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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、電気泳動粒子を利用した表示装置に関し、特に電気泳動粒子を分散媒中に分散させた分散系を個々に封入したマイクロカプセルを電極が形成された基板間に配装されるようにした電気泳動表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
泳動現象を利用した表示装置が知られている。このような表示装置は少なくとも一方が透明な基板間に泳動粒子を含む分散系を封入し、分散系内の電気泳動粒子の分布状態を制御することによって光学的反射特性に変化を与えて所要の表示動作を行わせるものである。また、このような表示装置は磁気泳動を利用した磁気泳動表示装置および電気泳動を利用した電気泳動表示装置がある。
【0003】
電気泳動表示装置は、たとえば図2に示すように少なくとも一方が透明な基板31とその表面に形成された電極板32を対向配置し、電極板間に多孔性スペーサ36で分割されたセル内に電気泳動粒子を分散媒中に分散させた分散系34が封入された構造である。この多孔性スペーサを有する電気泳動表示装置では電極板の極性を制御することでこの電気泳動粒子に電界を与えて透明電極板側に吸着又は離反させ、所望の文字や記号あるいは図形等を表示することができる。
【0004】
一方、特許2551783号公報には、少なくとも一方が透明な一組の対向電極板間に電気泳動粒子を含む分散系を封入し、該電極板間に印加した表示制御用電圧の作用下に分散系内の電気泳動粒子の分布状態を変えることによって光学的反射特性に変化を与えて所要の表示動作を行わせる電気泳動表示装置に於いて、着色した分散媒中に該有機溶剤分散媒と光学的特性の異なる少なくとも一種類の電気泳動粒子を分散させた分散系を封入した多数のマイクロカプセルを形成し、これらのマイクロカプセルを上記電極板間に配装するように構成した電気泳動表示装置が開示されている。
【0005】
これらの電気泳動表示装置の分散媒は非水系である。しかし、分散媒の原料には吸湿や分散媒の製造工程における混入により水分が含まれている。この分散媒中の水分は粒子の凝集の要因となることが知られている。
【0006】
たとえば、このような分散媒中の水分量を規定した表示装置に用いられる分散媒が特許2515665号公報、特許2515686号公報に開示されている。これらの分散媒では通常1400〜1800ppm程度残存する水分を特許2515665号公報では水分量が重量分率で1200ppm以下、特許2515686号公報では水分量が重量分率で500ppm以下とすることで、粒子の凝集が起こることを防ぎ表示装置の高寿命化を実現されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、分散媒中の水分含有量に関して開示されているものはスペーサで分割されたセルやマイクロカプセルにより分散系が仕切られていない構造の電気泳動装置に限られていた。このように分散系が仕切られていない構造の電気泳動装置では仕切られていない分散系中に含有される泳動微粒子の個数が多いために、凝集が発生すると、極めて巨大な凝集物が形成されてしまう。このため、凝集の要因となる水分を1200ppm以下あるいは500ppm以下としなければ、高寿命化が達成出来なかったためと考えられる。
【0008】
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、高速度表示が可能で、かつ長期の使用においても劣化が生じることがない優れた電気泳動表示装置を提供するものである。
【0009】
【問題を解決するための手段】
上記のような課題は以下の(1)乃至(5)のいずれかの本発明により解決される。
(1)分散媒中に泳動する泳動粒子を分散させた分散系を有するセルを少なくとも一方が透明な基板間に配置し、前記分散系内の泳動粒子の分布状態を変えることによって光学的反射特性に変化を与えて所要の表示動作を行わせるようにした表示装置であって、前記セルの水分含有量が重量分率で3000ppm以上20000ppm以下であることを特徴とする表示装置。
(2)前記セルがマイクロカプセルであることを特徴とする(1)に記載の表示装置。
(3)前記マイクロカプセルの外皮を構成する材料が、親水性であることを特徴とする(1)または(2)に記載の表示装置。
(4)前記マイクロカプセルの外皮を構成する材料が、ゼラチン、アラビアゴム、またはウレタン樹脂のいずれかを主成分とすることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の表示装置。
(5)前記泳動が電気泳動であることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の表示装置。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の電気泳動表示装置は図1示すように少なくとも一方が透明な基板11とその表面に形成された電極板12を対向配置し、電気泳動粒子を分散媒中に分散させた分散系14を個々に封入した複数のマイクロカプセル15とバインダ材13とを電極板間に配装されるようにした構造である。
【0011】
発明者らはマイクロカプセルに分散系を封入した構造の微粒子泳動型表示装置における従来知られていなかったマイクロカプセルの水分量について検討を重ねた結果、マイクロカプセル化しない場合と異なり、マイクロカプセルの水分量を、むしろ増加させた方が高速表示が可能で寿命も問題のないことを見いだした。これは、このような分散系をマイクロカプセルに封入した構造の場合には、1個のマイクロカプセル内に含有される分散系の容量が小さく、その中に含まれる泳動粒子の個数も少ない。このため、たとえ泳動粒子の凝集が発生したとしても、表示装置の寿命に与える影響は小さいためと考えられる。
【0012】
基板としては、ガラス、プラスチックを用いることが可能であるが、特に電子ペーパーとして用いる場合には厚さ300μm以下の可撓性プラスチックフィルムが好ましい。このようなプラスチックフィルムの場合には、気体や水蒸気の透過を防ぐためにガスバリア層を設けることが好ましい。
【0013】
ここで、マイクロカプセルに封入すべき分散系の染料としては、アントラキノン類やアゾ化合物類等の油溶性染料を初めとする各種の公知の染料が使用可能である。そして電気泳動粒子としては、酸化チタン、カーボンブラック、紺青又はフタロシアニングリーンや周知のコロイド粒子のほか、種々の有機・無機質顔料、染料、金属粉、ガラスあるいは樹脂等の微粉末などを適宜使用できる。たとえば顔料としては無機顔料、有機顔料が用いられ、無機顔料粒子としては、鉛白、亜鉛華、リトポン、二酸化チタン、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、カオリン、雲母、硫酸バリウム、グロスホワイト、アルミナホワイト、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、カドミウムイエロー、カドミウムリポトンイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、チタンバリウムイエロー、カドミウムオレンジ、カドミウムリポトンオレンジ、モリブデートオレンジ、ベンガラ、鉛丹、銀朱、カドミウムレッド、カドミウムリポトンレッド、アンバー、褐色酸化鉄、亜鉛酸クロムブラウン、クロムグリーン、酸化クロム、ビリジアン、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、チタンコバルトグリーン、紺青、コバルトブルー、群青、セルリアンブルー、コバルトアルミニウムクロムブルー、コバルトバイオレット、ミネラルバイオレット、カーボンブラック、鉄黒、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅クロムブラック、銅クロムマンガンブラック、チタンブラック、アルミニウム粉、銅粉、鉛粉、錫粉、亜鉛粉等が挙げられる。有機顔料粒子としては、ファストイエロー、ジスアゾイエロー、縮合アゾイエロー、アントラピリミジンイエロー、イソインドリンイエロー、銅アゾメチンイエロー、キノフタロインイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、ニッケルジオキシムイエロー、モノアゾイエローレーキ、ジニトロアニリンオレンジ、ピラゾロンオレンジ、ペリノンオレンジ、ナフトールレッド、トルイジンレッド、パーマネントカーミン、ブリリアントファストカーレット、ピラゾロンレッド、ローダミン6Gレーキ、パーマネントレッド、リソールレッド、ボンレーキレッド、レーキレッド、ブリリアントカーミン、ボルドー10B、ナフトールレッド、キナクリドンマゼンタ、縮合アゾレッド、ナフトールカーミン、ペリレンスカーレッドが挙げられる。泳動粒子は分散媒と比重を合わせるため或るいは凝集を防いで分散性を高めるために、表面に他の物質を被覆したり、他の物質と複合化してもよい。粒径としては0.01〜10μm程度が好ましい。また、泳動粒子の表面電荷量を制御したり分散性を高める目的で、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリメチルメタクリレート、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等を分散剤として添加してもよい。また、これら分散系を構成する各材料は必要に応じて2種類以上を混合して用いてもよい。
【0014】
また1つのマイクロカプセルの中に、正負異なる電荷が帯電した白色粒子、黒色粒子を封入することも可能である。さらに、数種類の異なる電気泳動速度の粒子(ゼータ電位の異なる)に、着色しておくことで、駆動電圧により、カラー化することも可能である。
【0015】
本発明の分散系の分散溶媒には、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフテン系炭化水素等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサン、ケロシン、パラフィン系炭化水素等の脂肪族炭化水素類、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロフルオロエチレン、臭化エチル等のハロゲン化炭(化水)素類、含フッ素エーテル化合物、含フッ素エステル化合物等の抵抗率の高い溶媒又はその他の種々の油等を単独又は適宜混合したものなどを使用できる。好ましくは直鎖アルキルベンゼン構造を有する液体分散媒、たとえばn−アミノベンゼン、n−ヘキシルベンゼン、n−ヘプチルベンゼンおよびn−オクチルベンゼン、エチルベンゼン等が使用される。これらの分散媒は高純度に精製されたものでは、水分含有量は500ppm以下となっているのが一般的である。あるいは、モレキュラシーブズ等で脱水処理を行うことで、低水分含有量とすることが可能であることが知られている。このような分散系中には、必要に応じて、電解質や界面活性剤、金属石けん、樹脂、ゴム、油、ワニス、コンパウンドなどの粒子からなる荷電制御剤に加えて分散剤、潤滑剤、安定化剤等を添加できる。
【0016】
分散系の水分は、分散媒からの水分だけでなく、分散粒子、前述の各種添加剤等から混入する。さらに表示装置として使用中にも基板や基板の隙間を通じて大気中から混入する。あるいは、分散系をマイクロカプセル化する場合には、その工程において、さらにマイクロカプセル後においても、マイクロカプセルの外皮(マイクロカプセル壁)を通しても混入する。
【0017】
本発明においては、分散系中の水分含有量が重量分率で3000ppm以上20000ppm以下とする。前記範囲以下では、電気泳動粒子の移動速度が遅く、十分な表示性能を発揮できない。前記範囲以上では、やはり電気泳動粒子の移動速度が遅く、特に高電圧を印加しないと駆動しなくなる。また、水分含有量の上限ならびに下限の数値は本発明者らの検討によれば分散系を構成する材料によらないことが確認された。
【0018】
本発明の表示装置は反転時間が1秒以下、好ましくは0.5秒以下を実現することが可能である。水分は前述のように原材料あるいは大気中から混入もあるが、分散系を脱水処理、水分の添加により所望の水分含有量とすることができる。
【0019】
2つの電極間に配置された電気泳動粒子の反転時間tは式t=6πd2η/Vεζで与えられることが知られている。ここで、dは電極の間隔、ηは液体媒体の粘性、εは液体媒体の誘電率、Vは電極間の電位差、ζは粒子のζ(ゼータ)電位である。この式によれば分散系の水分含有量の増加は誘電率の低下の要因となることから反転時間を延ばし好ましくないものと推察されていた。これに対して、適量の水分含有量では、泳動微粒子が適度に凝集することで、反転時間の短縮が可能になるものと考えられる。具体的には1μm程度の泳動微粒子を用いた場合には、数個から数十個の泳動微粒子がゆるやかな凝集状態となり、その凝集集合体の状態で泳動していると推察される。
【0020】
一般に水分量は、分散系を調合した段階では、カールフィッシャー水分計等を用いて容易に評価することが可能である。しかし、マイクロカプセル化した場合には、そのマイクロカプセルの内容物である分散系中の水分量の評価は現段階の技術では正確には評価することが困難である。このため、本発明においては、マイクロカプセルの水分含有量とはマイクロカプセル全体、すなわちカプセル壁を含めた状態で評価した値と定義する。
【0021】
このマイクロカプセルの壁材としては、親水性樹脂、たとえば、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ウレタン樹脂、ゼラチン−アラビアゴム等を使用することで、分散系内の水分とカプセル壁内の水分が平衡状態となり安定した水分量を長時間にわたり維持することが可能となるため好ましい。そして、マイクロカプセル壁材料を、ゼラチン、アラビアゴム、またはウレタン樹脂のいずれかを主成分とすることが特に好ましい。
【0022】
また、マイクロカプセルをバインダーあるいは接着層で基体に固定することが特に好ましい。その際のバインダーあるいは接着層の材質も、適度の水分を保持可能なものが好ましい。具体的には各種の水溶性ポリマーを用いることが出来る。
【0023】
このようなバインダーあるいは接着層がマイクロカプセルと混合された状態での、マイクロカプセルのみの水分含有量の評価は、極めて困難であるが、バインダーあるいは接着層のみでの水分量と、マイクロカプセルにバインダーあるいは接着層が付着した状態の水分量とを測定することで、おおよその推算が可能である。
【0024】
なお、微粒子泳動型表示装置としては、磁界により磁性粒子を泳動する磁気泳動表示装置においても本発明の効果は確認されているが、磁界を発生するために電流を消費する磁気泳動型表示装置よりも、電界により動作する消費電力の小さな電気泳動型表示装置に適用することが好ましい。
【0025】
また、対向する2枚の基板間距離は、表示装置の特性に大きな影響を及ぼす。このため、スチレンボール等のスペーサーを適量用いて、常に一定の間隔となるようにすることが好ましい。マイクロカプセル100個に対して、スペーサーであるボールは0.1〜20個程度が好ましい。前記範囲以下では、基板間距離が不安定となり、前記範囲以上では表示装置のコントラストが低下する。
【0026】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。これらは本発明の一態様にすぎず、これらに本発明の範囲は拘束されない。
【0027】
[実施例1]
マイクロカプセルに封入する分散系は、電気泳動粒子として平均粒径0.8μmの12部の酸化チタン(石原産業製:CR50)と、分散剤として1.5部のオレイン酸および0.5部のチタン系カップリング剤と、1部の青色アントラキノン系染料と、分散溶媒として85部のn−ヘキシルベンゼンとを超音波分散により混和し基本分散系とした。この基本分散系をモレキュラシーブズで脱水処理した後に、水を添加し、各種の水分含有量とした。
【0028】
この基本分散系を平均径が50ミクロンになるように調整しマイクロカプセルとした。また、バインダ材としては、シリコーン化合物のエマルジョンを用いた。また、誘電率調整剤としては、1,4−ブタンジオールを用い、バインダ材に対して8部だけ混合した。また、水分量をマイクロカプセル化後にカールフィッシャー水分計により評価した。
【0029】
透明基板として酸化シリコンを両面に同時にスパッタ法により成膜した厚さ0.15mmの可撓性透明プラスチックフィルムを用い、その片面に、ポリビニルアルコール層(ガスバリア層)、透明導電膜(ITO膜)を成膜したものに上記電気泳動表示用表示液をドクターブレード法にて塗布した後。40μm径のナイロンビーズスペーサを介して上面基板を対向配置させて、両透明基板をエポキシ樹脂系接着剤で封止する事により電気泳動表示パネルを作製した。なお、スペーサは、マイクロカプセルの1%の数とした。これらの電気泳動表示セルをバイポーラ電源に接続し正負に20Vの直流電圧を反転しながら印加したところ青と白の表示が得られた。各々の表示色を45度照射−垂直受光で反射率を測定し両表示色の反射率の比からコントラストを求めた、直流電圧印加で測定したコントラストの90%になるまでの時間を反転時間とした。また、さらに正負印加の反転を1秒毎とし、繰り返し反転を行い、コントラストが初期値の50%になるまでの時間を寿命と定義し評価した。水分量と反転時間の関係を表1、図3に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
作製した試料は実施例、比較例とも実用上問題のない2400時間以上の寿命が得られた。水分含有量3000ppm以上から20000ppm以下の関係を満たす本発明の試料3乃至5はいずれも1秒以下の反転時間が得られた。しかし、水分含有量3000ppm未満である試料1、2および水分含有量20000ppmを越える試料7は反転時間が長いことが確認された。
【0032】
[実施例2]
エチルベンゼンに0.5wt.%の青色染料(バイエル社製:マクロレックスブルーRR)を溶解したものを用い、泳動粒子として、平均粒径0.21μmの二酸化チタン(石原産業製:CR60)を用いた。この分散系をゼラチンを壁材とする平均50μm径のカプセルに封入しマイクロカプセルを作製した。このマイクロカプセルを水分含有量の異なるアルコール中に24時間浸積し、水分含有量の異なるマイクロカプセルとした。その後、上記実施例1と同様の工程にて、電気泳動表示装置を作製し、同様の評価を行った。その結果、水分含有量3000ppm以上から20000ppm以下の関係を満たす試料はいずれも実用上問題のない1秒以下の反転時間かつ2400時間以上の寿命が得られた。しかし、水分含有量3000ppm未満である試料および水分含有量20000ppmを越える試料は反転時間が1秒を越えて長いことが確認された。
【0033】
さらに、本発明の上記エチルベンゼンを分散溶媒とした水分含有量5500ppmの表示装置は、40℃2000時間の放置処理後にも、反転時間0.4秒、2400時間以上の寿命が確認された。これはカプセル壁および用いた水溶性バインダーが適度の水分を分散系が保つことに寄与したためである。
【0034】
[実施例3]
4種のアゾ系二色性色素を3wt%混合して黒色としたn−アミノベンゼンに、粒径0.5μmと2.5μmのルチル型酸化チタンを等量と適量の界面活性剤を加えてローラーミルで撹拌して分散系を調整した。この分散系はアラビアゴム−ゼラチン系樹脂でマイクロカプセルに取り込んだ。平均径が50μmとなるように分級を行い、予め接着剤を施したITOスパッタ済み150μmPENフィルム基板上にスプレーコーティング法を用いて配列せしめた。その上にイソシアネート硬化剤を混合した水酸基を有する塩化ビニル−酢酸ビニル系樹脂に直径30μmのスチレン球スペーサーを適量混合したバインダーを塗布し、もう1枚の透明150μmPENフィルム基板を圧着し、マイクロカプセルの2%の数のスペーサーを用いて間隔がほぼ30μmとなるように、張り合わせた後、熱硬化した。さらに基板が剥がれないよう紫外線硬化樹脂により縁を硬化させた。本実施例では、分散系に添加する界面活性剤量によりマイクロカプセル水分量が変化することが確認された。水分含有量8000ppmの本表示装置では、反転時間0.3秒、コントラスト15、寿命3000時間以上であることが確認された。これに対して、マイクロカプセル化後にモレキュラシーブズにより水分を500ppmまで除去したカプセルを用いた表示装置では、反転時間2.6秒、コントラスト比も2.5と低かった。この原因は分散系だけでなく、カプセル壁の水分も多く失われたために、カプセル壁が柔軟性を失って、透明基板との密着が不十分だったためと考えられる。
【0035】
【発明の効果】
上記の結果から、本発明の効果は明らかである。本発明による電気泳動表示装置は、反転時間が短くかつ高寿命を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の表示装置の一例を示す断面構成図である。
【図2】本発明の表示装置の一例を示す断面構成図である。
【図3】本発明および比較例の水分含有量と反転時間を示す図である。
【符号の説明】
11 基板
12 電極板
13 バインダ材
14 分散系
15 マイクロカプセル
31 基板
32 電極板
34 分散系
36 多孔性スペーサ
Claims (5)
- 分散媒中に泳動する泳動粒子を分散させた分散系を有するセルを少なくとも一方が透明な基板間に配置し、前記分散系内の泳動粒子の分布状態を変えることによって光学的反射特性に変化を与えて所要の表示動作を行わせるようにした表示装置であって、前記セルの水分含有量が重量分率で3000ppm以上20000ppm以下であることを特徴とする表示装置。
- 前記セルがマイクロカプセルであることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
- 前記マイクロカプセルの外皮を構成する材料が、親水性であることを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
- 前記マイクロカプセルの外皮を構成する材料が、ゼラチン、アラビアゴム、またはウレタン樹脂のいずれかを主成分とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の表示装置。
- 前記泳動が電気泳動であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の表示装置。
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