JP2004076153A - 粉末成形用組成物およびこれを用いた成形体の脱脂方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】粉末成形用組成物に含まれるバインダーの熱可塑性樹脂と有機化合物とを、この粉末成形用組成物を用いた成形体の脱脂工程の際、有機化合物の気化および除去が熱可塑性樹脂の有するビカット軟化点の温度未満の温度で完了する熱可塑性樹脂と有機化合物との組み合わせとする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属粉末またはセラミックス粉末と、熱可塑性樹脂および有機化合物を含むバインダーとを有する粉末形成用組成物、およびこの粉末形成用組成物より成形体を成形し焼結することによって機械部品等を製造する際の成形体の脱脂方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、機械部品等の製品を製造する方法の一つとして射出等による成形法を用いた方法がある。この射出による成形法とは、まず、目的の機械部品を構成する金属原料またはセラミック原料の粉末に、有機化合物と熱可塑性樹脂とから成るバインダーを混合し、この混合物を加熱混練して粉末成型用組成物とする。次に、この粉末成型用組成物を射出成形することで、所望の機械部品等の成形体を成形し、この成形体を加熱炉内に設置する。そして、加熱炉内を昇温し成形体中に含まれるバインダーを脱脂する。この脱脂の工程が完了したら、成形体をさらに昇温加熱して焼結させ、所望の機械部品等の焼結体を得るというものである。
【0003】
ところが、上述した射出による成形法を用いて所望の機械部品等の焼結体を得る工程において、バインダーを脱脂する昇温の工程は、成形体の亀裂や膨張を回避するために通常2〜3日という長時間をかけておこなわれている。そこで、この脱脂工程の時間短縮を図る手段として、例えば、特許文献1、特許文献2には、バインダーを適宜選ぶことで脱脂工程の時間を短縮する手段が開示されており、また、特許文献3には、脱脂工程と焼結工程を同一炉で行うことで移動の手間を省く手段が開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−129306号公報
【特許文献2】
特開平11−181502号公報
【特許文献3】
特許番号第2930119号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしこれらの手段を用いたとしても、脱脂工程の昇温に少なくても8時間程度の時間を要しており、依然として焼結体製造工程全体の時間の中でも多くの割合を占めている。従って、射出等の成形法により所望の機械部品等の焼結体を得る工程の生産性向上を目論む上で、脱脂工程における昇温の短縮は重要なポイントである。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、脱脂工程において高速の昇温が可能で、昇温時間を短縮できる粉末成形用組成物と、この粉末成形用組成物を用いた成形体の脱脂方法とを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するための第1の手段は、金属粉末またはセラミック粉末と、バインダーとを含む粉末成形用組成物を成形して成形体とし、前記成形体を加熱して前記バインダーを気化して除いた後、さらに加熱して前記金属粉末または前記セラミック粉末を焼結して所望の焼結体を製造する工程に用いられる前記粉末成形用組成物であって、
前記バインダーは、第1の熱可塑性樹脂と有機化合物とを含み、
前記成形体中の前記有機化合物が、前記第1の熱可塑性樹脂の有するビカット軟化点の温度未満で気化することを特徴とする粉末成形用組成物である。
【0008】
第1の手段に係る粉末成形用組成物から成形した成形体の脱脂工程において、成形体中の有機化合物は、第1の熱可塑性樹脂の有するビカット軟化点の温度未満の温度で気化するため、成形体の膨れ、亀裂、変形等は第1の熱可塑性樹脂により抑制されるので高速の昇温が可能となる。
【0009】
第2の手段は、金属粉末またはセラミック粉末と、バインダーとを含む粉末成形用組成物を成形して成形体とし、前記成形体を加熱して前記バインダーを気化して除いた後、さらに加熱して前記金属粉末または前記セラミック粉末を焼結して所望の焼結体を製造する工程に用いられる前記粉末成形用組成物であって、
前記バインダーは、第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂と有機化合物とを含み、
前記第2の熱可塑性樹脂の有するビカット軟化点の温度は、前記第1の熱可塑性樹脂の有するビカット軟化点の温度より低く、
前記成形体中の前記有機化合物は、前記第1の熱可塑性樹脂の有するビカット軟化点の温度未満で気化することを特徴とする粉末成形用組成物である。
【0010】
第2の手段によれば、粉末成形用組成物から成形した成形体の脱脂工程において、成形体中の有機化合物は、第1の熱可塑性樹脂の有するビカット軟化点の温度未満の温度で気化するため、成形体の膨れ、亀裂、変形等は第1の熱可塑性樹脂により抑制されるので高速の昇温が可能となる。そして、第1の熱可塑性樹脂の有するビカット軟化点の温度より低いビカット軟化点の温度を有する第2の熱可塑性樹脂を加えることで、粉末成形用組成物を成形体とする際の、粉末成形用組成物の流動性、分散性、相溶性、金型との離型性が向上し、作製された成形体の面引け等を抑制できる。
【0011】
第3の手段は、金属粉末またはセラミック粉末と、バインダーとを含む粉末成形用組成物を成形して成形体とし、前記成形体を加熱して前記バインダーを気化して除いた後、さらに加熱して前記金属粉末または前記セラミック粉末を焼結して所望の焼結体を製造する工程に用いられる前記粉末成形用組成物であって、
前記バインダーは、第1の熱可塑性樹脂と、第3の熱可塑性樹脂と、有機化合物とを含み、
前記第3の熱可塑性樹脂の有する熱分解温度は、前記第1の熱可塑性樹脂の有する熱分解温度より10〜40K高く、
前記成形体中の前記有機化合物は、前記第1の熱可塑性樹脂の有するビカット軟化点の温度未満で気化することを特徴とする粉末成形用組成物である。
【0012】
第3の手段によれば、粉末成形用組成物から成形した成形体の脱脂工程において、成形体中の有機化合物は、第1の熱可塑性樹脂の有するビカット軟化点の温度未満の温度で気化するため、成形体の膨れ、亀裂、変形等は第1の熱可塑性樹脂により抑制されるので高速の昇温が可能となる。さらに、前記第3の熱可塑性樹脂として、前記第1の熱可塑性樹脂の熱分解温度より10〜40K高い熱分解温度を有する熱可塑性樹脂を加えて粉末成形用組成物を調製し、それを成形して成形体を得ているので、この得られた成形体を、前記第1の熱可塑性樹脂の有する熱分解温度以上に昇温した際、前記第1および第3の熱可塑性樹脂の熱分解反応が相補的に進み、処理温度上昇当たりの加熱重量減量の低下速度を緩やかなものとすることができ、発生するガス量の増加が穏やかなものとなるので、当該ガスの発生に起因する成形体の変形を、さらに抑制することができる。
【0013】
第4の手段は、金属粉末またはセラミック粉末と、バインダーとを含む粉末成形用組成物を成形して成形体とし、前記成形体を加熱して前記バインダーを気化して除いた後、さらに加熱して前記金属粉末または前記セラミック粉末を焼結して所望の焼結体を製造する工程に用いられる前記粉末成形用組成物であって、
前記バインダーは、第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂と第3の熱可塑性樹脂と有機化合物とを含み、
前記第2の熱可塑性樹脂の有するビカット軟化点の温度は、前記第1の熱可塑性樹脂の有するビカット軟化点の温度より低く、
前記第3の熱可塑性樹脂の有する熱分解温度は、前記第1の熱可塑性樹脂の有する熱分解温度より10〜40K高く、
前記成形体中の前記有機化合物は、前記第1の熱可塑性樹脂の有するビカット軟化点の温度未満で気化することを特徴とする粉末成形用組成物である。
【0014】
第4の手段によれば、粉末成形用組成物から成形した成形体の脱脂工程において、成形体中の有機化合物は、第1の熱可塑性樹脂の有するビカット軟化点の温度未満の温度で気化するため、成形体の膨れ、亀裂、変形等は第1の熱可塑性樹脂により抑制されるので高速の昇温が可能となる。そして、第1の熱可塑性樹脂の有するビカット軟化点の温度より低いビカット軟化点の温度を有する第2の熱可塑性樹脂を加えることで、粉末成形用組成物を成形体とする際の、粉末成形用組成物の流動性、分散性、相溶性、金型との離型性が向上し、作製された成形体の面引け等を抑制できる。さらに、前記第3の熱可塑性樹脂として、前記第1の熱可塑性樹脂の熱分解温度より10〜40K高い熱分解温度を有する熱可塑性樹脂を加えて粉末成形用組成物を調製し、それを成形して成形体を得ているので、この得られた成形体を、前記第1の熱可塑性樹脂の有する熱分解温度以上に昇温した際、前記第1および第3の熱可塑性樹脂の熱分解反応が相補的に進み、処理温度上昇当たりの加熱重量減量の低下速度を緩やかなものとすることができ、発生するガス量の増加が穏やかなものとなるので、当該ガスの発生に起因する成形体の変形を、さらに抑制することができる。
【0015】
第5の手段は、第3または第4の手段に記載の粉末成形用組成物であって、
前記第1および第3の熱可塑性樹脂は、同種類の樹脂であり、
前記第3の熱可塑性樹脂のビカット軟化点温度は、前記第1の熱可塑性樹脂のビカット軟化点温度より10〜40K高いことを特徴とする粉末成形用組成物である。
【0016】
第5の手段によれば、前記第1および第3の熱可塑性樹脂として、同種類の熱可塑性樹脂を用いる場合、各々のビカット軟化点温度の差は、各々の熱分解温度の差に概ね一致する。そこで、前記第3の熱可塑性樹脂として、前記第1の熱可塑性樹脂のビカット軟化点温度より10〜40K高いビカット軟化点温度を有する、第1の熱可塑性樹脂と同種類の熱可塑性樹脂を用いることで、上述したように、処理温度上昇当たりの加熱重量減量の低下速度を緩やかなものとすることができ、成形体の変形を、さらに抑制することができる。
【0017】
第6の手段は、前記第1の熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブチルメタクリレート、ポリオキシメチレン、ポリビニールブチラール、エチレン酢酸ビニル共重合体、変性ポリアセタールから選ばれる1種または2種類以上の樹脂であることを特徴とする第1から第5のいずれかの手段に記載の粉末成形用組成物である。
【0018】
第6の手段によれば、第1から第5のいずれかの手段に記載の第1の熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブチルメタクリレート、ポリオキシメチレン、ポリビニールブチラール、エチレン酢酸ビニル共重合体、変性ポリアセタールから選ばれる1種または2種類以上の樹脂を用いることで、脱脂工程における高速の昇温が可能となる。
【0019】
第7の手段は、前記有機化合物は、ワックス類、フタル酸エステル、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、フタール酸ジオクチルから選ばれる1種または2種類以上の有機化合物であることを特徴とする第1から第6のいずれかの手段に記載の粉末成形用組成物である。
【0020】
第7の手段によれば、第1から第6の手段のいずれかに記載の有機化合物として、汎用性、好環境性、作業性、コストの点より、上述したワックス類等から選ばれる1種または2種類以上の有機化合物を用いることで、脱脂工程における高速の昇温が可能となる。
【0021】
第8の手段は、前記第2の熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブチルメタクリレート、ポリオキシメチレン、ポリビニールブチラール、フタール酸ジオクチル、エチレン酢酸ビニル共重合体、変性ポリアセタールから選ばれる1種または2種類以上の樹脂であることを特徴とする第2から第7のいずれかの手段に記載の粉末成形用組成物である。
【0022】
第8の手段によれば、第2から第7の手段のいずれかに記載の第2の熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブチルメタクリレート、ポリオキシメチレン、ポリビニールブチラール、フタール酸ジオクチル、エチレン酢酸ビニル共重合体、変性ポリアセタールから選ばれる1種または2種類以上の樹脂を用いることで、作製された成形体の面引け等を抑制できる。
【0023】
第9の手段は、前記第3の熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブチルメタクリレート、ポリオキシメチレン、ポリビニールブチラール、エチレン酢酸ビニル共重合体、変性ポリアセタールから選ばれる1種または2種類以上の樹脂であることを特徴とする第3から第8の手段のいずれかに記載の粉末成形用組成物である。
【0024】
第9の手段によれば、第3から第8の手段のいずれかに記載の第3の熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブチルメタクリレート、ポリオキシメチレン、ポリビニールブチラール、エチレン酢酸ビニル共重合体、変性ポリアセタールから選ばれる1種または2種類以上の樹脂を用いることで、得られた成形体を、前記第1の熱可塑性樹脂の有する熱分解温度以上に昇温した際、前記第1および第3の熱可塑性樹脂の熱分解反応が相補的に進み、処理温度上昇当たりの加熱重量減量の低下速度を緩やかなものとすることができ、発生するガス量の増加が穏やかなものとなるので、当該ガスの発生に起因する成形体の変形を、さらに抑制することができる。
【0025】
第10の手段は、第1から第9の手段のいずれかに記載の粉末成形用組成物であって、
前記粉末成形用組成物中に、前記バインダーは30〜70vol%を占め、且つ前記バインダー中に、前記第1の熱可塑性樹脂が5〜70vol%、前記有機化合物が30〜95vol%、前記第2の熱可塑性樹脂と前記第3の熱可塑性樹脂との合計が0〜70vol%含まれることを特徴とする粉末成形用組成物である。
【0026】
第10の手段によれば、第1から第9の手段のいずれかに記載のバインダーを30〜70vol%とし、且つバインダー中の、前記第1の熱可塑性樹脂を5〜70vol%とし、有機化合物を30〜95vol%とし、前記第2の熱可塑性樹脂と前記第3の熱可塑性樹脂との合計を0〜70vol%とすることにより、脱脂工程における高速の昇温が可能となる。
【0027】
第11の手段は、第1から第10の手段のいずれかに記載の粉末成形用組成物を用いて成形体を製造し、この成形体を加熱して、前記成形体中の前記有機化合物を気化し除く工程を有する成形体の脱脂方法であって、
前記成形体中の前記有機化合物を気化し除く工程を、前記第1の熱可塑性樹脂の有するビカット軟化点の温度未満の温度で、完了させることを特徴とする成形体の脱脂方法である。
【0028】
第11の手段によれば、第1から第10の手段のいずれかに記載の粉末成形用組成物から成形した成形体の脱脂工程において、成形体中の有機化合物は、第1の熱可塑性樹脂の有するビカット軟化点の温度未満の温度で気化するため、成形体の膨れ、亀裂、変形等は第1の熱可塑性樹脂により抑制されるので高速の昇温が可能となる。
【0029】
第12の手段は、第11の手段に記載の成形体の脱脂方法であって、
前記成形体中の前記有機化合物を気化し除く工程を、前記有機化合物がこの工程において有する蒸気圧以下の圧力まで減圧した雰囲気の中でおこなうことを特徴とする成形体の脱脂方法である。
【0030】
第12の手段によれば、第1から第10の手段のいずれかに係る粉末成形用組成物から成形した成形体の脱脂工程において、有機化合物を気化し除く速度がさらに上がり、脱脂工程の時間をさらに短縮することができると同時に、有機化合物を気化し除く温度も低下させることができるので、バインダーとして用いる第1および第2の熱可塑性樹脂と、有機化合物との組み合わせに用いる、熱可塑性樹脂や有機化合物の選択の範囲を拡張できる。
【0031】
第13の手段は、第11または第12の手段に記載の成形体の脱脂方法であって、
前記成形体の脱脂工程において、前記有機化合物の有する蒸気圧が0.133Pa以上である有機化合物を前記有機化合物として用いることを特徴とする成形体の脱脂方法である。
【0032】
第13の手段によれば、脱脂工程の際の減圧した雰囲気圧は、0.133Paに減圧すればよいので、この減圧が可能なコストの安い装置を用いて脱脂工程の高速の昇温が可能となる。
【0033】
第14の手段は、第11から第13の手段のいずれかに記載の成形体の脱脂方法であって、
前記成形体中の前記有機化合物を気化し除く工程における昇温を150〜600K/hrの昇温速度でおこなうことを特徴とする成形体の脱脂方法である。
【0034】
第14の手段によれば、第11から第13の手段に記載の成形体の脱脂方法を採ることによって、成形体の脱脂工程において昇温速度が150〜600K/hrという高速の昇温が可能となる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る第1、第2の2つの実施の形態について、工程毎に説明する。ここで、第1の実施の形態は、通常の用途に用いられる機械部品等の焼結体を製造する際の実施の形態であり、第2の実施の形態は、特に精密な形状を要求される機械部品等の焼結体を製造する際の実施の形態である。
【0036】
〈第1の実施の形態〉
(粉末成形用組成物の調製)
粉末成形用組成物は、製造の目的物である機械部品等を構成する金属またはセラミックの粉末と、これらの粉末を成形可能とするためのバインダーとの混合物である。ここで、金属またはセラミックの粉末は、一般的な粉末焼結、射出成形に用いられるものであれば様々な粉末が適用可能である。一方、バインダーは、有機化合物と熱可塑性樹脂との混合物である。
【0037】
このバインダー中の、有機化合物と熱可塑性樹脂とについてさらに説明する。バインダー中の有機化合物は、後述する粉末成形用組成物から成形された成形体の脱脂工程の前期において、成形体中にて気化し揮散する際に、成形体中へ連続的な気孔を生成させることを目的としている。この生成した気孔は、脱脂の工程の後期において、成形体中の熱可塑性樹脂が気化した際のガスを成形体よりスムーズに排出させるためのものである。この有機化合物として、汎用性、好環境性、作業性、コスト等の点を考えると、ワックス類、フタル酸エステル、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、フタール酸ジオクチルから選ばれる1種または2種類以上を用いることが好ましい。
【0038】
バインダー中の熱可塑性樹脂は、上述した脱脂の工程の前期において、有機化合物が気化し揮散する際に、成形体の形状を保つことを目的としている。本発明では、この目的で加える熱可塑性樹脂を「第1の熱可塑性樹脂」と記載する。バインダー中の有機化合物と第1の熱可塑性樹脂とは、第1の熱可塑性樹脂のビカット軟化点未満の温度で、有機化合物が気化し成形体から除かれる組み合わせとなっていることが肝要であるが、その理由は後述する成形体の脱脂工程にて詳しく説明する。
【0039】
ここで、ビカット軟化点について簡単に説明する。ビカット軟化点とは、熱可塑性樹脂が加熱されたとき、軟化を開始する温度を、ASTM D 1525に規定されたビカット試験法により測定したものをいう。この試験法は、断面積1mm2の平たい先端を持つ針に一定荷重を加え、毎時50K(ケルビン)の昇温速度で昇温し、被測定樹脂への針の進入深さが1mmに達した温度をビカット軟化点として測定する。すなわち、ビカット軟化点の温度未満の温度であれば、当該熱可塑性樹脂は十分な硬度を有しているが、ビカット軟化点を超えると軟化を開始する温度である。
【0040】
本発明に係る第1の熱可塑性樹脂として、汎用性、好環境性、作業性、コスト等の点を考えると、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブチルメタクリレート、ポリオキシメチレン、ポリビニールブチラール、エチレン酢酸ビニル共重合体、変性ポリアセタールから選ばれる1種または2種類以上で、バインダーとして組み合わせて用いる有機化合物が気化、揮散を終了する温度より高いビカット軟化点を有するものを用いればよい。
【0041】
次に、バインダー中の有機化合物と熱可塑性樹脂との配合比、およびバインダーと金属粉末またはセラミック粉末との配合比について説明する。成形体の成形時における流動性、強度の観点より、バインダー中の第1の熱可塑性樹脂は5〜70vol%、有機化合物は30〜95vol%程度の配合が好ましい。このバインダー30〜70vol%と、上記金属粉末またはセラミック粉末70〜30volとを配合して加熱混練し、粉末成形用組成物を得る。配合比がこの範囲にあると、後述する成形体の成形時における流動性が十分にあり、面引け等の点で好ましい結果を得ることができる。
【0042】
上記のバインダーと金属またはセラミックの粉末との配合比による粉末成形用組成物を用いれば、射出による成形体の成形は十分に可能だが、後述する成形時の流動性、面引け等の点で、さらに好ましい結果を望む場合は、前記第1の熱可塑性樹脂より低いビカット軟化点の温度を有する熱可塑性樹脂、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブチルメタクリレート、ポリオキシメチレン、ポリビニールブチラール、エチレン酢酸ビニル共重合体から選ばれる1種または2種類以上を添加することも好ましい構成である。本発明では、この目的で加えられる熱可塑性樹脂を「第2の熱可塑性樹脂」と記載する。バインダー中における、第1および第2の熱可塑性樹脂、有機化合物の配合比は、得られた粉末成形用組成物のサンプルを用いた試作等により適宜な値を決定すればよいが、第1の熱可塑性樹脂の効果を減殺しない観点より、第2の熱可塑性樹脂を粉末成形用組成物へ添加する際の上限を70vol%としておくことが好ましい。
【0043】
(成形)
調製された粉末成形用組成物を、射出成形機または押し出し成形機等により金型の中へ注入して成形体を得る。本発明に係る粉末成形用組成物は、流動性、分散性、相溶性、離型性に優れており、成形時の粘度および摩擦係数が低いため、組成物は金型中に均一に充填されること、且つバインダー相互およびバインダーと金属粉末等の親和が大きいため金型中で偏析が起きにくいことから成形体の面引け等を抑制することができる。
【0044】
(成形体の脱脂)
成形体の脱脂工程は、調製された成形体を適宜に加熱して成形体中のバインダーを除去する工程である。この脱脂工程について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る粉末成型用組成物のバインダーに用いられる有機化合物および第1の熱可塑性樹脂が、加熱によって気化、揮散する状態の一例を示したグラフであって、縦軸に有機化合物の気化、揮散の状態を示す加熱減量をとり、横軸に温度をとったものである。尚、比較のため、図1には、従来の技術に係るバインダー中の有機化合物および熱可塑性樹脂の一例も併せて示した。
【0045】
調製された成形体を加熱装置内に設置したのち、室温から第1の熱可塑性樹脂におけるビカット軟化点の温度未満に設定した所定の温度まで150〜600K/hrの昇温速度で昇温を開始する。成形体の温度が約340Kに到達すると、本発明に係る有機化合物は、図1に実線で示すように気化、揮散を開始し、成形体中に連続的な気孔が生成するが、これは430K未満で完了する。そこで、この温度を所望の時間保持して、成形体中の有機化合物の気化と揮散を完了する。
【0046】
ここで、本発明に係る有機化合物が気化、揮散をおこなっている340〜430K未満の温度において、本発明に係る第1の熱可塑性樹脂はビカット軟化点430Kを有しているので、十分な硬度を保持している。この結果、本発明の昇温速度が150〜600K/hrという高速のため、有機化合物が成形体中にて急速に気化、揮散をおこない気孔を生成しても、成形体の膨れ、亀裂、変形等は抑制されている。
【0047】
尚、この有機化合物が気化、揮散をおこなっている際、加熱装置内の雰囲気は大気圧でもよいが、1.33×10−3〜0.133Pa(10−5〜10−3Torr)程度に減圧することが好ましい。加熱装置内の雰囲気を減圧することで、有機化合物の脱脂速度をさらに加速することができる。因みに、同温度のもとで、雰囲気の圧力が0.133Paの場合と133Paの場合とを比較すると、0.133Paの場合は、133Paの場合の約3倍の脱脂速度を示した。但し、この加熱装置内の雰囲気の減圧による脱脂速度の上昇は、0.06Paの場合と0.133Paの場合とを比較すると脱脂速度上昇の効果は小さく、0.06Paより圧力を下げてもさほどの効果は期待できない。むしろ0.133Pa程度の減圧であればコストの安い装置でも実施可能であるので、上述した有機化合物であって蒸気圧が0.133Pa以上のものを用いることが好ましい。
【0048】
さらに、加熱装置内の雰囲気を減圧することにより、有機化合物が気化し揮散する速度が上がると同時に温度も低下し、前記第1の熱可塑性樹脂の有するビカット軟化点の温度との温度差が拡大するので、前記バインダーとして用いる第1および第2の熱可塑性樹脂と、有機化合物との組み合わせに用いる、熱可塑性樹脂や有機化合物の選択の範囲を拡張することができ、この点からも好ましい構成である。
【0049】
加熱装置内の成形体の昇温加熱が進行し、その温度が第1の熱可塑性樹脂のビカット軟化点を超えると成形体中の第1の熱可塑性樹脂は軟化を始めるが、それ以前に有機化合物の気化、揮散は終わっているので、成形体の膨れ、亀裂、変形等は起こらない。もし、この時点で有機化合物の微少量が残留していて、それらが気化してもこれら気化物は、生成した気孔を経て揮散してしまうので、成形体の膨れ、亀裂、変形等の原因とはならない。
【0050】
加熱装置内の成形体の昇温加熱がさらに進行し、例えば590Kを超えると、今度は、第1の熱可塑性樹脂が、図1に一点鎖線で示すように気化、揮散を始めるが、これらの気化物は、生成した気孔を経て揮散してしまうので成形体の膨れ、亀裂、変形等の原因とはならない。そして、成形体の温度が例えば660Kを超えると、第1の熱可塑性樹脂の気化、揮散が終了して成形体からバインダー成分が消失し脱脂工程が完了する。
【0051】
尚、第1の熱可塑性樹脂の気化、揮散の際、製造の最終目的物である機械部品等にバインダーの成分が不純物として残留しないよう、加熱装置内へ排掃(スウィープ)ガスを供給することとしてもよい。ここで、機械部品等に酸化されやすい金属等が使用されているときは、スウィープガスとして不活性ガスまたは還元性ガスを用いることが好ましく、還元されやすい物質が使用されているときは酸化性ガスを用いることが好ましい。
【0052】
前記スウィープガスを、ガス供給装置により例えば流量1〜100l/minで加熱装置内に供給しながら、雰囲気の圧力を、例えば0.1〜65kPaとし、昇温速度150〜600K/hrにて、第1の熱可塑性樹脂が完全に遊離除去できる温度まで昇温して脱脂をおこなう。
【0053】
以上説明したように、バインダー中の有機化合物と第1の熱可塑性樹脂との組み合わせが、第1の熱可塑性樹脂のビカット軟化点の温度未満で、有機化合物が気化し除かれるものとなっているので、従来時間をかけておこなわざるを得なかった昇温を高速でおこなえるため、脱脂工程の時間短縮が実現できた。
【0054】
これに対し、従来の技術に係るバインダー中の有機化合物と熱可塑性樹脂との組み合わせ例において、図1に破線で示す有機化合物例は、418Kより気化と揮散を開始し約480Kで終了しているが、用いられている熱可塑性樹脂のビカット軟化点は405Kのため、有機化合物が気化と揮散をおこなっている間に既に軟化を開始してしまう。この状態で成形体の昇温を高速でおこなうと、有機化合物が成形体中にて急速に気化し揮散し、これに起因する力が成形体に懸った際、軟化した熱可塑性樹脂はこの力に対抗できず、成形体の膨れ、亀裂、変形等を引き起こされてしまう。このため、これらの問題を起こさない低速の昇温をおこなわざるを得ず、この工程に長時間を要していたのである。尚、従来の技術に係る熱可塑性樹脂例は、図1に二点鎖線で示すように約600Kで気化、揮散を始め、約700Kでこれを終了している。
【0055】
また、本発明に係る成形体中に第2の熱可塑性樹脂が含まれている場合、成形体の温度がビカット軟化点の温度を超えて、第2の熱可塑性樹脂が軟化を開始しても、第1の熱可塑性樹脂が十分な硬度を保持しているので問題はない。成形体の温度がさらに上昇すると、第2の熱可塑性樹脂が気化、揮散を始めるが、これらの気化物は、生成した気孔を経て揮散してしまうので成形体の膨れ、亀裂、変形等の原因とならず、やはり問題とならない。
【0056】
(成形体の焼結)
バインダーの脱脂を完了した成形体に対し引き続き焼結をおこなう。ここで成形体を、脱脂工程をおこなった加熱装置から焼結工程をおこなう炉へ移動することも可能だが、工程時間の短縮、生産性向上の観点からは、脱脂工程をおこなった加熱装置と焼結工程をおこなう炉とを同一の装置とし、脱脂工程に続いて焼結工程を実施するのが好ましい。脱脂工程に続いて500〜600K/hrの昇温速度で昇温し、成形体を構成する金属またはセラミックの焼結温度まで昇温して焼結させ、適宜な時間この温度を保持して目的の焼結体を得た。尚、この焼結の際、減圧下でキャリアガスとして適宜、不活性ガス、還元性ガス、酸化性ガスを選択し炉内に供給すると、製造の目的物である機械部品等の構成成分である金属またはセラミックの蒸発を極力抑制することができ好ましい。
【0057】
この脱脂工程と焼結工程とをおこなう同一の装置としては、装置内の雰囲気の圧力を大気圧から1×10−2Pa程度の範囲で制御可能で、且つ所望のガス雰囲気とすることができ、さらに室温より1673K(但し、この温度は金属焼結体の場合)迄の加熱が可能な真空脱脂焼結炉、例えば同和鉱業(株)の射出成形体専用真空脱脂焼結炉等が好個に使用できる
【0058】
(実施例1)
金属粉末として平均粒径10μmのSUS316L粉末、バインダー中における第1の熱可塑性樹脂としてビカット軟化点の温度が423Kのポリプロピレン、有機化合物として423Kでの蒸気圧が13Paのパラフィンワックスおよび423Kでの蒸気圧が13Paのフタール酸ジオクチルを選択した。まず、パラフィンワックス70vol%およびポリプロピレン30vol%を配合してバインダーとした。次に、金属粉末58vol%と、バインダー42vol%とを配合し、433K×70minの条件で加熱混錬して成形体組成物を得た。
【0059】
得られた粉末成形用組成物を射出成形機により、金型へ注入して射出成形を行い、外形35mm、内径27mm、高さ10mm(肉厚4mm)を有するリング状の成形体を得た。このとき成形体の成形度は流動性、分散性、相溶性、金型との離型性とも良好で、成形体の面引け等は発生しなかった。
【0060】
得られたリング状射出成形体を真空脱脂焼結炉に設置し、脱脂の工程および焼結をおこなった。このときの、脱脂の工程のプロファイルを図2に示す。図2は、縦軸に炉内温度をとり、横軸に時間をとり、さらに横軸へ、炉内の雰囲気の圧力および昇温速度を記載したものである。
【0061】
まず、炉内に成形体を設置後、炉内の雰囲気の圧力を0.0133Paに減圧し、炉内温度を常温300Kから418Kまで昇温速度375K/hrで昇温する。そして418Kを20分間保持して、パラフィンワックスとフタール酸ジオクチルの脱脂の工程を行った後、さらに昇温速度375K/hrにて炉内温度を473Kまで昇温し、第1の熱可塑性樹脂であるポリプロピレンの脱脂を開始する。ポリプロピレンの脱脂の際は、スィープガスとして窒素ガスを流量20l/minで炉内に供給しながら、炉内の排気をおこない、炉内の雰囲気の圧力を2.66kPaとした後、573Kまでは昇温速度375K/hr、673Kまでは昇温速度300K/hr、1073Kまでは昇温速度600K/hrで昇温し、を行った。ここ迄の、バインダーの脱脂に要した合計脱脂時間は約2時間であった。
【0062】
バインダーの脱脂終了後、引き続き成形体の焼結を行うため、同一の炉内において炉内温度を500〜600K/hrの昇温速度で昇温して1623Kとし、これを2時間保持して、焼結体を得た。得られた焼結体に欠陥は認められなかった。さらに焼結体中のバインダーの残留を測定するため燃焼式炭素分析装置により炭素量の測定を行った結果、0.01wtl%以下であり問題のないレベルであることが判明した。この実施例1におけるバインダーの組成と成形体の評価結果とを図3に示し、成形体の外観を図4に示す。
【0063】
(実施例2)
金属粉末として平均粒径10μmのSUS316L粉末、バインダー中における第1の熱可塑性樹脂としてビカット軟化点温度423Kのポリプロピレン、第2の熱可塑性樹脂としてビカット軟化点温度403Kのポリエチレン、有機化合物として、423Kでの蒸気圧が13Paのパラフィンワックスおよび423Kでの蒸気圧が13Paのフタール酸ジオクチルを選択した。
【0064】
まず、ポリプロピレン20vol%、ポリエチレン10vol%およびパラフィンワックス70vol%を配合してバインダーとした。次に、金属粉末58vol%と、バインダー42vol%とを配合し、433K×70minの条件で加熱混錬して粉末成形体組成物を得た。得られた粉末成形用組成物を、実施例1と同様にして射出成形しリング状の成形体を得た。このとき成形体の成形度は流動性、分散性、相溶性、金型との離型性とも良好で、成形体の面引け等は発生しなかった。
【0065】
得られたリング状射出成形体を真空脱脂焼結炉に設置し、実施例1と同様の脱脂の工程および焼結をおこなった。得られた焼結体に欠陥は認められなかった。さらに焼結体中のバインダーの残留を測定するため燃焼式炭素分析装置により炭素量の測定を行った結果、0.01wt%以下であり問題のないレベルであることが判明した。この実施例2におけるバインダーの組成と成形体の評価結果とを図3に示し、成形体の外観を図4に示す。
【0066】
(実施例3)
実施例2と同様に、金属粉末として平均粒径10μmのSUS316L粉末、バインダー中における第1の熱可塑性樹脂としてビカット軟化点温度423Kのポリプロピレン、第2の熱可塑性樹脂としてビカット軟化点温度403Kのポリエチレン、有機化合物として423Kでの蒸気圧が13Paのパラフィンワックスおよび423Kでの蒸気圧が13Paのフタール酸ジオクチルを選択した。
【0067】
まず、ポリプロピレン10vol%、ポリエチレン15vol%、パラフィンワックス70vol%およびフタール酸ジオクチル5vol%を配合してバインダーとした。次に、金属粉末58vol%と、バインダー42vol%とを配合し、433K×70minの条件で加熱混錬して粉末成形体組成物を得た。得られた粉末成形用組成物を、実施例1と同様にして射出成形しリング状の成形体を得た。このとき成形体の成形度は流動性、分散性、相溶性、金型との離型性とも良好で、成形体の面引け等は発生しなかった。
【0068】
得られたリング状射出成形体を真空脱脂焼結炉に設置し、実施例1と同様の脱脂の工程および焼結をおこなった。得られた焼結体に欠陥は認められなかった。さらに焼結体中のバインダーの残留を測定するため燃焼式炭素分析装置により炭素量の測定を行った結果、0.01wt%以下であり問題のないレベルであることが判明した。この実施例3におけるバインダーの組成と成形体の評価結果とを図3に示し、成形体の外観を図4に示す。
【0069】
(実施例4)
金属粉末として平均粒径10μmのSUS304L粉末、バインダー中における第1の熱可塑性樹脂としてビカット軟化点温度430K変性ポリアセタール樹脂およびビカット軟化点温度423Kのポリプロピレン、有機化合物として、423Kでの蒸気圧が13Paのパラフィンワックスおよび423Kでの蒸気圧が13Paのフタール酸ジオクチルを選択した。
【0070】
まず、変性ポリアセタール樹脂20vol%、ポリプロピレン10vol%およびパラフィンワックス70vol%を配合してバインダーとした。次に、金属粉末58vol%と、バインダー42vol%とを配合し、433K×70minの条件で加熱混錬して粉末成形体組成物を得た。得られた粉末成形用組成物を、実施例1と同様にして射出成形しリング状の成形体を得た。このとき成形体の成形度は流動性、分散性、相溶性、金型との離型性とも良好で、成形体の面引け等は発生しなかった。
【0071】
得られたリング状射出成形体を真空脱脂焼結炉に設置し、実施例1と同様の脱脂の工程および焼結をおこなった。得られた焼結体に欠陥は認められなかった。さらに焼結体中のバインダーの残留を測定するため燃焼式炭素分析装置により炭素量の測定を行った結果、0.01wt%以下であり問題のないレベルであることが判明した。この実施例4におけるバインダーの組成と成形体の評価結果とを図3に示し、成形体の外観を図4に示す。
【0072】
(実施例5)
金属粉末として平均粒径10μmのSUS304L粉末、バインダー中における第1の熱可塑性樹脂としてビカット軟化点温度430K変性ポリアセタール樹脂およびビカット軟化点温度423Kのポリプロピレン、第2の熱可塑性樹脂としてビカット軟化点温度403Kのポリエチレンを用い、有機化合物として423Kでの蒸気圧が13Paのパラフィンワックスおよび423Kでの蒸気圧が13Paのフタール酸ジオクチルを選択した。まず、変性ポリアセタール樹脂15vol%、ポリプロピレン10vol%、ポリエチレン5vol%およびパラフィンワックス70vol%を配合してバインダーとした。
【0073】
次に、金属粉末58vol%と、バインダー42vol%とを配合し、433K×70minの条件で加熱混錬して粉末成形体組成物を得た。得られた粉末成形用組成物を、実施例1と同様にして射出成形しリング状の成形体を得た。このとき成形体の成形度は流動性、分散性、相溶性、金型との離型性とも良好で、成形体の面引け等は発生しなかった。
【0074】
得られたリング状射出成形体を真空脱脂焼結炉に設置し、実施例1と同様の脱脂の工程および焼結をおこなった。得られた焼結体に欠陥は認められなかった。さらに焼結体中のバインダーの残留を測定するため燃焼式炭素分析装置により炭素量の測定を行った結果、0.01wt%以下であり問題のないレベルであることが判明した。この実施例5におけるバインダーの組成と成形体の評価結果とを図3に示し、成形体の外観を図4に示す。
【0075】
(比較例1)
実施例1のバインダーに用いたポリプロピレンを、ビカット軟化点温度423Kのものから403Kのものに代替した以外は、実施例1と同様にバインダーを配合し、次に粉末成形体組成物を得、さらにリング状の成形体を得た。このとき成形体の成形度は良好であった。
【0076】
得られたリング状射出成形体を真空脱脂焼結炉に設置し、実施例1と同様の脱脂の工程および焼結をおこなった。得られた焼結体には、亀裂および膨れの欠陥が認められた。この比較例1におけるバインダーの組成と成形体の評価結果を図3に示し、成形体の外観を図5に示す。
【0077】
(比較例2)
実施例2のバインダーに用いたポリプロピレンを、ビカット軟化点温度423Kのものから403Kのものに代替した以外は、実施例2と同様にバインダーを配合し、次に粉末成形体組成物を得、さらにリング状の成形体を得た。このとき成形体の成形度は良好であった。
【0078】
得られたリング状射出成形体を真空脱脂焼結炉に設置し、実施例1と同様の脱脂の工程および焼結をおこなった。得られた焼結体には、亀裂および膨れの欠陥が認められた。この比較例2におけるバインダーの組成と成形体の評価結果を図3に示し、成形体の外観を図5に示す。
【0079】
(比較例3)
実施例3のバインダーに用いたポリプロピレンを、ビカット軟化点温度423Kのものから403Kのものに代替した以外は、実施例3と同様にバインダーを配合し、次に粉末成形体組成物を得、さらにリング状の成形体を得た。このとき成形体の成形度は良好であった。
【0080】
得られたリング状射出成形体を真空脱脂焼結炉に設置し、実施例1と同様の脱脂の工程および焼結をおこなった。得られた焼結体には、亀裂および膨れの欠陥が認められた。この比較例3におけるバインダーの組成と成形体の評価結果を図3に示す。
【0081】
〈第2の実施の形態〉
(粉末成形用組成物の調製)
粉末成形用組成物は、第1の実施の形態と同様に、製造の目的物である機械部品等を構成する金属またはセラミックの粉末と、これらの粉末を成形可能とするためのバインダーとの混合物である。このバインダー中の熱可塑性樹脂について、説明する。
【0082】
バインダー中には、第1の実施の形態にて説明した第1の熱可塑性樹脂と、以下説明する「第3の熱可塑性樹脂」が含まれ、また、所望により第1の実施の形態にて説明した第2の熱可塑性樹脂が含まれる。ここで、第1および第2の熱可塑性樹脂は、第1の実施の形態と同様に、有機化合物が気化し揮散する際に、成形体の形状を保つことを目的とする。他方、「第3の熱可塑性樹脂」とは、後述する、成形体の脱脂において、成形体にかかる負担を低減し、精密な形状を要求される機械部品等の焼結体を製造するために加えられるものである。この目的を達成するため、第3の熱可塑性樹脂は、第1の熱可塑性樹脂より、熱分解温度が10〜40K高いものを選択することが好ましい。
【0083】
尚、複数の熱可塑性樹脂における熱分解温度の差とは、各熱可塑性樹脂が加熱を開始する際には、その熱分解開始温度の差である。また、各熱可塑性樹脂が熱分解を行っている際は、各熱可塑性樹脂間において、熱分解による加熱減量が概ね等しい値を示すときの加熱温度の差をいう。
【0084】
本実施の形態に係る第1の熱可塑性樹脂は、第1の実施の形態と同様に、汎用性、好環境性、作業性、コスト等の点を考えると、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブチルメタクリレート、ポリオキシメチレン、ポリビニールブチラール、エチレン酢酸ビニル共重合体、変性ポリアセタールから選ばれる1種または2種類以上で、バインダーとして組み合わせて用いる有機化合物が気化、揮散を終了する温度より高いビカット軟化点を有するものを用いればよい。
【0085】
また所望により、第2の熱可塑性樹脂を加える場合は、第1の実施の形態にて説明したものと同様な樹脂を、同様な組成比で加えることができ、この第2の熱可塑性樹脂の添加により、第1の実施の形態にて説明したものと同様に、粉末成形用組成物を成形体とする際の、粉末成形用組成物の流動性、分散性、相溶性、金型との離型性が向上させ、作製された成形体の面引け等を抑制することができる。
【0086】
第3の熱可塑性樹脂の種類としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブチルメタクリレート、ポリオキシメチレン、ポリビニールブチラール、エチレン酢酸ビニル共重合体から選ばれる1種または2種類以上を添加したものを用いることができる。さらに、第1、第3の熱可塑性樹脂として同種類のものを用いると、例えば、当該両熱可塑性樹脂の重合度の差により、熱分解温度の差が10〜40Kであるものを容易に得ることができ好ましい。くわえて、第1、第3の熱可塑性樹脂として同種類のものを用いることで、両樹脂における、10〜40Kの熱分解温度の差が熱分解反応を穏やかなものにさせる。さらに加えて、第1、第3の熱可塑性樹脂としてポリエチレンを用いると、コスト、作業性、製造される焼結体の精度等の観点より好ましい結果を得ることができた。
また、第1、第3の熱可塑性樹脂として、2種以上の樹脂の混合物を用いる場合は、第1、第3の熱可塑性樹脂の間で、同種類、且つ10〜40Kの熱分解温度の差を有するものを選択すれば良い。
【0087】
用いられる第1の熱可塑性樹脂と組み合わせるのに、好適な第3の熱可塑性樹脂の選択方法としては、次のようなのもがある。
第1の方法は、熱分析等により、第3の熱可塑性樹脂加熱時の加熱減量データを求め、そのデータと、第1の熱可塑性樹脂の加熱減量データとを比較して、両樹脂の熱分解温度の差を、10〜40K高く保つものを第3の熱可塑性樹脂として選択すればよい。
第2の方法は、第1と、第3の熱可塑性樹脂が同種類の樹脂である場合、両樹脂の熱分解温度の差は、概ね両樹脂のビカット軟化点温度の差に等しいことから、第1の熱可塑性樹脂と同種類であって、ビカット軟化点温度が10〜40K高いものを、第3の熱可塑性樹脂として選択してもよい。
【0088】
バインダー中における第3の熱可塑性樹脂の配合比は、得られた粉末成形用組成物のサンプルを用いた試作等により適宜な値を決定すればよいが、第1の熱可塑性樹脂の効果を減殺しない観点より、第3の熱可塑性樹脂を粉末成形用組成物へ添加する際の上限を70vol%としておくことが好ましい。
また所望により、第3の熱可塑性樹脂と上述した第2の熱可塑性樹脂とを混合使用する場合は、両熱可塑樹脂の合計を粉末成形用組成物へ添加する際の上限も70vol%としておくことが好ましい。
【0089】
バインダー中の有機化合物と熱可塑性樹脂との配合比、およびバインダーと金属粉末またはセラミック粉末との配合比については、第1の実施の形態と同様である。
【0090】
(成形)
成型方法は、第1の実施の形態と同様であるが、第1、第3の熱可塑性樹脂としてビカット軟化点温度の差が10〜40Kであるものを用いることで、組成物は金型中に均一に充填され、且つバインダー相互およびバインダーと金属粉末等の親和が大きいため金型中で偏析が起きにくいことから成形体の面引け等を抑制することができる。勿論、さらに第2の熱可塑性樹脂を加えた場合も成形体の面引け等を抑制することができる。
【0091】
(成形体の脱脂)
本実施の形態に係る成形体の脱脂工程について図6、図7を参照しながら説明する。図6は、第1の熱可塑性樹脂単独の場合と、第1および第3の熱可塑性樹脂を等量混合した場合との、各熱処理温度における加熱減量の変化の状態を示したグラフであり、図7は、本実施の形態に係る粉末成型用組成物のバインダーに用いられる有機化合物、第1および第3の熱可塑性樹脂が、加熱によって気化、揮散する状態の一例を示したグラフであって、両グラフとも、縦軸に有機化合物の気化、揮散の状態を示す加熱減量をとり、横軸に温度をとったものである。
【0092】
まず、図6において、熱可塑性樹脂として第1および第3の熱可塑性樹脂の混合物を用いた場合(図中:−○−で示した。)より、第1の熱可塑性樹脂単独のものを用いた場合(図中:…×…で示した。)の方が、処理温度上昇当たりの加熱重量減量の傾斜が大きいことが判明した。これは、第1の熱可塑性樹脂単独のものを熱処理した場合、急激な分解となるものが、第1および第3の熱可塑性樹脂の混合物を用いた場合は、両熱可塑性樹脂の熱分解反応が平均化され、相補的に穏やかに進むことが判明した。
【0093】
この第1および第3の熱可塑性樹脂と、有機化合物としてワックスとを含む、本実施の形態に係るバインダーが、加熱によって気化、揮散する状態について、図7を参照しながら説明する。
【0094】
調製された成形体を加熱装置内に設置したのち、室温から第1の熱可塑性樹脂におけるビカット軟化点の温度未満に設定した所定の温度まで150〜600K/hrの昇温速度で昇温を開始する。成形体の温度が約340Kに到達すると、本実施の形態に係る有機化合物は、図7に実線で示すように気化、揮散を開始し、成形体中に連続的な気孔が生成するが、これは430K未満で完了する。そこで、この温度を所望の時間保持して、成形体中の有機化合物の気化と揮散を完了する。
【0095】
ここで、本実施の形態に係る有機化合物が気化、揮散をおこなっている340〜430K未満の温度において、本実施の形態に係る第1の熱可塑性樹脂(ビカット軟化点430K)は、十分な硬度を保持している。この結果、本実施の形態の昇温速度が150〜600K/hrという高速のため、有機化合物が成形体中にて急速に気化、揮散をおこない気孔を生成しても、成形体の膨れ、亀裂、変形等は抑制されている。加熱装置内の雰囲気についても第1の実施の形態と同様である。
【0096】
加熱装置内の成形体の昇温加熱が進行し、その温度が第1の熱可塑性樹脂のビカット軟化点を超えると成形体中の第1の熱可塑性樹脂は軟化を始めるが、この時点では、第3の熱可塑性樹脂(ビカット軟化点450K)が十分な硬度を保持している。さらに昇温が進行し、第3の熱可塑性樹脂のビカット軟化点を超えると、成形体中の第3の熱可塑性樹脂は軟化を始めるが、それ以前に有機化合物の気化、揮散は終わっているので、成形体の膨れ、亀裂、変形等は起こらない。この時点で有機化合物の微少量が残留していて、それらが気化しても、これら気化物は生成した気孔を経て揮散してしまうので、成形体の膨れ、亀裂、変形等の原因とはならない。この点は、第1の実施の形態と同様である。
【0097】
加熱装置内の成形体の昇温加熱がさらに進行し、例えば590Kを超えると、今度は、第1および第3の熱可塑性樹脂が、図7に一点鎖線および2点鎖線で示すように、両熱可塑性樹脂のビカット軟化点温度の差に、概ね等しい熱分解開始温度の差を保ちながら気化、揮散を始める。すると、図6を用いて説明したように、第1および第3の熱可塑性樹脂は昇温に対応して、第1の実施の形態の場合より、穏やかに熱分解を開始し気化して行く。
【0098】
もちろん、第1の実施の形態で記載したように、第1および第3の熱可塑性樹脂の混合物を用いなくても、肉眼観察において何ら問題のない成形体の脱脂工程を行うことが可能である。しかし、第2の実施の形態の構成を採ることにより、例えば100倍程度の光学顕微鏡にて観察しても、何ら問題のない成形体の脱脂工程を行うことが可能となった。
そして、成形体の温度が例えば720Kを超えると、第3の熱可塑性樹脂の気化、揮散が終了して成形体からバインダー成分が消失し脱脂工程が完了する。
【0099】
尚、第1および第3の熱可塑性樹脂の気化、揮散の際、製造の最終目的物である機械部品等にバインダーの成分が不純物として残留しないよう、加熱装置内へ排掃(スウィープ)ガスを供給することは、目的、方法とも第1の実施の形態と同様である。
【0100】
(成形体の焼結)
バインダーの脱脂を完了した成形体に対し引き続き焼結をおこなうが、目的、方法とも第1の実施の形態と同様である。
【0101】
(実施例6)
金属粉末として平均粒径10μmのSUS316L粉末、バインダー中における第1の熱可塑性樹脂としてビカット軟化点の温度が403Kのポリエチレン、第3の熱可塑性樹脂としてビカット軟化点の温度が423Kのポリエチレン、有機化合物として423Kでの蒸気圧が13Pa以下のパラフィンワックスおよび423Kでの蒸気圧が13Pa以下のフタール酸ジオクチルを選択した。まず、パラフィンワックス70vol%およびポリエチレン25vol%(ビカット軟化点の温度が403Kのポリエチレン12.5vol%、ビカット軟化点の温度が423Kのポリエチレン12.5vol%)、フタール酸ジオクチル5vol%を配合してバインダーとした。次に、金属粉末58vol%と、バインダー42vol%とを配合し、433K×70minの条件で加熱混錬して成形体組成物を得た。
【0102】
得られた粉末成形用組成物を射出成形機により、金型へ注入して射出成形を行い、外形35mm、内径27mm、高さ10mm(肉厚4mm)を有するリング状の成形体を得た。このとき成形体の成形度は流動性、分散性、相溶性、金型との離型性とも良好で、成形体の面引け等は発生しなかった。
【0103】
得られたリング状射出成形体を真空脱脂焼結炉に設置し、脱脂の工程および焼結をおこなった。このときの、脱脂の工程のプロファイルを図8に示す。図8は、縦軸に炉内温度をとり、横軸に時間をとり、さらに横軸へ、炉内の雰囲気の圧力および昇温速度を記載したものである。
【0104】
まず、炉内に成形体を設置後、炉内の雰囲気の圧力を0.0133Paに減圧し、炉内温度を常温300Kから418Kまで昇温速度375K/hrで昇温する。そして418Kを20分間保持して、パラフィンワックスとフタール酸ジオクチルの脱脂の工程を行った後、さらに昇温速度375K/hrにて炉内温度を473Kまで昇温し、スィープガスとして窒素ガスを流量20l/minで炉内に供給しながら、炉内の排気をおこない、炉内の雰囲気の圧力を2.66kPaとした後、573Kまでは昇温速度375K/hrで昇温する。573Kを超えると、まず、第1の熱可塑性樹脂であるポリエチレンの脱脂が始まり、次に、ビカット軟化点の温度差に相応して、第3の熱可塑性樹脂であるポリエチレンの脱脂が始まるが、ここで、昇温速度を400K/hrとして673Kまで昇温する。673Kを超えると第1の熱可塑性樹脂のポリエチレンはほぼ熱分解を終了するため、昇温速度800K/hrで873Kまで昇温し、873Kから1073Kまでは昇温速度600K/hrで昇温を行った。ここ迄の、バインダーの脱脂に要した合計脱脂時間1時間50分であった。
【0105】
バインダーの脱脂終了後、引き続き成形体の焼結を行うため、同一の炉内において炉内温度を500〜600K/hrの昇温速度で昇温して1623Kとした。このとき、炉内の温度が1373Kまでは雰囲気の圧力を0.0133Paに減圧し、炉内の温度が、1373K〜1623Kにおいては窒素とアルゴンの混合ガスを流量20l/minで炉内に供給しながら、炉内の排気をおこない、炉内の雰囲気の圧力を3.99kPaとした。そして1623Kを2時間保持して、焼結体を得た。
【0106】
得られた焼結体を、100倍の光学顕微鏡にて観察したが、欠陥は認められなかった。さらに焼結体中のバインダーの残留を測定するため燃焼式炭素分析装置により炭素量の測定を行った結果、0.01wt%以下であり問題のないレベルであることが判明した。
【0107】
(実施例7)
第1の熱可塑性樹脂としてビカット軟化点の温度が403Kのポリエチレン15vol%、第3の熱可塑性樹脂としてビカット軟化点の温度が423Kのポリエチレン15vol%とを配合し、フタール酸ジオクチルは配合せずにバインダーとした以外は、実施例6と同様にして成形体組成物を調製した。
そして当該成形体組成物を用い、実施例6と同様にしてリング状の成形体を作製したが、成形度は流動性、分散性、相溶性、金型との離型性とも良好で、成形体の面引け等は発生しなかった。
得られたリング状射出成形体を真空脱脂焼結炉に設置し、実施例6と同様に脱脂の工程および焼結をおこない焼結体を得た。
得られた焼結体を、100倍の光学顕微鏡にて観察したが、欠陥は認められなかった。さらに焼結体中のバインダーの残留を測定するため燃焼式炭素分析装置により炭素量の測定を行った結果、0.01wt%以下であり問題のないレベルであることが判明した。
【0108】
(比較例4)
金属粉末として平均粒径10μmのSUS316L粉末、バインダー中における熱可塑性樹脂としてビカット軟化点の温度が423Kのポリエチレン、有機化合物として423Kでの蒸気圧が13Pa以下のパラフィンワックスおよび423Kでの蒸気圧が13Pa以下のフタール酸ジオクチルを選択した。まず、パラフィンワックス70vol%およびポリエチレン25vol%、フタール酸ジオクチル5vol%を配合してバインダーとした。次に、金属粉末58vol%と、バインダー42vol%とを配合し、433K×70minの条件で加熱混錬して成形体組成物を得た。
【0109】
そして当該成形体組成物を用い、実施例6と同様にしてリング状の成形体を作製したが、成形度は流動性、分散性、相溶性、金型との離型性とも良好で、成形体の面引け等は発生しなかった。
得られたリング状射出成形体を真空脱脂焼結炉に設置し、実施例6と同様に脱脂の工程および焼結をおこない焼結体を得た。
得られた焼結体を、100倍の光学顕微鏡にて観察したところ、欠陥が認められた。さらに焼結体中のバインダーの残留を測定するため燃焼式炭素分析装置により炭素量の測定を行った結果、0.01wt%以下であり問題のないレベルであることが判明した。
【0110】
(比較例5)
バインダー中における熱可塑性樹脂としてビカット軟化点の温度が403Kのポリエチレンを用いた以外は、比較例4と同様にして成形体組成物を調製した。
そして当該成形体組成物を用い、実施例6と同様にしてリング状の成形体を作製したが、成形度は流動性、分散性、相溶性、金型との離型性とも良好で、成形体の面引け等は発生しなかった。
得られたリング状射出成形体を真空脱脂焼結炉に設置し、実施例6と同様に脱脂の工程および焼結をおこない焼結体を得た。
得られた焼結体を、100倍の光学顕微鏡にて観察したところ、欠陥が認められた。さらに焼結体中のバインダーの残留を測定するため燃焼式炭素分析装置により炭素量の測定を行った結果、0.01wt%以下であり問題のないレベルであることが判明した。
【0111】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は金属粉末またはセラミック粉末と、バインダーとを含む粉末成形用組成物を成形して成形体とし、前記成形体を加熱して前記バインダーを気化して除いた後、さらに加熱して前記金属粉末または前記セラミック粉末を焼結して所望の焼結体を製造する工程に用いられる前記粉末成形用組成物であって、
前記バインダーは、第1の熱可塑性樹脂と有機化合物とを含み、
前記成形体中の前記有機化合物が、前記第1の熱可塑性樹脂の有するビカット軟化点の温度未満で気化することを特徴とする粉末成形用組成物としたことで、
この粉末成形用組成物から成形した成形体の脱脂工程において、高速の昇温が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るバインダーが、加熱によって気化、揮散する状態を示したグラフである。
【図2】本発明の実施例に係る脱脂の工程のプロファイルである。
【図3】本発明の実施例と比較例に係るバインダーの組成と成形体の評価結果である。
【図4】本発明の実施例に係る成形体の外観写真である。
【図5】本発明の比較例に係る成形体の外観写真である。
【図6】熱可塑性樹脂の各熱処理温度における加熱減量を示したグラフである。
【図7】本発明の異なる実施の形態に係るバインダーが、加熱によって気化、揮散する状態を示したグラフである。
【図8】本発明の異なる実施例に係る脱脂の工程のプロファイルである。
Claims (14)
- 金属粉末またはセラミック粉末と、バインダーとを含む粉末成形用組成物を成形して成形体とし、前記成形体を加熱して前記バインダーを気化して除いた後、さらに加熱して前記金属粉末または前記セラミック粉末を焼結して所望の焼結体を製造する工程に用いられる前記粉末成形用組成物であって、
前記バインダーは、第1の熱可塑性樹脂と有機化合物とを含み、
前記成形体中の前記有機化合物は、前記第1の熱可塑性樹脂の有するビカット軟化点の温度未満で気化することを特徴とする粉末成形用組成物。 - 金属粉末またはセラミック粉末と、バインダーとを含む粉末成形用組成物を成形して成形体とし、前記成形体を加熱して前記バインダーを気化して除いた後、さらに加熱して前記金属粉末または前記セラミック粉末を焼結して所望の焼結体を製造する工程に用いられる前記粉末成形用組成物であって、
前記バインダーは、第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂と有機化合物とを含み、
前記第2の熱可塑性樹脂の有するビカット軟化点の温度は、前記第1の熱可塑性樹脂の有するビカット軟化点の温度より低く、
前記成形体中の前記有機化合物は、前記第1の熱可塑性樹脂の有するビカット軟化点の温度未満で気化することを特徴とする粉末成形用組成物。 - 金属粉末またはセラミック粉末と、バインダーとを含む粉末成形用組成物を成形して成形体とし、前記成形体を加熱して前記バインダーを気化して除いた後、さらに加熱して前記金属粉末または前記セラミック粉末を焼結して所望の焼結体を製造する工程に用いられる前記粉末成形用組成物であって、
前記バインダーは、第1の熱可塑性樹脂と第3の熱可塑性樹脂と有機化合物とを含み、
前記第3の熱可塑性樹脂の有する熱分解温度は、前記第1の熱可塑性樹脂の有する熱分解温度より10〜40K高く、
前記成形体中の前記有機化合物は、前記第1の熱可塑性樹脂の有するビカット軟化点の温度未満で気化することを特徴とする粉末成形用組成物。 - 金属粉末またはセラミック粉末と、バインダーとを含む粉末成形用組成物を成形して成形体とし、前記成形体を加熱して前記バインダーを気化して除いた後、さらに加熱して前記金属粉末または前記セラミック粉末を焼結して所望の焼結体を製造する工程に用いられる前記粉末成形用組成物であって、
前記バインダーは、第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂と第3の熱可塑性樹脂と有機化合物とを含み、
前記第2の熱可塑性樹脂の有するビカット軟化点の温度は、前記第1の熱可塑性樹脂の有するビカット軟化点の温度より低く、
前記第3の熱可塑性樹脂の有する熱分解温度は、前記第1の熱可塑性樹脂の有する熱分解温度より10〜40K高く、
前記成形体中の前記有機化合物は、前記第1の熱可塑性樹脂の有するビカット軟化点の温度未満で気化することを特徴とする粉末成形用組成物。 - 請求項3または4に記載の粉末成形用組成物であって、
前記第1および第3の熱可塑性樹脂は、同種類の樹脂であり、
前記第3の熱可塑性樹脂のビカット軟化点温度は、前記第1の熱可塑性樹脂のビカット軟化点温度より10〜40K高いことを特徴とする粉末成形用組成物。 - 前記第1の熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブチルメタクリレート、ポリオキシメチレン、ポリビニールブチラール、エチレン酢酸ビニル共重合体、変性ポリアセタールから選ばれる1種または2種類以上の樹脂であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の粉末成形用組成物。
- 前記有機化合物は、ワックス類、フタル酸エステル、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、フタール酸ジオクチルから選ばれる1種または2種類以上の有機化合物であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の粉末成形用組成物。
- 前記第2の熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブチルメタクリレート、ポリオキシメチレン、ポリビニールブチラール、フタール酸ジオクチル、エチレン酢酸ビニル共重合体、変性ポリアセタールから選ばれる1種または2種類以上の樹脂であることを特徴とする請求項2から7のいずれかに記載の粉末成形用組成物。
- 前記第3の熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブチルメタクリレート、ポリオキシメチレン、ポリビニールブチラール、エチレン酢酸ビニル共重合体、変性ポリアセタールから選ばれる1種または2種類以上の樹脂であることを特徴とする請求項3から8のいずれかに記載の粉末成形用組成物。
- 請求項1から9のいずれかに記載の粉末成形用組成物であって、
前記粉末成形用組成物中に、前記バインダーは30〜70vol%を占め、且つ前記バインダー中に、前記第1の熱可塑性樹脂が5〜70vol%、前記有機化合物が30〜95vol%、前記第2の熱可塑性樹脂と前記第3の熱可塑性樹脂との合計が0〜70vol%含まれることを特徴とする粉末成形用組成物。 - 請求項1から10のいずれかに記載の粉末成形用組成物を用いて成形体を製造し、この成形体を加熱して、前記成形体中の前記有機化合物を気化し除く工程を有する成形体の脱脂方法であって、
前記成形体中の前記有機化合物を気化し除く工程を、前記第1の熱可塑性樹脂の有するビカット軟化点の温度未満の温度で、完了させることを特徴とする成形体の脱脂方法。 - 請求項11に記載の成形体の脱脂方法であって、
前記成形体中の前記有機化合物を気化し除く工程を、前記有機化合物がこの工程において有する蒸気圧以下の圧力まで減圧した雰囲気の中でおこなうことを特徴とする成形体の脱脂方法。 - 請求項11または12に記載の成形体の脱脂方法であって、
前記成形体中の前記有機化合物を気化し除く工程において、前記有機化合物の有する蒸気圧が0.133Pa以上である有機化合物を前記有機化合物として用いることを特徴とする成形体の脱脂方法。 - 請求項11から13のいずれかに記載の成形体の脱脂方法であって、
前記成形体中の前記有機化合物を気化し除く工程における昇温を150〜600K/hrの昇温速度でおこなうことを特徴とする成形体の脱脂方法。
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