JP2004075727A - 生分解速度の制御されたポリ乳酸系樹脂組成物およびその成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】生分解速度が促進されたポリ乳酸系樹脂組成物であって、ポリ乳酸系重合体100質量部に、粒径が0.05〜1μmでかつ表面処理されていないアナターゼ型二酸化チタン、もしくは粒径が0.005〜1μmでかつ表面が無機物処理されているルチル型二酸化チタンが、5〜40質量部配合されている。生分解速度が抑制されたポリ乳酸系樹脂組成物であって、ポリ乳酸系重合体100質量部に、粒径が0.005〜1μmでかつ表面が有機物処理されている疎水性のルチル型二酸化チタンが5〜40質量部配合されている。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリ乳酸系重合体に二酸化チタンを添加することによる生分解速度の制御されたポリ乳酸系樹脂組成物およびその成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、プラスチック廃棄物が引き起こす環境破壊問題から、酵素や微生物によって分解される生分解性プラスチックの開発が活発に行われている。そのなかで、ポリ乳酸は、ポリスチレン・ポリプロピレン等の汎用プラスチックに匹敵する機械的強度を有するので、最も将来性のある生分解性プラスチックの1つとして注目を浴びている。しかし、生分解性ではあるものの、その分解性が低いことが問題とされている。これに対し、環境中でのポリ乳酸の分解を促進するために、ポリ乳酸100部に対し無機の微粒子を1〜120部配合することが報告されている。この場合に、無機微粒子を配合したポリ乳酸フィルムは、未延伸及び延伸いずれの場合であっても、何も添加していない未延伸のポリ乳酸に比べ、生分解による質量減少量は、腐葉土、ドッグフード等からなるコンポスト中で調べたところ、最も促進されたフィルムで2.1倍程度である(特開平10−219088号公報)。
【0003】
環境中での分解を促進することも重要であるが、今後の石油の枯渇が懸念される現在、生物資源を原料とすることのできるポリマーを汎用プラスチックの代替材料として使用していくという観点からも、ポリ乳酸は必要である。その場合、ポリ乳酸には使用中の耐久性が要求される。元来ポリ乳酸の生分解性は低いが、屋外で若しくは高湿の雰囲気下で汎用プラスチックのように使用する場合、耐久性のある方、つまり加水分解性の低い方が都合がよい。水中、特にアルカリ溶液中での加水分解性と、微生物による生分解性には相関性があることが知られているので、耐久性を必要とする場合は、生分解性の低い方が都合がよい。汎用プラスチックの代替材料として生分解プラスチックを利用していく場合には、使用する目的に応じて生分解速度を自由に制御することが必要である。ポリ乳酸に無機微粒子を添加することにより生分解性を促進することは可能であるが、抑制することについては、従来の技術では充分に対応しきれていない。
【0004】
ポリ乳酸は結晶化度が低いほど生分解性が高くなることが知られているが、結晶化度0%の非晶質ポリ乳酸でも、他の生分解性プラスチックに比べ、土壌及び海水中での生分解性が低いことが問題とされている。また結晶化度を高くすると、生分解性の低いポリ乳酸が得られるが、弾性率が非常に高くなり、結晶化度の低いポリ乳酸と大きく物性が異なってしまう。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、引張強度・弾性率等の機械的物性を大きく変化させることなく、生分解速度を促進・抑制いずれにも制御できるポリ乳酸系樹脂組成物およびその成形体を提供することにある。生分解速度の促進に関しては、従来(特開平10−219088号公報)よりも促進の程度を高くすることを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
様々な無機微粒子とのポリ乳酸複合体を調製して、その生分解性及び機械的物性について検討した結果、たとえば、ポリ乳酸に、粒径がサブミクロンオーダーで且つ表面処理されていないアナターゼ型二酸化チタンを添加すると、引張強度等機械的物性を変化させることなく生分解速度を大幅に促進できることが明らかとなった。また、たとえば、ポリ乳酸に、ステアリン酸表面処理したルチル型二酸化チタンを添加すると、引張強度等機械的物性を変化させることなく生分解性を抑制できることが明らかとなった。
【0007】
本発明の要旨は、次の通りである。
(1)ポリ乳酸系重合体100質量部に、粒径が0.05〜1μmでかつ表面処理されていないアナターゼ型二酸化チタン、もしくは粒径が0.005〜1μmでかつ表面が無機物処理されているルチル型二酸化チタンを、5〜40質量部配合したことを特徴とする生分解速度の制御されたポリ乳酸系樹脂組成物。
(2)上記(1)において、生分解速度がポリ乳酸単独の1.4倍以上であり、引張強度がポリ乳酸単独の0.65倍以上であることを特徴とする請求項1記載の生分解速度の制御されたポリ乳酸系樹脂組成物。
(3)上記(1)または(2)において、ポリ乳酸系重合体100質量部に、粒径が0.05〜1μmでかつ表面処理されていないアナターゼ型二酸化チタンを20〜40質量部配合し、生分解速度がポリ乳酸単独の2.4倍以上であり、引張強度がポリ乳酸単独の0.8倍以上であることを特徴とする生分解速度の制御されたポリ乳酸系樹脂組成物。
【0008】
(4)ポリ乳酸系重合体100質量部に、粒径が0.005〜1μmでかつ表面が有機物処理されている疎水性のルチル型二酸化チタンを5〜40質量部配合したことを特徴とする生分解速度の制御されたポリ乳酸系樹脂組成物。
(5)上記(4)において、生分解速度がポリ乳酸単独の0.6倍以下であり、引張強度がポリ乳酸単独の0.65倍以上であることを特徴とする生分解速度の制御されたポリ乳酸系樹脂組成物。
(6)上記(1)から(5)までのいずれかのポリ乳酸系樹脂組成物にて形成されていることを特徴とする生分解速度の制御されたポリ乳酸系樹脂成形体。
【0009】
本発明によれば、ポリ乳酸系重合体に二酸化チタンを配合し、その配合するときの二酸化チタンの種類により、引張強度・弾性率等機械的物性を変化させることなく、生分解速度を促進・抑制のいずれにも制御可能な方法を提供することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に使用されるポリ乳酸系重合体は、構成単位がL乳酸および/またはD乳酸である単独重合体、またはその他の生分解性樹脂との共重合体および/または混合物である。ポリ乳酸系重合体におけるL乳酸および/またはD乳酸単位の含有量は、機械的強度や耐熱性の観点から、80モル%以上が好ましく、90モル%以上がさらに好ましい。
【0011】
本発明に用いられるポリ乳酸系重合体には、ポリ乳酸の耐熱性や機械的特性を大幅に損ねることのない範囲で、必要に応じて上述のようにその他の生分解性樹脂成分を共重合ないしは混合することもできる。その他の生分解性樹脂としては、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネートcoブチレンアジペート)等に代表されるジオールとジカルボン酸からなる脂肪族ポリエステルや、ポリ(グリコール酸)、ポリ(3ヒドロキシ酪酸)、ポリ(3ヒドロキシ吉草酸)、ポリ(6ヒドロキシカプロン酸)等のポリヒドロキシカルボン酸や、ポリ(εカプロラクトン)やポリ(δバレロラクトン)に代表されるポリ(ωヒドロキシアルカノエート)や、さらに芳香族成分を含んでいても生分解性を示すポリ(ブチレンサクシネートcoブチレンテレフタレート)やポリ(ブチレンアジペートcoブチレンテレフタレート)の他、ポリエステルアミド、ポリエステルカーボネート、ポリケトン、澱粉等の多糖類等が挙げられる。
【0012】
これらの重合体の数平均分子量としては、50,000〜200,000の範囲が好ましく、この範囲を下回ると実用物性がほとんど発現されないという問題を生じる。またこの範囲を上回る場合は、溶融粘度が高くなりすぎて成形加工性が悪くなる。なお、機械的物性を低下させないためには、ポリ乳酸系重合体中の残存モノマーや触媒が少ない方が好ましい。
【0013】
ポリ乳酸系重合体に配合される二酸化チタンとしては、粒径がサブミクロンオーダーで、生分解速度を促進するためには表面処理されていないアナターゼ型二酸化チタンまたは表面が無機物処理されている親水性のルチル型二酸化チタンが用いられ、生分解速度を抑制するためには表面が有機物処理されている疎水性のルチル型二酸化チタンが用いられる。
【0014】
上記無機物処理としては、アルミナ、シリカ、ジルコニア等の金属酸化物処理が好ましく、本発明においてはいずれの処理を行ってもよいが、中でもアルミナ処理が汎用的であり好適である。
【0015】
また、上記有機物処理としては、多価アルコール、オルガノシロキサン、脂肪酸等による処理が好適である。このうち、脂肪酸としては、炭素数6以上の脂肪酸が用いられる。炭素数が6未満では、疎水性の付与が不十分となる。具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が挙げられる。
【0016】
生分解性を促進するためには、ポリ乳酸系重合体に配合する表面処理されていないアナターゼ型二酸化チタンの粒径は0.05〜1μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5μmである。また表面が無機物処理されている親水性のルチル型二酸化チタンの粒径は0.005〜1μmであることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.5μmである。粒径が上記範囲を下回ると、表面積の増大に伴い光触媒活性が顕著となり、ブレンドしたときにポリ乳酸系重合体の著しい分解すなわち機械的物性の著しい低下をまねく。また粒径が上記範囲を上回ると、ポリ乳酸系重合体との界面積があまり大きくならず添加効果が小さくなる。
【0017】
生分解性を抑制するためには、ポリ乳酸系重合体に配合するルチル型二酸化チタンの粒径は、0.005〜1μmであることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.5μmである。粒径が0.005μm未満であると吸湿性が顕著であり、また二次凝集も顕著であるため、配合時のハンドリングに支障をきたす場合がある。また粒径が1μmより大きいと、生分解性を促進するときと同様に、ポリ乳酸系重合体との界面積があまり大きくならず添加効果が小さくなる。
【0018】
ポリ乳酸系重合体に配合する二酸化チタンの比率は、ポリ乳酸系重合体100質量部に対して二酸化チタン5〜40質量部、好ましくは10〜40質量部である。二酸化チタンの量が5質量部より少ないと、生分解性の変化がほとんど認められず、また40質量部より多いと、組成物がもろくなり引張強度等の機械的物性が低下し実用性を失う。生分解性を促進するためのさらに好ましい形態として、ポリ乳酸系重合体100質量部に対して、表面処理されていないアナターゼ型二酸化チタンを20〜40質量部配合したものを挙げることができる。
【0019】
上記の配合に際し、本発明の効果を阻害しない範囲で、可塑剤、滑剤、離型剤、難燃剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、顔料、充填剤等を添加することもできる。
【0020】
本発明におけるポリ乳酸系重合体と二酸化チタンとのブレンドは、2軸熱ロール、バンバリーミキサー、二軸押出機等で行うことができる。ただし溶融中におけるポリ乳酸系重合体の加水分解を防止するため、予め原料を充分に乾燥しておくことが必要である。
【0021】
2軸熱ロールでブレンドする時の温度は、140〜170℃が好ましい。これより低い温度での混練は、非常に強力な剪断力を必要とするため練りにくく、またこれより高い温度での混練は、充分な剪断力が得られないため、二酸化チタン粒子の二次凝集をほどくことができない。二軸押出機でブレンドする時の温度は170〜220℃が好ましい。これより低い温度での混練は負荷が高すぎるため困難であり、これより高い温度での混練ではポリ乳酸系重合体の熱分解が顕著になる。
【0022】
またブレンドに要する時間として、上記の温度で3〜10分が好ましい。これより短い時間だと、ポリ乳酸マトリックス中での二酸化チタンの分散が不十分であり、またこれより長い時間だとポリ乳酸系重合体の熱分解が顕著になって機械的物性の低下をまねく。
【0023】
熱ロール等でのブレンドは、原料を十分に乾燥しても、多少なりとも熱分解が生じるので、これに代えて、溶剤に両者を混合後、超音波処理のみで酸化チタンをポリ乳酸マトリックス中に分散させてもよい。超音波処理後は、溶剤を速やかに蒸発させ、得られた固形物を熱プレスによりフィルムとすることができる。
【0024】
本発明において、上記ポリ乳酸系樹脂組成物から、押出成形、真空及び/または圧空成形、射出成形、ブロー成形等の方法によって、ポリ乳酸系樹脂成形体を得ることができる。たとえば、農業用や食品包装用のフィルムまたはシート、各種カードや鉄道の切符、園芸用ポット、カップやトレー等の食品用容器、ブリスターパック容器、各種流動体用容器、各種射出成形体、繊維、不織布、およびラミネート加工品等の複合材料を得ることができる。
【0025】
本発明において、配合する二酸化チタンの種類によりポリ乳酸系樹脂組成物の生分解速度を制御できる理由としては、表面処理されていない二酸化チタンや表面が無機物処理されている親水性の二酸化チタンを用いた場合は親水性付与によって加水分解が促進されること、表面が有機物処理されている疎水性の二酸化チタンを用いた場合は疎水性付与により加水分解が抑制されることが、それぞれ影響しているものと推察される。
【0026】
【発明の効果】
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、生分解速度が促進または抑制されたことを利用して、各種フィルムやシート、各種容器、各種射出成形体、繊維や不織布、各種複合材料等に適用することができる。生分解性が促進される場合は、廃棄の点で環境への負荷が少なく、ゴミの減量化や肥料としての再利用が可能となる。一方、生分解性が抑制される場合は、長期使用が可能となるため、石油資源に頼らない汎用プラスチック代替用途として利用できる。
【0027】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。ただし、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。なお下記の実施例および比較例に示す試験は、以下に示す方法により行った。
【0028】
(1)生分解試験: 樹脂組成物からフィルムを形成し、このフィルムから試験用サンプルを1cm×1cmの大きさに切出し、質量を計った(試験前質量)。このサンプルを、トリチラキウムアルバム由来プロテイナーゼK 1mgを含有する50mMトリス塩酸バッファー(pH8.6) 5ミリリットル中に浸し、37℃で一定時間インキュベートした。インキュベート後、フィルムを取り出し、蒸留水で慎重に洗浄し次いで乾燥した後、質量を測定した(試験後質量)。質量減少量は、次の式により算出した。
【0029】
質量減少量(μg/mm2)=[試験前質量−試験後質量](μg)/[生分解前のフィルムの全表面積](mm2)
質量減少速度(μg/mm2・h)は、酵素との反応開始後0〜3時間での質量減少量を単位時間(hour)当たりに算出しなおしたものとした。
【0030】
(2)引張試験: 樹脂組成物からフィルムを形成し、このフィルムについて、島津製作所社製オートグラフDSC−5000を用い、23℃、湿度50%、引張速度5mm/min、チャック間距離30mmという条件下で測定を行い、破断時の引張強度および引張弾性率を評価した。
【0031】
(二酸化チタン)
まず、表1に示す表面処理が施された微粒状の市販の二酸化チタンを準備した。この表1において、「TTO 55A」などの記号は商品名であって、最後の欄の「KA 10C」はチタン工業社製、その他は石原産業社製であった。これらの二酸化チタンの結晶型、粒径、表面処理、表面性質は、表1に記載のとおりであった。
【0032】
なお、表1に記載された特に疎水性を有する二酸化チタンの表面処理に関し、二酸化チタンそのものは光触媒作用が強く、直接そこに有機化合物である脂肪酸やオルガノシロキサンなどをコーティングすることはできない。そのため、いったんアルミナおよび、またはジルコニアによる処理が行われた後に脂肪酸処理やオルガノシロキサン処理が行われている。すなわち、二酸化チタンの表面をアルミナおよび、またはジルコニアが覆い、さらにその表面を脂肪酸やオルガノシロキサンが覆った構成となっている。ただし、表面が完全に脂肪酸やオルガノシロキサンで覆われているわけではなく、アルミナおよび、またはジルコニアが一部露出した形態となっている。
【0033】
【表1】
【0034】
(実施例1)
ポリ乳酸(カーギル・ダウ社製 6200D、数平均分子量=84,000,D体含有量=1.1モル%)100質量部、二酸化チタン(石原産業社製TTO55A)20質量部各々をジクロロメタン溶液中に溶解若しくは懸濁し、混合後、超音波処理しキャスティングした。その後、2軸熱ロールで150℃、5分間混練後、熱プレスにより200℃で溶融し、次いで急冷することにより、厚さ200μmの非晶質ポリ乳酸複合フィルムを得た。得られたフィルムの生分解試験、引張試験の結果は、表2のとおりであった。
【0035】
【表2】
【0036】
(参考例)
参考例として、二酸化チタンは添加せずに、そのほかは実施例1と同様にして、フィルムを得た。得られたフィルムの生分解試験、引張試験の結果は、表2のとおりであった。なお、表2には、参考例のフィルムに対する実施例1のフィルムの質量減少速度の比率と引張強度の比率も合わせて示した。
【0037】
(実施例2〜12)
実施例1に比べ、二酸化チタンの種類と添加量とを変えた。そのほかは実施例1と同様にして、フィルムを得た。得られたフィルムの生分解試験、引張試験の結果および参考例に対する比率は、表2のとおりであった。
【0038】
(比較例1)
実施例1のものと同じポリ乳酸(カーギル・ダウ社製6200D)100質量部に対して添加する二酸化チタンTTO 55Aの割合を2質量部とした。そのほかは実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの生分解試験、引張試験の結果は、表3のとおりであった。表3には、表2と同様に参考例についての生分解試験、引張試験の結果を示すとともに、参考例のフィルムに対する比較例1のフィルムの質量減少速度の比率と引張強度の比率も合わせて示した。
【0039】
【表3】
【0040】
(比較例2)
実施例1のものと同じポリ乳酸(カーギル・ダウ社製6200D)100質量部に対して添加する二酸化チタンTTO 55Aの割合を50質量部とした。そのほかは実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの生分解試験、引張試験の結果および参考例に対する比率は、表3のとおりであった。
【0041】
(比較例3)
比較例1のものと同じポリ乳酸(カーギル・ダウ社製6200D)100質量部に対して添加する二酸化チタンの種類をTTO D−2とした。そのほかは比較例1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの生分解試験、引張試験の結果および参考例に対する比率は、表3のとおりであった。
【0042】
(比較例4)
比較例2のものと同じポリ乳酸(カーギル・ダウ社製6200D)100質量部に対して添加する二酸化チタンの種類をTTO D−2とした。そのほかは比較例2と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの生分解試験、引張試験の結果および参考例に対する比率は、表3のとおりであった。
【0043】
(比較例5)
比較例1のものと同じポリ乳酸(カーギル・ダウ社製6200D)100質量部に対して添加する二酸化チタンの種類をKA 10Cとした。そのほかは比較例1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの生分解試験、引張試験の結果および参考例に対する比率は、表3のとおりであった。
【0044】
(比較例6)
実施例1に比べ、二酸化チタンの種類をMC−90に変えた。このMC−90は、アナターゼ型の二酸化チタンであったが、その粒径は、本発明にもとづく範囲の下限である0.05μmよりも下回って、0.018μmしかなかった。このため、熱プレス成形時にポリマーが分解してしまい、生分解試験および引張試験を行うことができず、物性を測定することができなかった。
【0045】
以上から明らかなように、本発明の実施例のフィルムは、所要の引張強度を保ったうえで、生分解速度を促進・抑制のいずれにも制御することが可能であった。
【0046】
これに対し、比較例のものでは、ポリ乳酸100質量部に対し二酸化チタンの添加量が50質量部であると引張強度の著しい低下をまねき、また二酸化チタンの添加量が2質量部であると質量減少速度の変化が少なくなってしまった。また、二酸化チタンの粒径が小さすぎるとポリマーが分解して機械的物性が著しく低下してしまった。
Claims (6)
- ポリ乳酸系重合体100質量部に、粒径が0.05〜1μmでかつ表面処理されていないアナターゼ型二酸化チタン、もしくは粒径が0.005〜1μmでかつ表面が無機物処理されている親水性のルチル型二酸化チタンを、5〜40質量部配合したことを特徴とする生分解速度の制御されたポリ乳酸系樹脂組成物。
- 生分解速度がポリ乳酸単独の1.4倍以上であり、引張強度がポリ乳酸単独の0.65倍以上であることを特徴とする請求項1記載の生分解速度の制御されたポリ乳酸系樹脂組成物。
- ポリ乳酸系重合体100質量部に、粒径が0.05〜1μmでかつ表面処理されていないアナターゼ型二酸化チタンを20〜40質量部配合し、生分解速度がポリ乳酸単独の2.4倍以上であり、引張強度がポリ乳酸単独の0.8倍以上であることを特徴とする請求項1または2記載の生分解速度の制御されたポリ乳酸系樹脂組成物。
- ポリ乳酸系重合体100質量部に、粒径が0.005〜1μmでかつ表面が有機物処理されている疎水性のルチル型二酸化チタンを5〜40質量部配合したことを特徴とする生分解速度の制御されたポリ乳酸系樹脂組成物。
- 生分解速度がポリ乳酸単独の0.6倍以下であり、引張強度がポリ乳酸単独の0.65倍以上であることを特徴とする請求項4記載の生分解速度の制御されたポリ乳酸系樹脂組成物。
- 請求項1から5までのいずれか1項記載のポリ乳酸系樹脂組成物にて形成されていることを特徴とする生分解速度の制御されたポリ乳酸系樹脂成形体。
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