JP2004326011A - 画像表示装置の製造方法及び画像表示装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】第1発明の第1実施例では、少なくとも一方が透明な対向する基板1、2間に粒子群5、6を封入し、粒子群に電界を与えて粒子を移動させ画像を表示する、隔壁7により互いに隔離された1つ以上の画像表示素子を持つ画像表示板を備える画像表示装置の製造方法であって、(1)基材11上にタックフリーの接着剤12をシート状に塗工して転写接着フィルム13を準備し、(2)準備した転写接着フィルムの接着剤の存在する面を、一方の基板1上に設けた隔壁7に押し当てた後基材11を剥がすことで、接着剤を隔壁上にのみ転写し、(3)他方の基板2を転写した接着剤を介して隔壁上に配置し、接着剤を硬化させることで、隔壁と他方の基板とを接合する。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電力を利用した粒子の飛翔移動または粉流体の移動に伴い画像を繰り返し表示、消去できる画像表示板を備える画像表示装置の製造方法及びその製造方法に従って製造した画像表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶(LCD)に代わる画像表示装置として、電気泳動方式、エレクトロクロミック方式、サーマル方式、2色粒子回転方式などの技術を用いた画像表示装置(ディスプレイ)が提案されている。これらの画像表示装置は、LCDに比べて、通常の印刷物に近い広い視野角が得られる、消費電力が小さい、メモリー機能を有している等のメリットから、次世代の安価な表示装置として考えられ、携帯端末用表示、電子ペーパー等への展開が期待されている。
【0003】
最近、分散粒子と着色溶液からなる分散液をマイクロカプセル化し、これを対向する基板間に配置する電気泳動方式が提案されている。しかしながら、電気泳動方式では、液中に粒子が泳動するために液の粘性抵抗により応答速度が遅いという問題がある。また、低比重の溶液中に酸化チタンなどの高比重の粒子を分散させているために、沈降しやすく、分散状態の安定性維持が難しく、画像繰り返し安定性に欠けるという問題を抱えている。マイクロカプセル化にしても、セルサイズをマイクロカプセルレベルにし、見かけ上、このような欠点が現れ難くしているだけで、本質的な問題は何ら解決されていない。
【0004】
以上のような溶液中での挙動を利用した電気泳動方式に対し、溶液を使わず、導電性粒子と電荷輸送層を基板の一部に組み入れた方式も提案されている(例えば、非特許文献1参照)。この方式は、電荷輸送層、更には電荷発生層を配置するための構造が複雑になると共に、導電性粒子から電荷を一定に逃がすことが難しく安定性に欠けるという問題もある。
【0005】
【非特許文献1】
趙 国来、外3名、“新しいトナーディスプレイデバイス(I)”、1999年7月21日、日本画像学会年次大会(通算83回)“Japan Hardcopy’99”、p.249−252
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上の問題を解消するために、乾式で応答速度が速く、単純な構造で、安価かつ、安定性に優れる画像表示装置として、透明基板および対向基板の間に、色及び帯電特性の異なる2種類の粒子群または粉流体を封入し、電位の異なる2種類の電極から粒子群または粉流体に電界を与えて、粒子または粉流体を移動させ画像を表示する、隔壁により互いに隔離された1つ以上の画像表示素子を持つ画像表示板を備える画像表示装置が知られている。この画像表示装置では、透明基板と対向基板との間に隔壁を配置することにより画像表示素子を形成している。
【0007】
従来、この一対の基板に対する隔壁の形成方法として、ウェットの接着剤を紙の上で伸ばして染み込ませ、それを一方の基板に設けた隔壁の上に貼った後剥がして接着剤を隔壁に転写し、転写した接着剤により隔壁と他方の基板とを接合する方法や、一方の基板に設けた隔壁上に他方の基板を設置し、プレスで加圧して他方の基板を隔壁に押し付け、密着させて固定する方法などが知られている。
【0008】
しかしながら、前者の方法では、隔壁で形成されるセル内に接着剤が染み込んだり、接着剤が染み込んだ紙に粒子または粉流体が取られたりする不具合が生じ、後者の方法では、圧力むらや隔壁の高さのむらなどにより、密着の不具合箇所が出て、粒子または粉流体が表示の際の反転移動中に隔壁と基板との間に入り込んでしまうという不具合が生じる問題があった。
【0009】
本発明の目的は上述した課題を解消して、製造にあたって、接着剤がセル内に染み込んだり、粒子または粉流体が取られたりすることのない画像表示装置の製造方法及び画像表示装置を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1発明(第1実施例)に係る画像表示装置の製造方法は、少なくとも一方が透明な対向する基板間に粒子群を封入し、粒子群に電界を与えて粒子を移動させ画像を表示する、隔壁により互いに隔離された1つ以上の画像表示素子を持つ画像表示板を備える画像表示装置の製造方法であって、(1)基材上にタックフリーの接着剤をシート状に塗工して転写接着フィルムを準備し、(2)準備した転写接着フィルムの接着剤の存在する面を、一方の基板上に設けた隔壁に押し当てた後前記基材を剥がすことで、接着剤を隔壁上にのみ転写し、(3)他方の基板を、転写した接着剤を介して隔壁上に配置し、接着剤を硬化させることで、隔壁と他方の基板とを接合したこと、を特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の第1発明(第2実施例)に係る画像表示装置の製造方法は、少なくとも一方が透明な対向する基板間に粒子群を封入し、粒子群に電界を与えて粒子を移動させ画像を表示する、隔壁により互いに隔離された1つ以上の画像表示素子を持つ画像表示板を備える画像表示装置の製造方法であって、(1)樹脂バインダ中に接着剤内包マイクロカプセルを均一に分散し、基材上にこれをシート状に、マイクロカプセルの一部が、樹脂バインダ層の外に出るように塗工して転写接着フィルムを準備し、(2)準備した転写接着フィルムのマイクロカプセルの存在する面を、一方の基板上に設けた隔壁に押し当てた後前記基材を剥がすことで、マイクロカプセルを割り接着剤を隔壁上にのみ転写し、(3)他方の基板を、転写した接着剤を介して隔壁上に配置し、接着剤を硬化させることで、隔壁と他方の基板とを接合したこと、を特徴とするものである。
【0012】
本発明の第1発明の第1実施例では、(1)基材上にタックフリーの接着剤をシート状に塗工して転写接着フィルムを準備し、(2)準備した転写接着フィルムの接着剤の存在する面を、一方の基板上に設けた隔壁に押し当てた後前記基材を剥がすことで、接着剤を隔壁上にのみ転写し、(3)他方の基板を、転写した接着剤を介して隔壁上に配置し、接着剤を硬化させることで、隔壁と他方の基板とを接合することで、また、本発明の第1発明の第2実施例では、(1)樹脂バインダ中に接着剤内包マイクロカプセルを均一に分散し、基材上にこれをシート状に、マイクロカプセルの一部が、樹脂バインダ層の外に出るように塗工して転写接着フィルムを準備し、(2)準備した転写接着フィルムのマイクロカプセルの存在する面を、一方の基板上に設けた隔壁に押し当てた後前記基材を剥がすことで、マイクロカプセルを割り接着剤を隔壁上にのみ転写し、(3)他方の基板を、転写した接着剤を介して隔壁上に配置し、接着剤を硬化させることで、隔壁と他方の基板とを接合したことで、いずれの例でも転写接着フィルムはタックフリーであり、接着剤がセル内に染み込む問題、及び、粒子が取られたりする問題を解決することができる。
【0013】
本発明の第1発明の好適例として、粒子の平均粒子径が0.1〜50μmであること、同じ種類のキャリヤを用いてブローオフ法により測定した2種類の粒子の、表面電荷密度の差の絶対値が、5μC/m2〜150μC/m2であること、粒子が、その表面と1mmの間隔をもって配置されたコロナ放電器に、8KVの電圧を印加してコロナ放電を発生させて表面を帯電させた場合に、0.3秒後における表面電位の最大値が300Vより大きい粒子であること、および、粒子の色が白色及び黒色であること、がある。いずれの場合も本発明の画像表示装置の製造方法をより好適に実施することができる。
【0014】
本発明の第2発明(第1実施例)に係る画像表示装置の製造方法は、少なくとも一方が透明な対向する基板間に粉流体を封入し、粉流体に電界を与えて粉流体を移動させ画像を表示する、隔壁により互いに隔離された1つ以上の画像表示素子を持つ画像表示板を備える画像表示装置の製造方法であって、(1)基材上にタックフリーの接着剤をシート状に塗工して転写接着フィルムを準備し、(2)準備した転写接着フィルムの接着剤の存在する面を、一方の基板上に設けた隔壁に押し当てた後前記基材を剥がすことで、接着剤を隔壁上にのみ転写し、(3)他方の基板を、転写した接着剤を介して隔壁上に配置し、接着剤を硬化させることで、隔壁と他方の基板とを接合したこと、を特徴とするものである。
【0015】
本発明の第2発明(第2実施例)に係る画像表示装置の製造方法は、少なくとも一方が透明な対向する基板間に粉流体を封入し、粉流体に電界を与えて粉流体を移動させ画像を表示する、隔壁により互いに隔離された1つ以上の画像表示素子を持つ画像表示板を備える画像表示装置の製造方法であって、(1)樹脂バインダ中に接着剤内包マイクロカプセルを均一に分散し、基材上にこれをシート状に、マイクロカプセルの一部が、樹脂バインダ層の外に出るように塗工して転写接着フィルムを準備し、(2)準備した転写接着フィルムのマイクロカプセルの存在する面を、一方の基板上に設けた隔壁に押し当てた後前記基材を剥がすことで、マイクロカプセルを割り接着剤を隔壁上にのみ転写し、(3)他方の基板を、転写した接着剤を介して隔壁上に配置し、接着剤を硬化させることで、隔壁と他方の基板とを接合したこと、を特徴とするものである。
【0016】
本発明の第2発明の第1実施例では、(1)基材上にタックフリーの接着剤をシート状に塗工して転写接着フィルムを準備し、(2)準備した転写接着フィルムの接着剤の存在する面を、一方の基板上に設けた隔壁に押し当てた後前記基材を剥がすことで、接着剤を隔壁上にのみ転写し、(3)他方の基板を、転写した接着剤を介して隔壁上に配置し、接着剤を硬化させることで、隔壁と他方の基板とを接合することで、また、本発明の第2発明の第2実施例では、(1)樹脂バインダ中に接着剤内包マイクロカプセルを均一に分散し、基材上にこれをシート状に、マイクロカプセルの一部が、樹脂バインダ層の外に出るように塗工して転写接着フィルムを準備し、(2)準備した転写接着フィルムのマイクロカプセルの存在する面を、一方の基板上に設けた隔壁に押し当てた後前記基材を剥がすことで、マイクロカプセルを割り接着剤を隔壁上にのみ転写し、(3)他方の基板を、転写した接着剤を介して隔壁上に配置し、接着剤を硬化させることで、隔壁と他方の基板とを接合したことで、いずれの例でも転写接着フィルムはタックフリーであり、接着剤がセル内に染み込む問題、及び、粉流体が取られたりする問題を解決することができる。
【0017】
本発明の第2発明の好適例として、粉流体の最大浮遊時の見かけ体積が未浮遊時の2倍以上であること、粉流体の見かけ体積の時間変化が次式を満たすものであること、V10/V5>0.8、(なお、V5は最大浮遊時から5分後の粉流体の見かけ体積(cm3)、V10は最大浮遊時から10分後の粉流体の見かけ体積(cm3)を示す。)、および、粉流体の平均粒子径d(0.5)が0.1〜20μmであること、がある。いずれの場合も本発明の画像表示装置の製造方法をより好適に実施することができる。
【0018】
また、本発明の画像表示装置は、上述した本発明の第1発明または第2発明に係る画像表示装置の製造方法に従って製造することが特徴となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1(a)〜(c)はそれぞれ本発明の画像表示装置を構成する画像表示板の画像表示素子における一例の構成とその表示駆動原理を示す図である。図1(a)〜(c)に示す例において、1は透明基板、2は対向基板、3は透明な表示電極、4は対向電極、5は負帯電性粒子(または粉流体)、6は正帯電性粒子(または粉流体)、7は隔壁である。
【0020】
図1(a)は本発明の画像表示装置において、対向する透明基板1と対向基板2との間に負帯電性粒子5及び正帯電性粒子を配置した状態を示す。この状態のものに、電源により表示電極3側と、対向電極4側に電位差ができるように電圧を付加すると、図1(b)に示すようにクーロン力によって、正帯電性粒子6は表示電極3側に飛翔移動し、負帯電性粒子5は対向電極4側に飛翔移動する。この場合、透明基板1側から見る表示面は正帯電性粒子6の色に見える。次に電源の電位を切り替えて、表示電極3と、対向電極4に前記とは逆の電位差ができるように電圧を付加すると、図1(c)に示すようにクーロン力によって、負帯電性粒子5は表示電極3に飛翔移動し、正帯電性粒子6は対向電極4の側に飛翔移動する。この場合、透明基板1側から見る表示面は負帯電性粒子5の色に見える。
【0021】
図1(b)と図1(c)の間は電源の電位を反転するだけで繰り返し表示することができ、このように電源の電位を反転することで可逆的に色を変化させることができる。例えば、負帯電性粒子5を白色とし、正帯電性粒子6を黒色とするか、負帯電性粒子5を黒色とし、正帯電性粒子6を白色とすると、表示は白色と黒色間の可逆表示となる。本発明の方式では各粒子は電極に鏡像力により貼り付いた状態にあるので、電源を切った後も表示画像は長期に保持され、メモリー保持性が良い。
【0022】
なお、上述した説明では、負帯電性粒子5と正帯電性粒子6を例にとって説明したが、これらを、後述するように気体中に固体状物質が分散質として安定に浮遊するエアロゾル状態で高流動性を示す負帯電性粉流体または正帯電性粉流体と置き換えても、同様の駆動原理となる。
【0023】
本発明の画像表示装置の製造方法における特徴は、上述した構成の画像表示装置を製造するにあたり、画像表示素子を形成する隔壁7の透明基板1または対向基板2に対する固定方法を改良した点である。改良方法は、粒子を利用した画像表示装置でも粉流体を利用した画像表示装置でも同じであるため、以下、粒子を例にとって説明する。
【0024】
図2(a)〜(d)はそれぞれ本発明の第1発明及び第2発明の第1実施例に係る画像表示装置の製造方法の一例を説明するための図である。第1発明及び第2発明の第1実施例では、まず、図2(a)に示すように、フィルムまたはボードからなる基材11上にタックフリーの接着剤12をシート状に塗工して、転写接着フィルム13を準備する。なお、タックフリーの接着剤12としては、Bステージ硬化エポキシ接着剤、アクリル接着剤(なるべく疎水性のもので粘着成分の少ないもの)などを好適に使用することができる。また、本例では、ガラス基板からなる透明基板1上に隔壁7を形成し、隔壁7間のセル内に、黒色の負帯電性粒子5及び白色の正帯電性粒子6を散布して予め充填しておく。散布直後の粒子は、隔壁7の先端近傍の高さまで積もっている。
【0025】
次に、図2(b)に示すように、準備した転写接着フィルム13の接着剤12が存在する面を、隔壁7に押し当てる。この際、隔壁7の角からかかるせん断応力により、隔壁7上の接着剤12が転写接着フィルム13から切り離される。次に、図2(c)に示すように、転写接着フィルム13を隔壁7から剥がす。これにより、接着剤12を隔壁7上にのみ転写することができる。なお、接着剤12はタックフリーであるため、転写接着フィルム13を隔壁7から剥がしても、粒子は転写接着フィルム13に付着しない。最後に、図2(d)に示すように、対向基板2を転写した接着剤12を介して隔壁7上に配置し、接着剤12を熱や紫外線で硬化させることで、隔壁7と対向基板2とを接合する。
【0026】
図3(a)〜(d)はそれぞれ本発明の第1発明及び第2発明の第2実施例に係る画像表示装置の一例を説明するための図である。第1発明及び第2発明の第2実施例では、まず、図3(a)に示すように、好ましくはタックフリーの樹脂バインダ21中に液状接着剤22を内包した接着剤内包マイクロカプセル23(マイクロカプセル内に液状接着剤22が納まっている状態ではタックフリーである)を均一に分散し、基板24上にこれをシート状に、マイクロカプセルの一部が、樹脂バインダ層の外に出るように塗工して、転写接着フィルム25を準備する。なお、液状接着剤22はタックフリーである必要はなく、従来から公知の液状接着剤のいずれをも使用することができる。また、本例では、ガラス基板からなる透明基板1上に隔壁7を形成し、隔壁7間のセル内に、黒色の負帯電性粒子5及び白色の正帯電性粒子6を散布して予め充填しておく。散布直後の粒子は、隔壁7の先端近傍の高さまで積もっている。
【0027】
次に、図3(b)に示すように、準備した転写接着フィルム25の接着剤内包マイクロカプセル23が好ましくは全面に存在する面を、隔壁7に押し当てる。この際、隔壁7に対応する位置に存在する接着剤内包マイクロカプセル23が潰れ、中の液状接着剤22が隔壁7に付着する。次に、図3(c)に示すように、転写接着フィルム25を隔壁7から剥がす。これにより、液状接着剤22を隔壁7上にのみ転写することができる。なお、接着剤内包マイクロカプセル23は潰れていない状態ではタックフリーであるため、転写接着フィルム25を隔壁7から剥がしても、粒子は転写接着フィルム25に付着しない。最後に、図3(d)に示すように、対向基板2を転写した液状接着剤22を介して隔壁7上に配置し、液状接着剤22を熱や紫外線で硬化させることで、隔壁7と対向基板2とを接合する。
【0028】
このようにして隔壁7を形成することにより、透明基板1と対向基板2との間に強固に隔壁7を形成することができ、画像表示素子を構成する空間中に、粒子または粉流体の流出を抑制した状態で所定量の粒子群または粉流体を完全に封入することができる。
【0029】
以下、本発明の画像表示装置を構成する各部材について詳細に説明する。
基板については、少なくとも一方の基板は装置外側から粒子の色が確認できる透明基板1であり、可視光の透過率が高くかつ耐熱性の良い材料が好適である。対向基板2は透明でも不透明でもかまわない。基板の可撓性の有無は用途により適宜選択され、例えば、電子ペーパー等の用途には可撓性のある材料、携帯電話、PDA、ノートパソコン類の携帯機器表示等の用途には可撓性のない材料が好適である。基板材料を例示すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、アクリルなどのポリマーシートや、ガラス、石英などの無機シートが挙げられる。基板の厚みは、2〜5000μmが好ましく、特に5〜1000μmが好適であり、薄すぎると、強度、基板間の間隔均一性を保ちにくくなり、厚すぎると、表示機能としての鮮明さ、コントラストの低下が発生し、特に、電子ペーパー用途の場合にはフレキシビリティー性に欠ける。
【0030】
電極については、図1に示す例では、電位の異なる2種類の電極である表示電極3及び対向電極4はそれぞれ透明基板1上及び対向基板2上に設けられている。他の電極配置方法としては、図4のように表示電極3及び対向電極4のいずれをも対向基板2の透明基板1と対向する側に配置する方式もある。なお、図4において、8は絶縁体である。図4に示す例では、表示電極3と対向電極4の両者は不透明な電極で良いので、銅、アルミニウム等の安価で、かつ抵抗の低い金属電極が使用できる。外部電圧印加は、直流あるいはそれに交流を重畳しても良い。各電極は帯電した粒子の電荷が逃げないように絶縁性のコート層を形成することが好ましい。このコート層は、負帯電性粒子に対しては正帯電性の樹脂を、正帯電性粒子に対しては負帯電性の樹脂を用いると粒子の電荷が逃げ難いので特に好ましい。
【0031】
本発明の画像表示装置では、各図に示すような隔壁7を各表示素子の四周に設けるのが好ましい。隔壁を平行する2方向に設けることもできる。これにより、基板平行方向の余分な粒子移動を阻止し、耐久繰り返し性、メモリー保持性を介助すると共に、基板間の間隔を均一にかつ補強し画像表示板の強度を上げることもできる。
【0032】
隔壁7の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、スクリーン版を用いて所定の位置にペーストを重ね塗りするスクリーン印刷法や、基板上に所望の厚さの隔壁材をベタ塗りし、隔壁として残したい部分のみレジストパターンを隔壁材上に被覆した後、ブラスト材を噴射して隔壁部以外の隔壁材を切削除去するサンドブラスト法や、該基板上に感光性樹脂を用いてレジストパターンを形成し、レジスト凹部へペーストを埋込んだ後レジスト除去するリフトオフ法(アディティブ法)や、該基板上に、隔壁材料を含有した感光性樹脂組成物を塗布し、露光・現像により所望のパターンを得る感光性ペースト法や、該基板上に隔壁材料を含有するペーストを塗布した後、凹凸を有する金型等を圧着・加圧成形して隔壁形成する鋳型成形法等、種々の方法が採用される。さらに鋳型成形法を応用し、鋳型として感光性樹脂組成物により設けたレリーフパターンを使用する、レリーフ型押し法も採用される。
【0033】
次に、本発明の第1発明で利用する粒子について詳細に説明する。
本発明の画像表示装置で表示のための粒子は、負又は正帯電性の着色粒子で、クーロン力により飛翔移動するものであればいずれでも良いが、特に、帯電性に優れ、球形で比重の小さい粒子が好適である。粒子には単一の色のものであり、白色又は黒色の粒子が好適に用いられる。粒子の平均粒子径は0.1〜50μmが好ましく、特に1〜30μmが好ましい。粒子径がこの範囲より小さいと粒子の電荷密度が大きすぎて電極や基板への鏡像力が強すぎ、メモリー性はよいが、電界を反転した場合の追随性が悪くなる。反対に粒子径がこの範囲より大きいと、追随性は良いが、メモリー性が悪くなる。
【0034】
粒子を負又は正に帯電させる方法は、特に限定されないが、コロナ放電法、電極注入法、摩擦法等の粒子を帯電する方法が用いられる。粒子の帯電量は当然その測定条件に依存するが、画像表示装置における粒子の帯電量はほぼ、初期帯電量、基板との接触、種類の異なる粒子との接触、経過時間に伴う電荷減衰に依存し、特に「種類の異なる粒子との接触」、すなわち2粒子間の接触に伴う帯電挙動の飽和値が支配因子となっているということが分かっている。したがって、帯電量においてはこの2粒子間の帯電特性の差、すなわち仕事関数の差を知ることが重要であるが、これは簡易測定では難しい。
【0035】
本発明者らは鋭意検討の結果、ブローオフ法において同じキャリヤを用いて、それぞれの粒子の帯電量測定を行うことにより相対的に評価できることを見出し、これを表面電荷密度によって規定することにより、画像表示装置として適当な粒子の帯電量を予測できることを見出した。
【0036】
測定方法は詳しくは後に述べるが、ブローオフ法によって、粒子とキャリヤ粒子とを十分に接触させ、その飽和帯電量を測定することにより該粒子の単位重量あたりの帯電量を測定することができる。そして、該粒子の粒子径と比重を別途求めることにより該粒子の表面電荷密度を算出することができる。
【0037】
画像表示装置においては、用いる粒子の粒子径は小さく、重力の影響はほぼ無視できるほど小さいため、粒子の比重は粒子の動きに対して影響しない。しかし、粒子の帯電量においては、同じ粒子径の粒子で単位重量あたりの平均帯電量が同じであっても、粒子の比重が2倍異なる場合に保持する帯電量は2倍異なることとなる。従って、画像表示装置に用いられる粒子の帯電特性は粒子の比重に無関係な表面電荷密度(単位:μC/m2)で評価するのが好ましいことが分かった。
【0038】
そして、粒子間においてこの表面電荷密度の差が十分にある時、2種類の粒子はお互いの接触により異なる極性の帯電量を保持し、電界により移動する機能を保持するのである。
【0039】
ここで、表面電荷密度は2粒子の帯電極性を異なるものにするためにある程度の差が必要であるが、大きいほどよいというものではない。粒子移動による画像表示装置においては粒子の粒子径が大きいときは主に電気影像力が粒子の飛翔電界(電圧)を決定する因子となる傾向が強いため、この粒子を低い電界(電圧)で動かすためには帯電量が低いほうがよいこととなる。また、粒子の粒子径が小さいときは分子間力・液架橋力等の非電気的な力が飛翔電界(電圧)決定因子となることが多いため、この粒子を低い電界(電圧)で動かすためには帯電量が高いほうがよいこととなる。しかし、これは粒子の表面性(材料・形状)にも大きく依存するため一概に粒子径と帯電量で規定することはできない。
【0040】
本発明者らは平均粒子径が0.1〜50μmの粒子においては、同じ種類のキャリヤを用いてブローオフ法により測定した2種類の粒子の、表面電荷密度の差の絶対値が5μC/m2〜150μC/m2である場合に画像表示装置として使用できる粒子と成り得ることを見出した。
【0041】
ブローオフ測定原理及び方法は以下の通りである。ブローオフ法においては、両端に網を張った円筒容器中に粉体とキャリヤの混合体を入れ、一端から高圧ガスを吹き込んで粉体とキャリヤとを分離し、網の目開きから粉体のみをブローオフ(吹き飛ばし)する。この時、粉体が容器外に持ち去った帯電量と等量で逆の帯電量がキャリヤに残る。そして、この電荷による電束の全てはファラデーケージで集められ、この分だけコンデンサーは充電される。そこでコンデンサー両端の電位を測定することにより粉体の電荷量Qは、Q=CV(C:コンデンサー容量、V:コンデンサー両端の電圧)として求められる。
【0042】
ブローオフ粉体帯電量測定装置としては東芝ケミカル社製のTB−200を用いた。本発明ではキャリヤとして正帯電性・負帯電性の2種類のものを用いて帯電量を測定し、別途測定して求めた粒子比重を用いて、それぞれの場合の単位表面積あたり電荷密度(単位:μC/m2)を算出した。すなわち、正帯電性キャリヤ(相手を正に帯電させ自らは負になりやすいキャリヤ)としてはパウダーテック社製のF963−2535を、負帯電性キャリヤ(相手を負に帯電させ自らは正に帯電しやすいキャリヤ)としてはパウダーテック社製のF921−2535を用いた。
【0043】
粒子はその帯電電荷を保持する必要があるので、体積固有抵抗が1×1010Ω・cm以上の絶縁性粒子が好ましく、特に1×1012Ω・cm以上の絶縁性粒子が好ましい。
【0044】
また、本発明の画像表示装置における粒子は、以下に述べる方法で評価した電荷減衰性の遅い粒子が更に好ましい。即ち、粒子を、別途、プレス、加熱溶融、キャストなどにより、厚み5〜100μm範囲のフィルム状にして、そのフィルム表面と1mmの間隔をもって配置されたコロナ放電器に、8KVの電圧を印加してコロナ放電を発生させて表面を帯電させ、その表面電位の変化を測定し判定する。この場合、0.3秒後における表面電位の最大値が300Vより大きく、好ましくは400Vより大きくなるように、粒子構成材料を選択、作製することが望ましい。
【0045】
なお、上記表面電位の測定は、例えば図5に示した装置(QEA社製CRT2000)により行なうことが出来る。この装置の場合は、前述したフィルムを表面に配置したロールシャフト両端部をチャック31にて保持し、小型のスコロトロン放電器32と表面電位計33とを所定間隔離して併設した計測ユニットを上記フィルムの表面と1mmの間隔を持って対向配置し、上記のロールシャフトを静止した状態のまま、上記計測ユニットを該ロールシャフトの一端から他端まで一定速度で移動させることにより、表面電荷を与えつつその表面電位を測定する方法が好適に採用される。なお、測定環境は温度25±3℃、湿度55±5RH%とする。
【0046】
本発明の画像表示装置における粒子は帯電性能等の特性が満たされれば、いずれの材料から構成されても良い。例えば樹脂、荷電制御剤、着色剤、無機添加剤等から、或いは着色剤単独等で形成することができる。樹脂の例としては、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、アクリルフッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリオレフイン樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられ、特に基板との付着力を制御する上から、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、アクリルフッ素樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂が好適である。2種以上混合することもできる。
【0047】
荷電制御剤としては、特に制限はないが、負荷電制御剤としては例えば、サリチル酸金属錯体、含金属アゾ染料、含金属(金属イオンや金属原子を含む)の油溶性染料、4級アンモニウム塩系化合物、カリックスアレン化合物、含ホウ素化合物(ベンジル酸ホウ素錯体)、ニトロイミダゾール誘導体等が挙げられる。正荷電制御剤としては例えば、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系化合物、4級アンモニウム塩系化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等が挙げられる。その他、超微粒子シリカ、超微粒子酸化チタン、超微粒子アルミナ等の金属酸化物、ピリジン等の含窒素環状化合物及びその誘導体や塩、各種有機顔料、弗素、塩素、窒素等を含んだ樹脂等も荷電制御剤として用いることもできる。
【0048】
着色剤としては、以下に例示すような、有機又は無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。
黒色顔料としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭などがある。
黄色顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキなどがある。
橙色顔料としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGKなどがある。
【0049】
赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレツド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bなどがある。
紫色顔料としては、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどがある。
青色顔料としては、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBCなどがある。
緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGなどがある。
また、白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛などがある。
【0050】
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイトなどがある。
更に、塩基性、酸性、分散、直接染料などの各種染料として、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルーなどがある。
これらの着色剤は、単独で或いは複数組合せて用いることができる。
特に黒色着色剤としてカーボンブラックが、白色着色剤として酸化チタンが好ましい。
粒子の製造例については特に限定されないが、例えば、電子写真のトナーを製造する場合に準じた粉砕法および重合法が使用出来る。また無機または有機顔料の粉体の表面に樹脂や荷電制御剤等をコートする方法も用いられる。
【0051】
本発明の画像表示装置における透明基板1と対向基板2の間隔は、粒子が飛翔移動でき、コントラストを維持できれば良いが、通常10〜5000μm、好ましくは30〜500μmに調整される。
粒子充填量(体積占有率)は、基板間の空間体積に対して、10〜80%、好ましくは10〜70%を占める体積になるように充填するのが良い。
【0052】
次に、本発明の第2発明で利用する粉流体について詳細に説明する。
本発明における「粉流体」は、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。例えば、液晶は液体と固体の中間的な相と定義され、液体の特徴である流動性と固体の特徴である異方性(光学的性質)を有するものである(平凡社:大百科事典)。一方、粒子の定義は、無視できるほどの大きさであっても有限の質量をもった物体であり、重力の影響を受けるとされている(丸善:物理学事典)。ここで、粒子でも、気固流動層体、液固流動体という特殊状態があり、粒子に底板から気体を流すと、粒子には気体の速度に対応して上向きの力が作用し、この力が重力とつりあう際に、流体のように容易に移動できる状態になるものを気固流動層体と呼び、同じく、流体により流動化させた状態を液固流動体と呼ぶとされている(平凡社:大百科事典)。このように気固流動層体や液固流動体は、気体や液体の流れを利用した状態である。本発明では、このような気体の力も、液体の力も借りずに、自ら流動性を示す状態の物質を、特異的に作り出せることが判明し、これを粉流体と定義した。
【0053】
すなわち、本発明における粉流体は、液晶(液体と固体の中間相)の定義と同様に、粒子と液体の両特性を兼ね備えた中間的な状態で、先に述べた粒子の特徴である重力の影響を極めて受け難く、高流動性を示す特異な状態を示す物質である。このような物質はエアロゾル状態、すなわち気体中に固体状もしくは液体状の物質が分散質として安定に浮遊する分散系で得ることができ、本発明の画像表示装置で固体状物質を分散質とするものである。
【0054】
エアロゾル状態の範囲は、粉流体の最大浮遊時の見かけ体積が未浮遊時の2倍以上であることが好ましく、更に好ましくは2.5倍以上、特に好ましくは3倍以上である。上限は特に限定されないが、12倍以下であることが好ましい。
粉流体の最大浮遊時の見かけ体積が未浮遊時の2倍より小さいと表示上の制御が難しくなり、また、12倍より大きいと粉流体を装置内に封入する際に舞い過ぎてしまうなどの取り扱い上の不便さが生じる。なお、最大浮遊時の見かけ体積は次のようにして測定される。すなわち、粉流体が透過して見える密閉容器に粉流体を入れ、容器自体を振動或いは落下させて、最大浮遊状態を作り、その時の見かけ体積を容器外側から測定する。具体的には、直径(内径)6cm、高さ10cmのポリプロピレン製の蓋付き容器(商品名アイボーイ:アズワン(株)製)に、未浮遊時の粉流体として1/5の体積相当の粉流体を入れ、振とう機に容器をセットし、6cmの距離を3往復/secで3時間振とうさせる。振とう停止直後の見かけ体積を最大浮遊時の見かけ体積とする。
【0055】
また、本発明の画像表示装置は、粉流体の見かけ体積の時間変化が次式を満たすものが好ましい。
V10/V5>0.8
ここで、V5は最大浮遊時から5分後の見かけ体積(cm3)、V10は最大浮遊時から10分後の見かけ体積(cm3)を示す。なお、本発明の画像表示装置は、粉流体の見かけ体積の時間変化V10/V5が0.85よりも大きいものが好ましく、0.9よりも大きいものが特に好ましい。V10/V5が0.8以下の場合は、通常のいわゆる粒子を用いた場合と同様となり、本発明のような高速応答、耐久性の効果が確保できなくなる。
【0056】
また、粉流体を構成する粒子物質の平均粒子径(d(0.5))は、好ましくは0.1〜20μm、更に好ましくは0.5〜15μm、特に好ましくは0.9〜8μmである。0.1μmより小さいと表示上の制御が難しくなり、20μmより大きいと、表示はできるものの隠蔽率が下がり装置の薄型化が困難となる。なお、粉流体を構成する粒子物質の平均粒子径(d(0.5))は、次の粒子径分布Spanにおけるd(0.5)と同様である。
【0057】
粉流体を構成する粒子物質は、下記式に示される粒子径分布Spanが5未満であることが好ましく、更に好ましくは3未満である。
粒子径分布Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
ここで、d(0.5)は粉流体を構成する粒子物質の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粉流体を構成する粒子物質の比率が10%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粉流体を構成する粒子物質が90%である粒子径をμmで表した数値である。粉流体を構成する粒子物質の粒子径分布Spanを5以下とすることにより、サイズが揃い、均一な粉流体移動が可能となる。
【0058】
なお、以上の粒子径分布及び粒子径は、レーザー回折/散乱法などから求めることができる。測定対象となる粉流体にレーザー光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒径と対応関係があることから、粒子径及び粒子径分布が測定できる。この粒子径及び粒子径分布は、体積基準分布から得られる。具体的には、Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粉流体を投入し、付属の解析ソフト(Mie理論を用いた体積基準分布を基本としたソフト)にて、測定を行うことができる。
【0059】
粉流体の作製は、必要な樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を混練り粉砕しても、モノマーから重合しても、既存の粒子を樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤でコーティングしても良い。以下、粉流体を構成する樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を例示する。
【0060】
樹脂の例としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン変性アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ナイロン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂などが挙げられ、2種以上混合することもでき、特に、基板との付着力を制御する上から、アクリルウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂が好適である。
【0061】
荷電制御剤の例としては、正電荷付与の場合には、4級アンモニウム塩系化合物、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール誘導体などが挙げられ、負電荷付与の場合には、含金属アゾ染料、サリチル酸金属錯体、ニトロイミダゾール誘導体などが挙げられる。
着色剤の例としては、塩基性、酸性などの染料が挙げられ、ニグロシン、メチレンブルー、キノリンイエロー、ローズベンガルなどが例示される。
無機系添加剤の例としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、鉛白、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、チタンイエロー、紺青、群青、コバルトブルー、コバルトグリーン、コバルトバイオレット、酸化鉄、カーボンブラック、銅粉、アルミニウム粉などが挙げられる。
【0062】
しかしながら、このような材料を工夫無く混練り、コーティングなどを施しても、エアロゾル状態を示す粉流体を作製することはできない。エアロゾル状態を示す粉流体の決まった製法は定かではないが、例示すると次のようになる。
【0063】
まず、粉流体を構成する粒子物質の表面に、平均粒子径が20〜100nm、好ましくは20〜80nmの無機微粒子を固着させることが適当である。更に、その無機微粒子がシリコーンオイルで処理されていることが適当である。ここで、無機微粒子としては、二酸化珪素(シリカ)、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化鉄、酸化銅等が挙げられる。この無機微粒子を固着させる方法が重要であり、例えば、ハイブリダイザー(奈良機械製作所(株)製)やメカノフュージョン(ホソカワミクロン(株)製)などを用いて、ある限定された条件下(例えば処理時間)で、エアロゾル状態を示す粉流体を作製することができる。
【0064】
ここで繰り返し耐久性を更に向上させるためには、粉流体を構成する樹脂の安定性、特に、吸水率と溶剤不溶率を管理することが効果的である。基板間に封入する粉流体を構成する樹脂の吸水率は、3重量%以下、特に2重量%以下とすることが好ましい。なお、吸水率の測定は、ASTM−D570に準じて行い、測定条件は23℃で24時間とする。粉流体を構成する樹脂の溶剤不溶率に関しては、下記関係式で表される粉流体の溶剤不溶率を50%以上、特に70%以上とすることが好ましい。
溶剤不溶率(%)=(B/A)×100
(但し、Aは樹脂の溶剤浸漬前重量、Bは良溶媒中に樹脂を25℃で24時間浸漬した後の重量を示す)
【0065】
この溶剤不溶率が50%未満では、長期保存時に粉流体を構成する粒子物質表面にブリードが発生し、粉流体との付着力に影響を及ぼし粉流体の移動の妨げとなり、画像表示耐久性に支障をきたす場合がある。なお、溶剤不溶率を測定する際の溶剤(良溶媒)としては、フッ素樹脂ではメチルエチルケトン等、ポリアミド樹脂ではメタノール等、アクリルウレタン樹脂では、メチルエチルケトン、トルエン等、メラミン樹脂ではアセトン、イソプロパノール等、シリコーン樹脂ではトルエン等が好ましい。
【0066】
また、粉流体の充填量については、粉流体の占有体積が、対向する基板間の空隙部分の5〜85%、好ましくは10〜65%、更に好ましくは10〜55%になるように調整することが好ましい。粉流体がエアロゾル状態を示すために、表示装置内への封入は通常の方法では困難であり、静電塗装機を用いて、強制的に基板に粉流体を付着させることが、取り扱いの上で、好適である。この場合は、片方の基板にのみ、あるいは、両方の基板に付着させて合わせる、のいずれかの方法でも良い。
【0067】
更に、本発明においては基板間の粒子群あるいは粉流体を取り巻く空隙部分の気体の管理が重要であり、表示安定性向上に寄与する。具体的には、空隙部分の気体の湿度について、25℃における相対湿度を60%RH以下、好ましくは50%RH以下、更に好ましくは35%RH以下とすることが重要である。以上の空隙部分とは、透明基板1、対向基板2に挟まれる部分から、粒子群あるいは粉流体の専有部分、隔壁7の占有部分、装置シール部分を除いた、いわゆる粒子群あるいは粉流体が接する気体部分を指すものとする。
【0068】
空隙部分の気体は、先に述べた湿度領域であれば、その種類は問わないが、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、乾燥ヘリウムなどが好適である。この気体は、その湿度が保持されるように装置に封入することが必要であり、例えば、粒子群あるいは粉流体の充填、基板の組み立てなどを所定湿度環境下にて行い、更に、外からの湿度侵入を防ぐシール材、シール方法を施すことが肝要である。
【0069】
なお、本発明の画像表示装置は、ノートパソコン、PDA、携帯電話などのモバイル機器の表示部、電子ブック、電子新聞などの電子ペーパー、看板、ポスター、黒板などの提示板、電卓、家電製品、自動車用品等の表示部、ポイントカードなどのカード表示部などに用いられる。
【0070】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の第1発明及び第2発明の第1実施例では、(1)基材上にタックフリーの接着剤をシート状に塗工して転写接着フィルムを準備し、(2)準備した転写接着フィルムの接着剤の存在する面を、一方の基板上に設けた隔壁に押し当てた後前記基材を剥がすことで、接着剤を隔壁上にのみ転写し、(3)他方の基板を、転写した接着剤を介して隔壁上に配置し、接着剤を硬化させることで、隔壁と他方の基板とを接合しているため、また、本発明の第1発明及び第2発明の第2実施例では、(1)樹脂バインダ中に接着剤内包マイクロカプセルを均一に分散し、基材上にこれをシート状に、マイクロカプセルの一部が、樹脂バインダ層の外に出るように塗工して転写接着フィルムを準備し、(2)準備した転写接着フィルムのマイクロカプセルの存在する面を、一方の基板上に設けた隔壁に押し当てた後前記基材を剥がすことで、マイクロカプセルを割り接着剤を隔壁上にのみ転写し、(3)他方の基板を、転写した接着剤を介して隔壁上に配置し、接着剤を硬化させることで、隔壁と他方の基板とを接合しているため、いずれの例でも転写接着フィルムはタックフリーであり、接着剤がセル内に染み込む問題、及び、粒子が取られたりする問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(c)はそれぞれ本発明の画像表示装置における表示素子の一例とその表示作動原理を示す説明図である。
【図2】(a)〜(d)はそれぞれ本発明の画像表示装置の製造方法における画像表示素子を形成する隔壁の製造方法の一例を示す図である。
【図3】(a)〜(d)はそれぞれ本発明の画像表示装置の製造方法における画像表示素子を形成する隔壁の製造方法の他の例を示す図である。
【図4】本発明の画像表示装置における表示素子の他の例として、表示電極及び対向電極のいずれをも対向基板の透明基板と対向する側に配置した場合を示す説明図である。
【図5】本発明の画像表示装置における粒子の表面電位測定するための測定装置の説明図である。
【符号の説明】
1 透明基板
2 対向基板
3 表示電極
4 対向電極
5 負帯電性粒子(粉流体)
6 正帯電性粒子(粉流体)
7 隔壁
8 絶縁体
11、24 基材
12 接着剤
13、25 転写接着フィルム
21 樹脂バインダ
22 液状接着剤
23 接着剤内包マイクロカプセル
31 チャック
32 スコロトロン放電器
33 表面電位計
Claims (12)
- 少なくとも一方が透明な対向する基板間に粒子群を封入し、粒子群に電界を与えて粒子を移動させ画像を表示する、隔壁により互いに隔離された1つ以上の画像表示素子を持つ画像表示板を備える画像表示装置の製造方法であって、
(1)基材上にタックフリーの接着剤をシート状に塗工して転写接着フィルムを準備し、
(2)準備した転写接着フィルムの接着剤の存在する面を、一方の基板上に設けた隔壁に押し当てた後前記基材を剥がすことで、接着剤を隔壁上にのみ転写し、
(3)他方の基板を、転写した接着剤を介して隔壁上に配置し、接着剤を硬化させることで、隔壁と他方の基板とを接合したこと、を特徴とする画像表示装置の製造方法。 - 少なくとも一方が透明な対向する基板間に粒子群を封入し、粒子群に電界を与えて粒子を移動させ画像を表示する、隔壁により互いに隔離された1つ以上の画像表示素子を持つ画像表示板を備える画像表示装置の製造方法であって、
(1)樹脂バインダ中に接着剤内包マイクロカプセルを均一に分散し、基材上にこれをシート状に、マイクロカプセルの一部が、樹脂バインダ層の外に出るように塗工して転写接着フィルムを準備し、
(2)準備した転写接着フィルムのマイクロカプセルの存在する面を、一方の基板上に設けた隔壁に押し当てた後前記基材を剥がすことで、マイクロカプセルを割り接着剤を隔壁上にのみ転写し、
(3)他方の基板を、転写した接着剤を介して隔壁上に配置し、接着剤を硬化させることで、隔壁と他方の基板とを接合したこと、を特徴とする画像表示装置の製造方法。 - 粒子の平均粒子径が0.1〜50μmである請求項1または2に記載の画像表示装置の製造方法。
- 同じ種類のキャリヤを用いてブローオフ法により測定した2種類の粒子の、表面電荷密度の差の絶対値が、5μC/m2〜150μC/m2である請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像表示装置の製造方法。
- 粒子が、その表面と1mmの間隔をもって配置されたコロナ放電器に、8KVの電圧を印加してコロナ放電を発生させて表面を帯電させた場合に、0.3秒後における表面電位の最大値が300Vより大きい粒子である請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像表示装置の製造方法。
- 粒子の色が白色及び黒色である請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像表示装置の製造方法。
- 少なくとも一方が透明な対向する基板間に粉流体を封入し、粉流体に電界を与えて粉流体を移動させ画像を表示する、隔壁により互いに隔離された1つ以上の画像表示素子を持つ画像表示板を備える画像表示装置の製造方法であって、
(1)基材上にタックフリーの接着剤をシート状に塗工して転写接着フィルムを準備し、
(2)準備した転写接着フィルムの接着剤の存在する面を、一方の基板上に設けた隔壁に押し当てた後前記基材を剥がすことで、接着剤を隔壁上にのみ転写し、
(3)他方の基板を、転写した接着剤を介して隔壁上に配置し、接着剤を硬化させることで、隔壁と他方の基板とを接合したこと、を特徴とする画像表示装置の製造方法。 - 少なくとも一方が透明な対向する基板間に粉流体を封入し、粉流体に電界を与えて粉流体を移動させ画像を表示する、隔壁により互いに隔離された1つ以上の画像表示素子を持つ画像表示板を備える画像表示装置の製造方法であって、
(1)樹脂バインダ中に接着剤内包マイクロカプセルを均一に分散し、基材上にこれをシート状に、マイクロカプセルの一部が、樹脂バインダ層の外に出るように塗工して転写接着フィルムを準備し、
(2)準備した転写接着フィルムのマイクロカプセルの存在する面を、一方の基板上に設けた隔壁に押し当てた後前記基材を剥がすことで、マイクロカプセルを割り接着剤を隔壁上にのみ転写し、
(3)他方の基板を、転写した接着剤を介して隔壁上に配置し、接着剤を硬化させることで、隔壁と他方の基板とを接合したこと、を特徴とする画像表示装置の製造方法。 - 粉流体の最大浮遊時の見かけ体積が未浮遊時の2倍以上である請求項7または8に記載の画像表示装置の製造方法。
- 粉流体の見かけ体積の時間変化が次式を満たすものである請求項7〜9のいずれか1項に記載の画像表示装置の製造方法。
V10/V5>0.8
なお、V5は最大浮遊時から5分後の粉流体の見かけ体積(cm3)、V10は最大浮遊時から10分後の粉流体の見かけ体積(cm3)を示す。 - 粉流体の平均粒子径d(0.5)が0.1〜20μmである請求項7〜10のいずれか1項に記載の画像表示装置の製造方法。
- 請求項1〜11のいずれか1項に記載の画像表示装置の製造方法により製造したことを特徴とする画像表示装置。
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