JP2004075470A - 熱可塑性有機組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】熱可塑性材料ではない材料を利用して製造される熱可塑性有機組成物およびその製造方法を提供すること。また、熱可塑性有機組成物からなる肥料、飼料および培養栄養源を提供すること。
【解決手段】タンパク質、多糖類または脂肪酸のエステルを含有する原料(たとえば、天然食品素材、その残渣、動物の糞尿、植物性素材)を加水分解操作に付して低分子量化させたのち、脱水縮合操作に付して熱可塑性有機組成物を得る。
【選択図】    なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性有機組成物およびその製造方法に関し、詳しくは、タンパク質、多糖類または脂肪酸のエステルを含有する原料(たとえば、生ゴミや動物の糞尿)を使用した熱可塑性有機組成物およびその製造方法に関する。また、本発明は、熱可塑性有機組成物からなる肥料、飼料および培養栄養源に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、生ゴミや動物の糞尿などの処理が、環境破壊の面から大きな問題となっている。生ゴミに関しては、食品リサイクル法もすでに施行されている。
【0003】
現在、生ゴミの処分は、大部分が焼却に依存している。しかし、焼却時に発生するダイオキシンは、非常に安定で、自然界で分解されることのない化学物質であり、焼却場周辺の土壌のみならず、最終的に人体に蓄積されることが大きな問題となっている。また、焼却場を解体する際には、土壌に蓄積されたダイオキシンの除去処理に、多額の費用がかかるという問題もある。
【0004】
また、日本の国土は狭く、生ゴミの処理に利用することのできる敷地も制限されているため、生ゴミを埋め立て、その処理を緩やかに自然界に委ねることもできない。
【0005】
さらに、肉牛を解体した残渣から製造した肉骨粉が、牛海綿状脳症(BSE)を媒介することも、大きな社会問題になった。
【0006】
このように、天然食品材料であっても、その残渣を適当に処理するためには、さまざまな問題が存在している。
【0007】
生ゴミの処理方法として、コンポスト化に活路を見出そうとしている現状であるが、コンポスト化を自然の力を利用して行なうためには、広大な敷地が必要であるとともに、発生する臭気に対する環境対策にも、頭を悩まさなくてはならないという問題がある。
【0008】
また、特開平6−71684号公報には、食用または易生分解性の材料から返却不要の容器や使い捨て容器などの物品を製造することを目的として、「食用または易生分解性の材料からなる物品の製造方法」が提案されている。これは、液体または超臨界状態の気体を用いて、肉材料から脂肪を除去することにより調製した動物タンパク組成物と、デンプン、穀物または野菜とを含む混合物を、半流動体もしくはペースト様の稠度を有する混合物の形態に調製したのち、水を添加しながら、この混合物を押出してプラスチックと同様に加工可能な材料を製造し、最後に、得られた材料を射出成形によって物品に成形する方法である。
【0009】
しかし、この方法では、最初に使用される材料が肉材料に限定されているため、分別を必要として汎用性に乏しく、さらに経済的に不利であるという重大な欠点がある。また、粉砕したデンプン、穀物または野菜を含む混合物には、半ば腐敗した材料が混入される可能性が大きい。したがって、半ば腐敗した材料が混入された状態で成形された容器は、種々の臭気を帯びる可能性があり、実用上大きな用途制限を受けることが予想される。さらに、材料形態がペーストであるため、取り扱いにくいという問題もある。
【0010】
糞尿処理にも、量や臭気の問題がある。家畜の糞尿の量は、人間の排泄量より著しく多く、牛の糞の量は、1日あたり25kg、尿の量は、1日あたり10Lである。また、人間の糞の量は、1日あたり0.1kg、尿の量は、1日あたり1Lであるが、人口が多いために、人間の糞尿処理も大きな環境問題になっている。これらの糞尿は、古来堆肥として使用されてきたが、堆肥に発酵させるためには手間暇がかかるだけでなく、異臭が甚だしいために、処理を行なう場所と人間の住環境が隣接する場合、環境的にも好ましくない。また、一般的に、堆肥は取り扱いに不便な形態であることが多い。したがって、糞尿の廃棄問題は、環境破壊として大きな問題となっている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、天然食品素材や糞尿などの熱可塑性材料ではない材料を利用して製造される熱可塑性有機組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、熱可塑性有機組成物からなる肥料、飼料および培養栄養源を提供することも目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、タンパク質、多糖類および脂肪酸のエステルからなる群から選択された1種以上の化合物を含有する原料(たとえば、天然食品素材、その残渣、動物の糞尿または植物性素材、具体的には、魚介類、海草、肉、豆、野菜、果実もしくはきのこ、それらの加工食品、油脂、調味料、香辛料、大鋸屑、木屑、稲藁、麦藁、籾殻、樹木の葉、草、米ぬか、ビート屑、ビール糟、梅酒糟、焼酎糟、芋糟または紙)を、加水分解操作に付したのち、脱水縮合操作に付してなる熱可塑性有機組成物にかかわる。
【0013】
本発明は、原料に、さらに、炭酸ガスまたは炭酸化物を添加してなる前記の熱可塑性有機組成物にかかわる。
【0014】
本発明は、含水率が0.5〜20重量%である前記の熱可塑性有機組成物にかかわる。
【0015】
本発明は、前記の熱可塑性有機組成物からなる肥料、餌料または培養栄養源にかかわる。
【0016】
本発明は、タンパク質、多糖類および脂肪酸のエステルからなる群から選択された1種以上の化合物を含有する原料(たとえば、天然食品素材、その残渣、動物の糞尿または植物性素材、具体的には、魚介類、海草、肉、豆、野菜、果実もしくはきのこ、それらの加工食品、油脂、調味料、香辛料、大鋸屑、木屑、稲藁、麦藁、籾殻、樹木の葉、草、米ぬか、ビート屑、ビール糟、梅酒糟、焼酎糟、芋糟または紙)および水を押出し機に投入し、100〜350℃で押出す熱可塑性有機組成物の製造方法にかかわる。
【0017】
本発明は、原料を、炭酸ガスおよび水の存在下、炭酸ガスが超臨界状態または亜臨界状態となる条件下で押出す前記の製造方法にかかわる。
【0018】
本発明は、原料を、水の存在下で破砕し、100〜350℃で加水分解に付したのち、脱水縮合操作に付してなる熱可塑性有機組成物の製造方法にかかわる。
【0019】
本発明は、原料を、炭酸ガスおよび水の存在下、炭酸ガスが超臨界状態または亜臨界状態となる条件下で、加水分解操作に付する前記の製造方法にかかわる。
【0020】
本発明は、原料に、さらに、炭酸ガスまたは炭酸化物を添加する前記の製造方法にかかわる。
【0021】
本発明は、脱水縮合反応に、押出し機を使用し、9.8〜24.5MPaのノズル前圧力で押出す前記の製造方法にかかわる。
【0022】
本発明によれば、天然食品素材、その残渣、動物の糞尿または植物性素材などの熱可塑性材料ではないタンパク質、多糖類または脂肪酸のエステルを含有する材料を利用して、熱可塑性有機組成物を製造することができる。本発明の熱可塑性有機組成物は、取り扱いやすい形態であり、かつ安価である。本発明の熱可塑性有機組成物は、肥料、飼料および培養栄養源として使用することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の熱可塑性有機組成物は、タンパク質、多糖類および脂肪酸のエステルからなる群から選択された1種以上の化合物を含有する原料を、加水分解操作に付したのち、脱水縮合操作に付することにより製造される。原料としては、たとえば、天然食品素材、その残渣、動物の糞尿または植物性素材を使用することができる。天然食品素材およびその残渣としては、天然食品、たとえば、魚介類、海草、肉、豆、野菜、果実、きのこ、それらの加工食品、油脂、調味料、香辛料およびそれらの残渣を使用することができる。動物の糞尿としては、たとえば、家畜の糞尿、人間の糞尿を使用することができる。植物性素材としては、たとえば、大鋸屑、木屑、稲藁、麦藁、籾殻、樹木の葉、草、米ぬか、ビート屑、ビール糟、梅酒糟、焼酎糟、芋糟または紙を使用することができる。
【0024】
天然食品素材、その残渣、動物の糞尿および植物性素材は、タンパク質、多糖類または脂肪酸のエステルを含有する。多糖類としては、たとえば、セルロース、デキストリン、デンプン、キチンがある。脂肪酸のエステルとしては、脂肪酸のグリセリドがある。天然食品素材、その残渣、動物の糞尿および植物性素材は、タンパク質、多糖類および脂肪酸のエステル以外に、たとえば、アミノ酸、単糖類、脂肪酸、アルコール、ビタミン、ミネラルを含有している。
【0025】
タンパク質、多糖類および脂肪酸のエステルは、加水分解操作に付されて低分子量化され、また、加水分解されたタンパク質、多糖類および脂肪酸のエステルは、脱水縮合し得る。アミノ酸、単糖類、脂肪酸、アルコールは、一般に加水分解により低分子量化されることはないが、加水分解されたタンパク質、多糖類または脂肪酸のエステルとともに脱水縮合し得る。
【0026】
本発明の熱可塑性有機組成物は、タンパク質、多糖類および脂肪酸のエステルからなる群から選択された1種以上の化合物を含有する原料(たとえば、天然食品素材、その残渣、動物の糞尿または植物性素材)を、水の存在下で破砕し、100〜350℃で加水分解操作に付することによって低分子量化させたのち、この低分子量化された化合物どうし、または、この低分子量化された化合物とそのほかの化合物とを脱水縮合操作に付することによって、製造することができる。
【0027】
たとえば、原料および水を押出し機に投入し、100〜350℃で押出すことにより、原料を加水分解操作に付したのち、脱水縮合操作に付し、本発明の熱可塑性有機組成物を生成させることができる。
【0028】
たとえば、本発明の熱可塑性有機組成物の製造には、破砕2軸部および2ベント付き押出し機、破砕2軸部および3ベント付き押出し機が使用される。使用するスクリューは、供給部のみ食い込みをよくするため、破砕部を兼ねた2軸とし、この部分からダイまでは1軸で構成される。たとえば、3ベント付き押出し機のスクリューは、供給部、せん断混練り圧縮部、解放ベント部、混練り圧縮部、真空ポンプ吸引ベント部、混練り圧縮部、真空ポンプ吸引ベント部、混練り圧縮部から構成されることができる。この場合の製造プロセスは、調合、破砕、混練り加水分解反応、急速脱水縮合反応、加圧、急速脱水縮合反応、加圧および急速脱水架橋反応から構成される。
【0029】
原料は、炭酸ガスおよび水の存在下で加水分解操作に付されることができ、さらに、炭酸ガスが超臨界状態または亜臨界状態となる条件下で加水分解操作に付されることができる。
【0030】
炭酸ガスを使用する場合には、炭酸ガスは、加圧状態でせん断混練り圧縮部の適当な個所に定量的に注入することができる。
【0031】
熱可塑性有機組成物を形成する原料の破砕、調合および反応装置への投入は、原料の種類およびその形状により異なる。たとえば、反応設備が大型の場合には、原料はダンプカーからホッパー内に投入され、ホッパー下部に設置された破砕機により大まかに破砕されたのち、適当な水分を含有して流動状態となり、ポンプで搬送される。そのほかの成分が定量的に添加されたのち、連続反応機に定量的に投入される。反応設備が小型の場合には、原料は粉砕機で破砕されたのち、ヘンシェルミキサーなどで混合、調合され、反応機に投入される。たとえば、牛の枝肉や木質パレットなどの大きな原料は、一般に市販されているスパイク付きの破砕機やギア式破砕機により破砕することができる。
【0032】
水の使用量は、たとえば、原料の固形分10重量部に対して、原料中に含まれる水分と併せて、好ましくは30〜100重量部、より好ましくは50〜70重量部とする。30重量部未満では原料の加水分解反応率が低下し、100重量部をこえると脱水縮合反応率が低下して分子量の回復が少なくなり、また脱水に必要なエネルギーが大きくなり、経済的にも好ましくない。
【0033】
炭酸ガスを使用する場合の炭酸ガスの使用量は、水を基準として、好ましくは0.01〜3重量%、より好ましくは0.03〜1重量%である。0.01重量%未満では反応速度が小さく、反応時間が長くなる。また、比較的低温、低圧の条件下では加水分解が充分に行なわれないことがある。3重量%をこえると加水分解の反応率が高くなるために原料の低分子量化が著しく、ペレット成形が困難になる。
【0034】
たとえば、3ベント付き押出し機を使用する場合には、最初の混練り圧縮部において、原料を加熱することにより、加水分解操作に付することができる。炭酸ガスおよび水の存在下で、加水分解操作に付する場合には、炭酸ガスが超臨界状態または亜臨界状態とならない条件下で行なってもよいが、超臨界状態または亜臨界状態で行なうことが好ましい。炭酸ガスは原料、とくに多糖類の加水分解反応の触媒として作用し、加水分解反応を促進することができる。したがって、炭酸ガスを使用することにより、原料の低分子量化が促進され、その結果、良好な熱可塑性を有する熱可塑性有機組成物を得ることができる。炭酸ガスが超臨界状態または亜臨界状態となる条件下では、原料の加水分解がさらに促進される。
【0035】
原料に応じて、原料に、さらにアルカリ、酸、アルコールまたは容易に加水分解し得るポリマーを添加することにより、原料の加水分解反応を促進することができる。アルカリとしては、アンモニア;エチルアミン、エチレンジアミンなどの有機アミン;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸カルシウムなどの無機アルカリなどを使用することができる。酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、ホウ酸などの無機酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソプロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、ラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの有機酸などを使用することができる。アルコールとしては、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、ブタンジオールなどを使用することができる。容易に加水分解し得るポリマーとしては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタンおよびポリカーボネートなどの縮合物を使用することができ、とくに、ポリマーを構成するモノマーが自然界の産物であるポリマーを使用することが環境衛生上好ましい。たとえば、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネートアジペートテレフタレート、ポリカプロラクトンなどが使用され、とくに、この中ではポリ乳酸が好ましく使用される。
【0036】
原料を加水分解操作に付する際の反応温度は、100〜350℃、好ましくは135〜155℃である。100℃未満では加水分解反応率が低下し、350℃をこえると製品が変色し、分子量低下が著しく、ついには脆化する。原料を炭酸ガスおよび水の存在下で加水分解操作に付する場合には、炭酸ガスが超臨界状態または亜臨界状態となる条件下で加水分解操作に付することが好ましい。
【0037】
炭酸ガスが超臨界状態あるいは亜臨界状態となる条件下で加水分解操作に付する場合の反応最高圧力は、好ましくは7.45〜29.4MPa、より好ましくは15.7〜23.5MPaである。7.45MPa未満では炭酸ガスが超臨界状態または亜臨界状態にならない。その結果、原料の加水分解反応率が低下し、分子量の高い原料(たとえば、セルロース、キチンなどの多糖類)が未反応で残る場合がある。一方、29.4MPaをこえると水が超臨界状態になり、製品が変色し、分子量低下が著しく、ついには脆化する。
【0038】
反応時間は、好ましくは1〜10分間、より好ましくは3〜5分間である。1分間未満では加水分解反応率が低下して充分な性能を有する熱可塑性有機組成物を得ることができず、10分間をこえると製品が変色し、分子量低下が著しく、ついには脆化する。
【0039】
原料に、さらに、炭酸ガスまたは炭酸化物を添加することにより、脱水縮合反応を促進することができる。これらの化合物が、脱水縮合反応に寄与し、化合物に由来する官能基が生成物に導入されることによって、生成物の熱可塑性が向上するものと考えられる。
【0040】
原料を、炭酸ガスの存在下で加水分解操作に付した場合には、加水分解反応に使用された炭酸ガスの残渣を、脱水縮合反応に寄与させることができる。炭酸化物としては、加熱されることにより炭酸ガスを放出する炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウムなどを使用することができる。
【0041】
たとえば、3ベント付き押出し機を使用する場合には、1番目の混練圧縮部において加水分解操作に付した原料およびそのほかの成分を、2番目および3番目の混練り圧縮部において、脱水縮合操作に付することができる。
【0042】
また、原料に架橋剤を添加することにより、架橋反応を行なわせることができる。
【0043】
架橋剤としては、多価カルボン酸およびそのエステル、または炭酸ガスを使用することができる。たとえば、グルタミン酸、イノシン酸などのアミノ酸;アスコルビン酸、乳酸などのヒドロキシカルボン酸;シュウ酸、マレイン酸、アジピン酸、フタル酸、コハク酸、トリポリリン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カルシウム、無水コハク酸、無水マレイン酸などを使用することができる。炭酸ガスの存在下で加水分解操作および脱水縮合操作に付する場合には、反応後の炭酸ガスの残渣が架橋剤として使用される。架橋剤を添加する場合の使用量は、架橋剤の種類と反応条件により、適宜決定される。
【0044】
これらの方法で部分的に架橋された熱可塑性有機組成物は、充分な架橋密度を有し、軟化点以上でチキソトロピー性を示す。したがって、本発明の熱可塑性有機組成物のペレットは、膠着を起こすことがなく、取り扱いが非常に容易である。たとえば、押出し機のダイスに接触するホットカッターにより切断して得られる架橋された熱可塑性有機組成物のペレットは、若干の空気を吹き付けられながら落下して、たとえば1m下に設置された受け皿に留まった状態でも、膠着しないので、そのまま圧送エジェクターにより搬送することができる。
【0045】
本発明の熱可塑性有機組成物の含水率は、20℃、相対湿度60%の条件下で24時間放置したのちに求めた値が、0.5〜20重量%、好ましくは、5〜10重量%である。0.5重量%未満では成形性が困難になる。20重量%をこえるとカビが生えやすく、保存が困難となり、経済的に不利である。含水率は、反応条件を変化させることにより、適宜調整することができる。
【0046】
本発明の熱可塑性有機組成物は、20℃の水中に3時間浸漬させたのちの膨潤率が、好ましくは150〜450%である。膨潤率が150%未満では熱可塑性が低下する。450%をこえるとペレットなどに成形することが困難となる。膨潤率は、反応条件を変化させることにより、適宜調整することができる。
【0047】
本発明の熱可塑性有機組成物は、肥料、飼料および培養栄養剤として使用することができる。
【0048】
肥料としては、原料を適宜選択することにより、たとえば、窒素、リン、カリウムに富んだ肥料を製造することができる。たとえば、オカラのみを原料として使用した場合には、窒素に富んだ肥料を得ることができる。籾殻、葦などケイ素を多く含む素材を原料として製造した肥料を使用すると、草木が強固になるため、とくにキュウリの肥料として好ましく使用される。また、原料に糞尿を含む場合には、アンモニアを多く含有する肥料となるが、炭酸カルシウムやリン酸を中和剤として添加すると、アンモニアが中和され、好ましい肥料となる。また、リン酸の添加は、アンモニアの中和を効果的に行なうだけでなく、肥料のリン成分を補強するという点においても、好ましい。
【0049】
飼料としては、原料を適宜選択することにより、たとえば、タンパク質、糖、ミネラルおよびビタミンなどに富んだ飼料を製造することができる。たとえば、オカラのみを原料として使用した場合には、タンパク質に富んだ飼料を得ることができる。
【0050】
培養栄養源としては、原料を適宜選択することにより、必要な栄養成分に富んだ培養栄養源を製造することができる。
【0051】
オカラ、米ぬか、ビール糟、焼酎糟または梅酒糟など可食の材料を、熱可塑性有機組成物の原料として使用したときには、栄養面だけでなく、安全面でも優れた肥料、飼料および培養栄養源を得ることができる。
【0052】
本発明の熱可塑性有機組成物から製造される肥料、飼料および培養栄養源の形状は、粉末、顆粒または粒状とすることができる。
【0053】
飼料の形状を自在に変化させ得ることは、飼料を摂取する生物の口の大きさに、飼料の大きさを合わせることが可能であるという点で有用である。また、肥料などの場合は、ほかの物質と混合する際、混合物の粒の大きさを偏析しないように調整することが可能であるという点で有用である。さらに、分解速度を制御することが可能であるという効果を有する。
【0054】
【実施例】
<含水率の測定>
熱可塑性有機組成物の含水率は、温度20℃、相対湿度60%の条件下で24時間放置し、実質的に恒量平衡に達したところで求めた。
【0055】
<見かけ溶融粘度(MI)の測定>
熱可塑性有機組成物のMIは、190℃、荷重2.16kg、2mm径のノズルから熱可塑性有機組成物を流出させ、10分間の流出量(g)を測定することにより求めた。
【0056】
実施例1
米ぬか50重量部、籾殻50重量部、骨付き焼き鯵10重量部を原料とし、原料とグリセリン15重量部および炭酸ガス3重量%を含有する水30重量部とをヘンシェルミキサーにより混合して、底部にスクリュー計量装置が付いたホッパーに投入した。反応は、供給部、せん断混練り圧縮部(1)、解放ベント部、混練り圧縮部(2)、真空ポンプ吸引ベント部、混練り圧縮部(3)、真空ポンプ吸引ベント部、混練り圧縮部(4)から構成され、供給部のみ食い込みをよくすることを目的として破砕部を兼ねている2軸、この部分からダイまでの1軸を有するスクリューからなる3ベント付き押出し機を用いて行なった。(1)部の温度を140℃、圧力を15MPa、(4)部の温度を160℃、圧力を18MPaとし、総滞留時間を4分間として反応させたのち、熱可塑性有機組成物を押出した。このあと、引き続きホットカッターでカットし、冷却ファンで空冷することにより、平均粒径約3mmの熱可塑性有機組成物ペレットを製造した。製造時に膠着することはなかった。
【0057】
得られた熱可塑性有機組成物ペレットの含水率は12.5%、MIは24であった。薄茶色の半透明であり、米ぬかのセルロースは分解されていた。焼き鯵の匂いが残り、匂い成分の一部が分解されずに、分解が穏やかな状態に止まっていることがわかった。20℃で水に3時間浸漬すると膨潤し、その膨潤率は約220%であったが、12時間後もその形状が崩れることはなく、溶解はしなかった。
【0058】
得られた熱可塑性有機組成物ペレットを肥料としてトマトの苗木を水耕栽培し、市販のトマト用配合液体肥料を用いた場合との成長度合いを比較した。市販の液体肥料の表示固形成分から算出した固形分重量と、熱可塑性有機組成物ペレットの固形分重量を合わせることにより、肥料濃度を同一とし、トマトの成長を比較した。
【0059】
本発明の熱可塑性有機組成物ペレットを肥料として使用したトマトの成長は、市販の肥料を使用したときに比べて早かった。実も色付きが早く、約39重量%大きかった。また、食味も、濃厚で優れていた。さらに、市販の肥料を使用したトマトは、43日後、根腐れが発症したが、本発明の熱可塑性有機組成物ペレットを肥料として使用したトマトは、60日後にも根腐れが起こらなかった。
【0060】
実施例2〜4
骨付き生鯵10重量部、オカラ10重量部、ビール糟50重量部、人参30重量部を原料とし、実施例1と同様にして、熱可塑性有機組成物ペレットを製造した。製造時に膠着することはなかった。
【0061】
得られた熱可塑性有機組成物の直径12mmのペレットの含水率は15.5%、MIは18であった。茶色の半透明であり、生鯵の骨も分解されていた。焼き鯵の匂いが残り、匂い成分は分解されていないことがわかった。20℃で水に3時間浸漬すると膨潤し、その膨潤率は約230%であったが、12時間後もその形状が崩れることはなく、溶解はしなかった(実施例2)。炭酸ガス濃度を0.3重量%に変更した以外は実施例2と同様にして製造した熱可塑性有機組成物ペレットは、透明性が低く、膨潤率は380%であった(実施例3)。また、炭酸ガスを使用せずに実施例2と同様にして製造した熱可塑性有機組成物ペレットには、加水分解が不充分な固形原料の残渣が見られた。膨潤率は450%であった(実施例4)。
【0062】
得られた熱可塑性有機組成物ペレットを飼料として生後5週間の雌マウスを飼育し、市販の配合飼料(チャールスリバー配合CRF−1)を与えて飼育したマウスと体重変化を比較した。温度20℃,相対湿度60%の条件下において、一日の照明時間を14時間として、飼育した。飼料と水道水は、マウスに自由に摂取させた。2週間後のマウスの体重を比較すると、本発明の飼料で飼育したマウスの体重が約25%大きく、市販の飼料を与えたマウスに比べて成長が早かった。この結果は、本発明の熱可塑性有機組成物ペレットが、飼料として優れていることを意味している。
【0063】
実施例5
骨付き生鯵10重量部、オカラ10重量部、ビール糟50重量部、人参30重量部を原料とし、グリセリン30重量部をブタンジオール20重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして熱可塑性有機組成物ペレットを製造した。製造時に膠着することはなかった。
【0064】
得られた熱可塑性有機組成物の含水率は15.5%、MIは21であった。茶色の半透明であり、生鯵の骨も分解されていた。焼き鯵の匂いが残り、匂い成分は分解されていないことがわかった。20℃で水に3時間浸漬すると膨潤し、その膨潤率は約210%であったが、12時間後もその形状が崩れることはなく、溶解はしなかった。
【0065】
得られた熱可塑性有機組成物ペレットを機械粉砕し、100メッシュ通過の粉体を製造した。ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト標準寒天培地の寒天成分および栄養成分の濃度と同じになるように、熱可塑性有機組成物寒天培養栄養源を生理食塩水で希釈調整し、熱可塑性有機組成物の濃度を0.5重量%とした。このようにして得られた培地とソイビーン・カゼイン・ダイジェスト標準寒天培地を用いた際の大腸菌の増殖を、菌数測定により比較した。35℃において6時間培養したのち、大腸菌の数は、1.0×10から、それぞれ3.4×10および2.8×10へと増加し、本発明の熱可塑性有機組成物を含有する寒天培養栄養源の方が、大腸菌の増加が大きく、栄養源として優れていた。
【0066】
実施例6
牛糞50重量部、籾殻50重量部、牛尿50重量部、杉大鋸屑30重量部およびリン酸5%水溶液3重量部を原料とし、実施例1と同様にして熱可塑性有機組成物ペレットを製造した。製造時に膠着することはなかった。
【0067】
得られた熱可塑性有機組成物ペレットの含水率は17.3%、MIは18であった。薄茶色の半透明であり、大鋸屑も分解されていた。また、原料から発生するアンモニアは中和され、刺激的なアンモニア臭はなかった。さらに、取り扱い上気になる著しい汚臭はなく、環境的に好ましいものであった。20℃で水に3時間浸漬すると膨潤し、その膨潤率は約430%であったが、12時間後もその形状が崩れることはなく、溶解はしなかった。
【0068】
得られた熱可塑性有機組成物ペレットを肥料とし、キュウリの苗木を水耕栽培し、市販のキュウリ用配合液体肥料と成長度合いを比較した。市販の液体肥料の表示固形成分から算出した固形分重量と、熱可塑性有機組成物ペレットの固形分重量を合わせることにより、肥料濃度を同一とし、キュウリの成長を比較した。
【0069】
本発明の熱可塑性有機組成物ペレットを使用したキュウリの成長は、市販の肥料を使用したときに比べて早く、実も成長が早く、約23重量%大きかった。また、食味も、濃厚で、パリパリと歯ごたえもよく、食感も優れていた。
【0070】
【発明の効果】
本発明によれば、天然食品素材や糞尿などの熱可塑性材料ではない材料を利用して、取り扱いに優れ、かつ安価な熱可塑性有機組成物を製造することができる。また、本発明の熱可塑性有機組成物は、肥料、飼料および培養栄養源の原料として有用である。

Claims (16)

  1. タンパク質、多糖類および脂肪酸のエステルからなる群から選択された1種以上の化合物を含有する原料を、加水分解操作に付したのち、脱水縮合操作に付してなる熱可塑性有機組成物。
  2. 原料が、天然食品素材、その残渣、動物の糞尿または植物性素材である請求項1記載の熱可塑性有機組成物。
  3. 原料が、魚介類、海草、肉、豆、野菜、果実もしくはきのこ、それらの加工食品、油脂、調味料、香辛料、大鋸屑、木屑、稲藁、麦藁、籾殻、樹木の葉、草、米ぬか、ビート屑、ビール糟、梅酒糟、焼酎糟、芋糟または紙である請求項1記載の熱可塑性有機組成物。
  4. 原料に、さらに、炭酸ガスまたは炭酸化物を添加してなる請求項1記載の熱可塑性有機組成物。
  5. 含水率が0.5〜20重量%である請求項1、2、3または4記載の熱可塑性有機組成物。
  6. 請求項1、2、3または4記載の熱可塑性有機組成物からなる肥料。
  7. 請求項1、2、3または4記載の熱可塑性有機組成物からなる餌料。
  8. 請求項1、2、3または4記載の熱可塑性有機組成物からなる培養栄養源。
  9. タンパク質、多糖類および脂肪酸のエステルからなる群から選択された1種以上の化合物を含有する原料および水を押出し機に投入し、100〜350℃で押出す熱可塑性有機組成物の製造方法。
  10. さらに、原料を、炭酸ガスおよび水の存在下、炭酸ガスが超臨界状態または亜臨界状態となる条件下で押出す請求項9記載の製造方法。
  11. タンパク質、多糖類および脂肪酸のエステルからなる群から選択された1種以上の化合物を含有する原料を、水の存在下で破砕し、100〜350℃で加水分解操作に付したのち、脱水縮合操作に付する熱可塑性有機組成物の製造方法。
  12. さらに、原料を、炭酸ガスおよび水の存在下、炭酸ガスが超臨界状態または亜臨界状態となる条件下で、加水分解操作に付する請求項11記載の製造方法。
  13. 原料が、天然食品素材、その残渣、動物の糞尿または植物性素材である請求項9、10、11または12記載の製造方法。
  14. 原料が、魚介類、海草、肉、豆、野菜、果実もしくはきのこ、それらの加工食品、油脂、調味料、香辛料、大鋸屑、木屑、稲藁、麦藁、籾殻、樹木の葉、草、米ぬか、ビート屑、ビール糟、梅酒糟、焼酎糟、芋糟または紙である請求項9、10、11または12記載の製造方法。
  15. 原料に、さらに、炭酸ガスまたは炭酸化物を添加する請求項9、10、11または12記載の製造方法。
  16. 脱水縮合反応に、押出し機を使用し、9.8〜24.5MPaのノズル前圧力で押出す請求項9、10、11または12記載の製造方法。
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