JP2004067680A - アルコキシアミンの合成方法およびそのラジカル重合における使用 - Google Patents
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Abstract
【課題】アルコキシアミンの合成方法およびその制御されたラジカル重合における使用。
【解決手段】一般式(I)または(II)(好ましくは(I)):
【化1】
で示されるアルコキシアミンを調製するためのワンポット方法を開示する。この方法は、(1)酸化剤(A)を一般式(III):
【化2】
の立体障害第二アミンと水含有媒体中で反応させて、反応生成物および水相を形成し、(2)水相を除去し、(3)反応生成物にラジカル開始剤(B)を、該開始剤の分解を促進してラジカルを発生させる条件下で添加する、ことを包含する。モノマー重合の方法、すなわち、この創造的な方法により調製されるアルコキシアミンを用いた方法をもまた開示する。
【選択図】 なし
【解決手段】一般式(I)または(II)(好ましくは(I)):
【化1】
で示されるアルコキシアミンを調製するためのワンポット方法を開示する。この方法は、(1)酸化剤(A)を一般式(III):
【化2】
の立体障害第二アミンと水含有媒体中で反応させて、反応生成物および水相を形成し、(2)水相を除去し、(3)反応生成物にラジカル開始剤(B)を、該開始剤の分解を促進してラジカルを発生させる条件下で添加する、ことを包含する。モノマー重合の方法、すなわち、この創造的な方法により調製されるアルコキシアミンを用いた方法をもまた開示する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルコキシアミン開始剤の調製方法およびそのラジカル重合における開始剤としての使用に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビニルモノマーの、制御されたラジカル重合(controlled radical polymerization、「CRP」)の使用は、それが単純な実験条件下で明確に規定された広範囲の(共)重合体の合成を可能とすることから、急激に増加してきた。重合は、例えば、水性媒体中にて、穏やかな重合温度下で実行することができ、重合に先立つモノマーの精製は要求されない。加えて、ポリマー鎖の主要な特質、例えばその多分散性、分子量、ポリマー構造または鎖末端の構造は、容易に制御および調節できる。CRPは、「リビング」ラジカル重合とも称される。ラジカル重合の精密な制御の目的は、各成長段階後、可逆性の連鎖停止またはブロッキング(「エンド−キャッピング」)によって達成される。この場合、重合活性な(「リビング」)鎖末端の平衡濃度は、ブロックされた(「停止状態にある」)鎖末端の平衡濃度に比べて非常に低いので、不可逆の停止および移動反応が成長反応に比べて大きく抑制されている。エンド−キャッピングは可逆的に進行するため、全ての鎖末端は、停止試薬が存在しないのであれば、「リビング」なままである。こういうわけで、停止試薬による、分子量、低い多分散性、および鎖末端の制御された官能化のコントロールが可能となる。
【0003】
現在検討されている全てのCRP体系のうち、ニトロキシル媒介重合(the nitroxyl−mediated polymerization、「NMP」)は、最も魅力的で有効なものの一つである。なぜなら、この技術は、(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、スチレン、アクリルアミド、ブタジエンあるいはイソプレン等のように広範囲のモノマーへ適用できる利点を提供し、また、金属フリー、無色、無臭の方法で実行できるからである。
【0004】
アルコキシアミンがNMP機構に従ってビニルモノマーのラジカル重合の開始と制御に使用できることは、多数の文献に示されている。
【0005】
米国特許第4,581,429号(特許文献1)には、直鎖または環式窒素酸化物(例えば、2,2,6,6−テトラ−メチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO))と有機炭素系ラジカルとの反応によって形成されるアルコキシアミン、およびこの化合物を開始剤として用いたビニルポリマーの調製法が開示されている。この反応では、低濃度のラジカルを有するのが一般的であり、このことは、ビニルモノマーのラジカル重合では、単分子成長反応に比べて2分子停止反応が起こりにくいことを意味する。
【0006】
他の実例は、Hawkerら(J. Am. Chem. Soc. 1994, 116, 11185(非特許文献1)およびJ. Am. Chem. Soc. 1999, 121, 3904−3920(非特許文献2))、米国特許第5,322,912号(特許文献2)、同第5,412,047号(特許文献3)、同第5,449,724号(特許文献4)、同第5,498,679号(特許文献5)、同第6,258,911号(特許文献6)、ドイツ国特許公開第19909767号(特許文献7)および欧州特許公開第0891986号(特許文献8)によって記載されている。
【0007】
アルコキシアミン合成の目的で最も一般的に用いられる方法は、アルキルラジカルのニトロキシルラジカルへの結合にある。アルキルラジカルは種々の方法により発生しうる。例えば、アゾ化合物の分解による例(Hawker et.al., Macromolecules 1996, 29, 5245−5254(非特許文献3);Yozo Miura et al., Macromolecules 1998, 31, 6727−6729(非特許文献4))、適切な基体から水素を引き抜く例(Hawker et.al., Macromolecules 1996, 29, 5245−5254(非特許文献3);Yozo Miura et al., Macromolecules 1998, 31, 4659−4661(非特許文献5))またはラジカルをオレフィンへ添加する例(Hawker et.al., J. Am. Chem. Soc. 1994, 116, 11185(非特許文献1))がある。アルキルラジカルは、金属触媒の存在下に原子転移ラジカル付加(Atom Transfer Radical Addition、「ATRA」)反応によるハロゲン化化合物R−Xからも発生しうる(国際特許出願国際公開第00/49027号(特許文献9);同第00/61544号(特許文献10))。
【0008】
欧州特許公開第1083169号(特許文献11)には、官能化アルコキシアミン開始剤の調製方法が開示されているが、そこでは、過酸化水素が、ニトロキシルラジカルおよびビニルモノマーの存在下で硫酸鉄(II)と反応し、ワンポット方法において良い収率でアルコキシアミンを形成している。
【0009】
【特許文献1】
米国特許第4,581,429号
【特許文献2】
米国特許第5,322,912号
【特許文献3】
米国特許第5,412,047号
【特許文献4】
米国特許第5,449,724号
【特許文献5】
米国特許第5,498,679号
【特許文献6】
米国特許第6,258,911号
【特許文献7】
ドイツ国特許公開第19909767号
【特許文献8】
欧州特許公開第0891986号
【特許文献9】
国際特許出願国際公開第00/49027号
【特許文献10】
国際特許出願国際公開第00/61544号
【特許文献11】
欧州特許公開第1083169号
【非特許文献1】
J. Am. Chem. Soc. 1994, 116, 11185
【非特許文献2】
J. Am. Chem. Soc. 1999, 121, 3904−3920
【非特許文献3】
Macromolecules 1996, 29, 5245−5254
【非特許文献4】
Macromolecules 1998, 31, 6727−6729
【非特許文献5】
Macromolecules 1998, 31, 4659−4661
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述の方法の主要な不都合は、アルコキシアミンは高価なニトロキシルラジカルから合成する必要があり、また、重合に用いる前に通常精製しなければならないことである。
【0011】
本発明の課題は、前記した従来技術の不都合がない、立体障害第二アミンから開始するワンポット方法において、アルコキシアミン合成ための新規な合成経路を提供することであり、また、このアルコキシアミンを、特定の分子量をもつ狭い多分散性のホモ−およびコポリマーを提供する重合工程において、中間体として使用することであった。
【0012】
驚くべきことに、アルコキシアミンが、ワンポット方法で第二アミンから製造でき、かつ、中間の精製なしに、制御されたラジカル重合工程で使用できることをここに見出した。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の前記課題は、下記により達成される。
すなわち、一般式(I)または(II):
【化4】
[式中、
R1、R2およびR3は、独立して、水素、C1−C20アルキル、C1−C20シクロアルキル、C6−C24アリール、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、C1−C20アルキルエステル、C1−C20シクロアルキルエステル、C1−C20アルキルアミド、C1−C20シクロアルキルアミド、C6−C24アリールエステルおよびC6−C24アリールアミドよりなる群から選ばれ;または
R1、R2およびR3は、所望により、それらに結合している炭素原子と一緒になって、C3−C12シクロアルキル基、(C4−C12アルカノール)イル基、フェニル基、または酸素、硫黄あるいは窒素原子を含むC2−C13ヘテロシクロアルキル基を形成し;
(ここで、所望により、基R1、R2およびR3の少なくとも1個は、コーティング分野で既知の官能基と更に反応しまたは架橋し得る官能基Yを有してよい。)R4およびR5は、独立して、C1−C18アルキル、C2−C18アルケニル、C2−C18アルキニル、C3−C12シクロアルキル、C3−C12ヘテロシクロアルキル、およびC6−C24アリ−ルよりなる群から選ばれ、これらは全て、所望により、NO2、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、ケトン、C1−C4アルコキシ、C1−C4アルキルチオ、C1−C4アルキルアミノ、ホスホン酸ジアルキルエステルによって置換され;または、
R4およびR5は、所望により、それらに結合している窒素原子と一緒になって、C3−C12シクロアルキル基、(C4−C12アルカノール)イル基、または酸素、硫黄あるいは窒素原子を含むC2−C13ヘテロシクロアルキル基を形成し;または、
R4およびR5は、酸素、硫黄あるいは窒素原子を含む、多環式環状構造または多環式へテロ脂環構造の基を一緒になって形成し;
ここで、アルコキシアミン窒素原子に直接隣接するR4およびR5基の炭素原子は、それぞれの場合において、更なる3個の有機置換基によって置換されてよく、また、所望により、基R4およびR5のうち少なくとも1個が、コーティング分野で既知の官能基と反応または架橋し得る官能基Yを有してよい。]
で示されるアルコキシアミンを調製するためのワンポット方法であって、
(1)水含有媒体中で、酸化剤(A)を一般式(III):
【化5】
[式中、R4およびR5は、前記の定義に同じ。]
の立体障害第二アミンと反応させて、反応生成物および水相を形成し、
(2)水相を除去し、
(3)反応生成物にラジカル開始剤(B)を添加し、該開始剤の分解を開始(促進)して一般式(IV)または(V):
【化6】
[式中、R1、R2およびR3は、前記の定義に同じ。]
のラジカルを発生させる、
の反応段階を含んで成るワンポット方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
官能基Yは、更に反応または架橋することができるものであり、例えば、ヒドロキシル、カルボキシ、アミノ、イソシアネート、ウレタンまたはエポキシド基である。
【0015】
本プロセスは、一般式(I)のアルコキシアミンを調製するために好ましく用いられる。
【0016】
適当な酸化剤(A)は、第二アミンをニトロキシルラジカルへ酸化する従来技術において既知の全ての酸化剤である(Rozantsev et al. Synthesis 1971, 4, 192−195)。好ましい酸化剤は、水溶性酸化剤であり、例えば、過酢酸、過プロピオン酸、m−クロロ過安息香酸、ジメチルジオキシラン、過安息香酸などの過酸、または、カリウムペルオキシモノ硫酸塩(オキソン(商標)、デュポン・スペシャルティ・ケミストリー、米国)、過酸化水素、過酸化水素/タングステン酸ナトリウム、過酸化水素/チタニウム(例えば、二酸化チタンおよびチタンシリカライト(欧州特許公開第0488403号、第5頁)のような触媒を含む)などのような過酸化物、ホスホタングステン酸(phosphotungstic acid)および分子酸素またはオゾンといった酸化ガスである。特に好ましいのは、過酢酸、過プロピオン酸、m−クロロ過安息香酸、オキソン(商標)(デュポン・スペシャルティ・ケミストリー、米国)および過酸化水素/タングステン酸ナトリウムである。
【0017】
酸化銀、酸化鉛(IV)およびタングステン酸ナトリウムのような金属酸化物もまた、所望に応じ、他の酸化剤と組み合わせて用いてよい。種々の酸化剤の混合物もまた用いてよい。
【0018】
本発明の適当なラジカル開始剤(B)は、ニトロキシルラジカルと反応し得てラジカルを発生する物質であればいずれでもよく、例えば、アゾ化合物などのような前駆物質および過酸化物であって熱分解によりラジカルを発生させるもの、またはスチレンなどのような前駆体であって自家重合によりラジカルを発生させるものが挙げられる。レドックス系、光化学系または光線あるいはX線、γ線放射などのような高エネルギー放射(high energy radiation)によりラジカルを発生させることもまた可能である。
【0019】
ラジカルを発生させる他の有用な系としては、グリニャール試薬(Hawker et al., Macromolecules 1996, 29, 5245)またはハロゲン化化合物などのような有機金属化合物であって、原子転移ラジカル付加法(Atom Transfer Radical Addition Process、「ATRA」)(国際特許出願国際公開第00/61544号)により金属錯体の存在下で生成されるものを挙げることができる。
【0020】
熱分解によりラジカルを発生させるラジカル開始剤(B)の具体例としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’−アゾビス(イソバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(メチルイソブチレート)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−tert−ブチルアゾ−2−シアノプロパン、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(イソブチルアミジンヒドロクロライド)、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミン)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−エチル)−プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(イソブチルアミド)2水和物、2,2’−アゾビス(2,2,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、および過酸化ジベンゾイルを挙げることができる。
【0021】
光分解によりラジカルを発生させる開始剤としては、例えば、ベンゾイン誘導体、ベンゾフェノン、アシルホスフィン酸化物(acyl phosphine oxides)および光レドックス系を挙げることができる。
【0022】
レドックス反応の結果としてラジカルを発生させる開始剤は、オキシダントと還元剤の組み合わせが一般的である。適当なオキシダントとしては、例えば、過酸化ベンゾイルが挙げられる。適当な還元剤としては、例えば、Fe(II)塩、Ti(III)塩、チオ硫酸カリウム、重亜硫酸カリウム、アスコルビン酸およびその塩、シュウ酸およびその塩、デキストロースおよびロンガリット(商標)(ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム, BASF AG, Ludwigshafen, DE)が挙げられる。
【0023】
好ましいラジカル開始剤(B)は熱分解によりラジカルを発生する化合物であり、AIBNおよび過酸化ジベンゾイルが特に好ましい。
【0024】
水含有相は、Na2CO3, NaHCO3, K2CO3, KHCO3, Na3PO4, Na2HPO4, NaH2PO4等のような塩基性の有機あるいは無機緩衝剤または有機あるいは無機の塩基、酢酸ナトリウム塩またはプロピオン酸ナトリウム塩などのようなカルボン酸金属塩、またはそれらの混合物を含んでよい。Na2CO3, NaHCO3, K2CO3, KHCO3および酢酸のナトリウム、カルシウムまたはカリウム塩が好ましい。
【0025】
一般式(III)の立体障害第二アミンで有用なものは、例えば、次式(VI)ないし(X):
【化7】
[式中、
R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19は、独立して、水素、ハロゲンまたはシアノ−、アミド−、エーテル−、エステル−、チオエーテル−、ケトン−、アミド−、カルボキシル−、アミジン−およびジアルキルホスホニル−含有基から構成される第一群;および、
C1−C18アルキル、C2−C18アルケニル、C2−C18アルキニル、C3−C12シクロアルキル、C3−C12ヘテロシクロアルキル、C6−C24アリールから構成される第二群から選択され(第二群の構成単位は所望により、NO2、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、C1−C4アルコキシ、C1−C4アルキルチオ、C1−C4アルキルアミノラジカルによって置換されてよい);
R6ないしR19は、これらのうち2個または3個に結合している炭素原子と一緒になって、C3−C12シクロアルキル基、(C4−C12アルカノール)イル基、または酸素、硫黄あるいは窒素原子を含むC2−C13ヘテロシクロアルキル基を形成してよく;または、酸素、硫黄あるいは窒素原子を含む、多環式環状構造または多環式へテロ脂環構造の基を一緒になって形成してよく(ここで、所望により、基R6ないしR19の少なくとも1個は、コーティング分野で既知の官能基と更に反応しまたは架橋し得る官能基Yを有する);
Xは、メチレン、ケトン、エステル基、または、酸素原子、炭化水素基を表わし、これらは、シアノ、エステル、ヒドロキシ、ニトロ、エーテルあるいはイミド基によって置換されてよい。]
に示される。
【0026】
他の有用な第二アミンは、例えば、次式(XI)および(XII):
【化8】
[式中、
R20は、C1−C18アルキル、C2−C18アルケニル、C2−C18アルキニル、C3−C12シクロアルキル、C3−C12ヘテロシクロアルキルおよびC6−C24アリールから構成される群から選択され、その全てが所望により、NO2、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、C1−C4アルコキシ、C1−C4アルキルチオ、C1−C4アルキルアミノによって置換され;
R20は、所望により、コーティング分野で既知の官能基と更に反応しまたは架橋し得る官能基Yを有してよい;
R21、R22は、独立して、水素、ハロゲンまたはシアノ−、アミド−、エーテル−、エステル−、チオエーテル−、ケトン−、アミド−、カルボキシル−、アミジン−およびジアルキルホスホニル−含有基から構成される第一群;または、C1−C18アルキル、C2−C18アルケニル、C2−C18アルキニル、C3−C12シクロアルキル、C3−C12ヘテロシクロアルキル、およびC6−C24アリールから構成される第二群(第二群の構成単位は、所望により、NO2、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、C1−C4アルコキシ、C1−C4アルキルチオまたはC1−C4アルキルアミノによって置換されてよい)から選択され;
ここで、R21およびR22は、所望により、それらに結合している炭素原子と一緒になって、C3−C12シクロアルキル基、(C4−C12アルカノール)イル基、または酸素、硫黄あるいは窒素原子を含むC2−C13ヘテロシクロアルキル基を形成してよく;
R21およびR22は、酸素、硫黄あるいは窒素原子を含む、多環式環状構造または多環式へテロ脂環構造の基を一緒になって形成してよい;
ここで、R23およびR24は、所望により、中間の燐原子と一緒になって、C3−C12シクロアルキル基、(C4−C12アルカノール)イル基、または酸素、硫黄あるいは窒素原子を含むC2−C13ヘテロシクロアルキル基を形成し;
基R20ないしR24のうち少なくとも1個は、所望により、コーティング分野で既知の官能基と更に反応しまたは架橋し得る官能基Yを有してよい;
R23、R24は、独立して、C1−C18アルキル、C2−C18アルケニル、C2−C18アルキニル、C3−C12シクロアルキル、C3−C12ヘテロシクロアルキルおよびC6−C24アリールから構成される群から選択され、その全てが所望により、NO2、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、C1−C4アルコキシ、C1−C4アルキルチオまたはC1−C4アルキルアミノによって置換され;
R23およびR24は、所望により、それらに結合している燐原子と一緒になって、C3−C12シクロアルキル基、(C4−C12アルカノール)イル基、または酸素、硫黄あるいは窒素原子を含むC2−C13ヘテロシクロアルキル基を形成し;
基R23ないしR24のうち少なくとも1個は、所望により、コーティング分野で既知の官能基と更に反応しまたは架橋し得る官能基Yを有してよい。]
に示される。
【0027】
一般式(III)の第二アミンは、好ましくは、tert−ブチルアミン;2,2,6,6−テトラメチルピペリジン;4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン;2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノン;2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルアセテート;2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルステアレート;2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルベンゾエート;2,6−ジメチル−2,6−ジエチルピペリジン;ジエチル 1−(tert−ブチルアミノ)−2,2−ジメチルプロピルホスホネート;ジプロピル 1−(tert−ブチルアミノ)−2,2−ジメチルプロピルホスホネート;ジブチル 1−(tert−ブチルアミノ)−2,2−ジメチルプロピルホスホネート;N−(tert−ブチル)−1−(ジエチルホスホリル)−2,2−ジメチル−1−プロピルアミン;N−(tert−ブチル)−1−(ジプロピルホスホリル)−2,2−ジメチル−1−プロピルアミン;N−(tert−ブチル)−2−メチル−1−フェニル−1−プロピルアミン;2,2,4,6,6−ペンタメチル−1,2,5,6−テトラヒドロピリミジン;N−[(3E)−2,2−ジフェニル−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン]−N−フェニルアミン;2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−4−ピペリジノン;2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−4−ピペリジノール;14−オキサ−7−アザジスピロ[5.1.5.2]ペンタデカン;2,2,4,4−テトラメチル−1,3−オキサゾリジン;2,2,5,5−テトラメチル−1−ピロリジン;3−カルボキシ−2,2,5,5−テトラメチル−1−ピロリジン;2,5−ジフェニル−2,5−ジメチルピロリジン;3−カルボキシ−2,5−ジフェニル−2,5−ジメチルピロリジン;1,1,3,3−テトラエチルイソインドリン;1,1,3,3−テトラメチルイソインドリン; 1,1,3,3−テトラプロピルイソインドリンである。
【0028】
特に好ましいのは、tert−ブチルアミン;2,2,6,6−テトラメチルピペリジン;4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン;2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノン;2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルアセテート;ジエチル 1−(tert−ブチルアミノ)−2,2−ジメチルプロピルホスホネート;ジプロピル 1−(tert−ブチルアミノ)−2,2−ジメチルプロピルホスホネート;ジブチル 1−(tert−ブチルアミノ)−2,2−ジメチルプロピルホスホネート;2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−4−ピペリジノン;2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−4−ピペリジノール;2,2,5,5−テトラメチル−1−ピロリジン;1,1,3,3−テトラメチルイソインドリンである。
【0029】
多官能性アミンもまた、熱可逆性を発揮する樹脂を形成するために、化学式(III)の化合物として用いてよい。本発明において、多官能性アミンとは、第二アミノ基を2個以上有する化合物をいう。加工の際に低粘度のポリマーが要求されるとき、これらの特性は特に興味深い。
【0030】
適した多官能性アミンをいくつか例示すると、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)セバケート;ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)スクシネート;ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)アジペート;ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)フタレート;ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)イソフタレート;ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)テレフタレート;または、ポリ((6−((1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ)−1,6−ヘキサンジイル((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ))(CHIMASSORB(商標)944, Ciba Specialty Chemicals, D−Lampertheim)などの高分子多官能アミン(polymeric multifunctional amines)が挙げられる。
【0031】
本発明を実施する一方法は、第一段階において、一般式(III)の第二アミンが水を含む反応容器中に導入される。第二アミンに対する水の重量比は、約0.1ないし200、好ましくは約1ないし50、より好ましくは約2ないし30の範囲である。水は、塩基性の無機あるいは有機緩衝剤または無機あるいは有機塩基を含むことが好ましい。緩衝剤または塩基に対する第二アミンのモル比は、約20ないし0.05、好ましくは約10ないし0.1、より好ましくは約5ないし0.5の範囲である。
【0032】
二相媒体を形成させるため、一般式(III)の第二アミンは、水と混ざらない適当な溶媒に溶解させることが好ましい。好ましい溶媒は、トルエン、キシレンまたはジクロロメタンである。第二アミンに対する溶媒の重量比は、約0.1ないし30、好ましくは約0.5ないし10、より好ましくは約1ないし5である。
【0033】
次いで、勢いよく攪拌しながら、一般式(III)の第二アミンを含む反応容器へ、酸化剤(A)をその純粋な形態でゆっくりと添加する。酸化剤(A)の溶液を反応容器へ添加することもまた可能である。その目的で使用される適当な溶媒は、種々の試薬に対して不活性でかつその反応の間は反応しないものであるべきであって:例えば、トルエン、キシレン、ジクロロメタンである。酸化剤(A)が水溶性の場合、好ましい溶媒は水である。酸化剤に対する溶媒の重量比は、約0.1ないし30、好ましくは約0.5ないし10、より好ましくは約1ないし5の範囲である。
【0034】
特定の官能基(例えば、Y=NH2)を用いる場合には、上記反応中に、官能基に保護基を提供するのが有利であることがあるが(例えば、アセトアミドとしてのアミノ基の保護;塩基での加水分解によるアミド官能性のより遅い遊離)、Y=OHの場合には、保護基を使用する必要はない。
【0035】
反応の温度は、約−10℃ないし約130℃の範囲であってよく、好ましくは約0℃ないし80℃、より好ましくは約0℃ないし50℃である。反応時間は約10分ないし約72時間の範囲であってよく、好ましくは約1時間ないし36時間、より好ましくは約2時間ないし24時間である。本発明におけるプロセスの第一段階は、空気中または窒素あるいはアルゴンのような不活性ガス雰囲気中で実施されうる。反応溶液のpHは、所望により、例えばNaHCO3のような物質で5ないし7の範囲に調整してよい。
【0036】
第二段階では、ニトロキシルラジカルを形成するため第二アミンの部分または完全酸化の後、攪拌が終了され、水相が取り除かれる。
【0037】
第三段階では、ラジカル開始剤が第二段階の有機相へ添加される。ラジカル開始剤の溶液を反応容器へ添加することもまた可能である。その目的で使用される適当な溶媒は、種々の試薬に対して不活性でかつその反応の間は反応しない:例えば、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、カルボニル化合物であり、好ましくは、メチルエチルケトンまたは前記溶媒の所望の混合物である。ラジカル開始剤に対する溶媒の重量比は、約0.1ないし50、好ましくは約0.5ないし25、より好ましくは約1ないし15の範囲である。
【0038】
ラジカル開始剤は、当初の第二アミンを基準に0.01−ないし10−倍モル過剰で用いられる。好ましくは、当初の第二アミンを基準に、0.1−ないし5−倍モル過剰、最も好ましくは、0.25−ないし2−倍モル過剰である。
【0039】
反応温度は約−10℃ないし150℃、好ましくは約0℃ないし100℃、より好ましくは約25℃ないし85℃の範囲であってよい。反応は、窒素あるいはアルゴンのような不活性ガス雰囲気中で行うことが最も好ましい。
【0040】
未反応のラジカル開始剤による最終製品のコンタミネーションを避けるため、反応は、全てのラジカル開始剤が分解するまで行うことが好ましい。ラジカル開始剤の分解が不完全な場合は、時間または温度を増やすことができる。過剰のラジカル開始剤を分解し得る化合物を添加することもまた可能である。
【0041】
反応が完結した後、過剰の未反応の第二アミンを除去するため、酸性水(pH≒5−2)が有機媒体へ添加され、酸性水で数回洗浄される。所望により、有機相は、過剰の酸化剤(A)を除去するため、塩基性水(pH≒7.5−9.5)および/または還元剤で洗浄してよい。有機相は、次いでNa2SO4またはMgSO4のような乾燥剤の下で乾燥される。真空下での溶媒の除去により、一般式(I)または(II)の粗製アルコキシアミンが得られる。
【0042】
水と混ざる有機溶媒を反応に用いる場合、酸性水の添加前に有機溶媒を真空下で除去しておくことが好ましい。アルコキシアミンの抽出の目的では、有機溶媒と混和しない水を用いることが好ましい。
【0043】
所望により、アルコキシアミンを再結晶、クロマトグラフィーまたは蒸留のような精製法によってさらに精製してよい。
【0044】
本発明の別の目的は、オリゴマー、コオリゴマー、ポリマーまたはブロックあるいはランダムコポリマーを調製するための新規なプロセスを提供することであって、本発明のプロセスによる一般式(I)または(II)の官能化アルコキシアミンの調製、および一般式(I)または(II)の非精製アルコキシアミンへの少なくとも1個の重合性モノマーを加熱に先立って添加することを包含する。
【0045】
有用なモノエチレン性不飽和モノマーとしては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレートおよびイソブチルメタクリレートなどのようなアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル、例えばヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートおよびヒドロキシプロピルメタクリレートなどのようなアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−tert ブチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アリールアルコール、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ホスホエチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルイミダゾール、ビニルアセテート,ブタジエンまたはイソプレンなどの共役ジエン、スチレン、スチレンスルホン酸塩、ビニルスルホン酸塩および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩、およびアクリロイル(acryloyl)である。
【0046】
適したコモノマーの例は、C3−C6−エチレン性不飽和モノカルボン酸並びにそのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩である。C3−C6−エチレン性不飽和モノカルボン酸は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、酢酸ビニルおよびアクリルオキシプロピオン酸を包含する。アクリル酸およびメタクリル酸は、好ましいモノエチレン性不飽和のモノカルボン酸モノマーである。
【0047】
コモノマーとして適したC8−C16−エチレン性不飽和のフェノール性化合物の例としては、4−ヒドロキシスチレン、4−ヒドロキシ、α−メチルスチレン、2,6−ジtert−ブチルフェノールおよび4−ビニルフェノールも挙げられる。
【0048】
本発明において、C4−C6−エチレン性不飽和のジカルボン酸およびそのアルカリ金属とアンモニウムの塩は、シス−ジカルボン酸無水物と同様に、コモノマーとして使用に適するカルボン酸モノマーの別の部類に属する。適する例には、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、フマル酸およびシトラコン酸が包含される。マレイン酸およびイタコン酸は、好ましいモノエチレン性不飽和ジカルボン酸モノマーである。
【0049】
酸モノマーは、酸の形態、または、酸のアルカリ金属塩あるいはアンモニウム塩の形態で用いてよい。
【0050】
好ましいモノマーは、C1−C20−アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル、C1−C20−アルコールのシアノアクリル酸エステル、C1−C6−アルコールのマレイン酸ジエステル、無水マレイン酸、ビニルピリジン、ビニル(アルキルピロール)、ビニルオキサゾール、ビニルオキサゾリン、ビニルチアゾール、ビニルイミダゾール、ビニルピリミジン、ビニルケトン、スチレン、またはα位にC1−C6−アルキル基あるいはハロゲンを含み、かつ、芳香環上に3個までの更なる置換基を有するスチレン誘導体、から成る群から選ばれる。
【0051】
特に好ましいモノマーは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、無水マレイン酸、スチレンまたはアクリロニトリルである。
【0052】
本発明によるプロセスの重要な利点は、アルコキシアミンの追加的精製ステップを免除し得ることである。
【0053】
本発明による(コ)ポリマーの調製にとって、モノマー、一般式(I)または(II)の粗製アルコキシアミンのような全ての成分は、反応温度は約0℃ないし260℃、好ましくは約50℃ないし200℃、より好ましくは約70℃ないし150℃の範囲で、反応時間は約30分ないし72時間、好ましくは約1時間ないし48時間、より好ましくは約2時間ないし24時間の範囲で、反応が行われる。重合は、例えば窒素またはアルゴンのような不活性ガス雰囲気下で行われる。
【0054】
重合を促進するために、所望により、重合前または重合プロセスの間にいくつかの添加剤を重合媒体へ添加してよい。そのような添加剤は、当業界で既知であって、例えば、カンファースルホン酸、2−フルオロ−1−メチルピリジニウム p−トルエンスルホネート、無水酢酸(Tetrahedron 1997, 53(45), 15225)などのようなアシル化化合物、グルコース、デキストロース(Macromolecules 1998, 31, 7559)、アスコルビン酸(Macromolecules 2001, 34, 6531)または米国特許第6,288,186号(第4欄、第8−24行)に報告されたような長寿命ラジカル開始剤が挙げられる。
【0055】
本発明の(コ)ポリマーは、数平均分子量が500ないし2・106、好ましくは2000ないし5・105、より好ましくは2000ないし2.5・105でであってよい。
【0056】
一般式(I)または(II)のアルコキシアミン化合物は、モノマー重量を基準として、約30wt%ないし0.01wt%、好ましくは15wt%ないし0.05wt%、より好ましくは5wt%ないし0.05wt%の範囲の量が導入される。
【0057】
(コ)ポリマーの調製のためには、ごく少量の有機溶媒を用いることが好ましい。有機溶媒が求められる場合、適当な溶媒または溶媒混合物の典型例は、ヘキサン、ヘプタンあるいはシクロアルカンなどのような純粋アルカン;ベンゼン、トルエンあるいはキシレンなどのような炭化水素;メチルエチルケトンなどのようなカルボニル化合物;クロロベンゼンなどのようなハロゲン化炭化水素、酢酸エチル、酢酸プロピル、ブチルあるいはヘキシルなどのようなエステル;ジエチルエーテル、ジブチルエーテルあるいはエチレングリコールジメチルエーテルなどのようなエーテル;メタノール、エタノール、エチレングリコールなどのようなアルコール;またはモノメチルエーテルあるいはそれらの混合物である。モノマーに対する溶媒の重量比は、約0ないし5、好ましくは約0ないし2の範囲である。
【0058】
用いられる重合の形式は、塊状、溶液、乳化、分散または縣濁重合であってよく、回分式および連続式の両方が行われる。
【0059】
本発明によって調製されるポリマーは、低い多分散性(Mw/Mn)を示すが、2より低いのが通常であり、2よりかなり低い可能性がある。ポリマー鎖の数平均分子量は、モノマーの転化に従って直線的に増加し、そのことによりテイラーメイドのポリマー分子量を得ることが可能となる。更に、ポリマーの分子量は、モノマー量に比して粗製アルコキシアミンの量を変更することによって制御できる。高分子量のポリマーを形成することが可能である。
【0060】
本発明の更なる利点は、未重合反応のモノマーを(コ)ポリマーから取り除いた後または転化率100%に到達した後、第一重合段階で使用されたビニルモノマーまたはモノマー混合物とは異なる場合もある新たなビニルモノマーまたはモノマー混合物の部分を、第一段階で合成されたポリマーへ、単に添加することによって第二の重合段階を開始し得ることである。第二段階で添加されるビニルモノマーまたはモノマー混合物の重合は、第一重合段階で合成されたポリマー鎖によって次に開始され、ジ−ブロックコポリマーは、例えば、第一重合段階で合成されたポリマー鎖が単一の成長鎖末端を有する直鎖から成る場合に産出される。各ブロックの分子量および多分散性は、各重合段階の間に独立して制御され得る。このプロセスは幾度も繰り返すことができ、そうして各ブロックに制御された分子量および分子量分布を有する多ブロックのコポリマーが提供され得る。
【0061】
結果として得られるポリマーは、通常、無色であって、大抵の場合、更なる精製を行うことなく使用が可能である。
【0062】
以下の実施例により、本発明を更に詳細に説明する。
【0063】
【実施例】
分子量は、Shodex RI 74 示差屈折率測定器を装備した、ゲル パーミエーション クロマトグラフィー(GPC)により決定した。流速1mL/分を使用し、試料はTHF中に調製した。キャリブレーションにはポリスチレン標準を用いた。
【0064】
実施例1
2−メチル−2−[(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニル)オキシ]プロパンニトリル(1)の合成
【化9】
【0065】
機械式スターラー、還流凝縮器、温度計、漏斗およびセプタムを装備した1Lの四つ口丸底フラスコ中に、水80g、K2CO3を20g(99%;1.44・10−1モル)、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン20g(99%;1.41・10−1モル)およびトルエン150gを添加する。次いで、水300g中の過酢酸31.3g(35wt%、Aldrich;1.44・10−1モル)の溶液を、勢いよく攪拌しながらゆっくりと1Lのフラスコに添加し(わずかに発熱反応を伴う)、フラスコを室温で水浴中に設置する。添加後、反応媒体を室温にて夜通し攪拌すると、有機相は、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキサイド(TEMPO)の生成により、段々と赤色を帯びてくる。
【0066】
次いで、攪拌を終え、水相を反応フラスコから除去する。次に、赤色の有機相を、アルゴンを通気させて10分間脱気する。それから、アルゴン雰囲気下、勢いよく攪拌しながら、アゾビスイソブチロニトリル 11.82g(AIBN、7.2・10−2モル)をゆっくりと少しづつ添加する。次いで、脱気トルエン100gを素早く反応フラスコに添加し、温度を60℃に上昇させる。60℃で24時間の後、溶液を室温で冷却する。最後に、この有機溶液を水(pH=3)で三度洗浄し、次いでNa2SO4下で乾燥する。真空下50℃で乾燥すると、17.95gの粗製アルコキシアミン1が回収される。
【0067】
実施例2
実施例1において合成した、粗製および精製の2−メチル−2−[(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニル)オキシ]プロパンニトリル(1)によって開始されたスチレンの重合
【0068】
1.粗製(未精製)のアルコキシアミン1を用いたスチレンの重合
機械式スターラー、還流凝縮器、温度計およびセプタムを装備した三つ口丸底フラスコ中に、未精製の1を0.242gおよびスチレン100g(0.96モル)を添加する。次いで、溶液をアルゴン通気により10分間脱気し、それから125℃で加熱する。
【0069】
2.15および14時間の後、試料を反応フラスコから取り出し、70℃にて24時間の間、真空下で乾燥する。収率を重量測定分析により計算し、分子量と多分散性をGPCにより決定する。結果を表1に示す。
【0070】
2.精製したアルコキシアミン1を用いたスチレンの重合
アルコキシアミン1を以下のように精製する。
7.31gの粗製アルコキシアミン1をn−ヘキサン/エチルアセテート 5/1の混合溶媒で溶出することによりカラムクロマトグラフィーで精製する。そうして3.68gの純粋なアルコキシアミン1が白色固体として回収される。
【0071】
1H−NMR:1.66ppm(6H):s;1.51ppm(6H):m;1.22ppm(6H):s;1.11ppm(6H):s
【0072】
元素分析実験:
【0073】
粗製アルコキシアミン1を精製アルコキシアミン1に置き換えることを除き、粗製アルコキシアミン1の存在下でのスチレン重合にて報告したのと同じ手法を用いる。結果を表1に示す。
【0074】
表1
【0075】
モノマー転化率に伴う分子量の増加および低い多分散性は、制御された重合と矛盾しない。その上、重合が早い(14時間の反応後のモノマー転化率が約80%)。粗製と精製のアルコキシアミンを用いたときに、同じ重合速度と同じ分子量が認められる。
【0076】
実施例3
粗製のアルコキシアミン1を用いたスチレンの重合および粗製アルコキシアミン量を変更することによるポリマー分子量の改変
【0077】
機械式スターラー、還流凝縮器、温度計およびセプタムを装備した三つ口丸底フラスコ中に、0.242gまたは0.121gの粗製(未精製)1およびスチレン100g(0.96モル)を添加する。次いで、溶液をアルゴン通気によって10分間脱気し、それから125℃にて加熱する。
【0078】
冷却後、ポリマーをクロロホルムに溶解し、アルミニウム袋に移し、空気中で夜通し乾燥しそして次いで70℃で24時間真空で加熱する。収率を、重量測定分析により計算する。
結果を表2に示す。
【0079】
表2
【0080】
重合媒体中の粗製アルコキシアミン1の量を変更することによって、制御された重合で期待されるように、ポリマーの分子量はそれに応じて変化する。その上、高分子量の制御されたポリスチレンが粗製アルコキシアミンを用いて合成し得る。
【0081】
実施例4
実施例1において合成した、粗製および精製の2−メチル−2−[(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニル)オキシ]プロパンニトリル(1)によって開始されたスチレンおよびアクリロニトリルの共重合
【0082】
1.粗製(未精製)のアルコキシアミン1を用いたスチレンおよびアクリロニトリルの共重合
機械式スターラー、還流凝縮器、温度計およびセプタムを装備した三つ口丸底フラスコ中に、0.242gの未精製1、75gのスチレン(0.72モル)および25gのアクリロニトリル(0.47モル)を添加する。次いで、溶液をアルゴン通気により10分間脱気し、それから還流により加熱する。
【0083】
8および24時間の後、試料を反応フラスコから取り出し、70℃にて24時間の間、真空下で乾燥する。収率を重量測定分析により計算し、分子量と多分散性をGPCにより決定する。結果を表3に示す。
【0084】
2.精製したアルコキシアミン1を用いたスチレンおよびアクリロニトリルの共重合
この実験のために、アルコキシアミン1を実施例2で報告したように精製する。
粗製アルコキシアミン1を精製アルコキシアミン1に置き換えることを除き、粗製アルコキシアミン1の存在下でのスチレンおよびアクリロニトリルの共重合にて報告したのと同じ手法を用いる。結果を表3に示す。
【0085】
表3
【0086】
両方(粗製および精製アルコキシアミン)の場合で、同じ速度の重合が認められ得る(還流での重合の24時間後、モノマー転化率が約80%に到達)。その上、多分散性インデックスが狭く、ポリマー分子量がモノマー転化率と共に増加しており、これは制御されたプロセスに一致するものである。
【0087】
実施例5
粗製アルコキシアミン1を用いたスチレンおよびアクリロニトリルの共重合並びに粗製アルコキシアミン量を変更することによるポリマー分子量の改変
【0088】
機械式スターラー、還流凝縮器、温度計およびセプタムを装備した三つ口丸底フラスコ中に、0.242gまたは0.121gの粗製(未精製)1、75gのスチレン(0.72モル)および25gのアクリロニトリル(0.24モル)を添加する。次いで、溶液をアルゴン通気により10分間脱気し、それから還流により24時間加熱する。
【0089】
冷却後、ポリマーをクロロホルムに溶解し、アルミニウム袋に移し、空気中で夜通し乾燥しそして次いで70℃で24時間真空で加熱する。収率を、重量測定分析により計算する。
結果を表4に示す。
【0090】
表4
【0091】
重合媒体中の粗製アルコキシアミン1の量を変更することによって、制御された重合で期待されるように、ポリマーの分子量はそれに応じて変化する。その上、高分子量の制御されたポリ(スチレン−co−アクリロニトリル)がこれらの条件で合成し得る。
【0092】
実施例6
ポリ(スチレン−co−アクリロニトリル)−b−ポリ(n−ブチルアクリレート)(SAN−b−PnBuA)ブロック共重合体の合成
【0093】
機械式スターラー、還流凝縮器、温度計およびセプタムを装備した三つ口丸底フラスコ中に、実施例4にて粗製アルコキシアミン1を用いて合成したポリ(スチレン−co−アクリロニトリル)(SAN)を10g、50gのn−ブチルアクリレート(0.39モル)および3.2mgのアスコルビン酸(1.81・10−5モル)を添加する。次いで、溶液をアルゴン通気により10分間脱気し、それから145℃で5時間加熱する。次にポリマーをメタノール中で沈澱させ、80℃真空下で乾燥する。
【0094】
表5
【0095】
第1ブロックの分子量増加によって示されるように、SAN第1ブロックは伸びている。
【0096】
実施例7
粗製アルコキシアミン 2−メチル−2−[(2,2,6,6−テトラメチル−4−オキソ−1−ピペリジニル)オキシ]プロパンニトリル2の合成
【化10】
【0097】
機械式スターラー、還流凝縮器、温度計、漏斗およびセプタムを装備した1Lの四つ口丸底フラスコ中に、水80g、K2CO3を20g(99%;1.44・10−1モル)、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリドン22g(95%;1.41・10−1モル)およびトルエン150gを添加する。次いで、水300g中の過酢酸31.3g(35wt%、Aldrich;1.44・10−1モル)の溶液を、勢いよく攪拌しながらゆっくりと1Lのフラスコに添加し(わずかに発熱反応を伴う)、フラスコを室温で水浴中に設置する。添加後、反応媒体を室温にて夜通し攪拌する。
【0098】
次いで、攪拌を終え、水相を反応フラスコから除去する。次に、有機相を、アルゴンを通気させて10分間脱気する。それから、アルゴン雰囲気下、勢いよく攪拌しながら、アゾビスイソブチロニトリル 11.82g(AIBN、7.2・10−2モル)をゆっくりと少しづつ添加する。次いで、脱気トルエン100gを素早く反応フラスコに添加し、温度を65℃に上昇させる。65℃で23時間の後、溶液を室温で冷却する。最後に、この有機溶液を水(pH=3)で三度洗浄し、次いでNa2SO4で乾燥する。真空下50℃で乾燥すると、19.68gの粗製アルコキシアミン2が回収される。
【0099】
実施例8
粗製アルコキシアミン2の存在下でのスチレンの重合
【0100】
機械式スターラー、還流凝縮器、温度計およびセプタムを装備した三つ口丸底フラスコ中に、粗製(未精製)の2を0.257gおよびスチレン100g(0.96モル)を添加する。次いで、溶液をアルゴン通気により10分間脱気し、それから125℃で24時間加熱する。
【0101】
2および14時間の後、試料を反応フラスコから取り出し、70℃にて24時間の間、真空下で乾燥する。収率を重量測定分析により計算し、分子量と多分散性をGPCにより決定する。結果を表6に示す。
【0102】
表6
【0103】
モノマー転化率に伴う分子量の増加および低い多分散性は、制御された重合と矛盾しない。その上、重合が早い(14時間の反応後のモノマー転化率が92%)。
【0104】
本発明は、例示目的のために上記のように詳細に記載したが、その詳細は単にその目的のためだけであって、クレームによって限定され得ること以外は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当該分野における熟練者によって変更が成され得るものと解されるべきである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルコキシアミン開始剤の調製方法およびそのラジカル重合における開始剤としての使用に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビニルモノマーの、制御されたラジカル重合(controlled radical polymerization、「CRP」)の使用は、それが単純な実験条件下で明確に規定された広範囲の(共)重合体の合成を可能とすることから、急激に増加してきた。重合は、例えば、水性媒体中にて、穏やかな重合温度下で実行することができ、重合に先立つモノマーの精製は要求されない。加えて、ポリマー鎖の主要な特質、例えばその多分散性、分子量、ポリマー構造または鎖末端の構造は、容易に制御および調節できる。CRPは、「リビング」ラジカル重合とも称される。ラジカル重合の精密な制御の目的は、各成長段階後、可逆性の連鎖停止またはブロッキング(「エンド−キャッピング」)によって達成される。この場合、重合活性な(「リビング」)鎖末端の平衡濃度は、ブロックされた(「停止状態にある」)鎖末端の平衡濃度に比べて非常に低いので、不可逆の停止および移動反応が成長反応に比べて大きく抑制されている。エンド−キャッピングは可逆的に進行するため、全ての鎖末端は、停止試薬が存在しないのであれば、「リビング」なままである。こういうわけで、停止試薬による、分子量、低い多分散性、および鎖末端の制御された官能化のコントロールが可能となる。
【0003】
現在検討されている全てのCRP体系のうち、ニトロキシル媒介重合(the nitroxyl−mediated polymerization、「NMP」)は、最も魅力的で有効なものの一つである。なぜなら、この技術は、(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、スチレン、アクリルアミド、ブタジエンあるいはイソプレン等のように広範囲のモノマーへ適用できる利点を提供し、また、金属フリー、無色、無臭の方法で実行できるからである。
【0004】
アルコキシアミンがNMP機構に従ってビニルモノマーのラジカル重合の開始と制御に使用できることは、多数の文献に示されている。
【0005】
米国特許第4,581,429号(特許文献1)には、直鎖または環式窒素酸化物(例えば、2,2,6,6−テトラ−メチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO))と有機炭素系ラジカルとの反応によって形成されるアルコキシアミン、およびこの化合物を開始剤として用いたビニルポリマーの調製法が開示されている。この反応では、低濃度のラジカルを有するのが一般的であり、このことは、ビニルモノマーのラジカル重合では、単分子成長反応に比べて2分子停止反応が起こりにくいことを意味する。
【0006】
他の実例は、Hawkerら(J. Am. Chem. Soc. 1994, 116, 11185(非特許文献1)およびJ. Am. Chem. Soc. 1999, 121, 3904−3920(非特許文献2))、米国特許第5,322,912号(特許文献2)、同第5,412,047号(特許文献3)、同第5,449,724号(特許文献4)、同第5,498,679号(特許文献5)、同第6,258,911号(特許文献6)、ドイツ国特許公開第19909767号(特許文献7)および欧州特許公開第0891986号(特許文献8)によって記載されている。
【0007】
アルコキシアミン合成の目的で最も一般的に用いられる方法は、アルキルラジカルのニトロキシルラジカルへの結合にある。アルキルラジカルは種々の方法により発生しうる。例えば、アゾ化合物の分解による例(Hawker et.al., Macromolecules 1996, 29, 5245−5254(非特許文献3);Yozo Miura et al., Macromolecules 1998, 31, 6727−6729(非特許文献4))、適切な基体から水素を引き抜く例(Hawker et.al., Macromolecules 1996, 29, 5245−5254(非特許文献3);Yozo Miura et al., Macromolecules 1998, 31, 4659−4661(非特許文献5))またはラジカルをオレフィンへ添加する例(Hawker et.al., J. Am. Chem. Soc. 1994, 116, 11185(非特許文献1))がある。アルキルラジカルは、金属触媒の存在下に原子転移ラジカル付加(Atom Transfer Radical Addition、「ATRA」)反応によるハロゲン化化合物R−Xからも発生しうる(国際特許出願国際公開第00/49027号(特許文献9);同第00/61544号(特許文献10))。
【0008】
欧州特許公開第1083169号(特許文献11)には、官能化アルコキシアミン開始剤の調製方法が開示されているが、そこでは、過酸化水素が、ニトロキシルラジカルおよびビニルモノマーの存在下で硫酸鉄(II)と反応し、ワンポット方法において良い収率でアルコキシアミンを形成している。
【0009】
【特許文献1】
米国特許第4,581,429号
【特許文献2】
米国特許第5,322,912号
【特許文献3】
米国特許第5,412,047号
【特許文献4】
米国特許第5,449,724号
【特許文献5】
米国特許第5,498,679号
【特許文献6】
米国特許第6,258,911号
【特許文献7】
ドイツ国特許公開第19909767号
【特許文献8】
欧州特許公開第0891986号
【特許文献9】
国際特許出願国際公開第00/49027号
【特許文献10】
国際特許出願国際公開第00/61544号
【特許文献11】
欧州特許公開第1083169号
【非特許文献1】
J. Am. Chem. Soc. 1994, 116, 11185
【非特許文献2】
J. Am. Chem. Soc. 1999, 121, 3904−3920
【非特許文献3】
Macromolecules 1996, 29, 5245−5254
【非特許文献4】
Macromolecules 1998, 31, 6727−6729
【非特許文献5】
Macromolecules 1998, 31, 4659−4661
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述の方法の主要な不都合は、アルコキシアミンは高価なニトロキシルラジカルから合成する必要があり、また、重合に用いる前に通常精製しなければならないことである。
【0011】
本発明の課題は、前記した従来技術の不都合がない、立体障害第二アミンから開始するワンポット方法において、アルコキシアミン合成ための新規な合成経路を提供することであり、また、このアルコキシアミンを、特定の分子量をもつ狭い多分散性のホモ−およびコポリマーを提供する重合工程において、中間体として使用することであった。
【0012】
驚くべきことに、アルコキシアミンが、ワンポット方法で第二アミンから製造でき、かつ、中間の精製なしに、制御されたラジカル重合工程で使用できることをここに見出した。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の前記課題は、下記により達成される。
すなわち、一般式(I)または(II):
【化4】
[式中、
R1、R2およびR3は、独立して、水素、C1−C20アルキル、C1−C20シクロアルキル、C6−C24アリール、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、C1−C20アルキルエステル、C1−C20シクロアルキルエステル、C1−C20アルキルアミド、C1−C20シクロアルキルアミド、C6−C24アリールエステルおよびC6−C24アリールアミドよりなる群から選ばれ;または
R1、R2およびR3は、所望により、それらに結合している炭素原子と一緒になって、C3−C12シクロアルキル基、(C4−C12アルカノール)イル基、フェニル基、または酸素、硫黄あるいは窒素原子を含むC2−C13ヘテロシクロアルキル基を形成し;
(ここで、所望により、基R1、R2およびR3の少なくとも1個は、コーティング分野で既知の官能基と更に反応しまたは架橋し得る官能基Yを有してよい。)R4およびR5は、独立して、C1−C18アルキル、C2−C18アルケニル、C2−C18アルキニル、C3−C12シクロアルキル、C3−C12ヘテロシクロアルキル、およびC6−C24アリ−ルよりなる群から選ばれ、これらは全て、所望により、NO2、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、ケトン、C1−C4アルコキシ、C1−C4アルキルチオ、C1−C4アルキルアミノ、ホスホン酸ジアルキルエステルによって置換され;または、
R4およびR5は、所望により、それらに結合している窒素原子と一緒になって、C3−C12シクロアルキル基、(C4−C12アルカノール)イル基、または酸素、硫黄あるいは窒素原子を含むC2−C13ヘテロシクロアルキル基を形成し;または、
R4およびR5は、酸素、硫黄あるいは窒素原子を含む、多環式環状構造または多環式へテロ脂環構造の基を一緒になって形成し;
ここで、アルコキシアミン窒素原子に直接隣接するR4およびR5基の炭素原子は、それぞれの場合において、更なる3個の有機置換基によって置換されてよく、また、所望により、基R4およびR5のうち少なくとも1個が、コーティング分野で既知の官能基と反応または架橋し得る官能基Yを有してよい。]
で示されるアルコキシアミンを調製するためのワンポット方法であって、
(1)水含有媒体中で、酸化剤(A)を一般式(III):
【化5】
[式中、R4およびR5は、前記の定義に同じ。]
の立体障害第二アミンと反応させて、反応生成物および水相を形成し、
(2)水相を除去し、
(3)反応生成物にラジカル開始剤(B)を添加し、該開始剤の分解を開始(促進)して一般式(IV)または(V):
【化6】
[式中、R1、R2およびR3は、前記の定義に同じ。]
のラジカルを発生させる、
の反応段階を含んで成るワンポット方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
官能基Yは、更に反応または架橋することができるものであり、例えば、ヒドロキシル、カルボキシ、アミノ、イソシアネート、ウレタンまたはエポキシド基である。
【0015】
本プロセスは、一般式(I)のアルコキシアミンを調製するために好ましく用いられる。
【0016】
適当な酸化剤(A)は、第二アミンをニトロキシルラジカルへ酸化する従来技術において既知の全ての酸化剤である(Rozantsev et al. Synthesis 1971, 4, 192−195)。好ましい酸化剤は、水溶性酸化剤であり、例えば、過酢酸、過プロピオン酸、m−クロロ過安息香酸、ジメチルジオキシラン、過安息香酸などの過酸、または、カリウムペルオキシモノ硫酸塩(オキソン(商標)、デュポン・スペシャルティ・ケミストリー、米国)、過酸化水素、過酸化水素/タングステン酸ナトリウム、過酸化水素/チタニウム(例えば、二酸化チタンおよびチタンシリカライト(欧州特許公開第0488403号、第5頁)のような触媒を含む)などのような過酸化物、ホスホタングステン酸(phosphotungstic acid)および分子酸素またはオゾンといった酸化ガスである。特に好ましいのは、過酢酸、過プロピオン酸、m−クロロ過安息香酸、オキソン(商標)(デュポン・スペシャルティ・ケミストリー、米国)および過酸化水素/タングステン酸ナトリウムである。
【0017】
酸化銀、酸化鉛(IV)およびタングステン酸ナトリウムのような金属酸化物もまた、所望に応じ、他の酸化剤と組み合わせて用いてよい。種々の酸化剤の混合物もまた用いてよい。
【0018】
本発明の適当なラジカル開始剤(B)は、ニトロキシルラジカルと反応し得てラジカルを発生する物質であればいずれでもよく、例えば、アゾ化合物などのような前駆物質および過酸化物であって熱分解によりラジカルを発生させるもの、またはスチレンなどのような前駆体であって自家重合によりラジカルを発生させるものが挙げられる。レドックス系、光化学系または光線あるいはX線、γ線放射などのような高エネルギー放射(high energy radiation)によりラジカルを発生させることもまた可能である。
【0019】
ラジカルを発生させる他の有用な系としては、グリニャール試薬(Hawker et al., Macromolecules 1996, 29, 5245)またはハロゲン化化合物などのような有機金属化合物であって、原子転移ラジカル付加法(Atom Transfer Radical Addition Process、「ATRA」)(国際特許出願国際公開第00/61544号)により金属錯体の存在下で生成されるものを挙げることができる。
【0020】
熱分解によりラジカルを発生させるラジカル開始剤(B)の具体例としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’−アゾビス(イソバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(メチルイソブチレート)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−tert−ブチルアゾ−2−シアノプロパン、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(イソブチルアミジンヒドロクロライド)、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミン)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−エチル)−プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(イソブチルアミド)2水和物、2,2’−アゾビス(2,2,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、および過酸化ジベンゾイルを挙げることができる。
【0021】
光分解によりラジカルを発生させる開始剤としては、例えば、ベンゾイン誘導体、ベンゾフェノン、アシルホスフィン酸化物(acyl phosphine oxides)および光レドックス系を挙げることができる。
【0022】
レドックス反応の結果としてラジカルを発生させる開始剤は、オキシダントと還元剤の組み合わせが一般的である。適当なオキシダントとしては、例えば、過酸化ベンゾイルが挙げられる。適当な還元剤としては、例えば、Fe(II)塩、Ti(III)塩、チオ硫酸カリウム、重亜硫酸カリウム、アスコルビン酸およびその塩、シュウ酸およびその塩、デキストロースおよびロンガリット(商標)(ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム, BASF AG, Ludwigshafen, DE)が挙げられる。
【0023】
好ましいラジカル開始剤(B)は熱分解によりラジカルを発生する化合物であり、AIBNおよび過酸化ジベンゾイルが特に好ましい。
【0024】
水含有相は、Na2CO3, NaHCO3, K2CO3, KHCO3, Na3PO4, Na2HPO4, NaH2PO4等のような塩基性の有機あるいは無機緩衝剤または有機あるいは無機の塩基、酢酸ナトリウム塩またはプロピオン酸ナトリウム塩などのようなカルボン酸金属塩、またはそれらの混合物を含んでよい。Na2CO3, NaHCO3, K2CO3, KHCO3および酢酸のナトリウム、カルシウムまたはカリウム塩が好ましい。
【0025】
一般式(III)の立体障害第二アミンで有用なものは、例えば、次式(VI)ないし(X):
【化7】
[式中、
R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19は、独立して、水素、ハロゲンまたはシアノ−、アミド−、エーテル−、エステル−、チオエーテル−、ケトン−、アミド−、カルボキシル−、アミジン−およびジアルキルホスホニル−含有基から構成される第一群;および、
C1−C18アルキル、C2−C18アルケニル、C2−C18アルキニル、C3−C12シクロアルキル、C3−C12ヘテロシクロアルキル、C6−C24アリールから構成される第二群から選択され(第二群の構成単位は所望により、NO2、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、C1−C4アルコキシ、C1−C4アルキルチオ、C1−C4アルキルアミノラジカルによって置換されてよい);
R6ないしR19は、これらのうち2個または3個に結合している炭素原子と一緒になって、C3−C12シクロアルキル基、(C4−C12アルカノール)イル基、または酸素、硫黄あるいは窒素原子を含むC2−C13ヘテロシクロアルキル基を形成してよく;または、酸素、硫黄あるいは窒素原子を含む、多環式環状構造または多環式へテロ脂環構造の基を一緒になって形成してよく(ここで、所望により、基R6ないしR19の少なくとも1個は、コーティング分野で既知の官能基と更に反応しまたは架橋し得る官能基Yを有する);
Xは、メチレン、ケトン、エステル基、または、酸素原子、炭化水素基を表わし、これらは、シアノ、エステル、ヒドロキシ、ニトロ、エーテルあるいはイミド基によって置換されてよい。]
に示される。
【0026】
他の有用な第二アミンは、例えば、次式(XI)および(XII):
【化8】
[式中、
R20は、C1−C18アルキル、C2−C18アルケニル、C2−C18アルキニル、C3−C12シクロアルキル、C3−C12ヘテロシクロアルキルおよびC6−C24アリールから構成される群から選択され、その全てが所望により、NO2、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、C1−C4アルコキシ、C1−C4アルキルチオ、C1−C4アルキルアミノによって置換され;
R20は、所望により、コーティング分野で既知の官能基と更に反応しまたは架橋し得る官能基Yを有してよい;
R21、R22は、独立して、水素、ハロゲンまたはシアノ−、アミド−、エーテル−、エステル−、チオエーテル−、ケトン−、アミド−、カルボキシル−、アミジン−およびジアルキルホスホニル−含有基から構成される第一群;または、C1−C18アルキル、C2−C18アルケニル、C2−C18アルキニル、C3−C12シクロアルキル、C3−C12ヘテロシクロアルキル、およびC6−C24アリールから構成される第二群(第二群の構成単位は、所望により、NO2、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、C1−C4アルコキシ、C1−C4アルキルチオまたはC1−C4アルキルアミノによって置換されてよい)から選択され;
ここで、R21およびR22は、所望により、それらに結合している炭素原子と一緒になって、C3−C12シクロアルキル基、(C4−C12アルカノール)イル基、または酸素、硫黄あるいは窒素原子を含むC2−C13ヘテロシクロアルキル基を形成してよく;
R21およびR22は、酸素、硫黄あるいは窒素原子を含む、多環式環状構造または多環式へテロ脂環構造の基を一緒になって形成してよい;
ここで、R23およびR24は、所望により、中間の燐原子と一緒になって、C3−C12シクロアルキル基、(C4−C12アルカノール)イル基、または酸素、硫黄あるいは窒素原子を含むC2−C13ヘテロシクロアルキル基を形成し;
基R20ないしR24のうち少なくとも1個は、所望により、コーティング分野で既知の官能基と更に反応しまたは架橋し得る官能基Yを有してよい;
R23、R24は、独立して、C1−C18アルキル、C2−C18アルケニル、C2−C18アルキニル、C3−C12シクロアルキル、C3−C12ヘテロシクロアルキルおよびC6−C24アリールから構成される群から選択され、その全てが所望により、NO2、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、C1−C4アルコキシ、C1−C4アルキルチオまたはC1−C4アルキルアミノによって置換され;
R23およびR24は、所望により、それらに結合している燐原子と一緒になって、C3−C12シクロアルキル基、(C4−C12アルカノール)イル基、または酸素、硫黄あるいは窒素原子を含むC2−C13ヘテロシクロアルキル基を形成し;
基R23ないしR24のうち少なくとも1個は、所望により、コーティング分野で既知の官能基と更に反応しまたは架橋し得る官能基Yを有してよい。]
に示される。
【0027】
一般式(III)の第二アミンは、好ましくは、tert−ブチルアミン;2,2,6,6−テトラメチルピペリジン;4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン;2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノン;2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルアセテート;2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルステアレート;2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルベンゾエート;2,6−ジメチル−2,6−ジエチルピペリジン;ジエチル 1−(tert−ブチルアミノ)−2,2−ジメチルプロピルホスホネート;ジプロピル 1−(tert−ブチルアミノ)−2,2−ジメチルプロピルホスホネート;ジブチル 1−(tert−ブチルアミノ)−2,2−ジメチルプロピルホスホネート;N−(tert−ブチル)−1−(ジエチルホスホリル)−2,2−ジメチル−1−プロピルアミン;N−(tert−ブチル)−1−(ジプロピルホスホリル)−2,2−ジメチル−1−プロピルアミン;N−(tert−ブチル)−2−メチル−1−フェニル−1−プロピルアミン;2,2,4,6,6−ペンタメチル−1,2,5,6−テトラヒドロピリミジン;N−[(3E)−2,2−ジフェニル−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン]−N−フェニルアミン;2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−4−ピペリジノン;2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−4−ピペリジノール;14−オキサ−7−アザジスピロ[5.1.5.2]ペンタデカン;2,2,4,4−テトラメチル−1,3−オキサゾリジン;2,2,5,5−テトラメチル−1−ピロリジン;3−カルボキシ−2,2,5,5−テトラメチル−1−ピロリジン;2,5−ジフェニル−2,5−ジメチルピロリジン;3−カルボキシ−2,5−ジフェニル−2,5−ジメチルピロリジン;1,1,3,3−テトラエチルイソインドリン;1,1,3,3−テトラメチルイソインドリン; 1,1,3,3−テトラプロピルイソインドリンである。
【0028】
特に好ましいのは、tert−ブチルアミン;2,2,6,6−テトラメチルピペリジン;4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン;2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノン;2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルアセテート;ジエチル 1−(tert−ブチルアミノ)−2,2−ジメチルプロピルホスホネート;ジプロピル 1−(tert−ブチルアミノ)−2,2−ジメチルプロピルホスホネート;ジブチル 1−(tert−ブチルアミノ)−2,2−ジメチルプロピルホスホネート;2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−4−ピペリジノン;2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−4−ピペリジノール;2,2,5,5−テトラメチル−1−ピロリジン;1,1,3,3−テトラメチルイソインドリンである。
【0029】
多官能性アミンもまた、熱可逆性を発揮する樹脂を形成するために、化学式(III)の化合物として用いてよい。本発明において、多官能性アミンとは、第二アミノ基を2個以上有する化合物をいう。加工の際に低粘度のポリマーが要求されるとき、これらの特性は特に興味深い。
【0030】
適した多官能性アミンをいくつか例示すると、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)セバケート;ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)スクシネート;ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)アジペート;ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)フタレート;ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)イソフタレート;ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)テレフタレート;または、ポリ((6−((1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ)−1,6−ヘキサンジイル((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ))(CHIMASSORB(商標)944, Ciba Specialty Chemicals, D−Lampertheim)などの高分子多官能アミン(polymeric multifunctional amines)が挙げられる。
【0031】
本発明を実施する一方法は、第一段階において、一般式(III)の第二アミンが水を含む反応容器中に導入される。第二アミンに対する水の重量比は、約0.1ないし200、好ましくは約1ないし50、より好ましくは約2ないし30の範囲である。水は、塩基性の無機あるいは有機緩衝剤または無機あるいは有機塩基を含むことが好ましい。緩衝剤または塩基に対する第二アミンのモル比は、約20ないし0.05、好ましくは約10ないし0.1、より好ましくは約5ないし0.5の範囲である。
【0032】
二相媒体を形成させるため、一般式(III)の第二アミンは、水と混ざらない適当な溶媒に溶解させることが好ましい。好ましい溶媒は、トルエン、キシレンまたはジクロロメタンである。第二アミンに対する溶媒の重量比は、約0.1ないし30、好ましくは約0.5ないし10、より好ましくは約1ないし5である。
【0033】
次いで、勢いよく攪拌しながら、一般式(III)の第二アミンを含む反応容器へ、酸化剤(A)をその純粋な形態でゆっくりと添加する。酸化剤(A)の溶液を反応容器へ添加することもまた可能である。その目的で使用される適当な溶媒は、種々の試薬に対して不活性でかつその反応の間は反応しないものであるべきであって:例えば、トルエン、キシレン、ジクロロメタンである。酸化剤(A)が水溶性の場合、好ましい溶媒は水である。酸化剤に対する溶媒の重量比は、約0.1ないし30、好ましくは約0.5ないし10、より好ましくは約1ないし5の範囲である。
【0034】
特定の官能基(例えば、Y=NH2)を用いる場合には、上記反応中に、官能基に保護基を提供するのが有利であることがあるが(例えば、アセトアミドとしてのアミノ基の保護;塩基での加水分解によるアミド官能性のより遅い遊離)、Y=OHの場合には、保護基を使用する必要はない。
【0035】
反応の温度は、約−10℃ないし約130℃の範囲であってよく、好ましくは約0℃ないし80℃、より好ましくは約0℃ないし50℃である。反応時間は約10分ないし約72時間の範囲であってよく、好ましくは約1時間ないし36時間、より好ましくは約2時間ないし24時間である。本発明におけるプロセスの第一段階は、空気中または窒素あるいはアルゴンのような不活性ガス雰囲気中で実施されうる。反応溶液のpHは、所望により、例えばNaHCO3のような物質で5ないし7の範囲に調整してよい。
【0036】
第二段階では、ニトロキシルラジカルを形成するため第二アミンの部分または完全酸化の後、攪拌が終了され、水相が取り除かれる。
【0037】
第三段階では、ラジカル開始剤が第二段階の有機相へ添加される。ラジカル開始剤の溶液を反応容器へ添加することもまた可能である。その目的で使用される適当な溶媒は、種々の試薬に対して不活性でかつその反応の間は反応しない:例えば、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、カルボニル化合物であり、好ましくは、メチルエチルケトンまたは前記溶媒の所望の混合物である。ラジカル開始剤に対する溶媒の重量比は、約0.1ないし50、好ましくは約0.5ないし25、より好ましくは約1ないし15の範囲である。
【0038】
ラジカル開始剤は、当初の第二アミンを基準に0.01−ないし10−倍モル過剰で用いられる。好ましくは、当初の第二アミンを基準に、0.1−ないし5−倍モル過剰、最も好ましくは、0.25−ないし2−倍モル過剰である。
【0039】
反応温度は約−10℃ないし150℃、好ましくは約0℃ないし100℃、より好ましくは約25℃ないし85℃の範囲であってよい。反応は、窒素あるいはアルゴンのような不活性ガス雰囲気中で行うことが最も好ましい。
【0040】
未反応のラジカル開始剤による最終製品のコンタミネーションを避けるため、反応は、全てのラジカル開始剤が分解するまで行うことが好ましい。ラジカル開始剤の分解が不完全な場合は、時間または温度を増やすことができる。過剰のラジカル開始剤を分解し得る化合物を添加することもまた可能である。
【0041】
反応が完結した後、過剰の未反応の第二アミンを除去するため、酸性水(pH≒5−2)が有機媒体へ添加され、酸性水で数回洗浄される。所望により、有機相は、過剰の酸化剤(A)を除去するため、塩基性水(pH≒7.5−9.5)および/または還元剤で洗浄してよい。有機相は、次いでNa2SO4またはMgSO4のような乾燥剤の下で乾燥される。真空下での溶媒の除去により、一般式(I)または(II)の粗製アルコキシアミンが得られる。
【0042】
水と混ざる有機溶媒を反応に用いる場合、酸性水の添加前に有機溶媒を真空下で除去しておくことが好ましい。アルコキシアミンの抽出の目的では、有機溶媒と混和しない水を用いることが好ましい。
【0043】
所望により、アルコキシアミンを再結晶、クロマトグラフィーまたは蒸留のような精製法によってさらに精製してよい。
【0044】
本発明の別の目的は、オリゴマー、コオリゴマー、ポリマーまたはブロックあるいはランダムコポリマーを調製するための新規なプロセスを提供することであって、本発明のプロセスによる一般式(I)または(II)の官能化アルコキシアミンの調製、および一般式(I)または(II)の非精製アルコキシアミンへの少なくとも1個の重合性モノマーを加熱に先立って添加することを包含する。
【0045】
有用なモノエチレン性不飽和モノマーとしては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレートおよびイソブチルメタクリレートなどのようなアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル、例えばヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートおよびヒドロキシプロピルメタクリレートなどのようなアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−tert ブチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アリールアルコール、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ホスホエチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルイミダゾール、ビニルアセテート,ブタジエンまたはイソプレンなどの共役ジエン、スチレン、スチレンスルホン酸塩、ビニルスルホン酸塩および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩、およびアクリロイル(acryloyl)である。
【0046】
適したコモノマーの例は、C3−C6−エチレン性不飽和モノカルボン酸並びにそのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩である。C3−C6−エチレン性不飽和モノカルボン酸は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、酢酸ビニルおよびアクリルオキシプロピオン酸を包含する。アクリル酸およびメタクリル酸は、好ましいモノエチレン性不飽和のモノカルボン酸モノマーである。
【0047】
コモノマーとして適したC8−C16−エチレン性不飽和のフェノール性化合物の例としては、4−ヒドロキシスチレン、4−ヒドロキシ、α−メチルスチレン、2,6−ジtert−ブチルフェノールおよび4−ビニルフェノールも挙げられる。
【0048】
本発明において、C4−C6−エチレン性不飽和のジカルボン酸およびそのアルカリ金属とアンモニウムの塩は、シス−ジカルボン酸無水物と同様に、コモノマーとして使用に適するカルボン酸モノマーの別の部類に属する。適する例には、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、フマル酸およびシトラコン酸が包含される。マレイン酸およびイタコン酸は、好ましいモノエチレン性不飽和ジカルボン酸モノマーである。
【0049】
酸モノマーは、酸の形態、または、酸のアルカリ金属塩あるいはアンモニウム塩の形態で用いてよい。
【0050】
好ましいモノマーは、C1−C20−アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル、C1−C20−アルコールのシアノアクリル酸エステル、C1−C6−アルコールのマレイン酸ジエステル、無水マレイン酸、ビニルピリジン、ビニル(アルキルピロール)、ビニルオキサゾール、ビニルオキサゾリン、ビニルチアゾール、ビニルイミダゾール、ビニルピリミジン、ビニルケトン、スチレン、またはα位にC1−C6−アルキル基あるいはハロゲンを含み、かつ、芳香環上に3個までの更なる置換基を有するスチレン誘導体、から成る群から選ばれる。
【0051】
特に好ましいモノマーは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、無水マレイン酸、スチレンまたはアクリロニトリルである。
【0052】
本発明によるプロセスの重要な利点は、アルコキシアミンの追加的精製ステップを免除し得ることである。
【0053】
本発明による(コ)ポリマーの調製にとって、モノマー、一般式(I)または(II)の粗製アルコキシアミンのような全ての成分は、反応温度は約0℃ないし260℃、好ましくは約50℃ないし200℃、より好ましくは約70℃ないし150℃の範囲で、反応時間は約30分ないし72時間、好ましくは約1時間ないし48時間、より好ましくは約2時間ないし24時間の範囲で、反応が行われる。重合は、例えば窒素またはアルゴンのような不活性ガス雰囲気下で行われる。
【0054】
重合を促進するために、所望により、重合前または重合プロセスの間にいくつかの添加剤を重合媒体へ添加してよい。そのような添加剤は、当業界で既知であって、例えば、カンファースルホン酸、2−フルオロ−1−メチルピリジニウム p−トルエンスルホネート、無水酢酸(Tetrahedron 1997, 53(45), 15225)などのようなアシル化化合物、グルコース、デキストロース(Macromolecules 1998, 31, 7559)、アスコルビン酸(Macromolecules 2001, 34, 6531)または米国特許第6,288,186号(第4欄、第8−24行)に報告されたような長寿命ラジカル開始剤が挙げられる。
【0055】
本発明の(コ)ポリマーは、数平均分子量が500ないし2・106、好ましくは2000ないし5・105、より好ましくは2000ないし2.5・105でであってよい。
【0056】
一般式(I)または(II)のアルコキシアミン化合物は、モノマー重量を基準として、約30wt%ないし0.01wt%、好ましくは15wt%ないし0.05wt%、より好ましくは5wt%ないし0.05wt%の範囲の量が導入される。
【0057】
(コ)ポリマーの調製のためには、ごく少量の有機溶媒を用いることが好ましい。有機溶媒が求められる場合、適当な溶媒または溶媒混合物の典型例は、ヘキサン、ヘプタンあるいはシクロアルカンなどのような純粋アルカン;ベンゼン、トルエンあるいはキシレンなどのような炭化水素;メチルエチルケトンなどのようなカルボニル化合物;クロロベンゼンなどのようなハロゲン化炭化水素、酢酸エチル、酢酸プロピル、ブチルあるいはヘキシルなどのようなエステル;ジエチルエーテル、ジブチルエーテルあるいはエチレングリコールジメチルエーテルなどのようなエーテル;メタノール、エタノール、エチレングリコールなどのようなアルコール;またはモノメチルエーテルあるいはそれらの混合物である。モノマーに対する溶媒の重量比は、約0ないし5、好ましくは約0ないし2の範囲である。
【0058】
用いられる重合の形式は、塊状、溶液、乳化、分散または縣濁重合であってよく、回分式および連続式の両方が行われる。
【0059】
本発明によって調製されるポリマーは、低い多分散性(Mw/Mn)を示すが、2より低いのが通常であり、2よりかなり低い可能性がある。ポリマー鎖の数平均分子量は、モノマーの転化に従って直線的に増加し、そのことによりテイラーメイドのポリマー分子量を得ることが可能となる。更に、ポリマーの分子量は、モノマー量に比して粗製アルコキシアミンの量を変更することによって制御できる。高分子量のポリマーを形成することが可能である。
【0060】
本発明の更なる利点は、未重合反応のモノマーを(コ)ポリマーから取り除いた後または転化率100%に到達した後、第一重合段階で使用されたビニルモノマーまたはモノマー混合物とは異なる場合もある新たなビニルモノマーまたはモノマー混合物の部分を、第一段階で合成されたポリマーへ、単に添加することによって第二の重合段階を開始し得ることである。第二段階で添加されるビニルモノマーまたはモノマー混合物の重合は、第一重合段階で合成されたポリマー鎖によって次に開始され、ジ−ブロックコポリマーは、例えば、第一重合段階で合成されたポリマー鎖が単一の成長鎖末端を有する直鎖から成る場合に産出される。各ブロックの分子量および多分散性は、各重合段階の間に独立して制御され得る。このプロセスは幾度も繰り返すことができ、そうして各ブロックに制御された分子量および分子量分布を有する多ブロックのコポリマーが提供され得る。
【0061】
結果として得られるポリマーは、通常、無色であって、大抵の場合、更なる精製を行うことなく使用が可能である。
【0062】
以下の実施例により、本発明を更に詳細に説明する。
【0063】
【実施例】
分子量は、Shodex RI 74 示差屈折率測定器を装備した、ゲル パーミエーション クロマトグラフィー(GPC)により決定した。流速1mL/分を使用し、試料はTHF中に調製した。キャリブレーションにはポリスチレン標準を用いた。
【0064】
実施例1
2−メチル−2−[(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニル)オキシ]プロパンニトリル(1)の合成
【化9】
【0065】
機械式スターラー、還流凝縮器、温度計、漏斗およびセプタムを装備した1Lの四つ口丸底フラスコ中に、水80g、K2CO3を20g(99%;1.44・10−1モル)、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン20g(99%;1.41・10−1モル)およびトルエン150gを添加する。次いで、水300g中の過酢酸31.3g(35wt%、Aldrich;1.44・10−1モル)の溶液を、勢いよく攪拌しながらゆっくりと1Lのフラスコに添加し(わずかに発熱反応を伴う)、フラスコを室温で水浴中に設置する。添加後、反応媒体を室温にて夜通し攪拌すると、有機相は、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキサイド(TEMPO)の生成により、段々と赤色を帯びてくる。
【0066】
次いで、攪拌を終え、水相を反応フラスコから除去する。次に、赤色の有機相を、アルゴンを通気させて10分間脱気する。それから、アルゴン雰囲気下、勢いよく攪拌しながら、アゾビスイソブチロニトリル 11.82g(AIBN、7.2・10−2モル)をゆっくりと少しづつ添加する。次いで、脱気トルエン100gを素早く反応フラスコに添加し、温度を60℃に上昇させる。60℃で24時間の後、溶液を室温で冷却する。最後に、この有機溶液を水(pH=3)で三度洗浄し、次いでNa2SO4下で乾燥する。真空下50℃で乾燥すると、17.95gの粗製アルコキシアミン1が回収される。
【0067】
実施例2
実施例1において合成した、粗製および精製の2−メチル−2−[(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニル)オキシ]プロパンニトリル(1)によって開始されたスチレンの重合
【0068】
1.粗製(未精製)のアルコキシアミン1を用いたスチレンの重合
機械式スターラー、還流凝縮器、温度計およびセプタムを装備した三つ口丸底フラスコ中に、未精製の1を0.242gおよびスチレン100g(0.96モル)を添加する。次いで、溶液をアルゴン通気により10分間脱気し、それから125℃で加熱する。
【0069】
2.15および14時間の後、試料を反応フラスコから取り出し、70℃にて24時間の間、真空下で乾燥する。収率を重量測定分析により計算し、分子量と多分散性をGPCにより決定する。結果を表1に示す。
【0070】
2.精製したアルコキシアミン1を用いたスチレンの重合
アルコキシアミン1を以下のように精製する。
7.31gの粗製アルコキシアミン1をn−ヘキサン/エチルアセテート 5/1の混合溶媒で溶出することによりカラムクロマトグラフィーで精製する。そうして3.68gの純粋なアルコキシアミン1が白色固体として回収される。
【0071】
1H−NMR:1.66ppm(6H):s;1.51ppm(6H):m;1.22ppm(6H):s;1.11ppm(6H):s
【0072】
元素分析実験:
【0073】
粗製アルコキシアミン1を精製アルコキシアミン1に置き換えることを除き、粗製アルコキシアミン1の存在下でのスチレン重合にて報告したのと同じ手法を用いる。結果を表1に示す。
【0074】
表1
【0075】
モノマー転化率に伴う分子量の増加および低い多分散性は、制御された重合と矛盾しない。その上、重合が早い(14時間の反応後のモノマー転化率が約80%)。粗製と精製のアルコキシアミンを用いたときに、同じ重合速度と同じ分子量が認められる。
【0076】
実施例3
粗製のアルコキシアミン1を用いたスチレンの重合および粗製アルコキシアミン量を変更することによるポリマー分子量の改変
【0077】
機械式スターラー、還流凝縮器、温度計およびセプタムを装備した三つ口丸底フラスコ中に、0.242gまたは0.121gの粗製(未精製)1およびスチレン100g(0.96モル)を添加する。次いで、溶液をアルゴン通気によって10分間脱気し、それから125℃にて加熱する。
【0078】
冷却後、ポリマーをクロロホルムに溶解し、アルミニウム袋に移し、空気中で夜通し乾燥しそして次いで70℃で24時間真空で加熱する。収率を、重量測定分析により計算する。
結果を表2に示す。
【0079】
表2
【0080】
重合媒体中の粗製アルコキシアミン1の量を変更することによって、制御された重合で期待されるように、ポリマーの分子量はそれに応じて変化する。その上、高分子量の制御されたポリスチレンが粗製アルコキシアミンを用いて合成し得る。
【0081】
実施例4
実施例1において合成した、粗製および精製の2−メチル−2−[(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニル)オキシ]プロパンニトリル(1)によって開始されたスチレンおよびアクリロニトリルの共重合
【0082】
1.粗製(未精製)のアルコキシアミン1を用いたスチレンおよびアクリロニトリルの共重合
機械式スターラー、還流凝縮器、温度計およびセプタムを装備した三つ口丸底フラスコ中に、0.242gの未精製1、75gのスチレン(0.72モル)および25gのアクリロニトリル(0.47モル)を添加する。次いで、溶液をアルゴン通気により10分間脱気し、それから還流により加熱する。
【0083】
8および24時間の後、試料を反応フラスコから取り出し、70℃にて24時間の間、真空下で乾燥する。収率を重量測定分析により計算し、分子量と多分散性をGPCにより決定する。結果を表3に示す。
【0084】
2.精製したアルコキシアミン1を用いたスチレンおよびアクリロニトリルの共重合
この実験のために、アルコキシアミン1を実施例2で報告したように精製する。
粗製アルコキシアミン1を精製アルコキシアミン1に置き換えることを除き、粗製アルコキシアミン1の存在下でのスチレンおよびアクリロニトリルの共重合にて報告したのと同じ手法を用いる。結果を表3に示す。
【0085】
表3
【0086】
両方(粗製および精製アルコキシアミン)の場合で、同じ速度の重合が認められ得る(還流での重合の24時間後、モノマー転化率が約80%に到達)。その上、多分散性インデックスが狭く、ポリマー分子量がモノマー転化率と共に増加しており、これは制御されたプロセスに一致するものである。
【0087】
実施例5
粗製アルコキシアミン1を用いたスチレンおよびアクリロニトリルの共重合並びに粗製アルコキシアミン量を変更することによるポリマー分子量の改変
【0088】
機械式スターラー、還流凝縮器、温度計およびセプタムを装備した三つ口丸底フラスコ中に、0.242gまたは0.121gの粗製(未精製)1、75gのスチレン(0.72モル)および25gのアクリロニトリル(0.24モル)を添加する。次いで、溶液をアルゴン通気により10分間脱気し、それから還流により24時間加熱する。
【0089】
冷却後、ポリマーをクロロホルムに溶解し、アルミニウム袋に移し、空気中で夜通し乾燥しそして次いで70℃で24時間真空で加熱する。収率を、重量測定分析により計算する。
結果を表4に示す。
【0090】
表4
【0091】
重合媒体中の粗製アルコキシアミン1の量を変更することによって、制御された重合で期待されるように、ポリマーの分子量はそれに応じて変化する。その上、高分子量の制御されたポリ(スチレン−co−アクリロニトリル)がこれらの条件で合成し得る。
【0092】
実施例6
ポリ(スチレン−co−アクリロニトリル)−b−ポリ(n−ブチルアクリレート)(SAN−b−PnBuA)ブロック共重合体の合成
【0093】
機械式スターラー、還流凝縮器、温度計およびセプタムを装備した三つ口丸底フラスコ中に、実施例4にて粗製アルコキシアミン1を用いて合成したポリ(スチレン−co−アクリロニトリル)(SAN)を10g、50gのn−ブチルアクリレート(0.39モル)および3.2mgのアスコルビン酸(1.81・10−5モル)を添加する。次いで、溶液をアルゴン通気により10分間脱気し、それから145℃で5時間加熱する。次にポリマーをメタノール中で沈澱させ、80℃真空下で乾燥する。
【0094】
表5
【0095】
第1ブロックの分子量増加によって示されるように、SAN第1ブロックは伸びている。
【0096】
実施例7
粗製アルコキシアミン 2−メチル−2−[(2,2,6,6−テトラメチル−4−オキソ−1−ピペリジニル)オキシ]プロパンニトリル2の合成
【化10】
【0097】
機械式スターラー、還流凝縮器、温度計、漏斗およびセプタムを装備した1Lの四つ口丸底フラスコ中に、水80g、K2CO3を20g(99%;1.44・10−1モル)、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリドン22g(95%;1.41・10−1モル)およびトルエン150gを添加する。次いで、水300g中の過酢酸31.3g(35wt%、Aldrich;1.44・10−1モル)の溶液を、勢いよく攪拌しながらゆっくりと1Lのフラスコに添加し(わずかに発熱反応を伴う)、フラスコを室温で水浴中に設置する。添加後、反応媒体を室温にて夜通し攪拌する。
【0098】
次いで、攪拌を終え、水相を反応フラスコから除去する。次に、有機相を、アルゴンを通気させて10分間脱気する。それから、アルゴン雰囲気下、勢いよく攪拌しながら、アゾビスイソブチロニトリル 11.82g(AIBN、7.2・10−2モル)をゆっくりと少しづつ添加する。次いで、脱気トルエン100gを素早く反応フラスコに添加し、温度を65℃に上昇させる。65℃で23時間の後、溶液を室温で冷却する。最後に、この有機溶液を水(pH=3)で三度洗浄し、次いでNa2SO4で乾燥する。真空下50℃で乾燥すると、19.68gの粗製アルコキシアミン2が回収される。
【0099】
実施例8
粗製アルコキシアミン2の存在下でのスチレンの重合
【0100】
機械式スターラー、還流凝縮器、温度計およびセプタムを装備した三つ口丸底フラスコ中に、粗製(未精製)の2を0.257gおよびスチレン100g(0.96モル)を添加する。次いで、溶液をアルゴン通気により10分間脱気し、それから125℃で24時間加熱する。
【0101】
2および14時間の後、試料を反応フラスコから取り出し、70℃にて24時間の間、真空下で乾燥する。収率を重量測定分析により計算し、分子量と多分散性をGPCにより決定する。結果を表6に示す。
【0102】
表6
【0103】
モノマー転化率に伴う分子量の増加および低い多分散性は、制御された重合と矛盾しない。その上、重合が早い(14時間の反応後のモノマー転化率が92%)。
【0104】
本発明は、例示目的のために上記のように詳細に記載したが、その詳細は単にその目的のためだけであって、クレームによって限定され得ること以外は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当該分野における熟練者によって変更が成され得るものと解されるべきである。
Claims (4)
- 一般式(I)または(II):
R1、R2およびR3は、独立して、水素、C1−C20アルキル、C1−C20シクロアルキル、C6−C24アリール、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、C1−C20アルキルエステル、C1−C20シクロアルキルエステル、C1−C20アルキルアミド、C1−C20シクロアルキルアミド、C6−C24アリールエステルおよびC6−C24アリールアミドよりなる群から選ばれ;または
R1、R2およびR3は、それらに結合している炭素原子と一緒になって、C3−C12シクロアルキル基、(C4−C12アルカノール)イル基、または酸素、硫黄あるいは窒素原子を含むC2−C13ヘテロシクロアルキル基を形成し;
R4およびR5は、独立して、C1−C18アルキル、C2−C18アルケニル、C2−C18アルキニル、C3−C12シクロアルキル、C3−C12ヘテロシクロアルキル、およびC6−C24アリールよりなる群から選ばれ、これらは全て、所望により、NO2、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、ケトン、C1−C4アルコキシ、C1−C4アルキルチオ、C1−C4アルキルアミノ、ホスホン酸ジアルキルエステルによって置換され;または、
R4およびR5は、それらに結合している窒素原子と一緒になって、C3−C12シクロアルキル基、(C4−C12アルカノール)イル基、または酸素、硫黄あるいは窒素原子を含むC2−C13ヘテロシクロアルキル基を形成し;または、
R4およびR5は、酸素、硫黄あるいは窒素原子を含む、多環式環状構造または多環式へテロ脂環構造の基を一緒になって形成し;
ここで、アルコキシアミン窒素原子に直接隣接するR4およびR5基の炭素原子は、それぞれの場合において、更なる3個の有機置換基によって置換されてよい。]
で示されるアルコキシアミンを調製するためのワンポット方法であって、
(1)水含有媒体中で、酸化剤(A)を一般式(III):
の立体障害第二アミンと反応させて、反応生成物および水相を形成し、
(2)水相を除去し、
(3)反応生成物にラジカル開始剤(B)を、該開始剤の分解を促進して一般式(IV)または(V):
のラジカルを発生させる条件下で添加する、
の反応段階を含んで成るワンポット方法。 - 基R1、R2およびR3のうち少なくとも1個が、コーティング分野で既知の官能基と更に反応または架橋し得る官能基Yを有する請求項1記載の方法。
- 基R4およびR5のうち少なくとも1個が、コーティング分野で既知の官能基と更に反応または架橋し得る官能基Yを有する請求項1記載の方法。
- モノマーの重合方法であって、(i)請求項1記載の方法により未精製の官能化アルコキシアミンを得ること、(ii)該官能化アルコキシアミンに対し少なくとも1個の重合可能なモノマーを添加して反応混合物を形成すること、および、(iii)反応混合物を加熱すること、を含んで成る方法。
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