JP2004070270A - 回折光学素子およびその製造方法および光ピックアップ装置および光ディスクドライブ装置 - Google Patents
回折光学素子およびその製造方法および光ピックアップ装置および光ディスクドライブ装置 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】回折光学素子製造の際の、上記「気泡の巻き込み」および/または「反り」の問題を有効に解消する。
【解決手段】透明基板10上に有機材料膜20を接着固定する有機材料膜接着工程と、透明基板上に接着固定された有機材料膜に、断面が矩形状の凹凸による回折格子を複数個、格子配列状に形成する回折格子形成工程と、格子配列状に形成された複数の回折格子を個別的に分離する分離工程とを有する回折光学素子の製造方法において、有機材料膜接着工程の際に、有機材料膜20を、それぞれが1以上の回折格子を形成されることになる有機材料膜片21に分割して、透明基板10への接着を行う。
【選択図】 図1
【解決手段】透明基板10上に有機材料膜20を接着固定する有機材料膜接着工程と、透明基板上に接着固定された有機材料膜に、断面が矩形状の凹凸による回折格子を複数個、格子配列状に形成する回折格子形成工程と、格子配列状に形成された複数の回折格子を個別的に分離する分離工程とを有する回折光学素子の製造方法において、有機材料膜接着工程の際に、有機材料膜20を、それぞれが1以上の回折格子を形成されることになる有機材料膜片21に分割して、透明基板10への接着を行う。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、回折光学素子およびその製造方法および光ピックアップ装置および光ディスクドライブ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
回折光学素子は「光に所望の回折現象を生じさせる光学素子」であり、分光や光の偏向等を行わせる素子として広く使用されている。
【0003】
回折光学素子は従来から種々のものが知られているが、新たな回折光学素子として「光学的に透明な基板の上に有機膜や高分子膜を形成し、これら膜の表面に凹凸による所望の回折格子を形成したもの」が提案されている(特許文献1〜3等)。
【0004】
上記公報記載の回折光学素子は、膜が複屈折性を持つ「偏光ホログラム素子」であり、例えば、光ピックアップ装置において「光源側からの光束の光路と光ディスクからの戻り光束の光路とを光路分離する」のに好適に使用され得る。
【0005】
若干、説明を補足すると、回折光学素子は、光ピックアップ装置に用いられるものではサイズが「数ミリ四方程度」で、これを単品づつ別個に製造するわけではなく、一度に数百のものが製造される。
【0006】
即ち、直径:数10mm〜数100mmのサイズの透明基板、例えば直径:100mmあるいは150mmの透明基板上に接着剤層が形成され、形成された接着剤層上に、基板サイズと同サイズ、あるいはこれより一回り小さいサイズの有機材料膜を載せ、接着剤層により透明基板に接着固定する。接着剤層を構成する接着剤としては熱硬化性のものや、紫外線硬化型接着剤のような光硬化性のものを用いることができる。
【0007】
透明基板に接着された有機材料膜の表面に複数(通常100〜200個)の回折格子の形成が行われる。回折格子の形成は、有機材料膜上に金属や酸化物による薄い膜を形成し、フォトリソグラフィにより上記膜をパターニングして回折格子群に対応するエッチングマスクを形成し、このマスクを介したドライエッチングで行うことができる。
【0008】
回折格子形成後、必要に応じてオーバコート層を形成し、さらに所望により透明な対向基板をオーバコート層上に載置して全体を一体化する。その後、ダイシング装置を用いて切断を行ない、個々の回折光学素子を得る。
【0009】
ところで、上記回折格子を形成する有機材料膜は、厚さが100μm程度の薄いものであり、これを透明基板上の接着層上に載置する際に接着剤との接触部に「気泡」を巻き込み易い。換言すると、気泡を巻き込まないようにして有機材料膜を接着剤層上に載置するには細心の注意が必要であり、この載置工程は「回折光学素子の作製プロセスで中でも難しい工程」の1つとなっている。
【0010】
透明基板と有機材料膜との間に気泡が混入したままで回折光学素子を製造すると、混入気泡を持つ回折光学素子は気泡のために所望の光学特性が満たされず不良品となる。このように有機材料膜載置の際の「気泡の巻き込み」は、製造される回折光学素子の歩留まりを低下させる原因となる。
【0011】
さらに、上記有機材料膜の材料は一般に「高分子材料」で、回折光学素子の製造工程で加熱を伴う処理(例えば、熱硬化性の接着剤で接着剤層を構成し、加熱により硬化させて有機材料膜を接着固定する場合や、エッチングマスクを形成する際のフォトリソグラフィにおけるフォトレジストのプリベークやポストベーク処理)を受けると、熱による温度変化(上記接着剤の熱硬化の場合で100〜150℃)により収縮し、接着剤層を介して固定された透明基板に「反り」を生じさせる。
【0012】
このような「反り」が発生すると、例えば、回折格子形成の工程を行う際に、基板を「真空吸着」で所定の位置に固定することが困難になったり、できなくなったりする。また、反りの生じた有機材料膜にドライエッチングで回折格子を形成する際、反りのために「同時に形成される複数の回折格子が同一のものにならなく」なり、製造された回折光学素子の光学特性の「ばらつき」が生じる等の問題がある。特に、反りの大きな部分に形成された回折格子の場合、透過光の波面収差を劣化させ、実際上の使用ができなくなる場合もあるため、回折光学素子の製造の歩留まりが低下する。
【0013】
【特許文献1】
特開2000−221325号公報
【特許文献2】
特開2000― 75130号公報
【特許文献3】
特開平11−174226号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、回折光学素子製造の際の上記「気泡の巻き込み」および/または「反り」の問題を有効に解消することを課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
この発明の回折光学素子の製造方法は、有機材料膜接着工程と、回折格子形成工程と、分離工程とを有する。
「有機材料膜接着工程」は、透明基板上に有機材料膜を接着固定する工程である。
「回折格子形成工程」は、透明基板上に接着固定された有機材料膜に、断面が矩形状の凹凸による回折格子を複数個、格子配列状に形成する工程である。
「分離工程」は、格子配列状に形成された複数の回折格子を個別的に分離する工程である。
【0016】
「透明基板」は平行平板状で、前述したように、一般に、直径:数10mm〜数100mmのサイズで円板形状のもの、例えば直径:100mmあるいは150mmのもので、必要に応じてオリエンテーション・フラットを形成されたものが用いられ、厚さは一般に0.3mm〜数mm程度である。
【0017】
このような「透明基板」としては、上記の如き寸法を有するBK−7ガラス基板、石英ガラス基板やパイレックス(登録商標)ガラス基板、結晶性ガラス(商品名:ネオセラム)基板等が好適である。
また、上記「分離工程」は一般にダイシング装置を用いて行われる。
【0018】
請求項1記載の製造方法は以下の如き特徴を有する。
即ち、有機材料膜接着工程の際に、有機材料膜を「それぞれが1以上の回折格子を形成されることになる有機材料膜片」に分割して透明基板への接着を行う。
【0019】
上記「互いに分割して透明基板に接着される有機材料膜片の大きさ」は、「透明基板上への接着の際に気泡が巻き込まれない大きさ」とすることができる(請求項2)。
【0020】
上記請求項1または2記載の回折光学素子の製造法方における「有機材料膜片の大きさ」を、「有機材料膜片の熱収縮が、透明基板を実質的に反らせないような大きさ」とすることができる(請求項3)。
【0021】
「有機材料膜片」の形状は一般に「矩形形状」であるが、円板形状の透明基板の周辺部に接着されるものでは、上記周辺部の形状に応じた形態となっていることもできる。
【0022】
有機材料膜片は、上記の如く、各片に「1以上の回折格子を形成される」が、上記の矩形形状のものでは、1片の有機材料膜片にn(≧1)×m(≧1)個の回折格子を形成することができる(請求項4)。
【0023】
有機材料膜片の大きさに関して、上述の「透明基板上への載置の際に気泡が巻き込まれない大きさ」は、有機材料膜の厚さや材質にもよるが、一般に、矩形形状のサイズが小さいほど気泡の巻き込みは起こり難くなる。厚さが100μm程度の有機材料膜の場合であれば、長辺の長さが25mm程度以下の矩形形状(正方形形状を含む)であれば確実に「気泡の巻き込み」を防止できることが実験的に確認された。
【0024】
例えば、1個の回折格子が5mm×5mmの領域の内部に形成されるものとすると、上記如き厚さ:100μmで25mm×25mmの有機材料膜片であれば25個の回折格子の形成が可能である。
【0025】
上記「透明基板を実質的に反らせない」は、有機材料膜の熱収縮により透明基板に生じる反りが、前述の「透明基板を真空吸着で所定位置に固定できなくなったり、製造された回折光学素子の光学特性にばらつきが生じたり、透過光の波面収差を劣化させる」等の不具合が生じない程度に小さいことを意味する。
【0026】
有機材料膜片に関して、上述の「有機材料膜片の熱収縮が、透明基板を実質的に反らせないような大きさ」は、有機材料膜の厚さや材質にもよるが、一般に、矩形形状のサイズが小さいほど反りを防止する効果は大きく、厚さが100μm程度の有機材料膜の場合であれば、上述の「長辺の長さが25mm程度以下の矩形形状(正方形形状を含む)」であれば、反りの影響を実質的に除去できる。
【0027】
従って、上記例の有機材料膜の場合であれば、有機材料膜片の大きさを、長辺の長さが25mmより小さい矩形形状とすることにより、気泡の巻き込みを防止しつつ、透明基板の反りの問題を有効に解消できる。
【0028】
勿論、有機材料膜片の最小の大きさは「1個の回折格子を形成する領域の大きさ(前述の例では5mm×5mm)」である。
【0029】
ここで、用語につき若干付言すると、以下の説明において「有機材料膜」は、有機材料膜を有機材料膜片に分割していない状態の膜を意味するほか、分割された有機材料膜片の、透明基板上における集合状態をも意味するものとし、さらに、単品としての回折光学素子における「回折格子の形成されている膜」をも言うものとする。
【0030】
上記請求項1〜4の任意の1に記載の回折格子の製造方法において、各有機材料膜片は、これを「透明基板の接着面に予め形成された接着剤層上に載置して接着」することが好ましい(請求項5)。この場合、透明基板の接着面に予め形成される接着剤層は「回転による遠心力により層厚を均一化する」ことが好ましい(請求項6)。
【0031】
上記請求項1〜6の任意の1に記載の回折光学素子の製造方法において、複数の回折格子を格子配列状に形成された有機材料膜(有機材料膜片の集合状態)の上から、各回折格子における回折格子の凹部に、光学的に透明な材料を充填してオーバコート層とすることができる(請求項7)。
さらに、上記オーバコート層上に、透明な対向基板を一体化した後、分離工程を行うことが好ましい(請求項8)。
【0032】
請求項7または8記載の回折光学素子の製造方法において、有機材料膜として「有機複屈折膜」を用い、オーバコート層を「有機複屈折膜の常光線に対する屈折率もしくは異常光線に対する屈折率と実質的に等しい屈折率を持つ等方性光学材料(光学特性が方向によらないもの)」とすることができる(請求項9)。
【0033】
上記「有機複屈折膜」としては、分子鎖が配向した高分子複屈折膜を用いることができる(請求項10)。
【0034】
このような高分子複屈折膜は、大面積且つ大量・低コストの製造を考慮すると、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネイト(PC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリイミドなどの高分子複屈折膜であることが好ましい。中でも均一な薄膜化の容易さ、耐熱性、耐薬品性の点からポリエチレンテレフタレート(PET)が望ましい。
【0035】
また、有機複屈折膜は分子鎖が配向した高分子膜であることが好ましく、生産性を考慮すると「延伸により分子鎖を配向させた高分子膜(請求項11)」であることが特に好ましい。
【0036】
上記請求項7〜11の任意の1に記載の回折光学素子の製造方法において、回折格子上に形成される「オーバコート層」の材料は、アクリル系もしくはエポキシ系の材料が好適である(請求項12)。
【0037】
この発明の回折光学素子は「請求項1〜12の任意の1に記載の回折光学素子の製造方法で製造される回折光学素子」である(請求項13)。
このような回折光学素子の形態としては、透明基板上に接着剤層により接着された有機材料膜(複屈折性を持たないもの、あるいは複屈折性を持つもの)に回折格子が形成されたもの(形態1)、形態1のものの回折格子上に「有機材料膜と屈折率の異なる等方性光学材料によるオーバコート層」を形成したもの(形態2)、形態2におけるオーバコート層上に、更に透明な対向基板を一体化させたもの(形態3)が考えられる。
【0038】
これら形態1〜3の回折光学素子は何れも「分光や光の偏向等を行わせる光学素子」として使用できる。これらの各形態1〜3において、有機材料膜を接着した透明基板の(有機材料膜の接着されたのと反対側の)面に、反射防止膜を形成することができる。
【0039】
上記形態2または3のもののうち、請求項9または10または11記載の回折光学素子の製造方法で製造されるもの、即ち、有機材料膜として有機複屈折膜を用い、オーバコート層を「有機複屈折膜の常光線に対する屈折率もしくは異常光線に対する屈折率と実質的に等しい屈折率を持つ等方性光学材料」で形成するものは「偏光ホログラム素子」として使用することができる(請求項14)。この場合も「オーバコート層の材料」は、アクリル系もしくはエポキシ系の材料が好適である(請求項15)。
【0040】
上記請求項14または15記載の回折光学素子は「有機複屈折膜を接着された透明基板に反射防止膜を形成した構成」とすることができる(請求項16)。
【0041】
この発明の光ピックアップ装置は、上記請求項14〜16の任意の1に記載の回折光学素子を「光源側からの光束の光路と、光ディスクからの戻り光束の光路とを光路分離する偏光ホログラム素子」として用いたことを特徴とする(請求項17)。
【0042】
この発明の光ディスクドライブ装置は「光ディスクに対し、光ピックアップ装置を用いて情報の記録・再生・消去の1以上を行う光ディスクドライブ装置」において、光ピックアップ装置として請求項17記載のものを用いたことを特徴とする(請求項18)。
【0043】
請求項19記載の回折光学素子の製造方法は、有機材料膜接着工程と、回折格子形成工程と、分離工程とを有する。
「有機材料膜接着工程」は、透明基板上に有機材料膜を接着固定する工程である。
「回折格子形成工程」は、透明基板上に接着固定された有機材料膜に、断面が矩形状の凹凸による回折格子を複数個、格子配列状に形成する工程である。
「分離工程」は、格子配列状に形成された複数の回折格子を個別的に分離する工程である。
【0044】
「透明基板」は平行平板状で、前述したように、一般に、直径:数10mm〜数100mmのサイズで円板形状のもの、例えば直径:100mmあるいは150mmのもので、必要に応じてオリエンテーション・フラットを形成されたものが用いられ、厚さは一般に0.3mm〜数mm程度である。
【0045】
このような「透明基板」としては、上記の如き寸法を有するBK−7ガラス基板、石英ガラス基板やパイレックス(登録商標)ガラス基板、結晶性ガラス(商品名:ネオセラム)基板等が好適である。
また、上記「分離工程」は一般にダイシング装置を用いて行われる。
【0046】
請求項19記載の製造方法は以下の如き特徴を有する。
即ち、有機材料膜接着工程の際に、有機材料膜を「それぞれが1以上の回折格子を形成されることになる有機材料膜片」に分割して透明基板への接着を行う。
【0047】
その際、各有機材料膜片を接着する接着剤層を「各有機材料膜片の配列に対応させて分割した分割接着剤層の配列」として、透明基板上に形成する。
【0048】
この請求項19記載の回折光学素子の製造方法における「透明基板上に配列形成される各分割接着剤層の大きさ」は、透明基板上への各有機材料膜片の接着の際に気泡が巻き込まれない大きさとすることができる(請求項20)。
【0049】
上記請求項19または20記載の回折光学素子の製造方法においても、互いに分割して透明基板に接着される有機材料膜片の大きさを、「有機材料膜片の熱収縮が、透明基板を実質的に反らせないような大きさ」とすることができる(請求項21)。
【0050】
上記請求項19〜21の任意の1に記載の回折光学素子の製造方法において、透明基板上に配列形成される各分割接着剤層の形状は「接着される有機材料膜片の形状と同じである」ことができる(請求項22)。この場合、有機材料膜片の形状が分割接着剤層の形状と同じであるとは、必ずしも「合同的な同一」のみでなく、後述する実施例の場合にように「互いに相似的」であってもよく、互いに相似的である場合には、有機材料膜片の大きさが分割接着剤層の大きさよりも、大きくても小さくても良い。
【0051】
請求項19〜22の任意の1に記載の回折光学素子の製造方法において、各有機材料膜片は「透明基板の接着面に予め配列形成された分割接着剤層上に載置されて接着される」ことができる(請求項23)。この場合、透明基板上に予め形成される分割接着剤層の配列は「透明基板への印刷」することができる(請求項24)。
【0052】
この請求項24記載の回折光学素子の製造方法において、透明基板上に印刷により形成された各分割接着剤層は「印刷後の放置により、層厚を均一化」することができ(請求項25)、その場合、各分割接着剤層の層厚を均一化する放置期間内に「各分割接着剤層を加熱」することができる(請求項26)。
【0053】
あるいは、透明基板への印刷により形成された分割接着剤層上に載置された有機材料膜片の配列に対してローラを走行させて、各分割接着剤層と有機材料膜片との総合厚み(分割接着剤層の厚みと、有機材料膜片の厚みの和)を均一化することもできる(請求項27)。
【0054】
上記請求項24〜27の任意の1に記載の回折光学素子の製造方法において、分割接着剤層の配列を「窒素雰囲気中において透明基板へ印刷形成」することができる(請求項28)。
【0055】
請求項29記載の回折光学素子は「上記請求項19〜28の任意の1に記載の回折光学素子の製造方法で製造される回折光学素子」である。
【0056】
付言すると、上記請求項19〜28の任意の1に記載の製造方法においても、互いに分割して透明基板に接着される有機材料膜片にn(≧1)×m(≧1)個の回折格子を形成することができ、複数の回折格子を格子配列状に形成された有機材料膜上から、各回折格子における回折格子の凹部に、光学的に透明な材料を充填して、オーバコート層とすることができる。
【0057】
そして、オーバコート層の形成を行う場合には、オーバコート層上に、透明な対向基板を一体化した後、分離工程を行うことができ、「有機材料膜を有機複屈折膜とし、オーバコート層を有機複屈折膜の常光線に対する屈折率もしくは異常光線に対する屈折率と実質的に等しい屈折率を持つ等方性光学材料とする」ことができる。
【0058】
上記有機複屈折膜は「分子鎖が配向した高分子複屈折膜」用いることができ、この場合「有機複屈折膜として用いられる高分子複屈折膜が、延伸により分子鎖を配向させた高分子膜」あることができる。「有機複屈折膜の常光線に対する屈折率もしくは異常光線に対する屈折率と実質的に等しい屈折率を持つ等方性光学材料」であるオーバコート層の材料は「アクリル系もしくはエポキシ系の材料」であることができる。
【0059】
請求項29記載の回折光学素子も「偏光ホログラム素子」として構成でき、オーバコート層の材料をアクリル系もしくはエポキシ系の材料とすることができ、有機複屈折膜を接着された透明基板に反射防止膜を形成することもできる。
【0060】
また、請求項29記載の回折光学素子を「偏光ホログラム素子」として構成する場合、この回折光学素子を、光源側からの光束の光路と、光ディスクからの戻り光束の光路とを光路分離する偏光ホログラム素子として用いて請求項17記載の光ピックアップ装置と同様の光ピックアップ装置を構成でき、このような光ピックアップ装置を用いて、請求項18記載の光ディスクドライブ装置と同様の光ディスクドライブ装置を構成することができることは勿論である。
【0061】
【発明の実施の形態】
以下、実施の形態を具体的な実施例に即して説明するが、この発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0062】
【実施例】
実施例1
図1に示すように、透明基板10として、BK−7ガラスによる、厚さ:1.0mm、直径:φ=100mmの円板状のものを用意し、その片面(有機材料膜を接着する側の面)に、スピンコート装置を用いて粘度:500cp〜1000cpの「エポキシ樹脂系(透明基板と略同一の屈折率を持つ)」の紫外線硬化型接着剤を3ml滴下し、回転数:300rpmで300秒回転して紫外線硬化型接着剤を透明基板10の片面全体に塗り広げ、更に、回転数を300rpmから増加し、回転数:400rpmで300秒保持して紫外線硬化型接着剤による厚さ:35μmの接着剤層を形成した。
【0063】
「有機材料膜」として、延伸により分子鎖を配向させて複屈折性を発現させたポリエチレンテレフタレート(PET)による、厚さ:100μmの「有機複屈折膜」を用意し、この有機材料膜を「1辺が5mmの正方形形状」に分割した。
このようにして得られた「有機材料膜片」を、透明基板1上の接着剤層の形成された面の上に、図1に示す如く「格子配列状」に手作業で載置した。図1において、符号21が個々の「有機材料膜片」を示している。
【0064】
次いで、図1の状態のものを真空容器中の「減圧下」で、即ち、雰囲気を133Pa程度まで減圧した状態で接着剤と有機材料膜片21とを一体化して気泡を除去した後、真空容器内を大気圧に戻し、図示されない「紫外線照射装置」で紫外線硬化型接着剤に紫外光を照射した後、100℃の温度で10分間ベーキングを行ない、接着層を完全に硬化させた。この時、接着層に気泡の混入は全く見られなかった。
【0065】
図2は、このようにして有機材料膜片21を透明基板10上に接着した状態を模式的な部分図で示している。符号11は接着剤層を示している。図2に示すように、上記接着工程の際に、接着剤11Aが、個々の有機材料膜片21の周端部を囲繞するように回り込み、有機材料膜片21を「より強力」に透明基板10に貼り付ける。
【0066】
図3(a)は、上記の如く、透明基板10上に接着剤層11により(有機材料膜片21の集合状態として)有機材料膜20を接着した状態を模式的に示している。このような接着状態を実現した後、有機材料膜20上にフォトリソグラフィにより、フォトレジストの周期パターン(3.0μmピッチ)を複数個形成した後、その上にAl膜を真空蒸着法で形成し、リフトオフ法を用いてAlによるマスクパターンMを形成した(図3(b))。マスクパターンMの材料として、ここではAlを用いているが、例えばCr、Ni等の他の金属を用いても良い。
【0067】
図4(a)は、個々の有機材料膜片21上にマスクパターンMが形成された状態を示している。
【0068】
図3に戻ると、上記マスクパターンMをマスクとしてドライエッチングを行ない、さらにマスクパターンを構成するAlを除去し、各有機材料膜21に、断面が矩形形状の凹凸格子による回折格子RLを形成した(図3(c))。図4(b)は、個々の有機材料膜片21に回折格子RLが形成された状態を示している。
【0069】
回折格子RLが形成されている有機材料膜の上から、オーバコート層となるアクリル系の紫外線硬化型樹脂(有機材料膜20に発現している複屈折性の「常光線に対する屈折率」と略同一の屈折率を有する)をボッティングし、その上から、BK−7ガラスによる厚さ:500μmの透明な対向基板をのせて適度に加圧し、回折格子の凹部内にオーバコート剤を充填した。対向基板を介して紫外光を照射後、100℃の温度で10分間ベーキングを行ない完全に硬化させた。この状態を図3(d)に示す。符号13が(アクリル系の紫外線硬化型樹脂による)オーバコート層を示し、符号15が「透明な対向基板」を示す。
【0070】
最後に、図示されないダイシング装置により、図3(e)に示す切断面CSにそって切断を行ない、5.0mm×5.0mmサイズのチップに切断し、図5に示すような回折光学素子を多数子個作製した。
【0071】
このようにして得られた各回折光学素子は「偏光ホログラム素子」として使用できる。得られた個々の回折光学素子は何れも気泡の混入が無く、有機材料膜の熱収縮による「透明基板の反り」の光学特性への影響もなかった。
【0072】
なお、実施例1において、透明基板上に滴下する紫外線硬化型接着剤の滴下量は10ml程度まで増量しても良い。また、各有機材料膜片は「1辺が5mmの正方形形状」で小さいので、透明基板1上の接着剤層の形成された面の上に載置する際に接着剤層への気泡は混入し難く、有機材料膜片の載置後に「雰囲気を133Pa程度まで減圧した状態で接着剤と有機材料膜片21とを一体化して気泡を除去」する作業は省略可能である。
【0073】
実施例2
透明基板に厚さ:1.0mm、直径:φ=100mmのBK−7ガラス板による円板形状の透明基板を用い、実施例1と同様の方法により、厚さ:100μmで、1辺が20mmの正方形形状の有機材料膜片(延伸により分子鎖を配向させて複屈折性を発現させたポリエチレンテレフタレートの膜片)を透明基板上に接着した。
【0074】
接着された各有機材料膜片と透明基板との間の接着剤層に「気泡の混入」は見られなかった。その後、実施例1と同様(回折格子は、各有機材料膜片ごとに16個形成した)にして、回折光学素子を得た。
このようにして得られた各回折光学素子は「偏光ホログラム素子」として使用できる。得られた個々の回折光学素子は何れも気泡の混入が無く、有機材料膜の熱収縮による「透明基板の反り」の光学特性への影響もなかった。
【0075】
比較例
透明基板に厚さ:1.0mm、直径:φ=100mmのBK−7ガラス板による円板形状の透明基板を用い、実施例1と同様の方法により、厚さ:100μmで、1辺が30mmの正方形形状の有機材料膜片(延伸により分子鎖を配向させて複屈折性を発現させたポリエチレンテレフタレートの膜片)を透明基板上に接着した。
【0076】
いくつかの有機材料膜片と透明基板との間の接着剤層に「気泡の混入」がみられた。その後、実施例1と同様(回折格子は、各有機材料膜片ごとに36個形成した)にして、回折光学素子を得た。
このようにして得られた多数の回折光学素子のうちには、気泡の混入により狙い通りの光学特性を発揮できないものが一部存在し、有機材料膜の熱収縮による反りの影響で光学特性の劣化したものも若干存在した。即ち、実施例1、2の場合に比して回折光学素子の製造の歩留まりが低下した。
【0077】
上記のように、実施例1、2で実施した「回折光学素子の製造方法」は、透明基板10上に有機材料膜20を接着固定する有機材料膜接着工程(図1、図2および図3(a))と、透明基板10上に接着固定された有機材料膜20に、断面が矩形状の凹凸による回折格子RLを複数個、格子配列状に形成する回折格子形成工程(図3(b)、(c)、図4(a)、(b))と、格子配列状に形成された複数の回折格子RLを個別的に分離する分離工程(図3(e))とを有する回折光学素子の製造方法において、有機材料膜接着工程の際に、有機材料膜20を、それぞれが1以上の回折格子を形成されることになる有機材料膜片21に分割して、透明基板10への接着を行う(請求項1)ものである。
【0078】
また、互いに分割して透明基板10に接着される有機材料膜片21の大きさが、透明基板10上への接着の際に気泡が巻き込まれない大きさ(実施例1において5mm×5mm、実施例2において20mm×20mm)で(請求項2)、また、有機材料膜片21の熱収縮が透明基板10を実質的に反らせないような大きさである(請求項3)。
【0079】
また、互いに分割して透明基板10に接着される有機材料膜片21に、n=m=1で1個(実施例1)、n=m=4で16個(実施例2)の回折格子が形成され(請求項4)、各有機材料膜片21は、透明基板10の接着面に予め形成された接着剤層11上に載置されて接着され(請求項5)、接着剤層11は、回転による遠心力により層厚を均一化されている(請求項6)。
【0080】
また、複数の回折格子RLを格子配列状に形成された有機材料膜20上から、各回折格子RLにおける回折格子の凹部に、光学的に透明な材料が充填されてオーバコート層13となり(請求項7)、オーバコート層13上に、透明な対向基板15を一体化した後、分離工程が行われる(請求項8)。
【0081】
有機材料膜20は有機複屈折膜であり、オーバコート層13は有機複屈折膜の常光線に対する屈折率と実質的に等しい屈折率を持つ等方性光学材料であり(請求項9)、有機複屈折膜(有機材料膜20)は、分子鎖が配向した高分子複屈折膜であり(請求項10)、かつ「延伸により分子鎖を配向させた高分子膜」である(請求項11)。また、オーバコート層13の材料は「アクリル系の材料」である(請求項12)。
【0082】
従って、実施例1、2で作製した回折光学素子は、請求項13記載の回折光学素子の実施の1形態であり、「偏光ホログラム素子」として使用され(請求項14)、オーバコート層13の材料がアクリル系の材料である(請求項15)。
【0083】
図5に示すように、有機複屈折膜21を接着された透明基板10に反射防止膜Hを形成することができる(請求項16)。反射防止膜Hは、透明基板10に当初(有機材料膜20を接着する段階)から形成しておいてもよいし、あるいは分離工程を実行する前に形成してもよい。
【0084】
なお、図3(c)、図4(b)に示した「各有機材料膜片21上に回折格子RLが形成されたもの」において、各回折格子部分は、それ自体で「回折光学素子としての機能(透過光を回折させる機能)」を有するので、これをそのまま回折光学素子として使用することもできる。
【0085】
しかし、回折格子の形成された有機材料膜は必ずしも十分な「物理的強度」を持つ訳ではないので、このまま使用するよりは、図3(d)に示すようにオーバコート層13を形成して補強を行うのが良く、更に、オーバコート層13上に透明な対向基板15を一体化することが好ましい。
【0086】
取り扱いに幾分慎重を期するならば、図6に示すように、透明な対向基板15を用いずに、オーバコート層13を「保護膜を兼ねた表面層」とすることもできる。
【0087】
以下、請求項19以下の発明に関する実施例を挙げる。
【0088】
実施例3
図9に示すように、透明基板10として、BK−7ガラスによる、厚さ:1.0mm、直径:φ=100mmの円板状のものを用意し、その片面(有機材料膜を接着する側の面)に、スクリーン印刷装置を用い、粘度:1000cp〜2500cpの「エポキシ樹脂系(透明基板と略同一の屈折率を持つ)」の紫外線硬化型接着剤を、透明基板10の片面に「分割接着剤層11Bの配列」として印刷形成した。配列形成された個々の分割接着剤層11Bは「厚さ:40μm、1辺が4.6mmの正方形形状」である。
【0089】
印刷形成後の状態で5分間放置し、各分割接着剤層11B表面の「スクリーンメッシュに対応した凹凸」が平坦化するのを待って、予め用意した「延伸により分子鎖を配向させて複屈折性を発現させた厚さ:100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)を、1辺が4.8mmの正方形形状に分割したもの(有機複屈折膜)」を、有機材料膜片として、透明基板10上に形成された各分割接着剤層11Bの上に手作業(各有機材料膜片を真空吸着して分割接着剤層上に載置した)で載置した。
【0090】
図10は、有機材料膜片21を透明基板10上に接着した状態を模式的な部分図で示している。有機材料膜片21が分割接着剤層11B上に載置されるとき、分割接着剤層11Bは未だ固化しておらず、載置された有機材料膜片21の重みにより当初のサイズ(4.6mm四方)から、透明基板10上で広がって有機材料膜片11Bの周辺部を囲繞するように回り込み、有機材料膜片21を「より強力」に透明基板10に貼り付ける。接着された有機材料膜片21の配列は、図9に示す分割接着剤層11Bの配列パターンに倣ったものとなる。
【0091】
図11(a)は、上記の如く、透明基板10上に各分割接着剤層11Bにより有機材料膜片21を接着した状態を模式的に示している。実施例1に即して説明した図2、図3(a)では、透明基板10上に接着剤層11が連続して形成されているが、実施例3(図10、図11(a))においては、透明基板10に形成された各分割接着剤層11Bは「相互に分離」している。
【0092】
図11(a)に示す接着状態を実現した後、フォトリソグラフィにより、各有機材料膜片21上に「フォトレジストの周期パターン(3.0μmピッチ)」を1個づつ形成し、その上にAl膜を真空蒸着し、リフトオフ法を用いてAlによるマスクパターンMを形成した(図11(b))。マスクパターンMの材料として、Alを用いたが、他の金属、例えばCr、Ni等を用いても良い。
【0093】
図12(a)は、個々の有機材料膜片21上にマスクパターンMが形成された状態を示している。図12は、実施例1に関する図4に対応するものであるが、図4の場合と異なり、各有機材料膜21を接着する分割接着剤層11Bが互いに分離している。
【0094】
図11に戻ると、マスクパターンMをマスクとしてドライエッチングを行なったのち、マスクパターンMを構成するAlを除去し、各有機材料膜21に「断面形状が矩形形状」の凹凸格子による回折格子RLを形成した(図11(c))。
【0095】
図12(b)は、個々の有機材料膜片21に回折格子RLが形成された状態を示している。
【0096】
図11に戻って、回折格子RLが形成されている各有機材料膜片21の上から、オーバコート層13となる「アクリル系の紫外線硬化型樹脂(有機材料膜に発現している複屈折性の「常光線に対する屈折率」と略同一の屈折率を有する)」を滴下し、その上から、BK−7ガラスからなる厚さ:500μmの透明な対向基板15をのせて適度に加圧し、回折格子RLの凹部内にオーバコート剤を充填した。対向基板15を介して紫外光を照射後、100℃の温度で10分間ベーキングを行ない完全に硬化させた。この状態を図11(d)に示す。
【0097】
最後に、図示されないダイシング装置により、図11(e)に示す切断面CSに沿って切断を行ない「5.0mm×5.0mmサイズのチップ」として切断し、回折光学素子を多数個作製した。作製された個々の回折光学素子は、図5に示されたものと同様である。
【0098】
このようにして得られた各回折光学素子は「偏光ホログラム素子」として使用できる。得られた個々の回折光学素子は何れも気泡の混入が無く、有機材料膜の熱収縮による「透明基板の反り」の光学特性への影響もなかった。
【0099】
実施例4
実施例3と同様、透明基板10として、BK−7ガラスによる、厚さ:1.0mm、直径:φ=100mmの円板状のものを用意し、その片面(有機材料膜を接着する側の面)に、「フレキソ印刷装置」を用い、粘度:100cp〜1000cpの「エポキシ樹脂系(透明基板と略同一の屈折率を持つ)」の紫外線硬化型接着剤を透明基板の片面に「分割接着剤層11Bの配列」として印刷形成した。個々の分割接着剤層11Bは「厚さ:20μm、1辺が4.6mmの正方形形状」である。
【0100】
印刷直後の各分割接着剤層11Bの表面は、図13(a)に示すように、フレキソ印刷装置の転写ローラの溝に応じた「凹凸形状」となっている。実施例4において、分割接着剤層11Bを構成する紫外線効果型接着剤は上記の如く、粘度:100cp〜1000cpと、実施例3で用いたものに比して粘性が小さいので、図13(a)に示すように、ヒータ内蔵の加熱装置100を用いて加熱し、接着剤温度を30℃に保った状態で2分間静置し、転写ローラー溝に対応した凹凸を平坦化して、図13(b)に示す状態とした。
【0101】
その後、予め用意した実施例3におけると同じ有機材料膜片を、実施例3と同様にして各分割接着剤層11B上に載置した。
【0102】
その後、図14に示すように、透明基板移動装置(図示されず)により透明基板10を図の左方へ移動させ、ゴムローラ110により有機材料膜片21の表面を加圧し、透明基板10底面から有機材料膜片21表面までの高さを、高さ:Bから高さ:Aにして厚みの均一化をはかった。
【0103】
このようにして有機材料膜片21を透明基板10上に接着した状態は、模式的には、図10と同様である。
【0104】
そのあと、実施例3と同様に、フォトリソグラフィによるパターン形成、メタルマスク形成、ドライエッチングによる回折格子形成、オーバコート剤の充填、対向透明基板の設置、オーバコート剤硬化、ダイシング装置によるチップ化を行って、回折光学素子を得た。
【0105】
このようにして得られた各回折光学素子は「偏光ホログラム素子」として使用できる。得られた個々の回折光学素子は何れも気泡の混入が無く、有機材料膜の熱収縮による「透明基板の反り」の光学特性への影響もなかった。
【0106】
上記実施例3、4の変形例として、直径:φ=100mm、厚さ:1.0mmのBK−7ガラス板上に、20mm四方の分割接着剤層の配列パターンを形成し、同じく20mm四方の有機材料膜片を接着した。
【0107】
接着された各有機材料膜片と透明基板との間の分割接着剤層に「気泡の混入」は見られなかった。その後、実施例3と同様(回折格子は、各有機材料膜片ごとに16個形成した)にして、光学性能の良好な回折光学素子を得た。
【0108】
このようにして得られた各回折光学素子は「偏光ホログラム素子」として使用できる。得られた個々の回折光学素子は何れも気泡の混入が無く、有機材料膜の熱収縮による「透明基板の反り」の光学特性への影響もなかった。
【0109】
先に、実施例1、2に関する比較例と同様、透明基板に厚さ:1.0mm、直径:φ=100mmのBK−7ガラス板による円板形状の透明基板に、実施例3と同様の方法で「1辺が30mmの正方形形状の分割接着剤層」の配列を印刷形成し、各分割接着剤層上に、厚さ:100μmで「1辺が30mmの正方形形状の有機材料膜片」を接着した。以後、実施例3と同様のプロセスで得られた回折光学素子の一部には、有機材料膜片と透明基板との間の分割接着剤層に「気泡の混入」がみられ、実施例3、4の場合に比して製造の歩留まりが低下した。
【0110】
上記のように、実施例3、4で実施した「回折光学素子の製造方法」は、透明基板上に有機材料膜を接着固定する有機材料膜接着工程と、透明基板上に接着固定された有機材料膜に、断面が矩形状の凹凸による回折格子を複数個、格子配列状に形成する回折格子形成工程と、格子配列状に形成された複数の回折格子を個別的に分離する分離工程とを有する回折光学素子の製造方法において、有機材料膜接着工程の際に、有機材料膜を、それぞれが1以上の回折格子を形成されることになる有機材料膜片21に分割して、透明基板10への接着を行い、各有機材料膜片21を接着する接着剤層を、各有機材料膜片21の配列に対応させて分割した分割接着剤層11Bの配列として透明基板10上に形成する回折光学素子の製造方法(請求項19)である。
【0111】
また、実施例3、4の製造方法では、透明基板10上に配列形成される各分割接着剤層11Bの大きさが、透明基板10上への各有機材料膜片21の接着の際に気泡が巻き込まれない大きさであり(請求項20)、互いに分割して透明基板10に接着される有機材料膜片21の大きさが、有機材料膜片の熱収縮が、透明基板10を実質的に反らせないような大きさである(請求項21)。
【0112】
また、実施例3、4の製造方法とも、透明基板10上に配列形成される各分割接着剤層11Bの形状は「接着される有機材料膜片21の形状と同じ」であり(請求項22)、各有機材料膜片21は、透明基板10の接着面に予め配列形成された分割接着剤層上に載置されて接着される(請求項23)。
【0113】
さらに、実施例3、4の製造方法とも、分割接着剤層11Bの配列が「透明基板10への印刷」により形成され(請求項24)、印刷形成された分割接着剤層の配列における各分割接着剤層11Bは、実施例3においては「印刷後の放置により、層厚を均一化」され(請求項25)、実施例4においては「各分割接着剤層の層厚を均一化する放置期間内」に、各分割接着剤層が加熱され(請求項26)、
透明基板10への印刷により形成された分割接着剤層11B上に載置された有機材料膜片21の配列に対してローラ110を走行させて、各分割接着剤層と有機材料膜片との厚さを均一化している(請求項27)。
【0114】
なお、実施例3、4とも、分割接着剤層の配列は「窒素雰囲気中において透明基板へ印刷形成」することにより行った(請求項28)。
【0115】
実施例3、4の製造方法により得られる回折光学素子においても、図5に示すように、有機複屈折膜21を接着された透明基板10に反射防止膜Hを形成することができる。反射防止膜Hは、透明基板10に当初(有機材料膜20を接着する段階)から形成しておいてもよいし、あるいは分離工程を実行する前に形成してもよい。
【0116】
上記実施例3、4の製造方法で製造される回折光学素子は、請求項29記載の回折光学素子である。
【0117】
なお、図3(c)、図4(b)、図12(b)に示した「各有機材料膜片21上に回折格子RLが形成されたもの」において、各回折格子部分は、それ自体で「回折光学素子としての機能(透過光を回折させる機能)」を有するので、これをそのまま回折光学素子として使用することもできる。
【0118】
しかし、回折格子の形成された有機材料膜は必ずしも十分な「物理的強度」を持つ訳ではないので、このまま使用するよりは、図3(d)に示すようにオーバコート層13を形成して補強を行うのが良く、更に、オーバコート層13上に透明な対向基板15を一体化することが好ましい。
【0119】
取り扱いに幾分慎重を期するならば、図6に示すように、透明な対向基板15を用いずに、オーバコート層13を「保護膜を兼ねた表面層」とすることもできる。
【0120】
【発明の実施の形態】
図7は、この発明の光ピックアップ装置の実施の1形態を示す図である。
光ピックアップ装置は、光源30から放射される光を対物レンズ37により光ディスク40の記録面上に光スポットとして集光し、記録面により反射された戻り光束を、対物レンズ37を介して光検出部39へ導きつつ、光ディスク40に対し、情報の記録・再生・消去の1以上を行う光ピックアップ装置であり、光源30と対物レンズ37との間に回折光学素子31が配置されている。
回折光学素子31は図5に示す如きものである。
【0121】
図7の光ピックアップ装置では、光源30である半導体レーザからの光が回折光学素子31を透過する。回折光学素子31は有機材料膜が有機複屈折膜のものであり「偏光ホログラム素子」として用いられ、光源側からの光はそのまま回折光学素子31を透過し、さらに、1/4波長板35を透過し、対物レンズ37の作用により、光ディスク40の記録面上に光スポットとして集光する。
【0122】
記録面により反射された光は「戻り光束」となって対物レンズ37、1/4波長板35を透過し、偏光面が当初の方向から90度旋回した直線偏光となり、回折光学素子31に入射し、回折光学素子31による回折作用を受けて光検出部39へ向けて偏向される。このとき、戻り光束には回折光学素子31により、例えば非点収差が与えられ、この光束は光検出部39で受光され、非点収差法によるフォーカシング信号、プッシュプル法によるトラッキング信号や再生信号を発生させる。
【0123】
即ち、図7の光ピックアップ装置は、請求項15あるいは16記載の回折光学素子を、光源30側からの光束の光路と、光ディスク40からの戻り光束の光路とを光路分離する偏光ホログラム素子31として用いたもの(請求項17)である。
【0124】
図8は、光ディスクドライブ装置の実施の1形態を示す図である。
この光ディスクドライブ装置は、光ディスク40に対し、光ピックアップ装置41を用いて情報の記録・再生・消去の1以上を行う装置である。
【0125】
光ディスク40は保持部47に保持され、「駆動手段」としてのモータMtで回転駆動される。セットされた光ディスク40に対し光ピックアップ装置41が、変位駆動手段43により光ディスク40の半径方向へ変位駆動されて記録・再生・消去の1以上を行う。制御手段45は、光ピックアップ装置41からの信号に基づく各種制御や再生信号の出力を制御するほか、装置全体の制御を行う。
【0126】
即ち、図8の光ディスクドライブ装置は、光ディスク40に対し、光ピックアップ装置41を用いて情報の記録・再生・消去の1以上を行う光ディスクドライブ装置において、光ピックアップ装置として、例えば図7に示すような、請求項17記載のものを用いたもの(請求項18)である。
【0127】
図7に示した光ピックアップ装置における偏光ホログラム素子31として、実施例3、4の製造方法により製造された回折光学素子を用いることができ、この光ピックアップ装置を、図8の光ディスクドライブ装置に用いることができる。
【0128】
【発明の効果】
以上に説明したように、この発明によれば、回折光学素子およびその製造方法および光ピックアップ装置および光ディスクドライブ装置を実現できる。
【0129】
この発明の回折光学素子の製造方法では、透明基板に接着する有機材料膜を、有機材料膜片に分割して接着を行うので、接着の際の気泡の巻き込み及び/または透明基板の反りの光学特性への影響を有効に防止することができ、所望の光学特性をもった回折光学素子を歩留まりよく製造できる。
【0130】
また、請求項19〜28記載の発明では、有機材料膜片を接着する接着剤も、分割接着剤層に分割されて配列され、接着の際の気泡の巻き込み及び/または透明基板の反りの光学特性への影響を有効に防止することができ、所望の光学特性をもった回折光学素子を歩留まりよく製造できる。
【0131】
従って、この発明の回折光学素子は製造の歩留まりよく製造できる。
このような回折光学素子を偏光ホログラム素子として用いる光ピックアップ装置は、良好な光ピックアップ機能を実現でき、このような光ピックアップ装置を用いる光ディスクドライブ装置は性能良好である。
【図面の簡単な説明】
【図1】透明基板への有機材料膜片の接着を説明するための図である。
【図2】透明基板への有機材料膜片の接着を説明するための図である。
【図3】回折光学素子の製造プロセスの、有機材料膜片の透明基板への接着以後のプロセスを説明するための図である。
【図4】図3(b)、(c)における状態を、有機材料膜片について拡大して模式的に示す説明図である。
【図5】回折光学素子の実施の1形態を示す図である。
【図6】回折光学素子の実施の別形態を示す図である。
【図7】光ピックアップ装置の実施の1形態を説明するための図である。
【図8】光ディスクドライブ装置の実施の1形態を説明するための図である。
【図9】透明基板へ分割接着剤層の配列を形成した状態を説明するための図である。
【図10】分割接着剤層に有機材料膜片を接着させた状態を説明するための図である。
【図11】請求項19記載の回折光学素子の製造方法における、有機材料膜片の透明基板への接着以後のプロセスを説明するための図である。
【図12】図11(b)、(c)における状態を、分割接着剤装置と有機材料膜片の1組について拡大して模式的に示す説明図である。
【図13】透明基板に印刷形成された分割接着剤層の表面の平坦化を説明するための図である。
【図14】請求項27記載の発明を説明するための図である。
【符号の説明】
10 透明基板
11 接着剤層
11B 分割接着剤層
21 有機材料膜片
【発明の属する技術分野】
この発明は、回折光学素子およびその製造方法および光ピックアップ装置および光ディスクドライブ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
回折光学素子は「光に所望の回折現象を生じさせる光学素子」であり、分光や光の偏向等を行わせる素子として広く使用されている。
【0003】
回折光学素子は従来から種々のものが知られているが、新たな回折光学素子として「光学的に透明な基板の上に有機膜や高分子膜を形成し、これら膜の表面に凹凸による所望の回折格子を形成したもの」が提案されている(特許文献1〜3等)。
【0004】
上記公報記載の回折光学素子は、膜が複屈折性を持つ「偏光ホログラム素子」であり、例えば、光ピックアップ装置において「光源側からの光束の光路と光ディスクからの戻り光束の光路とを光路分離する」のに好適に使用され得る。
【0005】
若干、説明を補足すると、回折光学素子は、光ピックアップ装置に用いられるものではサイズが「数ミリ四方程度」で、これを単品づつ別個に製造するわけではなく、一度に数百のものが製造される。
【0006】
即ち、直径:数10mm〜数100mmのサイズの透明基板、例えば直径:100mmあるいは150mmの透明基板上に接着剤層が形成され、形成された接着剤層上に、基板サイズと同サイズ、あるいはこれより一回り小さいサイズの有機材料膜を載せ、接着剤層により透明基板に接着固定する。接着剤層を構成する接着剤としては熱硬化性のものや、紫外線硬化型接着剤のような光硬化性のものを用いることができる。
【0007】
透明基板に接着された有機材料膜の表面に複数(通常100〜200個)の回折格子の形成が行われる。回折格子の形成は、有機材料膜上に金属や酸化物による薄い膜を形成し、フォトリソグラフィにより上記膜をパターニングして回折格子群に対応するエッチングマスクを形成し、このマスクを介したドライエッチングで行うことができる。
【0008】
回折格子形成後、必要に応じてオーバコート層を形成し、さらに所望により透明な対向基板をオーバコート層上に載置して全体を一体化する。その後、ダイシング装置を用いて切断を行ない、個々の回折光学素子を得る。
【0009】
ところで、上記回折格子を形成する有機材料膜は、厚さが100μm程度の薄いものであり、これを透明基板上の接着層上に載置する際に接着剤との接触部に「気泡」を巻き込み易い。換言すると、気泡を巻き込まないようにして有機材料膜を接着剤層上に載置するには細心の注意が必要であり、この載置工程は「回折光学素子の作製プロセスで中でも難しい工程」の1つとなっている。
【0010】
透明基板と有機材料膜との間に気泡が混入したままで回折光学素子を製造すると、混入気泡を持つ回折光学素子は気泡のために所望の光学特性が満たされず不良品となる。このように有機材料膜載置の際の「気泡の巻き込み」は、製造される回折光学素子の歩留まりを低下させる原因となる。
【0011】
さらに、上記有機材料膜の材料は一般に「高分子材料」で、回折光学素子の製造工程で加熱を伴う処理(例えば、熱硬化性の接着剤で接着剤層を構成し、加熱により硬化させて有機材料膜を接着固定する場合や、エッチングマスクを形成する際のフォトリソグラフィにおけるフォトレジストのプリベークやポストベーク処理)を受けると、熱による温度変化(上記接着剤の熱硬化の場合で100〜150℃)により収縮し、接着剤層を介して固定された透明基板に「反り」を生じさせる。
【0012】
このような「反り」が発生すると、例えば、回折格子形成の工程を行う際に、基板を「真空吸着」で所定の位置に固定することが困難になったり、できなくなったりする。また、反りの生じた有機材料膜にドライエッチングで回折格子を形成する際、反りのために「同時に形成される複数の回折格子が同一のものにならなく」なり、製造された回折光学素子の光学特性の「ばらつき」が生じる等の問題がある。特に、反りの大きな部分に形成された回折格子の場合、透過光の波面収差を劣化させ、実際上の使用ができなくなる場合もあるため、回折光学素子の製造の歩留まりが低下する。
【0013】
【特許文献1】
特開2000−221325号公報
【特許文献2】
特開2000― 75130号公報
【特許文献3】
特開平11−174226号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、回折光学素子製造の際の上記「気泡の巻き込み」および/または「反り」の問題を有効に解消することを課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
この発明の回折光学素子の製造方法は、有機材料膜接着工程と、回折格子形成工程と、分離工程とを有する。
「有機材料膜接着工程」は、透明基板上に有機材料膜を接着固定する工程である。
「回折格子形成工程」は、透明基板上に接着固定された有機材料膜に、断面が矩形状の凹凸による回折格子を複数個、格子配列状に形成する工程である。
「分離工程」は、格子配列状に形成された複数の回折格子を個別的に分離する工程である。
【0016】
「透明基板」は平行平板状で、前述したように、一般に、直径:数10mm〜数100mmのサイズで円板形状のもの、例えば直径:100mmあるいは150mmのもので、必要に応じてオリエンテーション・フラットを形成されたものが用いられ、厚さは一般に0.3mm〜数mm程度である。
【0017】
このような「透明基板」としては、上記の如き寸法を有するBK−7ガラス基板、石英ガラス基板やパイレックス(登録商標)ガラス基板、結晶性ガラス(商品名:ネオセラム)基板等が好適である。
また、上記「分離工程」は一般にダイシング装置を用いて行われる。
【0018】
請求項1記載の製造方法は以下の如き特徴を有する。
即ち、有機材料膜接着工程の際に、有機材料膜を「それぞれが1以上の回折格子を形成されることになる有機材料膜片」に分割して透明基板への接着を行う。
【0019】
上記「互いに分割して透明基板に接着される有機材料膜片の大きさ」は、「透明基板上への接着の際に気泡が巻き込まれない大きさ」とすることができる(請求項2)。
【0020】
上記請求項1または2記載の回折光学素子の製造法方における「有機材料膜片の大きさ」を、「有機材料膜片の熱収縮が、透明基板を実質的に反らせないような大きさ」とすることができる(請求項3)。
【0021】
「有機材料膜片」の形状は一般に「矩形形状」であるが、円板形状の透明基板の周辺部に接着されるものでは、上記周辺部の形状に応じた形態となっていることもできる。
【0022】
有機材料膜片は、上記の如く、各片に「1以上の回折格子を形成される」が、上記の矩形形状のものでは、1片の有機材料膜片にn(≧1)×m(≧1)個の回折格子を形成することができる(請求項4)。
【0023】
有機材料膜片の大きさに関して、上述の「透明基板上への載置の際に気泡が巻き込まれない大きさ」は、有機材料膜の厚さや材質にもよるが、一般に、矩形形状のサイズが小さいほど気泡の巻き込みは起こり難くなる。厚さが100μm程度の有機材料膜の場合であれば、長辺の長さが25mm程度以下の矩形形状(正方形形状を含む)であれば確実に「気泡の巻き込み」を防止できることが実験的に確認された。
【0024】
例えば、1個の回折格子が5mm×5mmの領域の内部に形成されるものとすると、上記如き厚さ:100μmで25mm×25mmの有機材料膜片であれば25個の回折格子の形成が可能である。
【0025】
上記「透明基板を実質的に反らせない」は、有機材料膜の熱収縮により透明基板に生じる反りが、前述の「透明基板を真空吸着で所定位置に固定できなくなったり、製造された回折光学素子の光学特性にばらつきが生じたり、透過光の波面収差を劣化させる」等の不具合が生じない程度に小さいことを意味する。
【0026】
有機材料膜片に関して、上述の「有機材料膜片の熱収縮が、透明基板を実質的に反らせないような大きさ」は、有機材料膜の厚さや材質にもよるが、一般に、矩形形状のサイズが小さいほど反りを防止する効果は大きく、厚さが100μm程度の有機材料膜の場合であれば、上述の「長辺の長さが25mm程度以下の矩形形状(正方形形状を含む)」であれば、反りの影響を実質的に除去できる。
【0027】
従って、上記例の有機材料膜の場合であれば、有機材料膜片の大きさを、長辺の長さが25mmより小さい矩形形状とすることにより、気泡の巻き込みを防止しつつ、透明基板の反りの問題を有効に解消できる。
【0028】
勿論、有機材料膜片の最小の大きさは「1個の回折格子を形成する領域の大きさ(前述の例では5mm×5mm)」である。
【0029】
ここで、用語につき若干付言すると、以下の説明において「有機材料膜」は、有機材料膜を有機材料膜片に分割していない状態の膜を意味するほか、分割された有機材料膜片の、透明基板上における集合状態をも意味するものとし、さらに、単品としての回折光学素子における「回折格子の形成されている膜」をも言うものとする。
【0030】
上記請求項1〜4の任意の1に記載の回折格子の製造方法において、各有機材料膜片は、これを「透明基板の接着面に予め形成された接着剤層上に載置して接着」することが好ましい(請求項5)。この場合、透明基板の接着面に予め形成される接着剤層は「回転による遠心力により層厚を均一化する」ことが好ましい(請求項6)。
【0031】
上記請求項1〜6の任意の1に記載の回折光学素子の製造方法において、複数の回折格子を格子配列状に形成された有機材料膜(有機材料膜片の集合状態)の上から、各回折格子における回折格子の凹部に、光学的に透明な材料を充填してオーバコート層とすることができる(請求項7)。
さらに、上記オーバコート層上に、透明な対向基板を一体化した後、分離工程を行うことが好ましい(請求項8)。
【0032】
請求項7または8記載の回折光学素子の製造方法において、有機材料膜として「有機複屈折膜」を用い、オーバコート層を「有機複屈折膜の常光線に対する屈折率もしくは異常光線に対する屈折率と実質的に等しい屈折率を持つ等方性光学材料(光学特性が方向によらないもの)」とすることができる(請求項9)。
【0033】
上記「有機複屈折膜」としては、分子鎖が配向した高分子複屈折膜を用いることができる(請求項10)。
【0034】
このような高分子複屈折膜は、大面積且つ大量・低コストの製造を考慮すると、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネイト(PC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリイミドなどの高分子複屈折膜であることが好ましい。中でも均一な薄膜化の容易さ、耐熱性、耐薬品性の点からポリエチレンテレフタレート(PET)が望ましい。
【0035】
また、有機複屈折膜は分子鎖が配向した高分子膜であることが好ましく、生産性を考慮すると「延伸により分子鎖を配向させた高分子膜(請求項11)」であることが特に好ましい。
【0036】
上記請求項7〜11の任意の1に記載の回折光学素子の製造方法において、回折格子上に形成される「オーバコート層」の材料は、アクリル系もしくはエポキシ系の材料が好適である(請求項12)。
【0037】
この発明の回折光学素子は「請求項1〜12の任意の1に記載の回折光学素子の製造方法で製造される回折光学素子」である(請求項13)。
このような回折光学素子の形態としては、透明基板上に接着剤層により接着された有機材料膜(複屈折性を持たないもの、あるいは複屈折性を持つもの)に回折格子が形成されたもの(形態1)、形態1のものの回折格子上に「有機材料膜と屈折率の異なる等方性光学材料によるオーバコート層」を形成したもの(形態2)、形態2におけるオーバコート層上に、更に透明な対向基板を一体化させたもの(形態3)が考えられる。
【0038】
これら形態1〜3の回折光学素子は何れも「分光や光の偏向等を行わせる光学素子」として使用できる。これらの各形態1〜3において、有機材料膜を接着した透明基板の(有機材料膜の接着されたのと反対側の)面に、反射防止膜を形成することができる。
【0039】
上記形態2または3のもののうち、請求項9または10または11記載の回折光学素子の製造方法で製造されるもの、即ち、有機材料膜として有機複屈折膜を用い、オーバコート層を「有機複屈折膜の常光線に対する屈折率もしくは異常光線に対する屈折率と実質的に等しい屈折率を持つ等方性光学材料」で形成するものは「偏光ホログラム素子」として使用することができる(請求項14)。この場合も「オーバコート層の材料」は、アクリル系もしくはエポキシ系の材料が好適である(請求項15)。
【0040】
上記請求項14または15記載の回折光学素子は「有機複屈折膜を接着された透明基板に反射防止膜を形成した構成」とすることができる(請求項16)。
【0041】
この発明の光ピックアップ装置は、上記請求項14〜16の任意の1に記載の回折光学素子を「光源側からの光束の光路と、光ディスクからの戻り光束の光路とを光路分離する偏光ホログラム素子」として用いたことを特徴とする(請求項17)。
【0042】
この発明の光ディスクドライブ装置は「光ディスクに対し、光ピックアップ装置を用いて情報の記録・再生・消去の1以上を行う光ディスクドライブ装置」において、光ピックアップ装置として請求項17記載のものを用いたことを特徴とする(請求項18)。
【0043】
請求項19記載の回折光学素子の製造方法は、有機材料膜接着工程と、回折格子形成工程と、分離工程とを有する。
「有機材料膜接着工程」は、透明基板上に有機材料膜を接着固定する工程である。
「回折格子形成工程」は、透明基板上に接着固定された有機材料膜に、断面が矩形状の凹凸による回折格子を複数個、格子配列状に形成する工程である。
「分離工程」は、格子配列状に形成された複数の回折格子を個別的に分離する工程である。
【0044】
「透明基板」は平行平板状で、前述したように、一般に、直径:数10mm〜数100mmのサイズで円板形状のもの、例えば直径:100mmあるいは150mmのもので、必要に応じてオリエンテーション・フラットを形成されたものが用いられ、厚さは一般に0.3mm〜数mm程度である。
【0045】
このような「透明基板」としては、上記の如き寸法を有するBK−7ガラス基板、石英ガラス基板やパイレックス(登録商標)ガラス基板、結晶性ガラス(商品名:ネオセラム)基板等が好適である。
また、上記「分離工程」は一般にダイシング装置を用いて行われる。
【0046】
請求項19記載の製造方法は以下の如き特徴を有する。
即ち、有機材料膜接着工程の際に、有機材料膜を「それぞれが1以上の回折格子を形成されることになる有機材料膜片」に分割して透明基板への接着を行う。
【0047】
その際、各有機材料膜片を接着する接着剤層を「各有機材料膜片の配列に対応させて分割した分割接着剤層の配列」として、透明基板上に形成する。
【0048】
この請求項19記載の回折光学素子の製造方法における「透明基板上に配列形成される各分割接着剤層の大きさ」は、透明基板上への各有機材料膜片の接着の際に気泡が巻き込まれない大きさとすることができる(請求項20)。
【0049】
上記請求項19または20記載の回折光学素子の製造方法においても、互いに分割して透明基板に接着される有機材料膜片の大きさを、「有機材料膜片の熱収縮が、透明基板を実質的に反らせないような大きさ」とすることができる(請求項21)。
【0050】
上記請求項19〜21の任意の1に記載の回折光学素子の製造方法において、透明基板上に配列形成される各分割接着剤層の形状は「接着される有機材料膜片の形状と同じである」ことができる(請求項22)。この場合、有機材料膜片の形状が分割接着剤層の形状と同じであるとは、必ずしも「合同的な同一」のみでなく、後述する実施例の場合にように「互いに相似的」であってもよく、互いに相似的である場合には、有機材料膜片の大きさが分割接着剤層の大きさよりも、大きくても小さくても良い。
【0051】
請求項19〜22の任意の1に記載の回折光学素子の製造方法において、各有機材料膜片は「透明基板の接着面に予め配列形成された分割接着剤層上に載置されて接着される」ことができる(請求項23)。この場合、透明基板上に予め形成される分割接着剤層の配列は「透明基板への印刷」することができる(請求項24)。
【0052】
この請求項24記載の回折光学素子の製造方法において、透明基板上に印刷により形成された各分割接着剤層は「印刷後の放置により、層厚を均一化」することができ(請求項25)、その場合、各分割接着剤層の層厚を均一化する放置期間内に「各分割接着剤層を加熱」することができる(請求項26)。
【0053】
あるいは、透明基板への印刷により形成された分割接着剤層上に載置された有機材料膜片の配列に対してローラを走行させて、各分割接着剤層と有機材料膜片との総合厚み(分割接着剤層の厚みと、有機材料膜片の厚みの和)を均一化することもできる(請求項27)。
【0054】
上記請求項24〜27の任意の1に記載の回折光学素子の製造方法において、分割接着剤層の配列を「窒素雰囲気中において透明基板へ印刷形成」することができる(請求項28)。
【0055】
請求項29記載の回折光学素子は「上記請求項19〜28の任意の1に記載の回折光学素子の製造方法で製造される回折光学素子」である。
【0056】
付言すると、上記請求項19〜28の任意の1に記載の製造方法においても、互いに分割して透明基板に接着される有機材料膜片にn(≧1)×m(≧1)個の回折格子を形成することができ、複数の回折格子を格子配列状に形成された有機材料膜上から、各回折格子における回折格子の凹部に、光学的に透明な材料を充填して、オーバコート層とすることができる。
【0057】
そして、オーバコート層の形成を行う場合には、オーバコート層上に、透明な対向基板を一体化した後、分離工程を行うことができ、「有機材料膜を有機複屈折膜とし、オーバコート層を有機複屈折膜の常光線に対する屈折率もしくは異常光線に対する屈折率と実質的に等しい屈折率を持つ等方性光学材料とする」ことができる。
【0058】
上記有機複屈折膜は「分子鎖が配向した高分子複屈折膜」用いることができ、この場合「有機複屈折膜として用いられる高分子複屈折膜が、延伸により分子鎖を配向させた高分子膜」あることができる。「有機複屈折膜の常光線に対する屈折率もしくは異常光線に対する屈折率と実質的に等しい屈折率を持つ等方性光学材料」であるオーバコート層の材料は「アクリル系もしくはエポキシ系の材料」であることができる。
【0059】
請求項29記載の回折光学素子も「偏光ホログラム素子」として構成でき、オーバコート層の材料をアクリル系もしくはエポキシ系の材料とすることができ、有機複屈折膜を接着された透明基板に反射防止膜を形成することもできる。
【0060】
また、請求項29記載の回折光学素子を「偏光ホログラム素子」として構成する場合、この回折光学素子を、光源側からの光束の光路と、光ディスクからの戻り光束の光路とを光路分離する偏光ホログラム素子として用いて請求項17記載の光ピックアップ装置と同様の光ピックアップ装置を構成でき、このような光ピックアップ装置を用いて、請求項18記載の光ディスクドライブ装置と同様の光ディスクドライブ装置を構成することができることは勿論である。
【0061】
【発明の実施の形態】
以下、実施の形態を具体的な実施例に即して説明するが、この発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0062】
【実施例】
実施例1
図1に示すように、透明基板10として、BK−7ガラスによる、厚さ:1.0mm、直径:φ=100mmの円板状のものを用意し、その片面(有機材料膜を接着する側の面)に、スピンコート装置を用いて粘度:500cp〜1000cpの「エポキシ樹脂系(透明基板と略同一の屈折率を持つ)」の紫外線硬化型接着剤を3ml滴下し、回転数:300rpmで300秒回転して紫外線硬化型接着剤を透明基板10の片面全体に塗り広げ、更に、回転数を300rpmから増加し、回転数:400rpmで300秒保持して紫外線硬化型接着剤による厚さ:35μmの接着剤層を形成した。
【0063】
「有機材料膜」として、延伸により分子鎖を配向させて複屈折性を発現させたポリエチレンテレフタレート(PET)による、厚さ:100μmの「有機複屈折膜」を用意し、この有機材料膜を「1辺が5mmの正方形形状」に分割した。
このようにして得られた「有機材料膜片」を、透明基板1上の接着剤層の形成された面の上に、図1に示す如く「格子配列状」に手作業で載置した。図1において、符号21が個々の「有機材料膜片」を示している。
【0064】
次いで、図1の状態のものを真空容器中の「減圧下」で、即ち、雰囲気を133Pa程度まで減圧した状態で接着剤と有機材料膜片21とを一体化して気泡を除去した後、真空容器内を大気圧に戻し、図示されない「紫外線照射装置」で紫外線硬化型接着剤に紫外光を照射した後、100℃の温度で10分間ベーキングを行ない、接着層を完全に硬化させた。この時、接着層に気泡の混入は全く見られなかった。
【0065】
図2は、このようにして有機材料膜片21を透明基板10上に接着した状態を模式的な部分図で示している。符号11は接着剤層を示している。図2に示すように、上記接着工程の際に、接着剤11Aが、個々の有機材料膜片21の周端部を囲繞するように回り込み、有機材料膜片21を「より強力」に透明基板10に貼り付ける。
【0066】
図3(a)は、上記の如く、透明基板10上に接着剤層11により(有機材料膜片21の集合状態として)有機材料膜20を接着した状態を模式的に示している。このような接着状態を実現した後、有機材料膜20上にフォトリソグラフィにより、フォトレジストの周期パターン(3.0μmピッチ)を複数個形成した後、その上にAl膜を真空蒸着法で形成し、リフトオフ法を用いてAlによるマスクパターンMを形成した(図3(b))。マスクパターンMの材料として、ここではAlを用いているが、例えばCr、Ni等の他の金属を用いても良い。
【0067】
図4(a)は、個々の有機材料膜片21上にマスクパターンMが形成された状態を示している。
【0068】
図3に戻ると、上記マスクパターンMをマスクとしてドライエッチングを行ない、さらにマスクパターンを構成するAlを除去し、各有機材料膜21に、断面が矩形形状の凹凸格子による回折格子RLを形成した(図3(c))。図4(b)は、個々の有機材料膜片21に回折格子RLが形成された状態を示している。
【0069】
回折格子RLが形成されている有機材料膜の上から、オーバコート層となるアクリル系の紫外線硬化型樹脂(有機材料膜20に発現している複屈折性の「常光線に対する屈折率」と略同一の屈折率を有する)をボッティングし、その上から、BK−7ガラスによる厚さ:500μmの透明な対向基板をのせて適度に加圧し、回折格子の凹部内にオーバコート剤を充填した。対向基板を介して紫外光を照射後、100℃の温度で10分間ベーキングを行ない完全に硬化させた。この状態を図3(d)に示す。符号13が(アクリル系の紫外線硬化型樹脂による)オーバコート層を示し、符号15が「透明な対向基板」を示す。
【0070】
最後に、図示されないダイシング装置により、図3(e)に示す切断面CSにそって切断を行ない、5.0mm×5.0mmサイズのチップに切断し、図5に示すような回折光学素子を多数子個作製した。
【0071】
このようにして得られた各回折光学素子は「偏光ホログラム素子」として使用できる。得られた個々の回折光学素子は何れも気泡の混入が無く、有機材料膜の熱収縮による「透明基板の反り」の光学特性への影響もなかった。
【0072】
なお、実施例1において、透明基板上に滴下する紫外線硬化型接着剤の滴下量は10ml程度まで増量しても良い。また、各有機材料膜片は「1辺が5mmの正方形形状」で小さいので、透明基板1上の接着剤層の形成された面の上に載置する際に接着剤層への気泡は混入し難く、有機材料膜片の載置後に「雰囲気を133Pa程度まで減圧した状態で接着剤と有機材料膜片21とを一体化して気泡を除去」する作業は省略可能である。
【0073】
実施例2
透明基板に厚さ:1.0mm、直径:φ=100mmのBK−7ガラス板による円板形状の透明基板を用い、実施例1と同様の方法により、厚さ:100μmで、1辺が20mmの正方形形状の有機材料膜片(延伸により分子鎖を配向させて複屈折性を発現させたポリエチレンテレフタレートの膜片)を透明基板上に接着した。
【0074】
接着された各有機材料膜片と透明基板との間の接着剤層に「気泡の混入」は見られなかった。その後、実施例1と同様(回折格子は、各有機材料膜片ごとに16個形成した)にして、回折光学素子を得た。
このようにして得られた各回折光学素子は「偏光ホログラム素子」として使用できる。得られた個々の回折光学素子は何れも気泡の混入が無く、有機材料膜の熱収縮による「透明基板の反り」の光学特性への影響もなかった。
【0075】
比較例
透明基板に厚さ:1.0mm、直径:φ=100mmのBK−7ガラス板による円板形状の透明基板を用い、実施例1と同様の方法により、厚さ:100μmで、1辺が30mmの正方形形状の有機材料膜片(延伸により分子鎖を配向させて複屈折性を発現させたポリエチレンテレフタレートの膜片)を透明基板上に接着した。
【0076】
いくつかの有機材料膜片と透明基板との間の接着剤層に「気泡の混入」がみられた。その後、実施例1と同様(回折格子は、各有機材料膜片ごとに36個形成した)にして、回折光学素子を得た。
このようにして得られた多数の回折光学素子のうちには、気泡の混入により狙い通りの光学特性を発揮できないものが一部存在し、有機材料膜の熱収縮による反りの影響で光学特性の劣化したものも若干存在した。即ち、実施例1、2の場合に比して回折光学素子の製造の歩留まりが低下した。
【0077】
上記のように、実施例1、2で実施した「回折光学素子の製造方法」は、透明基板10上に有機材料膜20を接着固定する有機材料膜接着工程(図1、図2および図3(a))と、透明基板10上に接着固定された有機材料膜20に、断面が矩形状の凹凸による回折格子RLを複数個、格子配列状に形成する回折格子形成工程(図3(b)、(c)、図4(a)、(b))と、格子配列状に形成された複数の回折格子RLを個別的に分離する分離工程(図3(e))とを有する回折光学素子の製造方法において、有機材料膜接着工程の際に、有機材料膜20を、それぞれが1以上の回折格子を形成されることになる有機材料膜片21に分割して、透明基板10への接着を行う(請求項1)ものである。
【0078】
また、互いに分割して透明基板10に接着される有機材料膜片21の大きさが、透明基板10上への接着の際に気泡が巻き込まれない大きさ(実施例1において5mm×5mm、実施例2において20mm×20mm)で(請求項2)、また、有機材料膜片21の熱収縮が透明基板10を実質的に反らせないような大きさである(請求項3)。
【0079】
また、互いに分割して透明基板10に接着される有機材料膜片21に、n=m=1で1個(実施例1)、n=m=4で16個(実施例2)の回折格子が形成され(請求項4)、各有機材料膜片21は、透明基板10の接着面に予め形成された接着剤層11上に載置されて接着され(請求項5)、接着剤層11は、回転による遠心力により層厚を均一化されている(請求項6)。
【0080】
また、複数の回折格子RLを格子配列状に形成された有機材料膜20上から、各回折格子RLにおける回折格子の凹部に、光学的に透明な材料が充填されてオーバコート層13となり(請求項7)、オーバコート層13上に、透明な対向基板15を一体化した後、分離工程が行われる(請求項8)。
【0081】
有機材料膜20は有機複屈折膜であり、オーバコート層13は有機複屈折膜の常光線に対する屈折率と実質的に等しい屈折率を持つ等方性光学材料であり(請求項9)、有機複屈折膜(有機材料膜20)は、分子鎖が配向した高分子複屈折膜であり(請求項10)、かつ「延伸により分子鎖を配向させた高分子膜」である(請求項11)。また、オーバコート層13の材料は「アクリル系の材料」である(請求項12)。
【0082】
従って、実施例1、2で作製した回折光学素子は、請求項13記載の回折光学素子の実施の1形態であり、「偏光ホログラム素子」として使用され(請求項14)、オーバコート層13の材料がアクリル系の材料である(請求項15)。
【0083】
図5に示すように、有機複屈折膜21を接着された透明基板10に反射防止膜Hを形成することができる(請求項16)。反射防止膜Hは、透明基板10に当初(有機材料膜20を接着する段階)から形成しておいてもよいし、あるいは分離工程を実行する前に形成してもよい。
【0084】
なお、図3(c)、図4(b)に示した「各有機材料膜片21上に回折格子RLが形成されたもの」において、各回折格子部分は、それ自体で「回折光学素子としての機能(透過光を回折させる機能)」を有するので、これをそのまま回折光学素子として使用することもできる。
【0085】
しかし、回折格子の形成された有機材料膜は必ずしも十分な「物理的強度」を持つ訳ではないので、このまま使用するよりは、図3(d)に示すようにオーバコート層13を形成して補強を行うのが良く、更に、オーバコート層13上に透明な対向基板15を一体化することが好ましい。
【0086】
取り扱いに幾分慎重を期するならば、図6に示すように、透明な対向基板15を用いずに、オーバコート層13を「保護膜を兼ねた表面層」とすることもできる。
【0087】
以下、請求項19以下の発明に関する実施例を挙げる。
【0088】
実施例3
図9に示すように、透明基板10として、BK−7ガラスによる、厚さ:1.0mm、直径:φ=100mmの円板状のものを用意し、その片面(有機材料膜を接着する側の面)に、スクリーン印刷装置を用い、粘度:1000cp〜2500cpの「エポキシ樹脂系(透明基板と略同一の屈折率を持つ)」の紫外線硬化型接着剤を、透明基板10の片面に「分割接着剤層11Bの配列」として印刷形成した。配列形成された個々の分割接着剤層11Bは「厚さ:40μm、1辺が4.6mmの正方形形状」である。
【0089】
印刷形成後の状態で5分間放置し、各分割接着剤層11B表面の「スクリーンメッシュに対応した凹凸」が平坦化するのを待って、予め用意した「延伸により分子鎖を配向させて複屈折性を発現させた厚さ:100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)を、1辺が4.8mmの正方形形状に分割したもの(有機複屈折膜)」を、有機材料膜片として、透明基板10上に形成された各分割接着剤層11Bの上に手作業(各有機材料膜片を真空吸着して分割接着剤層上に載置した)で載置した。
【0090】
図10は、有機材料膜片21を透明基板10上に接着した状態を模式的な部分図で示している。有機材料膜片21が分割接着剤層11B上に載置されるとき、分割接着剤層11Bは未だ固化しておらず、載置された有機材料膜片21の重みにより当初のサイズ(4.6mm四方)から、透明基板10上で広がって有機材料膜片11Bの周辺部を囲繞するように回り込み、有機材料膜片21を「より強力」に透明基板10に貼り付ける。接着された有機材料膜片21の配列は、図9に示す分割接着剤層11Bの配列パターンに倣ったものとなる。
【0091】
図11(a)は、上記の如く、透明基板10上に各分割接着剤層11Bにより有機材料膜片21を接着した状態を模式的に示している。実施例1に即して説明した図2、図3(a)では、透明基板10上に接着剤層11が連続して形成されているが、実施例3(図10、図11(a))においては、透明基板10に形成された各分割接着剤層11Bは「相互に分離」している。
【0092】
図11(a)に示す接着状態を実現した後、フォトリソグラフィにより、各有機材料膜片21上に「フォトレジストの周期パターン(3.0μmピッチ)」を1個づつ形成し、その上にAl膜を真空蒸着し、リフトオフ法を用いてAlによるマスクパターンMを形成した(図11(b))。マスクパターンMの材料として、Alを用いたが、他の金属、例えばCr、Ni等を用いても良い。
【0093】
図12(a)は、個々の有機材料膜片21上にマスクパターンMが形成された状態を示している。図12は、実施例1に関する図4に対応するものであるが、図4の場合と異なり、各有機材料膜21を接着する分割接着剤層11Bが互いに分離している。
【0094】
図11に戻ると、マスクパターンMをマスクとしてドライエッチングを行なったのち、マスクパターンMを構成するAlを除去し、各有機材料膜21に「断面形状が矩形形状」の凹凸格子による回折格子RLを形成した(図11(c))。
【0095】
図12(b)は、個々の有機材料膜片21に回折格子RLが形成された状態を示している。
【0096】
図11に戻って、回折格子RLが形成されている各有機材料膜片21の上から、オーバコート層13となる「アクリル系の紫外線硬化型樹脂(有機材料膜に発現している複屈折性の「常光線に対する屈折率」と略同一の屈折率を有する)」を滴下し、その上から、BK−7ガラスからなる厚さ:500μmの透明な対向基板15をのせて適度に加圧し、回折格子RLの凹部内にオーバコート剤を充填した。対向基板15を介して紫外光を照射後、100℃の温度で10分間ベーキングを行ない完全に硬化させた。この状態を図11(d)に示す。
【0097】
最後に、図示されないダイシング装置により、図11(e)に示す切断面CSに沿って切断を行ない「5.0mm×5.0mmサイズのチップ」として切断し、回折光学素子を多数個作製した。作製された個々の回折光学素子は、図5に示されたものと同様である。
【0098】
このようにして得られた各回折光学素子は「偏光ホログラム素子」として使用できる。得られた個々の回折光学素子は何れも気泡の混入が無く、有機材料膜の熱収縮による「透明基板の反り」の光学特性への影響もなかった。
【0099】
実施例4
実施例3と同様、透明基板10として、BK−7ガラスによる、厚さ:1.0mm、直径:φ=100mmの円板状のものを用意し、その片面(有機材料膜を接着する側の面)に、「フレキソ印刷装置」を用い、粘度:100cp〜1000cpの「エポキシ樹脂系(透明基板と略同一の屈折率を持つ)」の紫外線硬化型接着剤を透明基板の片面に「分割接着剤層11Bの配列」として印刷形成した。個々の分割接着剤層11Bは「厚さ:20μm、1辺が4.6mmの正方形形状」である。
【0100】
印刷直後の各分割接着剤層11Bの表面は、図13(a)に示すように、フレキソ印刷装置の転写ローラの溝に応じた「凹凸形状」となっている。実施例4において、分割接着剤層11Bを構成する紫外線効果型接着剤は上記の如く、粘度:100cp〜1000cpと、実施例3で用いたものに比して粘性が小さいので、図13(a)に示すように、ヒータ内蔵の加熱装置100を用いて加熱し、接着剤温度を30℃に保った状態で2分間静置し、転写ローラー溝に対応した凹凸を平坦化して、図13(b)に示す状態とした。
【0101】
その後、予め用意した実施例3におけると同じ有機材料膜片を、実施例3と同様にして各分割接着剤層11B上に載置した。
【0102】
その後、図14に示すように、透明基板移動装置(図示されず)により透明基板10を図の左方へ移動させ、ゴムローラ110により有機材料膜片21の表面を加圧し、透明基板10底面から有機材料膜片21表面までの高さを、高さ:Bから高さ:Aにして厚みの均一化をはかった。
【0103】
このようにして有機材料膜片21を透明基板10上に接着した状態は、模式的には、図10と同様である。
【0104】
そのあと、実施例3と同様に、フォトリソグラフィによるパターン形成、メタルマスク形成、ドライエッチングによる回折格子形成、オーバコート剤の充填、対向透明基板の設置、オーバコート剤硬化、ダイシング装置によるチップ化を行って、回折光学素子を得た。
【0105】
このようにして得られた各回折光学素子は「偏光ホログラム素子」として使用できる。得られた個々の回折光学素子は何れも気泡の混入が無く、有機材料膜の熱収縮による「透明基板の反り」の光学特性への影響もなかった。
【0106】
上記実施例3、4の変形例として、直径:φ=100mm、厚さ:1.0mmのBK−7ガラス板上に、20mm四方の分割接着剤層の配列パターンを形成し、同じく20mm四方の有機材料膜片を接着した。
【0107】
接着された各有機材料膜片と透明基板との間の分割接着剤層に「気泡の混入」は見られなかった。その後、実施例3と同様(回折格子は、各有機材料膜片ごとに16個形成した)にして、光学性能の良好な回折光学素子を得た。
【0108】
このようにして得られた各回折光学素子は「偏光ホログラム素子」として使用できる。得られた個々の回折光学素子は何れも気泡の混入が無く、有機材料膜の熱収縮による「透明基板の反り」の光学特性への影響もなかった。
【0109】
先に、実施例1、2に関する比較例と同様、透明基板に厚さ:1.0mm、直径:φ=100mmのBK−7ガラス板による円板形状の透明基板に、実施例3と同様の方法で「1辺が30mmの正方形形状の分割接着剤層」の配列を印刷形成し、各分割接着剤層上に、厚さ:100μmで「1辺が30mmの正方形形状の有機材料膜片」を接着した。以後、実施例3と同様のプロセスで得られた回折光学素子の一部には、有機材料膜片と透明基板との間の分割接着剤層に「気泡の混入」がみられ、実施例3、4の場合に比して製造の歩留まりが低下した。
【0110】
上記のように、実施例3、4で実施した「回折光学素子の製造方法」は、透明基板上に有機材料膜を接着固定する有機材料膜接着工程と、透明基板上に接着固定された有機材料膜に、断面が矩形状の凹凸による回折格子を複数個、格子配列状に形成する回折格子形成工程と、格子配列状に形成された複数の回折格子を個別的に分離する分離工程とを有する回折光学素子の製造方法において、有機材料膜接着工程の際に、有機材料膜を、それぞれが1以上の回折格子を形成されることになる有機材料膜片21に分割して、透明基板10への接着を行い、各有機材料膜片21を接着する接着剤層を、各有機材料膜片21の配列に対応させて分割した分割接着剤層11Bの配列として透明基板10上に形成する回折光学素子の製造方法(請求項19)である。
【0111】
また、実施例3、4の製造方法では、透明基板10上に配列形成される各分割接着剤層11Bの大きさが、透明基板10上への各有機材料膜片21の接着の際に気泡が巻き込まれない大きさであり(請求項20)、互いに分割して透明基板10に接着される有機材料膜片21の大きさが、有機材料膜片の熱収縮が、透明基板10を実質的に反らせないような大きさである(請求項21)。
【0112】
また、実施例3、4の製造方法とも、透明基板10上に配列形成される各分割接着剤層11Bの形状は「接着される有機材料膜片21の形状と同じ」であり(請求項22)、各有機材料膜片21は、透明基板10の接着面に予め配列形成された分割接着剤層上に載置されて接着される(請求項23)。
【0113】
さらに、実施例3、4の製造方法とも、分割接着剤層11Bの配列が「透明基板10への印刷」により形成され(請求項24)、印刷形成された分割接着剤層の配列における各分割接着剤層11Bは、実施例3においては「印刷後の放置により、層厚を均一化」され(請求項25)、実施例4においては「各分割接着剤層の層厚を均一化する放置期間内」に、各分割接着剤層が加熱され(請求項26)、
透明基板10への印刷により形成された分割接着剤層11B上に載置された有機材料膜片21の配列に対してローラ110を走行させて、各分割接着剤層と有機材料膜片との厚さを均一化している(請求項27)。
【0114】
なお、実施例3、4とも、分割接着剤層の配列は「窒素雰囲気中において透明基板へ印刷形成」することにより行った(請求項28)。
【0115】
実施例3、4の製造方法により得られる回折光学素子においても、図5に示すように、有機複屈折膜21を接着された透明基板10に反射防止膜Hを形成することができる。反射防止膜Hは、透明基板10に当初(有機材料膜20を接着する段階)から形成しておいてもよいし、あるいは分離工程を実行する前に形成してもよい。
【0116】
上記実施例3、4の製造方法で製造される回折光学素子は、請求項29記載の回折光学素子である。
【0117】
なお、図3(c)、図4(b)、図12(b)に示した「各有機材料膜片21上に回折格子RLが形成されたもの」において、各回折格子部分は、それ自体で「回折光学素子としての機能(透過光を回折させる機能)」を有するので、これをそのまま回折光学素子として使用することもできる。
【0118】
しかし、回折格子の形成された有機材料膜は必ずしも十分な「物理的強度」を持つ訳ではないので、このまま使用するよりは、図3(d)に示すようにオーバコート層13を形成して補強を行うのが良く、更に、オーバコート層13上に透明な対向基板15を一体化することが好ましい。
【0119】
取り扱いに幾分慎重を期するならば、図6に示すように、透明な対向基板15を用いずに、オーバコート層13を「保護膜を兼ねた表面層」とすることもできる。
【0120】
【発明の実施の形態】
図7は、この発明の光ピックアップ装置の実施の1形態を示す図である。
光ピックアップ装置は、光源30から放射される光を対物レンズ37により光ディスク40の記録面上に光スポットとして集光し、記録面により反射された戻り光束を、対物レンズ37を介して光検出部39へ導きつつ、光ディスク40に対し、情報の記録・再生・消去の1以上を行う光ピックアップ装置であり、光源30と対物レンズ37との間に回折光学素子31が配置されている。
回折光学素子31は図5に示す如きものである。
【0121】
図7の光ピックアップ装置では、光源30である半導体レーザからの光が回折光学素子31を透過する。回折光学素子31は有機材料膜が有機複屈折膜のものであり「偏光ホログラム素子」として用いられ、光源側からの光はそのまま回折光学素子31を透過し、さらに、1/4波長板35を透過し、対物レンズ37の作用により、光ディスク40の記録面上に光スポットとして集光する。
【0122】
記録面により反射された光は「戻り光束」となって対物レンズ37、1/4波長板35を透過し、偏光面が当初の方向から90度旋回した直線偏光となり、回折光学素子31に入射し、回折光学素子31による回折作用を受けて光検出部39へ向けて偏向される。このとき、戻り光束には回折光学素子31により、例えば非点収差が与えられ、この光束は光検出部39で受光され、非点収差法によるフォーカシング信号、プッシュプル法によるトラッキング信号や再生信号を発生させる。
【0123】
即ち、図7の光ピックアップ装置は、請求項15あるいは16記載の回折光学素子を、光源30側からの光束の光路と、光ディスク40からの戻り光束の光路とを光路分離する偏光ホログラム素子31として用いたもの(請求項17)である。
【0124】
図8は、光ディスクドライブ装置の実施の1形態を示す図である。
この光ディスクドライブ装置は、光ディスク40に対し、光ピックアップ装置41を用いて情報の記録・再生・消去の1以上を行う装置である。
【0125】
光ディスク40は保持部47に保持され、「駆動手段」としてのモータMtで回転駆動される。セットされた光ディスク40に対し光ピックアップ装置41が、変位駆動手段43により光ディスク40の半径方向へ変位駆動されて記録・再生・消去の1以上を行う。制御手段45は、光ピックアップ装置41からの信号に基づく各種制御や再生信号の出力を制御するほか、装置全体の制御を行う。
【0126】
即ち、図8の光ディスクドライブ装置は、光ディスク40に対し、光ピックアップ装置41を用いて情報の記録・再生・消去の1以上を行う光ディスクドライブ装置において、光ピックアップ装置として、例えば図7に示すような、請求項17記載のものを用いたもの(請求項18)である。
【0127】
図7に示した光ピックアップ装置における偏光ホログラム素子31として、実施例3、4の製造方法により製造された回折光学素子を用いることができ、この光ピックアップ装置を、図8の光ディスクドライブ装置に用いることができる。
【0128】
【発明の効果】
以上に説明したように、この発明によれば、回折光学素子およびその製造方法および光ピックアップ装置および光ディスクドライブ装置を実現できる。
【0129】
この発明の回折光学素子の製造方法では、透明基板に接着する有機材料膜を、有機材料膜片に分割して接着を行うので、接着の際の気泡の巻き込み及び/または透明基板の反りの光学特性への影響を有効に防止することができ、所望の光学特性をもった回折光学素子を歩留まりよく製造できる。
【0130】
また、請求項19〜28記載の発明では、有機材料膜片を接着する接着剤も、分割接着剤層に分割されて配列され、接着の際の気泡の巻き込み及び/または透明基板の反りの光学特性への影響を有効に防止することができ、所望の光学特性をもった回折光学素子を歩留まりよく製造できる。
【0131】
従って、この発明の回折光学素子は製造の歩留まりよく製造できる。
このような回折光学素子を偏光ホログラム素子として用いる光ピックアップ装置は、良好な光ピックアップ機能を実現でき、このような光ピックアップ装置を用いる光ディスクドライブ装置は性能良好である。
【図面の簡単な説明】
【図1】透明基板への有機材料膜片の接着を説明するための図である。
【図2】透明基板への有機材料膜片の接着を説明するための図である。
【図3】回折光学素子の製造プロセスの、有機材料膜片の透明基板への接着以後のプロセスを説明するための図である。
【図4】図3(b)、(c)における状態を、有機材料膜片について拡大して模式的に示す説明図である。
【図5】回折光学素子の実施の1形態を示す図である。
【図6】回折光学素子の実施の別形態を示す図である。
【図7】光ピックアップ装置の実施の1形態を説明するための図である。
【図8】光ディスクドライブ装置の実施の1形態を説明するための図である。
【図9】透明基板へ分割接着剤層の配列を形成した状態を説明するための図である。
【図10】分割接着剤層に有機材料膜片を接着させた状態を説明するための図である。
【図11】請求項19記載の回折光学素子の製造方法における、有機材料膜片の透明基板への接着以後のプロセスを説明するための図である。
【図12】図11(b)、(c)における状態を、分割接着剤装置と有機材料膜片の1組について拡大して模式的に示す説明図である。
【図13】透明基板に印刷形成された分割接着剤層の表面の平坦化を説明するための図である。
【図14】請求項27記載の発明を説明するための図である。
【符号の説明】
10 透明基板
11 接着剤層
11B 分割接着剤層
21 有機材料膜片
Claims (29)
- 透明基板上に有機材料膜を接着固定する有機材料膜接着工程と、
上記透明基板上に接着固定された上記有機材料膜に、断面が矩形状の凹凸による回折格子を複数個、格子配列状に形成する回折格子形成工程と、
格子配列状に形成された複数の回折格子を個別的に分離する分離工程とを有する回折光学素子の製造方法において、
有機材料膜接着工程の際に、有機材料膜を、それぞれが1以上の回折格子を形成されることになる有機材料膜片に分割して、透明基板への接着を行うことを特徴とする回折光学素子の製造方法。 - 請求項1記載の回折光学素子の製造方法において、
互いに分割して透明基板に接着される有機材料膜片の大きさが、上記透明基板上への接着の際に気泡が巻き込まれない大きさであることを特徴とする回折光学素子の製造方法。 - 請求項1または2記載の回折光学素子の製造法方法において、
互いに分割して透明基板に接着される有機材料膜片の大きさを、有機材料膜片の熱収縮が上記透明基板を実質的に反らせないような大きさとしたことを特徴とする回折光学素子の製造方法。 - 請求項2または3記載の回折光学素子の製造方法において、
互いに分割して透明基板に接着される有機材料膜片にn(≧1)×m(≧1)個の回折格子が形成されることを特徴とする回折光学素子の製造方法。 - 請求項1〜4の任意の1に記載の回折格子の製造方法において、
各有機材料膜片は、透明基板の接着面に予め形成された接着剤層上に載置されて接着されることを特徴とする回折光学素子の製造方法。 - 請求項5記載の回折光学素子の製造方法において、
透明基板の接着面に予め形成される接着剤層は、回転による遠心力により層厚を均一化されることを特徴とする回折光学素子の製造方法。 - 請求項1〜6の任意の1に記載の回折光学素子の製造方法において、
複数の回折格子を格子配列状に形成された有機材料膜上から、各回折格子における回折格子の凹部に、光学的に透明な材料を充填して、オーバコート層とすることを特徴とする回折光学素子の製造方法。 - 請求項7記載の回折光学素子の製造方法において、
オーバコート層上に、透明な対向基板を一体化した後、分離工程を行うことを特徴とする回折光学素子の製造方法。 - 請求項7または8記載の回折光学素子の製造方法において、
有機材料膜が有機複屈折膜であり、オーバコート層が、上記有機複屈折膜の常光線に対する屈折率もしくは異常光線に対する屈折率と実質的に等しい屈折率を持つ等方性光学材料であることを特徴とする回折光学素子の製造方法。 - 請求項9記載の回折光学素子の製造方法において、
有機複屈折膜として、分子鎖が配向した高分子複屈折膜を用いることを特徴とする回折光学素子の製造方法。 - 請求項10記載の回折光学素子の製造方法において、
有機複屈折膜として用いられる高分子複屈折膜が、延伸により分子鎖を配向させた高分子膜であることを特徴とする回折光学素子の製造方法。 - 請求項7〜11の任意の1に記載の回折光学素子の製造方法において、
オーバコート層の材料がアクリル系もしくはエポキシ系の材料であることを特徴とする回折光学素子の製造方法。 - 請求項1〜12の任意の1に記載の回折光学素子の製造方法で製造される回折光学素子。
- 請求項13記載の回折光学素子において、
請求項9または10または11記載の回折光学素子の製造方法で製造され、偏光ホログラム素子として使用されることを特徴とする回折光学素子。 - 請求項14記載の回折光学素子において、
オーバコート層の材料がアクリル系もしくはエポキシ系の材料であることを特徴とする回折光学素子。 - 請求項14または15記載の回折光学素子において、
有機複屈折膜を接着された透明基板に反射防止膜を形成したことを特徴とする回折光学素子。 - 請求項14〜16の任意の1に記載の回折光学素子を、光源側からの光束の光路と、光ディスクからの戻り光束の光路とを光路分離する偏光ホログラム素子として用いたことを特徴とする光ピックアップ装置。
- 光ディスクに対し、光ピックアップ装置を用いて情報の記録・再生・消去の1以上を行う光ディスクドライブ装置において、
光ピックアップ装置として、請求項17記載のものを用いたことを特徴とする光ディスクドライブ装置。 - 透明基板上に有機材料膜を接着固定する有機材料膜接着工程と、
上記透明基板上に接着固定された上記有機材料膜に、断面が矩形状の凹凸による回折格子を複数個、格子配列状に形成する回折格子形成工程と、
格子配列状に形成された複数の回折格子を個別的に分離する分離工程とを有する回折光学素子の製造方法において、
有機材料膜接着工程の際に、有機材料膜を、それぞれが1以上の回折格子を形成されることになる有機材料膜片に分割して、透明基板への接着を行い、
上記各有機材料膜片を接着する接着剤層を、上記各有機材料膜片の配列に対応させて分割した分割接着剤層の配列として上記透明基板上に形成することを特徴とする回折光学素子の製造方法。 - 請求項19記載の回折光学素子の製造方法において、
透明基板上に配列形成される各分割接着剤層の大きさが、上記透明基板上への各有機材料膜片の接着の際に気泡が巻き込まれない大きさであることを特徴とする回折光学素子の製造方法。 - 請求項19または20記載の回折光学素子の製造方法において、
互いに分割して透明基板に接着される有機材料膜片の大きさが、有機材料膜片の熱収縮が、上記透明基板を実質的に反らせないような大きさであることを特徴とする回折光学素子の製造方法。 - 請求項19〜21の任意の1に記載の回折光学素子の製造方法において、
透明基板上に配列形成される各分割接着剤層の形状が、接着される有機材料膜片の形状と同じであることを特徴とする回折光学素子の製造方法。 - 請求項19〜22の任意の1に記載の回折光学素子の製造方法において、
各有機材料膜片は、透明基板の接着面に予め配列形成された分割接着剤層上に載置されて接着されることを特徴とする回折光学素子の製造方法。 - 請求項23記載の回折光学素子の製造方法において、
分割接着剤層の配列が、透明基板への印刷により形成されることを特徴とする回折光学素子の製造方法。 - 請求項24記載の回折光学素子の製造方法において、
透明基板上に印刷により形成された各分割接着剤層は、印刷後の放置により、層厚を均一化されることを特徴とする回折光学素子の製造方法。 - 請求項25記載の回折光学素子の製造方法において、
各分割接着剤層の層厚を均一化する放置期間内に、各分割接着剤層を加熱することを特徴とする回折光学素子の製造方法。 - 請求項24記載の回折光学素子の製造方法において、
透明基板への印刷により形成された分割接着剤層上に載置された有機材料膜片の配列に対してローラを走行させて、各分割接着剤層と有機材料膜片との総合厚みを均一化することを特徴とする回折光学素子の製造方法。 - 請求項24〜27の任意の1に記載の回折光学素子の製造方法において、
分割接着剤層の配列を、窒素雰囲気中において透明基板へ印刷形成することを特徴とする回折光学素子の製造方法。 - 請求項19〜28の任意の1に記載の回折光学素子の製造方法で製造される回折光学素子。
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