JP2004069456A - 電子線照射装置の窒素ガスチャンバの構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】上板、前板、後板、側板よりなる筐体に固着した上半部と、遮蔽底板よりなる上下に可動の遮蔽板に固定した下半部に分割し、遮蔽板を上昇させて、パッキン部分において下半部を上半部に押し付けて窒素ガスチャンバを閉じるようにし遮蔽板を下げて窒素ガスチャンバを開放するようにする。遮蔽板を下げると自動的に窒素ガスチャンバが開くので照射窓のメンテナンスの妨げにならない。X線は下半部の側板に遮られてパッキンに当たらないからパッキンが劣化しない。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は電子線照射装置における窒素ガスチャンバの構造に関する。電子線照射装置というのは真空中でフィラメントを加熱して熱電子を発生させ加速管で電子を加速して高速の電子線ビームにしてから照射窓の窓箔を通して大気中に取り出して被処理物に電子線を当てて高分子架橋、塗膜硬化、殺菌などの処理を行う装置である。電子線照射装置は、高圧電源、加速管、フィラメント、照射窓、搬送機構、金属筐体、冷却機構などを含む。
【0002】
加速エネルギーが5MeV〜500keVというように高い場合は背の高い大型の走査型のものを用いる。それは一本のビームを左右前後に走査するので走査型というのである。ビームを走査させるため、加速管の終わりに走査コイルを備え、それに続いて三角形状に広がった走査管を設ける。高いエネルギーに加速した細い電子線ビームを縦横に走査して被処理物に照射する。
【0003】
加速エネルギーが数十keV〜500keVというように低い場合は非走査型のものを用いる。非走査型の場合は多数の平行フィラメントを並列に電極棒に接続して平行フィラメントから面に垂直の方向に電子線が出る。フィラメント領域の実効面積を広くしておき、それをそのまま照射窓の方向へ加速する。初めから大面積の電子流が発生するから走査しなくても被処理物の広い面積に一挙に電子線が照射される。エネルギーが低いのでクーロン斥力の影響でビームが広がりやすく、均一な電子線密度を得るのが容易である。
【0004】
加速電源は、商用電源をトランスによって適当な電圧に変換し、それを多数のコンデンサと整流器を組み合わせた電圧逓倍回路によって所望の高電圧にしている。それらの高電圧を扱うコンデンサ、整流器は高電圧架台の上に搭載され、大地側とは絶縁されている。電圧が高い走査型の場合は電源回路は複雑で容積も大きい。電圧が低い非走査型の場合、電源回路はより簡単化されている。
【0005】
照射窓というのはフィラメントのある真空領域と、被処理物の存する大気圧領域を仕切るための窓でありTi、Alの窓箔が張られている。照射窓は金属製の大きい筐体に取り付けられる。電子線が被処理物に当たるとX線が出る。X線を遮蔽するため厚い金属筐体で搬送機構や被処理物、照射窓を覆うようになっている。金属筐体の中を無端周回コンベヤなどの搬送機構が走行し、被処理物を入口−照射窓直下(処理位置)−出口へと運んで行くようになっている。それもX線が漏洩しないように上下に強く蛇行するような工夫がなされている。
【0006】
【従来の技術】
本発明で問題にするのは照射窓の直下にある被処理物の照射部分である。被処理物に電子線が当たるとX線が発生する。それが外部に漏れないように重厚な金属筐体で照射部分と搬送機構の全体をスッポリと覆う。X線が空気中の酸素に当たると酸素はオゾンになる。オゾンは独特の臭気をもつ。被処理物の種類によってオゾン臭の付くのが望ましくないという場合がある。その場合はオゾンが発生しないように空気を窒素によって置換する。筐体内部において搬送機構の下流側から上流側へと窒素やアルゴンなどの不活性ガスを流す。すると酸素が追い出され不活性ガス雰囲気になるからオゾンは発生しなくなる。
【0007】
筐体の内部全体に窒素ガスを満たすことは不経済であるから、被処理物に電子線を照射する照射部のあたりだけを狭い容器によって囲むようにする。容器によって囲んで、そこだけに窒素ガスを吹き込むようにする。その容器の内部で電子線が被処理物に当たりX線が発生しても酸素がないからオゾンはできない。容器で囲むといっても、それは密封した容器ではない。被処理物は前へ前へと前進しなければならないので被処理物の入口、出口が必要である。完全に密閉できないが、一次的に窒素ガスを高濃度で保有できるような容器である。それを窒素ガスチャンバと呼ぶことにする。本発明はその窒素ガスの閉じ込めのための空間を与える窒素ガスチャンバに関する。
【0008】
窒素ガスチャンバの要件は、照射窓の直下にあること、被処理物がその中を通過すること、筐体内部の大部分の空間からほぼ遮断されていること、などである。図1は従来例にかかる窒素ガスチャンバの構造を示す。これは非走査型(エリヤ型)の電子線照射装置を描いているが走査型の場合も同様である。
【0009】
円筒形の真空チャンバ2は密封されており真空に引かれている。中央部に平行な多数のフィラメント3が給電棒(電極棒)に並列に接続され、そこから熱電子が発生するようになっている。真空チャンバ2の下方は開口部となっており、それが電子線を外部に放出する照射窓4である。照射窓4には窓箔5が張ってある。円筒形の真空チャンバ2の照射窓4は金属製の筐体6の開口部に固着されている。筐体6の内部で照射窓の直下には平たい窒素ガスチャンバ7が設けられる。窒素ガスチャンバ7の中を水平に被処理物8が通過するようになっている。この場合は帯状の連続した被処理物8が両端で巻取り巻戻され自走する様子を示す。が、無端周回コンベヤで被処理物を搬送するようになっていてもよい。
【0010】
窒素ガスチャンバ7の中にはビームキャッチャー9があり、それが電子線の一部を受ける。被処理物8を透過した電子線、被処理物がたまたま存在せず被処理物に当たらずに到達した電子線、その他の部位に反射、散乱された電子線などである。ビームキャッチャー9の下は鉛など金属製の遮蔽材10が張ってある。ビームキャッチャー9に流れる電流を測定することによって電子線の電流を求めることができる。
【0011】
窒素ガスチャンバ7は半ば閉じられた空間であるが、被処理物8が通過するための入口20と出口22が上流側と下流側にある。金属製(例えばステンレス)の前板23、底板24、後板25、上板26、側板29などで区切られた低く広い空間である。底板24はパッキン28を介して前板23、後板25、側板29などに固着される。
【0012】
下流側に窒素ガス入口27がある。それによって窒素ガスチャンバ7内部の空気が置換される。空気を置換した窒素ガスは下流側の出口22、上流側の入口20から筐体6の内部に出る。出口22から出たものは損失になるから、なるべく逆行し照射部を通り、入口20から出るようにする。
【0013】
窒素ガスチャンバ7の下には広い板状の遮蔽体30がある。これはステンレス、鉄、鉛等金属板であり、電子線、X線を遮蔽して外部へ漏れないようにする。筐体6とは別の部材である。遮蔽体30はエアシリンダ、モータなどの力によって上下に昇降できるようになっている。これは電子線、X線を遮断するものだから重厚な金属板であり重いし広いものである。これが上下に昇降できるようになっているのは照射窓の部分のメンテナンスが必要だからである。照射窓を点検、修繕、補修するときは遮蔽板30を下まで降ろす。
【0014】
もしも窒素ガスチャンバのようなものがなければ、下流側から上流側にかけて広い空間を窒素ガスによって満たす必要がある。それは窒素ガスの消費量を押し上げ望ましくない。窒素ガスチャンバ7があると窒素ガスを狭い空間に一時的にせよ局在させることができるため窒素ガスの量を節減することができる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
窒素ガスチャンバ7を筐体内部に設置すると窒素ガスの使用量を節約できて電子線照射処理コストを低減できる。細い入口、出口を通すことができるシート状の被処理物の場合に有効である。シート状被処理物の上下の揺れを少なくすれば入口20、出口22を狭くでき窒素ガス損失をさらに減らすことができる。
【0016】
そのような窒素ガスチャンバを備えた電子線照射装置はいまだ数少ない。それでも改良の余地があるということが分かってきた。一つは底板と、側板、前後板を連結するために用いるパッキンがX線を浴びて劣化するということである。先述のように電子線が物体に当たるとX線が出る。X線は発生点を囲んで四方八方に放射される。それがパッキンに当たり、それを劣化させてしまう。ゴムや樹脂でできたパッキンが劣化すると窒素ガス漏れが起こるから必要な窒素ガスの量が増えてしまう。
【0017】
もう一つの問題は、照射窓のメンテナンスが困難になるということである。照射窓には窓箔が張ってあり冷却水が通っているから故障が起こり易いし保守点検の必要性も高い。遮蔽板30はモータやエアシリンダの操作で下へ降ろす事ができる。窒素ガスチャンバのない従来の電子線照射装置ならすぐに照射窓の部分が露出したので窓箔を張り替えたり、冷却水パイプなどの補修をすぐに行うことができる。
【0018】
しかし、ここで問題にするような窒素ガスチャンバを設けた電子線照射装置は、遮蔽板30を降ろしても、それだけでは照射窓が露出しない。まだ窒素ガスチャンバがあって照射窓を隠しているからである。さらに窒素ガスチャンバを取り外さないと照射窓のメンテナンスができない。そこで上板26の部分の筐体への取付部分のボルトを取り外して、窒素ガスチャンバの全体を抜き取る必要がある。
【0019】
窒素ガスチャンバは重い金属の箱であるから、それは容易ではない。そうでなくても照射窓は点検、補修の必要が高いので、照射窓が窒素ガスチャンバなどによって幾重にも覆われるようになるのは望ましいことではない。
【0020】
パッキンの急速な劣化を防ぐようにした窒素ガスチャンバ構造を提供することが本発明の第1の目的である。照射窓部分のメンテナンスを容易にした窒素ガスチャンバ構造を提供することが本発明の第2の目的である。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明は、窒素ガスチャンバを、筐体に固定した固定上半部と、遮蔽板とともに昇降できる可動下半部に分割し、パッキンを下半部の遮蔽底板側板部分でX線から保護した構造とする。上半部は上板、前板、後板よりなり照射窓近傍で筐体に固定されている。下半部は遮蔽板に固定され凹部をもつ遮蔽底板と凹部によってX線被爆から護られるパッキンよりなる。遮蔽底板にビームキャッチャーを戴置する。
【0022】
遮蔽板が上昇したときには上半部の下開口部を下半部の遮蔽底板が閉ざすようになっている。そのときパッキンは遮蔽底板の側板部によってX線から防護される。ビームキャッチャーに当たった電子線がX線を発生するが、遮蔽底板の側面が邪魔になってX線はパッキンに当たらない。それによってパッキンの劣化が抑制される。
【0023】
遮蔽板が下降したときは、下半部をなす遮蔽底板が下がって、上半部の開口部が開く。開口部から手を差し入れて照射窓の窓箔フランジボルトを取り外すことができる。疲労した窓箔を取り除くことができる。新しい窓箔を開口部から入れて、窓箔フランジと照射窓フランジの間に挟んで再びボルトを締結して、窓箔をフランジ間に固定できる。開口部から手を入れて冷却水系などの補修や点検もできる。窒素ガスチャンバを開くためにボルトを外す必要はなく、遮蔽板を下降させるだけで窒素ガスチャンバは開き、遮蔽板を上昇させるだけで窒素ガスチャンバは閉じる。だから照射窓のメンテナンスもより容易になる。
【0024】
【発明の実施の形態】
図2、図3によって本発明の実施例にかかる電子線照射装置を説明する。図2は窒素ガスチャンバを閉じた状態、図3は窒素ガスチャンバを開いた状態を示す。
【0025】
円筒形の真空チャンバ2の内部に負の高電圧が印加されたフィラメント3が設けられる。フィラメントは平行の金属抵抗体であって10本〜50本が平行並列に接続されている。真空チャンバ2の外殻部は接地電位である。フィラメント3から熱電子e−が出て加速電圧によって下方に加速され電子線となる。真空チャンバ2の下方が開口部となっている。それが照射窓4である。照射窓より上は真空に、下は大気圧になっているから、それを仕切るためTi、Alの窓箔5が照射窓4開口部に張られる。電子線はフィラメントから真空中を進み窓箔5を通り大気中に出て、その下を走行する被処理物8に当たり所望の処理を行う。
【0026】
酸素があるとオゾンができてしまって好ましくないから照射窓の直下は、窒素ガス雰囲気とする。そのため窒素ガスチャンバ7を照射窓4の直下において筐体6の内部に設ける。窒素ガスチャンバ7は上下二分割になっている。上半部と下半部に分割できるようにしている。
【0027】
上半部は筐体6に固着する上板26、前板23、後板25、側板29を含む。これらは四角形の枠をなす。前板23には被処理物8を導入するための入口20がある。後板25には被処理物が排出されるための出口22がある。枠をなす前板23、後板25、側板29の下辺は外側へ折り曲げたフランジ38となっている。フランジ38にパッキン36が接着してある。
【0028】
下半部は上昇下降可能でX線を遮蔽するため筐体6の内部にもともと設けてある遮蔽板30に固定される。遮蔽板30の上に脚32を付け、その上に重い金属製(ステンレス、鉛)の遮蔽底板33を載せている。遮蔽底板33の中にビームキャッチャー37が設けられる。ビームキャッチャー37は被処理物を突き抜けた電子線を受けそれを消滅させる。ビームキャッチャーに流れる電流によって電子線電流を測定することもできる。遮蔽底板33は四辺に上に延びる側板部34をもつ。側板部34の外側半ばの高さに水平のリブ35が設けられる。遮蔽板30を上げると、側板部34のリブ35上のパッキン36が上半部の枠のフランジ38を下から抑えるようになる。それによって窒素ガスチャンバ7が閉じられる。下半部と上半部の結合のためにボルト、ネジ、ピン、ラッチなど係合金具は不要である。
【0029】
窒素ガスチャンバ7を閉じた状態で被処理物8(シート状のもの)を走行させ電子線処理を行う。ビームキャッチャー37に電子線が当たりX線が発生する。しかし遮蔽底板33の側板部34がX線を遮るから、パッキン36にX線が当たらない。つまり側板部34によってパッキン36がX線に対して防護される。パッキン36の劣化はX線によって引き起こされるのであるから、本発明の場合はパッキンの劣化が殆ど起こらないということである。
【0030】
可動の遮蔽板30を下げた状態を図3に示す。遮蔽板30とともに遮蔽底板33、ビームキャッチャー37、リブ35、パッキン36が下降する。上半部はそのまま照射窓の直下の位置に留まっている。筐体の内部に入れば、そこから照射窓の窓箔の取付部分とか冷却水系の部分が見えるので点検、補修を行うことができる。窒素ガスチャンバを分解するためボルトを外すというような面倒なことは要らない。
そのような構造をもつので、照射窓部分のメンテナンスが格段に迅速、容易に行える。
【0031】
【発明の効果】
本発明は、窒素ガスチャンバを照射窓の直下において被処理物の一部を包囲するように設けるから窒素ガスをその部分に一時的に高濃度で滞留させることができる。そのために酸素を嫌うような反応の発生を促進することができる。さらにオゾン発生を有効に防ぐことができる。オゾン臭が付着するのが良くないという被処理物の場合にそれは有用なことである。しかも筐体とは他に照射部分を包囲する窒素ガスチャンバがあるのでX線遮蔽がより完全になり安全性が高揚するという効果もある。
【0032】
さらに本発明の窒素ガスチャンバは上下に分割でき、広く重い遮蔽板を電動、あるいは油圧で下降上昇させると、下半部はそのまま下降上昇する。上昇時には遮蔽板の力によって下半部が上半部に接触し窒素ガスチャンバが閉じる。下降時には下半部が遮蔽板とともに下降し窒素ガスチャンバが開く。だから窒素ガスチャンバを開閉するためにボルトを締めたり緩めたりする必要がない。遮蔽板を降ろすだけで窒素ガスチャンバが開くので、照射窓の窓箔の張り替えがより容易迅速に行えるようになる。
【0033】
また下半部にある遮蔽底板33の側板部34がビームキャッチャーで発生したX線を遮るからパッキンにX線が直接に当たらない。だからX線によるパッキンの劣化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】非走査型電子線照射装置において下流側から導入された窒素ガスを一時的に照射窓の直下に滞留させるための窒素ガスチャンバを設けた従来例の装置の断面図。
【図2】下流側から導入された窒素ガスを一時的に滞留させるため照射窓の直下に被処理物の一部を囲むように上下二分割方式の窒素ガスチャンバを設けた本発明の装置の閉状態の断面図。
【図3】下流側から導入された窒素ガスを一時的に滞留させるため照射窓の直下に被処理物の一部を囲むように上下二分割方式の窒素ガスチャンバを設けた本発明の装置の開状態の断面図。
【符号の説明】
2 真空チャンバ
3 フィラメント
4 照射窓
5 窓箔
6 筐体
7 窒素ガスチャンバ
8 被処理物
9 ビームキャッチャー
10 遮蔽材
20 窒素ガスチャンバ入口
22 窒素ガスチャンバ出口
23 前板
24 底板
25 後板
26 上板
27 窒素ガス入口
28 パッキン
29 側板
30 遮蔽板
32 脚
33 遮蔽底板
34 側板部
35 リブ
36 パッキン
37 ビームキャッチャー
38 フランジ
Claims (1)
- 上板、前板、後板、側板よりなる枠と、枠の下に形成したフランジとよりなり照射窓直下において筐体に固定した固定上半部と、側板部と外向きリブを持つ遮蔽底板と外向きリブの直上にあるパッキンと遮蔽底板に戴置したビームキャッチャーを含み遮蔽板とともに昇降できる可動下半部とからなり、遮蔽板を上昇させることによって可動下半部のパッキンが上半部のフランジを抑え、上、下半部が合体し、遮蔽板を下降させることによって可動下半部が下がり、照射窓部分が露呈し、ビームキャッチャーから発生するX線を遮蔽底板の側板部によってパッキンに対して遮蔽していることを特徴とする電子線照射装置の窒素ガスチャンバの構造。
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