JP2004002936A - 焼結製品用原材料およびこの原材料を用いて製造する焼結製品における射出成形体の脱脂方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】焼結製品における射出成形体の脱脂工程において、射出成形体に変形や膨れ、亀裂を生じさせず、短時間での脱脂を可能にした焼結製品用原材料およびこの原材料を用いた焼結製品における射出成形体の脱脂方法を提供する。
【解決手段】焼結製品用原材料は、粉末素材と有機バインダーの混練物からなり、射出成形して射出成形体とした後、脱脂、焼結の各工程を行なって焼結体を成形するのに使用される焼結製品用原材料であって、前記有機バインダーが、少なくとも1種の水溶性の多価アルコールと、少なくとも1種の水に不溶性の熱可塑性有機ポリマーとを含む。そして、この原材料を用いた焼結製品における射出成形体の脱脂方法では、射出成形体の脱脂処理として、射出成形体と水とを接触せしめて、射出成形体中から前記水溶性多価アルコールを水中に溶出させた後、射出成形体を加熱炉で加熱して残りの有機バインダー成分を蒸発・除去する。
【解決手段】焼結製品用原材料は、粉末素材と有機バインダーの混練物からなり、射出成形して射出成形体とした後、脱脂、焼結の各工程を行なって焼結体を成形するのに使用される焼結製品用原材料であって、前記有機バインダーが、少なくとも1種の水溶性の多価アルコールと、少なくとも1種の水に不溶性の熱可塑性有機ポリマーとを含む。そして、この原材料を用いた焼結製品における射出成形体の脱脂方法では、射出成形体の脱脂処理として、射出成形体と水とを接触せしめて、射出成形体中から前記水溶性多価アルコールを水中に溶出させた後、射出成形体を加熱炉で加熱して残りの有機バインダー成分を蒸発・除去する。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属やセラミックス等の粉末素材とバインダーの混練物からなる原材料を射出成形法によって成形して、脱脂、焼結することにより焼結品を得るための方法に係り、特に、焼結製品用原材料の組成およびこの原材料を用いて製造する焼結製品における射出成形体の脱脂方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、金属粉末やセラミックス粉末から焼結品を製造する方法として、上記粉末素材に有機バインダーを配合して混練し、粉末素材に流動性を付与して、これを射出成形し、得られた成形体を脱脂・焼結することによって焼結品を製造する方法が知られている。この場合、脱脂の方法としては、(A)射出成形体を加熱することによって、有機バインダーを分解・蒸発させる方法と、(B)溶媒を用いて射出成形体から有機バインダーを溶出する方法がある。
【0003】
(A)の方法においては、成形体を変形させることなく脱脂するには非常に長い時間を要するという問題がある。すなわち、射出成形法では、混練物が加熱されることによって軟化し、流動性を呈するという現象を利用するものであるため、成形体が加熱時に軟化して変形することが当然予想される。したがって、これを防ぐためには、変形温度に達する前に混練物中に含まれる有機バインダーの一部を除去すれば良いと考えられるが、変形温度以下で有機バインダーを分解し或いは蒸発して除去するのでは長時間が必要となる。逆に、変形温度以下で有機バインダーが簡単に分解・蒸発するようであると、混練物の射出成形時における射出成形時の流動性が不安定となり、加えて、射出成形後に生じるランナー部やスプール部等の再生が困難となる。
また、加熱時の軟化の程度を抑えることにより、脱脂時の変形を抑える方法では、射出成形時の流動性が悪くなり、精密な成形が困難になる。一方、変形を防ぐために熱硬化性樹脂を用いたり、昇華物質を加えたりする方法も考えられるが、その場合には、混練物の流動性が劣化したり、ランナー部やスプール部の再生が不可能になるといった問題がある。また、この場合、脱脂初期の急激な有機バインダーの分解・蒸発に起因して射出成形体に膨れや亀裂を生じるといった問題もある。
【0004】
そこで、(B)の方法により、変形温度以下の低温において溶媒で有機バインダーの一部を溶出除去すれば、後の加熱によっても変形が起きず、除去された有機バインダーの部分が道となって、残りの有機バインダーの分解・蒸発ガスが抜け易くなり、膨れや亀裂が生じにくくなる。また、熱的に不安定な成分を入れる必要がないことから、ランナー部やスプール部の再生も可能となる。
しかしながら、(B)の方法では、従来の粉末の射出成形法に用いられている一般の有機バインダーを溶出するには有機溶剤を用いる必要があるが、有機溶剤は高価であり、環境面に於いても好ましくなく、また、有機溶剤の取り扱いによっては危険を伴うことが有る。
また、可塑材、潤滑材のみを溶出した後、加熱脱脂するといった方法も考えられるが、その場合にも、可塑剤や潤滑材の量を増やすと成形体の強度劣化や、射出成形時に滲み出し等が起こるため、添加量を増やせず、加熱脱脂時の変形や膨れを防止するには未だ不十分である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
解決しようとする課題は、焼結製品における射出成形体の脱脂工程において、射出成形体に変形や膨れ、亀裂を生じさせることなく、短時間での脱脂を可能にした焼結製品用原材料およびこの原材料を用いて製造する焼結製品における射出成形体の脱脂方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記した課題を達成するため、焼結製品用原材料では、粉末素材と有機バインダーの混練物からなり、射出成形して射出成形体とした後、脱脂、焼結の各工程を行なって焼結体を成形するのに使用される焼結製品用原材料であって、前記有機バインダーが、少なくとも1種の水溶性の多価アルコールと、少なくとも1種の水に不溶性の熱可塑性有機ポリマーとを含有していることを特徴とする。
また、本発明の焼結製品用原材料では、水溶性の多価アルコールは、常温で固体であり、炭素数が2〜5個であり、ペンタエリスリトール、L−エリスリトール、D‐エリスリトール、meso‐エリスリトール、ピナトール等の少なくとも一種を用いていることを特徴とする。
そして、前記した原材料を用いて製造する焼結製品における射出成形体の脱脂方法では、原材料を射出成形して射出成形体とした後、脱脂、焼結の各工程を行なうことにより焼結体を成形する焼結製品における射出成形体の脱脂方法であって、前記した射出成形後における射出成形体の脱脂処理として、射出成形体と水とを接触せしめて、射出成形体中から前記水溶性多価アルコールを水中に溶出させた後、射出成形体を加熱炉において加熱して残りの有機バインダー成分を蒸発させて除去するようにしたことを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の焼結製品用原材料における実施の1形態について説明する。
焼結製品用原材料は、粉末素材と有機バインダーを混合して混練した混練物である。ここで、粉末素材としては、金属粉末、セラミックス粉末等が用いられる。また、有機バインダーとしては、少なくとも、一種の水溶性の多価アルコールと、少なくとも一種の水に不溶性の有機バインダーとを含む有機バインダーが用いられる。上記水溶性の多価アルコールとしては、炭素数が2〜5個であり、ペンタエリスリトール、L−エリスリトール、D‐エリスリトール、meso‐エリスリトール、ピナトール等が用いられ、当該多価アルコールは、水に不溶性の有機バインダーとの相溶性も良好である。また、水に不溶性の有機バインダーとしては、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸エステル、エチレン酢酸ビニル共重合体等の通常の金属粉末やセラミックス粉末の射出成形に使用される熱可塑性ポリマーが選ばれる。
【0008】
次に、前記した焼結製品用原材料を用いた本発明の焼結製品における射出成形体の脱脂方法について実施の1形態を詳しく説明する。
先ず、前記の焼結製品用原材料を射出成形して射出成形体とする。次に、この射出成形体に脱脂処理を行なって脱脂体とする。脱脂処理としては、先ず射出成形体を水(常温水および加熱水を含む。以下同様)に接触せしめる。これにより、射出成形体中から上記水溶性の多価アルコールを溶出する。ここで、射出成形体と水の接触方法としては、射出成形体を水中に浸漬することによって処理するのが、作業性等の点からもまた溶出時間の短縮といった点からも好適とされる。その後、加熱炉において加熱脱脂を施し、水に不溶性の熱可塑性有機ポリマー等の残りの有機バインダー成分を除去する。ここで、加熱脱脂を行なうにあたっては、常圧で加熱脱脂しても良いが、減圧下にて行なうのがより有機バインダー成分の除去時間を短縮し得ることから好適とされ、特に真空脱脂を行なうのが望ましい。
その後、この脱脂体に加熱焼結処理を行ない、金属、セラミックス等からなる焼結体を得る。
【0009】
実施例1
以下に、焼結製品用原材料の具体例を示す。
Fe‐8%Ni合金粉末(平均粒径8μm) 100重量部
ペンタエリスリトール(水溶性多価アルコール) 5重量部
ポリプロピレン(水に不溶性の熱可塑性樹脂) 3重量部
ステアリン酸 1重量部
混練温度(混練機) 210℃
混練時間(混練機) 60分
【0010】
以下に、前記した焼結製品用原材料を用いた焼結製品における射出成形体の脱脂方法の具体例を示す。
前記した実施例1の原材料を粉砕し、スクリュウ式射出成形機でリング状複雑形状部品(最大肉厚部約5×6mm)に成形した。この場合に、射出温度は230℃、射出圧力は1000Kg/cm2とした。
次いで、得られた射出成形体を常温および50℃の水中にそれぞれ1〜5時間浸漬し、取り出した後に30分間真空乾燥した。この時のバインダーの溶出率と水中に浸漬している時間との関係を調べ、その結果を表1に示した。但し、表1中の溶出率は以下の式により算出した。
溶出率=(溶出したバインダー重量)÷(総バインダー重量)
さらに、乾燥後の成形体を窒素雰囲気炉内に入れ、100℃/hourの昇温速度350℃まで昇温して1時間保持し、脱脂体を得た。得られた脱脂体の状態を観察してその結果を表1に併記した。
また、比較例として、エチレン酢酸ビニル共重合体‐ワックス‐ポリメタクリル酸ブチル系バインダーを用い、上記と同条件で処理を行なって脱脂体を得、これの状態も観察してその結果を表1(表中、○:良好、△:内部亀裂、×:膨れ)に示した。
【0011】
【表1】
【0012】
表1に示したように、本発明の実施例のものでは、常温(25℃)水中で3時間以上保持したもの、或いは、50℃水中で2時間以上保持したものについては、膨れや亀裂・変形が全く見られず、良好な脱脂体であることが確認された。また、前記した実施例1は、鉄−ニッケル系の粉末を使用した場合について説明しているが、他のステンレス系粉末(SUS316L、SUS440C)、セラミックス粉末(部分安定化ZrO2)についても、同様の効果をもたらすものである。一方、比較例のものでは内部に亀裂の発生が認められた。
その後、上記脱脂体を水素雰囲気にて加熱炉で1350℃で2時間焼結し、その焼結密度を測定したところ、7.62g/cm3となり、高い焼結密度を有するものであることが確認された。
【0013】
【発明の効果】
A.請求項1および2により、粉末素材を結合して働く有機バインダーが、少なくとも1種の水溶性の多価アルコールと、少なくとも1種の水に不溶性の熱可塑性有機ポリマーとを含有していることで、焼結製品における射出成形体の脱脂工程において、射出成形体に変形や膨れ、亀裂を生じさせることなく、短時間での脱脂を可能にすることができる。
B.請求項3により、有機バインダーとして、少なくとも1種の水溶性の多価アルコールと、少なくとも1種の水に不溶性の熱可塑性有機ポリマーを含む有機バインダーを用い、上記脱脂処理として射出成形体と水とを接触せしめて上記水溶性の多価アルコールを溶出した後、加熱炉において残りの有機バインダーを加熱除去するものであるから、溶出時における熱可塑性ポリマーの膨潤等に起因する成形体の割れ等の発生を防止することができ、また水溶性多価アルコールを溶出・除去することによって射出成形体中に含まれる有機バインダーが十分に減少しているため、残りの有機バインダーの常圧下または減圧下での加熱除去時における成形体の軟化及び変形を防止することができる。さらに、溶出された有機ポリマーの道付けの効果に起因する膨れ、亀裂の発生が防止されているため、例えば急速加熱や減圧雰囲気中での加熱等の方法を用いることによって短時間で脱脂を行なうことができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属やセラミックス等の粉末素材とバインダーの混練物からなる原材料を射出成形法によって成形して、脱脂、焼結することにより焼結品を得るための方法に係り、特に、焼結製品用原材料の組成およびこの原材料を用いて製造する焼結製品における射出成形体の脱脂方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、金属粉末やセラミックス粉末から焼結品を製造する方法として、上記粉末素材に有機バインダーを配合して混練し、粉末素材に流動性を付与して、これを射出成形し、得られた成形体を脱脂・焼結することによって焼結品を製造する方法が知られている。この場合、脱脂の方法としては、(A)射出成形体を加熱することによって、有機バインダーを分解・蒸発させる方法と、(B)溶媒を用いて射出成形体から有機バインダーを溶出する方法がある。
【0003】
(A)の方法においては、成形体を変形させることなく脱脂するには非常に長い時間を要するという問題がある。すなわち、射出成形法では、混練物が加熱されることによって軟化し、流動性を呈するという現象を利用するものであるため、成形体が加熱時に軟化して変形することが当然予想される。したがって、これを防ぐためには、変形温度に達する前に混練物中に含まれる有機バインダーの一部を除去すれば良いと考えられるが、変形温度以下で有機バインダーを分解し或いは蒸発して除去するのでは長時間が必要となる。逆に、変形温度以下で有機バインダーが簡単に分解・蒸発するようであると、混練物の射出成形時における射出成形時の流動性が不安定となり、加えて、射出成形後に生じるランナー部やスプール部等の再生が困難となる。
また、加熱時の軟化の程度を抑えることにより、脱脂時の変形を抑える方法では、射出成形時の流動性が悪くなり、精密な成形が困難になる。一方、変形を防ぐために熱硬化性樹脂を用いたり、昇華物質を加えたりする方法も考えられるが、その場合には、混練物の流動性が劣化したり、ランナー部やスプール部の再生が不可能になるといった問題がある。また、この場合、脱脂初期の急激な有機バインダーの分解・蒸発に起因して射出成形体に膨れや亀裂を生じるといった問題もある。
【0004】
そこで、(B)の方法により、変形温度以下の低温において溶媒で有機バインダーの一部を溶出除去すれば、後の加熱によっても変形が起きず、除去された有機バインダーの部分が道となって、残りの有機バインダーの分解・蒸発ガスが抜け易くなり、膨れや亀裂が生じにくくなる。また、熱的に不安定な成分を入れる必要がないことから、ランナー部やスプール部の再生も可能となる。
しかしながら、(B)の方法では、従来の粉末の射出成形法に用いられている一般の有機バインダーを溶出するには有機溶剤を用いる必要があるが、有機溶剤は高価であり、環境面に於いても好ましくなく、また、有機溶剤の取り扱いによっては危険を伴うことが有る。
また、可塑材、潤滑材のみを溶出した後、加熱脱脂するといった方法も考えられるが、その場合にも、可塑剤や潤滑材の量を増やすと成形体の強度劣化や、射出成形時に滲み出し等が起こるため、添加量を増やせず、加熱脱脂時の変形や膨れを防止するには未だ不十分である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
解決しようとする課題は、焼結製品における射出成形体の脱脂工程において、射出成形体に変形や膨れ、亀裂を生じさせることなく、短時間での脱脂を可能にした焼結製品用原材料およびこの原材料を用いて製造する焼結製品における射出成形体の脱脂方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記した課題を達成するため、焼結製品用原材料では、粉末素材と有機バインダーの混練物からなり、射出成形して射出成形体とした後、脱脂、焼結の各工程を行なって焼結体を成形するのに使用される焼結製品用原材料であって、前記有機バインダーが、少なくとも1種の水溶性の多価アルコールと、少なくとも1種の水に不溶性の熱可塑性有機ポリマーとを含有していることを特徴とする。
また、本発明の焼結製品用原材料では、水溶性の多価アルコールは、常温で固体であり、炭素数が2〜5個であり、ペンタエリスリトール、L−エリスリトール、D‐エリスリトール、meso‐エリスリトール、ピナトール等の少なくとも一種を用いていることを特徴とする。
そして、前記した原材料を用いて製造する焼結製品における射出成形体の脱脂方法では、原材料を射出成形して射出成形体とした後、脱脂、焼結の各工程を行なうことにより焼結体を成形する焼結製品における射出成形体の脱脂方法であって、前記した射出成形後における射出成形体の脱脂処理として、射出成形体と水とを接触せしめて、射出成形体中から前記水溶性多価アルコールを水中に溶出させた後、射出成形体を加熱炉において加熱して残りの有機バインダー成分を蒸発させて除去するようにしたことを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の焼結製品用原材料における実施の1形態について説明する。
焼結製品用原材料は、粉末素材と有機バインダーを混合して混練した混練物である。ここで、粉末素材としては、金属粉末、セラミックス粉末等が用いられる。また、有機バインダーとしては、少なくとも、一種の水溶性の多価アルコールと、少なくとも一種の水に不溶性の有機バインダーとを含む有機バインダーが用いられる。上記水溶性の多価アルコールとしては、炭素数が2〜5個であり、ペンタエリスリトール、L−エリスリトール、D‐エリスリトール、meso‐エリスリトール、ピナトール等が用いられ、当該多価アルコールは、水に不溶性の有機バインダーとの相溶性も良好である。また、水に不溶性の有機バインダーとしては、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸エステル、エチレン酢酸ビニル共重合体等の通常の金属粉末やセラミックス粉末の射出成形に使用される熱可塑性ポリマーが選ばれる。
【0008】
次に、前記した焼結製品用原材料を用いた本発明の焼結製品における射出成形体の脱脂方法について実施の1形態を詳しく説明する。
先ず、前記の焼結製品用原材料を射出成形して射出成形体とする。次に、この射出成形体に脱脂処理を行なって脱脂体とする。脱脂処理としては、先ず射出成形体を水(常温水および加熱水を含む。以下同様)に接触せしめる。これにより、射出成形体中から上記水溶性の多価アルコールを溶出する。ここで、射出成形体と水の接触方法としては、射出成形体を水中に浸漬することによって処理するのが、作業性等の点からもまた溶出時間の短縮といった点からも好適とされる。その後、加熱炉において加熱脱脂を施し、水に不溶性の熱可塑性有機ポリマー等の残りの有機バインダー成分を除去する。ここで、加熱脱脂を行なうにあたっては、常圧で加熱脱脂しても良いが、減圧下にて行なうのがより有機バインダー成分の除去時間を短縮し得ることから好適とされ、特に真空脱脂を行なうのが望ましい。
その後、この脱脂体に加熱焼結処理を行ない、金属、セラミックス等からなる焼結体を得る。
【0009】
実施例1
以下に、焼結製品用原材料の具体例を示す。
Fe‐8%Ni合金粉末(平均粒径8μm) 100重量部
ペンタエリスリトール(水溶性多価アルコール) 5重量部
ポリプロピレン(水に不溶性の熱可塑性樹脂) 3重量部
ステアリン酸 1重量部
混練温度(混練機) 210℃
混練時間(混練機) 60分
【0010】
以下に、前記した焼結製品用原材料を用いた焼結製品における射出成形体の脱脂方法の具体例を示す。
前記した実施例1の原材料を粉砕し、スクリュウ式射出成形機でリング状複雑形状部品(最大肉厚部約5×6mm)に成形した。この場合に、射出温度は230℃、射出圧力は1000Kg/cm2とした。
次いで、得られた射出成形体を常温および50℃の水中にそれぞれ1〜5時間浸漬し、取り出した後に30分間真空乾燥した。この時のバインダーの溶出率と水中に浸漬している時間との関係を調べ、その結果を表1に示した。但し、表1中の溶出率は以下の式により算出した。
溶出率=(溶出したバインダー重量)÷(総バインダー重量)
さらに、乾燥後の成形体を窒素雰囲気炉内に入れ、100℃/hourの昇温速度350℃まで昇温して1時間保持し、脱脂体を得た。得られた脱脂体の状態を観察してその結果を表1に併記した。
また、比較例として、エチレン酢酸ビニル共重合体‐ワックス‐ポリメタクリル酸ブチル系バインダーを用い、上記と同条件で処理を行なって脱脂体を得、これの状態も観察してその結果を表1(表中、○:良好、△:内部亀裂、×:膨れ)に示した。
【0011】
【表1】
【0012】
表1に示したように、本発明の実施例のものでは、常温(25℃)水中で3時間以上保持したもの、或いは、50℃水中で2時間以上保持したものについては、膨れや亀裂・変形が全く見られず、良好な脱脂体であることが確認された。また、前記した実施例1は、鉄−ニッケル系の粉末を使用した場合について説明しているが、他のステンレス系粉末(SUS316L、SUS440C)、セラミックス粉末(部分安定化ZrO2)についても、同様の効果をもたらすものである。一方、比較例のものでは内部に亀裂の発生が認められた。
その後、上記脱脂体を水素雰囲気にて加熱炉で1350℃で2時間焼結し、その焼結密度を測定したところ、7.62g/cm3となり、高い焼結密度を有するものであることが確認された。
【0013】
【発明の効果】
A.請求項1および2により、粉末素材を結合して働く有機バインダーが、少なくとも1種の水溶性の多価アルコールと、少なくとも1種の水に不溶性の熱可塑性有機ポリマーとを含有していることで、焼結製品における射出成形体の脱脂工程において、射出成形体に変形や膨れ、亀裂を生じさせることなく、短時間での脱脂を可能にすることができる。
B.請求項3により、有機バインダーとして、少なくとも1種の水溶性の多価アルコールと、少なくとも1種の水に不溶性の熱可塑性有機ポリマーを含む有機バインダーを用い、上記脱脂処理として射出成形体と水とを接触せしめて上記水溶性の多価アルコールを溶出した後、加熱炉において残りの有機バインダーを加熱除去するものであるから、溶出時における熱可塑性ポリマーの膨潤等に起因する成形体の割れ等の発生を防止することができ、また水溶性多価アルコールを溶出・除去することによって射出成形体中に含まれる有機バインダーが十分に減少しているため、残りの有機バインダーの常圧下または減圧下での加熱除去時における成形体の軟化及び変形を防止することができる。さらに、溶出された有機ポリマーの道付けの効果に起因する膨れ、亀裂の発生が防止されているため、例えば急速加熱や減圧雰囲気中での加熱等の方法を用いることによって短時間で脱脂を行なうことができる。
Claims (3)
- 粉末素材と有機バインダーの混練物からなり、射出成形して射出成形体とした後、脱脂、焼結の各工程を行なって焼結体を成形するのに使用される焼結製品用原材料であって、前記有機バインダーが、少なくとも1種の水溶性の多価アルコールと、少なくとも1種の水に不溶性の熱可塑性有機ポリマーとを含有していることを特徴とする焼結製品用原材料。
- 水溶性の多価アルコールは、常温で固体であり、炭素数が2〜5個であり、ペンタエリスリトール、L−エリスリトール、D‐エリスリトール、meso‐エリスリトール、ピナトール等の少なくとも一種を用いていることを特徴とする請求項1記載の焼結製品用原材料。
- 請求項1または2記載の原材料を射出成形して射出成形体とした後、脱脂、焼結の各工程を行なうことにより焼結体を成形する焼結製品における射出成形体の脱脂方法であって、前記した射出成形後における射出成形体の脱脂処理として、射出成形体と水とを接触せしめて、射出成形体中から前記水溶性多価アルコールを水中に溶出させた後、射出成形体を加熱炉において加熱して残りの有機バインダー成分を蒸発させて除去するようにしたことを特徴とする焼結製品における射出成形体の脱脂方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002160248A JP2004002936A (ja) | 2002-05-31 | 2002-05-31 | 焼結製品用原材料およびこの原材料を用いて製造する焼結製品における射出成形体の脱脂方法 |
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JP2002160248A JP2004002936A (ja) | 2002-05-31 | 2002-05-31 | 焼結製品用原材料およびこの原材料を用いて製造する焼結製品における射出成形体の脱脂方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004002936A true JP2004002936A (ja) | 2004-01-08 |
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ID=30429731
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JP2002160248A Pending JP2004002936A (ja) | 2002-05-31 | 2002-05-31 | 焼結製品用原材料およびこの原材料を用いて製造する焼結製品における射出成形体の脱脂方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004002936A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009226583A (ja) * | 2008-02-27 | 2009-10-08 | Jgc Catalysts & Chemicals Ltd | セラミックス成形用粘土及びその製造方法、並びにセラミックス成形用粘土を用いたセラミックス成形体の製造方法及びそれにより製造されたセラミックス成形体 |
KR20160095038A (ko) * | 2013-12-03 | 2016-08-10 | 코닌클리케 필립스 엔.브이. | 세라믹 광 투과성 장벽 셀을 제조하는 방법, 및 그 방법에 의해 제조되는 장벽 셀 |
-
2002
- 2002-05-31 JP JP2002160248A patent/JP2004002936A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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