JP2004067482A - 高耐熱性無機繊維結合セラミックスの補修方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)Si、M、C及びOからなる無機繊維と、無機物質、Cを主成分とする境界層からなる無機繊維結合セラミックスの補修する表面を研削した後、(B)内面層が、Si、M、C及びOからなる非晶質物質、又はβ−SiC、MC及びCの結晶質超微粒子と、SiO2及びMO2の非晶質物質との集合体で構成され、表面層が、Si及びOからなる非晶質物質、結晶質のSiO2、MO2からなる結晶質物質で構成される無機繊維の積層物を、前記(A)の補修すべき表面に配置し、ホットプレス処理する。また、前記(A)と(B)に代えて、(C)主としてSiCの焼結構造からなり、特定の金属原子を含有する無機繊維とCを主成分とする境界層からなる無機繊維結合セラミックスと(D)特定の金属原子を含有する無機繊維の積層物を用いてもよい。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、1200℃以上という極めて高い耐熱性を必要とする部位で使用可能な高耐熱性無機繊維結合セラミックスの補修方法に関する。特に、無機繊維結合型セラミックス部材全体が損傷を受けるのでなく、表面のみが損傷を受けた場合に、部材全体を交換するのでなく、部材表面を補修して再使用できるため、高い表面平滑性と緻密性を有し、かつ高い破壊抵抗を要求される部材、たとえば、発電用、又は航空機用ガスタービンの高温部材などに適用出来る。
【0002】
【従来の技術】
繊維結合型セラミックスは、単体セラミックスに比して非常に靭性が高く信頼性の高い材料である。また、化学蒸着気相法(CVD法)、化学浸透気相法(CVI法)、又はポリマー含浸法(PIP法)などにより製造されたカーボン繊維強化カーボン基複合材料(以下、C/C複合材料と記載する)と比べると、非常に緻密であり表面平滑性に優れている。したがって、繊維結合型セラミックスは、高耐熱性、高靭性、かつ緻密な高温材料である。しかし、繊維結合型セラミックスを補修する技術はなく、例えば、過酷な条件下で使用し、無機繊維結合型セラミックス部材の表面のみが損傷を受けた場合でも、部材全体を交換するしか方法がない。そこで、無機繊維結合型セラミックス部材の損傷を受けた表面のみを取り除き補修する技術の確立が望まれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐熱性及び平滑性に優れ、高い破壊靭性を有した高耐熱性無機繊維結合型セラミックス部材の表面損傷部分のみを取り除き補修する方法を提供することであり、部材内部は健全であるが、表面のみが損傷を受けた時に、その表面の補修が必要となる、たとえば、発電用、又は航空機用ガスタービンなどの高温部材に適用出来る。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、
(A)主としてSiCの焼結構造からなる無機繊維であって、0.01〜1重量%のO、及び2A族、3A族及び3B族の金属原子からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属原子を含有する無機繊維が最密充填に極めて近い構造に結合し、繊維間には1〜100nmのCを主成分とする境界層が形成されている無機繊維結合セラミックス部材の補修を必要とする表面を研削し、健全な状態にした後、
(B)(a)ケイ素原子に対する炭素原子の割合がモル比で1.5以上であるポリシラン或いはその加熱反応物に、2A族、3A族及び3B族の金属元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素含有有機ケイ素重合体を調製する第1行程、(b)金属元素含有有機ケイ素重合体を溶融紡糸して紡糸繊維を得る第2行程、(c)紡糸繊維を酸素含有雰囲気中50〜170℃で加熱して不融化繊維を調製する第3行程によって得られる不融化繊維の積層物、又は、(d)前記不融化繊維を不活性ガス中で無機化する第4行程によって得られる無機化繊維の積層物を、
無機繊維結合型セラミックス部材(B)の補修すべき表面に配置し、カーボンダイスにセットして、真空、不活性ガス、還元ガス及び炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる雰囲気中で、1700〜2200℃の範囲の温度で100〜1000kg/cm2の加圧下でホットプレス処理することを特徴とする無機繊維結合セラミックスの補修方法が提供される。
【0005】
さらに、本発明によれば、
(C)(i)下記(a)及び/又は(b)からなる無機繊維と、
(a)Si、M、C及びOからなる非晶質物質(MはTi又はZrを示す)、
(b)▲1▼β−SiC、MC及びCの結晶質微粒子と、▲2▼SiO2及びMO2の非晶質物質との集合体、
(ii)前記無機繊維の間隙を充填する、下記(c)及び/又は(d)からなり、場合により(e)が分散した無機物質と、
(c)Si及びO、場合によりMからなる非晶質物質、
(d)結晶質のSiO2及びMO2からなる結晶質物質、
(e)100nm以下の粒径のMCからなる結晶質微粒子無機物質、
(iii)上記無機繊維の表面に形成された、Cを主成分とする、場合により100nm以下の粒径のMCからなる結晶質粒子が分散した、1から100nmの境界層、
から構成されてなる無機繊維結合セラミックスの、
補修を必要とする表面を研削し、健全な状態にした後、
(D)内面層と表面層とからなる無機繊維であって、内面層が、
(a)Si、M、C及びOからなる非晶質物質(MはTi又はZrを示す。)、
(b)β−SiC、MC及びCの結晶質超微粒子と、SiO2及びMO2の非晶質物質との集合体、又は
(c)上記(a)の非晶質物質と上記(b)の集合体との混合物を含有する無機質物質で構成され、表面層が
(d)Si及びO、場合によりMからなる非晶質物質、
(e)結晶質のSiO2及び/又はMO2からなる結晶質物質、又は
(f)上記(d)の非晶質物質と上記(e)の結晶質物質との混合物を含有する無機質物質で構成され、かつ、表面層の厚さT(単位μm)がT=aD(ここで、aは0.023〜0.053の範囲内の数値であり、Dは無機繊維の直径(単位μm)である。)を満足する無機繊維の積層物を、
無機繊維結合型セラミックス部材(C)の補修すべき表面に配置し、カーボンダイスにセットして、不活性ガス雰囲気中、1500〜2000℃の範囲の温度で100〜1000kg/cm2の加圧下でホットプレス処理することを特徴とする無機繊維結合セラミックスの補修方法が提供される。
【0006】
本発明では、2種類の無機繊維結合セラミックス部材((A)又は(C))の表面のみが損傷を受けた場合に、その損傷部分を補修する高耐熱性無機繊維結合セラミックスの補修方法を提案している。
【0007】
まず、請求項1の無機繊維結合セラミックスの補修方法について説明する。
無機繊維結合セラミックス部材(A)を構成する繊維材は、主としてSiCの焼結構造からなる無機繊維であって、0.01〜1重量%のO、及び2A族、3A族及び3B族の金属原子からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属原子を含有し、最密充填に極めて近い構造に結合している。
SiCの焼結構造からなる無機繊維は、主としてβ−SiCの多結晶焼結構造からなり、あるいはさらに、β−SiC及びCの結晶質微粒子からなる。Cの微結晶及び/又は極微量のOを含有する、β−SiC結晶粒子同士が粒界第2相を介すことなく焼結した領域ではSiC結晶間の強固な結合が得られる。仮に被接合体中で破壊が起こる場合は、少なくとも30%以上の領域でSiCの結晶粒内で進行する。場合によっては、SiC結晶間の粒界破壊領域と粒内破壊領域が混在する。
【0008】
前記繊維材は、2A族、3A族及び3B族の金属元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属原子を含有する。繊維材を構成する元素の割合は、通常、Si:55〜70重量%、C:30〜45重量%、O:0.01〜1重量%、M(2A族、3A族及び3B族の金属元素):0.05〜4.0重量%、好ましくは、0.1〜2.0重量%である。2A族、3A族及び3B族の金属元素の中では、特にBe、Mg、Y、Ce、B、Alが好ましく、これらはいずれもSiCの焼結助剤として知られているもので、また有機ケイ素ポリマーのSi−H結合と反応し得るキレート化合物やアルキシド化合物が存在するものである。この金属の割合が過度に少ないと繊維材の十分な結晶性が得られず、その割合が過度に高くなると、粒界破壊が多くなり力学的特性の低下を招くことになる。
【0009】
上記無機繊維結合型セラミックス部材(A)の繊維材同士の境界には非晶質及び結晶質の炭素が、1〜100nmの範囲、好ましくは10〜50nmの厚さで境界層が形成されており、上記に示した構造を反映して、破壊靭性に優れ、かつ緻密であり、1600℃においてもほぼ室温強度を維持している。
【0010】
このような上述の無機繊維結合型セラミックス部材(A)の表面が損傷を受けた場合に、その損傷部分を取り除いた後、積層物(B)を作製する。積層物(B)は以下の手順で製造される。
まず、ケイ素原子に対する炭素原子の割合がモル比で1.5以上であるポリシラン又はその加熱反応物に、2A族、3A族及び3B族の金属元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素含有有機ケイ素重合体を調製する第1工程、金属元素含有有機ケイ素重合体を溶融紡糸して紡糸繊維を得る第2工程、紡糸繊維を酸素含有雰囲気中50〜170℃で加熱して不融化繊維を調製する第3工程、不融化繊維を不活性ガス中で無機化する第4工程からなる。
【0011】
第1工程
第1工程では、前駆重合体である金属含有有機ケイ素重合体を調整する。
ポリシランは、例えば「有機ケイ素化合物の化学」化学同人(1972年)に記載の方法に従い、1種類以上のジクロロシランを、ナトリウムを用いた脱塩素反応させることにより得られる、鎖状又は環状の重合体であり、その数平均分子量は通常300〜1000である。本発明におけるポリシランは、ケイ素の側鎖として、水素原子、低級アルキル基、フェニル基又はシリル基を有することができるが、何れの場合も、ケイ素原子に対する炭素原子の割合がモル比で1.5以上であることが必要である。この条件を満足しないと、繊維中の炭素の全てが不融化の際に導入された酸素と共に、焼結に至るまでの昇温過程で炭酸ガスとして脱離し、繊維間の境界炭素層が形成されないので好ましくない。
【0012】
本発明におけるポリシランは、上記の鎖状又は環状のポリシランを加熱して得られる、ポリシラン結合単位に加えて一部にカルボシラン結合を含む有機ケイ素重合体を包含する。このような有機ケイ素合体はそれ自体公知の方法で調製することができる。調製法の例としては、鎖状又は環状のポリシランを400〜700℃の比較的高い温度で加熱反応する方法、このポリシランにフェニル基含有ポリボロシロキサンを加えて250〜500℃の比較的低い温度で加熱反応する方法を挙げることができる。こうして得られる有機ケイ素重合体の数平均分子量は通常1000〜5000である。
【0013】
フェニル含有ポリボロシロキサンは、特開昭53−42300号公報及び同53−50299号公報に記載の方法に従って調製することができる。例えば、フェニル含有ポリボロシロキサンは、ホウ酸と1種類以上のジオルガノクロロシランとの脱塩酸縮合反応によって調製することができ、その数平均分子量は通常500〜10000である。フェニル基含有ポリボロシロキサンの添加量は、ポリシラン100重量部に対して通常15重量部以下である。
【0014】
ポリシランに対して、2A族、3A族及び3B族の金属元素を含有する化合物の所定量を添加し、不活性ガス中、通常250〜350℃の範囲の温度で1〜10時間反応することにより、原料である金属元素含有有機ケイ素重合体を調製することができる。上記金属元素は、最終的に得られる焼結SiC繊維結合体中の金属元素の含有割合が0.05〜4.0重量%になる割合で使用され、具体的割合は本発明の教示に従って当業者が適宜に決定することができる。
また、上記の金属元素含有有機ケイ素重合体は、ポリシランのケイ素原子の少なくとも一部が、金属原子と酸素原子を介してあるいは介さずに結合された構造を有する、橋かけ重合体である。
【0015】
第1工程で添加される2A族、3A族及び3B族の金属元素を含有する化合物としては、前記金属元素のアルコキシド、アセチルアセトキシド化合物、カルボニル化合物、シクロペンタジエニル化合物等を用いることができ、例えば、ベリリウムアセチルアセトナ−ト、マグネシウムアセチルアセトナ−ト、イットリウムアセチルアセトナ−ト、セリウムアセチルアセトナ−ト、ほう酸ブトキシド、アルミニウムアセチルアセトナ−ト等を挙げることができる。
これらはいずれも、ポリシラン或いはその加熱反応物との反応時に生成する有機ケイ素ポリマ−中のSi−H結合と反応して、それぞれの金属元素がSiと直接あるいは他の元素を介して結合した構造を生成し得るものである。
【0016】
第2工程
第2工程においては、金属元素含有有機ケイ素重合体の紡糸繊維を得る。
前駆重合体である金属元素含有有機ケイ素重合体を溶融紡糸及び乾式紡糸のようなそれ自体公知の方法によって紡糸し、紡糸繊維を得ることができる。
【0017】
第3工程
第3工程においては、紡糸繊維を酸素含有雰囲気中50〜170℃で加熱して不融化繊維を調製する。
不融化の目的は、紡糸繊維を構成するポリマ−間に酸素原子による橋かけ点を形成させて、後続の無機化工程において不融化繊維が溶融せず、かつ隣接する繊維同士が融着しないようにすることである。
酸素含有雰囲気を構成するガスとしては、不融化時間は不融化温度に依存するが、通常、数分から30時間である。
不融化繊維中の酸素の含有量は8〜16重量%になるようにコントロ−ルすることが望ましい。この酸素の大部分は、次工程の無機化後も繊維中に残存し、最終の焼結に至るまでの昇温過程において、無機繊維中の余剰炭素をCOガスとして脱離させる重要な働きをする。
尚、酸素含有量が8重量%より少ない場合は、無機繊維中の余剰炭素が必要以上に残存し、昇温過程においてSiC結晶の回りに偏析して安定化するためβ−SiC結晶同士が粒界第2相を介すことなく焼結することを阻害し、また、16重量%よりも多い時は、無機繊維中の余剰炭素が完全に脱離して繊維間の境界炭素層が生成しない。これらは、いずれも得られる材料の力学的特性に悪影響を及ぼす。
【0018】
前記不融化繊維は、さらに不活性雰囲気中で予備加熱することが好ましい。
不活性雰囲気を構成するガスとしては、窒素、アルゴンなどを例示することができる。加熱温度は通常150〜800℃であり、加熱時間は数分しかないし20時間である。不融化繊維を不活性雰囲気中で予備加熱することによって、繊維への酸素の取り込みを防止しつつ、繊維を構成するポリマ−の橋かけ反応をより進行させ、前駆体重合体からの不融化繊維の優れた伸びを維持しつつ、強度をより向上させることができる、これにより、次工程の無機化を作業性よく安定に行うことができる。
【0019】
第4工程
第4工程においては、不融化繊維を、連続式又は回分式で、アルゴンのような不活性ガス雰囲気中、1000〜1700℃の範囲内の温度で加熱処理して、無機化する。
【0020】
本発明においては、上記の手順で製造された不融化繊維又は無機化繊維をシート形状物、織物形状物又はチョップ形状物に成形後、それらの少なくとも1種からなる積層物(B)を作製する。
次いで、無機繊維結合型セラミックス(A)の補修したい部分に積層物(B)を配置し、カーボンダイスにセットして、真空、不活性ガス、還元ガス及び炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる雰囲気中で、1700〜2200℃の温度範囲で加圧することによって、無機繊維結合型セラミックスを補修することができる。
尚、加圧するまでの昇温過程において、上記COの脱離速度に合わせた加圧プログラムを組み込んでも良い。
【0021】
次に、請求項2の無機繊維結合セラミックスの補修方法について説明する。
無機繊維結合型セラミックス部材(C)は、
(i)下記(a)及び/又は(b)からなる無機繊維と、
(a)Si、M、C及びOからなる非晶質物質(MはTi又はZrを示す)、
(b)▲1▼β−SiC、MC及びCの結晶質微粒子と、▲2▼SiO2及びMO2の非晶質物質との集合体、
(ii)前記無機繊維の間隙を充填する、下記(c)及び/又は(d)からなり、場合により(e)が分散した無機物質と、
(c)Si及びO、場合によりMからなる非晶質物質、
(d)結晶質のSiO2及びMO2からなる結晶質物質、
(e)100nm以下の粒径のMCからなる結晶質微粒子無機物質、
(iii)上記無機繊維の表面に形成された、Cを主成分とする、場合により100nm以下の粒径のMCからなる結晶質粒子が分散した、1から100nmの境界層、
から構成される。
【0022】
無機繊維(i)は、(a)Si、M、C及びOからなる非晶質物質、及び/又は(b)▲1▼β−SiC、MC及びCの結晶質微粒子と、▲2▼SiO2及びMO2の非晶質物質との集合体、から構成される。結晶質微粒子におけるβ−SiCとMCとはそれらの固溶体として存在することもでき、またMCは炭素欠損状態であるMC1−x(xは0以上で1未満の数である。)として存在することもできる。無機繊維を構成する各元素の割合は、通常、Si:30〜60重量%、M:0.5〜35重量%、好ましくは1〜10重量%、C:25〜40重量%、O:0.01〜30重量%である。無機繊維の相当直径は一般に5〜20μmである。
【0023】
無機繊維結合セラミックス部材(C)を構成する無機繊維(i)は、80体積%以上、好ましくは85〜91体積%存在する。それぞれの無機繊維の表面には、非晶質及び結晶質の炭素が、1〜100nmの範囲、好ましくは10〜50nmの厚さで境界層として非整合的に層状に生成している。また、場合により境界層には、100nm以下の粒径のMCからなる結晶質粒子が分散している。そして、この無機繊維の間隙を充填するように緻密に、(c)Si及びO、場合によりMからなる非晶質物質、及び/又は(d)結晶質のSiO2及びMO2からなる結晶質物質が存在している。また、場合により、無機質物質には(e)100nm以下の粒径のMCからなる結晶質微粒子無機物質が分散している。
即ち、無機繊維同士の境界、及び無機質物質と無機繊維の境界に非晶質及び/又は結晶質の炭素が非整合に層状に存在している。繊維結合型セラミックス(C)は、上記に示した構造を反映して、破壊靭性に優れ、かつ緻密であり、1500℃における強度は室温強度の80%以上の極めて高い力学的特性を維持している。
【0024】
上述の無機繊維結合型セラミックス部材(C)の表面が損傷を受けた場合に、その損傷部分を取り除いた後、積層物(D)を作製する。積層物(D)は以下の手順で製造される。
本発明の原料として使用される無機繊維は、例えば特開昭62−289641号公報に記載の方法に従って、無機繊維を酸化性雰囲気下に500〜1600℃の範囲の温度で加熱することによって調製することができる。この無機質繊維(M:Ti)は宇部興産株式会社からチラノ繊維(登録商標)として市販されている。無機繊維の形態については特別に制限はなく、連続繊維、連続繊維を切断したチョップ状短繊維、或いは連続繊維を一方向に引き揃えたシート状物又は織物であることができる。
【0025】
上記の繊維を空気、純酸素、オゾン、水蒸気、炭酸ガスなどの酸化性雰囲気で加熱処理することによって無機繊維の表面層が形成される。無機繊維の表面層の厚さT(μm)が、T=aD(ここで、aは0.023〜0.053の範囲内の数値であり、Dは無機質繊維の直径(単位μm)である。)を満足するように、加熱処理条件を選択することが必要である。表面層の厚さを上記範囲に厳密に制御することにより、気孔率が2%以下の極めて緻密な無機繊維結合セラミックスを調製することが可能になる。
【0026】
上記加熱処理により、内面層と表面層とからなる無機繊維であって、内面層が、
(a)Si、M、C及びOからなる非晶質物質(MはTi又はZrを示す。)、
(b)β−SiC、MC及びCの結晶質超微粒子と、SiO2及びMO2の非晶質物質との集合体、又は
(c)上記(a)の非晶質物質と上記(b)の集合体との混合物を含有する無機質物質で構成され、表面層が
(d)Si及びO、場合によりMからなる非晶質物質、
(e)結晶質のSiO2及び/又はMO2からなる結晶質物質、又は
(f)上記(d)の非晶質物質と上記(e)の結晶質物質との混合物を含有する無機質物質で構成され、かつ、表面層の厚さT(単位μm)がT=aD(ここで、aは0.023〜0.053の範囲内の数値であり、Dは無機繊維の直径(単位μm)である。)を満足する無機繊維が得られる。
次いで、この無機繊維の連続繊維を切断したチョップ状短繊維、或いは連続繊維を一方向に引き揃えたシート状物又は織物の少なくとも1種類の形状を含む積層物(D)を製造する。
【0027】
次いで、上記積層物(D)を無機繊維結合型セラミックス部材の補修したい表面に配置し、カーボンダイスにセットして、不活性ガス雰囲気中、1500〜2000℃の範囲の温度で100〜1000kg/cm2の加圧下でホットプレス処理することによって、無機繊維結合型セラミックスの表面を補修することができる。
【0028】
【実施例】
以下に本発明を更に詳しく説明するために実施例を示す。なお、無機繊維結合型セラミックスの力学的特性は、次のように測定した。
[力学的特性の評価]
オリエンテック製テンシロン万能試験機を用いて無機繊維結合型セラミックスの繊維強化方向の最大曲げ強さを4点曲げ試験により求めた。試験片の形状は、幅4mm、高さ3mm、長さ40mmとした。また、クロスヘッドの速度は0.5mm/minとした。
【0029】
実施例1
まず、ナトリウム400gを含有する無水キシレンに、窒素ガス気流下にキシレンを加熱環流させながら、ジメチルジクロロシラン1Lを滴下し、引き続き10時間加熱環流し沈殿物を生成させた。この沈殿をろ過し、メタノール、次いで水で洗浄して、白色のポリジメチルシラン420gを得た。
次に、ジフェニルジクロロシラン750g、及びホウ酸124gを窒素ガス雰囲気下にn−ブチルエーテル中、100〜120℃で加熱し、生成した白色樹脂状物をさらに真空中400℃で1時間加熱処理することによって、フェニル基含有ポリボロシキサン530gを得た。
前述で得られたポリジメチルシラン100部にこのフェニル基含有ポリボロシロキサン4部を添加し、窒素ガス雰囲気中、350℃で5時間熱縮合して、高分子量の有機ケイ素重合体を得た。この有機ケイ素重合体100部を溶解したキシレン溶液にアルミニウム−トリ−(sec−ブトキシド)を7部加え、窒素ガス気流下、310℃で架橋反応させることによって、ポリアルミノカルボシランを合成した。これを245℃で溶融紡糸し、空気中140℃で5時間加熱処理した後、更に窒素中300℃で10時間加熱して不融化繊維を得た。この不融化繊維を窒素中1500℃で連続焼成し、炭化ケイ素系連続無機繊維を合成した。この繊維を織物形状に加工し積層した積層物を作製した。そして、この積層物をカーボンダイス内に仕込んだ後、圧力50MPa、温度1850℃で成形し、無機繊維結合型セラミックスを得た。この無機繊維結合セラミックスの表面をグラインダーで強制的に損傷させた。図1に損傷した表面の状態を示す。次に、この損傷した表面を平面研削盤で研削し、損傷部分を取り除いた後、その表面に前記の積層物を配置し、カーボンダイス内に仕込んだ後、圧力50MPa、温度1850℃で成形した。成形後もとの部材と同様な寸法になるように機械加工を施した。図2に補修後の表面を示す。表面は平滑であり、グラインダーで強制的に損傷を与える前の状態と変わりなかった。さらに、補修した無機繊維結合型セラミックス部材の内部に変化がないか確認するために、補修した後の部材内部の4点曲げ試験を実施した。4点曲げ試験における平均強度は、316MPaであった。
【0030】
参考例1
実施例1と同様に製造した無機繊維結合型セラミックスから比較用の曲げ試験片を切り出し、4点曲げ試験を実施した。4点曲げ試験における平均強度は、325MPaであった。
損傷前と損傷部分を補修した後の曲げ強度はほぼ等しく補修による内部の強度に変化はなかった。内部の強度変化を起こさないで無機繊維結合型セラミックスの表面を補修することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の実施例1において、無機繊維結合型セラミックス部材を強制的に損傷させた表面の状態を示す図面に代える写真である。
【図2】図2は、本発明の実施例1において、損傷を与えた無機繊維結合型セラミックス部材の表面を補修した後の表面の状態を示す図面に代える写真である。
Claims (2)
- (A)主としてSiCの焼結構造からなる無機繊維であって、0.01〜1重量%のO、及び2A族、3A族及び3B族の金属原子からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属原子を含有する無機繊維が最密充填に極めて近い構造に結合し、繊維間には1〜100nmのCを主成分とする境界層が形成されている無機繊維結合セラミックス部材の補修を必要とする表面を研削し、健全な状態にした後、
(B)(a)ケイ素原子に対する炭素原子の割合がモル比で1.5以上であるポリシラン或いはその加熱反応物に、2A族、3A族及び3B族の金属元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素含有有機ケイ素重合体を調製する第1行程、(b)金属元素含有有機ケイ素重合体を溶融紡糸して紡糸繊維を得る第2行程、(c)紡糸繊維を酸素含有雰囲気中50〜170℃で加熱して不融化繊維を調製する第3行程によって得られる不融化繊維の積層物、又は、(d)前記不融化繊維を不活性ガス中で無機化する第4行程によって得られる無機化繊維の積層物を、
無機繊維結合型セラミックス部材(A)の補修すべき表面に配置し、カーボンダイスにセットして、真空、不活性ガス、還元ガス及び炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる雰囲気中で、1700〜2200℃の範囲の温度で100〜1000kg/cm2の加圧下でホットプレス処理することを特徴とする無機繊維結合セラミックスの補修方法。 - (C)(i)下記(a)及び/又は(b)からなる無機繊維と、
(a)Si、M、C及びOからなる非晶質物質(MはTi又はZrを示す)、
(b)▲1▼β−SiC、MC及びCの結晶質微粒子と、▲2▼SiO2及びMO2の非晶質物質との集合体、
(ii)前記無機繊維の間隙を充填する、下記(c)及び/又は(d)からなり、場合により(e)が分散した無機物質と、
(c)Si及びO、場合によりMからなる非晶質物質、
(d)結晶質のSiO2及びMO2からなる結晶質物質、
(e)100nm以下の粒径のMCからなる結晶質微粒子無機物質、
(iii)上記無機繊維の表面に形成された、Cを主成分とする、場合により100nm以下の粒径のMCからなる結晶質粒子が分散した、1から100nmの境界層、
から構成されてなる無機繊維結合セラミックス部材の、
補修を必要とする表面を研削し、健全な状態にした後、
(D)内面層と表面層とからなる無機繊維であって、内面層が、
(a)Si、M、C及びOからなる非晶質物質(MはTi又はZrを示す。)、
(b)β−SiC、MC及びCの結晶質超微粒子と、SiO2及びMO2の非晶質物質との集合体、又は
(c)上記(a)の非晶質物質と上記(b)の集合体との混合物を含有する無機質物質で構成され、表面層が
(d)Si及びO、場合によりMからなる非晶質物質、
(e)結晶質のSiO2及び/又はMO2からなる結晶質物質、又は
(f)上記(d)の非晶質物質と上記(e)の結晶質物質との混合物を含有する無機質物質で構成され、かつ、表面層の厚さT(単位μm)がT=aD(ここで、aは0.023〜0.053の範囲内の数値であり、Dは無機繊維の直径(単位μm)である。)を満足する無機繊維の積層物を、
無機繊維結合型セラミックス部材(C)の補修すべき表面に配置し、カーボンダイスにセットして、不活性ガス雰囲気中、1500〜2000℃の範囲の温度で100〜1000kg/cm2の加圧下でホットプレス処理することを特徴とする無機繊維結合セラミックスの補修方法。
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