JP2004075595A - 薬剤の副作用抑制剤 - Google Patents
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Abstract
【効果】該フコイダンは、各種薬剤の副作用を抑制する作用にすぐれ、抗がん剤(例えば5−FU)の作用増強、正常な胃細胞に対する抗がん剤の影響抑制等の作用も有し、医薬品又は飲食品として利用される。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、モズク由来フコイダンの胃細胞への有効利用に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
モズクは、我が国では主に酢の物として食用に供されているが、その他の加工食品や資源としての利用はあまりなされていないのが現状である。また、モズクには多糖類が含まれているが、これらの多糖類の有効利用についても、充分に解明されていないのが現状である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような技術の現状に鑑み、モズクの有効利用を新たに開発する目的でなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため、モズクについて各方面からの研究中において、日本人の主要な死因として成人病、いわゆる生活習慣関連病へが近年増加し、特にがんは1981年以来日本人の死亡原因の第1位となり、特に胃がんは今も昔も部位別死亡率で首位に位置するもっともがんの中で多いがんの一つである。更に着目し、従来から行ってきたモズク食品の安全性、機能性についての研究を更にすすめて、オキナワモズク、イトモズクからフコイダン(分子量数十万のフコースを主な構成糖とするヘテロ硫酸多糖類)を抽出、精製し、ヒト胃細胞に対する効果を研究する課程において、モズク由来のフコイダンのヒト胃細胞に対する新規にして有用な生理活性をはじめて確認した。
【0005】
更に詳細には、本発明者らは、モズクとして主に食されているオキナワモズクCladosiphon okamuranusとイトモズクNemacystus decipiensから生理活性成分であるフコイダンを抽出・精製し、ヒト胃細胞に対する効果を調べた。ヒトの胃細胞に対するモズクの作用のモデルとして培養ヒト胃がん細胞および培養ヒト正常胃細胞に対する増殖への影響を調べた。また、抗がん剤使用時のモズク食品のヒト胃細胞へ効果のモデル実験としてモズク由来フコイダン添加培地中でのヒト胃がん細胞およびヒト正常胃細胞に対する抗がん剤5−フルオロウラシル(以下5−FUという)の効果を調べるため評価を行った。
【0006】
その結果、後記からも明らかなように、下記に例示するようなモズク由来フコイダンが有する多数の有用な生理作用をはじめて確認した:胃細胞保護作用;胃がんの予防・治療作用;胃がん細胞に対して、抗がん剤の作用を増強する作用、及び/又は、抗がん剤の作用が低下するのを防止あるいは抑制する作用;胃正常細胞に対して、抗がん剤の作用を停止あるいは抑制する作用;抗がん剤、抗潰瘍剤、解熱剤、感冒剤、胃腸薬、抗生物質、抗ウイルス剤、免疫増強剤、免疫抑制剤、鎮静剤その他各種薬剤の副作用を軽減、抑制ないし停止する作用その他。
【0007】
本発明は、上記した有用新知見、特に薬剤の副作用抑制作用に基づき、更に研究、検討の結果なされたものであって、モズク由来フコイダンを含有してなること、を特徴とする薬剤の副作用を軽減、抑制ないし停止する剤を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、モズク由来フコイダンを含有してなること、を特徴とする胃がん細胞に対する薬剤、特に抗がん剤の作用を増強する剤、及び/又は、モズク由来フコイダンを含有してなること、を特徴とする胃がん細胞に対する薬剤、特に抗がん剤の作用の低下を抑制する剤を提供するものである。
【0009】
本発明においては、モズク由来フコイダンと薬剤は、これらを混合してひとつの剤に製剤できることはもちろんのこと、両者は別々に独立させて用意しておき、使用時に両者を同時に使用してもよいし、あるいは、時間をおいてつまり時間をずらして使用してもよい。
【0010】
このように、モズク由来フコイダンは、直接、薬剤として作用するのではなく、それと併用する薬剤が有する副作用を軽減、抑制したり、また、抗胃がん剤の作用を増強ないし該作用の低下を抑制したりするものであって、直接的な薬理作用を有するのではなく、併用する薬剤の作用を増強して間接的な薬理作用を有する点できわめてユニークな特徴を有するものである。
【0011】
モズク由来フコイダンと併用する薬剤としては、上記薬剤が例示され、また、抗がん剤としては、5−FUのほか、各種のピリミジン拮抗物質、プリン拮抗物質;ブレオマイシン等の抗生物質;ビンブラスチンやビンクリスチン等の植物成分;ホルモン類その他既知の抗がん剤が挙げられる。
【0012】
本発明においては、モズク由来フコイダンを使用する。本発明に用いられるモズクとしては、イトモズク(細モズク)(モズク科モズク:Nemacystus decipieus)、オキナワモズク(ナガマツモ科オキナワモズク:Cladosiphon okamuranus)、フトモズク(Tinocladia crassa)等各種のモズクが適宜使用される。
【0013】
モズク由来フコイダンとしては、モズクから抽出、単離、精製したフコイダン純品が使用できることはもちろんのこと(市販品も使用可能である)、モズクの熱水抽出物及び/又はその処理物も使用可能である。
【0014】
モズクから本発明の抽出物を抽出するには、60℃以上、好ましくは80℃以上の熱水を用いて、30分〜3時間モズク(切断、ペースト化、乾燥、冷凍したものでもよい)を抽出した後(例えば、オートクレーブで100℃、45分〜1時間30分程度処理した後)、得られた抽出液を電気透析により脱塩する。本発明の熱水抽出物には、上記のようにモズクを単に熱水で抽出して得た抽出液、その濾液、これ(ら)を更に脱塩してなる抽出液が包含されるほか、第4級アンモニウム塩処理、アルコール沈澱、イオン交換樹脂クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーによって精製した精製物も包含される。
【0015】
また、本発明においては、モズクの熱水抽出物の処理物も使用可能である。該処理物としては、濃縮物、ペースト化物、乾燥物(噴霧乾燥物、凍結乾燥物、真空乾燥物、ドラム乾燥物等)、乳化物、液状物、希釈物等が挙げられる。
【0016】
本発明に係る剤は、モズク由来のフコイダン、その含有物、例えばモズクの熱水抽出物、その処理物の少なくともひとつを含有してなるものであって、そのまま、あるいは、他の飲食品やその素材とともに、あるいは、各種の剤型、形態に製剤、加工することも可能であって、これを有効成分として配合することにより飲食品としたり、これを有効成分として使用することにより医薬品としたりして自由に使用できる。
【0017】
その配合量ないし有効成分としての使用量は、併用する薬剤にしたがい、使用目的(予防、保健、又は治療)、患者の年齢、投与方法、剤形等に応じて適宜定めればよく、通常、モズクの熱水抽出物に換算して、1mg〜5g(乾物)/日を経口投与するようにするのが適当である。しかしながら、長期間に亘って保健上ないし健康維持の目的で摂取する場合には、上記範囲よりも少量であってもよいし、また本有効成分は、併用する薬剤の薬効に影響を与えることがなく、安全性についても問題がないので、上記範囲よりも多量に使用しても一向にさしつかえない。現にマウスを用いた10日間の急性毒性試験の結果、100mg/kgの経口投与でも死亡例は認められなかった。
【0018】
本剤を医薬品として使用しない場合には、飲食品として使用することができる。飲食品タイプとして使用する場合には、本有効成分(モズク由来フコイダンと薬剤)を混合してそのまま、使用したり、他の食品ないし食品成分と併用したりして適宜常法にしたがって使用できる。本有効成分を配合してなる飲食物は、固体状(粉末、顆粒状その他)、ペースト状、液状ないし懸濁状のいずれでもよいが、甘味料、酸味料、ビタミン剤その他ドリンク剤製造に常用される各種成分を用いて、健康ドリンクに製剤化すると好適である。また、サプリメントとしても好適である。
【0019】
すなわち、本発明に係る飲食品には、そのまま直ちに喫食できるもの、調理等を行って喫食するもの、食品製造用のプレミックスされた材料などのいずれもが含まれる。固体状のものとしては、粉末状、顆粒状、固形状のいずれのものでもよく、例えばビスケット、クッキー、ケーキ、スナック、せんべいなどの各種菓子類、パン、粉末飲料(粉末コーヒー、ココアなど)が含まれる。また液状、乳化状、ペースト状物の例としては、ジュース、炭酸飲料、乳酸菌飲料などの各種飲料が含まれる。これらのうち、本発明においては、上記したように、特に飲料が好ましい。
【0020】
医薬品タイプとして使用する場合、本有効成分(モズク由来フコイダン及び薬剤)は、種々の形態で投与される。その投与形態としては例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等による経口投与をあげることができる。これらの各種製剤は、常法に従って主薬に賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤、懸濁剤、コーティング剤などの医薬の製剤技術分野において通常使用しうる既知の補助剤を用いて製剤化することができる。
【0021】
本発明に係る剤は、医薬品タイプ、飲食品タイプのいずれの場合においても、上記したようにモズク由来フコイダンと薬剤とをひとつに製剤化して使用できるほか、モズク由来フコイダンと薬剤とを別々にしておき、用時に両者を併用できるよう用時製剤の剤型に製剤化することも可能である。
【0022】
そしてこの場合においても、上記と同様に製剤化すればよい。ただしこの場合には、モズク由来フコイダンと薬剤は、混合することなく、各別に製剤しておき、用時において併用する。例えば、両者を同時に投与してもよいし、時間をずらして投与してもよい。
【0023】
本発明に係る各種の剤は、後記する実施例からも明らかなように、有効成分、単用または抗がん剤その他の薬剤の存在下において、各種のすぐれた作用効果を示し、しかもその効果は長期間に亘って持続するので、医薬品として使用できるほか、飲食品自体又は他の飲食品と併用することができる。
【0024】
そのうえ、本発明の有効成分のひとつであるモズク由来フコイダンは、本来それ自体が食品であるためあるいは食品由来であるため、安全性については問題はなく、しかも、各種の広範な作用を併有しているため、上記したそれぞれの個々の作用に基づく剤として、いわば専門薬として利用できるだけでなく、胃を保護する目的で健胃保健薬といったいわば家庭の常備薬として、健常者はもちろん、幼児や高齢者、あるいは、術後の患者(例えば、胃がん等のがん手術後の患者等)用の保健薬、がんその他の疾病の予防及び/又は治療薬、がん等の再発防止薬等としても、医薬品あるいは飲食品(特定保健用食品を含む)の形態で使用することができる。
【0025】
以下、本発明の実施例について述べる。
【0026】
【実施例1】
(1)モズク由来フコイダンの製造
表面に付着した異物を除去した湿潤モズク藻体(オキナワモズク(Cladosiphonokamuranus)及びイトモズク(Nemacystus decipiens:モズク科モズク)100gに100mlの蒸留水を加えて攪拌した。これをオートクレーブを使用し、100℃で1時間加熱した。その後ろ過により残さを除き、この抽出液を電気透析により脱塩を行った。得られた熱水抽出液をそのまま使用することも可能であるが、本実施例では凍結乾燥法により粉末にした。すなわち、得られた熱水抽出液を容器側面に広がるよう凍結させ、室温(約20℃)で減圧し一日間水分を除去し、モズク熱水抽出物をモズク由来粗フコイダンとして得た。つまり、この方法で、モズク100gあたり、オキナワモズク由来粗フコイダン1.3g、イトモズク由来粗フコイダン0.99gをそれぞれ得た。
【0027】
(2)モズク由来フコイダンの精製
精製フコイダンは第4級アンモニウム塩を用いた精製法を行った。第4級アンモニウム塩であるセチルトリメチルアンモニウムブロミドと酸性多糖が複合体を形成、沈殿し、沈殿物を塩濃度の溶解度の差で分画を行った。その結果、モズク100gあたりオキナワモズク由来精製フコイダン990mg、イトモズク由来精製フコイダンは2画分し、▲1▼:160mg、▲2▼:110mgを得た。
【0028】
(3)モズク由来フコイダンの定性および定量分析
得られたモズク由来フコイダンの分子量分布をサイズ排除クロマトグラフィー、硫酸基含有率をDodgson法、構成糖分析をフコイダンを加水分解し、シリカゲルTLCプレートによる展開により分析した。なお、分子量分布において検出されたピークの保持時間が小さいもの(分子量の大きいもの)を画分1、大きいもの(分子量の小さいもの)を画分2として、ピーク面積比から含有率を求め、得られた多糖の分析結果を、表1に表記した。その結果、オキナワモズク由来精製フコイダンは分子量約320万、硫酸基含有率が9.8%、イトモズク由来精製フコイダンは一つの画分▲1▼が分子量約215万、硫酸基含有率26.9%、もう一つの画分▲2▼が分子量約250万、硫酸基含有率27.8%であった。さらに、オキナワモズク由来精製フコイダンはL−フコースまたはD−マンノース、イトモズク由来精製フコイダンの一つの画分▲1▼はL−フコース、もう一つの画分▲2▼はL−フコースとD−ガラクトースを構成糖としていると考えられた。
【0029】
(表1)
【0030】
【実施例2】
培養ヒト胃細胞に対するモズク由来フコイダンの影響を以下により確認した。
【0031】
(1) GT3TKB(理研ジーンバンクより分与、Cell Number:RCB0885)およびMKN45(理研ジーンバンクより分与、Cell Number:RCB1001)を、正常細胞株としてヒト正常胃細胞Hs677.St(ATCCより分与、ATCC Number:CRL−7407)を用いてMTTアッセイを行った。
【0032】
(2)MTTアッセイは、テトラゾリウム塩である黄色のMTTを一定時間生細胞に取り込まれるとミトコンドリア内のコハク酸脱水素酵素などの働きにより青色のホルマザン産物へ転換し、吸光度を生細胞数の指標とすることを利用した生細胞数の測定法である。各試料溶液を10ml/well、コントロールのウェルにはPBS(−)を10ml/well加えた。それぞれの増殖培地でGT3TKBは2×103Cell/well、MKN45は5×103Cell/wellになるよう調整した細胞懸濁液を90ml加え37℃、5%CO2インキュベーターでGT3TKBは3日間、MKN45は4日間培養した。その後MTT溶液を10ml/well添加、37℃のCO2インキュベーターで4日間培養し、10%SDS溶液100mlを加え、1日CO2インキュベーター内に静置後、対象波長650nmとして570nmの吸光度を測定した。コントロールとして用いたフコイダンはヒバマタの一種であるFucus vesiculosus由来のシグマ社製フコイダンを用い、細胞、試料ともに含まない培地での吸光度を0%、試料を含まない増殖培地で培養した細胞での吸光度を100%として生存率を算出した。
【0033】
(3)このようにして、ヒト胃がん細胞に対するモズク由来粗フコイダンの増殖抑制効果確認試験を抑い、その結果を図1に示した。図中、Aはヒト胃がん細胞GT3TKBを示し、Bはヒト胃がん細胞MKN45を示し、各棒グラフの内、左側はフコイダン等各試料の濃度0.5mg/ml及び右側は同濃度1.0mg/mlをそれぞれ示す。
【0034】
上記結果から明らかなように、ヒト胃がん細胞に対する影響は、コントロールとして用いたシグマ社製フコイダンは2種類のがん細胞に対し濃度依存的に増殖を抑制し、アルギン酸ナトリウムは、MKN45に対して増殖を抑制する様な影響は見られなかったが、オキナワモズク由来粗フコイダンは、濃度依存的に作用し、MKN45に対して1.0mg/mlの濃度ではシグマ社製フコイダンと同等の作用が見られ、GT3TKBに対してもすぐれた増殖抑制作用を示した(図1)。
【0035】
(4)上記と同様にして、ヒト胃がん細胞に対するモズク由来精製フコイダン(1.0mg/ml)の増殖抑制効果確認試験を行い、その結果を図2に示した。図中、Aはヒト胃がん細胞GT3TKB、Bはヒト胃がん細胞MKN45を示した。なお、比較参考のため、粗フコイダンのデータも図示した。
【0036】
上記結果から明らかなように、ヒト胃がん細胞に対して、モズク由来精製フコイダンの影響は、いずれも、モズク由来粗フコイダンに比べ高い増殖抑制効果が見られた(図2)。
【0037】
(5)上記と同様にして、ヒト正常胃細胞に対するモズク由来フコイダンの影響確認試験を行い、その結果を図3に示した。
【0038】
すなわち正常細胞に対する影響は、上記実験と同様に、各試料溶液を終濃度1.0mg/mlになるように10ml/well加え、Hs677.St.を2×103Cell/wellに調整した細胞懸濁液を90ml加え37℃、5%CO2インキュベーターで4日間培養し、MTTアッセイを行った。その結果、ヒト正常胃細胞Hs677.Stに対してコントロールのシグマ社製フコイダン、アルギン酸ナトリウム、モズク由来フコイダンのいずれも増殖に影響をおよぼさなかった(図3)。かくして、モズク由来フコイダンは正常細胞に対する細胞毒とはならないことが確認された。
【0039】
【実施例3】
培養ヒト胃細胞に対する抗がん剤5−FUの作用へのモズク由来フコイダンの影響を以下により確認した。
【0040】
(1)ヒト胃がん細胞株に対して抗がん剤5−FUの作用へのモズク由来粗フコイダンの効果を調べた。すなわち、培地に各試料溶液を10ml/well加えて0.5または1.0mg/mlにした多糖添加培地中で1時間培養後、各濃度の5−FU10ml/wellを加え、数日間培養後MTTアッセイを行った。
【0041】
その結果を図4、図5に示した。図中、Aは試料0.5mg/ml、Bは試料1.0mg/mlを示し、棒グラフは、左側から順次5−FU濃度10μg/ml、25μg/ml、50μg/mlを示す。上記結果から明らかなように、5−FUのみを添加した培地(PBS)での胃がん細胞の生存率よりも、シグマ社製フコイダン、オキナワモズク由来粗フコイダンをそれぞれ5−FUと併用した場合の方が、いずれも、胃がん細胞の生存率は低いことが確認された。
【0042】
(2)正常細胞に対して同様に抗がん剤5−FUの作用へのモズク由来粗フコイダンの効果を調べた。試料は1.0mg/ml、5−FUは50μg/mlで実験を行った。その結果、シグマフコイダン、アルギン酸ナトリウムと5−FUを併用した生存率は5−FUのみ(PBS)の生存率とほとんど変化が見られなかった。しかし、オキナワモズク粗フコイダン、イトモズク粗フコイダンと5−FUを併用した生存率は、5−FUのみ添加した生存率よりも高く、コントロールと同程度またはそれ以上の生存率を示し(図6)、モズク由来フコイダンが5−FUの作用から正常胃細胞を保護し、抗がん剤の副作用を防止ないし低減することが実証された。
【0043】
(3)したがって、5−FUとの併用において、モズク由来フコイダンは、他の多糖と比較して、たとえ直接の抗がん作用に格別顕著なものが認められない場合があったとしても、上記のように、正常胃細胞の保護作用に卓越しているため、5−FUを多量に及び/又は長期間に亘って投与することが可能となり、その結果、5−FUの抗がん作用が増強及び/又はその副作用が抑制されることが明らかとなった。
【0044】
【実施例4】
モズク由来フコイダンとしてモズク熱水抽出物(実施例1:乾燥粉末)70重量部、ラクトース20重量部、コーンスターチ10重量部を混合し、得られた混合物をヒドロキシプロピルメチルセルロースの5%水溶液で流動層造粒し、細粒剤を得た。
【0045】
【実施例5】
モズク由来フコイダンとしてモズク熱水抽出物(実施例1)100g、糖類150g、蜂蜜15g、アスコルビン酸1g、クエン酸0.5g、香料適量に水を加えて1kgとし、これを95℃で20分間殺菌し、100mlずつ無菌的にビンに充填して、飲食品タイプの健康ドリンクを製造した。
【0046】
【実施例6】
モズク由来フコイダンとしてモズク熱水抽出物(フリーズドライ粉末)の20%水溶液200g、酢酸トコフェロール5g、硝酸チアミン10g、ニコチン酸アミド20g、無水カフェイン50g、安息香酸塩及び香料適量に脱イオン水を加えて30Lとし、殺菌した後30mlずつ無菌的にビンに充填して、医薬品としての健康ドリンクを製造した。
【0047】
【実施例7】
ショートニング8部と砂糖18部を混合し、次に薄力小麦粉42部、モズク由来フコイダンとしてモズク熱水抽出物(実施例1)7.5部、ベーキングパウダー0.8部、卵16部、ブドウ糖1部及び水25部を加えて攪拌し生地を作った。この生地を5mm厚に圧延して1枚が16〜17gになるよう型抜きして90℃のオーブンで32〜36分焼成する。その結果、1枚約12gのビスケットを得た。12gのビスケット中に1gのモズク由来フコイダンを含有する計算となる。なお、これらは、用時製剤タイプの場合のモズク由来フコイダンの製剤化の例を述べたものであるが、同様にして常法にしたがい、5−FUと混合して両成分を同時に含有する剤を製造した。
【0048】
【発明の効果】
以上から、本発明によれば、モズク由来フコイダンの抽出、精製を行うことができ、ヒト胃がん細胞に対して特にオキナワモズク由来フコイダンは高い増殖抑制効果が見られた。さらに正常なヒト胃細胞には増殖を抑制するような効果は見られなかった。そしてヒト胃がん細胞に対しては抗がん剤5−FUの抗がん作用を阻害せず、正常なヒト細胞に対しては抗がん剤5−FUの影響を抑制することがわかった。
【0049】
モズク由来のフコイダンの用途の一つとして、健康増進、がん予防の機能性を付加した機能性食品や加熱調理することにより抽出液も摂取できる食品などが可能であり、また、他の用途として、副作用を抑制する副作用抑制剤や病院食としての利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】ヒト胃がん細胞に対するモズク由来粗フコイダンの増殖抑制効果を示す。
【図2】ヒト胃がん細胞に対するモズク由来精製フコイダン(1.0mg/ml)の増殖抑制効果を示す。
【図3】ヒト正常胃細胞Hs677.Stに対するモズク由来フコイダンの影響を示す。
【図4】ヒト胃がん細胞GT3TKBにおける抗がん剤5−FUの作用に対するモズク由来フコイダンの影響を示す。
【図5】ヒト胃がん細胞MKN45における抗がん剤5−FUの作用に対するモズク由来フコイダンの影響を示す。
【図6】ヒト正常胃細胞Hs677.Stに対する抗がん剤5−FUの作用へのモズク由来フコイダンの効果を示す。
Claims (10)
- モズク由来フコイダンを含有してなること、を特徴とする薬剤の副作用抑制剤。
- モズク由来フコイダンと薬剤とを混合してなること、を特徴とする請求項1に記載の剤。
- モズク由来フコイダンと薬剤とを混合することなくそれぞれ独立して別個に存在せしめてなること、を特徴とする請求項1に記載の剤。
- 薬剤が、抗がん剤、抗潰瘍剤、抗生物質、解熱剤、感冒剤、胃腸薬、抗ウイルス剤、免疫増強剤、免疫抑制剤、鎮静剤から選ばれる少なくともひとつであること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の剤。
- 薬剤が抗がん剤であること、を特徴とする請求項4に記載の剤。
- 薬剤が5−フルオロウラシル(5−FU)であること、を特徴とする請求項4又は5に記載の剤。
- モズク由来フコイダンを含有してなること、を特徴とする胃がん細胞に対する抗がん剤の作用を増強する及び/又は該作用の低下を抑制する剤。
- モズク由来フコイダンがモズクの熱水抽出物及び/又はその処理物であること、を特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の剤。
- モズクの熱水抽出物が、モズクと水の混合物を加熱した後、これを濾過し、得られた濾液を脱塩した液体であること、を特徴とする請求項8に記載の剤。
- モズクが、糸モズク、太モズク、沖縄モズクの少なくともひとつであること、を特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の剤。
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