、コーティング材に亀裂、ひび割れ、繊維シートとの剥離を生じることのない程度の可撓性(柔軟性)を付与することのできるものであればよい。具体的には、ウレア系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂、あるいは熱可塑性樹脂などの、従来公知の種々の樹脂をコーティング用樹脂として用いることができる。
【0011】
しかしながら、上記例示の樹脂の中でも特に上記(i) のウレア系樹脂を用いたときには、可撓性補強材の可撓性(柔軟性)を良好なものとすることができる。しかも、可撓性補強材に防水性を付与することができ、可撓性補強材が長期間に亘って水中にある場合であっても、繊維シートに腐食、劣化が生じるのを防止することができる。
また、上記(ii)に示すような物性を有する樹脂を用いて繊維シートをコーティングしたときには、繊維の耐久性を長期間にわたって維持することができるといった効果が得られる。
【0012】
本発明に係る水路構造体の表面補強方法において、繊維シートは織物であるのが好ましい。コンクリート表面の補強材を構成する繊維シートに織物を使用したときには、当該織物の2方向性に起因して、可撓性補強材とその接着面との間のズレを防止することができる。
本発明に係る水路構造体の表面補強方法において、織物に用いられる繊維シートは、アラミド繊維、ビニロン樹脂および炭素繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の高強度繊維を用いた織物であるのが好ましい。
【0013】
可撓性補強材を形成する繊維シートとしては、十分な強度を有するものであれば特に限定されるものではない。しかしながら、上記例示の高強度繊維を用いた織物を繊維シートとして採用することにより、水路構造体の表面の補強効果を極めて高いものとすることができる。さらに、上記例示の高強度繊維を用いたときには、水路構造体のクラック伸長(下地コンクリートのひび割れの発生やその拡がり)、変位(コンクリートのひび割れによる段差の発生)を抑制することができ、躯体および表面の剥離(コンクリート躯体と、モルタル等の表面補修剤との剥離・剥がれ)を抑制することができる。
【0014】
本発明に係る水路構造体の表面補強方法において、可撓性補強材の厚み、すなわち繊維シートまたは繊維シートと不織布との積層体に樹脂をコーティングした状態での厚みは、1〜20mmであるのが好ましい。
可撓性補強材の厚みを上記範囲に設定することによって、水路構造体のコンクリート表面に対する十分な補強効果と、可撓性補強材を施工する際の作業性とを両立させることができる。
【0015】
本発明に係る水路構造体の表面補強方法において、接着剤は、水中で硬化するエポキシ樹脂接着剤であるのが好ましい。
水中硬化型のエポキシ樹脂接着剤を用いることにより、水路構造体の表面に接着された可撓性補強材の耐水性を向上させることができる。また、水路構造体の場合はとりわけ、可撓性補強材を接着する際のコンクリート表面の完全な清掃、乾燥に限界があるものの、水中硬化型のエポキシ樹脂接着剤を用いることによって可撓性補強材の接着強度を上昇させることができ、湿潤面に対しても十分な接着を実現することができる。
【0016】
本発明に係る水路構造体の表面補強方法において、接着剤の塗付量は、可撓性補強材1m2 当たり0.6〜2kgであるのが好ましい。
接着剤の塗付量を上記範囲に設定することによって、コンクリート表面での可撓性補強材の接着性をより一層強固なものとすることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る水路構造体の表面補強方法について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1および図2は、本発明に係る水路構造体の表面補強方法によって形成された表面補強材を示す断面図である。
図1に示す表面補強材10は、表面に樹脂11をコーティングしてなる繊維シート12を、その裏面に所定量の接着剤13を塗布した状態で水路構造体のコンクリート表面15に貼り付けることによって形成される。
【0018】
図2に示す表面補強材20は、表面に樹脂21をコーティングしてなる繊維シート22と、不織布24との積層体を、その裏面(不織布24側の表面)に所定量の接着剤23を塗布した状態で水路構造体のコンクリート表面15に貼り付けることによって形成される。
【0019】
〔可撓性補強材〕
本発明に用いられるコンクリート表面の補強材(可撓性補強材)は、繊維シートに樹脂をコーティングしてなるものであって、樹脂をコーティングした状態で可撓性(柔軟性)を示すものである。
本発明に用いられる可撓性補強材は、繊維シートに対してあらかじめ樹脂をコーティングしておき、こうして得られた可撓性補強材をコンクリート表面の補強処理に用いるものであるが、このようにあらかじめ樹脂のコーティングを施しておくことによって、繊維シートや不織布の内部に溜められた空気を排出することができ、その結果、繊維シートや不織布の内部に溜められた空気を排出して、その接着力を上昇させることができる。
【0020】
図3は、図1に示す表面補強材10の形成に用いられる繊維シート12の製造方法を示す模式図であって、図4は、図2に示す表面補強材20の形成に用いられる繊維シート22の製造方法を示す模式図である。
図1に示す表面補強材10は、ローラ17に巻き取られた繊維シート12を台盤上18に連続的に送り出し、その表面に樹脂チップ16を散布、溶融して、スキージ19で樹脂の厚みを適宜調節しつつ、繊維シート12上に樹脂層11を接着固定することによって得られる。
【0021】
図2に示す表面補強材20は、ローラ17aに巻き取られた繊維シート22と、ローラ17bに巻き取られた不織布23とを、ぞれぞれ台盤18上に連続的に送り出したほかは、図1に示す表面補強材10の場合と同様に、その表面に樹脂チップ16を散布、溶融して、スキージ19で樹脂の厚みを適宜調節しつつ、繊維シート12上に樹脂層11を接着固定することによって得られる。
【0022】
本発明に用いられる可撓性補強材は、前述のように、樹脂をコーティングした状態で可撓性(柔軟性)を示すものである。その可撓性(柔軟性)としては、例えばシートを90度に折り曲げたときにもコーティング材に亀裂、割れ、繊維シートとの剥離等を生じることのない程度であることが求められる。
可撓性補強材の厚み、すなわち繊維シートまたは繊維シートと不織布との積層体に樹脂をコーティングした状態での厚みは、水路構造体のコンクリート表面に対する十分な補強効果と、可撓性補強材を施工する際の作業性とを両立させるという観点から、前述のように、1〜20mmの範囲で設定するのが好ましい。
可撓性補強材の厚みが1mmを下回ると、繊維シート上にて樹脂を均一にコーティングするのが難しくなり、ピンホールが生じたり、繊維シートに要求される強度を十分に保てなくなったりするおそれがある。十分な耐衝撃性を発揮させつつ、外部からの衝撃による破損、欠損を防止するという観点からは、可撓性補強材の厚みが2mm以上であるのが好ましい。一方、可撓性補強材の厚みが20mmを超えると、作業性が低下するおそれがある。水路構造体の表面補強処理時における作業性をより一層良好なものとするには、可撓性補強材の厚みを15mm以下とするのが好ましい。
【0023】
(繊維シート)
本発明に用いられる繊維シートとしては、可撓性補強材に十分な強度を付与できるものであれば特に限定されるものではなく、シート状に織り込まれたものや、メッシュ状に加工されたものなど、種々のものを採用することができる。
しかしながら繊維シートは、前述のように、織物であるのが特に好ましい。繊維シートに2方向性のある織物を使用することで、可撓性補強材とその接着面との間のズレを防止することができる。
【0024】
さらに、繊維シートの織物は、高強度繊維を用いてなるものであるのがより好ましい。かかる高強度繊維としては、例えばアラミド繊維、ビニロン樹脂、炭素繊維等が挙げられ、これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
上記例示の高強度繊維を用いた織物を繊維シートとして採用することにより、前述のように、水路構造体の表面の補強効果を極めて高いものとすることができる。さらに、水路構造体のクラック伸長や変位を抑制することができ、躯体および表面の剥離を抑制することができる。
【0025】
(樹脂)
繊維シート表面のコーティングに用いる樹脂は、前述のように、繊維シートにコーティングを施した後で水路構造体のコーナー部分等にて折り曲げた状態で敷設されたとしても、コーティング材に亀裂、ひび割れ、繊維シートとの剥離を生じることのない程度の可撓性(柔軟性)を備えるものであればよい。
かかる樹脂としては、例えばウレア系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂、あるいは熱可塑性樹脂などの、従来公知の種々の樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0026】
樹脂に要求される柔軟性(硬化後)とは、具体的に、樹脂が硬化した状態で、その伸びが50%以上という程度であることが求められる。
上記例示の樹脂のうち、ウレア系の樹脂としては、例えばウレアウレタン樹脂、ポリウレア樹脂等が挙げられる。
本発明に用いられるコーティング用の樹脂としては、可撓性補強材の成形性の観点から、可使時間が数秒から1分程度の速硬化性樹脂を用いるのが好ましい。コーティング用の樹脂にある程度の速硬化性がないと、繊維シートの表面部分において樹脂をコーティングすることができず、繊維シートや不織布の内部にまで樹脂が浸透、吸収されてしまう。それゆえ、可撓性補強材の表面にある程度の厚みの樹脂層を形成することができなくなる。
【0027】
樹脂を繊維シートの表面にコーティングするのに際して、連続した可撓性補強材を形成する場合には、平面的に敷き並べた複数枚の繊維シートの隣接する端部同士をある程度重ね合わせた上で、樹脂をコーティングするのが好ましい。これにより、補強材全体を連続性がありかつ耐久性を備える補強材として用いることができる
【0028】
可撓性シートの耐老化性、耐水性、耐候性等をより一層高める上で、上記樹脂を用いてなるコーティング層の表面にトップコート材を塗付してもよい。特に、本発明の表面補強方法によって補強されるコンクリート表面が暗渠、管路、セグメント等におけるコンクリート表面ではなく、開放部分や開渠等のように、日光に晒される場合においては、トップコート材の塗付が効果的である。
使用可能なトップコート材としては特に限定されるものではないが、例えばアクリルウレタン樹脂、フッ素樹脂、アクリルシリコーン樹脂等のほか、上記例示のコーティング用樹脂に紫外線吸収剤等を含有させたもの等が挙げられる。
【0029】
(不織布)
本発明に用いられる可撓性補強材は、繊維シートの表面に樹脂をコーティングしてなるものに限定されるものではなく、繊維シートと不織布との積層体の表面に樹脂をコーティングしたものであってもよい。
上記繊維シートは、前述のように、シート状に織り込まれたものとメッシュ状に加工されたもの等が挙げられるが、特にメッシュ状の繊維シートを使用する際には、当該繊維シートの裏面において、接着基布層として不織布を積層するのが好ましい。
【0030】
本発明に用いられる不織布は、可撓性補強材に十分な強度を付与できるものであれば特に限定されるものではなく、材質、製造方法を問わず、従来公知の種々の不織布を用いることができる。
なかでも、上記不織布は、繊維シートおよび繊維シートのコーティング材である樹脂と、可撓性補強材の裏面に塗付される接着剤との挿嵌の物理接着を良好なものとする上で、通気性を有し、かつその厚さが0.5mm以上であるものを用いるのが好ましい。
不織布の目付け量は特に限定されるものではないが、30〜300g/m2 であるのが好ましい。
【0031】
〔接着剤〕
本発明に用いられる接着剤は特に限定されるものではなく、可撓性補強材と水路構造体のコンクリート表面とを強固に接着し得るものであればよい。
接着剤の塗付量は、前述のように、可撓性補強材の裏面1m2 当たり0.3kg以上となるように設定される。
接着剤の塗付量が上記範囲を下回ると、繊維シートや不織布の吸収によって実質的に接着の用に供される接着剤の量が少なくなってしまい、可撓性補強材の接着強度が低下するという問題が生じる。また、空気層の侵入によって、可撓性補強材の接着強度の低下がより一層顕著になるという問題もある。
【0032】
接着剤の塗付量が上記範囲に設定することで、十分な接着強度を得ることができるが、実用上、その上限値は可撓性補強材の裏面1m2 当たり2kgである。接着剤の塗付量が可撓性補強材の裏面1m2 当たり0.6〜1.5kgであるときは、コンクリート表面に対する接着性をより一層良好なものとすることができ、当該表面の不陸に対しても柔軟に対応させることができる。
【0033】
【実施例】
次に、実施例および比較例を挙げて、本発明について説明する。
〔可撓性補強材の製造および水路構造体表面の補強〕
(実施例1)
水路構造体の表面補強材としての可撓性補強材には、繊維シートの表面に樹脂をコーティングしてなる可撓性補強材を用いた。繊維シートには、アラミド繊維を用いた織物〔2方向アラミド繊維シート,ファイベックス(株)製の製品名「AK−40/40」〕を使用し、コーティング用の樹脂にはウレアウレタン樹脂〔住友ゴム(株)製の高強度ウレアウレタン樹脂、製品名「C−856A/H−856B」(C/H=100/78wt%)〕を使用した。可撓性補強材の裏面に塗付する接着剤には、水中硬化型エポキシ樹脂接着剤〔住友ゴム(株)製の製品名「GB−55」(主剤/硬化剤=2/1)〕を使用した。
【0034】
上記繊維シートの一方の表面に上記樹脂を均一に吹き付け、平均厚み3mmのコーティング層を形成することによって可撓性補強材を得た後、その裏面(コーティング層が形成されていない方の繊維シートの表面)に、刷毛、こて等を用いて上記接着剤を含浸塗布させた。
接着剤の塗付は、室温23℃、湿度50%の室内で行ない、その塗付量は、繊維シートの裏面1m2 当たり1.0kgとなるように調整した。
【0035】
次いで、こうして得られた可撓性補強材をJISコンクリート平板(300mm×300mm×60mm)上に敷設し、手で押し付けて圧着させることによって接着させた。
また、上記の可撓性補強材を、あらかじめ水中に1昼夜浸漬させておいたJISコンクリート平板の表面に、液温23℃の水中にて接着させた。接着に際して、接着剤の塗付量は上記の場合と同量に設定した。また、敷設後には、上記の場合と同様に手で押し付けて可撓性補強材を圧着させた。
【0036】
(実施例2)
可撓性補強材の繊維シートとして、アラミド繊維を用いてなるメッシュ〔2方向アラミド繊維メッシュ,ファイベックス(株)製の製品名「AKM−5/5」〕と、厚さ1mmの不織布とを重ね合わせてなるもの(積層体)を用いた。コーティング用の樹脂には、実施例1と同じウレアウレタン樹脂〔前出の「C−856A/H−856B」〕を使用した。接着剤には、実施例1と同じ水中硬化型エポキシ樹脂接着剤(前出の「GB−55」)を使用した。
【0037】
上記積層体のアラミド繊維メッシュ(繊維シート)側の表面に上記樹脂を均一に吹き付け、平均厚み3mmのコーティング層を形成することによって可撓性補強材を得た後、その裏面(不織布側の表面)に、刷毛、こて等を用いて上記接着剤を含浸塗付させた。接着剤の塗付は、実施例1と同様に、室温23℃、湿度50%の室内で行ない、その塗付量は、繊維シートの裏面1m2 当たり1.0kgとなるように調整した。
【0038】
次いで、こうして得られた可撓性補強材をJISコンクリート平板上に敷設し、手で押し付けて圧着させることによって接着させた。
また、上記の可撓性補強材を、あらかじめ水中に1昼夜浸漬させておいたJISコンクリート平板の表面に、液温23℃の水中にて接着させた。接着に際して、接着剤の塗付量は上記の場合と同量に設定した。また、敷設後には、上記の場合と同様に手で押し付けて可撓性補強材を圧着させた。
【0039】
(実施例3)
可撓性補強材の繊維シートとして、ビニロン繊維を用いてなるメッシュ〔2方向ビニロン繊維メッシュ,ファイベックス(株)製の製品名「UK60」〕と、厚さ1mmの不織布とを重ね合わせてなるもの(積層体)を用いた。コーティング用の樹脂には、実施例1と同じウレアウレタン樹脂〔前出の「C−856A/H−856B」〕を使用した。接着剤には、実施例1と同じ水中硬化型エポキシ樹脂接着剤(前出の「GB−55」)を使用した。
【0040】
上記積層体のビニロン繊維メッシュ(繊維シート)側の表面に上記樹脂を均一に吹き付け、平均厚み3mmのコーティング層を形成することによって可撓性補強材を得た後、その裏面(不織布側の表面)に、刷毛、こて等を用いて上記接着剤を含浸塗付させた。接着剤の塗付は、実施例1と同様に、室温23℃、湿度50%の室内で行ない、その塗付量は、繊維シートの裏面1m2 当たり1.0kgとなるように調整した。
【0041】
次いで、こうして得られた可撓性補強材をJISコンクリート平板上に敷設し、手で押し付けて圧着させることによって接着させた。
また、上記の可撓性補強材を、あらかじめ水中に1昼夜浸漬させておいたJISコンクリート平板の表面に、液温23℃の水中にて接着させた。接着に際して、接着剤の塗付量は上記の場合と同量に設定した。また、敷設後には、上記の場合と同様に手で押し付けて可撓性補強材を圧着させた。
【0042】
(比較例1)
離型紙上に、実施例1で使用したのと同じウレアウレタン樹脂〔前出の「C−856A/H−856B」〕を均一に吹き付けた後、離型紙を除去して平均厚み3mmの樹脂シートを作製した。この樹脂シートはウレアウレタン樹脂のみからなるものであって、繊維シートや不織布等を備えていないものである。
上記樹脂シートの一方の面に、実施例1で使用したのと同じ水中硬化型エポキシ樹脂接着剤(前出の「GB−55」)を、刷毛、こて等を用いて塗付した。
【0043】
接着剤の塗付は、実施例1と同様に、室温23℃、湿度50%の室内で行ない、その塗付量は、樹脂シートの一方の表面1m2 当たり1.0kgとなるように調整した。
次いで、こうして得られた接着剤付き樹脂シートをJISコンクリート平板上に敷設し、手で押し付けて圧着させることによって接着させた。
また、上記の接着剤付き樹脂シートを、あらかじめ水中に1昼夜浸漬させておいたJISコンクリート平板の表面に、液温23℃の水中にて接着させた。接着に際して、接着剤の塗付量は上記の場合と同量に設定した。また、敷設後には、上記の場合と同様に手で押し付けて樹脂シートを圧着させた。
【0044】
(比較例2)
可撓性補強材の繊維シートとして、実施例1で得られたのと同じものを使用した。
上記繊維シートの裏面(コーティング層が形成されていない方の繊維シートの表面)に、刷毛、こて等を用いて上記接着剤を含浸塗布させた。接着剤の塗付は、実施例1と同様に、室温23℃、湿度50%の室内で行ない、その塗付量は、繊維シートの裏面1m2 当たり0.2kgとなるように調整した。
【0045】
次いで、こうして得られた可撓性補強材をJISコンクリート平板上に敷設し、手で押し付けて圧着させることによって接着させた。
また、上記の可撓性補強材を、あらかじめ水中に1昼夜浸漬させておいたJISコンクリート平板の表面に、液温23℃の水中にて接着させた。接着に際して、接着剤の塗付量は上記の場合と同量に設定した。また、敷設後には、上記の場合と同様に手で押し付けて可撓性補強材を圧着させた。
【0046】
上記実施例および比較例で得られた可撓性補強材(樹脂シート)および裏面に塗付した接着剤の構成について、表1にまとめて示す。
【0047】
【表1】
【0048】
〔物性評価〕
上記実施例および比較例で得られた可撓性補強材(比較例1は樹脂シート)を1週間放置した後、以下の試験を行なった。
(下地接着性)
可撓性補強材(または樹脂シート)が敷設されてなるコンクリート平板の表面に切込みを設けて、建研式接着試験機を用いて4cm角の引張治具を接着させた後、その周囲にさらにダイヤモンドカッターで切込みを入れて専用の試験機で引っ張った。そのときの剥離強さ(N/mm2 )を測定して、下地との接着性(接着強さ)を評価した。
さらに、剥離が生じた時の状況(剥離の生じた部位)を観察した。剥離状況は、次の3タイプに分類された。
a:コンクリート(下地)の表面に損傷が生じた。
b:コンクリート表面(下地)と可撓性補強材の接着剤との間で剥離が生じた。
c:可撓性補強材の接着剤と表面のコーティング層との間で剥離が生じた。
【0049】
(耐損傷性)
円形の供試体支持台(直径約8cm)上に可撓性補強材(または樹脂シート)が敷設されてなるコンクリート平板を載置して固定した後、可撓性補強材(樹脂シート)の表面に、ラグビーシューズ用スパイクピン(25個)を取り付けてなる回転子(直径15cm,幅8cm)を1kg/cm2 の荷重で圧接させつつ、1000回回転させた。
回転終了後、サンプルの表面に設けられているウレタンコーティング層の磨耗減量分(g)と当該ウレタンコーティング層と接着剤層との相関剥離の状況とを観察して、可撓性補強材の耐損傷性を評価した。
【0050】
(耐衝撃性)
可撓性補強材(または樹脂シート)が敷設されてなるコンクリート平板に対して、1.5mの高さから重さ750gのスパナを連続的に計50回落下させて、可撓性補強材(樹脂シート)の表面における損傷の状況と、コーティング層と繊維シートとの間などにおける剥離の有無を観察することにより、保護材の耐衝撃性を評価した。評価は下記の基準にて行なった。
A:損傷や剥離等の異常が観察されなかった。
B:表面のコーティング層において破損が数箇所で観察されたものの、保護材を貫通する程度の破損は観察されなかった。
C:表面のコーティング層において、保護材を貫通する程度の破損が数箇所で観察された。
【0051】
(剥離強さ)
可撓性補強材(または樹脂シート)の剥離強さを、JIS K 6854「接着剤の剥離接着強さ試験方法」の9.3「浮動ローラー法剥離試験」に記載の方法に準拠して測定した。
【0052】
(総合評価)
以上の各種物性評価の結果をもとに、可撓性補強材ならびに水路構造体の補強効果についての総合的な評価を行った。評価の基準は次のとおりである。
A:可撓性補強材の物性およびコンクリート表面の補強効果がいずれも極めて良好であった。
B:可撓性補強材の物性およびコンクリート表面の補強効果に多少難点があった。
C:可撓性補強材の物性およびコンクリート表面の補強効果が低く、実用上不十分であった。
以上の結果を表2および3に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
表2および3に示した実施例と比較例との対比により明らかなように、繊維シートの表面に樹脂をコーティングしてなる可撓性補強材を使用し、この補強材の裏面に所定量の接着剤を塗付してコンクリート表面に接着させた場合には、コンクリート平板への接着作業を乾燥時と湿潤時のどちらで行なった場合においても、その接着性、耐損傷性、耐衝撃性および剥離強さを良好なものとすることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る水路構造体の表面補強方法によって形成された表面補強材の一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明に係る水路構造体の表面補強方法によって形成された表面補強材の他の実施形態を示す断面図である。
【図3】図1に示す表面補強材10の製造方法の一例を示す模式図である。
【図4】図2に示す表面補強材20の製造方法の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
10,20 可撓性補強材
11,21 樹脂(コーティング材)
12,22 繊維シート
13,23 接着剤
15 コンクリート表面
24 不織布
Claims (9)
- 繊維シートの表面に樹脂をコーティングしてなる可撓性補強材を、その裏面に1m2 当たり0.3kg以上の接着剤を塗付した状態でコンクリート表面に貼り付けることを特徴とする水路構造体の表面補強方法。
- 繊維シートと不織布との積層体の繊維シート側表面に樹脂をコーティングしてなる可撓性補強材を、その不織布側の表面に1m2 当たり0.3kg以上の接着剤を塗付した状態でコンクリート表面に貼り付けることを特徴とする水路構造体の表面補強方法。
- 上記樹脂がウレア系樹脂である請求項1または2記載の水路構造体の表面補強方法。
- 上記樹脂のデュロメータ硬さ(タイプA)が80〜97、引張強さが15MPa以上、伸びが300%以上および引裂強さが500N/cm以上である請求項1または2記載の水路構造体の表面補強方法。
- 上記繊維シートが織物である請求項1〜4のいずれかに記載の水路構造体の表面補強方法。
- 上記織物がアラミド繊維、ビニロン樹脂および炭素繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の高強度繊維を用いた織物である請求項5記載の水路構造体の表面補強方法。
- 上記可撓性補強材の厚みが1〜20mmである請求項1〜6のいずれかに記載の水路構造体の表面補強方法。
- 上記接着剤が水中で硬化するエポキシ樹脂接着剤である請求項1〜7のいずれかに記載の水路構造体の表面補強方法。
- 上記接着剤の塗付量が、上記可撓性補強材1m2 当たり0.6〜2kgである請求項1〜8のいずれかに記載の水路構造体の表面補強方法。
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-
2002
- 2002-08-12 JP JP2002235018A patent/JP2004076321A/ja active Pending
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