JP2004066716A - 芳香族ポリアミドフィルムおよびそれを用いた磁気記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【課題】表面性、無欠点性に優れ、フィルムを再利用したときの異物の発生が改善された芳香族ポリアミドフィルム、および出力特性に優れた磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】突起形成面にX線光電子分光法により測定される表面硫黄濃度(S/C)と、表面アルカリ金属濃度(A/C)が下記式(1)(2)を満たす樹脂層と、平均径10〜100nmの粒子からなる突起を1×106〜1×108個/mm2有し、径5μm以上の突起が100個/cm2以下である芳香族ポリアミドフィルムとする。
0.008≦S/C≦0.02 ・・・(1)
A/C≦0.002 ・・・(2)
【選択図】 なし
【解決手段】突起形成面にX線光電子分光法により測定される表面硫黄濃度(S/C)と、表面アルカリ金属濃度(A/C)が下記式(1)(2)を満たす樹脂層と、平均径10〜100nmの粒子からなる突起を1×106〜1×108個/mm2有し、径5μm以上の突起が100個/cm2以下である芳香族ポリアミドフィルムとする。
0.008≦S/C≦0.02 ・・・(1)
A/C≦0.002 ・・・(2)
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面性、無欠点性に優れ、かつリサイクルしたフィルムの異物が少ない芳香族ポリアミドフィルムに関する。更には、かかるフィルムを用いた磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリアミドフィルムは、その優れた耐熱性、機械特性を活かして様々な用途に展開されてきている。特にパラ配向性の芳香族ポリアミドは剛性、強度などの機械特性が他のポリマーより優れているため、フィルムの薄物化に非常に有利であり、プリンターリボン、磁気記録媒体、コンデンサーなどの用途が考えられている。
【0003】
特に磁気テープに代表される磁気記録媒体に使用する場合、フィルムに適切な表面形態(表面性)を付与することが必要であり、例えば、フィルムを形成するポリマー中に無機粒子あるいは有機粒子を含有させる方法、フィルム製膜時あるいは製膜後に微粒子を含有した塗液をコーティングする方法(例えば、特開2001−93134号公報、特開2001−93135号公報、WO99/53483号公報)が代表的なものとして挙げられる。こうした従来の方法は、磁気記録媒体としたときの出力特性や走行性を高めることを目的として、フィルムの表面形態、構造を規制してきたものである。
【0004】
しかしながら、近年、記録の高密度化、すなわち単位ビットあたりの記録面積の微小化は止まるところを知らず、種々の問題を生じるようになってきた。例えば、1ビットあたりの記録面積は、1970年代には100μm2オーダーであったのに対し、1980年代には10μm2オーダー、1990年代には1μm2オーダーとなり、現在、1μm2を切るものが検討されている。このように記録面積が微小化すると、ベースフィルムの平滑性、走行性、無欠点性を高いレベルで達成することが求められる。
【0005】
また優れた品質のフィルムを安価に製造するためには、製造工程あるいは加工工程で発生した屑フィルムを再利用することが有効であるが、再利用する場合にはリサイクルフィルムにおいても異物が少ないことが要求される。すなわち、異物の多いリサイクルポリマーを用いた場合、製造工程中の濾過フィルターが目詰まりし易くなり生産性を低下させる懸念がある。また異物の多いリサイクルフィルムを単層でそのまま磁気テープに用いた場合には、粗大突起によって磁気テープのデータが欠落する懸念がある。更に積層フィルムの中間層や走行面に、異物の多いリサイクルフィルムを用いても同様に、粗大突起によるデータ欠落の懸念があり、従来の方法では、これらを満足させることが困難であった。
【0006】
特に微粒子を含有した塗液をコーティングして表面性を付与する場合には、微粒子のバインダーとしてポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などのポリマーが用いられるが、リサイクルフィルムの異物を低減させるためには、これらバインダーポリマーにも注意が必要である。例えば、WO99/53483号公報で用いられているアクリル変性ポリエステル(高松油脂(株)IN−170−6)や、ポリウレタン(東洋ポリマー(株)メルシー545)については、芳香族ポリアミドとの相溶性が悪く、これらをコーティングしたフィルムを再利用した場合、異物の多いリサイクルフィルムとなり易い。また、ポリエチレンナフタレート(50モル%)、イソフタル酸(45モル%)、5−スルホイソフタル酸ナトリウム(5モル%)、エチレングリコール(70モル%)、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(30モル%)の共重合ポリエステルについては、再利用する際に、5−スルホイソフタル酸ナトリウムのナトリウム成分が、回収溶媒に含まれる無機物や有機物と反応して、芳香族ポリアミドと相溶性の悪い異物を生じさせるためか、異物の多いリサイクルフィルムとなり易い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点を解決し、表面性、無欠点性に優れ、フィルムを再利用しても異物の発生が少なく、かつ、磁気記録媒体としたときの出力が高い芳香族ポリアミドフィルムおよび磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、少なくとも片面に、X線光電子分光法により測定される表面硫黄濃度(S/C)と表面アルカリ金属濃度(A/C)が下記式(1)(2)を満たす樹脂層を有し、この樹脂層の表面に平均径が10〜100nmである突起が1×106〜1×108個/mm2の密度で形成され、この突起が形成された面の径5μm以上の突起が100個/cm2以下である芳香族ポリアミドフィルムを特徴とする。
【0009】
0.008≦S/C≦0.02 ・・・(1)
A/C≦0.002 ・・・(2)
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の芳香族ポリアミドとしては、たとえば、次の式(I)および/または式(II)で表される繰り返し単位を50モル%以上有するものを用いることができる。
【0011】
式(I):
【0012】
【化1】
式(II):
【0013】
【化2】
ここで、Ar1、Ar2、Ar3の基としては、例えば、
【0014】
【化3】
などが挙げられる。
【0015】
ここで、X、Yは芳香環の結合基であって、例えば、−O−、−CH2−、−CO−、−S−、−C(CH3)2−などから選ばれるが、これらに限定されるものではない。更にこれらの芳香環上の水素原子の一部が、フッ素や臭素、塩素などのハロゲン基(特に塩素)、ニトロ基、メチルやエチル、プロピルなどのアルキル基(特にメチル基)、メトキシやエトキシ、プロポキシなどのアルコキシ基などの置換基で置換されていてもよく、また、重合体を構成するアミド結合中の水素が他の置換基によって置換されていてもよい。
【0016】
また、本発明に用いる芳香族ポリアミドは、上記の芳香環がパラ配向性を有しているものが、全芳香環の70モル%以上、より好ましくは80モル%以上占めていることが好ましい。ここでパラ配向性とは、芳香環上の主鎖を構成する2価の結合手が互いに同軸または平行にある状態をいう。このパラ配向性が70モル%未満の場合、フィルムの剛性および耐熱性が不十分となることがある。
【0017】
本発明における芳香族ポリアミドは、前記した式(I)および/または式(II)で表される繰り返し単位の他の繰り返し単位が50モル%未満のように少量ならば共重合またはブレンドされていてもよい。
【0018】
また、本発明の目的を阻害しない範囲で、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、核生成剤などの無機または有機の添加剤がブレンドされていてもよい。
【0019】
本発明における樹脂層には、水性樹脂、すなわち水溶性樹脂および/または水分散樹脂を含んでいる。樹脂層を形成するための水性樹脂としては、例えば、メチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性や水分散性のエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられるが、これらの中では、芳香族ポリアミドフィルムとの密着性、リサイクルフィルムにおける異物の低減、および樹脂の耐熱性の点から、水溶性および/または水分散性のポリエステル樹脂が好ましい。これらの水性樹脂は単体、共重合体、混合物のいずれの形態で用いてもよい。なお上記水性樹脂の親水基および耐熱性については後述する。
【0020】
上記水溶性および/または水分散性のポリエステル樹脂は、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの酸成分と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのアルコール成分との重縮合反応によって得られるポリエステル樹脂に、スルホン酸基を有する化合物を共重合させる方法や、カルボキシル基を導入してアンモニアや揮発性アミンで中和する方法などで得られる。特に、ポリエステル樹脂に5−スルホイソフタル酸ナトリウムや5−スルホイソフタル酸リチウムなどを共重合させてスルホン酸基を導入する方法は、極性が強く水溶化力に優れており、樹脂を水性化する方法として有効である。しかしスルホン酸基を有する水性樹脂を用いて樹脂層を形成する場合には、樹脂層の表面硫黄濃度S/C(以下、単にS/Cという)が下記式(1)を満たすことが必要である。
【0021】
0.008≦S/C≦0.02 ・・・(1)
ここでS/Cとは、樹脂層のスルホン酸基含有量の指標であり、後述するX線光電子分光法の測定によって求められる。この樹脂層のS/Cが0.008未満の場合、水性樹脂の親水性が不十分なため水性樹脂が凝集体を形成し易く、この水性樹脂を含む水系塗液を芳香族ポリアミドフィルム上に塗布、乾燥した場合に異物を生じさせ易い。また樹脂層のS/Cが0.02を越えると、水性樹脂の耐熱性が悪くなり、この水性樹脂を含む水系塗液を芳香族ポリアミドフィルム上に塗布、乾燥して得られたフィルムを、再度芳香族ポリアミドフィルムの回収溶媒に溶かして再利用する場合に異物を生じさせ易い。この異物は製膜中の乾燥工程あるいは熱処理工程で熱変性した水性樹脂と考えられる。樹脂層のS/Cは、0.01〜0.016であることがより好ましい。
【0022】
更にスルホン酸基を有する水性樹脂を用いて樹脂層を形成する場合には、樹脂層の表面アルカリ金属濃度A/C(以下、単にA/Cという)が下記式(2)を満たすことが必要である。
【0023】
A/C≦0.002 ・・・(2)
ここでA/Cとは、樹脂層のアルカリ金属含有量の指標であり、後述するX線光電子分光法の測定によって求められる。ただし水性樹脂に含まれるスルホン酸塩としては、スルホン酸ナトリウム、スルホン酸リチウム、スルホン酸カリウム、スルホン酸アンモニウムが一般的であり、本発明のアルカリ金属元素とは、ルビジウム、セシウム、フランシウムの3元素を除いた、リチウム、ナトリウム、カリウムの中から選ばれる1種あるいは2種以上のアルカリ金属元素を指す。樹脂層のA/Cが0.002を越える場合、アルカリ金属を含む水性樹脂を水系塗液とし、これを芳香族ポリアミドフィルム上に塗布、乾燥して得られたフィルムを、再度芳香族ポリアミドフィルムの回収溶媒に溶かして再利用する場合に異物を生じさせ易い。これは、芳香族ポリアミドフィルムの回収溶媒に含まれる無機物や有機物とアルカリ金属が反応して、芳香族ポリアミドと相溶性の悪い異物を生じさせるためと考えられる。樹脂層のA/Cは、より好ましくは0.001以下であるが、アルカリ金属を殆ど含有していない、スルホン酸アンモニウムを親水成分とする水性樹脂などを用いることが特に好ましい。
【0024】
樹脂層を形成するための塗液成分は、樹脂層のS/CやA/Cが本願規定の範囲内となるように適宜調整すればよい。具体的には、前者(S/C)については、主にスルホン酸基を有する化合物の成分量に依存するため、この添加量を調整すればよい。また、後者(A/C)については上記スルホン酸基の塩に由来するナトリウムやカリウム、リチウム元素の量に主に依存するため、これら元素を含む化合物の添加量や種類を調整することにより実現可能となる。もちろん、S/CやA/Cを制御するには、上記したスルホン酸基量やその塩の添加量だけでなく、硫黄元素やアルカリ金属元素を含む化合物の添加量にも注意して塗液を調整することが重要である。
【0025】
上記水性樹脂の耐熱性については、粒子とフィルムとの密着性を向上させ、リサイクルフィルムの異物を低減する上で、300℃の熱減量が7重量%以下であることが好ましい。本発明の300℃の熱減量とは、熱重量測定装置を用いて、窒素雰囲気中、昇温速度10℃/分の条件下で水性樹脂の熱減量を測定し、下記式(3)により求めた値であり、この値が低いほど耐熱性に優れている。ここで、120℃での重量を基準としている理由は、水性樹脂の吸湿による重量変化の影響を除くためである。
【0026】
300℃の熱減量(重量%)=((120℃での重量−300℃での重量)/120℃での重量)×100 ・・・(3)
上記300℃の熱減量が7重量%を超えると、水性樹脂が熱分解し易く、水性樹脂と粒子との密着性が悪くなり、磁気テープとしたときの耐久性が低下することがあり、またリサイクルフィルムに生じる異物が増加することがある。更に、熱分解した水性樹脂が製膜中の熱処理工程を汚したり、熱処理工程に堆積した水性樹脂の熱分解物がフィルム表面に付着して粗大突起を生じさせ、磁気テープとしたときにデータを欠落させるなどの問題を引き起こすことがある。水性樹脂の300℃の熱減量は、より好ましくは6重量%以下、更に好ましくは5重量%以下である。
【0027】
上記水性樹脂から形成される樹脂層の厚みは、粒子の平均粒径や用途などにより適切に設計されるものであるが、粒子の平均粒径に対して20〜80%の範囲内が好ましい。樹脂層の厚みが粒子の平均粒径に対して20%未満の場合には、粒子と水性樹脂との接触面積が小さいため密着性が不足して粒子が脱落し易くなり、磁気テープとしたときの耐久性が低下することがある。また、樹脂層の厚みが粒子の平均粒径に対して80%を超えると、水性樹脂と粒子との密着性は向上するが、粒子による滑り性が悪化し、フィルムの巻き姿が悪くなったり、磁気テープとしたときの走行性が悪化することがある。樹脂層の厚みは、粒子の平均粒径に対して30〜70%の範囲内がより好ましく、40〜60%の範囲内が更に好ましい。
【0028】
本発明において、突起を形成させる粒子は特に限定されないが、突起の分散性の点では、シリコーン粒子、ポリイミド粒子、テフロン(登録商標)粒子、架橋共重合体粒子、架橋ポリエステル粒子、架橋ポリスチレン粒子、コアシェル粒子などの有機高分子粒子を用いることが好ましく、更に樹脂薄膜層との密着性を向上させる点では、架橋ポリエステル粒子、架橋ポリスチレン粒子、コアシェル粒子を用いることが更に好ましい。ここでコアシェル粒子とは、内部(以下、コア部という)と外部(以下、シェル部という)とが性質の異なるポリマーで構成される、多層構造を有するポリマー微粒子をいい、コア部よりもシェル部の方がより軟質であるような粒子が好ましい。ここで多層構造とは2層構造以上を意味し、性質が微粒子の直径方向に連続的に変化しているものでもよい。また、シェル部は、フィルム表面に塗布などにより配設された後、熱処理を行うことにより上記水性樹脂と反応したり、溶融、軟化、変形して水性樹脂やベースフィルムとの親和性を高め、コアシェル粒子とベースフィルムとの密着性を強固なものとする機能を有し、コア部は、シェル部とともにフィルムに適度の滑り性と磁気ヘッドなどとの最適なスペーシングを与える機能を有する。このような機能を付与するためには、シェル部には水性樹脂やベースフィルムとの親和性、密着性に優れ、かつ製膜熱処理温度での適切な物理的、化学的、熱的特性を有していることが好ましく、コア部には圧力、摩擦などによって変形しない、シェル部やベースフィルムに対して高い硬度を有していることが好ましい。
【0029】
上記機能を実現するためのコアシェル粒子のポリマー組成として、シェル部については熱可塑性樹脂が好ましく、特にアクリル系樹脂が好ましい。コア部については、上記熱可塑性樹脂の他にフェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂を用いることができるが、特にジビニルベンゼン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、あるいは硬度を高めるためにこれらの樹脂の同種または異種同士の共重合体が好ましい。もちろん、シェル部、コア部ともに上記機能を有するならば特にこれらに限定されるものではない。
【0030】
更にシェル部については、水性樹脂との親和性を高めることを目的に、ポリマー中に任意の割合で水性樹脂やベースフィルムとの反応性もしくは親和性を有する官能基、具体的にはカルボキシル基、アミド基、アミノ基、エポキシ基などを導入してもよい。これらの官能基は単独、場合によっては2種以上併用してもよい。
【0031】
上記コアシェル粒子は、例えば昭和53年1月30日高分子刊行会発行の「合成樹脂エマルジョン」第26〜27頁等に示されている乳化重合法で得られるが、特にこれに限定されるものではない。乳化重合法の例を挙げると、まず水系溶媒にコア部を形成するモノマー、乳化剤および重合開始剤を添加して第1段階の乳化重合を行い、第1段階の重合が終了した後、シェル部を形成するモノマーと重合開始剤とを添加して第2段階の乳化重合を行う。更にモノマー組成を変えて第3段階の乳化重合、あるいはそれ以上の重合を行って多層構造を有する粒子としてもよい。
【0032】
上記粒子の平均粒径は10〜100nmであることが必要である。平均粒径が10nm未満の場合には、粒子同士が凝集して粗大突起となり磁気テープの出力が低下したり、ドロップアウトが多くなり、逆に大きすぎる場合にも同様の問題が生じる。粒子の平均粒径は、より好ましくは15〜80nm、更に好ましくは20〜50nmである。
【0033】
粒子を塗液に含有させてフィルムに塗布する場合、塗液に対する添加量は、塗布厚み、用途などによって適切に設計されるべきであるが、塗液に対して0.001〜0.1重量%の範囲内が好ましい。粒子の添加量が0.001重量%未満の場合には、走行性が悪化してフィルムの巻き姿が悪化し易く、0.1重量%を超える場合には、塗液中あるいは塗液を乾燥する工程で粒子同士が凝集体を形成する可能性がある。粒子の添加量は、塗液に対して0.002〜0.9重量%の範囲内がより好ましく、0.003〜0.8重量%の範囲内が更に好ましい。
【0034】
また本発明の芳香族ポリアミドフィルムの用途によっては、平均粒径の異なる複数種の粒子を併用してもよい。
【0035】
上記塗液には界面活性剤を含有させてもよく、具体的には、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、フッ素系界面活性剤、反応性界面活性剤などが挙げられるが、耐薬品性、耐熱性、界面活性に優れるフッ素系界面活性剤が好ましい。このような界面活性剤は、塗液中の粒子の分散状態を良好にし、フィルムに対する濡れ性などを改良する効果が期待できる。界面活性剤の添加量は、塗液の組成によって任意の割合で添加されるものであるが、塗液に対して0.01〜3重量%であることが好ましい。界面活性剤の添加量が3重量%を超えると、期待したほどの界面活性効果が得られず不経済であり、リサイクルフィルムに異物を生じさせる懸念がある。また、界面活性剤の添加量が0.01重量%未満であると界面活性効果が低く、フィルム表面に塗布したときに、はじきや塗布斑が生じて突起個数斑が悪化することがある。界面活性剤の添加量は、塗液に対して0.05〜2重量%であることがより好ましく、0.1〜1重量%であることが更に好ましい。
【0036】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムの突起が形成される側の面(以下、突起形成面という)は、芳香族ポリアミドフィルムの少なくとも片面に、上記水性樹脂、粒子および界面活性剤を含有する水系塗液を塗布した後、乾燥後あるいは乾燥させながら延伸および/または熱処理を行うことで形成することができる。
【0037】
また、本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、上記突起形成面に樹脂層と平均径が10〜100nmの突起とが形成され、かつ、この突起の存在密度が1×106〜1×108個/mm2である。突起の存在密度が1×106個/mm2未満の場合にはベースフィルムの走行性が不良となりフィルムの巻き姿が悪化し、また、1×108個/mm2を超える場合には磁気テープの出力が低下する。突起は、より好ましくは2×106〜7×107個/mm2であり、更に好ましくは2×106〜5×107個/mm2である。また、突起の平均径が10nmを下回ると磁気テープの走行性が不良となり、100nmを超えると磁気テープの出力が低下する。上記範囲内にある突起を形成するためには、平均粒径が10〜100nmの範囲内にある粒子を用いるとよい。
【0038】
また、本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、上記突起形成面の径5μm以上の突起が100個/cm2以下である必要がある。ここで径5μm以上の突起(以下、粗大突起という)とは、顕微鏡で観察したときの最大径が5μm以上の突起である。なお観察方法の詳細は後述する。突起形成面における粗大突起が100個/cm2を越える場合、突起形成面に磁性層を配設して磁気テープとしたときにドロップアウトが多発する。突起形成面における粗大突起は、80個/cm2以下がより好ましく、50個/cm2以下が更に好ましい。
【0039】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムにおいて、突起形成面の原子間力顕微鏡(AFM)で測定した走査範囲30μm角での10点平均粗さRzが10〜100nmであると、磁気記録媒体としたときの出力に優れるため、高出力が要求されるデータストレージ用途に最適に用いることができるので特に好ましい。このような用途における突起形成面の10点平均粗さRzは、15〜80nmであることがより好ましく、20〜50nmであると更に好ましい。
【0040】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、製膜が容易である点から単層フィルムであることが好ましいが、磁気テープとしたときの出力やドロップアウト、走行性を優れたレベルで達成するためには、共押出による積層フィルムとすることが一層好ましい。積層フィルムとするときは、少なくとも一方の最表層を本発明の突起形成面とすればよい。したがって、最表層のうちの片側層は本発明のフィルム要件を満たすが、他の片側層は本発明のフィルム要件を満たさなくてもよい。
【0041】
ただし、2層の積層フィルムにおいて、磁性層を形成しない側の層(以下、B層という)に、走行性を付与することを目的として、芳香族ポリアミド中に無機粒子および/または有機粒子を含有せしめる方法や、芳香族ポリアミド中に異種ポリマー(例えばポリエーテルスルホンなど)を混合し、混合ポリマー溶液の乾燥時に異種ポリマーを相分離させる方法などにより微細突起を形成させる場合、あるいはリサイクルポリマーをB層に用いる場合には、本発明の突起形成面に悪影響を及ぼさないように注意することを要する。すなわち、B層内において、無機粒子、有機粒子および/または異種ポリマーに起因する凝集物や、リサイクルポリマーに異物が生じると、突起形成面にも悪影響を及ぼし、磁気テープとしたときにドロップアウトが生じ易くなることがあるためである。
【0042】
B層内における凝集物の生成を抑制するためには、B層に配合する無機粒子、有機粒子および/または異種ポリマーの平均粒径や含有量を適切に設計すること、突起形成面側の積層厚みを厚くすることが好ましい。例えば、B層に配合する無機粒子、有機粒子および/または異種ポリマーの平均粒径は1〜300nmであることが好ましく、5〜200nmであると更に好ましい。この平均粒径が1nmを下回ると、粒子が凝集して粗大突起となり、突起形成面にも粗大突起を生じさせ、磁気テープの出力が低下したり、ドロップアウトが多くなることがあり、逆に300nmを超えても同様の問題が生じることがある。また、B層に配合する無機粒子、有機粒子および/または異種ポリマーの含有量は、芳香族ポリアミドに対して0.01〜3重量%であることが好ましく、0.02〜2重量%であると更に好ましい。この含有量が0.01重量%を下回る場合には、磁気テープの走行性が不良となってフィルムの巻き姿が悪化したり、3重量%を超える場合には粒子が凝集して粗大突起となり、突起形成面にも粗大突起を生じさせ、磁気テープの出力が低下したり、ドロップアウトが多くなることがある。また、更に磁気テープの出力、走行性、無欠点性を極めて優れたレベルとするためには、B層による悪影響を低減する上で、突起形成面側の積層厚みを2.5μm以上とすることが好ましく、3μm以上とすることが更に好ましい。
【0043】
B層に配合する粒子の種類としては、SiO2、TiO2、Al2O3、CaSO4、BaSO4、CaCO3、カーボンブラック、ゼオライト、その他の金属微粉末などの無機粒子、シリコーン粒子、ポリイミド粒子、テフロン(登録商標)粒子、架橋共重合体粒子、架橋ポリエステル粒子、架橋ポリスチレン粒子、コアシェル粒子などが挙げられ、これら粒子のいずれを用いても、あるいは複数種を併用してもよい。
【0044】
また、突起形成面側の芳香族ポリアミド中には、本発明の目的を阻害しない範囲で、易滑性を付与するための上記無機粒子、有機粒子および/または異種ポリマーなどが含まれていてもよいが、これらは含まれていないことが好ましい。
【0045】
また、B層に本発明の樹脂層を設けて走行性を付与してもよい。
【0046】
更に、本発明の芳香族ポリアミドフィルムは少なくとも一方向のヤング率が8GPa以上であることが好ましい。磁気テープの出力は、テープとヘッドとのヘッドタッチ性の向上に伴って上がるため、ベースフィルムには高ヤング率を有することが求められる。記録方法が固定ヘッド式の場合には長手方向のヤング率が、また、ヘリカルスキャン方式の場合には幅方向のヤング率が特に重要であるため、ベースフィルムのいずれの方向においてもヤング率が8GPa未満であると、いずれの記録方式を採用しても高出力が得られないことがある。なお、上記ヤング率は9GPa以上がより好ましく、10GPa以上が更に好ましい。また、全ての方向のヤング率が8GPa以上であることが特に好ましい。これらの特性を満たすためには、上記したように、本発明に用いる芳香族ポリアミドの芳香環がパラ配向性を有しているものが、全芳香環の70モル%以上、より好ましくは80モル%以上をしめていることが好ましい。
【0047】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムの伸度は10%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは30%以上であることが、テープが適度な柔軟性を持つために好ましい。
【0048】
更に吸湿率は、5%以下、より好ましくは3%以下、更に好ましくは2%以下であることが、湿度変化による磁気テープの寸法変化が小さく良好な出力を保つために好ましい。
【0049】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムの200℃、10分間での熱収縮率は0.5%以下、より好ましくは0.3%以下であることが、温度変化による磁気テープの寸法変化が小さく良好な出力を保つために好ましい。
【0050】
これらの特性は、単層フィルム、積層フィルムを問わず満足することが好ましい。
【0051】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、フレキシブルプリント基板、コンデンサー、プリンタリボン、音響振動板、太陽電池のベースフィルムなどの種々の用途にも好ましく用いられるが、表面性、耐熱性、剛性などに優れるという特性を活かして、磁気記録媒体のベースフィルムとして特に好ましく用いられる。
【0052】
次に本発明の磁気記録媒体について説明する。
【0053】
本発明の磁気記録媒体は、上記芳香族ポリアミドフィルムの突起形成面に磁性層を配設したものである。このとき、磁性層の厚みは300nm以下であることが好ましい。
【0054】
磁性層を形成する強磁性材料としては、Fe、Co、Niなどの強磁性金属や、Fe−Co、Co−Ni、Fe−Co−Ni、Fe−Cu、Co−Cu、Co−Au、Co−Pt、Mn−Al、Fe−Cr、Co−Cr、Ni−Cr、Fe−Co−Cr、Co−Ni−Cr、Fe−Co−Ni−Crなどの強磁性合金などが挙げられる。
【0055】
磁性層は単層膜であっても、多層膜であってもよく、また磁性層を形成した後、磁気記録媒体の耐久性や耐候性を高める目的で、磁性層表面にスパッタリング法などによるDLC(ダイヤモンドライクコーティング)膜を設けてもよく、更に潤滑剤を存在させて走行性を高めてもよい。更に、易滑性と耐久性を向上させるために、磁性層と反対側のフィルム面にバックコート層を設けてもよい。
【0056】
磁気記録媒体の形態は、ディスク状、カード状、テープ状など特に限定されないが、ベースフィルムの厚みが10μm以下、幅が2.3〜13mm、長さが60m/巻以上、記録密度(非圧縮時)が5キロバイト/mm2以上の高記録密度磁気テープなどの磁気記録媒体としたとき、均一性に優れた表面特性と、高い剛性とを有するという本発明のフィルムの特性をより一層活かすことができるので特に好ましい。なお、ここでいう記録密度は下記式(4)により算出される値である。
【0057】
記録密度=記録容量/(テープ幅×テープ長さ) ・・・(4)
磁気テープに代表される磁気記録媒体には近年ますます低価格化、高容量化の要請が高くなってきているが、高容量化を実施する上でのポイントには以下のものがある。一つは、ベースフィルムの厚みを薄くして長尺化により全体としての記録容量を向上させる方法であり、今一つは、トラック幅の狭幅化、記録波長の短波長化などにより単位面積当たりの記録密度を高める方法であり、一般的にはこれらを併用する方向で高容量化が図られている。このように、トラック幅の狭幅化や記録波長の短波長化などにより高記録密度化が進むと、ベースフィルム表面は無欠点であることが望まれている。一方、低価格化のためには、ベースフィルム製膜工程において、濾過フィルターの交換頻度を減らして生産性の改善を図ったり、製膜工程で発生した屑フィルムを再利用して製品コストを下げることなどが重要であり、表面性、無欠点性に優れ、再利用しても異物の発生が少ない本発明の芳香族ポリアミドフィルムは極めて有効である。
【0058】
以上のように本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、こうした高容量化、低価格化の要請に対し好適に応えることのできる磁気テープとすることができる。
【0059】
なおベースフィルムの厚みは好ましくは、7μm以下、更に好ましくは5μm以下であり、磁気記録媒体としての記録密度は好ましくは8キロバイト/mm2以上、更に好ましくは25キロバイト/mm2以上である。
【0060】
本発明の磁気記録媒体は、民生用、プロ用、D−1、D−2、D−3などの放送局用デジタルビデオカセット用途、DDS−2,3,4、データ8mm、AIT、DLT、LTOなどのデータストレージ用途に好適に用いることができるが、特に、高容量で信頼性が最も重視されるデータストレージ用途に最適に用いることができる。
【0061】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、例えば、次のような方法で製造できるが、これに限定されるものではない。
【0062】
まず芳香族ポリアミドを芳香族ジ酸クロリドと芳香族ジアミンから得る場合には、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性有機極性溶媒中での溶液重合により合成する。このとき、低分子量物の生成を抑制するため、反応を阻害するような水、その他の物質の混入は避けるべきであり、効率的な攪拌手段をとることが好ましい。また、原料の当量性は重要であるが、製膜性を損なう恐れのあるときは適当に調整することができる。また、溶解助剤として塩化カルシウム、塩化リチウム、臭化リチウム、硝酸リチウムなどを添加してもよい。
【0063】
モノマーとして芳香族ジ酸クロリドと芳香族ジアミンを用いると塩化水素が副生するが、これを中和する場合には周期律表I族かII族のカチオンと水酸化物イオン、炭酸イオンなどのアニオンとからなる塩に代表される無機の中和剤、またエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどの有機の中和剤を使用すればよい。
【0064】
また、フィルムの湿度特性を改善する目的で、塩化ベンゾイル、無水フタル酸、酢酸クロリド、アニリンなどを重合の完了した系に添加し、ポリマーの末端を封鎖してもよい。
【0065】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムを得るためには、ポリマーの固有粘度(ポリマー0.5gを硫酸中で100mlの溶液として30℃で測定した値)は、0.5以上であることが好ましい。
【0066】
製膜原液としては、中和後のポリマー溶液をそのまま用いてもよいし、一旦単離したポリマーを硫酸などからなる無機溶媒や有機溶媒に再溶解したものを用いてもよい。
【0067】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムを得るためには、重合ポリマーを製膜工程の口金から押し出す前にポリマー内の異物を除去しておくことが好ましい。
【0068】
ポリマー溶液をそのまま用いる場合には、非プロトン性有機極性溶媒は、あらかじめ蒸留や濾過などの精製操作を行った後に重合溶媒としてポリマー重合に用いることが好ましく、モノマーである芳香族ジアミンや芳香族ジ酸クロリドも、各々をそのまま、または一旦重合溶媒に溶解させた後に濾過操作を行って、ポリマー重合に用いることが好ましい。
【0069】
このような濾過には、例えば、ポリプロピレン、ステンレスやフッ素樹脂などで構成されたフィルターを用いることができ、また濾過精度は、3μm以下が好ましく、より好ましくは2μm以下、更に好ましくは1μm以下である。上記した通り、濾過精度は小さい方が好ましい方向ではあるが、あまりに小さ過ぎるとフィルターの目詰まりが早くなり溶媒の移送が速やかに行えなくなるため、その下限は0.1μm程度が適切である。
【0070】
また、ポリマー重合中、重合槽内へのコンタミネーションの混入を避けるために、重合槽内のポリマー溶液に対して、例えば濾過精度0.3μmの除塵フィルターで濾過された不活性なガスを流し込み、重合槽内の圧力を大気圧より高くする方法も有効である。
【0071】
また、モノマーに芳香族ジ酸クロリドや芳香族ジアミンを用いたときに副生する塩化水素を中和する場合には、精製操作を行った無機および/または有機の中和剤を用いることが好ましい。
【0072】
このとき中和剤として無機の炭酸塩を用いる場合には、塩化水素と炭酸塩のモル比に対しても注意することを要する。すなわち、塩化水素のモル濃度に対して過剰の炭酸塩で中和を行った場合には、過剰分の炭酸塩がポリマー内に残存し、残存した炭酸塩がコンタミネーションとなることがあり、逆に少な過ぎると塩化水素の中和が不充分で製膜装置を腐食させ易い。また、塩化水素のモル濃度に対して等当量モル濃度の炭酸塩で中和を行った場合には、中和反応が完了するまでに長時間を要し、あまり長時間の中和を行っても期待したほどの効果が得られず、逆に生産性が悪くなるので好ましくない。炭酸塩などによる塩化水素の中和は、それぞれ適切に決めるべきであるが、塩化水素に対して93〜99モル%、特に94〜98.5モル%の中和剤で中和することが好ましく、また、中和時間は2時間以上が、特に3時間以上が好ましく、上限は10時間程度が適切である。更に残存する塩化水素を中和する場合には、有機の中和剤を用いることが好ましい。
【0073】
また、一旦単離した重合ポリマーを再び硫酸などからなる無機溶媒や有機溶媒に溶解せしめる場合においても、その溶媒について同様の濾過操作が行われていることが好ましい。
【0074】
また上記したように、本発明の目的を阻害しない範囲で、芳香族ポリアミドフィルムに、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、核生成剤などの無機および/または有機の添加剤を重合ポリマーにブレンドさせてもよい。
【0075】
また、ポリマー溶液中のポリマー濃度は2〜40重量%であることが好ましい。これは、ポリマー濃度が2重量%を下回る場合、生産性が悪く、十分な剛性を有するフィルムが得られ難くなるなどの問題が生じ易く、逆にポリマー濃度が40重量%を超える場合、ポリマー溶液の粘度が高くなり重合および製膜工程でのハンドリング性が悪化するなどの問題が生じ易いためである。
【0076】
上記のように調製されたポリマー溶液は、コンタミネーションを除去する上で、製膜工程の口金から押し出す直前に再び濾過を行うことが好ましい。このポリマー溶液の濾過には、溶媒が硫酸などからなる無機溶媒や有機溶媒であることから耐蝕性に優れた素材からなるフィルターを用いることが好ましく、このようなフィルターとしては、例えば、ニッケル、チタン、ジルコニウム、タンタル、鉛の単体、およびそれら単体を主成分とする“インコネル”、“モネル”(International Nickel Co.社の商標名)、“ハステロイ”(Haynes Stellite Co.社の商標名)などの合金、不動体化された鉄あるいはステンレスなどの金属からなる素材や、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、テフロン(登録商標)樹脂、活性炭、ガラスなどの非金属からなる素材からなるフィルター、あるいは上記素材の2種類以上を組み合わせてなるフィルターが挙げられる。
【0077】
このポリマー溶液の濾過精度は、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下、更に好ましくは1μm以下である。上記したように、ポリマー溶液の濾過は、濾過精度を小さくすることが好ましい方向であるが、あまり小さすぎるとフィルターの目詰まりを生じさせたり、濾圧が高くなってフィルターが破損したりするため、その下限は0.1μm程度が適切である。
【0078】
上記のように調製されたポリマー溶液の製膜方法としては、乾湿式法、湿式法、半乾半湿式法の溶液製膜法が挙げられ、いずれの製膜方法でフィルム化してもよいが、表面形態を制御しやすい点で乾湿式法が好ましく、以下、乾湿式法を例にとって説明する。
【0079】
上記ポリマー溶液を口金からドラムやエンドレスベルトなどの支持体上に押し出して薄膜とし、次いでかかる薄膜層から溶媒を飛散させ薄膜を乾燥する。
【0080】
このとき、脱溶媒速度は、10〜30重量%/分で乾燥することが好ましい。脱溶媒速度が10重量%/分未満では生産性が悪く、また、脱溶媒速度が30重量%/分を超えると急激な溶媒蒸発でフィルム表面が粗れることがある。乾燥温度は100〜210℃であることが好ましく、120〜180℃であるとより好ましい。また、乾燥時間は、2〜10分が好ましく、3〜8分がより好ましい。
【0081】
次いで、乾式工程を終えたフィルムは支持体から剥離されて、湿式工程に導入され、脱塩、脱溶媒などが行なわれる。この湿式工程を通さずに剥離したゲルフィルムをそのまま延伸および熱処理するとポリマー内の塩が析出し、後の塗布工程で塗布斑が生じたり、粗大突起が多くなることがある。湿式工程の溶媒は一般的に水系であるが、水の他に少量の無機、有機の溶剤や無機塩などを含有していてもよい。なお溶媒温度は通常0〜100℃で使用される。更に必要に応じて、湿式工程中でフィルムを長手方向に延伸してもよい。
【0082】
ここで、フィルムの少なくとも一面に、水性樹脂、粒子および界面活性剤を含有する水系塗液を塗布する工程については、フィルムの表面性や生産性などの観点から、上記湿式工程と熱処理工程との間で塗布することが好ましい。例えば、上記ポリマー溶液を口金からキャストした後や支持体から剥離した後に水系塗液を塗布した場合には、フィルム表面が粗れ易く、熱処理後も粒子の密着性が低下することがあり、また製膜後に塗布する場合には、再び塗液を乾燥、熱処理する工程が必要となるため経済的ではない。
【0083】
上記湿式工程を終えたフィルムに水系塗液を塗布する場合には、含溶媒率が100%以下のフィルムに塗布することが好ましい。ここで含溶媒率とは下記式(5)により算出される値である。
【0084】
含溶媒率(%)=((含溶媒フィルムの重量−乾燥後のフィルム重量)/含溶媒フィルムの重量)×100 ・・・(5)
本発明の樹脂層を形成するために用いる水系塗液中には、上記界面活性剤が含まれている場合、良好な塗れ性を有することとなるが、含溶媒率が100%を越える場合には樹脂層に厚みムラが生じて均一な樹脂層が得られないことことがある。このようなフィルムの含溶媒率とする方法は特に限定されないが、例えば、吸水性で多孔表面を有するロールとフィルムを接触させて含溶媒率を制御する方法が好ましい。含溶媒率は90%以下がより好ましく、80%以下が更に好ましい。
【0085】
樹脂層を形成するための塗液成分は、樹脂層のS/CやA/Cが本願規定の範囲内となるように適宜調整する。具体的には、前者(S/C)については、主にスルホン酸基を有する化合物の成分量に依存するため、この添加量を調整すればよい。また、後者(A/C)については上記スルホン酸基の塩に由来するナトリウムやカリウム、リチウム元素の量に主に依存するため、これら元素を含む化合物の添加量や種類を調整することにより実現可能となる。もちろん、S/CやA/Cを制御するには、上記したスルホン酸基量やその塩の添加量だけでなく、硫黄元素やアルカリ金属元素を含む化合物の添加量にも注意して塗液を調整することが重要である。
【0086】
塗布方法としては、メタリングバー方式、ダイコート方式、グラビア方式、リバースロール方式、ドクターブレード方式などいずれの塗布方式であってもよい。
【0087】
上記塗布方式によって塗布された塗液は、乾燥後あるいは乾燥させながら延伸および/または熱処理が行われる。ここで塗液の乾燥温度は100〜400℃の範囲が好ましい。乾燥温度が低すぎると塗液の乾燥に長時間を要し生産性が悪くなり、逆に乾燥温度が高すぎると水性樹脂が熱分解したり、急激な温度変化により塗液中の粒子同士が凝集する懸念がある。塗液の乾燥温度の下限は100℃が適切であり、乾燥温度の上限はより好ましくは350℃以下であり、更に好ましくは300℃以下である。
【0088】
この後、延伸、熱処理が行なわれてフィルムとなる。
【0089】
延伸温度は200〜400℃の温度範囲内で行うことがフィルムの機械特性向上に有効であり、より好ましくは220〜350℃、更に好ましくは240〜300℃であり、幅方向の延伸倍率は0.9〜3倍の範囲内とすることが好ましい。幅方向の延伸倍率が0.9倍未満の場合には、製膜の安定性は向上するものの優れた機械物性のフィルムが得られ難い。また幅方向の延伸倍率が3倍を超える場合には、フィルム破れが多発するなど製膜が不安定となり、突起形成面の樹脂層が不連続構造や海島ムラとなって、樹脂層の均一性が悪くなる懸念がある。幅方向の延伸倍率はより好ましくは1.2〜2.5倍の範囲内である。なお延伸倍率とは、延伸後のフィルム幅を延伸前のフィルム幅で除した値で定義する。
【0090】
また、フィルムの延伸中あるいは延伸後に熱処理が行なわれるが、熱処理温度は200〜300℃の範囲内にあることがフィルムの寸法安定性を向上させる点で好ましい。
【0091】
更に延伸あるいは熱処理後のフィルムを徐冷することが、フィルムの平面性を向上させるために有効であり、50℃/秒以下の速度で冷却することが有効である。
【0092】
上記したように、本発明の芳香族ポリアミドフィルムは単層フィルムでも、積層フィルムでもよく、積層フィルムとする場合には、例えば、口金内での積層、複合管での積層や、一旦1層を形成しておいてその上に他の層を形成する方法などを用いればよいが、少なくとも一方の最表層を本発明の突起形成面とすることが必要である。
【0093】
上記した方法により、本発明の突起形成面を有する芳香族ポリアミドフィルムを製造することができる。
【0094】
また本発明の磁気記録媒体は、上記方法で得られた芳香族ポリアミドフィルムの突起形成面に磁性層を形成することにより得られるもので、磁性層を形成する方法は特に限定されないが、例えば、真空下で強磁性材料を加熱蒸発させて非磁性支持体上に堆積させる真空蒸着法、強磁性材料の蒸発を放電中で行うイオンプレーティング法、アルゴンを主成分とする雰囲気中でグロー放電を起こして生じたアルゴンイオンでターゲット表面の原子を叩き出すスパッタリング法などの真空中での物理的成膜法(PVD法:Physical Vapor Deposition)などが好ましく用いられる。
【0095】
なお本発明における物性の測定、効果の評価は次の方法によるものとする。
【0096】
(1)樹脂層の表面硫黄濃度S/C
英国ThermoVGScientific社製のESCALAB220IXLを用いて、突起形成面の樹脂層を次の条件で測定した。
【0097】
光電子脱出角度:35°
X線源:AlKα1,2
試料チャンバー内真空度:1.333×10−6Pa(1×10−8Torr)
次に、測定時の帯電に伴うピークの補正のため、C1Sの主ピークの結合エネルギー値B.Eを284.6eVに合わせた。
【0098】
次いで、C1Sのピーク面積[C1S]は、282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、S2Pのピーク面積[S2P]は、165〜178eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。
【0099】
表面硫黄濃度S/Cは、上記S1Pのピーク面積[S2P]と、C1Sのピーク面積[C1S]の比、および装置固有の感度補正値より、次式により求めた。
【0100】
S/C=([S2P]/[C1S])/(感度補正値)
なお、ここでは、前記装置固有の感度補正値を1.87とした。
(2)樹脂層の表面アルカリ金属濃度A/C
上記(1)と同じ英国ThermoVGScientific社製のESCALAB220IXLを用いて、突起形成面の樹脂層を次の条件で測定した。
【0101】
光電子脱出角度:35°
X線源:AlKα1,2
試料チャンバー内真空度:1.333×10−6Pa(1×10−8Torr)
次に、測定時の帯電に伴うピークの補正のため、C1Sの主ピークの結合エネルギー値B.Eを284.6eVに合わせた。
【0102】
次いで、C1Sのピーク面積[C1S]は282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、Li1Sのピーク面積[Li1S]は52〜60eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、Na1Sのピーク面積[Na1S]は1067〜1076eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、K2Pのピーク面積[K2P]は290〜301eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。
【0103】
次いで各アルカリ金属元素と炭素の比ALi/C、ANa/C、AK/Cは、上記Li1Sのピーク面積[Li1S]、Na1Sのピーク面積[Na1S]、K2Pのピーク面積[K2P]、およびC1Sのピーク面積[C1S]と、装置固有の感度補正値より、次式から求めた。
【0104】
ALi/C=([Li1S]/[C1S])/0.07
ANa/C=([Na1S]/[C1S])/6.52
AK /C=([K 2P]/[C1S])/3.97
次いで表面アルカリ金属濃度A/Cは、上記ALi/C、ANa/C、AK/Cより、次式から求めた。
【0105】
A/C=(ALi/C)+(ANa/C)+(AK/C)
(3)粒子の平均粒径
動的光散乱法の粒度分析計MICROTRAC UPA MODEL;9230(Leeds&Northrup社製)を用いて測定を行い粒子の平均粒子径とした。
【0106】
(4)突起の平均径
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて突起形成面を以下の条件で観察し、観察像の粒子20個について最長径を求め、その平均値をnmに換算して突起の平均径とした。なお平均径に対して5倍以上の径を有する突起が観察像に存在するような場合には、コンタミあるいは水性樹脂の凝集物など粒子以外のものとみなし、これらは測定から除外した。
【0107】
装置:超高分解能電解放射型走査電子顕微鏡(日立(株)製S−900H)
加速電圧:2kV
蒸着金属:Ag
観察手法:シャドー法(傾斜角度5°)
観察倍率:5万倍以上
(5)突起密度
原子間力顕微鏡(AFM)を用いて突起形成面を以下の条件で測定し、高さ5nm以上の突起数を求め、個/mm2に換算して突起密度とした。なお測定は1サンプルにつき10回の測定を行い、測定によるばらつきの影響を排除するために最大と最小のものを除外したものを測定値として、その平均値を求めた。また測定範囲内に径5μm以上の突起の一部が存在するような場合には、測定回数から除外した。
【0108】
装置:NanoScopeIIIa ver3.2 AFM Jスキャナー使用(Digital Instruments社製)
探針:ナノセンサーズ社製SPMプローブNCH−W型、単結晶シリコン
走査モ−ド:タッピングモ−ド
サンプル数:256
走査範囲:5μm×5μm
走査速度:1.0Hz
測定環境:温度23℃、相対湿度65%、大気中
(6)走査範囲30μm角での10点平均粗さRz
原子間力顕微鏡(AFM)を用いて突起形成面を以下の条件で測定して、10点平均粗さRzを求めた。なお、測定は1サンプルにつき10回の測定を行い、測定によるバラツキの影響を排除するために最大と最小のものを除外したものを測定値として、その平均値を求めた。
【0109】
装置:NanoScopeIIIa ver3.2 AFM Jスキャナー使用(Digital Instruments社製)
探針:ナノセンサーズ社製SPMプローブNCH−W型、単結晶シリコン
走査モ−ド:タッピングモ−ド
サンプル数:256
走査範囲:30μm×30μm
走査速度:0.5Hz
測定環境:温度23℃、相対湿度65%、大気中
(7)300℃の熱減量
島津製作所(株)製の熱重量測定装置(TGA−50H)と解析装置サーマルアナライザー(TA−50)に、データ処理用のパーソナルコンピューターを組み合わせた装置を用いて測定を行った。120℃で12時間乾燥したサンプル約7mgを炉内にセットして、炉内を窒素雰囲気下とし、昇温速度10℃/分で室温から600℃まで加熱した。得られた熱重量曲線から下式により、300℃の熱減量を求めた。
【0110】
300℃の熱減量(重量%)=((120℃での重量−300℃での重量)/120℃での重量)×100
(8)樹脂層の厚み
フィルム小片をエポキシ樹脂で固定成形して、ミクロトームで超薄切片(フィルム長手方向に平行に切断)を作成した。この超薄切片を透過型電子顕微鏡(日立製H−7100FA型)を用いて加速電圧100kVで観察し、樹脂層の境界面を探して厚みを求めた。
【0111】
(9)引張りヤング率、破断伸度
オリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置“テンシロンAMF/RTA−100”を用いて、幅10mm、長さ150mmに切断したフィルムをチャック間距離50mmの装置にセットして、引張速度300mm/分、温度23℃、相対湿度65%の条件下で引張試験を行い、得られた荷重−伸び曲線の立ち上がり部の接線から引張りヤング率を求めた。またフィルム破断時の長さからチャック間距離を減じたものをチャック間距離で除したものに100を乗じて伸度とした。
【0112】
(10)径5μm以上の突起
芳香族ポリアミドフィルムの突起形成面に真空蒸着機でアルミ蒸着膜を形成し、蒸着フィルムの表面を倍率400倍の微分干渉顕微鏡で観察し、2.5cm2の範囲内に存在する径5μm以上の突起をカウントし、1cm2当たりの突起数に換算して求めた。
【0113】
(11)リサイクルフィルムの異物
水性樹脂を1重量%含有する水系塗液を、メタリングバーを用いて塗布厚みが6μmとなるように芳香族ポリアミドフィルム表面に塗布した。次いで、280℃の乾燥機で塗液を乾燥して、樹脂薄膜を有する芳香族ポリアミドフィルムを得た。このフィルムを以下の組成となるように溶媒へ溶かし、リサイクルポリマーを得た。
【0114】
・N−メチル−2−ピロリドン 85重量%
・塩化リチウム 3重量%
・トリエタノールアミン 2重量%
・フィルム 10重量%
次にアプリケーターを用いてリサイクルポリマーをガラス板上にキャストし、厚み50μmのキャストフィルムを得た。次いでキャストフィルムを120℃のオーブンで7分間乾燥した後、ゲルフィルムを金枠に固定して水槽に5分間浸した。次いで水槽から取り出した含水フィルムの水滴をクリーンエアーで取り除いた後、300℃のオーブンで1分間の乾燥および熱処理を行ってリサイクルフィルムを得た。
【0115】
次に真空蒸着機でアルミ蒸着されたリサイクルフィルムの表面を、倍率400倍の微分干渉顕微鏡で観察し、以下の基準で評価した。
【0116】
○:リサイクルフィルム表面に異物がまったくない。
【0117】
△:リサイクルフィルム表面にわずかに異物が見られる。
【0118】
×:リサイクルフィルム表面に異物が見られる。
【0119】
(12)フィルムの巻き姿
長さ3000m、幅500mmの磁性層を形成する前のフィルムを、巻き取り張力0.5〜1g/mmで巻き取ったフィルムの状態を以下の基準で評価した。
【0120】
◎:巻き取りフィルム表面にシワ、傷、凸凹がない。
【0121】
○:巻き取りフィルム表面のシワ、傷、凸凹が少ない。
【0122】
×:巻き取りフィルム表面のシワ、傷、凸凹が多い。
【0123】
(13)出力特性
突起形成面に連続斜め蒸着法で、厚さ170nmのCo−O磁性層を形成した。次いでスパッタ法により厚さ5nmのダイヤモンドライクコーティング膜を磁性層上に形成し、更にその上に、有機物防錆剤0.1重量%の溶液をグラビアロールを用いて塗布し、100℃の乾燥機で乾燥させた。その後に、潤滑剤としてパーフルオロポリエーテル誘導体からなる有機物を主体とした0.5重量%溶液をグラビアロールを用いて塗布し、100℃の乾燥機で乾燥させた。
【0124】
次に磁性層の反対面にカーボンを主体とし、結合剤として酢酸ビニル系樹脂を使用した厚み0.3μmのバックコート層を形成した。
【0125】
以上のようにして得られた磁気記録媒体を幅8mm、長さ250mにスリットして、カセットに組み込み磁気テープとした。
【0126】
市販のAIT−1ドライブを用いて、記録周波数7MHzの信号を記録して、その再生出力を測定し、そのS/N比の平均値を市販のHi8テープを基準(0dB)として比較した。なお△は実用可能レベルである。
【0127】
○:+1dB以上
△:−1dB以上、+1dB未満
×:−1dB未満
(14)ドロップアウト
上記(13)で得た磁気テープ再生時の、1μsec、−8dBのドロップアウト発生数をドロップアウトカウンター(大倉インダストリー(株)製)で測定し、1分間あたりの平均値(個/分)を求め、以下の基準で判断した。
【0128】
○:500(個/分)未満
△:500(個/分)以上1000(個/分)未満
×:1000(個/分以上)
【0129】
【実施例】
以下に実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものでない。なお、以下の実施例中、NMPはN−メチル−2−ピロリドン、CTPCは2−クロルテレフタル酸クロリド、CPAは2−クロルパラフェニレンジアミン、DPEは4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを表す。
(実施例1)
脱水したNMPに、85モル%に相当するCPAと15モル%に相当するDPEを溶解させ、この溶液を濾過精度1.0μmのポリプロピレンからなるフィルターに通して濾過した後、重合槽へ移送し、これに濾過精度1.0μmのポリプロピレンからなるフィルターに通した98.5モル%に相当するCTPCを添加して、30℃以下で2時間の撹拌を行い重合ポリマーを得た。
【0130】
次に、重合ポリマー中の塩化水素に対して98.5モル%の炭酸リチウムを添加して4時間の中和を行い、重合ポリマー中の塩化水素に対して10モル%のトリエタノールアミンを添加して1時間の撹拌を行い、ポリマー濃度10.8重量%の芳香族ポリアミド溶液Aを得た。
【0131】
また、脱水したNMPに、85モル%に相当するCPAと15モル%に相当するDPEを溶解させ、この溶液を濾過精度1.0μmのポリプロピレンからなるフィルターに通して濾過した後、重合槽へ移送し、これに濾過精度1.0μmのポリプロピレンからなるフィルターに通した98.5モル%に相当するCTPCを添加して、30℃以下で2時間の撹拌を行い重合ポリマーを得た。
【0132】
次に、重合ポリマー中の塩化水素に対して98.5モル%の炭酸リチウムを添加して4時間の中和を行い、平均1次粒径が16nmのシリカ(日本アエロジル株式会社製“AEROSIL”R972タイプ)をポリマーに対して1.0重量%添加して1時間の攪拌を行った後、重合ポリマー中の塩化水素に対して10モル%のトリエタノールアミンを添加して1時間の撹拌を行い、ポリマー濃度10.6重量%の芳香族ポリアミド溶液Bを得た。
【0133】
次に、芳香族ポリアミド溶液Aを濾過精度1.2μmのステンレスからなる金属繊維フィルターに通し、また、芳香族ポリアミド溶液Bを濾過精度2.0μmのステンレスからなる金属繊維フィルターに通した後に口金内部で積層した。この時の積層厚みは、最終フィルムにおける芳香族ポリアミド溶液Aの厚みが3μm、芳香族ポリアミド溶液Bの厚みが1μmとなるように積層した。次に、積層したポリマー溶液を表面が鏡面状のステンレス製ベルト上にキャストし、160℃で3分間加熱して溶媒を蒸発させ、自己保持性を得たフィルムをベルトから連続的に剥離した。この時のゲルフィルムのポリマー濃度は41重量%であり、脱溶媒速度は20重量%/分であった。
【0134】
次に、濾過精度1.0μmのポリプロピレンからなるフィルターで濾過された水を用いた水槽内に、ゲルフィルムを2分間通して残存溶媒や中和で生じた無機塩、有機アミンの水抽出を行い、更にこの間でフィルムを長手方向に1.2倍延伸して含溶媒フィルムを得た。
【0135】
次に含溶媒フィルム両面の水分を水切りロールで除去して、含溶媒率を34%にした。次いで、芳香族ポリアミド溶液A層(芳香族ポリアミド溶液Aにより成形される層)側に、あらかじめ調製した濾過精度1.0μmのポリプロピレンからなるフィルターで濾過された表1に示す塗液を、メタリングバー方式で塗布厚み6μmとなるように塗布した。 次いで、乾燥温度200℃の乾燥機で塗液を乾燥した。ここで粒子は、スチレン(30重量%)、ブチルアクリレート(30重量%)、ジビニルベンゼン(40重量%)の乳化重合で合成した平均粒径25nmの架橋ポリスチレン粒子を用いた。また水性樹脂には、テレフタル酸(42.5モル%)、5−スルホイソフタル酸アンモニウム(7.5モル%)、エチレングリコール(50モル%)の重縮合反応物である水性ポリエステル樹脂を用いた。この水性ポリエステル樹脂で形成された樹脂薄膜の表面硫黄濃度S/Cは0.015、表面アルカリ金属濃度A/Cは0.0001であり、樹脂の300℃の熱減量は4.0重量%であった。
【0136】
この後テンターで延伸と熱処理を行って厚み4.0μmの芳香族ポリアミドフィルムを得た。この間に280℃でフィルムを幅方向に1.4倍延伸し、200℃で1.5分間熱処理を行なった後、20℃/秒の速度で徐冷した。
【0137】
この芳香族ポリアミドフィルムの引張りヤング率は、長手方向で12,200N/mm2、幅方向で17,100N/mm2であり、また破断伸度は、長手方向で54%、幅方向で31%であった。
【0138】
この芳香族ポリアミド積層フィルムの突起形成面の表面特性を評価した結果を表2に示した。また、フィルム特性および、突起形成面に磁性層を形成し、磁気テープとして評価した結果を表3に示す。フィルムの巻き姿、リサイクルフィルムの異物、出力特性、ドロップアウトは良好であった。
(実施例2、3)
粒子の平均粒径、水性樹脂の添加量、および界面活性剤の添加量を表1のように変更する以外は実施例1と同様の方法で芳香族ポリアミド積層フィルムを得た。
【0139】
これら芳香族ポリアミド積層フィルムの突起形成面の表面特性を評価した結果を表2に示した。また、フィルム特性および、突起形成面に磁性層を形成し、磁気テープとして評価した結果を表3に示す。フィルムの巻き姿、リサイクルフィルムの異物、出力特性、ドロップアウトは良好であった。
(実施例4〜7)
粒子の添加量を表1のように変更する以外は実施例1と同様の方法で芳香族ポリアミド積層フィルムを得た。
【0140】
これら芳香族ポリアミド積層フィルムの突起形成面の表面特性を評価した結果を表2に示した。また、フィルム特性および、突起形成面に磁性層を形成し、磁気テープとして評価した結果を表3に示す。フィルムの巻き姿、リサイクルフィルムの異物、出力特性、ドロップアウトは良好であった。
(実施例8)
平均粒径25nmのコロイダルシリカ(触媒化成工業株式会社製“CATALOID”SI−50タイプ)を用いて、粒子の添加量を表1のように変更する以外は実施例1と同様の方法で芳香族ポリアミド積層フィルムを得た。
【0141】
この芳香族ポリアミド積層フィルムの突起形成面の表面特性を評価した結果を表2に示した。また、フィルム特性および、突起形成面に磁性層を形成し、磁気テープとして評価した結果を表3に示す。フィルムの巻き姿、リサイクルフィルムの異物、出力特性、ドロップアウトは良好であった。
(実施例9)
水性樹脂に、テレフタル酸(46モル%)、5−スルホイソフタル酸アンモニウム(4モル%)、エチレングリコール(50モル%)の重縮合反応物である水性ポリエステル樹脂を用いること以外は実施例1と同様の方法で芳香族ポリアミド積層フィルムを得た。なお、上記水性ポリエステル樹脂で形成された樹脂薄膜の表面硫黄濃度S/Cは0.008、表面アルカリ金属濃度A/Cは0.0001であり、樹脂の300℃の熱減量は2.1重量%であった。
【0142】
この芳香族ポリアミド積層フィルムの突起形成面の表面特性を評価した結果を表2に示した。また、フィルム特性および、突起形成面に磁性層を形成し、磁気テープとして評価した結果を表3に示す。フィルムの巻き姿、リサイクルフィルムの異物、出力特性、ドロップアウトは良好であった。
(実施例10)
水性樹脂に、テレフタル酸(40モル%)、5−スルホイソフタル酸アンモニウム(10モル%)、エチレングリコール(50モル%)の重縮合反応物である水性ポリエステル樹脂を用いること以外は実施例1と同様の方法で芳香族ポリアミド積層フィルムを得た。なお、上記水性ポリエステル樹脂で形成された樹脂薄膜の表面硫黄濃度S/Cは0.02、表面アルカリ金属濃度A/Cは0.0001であり、樹脂の300℃の熱減量は5.1重量%であった。
【0143】
この芳香族ポリアミド積層フィルムの突起形成面の表面特性を評価した結果を表2に示した。また、フィルム特性および、突起形成面に磁性層を形成し、磁気テープとして評価した結果を表3に示す。フィルムの巻き姿、リサイクルフィルムの異物、出力特性、ドロップアウトは良好であった。
(実施例11)
水性樹脂に、テレフタル酸(45モル%)、5−スルホイソフタル酸アンモニウム(4モル%)、5−スルホイソフタル酸ナトリウム(1モル%)、エチレングリコール(50モル%)の重縮合反応物である水性ポリエステル樹脂を用いること以外は実施例1と同様の方法で芳香族ポリアミド積層フィルムを得た。なお、上記水性ポリエステル樹脂で形成された樹脂薄膜の表面硫黄濃度S/Cは0.01、表面アルカリ金属濃度A/Cは0.002であり、樹脂の300℃の熱減量は2.5重量%であった。
【0144】
この芳香族ポリアミド積層フィルムの突起形成面の表面特性を評価した結果を表2に示した。また、フィルム特性および、突起形成面に磁性層を形成し、磁気テープとして評価した結果を表3に示す。フィルムの巻き姿、リサイクルフィルムの異物、出力特性、ドロップアウトは良好であった。
(比較例1)
水性樹脂に、テレフタル酸(42.5モル%)、5−スルホイソフタル酸ナトリウム(7.5モル%)、エチレングリコール(50モル%)の重縮合反応物である水性ポリエステル樹脂を用いること以外は実施例1と同様の方法で芳香族ポリアミド積層フィルムを得た。なお、上記水性ポリエステル樹脂で形成された樹脂薄膜の表面硫黄濃度S/Cは0.015、表面アルカリ金属濃度A/Cは0.015であり、樹脂の300℃の熱減量は0.7重量%であった。
【0145】
この芳香族ポリアミド積層フィルムの突起形成面の表面特性を評価した結果を表2に示した。また、フィルム特性および、突起形成面に磁性層を形成し、磁気テープとして評価した結果を表3に示す。フィルムの巻き姿、出力特性、ドロップアウトは良好であったが、リサイクルフィルムの異物が悪化した。
(比較例2)
水性樹脂に、テレフタル酸(37.5モル%)、5−スルホイソフタル酸ナトリウム(12.5モル%)、エチレングリコール(50モル%)の重縮合反応物である水性ポリエステル樹脂を用いること以外は実施例1と同様の方法で芳香族ポリアミド積層フィルムを得た。なお、上記水性ポリエステル樹脂で形成された樹脂薄膜の表面硫黄濃度S/Cは0.025、表面アルカリ金属濃度A/Cは0.025であり、樹脂の300℃の熱減量は2.8重量%であった。
【0146】
この芳香族ポリアミド積層フィルムの突起形成面の表面特性を評価した結果を表2に示した。また、フィルム特性および、突起形成面に磁性層を形成し、磁気テープとして評価した結果を表3に示す。フィルムの巻き姿、出力特性、ドロップアウトは良好であったが、リサイクルフィルムの異物が悪化した。
(比較例3)
水性樹脂に、テレフタル酸(37.5モル%)、5−スルホイソフタル酸アンモニウム(12.5モル%)、エチレングリコール(50モル%)の重縮合反応物である水性ポリエステル樹脂を用いること以外は実施例1と同様の方法で芳香族ポリアミド積層フィルムを得た。なお、上記水性ポリエステル樹脂で形成された樹脂薄膜の表面硫黄濃度S/Cは0.025、表面アルカリ金属濃度A/Cは0.0001であり、樹脂の300℃の熱減量は7.2重量%であった。
【0147】
この芳香族ポリアミド積層フィルムの突起形成面の表面特性を評価した結果を表2に示した。また、フィルム特性および、突起形成面に磁性層を形成し、磁気テープとして評価した結果を表3に示す。フィルムの巻き姿、出力特性、ドロップアウトは良好であったが、リサイクルフィルムの異物が悪化した。
(比較例4)
水性樹脂に、テレフタル酸(47.5モル%)、5−スルホイソフタル酸アンモニウム(2.5モル%)、エチレングリコール(50モル%)の重縮合反応物である水性ポリエステル樹脂を用いること以外は実施例1と同様の方法で芳香族ポリアミド積層フィルムを得た。ただし上記水性ポリエステル樹脂を含む塗液は、濾過精度1μmカットのポリプロピレンフィルターでの濾過が困難であったため、濾過精度5μmカットのガラスフィルターで濾過を行った。なお、上記水性ポリエステル樹脂で形成された樹脂薄膜の表面硫黄濃度S/Cは0.005、表面アルカリ金属濃度A/Cは0.0001であり、樹脂の300℃の熱減量は1.6重量%であった。
【0148】
この芳香族ポリアミド積層フィルムの突起形成面の表面特性を評価した結果を表2に示した。また、フィルム特性および、突起形成面に磁性層を形成し、磁気テープとして評価した結果を表3に示す。フィルムの巻き姿、リサイクルフィルムの異物は良好であったが、出力特性とドロップアウトが悪化した。
(比較例5)
水性樹脂に、テレフタル酸(47.5モル%)、5−スルホイソフタル酸ナトリウム(2.5モル%)、エチレングリコール(50モル%)の重縮合反応物である水性ポリエステル樹脂を用いること以外は実施例1と同様の方法で芳香族ポリアミド積層フィルムを得た。ただし上記水性ポリエステル樹脂を含む塗液は、比較例4と同様、濾過精度1μmカットのポリプロピレンフィルターでの濾過が困難であったため、濾過精度5μmカットのガラスフィルターで濾過を行った。なお、上記水性ポリエステル樹脂で形成された樹脂薄膜の表面硫黄濃度S/Cは0.005、表面アルカリ金属濃度A/Cは0.005であり、樹脂の300℃の熱減量は0.4重量%であった。
【0149】
この芳香族ポリアミド積層フィルムの突起形成面の表面特性を評価した結果を表2に示した。また、フィルム特性および、突起形成面に磁性層を形成し、磁気テープとして評価した結果を表3に示す。フィルムの巻き姿は良好であったが、リサイクルフィルムの異物、出力特性、ドロップアウトが悪化した。
(比較例6、7)
粒子の添加量を表1のように変更する以外は実施例1と同様の方法で芳香族ポリアミド積層フィルムを得た。
【0150】
これら芳香族ポリアミド積層フィルムの突起形成面の表面特性を評価した結果を表2に示した。また、フィルム特性および、突起形成面に磁性層を形成し、磁気テープとして評価した結果を表3に示す。フィルムの巻き姿、リサイクルフィルムの異物、出力特性、ドロップアウトがすべて良好なフィルム、磁気テープは得られなかった。
(比較例8)
粒子の平均粒径、水性樹脂の添加量を表1のように変更する以外は実施例1と同様の方法で芳香族ポリアミド積層フィルムを得た。平均粒径120nmの粒子を用いたため、平均径が100nmを超す突起が形成された。
【0151】
この芳香族ポリアミド積層フィルムの突起形成面の表面特性を評価した結果を表2に示した。また、フィルム特性および、突起形成面に磁性層を形成し、磁気テープとして評価した結果を表3に示す。フィルムの巻き姿、リサイクルフィルムの異物、ドロップアウトは良好であったが、磁気テープの出力特性が悪化した。
(比較例9)
水性樹脂に、テレフタル酸(42.5モル%)、5−スルホイソフタル酸リチウム(7.5モル%)、エチレングリコール(50モル%)の重縮合反応物である水性ポリエステル樹脂を用いること以外は実施例1と同様の方法で芳香族ポリアミド積層フィルムを得た。なお、上記水性ポリエステル樹脂で形成された樹脂薄膜の表面硫黄濃度S/Cは0.015、表面アルカリ金属濃度A/Cは0.015であり、樹脂の300℃の熱減量は1.3重量%であった。
【0152】
この芳香族ポリアミド積層フィルムの突起形成面の表面特性を評価した結果を表2に示した。また、フィルム特性および、突起形成面に磁性層を形成し、磁気テープとして評価した結果を表3に示す。フィルムの巻き姿、出力特性、ドロップアウトは良好であったが、リサイクルフィルムの異物が悪化した。
【0153】
【表1】
【0154】
【表2】
【0155】
【表3】
【0156】
【発明の効果】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、フィルムを再利用しても異物の発生が少なく、歩留まりが低いので、表面性に優れたフィルムを安価に製造することができる。また上記フィルムをベースフィルムとして用いることにより、出力が高い磁気記録媒体を製造することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面性、無欠点性に優れ、かつリサイクルしたフィルムの異物が少ない芳香族ポリアミドフィルムに関する。更には、かかるフィルムを用いた磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリアミドフィルムは、その優れた耐熱性、機械特性を活かして様々な用途に展開されてきている。特にパラ配向性の芳香族ポリアミドは剛性、強度などの機械特性が他のポリマーより優れているため、フィルムの薄物化に非常に有利であり、プリンターリボン、磁気記録媒体、コンデンサーなどの用途が考えられている。
【0003】
特に磁気テープに代表される磁気記録媒体に使用する場合、フィルムに適切な表面形態(表面性)を付与することが必要であり、例えば、フィルムを形成するポリマー中に無機粒子あるいは有機粒子を含有させる方法、フィルム製膜時あるいは製膜後に微粒子を含有した塗液をコーティングする方法(例えば、特開2001−93134号公報、特開2001−93135号公報、WO99/53483号公報)が代表的なものとして挙げられる。こうした従来の方法は、磁気記録媒体としたときの出力特性や走行性を高めることを目的として、フィルムの表面形態、構造を規制してきたものである。
【0004】
しかしながら、近年、記録の高密度化、すなわち単位ビットあたりの記録面積の微小化は止まるところを知らず、種々の問題を生じるようになってきた。例えば、1ビットあたりの記録面積は、1970年代には100μm2オーダーであったのに対し、1980年代には10μm2オーダー、1990年代には1μm2オーダーとなり、現在、1μm2を切るものが検討されている。このように記録面積が微小化すると、ベースフィルムの平滑性、走行性、無欠点性を高いレベルで達成することが求められる。
【0005】
また優れた品質のフィルムを安価に製造するためには、製造工程あるいは加工工程で発生した屑フィルムを再利用することが有効であるが、再利用する場合にはリサイクルフィルムにおいても異物が少ないことが要求される。すなわち、異物の多いリサイクルポリマーを用いた場合、製造工程中の濾過フィルターが目詰まりし易くなり生産性を低下させる懸念がある。また異物の多いリサイクルフィルムを単層でそのまま磁気テープに用いた場合には、粗大突起によって磁気テープのデータが欠落する懸念がある。更に積層フィルムの中間層や走行面に、異物の多いリサイクルフィルムを用いても同様に、粗大突起によるデータ欠落の懸念があり、従来の方法では、これらを満足させることが困難であった。
【0006】
特に微粒子を含有した塗液をコーティングして表面性を付与する場合には、微粒子のバインダーとしてポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などのポリマーが用いられるが、リサイクルフィルムの異物を低減させるためには、これらバインダーポリマーにも注意が必要である。例えば、WO99/53483号公報で用いられているアクリル変性ポリエステル(高松油脂(株)IN−170−6)や、ポリウレタン(東洋ポリマー(株)メルシー545)については、芳香族ポリアミドとの相溶性が悪く、これらをコーティングしたフィルムを再利用した場合、異物の多いリサイクルフィルムとなり易い。また、ポリエチレンナフタレート(50モル%)、イソフタル酸(45モル%)、5−スルホイソフタル酸ナトリウム(5モル%)、エチレングリコール(70モル%)、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(30モル%)の共重合ポリエステルについては、再利用する際に、5−スルホイソフタル酸ナトリウムのナトリウム成分が、回収溶媒に含まれる無機物や有機物と反応して、芳香族ポリアミドと相溶性の悪い異物を生じさせるためか、異物の多いリサイクルフィルムとなり易い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点を解決し、表面性、無欠点性に優れ、フィルムを再利用しても異物の発生が少なく、かつ、磁気記録媒体としたときの出力が高い芳香族ポリアミドフィルムおよび磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、少なくとも片面に、X線光電子分光法により測定される表面硫黄濃度(S/C)と表面アルカリ金属濃度(A/C)が下記式(1)(2)を満たす樹脂層を有し、この樹脂層の表面に平均径が10〜100nmである突起が1×106〜1×108個/mm2の密度で形成され、この突起が形成された面の径5μm以上の突起が100個/cm2以下である芳香族ポリアミドフィルムを特徴とする。
【0009】
0.008≦S/C≦0.02 ・・・(1)
A/C≦0.002 ・・・(2)
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の芳香族ポリアミドとしては、たとえば、次の式(I)および/または式(II)で表される繰り返し単位を50モル%以上有するものを用いることができる。
【0011】
式(I):
【0012】
【化1】
式(II):
【0013】
【化2】
ここで、Ar1、Ar2、Ar3の基としては、例えば、
【0014】
【化3】
などが挙げられる。
【0015】
ここで、X、Yは芳香環の結合基であって、例えば、−O−、−CH2−、−CO−、−S−、−C(CH3)2−などから選ばれるが、これらに限定されるものではない。更にこれらの芳香環上の水素原子の一部が、フッ素や臭素、塩素などのハロゲン基(特に塩素)、ニトロ基、メチルやエチル、プロピルなどのアルキル基(特にメチル基)、メトキシやエトキシ、プロポキシなどのアルコキシ基などの置換基で置換されていてもよく、また、重合体を構成するアミド結合中の水素が他の置換基によって置換されていてもよい。
【0016】
また、本発明に用いる芳香族ポリアミドは、上記の芳香環がパラ配向性を有しているものが、全芳香環の70モル%以上、より好ましくは80モル%以上占めていることが好ましい。ここでパラ配向性とは、芳香環上の主鎖を構成する2価の結合手が互いに同軸または平行にある状態をいう。このパラ配向性が70モル%未満の場合、フィルムの剛性および耐熱性が不十分となることがある。
【0017】
本発明における芳香族ポリアミドは、前記した式(I)および/または式(II)で表される繰り返し単位の他の繰り返し単位が50モル%未満のように少量ならば共重合またはブレンドされていてもよい。
【0018】
また、本発明の目的を阻害しない範囲で、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、核生成剤などの無機または有機の添加剤がブレンドされていてもよい。
【0019】
本発明における樹脂層には、水性樹脂、すなわち水溶性樹脂および/または水分散樹脂を含んでいる。樹脂層を形成するための水性樹脂としては、例えば、メチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性や水分散性のエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられるが、これらの中では、芳香族ポリアミドフィルムとの密着性、リサイクルフィルムにおける異物の低減、および樹脂の耐熱性の点から、水溶性および/または水分散性のポリエステル樹脂が好ましい。これらの水性樹脂は単体、共重合体、混合物のいずれの形態で用いてもよい。なお上記水性樹脂の親水基および耐熱性については後述する。
【0020】
上記水溶性および/または水分散性のポリエステル樹脂は、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの酸成分と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのアルコール成分との重縮合反応によって得られるポリエステル樹脂に、スルホン酸基を有する化合物を共重合させる方法や、カルボキシル基を導入してアンモニアや揮発性アミンで中和する方法などで得られる。特に、ポリエステル樹脂に5−スルホイソフタル酸ナトリウムや5−スルホイソフタル酸リチウムなどを共重合させてスルホン酸基を導入する方法は、極性が強く水溶化力に優れており、樹脂を水性化する方法として有効である。しかしスルホン酸基を有する水性樹脂を用いて樹脂層を形成する場合には、樹脂層の表面硫黄濃度S/C(以下、単にS/Cという)が下記式(1)を満たすことが必要である。
【0021】
0.008≦S/C≦0.02 ・・・(1)
ここでS/Cとは、樹脂層のスルホン酸基含有量の指標であり、後述するX線光電子分光法の測定によって求められる。この樹脂層のS/Cが0.008未満の場合、水性樹脂の親水性が不十分なため水性樹脂が凝集体を形成し易く、この水性樹脂を含む水系塗液を芳香族ポリアミドフィルム上に塗布、乾燥した場合に異物を生じさせ易い。また樹脂層のS/Cが0.02を越えると、水性樹脂の耐熱性が悪くなり、この水性樹脂を含む水系塗液を芳香族ポリアミドフィルム上に塗布、乾燥して得られたフィルムを、再度芳香族ポリアミドフィルムの回収溶媒に溶かして再利用する場合に異物を生じさせ易い。この異物は製膜中の乾燥工程あるいは熱処理工程で熱変性した水性樹脂と考えられる。樹脂層のS/Cは、0.01〜0.016であることがより好ましい。
【0022】
更にスルホン酸基を有する水性樹脂を用いて樹脂層を形成する場合には、樹脂層の表面アルカリ金属濃度A/C(以下、単にA/Cという)が下記式(2)を満たすことが必要である。
【0023】
A/C≦0.002 ・・・(2)
ここでA/Cとは、樹脂層のアルカリ金属含有量の指標であり、後述するX線光電子分光法の測定によって求められる。ただし水性樹脂に含まれるスルホン酸塩としては、スルホン酸ナトリウム、スルホン酸リチウム、スルホン酸カリウム、スルホン酸アンモニウムが一般的であり、本発明のアルカリ金属元素とは、ルビジウム、セシウム、フランシウムの3元素を除いた、リチウム、ナトリウム、カリウムの中から選ばれる1種あるいは2種以上のアルカリ金属元素を指す。樹脂層のA/Cが0.002を越える場合、アルカリ金属を含む水性樹脂を水系塗液とし、これを芳香族ポリアミドフィルム上に塗布、乾燥して得られたフィルムを、再度芳香族ポリアミドフィルムの回収溶媒に溶かして再利用する場合に異物を生じさせ易い。これは、芳香族ポリアミドフィルムの回収溶媒に含まれる無機物や有機物とアルカリ金属が反応して、芳香族ポリアミドと相溶性の悪い異物を生じさせるためと考えられる。樹脂層のA/Cは、より好ましくは0.001以下であるが、アルカリ金属を殆ど含有していない、スルホン酸アンモニウムを親水成分とする水性樹脂などを用いることが特に好ましい。
【0024】
樹脂層を形成するための塗液成分は、樹脂層のS/CやA/Cが本願規定の範囲内となるように適宜調整すればよい。具体的には、前者(S/C)については、主にスルホン酸基を有する化合物の成分量に依存するため、この添加量を調整すればよい。また、後者(A/C)については上記スルホン酸基の塩に由来するナトリウムやカリウム、リチウム元素の量に主に依存するため、これら元素を含む化合物の添加量や種類を調整することにより実現可能となる。もちろん、S/CやA/Cを制御するには、上記したスルホン酸基量やその塩の添加量だけでなく、硫黄元素やアルカリ金属元素を含む化合物の添加量にも注意して塗液を調整することが重要である。
【0025】
上記水性樹脂の耐熱性については、粒子とフィルムとの密着性を向上させ、リサイクルフィルムの異物を低減する上で、300℃の熱減量が7重量%以下であることが好ましい。本発明の300℃の熱減量とは、熱重量測定装置を用いて、窒素雰囲気中、昇温速度10℃/分の条件下で水性樹脂の熱減量を測定し、下記式(3)により求めた値であり、この値が低いほど耐熱性に優れている。ここで、120℃での重量を基準としている理由は、水性樹脂の吸湿による重量変化の影響を除くためである。
【0026】
300℃の熱減量(重量%)=((120℃での重量−300℃での重量)/120℃での重量)×100 ・・・(3)
上記300℃の熱減量が7重量%を超えると、水性樹脂が熱分解し易く、水性樹脂と粒子との密着性が悪くなり、磁気テープとしたときの耐久性が低下することがあり、またリサイクルフィルムに生じる異物が増加することがある。更に、熱分解した水性樹脂が製膜中の熱処理工程を汚したり、熱処理工程に堆積した水性樹脂の熱分解物がフィルム表面に付着して粗大突起を生じさせ、磁気テープとしたときにデータを欠落させるなどの問題を引き起こすことがある。水性樹脂の300℃の熱減量は、より好ましくは6重量%以下、更に好ましくは5重量%以下である。
【0027】
上記水性樹脂から形成される樹脂層の厚みは、粒子の平均粒径や用途などにより適切に設計されるものであるが、粒子の平均粒径に対して20〜80%の範囲内が好ましい。樹脂層の厚みが粒子の平均粒径に対して20%未満の場合には、粒子と水性樹脂との接触面積が小さいため密着性が不足して粒子が脱落し易くなり、磁気テープとしたときの耐久性が低下することがある。また、樹脂層の厚みが粒子の平均粒径に対して80%を超えると、水性樹脂と粒子との密着性は向上するが、粒子による滑り性が悪化し、フィルムの巻き姿が悪くなったり、磁気テープとしたときの走行性が悪化することがある。樹脂層の厚みは、粒子の平均粒径に対して30〜70%の範囲内がより好ましく、40〜60%の範囲内が更に好ましい。
【0028】
本発明において、突起を形成させる粒子は特に限定されないが、突起の分散性の点では、シリコーン粒子、ポリイミド粒子、テフロン(登録商標)粒子、架橋共重合体粒子、架橋ポリエステル粒子、架橋ポリスチレン粒子、コアシェル粒子などの有機高分子粒子を用いることが好ましく、更に樹脂薄膜層との密着性を向上させる点では、架橋ポリエステル粒子、架橋ポリスチレン粒子、コアシェル粒子を用いることが更に好ましい。ここでコアシェル粒子とは、内部(以下、コア部という)と外部(以下、シェル部という)とが性質の異なるポリマーで構成される、多層構造を有するポリマー微粒子をいい、コア部よりもシェル部の方がより軟質であるような粒子が好ましい。ここで多層構造とは2層構造以上を意味し、性質が微粒子の直径方向に連続的に変化しているものでもよい。また、シェル部は、フィルム表面に塗布などにより配設された後、熱処理を行うことにより上記水性樹脂と反応したり、溶融、軟化、変形して水性樹脂やベースフィルムとの親和性を高め、コアシェル粒子とベースフィルムとの密着性を強固なものとする機能を有し、コア部は、シェル部とともにフィルムに適度の滑り性と磁気ヘッドなどとの最適なスペーシングを与える機能を有する。このような機能を付与するためには、シェル部には水性樹脂やベースフィルムとの親和性、密着性に優れ、かつ製膜熱処理温度での適切な物理的、化学的、熱的特性を有していることが好ましく、コア部には圧力、摩擦などによって変形しない、シェル部やベースフィルムに対して高い硬度を有していることが好ましい。
【0029】
上記機能を実現するためのコアシェル粒子のポリマー組成として、シェル部については熱可塑性樹脂が好ましく、特にアクリル系樹脂が好ましい。コア部については、上記熱可塑性樹脂の他にフェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂を用いることができるが、特にジビニルベンゼン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、あるいは硬度を高めるためにこれらの樹脂の同種または異種同士の共重合体が好ましい。もちろん、シェル部、コア部ともに上記機能を有するならば特にこれらに限定されるものではない。
【0030】
更にシェル部については、水性樹脂との親和性を高めることを目的に、ポリマー中に任意の割合で水性樹脂やベースフィルムとの反応性もしくは親和性を有する官能基、具体的にはカルボキシル基、アミド基、アミノ基、エポキシ基などを導入してもよい。これらの官能基は単独、場合によっては2種以上併用してもよい。
【0031】
上記コアシェル粒子は、例えば昭和53年1月30日高分子刊行会発行の「合成樹脂エマルジョン」第26〜27頁等に示されている乳化重合法で得られるが、特にこれに限定されるものではない。乳化重合法の例を挙げると、まず水系溶媒にコア部を形成するモノマー、乳化剤および重合開始剤を添加して第1段階の乳化重合を行い、第1段階の重合が終了した後、シェル部を形成するモノマーと重合開始剤とを添加して第2段階の乳化重合を行う。更にモノマー組成を変えて第3段階の乳化重合、あるいはそれ以上の重合を行って多層構造を有する粒子としてもよい。
【0032】
上記粒子の平均粒径は10〜100nmであることが必要である。平均粒径が10nm未満の場合には、粒子同士が凝集して粗大突起となり磁気テープの出力が低下したり、ドロップアウトが多くなり、逆に大きすぎる場合にも同様の問題が生じる。粒子の平均粒径は、より好ましくは15〜80nm、更に好ましくは20〜50nmである。
【0033】
粒子を塗液に含有させてフィルムに塗布する場合、塗液に対する添加量は、塗布厚み、用途などによって適切に設計されるべきであるが、塗液に対して0.001〜0.1重量%の範囲内が好ましい。粒子の添加量が0.001重量%未満の場合には、走行性が悪化してフィルムの巻き姿が悪化し易く、0.1重量%を超える場合には、塗液中あるいは塗液を乾燥する工程で粒子同士が凝集体を形成する可能性がある。粒子の添加量は、塗液に対して0.002〜0.9重量%の範囲内がより好ましく、0.003〜0.8重量%の範囲内が更に好ましい。
【0034】
また本発明の芳香族ポリアミドフィルムの用途によっては、平均粒径の異なる複数種の粒子を併用してもよい。
【0035】
上記塗液には界面活性剤を含有させてもよく、具体的には、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、フッ素系界面活性剤、反応性界面活性剤などが挙げられるが、耐薬品性、耐熱性、界面活性に優れるフッ素系界面活性剤が好ましい。このような界面活性剤は、塗液中の粒子の分散状態を良好にし、フィルムに対する濡れ性などを改良する効果が期待できる。界面活性剤の添加量は、塗液の組成によって任意の割合で添加されるものであるが、塗液に対して0.01〜3重量%であることが好ましい。界面活性剤の添加量が3重量%を超えると、期待したほどの界面活性効果が得られず不経済であり、リサイクルフィルムに異物を生じさせる懸念がある。また、界面活性剤の添加量が0.01重量%未満であると界面活性効果が低く、フィルム表面に塗布したときに、はじきや塗布斑が生じて突起個数斑が悪化することがある。界面活性剤の添加量は、塗液に対して0.05〜2重量%であることがより好ましく、0.1〜1重量%であることが更に好ましい。
【0036】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムの突起が形成される側の面(以下、突起形成面という)は、芳香族ポリアミドフィルムの少なくとも片面に、上記水性樹脂、粒子および界面活性剤を含有する水系塗液を塗布した後、乾燥後あるいは乾燥させながら延伸および/または熱処理を行うことで形成することができる。
【0037】
また、本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、上記突起形成面に樹脂層と平均径が10〜100nmの突起とが形成され、かつ、この突起の存在密度が1×106〜1×108個/mm2である。突起の存在密度が1×106個/mm2未満の場合にはベースフィルムの走行性が不良となりフィルムの巻き姿が悪化し、また、1×108個/mm2を超える場合には磁気テープの出力が低下する。突起は、より好ましくは2×106〜7×107個/mm2であり、更に好ましくは2×106〜5×107個/mm2である。また、突起の平均径が10nmを下回ると磁気テープの走行性が不良となり、100nmを超えると磁気テープの出力が低下する。上記範囲内にある突起を形成するためには、平均粒径が10〜100nmの範囲内にある粒子を用いるとよい。
【0038】
また、本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、上記突起形成面の径5μm以上の突起が100個/cm2以下である必要がある。ここで径5μm以上の突起(以下、粗大突起という)とは、顕微鏡で観察したときの最大径が5μm以上の突起である。なお観察方法の詳細は後述する。突起形成面における粗大突起が100個/cm2を越える場合、突起形成面に磁性層を配設して磁気テープとしたときにドロップアウトが多発する。突起形成面における粗大突起は、80個/cm2以下がより好ましく、50個/cm2以下が更に好ましい。
【0039】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムにおいて、突起形成面の原子間力顕微鏡(AFM)で測定した走査範囲30μm角での10点平均粗さRzが10〜100nmであると、磁気記録媒体としたときの出力に優れるため、高出力が要求されるデータストレージ用途に最適に用いることができるので特に好ましい。このような用途における突起形成面の10点平均粗さRzは、15〜80nmであることがより好ましく、20〜50nmであると更に好ましい。
【0040】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、製膜が容易である点から単層フィルムであることが好ましいが、磁気テープとしたときの出力やドロップアウト、走行性を優れたレベルで達成するためには、共押出による積層フィルムとすることが一層好ましい。積層フィルムとするときは、少なくとも一方の最表層を本発明の突起形成面とすればよい。したがって、最表層のうちの片側層は本発明のフィルム要件を満たすが、他の片側層は本発明のフィルム要件を満たさなくてもよい。
【0041】
ただし、2層の積層フィルムにおいて、磁性層を形成しない側の層(以下、B層という)に、走行性を付与することを目的として、芳香族ポリアミド中に無機粒子および/または有機粒子を含有せしめる方法や、芳香族ポリアミド中に異種ポリマー(例えばポリエーテルスルホンなど)を混合し、混合ポリマー溶液の乾燥時に異種ポリマーを相分離させる方法などにより微細突起を形成させる場合、あるいはリサイクルポリマーをB層に用いる場合には、本発明の突起形成面に悪影響を及ぼさないように注意することを要する。すなわち、B層内において、無機粒子、有機粒子および/または異種ポリマーに起因する凝集物や、リサイクルポリマーに異物が生じると、突起形成面にも悪影響を及ぼし、磁気テープとしたときにドロップアウトが生じ易くなることがあるためである。
【0042】
B層内における凝集物の生成を抑制するためには、B層に配合する無機粒子、有機粒子および/または異種ポリマーの平均粒径や含有量を適切に設計すること、突起形成面側の積層厚みを厚くすることが好ましい。例えば、B層に配合する無機粒子、有機粒子および/または異種ポリマーの平均粒径は1〜300nmであることが好ましく、5〜200nmであると更に好ましい。この平均粒径が1nmを下回ると、粒子が凝集して粗大突起となり、突起形成面にも粗大突起を生じさせ、磁気テープの出力が低下したり、ドロップアウトが多くなることがあり、逆に300nmを超えても同様の問題が生じることがある。また、B層に配合する無機粒子、有機粒子および/または異種ポリマーの含有量は、芳香族ポリアミドに対して0.01〜3重量%であることが好ましく、0.02〜2重量%であると更に好ましい。この含有量が0.01重量%を下回る場合には、磁気テープの走行性が不良となってフィルムの巻き姿が悪化したり、3重量%を超える場合には粒子が凝集して粗大突起となり、突起形成面にも粗大突起を生じさせ、磁気テープの出力が低下したり、ドロップアウトが多くなることがある。また、更に磁気テープの出力、走行性、無欠点性を極めて優れたレベルとするためには、B層による悪影響を低減する上で、突起形成面側の積層厚みを2.5μm以上とすることが好ましく、3μm以上とすることが更に好ましい。
【0043】
B層に配合する粒子の種類としては、SiO2、TiO2、Al2O3、CaSO4、BaSO4、CaCO3、カーボンブラック、ゼオライト、その他の金属微粉末などの無機粒子、シリコーン粒子、ポリイミド粒子、テフロン(登録商標)粒子、架橋共重合体粒子、架橋ポリエステル粒子、架橋ポリスチレン粒子、コアシェル粒子などが挙げられ、これら粒子のいずれを用いても、あるいは複数種を併用してもよい。
【0044】
また、突起形成面側の芳香族ポリアミド中には、本発明の目的を阻害しない範囲で、易滑性を付与するための上記無機粒子、有機粒子および/または異種ポリマーなどが含まれていてもよいが、これらは含まれていないことが好ましい。
【0045】
また、B層に本発明の樹脂層を設けて走行性を付与してもよい。
【0046】
更に、本発明の芳香族ポリアミドフィルムは少なくとも一方向のヤング率が8GPa以上であることが好ましい。磁気テープの出力は、テープとヘッドとのヘッドタッチ性の向上に伴って上がるため、ベースフィルムには高ヤング率を有することが求められる。記録方法が固定ヘッド式の場合には長手方向のヤング率が、また、ヘリカルスキャン方式の場合には幅方向のヤング率が特に重要であるため、ベースフィルムのいずれの方向においてもヤング率が8GPa未満であると、いずれの記録方式を採用しても高出力が得られないことがある。なお、上記ヤング率は9GPa以上がより好ましく、10GPa以上が更に好ましい。また、全ての方向のヤング率が8GPa以上であることが特に好ましい。これらの特性を満たすためには、上記したように、本発明に用いる芳香族ポリアミドの芳香環がパラ配向性を有しているものが、全芳香環の70モル%以上、より好ましくは80モル%以上をしめていることが好ましい。
【0047】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムの伸度は10%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは30%以上であることが、テープが適度な柔軟性を持つために好ましい。
【0048】
更に吸湿率は、5%以下、より好ましくは3%以下、更に好ましくは2%以下であることが、湿度変化による磁気テープの寸法変化が小さく良好な出力を保つために好ましい。
【0049】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムの200℃、10分間での熱収縮率は0.5%以下、より好ましくは0.3%以下であることが、温度変化による磁気テープの寸法変化が小さく良好な出力を保つために好ましい。
【0050】
これらの特性は、単層フィルム、積層フィルムを問わず満足することが好ましい。
【0051】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、フレキシブルプリント基板、コンデンサー、プリンタリボン、音響振動板、太陽電池のベースフィルムなどの種々の用途にも好ましく用いられるが、表面性、耐熱性、剛性などに優れるという特性を活かして、磁気記録媒体のベースフィルムとして特に好ましく用いられる。
【0052】
次に本発明の磁気記録媒体について説明する。
【0053】
本発明の磁気記録媒体は、上記芳香族ポリアミドフィルムの突起形成面に磁性層を配設したものである。このとき、磁性層の厚みは300nm以下であることが好ましい。
【0054】
磁性層を形成する強磁性材料としては、Fe、Co、Niなどの強磁性金属や、Fe−Co、Co−Ni、Fe−Co−Ni、Fe−Cu、Co−Cu、Co−Au、Co−Pt、Mn−Al、Fe−Cr、Co−Cr、Ni−Cr、Fe−Co−Cr、Co−Ni−Cr、Fe−Co−Ni−Crなどの強磁性合金などが挙げられる。
【0055】
磁性層は単層膜であっても、多層膜であってもよく、また磁性層を形成した後、磁気記録媒体の耐久性や耐候性を高める目的で、磁性層表面にスパッタリング法などによるDLC(ダイヤモンドライクコーティング)膜を設けてもよく、更に潤滑剤を存在させて走行性を高めてもよい。更に、易滑性と耐久性を向上させるために、磁性層と反対側のフィルム面にバックコート層を設けてもよい。
【0056】
磁気記録媒体の形態は、ディスク状、カード状、テープ状など特に限定されないが、ベースフィルムの厚みが10μm以下、幅が2.3〜13mm、長さが60m/巻以上、記録密度(非圧縮時)が5キロバイト/mm2以上の高記録密度磁気テープなどの磁気記録媒体としたとき、均一性に優れた表面特性と、高い剛性とを有するという本発明のフィルムの特性をより一層活かすことができるので特に好ましい。なお、ここでいう記録密度は下記式(4)により算出される値である。
【0057】
記録密度=記録容量/(テープ幅×テープ長さ) ・・・(4)
磁気テープに代表される磁気記録媒体には近年ますます低価格化、高容量化の要請が高くなってきているが、高容量化を実施する上でのポイントには以下のものがある。一つは、ベースフィルムの厚みを薄くして長尺化により全体としての記録容量を向上させる方法であり、今一つは、トラック幅の狭幅化、記録波長の短波長化などにより単位面積当たりの記録密度を高める方法であり、一般的にはこれらを併用する方向で高容量化が図られている。このように、トラック幅の狭幅化や記録波長の短波長化などにより高記録密度化が進むと、ベースフィルム表面は無欠点であることが望まれている。一方、低価格化のためには、ベースフィルム製膜工程において、濾過フィルターの交換頻度を減らして生産性の改善を図ったり、製膜工程で発生した屑フィルムを再利用して製品コストを下げることなどが重要であり、表面性、無欠点性に優れ、再利用しても異物の発生が少ない本発明の芳香族ポリアミドフィルムは極めて有効である。
【0058】
以上のように本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、こうした高容量化、低価格化の要請に対し好適に応えることのできる磁気テープとすることができる。
【0059】
なおベースフィルムの厚みは好ましくは、7μm以下、更に好ましくは5μm以下であり、磁気記録媒体としての記録密度は好ましくは8キロバイト/mm2以上、更に好ましくは25キロバイト/mm2以上である。
【0060】
本発明の磁気記録媒体は、民生用、プロ用、D−1、D−2、D−3などの放送局用デジタルビデオカセット用途、DDS−2,3,4、データ8mm、AIT、DLT、LTOなどのデータストレージ用途に好適に用いることができるが、特に、高容量で信頼性が最も重視されるデータストレージ用途に最適に用いることができる。
【0061】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、例えば、次のような方法で製造できるが、これに限定されるものではない。
【0062】
まず芳香族ポリアミドを芳香族ジ酸クロリドと芳香族ジアミンから得る場合には、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性有機極性溶媒中での溶液重合により合成する。このとき、低分子量物の生成を抑制するため、反応を阻害するような水、その他の物質の混入は避けるべきであり、効率的な攪拌手段をとることが好ましい。また、原料の当量性は重要であるが、製膜性を損なう恐れのあるときは適当に調整することができる。また、溶解助剤として塩化カルシウム、塩化リチウム、臭化リチウム、硝酸リチウムなどを添加してもよい。
【0063】
モノマーとして芳香族ジ酸クロリドと芳香族ジアミンを用いると塩化水素が副生するが、これを中和する場合には周期律表I族かII族のカチオンと水酸化物イオン、炭酸イオンなどのアニオンとからなる塩に代表される無機の中和剤、またエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどの有機の中和剤を使用すればよい。
【0064】
また、フィルムの湿度特性を改善する目的で、塩化ベンゾイル、無水フタル酸、酢酸クロリド、アニリンなどを重合の完了した系に添加し、ポリマーの末端を封鎖してもよい。
【0065】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムを得るためには、ポリマーの固有粘度(ポリマー0.5gを硫酸中で100mlの溶液として30℃で測定した値)は、0.5以上であることが好ましい。
【0066】
製膜原液としては、中和後のポリマー溶液をそのまま用いてもよいし、一旦単離したポリマーを硫酸などからなる無機溶媒や有機溶媒に再溶解したものを用いてもよい。
【0067】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムを得るためには、重合ポリマーを製膜工程の口金から押し出す前にポリマー内の異物を除去しておくことが好ましい。
【0068】
ポリマー溶液をそのまま用いる場合には、非プロトン性有機極性溶媒は、あらかじめ蒸留や濾過などの精製操作を行った後に重合溶媒としてポリマー重合に用いることが好ましく、モノマーである芳香族ジアミンや芳香族ジ酸クロリドも、各々をそのまま、または一旦重合溶媒に溶解させた後に濾過操作を行って、ポリマー重合に用いることが好ましい。
【0069】
このような濾過には、例えば、ポリプロピレン、ステンレスやフッ素樹脂などで構成されたフィルターを用いることができ、また濾過精度は、3μm以下が好ましく、より好ましくは2μm以下、更に好ましくは1μm以下である。上記した通り、濾過精度は小さい方が好ましい方向ではあるが、あまりに小さ過ぎるとフィルターの目詰まりが早くなり溶媒の移送が速やかに行えなくなるため、その下限は0.1μm程度が適切である。
【0070】
また、ポリマー重合中、重合槽内へのコンタミネーションの混入を避けるために、重合槽内のポリマー溶液に対して、例えば濾過精度0.3μmの除塵フィルターで濾過された不活性なガスを流し込み、重合槽内の圧力を大気圧より高くする方法も有効である。
【0071】
また、モノマーに芳香族ジ酸クロリドや芳香族ジアミンを用いたときに副生する塩化水素を中和する場合には、精製操作を行った無機および/または有機の中和剤を用いることが好ましい。
【0072】
このとき中和剤として無機の炭酸塩を用いる場合には、塩化水素と炭酸塩のモル比に対しても注意することを要する。すなわち、塩化水素のモル濃度に対して過剰の炭酸塩で中和を行った場合には、過剰分の炭酸塩がポリマー内に残存し、残存した炭酸塩がコンタミネーションとなることがあり、逆に少な過ぎると塩化水素の中和が不充分で製膜装置を腐食させ易い。また、塩化水素のモル濃度に対して等当量モル濃度の炭酸塩で中和を行った場合には、中和反応が完了するまでに長時間を要し、あまり長時間の中和を行っても期待したほどの効果が得られず、逆に生産性が悪くなるので好ましくない。炭酸塩などによる塩化水素の中和は、それぞれ適切に決めるべきであるが、塩化水素に対して93〜99モル%、特に94〜98.5モル%の中和剤で中和することが好ましく、また、中和時間は2時間以上が、特に3時間以上が好ましく、上限は10時間程度が適切である。更に残存する塩化水素を中和する場合には、有機の中和剤を用いることが好ましい。
【0073】
また、一旦単離した重合ポリマーを再び硫酸などからなる無機溶媒や有機溶媒に溶解せしめる場合においても、その溶媒について同様の濾過操作が行われていることが好ましい。
【0074】
また上記したように、本発明の目的を阻害しない範囲で、芳香族ポリアミドフィルムに、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、核生成剤などの無機および/または有機の添加剤を重合ポリマーにブレンドさせてもよい。
【0075】
また、ポリマー溶液中のポリマー濃度は2〜40重量%であることが好ましい。これは、ポリマー濃度が2重量%を下回る場合、生産性が悪く、十分な剛性を有するフィルムが得られ難くなるなどの問題が生じ易く、逆にポリマー濃度が40重量%を超える場合、ポリマー溶液の粘度が高くなり重合および製膜工程でのハンドリング性が悪化するなどの問題が生じ易いためである。
【0076】
上記のように調製されたポリマー溶液は、コンタミネーションを除去する上で、製膜工程の口金から押し出す直前に再び濾過を行うことが好ましい。このポリマー溶液の濾過には、溶媒が硫酸などからなる無機溶媒や有機溶媒であることから耐蝕性に優れた素材からなるフィルターを用いることが好ましく、このようなフィルターとしては、例えば、ニッケル、チタン、ジルコニウム、タンタル、鉛の単体、およびそれら単体を主成分とする“インコネル”、“モネル”(International Nickel Co.社の商標名)、“ハステロイ”(Haynes Stellite Co.社の商標名)などの合金、不動体化された鉄あるいはステンレスなどの金属からなる素材や、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、テフロン(登録商標)樹脂、活性炭、ガラスなどの非金属からなる素材からなるフィルター、あるいは上記素材の2種類以上を組み合わせてなるフィルターが挙げられる。
【0077】
このポリマー溶液の濾過精度は、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下、更に好ましくは1μm以下である。上記したように、ポリマー溶液の濾過は、濾過精度を小さくすることが好ましい方向であるが、あまり小さすぎるとフィルターの目詰まりを生じさせたり、濾圧が高くなってフィルターが破損したりするため、その下限は0.1μm程度が適切である。
【0078】
上記のように調製されたポリマー溶液の製膜方法としては、乾湿式法、湿式法、半乾半湿式法の溶液製膜法が挙げられ、いずれの製膜方法でフィルム化してもよいが、表面形態を制御しやすい点で乾湿式法が好ましく、以下、乾湿式法を例にとって説明する。
【0079】
上記ポリマー溶液を口金からドラムやエンドレスベルトなどの支持体上に押し出して薄膜とし、次いでかかる薄膜層から溶媒を飛散させ薄膜を乾燥する。
【0080】
このとき、脱溶媒速度は、10〜30重量%/分で乾燥することが好ましい。脱溶媒速度が10重量%/分未満では生産性が悪く、また、脱溶媒速度が30重量%/分を超えると急激な溶媒蒸発でフィルム表面が粗れることがある。乾燥温度は100〜210℃であることが好ましく、120〜180℃であるとより好ましい。また、乾燥時間は、2〜10分が好ましく、3〜8分がより好ましい。
【0081】
次いで、乾式工程を終えたフィルムは支持体から剥離されて、湿式工程に導入され、脱塩、脱溶媒などが行なわれる。この湿式工程を通さずに剥離したゲルフィルムをそのまま延伸および熱処理するとポリマー内の塩が析出し、後の塗布工程で塗布斑が生じたり、粗大突起が多くなることがある。湿式工程の溶媒は一般的に水系であるが、水の他に少量の無機、有機の溶剤や無機塩などを含有していてもよい。なお溶媒温度は通常0〜100℃で使用される。更に必要に応じて、湿式工程中でフィルムを長手方向に延伸してもよい。
【0082】
ここで、フィルムの少なくとも一面に、水性樹脂、粒子および界面活性剤を含有する水系塗液を塗布する工程については、フィルムの表面性や生産性などの観点から、上記湿式工程と熱処理工程との間で塗布することが好ましい。例えば、上記ポリマー溶液を口金からキャストした後や支持体から剥離した後に水系塗液を塗布した場合には、フィルム表面が粗れ易く、熱処理後も粒子の密着性が低下することがあり、また製膜後に塗布する場合には、再び塗液を乾燥、熱処理する工程が必要となるため経済的ではない。
【0083】
上記湿式工程を終えたフィルムに水系塗液を塗布する場合には、含溶媒率が100%以下のフィルムに塗布することが好ましい。ここで含溶媒率とは下記式(5)により算出される値である。
【0084】
含溶媒率(%)=((含溶媒フィルムの重量−乾燥後のフィルム重量)/含溶媒フィルムの重量)×100 ・・・(5)
本発明の樹脂層を形成するために用いる水系塗液中には、上記界面活性剤が含まれている場合、良好な塗れ性を有することとなるが、含溶媒率が100%を越える場合には樹脂層に厚みムラが生じて均一な樹脂層が得られないことことがある。このようなフィルムの含溶媒率とする方法は特に限定されないが、例えば、吸水性で多孔表面を有するロールとフィルムを接触させて含溶媒率を制御する方法が好ましい。含溶媒率は90%以下がより好ましく、80%以下が更に好ましい。
【0085】
樹脂層を形成するための塗液成分は、樹脂層のS/CやA/Cが本願規定の範囲内となるように適宜調整する。具体的には、前者(S/C)については、主にスルホン酸基を有する化合物の成分量に依存するため、この添加量を調整すればよい。また、後者(A/C)については上記スルホン酸基の塩に由来するナトリウムやカリウム、リチウム元素の量に主に依存するため、これら元素を含む化合物の添加量や種類を調整することにより実現可能となる。もちろん、S/CやA/Cを制御するには、上記したスルホン酸基量やその塩の添加量だけでなく、硫黄元素やアルカリ金属元素を含む化合物の添加量にも注意して塗液を調整することが重要である。
【0086】
塗布方法としては、メタリングバー方式、ダイコート方式、グラビア方式、リバースロール方式、ドクターブレード方式などいずれの塗布方式であってもよい。
【0087】
上記塗布方式によって塗布された塗液は、乾燥後あるいは乾燥させながら延伸および/または熱処理が行われる。ここで塗液の乾燥温度は100〜400℃の範囲が好ましい。乾燥温度が低すぎると塗液の乾燥に長時間を要し生産性が悪くなり、逆に乾燥温度が高すぎると水性樹脂が熱分解したり、急激な温度変化により塗液中の粒子同士が凝集する懸念がある。塗液の乾燥温度の下限は100℃が適切であり、乾燥温度の上限はより好ましくは350℃以下であり、更に好ましくは300℃以下である。
【0088】
この後、延伸、熱処理が行なわれてフィルムとなる。
【0089】
延伸温度は200〜400℃の温度範囲内で行うことがフィルムの機械特性向上に有効であり、より好ましくは220〜350℃、更に好ましくは240〜300℃であり、幅方向の延伸倍率は0.9〜3倍の範囲内とすることが好ましい。幅方向の延伸倍率が0.9倍未満の場合には、製膜の安定性は向上するものの優れた機械物性のフィルムが得られ難い。また幅方向の延伸倍率が3倍を超える場合には、フィルム破れが多発するなど製膜が不安定となり、突起形成面の樹脂層が不連続構造や海島ムラとなって、樹脂層の均一性が悪くなる懸念がある。幅方向の延伸倍率はより好ましくは1.2〜2.5倍の範囲内である。なお延伸倍率とは、延伸後のフィルム幅を延伸前のフィルム幅で除した値で定義する。
【0090】
また、フィルムの延伸中あるいは延伸後に熱処理が行なわれるが、熱処理温度は200〜300℃の範囲内にあることがフィルムの寸法安定性を向上させる点で好ましい。
【0091】
更に延伸あるいは熱処理後のフィルムを徐冷することが、フィルムの平面性を向上させるために有効であり、50℃/秒以下の速度で冷却することが有効である。
【0092】
上記したように、本発明の芳香族ポリアミドフィルムは単層フィルムでも、積層フィルムでもよく、積層フィルムとする場合には、例えば、口金内での積層、複合管での積層や、一旦1層を形成しておいてその上に他の層を形成する方法などを用いればよいが、少なくとも一方の最表層を本発明の突起形成面とすることが必要である。
【0093】
上記した方法により、本発明の突起形成面を有する芳香族ポリアミドフィルムを製造することができる。
【0094】
また本発明の磁気記録媒体は、上記方法で得られた芳香族ポリアミドフィルムの突起形成面に磁性層を形成することにより得られるもので、磁性層を形成する方法は特に限定されないが、例えば、真空下で強磁性材料を加熱蒸発させて非磁性支持体上に堆積させる真空蒸着法、強磁性材料の蒸発を放電中で行うイオンプレーティング法、アルゴンを主成分とする雰囲気中でグロー放電を起こして生じたアルゴンイオンでターゲット表面の原子を叩き出すスパッタリング法などの真空中での物理的成膜法(PVD法:Physical Vapor Deposition)などが好ましく用いられる。
【0095】
なお本発明における物性の測定、効果の評価は次の方法によるものとする。
【0096】
(1)樹脂層の表面硫黄濃度S/C
英国ThermoVGScientific社製のESCALAB220IXLを用いて、突起形成面の樹脂層を次の条件で測定した。
【0097】
光電子脱出角度:35°
X線源:AlKα1,2
試料チャンバー内真空度:1.333×10−6Pa(1×10−8Torr)
次に、測定時の帯電に伴うピークの補正のため、C1Sの主ピークの結合エネルギー値B.Eを284.6eVに合わせた。
【0098】
次いで、C1Sのピーク面積[C1S]は、282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、S2Pのピーク面積[S2P]は、165〜178eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。
【0099】
表面硫黄濃度S/Cは、上記S1Pのピーク面積[S2P]と、C1Sのピーク面積[C1S]の比、および装置固有の感度補正値より、次式により求めた。
【0100】
S/C=([S2P]/[C1S])/(感度補正値)
なお、ここでは、前記装置固有の感度補正値を1.87とした。
(2)樹脂層の表面アルカリ金属濃度A/C
上記(1)と同じ英国ThermoVGScientific社製のESCALAB220IXLを用いて、突起形成面の樹脂層を次の条件で測定した。
【0101】
光電子脱出角度:35°
X線源:AlKα1,2
試料チャンバー内真空度:1.333×10−6Pa(1×10−8Torr)
次に、測定時の帯電に伴うピークの補正のため、C1Sの主ピークの結合エネルギー値B.Eを284.6eVに合わせた。
【0102】
次いで、C1Sのピーク面積[C1S]は282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、Li1Sのピーク面積[Li1S]は52〜60eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、Na1Sのピーク面積[Na1S]は1067〜1076eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、K2Pのピーク面積[K2P]は290〜301eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。
【0103】
次いで各アルカリ金属元素と炭素の比ALi/C、ANa/C、AK/Cは、上記Li1Sのピーク面積[Li1S]、Na1Sのピーク面積[Na1S]、K2Pのピーク面積[K2P]、およびC1Sのピーク面積[C1S]と、装置固有の感度補正値より、次式から求めた。
【0104】
ALi/C=([Li1S]/[C1S])/0.07
ANa/C=([Na1S]/[C1S])/6.52
AK /C=([K 2P]/[C1S])/3.97
次いで表面アルカリ金属濃度A/Cは、上記ALi/C、ANa/C、AK/Cより、次式から求めた。
【0105】
A/C=(ALi/C)+(ANa/C)+(AK/C)
(3)粒子の平均粒径
動的光散乱法の粒度分析計MICROTRAC UPA MODEL;9230(Leeds&Northrup社製)を用いて測定を行い粒子の平均粒子径とした。
【0106】
(4)突起の平均径
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて突起形成面を以下の条件で観察し、観察像の粒子20個について最長径を求め、その平均値をnmに換算して突起の平均径とした。なお平均径に対して5倍以上の径を有する突起が観察像に存在するような場合には、コンタミあるいは水性樹脂の凝集物など粒子以外のものとみなし、これらは測定から除外した。
【0107】
装置:超高分解能電解放射型走査電子顕微鏡(日立(株)製S−900H)
加速電圧:2kV
蒸着金属:Ag
観察手法:シャドー法(傾斜角度5°)
観察倍率:5万倍以上
(5)突起密度
原子間力顕微鏡(AFM)を用いて突起形成面を以下の条件で測定し、高さ5nm以上の突起数を求め、個/mm2に換算して突起密度とした。なお測定は1サンプルにつき10回の測定を行い、測定によるばらつきの影響を排除するために最大と最小のものを除外したものを測定値として、その平均値を求めた。また測定範囲内に径5μm以上の突起の一部が存在するような場合には、測定回数から除外した。
【0108】
装置:NanoScopeIIIa ver3.2 AFM Jスキャナー使用(Digital Instruments社製)
探針:ナノセンサーズ社製SPMプローブNCH−W型、単結晶シリコン
走査モ−ド:タッピングモ−ド
サンプル数:256
走査範囲:5μm×5μm
走査速度:1.0Hz
測定環境:温度23℃、相対湿度65%、大気中
(6)走査範囲30μm角での10点平均粗さRz
原子間力顕微鏡(AFM)を用いて突起形成面を以下の条件で測定して、10点平均粗さRzを求めた。なお、測定は1サンプルにつき10回の測定を行い、測定によるバラツキの影響を排除するために最大と最小のものを除外したものを測定値として、その平均値を求めた。
【0109】
装置:NanoScopeIIIa ver3.2 AFM Jスキャナー使用(Digital Instruments社製)
探針:ナノセンサーズ社製SPMプローブNCH−W型、単結晶シリコン
走査モ−ド:タッピングモ−ド
サンプル数:256
走査範囲:30μm×30μm
走査速度:0.5Hz
測定環境:温度23℃、相対湿度65%、大気中
(7)300℃の熱減量
島津製作所(株)製の熱重量測定装置(TGA−50H)と解析装置サーマルアナライザー(TA−50)に、データ処理用のパーソナルコンピューターを組み合わせた装置を用いて測定を行った。120℃で12時間乾燥したサンプル約7mgを炉内にセットして、炉内を窒素雰囲気下とし、昇温速度10℃/分で室温から600℃まで加熱した。得られた熱重量曲線から下式により、300℃の熱減量を求めた。
【0110】
300℃の熱減量(重量%)=((120℃での重量−300℃での重量)/120℃での重量)×100
(8)樹脂層の厚み
フィルム小片をエポキシ樹脂で固定成形して、ミクロトームで超薄切片(フィルム長手方向に平行に切断)を作成した。この超薄切片を透過型電子顕微鏡(日立製H−7100FA型)を用いて加速電圧100kVで観察し、樹脂層の境界面を探して厚みを求めた。
【0111】
(9)引張りヤング率、破断伸度
オリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置“テンシロンAMF/RTA−100”を用いて、幅10mm、長さ150mmに切断したフィルムをチャック間距離50mmの装置にセットして、引張速度300mm/分、温度23℃、相対湿度65%の条件下で引張試験を行い、得られた荷重−伸び曲線の立ち上がり部の接線から引張りヤング率を求めた。またフィルム破断時の長さからチャック間距離を減じたものをチャック間距離で除したものに100を乗じて伸度とした。
【0112】
(10)径5μm以上の突起
芳香族ポリアミドフィルムの突起形成面に真空蒸着機でアルミ蒸着膜を形成し、蒸着フィルムの表面を倍率400倍の微分干渉顕微鏡で観察し、2.5cm2の範囲内に存在する径5μm以上の突起をカウントし、1cm2当たりの突起数に換算して求めた。
【0113】
(11)リサイクルフィルムの異物
水性樹脂を1重量%含有する水系塗液を、メタリングバーを用いて塗布厚みが6μmとなるように芳香族ポリアミドフィルム表面に塗布した。次いで、280℃の乾燥機で塗液を乾燥して、樹脂薄膜を有する芳香族ポリアミドフィルムを得た。このフィルムを以下の組成となるように溶媒へ溶かし、リサイクルポリマーを得た。
【0114】
・N−メチル−2−ピロリドン 85重量%
・塩化リチウム 3重量%
・トリエタノールアミン 2重量%
・フィルム 10重量%
次にアプリケーターを用いてリサイクルポリマーをガラス板上にキャストし、厚み50μmのキャストフィルムを得た。次いでキャストフィルムを120℃のオーブンで7分間乾燥した後、ゲルフィルムを金枠に固定して水槽に5分間浸した。次いで水槽から取り出した含水フィルムの水滴をクリーンエアーで取り除いた後、300℃のオーブンで1分間の乾燥および熱処理を行ってリサイクルフィルムを得た。
【0115】
次に真空蒸着機でアルミ蒸着されたリサイクルフィルムの表面を、倍率400倍の微分干渉顕微鏡で観察し、以下の基準で評価した。
【0116】
○:リサイクルフィルム表面に異物がまったくない。
【0117】
△:リサイクルフィルム表面にわずかに異物が見られる。
【0118】
×:リサイクルフィルム表面に異物が見られる。
【0119】
(12)フィルムの巻き姿
長さ3000m、幅500mmの磁性層を形成する前のフィルムを、巻き取り張力0.5〜1g/mmで巻き取ったフィルムの状態を以下の基準で評価した。
【0120】
◎:巻き取りフィルム表面にシワ、傷、凸凹がない。
【0121】
○:巻き取りフィルム表面のシワ、傷、凸凹が少ない。
【0122】
×:巻き取りフィルム表面のシワ、傷、凸凹が多い。
【0123】
(13)出力特性
突起形成面に連続斜め蒸着法で、厚さ170nmのCo−O磁性層を形成した。次いでスパッタ法により厚さ5nmのダイヤモンドライクコーティング膜を磁性層上に形成し、更にその上に、有機物防錆剤0.1重量%の溶液をグラビアロールを用いて塗布し、100℃の乾燥機で乾燥させた。その後に、潤滑剤としてパーフルオロポリエーテル誘導体からなる有機物を主体とした0.5重量%溶液をグラビアロールを用いて塗布し、100℃の乾燥機で乾燥させた。
【0124】
次に磁性層の反対面にカーボンを主体とし、結合剤として酢酸ビニル系樹脂を使用した厚み0.3μmのバックコート層を形成した。
【0125】
以上のようにして得られた磁気記録媒体を幅8mm、長さ250mにスリットして、カセットに組み込み磁気テープとした。
【0126】
市販のAIT−1ドライブを用いて、記録周波数7MHzの信号を記録して、その再生出力を測定し、そのS/N比の平均値を市販のHi8テープを基準(0dB)として比較した。なお△は実用可能レベルである。
【0127】
○:+1dB以上
△:−1dB以上、+1dB未満
×:−1dB未満
(14)ドロップアウト
上記(13)で得た磁気テープ再生時の、1μsec、−8dBのドロップアウト発生数をドロップアウトカウンター(大倉インダストリー(株)製)で測定し、1分間あたりの平均値(個/分)を求め、以下の基準で判断した。
【0128】
○:500(個/分)未満
△:500(個/分)以上1000(個/分)未満
×:1000(個/分以上)
【0129】
【実施例】
以下に実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものでない。なお、以下の実施例中、NMPはN−メチル−2−ピロリドン、CTPCは2−クロルテレフタル酸クロリド、CPAは2−クロルパラフェニレンジアミン、DPEは4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを表す。
(実施例1)
脱水したNMPに、85モル%に相当するCPAと15モル%に相当するDPEを溶解させ、この溶液を濾過精度1.0μmのポリプロピレンからなるフィルターに通して濾過した後、重合槽へ移送し、これに濾過精度1.0μmのポリプロピレンからなるフィルターに通した98.5モル%に相当するCTPCを添加して、30℃以下で2時間の撹拌を行い重合ポリマーを得た。
【0130】
次に、重合ポリマー中の塩化水素に対して98.5モル%の炭酸リチウムを添加して4時間の中和を行い、重合ポリマー中の塩化水素に対して10モル%のトリエタノールアミンを添加して1時間の撹拌を行い、ポリマー濃度10.8重量%の芳香族ポリアミド溶液Aを得た。
【0131】
また、脱水したNMPに、85モル%に相当するCPAと15モル%に相当するDPEを溶解させ、この溶液を濾過精度1.0μmのポリプロピレンからなるフィルターに通して濾過した後、重合槽へ移送し、これに濾過精度1.0μmのポリプロピレンからなるフィルターに通した98.5モル%に相当するCTPCを添加して、30℃以下で2時間の撹拌を行い重合ポリマーを得た。
【0132】
次に、重合ポリマー中の塩化水素に対して98.5モル%の炭酸リチウムを添加して4時間の中和を行い、平均1次粒径が16nmのシリカ(日本アエロジル株式会社製“AEROSIL”R972タイプ)をポリマーに対して1.0重量%添加して1時間の攪拌を行った後、重合ポリマー中の塩化水素に対して10モル%のトリエタノールアミンを添加して1時間の撹拌を行い、ポリマー濃度10.6重量%の芳香族ポリアミド溶液Bを得た。
【0133】
次に、芳香族ポリアミド溶液Aを濾過精度1.2μmのステンレスからなる金属繊維フィルターに通し、また、芳香族ポリアミド溶液Bを濾過精度2.0μmのステンレスからなる金属繊維フィルターに通した後に口金内部で積層した。この時の積層厚みは、最終フィルムにおける芳香族ポリアミド溶液Aの厚みが3μm、芳香族ポリアミド溶液Bの厚みが1μmとなるように積層した。次に、積層したポリマー溶液を表面が鏡面状のステンレス製ベルト上にキャストし、160℃で3分間加熱して溶媒を蒸発させ、自己保持性を得たフィルムをベルトから連続的に剥離した。この時のゲルフィルムのポリマー濃度は41重量%であり、脱溶媒速度は20重量%/分であった。
【0134】
次に、濾過精度1.0μmのポリプロピレンからなるフィルターで濾過された水を用いた水槽内に、ゲルフィルムを2分間通して残存溶媒や中和で生じた無機塩、有機アミンの水抽出を行い、更にこの間でフィルムを長手方向に1.2倍延伸して含溶媒フィルムを得た。
【0135】
次に含溶媒フィルム両面の水分を水切りロールで除去して、含溶媒率を34%にした。次いで、芳香族ポリアミド溶液A層(芳香族ポリアミド溶液Aにより成形される層)側に、あらかじめ調製した濾過精度1.0μmのポリプロピレンからなるフィルターで濾過された表1に示す塗液を、メタリングバー方式で塗布厚み6μmとなるように塗布した。 次いで、乾燥温度200℃の乾燥機で塗液を乾燥した。ここで粒子は、スチレン(30重量%)、ブチルアクリレート(30重量%)、ジビニルベンゼン(40重量%)の乳化重合で合成した平均粒径25nmの架橋ポリスチレン粒子を用いた。また水性樹脂には、テレフタル酸(42.5モル%)、5−スルホイソフタル酸アンモニウム(7.5モル%)、エチレングリコール(50モル%)の重縮合反応物である水性ポリエステル樹脂を用いた。この水性ポリエステル樹脂で形成された樹脂薄膜の表面硫黄濃度S/Cは0.015、表面アルカリ金属濃度A/Cは0.0001であり、樹脂の300℃の熱減量は4.0重量%であった。
【0136】
この後テンターで延伸と熱処理を行って厚み4.0μmの芳香族ポリアミドフィルムを得た。この間に280℃でフィルムを幅方向に1.4倍延伸し、200℃で1.5分間熱処理を行なった後、20℃/秒の速度で徐冷した。
【0137】
この芳香族ポリアミドフィルムの引張りヤング率は、長手方向で12,200N/mm2、幅方向で17,100N/mm2であり、また破断伸度は、長手方向で54%、幅方向で31%であった。
【0138】
この芳香族ポリアミド積層フィルムの突起形成面の表面特性を評価した結果を表2に示した。また、フィルム特性および、突起形成面に磁性層を形成し、磁気テープとして評価した結果を表3に示す。フィルムの巻き姿、リサイクルフィルムの異物、出力特性、ドロップアウトは良好であった。
(実施例2、3)
粒子の平均粒径、水性樹脂の添加量、および界面活性剤の添加量を表1のように変更する以外は実施例1と同様の方法で芳香族ポリアミド積層フィルムを得た。
【0139】
これら芳香族ポリアミド積層フィルムの突起形成面の表面特性を評価した結果を表2に示した。また、フィルム特性および、突起形成面に磁性層を形成し、磁気テープとして評価した結果を表3に示す。フィルムの巻き姿、リサイクルフィルムの異物、出力特性、ドロップアウトは良好であった。
(実施例4〜7)
粒子の添加量を表1のように変更する以外は実施例1と同様の方法で芳香族ポリアミド積層フィルムを得た。
【0140】
これら芳香族ポリアミド積層フィルムの突起形成面の表面特性を評価した結果を表2に示した。また、フィルム特性および、突起形成面に磁性層を形成し、磁気テープとして評価した結果を表3に示す。フィルムの巻き姿、リサイクルフィルムの異物、出力特性、ドロップアウトは良好であった。
(実施例8)
平均粒径25nmのコロイダルシリカ(触媒化成工業株式会社製“CATALOID”SI−50タイプ)を用いて、粒子の添加量を表1のように変更する以外は実施例1と同様の方法で芳香族ポリアミド積層フィルムを得た。
【0141】
この芳香族ポリアミド積層フィルムの突起形成面の表面特性を評価した結果を表2に示した。また、フィルム特性および、突起形成面に磁性層を形成し、磁気テープとして評価した結果を表3に示す。フィルムの巻き姿、リサイクルフィルムの異物、出力特性、ドロップアウトは良好であった。
(実施例9)
水性樹脂に、テレフタル酸(46モル%)、5−スルホイソフタル酸アンモニウム(4モル%)、エチレングリコール(50モル%)の重縮合反応物である水性ポリエステル樹脂を用いること以外は実施例1と同様の方法で芳香族ポリアミド積層フィルムを得た。なお、上記水性ポリエステル樹脂で形成された樹脂薄膜の表面硫黄濃度S/Cは0.008、表面アルカリ金属濃度A/Cは0.0001であり、樹脂の300℃の熱減量は2.1重量%であった。
【0142】
この芳香族ポリアミド積層フィルムの突起形成面の表面特性を評価した結果を表2に示した。また、フィルム特性および、突起形成面に磁性層を形成し、磁気テープとして評価した結果を表3に示す。フィルムの巻き姿、リサイクルフィルムの異物、出力特性、ドロップアウトは良好であった。
(実施例10)
水性樹脂に、テレフタル酸(40モル%)、5−スルホイソフタル酸アンモニウム(10モル%)、エチレングリコール(50モル%)の重縮合反応物である水性ポリエステル樹脂を用いること以外は実施例1と同様の方法で芳香族ポリアミド積層フィルムを得た。なお、上記水性ポリエステル樹脂で形成された樹脂薄膜の表面硫黄濃度S/Cは0.02、表面アルカリ金属濃度A/Cは0.0001であり、樹脂の300℃の熱減量は5.1重量%であった。
【0143】
この芳香族ポリアミド積層フィルムの突起形成面の表面特性を評価した結果を表2に示した。また、フィルム特性および、突起形成面に磁性層を形成し、磁気テープとして評価した結果を表3に示す。フィルムの巻き姿、リサイクルフィルムの異物、出力特性、ドロップアウトは良好であった。
(実施例11)
水性樹脂に、テレフタル酸(45モル%)、5−スルホイソフタル酸アンモニウム(4モル%)、5−スルホイソフタル酸ナトリウム(1モル%)、エチレングリコール(50モル%)の重縮合反応物である水性ポリエステル樹脂を用いること以外は実施例1と同様の方法で芳香族ポリアミド積層フィルムを得た。なお、上記水性ポリエステル樹脂で形成された樹脂薄膜の表面硫黄濃度S/Cは0.01、表面アルカリ金属濃度A/Cは0.002であり、樹脂の300℃の熱減量は2.5重量%であった。
【0144】
この芳香族ポリアミド積層フィルムの突起形成面の表面特性を評価した結果を表2に示した。また、フィルム特性および、突起形成面に磁性層を形成し、磁気テープとして評価した結果を表3に示す。フィルムの巻き姿、リサイクルフィルムの異物、出力特性、ドロップアウトは良好であった。
(比較例1)
水性樹脂に、テレフタル酸(42.5モル%)、5−スルホイソフタル酸ナトリウム(7.5モル%)、エチレングリコール(50モル%)の重縮合反応物である水性ポリエステル樹脂を用いること以外は実施例1と同様の方法で芳香族ポリアミド積層フィルムを得た。なお、上記水性ポリエステル樹脂で形成された樹脂薄膜の表面硫黄濃度S/Cは0.015、表面アルカリ金属濃度A/Cは0.015であり、樹脂の300℃の熱減量は0.7重量%であった。
【0145】
この芳香族ポリアミド積層フィルムの突起形成面の表面特性を評価した結果を表2に示した。また、フィルム特性および、突起形成面に磁性層を形成し、磁気テープとして評価した結果を表3に示す。フィルムの巻き姿、出力特性、ドロップアウトは良好であったが、リサイクルフィルムの異物が悪化した。
(比較例2)
水性樹脂に、テレフタル酸(37.5モル%)、5−スルホイソフタル酸ナトリウム(12.5モル%)、エチレングリコール(50モル%)の重縮合反応物である水性ポリエステル樹脂を用いること以外は実施例1と同様の方法で芳香族ポリアミド積層フィルムを得た。なお、上記水性ポリエステル樹脂で形成された樹脂薄膜の表面硫黄濃度S/Cは0.025、表面アルカリ金属濃度A/Cは0.025であり、樹脂の300℃の熱減量は2.8重量%であった。
【0146】
この芳香族ポリアミド積層フィルムの突起形成面の表面特性を評価した結果を表2に示した。また、フィルム特性および、突起形成面に磁性層を形成し、磁気テープとして評価した結果を表3に示す。フィルムの巻き姿、出力特性、ドロップアウトは良好であったが、リサイクルフィルムの異物が悪化した。
(比較例3)
水性樹脂に、テレフタル酸(37.5モル%)、5−スルホイソフタル酸アンモニウム(12.5モル%)、エチレングリコール(50モル%)の重縮合反応物である水性ポリエステル樹脂を用いること以外は実施例1と同様の方法で芳香族ポリアミド積層フィルムを得た。なお、上記水性ポリエステル樹脂で形成された樹脂薄膜の表面硫黄濃度S/Cは0.025、表面アルカリ金属濃度A/Cは0.0001であり、樹脂の300℃の熱減量は7.2重量%であった。
【0147】
この芳香族ポリアミド積層フィルムの突起形成面の表面特性を評価した結果を表2に示した。また、フィルム特性および、突起形成面に磁性層を形成し、磁気テープとして評価した結果を表3に示す。フィルムの巻き姿、出力特性、ドロップアウトは良好であったが、リサイクルフィルムの異物が悪化した。
(比較例4)
水性樹脂に、テレフタル酸(47.5モル%)、5−スルホイソフタル酸アンモニウム(2.5モル%)、エチレングリコール(50モル%)の重縮合反応物である水性ポリエステル樹脂を用いること以外は実施例1と同様の方法で芳香族ポリアミド積層フィルムを得た。ただし上記水性ポリエステル樹脂を含む塗液は、濾過精度1μmカットのポリプロピレンフィルターでの濾過が困難であったため、濾過精度5μmカットのガラスフィルターで濾過を行った。なお、上記水性ポリエステル樹脂で形成された樹脂薄膜の表面硫黄濃度S/Cは0.005、表面アルカリ金属濃度A/Cは0.0001であり、樹脂の300℃の熱減量は1.6重量%であった。
【0148】
この芳香族ポリアミド積層フィルムの突起形成面の表面特性を評価した結果を表2に示した。また、フィルム特性および、突起形成面に磁性層を形成し、磁気テープとして評価した結果を表3に示す。フィルムの巻き姿、リサイクルフィルムの異物は良好であったが、出力特性とドロップアウトが悪化した。
(比較例5)
水性樹脂に、テレフタル酸(47.5モル%)、5−スルホイソフタル酸ナトリウム(2.5モル%)、エチレングリコール(50モル%)の重縮合反応物である水性ポリエステル樹脂を用いること以外は実施例1と同様の方法で芳香族ポリアミド積層フィルムを得た。ただし上記水性ポリエステル樹脂を含む塗液は、比較例4と同様、濾過精度1μmカットのポリプロピレンフィルターでの濾過が困難であったため、濾過精度5μmカットのガラスフィルターで濾過を行った。なお、上記水性ポリエステル樹脂で形成された樹脂薄膜の表面硫黄濃度S/Cは0.005、表面アルカリ金属濃度A/Cは0.005であり、樹脂の300℃の熱減量は0.4重量%であった。
【0149】
この芳香族ポリアミド積層フィルムの突起形成面の表面特性を評価した結果を表2に示した。また、フィルム特性および、突起形成面に磁性層を形成し、磁気テープとして評価した結果を表3に示す。フィルムの巻き姿は良好であったが、リサイクルフィルムの異物、出力特性、ドロップアウトが悪化した。
(比較例6、7)
粒子の添加量を表1のように変更する以外は実施例1と同様の方法で芳香族ポリアミド積層フィルムを得た。
【0150】
これら芳香族ポリアミド積層フィルムの突起形成面の表面特性を評価した結果を表2に示した。また、フィルム特性および、突起形成面に磁性層を形成し、磁気テープとして評価した結果を表3に示す。フィルムの巻き姿、リサイクルフィルムの異物、出力特性、ドロップアウトがすべて良好なフィルム、磁気テープは得られなかった。
(比較例8)
粒子の平均粒径、水性樹脂の添加量を表1のように変更する以外は実施例1と同様の方法で芳香族ポリアミド積層フィルムを得た。平均粒径120nmの粒子を用いたため、平均径が100nmを超す突起が形成された。
【0151】
この芳香族ポリアミド積層フィルムの突起形成面の表面特性を評価した結果を表2に示した。また、フィルム特性および、突起形成面に磁性層を形成し、磁気テープとして評価した結果を表3に示す。フィルムの巻き姿、リサイクルフィルムの異物、ドロップアウトは良好であったが、磁気テープの出力特性が悪化した。
(比較例9)
水性樹脂に、テレフタル酸(42.5モル%)、5−スルホイソフタル酸リチウム(7.5モル%)、エチレングリコール(50モル%)の重縮合反応物である水性ポリエステル樹脂を用いること以外は実施例1と同様の方法で芳香族ポリアミド積層フィルムを得た。なお、上記水性ポリエステル樹脂で形成された樹脂薄膜の表面硫黄濃度S/Cは0.015、表面アルカリ金属濃度A/Cは0.015であり、樹脂の300℃の熱減量は1.3重量%であった。
【0152】
この芳香族ポリアミド積層フィルムの突起形成面の表面特性を評価した結果を表2に示した。また、フィルム特性および、突起形成面に磁性層を形成し、磁気テープとして評価した結果を表3に示す。フィルムの巻き姿、出力特性、ドロップアウトは良好であったが、リサイクルフィルムの異物が悪化した。
【0153】
【表1】
【0154】
【表2】
【0155】
【表3】
【0156】
【発明の効果】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、フィルムを再利用しても異物の発生が少なく、歩留まりが低いので、表面性に優れたフィルムを安価に製造することができる。また上記フィルムをベースフィルムとして用いることにより、出力が高い磁気記録媒体を製造することができる。
Claims (5)
- 少なくとも片面に、X線光電子分光法により測定される表面硫黄濃度(S/C)と表面アルカリ金属濃度(A/C)が下記式(1)(2)を満たす樹脂層を有し、この樹脂層の表面に平均径が10〜100nmである突起が1×106〜1×108個/mm2の密度で形成され、この突起が形成された面の径5μm以上の突起が100個/cm2以下である芳香族ポリアミドフィルム
0.008≦S/C≦0.02 ・・・(1)
A/C≦0.002 ・・・(2) - 樹脂層が、水溶性および/または水分散性のポリエステル樹脂を含んでいる、請求項1に記載の芳香族ポリアミドフィルム。
- 突起が形成された面の原子間力顕微鏡(AFM)により測定される走査範囲30μm角での10点平均粗さRz(nm)が、10〜100nmである請求項1または2に記載の芳香族ポリアミドフィルム。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族ポリアミドフィルムの突起が形成された面に磁性層を配設してなる磁気記録媒体。
- 磁性層の厚みが20〜200nmである、請求項4に記載の磁気記録媒体。
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JP2011162775A (ja) * | 2010-01-14 | 2011-08-25 | Toray Ind Inc | 芳香族ポリアミドおよび芳香族ポリアミドフィルム |
CN114891217A (zh) * | 2022-03-28 | 2022-08-12 | 桂林理工大学 | 一种高性能聚苯砜树脂及其制备方法和应用 |
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2002
- 2002-08-08 JP JP2002231199A patent/JP2004066716A/ja active Pending
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