JP2704475B2 - 無機繊維強化セラミックス複合材料 - Google Patents

無機繊維強化セラミックス複合材料

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JP2704475B2
JP2704475B2 JP3356091A JP35609191A JP2704475B2 JP 2704475 B2 JP2704475 B2 JP 2704475B2 JP 3356091 A JP3356091 A JP 3356091A JP 35609191 A JP35609191 A JP 35609191A JP 2704475 B2 JP2704475 B2 JP 2704475B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、強度、靭性及び耐熱性
が高い無機繊維強化セラミックス複合材料に関する。
【0002】
【従来の技術及びその問題点】セラミックブリティン第
67巻第11号(1988年)1779〜1782ペー
ジには、炭化ケイ素繊維で強化されたLiO−Al
−SiO系結晶化ガラス複合材料が約90kg/m
の常温での最高曲げ強度及び15MPa・m1/2
の破壊靱性値を有することが記載されている。日本セラ
ミックス協会学術論文誌第99巻第1号(1991年)
89〜93ページには、ムライトと40体積%の窒化ケ
イ素ウイスカとからなる複合材料は、ムライト単独に比
較して、曲げ強度が約35kg/mmから約65kg
/mmに向上し、破壊靱性値の目安となる臨界応力拡
大係数(KIC)が約2MPa・m1/2から約4MP
a・m1/2に改善されることが開示されている。これ
らの複合材料は、(株)産業技術センター発行「セラミ
ックス強化複合セラミックス」32ページに記載されて
いるところのガスタービン用セラミックス部材に要求さ
れる主な特性、例えば耐熱温度1250〜1500℃、
最低保証強度40ないし60kg/mm以上、臨界応
力係数6.7〜15MPa・m1/2を満足するもので
はない。自動車エンジンを始めとする各種熱機関の性能
を高めることが求められており、それに伴って耐熱性に
優れると共に、常温から高温にわたって優れた強度及び
破壊靱性値を有するセラミックス材料の開発が強く望ま
れている。
【0003】
【問題点を解決するための技術的手段】本発明の目的は
上記要望を満足する無機繊維強化セラミックス複合材料
を提供すことにある。本発明によれば、無機繊維を強化
材とし、セラミックスをマトリックスとする無機繊維強
化セラミックス複合材料において、無機繊維は、ケイ素
40〜60重量%、炭素20〜40重量%、チタン又は
ジルコニウム0.5〜10重量%、及び酸素10〜30
重量%からなる内層部と、ケイ素0〜40重量%、炭素
50〜100重量%、チタン又はジルコニウム0〜8重
量%、及び酸素0〜25重量%からなる表層部とから構
成され、炭素の割合が表面から500nm以下の領域内
に形成される表層部において繊維表面に向かって連続的
に増大する傾斜した組成分布を有しており、かつ無機繊
維が (1)ケイ素、炭素、チタン又はジルコニウム、及び酸
素からなる非晶質物質、 (2)β−SiC、MC、C、β−SiCとMCとの固
溶体、及びMC1−xからなる群から選択される少なく
とも1種で粒径が50nm以下の結晶質微粒子と、非晶
質のSiO及びMOとからなる集合体、又は (3)上記(1)の非晶質物質と上記(2)の集合体と
の混合物(式中、Mはチタン又はジルコニウムを示し、
xは0より大きく1未満の数である。)で構成されてい
る無機繊維強化セラミックス複合材料が提供される。
【0004】本発明における無機繊維は、上記組成割合
の内層部と表層部とから構成され、繊維径は通常5〜2
0μmである。無機繊維の表層部は、繊維表面から繊維
軸中心に向かって500nm以下の領域内であって、か
つ繊維表面側に形成されている。表層部が上記範囲より
深い領域に形成されると、内層部の割合が相対的に低減
する結果、無機繊維の機械的特性が低下するようにな
る。無機繊維の表層部においては、例えば図1に示され
ているように、炭素の割合が繊維表面に向かって連続的
に増大している。図1は後述する参考例1で得られた無
機長繊維の繊維表面からの深さ(nm)と構成元素の割
合(重量%)との関係を示しており、炭素の割合が繊維
表面から約20nmの地点から繊維表面に向けて急激に
増大していることが理解される。これに対して、例えば
後述する特公昭62−60414号公報に記載の方法に
従って調製したポリチタノカルボシランを紡糸、不融
化、ついで一定温度で焼成した無機繊維について、繊維
表面からの深さと構成元素の割合との関係を示す図2に
よると、繊維を構成する元素の割合は、繊維の深さ方向
にほぼ一定であることがわかる。
【0005】本発明における無機繊維は繊維表面付近に
炭素に富む薄層を有するために、この無機繊維とセラミ
ックスとの複合材料には、繊維とマトリックスとの間に
炭素からなる界面層、炭化物からなる界面層、又は炭素
と炭化物とからなる界面層が形成される。この界面層の
存在によって、繊維とマトリックスとの極端な反応及び
繊維の分解が抑制されると共に、繊維とマトリックスと
の界面結合状態が最適な状態に維持される。この結果、
本発明の無機繊維強化セラミックス複合材料は常温から
高温にいたるまで優れた力学的特性及び高靱性を発現す
る。無機繊維の使用形態については特別の制限はなく、
連続繊維又は連続繊維を切断したチョップ状短繊維であ
ってもよく、連続繊維から編織された平織、朱子織、多
軸織、三次元織、不織布であってもよく、さらに連続繊
維を一方向に引き揃えたシート状物であってもよい。
【0006】本発明における無機繊維は、例えば、本出
願人が先に提案した特願平3−179070号明細書に
開示された製造方法に従って調製することができる。無
機繊維の製造に使用されるポリチタノカルボシランある
いはポリジルコノカルボシラン(以下両者を総称して
「前駆重合体」という。)は、例えば、特公昭61−4
9335号公報、同62−60414号公報、同63−
37139号公報、同63−49691号公報に記載の
方法に従って調製することができる。これら公報の記載
は本明細書の一部として参照される。前駆重合体は、 (1)ポリカルボシランとポリチタノシロキサン又はポ
リジルコノシロキサンとを反応させることによって、ポ
リカルボシランのケイ素原子と上記シロキサン重合体の
ケイ素原子、又はチタン原子あるいはジルコニウム原子
とを、酸素原子を介して結合させた重合体、及び (2)ポリカルボシランとチタンあるいはジルコニウム
のアルコキシドとを反応させることによって、ポリカル
ボシランのケイ素原子をチタン原子又はジルコニウム原
子とを酸素原子を介して結合させた重合体を包含する。
【0007】上記の前駆重合体が常法によって紡糸さ
れ、ついで不融化される。紡糸繊維の不融化方法として
は、それ自体公知の方法、例えば、紡糸繊維を酸化性ガ
ス雰囲気において50〜400℃の範囲の温度で加熱す
る方法、あるいは紡糸繊維にγ線又は電子線を照射する
方法を採用することができる。前駆重合体の紡糸及び不
融化は、本出願人の出願に係わる特公昭60−1405
号公報、同60−20485号公報に詳細に説明されて
おり、これら公報の記載は本明細書の一部として参照さ
れる。不融化された繊維はついで連続焼成炉に連続的に
供給されて焼成される。本発明における無機繊維を調製
するためには、焼成炉内の温度を繊維の進行方向に向け
て高くすることが必要である。この処理は、例えば、焼
成炉の温度を繊維の進行方向に段階的あるいは連続的に
高めることによって容易に行うことができる。焼成炉内
で形成される温度勾配は、処理すべき不融化繊維の供給
量、焼成炉の長さなどによって種々異なり一律に規定す
ることはできないが、一般的には50〜1000℃/m
(炉長)の範囲である。
【0008】最高焼成温度は800〜2000℃の範囲
の温度であり、1200〜1600℃の範囲の温度であ
ることが好ましい。上記したように、焼成炉内の温度は
繊維の進行方向に向けて高くされるが、最高焼成温度と
は焼成炉内において到達される最も高い温度を意味す
る。最終焼成温度が800℃より低いと、機械的強度の
高い無機繊維を得ることができず、最終焼成温度を20
00℃より高くすると、炭化ケイ素の急激な結晶化及び
炭化ケイ素の蒸発が起こるため、得られる無機繊維の強
度が大幅に低下する。焼成炉の入口温度は室温〜800
℃、特に50〜200℃の範囲の温度であることが好ま
しい。焼成炉の入口温度が過度に高いと、焼成炉内の温
度勾配を充分形成することができなくなり、目的とする
表面組成が傾斜した無機繊維が得られにくくなる。不融
化繊維の焼成は窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気
中、あるいは真空中で、張力下に行われる。繊維にかけ
る張力については特別の制限はないが、一般には10〜
300g/mmである。この製造方法によれば、既述
した内層部及び表層部からなる無機繊維を効率的に得る
ことができる。その理由についてなんらかの理論に拘束
されるものではないが、内層部とほぼ同一組成の無機繊
維がまず形成され、ついで、この繊維の表面から、ケイ
素、チタン又はジルコニウム、及び酸素の少なくとも一
部が単独あるいは化合物として逃散し、その結果、炭素
原子の割合の高い表層部が形成されるものと推定され
る。
【0009】本発明におけるマトリックスであるセラミ
ックスとしては、結晶質又は非晶質の酸化物セラミック
ス、結晶質又は非晶質の非酸化物セラミックス、ガラ
ス、結晶化ガラス、これらの混合物、これらのセラミッ
クスを粒子分散強化したセラミックス複合材料を例示す
ることができる。酸化物セラミックスの具体例として
は、アルミニウム、マグネシウム、ケイ素、イットリウ
ム、インジウム、ウラン、カルシウム、スカンジウム、
タンタル、ニオブ、ネオジム、ランタン、ルテニウム、
ロジウム、ベリリウム、チタン、錫、ストロンチウム、
バリウム、亜鉛、ジルコニウム、鉄のような元素の酸化
物、これら金属の複合酸化物が挙げられる。非酸化物セ
ラミックスの例としては、炭化物、窒化物、ホウ化物を
挙げることができる。炭化物の具体例としては、ケイ
素、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ウラン、タ
ングステン、タンタル、ハフニウム、ホウ素、鉄、マン
ガンのような元素の炭化物、これら元素の複合炭化物が
挙げられる。窒化物の具体例としては、ケイ素、ホウ
素、アルミニウム、マグネシウム、モリブデンのような
元素の窒化物、これら元素の複合窒化物、サイアロンが
挙げられる。ホウ化物の具体例としては、チタン、イッ
トリウム、ランタンのような元素のホウ化物、CeCo
、CeCo、ErRhのようなホウ
化白金族ランタノイドが挙げられる。
【0010】ガラスの具体例としては、ケイ酸塩ガラ
ス、リン酸塩ガラス、ホウ酸塩ガラスのような非晶質ガ
ラスが挙げられる。結晶化ガラスの具体例としては、主
結晶相がβ−スポージュメンであるLiO−Al
−MgO−SiO系ガラス及びLiO−Al
−MgO−SiO−Nb系ガラス、主結晶相
がコージェライトであるMgO−Al−SiO
系ガラス、主結晶相がバリウムオスミライトであるBa
O−MgO−Al−SiO系ガラス、主結晶相
がムライト又はヘキサセルシアンであるBaO−Al
−SiO系ガラス、主結晶相がアノーサイトであ
るCaO−Al−SiO系ガラスが挙げられ
る。こらの結晶化ガラスの結晶相にはクリストバライト
が含まれる場合がある。本発明におけるセラミックスと
して、上記の各種セラミックスの固溶体を挙げることが
できる。セラミックスを粒子分散強化したセラミックス
複合材料の具体例としては、窒化ケイ素、炭化ケイ素、
酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、チタン酸カリ
ム、ホウ酸マグネシウム、酸化亜鉛、ホウ化チタン及び
ムライトから選択される無機物質の球状粒子、多面体粒
子、板状粒子、棒状粒子を0.1〜60体積%均一分散
したセラミックスが挙げられる。球状粒子及び多面体粒
子の粒系は一般に0.1μm〜1mm、板状粒子及び棒
状粒子のアスペクト比は一般に1.5〜1000であ
る。
【0011】本発明の無機繊維強化セラミックス複合材
料は、無機繊維とセラミックス原料粉末とをそれ自体公
知の方法に従って配合し、焼結することによって調製す
ることができる。無機繊維がチョップ状物であるとき
は、チョップ状無機繊維とセラミックス原料粉末とを混
合した混合物とすることができ、無機繊維が長繊維、織
物、不織物又はシート状物であるときには、これらの層
とセラミックス原料粉末層とを交互に積層した積層物と
することができる。ついで、上記の混合物又は積層物
を、所望の形伏に成形した後、あるいは成形と同時に加
熱焼結することによって、本発明の無機繊維強化セラミ
ックス複合材料を得ることができる。混合物又は積層物
の成形方法としては、金型プレス法、ラバープレス法、
押し出し法、シート法のような公知の方法を採用するこ
とができる。成形時のバインダーとして、公知の有機重
合体、例えばポリビニルアルコール、アルミニウムアル
コキシドの重合体、ポリカルボシラン、ポリメタロカル
ボシランを使用することもできる。焼結方法についても
特別の制限はなく、成形物を常圧下あるいは減圧下で焼
結する方法、成形及び焼結を同時に行うホットプレス法
又は熱間静水圧プレス法のようなそれ自体公知の方法を
採用することができる。加熱焼結温度は通常400〜2
200℃である。加熱焼結温度が過度に低いとマトリッ
クスの焼結が十分に進行せず、その温度が過度に高いと
マトリックスあるいは無機繊維の分解が起こるようにな
る。
【0012】
【実施例】以下実施例によって本発明を説明する。以下
において特別に断りのない限り、「部」及び「%」は、
それぞれ、「重量部」及び「重量%」を示す。 参考例1 ジメチルジクロロシランを金属ナトリウムで脱塩素縮合
して合成されたポリジメチルシラン100部に対してポ
リボロシロキサン3部を添加し、窒素中、350℃で熱
縮合して、式 −Si−CH−で示されるカルボシラ
ン単位から主としてなる主鎖骨格を有し、このカルボシ
ラン単位のケイ素原子に水素原子及びメチル基を有する
ポリカルボシランを調製した。このポリカルボシラン1
00部にチタンテトラブトキシド20部を添加し、窒素
中340℃で架橋反応させることによって、上記のカル
ボシラン単位100部と式 −Ti−O−で示されるチ
タノキサン単位10部とからなるポリチタノカルボシラ
ンを得た。このポリチタノカルボシランを溶融紡糸し、
ついで空気中190℃で加熱して径15μmの不融化繊
維を得た。
【0013】長さ8mの連続焼成炉に四つの温度ゾーン
を設け、第1ゾーン、第2ゾーン、第3ゾーン及び第4
ゾーンの温度を、それぞれ、300〜500℃、500
〜800℃、800〜1300℃及び1300〜160
0℃に設定した。この温度勾配を形成させた焼成炉に、
上記の不融化繊維を第1ゾーンから連続的に3m/分の
割合で供給しアルゴンガス雰囲気下に焼成した。得られ
る無機繊維は第4ゾーンの出口から連続的に取り出し
た。得られた無機繊維の径は11μmであった。この無
機繊維の表面から繊維軸方向の組成分布を、日本電子
(株)製の走査型オージェ電子分光装置JAMP−30
を用いて分析した。分析結果を示す図1からわかるよう
に、無機繊維は内層部と繊維表面から約20nmの地点
から形成される表層部とから構成されていた。内層部を
構成する元素の割合は、ケイ素51%、炭素29%、酸
素18%及びチタン2%であった。表層部においては、
上記の繊維表面から約20nmの地点から繊維表面に向
けて炭素の割合が最表面における80%まで増加してい
る一方で、ケイ素、酸素及びチタンの割合が漸減してい
た。この無機繊維の引張強度は330kg/mmであ
り、弾性率(ストランド法による測定)は18t/mm
であった。
【0014】参考例2 チタンテトラブトキシドに代えてジルコニウムテトラブ
トキシド30部を使用した以外は参考例1におけると同
様にして、ポリジルコノカルボシランを調製した。この
ポリジルコノカルボシランを用いて参考例1におけると
同様にして、紡糸、不融化、ついで焼成して、径12μ
mの無機繊維を得た。この無機繊維は内層部と繊維表面
から約25nmの地点から形成される表層部とから構成
されており、内層部の構成元素の割合は、ケイ素53
%、炭素28%、酸素17%及びジルコニウム2%であ
った。表層部の炭素の割合は、最表面の85%まで増大
しており、ケイ素、酸素及びジルコニウムの割合は漸減
していることが観察された。この無機繊維の引張強度は
315kg/mmであり、弾性率(ストランド法によ
る測定)は18t/mmであった。
【0015】参考例3 焼成炉において温度勾配を設けることなく、参考例1に
おける不融化繊維を1300℃で焼成して、径12μm
の無機繊維を得た。この無機繊維の表面から繊維軸方向
への組成分析結果を図2に示す。図2からわかるよう
に、この無機繊維は全体に均一な組成を有しており、構
成元素の割合はケイ素50%、炭素30%、酸素18%
及びチタン2%であった。この無機繊維の引張強度は3
35kg/mmであり、弾性率(ストランド法による
測定)は18t/mmであった。
【0016】実施例1 平均粒径0.8μmの窒化ケイ素粉末にY及びA
をそれぞれ5%添加し、さらにバインダーとし
てポリビニルアルコールを10%添加した後、エタノー
ルと蒸留水との混合溶媒中で48時間ボールミル混合し
て、マトリックス原料のスラリーを調製した。参考例1
で得られた無機繊維の束(800フィラメント)を数本
のテフロン製の円柱状ピンに連続的に押しつけた後に、
空気を吹きつけて幅約1.5cmに開繊した。開繊した
無機繊維をドラムに巻き取り、無機繊維の一方向シート
を作製した。このシートを上記のマトリックス原料のス
ラリーに浸漬した後に十分乾燥してプリプレグシートを
作製した。このプリプレグシートを5cm×5cm×5
cmのの正方形に切断した後、離型剤としてコロイダル
カーボンを塗布した黒鉛ダイス中に積層し、アルゴン雰
囲気中にて温度1000℃、圧力300kg/cm
ホットプレスした。ホットプレス品に窒化ホウ素を塗布
した後にタンタル箔を巻きつけパイレックスガラス製の
カプセルに真空封入し、温度1700℃、圧力1000
kg/cmで熱間静水圧プレスして、窒化ケイ素をマ
トリックスとする無機繊維強化セラミックス複合材料を
得た。複合材料中の無機繊維の割合は50体積%であっ
た。この複合材料の曲げ強度は常温で150kg/mm
、1400℃で100kg/mmであり、破壊靭性
値は13.5MPa・m1/2であり、窒化ケイ素のみ
の焼結体に比較して約2倍であった。この複合材料の破
断面を走査型電子顕微鏡によって観察した結果、図3に
示すように繊維とマトリックスとの間に炭素と炭化物と
の混合物からなる界面層が形成されていることが判明し
た。
【0017】比較例1 参考例1で得られた繊維に代えて参考例3で得られた繊
維を使用した以外は実施例1を繰り返して複合材料を得
た。この複合材料の曲げ強度は常温で60kg/m
、1400℃で40kg/mmであった。この複
合材料の破断面を走査型電子顕微鏡によって観察した結
果、図4に示すように複合材料中の繊維がマトリックス
と激しく反応し、繊維形状が崩れていることが判明し
た。
【0018】実施例2 平均粒径0.4μmのアルミナ粉末にバインダーとして
のポリエチレンオキサイドを10%添加した後、エタノ
ールと水との混合溶媒中で40時間ボールミル混合し
て、マトリックス原料のスラリーを調製した。上記マト
リックス原料のスラリーをバブリング装置付のタンクに
入れ、参考例1で得られた無機繊維の束をこのスラリー
に浸漬し、バブリングによって繊維の開繊と同時にマト
リックススラリーを各繊維上に付着させた。この後、こ
のスラリーの付着した繊維束をドラムに巻き取り、充分
乾燥してプリプレグシートを作製した。このプリプレグ
シートを5cm×5cm×5cmの正方形に切断した
後、離型剤として窒化ホウ素を塗布した黒鉛ダイス中に
積層し、アルゴン雰囲気中にて温度1400℃、圧力5
00kg/cmでホットプレスして、アルミナをマト
リックスとする無機繊維強化複合材料を得た。複合材料
中の無機繊維の割合は50体積%であった。この複合材
料の曲げ強度は常温で170kg/mm、1300℃
で100kg/mmであり、破壊靭性値は17.5M
Pa・m1/2であり、アルミナのみの焼結体に比較し
て約5.5倍であった。
【0019】実施例3 参考例1で得られた無機繊維に代えて参考例2で得られ
た無機繊維を使用した以外は実施例2を繰り返して、ア
ルミナをマトリックスとする無機繊維強化複合材料を得
た。この複合材料の曲げ強度は常温で165kg/mm
、1300℃で105kg/mmであり、破壊靭性
値は14MPa・m1/2であった。
【0020】実施例4 平均粒径1.5μmのムライト粉末にバインダーとして
ポリビリニルアルコールを7%添加した後、エタノール
と水との混合溶媒中で45時間ボールミル混合して、マ
トリックス原料のスラリーを調製した。この後、実施例
2におけると同様にしてプリプレグシートの作製及びホ
ットプレスを行って、ムライトをマトリックスとする無
機繊維強化複合材料を得た。複合材料中の無機繊維の割
合は45体積%であった。この複合材料の曲げ強度は常
温で105kg/mm、1400℃で80kg/mm
であり、破壊靭性値は16MPa・m1/2であり、
アルミナのみの焼結体に比較して約6.5倍であった。
【0021】実施例5 炭酸カルシウム、酸化マグネシウム及び二酸化ケイ素を
重量比1:1:2で混合し、混合物を1500〜155
0℃で融解した後に、水中で急冷して得られたガラスを
3μm以下に粉砕してガラス粉末を調製した。このガラ
ス粉末の中に参考例1で得られた無機繊維を埋没し、黒
鉛製モールドを用いて200kg/cmの加圧下に1
300℃で1時間ホットプレスして、繊維含有率20体
積%の繊維強化ガラス複合材料を得た。このガラス複合
材料の曲げ強度は80kg/mmであった。また、こ
のガラス複合材料は、複合材料を1000℃に保持した
炉内に入れ30分間急熱した後に取り出して30分間強
制空冷するヒートサイクルを5回繰り返した後において
も、72kg/mmの曲げ強度を保持していた(曲げ
強度保持率:90%)。
【0022】実施例6 酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及び二酸化ケイ素
を重量比4:10:15で混合し、さらに8%の酸化チ
タンを加えて、その混合物を空気中、約1600℃で融
解した後に、常温の空気中に取り出してガラスを作製し
た。このガラスを100μm以下1μm以上になるよう
に粉砕してガラス粉末を調製した。このガラス粉末にバ
インダーとしてポリエチレンオキサイドを10%添加し
た後、エタノールと水との混合溶媒中で40時間ボール
ミル混合して、マトリックス原料のスラリーを調製し
た。この後、実施例2におけると同様にしてプリプレグ
シートを作製した。このプリプレグシートを5cm×5
cm×5cmの正方形に切断した後、離型剤としてコロ
イダルカーボンを塗布した黒鉛ダイス中に積層し、アル
ゴン雰囲気中にて温度1100〜1150℃、圧力50
kg/cmでホットプレスした。この後、プレス圧力
を常圧にもどし、温度1250℃で1時間熱処理して結
晶化させ、結晶化ガラスをマトリックスとする無機繊維
強化複合材料を得た。複合材料中の無機繊維の割合は4
5体積%で、マトリックス中の結晶相はコージェライト
とクリストバライトであった。この複合材料の曲げ強度
は常温で80kg/mmであり、破壊靭性値は18M
Pa・m1/2であった。
【0023】比較例2 参考例3で得られた無機繊維をフェノール樹脂(ユニチ
カ製ユニベックスSタイプ)を5wt%含むアセトン溶液
に連続的に含浸し、乾燥した。この繊維を1300℃、
アルゴン中で連続的に処理し、炭素が100%である表
面層を形成させた。この炭素100%の表面層を持つ繊
維を実施例6で用いた繊維に代えた他は、実施例6と同
様にして複合材料を得た。得られた複合材料中の無機繊
維の割合は42体積%であり、マトリックス中の結晶相
は、コージェライトとクリストバライトであった。この
複合材料の曲げ強度は常温で35kg/mm2であり、破壊靭
性値は18MPa・m1/2で、破壊靭性は高いものの、非常に
強度の低いものであった
【図面の簡単な説明】
【図1】参考例1で得られた無機長繊維の組成分析結果
を示す図である。
【図2】参考例3で得られた無機長繊維の組成分析結果
を示す図である。
【図3】図3は実施例1で得られた複合材料中の繊維と
マトリックスとの界面付近の透過型電子顕微鏡写真及び
エネルギー分散型X線分光分析による複合組織である。
【図4】図4は比較例1で得られた複合材料の破断面の
走査型電子顕微鏡写真による繊維構造である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−185861(JP,A) 特開 平2−149474(JP,A) 特開 昭64−3081(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】無機繊維を強化材とし、セラミックスをマ
    トリックスとする無機繊維強化セラミックス複合材料に
    おいて、 無機繊維は、ケイ素40〜60重量%、炭素20〜40
    重量%、チタン又はジルコニウム0.5〜10重量%、
    及び酸素10〜30重量%からなる内層部と、ケイ素0
    〜40重量%、炭素50〜100重量%、チタン又はジ
    ルコニウム0〜8重量%、及び酸素0〜25重量%から
    なる表層部とから構成され、炭素の割合が表面から50
    0nm以下の領域内に形成される表層部において繊維表
    面に向かって連続的に増大する傾斜した組成分布を有し
    ており、かつ無機繊維が (1)ケイ素、炭素、チタン又はジルコニウム、及び酸
    素からなる非晶質物質、 (2)β−SiC、MC、C、β−SiCとMCとの固
    溶体、及びMC1−xからなる群から選択される少なく
    とも1種で粒径が50nm以下の結晶質微粒子と、非晶
    質のSiO及びMOとからなる集合体、又は (3)上記(1)の非晶質物質と上記(2)の集合体と
    の混合物(式中、Mはチタン又はジルコニウムを示し、
    xは0より大きく1未満の数である。)で構成されてい
    ることを特徴とする無機繊維強化セラミックス複合材
    料。
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