JP2004070043A - 二色回転粒子およびディスプレイ用表示シート - Google Patents
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Abstract
【課題】大きい双極子モーメントを有する二色回転粒子を提供し、さらには、該二色回転粒子を使用した、低駆動電界であっても印字品質の高い表示が可能な粒子回転型ディスプレイ用表示シートを提供すること
【解決手段】色相と帯電特性がともに異なる一対の半球からなる二色回転粒子の少なくともいずれか一方の半球に、電荷制御剤を添加することによって、誘電性液体中における各半球の表面電荷密度に大きな差を生じさせ、電界の印加によって該二色回転粒子に作用するクーロン力に起因した回転モーメントを高める。
【選択図】 なし。
【解決手段】色相と帯電特性がともに異なる一対の半球からなる二色回転粒子の少なくともいずれか一方の半球に、電荷制御剤を添加することによって、誘電性液体中における各半球の表面電荷密度に大きな差を生じさせ、電界の印加によって該二色回転粒子に作用するクーロン力に起因した回転モーメントを高める。
【選択図】 なし。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、粒子回転型ディスプレイに使用するための、色相と誘電性液体中における帯電特性がともに異なる二つの半球が境界面を接して球形形状を形成している二色回転粒子と、該二色回転粒子を使用した粒子回転型ディスプレイ用表示シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
反射型表示装置は表示のための照明を必要とせず、消費電力が少ないことから、近年、案内表示などの看板掲示、パーソナルコンピュータ用の一時出力表示、移動体通信装置や携帯端末用の表示、広告、電子書籍等の表示装置などの分野に、液晶ディスプレイを始め、電気泳動ディスプレイや粒子回転型ディスプレイなど多くの開発が試みられている。中でも、電気泳動ディスプレイや粒子回転型ディスプレイは、液晶ディスプレイのような偏光フィルムを使用しないので明るい画面を提供できる。特に、粒子回転型ディスプレイは、表示画像のメモリー機能を有し、表示のための駆動電圧に閾値を有することから単純マトリックスでも表示ができるなど、他の表示装置にはない利点を有している。
【0003】
粒子回転型ディスプレイは、色相と誘電性液体中における帯電特性がともに異なる二つの半球部分からなる球形粒子を誘電性液体中に浮遊させ、電界を印加することによって該球形粒子の向きを制御し、表示させるものである。粒子を誘電性液体に浸積した場合、粒子と液体の間で電荷の授受が行われ、固液界面に電荷二重層が形成され粒子表面が帯電する。したがって、誘電性液体中に浸積された球形粒子を構成する各半球部分が、互いに異なった表面電荷密度を有していれば該粒子内に双極子が形成され、外部から電界を印加することによって該粒子の向きを制御することができ、表示が可能となる。
【0004】
粒子回転型ディスプレイに関して、米国特許第5,262,098号明細書や、特開平6−226875号公報には、粒子回転型ディスプレイの主要構成部材である、色相と誘電性液体中における帯電特性がともに異なる一対の半球部分からなる二色回転粒子を回転ディスクを用いて製造する方法と、そのための装置、および該製造方法によって製造される二色回転粒子が記載されている。
【0005】
この方法によって製造される二色回転粒子は、色相と誘電性液体中における帯電特性がともに異なる一対の半球部分からなる球形粒子であり、各半球部分はいずれも顔料、熱可塑性の結着樹脂、および顔料の結着樹脂への分散性を向上させる目的で添加する界面活性剤等によって構成されている。このうち、熱可塑性の結着樹脂と界面活性剤については、両半球部分に同一のものが使用されているが、顔料については、半球部分の一方には黒色無機顔料である鉄黒またはカーボンブラックが使用され、他方の半球部分には白色無機顔料である酸化チタンが使用されている。一対の半球部分のそれぞれに異なった顔料を使用することで、該粒子を誘電性液体中に浸積した場合の各半球部分間の表面電荷密度に差が生じ、電界を印加することによって表示が可能となる。
【0006】
特開平11−175002号公報には、二色回転粒子の帯電特性の安定化を目的に、導電体または半導体を用いて各半球の帯電特性が異なるようにヘテロ界面を形成し、該ヘテロ界面で発生する層間分極電荷が各半球間を移動する構成をとることにより、二色回転粒子内に双極子が形成されると記載されている。
【0007】
また、特開平10−307552号公報には、回転粒子の少なくとも一方の半球表面を酸化物で構成し、この回転粒子を取り囲む溶媒のpHを、前記酸化物の等電点よりも酸性側にすることにより、前記酸化物半球表面を正極性に帯電させ、前記回転粒子の他方の半球表面に、前記溶媒のpHよりも酸性側の等電点の酸化物を用いるか、または負極性の帯電性を示す官能基を導入することにより、大きな電気双極子モーメントを発生させることができ、外部電界に対する応答性が良好になると記載されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前記米国特許第5,262,098号明細書や、特開平6−226875号公報に記載された二色回転粒子は、前述のように、該粒子を構成する二つの半球部分のそれぞれに異なる着色剤を含有させることによって、誘電性液体中における各半球の表面電荷密度に差を生じさせている。しかし、このようにして得られる表面電荷密度の差は一般に小さく、電界の印加によって該二色回転粒子に作用するクーロン力に起因した回転モーメントは小さいので、これを使用した粒子回転型ディスプレイにおいて良好な表示品質を得るためには、高い駆動電界が必要になるという問題点があった。
【0009】
また、特開平11−175002号公報に記載された、電気的に結合したヘテロ界面を形成させる二色回転粒子は、大きい双極子モーメントを有するものの、その材料構成が複雑であり、該二色回転粒子を容易に製造することは困難である。さらに、特開平10−307552号公報に記載された、回転粒子を構成する各半球表面の酸化物の等電点と、この回転粒子を取り囲む溶媒のpHを制御する方法においては、使用できる該回転粒子の原料や、回転粒子を取り囲む溶媒の種類が、きわめて特殊なものに限定されてしまうという問題点があった。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、複雑な製造工程を必要とせず、原料に制約を受けず、かつ、大きい双極子モーメントを有する二色回転粒子を提供し、さらには、該二色回転粒子を使用した、低駆動電界であっても印字品質の高い表示が可能な粒子回転型ディスプレイ用表示シートを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、色相、および誘電性液体中における帯電特性がともに異なる熱可塑性樹脂着色組成物(A)からなる半球と、熱可塑性樹脂着色組成物(B)からなる半球とが、互いに境界面を接して球形形状を形成している二色回転粒子の、熱可塑性樹脂着色組成物(A)または熱可塑性樹脂着色組成物(B)の少なくとも一方に電荷制御剤を添加することによって、誘電性液体中における各半球の表面電荷密度に大きな差を生じさせ、電界の印加によって該二色回転粒子に作用するクーロン力に起因した回転モーメントを高めるものである。
【0012】
さらに、本発明は、少なくとも片方が透明の電極層である対向電極層間に挟持されたシート状絶縁性透明樹脂マトリックス中に、誘電性液体と、これに浮遊して自由回転可能な上記二色回転粒子からなる液胞が分散した、低駆動電界であっても印字品質の高い表示が可能な粒子回転型ディスプレイ用表示シートを提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の二色回転粒子は、着色剤と熱可塑性樹脂とを含有する熱可塑性樹脂着色組成物(A)からなる半球と、前記着色剤とは色相の異なる着色剤と熱可塑性樹脂とを含有する熱可塑性樹脂着色組成物(B)からなる半球とが、互いに境界面を接して球形形状を形成している粒子である。さらに、熱可塑性樹脂着色組成物(A)もしくは熱可塑性樹脂着色組成物(B)のいずれか一方が、電荷制御剤を含有するか、または、前記両熱可塑性樹脂着色組成物のいずれか一方が正極性帯電特性を有する電荷制御剤を含有し、他方が負極性帯電特性を有する電荷制御剤を含有する。
【0014】
熱可塑性樹脂着色組成物(A)および(B)に使用する着色剤としては、公知慣用の顔料や染料を使用することができる。
顔料としては、たとえば、アゾ系顔料、ポリ縮合アゾ系顔料、メタルコンプレックスアゾ系顔料、フラバンスロン系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、アントラピリジン系顔料、ピランスロン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、チオインジゴ系顔料、インダンスレン系顔料等の有機顔料、亜鉛華、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、アンチモン白、カーボンブラック、鉄黒、硼化チタン、ベンガラ、マピコイエロー、鉛丹、カドミウムイエロー、硫化亜鉛、リトポン、硫化バリウム、セレン化カドミウム、硫酸バリウム、クロム酸鉛、硫酸鉛、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、鉛白、アルミナホワイト等の無機顔料が挙げられる。
染料としては、たとえば、ニグロシン系染料、フタロシアニン系染料、アゾ系染料、アントラキノン系染料、キノフタロン系染料、メチン系染料等が挙げられる。
【0015】
本発明においては、上記顔料または染料を単独で使用することも、二種類以上の顔料若しくは染料を混合して使用することもでき、さらに顔料と染料を混合して使用することもできる。熱可塑性樹脂着色組成物(A)および熱可塑性樹脂着色組成物(B)に添加する着色剤は、上記顔料もしくは染料の中から、それぞれ色相の異なる着色剤を適宜選択すればよい。
熱可塑性樹脂着色組成物(A)および熱可塑性樹脂着色組成物(B)への着色剤の添加量は、熱可塑性樹脂着色組成物(A)または熱可塑性樹脂着色組成物(B)に対して、2〜50質量%とするのが好ましく、2〜30質量%であればなお好ましい。
【0016】
熱可塑性樹脂着色組成物(A)および(B)に使用する熱可塑性樹脂は、公知慣用の熱可塑性の天然樹脂や合成樹脂を使用することができる。具体的には、たとえば、ロジン、ロジンのペンタエリスリトールエステル、ダンマル、セラック、コーパル等の天然樹脂や、アクリル系樹脂、ポリスチレン、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、マレイン酸樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、石油樹脂、熱可塑性ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂が挙げられる。これらの他に、熱可塑性樹脂着色組成物の熱可塑性を損なわない範囲内で、ニトロセルロース、セルロースアセテート、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム、エステルゴム等を添加することもできる。上記樹脂類は、単独もしくは二種類以上を混合して用いることができる。
【0017】
本発明において、熱可塑性樹脂着色組成物(A)および(B)に使用する熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、60〜200℃の範囲にあるのが好ましい。60℃未満であると得られる二色回転粒子の耐熱性が低いものとなり、また、200℃を超えると、加熱処理による二色回転粒子の球形化工程を採用した場合に、二色回転粒子中に含有される着色剤、熱可塑性樹脂、あるいは電荷制御剤などが熱分解する恐れが生じる上、エネルギーコストおよび製造設備面で不利になるためである。
【0018】
前述したように、一般に液体中の粒子は、粒子と液体の間で電荷の授受が行われて、固液界面に電荷二重層が形成され、粒子は正または負に帯電する。たとえば、熱可塑性樹脂着色組成物(A)と熱可塑性樹脂着色組成物(B)両者に、それぞれ異なる着色剤あるいは異なる熱可塑性樹脂を配合するだけで、誘電性液体中における表面電荷密度に差をもたせることができる。つまり、熱可塑性樹脂着色組成物(A)と熱可塑性樹脂着色組成物(B)のいずれか一方が、他方と異なった成分を含有することで、その表面電荷密度には差が発生する。
しかしながら、誘電性液体中の二色回転粒子に電界を印加して、より大きい回転モーメントを与えるためには、熱可塑性樹脂着色組成物(A)と熱可塑性樹脂着色組成物(B)の帯電特性の差をできるだけ大きくする必要がある。
【0019】
ここで、帯電特性に差があるということは、表面電荷密度の差が0でないことを意味する。すなわち、熱可塑性樹脂着色組成物(A)の誘電性液体中における表面電荷密度がプラスd(C/m2)であり、熱可塑性樹脂着色組成物(B)の誘電性液体中における表面電荷密度がマイナスd(C/m2)である場合、熱可塑性樹脂着色組成物(A)と熱可塑性樹脂着色組成物(B)の誘電性液体中における帯電特性の差は2d(C/m2)ということになる。熱可塑性樹脂着色組成物(A)と熱可塑性樹脂着色組成物(B)の誘電性液体中における表面電荷密度の極性は必ずしも異なっている必要はなく、極性が同じであっても両者間の表面電荷密度が異なっていればよい。
【0020】
本発明においては、二色回転粒子を構成する一対の半球間における帯電特性の差を大きくする目的で、前記熱可塑性樹脂着色組成物(A)および(B)の少なくとも一方に電荷制御剤を添加する。
電荷制御剤には、非金属系電荷制御剤と金属系電荷制御剤がある。粒子回転型ディスプレイの表示応答速度を速めるためには、使用する二色回転粒子の慣性モーメントをできるだけ小さくする必要がある。また、誘電性液体中で二色回転粒子を滑らかに回転させるためには、二色回転粒子の重心が球心にあるのが好ましい。これらの理由から、本発明においては、比重の小さい非金属系電荷制御剤を使用するのが好ましい。
【0021】
非金属系電荷制御剤としては、たとえば、第4級アンモニウム塩、ロザニリン化合物、レシチン、アルキルサクシンイミド、カリックスアレン、またはアジン化合物などが挙げられる。これらの中でも、カリックスアレンは、π−電子をもつ複数のベンゼン環が規則的に配列した環構造を有しており、アジン化合物は、分子内に電子密度の高い窒素原子(−N=)を有しているので高い電荷制御機能を示し、これらを電荷制御剤として添加した二色回転粒子の帯電の立ち上がりが特に良好である。また、カリックスアレンおよびアジン化合物は、比重が小さいという特徴を有しており、本発明に好適に使用することができる。
【0022】
本発明において好適に使用できるカリックスアレンの代表的な例としては、下記一般式(1)で表されるカリックスアレンを挙げることができる。
【0023】
【化1】
(1)
【0024】
(式中、XおよびYは、それぞれ1〜7の整数であり、X+Yは4〜8である。
R1およびR11は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、または−(CH2)mCOOR10(ここで、R10は水素原子または低級アルキル基を表し、mは1〜3の整数である。)を表す。R2は、水素原子、ハロゲン原子、枝分かれがあっても良い炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル基、ニトロ基、アミノ基、−N(R7)2(ここで、R7は低級アルキル基を表す。)、スルホ基、置換基を有しても良いフェニル基、または−Si(CH3)3を表す。R3およびR4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基、アミノ基、または−N(R9)2(ここで、R9は低級アルキル基を表す。)を表す。R5は、水素原子、または炭素数1〜3のアルキル基を表す。R12は、水素原子、ハロゲン原子、枝分かれがあっても良い炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル基、ニトロ基、アミノ基、−N(R17)2(ここで、R17は低級アルキル基を表す。)、スルホ基、置換基を有しても良いフェニル基、または−Si(CH3)3を表す。R13およびR14は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基、アミノ基、または−N(R19)2(ここで、R19は低級アルキル基を表す。)を表す。R15は、水素原子、または炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
【0025】
上記カリックスアレンは、負極性の帯電特性を示す。白色を呈し、比重が1未満であることから、比重調整剤や白色の着色剤に兼用することもできる。
【0026】
本発明に電荷制御剤として好適に使用できるアジン化合物としては、たとえば、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オルトオキサジン、メタオキサジン、パラオキサジン、オルトチアジン、メタチアジン、パラチアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリンなどが挙げられる。
【0027】
また、着色剤としても兼用できるアジン化合物としては、たとえば、アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリーンBH/C、アジンディープブラックEWおよびアジンディープブラック3RL、ニグロシン、ニグロシン塩、ニグロシン誘導体などのアジン系染料が挙げられる。中でも、ニグロシン類は黒色の着色剤としても有用である。
これらの外にも、ドデシルベンゼンスルホン酸など樹脂酸変性アジン化合物などを使用することもできる。
上記アジン化合物は、正極性の帯電特性を示し、カリックスアレンと同様に比重が1未満であることから、比重調整剤に兼用することもできる。
【0028】
熱可塑性樹脂着色組成物(A)または熱可塑性樹脂着色組成物(B)への、上記非金属系電荷制御剤の配合量は、熱可塑性樹脂着色組成物(A)または熱可塑性樹脂着色組成物(B)に対して、0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜7質量%とするのが好ましい。0.1質量%より少ないと、充分な帯電特性が得られず、また10質量%より多いと、かえって帯電特性が悪化する。
【0029】
本発明には、上記非金属系電荷制御剤ばかりではなく、クロム、鉄、亜鉛、アルミニウムなどの金属を含有するサリチル酸系金属錯体、含金属アゾ化合物などを使用することもできる。特にサリチル酸系金属錯体はπ−電子の大きな共役系を形成しているので、高い電荷制御機能を示し、好ましく用いることができる。金属系電荷制御剤には比重の大きいものが多いので、熱可塑性樹脂着色組成物(A)または熱可塑性樹脂着色組成物(B)のいずれかに比重の大きい電荷制御剤を添加した場合には、必要に応じて他方に、マグネタイト、ヘマタイト、硼化チタン、酸化チタン、炭酸バリウム、炭酸カルシウムなどを比重調整剤として添加するとよい。比重調整剤として用いる微粒子の比重は、3〜6が好ましく、粒子径は0.01〜1μmが好ましい。ただし、比重を小さくするためには、前記カリックスアレンやアジン化合物など比重の小さな化合物を比重調整剤として使用することもできる。
一般には、二色回転粒子の重心は球心にあるのが好ましいが、特殊な駆動方式を採用して意図的に重心を偏心させたい場合は、半球のいずれかに比重調整剤を添加すればよい。
【0030】
本発明においては、熱可塑性樹脂着色組成物(A)または熱可塑性樹脂着色組成物(B)のいずれかに電荷制御剤を添加すればよいが、両熱可塑性樹脂着色組成物に、それぞれ異なった極性の帯電特性を示す電荷制御剤を添加することによって、熱可塑性樹脂着色組成物(A)と熱可塑性樹脂着色組成物(B)の誘電性液体中における帯電特性の差を最大限に大きくすることもできる。
【0031】
本発明に使用する熱可塑性樹脂着色組成物(A)および熱可塑性樹脂着色組成物(B)は、いずれも上記した、着色剤、熱可塑性樹脂、および電荷制御剤に、必要に応じて、比重調整剤、分散剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、離型剤など、公知慣用の添加剤を加え、ニーダー、ロールミル、あるいは混練押出機などを使用して溶融混練するか、溶剤を加えて分散攪拌機やビーズミルなどを使用して調製することができる。
【0032】
溶剤としては、たとえば、ミネラルスピリットなどの脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレン、#150ソルベントなどの芳香族炭化水素類、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどのアルコール類、酢酸−n−ブチルなどのエステル類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコールエステル類およびグリコールエーテルエステル類など、インキや塗料に広く使用されている溶剤を挙げることができる。これらの溶剤は単独で用いてもよいし、2種類以上混合して使用してもよい。
【0033】
次に、本発明における二色回転粒子の製造方法について説明する。
本発明の二色回転粒子は、前記米国特許第5,262,098号明細書や、特開平6−226875号公報に記載された公知の方法に準じて製造することができるが、ここでは、粒子径の揃った二色回転粒子の微粒子を、簡便に製造できる印刷法を例として説明する。
印刷法は、高速で、大量に、かつ、安定した品質の印刷物を安価に製造できるという特徴を有する。印刷方式には、平版印刷方式、凸版印刷方式、凹版印刷方式、スクリーン印刷方式や、電子写真印刷方式、インクジェット方式などがあるが、ここでは、厚いインキ塗膜の形状を精度よく複製でき、本発明の二色回転粒子の製造方法に最も適した、スクリーン印刷方式について説明する。
【0034】
印刷法による二色回転粒子の製造方法は、以下の工程からなる。
(1)基材上に、熱可塑性樹脂着色組成物(A)を含有するインキ(A)と、熱可塑性樹脂着色組成物(B)を含有するインキ(B)とを、印刷版を使用して重ね刷りすることによって、インキ(A)の塗膜とインキ(B)の塗膜が積層された積層インキ塗膜細片を形成する工程。
(2)該積層インキ塗膜細片を加熱処理することによって球形化する工程。
【0035】
スクリーン印刷に使用する印刷版には、メタルマスクが適している。メタルマスクを使用することにより、インキ塗膜の厚さを数ミクロンから百ミクロン以上の広い範囲で精密に制御でき、微小な形状、たとえば形状が円形であれば、直径が数ミクロンから数百ミクロンまでの円形形状を精密に印刷することができる。、本製造方法によれば、百ミクロン以下の均一な粒子径を有する2色回転粒子を安定して大量に製造することができる。
【0036】
前記インキ(A)またはインキ(B)は、それぞれ熱可塑性樹脂着色組成物(A)または熱可塑性樹脂着色組成物(B)に、溶剤と各種添加剤を混合して調製する。溶剤としては、一般のスクリーン印刷用インキに使用される溶剤をそのまま使用することができ、具体的には、たとえば、ミネラルスピリットなどの脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレン、#150ソルベントなどの芳香族炭化水素類、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどのアルコール類、酢酸−n−ブチルなどのエステル類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコールエステル類およびグリコールエーテルエステル類を挙げることができる。これらの溶剤は単独で用いてもよいし、2種類以上混合して使用してもよい。
【0037】
インキ(A)およびインキ(B)には、インキにチクソトロピーを付与するシリカ、酸化チタン、カーボンブラック等の超微粒子や、乾燥したインキ塗膜を基体から容易に剥離できるようフッ素系あるいはシリコン系離型剤を添加してもよい。この他、必要に応じて、一般のスクリーン印刷用インキに通常使用される各種添加剤を添加することができる。
【0038】
熱可塑性樹脂着色組成物、溶剤、および各種添加剤を混合するには、分散攪拌機やビーズミルなど公知慣用の混合装置を使用することができる。
スクリーン印刷により良好な画素形状を作製するためには、インキの25℃における粘度が5〜50Pa・sであることが好ましい。粘度が5Pa・s未満であると、十分なインキ塗膜厚を得にくく、50Pa・sを超えると版の目詰まりが起こりやすい。
【0039】
ここで、「インキの25℃における粘度」とは、CARRI−MED社製コントロールド ストレス レオメーター(Controlled Stress Rheometer)「CSL−100」を用いた25℃におけるインキ粘度の周波数依存性測定から得られる、周波数100Hzにおける粘度のことである。
【0040】
インキ(A)およびインキ(B)を重ね刷りする基材は、表面が平滑で、熱伸縮係数が小さく、耐熱性の高い材料を用いたものであればよく、具体的には、アルミニウム、ステンレスなどの金属板、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドなどのプラスチックシート、ガラス板、セラミック板などを挙げることができる。基材は、インキ(A)およびインキ(B)の乾燥した積層インキ塗膜細片を容易に剥離し得るような離型性の表面を有することが好ましい。このような基材としては、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体などのフッ素樹脂のシート、または上記金属板、プラスチックシート、ガラス板、あるいはセラミック板の表面にフッ素樹脂、シリコーン樹脂、またはオレフィン系離型剤などからなる剥離層を設けたものが挙げられる。
【0041】
前記積層インキ塗膜細片を形成する工程を以下に示す。、
(1)基材上に、インキ(A)を印刷することによって、同一の乾燥塗膜厚、同一の面積、および同一の形状を有する複数の画素を形成する工程。
(2)該画素を形成するインキ(A)の塗膜を乾燥する工程。
(3)インキ(A)の乾燥塗膜からなる画素上に、これと同一の乾燥塗膜厚、同一の面積、および同一の形状となるように、インキ(B)を印刷する工程。
(4)印刷されたインキ(B)の塗膜を乾燥する工程。
(5)乾燥したインキ(A)とインキ(B)の積層インキ塗膜を基体から剥離する工程。
【0042】
粒子径が100μm以下の二色回転粒子を得るためには、インキ(A)およびインキ(B)それぞれの、塗膜厚が3〜30μm、塗膜の平面形状の面積が20〜90000(μm)2の範囲にあるのが好ましい。
インキ(A)の塗膜とインキ(B)の塗膜とは、平面形状が互いに同一で、塗膜面積も互いに同一であることが好ましく、好ましい平面形状は円形である。
基材上に形成された積層インキ塗膜細片を基材から剥離する方法には、特に限定はなく、ドクターブレードで機械的に掻き取ってもよいが、その形状を破壊しないように効率よく剥離するためには、超音波を利用するとよい。
【0043】
図2に、超音波によって基材から積層インキ塗膜細片を剥離する手段の概念図を示す。積層インキ塗膜細片および基材のいずれをも溶解しない液媒体9を容器10に満たし、表面に前記積層インキ塗膜細片が接着した基材11を、治具12に担持させて液媒体9中に浸積し、外部の超音波振動子13から液媒体9を介して該基材11に超音波振動を与え、該基材11から積層インキ塗膜細片を剥離する。液媒体9としては、たとえば、25℃における粘度が0.65mm2/sのジメチルポリシロキサン、25℃における粘度が10mm2/sのジメチルポリシロキサンを用いるのがよい。
【0044】
基材から剥離した積層インキ塗膜細片は、特開平1−282589号公報に記載されている方法を利用して球形化することができる。すなわち、積層インキ塗膜細片を、熱風によって、熱可塑性樹脂着色組成物(A)、あるいは熱可塑性樹脂着色組成物(B)に含まれる熱可塑性樹脂の融解開始温度のうち、高い融解開始温度以上に加熱して溶融させ、溶融した該積層インキ塗膜細片を表面張力によって球形化させた後、これを冷却することにより2色回転粒子が得られる。
【0045】
積層インキ塗膜細片を、あらかじめ熱した空気中やガス中に投入する方法、あるいは空気中やガス中に浮遊分散させて、熱風を吹き付ける方法などが挙げられる。具体的には、スプレードライヤーを用いる方法が挙げられる。
【0046】
得られた2色回転粒子は必要に応じて液体に分散させた状態、もしくは乾燥状態で、フィルター等を用いて分級してもよい。本発明における球形化工程においては分級が困難である過剰に小さい球が発生しないため、容易に分級することができる。
【0047】
次に、上記本発明の二色回転粒子を用いた粒子回転型ディスプレイ用表示シート(以下、「本発明の表示シート」と略記する。)について説明する。
本発明の表示シートの基本的な構成の一例を図1に示した。ただし、図1は本発明の表示シートの構成を説明するための模式図であり、本発明の表示シートの実体を表すものではない。
【0048】
本発明の表示シートは、絶縁性透明樹脂マトリックス1中に、内部に本発明の二色回転粒子2が回転自由な状態で浮遊する誘電性液体3の液胞4が分散したシート状表示部材の両面に、それぞれ、基材5または5’の片面に電極層6または6’を有するシート状電極部材を積層したものである。ただし、該表示シートの少なくとも視認側のシート状電極部材は、透明でなければならない。電極層6または6’の一方は接地7され、他方は矩形電圧パルスを所定の周期で印加する電界印加手段8が接続されている。シート状表示部材に印加される電界の向きが変わると、二色回転粒子2の向きが変わり、これによって表示が切り替えられる。
【0049】
このような構造を有する粒子回転型表示素子の製造方法に関しては、すでに米国特許第4,143,103号明細書に記載されており、以下に、この方法に準じた本発明の表示シートの製造方法について説明する。しかし、本発明の表示シートの製造方法はこれに限定されるものではなく、その他の公知の方法、たとえば、特開平8−234686号公報、あるいはA Newly Developed Electrical Twisting Ball Display, M. Saitoh et.al., Proc. of SID, Vol.23/4 (1982)などに開示された方法によっても製造することができる。
【0050】
本発明の粒子回転型ディスプレイ用表示シートは、概略次の工程を経て製造することができる。
(1)本発明の二色回転粒子を分散させた熱硬化性樹脂組成物を調製する工程。
(2)該熱硬化性樹脂組成物を基板に塗布した後熱硬化させることにより、前記二色回転粒子が分散した絶縁性透明樹脂シートを作製する工程。
(3)該絶縁性透明樹脂シートを誘電性液体中に浸積することにより、該シートを膨潤させ、さらに内部に分散している二色回転粒子を包む誘電性液体の液胞を形成させたシート状表示部材を作製する工程。
(4)該シート状表示部材の両面にシート状電極部材を積層する工程。
【0051】
(1)の工程における熱硬化性樹脂組成物に使用する熱硬化性樹脂、すなわちマトリックス樹脂としては、絶縁性と透明性がともに優れたものであれば特に限定されないが、表示シートとした際に柔軟性を有する二液硬化型シリコーン樹脂を好適に使用することができる。以下、マトリックス樹脂として二液硬化型シリコーン樹脂を使用した粒子回転型ディスプレイ用表示シートについて説明する。
【0052】
熱硬化性樹脂組成物は、二液硬化型シリコーン樹脂に本発明の二色回転粒子を、その含有率が40〜60体積%となるように配合し、攪拌機で混合する。該二色粒子の含有率が40体積%より少ないと、得られる表示シートの隠蔽性が不十分となり表示特性が悪化する。60体積%を越えて大きくなると樹脂量が不足することにより、シート作製時に、基板への熱硬化性樹脂組成物の均一な塗工が困難になる。
【0053】
前記熱硬化性樹脂組成物は、公知慣用の手段で基板に塗布することができる。該熱硬化性樹脂組成物の粘度は、5000〜10000mPa・sと高く、これに適した塗工手段としては、たとえば、ワイヤバー塗工、アプリケータ塗工、スピン塗工などの枚葉コーターの他に、ナイフコーター、コンマコーター、ダイコーター、リップコーター等の連続式コーター等が挙げられる。
【0054】
基板については特に限定はないが、強度や寸法安定性に優れたポリエチレンテレフタレートのシートが好適である。
熱硬化性樹脂組成物の塗膜厚は、本発明の二色回転粒子の平均粒子径の2〜3倍であることが好ましい。2倍より小さいと基板への塗工の際に粗大粒子等が原因となり塗工ムラが生じ易くなるうえ、得られる表示シートの隠蔽性が不十分となる場合がある。逆に、3倍より大きいと、二色回転粒子が厚み方向に多層に配列することにより、表示シートの反射率が低下し、表示品質が悪化する。
【0055】
前記熱硬化性樹脂組成物の塗膜を、加熱して硬化させる。硬化は、二色回転粒子に使用した熱可塑性樹脂のガラス転移温度を超えない範囲で、できるだけ高い温度で行うのが好ましい。硬化温度が高いほど硬化に要する時間が短縮されるため、製造効率を高くすることができる。硬化温度が二色回転粒子に使用した熱可塑性樹脂のガラス転移温度を超えると、二色回転粒子の二色界面に乱れが発生し、表示性能が低下する。
【0056】
上記熱硬化性樹脂組成物の熱硬化塗膜を基材から剥離して、本発明の二色回転粒子が分散した絶縁性透明樹脂シートが得られる。該絶縁性透明樹脂シート中に分散した二色回転粒子は、硬化したマトリックス樹脂と密着しているため、電界を印加しても回転しない。そこで、該絶縁性透明樹脂シートを誘電性液体に浸積して、マトリックス樹脂、すなわち前記熱硬化性樹脂硬化物を膨潤させることによって、二色回転粒子の周囲に該誘電性液体が満たされた液胞を形成することができる。
【0057】
使用する誘電性液体は、マトリックス樹脂を膨潤させ得るものであり、かつ、前記熱可塑性樹脂着色組成物(A)および熱可塑性樹脂着色組成物(B)のいずれをも溶解、あるいは膨潤させないものでなければならない。このような誘電性液体としては、シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル、ポリオレフィンエーテル、イソパラフィン、フッ素化ポリエーテル等の誘電性液体を例として挙げることができる。
【0058】
マトリックス樹脂が前記シリコーン樹脂である場合には、誘電性液体として好適に使用できるのはシリコーンオイルである。シリコーンオイルは、シリコーン樹脂との親和性が高いので、シリコーン樹脂硬化物を膨潤させるが、前記熱可塑性樹脂着色組成物(A)および熱可塑性樹脂着色組成物(B)のいずれも溶解、あるいは膨潤させない。
【0059】
シリコーンオイルとしては、たとえば、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン等を使用することができる。シリコーンオイルの25℃における粘度は100mm2/s以下であることが好ましい。粘度が100mm2/sを越えると液胞中の二色回転粒子の回転が困難になり、表示の応答速度が低下する。これを補うために電界強度を高めると、画像書き換え等に要する電力消費が大きくなるなどの問題が発生する。また、シリコーンオイルの比重は、二色回転粒子の比重に近いものを選択することが好ましい。
【0060】
二色回転粒子が分散した絶縁性透明樹脂シートを誘電性液体中に浸積する場合の条件は、使用するマトリックス樹脂と誘電性液体の種類、マトリックス樹脂の硬化度合いによって異なるが、上述の、マトリックス樹脂が二液硬化型シリコーン樹脂であり、誘電性液体がシリコーンオイルである場合には、室温において12時間以内に液胞が形成される。この時間は、絶縁性透明樹脂シートを誘電性液体中へ浸積する温度を、二色回転粒子に使用した熱可塑性樹脂のガラス転移温度を超えない範囲で、できるだけ高い温度とすることによって短縮することができる。
【0061】
次に、上記の方法によって得られたシート状表示部材の両面に、電極層を積層する。そのためには、該シート状表示部材の両面に、基材の片面に電極層を設けたシート状電極部材、たとえば、片面に電極層を設けたプラスチックフィルムを積層すればよい。その際、必ずしも図2に示したように電極層6または6’と該シート状表示部材の面とを密着させる必要はなく、該シート状電極部材の電極層を設けた面とは反対側の面を該シート状表示部材と密着させてもよい。さらに、該シート状表示部材と該シート状電極部材との間などに、誘電性液体の漏出を防ぐとともに、外気を遮断する目的で、ガスバリア性を有する単層または多層プラスチックフィルムを介在させてもよい。
【0062】
前記シート状電極部材の基材としては、塩化ビニリデン、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどプラスチックのフィルムやシート、ガラス板などを使用することができる。電極層には、アルミニウム、銅、ニッケル等電気抵抗値の低い金属の箔、蒸着やスパッタリングによって形成される薄膜、あるいは、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アンチモン錫(ATO)、酸化錫等の透明電極薄膜などが使用できる。
前述したように、表示シートの少なくとも視認側の電極層、基材、および必要に応じて使用するプラスチックフィルム等はすべて透明でなければならない。
【0063】
シート状表示部材の両面にシート状電極部材を積層する際には、接着剤や両面粘着シート等を使用してもよい。この場合も、表示シートの視認側の透明性を損なわないように材料を選択する必要がある。
上記の方法によって得られる本発明の表示シートは、その外周を一液型シリコーンゴム等でシールすることによって、誘電性液体の漏出を防止し、外気から遮断するのが好ましい。
【0064】
【実施例】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明する。特に断らない限り、「部」および「%」は、それぞれ「質量部」および「質量%」を表す。
【0065】
<スクリーン印刷用インキの調製>
(調整例1)
白色の着色剤である石原産業(株)製酸化チタン「CR−60−2」10.6部、熱可塑性樹脂である星光化学(株)製スチレン−アクリル酸共重合体「ハイロスPS−2003」(ガラス転移温度131℃)39.8部、負極性電荷制御剤であるオリエント化学工業(株)製カリックスアレン誘導体「BONTRONF−21」(比重0.89、平均分子量1300)2.7部、富士シリシア化学(株)製シリカ微粒子「SYLYSIA310P」0.5部からなる熱可塑性樹脂着色組成物(A1)に、東邦化学工業(株)製ジエチレングリコールモノブチルエーテル「ハイソルブDB」46.4部を加え、分散攪拌機を用いて混合し、インキ(A1)を調製した。
【0066】
(調整例2)
白色の着色剤である石原産業(株)製酸化チタン「CR−60−2」11.6部、熱可塑性樹脂である前記「ハイロスMS−2003」43.2部、負極性電荷制御剤であるオリエント化学(株)製サリチル酸系亜鉛錯体「BONTRONE−84」(比重1.00)2.9部、前記「SYLYSIA310P」0.3部からなる熱可塑性樹脂着色組成物(A2)に、前記「ハイソルブDB」42部を加え、分散攪拌機を用いて混合し、インキ(A2)を調製した。
【0067】
(調製例3)
黒色の着色剤である三菱化学(株)製カーボンブラック「#45L」1.1部、熱可塑性樹脂である前記「ハイロスPS−2003」43.4部、比重調整剤である戸田工業(株)製ヘマタイト「HSB−603Rx」8.6部、前記「SYLYSIA310P」0.5部からなる熱可塑性樹脂着色組成物(B1)に、前記「ハイソルブDB」46.4部を加え、分散攪拌機を用いて混合し、インキ(B1)を調製した。
【0068】
(調製例4)
黒色の着色剤である前記カーボンブラック「#45L」1.1部、熱可塑性樹脂である前記「ハイロスPS−2003」42.6部、比重調整剤である前記ヘマタイト「HSB−603Rx」9.1部、前記「SYLYSIA310P」0.3部からなる熱可塑性樹脂着色組成物(B2)に、前記「ハイソルブDB」46.9部を加え、分散攪拌機を用いて混合し、インキ(B2)を調製した。
インキ(A1)、インキ(A2)、インキ(B1)、およびインキ(B2)の25℃、100Hzにおける粘度を、CARRI−MED社製コントロールド ストレス レオメーター(Controlled Stress Rheometer)「CSL−100」を用いて測定した結果、インキ(A1)の粘度は43Pa・s、インキ(A2)の粘度は45Pa・s、インキ(B1)の粘度は41Pa・s、インキ(B2)の粘度は42Pa・sであった。
【0069】
<熱可塑性樹脂着色組成物の比重測定>
調製例1〜4で調製したインキ(A1)、インキ(A2)、インキ(B1)、およびインキ(B2)のそれぞれ2gを金属バットの上に展延し、90℃で17時間熱風乾燥させることにより約2cm角、厚さ約3mm、質量約1gの熱可塑性樹脂着色組成物(A1)、熱可塑性樹脂着色組成物(A2)、熱可塑性樹脂着色組成物(B1)、および熱可塑性樹脂着色組成物(B2)の塗膜片を得た。これらの塗膜片の比重を、ミラージュ貿易(株)製電子比重計「SD−120L」を用いて、空気中質量と水中質量の差より測定した。
その結果、熱可塑性樹脂着色組成物(A1)と熱可塑性樹脂着色組成物(B1)の比重はともに等しく1.24、熱可塑性樹脂着色組成物(A2)と熱可塑性樹脂着色組成物(B2)の比重もともに等しく1.25であった。
【0070】
<二色回転粒子の粒子径分布測定方法>
約0.02gの二色回転粒子の試料を10cm3サンプル瓶に入れ、ベックマンコールター(株)製界面活性剤「イソクリーン」、および同社製電解液「アイソトンII」各3gを添加し、超音波分散器で5分間分散させ、粒子が均一に分散した測定分散液を得た。ベックマンコールター(株)製粒子径分布測定装置「マルチサイザーIII」を使用し、200μmのカウンターチューブを用い測定分散液を循環させて50000個の球の粒子径分布を測定した。得られた粒子径分布データーから平均粒子径、標準偏差値を算出した。なお、本測定方法は二色回転粒子だけではなく、単色級の粒子径分布測定にも適用できる。
【0071】
<熱可塑性樹脂着色組成物の帯電特性測定方法>
片面に離型剤層を有するパナック(株)製ポリエステルフィルム「SP−PET−03−Bu」の離型剤層面に、直径340μmの複数の円形画素を有するメタルマスクを用いて、乾燥後の塗膜厚が10μmとなるようにインキ(A1)をスクリーン印刷して乾燥させた後、該印刷物を、粘度が10mm2/sの信越化学工業(株)製シリコーンオイル「KF96−10cs」中に浸漬し、超音波を照射してインキの乾燥塗膜をポリエステルフィルムから剥離した後、インキ塗膜細片を濾別し、粘度が0.65mm2/sの信越化学工業(株)製シリコーンオイル「KF96L−0.65cs」で洗浄した。得られたインキ塗膜細片をスプレードライヤー中170℃で球形化処理し、平均粒子径100μmの単色球を得た。次いでこの単色球を、信越化学工業(株)製シリコーンオイル「KF96−10cs」(25℃における粘度10mm2/s)中に分散させた分散液を、片面に透明電極層を有する2枚のガラス板を、その透明電極層を対向させて0.96mmの電極間距離を保持させたセルに封入した。顕微鏡で観察しながらセルの電極間に電圧を印加して単色球を電気泳動させ、泳動を開始する閾値電圧Vcを測定し、次式から熱可塑性樹脂着色組成物(A1)の表面電荷密度σを求めた。
σ=(D×(ρm−ρs)×g/6)/(Vc/d)
ここで、Dは単色球の平均粒子径、ρmは単色球の比重、ρsは25℃における粘度が10mm2/sのシリコーンオイルの比重、gは重力加速度、dは電極間距離を表す。
【0072】
熱可塑性樹脂着色組成物(A2)、熱可塑性樹脂着色組成物(B1)、および熱可塑性樹脂着色組成物(B2)についても、熱可塑性樹脂着色組成物(A1)と同様にして表面電荷密度を測定した。
その結果、熱可塑性樹脂着色組成物(A1)の表面電荷密度はσ=−0.595nC/m2、熱可塑性樹脂着色組成物(A2)の表面電荷密度はσ=−0.589nC/m2、熱可塑性樹脂着色組成物(B1)の表面電荷密度はσ=−0.125nC/m2、熱可塑性樹脂着色組成物(B2)の表面電荷密度はσ=−0.110nC/m2であった。
【0073】
すなわち、負極性の帯電特性を付与するカレックスアレン誘導体を添加した熱可塑性樹脂着色組成物(A1)と、熱可塑性樹脂着色組成物(B1)との間における表面電荷密度の差Δσは、−0.470nC/m2であった。
一方、負極性の帯電特性を付与するサリチル酸亜鉛錯体を添加した熱可塑性樹脂着色組成物(A2)と、熱可塑性樹脂着色組成物(B2)との間における表面電荷密度の差Δσは、−0.479nC/m2であった。
【0074】
(実施例1)
片面にシリコン系離型剤層を設けたパナック(株)製ポリエステルフィルム「SP−PET−03−Bu」の離型剤層面に、直径150μmの円柱形の複数の穴を有するメタルマスクを用いて、乾燥後のインキ塗膜厚が10μmとなるように前記インキ(A1)をスクリーン印刷することによって白色の印刷物を得た。インキ塗膜を55℃で熱風乾燥した後室温に戻し、該インキ塗膜上に同様の操作によってインキ(B1)を、乾燥後のインキ塗膜厚が10μmとなるように重ね刷りし、白黒二色のインキ塗膜層からなる積層インキ塗膜を得た。該印刷物を、25℃における粘度が10mm2/sの信越化学工業(株)製シリコーンオイル「KF96−10cs」中に浸漬し、超音波を照射することで積層インキ塗膜細片をポリエステルフィルムから剥離した後濾別し、粘度が0.65mm2/sの信越化学工業(株)製シリコーンオイル「KF96L−0.65cs」で洗浄した。
【0075】
このようにして得られた積層インキ塗膜細片を、0.3MPaの圧縮空気によって大川原化工機(株)製スプレードライヤー「CL−12」の加熱槽上部から分散状態で供給し、該積層インキ塗膜細片に170℃の熱風を噴射して加熱球形化した後、70℃に保った槽に落下させて冷却し、球形状の二色回転粒子を得た。
【0076】
得られた二色回転粒子をスクリーンメッシュを用いて分級し、平均粒子径が70μm、標準偏差値が11μmの二色回転粒子を90%の収率で得た。顕微鏡で観察した結果、この二色回転粒子は二色に色分ける境界が直線であるなど、外観特性に優れていた。
このようにして作製した比重1.24の二色回転粒子54.1部を、信越化学工業(株)製二液硬化型シリコーンエラストマー「KE−106/CAT−RG」(比重1.05)45.9部に分散した後、アプリケータを用いて熱硬化後の塗膜厚が150μmとなるようにポリエチレンテレフタレートのシート上に塗布し、80℃で30分間加熱硬化させた。該硬化塗膜を基材から剥離して得られた、二色回転粒子が分散した絶縁性透明樹脂シートを、25℃における粘度が15mm2/s、25℃における比重が0.995の信越化学工業(株)製シリコーンオイル「KF56」中に室温で12時間浸漬して膨潤させ、二色回転粒子の周りが該シリコーンオイルで満たされた液胞を形成した。このようにして得られたシート状表示部材の両面に、片面に酸化インジウムスズ(ITO)の透明電極層を有するダイセル化学工業(株)製ポリエチレンテレフタレートフィルム「KC−LC」の透明電極層を、住友スリーエム(株)製プラスチック用接着剤「Scotch」を使用して接着し、本発明の表示シートを作製した。該表示シートの両電極間に±1.5kV/mmの矩形波電界を印加したところ、解像度や応答性などに優れた高品質の表示性能を示した。
【0077】
(実施例2)
実施例1における、インキ(A1)の代わりにインキ(A2)を、インキ(B1)の代わりにインキ(B2)を使用した以外は、実施例1と同様にして二色回転粒子を作製した。収率は93%であった。得られた二色回転粒子は、比重が1.25、平均粒子径が80μm、標準偏差値が12μmの粒子径分布を示し、また二色に色分ける境界が直線である等外観特性に優れていた。
【0078】
上記二色回転粒子54.3部、信越化学工業(株)製二液硬化型シリコーンエラストマー「KE−106/CAT−RG」(比重1.05)45.7部を使用した以外は、実施例1と同様にして厚さ180μmの表示シートを作製したところ、解像度や応答性などが非常に優れた表示性能を示した。
【0079】
上記実施例の結果から、本発明の二色回転粒子は、帯電特性に優れており、これを使用した表示シートは、解像度や応答性などに優れた高品質の表示性能を示すことが確認された。
【0080】
【発明の効果】
本発明の二色回転粒子は、色相および誘電性液体中における帯電特性がともに異なる熱可塑性樹脂着色組成物(A)からなる半球と、熱可塑性樹脂着色組成物(B)からなる半球とが、互いに境界面を接して球形形状を形成している。
本発明の二色回転粒子においては、前記熱可塑性樹脂着色組成物(A)または熱可塑性樹脂着色組成物(B)の少なくとも一方に電荷制御剤を添加することにより、誘電性液体中における各半球の表面電荷密度に大きな差を生じさせ、電界の印加によって該二色回転粒子に作用するクーロン力に起因した大きい回転モーメントが得られる。
【0081】
π−電子をもつ複数のベンゼン環が規則的に配列した環構造を有するカリックスアレンや、分子内に電子密度の高い窒素原子(−N=)を有するアジン化合物は、特に高い電荷制御機能を示し、かつ、金属系の電荷制御剤と比べて比重が小さいので、これらを電荷制御剤として添加した二色回転粒子の帯電の立ち上がりが良好であり、二色回転粒子の慣性モーメントを低くできるので、表示の応答速度が速い。
【0082】
また、π−電子の大きな共役系を形成するサリチル酸系金属錯体も高い電荷制御機能を示し、これを添加した二色回転粒子を使用した場合も表示の応答速度が速い。
【0083】
本発明の二色回転粒子を使用した回転粒子型ディスプレイ用表示シートは、駆動電圧を低くすることができ、解像度や応答性に優れた高品質の表示性能を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の表示シートの基本的な構成の一例を説明するための模式図である。
【図2】超音波によって基材から積層インキ塗膜細片を剥離する手段の概念図である。
【符号の説明】
1 絶縁性透明樹脂マトリックス
2 本発明の二色回転粒子
3 誘電性液体
4 液胞
5、5’ シート状電極部材用基材
6、6’ 電極層
7 接地
8 電界印加手段
9 液媒体
10 容器
11 表面に積層インキ塗膜細片が接着した基材
12 治具
13 超音波振動子
【発明の属する技術分野】
本発明は、粒子回転型ディスプレイに使用するための、色相と誘電性液体中における帯電特性がともに異なる二つの半球が境界面を接して球形形状を形成している二色回転粒子と、該二色回転粒子を使用した粒子回転型ディスプレイ用表示シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
反射型表示装置は表示のための照明を必要とせず、消費電力が少ないことから、近年、案内表示などの看板掲示、パーソナルコンピュータ用の一時出力表示、移動体通信装置や携帯端末用の表示、広告、電子書籍等の表示装置などの分野に、液晶ディスプレイを始め、電気泳動ディスプレイや粒子回転型ディスプレイなど多くの開発が試みられている。中でも、電気泳動ディスプレイや粒子回転型ディスプレイは、液晶ディスプレイのような偏光フィルムを使用しないので明るい画面を提供できる。特に、粒子回転型ディスプレイは、表示画像のメモリー機能を有し、表示のための駆動電圧に閾値を有することから単純マトリックスでも表示ができるなど、他の表示装置にはない利点を有している。
【0003】
粒子回転型ディスプレイは、色相と誘電性液体中における帯電特性がともに異なる二つの半球部分からなる球形粒子を誘電性液体中に浮遊させ、電界を印加することによって該球形粒子の向きを制御し、表示させるものである。粒子を誘電性液体に浸積した場合、粒子と液体の間で電荷の授受が行われ、固液界面に電荷二重層が形成され粒子表面が帯電する。したがって、誘電性液体中に浸積された球形粒子を構成する各半球部分が、互いに異なった表面電荷密度を有していれば該粒子内に双極子が形成され、外部から電界を印加することによって該粒子の向きを制御することができ、表示が可能となる。
【0004】
粒子回転型ディスプレイに関して、米国特許第5,262,098号明細書や、特開平6−226875号公報には、粒子回転型ディスプレイの主要構成部材である、色相と誘電性液体中における帯電特性がともに異なる一対の半球部分からなる二色回転粒子を回転ディスクを用いて製造する方法と、そのための装置、および該製造方法によって製造される二色回転粒子が記載されている。
【0005】
この方法によって製造される二色回転粒子は、色相と誘電性液体中における帯電特性がともに異なる一対の半球部分からなる球形粒子であり、各半球部分はいずれも顔料、熱可塑性の結着樹脂、および顔料の結着樹脂への分散性を向上させる目的で添加する界面活性剤等によって構成されている。このうち、熱可塑性の結着樹脂と界面活性剤については、両半球部分に同一のものが使用されているが、顔料については、半球部分の一方には黒色無機顔料である鉄黒またはカーボンブラックが使用され、他方の半球部分には白色無機顔料である酸化チタンが使用されている。一対の半球部分のそれぞれに異なった顔料を使用することで、該粒子を誘電性液体中に浸積した場合の各半球部分間の表面電荷密度に差が生じ、電界を印加することによって表示が可能となる。
【0006】
特開平11−175002号公報には、二色回転粒子の帯電特性の安定化を目的に、導電体または半導体を用いて各半球の帯電特性が異なるようにヘテロ界面を形成し、該ヘテロ界面で発生する層間分極電荷が各半球間を移動する構成をとることにより、二色回転粒子内に双極子が形成されると記載されている。
【0007】
また、特開平10−307552号公報には、回転粒子の少なくとも一方の半球表面を酸化物で構成し、この回転粒子を取り囲む溶媒のpHを、前記酸化物の等電点よりも酸性側にすることにより、前記酸化物半球表面を正極性に帯電させ、前記回転粒子の他方の半球表面に、前記溶媒のpHよりも酸性側の等電点の酸化物を用いるか、または負極性の帯電性を示す官能基を導入することにより、大きな電気双極子モーメントを発生させることができ、外部電界に対する応答性が良好になると記載されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前記米国特許第5,262,098号明細書や、特開平6−226875号公報に記載された二色回転粒子は、前述のように、該粒子を構成する二つの半球部分のそれぞれに異なる着色剤を含有させることによって、誘電性液体中における各半球の表面電荷密度に差を生じさせている。しかし、このようにして得られる表面電荷密度の差は一般に小さく、電界の印加によって該二色回転粒子に作用するクーロン力に起因した回転モーメントは小さいので、これを使用した粒子回転型ディスプレイにおいて良好な表示品質を得るためには、高い駆動電界が必要になるという問題点があった。
【0009】
また、特開平11−175002号公報に記載された、電気的に結合したヘテロ界面を形成させる二色回転粒子は、大きい双極子モーメントを有するものの、その材料構成が複雑であり、該二色回転粒子を容易に製造することは困難である。さらに、特開平10−307552号公報に記載された、回転粒子を構成する各半球表面の酸化物の等電点と、この回転粒子を取り囲む溶媒のpHを制御する方法においては、使用できる該回転粒子の原料や、回転粒子を取り囲む溶媒の種類が、きわめて特殊なものに限定されてしまうという問題点があった。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、複雑な製造工程を必要とせず、原料に制約を受けず、かつ、大きい双極子モーメントを有する二色回転粒子を提供し、さらには、該二色回転粒子を使用した、低駆動電界であっても印字品質の高い表示が可能な粒子回転型ディスプレイ用表示シートを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、色相、および誘電性液体中における帯電特性がともに異なる熱可塑性樹脂着色組成物(A)からなる半球と、熱可塑性樹脂着色組成物(B)からなる半球とが、互いに境界面を接して球形形状を形成している二色回転粒子の、熱可塑性樹脂着色組成物(A)または熱可塑性樹脂着色組成物(B)の少なくとも一方に電荷制御剤を添加することによって、誘電性液体中における各半球の表面電荷密度に大きな差を生じさせ、電界の印加によって該二色回転粒子に作用するクーロン力に起因した回転モーメントを高めるものである。
【0012】
さらに、本発明は、少なくとも片方が透明の電極層である対向電極層間に挟持されたシート状絶縁性透明樹脂マトリックス中に、誘電性液体と、これに浮遊して自由回転可能な上記二色回転粒子からなる液胞が分散した、低駆動電界であっても印字品質の高い表示が可能な粒子回転型ディスプレイ用表示シートを提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の二色回転粒子は、着色剤と熱可塑性樹脂とを含有する熱可塑性樹脂着色組成物(A)からなる半球と、前記着色剤とは色相の異なる着色剤と熱可塑性樹脂とを含有する熱可塑性樹脂着色組成物(B)からなる半球とが、互いに境界面を接して球形形状を形成している粒子である。さらに、熱可塑性樹脂着色組成物(A)もしくは熱可塑性樹脂着色組成物(B)のいずれか一方が、電荷制御剤を含有するか、または、前記両熱可塑性樹脂着色組成物のいずれか一方が正極性帯電特性を有する電荷制御剤を含有し、他方が負極性帯電特性を有する電荷制御剤を含有する。
【0014】
熱可塑性樹脂着色組成物(A)および(B)に使用する着色剤としては、公知慣用の顔料や染料を使用することができる。
顔料としては、たとえば、アゾ系顔料、ポリ縮合アゾ系顔料、メタルコンプレックスアゾ系顔料、フラバンスロン系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、アントラピリジン系顔料、ピランスロン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、チオインジゴ系顔料、インダンスレン系顔料等の有機顔料、亜鉛華、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、アンチモン白、カーボンブラック、鉄黒、硼化チタン、ベンガラ、マピコイエロー、鉛丹、カドミウムイエロー、硫化亜鉛、リトポン、硫化バリウム、セレン化カドミウム、硫酸バリウム、クロム酸鉛、硫酸鉛、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、鉛白、アルミナホワイト等の無機顔料が挙げられる。
染料としては、たとえば、ニグロシン系染料、フタロシアニン系染料、アゾ系染料、アントラキノン系染料、キノフタロン系染料、メチン系染料等が挙げられる。
【0015】
本発明においては、上記顔料または染料を単独で使用することも、二種類以上の顔料若しくは染料を混合して使用することもでき、さらに顔料と染料を混合して使用することもできる。熱可塑性樹脂着色組成物(A)および熱可塑性樹脂着色組成物(B)に添加する着色剤は、上記顔料もしくは染料の中から、それぞれ色相の異なる着色剤を適宜選択すればよい。
熱可塑性樹脂着色組成物(A)および熱可塑性樹脂着色組成物(B)への着色剤の添加量は、熱可塑性樹脂着色組成物(A)または熱可塑性樹脂着色組成物(B)に対して、2〜50質量%とするのが好ましく、2〜30質量%であればなお好ましい。
【0016】
熱可塑性樹脂着色組成物(A)および(B)に使用する熱可塑性樹脂は、公知慣用の熱可塑性の天然樹脂や合成樹脂を使用することができる。具体的には、たとえば、ロジン、ロジンのペンタエリスリトールエステル、ダンマル、セラック、コーパル等の天然樹脂や、アクリル系樹脂、ポリスチレン、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、マレイン酸樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、石油樹脂、熱可塑性ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂が挙げられる。これらの他に、熱可塑性樹脂着色組成物の熱可塑性を損なわない範囲内で、ニトロセルロース、セルロースアセテート、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム、エステルゴム等を添加することもできる。上記樹脂類は、単独もしくは二種類以上を混合して用いることができる。
【0017】
本発明において、熱可塑性樹脂着色組成物(A)および(B)に使用する熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、60〜200℃の範囲にあるのが好ましい。60℃未満であると得られる二色回転粒子の耐熱性が低いものとなり、また、200℃を超えると、加熱処理による二色回転粒子の球形化工程を採用した場合に、二色回転粒子中に含有される着色剤、熱可塑性樹脂、あるいは電荷制御剤などが熱分解する恐れが生じる上、エネルギーコストおよび製造設備面で不利になるためである。
【0018】
前述したように、一般に液体中の粒子は、粒子と液体の間で電荷の授受が行われて、固液界面に電荷二重層が形成され、粒子は正または負に帯電する。たとえば、熱可塑性樹脂着色組成物(A)と熱可塑性樹脂着色組成物(B)両者に、それぞれ異なる着色剤あるいは異なる熱可塑性樹脂を配合するだけで、誘電性液体中における表面電荷密度に差をもたせることができる。つまり、熱可塑性樹脂着色組成物(A)と熱可塑性樹脂着色組成物(B)のいずれか一方が、他方と異なった成分を含有することで、その表面電荷密度には差が発生する。
しかしながら、誘電性液体中の二色回転粒子に電界を印加して、より大きい回転モーメントを与えるためには、熱可塑性樹脂着色組成物(A)と熱可塑性樹脂着色組成物(B)の帯電特性の差をできるだけ大きくする必要がある。
【0019】
ここで、帯電特性に差があるということは、表面電荷密度の差が0でないことを意味する。すなわち、熱可塑性樹脂着色組成物(A)の誘電性液体中における表面電荷密度がプラスd(C/m2)であり、熱可塑性樹脂着色組成物(B)の誘電性液体中における表面電荷密度がマイナスd(C/m2)である場合、熱可塑性樹脂着色組成物(A)と熱可塑性樹脂着色組成物(B)の誘電性液体中における帯電特性の差は2d(C/m2)ということになる。熱可塑性樹脂着色組成物(A)と熱可塑性樹脂着色組成物(B)の誘電性液体中における表面電荷密度の極性は必ずしも異なっている必要はなく、極性が同じであっても両者間の表面電荷密度が異なっていればよい。
【0020】
本発明においては、二色回転粒子を構成する一対の半球間における帯電特性の差を大きくする目的で、前記熱可塑性樹脂着色組成物(A)および(B)の少なくとも一方に電荷制御剤を添加する。
電荷制御剤には、非金属系電荷制御剤と金属系電荷制御剤がある。粒子回転型ディスプレイの表示応答速度を速めるためには、使用する二色回転粒子の慣性モーメントをできるだけ小さくする必要がある。また、誘電性液体中で二色回転粒子を滑らかに回転させるためには、二色回転粒子の重心が球心にあるのが好ましい。これらの理由から、本発明においては、比重の小さい非金属系電荷制御剤を使用するのが好ましい。
【0021】
非金属系電荷制御剤としては、たとえば、第4級アンモニウム塩、ロザニリン化合物、レシチン、アルキルサクシンイミド、カリックスアレン、またはアジン化合物などが挙げられる。これらの中でも、カリックスアレンは、π−電子をもつ複数のベンゼン環が規則的に配列した環構造を有しており、アジン化合物は、分子内に電子密度の高い窒素原子(−N=)を有しているので高い電荷制御機能を示し、これらを電荷制御剤として添加した二色回転粒子の帯電の立ち上がりが特に良好である。また、カリックスアレンおよびアジン化合物は、比重が小さいという特徴を有しており、本発明に好適に使用することができる。
【0022】
本発明において好適に使用できるカリックスアレンの代表的な例としては、下記一般式(1)で表されるカリックスアレンを挙げることができる。
【0023】
【化1】
(1)
【0024】
(式中、XおよびYは、それぞれ1〜7の整数であり、X+Yは4〜8である。
R1およびR11は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、または−(CH2)mCOOR10(ここで、R10は水素原子または低級アルキル基を表し、mは1〜3の整数である。)を表す。R2は、水素原子、ハロゲン原子、枝分かれがあっても良い炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル基、ニトロ基、アミノ基、−N(R7)2(ここで、R7は低級アルキル基を表す。)、スルホ基、置換基を有しても良いフェニル基、または−Si(CH3)3を表す。R3およびR4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基、アミノ基、または−N(R9)2(ここで、R9は低級アルキル基を表す。)を表す。R5は、水素原子、または炭素数1〜3のアルキル基を表す。R12は、水素原子、ハロゲン原子、枝分かれがあっても良い炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル基、ニトロ基、アミノ基、−N(R17)2(ここで、R17は低級アルキル基を表す。)、スルホ基、置換基を有しても良いフェニル基、または−Si(CH3)3を表す。R13およびR14は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基、アミノ基、または−N(R19)2(ここで、R19は低級アルキル基を表す。)を表す。R15は、水素原子、または炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
【0025】
上記カリックスアレンは、負極性の帯電特性を示す。白色を呈し、比重が1未満であることから、比重調整剤や白色の着色剤に兼用することもできる。
【0026】
本発明に電荷制御剤として好適に使用できるアジン化合物としては、たとえば、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オルトオキサジン、メタオキサジン、パラオキサジン、オルトチアジン、メタチアジン、パラチアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリンなどが挙げられる。
【0027】
また、着色剤としても兼用できるアジン化合物としては、たとえば、アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリーンBH/C、アジンディープブラックEWおよびアジンディープブラック3RL、ニグロシン、ニグロシン塩、ニグロシン誘導体などのアジン系染料が挙げられる。中でも、ニグロシン類は黒色の着色剤としても有用である。
これらの外にも、ドデシルベンゼンスルホン酸など樹脂酸変性アジン化合物などを使用することもできる。
上記アジン化合物は、正極性の帯電特性を示し、カリックスアレンと同様に比重が1未満であることから、比重調整剤に兼用することもできる。
【0028】
熱可塑性樹脂着色組成物(A)または熱可塑性樹脂着色組成物(B)への、上記非金属系電荷制御剤の配合量は、熱可塑性樹脂着色組成物(A)または熱可塑性樹脂着色組成物(B)に対して、0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜7質量%とするのが好ましい。0.1質量%より少ないと、充分な帯電特性が得られず、また10質量%より多いと、かえって帯電特性が悪化する。
【0029】
本発明には、上記非金属系電荷制御剤ばかりではなく、クロム、鉄、亜鉛、アルミニウムなどの金属を含有するサリチル酸系金属錯体、含金属アゾ化合物などを使用することもできる。特にサリチル酸系金属錯体はπ−電子の大きな共役系を形成しているので、高い電荷制御機能を示し、好ましく用いることができる。金属系電荷制御剤には比重の大きいものが多いので、熱可塑性樹脂着色組成物(A)または熱可塑性樹脂着色組成物(B)のいずれかに比重の大きい電荷制御剤を添加した場合には、必要に応じて他方に、マグネタイト、ヘマタイト、硼化チタン、酸化チタン、炭酸バリウム、炭酸カルシウムなどを比重調整剤として添加するとよい。比重調整剤として用いる微粒子の比重は、3〜6が好ましく、粒子径は0.01〜1μmが好ましい。ただし、比重を小さくするためには、前記カリックスアレンやアジン化合物など比重の小さな化合物を比重調整剤として使用することもできる。
一般には、二色回転粒子の重心は球心にあるのが好ましいが、特殊な駆動方式を採用して意図的に重心を偏心させたい場合は、半球のいずれかに比重調整剤を添加すればよい。
【0030】
本発明においては、熱可塑性樹脂着色組成物(A)または熱可塑性樹脂着色組成物(B)のいずれかに電荷制御剤を添加すればよいが、両熱可塑性樹脂着色組成物に、それぞれ異なった極性の帯電特性を示す電荷制御剤を添加することによって、熱可塑性樹脂着色組成物(A)と熱可塑性樹脂着色組成物(B)の誘電性液体中における帯電特性の差を最大限に大きくすることもできる。
【0031】
本発明に使用する熱可塑性樹脂着色組成物(A)および熱可塑性樹脂着色組成物(B)は、いずれも上記した、着色剤、熱可塑性樹脂、および電荷制御剤に、必要に応じて、比重調整剤、分散剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、離型剤など、公知慣用の添加剤を加え、ニーダー、ロールミル、あるいは混練押出機などを使用して溶融混練するか、溶剤を加えて分散攪拌機やビーズミルなどを使用して調製することができる。
【0032】
溶剤としては、たとえば、ミネラルスピリットなどの脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレン、#150ソルベントなどの芳香族炭化水素類、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどのアルコール類、酢酸−n−ブチルなどのエステル類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコールエステル類およびグリコールエーテルエステル類など、インキや塗料に広く使用されている溶剤を挙げることができる。これらの溶剤は単独で用いてもよいし、2種類以上混合して使用してもよい。
【0033】
次に、本発明における二色回転粒子の製造方法について説明する。
本発明の二色回転粒子は、前記米国特許第5,262,098号明細書や、特開平6−226875号公報に記載された公知の方法に準じて製造することができるが、ここでは、粒子径の揃った二色回転粒子の微粒子を、簡便に製造できる印刷法を例として説明する。
印刷法は、高速で、大量に、かつ、安定した品質の印刷物を安価に製造できるという特徴を有する。印刷方式には、平版印刷方式、凸版印刷方式、凹版印刷方式、スクリーン印刷方式や、電子写真印刷方式、インクジェット方式などがあるが、ここでは、厚いインキ塗膜の形状を精度よく複製でき、本発明の二色回転粒子の製造方法に最も適した、スクリーン印刷方式について説明する。
【0034】
印刷法による二色回転粒子の製造方法は、以下の工程からなる。
(1)基材上に、熱可塑性樹脂着色組成物(A)を含有するインキ(A)と、熱可塑性樹脂着色組成物(B)を含有するインキ(B)とを、印刷版を使用して重ね刷りすることによって、インキ(A)の塗膜とインキ(B)の塗膜が積層された積層インキ塗膜細片を形成する工程。
(2)該積層インキ塗膜細片を加熱処理することによって球形化する工程。
【0035】
スクリーン印刷に使用する印刷版には、メタルマスクが適している。メタルマスクを使用することにより、インキ塗膜の厚さを数ミクロンから百ミクロン以上の広い範囲で精密に制御でき、微小な形状、たとえば形状が円形であれば、直径が数ミクロンから数百ミクロンまでの円形形状を精密に印刷することができる。、本製造方法によれば、百ミクロン以下の均一な粒子径を有する2色回転粒子を安定して大量に製造することができる。
【0036】
前記インキ(A)またはインキ(B)は、それぞれ熱可塑性樹脂着色組成物(A)または熱可塑性樹脂着色組成物(B)に、溶剤と各種添加剤を混合して調製する。溶剤としては、一般のスクリーン印刷用インキに使用される溶剤をそのまま使用することができ、具体的には、たとえば、ミネラルスピリットなどの脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレン、#150ソルベントなどの芳香族炭化水素類、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどのアルコール類、酢酸−n−ブチルなどのエステル類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコールエステル類およびグリコールエーテルエステル類を挙げることができる。これらの溶剤は単独で用いてもよいし、2種類以上混合して使用してもよい。
【0037】
インキ(A)およびインキ(B)には、インキにチクソトロピーを付与するシリカ、酸化チタン、カーボンブラック等の超微粒子や、乾燥したインキ塗膜を基体から容易に剥離できるようフッ素系あるいはシリコン系離型剤を添加してもよい。この他、必要に応じて、一般のスクリーン印刷用インキに通常使用される各種添加剤を添加することができる。
【0038】
熱可塑性樹脂着色組成物、溶剤、および各種添加剤を混合するには、分散攪拌機やビーズミルなど公知慣用の混合装置を使用することができる。
スクリーン印刷により良好な画素形状を作製するためには、インキの25℃における粘度が5〜50Pa・sであることが好ましい。粘度が5Pa・s未満であると、十分なインキ塗膜厚を得にくく、50Pa・sを超えると版の目詰まりが起こりやすい。
【0039】
ここで、「インキの25℃における粘度」とは、CARRI−MED社製コントロールド ストレス レオメーター(Controlled Stress Rheometer)「CSL−100」を用いた25℃におけるインキ粘度の周波数依存性測定から得られる、周波数100Hzにおける粘度のことである。
【0040】
インキ(A)およびインキ(B)を重ね刷りする基材は、表面が平滑で、熱伸縮係数が小さく、耐熱性の高い材料を用いたものであればよく、具体的には、アルミニウム、ステンレスなどの金属板、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドなどのプラスチックシート、ガラス板、セラミック板などを挙げることができる。基材は、インキ(A)およびインキ(B)の乾燥した積層インキ塗膜細片を容易に剥離し得るような離型性の表面を有することが好ましい。このような基材としては、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体などのフッ素樹脂のシート、または上記金属板、プラスチックシート、ガラス板、あるいはセラミック板の表面にフッ素樹脂、シリコーン樹脂、またはオレフィン系離型剤などからなる剥離層を設けたものが挙げられる。
【0041】
前記積層インキ塗膜細片を形成する工程を以下に示す。、
(1)基材上に、インキ(A)を印刷することによって、同一の乾燥塗膜厚、同一の面積、および同一の形状を有する複数の画素を形成する工程。
(2)該画素を形成するインキ(A)の塗膜を乾燥する工程。
(3)インキ(A)の乾燥塗膜からなる画素上に、これと同一の乾燥塗膜厚、同一の面積、および同一の形状となるように、インキ(B)を印刷する工程。
(4)印刷されたインキ(B)の塗膜を乾燥する工程。
(5)乾燥したインキ(A)とインキ(B)の積層インキ塗膜を基体から剥離する工程。
【0042】
粒子径が100μm以下の二色回転粒子を得るためには、インキ(A)およびインキ(B)それぞれの、塗膜厚が3〜30μm、塗膜の平面形状の面積が20〜90000(μm)2の範囲にあるのが好ましい。
インキ(A)の塗膜とインキ(B)の塗膜とは、平面形状が互いに同一で、塗膜面積も互いに同一であることが好ましく、好ましい平面形状は円形である。
基材上に形成された積層インキ塗膜細片を基材から剥離する方法には、特に限定はなく、ドクターブレードで機械的に掻き取ってもよいが、その形状を破壊しないように効率よく剥離するためには、超音波を利用するとよい。
【0043】
図2に、超音波によって基材から積層インキ塗膜細片を剥離する手段の概念図を示す。積層インキ塗膜細片および基材のいずれをも溶解しない液媒体9を容器10に満たし、表面に前記積層インキ塗膜細片が接着した基材11を、治具12に担持させて液媒体9中に浸積し、外部の超音波振動子13から液媒体9を介して該基材11に超音波振動を与え、該基材11から積層インキ塗膜細片を剥離する。液媒体9としては、たとえば、25℃における粘度が0.65mm2/sのジメチルポリシロキサン、25℃における粘度が10mm2/sのジメチルポリシロキサンを用いるのがよい。
【0044】
基材から剥離した積層インキ塗膜細片は、特開平1−282589号公報に記載されている方法を利用して球形化することができる。すなわち、積層インキ塗膜細片を、熱風によって、熱可塑性樹脂着色組成物(A)、あるいは熱可塑性樹脂着色組成物(B)に含まれる熱可塑性樹脂の融解開始温度のうち、高い融解開始温度以上に加熱して溶融させ、溶融した該積層インキ塗膜細片を表面張力によって球形化させた後、これを冷却することにより2色回転粒子が得られる。
【0045】
積層インキ塗膜細片を、あらかじめ熱した空気中やガス中に投入する方法、あるいは空気中やガス中に浮遊分散させて、熱風を吹き付ける方法などが挙げられる。具体的には、スプレードライヤーを用いる方法が挙げられる。
【0046】
得られた2色回転粒子は必要に応じて液体に分散させた状態、もしくは乾燥状態で、フィルター等を用いて分級してもよい。本発明における球形化工程においては分級が困難である過剰に小さい球が発生しないため、容易に分級することができる。
【0047】
次に、上記本発明の二色回転粒子を用いた粒子回転型ディスプレイ用表示シート(以下、「本発明の表示シート」と略記する。)について説明する。
本発明の表示シートの基本的な構成の一例を図1に示した。ただし、図1は本発明の表示シートの構成を説明するための模式図であり、本発明の表示シートの実体を表すものではない。
【0048】
本発明の表示シートは、絶縁性透明樹脂マトリックス1中に、内部に本発明の二色回転粒子2が回転自由な状態で浮遊する誘電性液体3の液胞4が分散したシート状表示部材の両面に、それぞれ、基材5または5’の片面に電極層6または6’を有するシート状電極部材を積層したものである。ただし、該表示シートの少なくとも視認側のシート状電極部材は、透明でなければならない。電極層6または6’の一方は接地7され、他方は矩形電圧パルスを所定の周期で印加する電界印加手段8が接続されている。シート状表示部材に印加される電界の向きが変わると、二色回転粒子2の向きが変わり、これによって表示が切り替えられる。
【0049】
このような構造を有する粒子回転型表示素子の製造方法に関しては、すでに米国特許第4,143,103号明細書に記載されており、以下に、この方法に準じた本発明の表示シートの製造方法について説明する。しかし、本発明の表示シートの製造方法はこれに限定されるものではなく、その他の公知の方法、たとえば、特開平8−234686号公報、あるいはA Newly Developed Electrical Twisting Ball Display, M. Saitoh et.al., Proc. of SID, Vol.23/4 (1982)などに開示された方法によっても製造することができる。
【0050】
本発明の粒子回転型ディスプレイ用表示シートは、概略次の工程を経て製造することができる。
(1)本発明の二色回転粒子を分散させた熱硬化性樹脂組成物を調製する工程。
(2)該熱硬化性樹脂組成物を基板に塗布した後熱硬化させることにより、前記二色回転粒子が分散した絶縁性透明樹脂シートを作製する工程。
(3)該絶縁性透明樹脂シートを誘電性液体中に浸積することにより、該シートを膨潤させ、さらに内部に分散している二色回転粒子を包む誘電性液体の液胞を形成させたシート状表示部材を作製する工程。
(4)該シート状表示部材の両面にシート状電極部材を積層する工程。
【0051】
(1)の工程における熱硬化性樹脂組成物に使用する熱硬化性樹脂、すなわちマトリックス樹脂としては、絶縁性と透明性がともに優れたものであれば特に限定されないが、表示シートとした際に柔軟性を有する二液硬化型シリコーン樹脂を好適に使用することができる。以下、マトリックス樹脂として二液硬化型シリコーン樹脂を使用した粒子回転型ディスプレイ用表示シートについて説明する。
【0052】
熱硬化性樹脂組成物は、二液硬化型シリコーン樹脂に本発明の二色回転粒子を、その含有率が40〜60体積%となるように配合し、攪拌機で混合する。該二色粒子の含有率が40体積%より少ないと、得られる表示シートの隠蔽性が不十分となり表示特性が悪化する。60体積%を越えて大きくなると樹脂量が不足することにより、シート作製時に、基板への熱硬化性樹脂組成物の均一な塗工が困難になる。
【0053】
前記熱硬化性樹脂組成物は、公知慣用の手段で基板に塗布することができる。該熱硬化性樹脂組成物の粘度は、5000〜10000mPa・sと高く、これに適した塗工手段としては、たとえば、ワイヤバー塗工、アプリケータ塗工、スピン塗工などの枚葉コーターの他に、ナイフコーター、コンマコーター、ダイコーター、リップコーター等の連続式コーター等が挙げられる。
【0054】
基板については特に限定はないが、強度や寸法安定性に優れたポリエチレンテレフタレートのシートが好適である。
熱硬化性樹脂組成物の塗膜厚は、本発明の二色回転粒子の平均粒子径の2〜3倍であることが好ましい。2倍より小さいと基板への塗工の際に粗大粒子等が原因となり塗工ムラが生じ易くなるうえ、得られる表示シートの隠蔽性が不十分となる場合がある。逆に、3倍より大きいと、二色回転粒子が厚み方向に多層に配列することにより、表示シートの反射率が低下し、表示品質が悪化する。
【0055】
前記熱硬化性樹脂組成物の塗膜を、加熱して硬化させる。硬化は、二色回転粒子に使用した熱可塑性樹脂のガラス転移温度を超えない範囲で、できるだけ高い温度で行うのが好ましい。硬化温度が高いほど硬化に要する時間が短縮されるため、製造効率を高くすることができる。硬化温度が二色回転粒子に使用した熱可塑性樹脂のガラス転移温度を超えると、二色回転粒子の二色界面に乱れが発生し、表示性能が低下する。
【0056】
上記熱硬化性樹脂組成物の熱硬化塗膜を基材から剥離して、本発明の二色回転粒子が分散した絶縁性透明樹脂シートが得られる。該絶縁性透明樹脂シート中に分散した二色回転粒子は、硬化したマトリックス樹脂と密着しているため、電界を印加しても回転しない。そこで、該絶縁性透明樹脂シートを誘電性液体に浸積して、マトリックス樹脂、すなわち前記熱硬化性樹脂硬化物を膨潤させることによって、二色回転粒子の周囲に該誘電性液体が満たされた液胞を形成することができる。
【0057】
使用する誘電性液体は、マトリックス樹脂を膨潤させ得るものであり、かつ、前記熱可塑性樹脂着色組成物(A)および熱可塑性樹脂着色組成物(B)のいずれをも溶解、あるいは膨潤させないものでなければならない。このような誘電性液体としては、シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル、ポリオレフィンエーテル、イソパラフィン、フッ素化ポリエーテル等の誘電性液体を例として挙げることができる。
【0058】
マトリックス樹脂が前記シリコーン樹脂である場合には、誘電性液体として好適に使用できるのはシリコーンオイルである。シリコーンオイルは、シリコーン樹脂との親和性が高いので、シリコーン樹脂硬化物を膨潤させるが、前記熱可塑性樹脂着色組成物(A)および熱可塑性樹脂着色組成物(B)のいずれも溶解、あるいは膨潤させない。
【0059】
シリコーンオイルとしては、たとえば、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン等を使用することができる。シリコーンオイルの25℃における粘度は100mm2/s以下であることが好ましい。粘度が100mm2/sを越えると液胞中の二色回転粒子の回転が困難になり、表示の応答速度が低下する。これを補うために電界強度を高めると、画像書き換え等に要する電力消費が大きくなるなどの問題が発生する。また、シリコーンオイルの比重は、二色回転粒子の比重に近いものを選択することが好ましい。
【0060】
二色回転粒子が分散した絶縁性透明樹脂シートを誘電性液体中に浸積する場合の条件は、使用するマトリックス樹脂と誘電性液体の種類、マトリックス樹脂の硬化度合いによって異なるが、上述の、マトリックス樹脂が二液硬化型シリコーン樹脂であり、誘電性液体がシリコーンオイルである場合には、室温において12時間以内に液胞が形成される。この時間は、絶縁性透明樹脂シートを誘電性液体中へ浸積する温度を、二色回転粒子に使用した熱可塑性樹脂のガラス転移温度を超えない範囲で、できるだけ高い温度とすることによって短縮することができる。
【0061】
次に、上記の方法によって得られたシート状表示部材の両面に、電極層を積層する。そのためには、該シート状表示部材の両面に、基材の片面に電極層を設けたシート状電極部材、たとえば、片面に電極層を設けたプラスチックフィルムを積層すればよい。その際、必ずしも図2に示したように電極層6または6’と該シート状表示部材の面とを密着させる必要はなく、該シート状電極部材の電極層を設けた面とは反対側の面を該シート状表示部材と密着させてもよい。さらに、該シート状表示部材と該シート状電極部材との間などに、誘電性液体の漏出を防ぐとともに、外気を遮断する目的で、ガスバリア性を有する単層または多層プラスチックフィルムを介在させてもよい。
【0062】
前記シート状電極部材の基材としては、塩化ビニリデン、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどプラスチックのフィルムやシート、ガラス板などを使用することができる。電極層には、アルミニウム、銅、ニッケル等電気抵抗値の低い金属の箔、蒸着やスパッタリングによって形成される薄膜、あるいは、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アンチモン錫(ATO)、酸化錫等の透明電極薄膜などが使用できる。
前述したように、表示シートの少なくとも視認側の電極層、基材、および必要に応じて使用するプラスチックフィルム等はすべて透明でなければならない。
【0063】
シート状表示部材の両面にシート状電極部材を積層する際には、接着剤や両面粘着シート等を使用してもよい。この場合も、表示シートの視認側の透明性を損なわないように材料を選択する必要がある。
上記の方法によって得られる本発明の表示シートは、その外周を一液型シリコーンゴム等でシールすることによって、誘電性液体の漏出を防止し、外気から遮断するのが好ましい。
【0064】
【実施例】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明する。特に断らない限り、「部」および「%」は、それぞれ「質量部」および「質量%」を表す。
【0065】
<スクリーン印刷用インキの調製>
(調整例1)
白色の着色剤である石原産業(株)製酸化チタン「CR−60−2」10.6部、熱可塑性樹脂である星光化学(株)製スチレン−アクリル酸共重合体「ハイロスPS−2003」(ガラス転移温度131℃)39.8部、負極性電荷制御剤であるオリエント化学工業(株)製カリックスアレン誘導体「BONTRONF−21」(比重0.89、平均分子量1300)2.7部、富士シリシア化学(株)製シリカ微粒子「SYLYSIA310P」0.5部からなる熱可塑性樹脂着色組成物(A1)に、東邦化学工業(株)製ジエチレングリコールモノブチルエーテル「ハイソルブDB」46.4部を加え、分散攪拌機を用いて混合し、インキ(A1)を調製した。
【0066】
(調整例2)
白色の着色剤である石原産業(株)製酸化チタン「CR−60−2」11.6部、熱可塑性樹脂である前記「ハイロスMS−2003」43.2部、負極性電荷制御剤であるオリエント化学(株)製サリチル酸系亜鉛錯体「BONTRONE−84」(比重1.00)2.9部、前記「SYLYSIA310P」0.3部からなる熱可塑性樹脂着色組成物(A2)に、前記「ハイソルブDB」42部を加え、分散攪拌機を用いて混合し、インキ(A2)を調製した。
【0067】
(調製例3)
黒色の着色剤である三菱化学(株)製カーボンブラック「#45L」1.1部、熱可塑性樹脂である前記「ハイロスPS−2003」43.4部、比重調整剤である戸田工業(株)製ヘマタイト「HSB−603Rx」8.6部、前記「SYLYSIA310P」0.5部からなる熱可塑性樹脂着色組成物(B1)に、前記「ハイソルブDB」46.4部を加え、分散攪拌機を用いて混合し、インキ(B1)を調製した。
【0068】
(調製例4)
黒色の着色剤である前記カーボンブラック「#45L」1.1部、熱可塑性樹脂である前記「ハイロスPS−2003」42.6部、比重調整剤である前記ヘマタイト「HSB−603Rx」9.1部、前記「SYLYSIA310P」0.3部からなる熱可塑性樹脂着色組成物(B2)に、前記「ハイソルブDB」46.9部を加え、分散攪拌機を用いて混合し、インキ(B2)を調製した。
インキ(A1)、インキ(A2)、インキ(B1)、およびインキ(B2)の25℃、100Hzにおける粘度を、CARRI−MED社製コントロールド ストレス レオメーター(Controlled Stress Rheometer)「CSL−100」を用いて測定した結果、インキ(A1)の粘度は43Pa・s、インキ(A2)の粘度は45Pa・s、インキ(B1)の粘度は41Pa・s、インキ(B2)の粘度は42Pa・sであった。
【0069】
<熱可塑性樹脂着色組成物の比重測定>
調製例1〜4で調製したインキ(A1)、インキ(A2)、インキ(B1)、およびインキ(B2)のそれぞれ2gを金属バットの上に展延し、90℃で17時間熱風乾燥させることにより約2cm角、厚さ約3mm、質量約1gの熱可塑性樹脂着色組成物(A1)、熱可塑性樹脂着色組成物(A2)、熱可塑性樹脂着色組成物(B1)、および熱可塑性樹脂着色組成物(B2)の塗膜片を得た。これらの塗膜片の比重を、ミラージュ貿易(株)製電子比重計「SD−120L」を用いて、空気中質量と水中質量の差より測定した。
その結果、熱可塑性樹脂着色組成物(A1)と熱可塑性樹脂着色組成物(B1)の比重はともに等しく1.24、熱可塑性樹脂着色組成物(A2)と熱可塑性樹脂着色組成物(B2)の比重もともに等しく1.25であった。
【0070】
<二色回転粒子の粒子径分布測定方法>
約0.02gの二色回転粒子の試料を10cm3サンプル瓶に入れ、ベックマンコールター(株)製界面活性剤「イソクリーン」、および同社製電解液「アイソトンII」各3gを添加し、超音波分散器で5分間分散させ、粒子が均一に分散した測定分散液を得た。ベックマンコールター(株)製粒子径分布測定装置「マルチサイザーIII」を使用し、200μmのカウンターチューブを用い測定分散液を循環させて50000個の球の粒子径分布を測定した。得られた粒子径分布データーから平均粒子径、標準偏差値を算出した。なお、本測定方法は二色回転粒子だけではなく、単色級の粒子径分布測定にも適用できる。
【0071】
<熱可塑性樹脂着色組成物の帯電特性測定方法>
片面に離型剤層を有するパナック(株)製ポリエステルフィルム「SP−PET−03−Bu」の離型剤層面に、直径340μmの複数の円形画素を有するメタルマスクを用いて、乾燥後の塗膜厚が10μmとなるようにインキ(A1)をスクリーン印刷して乾燥させた後、該印刷物を、粘度が10mm2/sの信越化学工業(株)製シリコーンオイル「KF96−10cs」中に浸漬し、超音波を照射してインキの乾燥塗膜をポリエステルフィルムから剥離した後、インキ塗膜細片を濾別し、粘度が0.65mm2/sの信越化学工業(株)製シリコーンオイル「KF96L−0.65cs」で洗浄した。得られたインキ塗膜細片をスプレードライヤー中170℃で球形化処理し、平均粒子径100μmの単色球を得た。次いでこの単色球を、信越化学工業(株)製シリコーンオイル「KF96−10cs」(25℃における粘度10mm2/s)中に分散させた分散液を、片面に透明電極層を有する2枚のガラス板を、その透明電極層を対向させて0.96mmの電極間距離を保持させたセルに封入した。顕微鏡で観察しながらセルの電極間に電圧を印加して単色球を電気泳動させ、泳動を開始する閾値電圧Vcを測定し、次式から熱可塑性樹脂着色組成物(A1)の表面電荷密度σを求めた。
σ=(D×(ρm−ρs)×g/6)/(Vc/d)
ここで、Dは単色球の平均粒子径、ρmは単色球の比重、ρsは25℃における粘度が10mm2/sのシリコーンオイルの比重、gは重力加速度、dは電極間距離を表す。
【0072】
熱可塑性樹脂着色組成物(A2)、熱可塑性樹脂着色組成物(B1)、および熱可塑性樹脂着色組成物(B2)についても、熱可塑性樹脂着色組成物(A1)と同様にして表面電荷密度を測定した。
その結果、熱可塑性樹脂着色組成物(A1)の表面電荷密度はσ=−0.595nC/m2、熱可塑性樹脂着色組成物(A2)の表面電荷密度はσ=−0.589nC/m2、熱可塑性樹脂着色組成物(B1)の表面電荷密度はσ=−0.125nC/m2、熱可塑性樹脂着色組成物(B2)の表面電荷密度はσ=−0.110nC/m2であった。
【0073】
すなわち、負極性の帯電特性を付与するカレックスアレン誘導体を添加した熱可塑性樹脂着色組成物(A1)と、熱可塑性樹脂着色組成物(B1)との間における表面電荷密度の差Δσは、−0.470nC/m2であった。
一方、負極性の帯電特性を付与するサリチル酸亜鉛錯体を添加した熱可塑性樹脂着色組成物(A2)と、熱可塑性樹脂着色組成物(B2)との間における表面電荷密度の差Δσは、−0.479nC/m2であった。
【0074】
(実施例1)
片面にシリコン系離型剤層を設けたパナック(株)製ポリエステルフィルム「SP−PET−03−Bu」の離型剤層面に、直径150μmの円柱形の複数の穴を有するメタルマスクを用いて、乾燥後のインキ塗膜厚が10μmとなるように前記インキ(A1)をスクリーン印刷することによって白色の印刷物を得た。インキ塗膜を55℃で熱風乾燥した後室温に戻し、該インキ塗膜上に同様の操作によってインキ(B1)を、乾燥後のインキ塗膜厚が10μmとなるように重ね刷りし、白黒二色のインキ塗膜層からなる積層インキ塗膜を得た。該印刷物を、25℃における粘度が10mm2/sの信越化学工業(株)製シリコーンオイル「KF96−10cs」中に浸漬し、超音波を照射することで積層インキ塗膜細片をポリエステルフィルムから剥離した後濾別し、粘度が0.65mm2/sの信越化学工業(株)製シリコーンオイル「KF96L−0.65cs」で洗浄した。
【0075】
このようにして得られた積層インキ塗膜細片を、0.3MPaの圧縮空気によって大川原化工機(株)製スプレードライヤー「CL−12」の加熱槽上部から分散状態で供給し、該積層インキ塗膜細片に170℃の熱風を噴射して加熱球形化した後、70℃に保った槽に落下させて冷却し、球形状の二色回転粒子を得た。
【0076】
得られた二色回転粒子をスクリーンメッシュを用いて分級し、平均粒子径が70μm、標準偏差値が11μmの二色回転粒子を90%の収率で得た。顕微鏡で観察した結果、この二色回転粒子は二色に色分ける境界が直線であるなど、外観特性に優れていた。
このようにして作製した比重1.24の二色回転粒子54.1部を、信越化学工業(株)製二液硬化型シリコーンエラストマー「KE−106/CAT−RG」(比重1.05)45.9部に分散した後、アプリケータを用いて熱硬化後の塗膜厚が150μmとなるようにポリエチレンテレフタレートのシート上に塗布し、80℃で30分間加熱硬化させた。該硬化塗膜を基材から剥離して得られた、二色回転粒子が分散した絶縁性透明樹脂シートを、25℃における粘度が15mm2/s、25℃における比重が0.995の信越化学工業(株)製シリコーンオイル「KF56」中に室温で12時間浸漬して膨潤させ、二色回転粒子の周りが該シリコーンオイルで満たされた液胞を形成した。このようにして得られたシート状表示部材の両面に、片面に酸化インジウムスズ(ITO)の透明電極層を有するダイセル化学工業(株)製ポリエチレンテレフタレートフィルム「KC−LC」の透明電極層を、住友スリーエム(株)製プラスチック用接着剤「Scotch」を使用して接着し、本発明の表示シートを作製した。該表示シートの両電極間に±1.5kV/mmの矩形波電界を印加したところ、解像度や応答性などに優れた高品質の表示性能を示した。
【0077】
(実施例2)
実施例1における、インキ(A1)の代わりにインキ(A2)を、インキ(B1)の代わりにインキ(B2)を使用した以外は、実施例1と同様にして二色回転粒子を作製した。収率は93%であった。得られた二色回転粒子は、比重が1.25、平均粒子径が80μm、標準偏差値が12μmの粒子径分布を示し、また二色に色分ける境界が直線である等外観特性に優れていた。
【0078】
上記二色回転粒子54.3部、信越化学工業(株)製二液硬化型シリコーンエラストマー「KE−106/CAT−RG」(比重1.05)45.7部を使用した以外は、実施例1と同様にして厚さ180μmの表示シートを作製したところ、解像度や応答性などが非常に優れた表示性能を示した。
【0079】
上記実施例の結果から、本発明の二色回転粒子は、帯電特性に優れており、これを使用した表示シートは、解像度や応答性などに優れた高品質の表示性能を示すことが確認された。
【0080】
【発明の効果】
本発明の二色回転粒子は、色相および誘電性液体中における帯電特性がともに異なる熱可塑性樹脂着色組成物(A)からなる半球と、熱可塑性樹脂着色組成物(B)からなる半球とが、互いに境界面を接して球形形状を形成している。
本発明の二色回転粒子においては、前記熱可塑性樹脂着色組成物(A)または熱可塑性樹脂着色組成物(B)の少なくとも一方に電荷制御剤を添加することにより、誘電性液体中における各半球の表面電荷密度に大きな差を生じさせ、電界の印加によって該二色回転粒子に作用するクーロン力に起因した大きい回転モーメントが得られる。
【0081】
π−電子をもつ複数のベンゼン環が規則的に配列した環構造を有するカリックスアレンや、分子内に電子密度の高い窒素原子(−N=)を有するアジン化合物は、特に高い電荷制御機能を示し、かつ、金属系の電荷制御剤と比べて比重が小さいので、これらを電荷制御剤として添加した二色回転粒子の帯電の立ち上がりが良好であり、二色回転粒子の慣性モーメントを低くできるので、表示の応答速度が速い。
【0082】
また、π−電子の大きな共役系を形成するサリチル酸系金属錯体も高い電荷制御機能を示し、これを添加した二色回転粒子を使用した場合も表示の応答速度が速い。
【0083】
本発明の二色回転粒子を使用した回転粒子型ディスプレイ用表示シートは、駆動電圧を低くすることができ、解像度や応答性に優れた高品質の表示性能を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の表示シートの基本的な構成の一例を説明するための模式図である。
【図2】超音波によって基材から積層インキ塗膜細片を剥離する手段の概念図である。
【符号の説明】
1 絶縁性透明樹脂マトリックス
2 本発明の二色回転粒子
3 誘電性液体
4 液胞
5、5’ シート状電極部材用基材
6、6’ 電極層
7 接地
8 電界印加手段
9 液媒体
10 容器
11 表面に積層インキ塗膜細片が接着した基材
12 治具
13 超音波振動子
Claims (5)
- 色相、および誘電性液体中における帯電特性がともに異なる熱可塑性樹脂着色組成物(A)からなる半球と、熱可塑性樹脂着色組成物(B)からなる半球とが、互いに境界面を接して球形形状を形成している二色回転粒子であって、熱可塑性樹脂着色組成物(A)または熱可塑性樹脂着色組成物(B)の少なくとも一方が電荷制御剤を含有することを特徴とする二色回転粒子。
- 前記電荷制御剤が、カリックスアレンである請求項1に記載の二色回転粒子。
- 前記電荷制御剤が、アジン化合物である請求項1に記載の二色回転粒子。
- 前記電荷制御剤が、サリチル酸系金属錯体である請求項1に記載の二色回転粒子。
- 少なくとも片方が透明の電極層である対向電極層間に挟持されたシート状絶縁性透明樹脂マトリックス中に、誘電性液体と、これに浮遊して自由回転可能な請求項1に記載の二色回転粒子からなる液胞が分散していることを特徴とする粒子回転型ディスプレイ用表示シート。
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JP2002229855A JP2004070043A (ja) | 2002-08-07 | 2002-08-07 | 二色回転粒子およびディスプレイ用表示シート |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR100732829B1 (ko) * | 2005-11-04 | 2007-06-27 | 삼성에스디아이 주식회사 | 유기 전계발광 표시장치 |
KR100740133B1 (ko) * | 2006-07-31 | 2007-07-16 | 삼성에스디아이 주식회사 | 발광 표시 장치 |
JP2016191856A (ja) * | 2015-03-31 | 2016-11-10 | 大日本印刷株式会社 | ツイストボールシートの製造方法、ツイストボール型電子ペーパーの製造方法、ツイストボールシートおよびそれを用いたツイストボール型電子ペーパー |
-
2002
- 2002-08-07 JP JP2002229855A patent/JP2004070043A/ja active Pending
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